(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板を備える実装基板並びに配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20231219BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20231219BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/46 Q
H05K1/02 J
H01L23/12 Q
(21)【出願番号】P 2022079826
(22)【出願日】2022-05-13
(62)【分割の表示】P 2017218598の分割
【原出願日】2017-11-13
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】倉持 悟
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/143138(WO,A1)
【文献】特開平08-046357(JP,A)
【文献】特開2005-191243(JP,A)
【文献】特開平05-198948(JP,A)
【文献】特開平03-253096(JP,A)
【文献】国際公開第2013/168761(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/094489(WO,A1)
【文献】国際公開第03/007379(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/146904(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 1/02
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び前記第1面とは反対側に位置する第2面を有し、無機材料を含む基板と、
前記基板の前記第1面側に位置する第1面第1導電層及び第1面第1有機層と、前記第1面第1有機層上に位置する第1面第2導電層
及び第1面第2有機層と、を少なくとも含む第1配線構造部と、
前記第1面第1有機層の外縁と前記基板の前記第1面との間に位置し、金属材料を含む第1面第1下地層と、
前記第1面第2有機層の外縁と前記第1面第1有機層の上面との間に位置し、金属材料を含む第1面第2下地層と、を備え、
前記第1面第2導電層は、前記第1配線構造部に形成されるキャパシタの一部を構成しており、
前記第1面第1下地層が、前記第1面第1有機層の外縁を囲むように一周にわたって連続的に延びている、若しくは、複数の前記第1面第1下地層が、前記第1面第1有機層の外縁に沿って離散的に並んで
おり、
前記第1面第2下地層が、前記第1面第2有機層の外縁を囲むように一周にわたって連続的に延びている、若しくは、複数の前記第1面第2下地層が、前記第1面第2有機層の外縁に沿って離散的に並んでおり、
前記第1面第1下地層の下面と前記基板の前記第1面との間に隙間が存在し、前記隙間に前記第1面第1有機層が位置している、配線基板。
【請求項2】
前記第1面第1有機層の外縁が延びる外縁方向における前記第1面第1下地層の寸法が、100μm以上である、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記第1面第1有機層の外縁が延びる外縁方向に直交する方向における、前記第1面第1下地層のうち前記第1面第1有機層と重なる部分の寸法が、50μm以上且つ1mm以下である、請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記第1面第1有機層の外縁が延びる外縁方向に直交する方向における、前記第1面第1下地層のうち前記第1面第1有機層から露出した部分の寸法が、50μm以上且つ1mm以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項5】
前記第1面第1有機層の外縁の全長に対する、前記第1面第1有機層の外縁のうち前記第1面第1下地層と重なっている部分の長さの比率が、50%以上である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項6】
前記第1面第1有機層の厚みに対する前記第1面第1下地層の厚みの比率が、50%以上である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項7】
前記第1面第1有機層の外縁は、複数の辺を含む多角形の輪郭を有し、
複数の前記第1面第1下地層が、前記第1面第1有機層の少なくとも1つの前記辺に沿って離散的に並んでいる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項8】
前記第1面第1有機層の2つの前記辺が接続される隅部が、50μm以上の曲率半径で湾曲した形状を有する、請求項7に記載の配線基板。
【請求項9】
前記第1面第1有機層は、少なくとも部分的に前記第1面第1導電層を覆っている、請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項10】
前記第1面第1有機層は、前記第1面第1導電層と前記基板の前記第1面との間に位置している、請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項11】
前記第1面第1下地層は、前記基板の外縁よりも内側に位置する、請求項1乃至
10のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項12】
前記第1面第1下地層が、金属材料を含む複数の層を有する、請求項1乃至
11のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項13】
前記基板が、ガラスを含む、請求項1乃至
12のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項14】
前記基板には貫通孔が設けられており、
前記配線基板は、前記貫通孔に位置し、前記第1面第1導電層に電気的に接続された貫通電極を更に備える、請求項1乃至
13のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項15】
前記基板の前記第2面に位置する第2面第1導電層及び第2面第1有機層を少なくとも含む第2配線構造部と、
前記第2面第1有機層の外縁と前記基板の前記第2面との間に位置し、金属材料を含む第2面第1下地層と、を更に備える、請求項1乃至
14のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項16】
請求項1乃至
15のいずれか一項に記載の配線基板と、
前記配線基板に搭載された素子と、を備える、実装基板。
【請求項17】
第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基板を準備する工程と、
金属材料を含む第1面第1下地層を前記基板の前記第1面に形成する工程と、
前記基板の前記第1面に部分的に接する第1面第1有機層を、前記第1面第1有機層の外縁が少なくとも部分的に前記第1面第1下地層上に位置するように形成する工程と、
前記第1面第1有機層上に第1面第2導電層
、第1面第2下地層及び第1面第2有機層を形成する工程と、
前記第1面第1有機層を形成する前に、又は前記第1面第1有機層を形成した後に、第1面第1導電層を形成する工程と、を備え、
前記第1面第1導電層、前記第1面第1有機層及び前記第1面第2導電層を少なくとも含む第1配線構造部にはキャパシタが形成されており、
前記第1面第2導電層は、前記第1配線構造部に形成されるキャパシタの一部を構成しており、
前記第1面第1下地層が、前記第1面第1有機層の外縁を囲むように一周にわたって連続的に延びている、若しくは、複数の前記第1面第1下地層が、前記第1面第1有機層の外縁に沿って離散的に並んで
おり、
第1面第2下地層は、金属材料を含んでおり、
前記第1面第2下地層が、前記第1面第2有機層の外縁を囲むように一周にわたって連続的に延びている、若しくは、複数の前記第1面第2下地層が、前記第1面第2有機層の外縁に沿って離散的に並んでおり、
前記第1面第1下地層の下面と前記基板の前記第1面との間に隙間が存在し、前記隙間に前記第1面第1有機層が位置している、配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、基板の第1面に位置する第1面第1導電層及び第1面第1有機層を少なくとも含む第1配線構造部を備える配線基板に関する。また、本開示の実施形態は、配線基板を備える実装基板、及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスやシリコンなどの無機材料を含む基板と、基板に積層された導電層及び有機層とを備える配線基板が知られている。例えば特許文献1は、基板の貫通孔に位置する貫通電極を更に備えた配線基板、いわゆるインターポーザを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配線基板において、有機層は、導電層を覆って保護するという役割を果たしている。ところで、無機材料を含む基板に対する有機層の密着性は一般に、基板に対する導電層の密着性よりも低い。このため、有機層の外縁が基板に直接的に接している場合、有機層の外縁が基板から剥がれ、有機層と基板との間に隙間が形成され易い。
【0005】
本開示の実施形態は、このような課題を効果的に解決し得る配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態は、第1面及び前記第1面とは反対側に位置する第2面を有し、無機材料を含む基板と、前記基板の前記第1面に位置する第1面第1導電層及び第1面第1有機層を少なくとも含む第1配線構造部と、前記第1面第1有機層の外縁と前記基板の前記第1面との間に位置し、金属材料を含む第1面第1下地層と、を備える、配線基板である。
【0007】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第1面第1有機層の外縁が延びる外縁方向における前記第1面第1下地層の寸法が、好ましくは100μm以上である。
【0008】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記外縁方向に直交する方向における、前記第1面第1下地層のうち前記第1面第1有機層と重なる部分の寸法が、好ましくは50μm以上且つ1mm以下である。
【0009】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記外縁方向に直交する方向における、前記第1面第1下地層のうち前記第1面第1有機層から露出した部分の寸法が、好ましくは50μm以上且つ1mm以下である。
【0010】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第1面第1有機層の外縁の全長に対する、前記第1面第1有機層の外縁のうち前記第1面第1下地層と重なっている部分の長さの比率が、好ましくは50%以上である。
【0011】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第1面第1有機層の厚みに対する前記第1面第1下地層の厚みの比率が、好ましくは50%以上である。
【0012】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第1面第1有機層の外縁は、複数の辺を含む多角形の輪郭を有し、複数の前記第1面第1下地層が、前記第1面第1有機層の少なくとも1つの前記辺に沿って離散的に並んでいてもよい。
【0013】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第1面第1有機層の2つの前記辺が接続される隅部が、好ましくは50μm以上の曲率半径で湾曲した形状を有する。
【0014】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第1面第1下地層の下面と前記基板の前記第1面との間に隙間が存在し、前記隙間に前記第1面第1有機層が位置していてもよい。
【0015】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第1面第1有機層は、少なくとも部分的に前記第1面第1導電層を覆っていてもよい。
【0016】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第1面第1有機層は、前記第1面第1導電層と前記基板の前記第1面との間に位置していてもよい。
【0017】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第1面第1下地層は、前記基板の外縁よりも内側に位置していてもよい。
【0018】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第1面第1下地層が、金属材料を含む複数の層を有していてもよい。
【0019】
本開示の一実施形態による配線基板は、前記第1面第1有機層上に位置する第1面第2有機層と、前記第1面第2有機層の外縁と前記第1面第1有機層の上面との間に位置し、金属材料を含む第1面第2下地層と、を更に備えていてもよい。
【0020】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記基板が、ガラスを含んでいてもよい。
【0021】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記基板には貫通孔が設けられており、前記配線基板は、前記貫通孔に位置し、前記第1面第1導電層に電気的に接続された貫通電極を更に備えていてもよい。
【0022】
本開示の一実施形態による配線基板は、前記基板の前記第2面に位置する第2面第1導電層及び第2面第1有機層を少なくとも含む第2配線構造部と、前記第2面第1有機層の外縁と前記基板の前記第2面との間に位置し、金属材料を含む第2面第1下地層と、を更に備えていてもよい。
【0023】
本開示の一実施形態は、上記記載の配線基板と、前記配線基板に搭載された素子と、を備える、実装基板である。
【0024】
本開示の一実施形態は、第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基板を準備する工程と、金属材料を含む第1面第1下地層を前記基板の前記第1面に形成する工程と、前記基板の前記第1面に部分的に接する第1面第1有機層を、前記第1面第1有機層の外縁が少なくとも部分的に前記第1面第1下地層上に位置するように形成する工程と、前記第1面第1有機層を形成する前に、又は前記第1面第1有機層を形成した後に、第1面第1導電層を形成する工程と、を備える、配線基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0025】
本開示の実施形態によれば、有機層が剥離してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】一実施形態に係る配線基板を示す平面図である。
【
図2】
図1の配線基板をII-II方向から見た断面図である。
【
図3】
図2の配線基板の貫通電極を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図2の配線基板の第1枠体を拡大して示す断面図である。
【
図9A】配線基板の一製造工程を示す断面図である。
【
図10A】配線基板の一製造工程を示す断面図である。
【
図11】配線基板の一製造工程を示す断面図である。
【
図12】配線基板の一製造工程を示す断面図である。
【
図13】配線基板の一製造工程を示す断面図である。
【
図14】配線基板の一製造工程を示す平面図である。
【
図15】第1の変形例に係る配線基板を示す断面図である。
【
図16】第2の変形例に係る配線基板を示す平面図である。
【
図17】配線基板及び素子を備える実装基板の一例を示す平面図である。
【
図18】配線基板が搭載される製品の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の実施形態に係る配線基板の構成及びその製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は本開示の実施形態の一例であって、本開示はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本明細書において、「基板」、「基材」、「シート」や「フィルム」など用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「基板」や「基材」は、シートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。更に、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」や「直交」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0028】
配線基板
以下、本開示の実施の形態について説明する。まず、本実施の形態に係る配線基板10の構成について説明する。
図1は、配線基板10を示す平面図である。また、
図2は、
図1の配線基板10をII-II方向から見た断面図である。
【0029】
配線基板10は、基板12、貫通電極22、第1配線構造部30、第1枠体37、第2配線構造部40及び第2枠体47を備える。以下、配線基板10の各構成要素について説明する。
【0030】
(基板)
基板12は、第1面13、及び、第1面13の反対側に位置する第2面14を含む。また、基板12には、第1面13から第2面14に至る複数の貫通孔20が設けられている。
【0031】
基板12は、一定の絶縁性を有する無機材料を含んでいる。例えば、基板12は、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、樹脂基板、シリコン基板、炭化シリコン基板、アルミナ(Al2O3)基板、窒化アルミ(AlN)基板、酸化ジリコニア(ZrO2)基板など、又は、これらの基板が積層されたものである。基板12は、アルミニウム基板、ステンレス基板など、導電性を有する材料から構成された基板を部分的に含んでいてもよい。
【0032】
基板12で用いるガラスの例としては、無アルカリガラスなどを挙げることができる。
無アルカリガラスとは、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ成分を含まないガラスである。無アルカリガラスは、例えば、アルカリ成分の代わりにホウ酸を含む。また、無アルカリガラスは、例えば、酸化カルシウムや酸化バリウムなどのアルカリ土類金属酸化物を含む。無アルカリガラスの例としては、旭硝子製のEN-A1や、コーニング製のイーグルXGなどを挙げることができる。基板12がガラスを含む場合、基板12の厚みTは、例えば0.25mm以上且つ0.45mm以下である。基板12がガラスを含むことにより、基板12がシリコンからなる場合に比べて、基板12の絶縁性を高めることができる。
【0033】
図2において、符号S1は、貫通孔20が第1面13と接続される位置における貫通孔20の幅を表す。幅S1は、例えば40μm以上且つ150μm以下である。また、貫通孔20の幅S1に対する貫通孔20の長さの比、すなわち貫通孔20のアスペクト比は、例えば4以上且つ10以下である。
【0034】
基板12に形成された貫通孔20は、少なくとも部分的に、基板12の第1面13から第2面14に向かうにつれて幅が小さくなる形状を有していてもよい。
図2に示す例において、貫通孔20は、基板12の第1面13及び第2面14から基板12の厚み方向における中央部分に向かうにつれて幅が小さくなる形状を有している。この結果、貫通孔20の幅は、
図2において符号S2で示すように、基板12の厚み方向における中央部分で最小になる。なお「中央部分」とは、基板12の厚み方向における中間位置、並びに、中間位置から第1面13側へ0.1×Tまでの範囲、及び中間位置から第2面14側へ0.1×Tまでの範囲を含む。符号Tは、上述のように基板12の厚みを表す。
【0035】
なお、貫通孔20の断面形状が
図2の形状に限られることはない。例えば、図示はしないが、貫通孔20の幅は、第1面13側から第2面14側に向かうにつれて小さくなっていてもよい。
【0036】
(貫通電極)
図3は、貫通孔20に設けられた貫通電極22を拡大して示す断面図である。貫通電極22は、貫通孔20の内部に少なくとも部分的に位置し、且つ導電性を有する部材である。本実施の形態において、貫通電極22の厚みは、貫通孔20の幅よりも小さく、このため、貫通孔20の内部には、貫通電極22が存在しない空間がある。すなわち、貫通電極22は、いわゆるコンフォーマルビアである。貫通電極22の厚みは、例えば5μm以上且つ22μm以下である。
【0037】
貫通電極22が導電性を有する限りにおいて、貫通電極22の形成方法は特には限定されない。例えば、貫通電極22は、蒸着法やスパッタリング法などの物理成膜法で形成されていてもよく、化学成膜法やめっき法で形成されていてもよい。また、貫通電極22は、導電性を有する単一の層から構成されていてもよく、若しくは、導電性を有する複数の層を含んでいてもよい。ここでは、
図3に示すように、貫通電極22が第1層221及び第2層222を有する例について説明する。第1層221及び第2層222はそれぞれ、金属材料を含む。
【0038】
第1層221は、貫通孔20の側壁21上に少なくとも部分的に位置し、導電性を有する層である。第1層221は、スパッタリング法や蒸着法などの物理成膜法や、ゾルゲル法などによって側壁21上に形成される。好ましくは、第1層221は、スパッタリング法によって側壁21上に形成される。これによって、側壁21に対して第1層221を強固に密着させることができる。第1層221の厚みは、例えば0.05μm以上且つ1.0μm以下である。なお、第1層221と貫通孔20の側壁21との間に、その他の層が設けられていてもよい。
【0039】
物理成膜法によって第1層221を形成する場合、第1層221を構成する材料としては、チタン、クロム、ニッケル、銅などの金属又はこれらを用いた合金など、あるいはこれらを積層したものを使用することができる。また、ゾルゲル法によって第1層221を形成する場合、第1層221を構成する材料としては、酸化亜鉛などを用いることができる。なお、第1層221は、ゾルゲル法によって形成されたゾルゲル層に加えて、無電解めっき法によってゾルゲル層上に形成された銅などの金属を含む無電解めっき層を更に有していてもよい。
【0040】
第2層222は、第1層221上に位置し、導電性を有する層である。第2層222は、例えば主成分としての銅を含み、より具体的には80質量%以上の銅を含む。また、第2層222は、金、銀、白金、ロジウム、スズ、アルミニウム、ニッケル、クロムなどの金属又はこれらを用いた合金を含んでいてもよい。第2層222は、電解めっき法によって第1層221上に形成される。第2層222の組成を分析する方法としては、例えばTEM(透過型電子顕微鏡)またはEDS(エネルギー分散型X線分光器)を採用することができる。第2層222の厚みは、例えば5μm以上且つ20μm以下である。なお、第1層221と第2層222との間に、その他の導電層が設けられていてもよい。
【0041】
図示はしないが、配線基板10は、貫通電極22よりも貫通孔20の中心側に位置する有機層を備えていてもよい。なお、「中心側」とは、貫通孔20の内部において、有機層と側壁21との間の距離が貫通電極22と側壁21との間の距離よりも大きいことを意味する。有機層は、後述する第1面第1有機層32などと同様に、好ましくは0.003以下、より好ましくは0.002以下、更に好ましくは0.001以下の誘電正接を有する有機材料を含む。
【0042】
また、図示はしないが、貫通電極22は、貫通孔20に充填されたフィルドビアであってもよい。この場合、貫通電極22は、第1面13の面方向において少なくとも部分的に貫通孔20の中心点にまで広がっている。
【0043】
(第1配線構造部)
次に、第1配線構造部30について説明する。第1配線構造部30は、基板12の第1面13側に電気的な回路を構成するよう第1面13側に設けられた導電層や有機層などの層を有する。本実施の形態において、第1配線構造部30は、第1面第1導電層31、第1面第1有機層32、第1面第2導電層33、第1面第2有機層34及び第1面第3導電層35を有する。
【0044】
〔第1面第1導電層〕
第1面第1導電層31は、基板12の第1面13側に位置する、導電性を有する金属材料を含む層である。本実施の形態において、第1面第1導電層31は、基板12の第1面13に直接的に接している。第1面第1導電層31は、貫通電極22に電気的に接続されていてもよい。また、第1面第1導電層31は、導電性を有する単一の層から構成されていてもよく、若しくは、導電性を有する複数の層を含んでいてもよい。例えば、第1面第1導電層31は、貫通電極22と同様に、基板12の第1面13上に順に積層された第1層221及び第2層222を含んでいてもよい。また、第1面第1導電層31は、第1層221及び第2層222のうちの一部の導電層のみを含んでいてもよい。第1面第1導電層31を構成する材料は、貫通電極22を構成する材料と同様である。第1面第1導電層31の厚みは、例えば100nm以上且つ20μm以下であり、5μm以上且つ20μm以下であってもよい。
【0045】
〔第1面第1有機層〕
第1面第1有機層32は、基板12の第1面13側に位置し、有機材料を含み、且つ絶縁性を有する層である。本実施の形態において、第1面第1有機層32は、第1面第1導電層31の上面を部分的に覆うよう配置されている。例えば
図1及び
図2に示すように、第1面第1有機層32は、基板12の外縁に近接する領域を除いて、基板12の第1面13のほぼ全域にわたって設けられている。例えば、基板12が、複数の辺を含む矩形などの多角形の輪郭を有する場合、第1面第1有機層32も同様に矩形などの多角形の輪郭を有している。また、
図2に示すように、第1面第1有機層32の一部には、第1面第1導電層31上に位置する開口部が形成されている。
【0046】
なお、「上面」とは、基板12に積層される層の面のうち、基板12から遠い側に位置する面を意味する。また、「下面」とは、基板12に積層される層の面のうち、基板12に近い側に位置する面であり、且つ、基板12側から基板12の第1面13の法線方向に沿って層を見た場合に視認される面を意味する。また、「側面」とは、下面から上面に至るよう広がる面を意味する。
【0047】
第1面第1有機層32の有機材料としては、ポリイミド、エポキシなどを用いることができる。第1面第1有機層32の有機材料は、好ましくは0.003以下、より好ましくは0.002以下、更に好ましくは0.001以下の誘電正接を有する。誘電正接の小さい有機材料を用いて第1面第1有機層32を構成することにより、後述するインダクタ16などを通るべき電気信号が第1面第1有機層32を通ってしまうことを抑制することができる。これにより、インダクタなどの部品が設けられた配線基板10の帯域を高周波側に広げることができる。
【0048】
ところで、無機材料を含む基板12に対する、有機材料を含む第1面第1有機層32の密着性は、一般に低い。このため、第1面第1有機層32の下面が直接的に基板12の第1面13に接する場合、第1面第1有機層32が基板12の第1面13から剥離し易い。
剥離は、特に第1面第1有機層32の外縁において発生し易い。このような課題を解決するため、本実施の形態においては、第1面第1有機層32の外縁と基板12の第1面13との間に、金属材料を含む第1面第1下地層371を設けることを提案する。第1面第1下地層371については後に詳細に説明する。なお本明細書において「第1面第1有機層32の外縁」とは、基板12の第1面13の法線方向に沿って第1面第1有機層32を見た場合に第1面第1有機層32の外形を規定している縁部のことである。基板12の外縁、第1面第2有機層34の外縁なども同様である。
【0049】
第1面第1有機層32の外縁が多角形の輪郭を有する場合、好ましくは、
図1に示すように、第1面第1有機層32の外縁の2つの辺が接続される隅部32cが湾曲した形状を有する。これにより、隅部32cに応力などの力が集中することを抑制することができ、隅部32cが基板12の第1面13から剥離することを抑制することができる。隅部32cの曲率半径は、好ましくは50μm以上である。
【0050】
〔第1面第2導電層〕
第1面第2導電層33は、第1面第1有機層32などの有機層の上に位置する、導電性を有する金属材料を含む層である。第1面第2導電層33は、例えば、第1面第1有機層32上を延びる配線を構成する。図示はしないが、第1面第2導電層33は、貫通電極22、第1面第1導電層31、第1面第3導電層35などに電気的に接続されていてもよい。また、第1面第2導電層33は、第1配線構造部30に形成されるキャパシタやインダクタなどの部品の一部を構成していてもよい。
【0051】
第1面第2導電層33は、貫通電極22や第1面第1導電層31と同様に、積層された第1層221及び第2層222などの複数の導電層を含んでいてもよい。第1面第2導電層33を構成する材料は、貫通電極22や第1面第1導電層31を構成する材料と同様である。第1面第2導電層33の厚みは、例えば100nm以上且つ20μm以下である。
【0052】
〔第1面第2有機層〕
第1面第2有機層34は、第1面13側に位置し、有機材料を含み、且つ絶縁性を有する層である。本実施の形態において、第1面第2有機層34は、第1面第1有機層32上に位置する第1面第2導電層33の上面を部分的に覆うよう配置されている。例えば
図1及び
図2に示すように、第1面第2有機層34は、第1面第1有機層32の外縁に近接する領域を除いて、第1面第1有機層32上面のほぼ全域にわたって設けられている。例えば、第1面第1有機層32が、複数の辺を含む矩形などの多角形の輪郭を有する場合、第1面第2有機層34も同様に矩形などの多角形の輪郭を有している。また、
図2に示すように、第1面第2有機層34の一部には、第1面第1導電層31上に位置する開口部が形成されていてもよい。
【0053】
第1面第2有機層34の有機材料としては、第1面第1有機層32の場合と同様に、ポリイミド、エポキシなどを用いることができる。第1面第2有機層34の有機材料は、好ましくは0.003以下、より好ましくは0.002以下、更に好ましくは0.001以下の誘電正接を有する。
【0054】
第1面第2有機層34の外縁が多角形の輪郭を有する場合、好ましくは、第1面第1有機層32の場合と同様に、第1面第2有機層34の外縁の2つの辺が接続される隅部34cが湾曲した形状を有する。隅部34cの曲率半径は、好ましくは50μm以上である。
【0055】
〔第1面第3導電層〕
第1面第3導電層35は、第1面第2有機層34などの有機層上に位置する、導電性を有する層である。第1面第2導電層33は、例えば、第1面第2有機層34上を延びる配線を構成する。第1面第3導電層35は、貫通電極22、第1面第1導電層31、第1面第3導電層35などに電気的に接続されていてもよい。また、第1面第3導電層35は、第1配線構造部30に形成されるキャパシタやインダクタなどの部品の一部を構成していてもよい。
【0056】
第1面第3導電層35は、貫通電極22や第1面第1導電層31と同様に、積層された第1層221及び第2層222などの複数の導電層を含んでいてもよい。第1面第3導電層35を構成する材料は、貫通電極22や第1面第1導電層31を構成する材料と同様である。第1面第3導電層35の厚みは、例えば100nm以上且つ20μm以下である。
【0057】
(第1枠体)
第1枠体37は、第1配線構造部30に含まれる有機層が剥離することを抑制するための部材である。第1枠体37は、第1面第1下地層371及び第1面第2下地層372を含む。
図4は、第1枠体37を拡大して示す断面図である。
【0058】
〔第1面第1下地層〕
第1面第1下地層371は、第1面第1有機層32の外縁と基板12の第1面13との間に位置する、金属材料を含む層である。
図1に示すように、第1面第1下地層371は、第1面第1有機層32の外縁が延びる外縁方向に沿って延びている。
図1に示す例において、第1面第1下地層371は、第1面第1有機層32の外縁を囲むように一周にわたって連続的に延びている。
【0059】
第1面第1下地層371は、基板12の外縁よりも内側に位置していてもよい。言い換えると、第1面第1下地層371の外縁と基板12の外縁との間に、第1面第1下地層371や有機層が存在せず第1面13が露出している露出部Rが存在していてもよい。露出部Rの幅gは、例えば30μm以上且つ300μm以下である。
【0060】
第1面第1下地層371は、第1面第1導電層31や貫通電極22などに電気的に接続されていてもよい。若しくは、第1面第1下地層371は、その他の導電層から電気的に浮いた状態にあってもよい。
【0061】
第1面第1下地層371が金属材料を含む限りにおいて、第1面第1下地層371の層構成は特には限定されない。例えば、第1面第1下地層371は、貫通電極22と同様に、基板12の第1面13上に順に積層された第1層221及び第2層222を含んでいてもよい。また、第1面第1下地層371は、第1層221及び第2層222のうちの一部の導電層のみを含んでいてもよい。第1面第1下地層371を構成する材料は、貫通電極22を構成する材料と同様である。
【0062】
第1面第1下地層371は、第1面第1有機層32の外縁が剥離してしまうことを抑制するよう機能する。この理由は特には限定されないが、例えば以下のような理由が考えられる。
(第1の理由)
ガラスやシリコンなどの無機材料に対する、チタン、クロム、ニッケル、銅などの金属材料の密着性は、無機材料に対する有機材料の密着性よりも高い。このため、第1面第1有機層32の外縁と基板12の第1面13との間に第1面第1下地層371を介在させることにより、第1面第1有機層32の外縁が剥離してしまうことを抑制することができる。
(第2の理由)
第1面第1下地層371は、例えば
図4に示されているように、第1面第1有機層32の外縁と基板12の第1面13との間に局所的に介在されている。この場合、第1面第1下地層371に重なっている第1面第1有機層32の厚みが、周囲の第1面第1有機層32の厚みに比べて局所的に小さくなることに起因して、第1面第1有機層32と第1面第1下地層371との間の密着性が高まる。これにより、第1面第1有機層32の外縁が剥離してしまうことを抑制することができる。
なお、第1面第1下地層371を備える配線基板10においては、上述の第1の理由により密着性の向上が実現されていてもよく、若しくは、上述の第2の理由により密着性の向上が実現されていてもよく、若しくは、両方の理由により密着性の向上が実現されていてもよく、若しくは、その他の理由により密着性の向上が実現されていてもよい。
【0063】
第1面第1下地層371の厚みt1は、例えば100nm以上且つ20μm以下であり、5μm以上且つ20μm以下であってもよい。また、第1面第1有機層32の厚みt2に対する第1面第1下地層371の厚みt1の比率は、好ましくは50%以上である。このように第1面第1下地層371の厚みt1を設定することにより、後述するように、配線基板10の製造工程において第1面第1有機層32の外縁を跨ぐように第1面第1有機層32の上面及び基板12の第1面13に形成される層が、第1面第1有機層32の上面と基板12の第1面13との間の段差によって断絶してしまうことを抑制することができる。
【0064】
図4において、符号W1は、第1面第1有機層32の外縁方向に直交する方向における、第1面第1下地層371のうち第1面第1有機層32と重なる部分の寸法を表す。寸法W1は、例えば50μm以上且つ1mm以下であり、より好ましくは100μm以上且つ0.3mm以下である。寸法W1を50μm以上にすることにより、例えばフォトリソグラフィー法によって第1面第1有機層32を形成する場合に、アライメントの誤差に起因して第1面第1有機層32の外縁が第1面第1下地層371と重ならなくなることを抑制することができる。また、寸法W1を1mm以下にすることにより、第1面第1導電層31を形成可能な領域が第1面第1下地層371によって狭められてしまうことを抑制することができる。
【0065】
図4において、符号W2は、第1面第1有機層32の外縁方向に直交する方向における、第1面第1下地層371のうち第1面第1有機層32から露出した部分の寸法を表す。
寸法W2は、例えば50μm以上且つ1mm以下であり、より好ましくは100μm以上且つ0.3mm以下である。寸法W2を50μm以上にすることにより、例えばフォトリソグラフィー法によって第1面第1有機層32を形成する場合に、アライメントの誤差に起因して第1面第1有機層32の外縁が第1面第1下地層371と重ならなくなることを抑制することができる。また、寸法W2を1mm以下にすることにより、第1面第1有機層32の外縁から基板12の外縁までのデッドスペースが広くなってしまうことを抑制することができる。
【0066】
図4に示すように、第1面第1下地層371の下面37aと基板12の第1面13との間に隙間が存在していてもよい。また、隙間に第1面第1有機層32が位置していてもよい。この場合、第1面第1下地層371に対する第1面第1有機層32の密着性を、例えばアンカー効果によって高めることができる。なぜなら、隙間に位置する第1面第1有機層32が第1面第1下地層371の下面37aで係止されることにより、基板12の第1面13の法線方向における第1面第1有機層32の変位を抑制できるからである。第1面第1有機層32の外縁方向に直交する方向における、第1面第1下地層371の下面37aと基板12の第1面13との間の隙間の寸法dは、例えば0.3μm以上である。なお、第1面第1下地層371の下面37aと基板12の第1面13との間の隙間は、後述するように、第1面第2導電層33を構成する第1層221の不要部分をエッチングによって除去する際に第1面第1下地層371がサイドエッチングされることによって生じ得る。「第1面第1下地層371の下面37a」とは、第1面第1下地層371の面のうち、基板12の第1面13の法線方向に沿って基板12側から第1面第1下地層371を見たと仮定した場合に視認される面である。
図4に示す例において、第1面第1下地層371の下面37aは、基板12の第1面13に接している部分と、基板12の第1面13に接していない部分とを含んでいる。
【0067】
第1面第1下地層371の外縁が多角形の輪郭を有する場合、好ましくは、第1面第1有機層32の場合と同様に、第1面第1下地層371の外縁の2つの辺が接続される隅部371cが湾曲した形状を有する。隅部371cの曲率半径は、好ましくは50μm以上である。
【0068】
〔第1面第2下地層〕
第1面第2下地層372は、第1面第2有機層34の外縁と第1面第1有機層32の上面との間に位置する、金属材料を含む層である。
図1に示すように、第1面第2下地層372は、第1面第2有機層34の外縁が延びる方向に沿って延びている。
図1に示す例において、第1面第2下地層372は、第1面第2有機層34の外縁を囲むように一周にわたって連続的に延びている。
【0069】
第1面第2下地層372は、第1面第1下地層371と同様に、第1面第1導電層31や貫通電極22などの一部に電気的に接続されていてもよく、若しくは、第1面第1下地層371は、その他の導電層から電気的に浮いた状態にあってもよい。
【0070】
第1面第2下地層372の厚みt3は、例えば100nm以上且つ20μm以下であり、5μm以上且つ20μm以下であってもよい。また、第1面第2有機層34の厚みt4に対する第1面第2下地層372の厚みt3の比率は、好ましくは50%以上である。このように第1面第2下地層372の厚みt3を設定することにより、配線基板10の製造工程において第1面第2有機層34の外縁を跨ぐように第1面第2有機層34の上面及び第1面第1有機層32の上面に形成される層が、第1面第2有機層34の上面と第1面第1有機層32の上面との間の段差によって断絶してしまうことを抑制することができる。
【0071】
第1面第2有機層34の外縁が延びる方向に直交する方向における第1面第2下地層372の寸法は、第1面第1下地層371の場合と同様である。また、第1面第1下地層371の場合と同様に、第1面第2下地層372の下面と第1面第1有機層32の上面との間に、第1面第2有機層34が入り込むことが可能な隙間が形成されていてもよい。
【0072】
(第2配線構造部)
次に、第2配線構造部40について説明する。第2配線構造部40は、基板12の第2面14側に電気的な回路を構成するよう第2面14側に設けられた導電層や有機層などの層を有する。本実施の形態において、第2配線構造部40は、第2面第1導電層41及び第2面第1有機層42を有する。
【0073】
〔第2面第1導電層〕
第2面第1導電層41は、基板12の第2面14上に位置する、導電性を有する金属材料を含む層である。本実施の形態において、第2面第1導電層41は、基板12の第2面14に直接的に接している。第2面第1導電層41は、貫通電極22に電気的に接続されていてもよい。また、第2面第1導電層41は、導電性を有する単一の層から構成されていてもよく、若しくは、導電性を有する複数の層を含んでいてもよい。例えば、第2面第1導電層41は、貫通電極22と同様に、基板12の第2面14上に順に積層された第1層221及び第2層222を含んでいてもよい。また、第2面第1導電層41は、第1層221及び第2層222のうちの一部の導電層のみを含んでいてもよい。第2面第1導電層41を構成する材料は、貫通電極22を構成する材料と同様である。第2面第1導電層41の厚みは、例えば100nm以上且つ20μm以下であり、5μm以上且つ20μm以下であってもよい。
【0074】
図1及び
図2に示すように、第1面第1導電層31、貫通電極22及び第2面第1導電層41の一部は、らせん状の部材、すなわちインダクタ16を構成するように接続されていてもよい。基板12として、高い絶縁性を有するガラスを用い、第1面第1有機層32や第2面第1有機層42などの有機層として、小さな誘電正接を有する有機材料を用いることにより、インダクタ16の帯域を高周波側に広げることができる。
【0075】
〔第2面第1有機層〕
第2面第1有機層42は、基板12の第2面14側に位置し、有機材料を含み、且つ絶縁性を有する層である。第2面第1有機層42は、第1面第1有機層32や第1面第2有機層34と同様に、好ましくは0.003以下、より好ましくは0.002以下、更に好ましくは0.001以下の誘電正接を有する有機材料を含む。第2面第1有機層42の有機材料としては、第1面第1有機層32や第1面第2有機層34と同様に、ポリイミド、エポキシなどを用いることができる。
【0076】
(第2枠体)
第2枠体47は、第2配線構造部40に含まれる有機層が剥離することを抑制するための部材である。第2枠体47は、第2面第1下地層471を含む。
【0077】
〔第2面第1下地層〕
第2面第1下地層471は、第2面第1有機層42の外縁と基板12の第2面14との間に位置する、金属材料を含む層である。第2面第1下地層471は、第2面第1有機層42の外縁が延びる方向に沿って延びている。例えば、第2面第1下地層471は、第2面第1有機層42の外縁を囲むように一周にわたって連続的に延びている。
【0078】
第2面第1下地層471は、第1面第1下地層371などと同様に、第2面第1導電層41や貫通電極22などに電気的に接続されていてもよく、若しくは、その他の導電層から電気的に浮いた状態にあってもよい。
【0079】
第2面第1下地層471の厚みt5は、例えば100nm以上且つ20μm以下であり、5μm以上且つ20μm以下であってもよい。また、第2面第1有機層42の厚みt6に対する第2面第1下地層471の厚みt5の比率は、好ましくは50%以上である。
【0080】
第1面第1有機層32の外縁が延びる方向に直交する方向における第2面第1下地層471の寸法は、第1面第1下地層371の場合と同様である。また、第1面第1下地層371の場合と同様に、第2面第1下地層471の下面と基板12の第2面14との間に、第2面第1有機層42が入り込むことが可能な隙間が形成されていてもよい。
【0081】
配線基板の製造方法
以下、配線基板10の製造方法の一例について、
図5乃至
図14を参照して説明する。
ここでは、1つの基板12に複数の第1配線構造部30、第1枠体37、第2配線構造部40及び第2枠体47を形成した後、基板12を切断して複数の配線基板10を得る方法について説明する。
【0082】
(貫通孔形成工程)
まず、基板12を準備する。次に、第1面13又は第2面14の少なくともいずれかにレジスト層を設ける。その後、レジスト層のうち貫通孔20に対応する位置に開口を設ける。次に、レジスト層の開口において基板12を加工することにより、
図5に示すように、基板12に貫通孔20を形成することができる。基板12を加工する方法としては、反応性イオンエッチング法、深掘り反応性イオンエッチング法などのドライエッチング法や、ウェットエッチング法などを用いることができる。
【0083】
なお、基板12にレーザを照射することによって基板12に貫通孔20を形成してもよい。この場合、レジスト層は設けられていなくてもよい。レーザ加工のためのレーザとしては、エキシマレーザ、Nd:YAGレーザ、フェムト秒レーザ等を用いることができる。Nd:YAGレーザを採用する場合、波長が1064nmの基本波、波長が532nmの第2高調波、波長が355nmの第3高調波等を用いることができる。
【0084】
また、レーザ照射とウェットエッチングを適宜組み合わせることもできる。具体的には、まず、レーザ照射によって基板12のうち貫通孔20が形成されるべき領域に変質層を形成する。続いて、基板12をフッ化水素などに浸漬して、変質層をエッチングする。これによって、基板12に貫通孔20を形成することができる。その他にも、基板12に研磨材を吹き付けるブラスト処理によって基板12に貫通孔20を形成してもよい。
【0085】
第1面13側及び第2面14側の両方から基板12を加工することにより、
図5に示す、基板12の厚み方向の中央部分に向かうにつれて幅が小さくなる形状を有する貫通孔20を形成することができる。
【0086】
(貫通電極形成工程)
次に、貫通孔20の側壁21に貫通電極22を形成する。本実施の形態においては、貫通電極22と同時に、基板12の第1面13の一部分上に第1面第1導電層31及び第1面第1下地層371を形成し、基板12の第2面14の一部分上に第2面第1導電層41及び第2面第1下地層471を形成する例について説明する。
【0087】
まず、
図6に示すように、基板12の第1面13、第2面14及び側壁21に、物理成膜法、ゾルゲル法、無電解めっき法などによって第1層221を形成する。好ましくは物理成膜法によって、特に好ましくはスパッタリング法によって、第1層221を形成する。これによって、基板12の第1面13、第2面14及び側壁21に第1層221を強固に密着させることができる。スパッタリング法や蒸着法などの物理成膜法は、好ましくは、第1面13側及び第2面14側の両方から実施される。この場合、貫通孔20の側壁21には、第1面13側から飛来する導電性物質、及び第2面14側から飛来する導電性物質が付着する。
【0088】
続いて、
図7に示すように、第1層221上に部分的にレジスト層39を形成する。レジスト層39の材料としては、アクリル樹脂を含むドライフィルムレジストなど、感光性を有する材料が用いられ得る。
【0089】
続いて、
図8に示すように、レジスト層39によって覆われていない第1層221上に、電解めっき法によって第2層222を形成する。例えば、銅を含む電解めっき液の中に基板12を浸漬させる。また、第1層221に電流を流す。これによって、第1層221上に第2層222を析出させることができる。
【0090】
(レジスト及び導電層除去工程)
その後、
図9Aに示すように、レジスト層39を除去する。続いて、
図9Aに示すように、第1層221のうちレジスト層39によって覆われていた部分を、言い換えると第1層221のうち第2層222から露出している部分を、例えばウェットエッチングにより除去する。このようにして、第1層221及び第2層222を含む貫通電極22、第1面第1導電層31、第1面第1下地層371、第2面第1導電層41及び第2面第1下地層471を形成することができる。その後、第2層222などの導電層をアニールする工程を実施してもよい。
【0091】
図9Bは、
図9Aに示す状態の基板12を第1面13側から見た場合を示す平面図である。
図9Bに示すように、1つの基板12に複数の第1面第1下地層371及び第1面第1導電層31が形成されている。なお、
図9Aは、
図9Bに示す基板12を線IX-IXに沿って切断した場合の断面図に相当する。
【0092】
ところで、第1層221のうちレジスト層39によって覆われていた部分をウェットエッチングにより除去する工程においては、第2層222もエッチング液に晒されるので、第2層222の表面も部分的に削られる。この結果、第1面第1導電層31、第1面第1下地層371などの導電層の上面及び側面に凹凸形状が形成される。凹凸形状により、第1面第1下地層371と第1面第1有機層32との間のアンカー効果が生じやすくなる。
また、凹凸形状により、第1面第1下地層371と第1面第1有機層32との間の接触面積が増加する。このため、第1面第1下地層371と第1面第1有機層32との間の密着性を高めることができる。第2面第1導電層41と第2面第1下地層471との間の密着性についても同様である。
【0093】
(第1面第1有機層の形成工程)
次に、
図10Aに示すように、第1面13側に第1面第1有機層32を形成する。例えば、まず、有機材料を含む感光層と、基材とを有する、図示しない第1面側フィルムを、基板12の第1面13側に貼り付ける。続いて、第1面側フィルムに露光処理及び現像処理を施す。これによって、
図10A及び
図10Bに示すように、第1面側フィルムの感光層からなり、その外縁が第1面第1下地層371上に位置する第1面第1有機層32を、基板12の第1面13側に形成することができる。
図10Aに示すように、基板12の第2面14側に、その外縁が第2面第1下地層471上に位置する第2面第1有機層42を形成してもよい。
【0094】
なお、第1面第1有機層32や第2面第1有機層42の形成方法が、フィルムを用いる方法に限られることはない。例えば、まず、ポリイミドなどの有機材料を含む液を、スピンコート法などによって塗布し、乾燥させることによって有機層を形成する。続いて、有機層に露光処理及び現像処理を施すことにより、第1面第1有機層32や第2面第1有機層42を形成することもできる。
【0095】
また、第1面第1有機層32の一部や第2面第1有機層42の一部を貫通孔20の内部にまで到達させることにより、貫通孔20の内部に有機層を形成してもよい。
【0096】
その後、
図11に示すように、第1面第1有機層32の上面及び側面、基板12の第1面13、第2面第1有機層42の上面及び側面、基板12の第2面14及び側壁21に、第1面第2導電層33及び第1面第2下地層372のシード層として機能する第1層221を形成する。ここで本実施の形態においては、第1面第1有機層32の外縁と基板12の第1面13との間に第1面第1下地層371が存在している。このため、第1面第1下地層371が存在しない場合に比べて、第1面第1有機層32の上面と基板12の第1面13との間の段差を小さくすることができ、第1層221が段差によって断絶してしまうことを抑制することができる。従って、基板12の外縁の近傍で第1層221に電源を接続することにより、第1層221に給電して、第1層221上に第2層を電解めっき法により析出させることができる。
図12は、第1層221及び第2層を含む第1面第2導電層33及び第1面第2下地層372が第1面第1有機層32上に設けられた状態を示す断面図である。
【0097】
続いて、
図13に示すように、第1面第2導電層33を覆う第1面第2有機層34を形成する。第1面第2有機層34は、その外縁が第1面第2下地層372上に位置するよう形成される。また、第1面第2有機層34上に第1面第3導電層35を形成する。このようにして、
図14に示すように、1つの基板12に複数の第1配線構造部30及び第1枠体37などを形成することができる。
【0098】
続いて、切断線Cに沿って基板12を切断する。これにより、複数の配線基板10を得ることができる。この場合、基板12のうち切断線Cと重なる部分には、第1面第1下地層371や有機層などの部材が存在しないことが好ましい。すなわち、露出部Rにおいて基板12が切断されることが好ましい。
【0099】
以下、本実施の形態によってもたらされる作用について説明する。
【0100】
本実施の形態においては、第1面第1有機層32の外縁と基板12の第1面13との間に、有機材料を含む第1面第1下地層371が位置している。このため、第1面第1有機層32の外縁が直接的に基板12の第1面13に接する場合に比べて、第1面第1有機層32が基板12から剥離してしまうことを抑制することができる。
【0101】
また、本実施の形態によれば、第1面第1下地層371を設けることにより、第1面第1有機層32の上面と基板12の第1面13との間の段差を小さくすることができる。このため、第1面第2導電層33のシード層として機能する第1層221を第1面第1有機層32の上面及び基板12の第1面13に形成する場合に、第1面第1有機層32の上面と基板12の第1面13との間の段差によって第1層221が断絶してしまうことを抑制することができる。
【0102】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述の実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述の実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0103】
(第1枠体の第1の変形例)
上述の実施の形態においては、第1面第1下地層371によって剥離が抑制される第1面第1有機層32が、貫通電極22に電気的に接続された第1面第1導電層31を覆う有機層である例を示した。言い換えると、第1面第1有機層32を形成する前に第1面第1導電層31を形成する例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、
図15に示すように、第1面第1下地層371によって剥離が抑制される第1面第1有機層32が、貫通電極22に電気的に接続された第1面第1導電層31と基板12の第1面13との間に位置する有機層であってもよい。言い換えると、第1面第1有機層32を形成した後に、貫通電極22に接続される第1面第1導電層31を形成してもよい。
【0104】
また、
図15に示すように、第2枠体47が、上述の第2面第1下地層471に加えて、第2面第2有機層44の外縁と第2面第1有機層42との間に位置する第2面第2下地層472を更に有していてもよい。
【0105】
(第1枠体の第2の変形例)
上述の実施の形態においては、第1面第1下地層371が、第1面第1有機層32の外縁を囲むように一周にわたって連続的に延びている例を示したが、これに限られることはない。
図16に示すように、複数の第1面第1下地層371が、第1面第1有機層32の辺に沿って離散的に並んでいてもよい。
図16に示す例によれば、第1面第1下地層371が連続的に延びる場合に比べて、第1面第1下地層371と第1面第1有機層32との間の接触面積を増加させることができる。このため、第1面第1下地層371と第1面第1有機層32との間の密着性を高めることができる。
【0106】
図16に示す例において、第1面第1有機層32の外縁が延びる外縁方向における第1面第1下地層371の寸法Lは、好ましくは100μm以上であり、より好ましくは200μm以上である。
【0107】
また、第1面第1有機層32の外縁の全長に対する、第1面第1有機層32の外縁のうち第1面第1下地層371と重なっている部分の長さの比率は、好ましくは50%以上である。これにより、第1面第1有機層32の剥離を適切に抑制することができる。
【0108】
第1面第1下地層371の場合と同様に、
図16に示すように、複数の第1面第2下地層372が、第1面第2有機層34の辺に沿って離散的に並んでいてもよい。また、図示はしないが、複数の第2面第1下地層471が、第2面第1有機層42の辺に沿って離散的に並んでいてもよい。
【0109】
実装基板
図17は、配線基板10と、配線基板10に搭載された素子50と、を備える実装基板60の一例を示す平面図である。素子50は、ロジックICやメモリICなどのLSIチップである。また、素子50は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)チップであってもよい。MEMSチップとは、機械要素部品、センサ、アクチュエータ、電子回路などが1つの基板上に集積化された電子デバイスである。素子50は、配線基板10の第1面第3導電層35などの導電層に電気的に接続された端子を有する。
【0110】
配線基板が搭載される製品の例
図18は、本開示の実施形態に係る配線基板10が搭載されることができる製品の例を示す図である。本開示の実施形態に係る配線基板10は、様々な製品において利用され得る。例えば、ノート型パーソナルコンピュータ110、タブレット端末120、携帯電話130、スマートフォン140、デジタルビデオカメラ150、デジタルカメラ160、デジタル時計170、サーバ180等に搭載される。
【符号の説明】
【0111】
10 配線基板
12 基板
13 第1面
14 第2面
16 インダクタ
20 貫通孔
21 側壁
22 貫通電極
221 第1層
222 第2層
30 第1配線構造部
31 第1面第1導電層
311 上面
312 側面
32 第1面第1有機層
32c 隅部
33 第1面第2導電層
34 第1面第2有機層
35 第1面第3導電層
36 第1面第3有機層
37 第1枠体
371 第1面第1下地層
372 第1面第2下地層
39 レジスト層
40 第2配線構造部
41 第2面第1導電層
42 第2面第1有機層
44 第2面第2有機層
47 第2枠体
471 第2面第1下地層
50 素子
51 端子
60 実装基板
C 切断線