(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】調光モジュール
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20231219BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1343
(21)【出願番号】P 2022109229
(22)【出願日】2022-07-06
(62)【分割の表示】P 2018510637の分割
【原出願日】2017-04-05
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2016076133
(32)【優先日】2016-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100209048
【氏名又は名称】森川 元嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲志
(72)【発明者】
【氏名】牧大 公一
(72)【発明者】
【氏名】長井 暁子
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-253995(JP,A)
【文献】特開平04-286081(JP,A)
【文献】特開昭59-215857(JP,A)
【文献】特開2013-219025(JP,A)
【文献】特開2008-106107(JP,A)
【文献】特開2004-012818(JP,A)
【文献】中国実用新案第204347397(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1343
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加電圧により透明状態と不透明状態とを切り替え可能な調光層と、透明導電材料により形成された第1電極と、前記調光層を介して前記第1電極と対向して配置され、透明導電材料により形成された第2電極と、を含む調光シートと、
前記調光シートの前記第1電極および前記第2電極に電圧を印加する駆動回路と、を備え、
前記第1電極および前記第2電極に電圧を印加する給電部に最も近い前記調光シートの領域における直線透過率が52.729%となる電圧を印加したときに、前記給電部から最も離れた前記調光シートの領域における直線透過率が13.266%よりも高
く、
前記調光シートは、前記第1電極上に配置され前記第1電極と電気的に接続し、前記第1電極よりも電気的抵抗が低い材料により形成された第1配線と、前記第2電極上に配置され前記第2電極と電気的に接続し、前記第2電極よりも電気的抵抗が低い材料により形成された第2配線と、を含み、前記第1配線と前記第2配線とは網目状に配置され、
前記第1配線は前記第1電極上に配置され、前記第1電極の長手方向と略平行に延びた複数の第1配線部と、前記第1電極の幅方向と略平行に延び、隣接した前記第1配線部を電気的に接続する複数の第2配線部と、を備え、前記第1電極の幅方向に隣接した前記第2配線部は、前記第1電極の長手方向における異なる位置に配置され、
前記第2配線は前記第2電極上に配置され、前記第2電極の長手方向と略平行に延びた複数の第3配線部と、前記第2電極の幅方向と略平行に延び、隣接した前記第3配線部を電気的に接続する複数の第4配線部と、を備え、前記第2電極の幅方向に隣接した前記第4配線部は、前記第2電極の長手方向における異なる位置に配置され、
前記第1配線部と前記第3配線部とは、前記調光層を介して互いに対向していない、調光モジュール。
【請求項2】
印加電圧により透明状態と不透明状態とを切り替え可能な調光層と、透明導電材料により形成された第1電極と、前記調光層を介して前記第1電極と対向して配置され、透明導電材料により形成された第2電極と、を含む調光シートと、
前記調光シートの前記第1電極および前記第2電極に電圧を印加する駆動回路と、を備え、
前記第1電極および前記第2電極に電圧を印加する給電部に最も近い前記調光シートの領域における直線透過率が52.729%となる電圧を印加したときに、前記給電部から最も離れた前記調光シートの領域における直線透過率が13.266%よりも高く、
前記第1電極が、前記調光シートと前記第1電極と前記第2電極とが積層する方向と略直交した仮想平面上に、複数の島状に分離してマトリクス状に配置され、
前記第2電極が、前記仮想平面と略平行な平面上に、前記第1電極と対向するように、複数の島状に分離してマトリクス状に配置され、
第1方向に並んだ複数の前記第1電極と電気的に接続した第1配線を複数備え、
前記第1方向と異なる第2方向に並んだ複数の前記第2電極と電気的に接続した第2配線を複数備え、
複数の前記第1電極の各々において、前記第1配線から前記第1電極への前記給電部に最も近い前記調光シートの領域における直線透過率が52.729%となる電圧を印加したときに、前記第1電極への前記給電部から最も離れた前記調光シートの領域における直線透過率が13.266%よりも高く、
複数の前記第2電極の各々において、前記第2配線から前記第2電極への前記給電部に最も近い前記調光シートの領域における直線透過率が52.729%となる電圧を印加したときに、前記第2電極への前記給電部から最も離れた前記調光シートの領域における直線透過率が13.266%よりも高い、調光モジュール。
【請求項3】
複数の前記第1配線のそれぞれは、前記第1方向に並んだ複数の前記第1電極の行の間において、前記第1方向に延びて配置され、
複数の前記第2配線のぞれぞれは、前記第2方向に並んだ複数の前記第2電極の列の間において、前記第2方向に延びて配置されている、請求項
2記載の調光モジュール。
【請求項4】
複数の前記第1電極を支持する第1基材と、
複数の前記第2電極を支持する第2基材と、を更に備え、
複数の前記第1配線のそれぞれは、前記第1基材を介して前記第1方向に並んだ複数の前記第1電極の行と対向して配置され、前記第1基材に設けられたスルーホールを介して対向する複数の前記第1電極と電気的に接続し、
複数の前記第2配線のそれぞれは、前記第2基材を介して前記第2方向に並んだ複数の前記第2電極の列と対向して配置され、前記第2基材に設けられたスルーホールを介して対向する複数の前記第2電極と電気的に接続している、請求項
2記載の調光モジュール。
【請求項5】
前記第1配線および前記第2配線の幅は20μm以下である、請求項
1記載の調光モジュール。
【請求項6】
前記調光層は、高分子分散型液晶、或いは高分子ネットワーク型液晶により構成される、請求項1乃至請求項
5のいずれか1項記載の調光モジュール。
【請求項7】
前記第1配線および前記第2配線は銅配線を含む、請求項2記載の調光モジュール。
【請求項8】
前記駆動回路へ供給する電力を蓄える蓄電池と、
前記蓄電池へ充電電流を供給する太陽電池と、を更に備えた、請求項1乃至請求項
7のいずれか1項記載の調光モジュール。
【請求項9】
前記調光シートを支持する透明基材を更に備え、
前記太陽電池は前記透明基材上に配置され、透明または半透明である、請求項8記載の調光モジュール。
【請求項10】
前記調光シートを支持する透明基材と、
前記調光シートおよび前記透明基材の周囲を保持する枠体と、を更に備え、
前記太陽電池は前記枠体上に配置されている、請求項9記載の調光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光モジュールに関し、特に、不透明状態と透明状態とを切り替え可能な調光シートを備えた調光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
不透明状態(あるいは白濁状態)と透明状態とを切り替え可能な調光シートは様々な用途で用いられている。例えば、調光シートは、電極間に保持された液晶層を備え、電極に印加する電圧により液晶層に含まれる液晶分子の配向状態を変化させて、入射した光を散乱する不透明状態と、入射した光を透過する透明状態とを切り替え可能に構成されている。(例えば特開2014-146051号公報参照)
調光シートは、例えばガラス等の透明基材に固定することにより、窓ガラスや展示ウィンドウ、間仕切りなどに採用することが可能となり、例えばプライベート空間とパブリック空間とを分離するため等、空間を分離する設備として用いることが可能となる。
【0003】
また、調光シートと太陽電池とを組み合わせて、太陽電池からの電力により調光シートを駆動する発電窓システムが提案されている。(例えば特開2015-151798号公報参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、調光シートの電極としてITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、有機導電膜などの透明導電膜を用いると配線抵抗が高くなり、電極面上で電圧勾配が生じ、駆動する調光シートの面積が大きくなると、透過率のムラが生じることを抑制するために駆動電圧を高くする必要があった。
【0005】
図18は、調光シートの電極の一端から印加する電圧に対する、調光シートの直進透過率の値を給電位置からの距離毎に例示する図である。この例では、調光シートの直線透過率は中間調を含めた3段階(透明、中間調、および、白濁)で変化するものとする。
【0006】
図18では、給電位置に最も近い調光シートの領域における、印加電圧に対する直線透過率の変化の一例を実線で示している。給電位置から近い順に、破線a、破線b、破線cにより、調光シートの領域における印加電圧に対する直線透過率の変化の一例を示している。
【0007】
図18に示す例によれば、調光シートの給電位置から離れた領域ほど、給電電圧に対する直線透過率は低くなっている。これは、透明導電膜の配線抵抗により電圧降下が発生し、給電位置から離れた領域ほど調光層に印加される実効電圧が低下する為である。
【0008】
上記のように、面積の大きい調光シートの全ての領域が透明であると認識されるように駆動するには駆動電圧を高くする必要があり、駆動電力を低く抑えることは困難であった。そのため、例えば太陽電池からの電力のみにより、面積の大きい調光シートを駆動することは困難であった。また、太陽電池からの電力を蓄える蓄電池を用いる場合には、十分大きな容量の蓄電池を搭載する必要があり、調光シートを搭載する機器の外形が大型化したり、重量化するなどの可能性があった。また、面積の大きな調光シートについて、全面の直線透過率の均一性を確保することが困難であり、調光モジュールの品質を低下させる可能性があった。
【0009】
十分な駆動電源を確保するために、調光シートを固定電源と接続すると、接続するための配線が必要となるため調光シートを移動可能に構成することが困難であり、例えば、可動式の窓ガラスや間仕切りとして用いることが困難であった。
【0010】
また、電極の膜厚を大きくすると配線抵抗を低くすることができるが、調光シートの透過率が低下し、調光シートの品質が劣化してしまう。
【0011】
本発明は上記事情を鑑みて成されたものであって、透過率のムラが認識されることを抑制した調光シートを備えた調光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態による調光モジュールは、印加電圧により透明状態と不透明状態とを切り替え可能な調光層と、透明導電材料により形成された第1電極と、前記調光層を介して前記第1電極と対向して配置され、透明導電材料により形成された第2電極と、を含む調光シートと、前記調光シートの前記第1電極および前記第2電極に電圧を印加する駆動回路と、を備え、前記第1電極および前記第2電極に電圧を印加する給電部に最も近い前記調光シートの領域における直線透過率が52.729%となる電圧を印加したときに、前記給電部から最も離れた前記調光シートの領域における直線透過率が13.266%よりも高く、前記調光シートは、前記第1電極上に配置され前記第1電極と電気的に接続し、前記第1電極よりも電気的抵抗が低い材料により形成された第1配線と、前記第2電極上に配置され前記第2電極と電気的に接続し、前記第2電極よりも電気的抵抗が低い材料により形成された第2配線と、を含み、前記第1配線と前記第2配線とは網目状に配置され、前記第1配線は前記第1電極上に配置され、前記第1電極の長手方向と略平行に延びた複数の第1配線部と、前記第1電極の幅方向と略平行に延び、隣接した前記第1配線部を電気的に接続する複数の第2配線部と、を備え、前記第1電極の幅方向に隣接した前記第2配線部は、前記第1電極の長手方向における異なる位置に配置され、前記第2配線は前記第2電極上に配置され、前記第2電極の長手方向と略平行に延びた複数の第3配線部と、前記第2電極の幅方向と略平行に延び、隣接した前記第3配線部を電気的に接続する複数の第4配線部と、を備え、前記第2電極の幅方向に隣接した前記第4配線部は、前記第2電極の長手方向における異なる位置に配置され、前記第1配線部と前記第3配線部とは、前記調光層を介して互いに対向していない。
【0015】
また、実施形態による調光モジュールは、複数の前記第1電極が、前記調光シートと前記第1電極と前記第2電極とが積層する方向と略直交した仮想平面上にマトリクス状に配置され、複数の前記第2電極が、前記仮想平面と略平行な平面上に、複数の前記第1電極と対向するようにマトリクス状に配置され、第1方向に並んだ複数の前記第1電極と電気的に接続した第1配線を複数備え、前記第1方向と異なる第2方向に並んだ複数の前記第2電極と電気的に接続した第2配線を複数備え、複数の前記第1電極の各々において、前記第1配線から前記第1電極への前記給電部に最も近い前記調光シートの領域における直線透過率が52.729%となる電圧を印加したときに、前記第1電極への前記給電部から最も離れた前記調光シートの領域における直線透過率が13.266%よりも高く、複数の前記第2電極の各々において、前記第2配線から前記第2電極への前記給電部に最も近い前記調光シートの領域における直線透過率が52.729%となる電圧を印加したときに、前記第2電極への前記給電部から最も離れた前記調光シートの領域における直線透過率が13.266%よりも高いものである。
【0016】
また、実施形態による調光モジュールにおいて、複数の前記第1配線のそれぞれは、前記第1方向に並んだ複数の前記第1電極の行の間において、前記第1方向に延びて配置され、複数の前記第2配線のぞれぞれは、前記第2方向に並んだ複数の前記第2電極の列の間において、前記第2方向に延びて配置されている。
【0017】
また、実施形態による調光モジュールは、複数の前記第1電極を支持する第1基材と、複数の前記第2電極を支持する第2基材と、を更に備え、複数の前記第1配線のそれぞれは、前記第1基材を介して前記第1方向に並んだ複数の前記第1電極の行と対向して配置され、前記第1基材に設けられたスルーホールを介して対向する複数の前記第1電極と電気的に接続し、複数の前記第2配線のそれぞれは、前記第2基材を介して前記第2方向に並んだ複数の前記第2電極の列と対向して配置され、前記第2基材に設けられたスルーホールを介して対向する複数の前記第2電極と電気的に接続している。
【0018】
また、実施形態による調光モジュールにおいて、前記第1配線および前記第2配線の幅は20μm以下である。
また、実施形態による調光モジュールにおいて、前記調光層は、高分子分散型液晶、或いは高分子ネットワーク型液晶により構成される。
【0019】
また、実施形態による調光モジュールにおいて、前記第1配線および前記第2配線は銅配線を含む。
また、実施形態による調光モジュールは、前記駆動回路へ供給する電力を蓄える蓄電池と、前記蓄電池へ充電電流を供給する太陽電池と、を更に備えるものである。
また、実施形態による調光モジュールは、前記調光シートを支持する透明基材を更に備え、前記太陽電池は前記透明基材上に配置され、透明または半透明である。
【0020】
また、実施形態による調光モジュールは、前記調光シートを支持する透明基材と、
前記調光シートおよび前記透明基材の周囲を保持する枠体と、を更に備え、前記太陽電池は前記枠体上に配置されている。
【0021】
本発明によれば、透過率のムラが認識されることを抑制した調光シートを備えた調光モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、一実施形態の調光モジュールの構成の一例を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す調光モジュールの線II-IIにおける断面の一例を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、一実施形態の調光モジュールの調光シートの構成の一例を説明するための平面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態の調光モジュールの構成の一例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の調光モジュールの電極の構成例を説明するための断面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す調光シートについて第1配線および第2配線の構成例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の調光モジュールの駆動回路の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図8】
図8は、第1実形態の調光モジュールの駆動回路の他の例を概略的に示すブロック図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の調光モジュールの調光シートの構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図10】
図10は、
図9に示す調光シートの線IX-IXにおける断面の一例を概略的に示す図である。
【
図11A】
図11Aは、調光モジュールの調光シートの電極構成について説明するための図である。
【
図11B】
図11Bは、調光モジュールの調光シートの電極構成について説明するための図である。
【
図12】
図12は、第3実施例の調光モジュールの断面の一例を概略的に示す図である。
【
図13】
図13は、第4実施例の調光モジュールの調光シートの構成を概略的に示す断面図である。
【
図14】
図14は、第4実施例の調光モジュールの調光シートの構成を概略的に示す分解斜視図である。
【
図15】
図15は、第4実施例の調光モジュールの駆動回路の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図16】
図16は、第5実施例の調光モジュールの調光シートの構成を概略的に示す断面図である。
【
図17】
図17は、第5実施例の調光モジュールの調光シートの構成を概略的に示す分解斜視図である。
【
図18】
図18は、調光シートの電極の一端から印加する電圧に対する、調光シートの直進透過率の値を給電位置からの距離毎に例示する図である。
【
図19】
図19は、一実施形態の調光モジュールの調光シートと太陽電池との構成の一例を説明するための図である。
【
図20】
図20は、一実施形態の調光モジュールの操作部の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、複数の実施形態の調光モジュールについて、図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らないことに留意すべきである。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0024】
図1は、一実施形態の調光モジュールMDLの構成の一例を概略的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示す調光モジュールMDLの線II-IIにおける断面の一例を概略的に示す図である。なお、以下の説明において、調光モジュールMDLの、短辺(幅)方向を第1方向X、長辺(長手)方向を第2方向Y、厚さ(積層)方向を第3方向Zとする。
【0025】
本実施形態の調光モジュールMDLは、透明基材10と、太陽電池20と、調光シート30と、枠体40と、を備えている。透明基材10と太陽電池20と調光シート30とは、第3方向Zに積層している。
【0026】
透明基材10は、例えば、ガラスやアクリル樹脂等の透明絶縁基材である。透明基材10は、後述する太陽電池20および調光シート30を支持し、透明基材10の厚さは、建材用、車両用、自動車用、航空機用、船舶用など用途に応じて適切なものを採用することが望ましい。調光モジュールを建材として用いる場合には、例えば調光モジュールMDLの厚さが少なくとも3mm以上となるガラスを透明基材10として用いることができる。
【0027】
太陽電池20は、太陽光や照明光などの光エネルギーを電力エネルギーに変換して出力する光電変換部である。太陽電池20は、透明基材10の一方の面上に積層して設けられた透光性(透明あるいは半透明)の光電変換部である。太陽電池20は、透明基材10上に直接形成されていてもよく、透明基材10とは異なる基材上に形成された状態で、透明基材10上に積層されても構わない。
【0028】
調光シート30は、太陽電池20上に配置されている。調光シート30は、印加される電圧により透明状態と散乱状態(不透明状態)とを切り替え可能なフィルムである。さらに、調光シート30は、印加される電圧により、透明状態と散乱状態との間の中間調とを切り替え可能である。調光シート30が透明状態のときには、調光シート30の一方側から他方側を視認可能である。調光シート30が不透明状態のときには、調光シート30の一方側から他方側を視認できなくなる。
【0029】
なお、本実施形態では、調光シート30は、電圧を印加していないときには散乱状態であり、印加する電圧を大きくすると散乱状態から透明状態へと切り替わる、ノーマルタイプの調光層を備えているものとする。しかしながら、調光シート30は、上記ノーマルタイプの構成に限定されるものではなく、電圧を印加していないときに透明状態であり、印加する電圧を大きくすると透明状態から散乱状態へと切り替わる、リバースタイプの調光層を備えていても構わない。
【0030】
調光シート30は、例えば、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)、又は高分子ネットワーク型液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)から選択される液晶を含む液晶層を、調光層として備えている。調光層は透明電極間に配置される。調光シート30の直進透過率は、透明電極間に印加される電圧により制御される。本実施形態において、調光層は、例えば略20μmの厚さである。
【0031】
なお、調光シート30の液晶層は上記構成に限定されるものではない。例えば、調光シート30は、エレクトロクロミック材料を用いて透過率を制御可能に構成された調光層を備えてもよく、また高分子液晶材料以外により構成された液晶層を調光層として備えてもよい。調光層としての液晶層は、配向方式として、例えば、TN方式、VA方式、IPS方式、OCB方式など種々の配向方式を採用することが可能である。
【0032】
枠体40は、透明基材10と、太陽電池20と、調光シート30との周囲を囲むように保持している。例えば、枠体40は、透明基材10、太陽電池20、および、調光シート30の端部との間に空間が形成されるように構成されている。枠体40内の空間には、回路基板(図示せず)や蓄電池等を収容可能である。
【0033】
図3は、一実施形態の調光モジュールの調光シートの構成の一例を説明するための平面図である。調光シート30は、調光層に電圧を印加する給電部PINを有している。給電部PINは、略矩形状の調光シート30の1つの角近傍に設けられている。
【0034】
ここで、調光シート30は仮想的な単位面積ごとの領域「1」~「84」から成るものであるとする。なお、給電部PINは、調光シート30の領域「1」に設けられている。したがって、給電部PINに最も近い領域は「1」であり、給電部PINから最も離れた領域は「84」となる。
【0035】
調光シート30の調光層は透明電極間に配置され、給電部PINより透明電極に印加される電圧により透明状態と散乱状態とに切替えられる。調光シート30の面積が大きくなると、給電部PINから離れた調光シート30の領域では、透明電極の抵抗により電圧降下が発生し、調光層に印加される実効電圧が低下する。給電部PIN近傍と、給電部PINから離れた位置とにおいて実効電圧の差が大きくなると、給電部PIN近傍では調光シート30が透明となり、給電部PINから離れた位置では調光シート30が不透明となってしまう。
【0036】
そこで、本実施形態では、調光シート30の平面方向(X-Y方向)における直進透過率の傾斜(最大電圧勾配)を小さくし、透過率の均一性を確保(透過率のムラが認識されることを抑制)するために、給電位置近傍の単位面積領域において調光層に印加される電圧(実効電圧)と、給電位置から離れた単位面積領域において調光層に印加される電圧(実効電圧)との差を、所定の値以下としている。
【0037】
以下に、給電部PINの近傍の調光シート30の領域と、給電部PINから離れた調光シート30の領域とにおいて、調光層に印加される電圧の差について許容可能な範囲を検討する。
【0038】
図4は、一実施形態の調光モジュールの構成の一例を説明するための図である。ここでは、調光シート30の給電部PIN近傍(例えば
図3の領域「1」)の領域に対応する調光モジュールMDLの直線透過率と、印加電圧との関係の一例を実線のグラフG1で示している。なお、調光モジュールMDLの印加電圧と透過率との関係の特性は、調光シート30の印加電圧と透過率との関係と略等しいものである。
【0039】
図4に示す例では、調光モジュールMDLの直線透過率が飽和したときの飽和透過率(最大透過率)は67%である。一方で、人が不透明であると認識する最小透過率は0%である。ここで、調光シート30の全面を透明状態とする場合、給電部PINの近傍の領域と、給電部PINから最も遠い領域との間の輝度傾斜を小さくすることが望ましい。例えば、調光シート30を透明状態と不透明状態との2階調で切り替えるときには、給電部PINから最も遠い領域に対応する調光モジュールMDLの部分において、例えばマンセル明度の50%の透過率を下回ると、給電部PINの近傍と比較して異なる階調として認識されることがあった。一方で、給電部PINから最も遠い領域に対応する調光モジュールMDLの部分において十分な透過率をえるために、給電部PINに高電圧を印加すると、調光シート30の消費電力を低く抑えることが困難であった。
【0040】
そこで、本願の発明者らは、本実施形態の調光モジュールMDLでは、給電部PIN近傍の領域と給電部PINから最も離れた領域との、調光層に印加される実効電圧の電圧差について許容される範囲を検討した。
【0041】
例えば、マンセル明度90%からマンセル明度50%への連続的な面の輝度変化を人が視認した際に、均一的な輝度であると認識可能であった。人の目の感度は絶対的な明るさに対する感度よりも、相対的な明るさに対する感度の方が優れているため、マンセル明度90%からマンセル明度50%への連続的な輝度変化に相当する相対的な輝度変化についても、同様に、均一的な輝度であると認識されるものである。
【0042】
マンセル明度の90%に対応する透過率は78.7%であり、マンセル明度の50%に対応する透過率は19.8%である。このときに、マンセル明度の100%を調光シート30の最大透過率である67%とし、マンセル明度の0%を人が不透明であると認識する最小透過率である0%とすると、調光シート30におけるマンセル明度90%に相当する透過率からマンセル明度50%に相当する透過率への変化は、全面が透明状態であると認識可能なものである。
【0043】
マンセル明度90%は、相対的に52.729%(=67×0.787)の直線透過率に相当する。
図4に示すグラフによれば、給電部PINの近傍の領域に対応する調光モジュールMDLの部分における直線透過率が52.729%のときの印加電圧V90は略11.3Vである。
【0044】
また、マンセル明度50%は、相対的に13.266%(=67×0.198)の直線透過率に相当する。
図4に示すグラフによれば、給電部PINの近傍の領域における調光モジュールMDLの部分における直線透過率が13.266%のときの印加電圧V50は略6.7Vである。
【0045】
この結果によれば、調光シート30の全面を透明状態としたときに、給電部PIN近傍の領域と給電部PINから最も離れた領域とで、許容される実効電圧の電圧差は、4.6V(=11.3V-6.7V)である。すなわち、給電部PIN近傍の領域と給電部PINから最も離れた領域とにおける、調光層に印加される電圧の差が4.6V以下であるときに、調光シート30の全面において均一な輝度であると認識されるものである。
【0046】
また、
図4では、給電部PINへの印加電圧に対する、調光モジュールMDLの領域の直線透過率を、給電部PINから近い順に破線のグラフG2、G3、G4により示している。
給電部PINに最も近い領域に対応する調光モジュールMDLの部分において、マンセル明度の90%に相当する透過率が得られるように給電部PINに印加電圧V90を供給したときに、グラフG2ではマンセル明度の50%に相当する透過率よりも高い透過率が得られ、グラフG3ではマンセル明度の50%に相当する透過率と同じ透過率が得られ、グラフG4ではマンセル明度の50%に相当する透過率よりも低い透過率が得られた。
【0047】
例えば、印加電圧に対する直線透過率の特性が、
図3に示す調光シート30の領域「1」に対応する調光モジュールMDLの部分においてグラフG1であるときに、調光シート30の領域「84」に対応する調光モジュールMDLの部分においてグラフG2およびグラフG3であるときには、調光シート30および調光モジュールMDLの全面において均一的な輝度であると認識することができた。
【0048】
しかしながら、印加電圧に対する直線透過率の特性が、
図3に示す調光シート30の領域「1」に対応する調光モジュールMDLの部分おいてグラフG1であるときに、調光シート30の領域「84」に対応する調光モジュールMDLの部分においてグラフG4であるときには、領域「1」と領域「84」とに対応する部分の輝度が異なる階調と認識された。
【0049】
すなわち、調光モジュールMDLの最大透過率がマンセル明度の100%に相当するものとし、調光層に電圧を印加する給電部PINに最も近い調光シート30の領域に対応する調光モジュールMDLの部分においてマンセル明度の90%に相当する透過率が得られる電圧を印加したときに、給電部PINから最も離れた調光シート30の領域に対応する調光モジュールMDLの部分においてマンセル明度の50%に相当する透過率以下の透過率となる場合には、最も透過率が高い領域と最も透過率が低い領域とが異なる階調として認識され、調光シート30の透過率にムラがあるように認識されることとなる。
【0050】
上記のことから、調光モジュールMDLの最大透過率がマンセル明度の100%に相当するものとし、調光層に電圧を印加する給電部PINに最も近い調光シート30の領域に対応する調光モジュールMDLの部分おいてマンセル明度の90%に相当する透過率が得られる電圧を印加したときに、給電部PINから最も離れた調光シート30の領域に対応する調光モジュールMDLの部分においてマンセル明度の50%に相当する透過率よりも高い透過率が得られるものとすることにより、調光シート30の全面において均一な輝度であるように認識されることとなる。
【0051】
更に、本願の発明者らは、上記調光シート30を給電部PINからの距離により仮想的に複数の領域に分離し、給電部PINから近い順に、印加電圧に対する直線透過率のn本のグラフG1、G2、G3、…Gnを取得し、異なる階調として視認される境界について検討した。この結果、調光シート30の最大直線透過率の輝度をマンセル明度の100%としたときに、給電部PINから最も近い領域にてマンセル明度の90%に相当する透過率が得られる電圧をV90とし、マンセル明度の50%に相当する透過率が得られる電圧をV50としたとき、グラフGk(k<n)のV90に対応する透過率が、グラフG1のV50に対応する透過率以上であるときに、給電部PIN近傍と給電部PINからk番目に離れた領域との電圧降下が小さくなり、調光シート30の透過率差(輝度傾斜)が認識されないものであることを見出した。換言すると、本願の発明者らは、k番目の領域よりも給電部PINから離れた領域については、調光シート30の透過率差(起動傾斜)が認識されるものであることを見出した。
【0052】
上記調光シート30は、幅(X方向)が750mm、高さ(Y方向)1700mmの大きさで、短辺と長辺とが交差する位置近傍にて短辺に沿って延びた350mmの給電部PINを配置したものである。透明基材10はガラスであって、給電部PINから1600mm離れた領域におけるシート抵抗は略4.267R(=R×(1600/375))である。この調光シート30の調光層に電圧を印加する透明電極はITOにより形成され、ITOのシート抵抗R(Ω/□)は略100(Ω)以上300(Ω)以下である。したがって、給電部PINから最も離れた領域における電極抵抗は略427(Ω)~1280(Ω)となる。以上により、給電部PIN近傍の領域と、給電部PINから最も離れた領域での抵抗値は略4.3倍の相違が生じることから、給電部PINから離れた位置にて給電部PINから印加した電圧が降下することに帰結しているものと考えられる。
【0053】
上記一実施形態の調光モジュールによれば、調光シート30の透過率が均一であるものと認識され、低電圧で駆動することが可能となる。
【0054】
以下、上述の一実施形態の調光モジュールMDLの更に複数の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0055】
(第1実施形態)
図5は、第1実施例の調光モジュールMDLの調光シートの構成を概略的に示す断面図である。
本実施形態の調光シート30は、第1基材32と、第1電極34と、第1配線W1と、液晶層LQと、第2配線W2と、第2電極36と、第2基材38と、を備えている。
【0056】
第1基材32は、第1電極34を支持する透明の絶縁性基材であり、例えばPET(polyethylene terephthalate)により形成されたフィルムである。本実施形態では、第1基材32は、厚さが略50μmのPETフィルムである。なお、調光シート30の厚さや強度を考慮すると、第1基材32の厚さは、例えば50μm以上200μm以下とすることが望ましい。
【0057】
第1電極34は、第1基材32上に形成されている。第1電極34は、例えば、ITOやIZOなどの有機導電材料、又は、PEDOTやPEDOT/PSSなどの導電性高分子材料等の透明な導電材料により形成された透明電極であり、厚さは略80nm以上150nm以下である。第1電極34は、第1基材32の液晶層LQ側の面上において、略全面に形成されている。
【0058】
第1配線W1は、第1電極34上において、後述する所定のパターンとなるように配置されている。第1配線W1は、少なくとも第1電極34よりも電気的抵抗が小さい材料により形成された配線である。本実施形態では、第1配線W1は、例えば銅配線である。なお、第1配線W1は、銅やアルミニウムや銀など、第1電極34よりも電気的抵抗の低い材料により形成された配線を用いることができる。
なお、第1配線W1および後述する第2配線W2として、金属を形成材料とする場合、金属細線は透明導電性酸化物を形成材料とする電極(第1電極34および第2電極36を含む)よりも抵抗値は低い一方で、金属特有の光反射のため視認しやすく、金属細線によるパターンが見えやすい。そのため、金属を形成材料とする配線を備える調光モジュールにおいては、配線の表面反射を抑制することにより視認されにくくすることが望ましい。
【0059】
例えば、第1配線W1,第2配線W2を銅(Cu)で形成する場合、銅配線を形成した後、黒,青,緑などの暗色系色相を呈する様に、銅配線の表面に各種薬品を用いた湿式処理による皮膜を形成することが考えられる。
【0060】
また、第1配線W1,第2配線W2は単層の銅配線でなく、銅層の上下少なくとも一方に銅層よりも反射率の低い酸窒化銅層(CuNO)を形成することが有効である。酸窒化銅層を備える積層体の製造にあたっては、基材表面にスパッタ法を用いて第1の酸窒化銅層,銅層,第2の酸窒化銅層を順次形成する手法が採用される。
【0061】
前記銅層の厚さは、0.2μ以上必要であり、前記第1・第2の酸窒化銅層の厚さは、30nm以上50nm以下であり、かつ、前記銅層の厚さにおける25%以下の値であることが好ましい。第1の酸窒化銅層の厚さが30nm以上50nm以下であると、第1の酸窒化銅層は、基材と銅層との間の密着性を高める上で十分な厚さを有している。しかも、第1の酸窒化銅層の厚さが銅層の厚さの25%以下の値であるため、基材と銅層との間の密着性を保ちつつも、配線層の全体における厚さと銅の使用量とが、過剰に大きくなることが抑えられる。
【0062】
スパッタ法により成膜される酸窒化銅層(CuNO)の採用が有利な理由として、窒化銅(CuN)は化学的に不安定であり、空気中の酸素と反応しやすく、成膜後の光学特性(色相)の変化が大きいが、N,Oのアシストガス量を制御したスパッタ成膜による酸窒化銅層は、成膜後の光学特性が安定しやすく、所望の色相の組成を得る上で優位性を持つ。
【0063】
表面反射の抑制による視認性低減の上で、酸窒化銅層(CuNO)の反射率,色相としては、JIS Z 8722に準拠するXYZ表色系の三刺激値のうち、Yの値が20%以下であり、Lab表色系におけるL*は55以下,a*,b*は負の値であることが望ましい。
【0064】
また、第1配線W1および第2配線W2は、銀ペーストとカーボンとの積層体を下地層として透明導電性酸化物上に配置されている。下地層の銀ペーストは、透明導電性酸化物と銅配線との密着性を向上させる。下地層のカーボンは、銀ペーストの表面の凹凸を平坦化するものであって、銀ペーストと銅配線との間に介在する。このことにより、第1配線W1および第2配線W2を透明導電性酸化物上の所定の位置に固定している。
【0065】
第1配線W1の第1方向XにおけるピッチP1は、2.85mm以下とすることが望ましい。第1配線W1の幅P2は、視認されない程度に十分小さい大きさとすることが望ましい。第1配線W1の幅P2を例えば20μm以下とすることにより、2m離れた位置から第1配線W1は視認されなかった。例えば、調光シート30の透明電極は、短辺が100mmであり長辺が1000mmで抵抗値が略1200Ωである。透明電極に第1配線W1を設けたときの抵抗値が透明電極の100分の1である12Ωになるようにすると、長辺方向に延びた20μm幅の銅配線を100mmの幅(短辺方向)に35本配置することにより、実現可能となる。この場合、銅配線のピッチは2.85mmとなる。
【0066】
液晶層LQは、印加される電圧により透明状態と不透明状態とを切り替え可能な調光層である。液晶層LQは、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)、或いは高分子ネットワーク型液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)により構成される。PNLCは、高分子ネットワーク中に液晶材料が分散された構造を有しており、高分子ネットワーク中の液晶材料は、連続相を有している。PDLCは、高分子によって液晶が分散、すなわち高分子内において液晶が相分離した構造を有している。高分子層(ポリマー層)としては光硬化樹脂を用いることができる。例えば、PNLCは、光重合型の高分子前駆体(モノマー)に液晶材料を混合させた溶液に紫外線を照射し、モノマーを重合させてポリマーを形成し、そのポリマーのネットワーク中に液晶材料が分散される。液晶層LQの液晶材料としては、ポジ型(P型)のネマティック液晶が用いられる。すなわち、無電圧(無電界)時に液晶分子の長軸(ダイレクタ)がランダムに配向し、電圧印加(電界印加)時に液晶分子のダイレクタが基板面に対してほぼ垂直に配向する。
【0067】
すなわち、液晶層LQは、電圧が印加されないときには不透明状態となり、電圧が印加されたときに透明状態となる調光層である。液晶層LQは、例えば、第1基材32及び第2基材38を貼り合わせるシール材(図示せず)によって封入されている。
【0068】
第2基材38は、第2電極36を支持する透明の絶縁性基材であり、例えばPET(polyethylene terephthalate)により形成されたフィルムである。本実施形態では、第2基材38は、厚さが略50μmのPETフィルムである。なお、調光シート30の厚さや強度を考慮すると、第2基材38の厚さは、例えば50μm以上200μm以下とすることが望ましい。液晶層LQの厚さが略20μmであるとすると、調光モジュールMDLの厚さは略120μm以上420μmである。第1基材32と第2基材28とは、調光層である液晶層LQを挟持するように配置された一対の基材である。
【0069】
第2電極36は、第2基材38上に形成され、第1電極34と対向するように配置されている。第2電極36は、例えば、ITOやIZOなどの有機導電材料、又は、PEDOTやPEDOT/PSSなどの導電性高分子材料等の透明な導電材料により形成された透明電極であり、厚さは略80nm以上150nm以下である。第2電極36は、第2基材38の液晶層LQ側の面上において、略全面に形成されている。
【0070】
第2配線W2は、第2電極36上において、後述する所定のパターンとなるように配置されている。第2配線W2は、少なくとも第2電極36よりも電気的抵抗が小さい材料により形成された配線である。本実施形態では、第2配線W2は、例えば銅配線である。なお、第2配線W2は、銅やアルミニウムや銀など、第2電極36よりも電気的抵抗の低い材料により形成された配線を用いることができる。
【0071】
第2配線W2の第1方向XにおけるピッチP3は、第1配線W1のピッチP1と同様に2.85mm以下とすることが望ましい。第2配線W2の幅P4は、視認されない程度に十分小さい大きさとすることが望ましい。第2配線W2の幅P4を例えば20μm以下とすることにより、2m離れた位置から第2配線W2は視認されなかった。
【0072】
第1配線W1および第2配線W2は、
図3の奥行方向(第2方向Y)に延びた配線部(後述する第1配線部および第3配線部)を備え、
図3の幅方向(第1方向X)に所定のピッチで並んで配置している。
図3に示す例では、第1配線W1は、第2配線W2が配置されない第2電極36の位置と対向するように配置され、第2配線W2は、第1配線W1が配置されない第1電極34の位置と対向するように配置されている。なお、第1配線W1と第2配線W2とは対向するように配置されても構わないが、第1配線W1を第2配線W2が配置されない位置と対向するように配置することにより、第1配線W1および第2配線W2を形成する位置がずれたときに透過率のばらつきが生じることを回避するとともに、モアレなどにより調光シートの品質が劣化することを回避することができる。
【0073】
図4は、第1実施形態の調光モジュールMDLの調光シート30について第1配線W1および第2配線W2の構成例を説明するための図である。なお、本実施形態では、第1配線W1および第2配線W2は同じパターンであって、
図4では、第1配線W1と第2配線W2との共通のパターンを示している。
【0074】
第1配線W1は、第2方向Yに延びた複数の第1配線部WYと、第1配線部WY間において第1方向Xに延びた複数の第2配線部WXとを備えている。第2配線W2は、第2方向Yに延びた複数の第3配線部WYと、第3配線部WY間において第1方向Xに延びた複数の第4配線部WXとを備えている。
【0075】
第1方向Xに隣接する第2配線部WXは、第2方向Yにおいて異なる位置に配置されている。また、第2配線部WX間の幅P5は略1100μmである。複数の第1配線部WYは複数の第2配線部WXにより互いに電気的に接続している。換言すると、第1配線W1および第2配線W2は、網目状の導電層である。
【0076】
調光シート30は、例えば、第2方向Yに上記のように、第1配線W1および第2配線W2を網目状に配置すると、例えば第2方向Yに巻き取られたロール状の調光シートをいずれの位置でカットしても、金属配線(第1配線W1および第2配線W2)がその中に存在することとなり、低抵抗化の効果を持続できる。
【0077】
上述のように、第1配線W1および第2配線W2の配線幅P2、P4は20μm以下とし、第1配線部WY間の幅P1、P3を2.85mm以下とすることが望ましい。
【0078】
ここで、例えば、短辺10mm、長辺1000mmのITOの電極上に、長辺方向に延びる複数の銅配線をピッチ0.3mmで形成する場合について検討する。ITOのシート抵抗は略100Ωである。銅の抵抗率は1.68×10-8Ωmである。このとき、ITOの電極上に配置される銅配線は略33(10mm÷0.3mm≒33)本である。
【0079】
上記条件において、ITOの電極の抵抗値は、10,000Ω(RITO1m=100Ω×1000mm/10mm=10,000Ω)である。
また、銅配線1本分の抵抗値RCu1mは下記のようになる。
RCu1m/本=1.68×10-8Ωm×(1/4×10-11)=420Ω
RCu1m=420Ω÷33=12.7Ω
上記条件において、ITOの電極の抵抗値RITO1mと、銅配線の抵抗値RCu1mとの比は、RITO1m:RCu1m=1,000:1.27=787:1となる。
【0080】
すなわち、上記条件において、銅配線の抵抗値はITOの電極の抵抗値よりも十分小さな値となる。したがって、ITOの電極上に銅配線を配置することにより、ITOの電極および銅配線に電圧を印加したときに、給電位置からの距離に応じて生じる電圧勾配を改善することが可能となる。
【0081】
図7は、第1実施形態の調光モジュールMDLの駆動回路の一例を概略的に示すブロック図である。
本実施形態の調光モジュールMDLは、コントローラCTRと、駆動回路DRVと、蓄電池BTと、充電/放電回路CHと、を備えている。コントローラCTRと、駆動回路DRVと、蓄電池BTと、充電/放電回路CHとは、調光モジュールMDLの枠体40内の空間に収容されている。
【0082】
コントローラCTRは、例えばCPUやMPUなどのプロセッサ(図示せず)と、メモリ(図示せず)とを備えた演算回路である。コントローラCTRは、外部と通信可能に構成され、各種センサでの検出値や、ユーザが操作可能なリモコンなどのインタフェースからの指令値を受信し、受信した値に基づいて駆動回路DRVを制御することができる。
【0083】
充電/放電回路CHは、太陽電池20から出力された電流により蓄電池を充電し、蓄電池から駆動回路へ直流電圧を供給する。充電/放電回路CHは、例えば蓄電池BTの電圧等に応じて蓄電池BTの充電電流を制御する。また、充電/放電回路CHは、制御回路CTRからの制御信号に基づいて、蓄電池BTを放電して駆動回路DRVへ直流電圧を供給する。なお、充電/放電回路CHは、蓄電池BTが満充電であるときには、太陽電池20の出力電圧を駆動回路DRVへ出力するように構成されてもよい。
【0084】
駆動回路DRVは、昇圧回路と、周波数発振器と、スイッチ回路と、を備えている。昇圧回路は、蓄電池BTから供給された電圧を、調光シート30の駆動電圧に応じて昇圧する。調光シート30の駆動電圧は、制御回路CTRからの指令により設定される。周波数発振器は、調光シート30の駆動電圧の周波数を発生する。調光シート30の駆動電圧の周波数は、制御回路CTRからの指令により設定される。スイッチ回路は、制御回路CTRにより動作を制御され、調光シート30の駆動と停止とを切り替える。
【0085】
駆動回路DRVと、第1配線W1および第2配線W2との間には、給電配線W3が接続している。給電配線W3は、第1電極34および第2電極36よりも電気的抵抗が低い材料により形成され、例えば、銅や銀などの金属配線である。
【0086】
調光モジュールが窓ガラスとして用いられる場合、結露などによる水分により、駆動回路DRVや制御回路CTRの動作に悪影響を与えることを回避する必要がある。そこで、本実施形態では、給電配線W3を屈曲させることにより、水滴が給電配線W3を伝わって回路に侵入しないようにしている。すなわち、給電配線W3は、第1配線W1および第2配線W2から枠体40の下側(枠体40の外側の端辺側)に向かって延び、下側に凸となる略U字状に屈曲したのちに駆動回路DRVと電気的に接続している。例えば、略U字状に屈曲した部分の給電配線W3のY方向における幅は10mm以上であり、X方向における幅は5mm以上である。
【0087】
また、駆動回路DRV、制御回路CTR、蓄電池BT、および、充電/放電回路CHは、枠体40底辺より例えば5mm以上開けて設置することが望ましい。このことにより、枠体40内に水が溜まった場合であっても、駆動回路DRVなどが即座に着水することがなくなり、調光モジュールMDLの故障を回避することができる。
【0088】
図8は、第1実形態の調光モジュールの駆動回路の他の例を概略的に示すブロック図である。
【0089】
図8に示す例では、駆動回路DRV、制御回路CTR、蓄電池BT、および、充電/蓄電回路CHが、太陽電池20および調光シート30の上側において枠体40内部に配置されている。この例では、駆動回路DRV、制御回路CTR、蓄電池BT、および、充電/蓄電回路CHが枠体の上部に設置されるため、結露などによる水分が給電配線W3を伝わって流入することを抑制することができる。したがって、給電配線W3を屈曲させる必要がなくなり、給電配線W3の配線長を短くすることができる。
【0090】
本実施形態の調光モジュールMDLにおいて、全面を透明状態とする際に、給電位置近傍の領域においてマンセル明度90%に対応する直線透過率(52.729%)を実現する電圧を印加したところ、給電位置から最も離れた領域における調光層(液晶層LQ)に印加される電圧は、給電位置近傍の領域において調光層に印加される電圧と略等しかった。すなわち、本実施形態の調光モジュールMDLは、給電部位置近傍の領域と給電位置から最も離れた領域とにおける、調光層(液晶層LQ)に印加される電圧の差が4.6V以下となり、調光シート30の全面において均一な輝度であると認識された。また、調光モジュールMDLの最大透過率がマンセル明度の100%に相当するものとし、調光層に電圧を印加する給電部に最も近い調光シート30の領域に対応する調光モジュールMDLの部分おいてマンセル明度の90%に相当する透過率が得られる電圧を印加したときに、給電部から最も離れた調光シート30の領域に対応する調光モジュールMDLの部分においてマンセル明度の50%に相当する透過率よりも高い透過率が得られ、調光シート30の全面において均一な輝度であると認識された。
【0091】
上記のように、本実施形態の調光モジュールMDLによれば、調光シート30の透過率が均一であると認識され、かつ、調光シート30の駆動電圧を低く抑えることが可能となり、調光モジュールMDLの低消費電力化を実現することができる。すなわち、本実施形態によれば、低電圧で駆動可能な調光モジュールMDLを提供することができる。
【0092】
さらに、本実施形態の調光モジュールMDLは、太陽電池20および蓄電池ユニットBTを一体に備えており、これらからの電力供給により駆動可能となることから、可動部分や配線が困難である箇所にも設置可能となる。また、本実施形態の調光モジュールMDLは建築物など不動産に固定する必要がなくなるため、動作寿命が尽きた際にも交換が容易である。
【0093】
(実施例1)
以下に、上述の第1実施形態の調光モジュールMDLの実施例について説明する。
本実施例の調光モジュールMDLは、例えば一般的な家庭用アルミサッシ引き戸に用いられるものであって、枠体40の外形は、略、幅(短辺)810mm、高さ(長辺)900mm(幅1620mm、高さ1800mmの半分)の大きさである。このときに、太陽電池20および調光シート30の大きさは、略、幅750mm、高さ1700mmである。
【0094】
調光シート30の第1電極34および第2電極36は、所定の厚さのITOにより形成されている。第1配線W1および第2配線W2は、厚さ2μm、配線幅P2、P4が20μm、配線ピッチP1、P3が300μm、配線ピッチP5は1100μmである。液晶層LQは、PNLCにより構成されている。
【0095】
本実施例の調光モジュールMDLにおいて、全面を透明状態とする際に、給電位置近傍の領域においてマンセル明度90%に対応する直線透過率(52.729%)を実現する電圧を印加したところ、給電位置から最も離れた領域における調光層(液晶層LQ)に印加される電圧は、給電位置近傍の領域において調光層に印加される電圧と略等しかった。すなわち、本実施例の調光モジュールMDLは、給電部位置近傍の領域と給電位置から最も離れた領域とにおける、調光層(液晶層LQ)に印加される電圧の差が4.6V以下となり、調光シート30の全面において均一な輝度であると認識された。また、調光モジュールMDLの最大透過率がマンセル明度の100%に相当するものとし、調光層に電圧を印加する給電部に最も近い調光シート30の領域に対応する調光モジュールMDLの部分おいてマンセル明度の90%に相当する透過率が得られる電圧を印加したときに、給電部から最も離れた調光シート30の領域に対応する調光モジュールMDLの部分においてマンセル明度の50%に相当する透過率よりも高い透過率が得られ、調光シート30の全面において均一な輝度であると認識された。
【0096】
上記のように、本実施例の調光モジュールMDLによれば、調光シート30の駆動電圧を低く抑えることが可能となり、上述の第1実施形態の調光モジュールMDLと同様の効果を得ることができる。
【0097】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態の調光モジュールMDLの調光シートの構成の一例を概略的に示す平面図である。
図10は、
図9に示す調光シート30の線IX-IXにおける断面の一例を概略的に示す図である。
【0098】
本実施形態の調光モジュールMDLは、調光シート30の第1配線W1、第2配線W2、第2電極36、および、第2基材38の構成が上述の第1実施形態と異なっている。
【0099】
調光シート30の第1配線W1は、第1電極34の一方の長辺に沿って配置されている。
図9では、第1電極34の図示を省略しているが、第1電極34は、長辺がY方向に延び、短辺がX方向に延びた略矩形状であって、第1基材32の一方の面上において略全面に配置されている。
【0100】
調光シート30の第2電極36および第2基材38は、X方向に延びたスリットSLにより複数の帯状に分離されている。本実施形態の調光シート位30は、第2電極36のそれぞれと電気的に接続する複数の第2配線W2を備えている。複数の第2配線W2のそれぞれは、第1配線W1が配置された調光シート30の長辺と対向した長辺に沿って配置されている。したがって、本実施形態では、調光シート30のどの位置でも、第1配線W1までの距離と第2配線W2までの距離との和が等しくなる。
【0101】
すなわち、第1電極34にはX方向の一方側から給電電圧が印加され、第2電極36にはX方向の他方側から給電電圧が印加される。このことにより。調光層である液晶層LQに印加される実効電圧は、X方向におけるどの位置でも略等しくなる。また、給電電圧が印加された際に、第1配線W1および第2配線W2は、Y方向において略等しい電圧となる。したがって、上記調光シート30を駆動したときには、調光シート30の面方向において実効電圧の勾配を略ゼロとすることができる。
【0102】
本実施形態の調光モジュールMDLは、上述の調光シート30の構成以外は上述の第1実施形態と同様である。
【0103】
本実施形態の調光モジュールMDLにおいて、全面を透明状態とする際に、給電位置近傍の領域においてマンセル明度90%に対応する直線透過率(52.729%)を実現する電圧を印加したところ、給電位置から最も離れた領域における調光層(液晶層LQ)に印加される電圧は、給電位置近傍の領域において調光層に印加される電圧と略等しかった。すなわち、本実施形態の調光モジュールMDLは、給電部位置近傍の領域と給電位置から最も離れた領域とにおける、調光層(液晶層LQ)に印加される電圧の差が4.6V以下となり、調光シート30の全面において均一な輝度であると認識された。また、調光モジュールMDLの最大透過率がマンセル明度の100%に相当するものとし、調光層に電圧を印加する給電部に最も近い調光シート30の領域に対応する調光モジュールMDLの部分おいてマンセル明度の90%に相当する透過率が得られる電圧を印加したときに、給電部から最も離れた調光シート30の領域に対応する調光モジュールMDLの部分においてマンセル明度の50%に相当する透過率よりも高い透過率が得られ、調光シート30の全面において均一な輝度であると認識された。
【0104】
すなわち、本実施形態の調光モジュールMDLによれば、上述の第1実施形態と同様の効果を得ることができ、低電圧で駆動可能な調光モジュールMDLを提供することができる。
【0105】
図11Aおよび
図11Bは、調光モジュールの調光シートの電極構成について説明するための図である。
上述の第2実施形態では、第1配線W1と第2配線W2とは、調光シート30の対向田長辺に沿ってそれぞれ配置されていたが、第1配線W1と第2配線W2とは
図9および
図10に示す構成に限定されるものではない。調光シート30のどの位置でも第1配線W1までの距離と第2配線W2までの距離との和が等しくなるように、第1配線W1と第2配線W2とが配置されていればよい。
【0106】
例えば、
図11Aに示すように第1配線W1を中心として第2配線W2を円形に配置してもよい。この場合には、第2配線W2に囲まれた円内のどの位置においても、第1配線W1までの距離と第2配線W2までの距離との和が半径Rとなり等しくなる。
【0107】
例えば、
図11Bに示すように第1配線W1と第2配線W2とが互いに向かい合う略W字状に配置されても構わない。この場合であっても。調光シート30のどの位置でも。第1配線W1までの距離と第2配線W2までの距離との和は第1配線W1と第2配線W2との間隔dと等しくなり、上述の第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0108】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態の調光モジュールMDLの断面の一例を概略的に示す図である。
本実施形態の調光モジュールMDLは、太陽電池20の構成が上述の第1実施形態と異なっている。
【0109】
本実施形態では、太陽電池20は、枠体40の積層方向Zと略直交する一方の面上に配置されている。すなわち、太陽電池20は、透明基材10および調光シート30の周囲を囲む額縁状に配置されている。本実施形態では、太陽電池20は、積層方向Zの透明基材10側の枠体40の面上に配置され、透明基材10側から入射する太陽光や照明光による光エネルギーを電気エネルギーに変換して出力する。枠体40は、透明基材10と調光シート30との周囲を保持している。
【0110】
なお、
図12に示す例では、太陽電池20は、枠体40の積層方向Zと略直交する一方の面上に配置されていたが、積層方向Zと略直交する他方の面上にも更に配置されても構わない。その場合には、枠体40の両面にて太陽電池20を配置する面積を確保することが可能となり、枠体40の幅を小さくすることができる。
【0111】
また、上述の第1実施形態では、太陽電池20は透光性(透明あるいは半透明)の光電変換部であったが、本実施形態では太陽電池20は枠体40上に配置されるため、透光性の光電変換部に限定されず、本実施形態の太陽電池20は、エネルギー変換効率の高いものを選択することが可能である。
【0112】
本実施形態の調光モジュールMDLは、上記構成以外は上述の第1実施形態と同様の構成である。すなわち、本実施形態の調光モジュールMDLによれば、上述の第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0113】
なお、太陽電池20は、透明基材10および調光シート30の周囲を囲む枠体40上の全てに配置される必要はない。太陽電池20は、調光モジュールMDLが設置される場所の日照条件等に応じて、枠体40の積層方向Zと略直交する面の一部の上に配置されても構わない。その場合でも、太陽電池20の発電電力を考慮して十分な面積を確保することができれば、上述の第1実施形態と同様の効果を得ることができる。(実施例2)
以下に、第3実施形態の調光モジュールMDLの実施例について説明する。
【0114】
本実施例の調光モジュールMDLは、例えば、短辺が1000mmであり、長辺が1200mmであるサイズの調光シート30を備えている。
【0115】
例えば、100Vの駆動電圧により調光シート30を駆動したとき、調光シート30の消費電力は、11W(=100V×0.11A)であった。例えば駆動電圧を50Vに出来たとき、駆動電圧は上記測定値の半分の電圧であり、消費電力は測定時の1/4であって2.75W(=11W/4)である。
【0116】
蓄電池ユニットBTは、例えば、電圧4.1V、電流1.8Ahであるリチウムイオン電池を3つ備え、蓄電池ユニットBTから供給される電力により、上記調光シート30を駆動するものとする。上記の3つのリチウムイオン電池を直列接続した場合、満充電時に蓄えられる電力は、22.14Wh(=12.3V×1.8Ah)である。リチウムイオン電池に蓄電された電力をAC変換する際の効率が90%であるとすると、調光シート30の駆動に用いることができる電力は19.9Wh(=22.14Wh×0.9)である。
【0117】
したがって、3つのリチウムイオン電池を用いて、50Vの駆動電圧で調光シート30を駆動したときには、7.23h(=19.9Wh/2.75W)連続で駆動することが可能となる。
【0118】
また、本実施例では、例えば、太陽電池20として、面積180mm×222mmの単結晶シリコン半導体を主な材料とする太陽電池を用いる。上記太陽電池20は、例えば、出力電圧9V、出力電流440mAであって、出力電力は略4Wであった。
【0119】
上記太陽電池20の面積は、調光シート30の面積に対して略3.3%((180×222)/(1000×1200)=0.033)である。したがって、上記太陽電池20が配置される面積は、駆動する調光シート30の面積に対して3.3%以上であればよい。
【0120】
上記のように、本実施例の調光モジュールMDLによれば、上述の第1実施形態と同様の効果を得ることができ、調光モジュールMDLの駆動電圧を低く抑えることにより、蓄電池ユニットBTの蓄電池に蓄えられた電力により7時間以上連続で駆動することが可能であった。
【0121】
(第4実施形態)
図13は、第4実施形態の調光モジュールMDLの調光シート30の構成を概略的に示す断面図である。
図14は、第4実施形態の調光モジュールMDLの調光シート30の構成を概略的に示す分解斜視図である。
本実施形態の調光モジュールMDLは、調光シート30の構成が上述の第1実施形態と異なっている。
【0122】
本実施形態の調光シート30は、第1基材32と、複数の第1電極34と、複数の第1配線W1と、液晶層LQと、複数の第2配線W2と、複数の第2電極36と、第2基材38と、を備えている。
【0123】
複数の第1電極34は、第1基材32の液晶層LQ側の面上において、第1方向Xと第2方向Yとに略平行な平面方向(積層方向Zと略直交した仮想平面上)にマトリクス状に配置されている。複数の第1電極34のそれぞれは、ITOやIZOや有機導電膜などの透明な導電性材料により形成され、厚さは略80nm以上150nm以下である。
【0124】
複数の第1配線W1のそれぞれは、第1方向Xに並んで配置された複数の第1電極34の行の間において、第1方向Xに延びて配置されている。複数の第1配線W1は互いに絶縁されている。
【0125】
複数の第1配線W1のそれぞれは、第2方向Yの一方側に配置された複数の第1電極34と電気的に接続している。すなわち、第1配線W1に駆動電圧を印加すると、第1配線W1と隣接する行の複数の第1電極34に駆動電圧が印加される。
【0126】
複数の第2電極36は、第2基材38の液晶層LQ側の面上において、第1方向Xと第2方向Yとに略平行な平面方向(第1電極34が配列した仮想平面と略平行な面上)に、複数の第1電極34と対向するようにマトリクス状に配置されている。複数の第2電極36と複数の第1電極34とは、それぞれが対向する位置に配置されている。複数の第2電極36のそれぞれは、ITOやIZOなどの透明導電性材料により形成され、例えば、厚さは略80nm以上150nm以下である。
【0127】
複数の第2配線W2のそれぞれは、第2方向Yに並んで配置された複数の第2電極36の列の間において、第2方向Yに延びて配置されている。複数の第2配線W2は互いに絶縁されている。
【0128】
複数の第2配線W2のそれぞれは、第1方向Xの一方側に配置された複数の第2電極36と電気的に接続している。すなわち、第2配線W2に駆動電圧を印加すると、第2配線W2と隣接する列の複数の第2電極36に駆動電圧が印加される。
【0129】
図15は、第4実施形態の調光モジュールの駆動回路の一例を概略的に示すブロック図である。
本実施形態の調光モジュールMDLは、コントローラCTRと、駆動回路DRVと、蓄電池ユニットBTと、セレクタS1、S2と、を備えている。コントローラCTRと、駆動回路DRVと、蓄電池ユニットBTと、セレクタS1、S2とは、調光モジュールMDLの枠体40内の空間に収容されている。
【0130】
コントローラCTRは、例えばCPUやMPUなどのプロセッサ(図示せず)と、メモリ(図示せず)とを備えた演算回路である。コントローラCTRは、外部と通信可能に構成され、各種センサからの検出値や指令、ユーザが操作可能なリモコンなどのインタフェースからの指令などを受信し、受信した指令などに基づいて駆動回路DRVおよびセレクタS1、S2を制御することができる。コントローCTRは、セレクタS1、S2を制御することにより、調光シート30の一部を透明状態あるいは不透明状態に制御することができる。
【0131】
蓄電池ユニットBTは、第1実施形態の蓄電池BTと、充電/放電回路CHと、を備えた構成である。充電/放電回路CHは、例えば蓄電池BTの電圧等に応じて蓄電池BTの充電電流を制御する。また、充電/放電回路CHは、制御回路CTRからの制御信号に基づいて、蓄電池BTを放電して駆動回路DRVへ直流電圧を供給する。なお、充電/放電回路CHは、蓄電池BTが満充電であるときには、太陽電池20の出力電圧を駆動回路DRVへ出力するように構成されてもよい。
【0132】
駆動回路DRVは、昇圧回路と、周波数発振器と、を備えている。昇圧回路は、蓄電池から供給された電圧を、調光シート30の駆動電圧に応じて昇圧する。調光シート30の駆動電圧は、制御回路CTRからの指令により設定される。周波数発振器は、調光シート30の駆動電圧の周波数を発生する。調光シート30の駆動電圧の周波数は、制御回路CTRからの指令により設定される。
【0133】
セレクタS1は、制御回路CTRにより動作を制御され、1又は複数の第1配線W1を選択し、駆動回路DRVから供給される駆動電圧を選択した1又は複数の第1配線W1へ供給する。
【0134】
セレクタS2は、制御回路CTRにより動作を制御され、1又は複数の第2配線W2を選択し、駆動回路DRVから供給される駆動電圧を選択した1又は複数の第2配線W2へ供給する。
【0135】
なお、本実施形態では、制御回路CTRと、駆動回路DRVと、セレクタS1、S2とは両面基板に実装され、セレクタS1は、制御回路CTR、駆動回路DRVおよびセレクタS2と異なる面側に実装されている。
【0136】
本実施形態の調光モジュールMDLによれば、第1電極34および第2電極36を島状に分離し、複数の第1配線W1および複数の第2配線W2を介して駆動することにより、調光シート30の駆動電圧を低く抑えることが可能となり、調光モジュールMDLの低消費電力化を実現することができる。したがって、例えば、調光モジュールMDLを大型化する際にも適用することが可能である。例えば、第1実施形態乃至第4実施形態の調光モジュールMDLの調光シート30を複数組み合わせて、本実施形態の調光モジュールMDLを構成することも可能であり、この場合であっても、調光モジュールMDLの消費電力を低く抑えることが可能である。
【0137】
また、本実施形態において、調光モジュールMDLの最大透過率がマンセル明度の100%に相当するものとし、調光層に電圧を印加する給電部に最も近い調光シート30の領域に対応する調光モジュールMDLの部分おいてマンセル明度の90%に相当する透過率が得られる電圧を印加したときに、給電部から最も離れた調光シート30の領域に対応する調光モジュールMDLの部分においてマンセル明度の50%に相当する透過率よりも高い透過率が得られ、調光シート30の全面において均一な輝度であると認識された。なお、本実施形態の調光モジュールMDLにおいて、給電部は、各透明電極の給電位置に相当する。
すなわち、本実施形態によれば、低電圧で駆動可能な調光モジュールMDLを提供することができる。
【0138】
さらに、本実施形態の調光モジュールMDLは、太陽電池20および蓄電池ユニットBTからの電力供給により駆動可能となることから、可動部分や配線が困難である箇所にも設置可能となる。また、本実施形態の調光モジュールMDLは建築物など不動産に固定する必要がなくなるため、動作寿命が尽きた際にも交換が容易である。
【0139】
さらに、本実施形態の調光モジュールMDLによれば、複数の第1電極34と複数の第2電極36とに選択的に駆動電圧を印加することが可能となる。すなわち、選択された第1配線W1と選択された第2配線W2とが交差する位置に配置された第1電極34と第2電極36とにのみ駆動電圧を印加することが可能であり、調光シート30を一部分について透明状態と不透明状態とを切り替えることが可能となる。
【0140】
(第5実施形態)
図16は、第5実施形態の調光モジュールMDLの調光シート30の構成を概略的に示す断面図である。
図17は、第5実施形態の調光モジュールMDLの調光シート30の構成を概略的に示す分解斜視図である。
本実施形態の調光モジュールMDLは、調光シート30の構成が上述の第4実施形態と異なっている。
【0141】
本実施形態の調光シート30は、第1保護層31と、第1基材32と、複数の第1電極34と、複数の第1配線W1と、液晶層LQと、複数の第2配線W2と、複数の第2電極36と、第2基材38と、第2保護層39と、を備えている。
【0142】
複数の第1電極34は、第1基材32の液晶層LQ側の面上において、第1方向Xと第2方向Yとに配列するマトリクス状に配置されている。複数の第1電極34のそれぞれは、ITOやIZOや有機導電膜などの透明な導電性材料により形成され、例えば、厚さは略80nm以上150nm以下である。
【0143】
複数の第1配線W1のそれぞれは、第1基材32の外側の面上において、第1方向Xに延びて配置されている。複数の第1配線W1のそれぞれは、第1基材32を介して第1方向Xに並んだ複数の第1電極34による行と対向して配置されている。複数の第1配線W1のそれぞれは、第1基材32に設けられたスルーホールを介して、対向する複数の第1電極34と電気的に接続している。複数の第1配線W1は、互いに絶縁されている。すなわち、第1配線W1に駆動電圧を印加すると、第1配線W1と電気的に接続した複数の第1電極34に駆動電圧が印加される。
【0144】
第1保護層31は、複数の第1配線W1上に配置されている。第1保護層31は、透明な絶縁層であって、例えばPETにより形成されている。
【0145】
複数の第2電極36は、第2基材38の液晶層LQ側の面上において、第1方向Xと第2方向Yとに配列するマトリクス状に配置されている。複数の第2電極36と複数の第1電極34とは、それぞれが対向する位置に配置されている。複数の第2電極36のそれぞれは、ITOやIZOなどの透明導電性材料により形成され、例えば、厚さは略80nm以上150nm以下である。
【0146】
複数の第2配線W2のそれぞれは、第2基材38の外側の面上において、第2方向Yに延びて配置されている。複数の第2配線W2のそれぞれは、第2基材38を介して第2方向Yに並んだ複数の第2電極36による列と対向して配置されている。複数の第2配線W2のそれぞれは、第2基材38に設けられたスルーホールを介して、対向する複数の第2電極36と電気的に接続している。複数の第2配線W2は互いに絶縁されている。すなわち、第2配線W2に駆動電圧を印加すると、第2配線W2と電気的に接続した複数の第2電極36に駆動電圧が印加される。
【0147】
第2保護層39は、複数の第2配線W2上に配置されている。第2保護層39は、透明な絶縁層であって、例えばPETにより形成されている。
【0148】
本実施形態の調光モジュールMDLは、上述の調光シート30の構成以外は第4実施形態と同様である。本実施形態の調光モジュールMDLによれば、第1電極34および第2電極36を島状に分離し、複数の第1配線W1および複数の第2配線W2を介して駆動することにより、調光シート30の駆動電圧を低く抑えることが可能となり、調光モジュールMDLの低消費電力化を実現することができる。したがって、例えば、調光モジュールMDLを大型化する際にも適用することが可能である。例えば、第1実施形態乃至第4実施形態の調光モジュールMDLの調光シート30を複数組み合わせて、本実施形態の調光モジュールMDLを構成することも可能であり、この場合であっても、調光モジュールMDLの消費電力を低く抑えることが可能である。
【0149】
また、本実施形態において、調光モジュールMDLの最大透過率がマンセル明度の100%に相当するものとし、調光層に電圧を印加する給電部に最も近い調光シート30の領域に対応する調光モジュールMDLの部分おいてマンセル明度の90%に相当する透過率が得られる電圧を印加したときに、給電部から最も離れた調光シート30の領域に対応する調光モジュールMDLの部分においてマンセル明度の50%に相当する透過率よりも高い透過率が得られ、調光シート30の全面において均一な輝度であると認識された。なお、本実施形態の調光モジュールMDLにおいて、給電部は、各透明電極の給電位置に相当する。
すなわち、本実施形態によれば、低電圧で駆動可能な調光モジュールMDLを提供することができる。
【0150】
さらに、本実施形態の調光モジュールMDLは、太陽電池20および蓄電池ユニットBTからの電力供給により駆動可能となることから、可動部分や配線が困難である箇所にも設置可能となる。また、本実施形態の調光モジュールMDLは建築物など不動産に固定する必要がなくなるため、動作寿命が尽きた際にも交換が容易である。
【0151】
さらに、本実施形態の調光モジュールMDLによれば、複数の第1電極34と複数の第2電極36とに選択的に駆動電圧を印加することが可能となる。すなわち、選択された第1配線W1と選択された第2配線W2とが交差する位置に配置された第1電極34と第2電極36とにのみ駆動電圧を印加することが可能であり、調光シート30を一部分について透明状態と不透明状態とを切り替えることが可能となる。
【0152】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0153】
図19は、一実施形態の調光モジュールの調光シートと太陽電池との構成の一例を説明するための図である。
上述の複数の実施形態において、例えば、調光シート30と太陽電池20とは、ガラスやアクリル樹脂やPETフィルム等の共通の基材を備えていてもよい。例えば、
図3に示すように、共通の基材上の一部の領域に調光層を形成して調光シート30とし、共通の基材上の他の領域に、調光シート30の調光層と並ぶように光電変換層を形成して太陽電池20としてもよい。
図3に示す例では、共通の基材は略矩形状であって、太陽電池20は共通の基材の角部分に配置されている。
【0154】
また、例えば、共通の基材の一方の面上に調光層を形成して調光シート30とし、共通の基材の他方の面上に光電変換層を形成して太陽電池20としてもよい。この場合にも、共通の基材としては、ガラスやアクリル樹脂などの透明の板状体や、PETフィルムなどの透明フィルムを用いることができる。
【0155】
太陽電池20を配置する位置は、太陽光が照射する部分に配置されることが望ましく、調光モジュールが接地される環境に応じて、太陽電池20と調光シート30との配置位置や太陽電池20の配置面積などを適宜調整することが望ましい。また、太陽電池20が配置される領域は、透過率を制御することができなくなるため、調光モジュールの用途に応じて、太陽電池20と調光シート30との配置位置や太陽電池20の配置面積などを適宜調整することが望ましい。
【0156】
図20は、一実施形態の調光モジュールの操作部の一例を説明する図である。
上述の複数の実施形態において、例えば、調光シート30の第1電極34と第2電極36との一方を複数の領域L1~L6、C1~C5に分割し、複数の領域域L1~L6、C1~C5を独立して駆動可能としてもよい。
【0157】
複数の領域域L1~L6、C1~C5の駆動を操作する操作部は、調光モジュールMDLの枠体40や、枠体40の外部に設けられてもよい。操作部は、例えば調光シート30の複数の領域に対応するタッチパネルPN1、PN2を備え、透過率(又は輝度)を切り替えたい調光シート30の領域L1~L6、C1~C5に対応したタッチパネルPL1~PL6、PC1~PC5に接触することにより、調光シート30の複数の領域L1~L6、C1~C5の夫々について、駆動状態を変更可能に構成されてもよい。
【0158】
例えば、利用者は、タッチパネルPL1に触れることにより、調光シート30の領域L1の透過率(又は輝度)を切替えるように操作可能であり、タッチパネルPC3に触れることにより、調光シート30の領域C3の透過率(又は輝度)を切替えるように操作可能である。更に、利用者は、例えば、タッチパネルPN1をPL1からPL6に向かってライン状に接触することにより、調光シート30の領域L1から領域L6に向かって連続的に透過率(輝度)を切替えるように操作可能である。
いずれの場合であっても、上述の複数の実施形態と同様の効果が得られるものである。
【0159】
[付記1]
印加電圧により透明状態と不透明状態とを切り替え可能な調光層と、透明導電材料により形成された第1電極と、前記調光層を介して前記第1電極と対向して配置され、透明導電材料により形成された第2電極と、を含む調光シートと、
前記調光シートの前記第1電極および前記第2電極に電圧を印加する駆動回路と、
を備え、
最大透過率がマンセル明度の100%に相当するものとし、
前記第1電極および前記第2電極に電圧を印加する給電部に最も近い領域においてマンセル明度の90%に相当する透過率が得られる電圧を印加したときに、前記給電部から最も離れた領域においてマンセル明度の50%に相当する透過率よりも高い透過率が得られる調光モジュール。
[付記2]
前記調光シートは、前記第1電極と電気的に接続し、前記第1電極よりも電気的抵抗が低い材料により形成された第1配線と、前記第2電極と電気的に接続し、前記第2電極よりも電気的抵抗が低い材料により形成された第2配線と、を含む[付記1]記載の調光モジュール。
[付記3]
前記第1配線は前記第1電極上に配置され、前記第1電極の長手方向と略平行に延びた複数の第1配線部と、前記第1電極の幅方向と略平行に延び、隣接した前記第1配線部を電気的に接続する複数の第2配線部と、を備え、
前記第2配線は前記第2電極上に配置され、前記第2電極の長手方向と略平行に延びた複数の第3配線部と、前記第2電極の幅方向と略平行に延び、隣接した前記第3配線部を電気的に接続する複数の第4配線部と、を備える[付記2]記載の調光モジュール。
[付記4]
複数の前記第1電極が、前記調光シートと前記第1電極と前記第2電極とが積層する方向と略直交した仮想平面上にマトリクス状に配置され、
複数の前記第2電極が、前記仮想平面と略平行な平面上に、複数の前記第1電極と対向するようにマトリクス状に配置され、
第1方向に並んだ複数の前記第1電極と電気的に接続した第1配線を複数備え、
前記第1方向と異なる第2方向に並んだ複数の前記第2電極と電気的に接続した第2配線を複数備えた、[付記1]記載の調光モジュール。
[付記5]
複数の前記第1配線のそれぞれは、前記第1方向に並んだ複数の前記第1電極の行の間において、前記第1方向に延びて配置され、
複数の前記第2配線のぞれぞれは、前記第2方向に並んだ複数の前記第2電極の列の間において、前記第2方向に延びて配置されている、[付記4]記載の調光モジュール。
[付記6]
複数の前記第1電極を支持する第1基材と、
複数の前記第2電極を支持する第2基材と、を更に備え、
複数の前記第1配線のそれぞれは、前記第1基材を介して前記第1方向に並んだ複数の前記第1電極の行と対向して配置され、前記第1基材に設けられたスルーホールを介して対向する複数の前記第1電極と電気的に接続し、
複数の前記第2配線のそれぞれは、前記第2基材を介して前記第2方向に並んだ複数の前記第2電極の列と対向して配置され、前記第2基材に設けられたスルーホールを介して対向する複数の前記第2電極と電気的に接続している、[付記4]記載の調光モジュール。
[付記7]
前記第1配線および前記第2配線の幅は20μm以下である、[付記2]記載の調光モジュール。
[付記8]
前記調光層は、高分子分散型液晶、或いは高分子ネットワーク型液晶により構成される、[付記1]乃至[付記7]のいずれかに記載の調光モジュール。
[付記9]
前記第1配線および前記第2配線は銅配線を含む、[付記2]記載の調光モジュール。
[付記10]
前記駆動回路へ供給する電力を蓄える蓄電池と、
前記蓄電池へ充電電流を供給する太陽電池と、を更に備えた、[付記1]乃至[付記9]のいずれかに記載の調光モジュール。
[付記11]
前記調光シートを支持する透明基材を更に備え、
前記太陽電池は前記透明基材上に配置され、透明または半透明である、[付記10]記載の調光モジュール。
[付記12]
前記調光シートを支持する透明基材と、
前記調光シートおよび前記透明基材の周囲を保持する枠体と、を更に備え、
前記太陽電池は前記枠体上に配置されている、[付記11]記載の調光モジュール。