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特許7405225電池用包装材料、その製造方法、及び電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】電池用包装材料、その製造方法、及び電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/134 20210101AFI20231219BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20231219BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20231219BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20231219BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20231219BHJP
   H01M 50/133 20210101ALI20231219BHJP
【FI】
H01M50/134
H01M50/129
H01M50/121
H01M50/105
H01M50/119
H01M50/133
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022195919
(22)【出願日】2022-12-07
(62)【分割の表示】P 2021165802の分割
【原出願日】2017-11-28
(65)【公開番号】P2023029985
(43)【公開日】2023-03-07
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2016229951
(32)【優先日】2016-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】津森 かおる
(72)【発明者】
【氏名】山下 力也
(72)【発明者】
【氏名】山下 孝典
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-197559(JP,A)
【文献】特開2016-072160(JP,A)
【文献】特開2014-078513(JP,A)
【文献】国際公開第2014/050542(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/178343(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層、接着剤層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記基材層においては、ポリエステルフィルム層とポリアミドフィルム層との間に第1接着層を備えており、
前記接着剤層及び第1接着層は、それぞれ、ナノインデンテーション法により測定される硬さが、50MPa以下であり、
前記ポリエステルフィルムの表面には滑剤が存在し、
前記滑剤の存在量は、3mg/m2以上である、電池用包装材料。
【請求項2】
少なくとも、基材層、接着剤層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記基材層においては、ポリエステルフィルム層とポリアミドフィルム層との間に第1接着層を備えており、
前記接着剤層及び第1接着層は、それぞれ、ナノインデンテーション法により測定される硬さが、50MPa以下であり、
前記バリア層は、アルミニウム合金箔及びステンレス鋼箔の少なくとも一方を含む、電池用包装材料。
【請求項3】
少なくとも、基材層、接着剤層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記基材層においては、ポリエステルフィルム層とポリアミドフィルム層との間に第1接着層を備えており、
前記接着剤層及び第1接着層は、それぞれ、ナノインデンテーション法により測定される硬さが、50MPa以下であり、
前記バリア層の厚みが、10μm以上80μm以下であって、
前記バリア層の厚みが、10μm以上45μm以下であるか、
又は、前記バリア層の厚みが、45μm超80μm以下である、電池用包装材料。
【請求項4】
少なくとも、基材層、接着剤層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記基材層においては、ポリエステルフィルム層とポリアミドフィルム層との間に第1接着層を備えており、
前記接着剤層及び第1接着層は、それぞれ、ナノインデンテーション法により測定される硬さが、50MPa以下であり、
前記熱融着性樹脂層は、ポリオレフィン骨格を含む樹脂により構成されている、電池用包装材料。
【請求項5】
前記ポリエステルフィルム層の厚みと、前記ポリアミドフィルム層の厚みの比が、1:1~1:5の範囲にある、請求項1~4のいずれか1項に記載の電池用包装材料。
【請求項6】
前記接着剤層の厚みが、5μm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電池用包装材料。
【請求項7】
前記第1接着層の厚みが、3μm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の電池用包装材料。
【請求項8】
前記接着剤層は、ポリウレタン系接着剤、ポリアクリル系接着剤、変性ポリプロピレン系接着剤、シラン系カップリング剤を含む接着剤、またはチタネート系カップリング剤を含む接着剤により形成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の電池用包装材料。
【請求項9】
前記第1接着層は、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸誘導体成分でグラフト変性された、変性熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物により形成されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の電池用包装材料。
【請求項10】
前記バリア層の少なくとも前記熱融着性樹脂層側の表面に耐酸性皮膜を備えている、請求項1~9のいずれか1項に記載の電池用包装材料。
【請求項11】
前記耐酸性皮膜が、リン、クロムおよびセリウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む、請求項10に記載の電池用包装材料。
【請求項12】
前記耐酸性皮膜が、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、及びトリアジンチオール化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項10に記載の電池用包装材料。
【請求項13】
前記耐酸性皮膜が、セリウム化合物を含む、請求項10に記載の電池用包装材料。
【請求項14】
前記耐酸性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、Ce+及びCr+の少なくとも一方に由来するピークが検出される、請求項10に記載の電池用包装材料。
【請求項15】
前記熱融着性樹脂層は、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン及び酸変性環状ポリオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の電池用包装材料。
【請求項16】
前記熱融着性樹脂層は、2種以上の樹脂を組み合わせたブレンドポリマーにより形成されている、請求項1~15のいずれか1項に記載の電池用包装材料。
【請求項17】
前記熱融着性樹脂層は、同一又は異なる樹脂によって2層以上で形成されている、請求項1~16のいずれか1項に記載の電池用包装材料。
【請求項18】
少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、請求項1~17のいずれか1項に記載の電池用包装材料により形成された包装体中に収容されている、電池。
【請求項19】
少なくとも、基材層、接着剤層、バリア層、接着層及び熱融着性樹脂層がこの順となるように積層して積層体を得る工程を備える電池用包装材料の製造方法であって、
前記基材層が、ポリエステルフィルム層とポリアミドフィルム層との間に第1接着層を備えており、
前記接着剤層及び第1接着層が、それぞれ、ナノインデンテーション法により測定される硬さが、50MPa以下であり、
前記接着層と前記熱融着性樹脂層とは、共押出しラミネート法、サーマルラミネート法、サンドイッチラミネート法、又は、前記バリア層上に前記接着層を形成させるための接着剤を積層させ、前記接着層上に予めシート状に製膜した前記熱融着性樹脂層を積層する方法により形成する、電池用包装材料の製造方法。
【請求項20】
前記熱融着性樹脂層は、同一又は異なる樹脂によって2層以上で形成されている、請求項19に記載の電池用包装材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用包装材料、その製造方法、及び電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々なタイプの電池が開発されているが、あらゆる電池において、電極や電解質等の電池素子を封止するために包装材料が不可欠な部材になっている。従来、電池用包装として金属製の包装材料が多用されていた。
【0003】
一方、近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パソコン、カメラ、携帯電話等の高性能化に伴い、電池には、多様な形状が要求されると共に、薄型化や軽量化が求められている。しかしながら、従来多用されていた金属製の電池用包装材料では、形状の多様化に追従することが困難であり、しかも軽量化にも限界があるという欠点がある。
【0004】
そこで、近年、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る電池用包装材料として、基材/アルミニウム合金箔層/熱融着性樹脂層が順次積層されたフィルム状の積層体が提案されている。
【0005】
このような電池用包装材料においては、一般的に、冷間成形により凹部が形成され、当該凹部によって形成された空間に電極や電解液などの電池素子を配し、熱融着性樹脂層同士を熱溶着させることにより、電池用包装材料の内部に電池素子が収容された電池が得られる。しかしながら、このようなフィルム状の包装材料は、金属製の包装材料に比べて薄く、成形時にピンホールやクラックが生じ易いという欠点がある。電池用包装材料にピンホールやクラックが生じた場合には、電解液がアルミニウム合金箔層にまで浸透して金属析出物を形成し、その結果、短絡を生じさせることになりかねないため、フィルム状の電池用包装材料には、成形時にピンホールが生じ難い特性、即ち優れた成形性を備えさせることは不可欠となっている。このため、成形性を向上させるために、基材としてポリアミドフィルムが使用されることがある。しかし、基材としてポリアミドフィルムを用いた場合、電池の製造工程において、電池素子を収容した電池用包装材料の表面に電解液が付着すると、外表面が侵され、白化し、不良品となる。このため、耐薬品性、耐電解液性を向上させるために、基材としてポリエステルフィルムが使用されることがある。しかしながら、ポリエステルフィルムはポリアミドフィルムと比較して硬く成形性に劣るという問題がある。
【0006】
そこで、従来、ポリエステルフィルムとポリアミドフィルムの積層体を基材として用い、耐薬品性、耐電解液性を備えつつ成形性を改善させた電池用包装材料が知られている(特許文献1を参照)。近年、このような電池用包装材料には、さらなる成形性の向上が求められている。ポリエステルフィルムとポリアミドフィルムの積層体を基材として用いた電池用包装材料においては、冷間成形の際に引張り及び圧縮応力が電池用包装材料に付与された場合でも、ポリエステルフィルムとポリアミドフィルム間の密着性及び基材とバリア層の密着性を十分に確保でき、また、成形時にかかる応力を緩和し成形時にバリア層が破断することを抑制できることが必要と考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-197559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような状況下、本発明は、基材層が少なくともポリエステルフィルム層及びポリアミドフィルム層を有している電池用包装材料の、成形性を高める技術を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべくポリエステルフィルムとポリアミドフィルムの積層体を基材として用いた電池用包装材料において、基材層とバリア層との間の接着剤層及びポリエステルフィルムとポリアミドフィルムとの間の接着層に着目し成形性を改善することについて鋭意検討を行ったところ、従来の電池用包装材料と比較して成形性が格段に優れる電池用包装材料を提供できることを見出した。即ち、本発明は、少なくとも、基材層、接着剤層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成された電池用包装材料において、基材層は、ポリエステルフィルム層とポリアミドフィルム層との間に第1接着層を備えており、接着剤層及び第1接着層は、それぞれ、ナノインデンテーション法により測定される硬さが、50MPa以下であることにより、ポリエステルフィルム層を有するにも拘わらず、成形性に優れることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 少なくとも、基材層、接着剤層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記基材層においては、ポリエステルフィルム層とポリアミドフィルム層との間に第1接着層を備えており、
前記接着剤層及び第1接着層は、それぞれ、ナノインデンテーション法により測定される硬さが、50MPa以下である、電池用包装材料。
項2. 前記ポリエステルフィルム層の厚みと、前記ポリアミドフィルム層の厚みの比が、1:1~1:5の範囲にある、項1に記載の電池用包装材料。
項3. 前記接着剤層の厚みが、5μm以下である、項1または2に記載の電池用包装材料。
項4. 前記第1接着層の厚みが、3μm以下である、項1~3のいずれかに記載の電池用包装材料。
項5. 前記接着剤層は、ポリウレタン系接着剤、ポリアクリル系接着剤、変性ポリプロピレン系接着剤、シラン系カップリング剤を含む接着剤、またはチタネート系カップリング剤を含む接着剤により形成されている、項1~4のいずれかに記載の電池用包装材料。項6. 前記第1接着層は、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸誘導体成分でグラフト変性された、変性熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物により形成されている、項1~5のいずれかに記載の電池用包装材料。
項7. 前記バリア層の少なくとも前記熱融着性樹脂層側の表面に耐酸性皮膜を備えている、項1~6のいずれかに記載の電池用包装材料。
項8. 前記耐酸性皮膜が、リン、クロムおよびセリウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む、項7に記載の電池用包装材料。
項9. 前記耐酸性皮膜が、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、及びトリアジンチオール化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項7に記載の電池用包装材料。項10. 前記耐酸性皮膜が、セリウム化合物を含む、項7に記載の電池用包装材料。
項11. 前記耐酸性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、Ce+及びCr+の少なくとも一方に由来するピークが検出される、項7に記載の電池用包装材料。
項12. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、項1~11のいずれかに記載の電池用包装材料により形成された包装体中に収容されている、電池。
項13. 少なくとも、基材層、接着剤層、バリア層、及び熱融着性樹脂層がこの順とな
るように積層して積層体を得る工程を備える電池用包装材料の製造方法であって、
前記基材層が、ポリエステルフィルム層とポリアミドフィルム層との間に第1接着層を備えており、
前記接着剤層及び第1接着層が、それぞれ、ナノインデンテーション法により測定される硬さが、50MPa以下である、電池用包装材料の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、少なくとも、基材層、接着剤層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、基材層において、ポリエステルフィルム層とポリアミドフィルム層との間に第1接着層を備えており、接着剤層及び第1接着層は、それぞれ、ナノインデンテーション法により測定される硬さが、50MPa以下であることにより、成形性に優れた電池用包装材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の電池用包装材料の断面構造の一例を示す図である。
図2】本発明の電池用包装材料の断面構造の一例を示す図である。
図3】本発明の電池用包装材料の断面構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の電池用包装材料は、少なくとも、基材層、バリア層、接着剤層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、基材層において、ポリエステルフィルム層とポリアミドフィルム層との間に第1接着層を備えており、接着剤層及び第1接着層は、それぞれ、ナノインデンテーション法により測定される硬さが、50MPa以下であることを特徴とする。以下、本発明の電池用包装材料について詳述する。
【0014】
なお、本明細書において、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。
【0015】
1.電池用包装材料の積層構造
本発明の電池用包装材料10は、例えば図1に示すように、基材層1、接着剤層2、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4をこの順に備える積層体から構成されている。本発明の電池用包装材料において、基材層1が最外層側になり、熱融着性樹脂層4は最内層になる。即ち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層4同士が熱融着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。
【0016】
基材層1においては、ポリエステルフィルム層11とポリアミドフィルム層12との間に第1接着層13を備えている。電池用包装材料の外表面における耐電解液性を高める観点などから、バリア層3側から順に、ポリアミドフィルム層12、第1接着層13、及びポリエステルフィルム層11が積層されている。
【0017】
本発明の電池用包装材料は、例えば図2に示すように、バリア層3と熱融着性樹脂層4との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて第2接着層5を設けてもよい。また、図3に示すように、基材層1の外側(熱融着性樹脂層4とは反対側)には、必要に応じて表面被覆層6などが設けられていてもよい。
【0018】
本発明の電池用包装材料を構成する積層体の厚みとしては、特に制限されないが、積層体の厚みを可能な限り薄くしつつ、高い絶縁性を発揮する観点からは、好ましくは約160μm以下、より好ましくは35~155μm程度、さらに好ましくは45~120μm程度が挙げられる。本発明の電池用包装材料を構成する積層体の厚みが、例えば160μm以下と薄い場合にも、本発明によれば、優れた絶縁性を発揮し得る。このため、本発明の電池用包装材料は、電池のエネルギー密度の向上に寄与することができる。
【0019】
2.電池用包装材料を形成する各層
[基材層1]
本発明の電池用包装材料において、基材層1は、最外層側に位置する層である。基材層1においては、ポリエステルフィルム層11とポリアミドフィルム層12との間に、第1接着層13を備えている。すなわち、基材層1は、少なくとも、ポリエステルフィルム層11と、第1接着層13と、ポリアミドフィルム層12とをこの順に有している。
【0020】
ポリエステルフィルム層11を構成しているポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。また、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル-ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。また、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてブチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。ポリエステルは、耐電解液性に優れ、電解液の付着に対して白化等が発生し難いという利点があり、基材層1の形成素材として好適に使用される。
【0021】
ポリエステルフィルム層11は、2軸延伸ポリエステルフィルム、特に2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにより構成されていることが好ましい。
【0022】
ポリエステルフィルム層11の厚みとしては、特に制限されないが、電池用包装材料を薄型化しつつ、優れた成形性を発揮する観点からは、好ましくは約20μm以下、より好ましくは1~15μm程度、より好ましくは3~12μm程度が挙げられる。
【0023】
また、ポリアミドフィルム層12を構成しているポリアミドとしては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン66との共重合体等の脂肪族系ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸-テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)等の芳香族を含むポリアミド;ポリアミノメチルシクロヘキシルアジパミド(PACM6)等の脂環系ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4'-ジフェニルメ
タン-ジイソシアネート等のイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体等が挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせ
て使用してもよい。延伸ポリアミドフィルムは延伸性に優れており、成形時の基材層1の樹脂割れによる白化の発生を防ぐことができ、基材層1の形成素材として好適に使用される。
【0024】
ポリアミドフィルム層12は、2軸延伸ポリアミドフィルム、特に2軸延伸ナイロンフィルムにより構成されていることが好ましい。
【0025】
ポリアミドフィルム層12の厚みとしては、特に制限されないが、電池用包装材料を薄型化しつつ、優れた成形性を発揮する観点からは、好ましくは30μm以下、より好ましくは1~25μm程度、より好ましくは10~25μm程度が挙げられる。
【0026】
成形性をより向上させる観点から、基材層1において、ポリエステルフィルム層11の厚みと、ポリアミドフィルム層12の厚みの比(ポリエステルフィルム層11の厚み:ポリアミドフィルム層12の厚み)としては、1:1~1:5程度の範囲にあることが好ましく、1:1.2~1:4程度の範囲にあることがより好ましい。
【0027】
基材層1において、ポリエステルフィルム層11とポリアミドフィルム層12の積層順としては、電池用包装材料の耐電解液性を向上させる観点から、後述のバリア層3側から順に、ポリアミドフィルム層12、第1接着層13、及びポリエステルフィルム層11がこの順に積層されている。
【0028】
本発明においては、第1接着層13のナノインデンテーション法により測定される硬さが、50MPa以下であることを特徴としている。本発明の電池用包装材料においては、第1接着層13の前記硬さが50MPa以下であり、かつ、基材層1とバリア層3との間に位置している後述の接着剤層2についても、ナノインデンテーション法により測定される硬さが50MPa以下であるため、優れた成形性を発揮することが可能となる。この機序としては、例えば、次のように考えることができる。すなわち、これらの接着剤層の硬さが、通常の接着剤よりも小さいものに設計されているため、基材層1がポリエステルフィルム層11を有するにも拘わらず、成形時における基材層1の変形によってバリア層3が急激に変形されることを、接着剤層2及び第1接着層13が好適に抑制し、結果として、バリア層3にクラックやピンホールが発生することが効果的に抑制されていると考えられる。
【0029】
電池用包装材料の成形性をより高める観点から、第1接着層13の当該硬さとしては、好ましくは10~50MPa程度、より好ましくは15~40MPa程度が挙げられる。
【0030】
本発明において、接着剤層2及び第1接着層13のナノインデンテーション法により測定される硬さは、それぞれ、次のようにして測定された値である。装置として、ナノインデンター((HYSITRON(ハイジトロン)社製の「TriboIndenter TI950」)を用いる。ナノインデンターの圧子としては、Berkovich圧子(三角錐)を用いる。接着剤層2の硬さについては、相対湿度50%、23℃環境において、当該圧子を、電池用包装材料の接着剤層2の表面(接着剤層2が露出している面であり、各層の積層方向とは垂直方向)に当て、10秒間かけて、当該表面から荷重40μNまで圧子を接着剤層に押し込み、その状態で5秒間保持し、次に、10秒間かけて除荷する。最大荷重Pmax(μN)と最大深さ時の接触投影面積A(μm2)を用い、Pmax/Aに
より、当該インデンテーション硬さ(MPa)を算出する。また、第1接着層13の硬さについては、荷重を10μNとすること以外は、接着剤層2と同様にして測定できる。
【0031】
第1接着層13の形成に使用する接着剤としては、好ましくは、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸誘導体成分でグラフト変性された、変性熱可塑性樹脂を含有する樹脂
組成物が挙げられる。当該変性熱可塑性樹脂としては、好ましくは、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマーなどを不飽和カルボン酸誘導体成分で変性した樹脂が挙げられる。当該樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、不飽和カルボン酸誘導体成分としては、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステルなどが挙げられる。不飽和カルボン酸誘導体成分としては、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
変性熱可塑性樹脂におけるポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモ、ブロックまたはランダムポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体;前記の材料にアクリル酸、メタクリル酸などの極性分子を共重合した共重合体;架橋ポリオレフィンなどのポリマーなどが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、1種類単独であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0033】
変性熱可塑性樹脂におけるスチレン系エラストマーとしては、スチレン(ハードセグメント)と、ブタジエンまたはイソプレンまたはこれらの水添物(ソフトセグメント)の共重合体などが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、1種類単独であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0034】
変性熱可塑性樹脂におけるポリエステル系エラストマーとしては、結晶性ポリエステル(ハードセグメント)と、ポリアルキレンエーテルグリコール(ソフトセグメント)の共重合体などが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、1種類単独であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0035】
変性熱可塑性樹脂における不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸などが挙げられる。また、不飽和カルボン酸の酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物などが挙げられる。また、不飽和カルボン酸のエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、フマール酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロ無水フタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸ジメチルなどの不飽和カルボン酸のエステルなどが挙げられる。
【0036】
前記変性熱可塑性樹脂としては、ベースとなる熱可塑性樹脂100質量部に対して、前記不飽和カルボン酸誘導体成分0.2~100質量部程度を、ラジカル開始剤の存在下に加熱して反応させることで得られる。
【0037】
反応温度は、50~250℃程度が好ましく、60~200℃程度がより好ましい。反応時間は製造方法にも左右されるが、二軸押出機による溶融グラフト反応の場合、押出機の滞留時間内である2~30分程度が好ましく、5~10分程度がより好ましい。また変性反応は、常圧、加圧いずれの条件下においても実施できる。
【0038】
前記変性反応において使用されるラジカル開始剤としては、有機過酸化物が挙げられる。有機過酸化物としては、温度条件と反応時間によって種々の材料を選択することができ、例えば、アルキルパーオキサイド、アリールパーオキサイド、アシルパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシカーボネート、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。上述した二軸押出機による溶融グラフト反応の場合は、アルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステルが好ましく、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシ-ヘキシン-3、ジクミルペルオキシドを用いることがより好ましい。
【0039】
なお、第1接着層13の前記硬さは、接着剤に含まれる樹脂の種類だけでなく、樹脂の分子量や架橋点の数、変性率、延伸率、延伸温度などを調整することにより、上記の値となるように調整することができる。
【0040】
第1接着層13の厚みとしては、好ましくは0.1~5μm程度、より好ましくは0.5~3μm程度が挙げられる。
【0041】
また、電池用包装材料の成形性をより高める観点から、ポリエステルフィルム層11のナノインデンテーション法により測定される硬さとしては、好ましくは300~400MPa程度、より好ましくは300~350MPa程度が挙げられる。さらに、ポリアミドフィルム層12のナノインデンテーション法により測定される硬さとしては、好ましくは200~400MPa程度、より好ましくは200~350MPa程度が挙げられる。
【0042】
なお、本発明において、ポリエステルフィルム層11及びポリアミドフィルム層12のナノインデンテーション法により測定される硬さは、それぞれ、前述の第1接着層13における硬さの測定方法において、硬さの測定対象をポリエステルフィルム層11またはポリアミドフィルム層12とし、押し込み荷重を100μNとすること以外は、第1接着層13と同様にして測定できる。
【0043】
基材層1は、ポリエステルフィルム層11、第1接着層13、及びポリアミドフィルム層12に加えて、さらに他の層を備えていてもよい。他の層を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。他の層を形成する素材としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテルイミド、ポリイミド、及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられる。他の層を備える場合、他の層の厚みとしては、好ましくは0.1~20μm程度、より好ましくは0.5~10μm程度が挙げられる。
【0044】
本発明において、電池用包装材料の成形性を高める観点からは、基材層1の表面には、滑剤が付着していることが好ましい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくは後述の熱融性樹脂層において例示するアミド系滑剤が挙げられる。
【0045】
基材層1表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、温度24℃、相対湿度60%環境において、好ましくは約3mg/m2以上、より好ましくは
4~15mg/m2程度、さらに好ましくは5~14mg/m2程度が挙げられる。
【0046】
基材層1の厚さとしては、電池用包装材料の総厚みを薄くしつつ、絶縁性に優れた電池用包装材料とする観点からは、好ましくは約4μm以上、より好ましくは10~75μm程度、さらに好ましくは10~50μm程度が挙げられる。
【0047】
[接着剤層2]
本発明の電池用包装材料において、接着剤層2は、基材層1とバリア層3を強固に接着させるために、これらの間に設けられる層である。
【0048】
接着剤層2は、基材層1とバリア層3とを接着可能である接着剤によって形成される。
【0049】
本発明においては、接着剤層2のナノインデンテーション法により測定される硬さが、50MPa以下であることを特徴としている。前述の通り、本発明の電池用包装材料においては、第1接着層13及び接着剤層2のナノインデンテーション法により測定される硬さが、共に50MPa以下であるため、優れた成形性を発揮することが可能となる。接着剤層2の当該硬さの測定方法は、前述の通りである。
【0050】
電池用包装材料の成形性をより高める観点から、接着剤層2の当該硬さとしては、好ましくは10~50MPa程度、より好ましくは20~40MPa程度が挙げられる。
【0051】
接着剤層2の形成に使用される接着剤は、接着剤層2が形成された後に、上記硬さを備えるものであれば、特に限定されず、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着剤層2の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
【0052】
接着剤層2の形成に使用できる接着成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリカーボネート;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン系樹脂等が挙げられる。これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの接着成分の中でも、好ましくはポリウレタン系接着剤が挙げられる。
【0053】
ポリウレタン系接着剤としては、ポリオール成分(A)を含有する主剤と、ポリイソシアネート成分(B)を含有する硬化剤とを含有するポリウレタン接着剤であって、ポリオール成分(A)がポリエステルポリオール(A1)を含有し、ポリエステルポリオール(A1)が多塩基酸成分と多価アルコール成分とから構成される数平均分子量5000~50000程度のポリエステルポリオールであって、多塩基酸成分100モル%中、芳香族多塩基酸成分を45~95モル%程度含み、接着剤層の100%伸び時の引張り応力が約100kg/cm2以上、約500kg/cm2以下となるものが挙げられる。また、主剤とポリイソシアネート硬化剤とを含有する電池用包装材用ポリウレタン接着剤であって、前記主剤が、ガラス転移温度が40℃以上のポリエステルポリオール(A1)5~50重量%およびガラス転移温度が40℃未満のポリエステルポリオール(A2)95~50重量%を含むポリオール成分(A)とシランカップリング剤(B)とを含み、ポリオール成分(A)由来のヒドロキシル基とカルボキシル基の合計に対する硬化剤中に含まれるイソシアネート基の当量比[NCO]/([OH]+[COOH])が1~30程度であるものが挙げられる。
【0054】
さらに、変性ポリプロピレン及びポリアクリル系樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂(A)、または、シラン系カップリング剤及びチタネート系カップリング剤の少なくとも一方を含むカップリング剤(B)のいずれか一方((A)または(B))を含有する樹脂を含む接着剤が挙げられる。すなわち、ポリアクリル系接着剤、変性ポリプロピレン系接着剤、シラン系カップリング剤を含む接着剤、チタネート系カップリング剤を含む接着剤なども好適に使用することができる。
【0055】
なお、接着剤層2の硬さは、接着剤に含まれる樹脂の種類だけでなく、樹脂の分子量や架橋点の数、主剤と硬化剤の割合、主剤と硬化剤の希釈倍率、乾燥温度、エージング温度、エージング時間などを調整することにより、上記の値となるように調整することができる。
【0056】
接着剤層2の厚みについては、接着層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、1~10μm程度、好ましくは2~5μm程度が挙げられる。
【0057】
[バリア層3]
電池用包装材料において、バリア層3は、電池用包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止するためのバリア層として機能する層である。バリア層3を構成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタンなどが挙げられ、好ましくはアルミニウムが挙げられる。バリア層3は、金属箔や金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどにより形成することができ、金属箔により形成することが好ましく、アルミニウム箔により形成することがさらに好ましい。電池用包装材料の製造時に、バリア層3にしわやピンホールが発生することを防止する観点からは、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS H4160:1994 A8021H-O、JIS H4160:1994 A8079H-O、JIS H4000:2014 A8021P-O、JIS H4000:2014 A8079P-O)など軟質アルミニウム箔により形成することがより好ましい。
【0058】
バリア層3の厚みは、水蒸気などのバリア層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、10~80μm程度、好ましくは10~50μm程度、より好ましくは10~45μm程度とすることができる。
【0059】
また、バリア層3は、接着の安定化、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも一方の面、好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、バリア層の表面に耐酸性皮膜を形成する処理をいう。化成処理としては、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなどのクロム酸化合物を用いたクロム酸クロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などのリン酸化合物を用いたリン酸処理;下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理などが挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。
【0060】
【化1】
【0061】
【化2】
【0062】
【化3】
【0063】
【化4】
【0064】
一般式(1)~(4)中、Xは、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基またはベンジル基を示す。また、R1及びR2は、それぞれ同一または異なって、ヒドロキシル基、アルキル基、またはヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)~(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基などの炭素数1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1及びR2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、1-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基などのヒドロキシル基が1個置換された炭素数1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)~(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。一般式(1)~(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシル基またはヒドロキシアルキル基であることが好ましい。一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、500~100万であることが好ましく、1000~2万程度であることがより好ましい。
【0065】
また、バリア層3に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズなどの金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、約150℃以上で焼付け処理を行うことにより、バリア層3の表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。また、耐食処理層の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層をさらに形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフト重合させた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノールなどが挙げられる。これらのカチオン性ポリマーとしては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤などが挙げられる。これらの架橋剤としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
また、耐酸性皮膜を具体的に設ける方法としては、たとえば、一つの例として、少なくともアルミニウム合金箔の内層側の面を、まず、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法等の周知の処理方法で脱脂処理を行い、その後脱脂処理面にリン酸クロム塩、リン酸チタン塩、リン酸ジルコニウム塩、リン酸亜鉛塩などのリン酸金属塩およびこれらの金属塩の混合体を主成分とする処理液(水溶液)、あるいは、リン酸非金属塩およびこれらの非金属塩の混合体を主成分とする処理液(水溶液)、あるいは、これらとアクリル系樹脂ないしフェノール系樹脂ないしウレタン系樹脂等の水系合成樹脂との混合物からなる処理液(水溶液)をロールコート法、グラビア印刷法、浸漬法等の周知の塗工法で塗工することにより、耐酸性皮膜を形成することができる。たとえば、リン酸クロム塩系処理液で処理した場合は、リン酸クロム、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウムなどからなる耐酸性皮膜となり、リン酸亜鉛塩系処理液で処理した場合は、リン酸亜鉛水和物、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウムなどからなる耐酸性皮膜となる。
【0067】
また、耐酸性皮膜を設ける具体的方法の他の例としては、たとえば、少なくともアルミニウム箔の内層側の面を、まず、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法等の周知の処理方法で脱脂処理を行い、その後脱脂処理面に周知の陽極酸化処理を施すことにより、耐酸性皮膜を形成することができる。
【0068】
また、耐酸性皮膜の他の一例としては、リン酸塩系、クロム酸系の皮膜が挙げられる。リン酸塩系としては、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸カルシウム、リン酸クロムなどが挙げられ、クロム酸系としては、クロム酸クロムなどが挙げられる。
【0069】
また、耐酸性皮膜の他の一例としては、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物等の耐酸性皮膜を形成することによって、エンボス成形時のアルミニウムと基材層との間のデラミネーション防止、電解質と水分とによる反応で生成するフッ化水素により、アルミニウム表面の溶解、腐食、特にアルミニウムの表面に存在する酸化アルミニウムが溶解、腐食することを防止し、かつ、アルミニウム表面の接着性(濡れ性)を向上させ、ヒートシール時の基材層とアルミニウムとのデラミネーション防止、エンボスタイプにおいてはプレス成形時の基材層とアルミニウムとのデラミネーション防止の効果を示す。耐酸性皮膜を形成する物質のなかでも、フェノール樹脂、フッ化クロム(III)化合物、リン酸の3成分から構成された水溶液をアルミニウム表面に塗布し、乾燥焼付けの処理が良好である。
【0070】
また、耐酸性皮膜は、酸化セリウムと、リン酸またはリン酸塩と、アニオン性ポリマーと、該アニオン性ポリマーを架橋させる架橋剤とを有する層を含み、前記リン酸またはリン酸塩が、前記酸化セリウム100質量部に対して、1~100質量部配合されていてもよい。耐酸性皮膜が、カチオン性ポリマーおよび該カチオン性ポリマーを架橋させる架橋剤を有する層をさらに含む多層構造であることが好ましい。
【0071】
さらに、前記アニオン性ポリマーが、ポリ(メタ)アクリル酸またはその塩、あるいは(メタ)アクリル酸またはその塩を主成分とする共重合体であることが好ましい。また、前記架橋剤が、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、オキサゾリン基のいずれかの官能基を有する化合物とシランカップリング剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0072】
また、前記リン酸またはリン酸塩が、縮合リン酸または縮合リン酸塩であることが好ましい。
【0073】
化成処理は、1種類の化成処理のみを行ってもよいし、2種類以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。さらに、これらの化成処理は、1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。化成処理の中でも、クロム酸クロメート処理や、クロム酸化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせたクロメート処理などが好ましい。
【0074】
耐酸性皮膜の具体例としては、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、及びトリアジンチオール化合物のうち少なくとも1種を含むものが挙げられる。また、セリウム化合物を含む耐酸性皮膜も好ましい。セリウム化合物としては、酸化セリウムが好ましい。
【0075】
また、耐酸性皮膜の具体例としては、リン酸塩系皮膜、クロム酸塩系皮膜、フッ化物系皮膜、トリアジンチオール化合物皮膜なども挙げられる。耐酸性皮膜としては、これらのうち1種類であってもよいし、複数種類の組み合わせであってもよい。さらに、耐酸性皮膜としては、バリア層の化成処理面を脱脂処理した後に、リン酸金属塩と水系合成樹脂との混合物からなる処理液、またはリン酸非金属塩と水系合成樹脂との混合物からなる処理液で形成されたものであってもよい。
【0076】
なお、耐酸性皮膜の組成の分析は、例えば、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて行うことができる。飛行時間型2次イオン質量分析法を用いた耐酸性皮膜の組成の分析により、例えば、Ce+及びCr+の少なくとも一方に由来するピークが検出される。また、耐酸性皮膜にリン酸、リン酸塩を用いた場合には、例えばPO3 -に由来するピークが検出される。
【0077】
アルミニウム合金箔の表面に、リン、クロムおよびセリウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む耐酸性皮膜を備えていることが好ましい。なお、電池用包装材料のアルミニウム合金箔の表面の耐酸性皮膜中に、リン、クロムおよびセリウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素が含まれることは、X線光電子分光法を用いて確認することができる。具体的には、まず、電池用包装材料において、アルミニウム合金箔に積層されている熱融着性樹脂層、接着剤層などを物理的に剥離する。次に、アルミニウム合金箔を300℃程度で30分間程度電気炉に入れて、アルミニウム合金箔の表面に存在している有機成分を除去する。その後、アルミニウム合金箔の表面をX線光電子分光法を用いて、これら元素が含まれることを確認する。
【0078】
化成処理においてバリア層3の表面に形成させる耐酸性皮膜の量については、特に制限されないが、例えば、上記のクロメート処理を行う場合であれば、バリア層3の表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で0.5~50mg程度、好ましくは1.0~4
0mg程度、リン化合物がリン換算で0.5~50mg程度、好ましくは1.0~40mg程度、及びアミノ化フェノール重合体が1~200mg程度、好ましくは5.0~150mg程度の割合で含有されていることが望ましい。
【0079】
耐酸性皮膜の厚みとしては、特に制限されないが、皮膜の凝集力や、バリア層や熱融着性樹脂層との密着力の観点から、好ましくは1nm~20μm程度、より好ましくは1~100nm程度、さらに好ましくは1~50nm程度が挙げられる。なお、耐酸性皮膜の厚みは、透過電子顕微鏡による観察、または、透過電子顕微鏡による観察と、エネルギー分散型X線分光法もしくは電子線エネルギー損失分光法との組み合わせによって測定することができる。
【0080】
化成処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などによって、バリア層の表面に塗布した後に、バリア層の温度が70~200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、バリア層に化成処理を施す前に、予めバリア層を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法などによる脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、バリア層の表面の化成処理をより効率的に行うことが可能となる。
【0081】
[熱融着性樹脂層4]
本発明の電池用包装材料において、熱融着性樹脂層4は、最内層に該当し、電池の組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱融着して電池素子を密封する層である。
【0082】
熱融着性樹脂層4に使用される樹脂成分については、熱融着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。すなわち、熱融着性樹脂層4は、ポリオレフィン骨格を含んでいてもよく、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。熱融着性樹脂層4がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
【0083】
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー;等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
【0084】
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、更に好ましくはノルボルネンが挙げられる。
【0085】
前記カルボン酸変性ポリオレフィンとは、前記ポリオレフィンをカルボン酸でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用されるカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0086】
前記カルボン酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β-不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β-不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、前記ポリオレフィンの変性に使用されるものと同様である。
【0087】
これらの樹脂成分の中でも、好ましくはカルボン酸変性ポリオレフィン;更に好ましくはカルボン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
【0088】
熱融着性樹脂層4は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。更に、熱融着性樹脂層4は、1層のみで成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上で形成されていてもよい。
【0089】
また、熱融着性樹脂層4は、必要に応じて滑剤などを含んでいてもよい。熱融着性樹脂層4が滑剤を含む場合、電池用包装材料の成形性を高め得る。滑剤としては、特に制限されず、公知の滑剤を用いることができ、例えば、上記の基材層1で例示したものなどが挙げられる。滑剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。熱融着性樹脂層4の表面における滑剤の存在量としては、特に制限されず、電子包装用材料の成形性を高める観点からは、温度24℃、相対湿度60%環境において、好ましくは10~50mg/m2程度、さらに好ましくは15~40mg/m2程度が挙げられる。
【0090】
また、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、熱融着性樹脂層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば約100μm以下、好ましくは約85μm以下、より好ましくは15~85μmが挙げられる。なお、例えば、後述の第2接着層5の厚みが約10μm以上である場合には、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、好ましくは約60μm以下、より好ましくは15~45μm程度が挙げられ、例えば後述の第2接着層5の厚みが10μm未満である場合や第2接着層5が設けられていない場合には、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、好ましくは約20μm以上、より好ましくは35~85μm程度が挙げられる。
【0091】
[第2接着層5]
本発明の電池用包装材料において、第2接着層5は、バリア層3と熱融着性樹脂層4を強固に接着させるために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
【0092】
第2接着層5は、バリア層3と熱融着性樹脂層4とを接着可能である樹脂によって形成される。第2接着層5の形成に使用される樹脂としては、その接着機構、接着剤成分の種類等は、接着剤層2で例示した接着剤と同様のものが使用できる。また、第2接着層5の形成に使用される樹脂としては、前述の熱融着性樹脂層4で例示したポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂も使用できる。バリア層3と熱融着性樹脂層4との密着性に優れる観点から、ポリオレフィンとしては、カルボン酸変性ポリオレフィンが好ましく、カルボン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。すなわち、第2接着層5は、ポリオレフィン骨格を含んでいてもよく、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。第2接着層5がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
【0093】
さらに、電池用包装材料の厚みを薄くしつつ、成形後の形状安定性に優れた電池用包装材料とする観点からは、第2接着層5は、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であってもよい。酸変性ポリオレフィンとしては、好ましくは、熱融着性樹脂層4で例示したカルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンと同じものが例示できる。
【0094】
また、硬化剤としては、酸変性ポリオレフィンを硬化させるものであれば、特に限定されない。硬化剤としては、例えば、エポキシ系硬化剤、多官能イソシアネート系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤などが挙げられる。
【0095】
エポキシ系硬化剤は、少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されない。エポキシ系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどのエポキシ樹脂が挙げられる。
【0096】
多官能イソシアネート系硬化剤は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。
【0097】
カルボジイミド系硬化剤は、カルボジイミド基(-N=C=N-)を少なくとも1つ有する化合物であれば、特に限定されない。カルボジイミド系硬化剤としては、カルボジイミド基を少なくとも2つ以上有するポリカルボジイミド化合物が好ましい。
【0098】
オキサゾリン系硬化剤は、オキサゾリン骨格を有する化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン系硬化剤としては、具体的には、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
【0099】
第2接着層5によるバリア層3と熱融着性樹脂層4との密着性を高めるなどの観点から、硬化剤は、2種類以上の化合物により構成されていてもよい。
【0100】
第2接着層5を形成する樹脂組成物における硬化剤の含有量は、0.1~50質量%程度の範囲にあることが好ましく、0.1~30質量%程度の範囲にあることがより好ましく、0.1~10質量%程度の範囲にあることがさらに好ましい。
【0101】
さらに、第2接着層5は、接着剤を用いて好適に形成することもできる。接着剤としては、例えば、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)と、多官能イソシアネート化合物(B)と、多官能イソシアネート化合物(B)と反応する官能基を有さない3級アミン(C)を含有し、カルボキシル基の合計1モルに対して、イソシアネート基の量が0.3~10モルとなる範囲で多官能イソシアネート化合物(B)を含有し、カルボキシル基の合計1モルに対して、3級アミン(C)を1~10モルとなる範囲で含有する、接着剤組成物から形成されたものが挙げられる。また、接着剤としては、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と、粘着付与剤(B)と、ポリイソシアネート(C)と、を含有し、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と、粘着付与剤(B)との合計100重量%中に、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(A)を20~90重量%、前記粘着付与剤(B)を10~80重量%含み、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)は、0.003~0.04mmol/gのアミノ基または水酸基に由来する活性水素を有し、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)由来の前記活性水素1モルに対して、前記粘着付与剤(B)の官能基由来の活性水素が0~15モルであり、ポリイソシアネート(C)は、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(A)由来の活性水素と、粘着付与剤(B)由来の活性水素との合計1モルに対して、イソシアネート基が3~150モルとなる範囲で含まれているものからなる接着剤組成物により形成されたものなども挙げられる。
【0102】
第2接着層5の厚みについては、接着層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、接着剤層2で例示した接着剤を用いる場合であれば、好ましくは2~10μm程度、より好ましくは2~5μm程度が挙げられる。また、熱融着性樹脂層4で例示した樹脂を用いる場合であれば、好ましくは2~50μm程度、より好ましくは10~40μm程度が挙げられる。また、酸変性ポリオレフィンと硬化剤との硬化物である場合であれば、好ましくは約30μm以下、より好ましくは0.1~20μm程度、さらに好ましくは0.5~5μm程度が挙げられる。前述の接着剤組成物により形成された接着剤層であれば、乾燥硬化後の厚みとして1~30g/m2程度が挙げられる。なお、第2接着層5が酸変性
ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である場合、当該樹脂組成物を塗布し、加熱等により硬化させることにより、第2接着層5を形成することができる。
【0103】
[表面被覆層6]
本発明の電池用包装材料においては、意匠性、耐電解液性、耐擦過性、成形性の向上などを目的として、必要に応じて、基材層1の上(基材層1のバリア層3とは反対側)に、必要に応じて、表面被覆層6を設けてもよい。表面被覆層6は、電池を組み立てた時に、最外層に位置する層である。
【0104】
表面被覆層6は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などにより形成することができる。表面被覆層6は、これらの中でも、2液硬化型樹脂により形成することが好ましい。表面被覆層6を形成する2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂、2液硬化型ポリエステル樹脂、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、表面被覆層6には、添加剤を配合してもよい。
【0105】
添加剤としては、例えば、粒径が0.5nm~5μm程度の微粒子が挙げられる。添加剤の材質については、特に制限されないが、例えば、金属、金属酸化物、無機物、有機物等が挙げられる。また、添加剤の形状についても、特に制限されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。添加剤として、具体的には、タルク、シリカ、グラファイト、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ類、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の中でも、分散安定性やコスト等の観点から、好ましくはシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、添加剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理等の各種表面処理を施しておいてもよい。
【0106】
表面被覆層6を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、表面被覆層6を形成する2液硬化型樹脂を基材層1の一方の表面上に塗布する方法が挙げられる。添加剤を配合する場合には、2液硬化型樹脂に添加剤を添加して混合した後、塗布すればよい。
【0107】
表面被覆層6の厚みとしては、表面被覆層6としての上記の機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、0.5~10μm程度、好ましくは1~5μm程度が挙げられる。
【0108】
3.電池用包装材料の製造方法
本発明の電池用包装材料の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されない。すなわち、本発明の電池用包装材料の製造方法においては、少なくとも、基材層、接着剤層、バリア層、及び熱融着性樹脂層がこの順となるように積層して積層体を得る工程を備える電池用包装材料の製造方法であって、前記基材層が、ポリエステルフィルム層とポリアミドフィルム層との間に第1接着層を備えており、前記接着剤層及び第1接着層が、それぞれ、ナノインデンテーション法により測定される硬さが、50MPa以下である方法が挙げられる。
【0109】
本発明の電池用包装材料の製造方法の一例としては、以下の通りである。まず、基材層1、接着剤層2、バリア層3が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層1上又は必要に応じて表面が化成処理されたバリア層3に接着剤層2の形成に使用される接着剤を、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該バリア層3又は基材層1を積層させて接着剤層2を硬化させるドライラミネート法によって行うことができる。
【0110】
次いで、積層体Aのバリア層3上に、第2接着層5及び熱融着性樹脂層4をこの順になるように積層させる。例えば、(1)積層体Aのバリア層3上に、第2接着層5及び熱融着性樹脂層4を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネート法)、(2)別途、第2接着層5と熱融着性樹脂層4が積層した積層体を形成し、これを積層体Aのバリア層3上にサーマルラミネート法により積層する方法、(3)積層体Aのバリア層3上に、第2接着層5を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングし、高温で乾燥さらには焼き付ける方法等により積層させ、この第2接着層5上に予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4をサーマルラミネート法により積層する方法、(4)積層体Aのバリア層3と、予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4との間に、溶融させた第2接着層5を流し込みながら、第2接着層5を介して積層体Aと熱融着性樹脂層4を貼り合せる方法(サンドイッチラミネート法)等が挙げられる。
【0111】
表面被覆層6を設ける場合には、基材層1のバリア層3とは反対側の表面に、表面被覆層6を積層する。表面被覆層6は、例えば表面被覆層6を形成する上記の樹脂を基材層1の表面に塗布することに形成することができる。なお、基材層1の表面にバリア層3を積層する工程と、基材層1の表面に表面被覆層6を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層1の表面に表面被覆層6を形成した後、基材層1の表面被覆層6とは反対側の表面にバリア層3を形成してもよい。
【0112】
上記のようにして、必要に応じて設けられる表面被覆層6/基材層1/接着剤層2/必要に応じて表面が化成処理されたバリア層3/必要に応じて設けられる第2接着層5/熱融着性樹脂層4からなる積層体が形成されるが、接着剤層2または第2接着層5の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触式、熱風式、近赤外線式又は遠赤外線式等の加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば150~250℃程度で1~5分間程度が挙げられる。
【0113】
本発明の電池用包装材料において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性等を向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。
【0114】
4.電池用包装材料の用途
本発明の電池用包装材料は、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容するための包装体に使用される。すなわち、本発明の電池用包装材料によって形成された包装体中に、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を収容して、電池とすることができる。
【0115】
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用包装材料で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(熱融着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部の熱融着性樹脂層同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材料を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用包装材料により形成された包装体中に電池素子を収容する場合、本発明の電池用包装材料の熱融着性樹脂部分が内側(電池素子と接する面)になるようにして、包装体を形成する。
【0116】
本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
【実施例
【0117】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
【0118】
<電池用包装材料の製造>
実施例1
基材層として、ポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムとが共押出しにより積層され、2軸延伸した積層フィルムを用意した。当該積層フィルムにおいて、(2軸延伸)ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み5μm)と(2軸延伸)ナイロンフィルム(厚み20μm)との間は、不飽和カルボン酸誘導体成分でグラフト変性した変性熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を用いた第1接着層(厚み1μm)により接着されている。次に、(2軸延伸)ナイロンフィルム側の表面に、両面に化成処理を施して耐酸性皮膜を備えたアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H-O、厚み40μm)からなるバリア層をドライラミネート法により積層させた。具体的には、耐酸性皮膜を備えたアルミニウム箔の一方面に、2液型ポリウレタン系接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、バリア層上に接着剤層(厚み3μm)を形成した。次いで、耐酸性皮膜を備えたバリア層上の接着剤層と、基材層の(2軸延伸)ナイロンフィルム側を積層した後、40℃で24時間のエージング処理を実施することにより、(2軸延伸)ポリエチレンテレフタレートフィルム/第1接着層/(2軸延伸)ナイロンフィルム/接着剤層/バリア層の積層体を作製した。(2軸延伸)ポリエチレンテレフタレートフィルム、第1接着層、(2軸延伸)ナイロンフィルム、接着剤層の硬さは、それぞれ、表2に記載の通りである。なお、バリア層として使用したアルミニウム箔は、酸化セリウムとリン酸塩を含む耐酸性皮膜を備える。耐酸性皮膜の分析は、次のようにして行った。まず、バリア層と後述の第2接着層との間を引き剥がした。この際、水や有機溶剤、酸やアルカリの水溶液などを利用せずに、物理的に剥離させた。バリア層と第2接着層との間を剥離した後には、バリア層の表面に第2接着層が残存していたため、残存している第2接着層をAr-GCIBによるエッチングで除去した。このようにして得られたバリア層の表面について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて、耐酸性皮膜の分析を行った。その結果、耐酸性皮膜から、Ce+やPO3 -などの2次イオンが検出
された。飛行時間型2次イオン質量分析法の測定装置及び測定条件の詳細は次の通りである。
【0119】
測定装置:ION-TOF社製 飛行時間型2次イオン質量分析装置TOF.SIMS5
測定条件
1次イオン:ビスマスクラスターのダブルチャージイオン(Bi3 ++
1次イオン加速電圧: 30 kV
質量範囲(m/z ):0~1500
測定範囲: 100μm×100μm
スキャン数: 16 scan/cycle
ピクセル数(1辺): 256 pixel
エッチングイオン:Ar ガスクラスターイオンビーム(Ar-GCIB)
エッチングイオン加速電圧: 5.0 kV
【0120】
次に、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂と、多官能イソシアネート化合物を含む接着剤を塗布し、100℃で乾燥させ、得られた積層体のバリア層側と、無延伸のランダムポリプロピレンフィルム(厚み80μm)を60℃に設定した2つのロール間を通過させ接着することにより、金属箔上に第2接着層/熱融着性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層体を40℃で1日間および40℃で5日間の硬化(エージング)することにより、(2軸延伸)ポリエチレンテレフタレートフィルム(5μm)/第1接着層(1μm)/(2軸延伸)ナイロンフィルム(20μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(40μm)/第2接着層(2μm)/無延伸ランダムポリプロピレンフィルム(80μm)がこの順に積層された電池用包装材料を得た。電池用包装材料の層構成を表1に示す。
【0121】
比較例1
実施例1と同様にして、基材層として、(2軸延伸)ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み5μm)と(2軸延伸)ナイロンフィルム(厚み20μm)とが共押出しにより積層された積層フィルムを用意した。次に、(2軸延伸)ナイロンフィルム側の表面に、両面に化成処理を施して耐酸性皮膜を備えたアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H-O、厚み40μm)からなるバリア層をドライラミネート法により積層させた。具体的には、耐酸性皮膜を備えたアルミニウム箔の一方面に、ウレタン系接着剤を塗布し、バリア層上に接着剤層(厚み3μm)を形成した。次いで、バリア層上の接着剤層と、基材層の(2軸延伸)ナイロンフィルム側を積層した後、40℃で24時間のエージング処理を実施することにより、(2軸延伸)ポリエチレンテレフタレートフィルム/第1接着層/(2軸延伸)ナイロンフィルム/接着剤層/バリア層の積層体を作製した。(2軸延伸)ポリエチレンテレフタレートフィルム、第1接着層、(2軸延伸)ナイロンフィルム、接着剤層の硬さは、それぞれ、表2に記載の通りである。なお、バリア層として使用したアルミニウム箔は、酸化クロムとリン酸塩を含む耐酸性皮膜を備える。バリア層上の耐酸性皮膜の分析は、実施例1と同様、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて行った。その結果、耐酸性皮膜から、Cr+やPO3 -などの2次イオンが検出さ
れた。次に、得られた積層体のバリア層の上に、第2接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(厚み40μm)と、熱融着性樹脂層としてのランダムポリプロピレン(厚み40μm)を共押出しすることにより、バリア層上に第2接着層/熱融着性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層体を80℃の温度環境で24時間エージングし、最後に190℃で2分間加熱することにより、(2軸延伸)ポリエチレンテレフタレートフィルム(5μm)/第1接着層(1μm)/(2軸延伸)ナイロンフィルム(20μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(40μm)/無水マレイン酸変性ポリプロピレン(40μm)/ランダムポリプロピレンと(40μm)がこの順に積層された電池用包装材料を得た。電池用包装材料の層構成を表1に示す。
【0122】
実施例2及び比較例2-3
基材層として、それぞれ、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)と2軸延伸ナイロンフィルム(厚み15μm)とがドライラミネート法により積層された積層フィルムを用意した。当該積層フィルムにおいて、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと2軸延伸ナイロンフィルムとの間は、ポリオールとイソシアネート系硬化剤を用いたウレタン系接着剤により接着されている。次に、2軸延伸ナイロンフィルム側の表面に、両面に化成処理を施したアルミニウム箔(JIS H4160:1994
A8021H-O、厚み40μm)からなるバリア層をドライラミネート法により積層させた。具体的には、アルミニウム箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、バリア層上に接着剤層(厚み3μm)を形成した。次いで、バリア層上の接着剤層と、基材層の2軸延伸ナイロンフィルム側を積層した後、40℃で24時間のエージング処理を実施することにより、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/第1接着層/2軸延伸ナイロンフィルム/接着剤層/バリア層の積層体を作製した。2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、第1接着層、2軸延伸ナイロンフィルム、接着剤層の硬さは、それぞれ、表2に記載の通りである。なお、バリア層として使用したアルミニウム箔は、酸化クロムとリン酸塩を含む耐酸性皮膜を備える。バリア層上の耐酸性皮膜の分析は、実施例1と同様、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて行った。その結果、耐酸性皮膜から、Cr+やPO3 -などの2次イオンが検出された。
【0123】
次に、得られた積層体のバリア層の上に、第2接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(厚み40μm)と、熱融着性樹脂層としてのランダムポリプロピレン(厚み40μm)を共押出しすることにより、バリア層上に第2接着層/熱融着性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層体を80℃の温度環境で24時間エージングし、最後に190℃で2分間加熱することにより、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/第1接着層(3μm)/2軸延伸ナイロンフィルム(15μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(40μm)/無水マレイン酸変性ポリプロピレン(40μm)/ランダムポリプロピレンと(40μm)がこの順に積層された電池用包装材料を得た。電池用包装材料の層構成を表1に示す。
【0124】
実施例3
前述の比較例2において、バリア層上の接着剤層と、基材層の2軸延伸ナイロンフィルム側を積層した後、「40℃で24時間」のエージング処理の代わりに、「40℃で12時間」のエージング処理を実施したこと以外は、比較例2と同様にして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/第1接着層(3μm)/2軸延伸ナイロンフィルム(15μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(40μm)/無水マレイン酸変性ポリプロピレン(40μm)/ランダムポリプロピレンと(40μm)がこの順に積層された電池用包装材料を得た。電池用包装材料の層構成を表1に示す。2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、第1接着層、2軸延伸ナイロンフィルム、接着剤層の硬さは、それぞれ、表2に記載の通りである。
【0125】
実施例4
実施例1において、バリア層として、両面に化成処理(実施例1と同様の化成処理)を施して耐酸性皮膜を備えたステンレス鋼箔(SUS304、厚み20μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、(2軸延伸)ポリエチレンテレフタレートフィルム(5μm)/第1接着層(1μm)/(2軸延伸)ナイロンフィルム(20μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(20μm)/第2接着層(2μm)/無延伸ランダムポリプロピレンフィルム(80μm)がこの順に積層された電池用包装材料を得た。電池用包装材料の層構成を表1に示す。(2軸延伸)ポリエチレンテレフタレートフィルム、第1接着層、(2軸延伸)ナイロンフィルム、接着剤層の硬さは、それぞれ、表2に記載の通りである。
【0126】
実施例5
実施例3において、バリア層として、両面に化成処理(実施例1と同様の化成処理)を施して耐酸性皮膜を備えたステンレス鋼箔(SUS304、厚み20μm)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/第1接着層(3μm)/2軸延伸ナイロンフィルム(15μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(20μm)/無水マレイン酸変性ポリプロピレン(40μm)/ランダムポリプロピレンと(40μm)がこの順に積層された電池用包装材料を得た。電池用包装材料の層構成を表1に示す。2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、第1接着層、2軸延伸ナイロンフィルム、接着剤層の硬さは、それぞれ、表2に記載の通りである。
【0127】
比較例4
比較例2において、バリア層として、両面に化成処理(実施例1と同様の化成処理)を施して耐酸性皮膜を備えたステンレス鋼箔(SUS304、厚み20μm)を用いたこと以外は、比較例2と同様にして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/第1接着層(3μm)/2軸延伸ナイロンフィルム(15μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(20μm)/無水マレイン酸変性ポリプロピレン(40μm)/ランダムポリプロピレンと(40μm)がこの順に積層された電池用包装材料を得た。電池用包装材料の層構成を表1に示す。2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、第1接着層、2軸延伸ナイロンフィルム、接着剤層の硬さは、それぞれ、表2に記載の通りである。
【0128】
【表1】
【0129】
表1において、層構成における括弧内の数値は厚み(μm)を意味する。また、PETは2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、Nyは2軸延伸ナイロンフィルム、ADは共押出しにより形成された第1接着層、DLはドライラミネート法により形成された、第1接着層(実施例2,3,5、比較例2-4)、接着剤層(実施例1-5、比較例1-4)、または第2接着層(実施例1,4)、ALMはアルミニウム箔、SUSはステンレス鋼箔、CPPは無延伸ポリプロピレンにより形成された熱融着性樹脂層、PPaは無水マレイン酸変性ポリプロピレンにより形成された第2接着層(実施例2,3,5、比較例1-4)、PPはランダムポリプロピレンにより形成された熱融着性樹脂層を意味する。
【0130】
<各層の硬さの測定>
装置として、ナノインデンター((HYSITRON(ハイジトロン)社製の「TriboIndenter TI950」)を用いる。ナノインデンターの圧子としては、Berkovich圧子(三角錐)を用いた。まず、相対湿度50%、23℃環境において、当該圧子を、電池用包装材料の接着剤層の表面(接着剤層が露出している面であり、各層の積層方向とは垂直方向)に当て、10秒間かけて、当該表面から荷重40μNまで圧子を接着剤層に押し込み、その状態で5秒間保持し、次に、10秒間かけて除荷した。最大荷重Pmax(μN)と最大深さ時の接触投影面積A(μm2)を用い、Pmax/Aにより
、当該インデンテーション硬さ(MPa)を算出した。第1接着層の硬さは、荷重を10μNとすること以外は接着剤層と同様にして測定した。また、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム及び2軸延伸ナイロンフィルムについても、それぞれ、上記測定条件において、荷重を100μNとしたこと以外は、同様にして、これらの硬さを測定した。場所を変え測定したN=5の平均値を用いた。それぞれの硬さを表2に示す。なお、圧子を押し込む表面は、電池用包装材料の中心部を通るように厚み方向に切断して得られた、接着剤層などの断面が露出した部分である。切断は、市販品の回転式ミクロトームなどを用いて行った。
【0131】
<成形性の評価>
上記で得られた各電池用包装材料を長さ(MD)90mm、幅(TD)150mmの長方形に裁断して試験サンプルとした。電池用包装材料のMDが、アルミニウム合金箔の圧延方向(RD)に対応し、電池用包装材料のTDが、アルミニウム合金箔のTDに対応する。このサンプルを長さ31.6mm(MD)、幅54.5mm(TD)の口径を有する矩形状の成形金型(雌型、表面は、JIS B 0659-1:2002附属書1(参考) 比較用表面粗さ標準片の表2に規定される、最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が3.2μmである。コーナーR2.0mm、稜線R1.0mm)と、これに対応した成形金型(雄型、表面は、JIS B 0659-1:2002附属書1(参考) 比較用表面粗さ標準片の表2に規定される、最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が1.6μmである。コーナーR2.0mm、稜線R1.0mm)を用いて、押さえ圧(面圧)0.25MPaで0.5mmの成形深さから0.5mm単位で成形深さを変えて、それぞれ10個のサンプルについて冷間成形(引き込み1段成形)を行った。このとき、雄型側に熱融着性樹脂層側が位置するよう、雌型上に上記試験サンプルを載置して成形をおこなった。また、雄型及び雌型のクリアランスは、0.3mmとした。冷間成形後のサンプルについて、暗室の中にてペンライトで光を当てて、光の透過によって、アルミニウム箔にピンホールやクラックが生じているか否かを確認した。アルミニウム箔にピンホール、クラックが10個のサンプル全てにおいて発生しない最も深い成形深さをAmm、アルミニウム箔にピンホール等が発生した最も浅い成形深さにおいてピンホール等が発生したサンプルの数をB個とし、以下の式により算出される値を小数点以下2桁目で四捨五入し、電池用包装材料の限界成形深さとした。結果を表2に示す。
限界成形深さ=Amm+(0.5mm/10個)×(10個-B個)
【0132】
【表2】
【0133】
表2において、PETは2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、Nyは2軸延伸ナイロンフィルムを意味する。
【0134】
表2に示される結果から明らかなとおり、基材層、接着剤層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、基材層が、ポリエステルフィルム層とポリアミドフィルム層との間に第1接着層を備えており、さらに、接着剤層及び第1接着層のナノインデンテーション法により測定される硬さが、共に50MPa以下である実施例1-3の電池用包装材料(バリア層としてアルミニウム箔を使用)は、成形深さが7.3mm以上であり、実施例4,5(バリア層としてステンレス鋼箔を使用)は、成形深さが3.2mm以上であり、成形性に優れていた。一方、実施例1-5と積層構成は共通しているものの、接着剤層及び第1接着層のナノインデンテーション法により測定される硬さのうち、少なくとも一方が50MPaを超えている比較例1-4の電池用包装材料は、実施例1-5に比して、成形性に劣っていた。すなわち、バリア層としてアルミニウム箔を用いた実施例1と比較例1を比べると実施例1が比較例1より成形性で0.5mm優れており、実施例2,3と比較例2を比べると実施例2,3が比較例3より成形性で0.6mm優れており、さらに実施例2,3と比較例3を比べると実施例2,3が比較例3より成形性で0.3mm優れていた。また、バリア層としてステンレス鋼箔を用いた実施例4,5と比較例4とを比べると、実施例4,5は比較例4よりも成形性で0.4~0.8mm優れていた。
【符号の説明】
【0135】
1 基材層
11 ポリエステルフィルム層
12 ポリアミドフィルム層
13 第1接着層
2 接着剤層
3 バリア層
4 熱融着性樹脂層
5 第2接着層
6 表面被覆層
10 電池用包装材料
図1
図2
図3