(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】作業機械の安全装置
(51)【国際特許分類】
E02F 3/43 20060101AFI20231219BHJP
E02F 9/24 20060101ALI20231219BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20231219BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
E02F3/43 M
E02F9/24 G
E02F9/26 A
E02F9/20 Q
(21)【出願番号】P 2022080640
(22)【出願日】2022-05-17
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 裕樹
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-014736(JP,A)
【文献】特開2014-218849(JP,A)
【文献】特開平04-140333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/43
E02F 9/24
E02F 9/26
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の安全制御を行う安全装置であって、
前記作業機械の周辺の検知対象物の位置に関する位置情報を周期的に取得する位置情報取得部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、今回取得された前記位置情報である今回情報が前回取得された前記位置情報である前回情報よりも前記作業機械に近づく方向に変化した場合には当該今回情報に基づいて前記安全制御を行い、前記今回情報が前記前回情報よりも前記作業機械から遠ざかる方向に変化することを含む変化抑制条件が満たされた場合には当該位置情報の変化に対応する前記安全制御の変化を抑制する制御変化抑制を実行し、当該制御変化抑制が開始されてから所定時間が経過した時点で当該制御変化抑制を解除する
ものであり、
前記位置情報取得部により周期的に取得される前記位置情報は、前記作業機械について設定される基準位置からの前記検知対象物の距離に相当する距離値を含み、
前記制御部は、前記今回情報に含まれる前記距離値である今回距離値が前記前回情報に含まれる前記距離値である前回距離値を上回らない場合には当該今回情報に基づいて前記安全制御を行い、前記変化抑制条件であって前記今回距離値が前記前回距離値よりも大きいことを含む前記変化抑制条件が満たされた場合には前記制御変化抑制を実行する、作業機械の安全装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械の安全装置であって、前記制御部は、前記制御変化抑制が開始されてから前記位置情報が所定回数だけ取得された時点で前記制御変化抑制を解除する、作業機械の安全装置。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械の安全装置であって、前記安全制御は、速度制限制御を含み、当該速度制限制御は、前記作業機械について設定された基準位置から前記検知対象物までの距離が予め設定された速度制限範囲内にあるときに当該距離が小さいほど大きな度合いで前記作業機械の動作のうち予め設定された制限対象動作の速度を制限する制御であり、前記制御変化抑制は、前記前回情報から前記今回情報への変化に対応する前記制限対象動作の速度の制限の緩和を抑制することを含む、作業機械の安全装置。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械の安全装置であって、前記作業機械は前記制限対象動作を行うための油圧回路を含み、当該油圧回路に入力される制限指令に応じて前記制限対象動作の制限をするように当該油圧回路が構成され、前記制御部は、前記速度制限制御を行う場合に前記制限指令を生成して前記油圧回路に入力し、かつ、前記制御変化抑制として前記制限指令の変化の抑制を行うように構成されている、作業機械の安全装置。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機械の安全装置であって、前記作業機械は、下部走行体と、当該下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、を含み、前記油圧回路は前記上部旋回体を旋回させる回路を含み、前記位置情報取得部により取得される前記位置情報は前記上部旋回体について設定される前記基準位置からの前記検知対象物の距離についての情報を含み、前記制限対象動作は少なくとも前記上部旋回体の旋回動作を含み、前記制限指令は前記旋回動作を制限するための旋回制限指令を含む、作業機械の安全装置。
【請求項6】
請求項1に記載の作業機械の安全装置であって、警報器をさらに備え、前記安全制御は、前記警報器に警報を発出させる制御を含む、作業機械の安全装置。
【請求項7】
請求項1に記載の作業機械の安全装置であって、前記制御変化抑制は、前記今回情報にかかわらず前記前回情報に基づく安全制御を続行することである、作業機械の安全装置。
【請求項8】
請求項3に記載の作業機械の安全装置であって、前記制御変化抑制は、前記前回情報から前記今回情報への前記変化を鈍らせることにより得られる位置情報に基づいて前記制限対象動作の速度の制限を行うことである、作業機械の安全装置。
【請求項9】
請求項3に記載の作業機械の安全装置であって、前記制御変化抑制は、前記前回情報から前記今回情報への変化に対応する前記制限対象動作の速度の制限の緩和そのものを直接鈍らせることである、作業機械の安全装置。
【請求項10】
請求項1に記載の作業機械の安全装置であって、前記変化抑制条件は、前記今回情報と前記前回情報との差が予め設定された許容差を上回ること、をさらに含む、作業機械の安全装置。
【請求項11】
請求項1に記載の作業機械の安全装置であって、前記変化抑制条件は、前記今回情報に関する前記検知対象物についての前記位置情報が既に予め設定された回数以上取得されていることをさらに含む、作業機械の安全装置。
【請求項12】
請求項1に記載の作業機械の安全装置であって、前記位置情報取得部は、前記検知対象物を含む撮影画像を生成する撮像装置と、前記撮影画像を処理することにより前記位置情報を生成する位置情報生成部と、を含む、作業機械の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベル等の作業機械において、当該作業機械の周辺に存在する検知対象物を検知して安全制御を行う装置が知られている。例えば特許文献1には、作業機械の上部旋回体の周囲に設定された仮想境界面に対する障害物の相対位置を特定し、当該仮想境界面から当該障害物までの距離が小さいほど大きな度合いで前記上部旋回体の動作速度を制限する装置が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のような検知対象物(特許文献1では障害物)の位置情報に基づく制御は不安定となりやすい。具体的に、前記検知対象物の位置の特定は、赤外線深度センサやミリ波レーダといった距離センサによる測定値を用いて、あるいは、撮像装置(カメラ)により取得される画像データを処理することにより、行われるが、このようにして取得される位置情報は、センサやカメラの性能や特性、あるいは車体の揺れといった外的要因によって乱れやすい。特に前記撮像装置が使用される場合、検知対象物の状態や姿勢、あるいは周辺状況によって検知結果が一時的に大きく影響を受ける。例えば、実際には検知対象物が存在するにもかかわらず一時的に非検知状態となったり、検知対象物の位置が変わらないにもかかわらずその検知結果(例えば作業機械から検知対象物までの距離)が変動したりする可能性がある。このように位置情報が不安定であると、当該位置情報に基づいて実行される安全制御も不安定となりやすい。
【0005】
本発明は、作業機械についての安全制御を安定して行うことが可能な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
提供されるのは、作業機械の安全制御を行う安全装置であって、位置情報取得部と、制御部と、を備える。前記位置情報取得部は、前記作業機械の周辺の検知対象物の位置に関する位置情報を周期的に取得する。前記制御部は、今回取得された前記位置情報である今回情報が前回取得された前記位置情報である前回情報よりも前記作業機械に近づく方向に変化した場合には当該今回情報に基づいて安全制御を行い、前記今回情報が前記前回情報よりも前記作業機械から遠ざかる方向に変化することを含む変化抑制条件が満たされた場合には当該位置情報の変化に対応する前記安全制御の変化を抑制する制御変化抑制を実行し、当該制御変化抑制が開始されてから所定時間が経過した時点、例えば前記位置情報が所定回数だけ取得された時点、で当該制御変化抑制を解除する。
【0007】
前記変化抑制条件が満たされたときの前記制御変化抑制の実行は、前記位置情報の取得が不安定である場合においても、前記作業機械の安全性を確保しながら安定した前記安全制御を実行することを可能にする。例えば、前記検知対象物が実際には存在するにもかかわらず一時的に検知されなくなった場合や、当該検知対象物が実際には遠ざかっていないにもかかわらず前記位置情報が一時的に遠ざかる方向に変化した場合、前記制御部は、当該変化に即座に対応した安全制御を無条件で実行するのではなく、変化抑制条件を満たした場合に前記安全制御の変化(前記安全制御を緩和する方向の変化)を抑制した制御変化抑制を実行することにより、当該安全制御を安定させることができる。しかも、前記制御変化抑制は、所定時間が経過した時点、例えば当該制御変化抑制が開始されてから前記位置情報が予め設定された回数だけ取得された時点、で解除されるので、前記前回情報に基づく安全制御が過度に続けられることが防がれる。一方、前記作業機械に近づく方向に前記位置情報が変化した場合には、今回情報に基づく安全制御を実行することにより、前記作業機械の高い安全性を確保することが可能である。
【0008】
前記安全制御は、速度制限制御を含むことが好ましい。当該速度制限制御は、前記作業機械について設定された基準位置から前記検知対象物までの距離が予め設定された速度制限範囲内にあるときに当該距離が小さいほど大きな度合いで前記作業機械の動作のうち予め設定された制限対象動作の速度を制限する制御である。当該速度制限制御は、前記制限対象動作の速度を0にする制御、つまり当該制限対象動作を強制停止させる停止制御、を含んでもよい。当該速度制限制御に対応する前記制御変化抑制、すなわち、前記前回情報から前記今回情報への変化に対応する前記制限対象動作の速度の制限の緩和を抑制すること、は、取得される前記位置情報の一時的な乱れに起因して前記速度の制限が不必要に緩和されるのを防ぎ、これにより、前記作業機械の動作の不安定化を抑止するとともに安全性をさらに高めることを可能にする。
【0009】
前記作業機械が、前記制限対象動作を行うための油圧回路を含み、当該油圧回路に入力される制限指令に応じて前記制限対象動作の制限をするように当該油圧回路が構成されている場合、前記制御部は、前記速度制限制御を行う場合に前記制限指令を生成して前記油圧回路に入力し、かつ、前記制御変化抑制として前記制限指令の変化の抑制を行うように構成されていることが、好ましい。
【0010】
より具体的に、前記作業機械が、下部走行体と、当該下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、を含み、前記油圧回路が前記上部旋回体を旋回させる回路を含む場合に、前記位置情報取得部により取得される前記位置情報は前記上部旋回体について設定された基準位置からの前記検知対象物の距離についての情報を含み、前記制限対象動作は少なくとも前記上部旋回体の旋回動作を含み、前記制限指令は前記旋回動作を制限するための旋回制限指令を含むのが、よい。
【0011】
前記安全制御は、あるいは、前記安全装置にさらに備えられる警報器に警報を発出させる制御であってもよい。この態様においても、前記制御変化抑制は、取得される前記位置情報の乱れにより前記警報が不適切に中断されるのを防ぐことが可能である。
【0012】
前記制御変化抑制は、例えば、前記今回情報にかかわらず前記前回情報に基づく安全制御を続行すること、つまり、前記安全制御を決定するための前記位置情報として前記前回情報を保持すること、が有効である。
【0013】
前記安全制御が前記速度制限制御である場合、前記制御変化抑制は、あるいは、前記前回情報から前記今回情報への前記変化を鈍らせることにより得られる位置情報に基づいて前記制限対象動作の速度の制限を行うものであってもよいし、前記前回情報から前記今回情報への変化に対応する前記制限対象動作の速度の制限の緩和そのものを直接鈍らせることであってもよい。例えば、前記制御部が前記油圧回路に前記制限指令を入力する態様では、前記制御変化抑制は前記制限指令の時間変化率の制限であってもよい。
【0014】
前記変化抑制条件は、前記前回情報から前記今回情報への変化が大きいこと、具体的には、前記今回情報と前記前回情報との差が予め設定された許容差を上回ること、をさらに含んでもよい。換言すれば、前記今回情報が前記前回情報よりも前記作業機械に近づく方向に変化していてもその変化が小さい場合、すなわち、当該変化に追従して前記安全制御を変化させても当該安全制御の安定性に大きな影響を与えない場合、には前記制御変化抑制を保留してもよい。このことは、当該制御変化抑制すなわち前記安全制御の緩和の抑制が頻繁に行われることによる作業効率の低下を防ぐことができる。
【0015】
前記変化抑制条件は、今回情報に関する前記検知対象物についての前記位置情報が既に予め設定された回数以上取得されていることをさらに含んでもよい。このことは、検知対象物の存在が一時的に誤検知された場合に前記制御変化抑制が不適切に実行されるのを防ぐことができる。
【0016】
本発明において、前記位置情報取得部の具体的な構成は限定されないが、当該位置情報取得部が、前記検知対象物を含む撮影画像を生成する撮像装置と、前記撮影画像を処理することにより前記位置情報を生成する位置情報生成部と、を含む場合に特に有効である。前記撮像装置により生成される前記撮影画像からその画像処理により取得される位置情報は種々の要因によって不安定となりやすいため、当該位置情報の不安定性にかかわらず安定した安全制御を可能にする前記制御変化抑制は特に有効となる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、作業機械についての安全制御を安定して行うことが可能な装置が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る作業機械の例である油圧ショベルを示す側面図である。
【
図3】前記油圧ショベルに搭載される油圧回路及びコントローラ等を示すブロック図である。
【
図4】前記コントローラの主要な機能を示すブロック図である。
【
図5】前記コントローラにより実行される速度制限制御を示すフローチャートである。
【
図6】前記油圧ショベルにおいて取得される距離値の時間変化の第1の例であって特定期間において検知対象物の検知が途絶えた例を示すグラフである。
【
図7】前記第1の例において変化抑制条件が満たされたときに制御変化抑制が行われない場合及び行われる場合のそれぞれにおける旋回制限指令の時間変化を示すグラフである。
【
図8】前記第1の例において前記制御変化抑制が行われない場合における旋回パイロット圧の時間変化を示すグラフである。
【
図9】前記油圧ショベルにおいて取得される距離値の時間変化の第2の例であって距離値が一時的に増大する例を示すグラフである。
【
図10】前記第2の例において変化抑制条件が満たされたときに制御変化抑制が行われない場合及び行われる場合のそれぞれにおける旋回制限指令の時間変化を示すグラフである。
【
図11】前記第2の例における距離値の移動平均を採用した場合の当該距離値の時間変化を示すグラフである。
【
図12】旋回制限指令の変化率を制限する処理が行われた例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1及び
図2は、油圧ショベルを示し、当該油圧ショベルは、本発明の実施の形態に係る制御装置が搭載される作業機械である。前記油圧ショベルは、地面Gの上を走行可能な下部走行体10と、前記下部走行体10に搭載される上部旋回体12と、上部旋回体12に搭載される作業装置14と、作業駆動装置と、を備える。
【0021】
前記下部走行体10は、右及び左にそれぞれ配置された一対の右クローラ11R及び左クローラ11Lを備える。前記右及び左クローラ11R,11Lのそれぞれは、前記下部走行体10が前記地面Gの上を走行するように動作する。
【0022】
前記上部旋回体12は、旋回フレーム16と、その上に搭載される複数の要素と、を含む。前記複数の要素は、エンジンを収容するエンジンルーム17と、運転室であるキャブ18と、前記上部旋回体12の後端部を構成するカウンタウェイト19と、を含む。
【0023】
前記作業装置14は、ブーム21、アーム22及びバケット24を含む。前記ブーム21は、起伏可能に前記旋回フレーム16の前端に支持される。前記アーム22は前記ブーム21に対して上下方向に回動可能となるように前記ブーム21の先端部に連結される。前記バケット24は、掘削作業等を行うための先端アタッチメントであり、前記アーム22に対して上下方向に回動可能となるように前記アーム22の先端部に取付けられる。
【0024】
図3は、前記油圧ショベルに搭載される油圧回路、複数の対象物検知器、警報器62、表示装置64、及びコントローラ70を示す。前記コントローラ70は、例えばマイクロコンピュータからなり、前記油圧回路に含まれる各要素の作動を制御する。一方、前記コントローラ70は、前記複数の対象物検知器、前記警報器62及び前記表示装置64及びに電気的に接続されてこれらとともに安全装置を構成する。
【0025】
前記油圧回路は、ポンプユニット30、複数の油圧アクチュエータ、複数の制御弁、操作装置、複数の操作弁及び複数のパイロット圧センサを含む。
【0026】
前記ポンプユニット30は、複数の油圧ポンプを含み、当該複数の油圧ポンプは、少なくとも一つのメインポンプとパイロットポンプとを含む。前記複数の油圧ポンプは、駆動源である図略のエンジンに接続され、当該エンジンが出力する動力により駆動されて作動油を吐出する。
【0027】
前記複数の油圧アクチュエータは、それぞれが前記ポンプユニット30からの作動油の供給を受けて前記油圧ショベルの可動部位を動かすものであり、
図1に示される複数の作業用油圧シリンダ、すなわち、ブームシリンダ26、アームシリンダ27及びバケットシリンダ28と、
図3に示される旋回モータ32、右走行モータ33及び左走行モータ34と、を含む。
【0028】
前記ブームシリンダ26は、作動油の供給を受けることにより、前記上部旋回体12に対して前記ブーム21を起伏させるように伸縮する。前記アームシリンダ27は、作動油の供給を受けることにより、前記ブーム21に対して前記アーム22を回動させるように伸縮する。前記バケットシリンダ28は、作動油の供給を受けることにより、前記アーム22に対して前記バケット24を回動させるように伸縮する。
【0029】
前記旋回モータ32は、一対の右旋回ポート及び左旋回ポートを含み、当該右旋回及び左旋回ポートのうちの一方に作動油が供給されることにより、当該ポートに対応した方向(右旋回方向または左旋回方向)に前記上部旋回体12を旋回させるように動作する。
【0030】
前記右走行モータ33は、一対の右前進ポート及び右後進ポートを含み、当該右前進及び右後進ポートの一方に作動油が供給されることにより、当該ポートに対応した方向(前進方向または後進方向)に前記右クローラ11Rを動かすように動作する。同様に、前記左走行モータ34は、一対の左前進ポート及び左後進ポートを含み、当該左前進及び左後進ポートの一方に作動油が供給されることにより、当該ポートに対応した方向(前進方向または後進方向)に前記左クローラ11Lを動かすように動作する。
【0031】
前記複数の制御弁は、前記複数の油圧アクチュエータのそれぞれの動きの制御を可能とするように開閉動作をする弁であり、
図3に示される旋回制御弁36、右走行制御弁37及び左走行制御弁38を含む。
【0032】
前記旋回制御弁36は、前記ポンプユニット30と前記旋回モータ32との間に介在し、前記ポンプユニット30から前記旋回モータ32に供給される作動油の方向及び流量(旋回流量)を変化させるように開閉動作する。前記旋回制御弁36は、右旋回パイロットポート及び左旋回パイロットポートを含むパイロット操作式の方向切換弁により構成され、前記右旋回パイロットポートにパイロット圧が入力されると前記旋回モータ32の前記右旋回ポートに前記パイロット圧の大きさに対応した流量(右旋回流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁し、逆に前記左旋回パイロットポートにパイロット圧が入力されると前記旋回モータ32の前記左旋回ポートに当該パイロット圧の大きさに対応した流量(左旋回流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁する。
【0033】
前記右走行制御弁37は、前記ポンプユニット30と前記右走行モータ33との間に介在し、前記ポンプユニット30から前記右走行モータ33に供給される作動油の方向及び流量(右走行流量)を変化させるように開閉動作する。前記右走行制御弁37は、右前進パイロットポート及び右後進パイロットポートを含むパイロット操作式の方向切換弁により構成され、前記右前進パイロットポートにパイロット圧が入力されると前記右走行モータ33の前記右前進ポートに前記パイロット圧の大きさに対応した流量(右前進流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁し、逆に前記右後進パイロットポートにパイロット圧が入力されると前記右走行モータ33の前記右後進ポートに前記パイロット圧の大きさに対応した流量(右後進流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁する。
【0034】
前記左走行制御弁38は、前記ポンプユニット30と前記左走行モータ34との間に介在し、前記ポンプユニット30から前記左走行モータ34に供給される作動油の方向及び流量(左走行流量)を変化させるように開閉動作する。前記左走行制御弁38は、左前進パイロットポート及び左後進パイロットポートを含むパイロット操作式の方向切換弁により構成され、前記左前進パイロットポートにパイロット圧が入力されると前記左走行モータ34の前記左前進ポートに前記パイロット圧の大きさに対応した流量(左前進流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁し、逆に前記左後進パイロットポートにパイロット圧が入力されると前記左走行モータ34の前記左後進ポートに前記パイロット圧の大きさに対応した流量(左後進流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁する。
【0035】
前記複数の制御弁は、その他、前記ブームシリンダ26、前記アームシリンダ27及び前記バケットシリンダ28のそれぞれについて設けられる図略のブーム制御弁、アーム制御弁及びバケット制御弁を含む。
【0036】
前記操作装置は、前記油圧ショベルを動かすための操作を受けて前記コントローラ70に操作信号を入力するものであり、前記複数の制御弁にそれぞれ対応する複数の操作器を含む。前記複数の操作器のそれぞれは、前記パイロットポンプに接続されるいわゆるリモコン弁により構成され、当該リモコン弁に与えられた操作に対応したパイロット圧が対応する制御弁に与えられることを許容するように開弁する。
【0037】
前記操作装置に与えられる操作は、安全制御の対象となる制御対象操作を含む。当該複数の制御対象操作は、この実施の形態では、前記下部走行体10に対して前記上部旋回体12を旋回させるための旋回操作、並びに、前記右及び左クローラ11R,11Lをそれぞれ動かすための右走行操作及び左走行操作であり、当該右走行操作及び左走行操作は前記下部走行体10に走行動作を行わせる走行操作に相当する。
【0038】
図3は、前記複数の操作器のうち前記制御対象操作がそれぞれ与えられる旋回操作器42、右走行操作器43及び左走行操作器44を示す。
【0039】
前記旋回操作器42は、旋回レバー及びこれに連結される旋回パイロット弁を含み、前記旋回パイロット弁は、前記旋回制御弁36の前記右旋回及び左旋回パイロットポートのうち前記旋回レバーに与えられる旋回操作の方向に対応したパイロットポートに当該旋回操作の大きさに対応した大きさのパイロット圧が供給されるように開弁する。前記右走行操作器43は、右走行レバー及びこれに連結される右走行パイロット弁を含み、前記右走行パイロット弁は、前記右走行制御弁37の前記右前進及び左前進パイロットポートのうち前記右走行レバーに与えられる右走行操作の方向に対応したパイロットポートに当該右走行操作の大きさに対応した大きさのパイロット圧が供給されるように開弁する。同様に、前記左走行操作器44は、左走行レバー及びこれに連結される左走行パイロット弁を含み、前記左走行パイロット弁は、前記左走行制御弁38の前記左前進及び左前進パイロットポートのうち前記左走行レバーに与えられる左走行操作の方向に対応したパイロットポートに当該左走行操作の大きさに対応した大きさのパイロット圧が供給されるように開弁する。
【0040】
前記複数の操作器は、前記旋回操作器42及び前記右走行及び左走行操作器43,44の他、前記ブーム21を動かすためのブーム操作を受けて前記ブーム制御弁へのパイロット圧の供給を許容するブーム操作器、前記アーム22を動かすためのアーム操作を受けて前記アーム制御弁へのパイロット圧の供給を許容するアーム操作器、及び、前記バケット24を動かすためのバケット操作を受けて前記バケット制御弁へのパイロット圧の供給を許容するバケット操作器を含む。前記ブーム操作、前記アーム操作及び前記バケット操作は、いずれも前記作業装置14を動かすための操作であるが、この実施の形態では前記制御対象操作から除外されている。
【0041】
前記複数の操作弁は、前記旋回操作器42、前記右走行操作器43及び前記左走行操作器44と、これらの操作器に対応する前記旋回制御弁36、前記右走行制御弁37及び前記左走行制御弁38と、の間にそれぞれ介在し、前記コントローラ70による前記旋回パイロット圧及び前記右及び左走行パイロット圧の制限を可能にする。具体的に、前記複数の操作弁のそれぞれは電磁式の減圧弁により構成され、当該減圧弁は当該減圧弁に入力される制限指令に対応した度合いでパイロット圧の制限を行う。この実施の形態に係る前記減圧弁のそれぞれは電磁逆比例減圧弁であり、前記制限指令が大きいほど大きな度合いで前記パイロット圧を制限する。前記減圧弁は、電磁比例減圧弁であってもよい。
【0042】
具体的に、前記複数の操作弁は、
図3に示される右旋回操作弁46R及び左旋回操作弁46L、右前進走行操作弁47F及び右後進走行操作弁47B、並びに左前進走行操作弁48F及び左後進走行操作弁48Bを含む。
【0043】
前記右旋回操作弁46Rは、前記旋回操作器42と前記旋回制御弁36の前記右旋回パイロットポートとの間に介在し、前記旋回操作器42から前記右旋回パイロットポートに入力される右旋回パイロット圧を前記コントローラ70から前記右旋回操作弁46Rに入力される右旋回制限指令に対応した度合いで制限するように動作する。同様に、前記左旋回操作弁46Lは、前記旋回操作器42と前記旋回制御弁36の前記左旋回パイロットポートとの間に介在し、前記旋回操作器42から前記左旋回パイロットポートに入力される左旋回パイロット圧を前記コントローラ70から前記左旋回操作弁46Lに入力される左旋回制限指令に対応した度合いで制限するように動作する。
【0044】
前記右前進走行操作弁47Fは、前記右走行操作器43と前記右走行制御弁37の前記右前進パイロットポートとの間に介在し、前記右走行操作器43から前記右前進パイロットポートに入力される右前進パイロット圧を前記コントローラ70から前記右前進走行操作弁47Fに入力される右前進走行制限指令に対応した度合いで制限するように動作する。同様に、前記右後進走行操作弁47Rは、前記右走行操作器43と前記右走行制御弁37の前記右後進パイロットポートとの間に介在し、前記右走行操作器43から前記右後進パイロットポートに入力される右後進パイロット圧を前記コントローラ70から前記右後進走行操作弁47Rに入力される右後進走行制限指令に対応した度合いで制限するように動作する。
【0045】
前記左前進走行操作弁48Fは、前記左走行操作器44と前記左走行制御弁38の前記左前進パイロットポートとの間に介在し、前記左走行操作器44から前記左前進パイロットポートに入力される左前進パイロット圧を前記コントローラ70から前記左前進走行操作弁48Fに入力される左前進走行制限指令に対応した度合いで制限するように動作する。同様に、前記左後進走行操作弁48Rは、前記左走行操作器44と前記左走行制御弁38の前記左後進パイロットポートとの間に介在し、前記左走行操作器44から前記左後進パイロットポートに入力される左後進パイロット圧を前記コントローラ70から前記左後進走行操作弁48Rに入力される左後進走行制限指令に対応した度合いで制限するように動作する。
【0046】
前記複数のパイロット圧センサのそれぞれは、前記旋回操作、前記右走行操作及び前記左走行操作のそれぞれの大きさ(操作量)を検出する操作量検出器である。具体的に、当該複数のパイロット圧センサのそれぞれは圧力センサにより構成され、前記旋回制御弁36、前記右走行制御弁37及び前記左走行制御弁38のそれぞれに入力されるパイロット圧を検出して当該パイロット圧の大きさに対応した検出信号、つまり前記対象操作量に対応する検出信号、を前記コントローラ70に入力する。具体的に、前記複数のパイロット圧センサは、前記右旋回パイロット圧を検出する右旋回パイロット圧センサ52Rと、前記左旋回パイロット圧センサを検出する左旋回パイロット圧センサ52Lと、前記右前進パイロット圧を検出する右前進パイロット圧センサ53Fと、前記右後進パイロット圧を検出する右後進パイロット圧センサ53Bと、前記左前進パイロット圧を検出する左前進パイロット圧センサ54Fと、前記左後進パイロット圧を検出する左後進パイロット圧センサ54Bと、を含む。
【0047】
前記油圧回路において、前記旋回モータ32、前記旋回制御弁36及び前記右旋回及び左旋回操作弁46R,46Lは、前記ポンプユニット30とともに、前記上部旋回体12を旋回させるための旋回駆動回路を構成する。同様に、前記右走行モータ33、前記右走行制御弁37及び前記右前進及び右後進走行操作弁47F,47Bは、前記ポンプユニット30とともに、前記右クローラ11Rを動かすための右走行駆動回路を構成し、前記左走行モータ34、前記左走行制御弁38及び前記左前進及び左後進走行操作弁48F,48Bは、前記ポンプユニット30とともに、前記左クローラ11Lを動かすための左走行駆動回路を構成する。
【0048】
前記複数の対象物検知器は、前記油圧ショベルの特定部位にそれぞれ配置され、前記油圧ショベルの周囲に存在する検知対象物を検知するとともに、当該特定部位から前記検知対象物までの距離を含む位置情報を取得することを可能にする検知信号を生成して前記コントローラ70に入力する。前記複数の対象物検知器のそれぞれは、この実施の形態では単眼カメラ、ステレオカメラといった撮像装置により構成され、前記検知対象物を含む撮影画像を生成する。
【0049】
具体的に、この実施の形態に係る前記複数の対象物検知器は、前記上部旋回体12に配置され、
図2に示される右対象物検知器60R、左対象物検知器60L及び後対象物検知器60Bを含む。前記右対象物検知器60Rは、少なくとも前記上部旋回体12の右側方に位置する検知対象物を検知することが可能となるように当該上部旋回体12の右側部に配置され、前記左対象物検知器60Lは、少なくとも前記上部旋回体12の左側方に位置する検知対象物を検知することが可能となるように当該上部旋回体12の左側部に配置され、前記後対象物検知器60Bは、少なくとも前記上部旋回体12の後方に位置する検知対象物を検知することが可能となるように当該上部旋回体12の後端部に配置される。
【0050】
前記警報器62は、前記コントローラ70から警報指令が入力されたときに警報を発出する。前記警報器62は、音による警報を行うもの、例えばブザー、でもよいし、光による警報を行うもの、例えば警報ランプでもよい。
【0051】
前記表示装置64は、前記検知対象物を含む周辺画像を表示することが可能な画面を有するとともに、当該画面をオペレータが視認することが可能となるように前記キャブ18内に配置される。前記表示装置64は、前記コントローラ70から入力される表示指令信号に対応した画像の表示を行う。
【0052】
前記コントローラ70は、前記対象物検知器60R,60L,60Bのそれぞれから入力される画像信号に基づいて前記油圧ショベルの周辺における検知対象物の存否、及び、検知対象物が存在する場合の検知距離を特定し、その検知距離が予め設定された許容距離以下である場合に安全制御を実行する。前記検知距離は、前記検知対象物の基準位置からの距離であり、前記基準位置は、この実施の形態では、前記対象物検知器60R,60L,60Bがそれぞれ配設される位置、すなわち前記特定部位の位置、である。従って、この実施の形態に係る前記検知距離は、前記対象物検知器60R,60L,60Bから当該対象物検知器60R,60L,60Bにより検知される検知対象物までの距離である。
【0053】
前記安全制御は、速度制限制御と、警報制御と、表示制御と、を含む。前記速度制限制御は、前記検知距離に応じて前記油圧ショベルの動作のうち予め設定された制限対象動作の速度を制限する制御であり、当該速度を0にする制御、すなわち前記制限対象動作を強制停止する停止制御、を含んでもよい。前記制限対象動作は、この実施の形態では、少なくとも前記下部走行体10に対する前記上部旋回体12の旋回動作を含み、状況によって前記右クローラ11R及び前記左クローラ11Lによる走行動作も含まれる。前記制限対象動作は、あるいは、前記作業装置14の動作、例えば前記ブーム21の起伏動作及び前記アーム22の回動動作を含んでもよい。前記警報制御は、前記検知対象物の検知に基づいて前記警報器62に前記警報を発出させる制御である。前記表示制御は、前記検知対象物の検知に基づいて前記表示装置64に警告画像を表示させる制御である。前記警告画像は、例えば、前記対象物検知器60R,60L,60Bのそれぞれによる撮影画像であって前記検知対象物を含む周辺画像である。
【0054】
前記コントローラ70は、前記安全制御を実行するために
図4に示されるような複数の機能を備え、当該複数の機能は、位置情報生成部72、安全制御判定部74、旋回制限指令部76、走行制限指令部78、警報指令部82及び表示指令部84を含む。これらの機能は、例えば、前記コントローラ70に含まれるCPUが当該コントローラ70に含まれるメモリに予め格納されたプログラムを実行することにより、実現される。
【0055】
前記位置情報生成部72は、前記対象物検知器60R,60L,60Bのそれぞれから入力される画像信号を周期的に(具体的には予め設定されたサンプリング周期が経過するごとに)取り込み、当該画像信号を処理することにより、当該対象物検知器60R,60L,60Bの撮影範囲内における検知対象物の存否の判別、及び、検知対象物が存在する場合の当該検知対象物の前記基準位置(この実施の形態では前記対象物検知器60R,60L,60Bのそれぞれが配置されている位置)からの距離、すなわち前記検知距離、に相当する距離値LXを特定し、前記検知対象物の位置及び前記距離値XLを含む位置情報を生成する。すなわち、前記位置情報生成部72は、前記対象物検知器60R,60L,60Bとともに、前記位置情報を周期的に取得する位置情報取得部を構成する。前記検知対象物は、少なくとも人(作業員)を含むことが好ましく、人以外の物を含んでもよい。
【0056】
前記安全制御判定部74は、前記位置情報生成部72により生成される前記位置情報に基づき、前記安全制御の実行の要否及び当該安全制御の内容を特定する。具体的に、この実施の形態に係る前記安全制御判定部74は、前記安全制御が必要であると判定した場合に、速度の制限をすべき動作を特定するとともに、前記検知距離に対応した前記制限対象動作の速度の制限の度合いを決定する。前記速度の制限には強制停止も含まれる。
【0057】
前記安全制御判定部74は、さらに、予め設定された変化抑制条件を格納し、前記位置情報生成部72により周期的に生成される前記位置情報が前記変化抑制条件を満たす場合にのみ制御変化抑制を行う。前記変化抑制条件は、前記制御変化抑制の要否を判定するために予め設定された条件であり、前回取得された位置情報である前回情報、すなわち、今回取得された位置情報である今回情報よりも一つ前(前記サンプリング周期分だけ前)に取得された情報、よりも前記今回情報が前記油圧ショベルから遠ざかる方向に変化すること(この実施の形態では前記検知距離が増大すること)を含む。前記制御変化抑制は、前記位置情報の変化(前記検知距離の増大)に対応する前記安全制御の変化の抑制であり、当該安全制御の安定化に寄与する。この実施の形態に係る前記制御変化抑制は、前記今回情報にかかわらず前記前回情報に基づく安全制御を維持することである。
【0058】
前記安全制御判定部74は、さらに、前記制御変化抑制が開始されてから所定時間が経過した時点、この実施の形態では前記位置情報が所定回数だけ取得された時点(すなわち前記サンプリング周期に前記所定回数を乗じた時間が経過した時点)、で前記制御変化抑制を解除する。
【0059】
前記旋回制限指令部76は、旋回制限指令信号を生成する。前記旋回制限指令信号は、前記安全制御判定部74により判定される安全制御のうち旋回制限制御を実行するための信号であり、具体的には、右旋回動作または左旋回動作の速度を制限する制御が特定された場合に当該速度(旋回速度)の制限について決定された前記制限度合いで前記速度を制限する(強制停止も含む)ための信号である。前記旋回制限指令部76は、前記右旋回操作弁46R及び前記左旋回操作弁46Lのうち前記制限対象動作に対応する操作弁(右旋回動作が制限される場合には右旋回操作弁46R)に前記旋回制限指令信号を入力する。
【0060】
前記走行制限指令部78は、走行制限指令信号を生成する。前記走行制限指令信号は、前記安全制御判定部74により判定される安全制御のうち走行制限制御を実行するための信号であり、具体的には、前進走行動作または後進走行動作の速度を制限する制御が特定された場合に当該速度(走行速度)の制限について決定された前記制限度合いで前記速度を制限する(強制停止も含む。)ための信号である。前記走行制限指令部78は、前記右前進走行操作弁47F、前記右後進走行操作弁47B、前記左前進走行操作弁48F及び前記左後進走行操作弁48Bのうち制限すべき前記制限対象動作に対応する操作弁(後進走行動作が制限される場合には右後進走行操作弁47B及び左前進走行操作弁48B)に前記旋回制限指令信号を入力する。
【0061】
前記警報指令部82は、前記安全制御判定部74により前記安全制御が必要と判定された場合に警報指令信号を生成し、当該警報指令信号を前記警報器62に入力することにより当該警報器62に警報を発出させる。
【0062】
前記表示指令部84は、前記安全制御判定部74により前記安全制御が必要と判定された場合に表示指令信号を生成し、当該表示指令信号を前記表示装置64に入力することにより、前記警告画像を前記表示装置64に表示させる。
【0063】
次に、前記コントローラ70により行われる前記安全制御の内容を、
図5のフローチャートを参照しながらより具体的に説明する。
【0064】
前記コントローラ70の前記位置情報生成部72は、予め設定された前記サンプリング周期(例えば50ms)が経過する度に(ステップS1でYES)前記対象物検知器60R,60L,60Bから入力される画像信号を取り込んで当該画像信号に基づき今回距離値LXを含む位置情報を取得する(ステップS2)。詳しくは、前記位置情報生成部72は前記画像信号を処理することにより検知対象物の位置情報を生成する。前記今回距離値LXは、今回生成された位置情報である今回情報に含まれる検知距離が数値化されたものである。前記対象物検知器60R,60L,60Bのうちの複数の対象物検知器により検知対象物の検知が行われた場合、当該検知対象物に最も近い対象物検知器により検知された距離に相当する値、換言すれば、それぞれの検知距離に対応する値のうち最も小さい値、が前記今回距離値LXに採用される。
【0065】
前記コントローラ70の前記安全制御判定部74は、取得された前記今回距離値LXに基づき、予め設定された前記変化抑制条件が満たされているか否かを判定する(ステップS3,S4)。前記変化抑制条件は、前記今回距離値LXをそのまま採用して当該今回距離値LXに基づく安全制御を実行すると後に詳述するような不都合が生じる可能性があるために前記距離値の変化に対応する安全制御の変化を抑制すべきであること、つまり前記制御変化抑制を行うべきであること、を判定するために設定された条件であり、この実施の形態では、次の2つの条件A及び条件Bがともに成立することを要求する。
【0066】
(条件A)前記今回距離値LXが前回距離値LXpよりも大きいこと(LX>LXp:ステップS3でYES)。前記前回距離値LXpは前回取得された距離値である。
【0067】
(条件B)前記今回距離値LXと前記前回距離値LXpとの差が予め設定された許容距離差ΔLxoを上回ること(LX-LXp>ΔLXo:ステップS4でYES)。
【0068】
換言すれば、前記変化抑制条件が満たされない場合には、通常通りの安全制御が実行される。具体的には次のとおりである。
【0069】
まず、前記今回距離値LXが前記前回距離値LXpを上回らない場合(ステップS3でNO)、つまり、当該距離値が増大方向に変化していない場合(検知対象物の位置情報が前記基準位置から遠ざかる方向に変化していない場合)、前記コントローラ70は、検知回数カウント値CTを0にクリアした上で(ステップS5)、前記今回距離値LXに基づく制御を実行する(ステップS6)。前記検知回数カウント値CTは、前記制御変化抑制が開始されてからの前記サンプリング周期ごとの検知回数をカウントするために設定される値である。「前記今回距離値LXが前記前回距離値LXpを上回らない場合」には、前記今回距離値LXが前記前回距離値LXp以下である場合(LX≦LXp)だけでなく、前記前回距離値LXp及び前記今回距離値LXのいずれも取得されなかった場合(つまり前回及び今回のいずれにおいても前記対象物検知器60R,60L,60Bの何れによっても検知対象物の存在が検知されなかった場合)、及び、当該前回距離値LXpが取得されずに今回距離値LXがはじめて取得された場合(つまり前回の位置情報取得時には前記対象物検知器60R,60L,60Bの何れによっても検知対象物の存在が検知されなかったが今回の位置情報取得時において当該検知対象物の存在がはじめて検知された場合)も含まれる。
【0070】
「前記今回距離値LXに基づく制御」(ステップS6)は、前記今回距離値LXが取得されているか否かの判定に基づく安全制御の要否の判定も含む。例えば、前記対象物検知器60R,60L,60Bの何れによっても検知対象物が検知されていない場合、安全制御は実行されない。これに対し、前記今回距離値LXが取得されている場合であって当該今回距離値LXが前回距離値LXp以下である場合、つまり、基準位置に対する検知対象物の位置が変わっておらず、あるいは基準位置に検知対象物が近づいていると判断される場合、当該今回距離値LXに基づく速度制限制御、警報制御及び表示制御が実行される。
【0071】
具体的に、前記安全制御判定部74は、前記距離値LXと速度制限度合いとの関係について予め設定された情報を例えば関係式やマップの形式で記憶し、当該情報に基づいて速度制限度合いを決定する。これに対応して前記コントローラ70の前記旋回制限指令部76及び走行制限指令部78の少なくとも一方が制限指令信号の生成及び出力を行う。前記距離値LXが取得された場合であっても当該距離値LXが予め設定された許容距離値LXoを上回る場合には速度制限を行わないように前記コントローラ70が構成されてもよい。つまり、速度制限条件としてLX>LXoという条件が設定されてもよい。
【0072】
前記安全制御は、前記今回距離値LXが取得された場合(つまり検知対象物が検知された場合)に常に行われてもよいし、前記パイロット圧センサ52R,52L,53F,53B,54F,54Bにより検出される操作(旋回操作及び走行操作)が前記検知対象物に前記油圧ショベルを近づける向きの操作である場合にのみ実行されてもよい。また、前記速度制限制御は、前記旋回動作及び前記走行動作の全てについて行われてもよいが、これらの動作のうち前記検知対象物に前記上部旋回体12(または前記上部旋回体12及び下部走行体11)が近づく動作についてのみその速度を制限するものであることが好ましい。例えば、
図2に示される姿勢において右対象物検知器60Rまたは左対象物検知器60Lによってのみ検知対象物が検知され、後対象物検知器60Bによっては検知対象物が検知されていない場合、前記走行動作の制限はされなくてもよい。このように、検知対象物の具体的な位置と操作の方向とに応じて制限すべき動作を決定することは、不必要な動作制限による作業性の低下を抑制することを可能にする。
【0073】
前記今回距離値LXが前記前回距離値LXpより大きい場合であってもその差(=Lx-Lxp)が前記許容距離差ΔLXo未満である場合には(ステップS4でNO)、やはり今回距離値LXに基づく制御が行われる(ステップS6)。つまり、前記制御変化抑制は行われない。前記差が小さい場合、つまり、前記位置情報の変化が小さい場合、にはこれに追従して今回距離値LXに基づく安全制御が実行されても当該安全制御の変化が小さくて実質的な不都合(安全制御の著しい不安定化)が生じないためである。換言すれば、このような不都合が生じない程度に前記許容距離差ΔLXoが設定されることが、好ましい。このことは、安全制御の安定性を確保しながら作業効率の低下を有効に抑制することを可能にする。
【0074】
一方、前記変化抑制条件が満たされている場合、すなわち、前記今回距離値LXが前記前回距離値LXpよりも大きく(ステップS3でYES)、かつ、その差(=LX-LXp)が前記許容距離差ΔLXoを上回る場合(ステップS4でYES)、前記コントローラ70は、前記サンプリング周期ごとの前記位置情報の取得が所定回数だけ行われるまで前記制御変化抑制を行う。具体的に、前記コントローラ70は、前記検知回数カウント値CTをインクリメントする、つまり、当該検知回数カウント値CTに1を加えた値を新たな検知回数カウント値CTに更新し(ステップS7)、その更新された検知回数カウント値CTが前記所定回数に相当する所定カウント値CTo(例えば4)に到達するまでは前回距離値LXoに基づく制御を実行する(ステップS8でNO及びステップS9)。例えば、前回距離値LXoに比べて今回距離値LXが著しく増大した場合、つまり、今回取得された位置情報に限ってみれば検知対象物が基準位置に対して離れる方向(つまり安全方向)に大きく相対移動していると判断される場合、であっても、前回取得された位置情報に対応する前回距離値LXoに基づく安全制御が継続される。つまり、安全制御の緩和が一旦保留される。このことは、後に詳述するような前記位置情報の一時的な乱れに起因して安全制御が不安定になることを抑止し、より高い安全性を確保することを可能にする。
【0075】
前記検知回数カウント値CTが前記所定カウント値CToに到達した時点(ステップS8でYES)、つまり、前記制御変化抑制が開始されてから前記サンプリング周期に前記所定回数を乗じた時間が経過した時点、で前記コントローラ70は前記検知回数カウント値CTを0にリセットして(ステップS5)今回距離値LXに基づく通常の安全制御を再開する(ステップS6)。つまり、前記制御変化抑制を解除する。
【0076】
以下、前記制御変化抑制の効果についてより具体的に説明する。
【0077】
前記安全制御は、前記のように周期的に取得される位置情報に基づくものであるが、当該位置情報には乱れが生じやすい。特に、前記対象物検知器60R,60L,60Bとして比較的安価な撮像装置、例えば単眼カメラ、により構成されて当該撮像装置により取得される画像の処理により検知対象物の特定及びその検知距離(基準位置からの距離)の測定が行われる場合、検知対象物の前記位置情報の乱れの可能性はより顕著となる。
【0078】
具体的に、単眼カメラの画像処理による測距は、当該カメラの配設位置の高さ及び角度と、撮影画像において検知対象物が検知される領域の位置と、に基づく距離の算出、あるいは、検知対象物の特定部位の位置(例えば人の足元の位置)を基準とする距離の算出、により実現されるが、いずれの場合にも測定値には大きなばらつきが生じる可能性がある。例えば、人の足元位置を基準とする測距では、地面や背景による影響で当該足元位置が正確に抽出されず、大きくばらつく可能性がある。さらに、人の足元が他の物体の後ろに隠れて足元位置が特定できない場合、人体の他の部位(例えば頭部)のサイズ及び画像上の位置に基づいて距離が推定されることになるが、このような推定値は前記人体と背景との相対関係や人体の向きに大きく影響を受けやすく、ばらつきがさらに大きくなるおそれがある。条件によっては検知対象物が存在するにもかかわらず一時的に非検知となったり、逆に、存在しない物体を誤検知したりするおそれがある。
【0079】
このように乱れが生じやすい前記位置情報に無条件で即時対応して前記安全制御を実施した場合、当該安全制御は不安定となりやすい。例えば、当該安全制御が前記速度制限制御を含む場合、前記位置情報の乱れに対応して制限対象動作の速度の制限度合いを変化させると当該制限対象動作がぎくしゃくしたものになり易い。また、前記安全制御が前記警報制御または前記表示制御を含む場合には当該警報または表示による警告動作がいたずらに不連続となるおそれがある。さらに、基準位置からの検知対象物の距離が変化しておらず、または減少しているにもかかわらず、当該距離が増大方向(基準位置から遠ざかる方向)に誤検知された場合、前記安全制御が不適当に緩和ないし中断されるおそれがある。
【0080】
図6は、前記実施の形態において取得される前記距離値LXの時間変化の第1の例であって、特定期間TLにおいて何らかの原因により検知対象物の検知が誤って一時的に途絶えた例を示す。この第1の例において、前記非検知による位置情報の一時的な乱れにかかわらず前記距離値LXにそのまま対応して速度制限制御が実行されたとすると、
図7に実線で示されるように前記特定期間TLでは制限指令(同図では旋回制限指令)が一時的に生成されなくなり、このことは
図8に示されるようなパイロット圧(同図では旋回パイロット圧)の不適切な上昇、つまり速度制限の不適切な緩和(加速)、を招く。これに対し、
図5に示されるような前回距離値LXpに基づく安全制御の継続(ステップS9)、つまり、
図6に破線で示されるような前回距離値LXpの保持、は前記位置情報の一時的な乱れにかかわらず
図7に破線で示されるように制限指令(同図では旋回制限指令)を維持して
図8に示されるようなパイロット圧(旋回パイロット圧)の不適当な上昇(速度制限の不適切な緩和)を防ぐ。また、前記安全制御が前記警報制御または前記表示制御を含む場合、前記位置情報の乱れによる警告の不適当な中断も防ぐことが可能である。
【0081】
図9は、前記実施の形態において取得される距離値の時間変化の第2の例であって当該距離値が複数の期間において一時的に誤って増大した例を示す。この第2の例においても、もし仮に前記距離の誤測定に起因する位置情報の一時的な乱れにかかわらず前記距離値LXにそのまま対応して速度制限制御が実行されたとすると、
図10に実線で示されるように制限指令(同図では旋回制限指令)が一時的に小さくなり(つまり速度制限が緩和され)、第1の例と同様にパイロット圧(同図では旋回パイロット圧)の不適切な上昇を招くおそれがある。これに対し、前記のような制御変化抑制の実行は、前記距離値LXの一時的な増大にかかわらず
図10に破線で示されるように制限指令(同図では旋回制限指令)を一定に保持して速度制限の不適切な緩和(つまり加速)を防ぐことを可能にする。また、前記安全制御が前記警告制御を含む場合に前記警告動作の不適当な中断も防ぐことが可能であることも、前記第1の例と同様である。
【0082】
一方、前記変化抑制条件が満たされない場合、特に前記今回距離値LXが前記前回距離値LXp以下である場合(
図5のステップS3でNO)、つまり、前回情報及び今回情報に基づくと前記基準位置に対する検知対象物の相対位置が変化しておらずあるいは前記基準位置に近づいていると判断される場合には、今回距離値LXに基づく通常の安全制御を実行することにより(ステップS6)、高い安全性を確保することが可能である。
【0083】
前記のような位置情報の乱れに起因する安全制御の不安定化は、
図11に破線で示すような距離値LXの平滑化(同図の例では移動平均)によっても抑制可能であるが、この場合、本来の安全制御により取得される安全性を確保することが難しい。具体的に、
図11に示す例では、実線で示されるような実際の距離値LXがLX1であるときに破線で示される平滑化後の距離値は当該距離値LX1よりも同図に矢印A1で示される分だけ大きな値となり、その分だけ安全制御が緩和されることになる。また、前記距離値LXが前記値LX1まで減少したと判断されるタイミングが前記移動平均によって時間T1だけ遅れ、その分だけ検知対象物が作業機械に近づいてしまうおそれがある。これに対し、前記変化抑制条件が満たされるときにのみ前記制御変化抑制を実行することは、安全制御により確保される高い安全性を担保しながら当該安全制御を安定化させることを可能にする。
【0084】
本発明は以上説明した実施の形態に限定されない。本発明は、例えば次のような態様を包含する。
【0085】
(1)制御変化抑制について
本発明に係る制御変化抑制は、前記のように前回距離値LX(前回情報)に基づく安全制御をそのまま維持するもの、つまり、前回情報をそのまま保持するもの、に限定されない。例えば、前記安全制御が前記速度制限制御を含む場合、前記制御変化抑制は、前記前回情報から前記今回情報への前記位置情報の変化を鈍らせることにより得られる当該位置情報に基づいて速度制限を行うことにより速度制限の緩和を間接的に鈍らせるものであってもよいし、前記前回情報から前記今回情報への変化に対応する速度の制限の緩和そのものを直接鈍らせることであってもよい。
【0086】
図12は、速度制限の緩和そのものを直接鈍らせる例として前記旋回制限指令の変化率を制限するいわゆるレートリミッタが適用された例を示す。同図において、前記旋回制限指令が時間経過とともに減少していて前記変化抑制条件が満たされている期間TAでは、当該旋回制限指令の時間減少率が一定以下に抑えられることにより、当該旋回制限指令の変化が滑らかにされるとともに、当該旋回制限指令の減少そのものも抑制されて不適当な制限の緩和が抑制されている。一方、前記旋回制限指令が増加していて前記変化抑制条件が満たされていない期間TBでは、取得される位置情報(今回情報)に基づいて算定される旋回制限指令がそのまま速度制限に適用されることにより、高い安全性が確保される。このような効果は、前記旋回制限指令に対して他の平滑化手段、例えば
図11に示される移動平均、を変化抑制条件が満たされている場合にのみ(
図12に示す例では期間TAでのみ)実施することや、前記旋回制限指令と同じように前記位置情報(例えば
図6,
図9に示される距離値LX)を平滑化することによっても、同様に得ることが可能である。
【0087】
また、前記制御変化抑制が行われる期間は、前記実施の形態のように検知回数に基づいて設定されるものではなく、時間そのものによって設定されてもよい。
【0088】
(2)変化抑制条件について
本発明に係る変化抑制条件は、少なくとも今回情報が前回情報よりも基準位置から遠ざかる方向に変化していること(前記実施の形態では前記条件A)を含んでいればよく、それ以外の条件は省略あるいは任意に設定されることが可能である。例えば、前記条件B(今回距離値LXと前回距離値LXpとの差が許容距離差ΔLXoを上回ること)に代え、またはこれに加え、今回情報に関する前記検知対象物についての前記位置情報が既に予め設定された回数以上取得されていることをさらに含んでもよい。このことは、検知対象物の存在が一時的に誤検知された場合に前記制御変化抑制が不適切に実行されるのを防ぐことを可能にする。
【0089】
(3)位置情報及び位置情報取得部について
本発明に係る位置情報は、作業機械について設定された基準位置に対する検知対象物の相対位置についての情報であればよく、当該基準位置から当該検知対象物の距離についての情報のみを含むものであってもよいし、それ以外の情報を含んでもよい。例えば、前記下部走行体10に対する前記上部旋回体12の旋回角度を検出する旋回角度センサが備えられて当該旋回角度センサにより検出される旋回角度に基づいて前記検知対象物の位置座標が特定されてもよい。
【0090】
また、前記基準位置は、必ずしも対象物検知器の配設位置でなくてもよく(つまり前記距離は前記対象物検知器から検知対象物までの距離でなくてもよく)、作業機械の他の部位、あるいは作業機械の周囲に設定された位置であってもよい。例えば、前記対象物検知器により生成される検知信号に基づいて作業機械のうち前記検知対象物に最も近い部位が特定されて当該部位の位置が前記基準位置に設定されてもよい。つまり、前記距離として常に最短距離が算定されるように、前記基準位置が設定されてもよい。
【0091】
また、本発明に係る位置情報取得部を構成する対象物検知器は撮像装置を含むものに限られない。例えば、検知対象物に特別な限定がない場合(つまり検知対象物の特定が不要である場合)、前記対象物検知器は赤外線深度センサやミリ波レーダといった距離検出器であってもよい。あるいは、単眼カメラではなく三次元情報を生成することが可能な撮像装置、例えばステレオカメラであってもよい。ただし、位置情報取得部が前記のような撮像装置と画像処理との組み合わせを含むものでは、安価な撮像装置を用いながら検知対象物の判別が可能であるという利点を有する反面、位置情報の乱れが生じやすいため、本発明に係る前記安全制御及び前記制御変化抑制の適用はより有効となる。
【0092】
(4)速度制限制御について
本発明において速度制限制御が実行される場合、当該速度制限制御の実行のための具体的な手段は限定されない。例えば、前記旋回操作器42や前記走行操作器43,44が電気レバー装置、つまりオペレータにより入力された操作に対応する電気信号を生成してコントローラ入力する装置、であり、当該コントローラが当該電気信号に基づいてパイロット油圧源と制御弁(例えば前記旋回制御弁36及び前記走行制御弁37,38)との間にそれぞれ介在する電磁弁を操作するように構成されている作業機械では、当該電磁弁に入力される指令を変化させることにより前記速度制限(つまり前記操作に対応する速度よりも実際の速度を抑えること)が行われてもよい。
【0093】
また、前記実施の形態では、前記基準位置から前記検知対象物までの距離のみに基づいて実行されるべき速度制限制御が判定されるが、本発明では、作業機械の周囲に速度制限領域が設定されて当該速度制限領域に検知対象物が存在すると認定された場合にのみ前記速度制限制御を実行するように制御部が構成されてもよい。例えば、
図2に示される油圧ショベルの周囲(後方及び左右側方)に前記対象物検知器60R,60L,60Bの検知範囲にそれぞれ応じて二点鎖線で示されるような右側方領域AR1,AR2、後方領域AB1,AB2及び左側方領域AL1,AL2が設定され、検知対象物がいずれの領域に存在するかによって速度を制限すべき(または強制停止させるべき)動作(旋回動作または走行動作)を決定するように前記安全制御判定部74が構成されてもよい。
【符号の説明】
【0094】
10 下部走行体
12 上部旋回体
30 ポンプユニット
32 旋回モータ
36 旋回制御弁
42 旋回操作器
46L 左旋回操作弁
46R 右旋回操作弁
60R,60L,60B 対象物検知器
62 警報器
64 表示装置
70 コントローラ
72 位置情報生成部
74 安全制御判定部
76 旋回制限指令部
78 走行制限指令部
82 警報指令部
84 表示指令部