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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】画像処理方法および画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 3/40 20060101AFI20231219BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20231219BHJP
   G06T 5/00 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
G06T3/40 725
G06T7/00 350B
G06T5/00 705
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022043727
(22)【出願日】2022-03-18
(62)【分割の表示】P 2018108080の分割
【原出願日】2018-06-05
(65)【公開番号】P2022081653
(43)【公開日】2022-05-31
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100102037
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100149962
【弁理士】
【氏名又は名称】阿久津 好二
(74)【代理人】
【識別番号】100170988
【弁理士】
【氏名又は名称】妹尾 明展
(74)【代理人】
【識別番号】100189566
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】胡 尓重
(72)【発明者】
【氏名】西野 和義
【審査官】鈴木 圭一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-129987(JP,A)
【文献】特開2007-225100(JP,A)
【文献】我妻 大樹、外2名,”l2ノルムを用いた自己学習型超解像”,電子情報通信学会技術研究報告 通信方式,一般社団法人電子情報通信学会,2013年03月07日,第112巻,第486号,p.57~61
【文献】柏原 考爾,“畳み込みニューラルネットワークによる静脈画像の超解像処理”,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2016年08月18日,Vol.116, No.196,pp.39-44
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 3/40
G06T 7/00
G06T 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像に対して超解像処理を行う画像処理方法であって、
機械学習装置が、高解像度機械学習用画像を取得するステップと、
前記機械学習装置が、前記高解像度機械学習用画像のスケールを小さくすることにより、低解像度画像を取得するステップと、
前記機械学習装置が、前記低解像度画像に対してぼかし処理を行うことにより、低解像度機械学習用画像を取得するステップと、
前記機械学習装置が、前記高解像度機械学習用画像と、前記低解像度機械学習用画像とを用いて学習モデルの機械学習を行うステップと、
画像処理装置が、前記医用画像を取得するステップと、
前記画像処理装置が、学習済みの前記学習モデルによって、前記医用画像の解像度を、前記高解像度機械学習用画像の解像度よりも高くする超解像処理を行うステップと、を含み、
前記機械学習を行うステップは、前記機械学習装置が、前記高解像度機械学習用画像のスケールを小さくし前記低解像度画像を取得した後に、取得した前記低解像度画像対してぼかし処理が行われた前記低解像度機械学習用画像に含まれる自己相似性を有する構造に基づく周波数成分のパターン、および、前記高解像度機械学習用画像に含まれる自己相似性を有する構造に基づく周波数成分のパターンに基づいて、前記高解像度機械学習用画像には含まれない高周波の周波数成分を推測することにより、前記医用画像の解像度を前記高解像度機械学習用画像よりも高解像度にすることを前記学習モデルに学習させる前記機械学習を行う、画像処理方法。
【請求項2】
前記低解像度機械学習用画像を取得するステップは、前記機械学習装置が、前記低解像度画像に対して、解像度の低下を伴わないぼかし処理を行うことにより、前記低解像度機械学習用画像を取得する、請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記低解像度機械学習用画像を取得するステップは、前記機械学習装置が、ぼかし処理として、前記低解像度画像に対して、被写体の境界部分の輝度値の変化をなだらかにする平滑化処理を行うことにより、前記低解像度機械学習用画像を取得する、請求項2に記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記高解像度機械学習用画像は、部分的な構造と全体の構造とが類似する自己相似性を有する構造が同一画像中に含まれる医用画像である、請求項1~3のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記高解像度機械学習用画像は、血管を撮像したX線画像である、請求項4に記載の画像処理方法。
【請求項6】
前記高解像度機械学習用画像にノイズが含まれている場合に、前記機械学習装置が、前記高解像度機械学習用画像のノイズを除去するステップをさらに含み、
記機械学習を行うステップは、前記機械学習装置が、前記低解像度機械学習用画像と、ノイズが除去された前記高解像度機械学習用画像とを用いて、前記学習モデルの前記機械学習を行う、請求項1~5のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項7】
機械学習によって学習済みの学習モデルを用いて医用画像に対して超解像処理を行う画像処理装置であって、
高解像度機械学習用画像と、前記高解像度機械学習用画像のスケールを小さくするとともに、スケールを小さくした前記高解像度機械学習用画像に対してぼかし処理を行うことにより取得された低解像度機械学習用画像とを用いて学習された学習済みの前記学習モデルを記憶する記憶部と、
学習済みの前記学習モデルによって、取得した医用画像の解像度を、前記高解像度機械学習用画像の解像度よりも高くする超解像処理を行う超解像処理部と、を備え、
前記学習モデルは、前記高解像度機械学習用画像のスケールを小さくし低解像度画像を取得した後に、取得した前記低解像度画像対してぼかし処理が行われた前記低解像度機械学習用画像に含まれる自己相似性を有する構造に基づく周波数成分のパターン、および、前記高解像度機械学習用画像に含まれる自己相似性を有する構造に基づく周波数成分のパターンに基づいて、前記高解像度機械学習用画像には含まれない高周波の周波数成分を推測することにより、前記医用画像の解像度を前記高解像度機械学習用画像よりも高解像度にすることを学習させる前記機械学習を行うことにより作成される、画像処理装置。
【請求項8】
機械学習を利用することにより、医用画像に対して超解像処理を行うときに用いられる学習モデルを作成する学習モデル作成方法であって、
機械学習装置が、高解像度機械学習用画像と、前記高解像度機械学習用画像のスケールを小さくした低解像度画像に対してぼかし処理を行った低解像度機械学習用画像とを用いて、機械学習の学習を実行して学習モデルを作成するステップを含み、
前記機械学習を行うステップは、前記機械学習装置が、前記高解像度機械学習用画像のスケールを小さくし前記低解像度画像を取得した後に、取得した前記低解像度画像対してぼかし処理が行われた前記低解像度機械学習用画像に含まれる自己相似性を有する構造に基づく周波数成分のパターン、および、前記高解像度機械学習用画像に含まれる自己相似性を有する構造に基づく周波数成分のパターンに基づいて、前記高解像度機械学習用画像には含まれない高周波の周波数成分を推測することにより、前記医用画像の解像度を前記高解像度機械学習用画像よりも高解像度にする前記学習を前記学習モデルに対して行う、学習モデル作成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理方法および画像処理装置に関し、特に、低解像度の画像を高解像度の画像に変換する処理を行う画像処理方法および画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低解像度の画像を高解像度の画像に変換する処理を行う画像処理方法および画像処理装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、低解像度の画像と高解像度の画像とを用いて機械学習を行い、得られた機械学習済みの学習モデルを用いて画像の解像度を向上させる超解像処理を行う画像処理装置が開示されている。
【0004】
ここで、医療分野において、医師等が、患部を撮影しながら手術を行う場合や患部を撮影した画像に基づいて診断を行う際に、より詳細に患部を確認するために、手術中の画像や検査結果の画像などを拡大して確認したい場合がある。しかしながら、単純に画像を拡大すると、画質が劣化するため、かえって詳細が確認できない場合がある。そこで、上記特許文献1に開示されているように、機械学習によって学習済みの学習モデルを用いて画像の解像度を高める手法によって高解像度の画像を取得することにより、医師等は、取得した高解像度の画像を拡大して詳細を確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-20879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているような超解像処理では、高解像度画像と低解像度画像とによって機械学習を行うことにより学習済みの学習モデルを取得しているため、機械学習に用いた高解像度画像以上の解像度の画像を得ることができないという不都合がある。この場合、超解像処理によって出力される画像の解像度よりも解像度の高い機械学習用の画像を用いた機械学習によって学習済みの学習モデルを用いて超解像処理を行うことが考えられる。しかし、医用分野においては、より高解像度の画像を取得することが可能な機器は高価であることが多く、広く一般に普及していないことや、プライバシーの観点などから、機械学習に用いるためのより解像度が高い画像を数多く取得することが難しいという不都合がある。そのため、処理対象の画像よりも高い解像度で、かつ画質の劣化が抑制された画像を得ることができないという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、機械学習によって学習した学習モデルを用いて画像の解像度を向上させる際に、画質の劣化を抑制することが可能であるとともに、機械学習に用いた高解像度画像の解像度以上の画像を得ることが可能な画像処理方法および画像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願発明者らが鋭意検討を行った結果、高解像度機械学習用画像と、高解像度機械学習用画像のスケールを小さくするとともに、ぼかし処理を行った低解像度機械学習用画像と、を用いて機械学習を行った学習モデルを用いて医用画像に対して超解像処理を行った場合、処理対象の画像の解像度を、機械学習に用いた高解像度機械学習用画像の解像度よりも高くすることができるということを見出し、この知見に基づいて、以下の発明を想到するに至った。すなわち、この発明の第1の局面における画像処理方法は、機械学習によって学習済みの学習モデルを用いて医用画像に対して超解像処理を行う画像処理方法であって、高解像度機械学習用画像を取得するステップと、高解像度機械学習用画像のスケールを小さくすることにより、低解像度画像を取得するステップと、低解像度画像に対してぼかし処理を行うことにより、低解像度機械学習用画像を取得するステップと、高解像度機械学習用画像と、低解像度機械学習用画像とを用いて学習モデルの機械学習を行うステップと、医用画像を取得するステップと、学習済みの学習モデルによって、医用画像の解像度を、高解像度機械学習用画像の解像度よりも高くする超解像処理を行うステップと、を含む。なお、本明細書において、「スケール」とは、「解像度」のことである。また、「超解像処理」とは、解像度を高める処理と、画質が劣化することを抑制する処理とを含むが、本明細書では、その両方を行うことを意味する。また、「医用画像」とは、手術や診断に用いる画像のことであり、手術部位や診察部位などが写る静止画像および動画像を含む。
【0009】
この発明の第1の局面における画像処理方法では、上記のように、高解像度機械学習用画像と低解像度機械学習用画像とを用いた機械学習済みの学習モデルによって、医用画像の解像度を高解像度機械学習用画像の解像度よりも高くする超解像処理を行うステップを含む。この知見に基づいて、高解像度機械学習用画像と、低解像度画像にぼかし処理を行った低解像度機械学習用画像とを用いて、学習させた学習モデルを用いて超解像処理を行うことにより、超解像処理後の医用画像の画質が劣化すること抑制することができる。その結果、機械学習によって学習した学習モデルを用いて画像の解像度を向上させる際に、画質の劣化を抑制することが可能であるとともに、機械学習に用いた高解像度機械学習用画像の解像度以上の画像を得ることができる。なお、この効果は、後述する実験により確認済みである。
【0010】
上記第1の局面における画像処理方法において、好ましくは、低解像度機械学習用画像を取得するステップは、低解像度画像に対して、解像度の低下を伴わないぼかし処理を行うことにより、低解像度機械学習用画像を取得する。このようにして低解像度機械学習用画像を取得すれば、高解像度機械学習用画像の解像度と、低解像度画像の解像度とに基づいて、超解像処理における解像度の向上を学習モデルに学習させることができる。また、高解像度機械学習用の画質と、ぼかし処理を行ことにより低下した低解像度機械学習用画像の画質とに基づいて、超解像処理における画質の劣化を抑制することを学習モデルに学習させることができる。その結果、高解像度機械学習用画像と低解像度機械学習用画像とを用いて機械学習を行った学習モデルによって超解像処理を行うことにより、超解像処理後の医用画像の解像度を高めることが可能であるとともに、超解像処理後の医用画像の画質が劣化することを抑制することができる。なお、この効果についても、後述する実験により確認済みである。
【0011】
この場合、好ましくは、低解像度機械学習用画像を取得するステップは、ぼかし処理として、低解像度画像に対して、被写体の境界部分の輝度値の変化をなだらかにする平滑化処理を行うことにより、低解像度機械学習用画像を取得する。このようにして低解像度機械学習用画像を取得すれば、高解像度機械学習用画像における被写体の境界部分の輝度値の変化と、低解像度機械学習用画像における被写体の境界部分の輝度値の変化との差異を学習モデルに学習させることができる。したがって、高解像度機械学習用画像における被写体の境界部分の輝度値の変化と、低解像度機械学習用画像における被写体の境界部分の輝度値の変化との差異を学習した学習モデルを用いて超解像処理を行うことができる。その結果、医用画像の超解像処理を行う際に、超解像処理後の医用画像の画質が劣化することを抑制することができる。なお、この効果についても、後述する実験により確認済みである。
【0012】
上記第1の局面における画像処理方法において、好ましくは、高解像度機械学習用画像は、部分的な構造と全体の構造とが類似する自己相似性を有する構造が同一画像中に含まれる医用画像である。本願発明者らが更なる検討を行った結果、上記のような自己相似性を有する構造が同一画像中に含まれる医用画像を用いて機械学習を行うことにより得られた学習モデルによって超解像処理を行うことにより、超解像処理後の医用画像の画質が劣化することを抑制することが可能であるとともに、超解像処理後の医用画像の解像度を、高解像度機械学習用画像の解像度よりも高くすることができるという知見を得た。なお、この効果についても、後述する実験により確認済みである。
【0013】
この場合、好ましくは、高解像度機械学習用画像は、血管を撮像したX線画像である。ここで、血管のX線画像は、太さの異なる複数の血管が写っており、部分的な構造と全体の構造とが類似する自己相似性を有する。したがって、このような医用画像を用いて機械学習を行えば、血管の自己相似性に基づいて、学習モデルの学習を行うことができる。その結果、血管を撮像したX線画像の解像度を、高解像度機械学習用画像の解像度よりも高くすることができる。
【0014】
上記第1の局面における画像処理方法において、好ましくは、高解像度機械学習用画像にノイズが含まれている場合に、高解像度機械学習用画像のノイズを除去するステップをさらに含み、学習モデルの機械学習を行うステップは、低解像度機械学習用画像と、ノイズが除去された高解像度機械学習用画像とを用いて、学習モデルの機械学習を行う。このように学習モデルの機械学習を行えば、高解像度機械学習用画像からノイズを除去することが可能となるので、機械学習によって学習モデルを学習する際に、高解像度機械学習用画像に含まれるノイズを学習することを抑制することができる。その結果、超解度処理を行う際に、高解像度機械学習用画像のノイズに起因するノイズが、超解像処理後の画像に含まれることを抑制することができる。
【0015】
この発明の第2の局面における画像処理装置は、機械学習によって学習済みの学習モデルを用いて医用画像に対して超解像処理を行う画像処理装置であって、高解像度機械学習用画像と、高解像度機械学習用画像のスケールを小さくするとともに、スケールを小さくした高解像度機械学習用画像に対してぼかし処理を行うことにより取得された低解像度機械学習用画像とを用いて学習された学習済みの学習モデルを記憶する記憶部と、学習済みの学習モデルによって、取得した医用画像の解像度を、高解像度機械学習用画像の解像度よりも高くする超解像処理を行う超解像処理部と、を備える。
【0016】
この発明の第2の局面による画像処理装置では、上記のように、学習済みの学習モデルによって、取得した医用画像の解像度を、高解像度機械学習用画像の解像度よりも高くする超解像処理を行う超解像処理部を備える。これにより、機械学習によって学習した学習モデルを用いて画像の解像度を向上させる際に、画質の劣化を抑制することが可能であるとともに、機械学習に用いた高解像度画像の解像度以上の画像を得ることが可能な画像処理装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記のように、機械学習によって学習した学習モデルを用いて画像の解像度を向上させる際に、画質の劣化を抑制することが可能であるとともに、機械学習に用いた高解像度画像の解像度以上の画像を得ることが可能な画像処理方法および画像処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態による画像処理装置の全体構成を示した模式図である。
図2】第1実施形態による画像処理方法を説明するための模式図である。
図3】第1実施形態による機械学習を行う機械学習装置の全体構成を示した模式図である。
図4】第1実施形態による低解像度機械学習用画像を取得するステップを説明するための模式図である。
図5】ぼかし処理による血管の境界部分位における輝度値の変化を説明するための模式図である。
図6】第1実施形態による超解像処理を説明するための模式図である。
図7】第1実施形態による超解像処理によって得られる超解像処理後の医用画像の模式図である。
図8】第1実施形態の画像処理方法による医用画像超解像処理を説明するためのフローチャートである。
図9】比較例における線形補間拡大処理による拡大処理後の医用画像の模式図である。
図10】第1実施例に用いた高解像度機械学習用画像、低解像度画像、および第1実施例で取得した低解像度機械学習用画像の図である。
図11】第1実施例に用いた医用画像、および第1実施例で取得した超解像処理後の医用画像の図である。
図12】第1実施例の比較例における線形補間拡大処理による拡大処理後の医用画像の模式図である。
図13】第2実施形態による画像処理方法を説明するための模式図である。
図14】高解像度機械学習用画像のノイズ除去処理を説明するための模式図である。
図15】第2実施形態の画像処理方法による医用画像超解像処理を説明するためのフローチャートである。
図16】第2実施例によるノイズ除去後の高解像度機械学習用画像の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1図7を参照して、本発明の第1実施形態による画像処理装置100の構成、第1実施形態の画像処理方法による超解像処理後の医用画像11を生成する方法について説明する。
【0021】
(画像処理装置の構成)
まず、図1を参照して、第1実施形態による画像処理装置100の構成について説明する。
【0022】
図1に示すように、画像処理装置100は、機械学習によって学習済みの学習モデルLMを用いて医用画像10に対して超解像処理を行う画像処理装置である。
【0023】
図1に示すように、画像処理装置100は、画像取得部1と、制御部2と、記憶部3と、超解像処理部4と、を備えている。
【0024】
画像取得部1は、制御部2の制御の下、医用画像10を取得するように構成されている。画像取得部1は、たとえば、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)、Display Port、USBポートなどの入出力インターフェースを含む。
【0025】
制御部2は、画像取得部1を制御して、医用画像10を取得させるように構成されている。また、制御部2は、記憶部3を制御して、取得した医用画像10を記憶するように構成されている。また、制御部2は、超解像処理部4を制御して、医用画像10に対して超解像処理を行わせるように構成されている。制御部2は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含む。
【0026】
記憶部3は、高解像度機械学習用画像12(図2参照)と、高解像度機械学習用画像12のスケールを小さくするとともに、スケールを小さくした高解像度機械学習用画像12に対してぼかし処理を行うことにより取得された低解像度機械学習用画像14(図2参照)とを用いて学習された学習済みの学習モデルLMを記憶するように構成されている。つまり、記憶部3は、予め機械学習により取得された学習モデルLMを記憶している。また、記憶部3は、取得した医用画像10、超解像処理部4が生成した超解像処理後の医用画像11を記憶するように構成されている。記憶部3は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)または不揮発性のメモリなどを含む。
【0027】
超解像処理部4は、制御部2の制御の下、学習済みの学習モデルLMによって、取得した医用画像10の解像度を、高解像度機械学習用画像12の解像度よりも高くする処理を行うように構成されている。超解像処理部4が医用画像10の解像度を、高解像度機械学習用画像12の解像度よりも高くする処理の詳細については、後述する。
【0028】
図1に示す例では、画像処理装置100は、生成した超解像処理後の医用画像11を外部の表示装置50に出力する。表示装置50は、たとえば、液晶モニタなどを含む。たとえば、画像処理装置100は、手術中において、超解像処理後の医用画像11をリアルタイムで表示装置50に出力するように構成されていてもよい。また、たとえば、超解像処理後の医用画像11を用いて診断を行う場合には、画像処理装置100は、診断を行う際に、超解像処理後の医用画像11を別途表示装置50に出力するように構成されていてもよい。
【0029】
(画像処理方法)
次に、図2図7を参照して、第1実施形態による画像処理方法によって、超解像処理後の医用画像11を生成する処理について説明する。
【0030】
図2は、第1実施形態による画像処理方法の処理の流れを示したブロック図である。図2に示すように、第1実施形態による画像処理方法は、大きく分けて、機械学習を行うステップMI1と、画像処理を行うステップIPとを含む。
【0031】
(学習モデル生成)
機械学習を行うステップMI1は、高解像度機械学習用画像12を取得するステップと、高解像度機械学習用画像12のスケールを小さくすることにより、低解像度画像13を取得するステップと、低解像度画像13に対してぼかし処理を行うことにより、低解像度機械学習用画像14を取得するステップと、高解像度機械学習用画像12と低解像度機械学習用画像14とを用いて学習モデルLMの機械学習を行うステップとを含む。
【0032】
低解像度機械学習用画像14を取得するステップは、低解像度画像13に対して、解像度の低下を伴わないぼかし処理を行うことにより、低解像度機械学習用画像14を取得する。具体的には、低解像度機械学習用画像14を取得するステップは、ぼかし処理として、低解像度画像13に対して、被写体(血管bv(図4参照))の境界部分bp(図4参照)の輝度値の変化をなだらかにする平滑化処理を行うことにより、低解像度機械学習用画像14を取得する。第1実施形態では、平滑化処理として、たとえば、ガウシアンフィルタを用いたフィルタ処理を行う。なお、血管bvの境界部分bpとは、血管bvと、背景との境界や、血管bvと他の血管bvとの境界を含む。
【0033】
画像処理を行うステップIPは、医用画像10を取得するステップと、学習済みの学習モデルLMによって、医用画像10の解像度を、高解像度機械学習用画像12の解像度よりも高くする超解像処理を行うステップとを含む。
【0034】
(機械学習装置)
図3は、第1実施形態による機械学習を行う機械学習装置200の模式図である。第1実施形態による画像処理方法において、機械学習を行うステップMI1は、機械学習装置200を用いて行うことができる。図3に示すように、機械学習装置200は、画像取得部20と、制御部21と、記憶部22と、画像処理部23と、機械学習部24とを備える。
【0035】
画像取得部20は、制御部21の制御の下、高解像度機械学習用画像12を取得する。画像取得部20は、たとえば、外部の通信ネットワークや情報処理装置から学習用画像を取得する通信インターフェースまたはUSBポートなどの入出力インターフェースを含む。
【0036】
制御部21は、画像取得部20を制御して、高解像度機械学習用画像12を取得するように構成されている。また、制御部21は、記憶部22を制御して、高解像度機械学習用画像12および画像処理部23が取得した低解像度機械学習用画像14を記憶するように構成されている。また、制御部21は、画像処理部23を制御して、低解像度機械学習用画像14を取得するように構成されている。また、制御部21は、機械学習部24を制御して、学習モデルLMの学習を行うように構成されている。制御部21は、たとえば、CPU、ROMおよびRAMなどを含む。
【0037】
記憶部22は、制御部21の制御の下、高解像度機械学習用画像12および画像処理部23が取得した低解像度機械学習用画像14を記憶するように構成されている。記憶部22は、たとえば、HDDまたは不揮発性のメモリなどを含む。
【0038】
画像処理部23は、制御部21の制御の下、高解像度機械学習用画像12に基づいて、低解像度機械学習用画像14を取得するように構成されている。画像処理部23が低解像度機械学習用画像14を取得する詳細な構成については、後述する。画像処理部23は、たとえば、GPU(Graphics Processing Unit)または画像処理用に構成されたFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプロセッサを含む。
【0039】
機械学習部24は、制御部21の制御の下、高解像度機械学習用画像12と低解像度機械学習用画像14とを用いて、学習モデルLMの機械学習を行うように構成されている。機械学習部24は、たとえば、GPUまたは機械学習用に構成されたFPGA、機械学習用に構成されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを含む。
【0040】
機械学習装置200は、いわゆるパーソナルコンピュータであり、第1実施形態では、学習済みの学習モデルLMを、画像処理装置100に出力するように構成されている。
【0041】
(機械学習に用いる学習用画像)
図4は、機械学習に用いる高解像度機械学習用画像12から、低解像度機械学習用画像14を取得する処理を説明するための模式図である。
【0042】
第1実施形態では、高解像度機械学習用画像12として、部分的な構造と全体の構造とが類似する自己相似性を有する構造が同一画像中に含まれる医用画像を用いる。具体的には、高解像度機械学習用画像12は、血管bvを撮像したX線画像である。第1実施形態では、高解像度機械学習用画像12として、脳の血管bvを撮像したX線画像を用いる。
【0043】
図4は、血管bvを写したX線画像の模式図である。ここで、血管は、自己相似性を有する構造として知られている。自己相似性を有する構造とは、たとえば、大動脈が分岐して各組織の動脈となり、各組織の動脈が分岐して細動脈となり、細動脈が分岐して毛細血管となるように、分岐して太さが異なる構造が繰り返し現れる構造のことである。すなわち、図4に示すように、高解像度機械学習用画像12において、円c3で示す分岐部分を拡大すると、円c2で示す分岐部分または円c1で示す分岐部分と類似する。また、円c2で示す分岐部分を拡大すると、円c1に示す分岐部分と類似する。また、円c2で示す分岐部分を縮小すると、円c3に示す分岐部分と類似する。円c1で示す分岐部分を縮小すると、円c2で示す分岐部分または円c3で示す分岐と類似する。このように、血管bvを写した高解像度機械学習用画像12には、同一の太さの血管bvのみではなく、太さの異なる複数の血管bvが1画像中に含まれる。
【0044】
(機械学習を行うステップ)
第1実施形態では、機械学習を行うステップは、以下のステップを含む。すなわち、機械学習を行うステップは、高解像度機械学習用画像12から、低解像度機械学習用画像14を取得するステップと、高解像度機械学習用画像12と低解像度機械学習用画像14とを用いて学習モデルLMの機械学習を行うステップと、を含む。
【0045】
図4に示すように、画像処理部23は、取得した高解像度機械学習用画像12のスケールを小さくすることにより、低解像度画像13を取得する。画像処理部23は、超解像処理を行った後の医用画像11のスケールと、高解像度機械学習用画像12のスケールとの比率と、高解像度機械学習用画像12のスケールと低解像度画像13のスケールとの比率とが等しくなるように、高解像度機械学習用画像12のスケールを小さくすることにより低解像度画像13を取得する。図4に示す例では、画像処理部23は、高解像度機械学習用画像12の解像度を半分にすることにより低解像度画像13を取得している。なお、図4に示す例では、血管bvを破線で図示することにより、ぼかし処理による画像のぼけを表現している。
【0046】
また、画像処理部23は、低解像度画像13に対してぼかし処理を行うことにより、低解像度機械学習用画像14を取得する。具体的には、画像処理部23は、低解像度画像13に対して、解像度の低下を伴わないぼかし処理を行うことにより、低解像度機械学習用画像14を取得する。また、画像処理部23は、ぼかし処理として、低解像度画像13に対して、血管bvの境界部分bpの輝度値の変化をなだらかにする平滑化処理を行うことにより、低解像度機械学習用画像14を取得する。第1実施形態では、画像処理部23は、超解像処理を行った後の医用画像11の血管bvの境界部分bpの輝度値の変化と、高解像度機械学習用画像12の血管bvの境界部分bpの輝度値の変化との差と、高解像度機械学習用画像12の血管bvの境界部分bpの輝度値の変化と低解像度機械学習用画像14の血管bvの境界部分bpの輝度値の変化との差が等しくなるように、低解像度画像13に対してぼかし処理を行うことにより、低解像度機械学習用画像14を取得する。
【0047】
図5は、高解像度機械学習用画像12中の円c4の領域における血管bvの輝度値の変化を示すグラフg1と、低解像度機械学習用画像14中の円c5の領域における血管bvの輝度値の変化を示すグラフg2との模式図である。
【0048】
高解像度機械学習用画像12では、解像度が高くかつ血管bvが鮮明に写っているため、血管bv輝度値は、境界部分bp1および境界部分bp2において輝度値がシャープに変化する。一方、低解像度機械学習用画像14では、高解像度機械学習用画像12のスケールを小さくした後に、ぼかし処理を行っているため、境界部分bp3および境界部分bp4における輝度値の変化がなだらかになっている。
【0049】
学習モデルLMの機械学習では、低解像度機械学習用画像14における血管bvの境界部分bpの輝度値の変化と、高解像度機械学習用画像12における血管bvの境界部分bpの輝度値の変化との差(輝度値の変化のシャープさの差)を学習する。機械学習後の学習モデルLMでは、低解像度機械学習用画像14における血管bvの境界部分bp(境界部分bp3およびbp4)の輝度値の変化と、高解像度機械学習用画像12における血管bvの境界部分bp(境界部分bp1およびbp2)の輝度値の変化との差に基づいて、医用画像10から高解像度機械学習用画像12よりも解像度の高い画像を取得する際に、画質が劣化することを抑制する。
【0050】
図6に示すグラフg3は、高解像度機械学習用画像12および低解像度機械学習用画像14に含まれる周波数成分(輝度変化の周期性)の分布を示すグラフの例である。高解像度機械学習用画像12には、領域AHRの周波数成分が含まれている。第1実施形態では、機械学習部24は、高解像度機械学習用画像12に対してスケール変換およびぼかし処理を行うことにより、領域ALRの周波数成分が含まれる低解像度機械学習用画像14を取得している。言い換えると、低解像度機械学習用画像14は、高解像度機械学習用画像12の領域AHRから高周波成分が失われた画像である。
【0051】
また、機械学習部24は、学習モデルLMの機械学習において、領域ALRの周波数成分から、領域AHRの周波数成分を推測することを学習モデルLMに学習させることになる。ここで、血管bvが写る高解像度機械学習用画像12では、大動脈、動脈、細動脈、毛細血管を、それぞれ同じ大きさまで拡大すると、同じような形状になる。したがって、高解像度機械学習用画像12は、各太さの血管bvを反映した類似した周波数パターンが低周波帯域から高周波帯域まで分布している情報を含んだ画像とみなすことができる。したがって、学習モデルLMに対して、領域ALRの周波数成分から、領域AHRの周波数成分を推測することを学習させることにより、領域AHRの周波数成分から、高解像度機械学習用画像12よりも高解像度にするために必要となる領域ASRの周波数成分(グラフg3における破線で示した部分)を推測することを学習モデルLMが学習する。
【0052】
第1実施形態では、超解像処理部4は、自己相似性を有する画像を高解像度機械学習用画像12と、高解像度機械学習用画像12のスケールを小さくした低解像度画像13に対してぼかし処理を行って取得した低解像度機械学習用画像14とを用いて学習済みの学習モデルLMによって、医用画像10の超解像処理を行う。
【0053】
(超解像処理を行うステップ)
第1実施形態では、画像処理装置100は、機械学習によって学習済みの学習モデルLMを用いて、医用画像10の解像度を高める超解像処理を行う。
【0054】
図7に示す例は、血管bvが写る医用画像10の模式図である。超解像処理部4は、医用画像10に対して、学習済みの学習モデルLMによって超解像処理を行うことにより、超解像処理後の医用画像11を取得する。図7に示す例では、超解像処理後の医用画像11の解像度が、医用画像10の解像度の2倍となるように超解像処理を行った例である。なお、図7に示す医用画像10の解像度は、高解像度機械学習用画像12(図4参照)の解像度と等しい解像度である。したがって、学習済みの学習モデルLMを用いて超解像処理を行うことにより、高解像度機械学習用画像12の解像度よりも高い解像度の医用画像11を取得することができる。
【0055】
(画像処理方法)
次に、図8を参照して、第1実施形態における医用画像10の超解像処理の流れについて説明する。なお、ステップS1~ステップS4における処理は、機械学習装置200が行う。また、ステップS5およびステップS6における処理は、画像処理装置100が行う。
【0056】
ステップS1において、機械学習装置200は、高解像度機械学習用画像12を取得する。次に、ステップS2において、画像処理部23は、高解像度機械学習用画像12のスケールを小さくすることにより、低解像度画像13を取得する。その後、処理は、ステップS3へ進む。
【0057】
ステップS3において、画像処理部23は、低解像度画像13に対してぼかし処理を行うことにより、低解像度機械学習用画像14を取得する。次に、ステップS4において、機械学習部24は、高解像度機械学習用画像12と低解像度機械学習用画像14とを用いて、学習モデルLMの機械学習を行う。その後、処理は、ステップS5へ進む。
【0058】
ステップS5において、画像処理装置100は、医用画像10を取得する。次に、ステップS6において、超解像処理部4は、学習済みの学習モデルLMを用いて医用画像10に対して超解像処理を行うことにより、超解像処理後の医用画像11を取得し、処理を終了する。
【0059】
(比較例)
次に、図7および図9を参照して、第1実施形態における超解像処理後の医用画像11(図7参照)と、医用画像10の解像度を大きくするとともに、拡大した拡大後の医用画像40(図9参照)とを比較する。
【0060】
図9に示す例は、医用画像10を拡大した拡大後の医用画像40の模式図である。比較例では、拡大処理として、線形補間拡大を行う。線形補間拡大とは、画像を拡大することにより生じる画素間の隙間に対して、拡大前の画像の隣接する画素を直線で結ぶことにより推定した画素値を与えることにより、拡大に伴う画質の劣化を抑制する方法である。
【0061】
拡大後の医用画像40では、単純に隣接する画素に基づいた画素値の補正を行っているため、血管bvがぼやけて写っている。一方、第1実施形態による超解像処理後の医用画像11では、拡大後の医用画像40と比較して、血管bvの境界部分bpが鮮明に映っている。なお、図9においても、血管bvを破線で図示することにより、血管bvのぼやけを表現している。
【0062】
(第1実施例)
次に、図10図12を参照して、第1実施例による医用画像10の超解像処理を行う学習モデルLMを取得した実験について説明する。
【0063】
第1実施例では、図10に示すように、高解像度機械学習用画像として、脳の血管を写した高解像度機械学習用画像12を用いた。また、第1実施例では、高解像度機械学習用画像12のスケールを小さくすることにより、低解像度画像13を取得した。取得した低解像度画像13に対してぼかし処理を行うことにより、低解像度機械学習用画像14を取得した。第1実施例では、ぼかし処理として、ガウシアンフィルタによる平滑化処理を行った。
【0064】
第1実施例では、高解像度機械学習用画像12および低解像度機械学習用画像14を用いて、学習モデルLMの機械学習を行うことにより、学習済みの学習モデルLMを取得した。なお、機械学習には、多数の高解像度機械学習用画像12および低解像度機械学習用画像14を用いた。
【0065】
第1実施例では、図11に示すように、取得した学習済みの学習モデルLMを用いて、医用画像10に対して超解像処理を行うことにより、超解像処理後の医用画像11を取得した。図11に示す例では、医用画像10および超解像処理後の医用画像において、画素の大きさが同一であるため、医用画像10の解像度よりも解像度が高い超解像処理後の医用画像11の大きさが、医用画像10よりも大きくなっている。
【0066】
図12は、医用画像10に対して、線形補間拡大によって拡大した拡大後の医用画像40の図である。超解像処理後の医用画像11と、線形補間拡大によって拡大した拡大後の医用画像40とは、同じ解像度の画像である。学習モデルLMを用いて、医用画像10に対して超解像処理を行うことにより、拡大後の医用画像40よりも画質の劣化が抑制された超解像処理後の医用画像11を取得することができた。学習済みの学習モデルLMを用いた超解像処理後の医用画像11の画質が、線形補間拡大によって拡大後の医用画像40よりも画質の劣化が抑制された要因としては、高解像度機械学習用画像12が、自己相似性を有する血管bvの画像であることと、低解像度画像13に対してぼかし処理を行うことにより取得した低解像度機械学習用画像14を用いて学習モデルの機械学習を行ったことが考えられる。すなわち、自己相似性を有する画像では、画像に含まれる周波数成分において、特定の周波数のピークが含まれず、なだらかな変化となり、高解像度機械学習用画像12に含まれる周波数成分と、低解像度機械学習用画像14に含まれる周波数成分とから、高解像度機械学習用画像12には含まれない高周波の周波数成分を学習モデルLMに学習させることができたためであると考えられる。
【0067】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0068】
第1実施形態では、上記のように、画像処理方法は、機械学習によって学習済みの学習モデルLMを用いて医用画像10に対して超解像処理を行う画像処理方法であって、高解像度機械学習用画像12を取得するステップS1と、高解像度機械学習用画像12のスケールを小さくすることにより、低解像度画像13を取得するステップS2と、低解像度画像13に対してぼかし処理を行うことにより、低解像度機械学習用画像14を取得するステップS3と、高解像度機械学習用画像12と、低解像度機械学習用画像14とを用いて学習モデルLMの機械学習を行うステップS4と、医用画像10を取得するステップS5と、学習済みの学習モデルLMによって、医用画像10の解像度を、高解像度機械学習用画像12の解像度よりも高くする超解像処理を行うステップS6と、を含む。これにより、高解像度機械学習用画像12と、低解像度画像13にぼかし処理を行った低解像度機械学習用画像14とを用いて、学習させた学習モデルLMを用いて超解像処理を行うことにより、超解像処理後の医用画像11の画質が劣化すること抑制することができる。その結果、機械学習によって学習した学習モデルLMを用いて画像の解像度を向上させる際に、画質の劣化を抑制することが可能であるとともに、機械学習に用いた高解像度機械学習用画像12の解像度以上の画像を得ることができる。
【0069】
また、第1実施形態では、上記のように、低解像度機械学習用画像14を取得するステップS3は、低解像度画像13に対して、解像度の低下を伴わないぼかし処理を行うことにより、低解像度機械学習用画像14を取得する。これにより、高解像度機械学習用画像12の解像度と、低解像度画像13の解像度とに基づいて、超解像処理における解像度の向上を学習モデルLMに学習させることができる。また、高解像度機械学習用画像12の画質と、ぼかし処理を行ことにより低下した低解像度機械学習用画像14の画質とに基づいて、超解像処理における画質の劣化を抑制することを学習モデルLMに学習させることができる。その結果、高解像度機械学習用画像12と低解像度機械学習用画像14とを用いて機械学習を行った学習モデルLMによって超解像処理を行うことにより、超解像処理後の医用画像11の解像度を高めることが可能であるとともに、超解像処理後の医用画像11の画質が劣化することを抑制することができる。
【0070】
また、第1実施形態では、上記のように、低解像度機械学習用画像14を取得するステップS3は、ぼかし処理として、低解像度画像13に対して、血管bvの境界部分bpの輝度値の変化をなだらかにする平滑化処理を行うことにより、低解像度機械学習用画像14を取得する。これにより、高解像度機械学習用画像12の血管bvの境界部分bp(境界部分bp1およびbp2)の輝度値の変化と、低解像度機械学習用画像14の血管bvの境界部分bp(境界部分bp3およびbp4)の輝度値の変化との差異を学習モデルLMに学習させることができる。したがって、高解像度機械学習用画像12における血管bvの境界部分bp(境界部分bp1およびbp2)の輝度値の変化と、低解像度機械学習用画像14における血管bvの境界部分bp(境界部分bp3およびbp4)の輝度値の変化との差異を学習した学習モデルLMを用いて超解像処理を行うことができる。その結果、医用画像10の超解像処理を行う際に、超解像処理後の医用画像11の画質が劣化することを抑制することができる。
【0071】
また、第1実施形態では、上記のように、高解像度機械学習用画像12は、部分的な構造と全体の構造とが類似する自己相似性を有する構造が同一画像中に含まれる医用画像10である。このような自己相似性を有する構造が同一画像中に含まれる医用画像10を用いて機械学習を行うことにより得られた学習モデルLMによって超解像処理を行うことにより、超解像処理後の医用画像11の画質が劣化することを抑制することが可能であるとともに、超解像処理後の医用画像11の解像度を、高解像度機械学習用画像12の解像度よりも高くすることができるという知見を得た。
【0072】
また、第1実施形態では、上記のように、高解像度機械学習用画像12は、血管bvを撮像したX線画像である。これにより、血管bvの自己相似性に基づいて、学習モデルLMの学習を行うことができる。その結果、血管bvを撮像したX線画像(医用画像10)の解像度を、高解像度機械学習用画像12の解像度よりも高くすることができる。
【0073】
また、第1実施形態では、上記のように、画像処理装置100は、機械学習によって学習済みの学習モデルLMを用いて医用画像10に対して超解像処理を行う画像処理装置であって、高解像度機械学習用画像12と、高解像度機械学習用画像12のスケールを小さくするとともに、スケールを小さくした高解像度機械学習用画像12に対してぼかし処理を行うことにより取得された低解像度機械学習用画像14とを用いて学習された学習済みの学習モデルLMを記憶する記憶部3と、学習済みの学習モデルLMによって、取得した医用画像10の解像度を、高解像度機械学習用画像12の解像度よりも高くする超解像処理を行う超解像処理部4と、を備える。これにより、機械学習によって学習した学習モデルLMを用いて画像の解像度を向上させる際に、機械学習に用いた高解像度機械学習用画像12の解像度以上の画像を得ることが可能な画像処理装置100を提供することができる。
【0074】
[第2実施形態]
次に、図3図13および図14を参照して、第2実施形態による画像処理方法について説明する。高解像度機械学習用画像12と低解像度機械学習用画像14とを用いて学習モデルLMの機械学習を行う第1実施形態とは異なり、第2実施形態では、機械学習装置300(図3参照)における機械学習を行うステップMI2(図13参照)は、高解像度機械学習用画像12にノイズが含まれている場合に、高解像度機械学習用画像12のノイズを除去するステップを含む。なお、上記第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。
【0075】
図13に示すように、第2実施形態では、高解像度機械学習用画像12にノイズが含まれている場合に、高解像度機械学習用画像12のノイズを除去するステップをさらに含み、学習モデルLMの機械学習を行うステップは、低解像度機械学習用画像14と、ノイズが除去された高解像度機械学習用画像15とを用いて、学習モデルLMの機械学習を行う。
【0076】
図14は、ノイズを含む高解像度機械学習用画像12の模式図およびノイズ除去後の高解像度機械学習用画像15の模式図である。なお、図14に示す例では、高解像度機械学習用画像12に対してハッチングを付すことにより、ノイズを図示している。
【0077】
第2実施形態では、画像処理部30(図3参照)は、高解像度機械学習用画像12に対してノイズ除去処理を行うことにより、ノイズ除去後の高解像度機械学習用画像15を取得する。機械学習部24は、取得したノイズ除去後の高解像度機械学習用画像15および低解像度機械学習用画像14を用いて、学習モデルLMの機械学習を行う。超解像処理部4は、学習済みの学習モデルLMを用いて、医用画像10の超解像処理を行う。
【0078】
次に、図15を参照して、第2実施形態による医用画像10の超解像処理の流れについて説明する。なお、第1実施形態と同様のステップの説明については省略する。
【0079】
ステップS1~ステップS3において、機械学習装置200は、高解像度機械学習用画像12および低解像度機械学習用画像14を取得する。その後、処理は、ステップS7に進む。
【0080】
ステップS7において、制御部21は、高解像度機械学習用画像12にノイズが含まれているか否かを判定する。制御部21は、たとえば、高解像度機械学習用画像12のS/N比に基づいて、高解像度機械学習用画像12にノイズが含まれているか否かを判定する。高解像度機械学習用画像12にノイズが含まれている場合には、処理は、ステップS8に進む。高解像度機械学習用画像12にノイズが含まれていない場合には、処理はステップS4~ステップS6へ進み、超解像処理部4は、医用画像10に対して超解像処理を行い、処理を終了する。
【0081】
ステップS8において、画像処理部30は、高解像度機械学習用画像12のノイズを除去する。次に、ステップS9において、機械学習部24は、ノイズ除去後の高解像度機械学習用画像15および低解像度機械学習用画像14を用いて、学習モデルLMの機械学習を行う。その後、処理は、ステップS5およびステップS6へ進み、超解像処理部4は、医用画像10に対して超解像処理を行い、処理を終了する。
【0082】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0083】
(第2実施例)
次に、図16を参照して、第2実施例による実験について説明する。
【0084】
第2実施例では、図16に示すように、ノイズが含まれる高解像度機械学習用画像12に対して、ノイズ除去処理を行うことにより、ノイズ除去後の高解像度機械学習用画像15を取得した。ノイズ除去後の高解像度機械学習用画像15を用いて機械学習を行った学習モデルLMによって医用画像10の超解像処理を行うことにより、高解像度機械学習用画像12に含まれるノイズの影響が、超解像処理後の医用画像11に生じることを抑制することができた。
【0085】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0086】
第2実施形態では、上記のように、高解像度機械学習用画像12にノイズが含まれている場合に、高解像度機械学習用画像12のノイズを除去するステップS8をさらに含み、学習モデルLMの機械学習を行うステップS9は、低解像度機械学習用画像14と、ノイズが除去された高解像度機械学習用画像12とを用いて、学習モデルLMの機械学習を行う。これにより、高解像度機械学習用画像12からノイズを除去することが可能となるので、機械学習によって学習モデルLMを学習する際に、高解像度機械学習用画像12に含まれるノイズを学習することを抑制することができる。その結果、超解度処理を行う際に、高解像度機械学習用画像12のノイズに起因するノイズが、超解像処理後の医用画像11に含まれることを抑制することができる。
【0087】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0088】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0089】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、機械学習のステップと、超解像処理のステップとをそれぞれ異なる装置で行う例を示したが、本発明はこれに限られない。機械学習を行うステップと、超解像処理を行うステップとは、同一の装置で行ってもよい。
【0090】
また、上記第1および第2実施形態では、画像処理部23(画像処理部30)が、平滑化処理として、たとえば、ガウシアンフィルタを用いたフィルタ処理を行う構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。ぼかし処理として、平均化フィルタを用いてもよい。血管bv(被写体)の境界部分bpの輝度値の変化をなだらかにすることができれば、画像処理部23(画像処理部30)は、どのような処理を行ってもよい。
【0091】
また、上記第1および第2実施形態では、高解像度機械学習用画像12として、脳の血管bvを撮像した画像を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。高解像度機械学習用画像12としては、脳以外の血管bvを撮像した画像を用いてもよい。また、自己相似性を有する画像であれば、血管bv以外を撮像した画像を用いてもよい。
【0092】
また、上記第1および第2実施形態では、超解像処理部4が取得した超解像処理後の医用画像11を、表示装置50に出力する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、画像処理装置100は、取得した超解像処理後の医用画像11を、記憶部3に記憶するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0093】
10 医用画像
12 高解像度機械学習用画像
13 低解像度画像
14 低解像度機械学習用画像
bp1、bp2、bp3、bp4、bp 被写体の境界部分
bv 血管
LM 学習モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16