(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】送液ユニット、ならびに、液体クロマトグラフィ分析システムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/06 20060101AFI20231219BHJP
G01N 30/16 20060101ALI20231219BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G01N30/06 C
G01N30/16 Z
G01N30/26 M
G01N30/26 Z
(21)【出願番号】P 2022146912
(22)【出願日】2022-09-15
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】10202110521T
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 康介
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-088133(JP,A)
【文献】特開2010-276358(JP,A)
【文献】特開2001-343371(JP,A)
【文献】特開2001-343372(JP,A)
【文献】特開2003-014718(JP,A)
【文献】特表2004-516474(JP,A)
【文献】特開平03-130660(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0156826(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
B01J 20/281-20/292
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の溶液および第2の溶液を移動相として液体クロマトグラフィ分析システムのカラムに送る送液ユニットであって、
前記第1の溶液は、第1のポンプから供給され、
前記第2の溶液は、第2のポンプから供給され、
前記液体クロマトグラフィ分析システムは、サンプルが注入される注入部を含み、
前記送液ユニットは、
第1の混合器と、
第2の混合器と、
前記第1のポンプおよび前記第2のポンプから前記カラムまでの流路を、第1の流路および第2の流路の間で切り替える切替装置と、を備え、
前記第1の流路および前記第2の流路の各々には、前記第1の混合器および前記第2の混合器が含まれており、
前記第1の流路では、前記第1の混合器が前記注入部より上流側に位置し、前記第2の混合器が前記注入部より下流側に位置し、
前記第2の流路では、前記第1の混合器および前記第2の混合器が前記注入部より上流側に位置し、
前記切替装置は、
前記カラムへの導入前にサンプルを希釈する第1モードでは、前記流路として前記第1の流路を構成し、
前記カラムへの導入前にサンプルを希釈しない第2モードでは、前記流路として前記第2の流路を構成する、送液ユニット。
【請求項2】
前記切替装置の状態を制御するコントローラをさらに備え、
前記コントローラは、
前記第1モードでは、前記切替装置の状態を、前記第1の流路を構成するように制御し、
前記第2モードでは、前記切替装置の状態を、前記第2の流路を構成するように制御する、請求項1に記載の送液ユニット。
【請求項3】
前記第1の混合器および前記第2の混合器の少なくとも一方
を構成する混合器が交換可能である、請求項1または請求項2に記載の送液ユニット。
【請求項4】
前記第1の混合器と前記第2の混合器は、互いに異なる混合容量を有する、請求項1または請求項2に記載の送液ユニット。
【請求項5】
前記切替装置は、流路切替バルブを含む、請求項1または請求項2に記載の送液ユニット。
【請求項6】
第1の溶液および第2の溶液を移動相として利用する液体クロマトグラフィ分析システムであって、
カラムと、
前記第1の溶液を供給する第1のポンプと、
前記第2の溶液を供給する第2のポンプと、
前記カラムに向けてサンプルを注入するサンプラと、
第1の混合器と、
第2の混合器と、
前記第1のポンプおよび前記第2のポンプから前記カラムまでの流路を、第1の流路および第2の流路の間で切り替わる切替装置と、を備え、
前記第1の流路および前記第2の流路の各々には、前記第1の混合器および前記第2の混合器が含まれており、
前記第1の流路では、前記第1の混合器は前記サンプラによるサンプルの注入部より上流側に位置し、前記第2の混合器は前記注入部より下流側に位置し、
前記第2の流路では、前記第1の混合器および前記第2の混合器は前記注入部より上流側に位置し、
前記切替装置は、
前記カラムへの導入前にサンプルを希釈する第1モードでは、前記流路として前記第1の流路を構成し、
前記カラムへの導入前にサンプルを希釈しない第2モードでは、前記流路として前記第2の流路を構成する、液体クロマトグラフィ分析システム。
【請求項7】
前記切替装置の状態を制御するコントローラをさらに備え、
前記コントローラは、
前記第1モードでは、前記切替装置の状態を前記第1の流路を構成するように制御し、
前記第2モードでは、前記切替装置の状態を、前記第2の流路を構成するように制御する、請求項6に記載の液体クロマトグラフィ分析システム。
【請求項8】
前記第1の混合器および前記第2の混合器の少なくとも一方
を構成する混合器が交換可能である、請求項6または請求項7に記載の液体クロマトグラフィ分析システム。
【請求項9】
前記第1の混合器と前記第2の混合器は、互いに異なる混合容量を有する、請求項6または請求項7に記載の液体クロマトグラフィ分析システム。
【請求項10】
前記切替装置は、流路切替バルブを含む、請求項6または請求項7に記載の液体クロマトグラフィ分析システム。
【請求項11】
コンピュータによって実行される、第1の溶液および第2の溶液を移動相として利用する液体クロマトグラフィ分析システムの制御方法であって、
分析のモードを取得するステップと、
前記分析のモードに従って、前記第1の溶液を供給する第1のポンプおよび前記第2の溶液を供給する第2のポンプから前記液体クロマトグラフィ分析システムのカラムまでの流路を制御するステップと、を備え、
前記液体クロマトグラフィ分析システムは、サンプルを注入される注入部、第1の混合器、および第2の混合器を含み、
前記流路を制御するステップは、
前記分析のモードが前記カラムへの導入前にサンプルを希釈する第1モードである場合には、前記流路を、前記第1の混合器が前記注入部より上流側に位置し、前記第2の混合器が前記注入部より下流側に位置するように制御することと、
前記分析のモードが前記カラムへの導入前にサンプルを希釈しない第2モードである場合には、前記流路を、前記第1の混合器および前記第2の混合器が前記注入部より上流側に位置するように制御することと、を含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グラジエント溶出法に従って移動相を提供する液体クロマトグラフィ分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
グラジエント溶出法は、液体クロマトグラフィ分析において、移動相として複数の溶媒の混合液を利用する分析方法である。従来のシステムには、グラジエント溶出法に従って移動相を供給する構成を有するものがある。また、従来の液体クロマトグラフィ分析システムの中には、カラムに導入される前のサンプルを希釈するための構成を有するものがある。
【0003】
上記のようなシステムに関する技術は、たとえば、特許文献1(米国特許出願公開第2002/117447号明細書)、特許文献2(米国特許出願公開第2004/035789号明細書)、特許文献3(米国特許出願公開第2008/264848号明細書)、および、特許文献4(米国特許出願公開第2010/176043号明細書)に開示されている。
【0004】
しかしながら、従来のシステムは、カラムへの導入前にサンプルを希釈するための構成を備えた場合、カラムへの導入前にサンプルを希釈しないモードでの分析に適合しないものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2002/117447号明細書
【文献】米国特許出願公開第2004/035789号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/264848号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/176043号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、液体クロマトグラフィ分析システムを、カラムへの導入前にサンプルを希釈するモードでの分析とカラムへの導入前にサンプルを希釈しないモードでの分析との双方に適合させるための技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある局面に従う送液ユニットは、第1の溶液および第2の溶液を移動相として液体クロマトグラフィ分析システムのカラムに送る送液ユニットである。第1の溶液は、第1のポンプから供給される。第2の溶液は、第2のポンプから供給される。液体クロマトグラフィ分析システムは、サンプルが注入される注入部を含む。送液ユニットは、第1の混合器と、第2の混合器と、第1のポンプおよび第2のポンプからカラムまでの流路を、第1の流路および第2の流路の間で切り替える切替装置と、を含む。第1の流路および第2の流路の各々には、第1の混合器および第2の混合器が含まれている。第1の流路では、第1の混合器が注入部より上流側に位置し、第2の混合器が注入部より下流側に位置している。第2の流路では、第1の混合器および第2の混合器が注入部より上流側に位置している。切替装置は、カラムへの導入前にサンプルを希釈する第1モードでは、流路として第1の流路を構成し、カラムへの導入前にサンプルを希釈しない第2モードでは、流路として第2の流路を構成する。
【0008】
本開示のある局面に従う液体クロマトグラフィ分析システムは、第1の溶液および第2の溶液を移動相として利用する液体クロマトグラフィ分析システムである。液体クロマトグラフィ分析システムは、カラムと、第1の溶液を供給する第1のポンプと、第2の溶液を供給する第2のポンプと、カラムに向けてサンプルを注入するサンプラと、第1の混合器と、第2の混合器と、第1のポンプおよび第2のポンプからカラムまでの流路を、第1の流路および第2の流路の間で切り替わる切替装置と、を含む。第1の流路および第2の流路の各々には、第1の混合器および第2の混合器が含まれている。第1の流路では、第1の混合器はサンプラによるサンプルの注入部より上流側に位置し、第2の混合器は注入部より下流側に位置している。第2の流路では、第1の混合器および第2の混合器は注入部より上流側に位置している。切替装置は、カラムへの導入前にサンプルを希釈する第1モードでは、流路として第1の流路を構成する。カラムへの導入前にサンプルを希釈しない第2モードでは、流路として第2の流路を構成する。
【0009】
本開示のある局面に従う液体クロマトグラフィ分析システムの制御方法は、コンピュータによって実行される、第1の溶液および第2の溶液を移動相として利用する液体クロマトグラフィ分析システムの制御方法である。制御方法は、分析のモードを取得するステップと、分析のモードに従って、第1の溶液を供給する第1のポンプおよび第2の溶液を供給する第2のポンプから液体クロマトグラフィ分析システムのカラムまでの流路を制御するステップと、を含む。液体クロマトグラフィ分析システムは、サンプルを注入される注入部、第1の混合器、および第2の混合器を含む。流路を制御するステップは、分析のモードがカラムへの導入前にサンプルを希釈する第1モードである場合には、流路を、第1の混合器が注入部より上流側に位置し、第2の混合器が注入部より下流側に位置するように制御することを含む。流路を制御するステップは、分析のモードがカラムへの導入前にサンプルを希釈しない第2モードである場合には、流路を、第1の混合器および第2の混合器が注入部より上流側に位置するように制御することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示のLCシステム100の概略的な構成を表す図である。
【
図2】標準モードにおける送液ユニット13のポジションを示す図である。
【
図3】希釈モードにおける送液ユニット13のポジションを示す図である。
【
図4】既存技術に従った送液ユニットの構成の具体例を示す図である。
【
図5】既存技術に従った送液ユニットの構成の具体例を示す図である。
【
図6】既存技術に従った送液ユニットの構成の具体例を示す図である。
【
図7】既存技術に従った送液ユニットの構成の具体例を示す図である。
【
図8】本実施の形態の構成と、既存技術に従った構成のそれぞれについて、5つの基準に関する評価を示す図である。
【
図9】送液ユニット13の具体的な構成の一例を示す図である。
【
図10】流路切替バルブ600の標準ポジションでの、ポート601~606の接続パターンの一例を示す図である。
【
図11】流路切替バルブ600の希釈ポジションでの、ポート601~606の接続パターンの一例を示す図である。
【
図12】LCシステム100がサンプルを分析するために実施する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
以下、本開示の実施の形態に従う液体クロマトグラフィ分析システム(以下、「LCシステム」と称する)ついて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
[液体クロマトグラフィ分析システムの概略構成]
図1は、本開示のLCシステム100の概略的な構成を表す図である。
図1に示されるように、LCシステム100は、送液部10、オートサンプラ20、カラムオーブン30、検出器40、分析流路50、および、コントローラ60を含む。
【0014】
LCシステム100は、グラジエント溶出法に従って移動相を供給する構成を有する。LCシステム100では、移動相を構成する溶媒として、第1溶媒および第2溶媒が準備されている。送液部10には、第1溶媒を収容するタンク71と第2溶媒を収容するタンク72とが接続されている。
【0015】
第1溶媒と第2溶媒は、互いに溶出力が異なる。一実現例では、第1溶媒は水であり、第2溶媒はメタノールである。送液部10は、第1溶媒と第2溶媒を混合することにより、分析流路50に、グラジエント溶出法に従った移動相を供給する。
【0016】
送液部10は、第1溶媒を分析流路50へ供給する第1ポンプ11と、第2溶媒を分析流路50へ供給する第2ポンプ12とを含む。コントローラ60は、第1ポンプ11および第2ポンプ12のそれぞれの流速を制御することにより、移動相における第1溶媒および第2溶媒のそれぞれの流量を調整し、これにより、移動相における第1溶媒および第2溶媒の比を調整する。
【0017】
送液部10は、さらに、第1ポンプ11から供給される第1溶媒と第2ポンプ12から供給される第2溶媒とを混合する送液ユニット13をさらに含む。送液ユニット13の構成の詳細は、
図2および
図3を参照して後述される。
【0018】
オートサンプラ20は、分析流路50に試料を注入する。
カラムオーブン30は、カラム31を含む。カラム31は、オートサンプラ20によって分析流路50に注入された試料を分離するために利用される。カラム31は、カラムオーブン30内に収容されている。カラムオーブン30は、カラム31の温度を予め設定された温度に制御する。
【0019】
検出器40は、カラム31においてサンプルから分離された1以上の成分を検出するための装置である。検出器40は、カラム31において分離された1以上の成分の各々に基づく検出信号を取得し、当該検出信号をコントローラ60へ送信する。
【0020】
コントローラ60は、送液部10、オートサンプラ20、およびカラムオーブン30の動作を制御するとともに、検出器40で得られる検出信号に基づいて種々の演算やクロマトグラムを作成する。
【0021】
コントローラ60は、プロセッサ61、記憶装置62、およびインターフェース63を含む。プロセッサ61は、上述の動作の制御およびクロマトグラムの作成のための演算を実行する。記憶装置62は、上記演算のためのプログラムおよびデータを格納する。インターフェース63は、送液部10、オートサンプラ20、およびカラムオーブン30のそれぞれと、プロセッサ61との間の通信のインターフェースとして機能する。
【0022】
[標準モードと希釈モード]
サンプルについて生成されるクロマトグラムのピーク形状を調整するために、サンプルが希釈される場合がある。本明細書では、LCシステム100において、サンプルが希釈されることなく分析される場合の分析モードを「標準モード」と称し、希釈されたサンプルが分析される場合の分析モードを「希釈モード」と称する。
【0023】
「希釈モード」は、カラム31への導入前にサンプルを希釈する第1モードの一例である。「標準モード」は、カラム31への導入前にサンプルを希釈しない第2モードの一例である。
【0024】
[送液ユニットの概略構成]
LCシステム100において、送液ユニット13は、標準モードと希釈モードとで異なる経路を形成するためのポジションを取る。
図2は、標準モードにおける送液ユニット13のポジションを示す図である。
図2に示されるポジションは、「標準ポジション」とも称される。
図3は、希釈モードにおける送液ユニット13のポジションを示す図である。
図3に示されるポジションは、「希釈ポジション」とも称される。
【0025】
図2および
図3に示されるように、送液ユニット13は、第1混合器13Gと、第2混合器13Dとを含む。第1混合器13Gおよび第2混合器13Dの各々は、複数の供給源から供給される液体を収容する混合室を含む。当該混合室には、複数の供給源から供給された液体を混合された状態で排出するための開口が形成されている。一実現例では、第1混合器13Gおよび第2混合器13Dの各々は、島津製作所株式会社製のグラジエント用ミキサ(https://www.an.shimadzu.co.jp/hplc/prominence/modules/8_option.htm)によって実現される。第1混合器13Gおよび第2混合器13Dのそれぞれの混合容量は、それぞれが有する混合室の容量に基づく。
【0026】
図2の例では、送液ユニット13は、管131~134を含む。
図2の例では、管131~134は、分析流路50のうち、第1ポンプ11および第2ポンプ12からカラム31までの流路を構成する。
【0027】
図3の例では、送液ユニット13は、管131,132,134~136を含む。
図3の例では、管131,132,134~136は、分析流路50のうち、第1ポンプ11および第2ポンプ12からカラム31までの流路を構成する。
【0028】
(
図2:標準ポジション)
図2に示された標準ポジションでは、第1ポンプ11から供給される第1溶媒は、管131を介して第2混合器13Dに導入され、その後、管133を経て第1混合器13Gへ導入される。一方、第2ポンプ12から供給される第2溶媒は、管132を介して第1混合器13Gへ導入される。第1溶媒および第2溶媒は、第1混合器13Gで混合された後、管134および管135を介して、カラム31へ導入される。
【0029】
図2において、「オートサンプラ20」として、分析流路50におけるオートサンプラ20からのサンプルの注入部が示されている。
図2において、オートサンプラ20から注入されるサンプルは、管135を経て、カラム31へ導入される。
【0030】
図2に示された標準ポジションでは、第1ポンプ11から供給される第1溶媒は、第2混合器13Dを通過した後、第1混合器13Gを通過し、その後、オートサンプラ20(の注入部)を通過する。すなわち、第1混合器13Gおよび第2混合器13Dは、オートサンプラ20(の注入部)より上流側に位置する。
【0031】
図2には、標準モードでの送液パターンを説明するための付記N1が示されている。付記N1は、オートサンプラ20からのサンプル注入前後の、分析流路50への送液のパターンを表すグラフを含む。グラフにおいて、縦軸は分析流路50のサンプル導入口における各溶液の流量を模式的に表し、横軸は時間を表す。
【0032】
付記N1のグラフに示されるように、時刻T0に、第1ポンプ11および第2ポンプ12の駆動が開始される。これにより、第1溶媒および第2溶媒の分析流路50への供給が開始される。その後、時刻T1から時刻T2まで、オートサンプラ20から分析流路50へサンプルが導入される。具体的には、オートサンプラ20内にあるバルブが切り替えられて、同じくオートサンプラ20内に配置されたサンプルループに充填されたサンプルが、時刻T0で設定された流量で分析流路50へ導入される。
【0033】
時刻T2においてサンプルの導入が終了すると、
図2では、時刻T2以降の第1溶媒および第2溶媒の流量比は一定であるが、実際には、時刻T2以降の第1溶媒および第2溶媒の流量比は、サンプルの分析において採用される設定(グラジエント溶出法に従った設定)に基づいて変化し得る。
【0034】
(
図3:希釈ポジション)
図3に示された希釈ポジションでは、第1ポンプ11から供給される第1溶媒は、管131を介して第2混合器13Dに導入される。一方、第2ポンプ12から供給される第2溶媒は、管132を介して第2混合器13Gへ導入され、その後、管134および管135を介して、第2混合器13Dへ導入される。
【0035】
図3に示された希釈ポジションでは、第1溶媒と第2溶媒は、第2混合器13Dで混合された後、管136を介してカラム31へ導入される。
【0036】
図3では、
図2と同様に、「オートサンプラ20」として、分析流路50におけるオートサンプラ20からのサンプルの注入部が示されている。
図3に示された希釈ポジションでは、オートサンプラ20から注入されるサンプルは、管135を経て、第2混合器13Dへ導入される。そして、サンプルは、第2混合器13Dで第1溶媒で希釈された後、管136を介して、カラム31へ導入される。
【0037】
図3に示された希釈ポジションでは、第2ポンプ12から供給される第2溶媒は、第1混合器13Gを通過した後、オートサンプラ20(の注入部)を通過し、その後、第2混合器13Dを通過する。すなわち、第1混合器13Gは、オートサンプラ20(の注入部)より上流側に位置し、第2混合器13Dは、オートサンプラ20(の注入部)より下流側に位置する。
【0038】
図3には、希釈モードでの送液パターンを説明するための付記N2が示されている。付記N2は、オートサンプラ20からのサンプル注入前後の、分析流路50への送液のパターンを表すグラフを含む。グラフにおいて、縦軸は流量を模式的に表し、横軸は時間を表す。
【0039】
付記N2のグラフにおいて示されるように、時刻T0に、第1ポンプ11および第2ポンプ12の駆動が開始される。これにより、第1溶媒および第2溶媒の分析流路50への供給が開始される。その後、時刻T1から時刻T2まで、オートサンプラ20内にあるバルブが切り替えられて、同じくオートサンプラ20内に配置されたサンプルループに充填されたサンプルが、第2ポンプ12の駆動により送液される第2溶媒でサンプルを押し出されることでサンプルを分析流路50へ導入する。これにより、押し出されたサンプルは、第1ポンプ11の駆動により送液される第1溶媒で希釈され、当該希釈されたサンプルがカラム31へ導入される。
【0040】
時刻T2においてサンプルの導入が終了すると、所定の比率で混合された第1溶媒と第2溶媒の混合液が流路50に供給される。
図3では、時刻T2以降の第1溶媒および第2溶媒の流量比は一定であるが、実際には、時刻T2以降の第1溶媒および第2溶媒の流量比は、サンプルの分析において採用される設定(グラジエント溶出法に従った設定)に基づいて変化し得る。
【0041】
[既存技術に従った構成の具体例]
図4~
図7のそれぞれは、既存技術に従った送液ユニットの構成の具体例を示す図である。以下、それぞれの具体例について説明する。
【0042】
(
図4:バイパス方式)
図4の構成例は、第1混合器913Gと第2混合器913Dとを含む。
図4には、さらに、第1ポンプ911、第2ポンプ912、管811,812,813,814,815,816、オートサンプラ920、および、カラムオーブン930を含む。カラムオーブン930は、カラム931を含む。
【0043】
図4の構成例では、第1ポンプ911から供給される第1溶媒は、管811を介して第1混合器913Gへ導入される。第2ポンプ912から供給される第2溶媒は、管812を介して第1混合器913Gへ導入される。第1溶媒と第2溶媒は、第1混合器913Gで混合された後、管813および管816を経てカラム931へ導入される。
【0044】
オートサンプラ920から注入されたサンプルは、管815を介して、第2混合器913Dへ導入される。
【0045】
図4の構成例では、管814はバイパスラインとして機能する。すなわち、管813内の混合液(第1溶媒と第2溶媒)の一部は、管815を介して第2混合器913Dへ導入されるが、残りは、管814を介して第2混合器913Dへ導入される。
【0046】
管814を介して第2混合器913Dへ導入された混合液は、オートサンプラ920からのサンプルを希釈する。希釈されたサンプルは、第2混合器913Dから、管816を介して、カラム931へ導入される。
【0047】
図4には、希釈モードでの送液パターンを説明するための付記N3が示されている。付記N3は、オートサンプラ920からのサンプル注入前後の、分析流路(管811~816)への送液のパターンを表すグラフを含む。グラフにおいて、縦軸は流量を模式的に表し、横軸は時間を表す。
【0048】
付記N3のグラフにおいて示されるように、時刻T0に、第1ポンプ911および第2ポンプ912の駆動が開始される。これにより、第1溶媒および第2溶媒の分析流路への供給が開始される。その後、時刻T1から時刻T2まで、オートサンプラ920内のバルブを切り替えられて接続されたサンプルループ内に充填されたサンプルが分析流路へ導入される。サンプルは、管914を介して第2混合器913Dに導入された、第1溶媒と第2溶媒の混合液によって希釈された状態で、カラム931へ導入される。
【0049】
時刻T2においてサンプルの導入が終了すると、第1溶媒および第2溶媒の混合液が移動相として分析流路へ供給される。
図4では、時刻T2以降の第1溶媒および第2溶媒の流量比は一定であるが、実際には、時刻T2以降の第1溶媒および第2溶媒の流量比は、サンプルの分析において採用される設定(グラジエント溶出法に従った設定)に基づいて変化し得る。
【0050】
(
図5:希釈液導入方式)
図5の構成例は、第1混合器913Gと第2混合器913Dとを含む。
図5には、さらに、第1ポンプ911、第2ポンプ912、第3ポンプ990、管821,822,823,824,825,826、オートサンプラ920、および、カラムオーブン930を含む。カラムオーブン930は、カラム931を含む。第3ポンプ990は、サンプルを希釈するための溶媒(希釈溶媒)を分析流路へ供給する。
【0051】
図5の構成例では、第1ポンプ911から供給される第1溶媒は、管821を介して第1混合器913Gへ導入される。第2ポンプ912から供給される第2溶媒は、管822を介して第1混合器913Gへ導入される。第1溶媒と第2溶媒は、第1混合器913Gで混合された後、管823、管824および管826を経てカラム931へ導入される。
【0052】
オートサンプラ920から注入されたサンプルは、管824を介して、第2混合器913Dへ導入される。第3ポンプ990は、管825を介して、第2混合器913Dへ、希釈溶媒を供給する。サンプルは、第2混合器913Dで希釈された後、管826を介して、カラム931へ導入される。
【0053】
図5には、希釈モードでの送液パターンを説明するための付記N4が示されている。付記N4は、オートサンプラ920からのサンプル注入前後の、分析流路(管821~826)への送液のパターンを表すグラフを含む。グラフにおいて、縦軸は流量を模式的に表し、横軸は時間を表す。
【0054】
付記N4のグラフにおいて示されるように、時刻T0に、第1ポンプ911および第2ポンプ912の駆動が開始される。これにより、第1溶媒および第2溶媒の分析流路への供給が開始される。
【0055】
その後、時刻T1から時刻T2まで、第1ポンプ911および第2ポンプ912の流速が低減された状態で、オートサンプラ920から第2混合器913Dへ、サンプルが導入される。時刻T1から時刻T2まで、第3ポンプ990が駆動されて、希釈溶媒が第2混合器913Dへ導入される。サンプルは、第2混合器913Dで希釈された後、管826を経て、カラム931へ導入される。
【0056】
時刻T2においてサンプルの導入が終了すると、第3ポンプ990の駆動が停止されて、第1ポンプ911および第2ポンプ912の流量が低減前の量へと戻される。これにより、第1溶媒および第2溶媒の混合液が移動相として分析流路へ供給される。
図5では、時刻T2以降の第1溶媒および第2溶媒の流量比は一定であるが、実際には、時刻T2以降の第1溶媒および第2溶媒の流量比は、サンプルの分析において採用される設定(グラジエント溶出法に従った設定)に基づいて変化し得る。
【0057】
(
図6:サンプル溶液導入方式)
図6の構成例は、第1混合器913Gと第2混合器913Dとを含む。
図6には、さらに、第1ポンプ911、第2ポンプ912、第3ポンプ990、管831,832,833,834,835,836、オートサンプラ920、および、カラムオーブン930を含む。カラムオーブン930は、カラム931を含む。第3ポンプ990は、サンプルを希釈するための溶媒(希釈溶媒)を分析流路へ供給する。
【0058】
図6の構成例では、第1ポンプ911から供給される第1溶媒は、管831を介して第1混合器913Gへ導入される。第2ポンプ912から供給される第2溶媒は、管832を介して第1混合器913Gへ導入される。第1溶媒と第2溶媒は、第1混合器913Gで混合された後、管833および管836を経てカラム931へ導入される。
【0059】
オートサンプラ920から注入されたサンプルは、第3ポンプ990から管834を介して供給される希釈溶媒で希釈されながら、第2混合器913Dおよび管836を経て、カラム931へ導入される。
【0060】
図6には、希釈モードでの送液パターンを説明するための付記N5が示されている。付記N5は、オートサンプラ920からのサンプル注入前後の、分析流路(管831~836)への送液のパターンを表すグラフを含む。グラフにおいて、縦軸は流量を模式的に表し、横軸は時間を表す。
【0061】
付記N5のグラフにおいて示されるように、時刻T0に、第1ポンプ911および第2ポンプ912の駆動が開始される。これにより、第1溶媒および第2溶媒の分析流路への供給が開始される。
【0062】
その後、時刻T1から時刻T2まで、第1ポンプ911および第2ポンプ912の流量が低減された状態で、ポンプ990が駆動し、オートサンプラ920から第2混合器913Dへ、サンプルが導入される。これにより、サンプルは、第1ポンプ911からの第1溶媒と第2ポンプ912からの第2溶媒で希釈された後、カラム931へ導入される。なお、時刻T1から時刻T2までの間、第1溶媒と第2溶媒の比率については、時刻T0と同様の割合でもよいし、別の比率に設定されてもよい。すなわち、この比率は、オートサンプラ920から第2混合器913Dへ、サンプルが適切に導入されるような比率であればよく、特に限定されない。
【0063】
時刻T2においてサンプルの導入が終了すると、第3ポンプ990の駆動が停止され、第1ポンプ911および第2ポンプ912の駆動が再開される。これにより、第1溶媒および第2溶媒の混合液が移動相として分析流路へ供給される。
図6では、時刻T2以降の第1溶媒および第2溶媒の流量比は一定であるが、実際には、時刻T2以降の第1溶媒および第2溶媒の流量比は、サンプルの分析において採用される設定(グラジエント溶出法に従った設定)に基づいて変化し得る。
【0064】
(
図7:高圧グラジエント希釈方式)
図7の構成例は、混合器913Xを含む。
図7には、さらに、第1ポンプ911、第2ポンプ912、管841,842,843,844、オートサンプラ920、および、カラムオーブン930を含む。カラムオーブン930は、カラム931を含む。
【0065】
図7の構成例では、第1ポンプ911から供給される第1溶媒は、管841を介して混合器913Xへ導入される。第2ポンプ912から供給される第2溶媒は、管842および管843を介して混合器913Xへ導入される。第1溶媒と第2溶媒は、混合器913Xで混合された後、管844を経てカラム931へ導入される。
【0066】
オートサンプラ920から注入されたサンプルは、管843を介して、混合器913Xへ導入される。サンプルは、混合器913Xで、第1溶媒で希釈された後、管844を経て、カラム931へ導入される。
【0067】
図7には、希釈モードでの送液パターンを説明するための付記N6が示されている。付記N6は、オートサンプラ920からのサンプル注入前後の、分析流路(管841~844)への送液のパターンを表すグラフを含む。グラフにおいて、縦軸は流量を模式的に表し、横軸は時間を表す。
【0068】
付記N6のグラフにおいて示されるように、時刻T0に、第1ポンプ911および第2ポンプ912の駆動が開始される。これにより、第1溶媒および第2溶媒の分析流路への供給が開始される。
【0069】
その後、時刻T1から時刻T2まで、オートサンプラ920から混合器913Xへ、サンプルが導入される。これにより、サンプルは、混合器913Xで、第1溶媒で希釈された後、カラム931へ導入される。
【0070】
時刻T2においてサンプルの導入が終了すると、第2溶媒が混合器913Xへ導入される。これにより、第1溶媒および第2溶媒の混合液が移動相として分析流路へ供給される。
図7では、時刻T2以降の第1溶媒および第2溶媒の流量比は一定であるが、実際には、時刻T2以降の第1溶媒および第2溶媒の流量比は、サンプルの分析において採用される設定(グラジエント溶出法に従った設定)に基づいて変化し得る。
【0071】
[既存技術に従った構成との対比]
ここまで、
図2および
図3を主に参照して、本開示の実施の形態の構成が説明された。また、
図4~
図7を参照して、既存技術に従った構成が説明された。ここでは、本開示の実施の形態の構成を、既存技術に従った構成との対比によって説明する。
【0072】
図8は、本実施の形態の構成と、既存技術に従った構成のそれぞれについて、5つの基準に関する評価を示す図である。5つのポイントは、以下の通りである。
【0073】
(1)希釈倍率の変更
(2)導入コスト
(3)希釈用混合器の変更
(4)グラジエント用混合器の変更
(5)標準注入の性能
図8では、結果は、ランクA~Cで示される。ランクAは、構成が、基準について分析に適していることを表す。ランクBは、構成が、基準について分析に適しているとは言えないことを表す。ランクCは、構成が、基準について分析に適していないことを表す。以下、基準の内容および結果を説明する。
【0074】
(1)希釈倍率の変更
基準「希釈倍率の変更」は、希釈モードにおいて、サンプルの希釈倍率の変更が可能か否かを意味する。
【0075】
バイパス方式(
図4)では、希釈倍率は、第2混合器913Dに第1溶媒および第2溶媒を導入するバイパスライン(管814)と、第2混合器913Dにサンプルを導入する管815との径の比に基づく。バイパス方式(
図4)では、管814と管815との径の比は固定されている。このことから、バイパス方式では、サンプルの希釈倍率は、固定され、変更できない。したがって、バイパス方式には、基準「希釈倍率の変更」についてランクCが付与される。
【0076】
希釈液導入方式(
図5)およびサンプル溶液導入方式(
図6)のいずれも、第3ポンプ990の流量を調整することにより、サンプルの希釈倍率を変更できる。また、高圧グラジエント希釈方式(
図7)は、第1ポンプ911の流量を調整することにより、サンプルの希釈倍率を変更できる。したがって、希釈液導入方式、サンプル溶液導入方式、および、高圧グラジエント希釈方式には、基準「希釈倍率の変更」についてランクAが付与される。
【0077】
本実施の形態では、希釈モードは
図3に示される。
図3に示された構成では、LCシステム100は、第1ポンプ11の流量を調整することにより、サンプルの希釈倍率を変更できる。したがって、本実施の形態の構成には、基準「希釈倍率の変更」についてランクAが付与される。
【0078】
(2)導入コスト
2つ目の基準「導入コスト」は、LCシステムの実現においてコストの増大の抑制が可能であることを意味する。
【0079】
バイパス方式(
図4)、高圧グラジエント希釈方式(
図7)、本実施の形態の構成(
図2および
図3)と比較して、希釈液導入方式(
図5)およびサンプル溶液導入方式(
図6)は、3つ目のポンプ(第3ポンプ990)を必要とする。
【0080】
したがって、基準「導入コスト」について、バイパス方式(
図4)および高圧グラジエント希釈方式(
図7)、ならびに、本実施の形態の構成には、ランクAが付与される。一方、希釈液導入方式(
図5)およびサンプル溶液導入方式(
図6)には、ランクCが付与される。
【0081】
なお、本実施の形態の構成では、標準ポジション(
図2)と希釈ポジション(
図3)との間で分析流路50を切り替えるための要素を必要とする。ただし、このような要素は、
図9および
図10を参照して説明されるように、流路切替バルブによって実現され得る。流路切替バルブは、ポンプのような高価な駆動部を必要としない。したがって、標準ポジション(
図2)と希釈ポジション(
図3)との間で分析流路50を切り替えるための要素を必要としたとしても、本実施の形態の構成には、基準「導入コスト」について、ランクAが付与される。
【0082】
(3)希釈用混合器の変更
基準「希釈用混合器の変更」は、希釈モードにおいてサンプルの希釈に利用される混合器の変更が可能であることを意味する。
【0083】
図4~
図6のいずれの構成においても、第2混合器913Dは、分析流路に対して着脱可能であるため、交換が可能である。また、
図7の構成において、混合器913Xは、分析流路に対して着脱可能であるため、交換が可能である。したがって、
図4~
図7の構成のいずれにおいても、希釈モードにおいてサンプルの希釈に利用される混合器の変更が可能である。
【0084】
しかしながら、
図4~
図7の構成では、各構成が標準モードで利用された場合、サンプルは希釈モードにおいてサンプルの希釈に利用される混合器を必ず通過する。したがって、
図4~
図7の構成では、上記混合器の変更(交換)は、標準モードにおける分析性能に影響を与えてしまう。
【0085】
一方、本実施の形態の構成では、このような影響は発生しない。すなわち、本実施の形態の構成では、第1混合器13Gおよび第2混合器13Dのいずれも、分析流路50に対して着脱可能であるため、交換が可能である。その上、標準モードでは、
図2を参照して説明されたように、オートサンプラ20から導入されたサンプルは、希釈モードにおいてサンプルの希釈に利用される混合器(第2混合器13D)を通過することを必要とされない。したがって、本実施の形態の構成では、第2混合器13Dの変更(交換)は、標準モードにおける分析性能に対して影響を与えない。
【0086】
以上より、基準「希釈用混合器の変更」について、
図4~
図7の構成にはランクBが付与されるのに対し、本実施の形態の構成にはランクAが付与される。
【0087】
(4)グラジエント用混合器の変更
基準「グラジエント用混合器の変更」は、標準モードにおいて、グラジエント溶出法に従った第1溶媒と第2溶媒の混合のために利用される混合器の変更が可能であることを意味する。
【0088】
図4~
図7の構成および本実施の形態の構成において、混合器は分析流路から着脱可能である。したがって、
図4~
図7の構成および本実施の形態の構成では、標準モードにおいて、グラジエント溶出法に従った第1溶媒と第2溶媒の混合のために利用される混合器の変更が可能である。
【0089】
ただし、
図7の構成(高圧グラジエント希釈方式)の混合器913Xは、第1溶媒と第2溶媒を混合するためにも、サンプルを希釈するためにも、利用されされている。したがって、
図7の構成では、第1溶媒と第2溶媒を混合するために利用される混合器は、サンプルを希釈するための混合器とは独立して変更できない。
【0090】
したがって、基準「グラジエント用混合器の変更」について、
図4~
図6の構成および本実施の形態の構成にはランクAが付与されるが、
図7の構成にはランクBが付与される。
【0091】
(5)標準注入の性能
基準「標準注入の性能」は、標準モードでの分析の性能の良さを意味する。
【0092】
バイパス方式(
図4)は、標準モードでの分析には適していない。その理由は、第2混合器913Dにバイパスライン(管814)が接続されている限り、オートサンプラ920からのサンプルの一部は、第2混合器913Dに導入されると、管814を介して管813へ送られ、その後、管815に再度合流して管814に戻る、という挙動を示すからである。したがって、基準「標準注入の性能」について、
図4の構成にはランクCが付与される。
【0093】
希釈液導入方式(
図5)は、標準モードでの分析に適しているとは言えない。より具体的には、希釈液導入方式(
図5)では、第3ポンプ990を停止させれば、標準モードでの分析は可能とも言える。しかしながら、サンプルは、カラム931に到達する前に、第2混合器913Dを通過する。これにより、第2混合器913Dの通過により、サンプルに悪影響が生じ得る。したがって、基準「標準注入の性能」について、
図5の構成にはランクBが付与される。
【0094】
サンプル溶液導入方式(
図6)は、標準モードでの分析には適していない。その理由は、オートサンプラ920からのサンプルをカラム931へ送るために第3ポンプ990が駆動された場合、サンプルと第3ポンプ990から供給される希釈溶媒とが、第2混合器913Dにおいて混合され、これにより、サンプルが希釈溶媒で希釈されるからである。したがって、基準「標準注入の性能」について、
図6の構成にはランクCが付与される。
【0095】
高圧グラジエント希釈方式(
図7)は、標準モードでの分析には適していない。その理由は、オートサンプラ920からのサンプルをカラム931へ送るために第2ポンプ912が駆動された場合、サンプルと第2ポンプ912から供給される第2溶媒とが、第2混合器913Dにおいて混合され、これにより、サンプルが第2溶媒で希釈されるからである。したがって、基準「標準注入の性能」について、
図7の構成にはランクCが付与される。
【0096】
一方、本実施の形態の構成では、
図2を参照して説明されたように、標準モードでの分析では、オートサンプラ20からのサンプルは、混合器を通過することなく、カラム31へ到達する。したがって、基準「標準注入の性能」について、本実施の形態の構成にはランクAが付与される。
【0097】
図8を参照して説明されたように、
図4~
図7の構成は、上記(1)~(5)で示された5つの基準のうち少なくとも1つについて、ランクA以外の評価を付与されている。一方、本実施の形態の構成は、上記(1)~(5)で示された5つのすべての基準について、ランクAの評価を付与されている。
【0098】
特に、(5)で示された基準(基準「標準注入の性能」)について、
図4~
図7の構成のすべてがランクA以外の評価を付与されているのに対し、本実施の形態の構成には、ランクAの評価が付与されている。
【0099】
[送液ユニットの構成の具体例]
図9は、送液ユニット13の具体的な構成の一例を示す図である。
図9の例では、送液ユニット13は、第1混合器13G、第2混合器13D、および流路切替バルブ600を含む。流路切替バルブ600は、たとえば、島津製作所株式会社製の流路切替バルブ(https://www.an.shimadzu.co.jp/hplc/prominence/modules/7_flow-changeover-valve.htm)によって実現される。流路切替バルブ600は、6つのポート601~606を有する。ポート601~606の各々は、隣接する他の1つのポートと連結され得る。ポート606は、流れを止めるポートである。流路切替バルブ600は、複数のポートの中で接続するポートの組を変更することによって分析流路50における流路を切り替える。これにより、分析流路50における流路の切替が省スペースで実現され得る。
【0100】
第1混合器13Gは、3つの開口を有する。1つ目の開口は、管131で第1ポンプ11と接続されている。2つ目の開口は、管1302で、ポート602と接続されている。3つ目の開口は、管1305で、ポート605と接続されている。
【0101】
第2混合器13Dは、3つの開口を有する。1つ目の開口は、管132で第2ポンプ12と接続されている。2つ目の開口は、管1301で、ポート601と接続されている。3つ目の開口は、管134で、オートサンプラ20と接続されている。
【0102】
図10は、流路切替バルブ600の標準ポジションでの、ポート601~606の接続パターンの一例を示す図である。
図10に示されるように、標準ポジションでは、ポート601はポート602と接続され、ポート603はポート604と接続され、ポート605はポート606と接続される。
【0103】
図2では、管133を第1溶媒が通過する。
図2の管133は、
図10の管1302、ポート602、ポート601、および管1301によって実現される。
図2では、管135をサンプルが通過する。
図2の管135は、
図10の管1304、ポート604、ポート603、および管1303によって実現される。
【0104】
管131には第1溶媒が通過し、管132には第2溶媒が通過し、管134には第1溶媒と第2溶媒の混合液が通過する。
【0105】
図11は、流路切替バルブ600の希釈ポジションでの、ポート601~606の接続パターンの一例を示す図である。
【0106】
図11に示されるように、希釈ポジションでは、ポート601はポート606と接続され、ポート603はポート602と接続され、ポート605はポート604と接続される。
【0107】
図3では、管135を、サンプルが通過する。
図3の管135は、
図11の管1304、ポート604、ポート605、および管1305によって実現される。
【0108】
図3では、管136を、第1溶媒で希釈されたサンプル(サンプル+第1溶媒)が通過する。
図3の管136は、
図11の管1302、ポート602、ポート603、および管1303によって実現される。管131には第1溶媒が通過し、管132および管134には第2溶媒が通過する。
【0109】
[処理の流れ]
図12は、LCシステム100がサンプルを分析するために実施する処理のフローチャートである。一実現例では、
図12の処理は、コントローラ60のプロセッサ61が所与のプログラムを実行することによって実現される。
【0110】
ステップS10において、LCシステム100は、分析モードの設定を読み出す。一実現例では、分析モードは、たとえばユーザが入力装置を操作して記憶装置62に登録される。入力装置は、インターフェース63を介して、記憶装置62に分析モードを登録する。
【0111】
ステップS12において、LCシステム100は、読み出された分析モードが標準モードであるか希釈モードであるかを判断する。LCシステム100は、標準モードであると判断するとステップS14へ制御を進め、希釈モードであると判断するとステップS16へ制御を進める。
【0112】
ステップS14にて、LCシステム100は、送液ユニット13の状態を標準ポジション(
図2)に制御する。一実現例では、ステップS14において、コントローラ60が流路切替バルブ600のポート601~606の接続状態を
図10に示された状態に制御する。
【0113】
ステップS16にて、LCシステム100は、送液ユニット13の状態を希釈ポジション(
図3)に制御する。一実現例では、ステップS16において、コントローラ60が流路切替バルブ600のポート601~606の接続状態を
図11に示された状態に制御する。
【0114】
ステップS18にて、LCシステム100は、第1ポンプ11および第2ポンプ12の駆動を開始することにより、分析流路50への移動相の流入を開始させる。ステップS18の制御は、
図2などにおける時刻T0から時刻T1までの期間に対応する。
【0115】
ステップS20にて、LCシステム100は、オートサンプラ20に、分析流路50へサンプルを注入させる。ステップS20の制御は、
図2などにおける時刻T1から時刻T2までの期間に対応する。
【0116】
ステップS22にて、LCシステム100は、サンプルを分析する。ステップS22の制御は、
図2などにおける時刻T2以降の期間に対応する。一実現例では、コントローラ60が、検出器40から、カラム31において分離されたサンプルの成分に基づく検出信号を取得し、処理することにより、分析が実現される。その後、LCシステム100は、
図12の処理を終了させる。
【0117】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0118】
(第1項) 一態様にかかる送液ユニットは、第1の溶液および第2の溶液を移動相として液体クロマトグラフィ分析システムのカラムに送る送液ユニットであってもよい。前記第1の溶液は、第1のポンプから供給されてもよい。前記第2の溶液は、第2のポンプから供給されてもよい。前記液体クロマトグラフィ分析システムは、サンプルが注入される注入部を含んでいてもよい。前記送液ユニットは、第1の混合器と、第2の混合器と、前記第1のポンプおよび前記第2のポンプから前記カラムまでの流路を、第1の流路および第2の流路の間で切り替える切替装置と、を含んでいてもよい。前記第1の流路および前記第2の流路の各々には、前記第1の混合器および前記第2の混合器が含まれていてもよい。前記第1の流路では、前記第1の混合器が前記注入部より上流側に位置し、前記第2の混合器が前記注入部より下流側に位置していてもよい。前記第2の流路では、前記第1の混合器および前記第2の混合器が前記注入部より上流側に位置していてもよい。前記切替装置は、前記カラムへの導入前にサンプルを希釈する第1モードでは、前記流路として前記第1の流路を構成し、前記カラムへの導入前にサンプルを希釈しない第2モードでは、前記流路として前記第2の流路を構成してもよい。
【0119】
第1項に記載の送液ユニットによれば、カラムへの導入前にサンプルを希釈するモードでは、第2の混合器で、注入部から注入されたサンプルが希釈され得る。一方、カラムへの導入前にサンプルを希釈しないモードでは、サンプルは、第1の混合器および第2の混合器の双方を通過することなく、カラムに到達できる。これにより、液体クロマトグラフィ分析システムが、カラムへの導入前にサンプルを希釈するモードでの分析だけでなく、カラムへの導入前にサンプルを希釈しないモードでの分析にも適合するようになる。
【0120】
(第2項) 第1項に記載の送液ユニットにおいて、前記切替装置の状態を制御するコントローラをさらに含んでいてもよい。前記コントローラは、前記第1モードでは、前記切替装置の状態を、前記第1の流路を構成するように制御し、前記第2モードでは、前記切替装置の状態を、前記第2の流路を構成するように制御してもよい。
【0121】
第2項に記載の送液ユニットによれば、切替装置の状態が、コントローラによって制御されるため、液体クロマトグラフィ分析システムの作業者における切替装置の状態を切り替えるための負担が軽減され得る。
【0122】
(第3項) 第1項または第2項に記載の送液ユニットにおいて、前記第1の混合器および前記第2の混合器の少なくとも一方は、前記流路に対して着脱可能であってもよい。
【0123】
第3項に記載の送液ユニットによれば、第1の混合器および第2の混合器の少なくとも一方が、交換され得る。
【0124】
(第4項) 第1項~第3項のいずれか1項に記載の送液ユニットにおいて、前記第1の混合器と前記第2の混合器は、互いに異なる混合容量を有していてもよい。
【0125】
第4項に記載の送液ユニットによれば、液体クロマトグラフィ分析システムのユーザの要望に応じて、第1の混合器と第2の混合器との間で、溶液を混合する能力を異ならせることができる。
【0126】
(第5項) 第1項~第4項のいずれか1項に記載の送液ユニットにおいて、前記切替装置は、流路切替バルブを含んでいてもよい。
【0127】
第5項に記載の送液ユニットによれば、切替装置が、省スペースで実現され得る。
(第6項) 一態様にかかる液体クロマトグラフシステムは、第1の溶液および第2の溶液を移動相として利用する液体クロマトグラフィ分析システムであって、カラムと、前記第1の溶液を供給する第1のポンプと、前記第2の溶液を供給する第2のポンプと、前記カラムに向けてサンプルを注入するサンプラと、第1の混合器と、第2の混合器と、前記第1のポンプおよび前記第2のポンプから前記カラムまでの流路を、第1の流路および第2の流路の間で切り替わる切替装置と、を備え、前記第1の流路および前記第2の流路の各々には、前記第1の混合器および前記第2の混合器が含まれており、前記第1の流路では、前記第1の混合器は前記サンプラによるサンプルの注入部より上流側に位置し、前記第2の混合器は前記注入部より下流側に位置し、前記第2の流路では、前記第1の混合器および前記第2の混合器は前記注入部より上流側に位置し、前記切替装置は、前記カラムへの導入前にサンプルを希釈する第1モードでは、前記流路として前記第1の流路を構成し、前記カラムへの導入前にサンプルを希釈しない第2モードでは、前記流路として前記第2の流路を構成してもよい。
【0128】
第6項に記載の液体クロマトグラフィ分析システムによれば、カラムへの導入前にサンプルを希釈するモードでは、第2の混合器で、注入部から注入されたサンプルが希釈され得る。一方、カラムへの導入前にサンプルを希釈しないモードでは、サンプルは、第1の混合器および第2の混合器の双方を通過することなく、カラムに到達できる。これにより、液体クロマトグラフィ分析システムが、カラムへの導入前にサンプルを希釈するモードでの分析だけでなく、カラムへの導入前にサンプルを希釈しないモードでの分析にも適合するようになる。
【0129】
(第7項) 第6項に記載の液体クロマトグラフィ分析システムにおいて、前記切替装置の状態を制御するコントローラをさらに含んでいてもよい。前記コントローラは、前記第1モードでは、前記切替装置の状態を、前記第1の流路を構成するように制御し、前記第2モードでは、前記切替装置の状態を、前記第2の流路を構成するように制御してもよい。
【0130】
第7項に記載の液体クロマトグラフィ分析システムによれば、切替装置の状態が、コントローラによって制御されるため、液体クロマトグラフィ分析システムの作業者における切替装置の状態を切り替えるための負担が軽減され得る。
【0131】
(第8項) 第6項または第7項に記載の液体クロマトグラフィ分析システムにおいて、前記第1の混合器および前記第2の混合器の少なくとも一方は、前記流路に対して着脱可能であってもよい。
【0132】
第8項に記載の液体クロマトグラフィ分析システムによれば、第1の混合器および第2の混合器の少なくとも一方が、交換され得る。
【0133】
(第9項) 第6項~第8項のいずれか1項に記載の液体クロマトグラフィ分析システムにおいて、前記第1の混合器と前記第2の混合器は、互いに異なる混合容量を有していてもよい。
【0134】
第9項に記載の液体クロマトグラフィ分析システムによれば、液体クロマトグラフィ分析システムのユーザの要望に応じて、第1の混合器と第2の混合器との間で、溶液を混合する能力を異ならせることができる。
【0135】
(第10項) 第6項~第9項のいずれか1項に記載の液体クロマトグラフィ分析システムにおいて、前記切替装置は、流路切替バルブを含んでいてもよい。
【0136】
第10項に記載の液体クロマトグラフィ分析システムによれば、切替装置が、省スペースで実現され得る。
【0137】
(第11項) 一態様にかかる制御方法は、コンピュータによって実行される、第1の溶液および第2の溶液を移動相として利用する液体クロマトグラフィ分析システムの制御方法であって、分析のモードを取得するステップと、前記分析のモードに従って、前記第1の溶液を供給する第1のポンプおよび前記第2の溶液を供給する第2のポンプから前記液体クロマトグラフィ分析システムのカラムまでの流路を制御するステップと、を備え、前記液体クロマトグラフィ分析システムは、サンプルを注入される注入部、第1の混合器、および第2の混合器を含み、前記流路を制御するステップは、前記分析のモードが前記カラムへの導入前にサンプルを希釈する第1モードである場合には、前記流路を、前記第1の混合器が前記注入部より上流側に位置し、前記第2の混合器が前記注入部より下流側に位置するように制御することと、前記分析のモードが前記カラムへの導入前にサンプルを希釈しない第2モードである場合には、前記流路を、前記第1の混合器および前記第2の混合器が前記注入部より上流側に位置するように制御することと、を含んでいてもよい。
【0138】
第11項に記載の制御方法によれば、カラムへの導入前にサンプルを希釈するモードでは、第2の混合器で、注入部から注入されたサンプルが希釈され得る。一方、カラムへの導入前にサンプルを希釈しないモードでは、サンプルは、第1の混合器および第2の混合器の双方を通過することなく、カラムに到達できる。これにより、液体クロマトグラフィ分析システムが、カラムへの導入前にサンプルを希釈するモードでの分析だけでなく、カラムへの導入前にサンプルを希釈しないモードでの分析にも適合するようになる。
【0139】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0140】
10 送液部、20 オートサンプラ、30 カラムオーブン、40 検出器、50 分析流路、60 コントローラ、100 LCシステム。