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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】二次電池、電子機器及び電動工具
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/536 20210101AFI20231219BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20231219BHJP
   H01M 50/531 20210101ALI20231219BHJP
   H01M 50/534 20210101ALI20231219BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20231219BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01M50/536
H01M10/04 W
H01M50/531
H01M50/534
H01M10/0587
H01M4/64 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022508248
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2021009420
(87)【国際公開番号】W WO2021187259
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2020049176
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】新川 輝
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-166030(JP,A)
【文献】特開2015-106614(JP,A)
【文献】特表2016-532990(JP,A)
【文献】国際公開第2021/020277(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/10-50/198
H01M50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを介して帯状の正極と帯状の負極とが積層され、中心軸の周りに巻回された構造を有する電極巻回体と、正極集電板及び負極集電板とが、電池缶に収容された二次電池であって、
前記正極は、帯状の正極箔上に、正極活物質層が被覆された正極活物質被覆部と正極活物質非被覆部とを有し、
前記負極は、帯状の負極箔上に、負極活物質層が被覆された負極活物質被覆部と負極活物質非被覆部とを有し、
前記正極活物質非被覆部は、前記電極巻回体の一方の端部において、前記正極集電板と接合され、
前記負極活物質非被覆部は、前記電極巻回体の他方の端部において、前記負極集電板と接合され、
前記電極巻回体は、前記正極活物質非被覆部と前記負極活物質非被覆部の両方が、前記巻回された構造の中心軸に向かって曲折し、重なり合うことによって形成された平坦面と、前記平坦面に形成された溝とを有し、
前記正極集電板は表面に正極ビードを有し、前記負極集電板は表面に負極ビードを有し、
前記正極ビードの幅は0.05mm以上0.18mm以下であり、前記負極ビードの幅は0.03mm以上0.12mm以下であり、
前記正極集電板の厚さは0.07mm以上0.20mm以下であり、前記負極集電板の厚さは0.05mm以上0.15mm以下であり、
前記正極活物質非被覆部の厚さは5μm以上20μm以下であり、前記負極活物質非被覆部の厚さは6μm以上20μm以下であり、
正極側での前記正極活物質非被覆部の重なり枚数が2以上、かつ負極側での前記負極活物質非被覆部の重なり枚数が2以上である二次電池。
【請求項2】
前記正極集電板の材質は、アルミニウム又はアルミニウム合金である請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記負極集電板の材質は、ニッケル、ニッケル合金、銅や銅合金の単体若しくは複合材(クラッド材)である請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の二次電池を有する電子機器。
【請求項5】
請求項1から3の何れかに記載の二次電池を有する電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池、電子機器及び電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、電動工具や電気自動車といった高出力を要する用途に向けても開発されるようになってきている。高出力を行う一つの方法としては、電池から比較的大電流を流すハイレート放電が挙げられる。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、内部抵抗の低い電池を作製するために、電極巻回体の端部にある活物質非被覆部を折り曲げ、端部の上に配置した集電板の表面にレーザーを照射することで、活物質非被覆部と集電板を接合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-129328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、溶接不良を起こして電池の内部抵抗が十分低くならないという問題があった。
【0006】
従って、本発明は、ハイレート放電に適した内部抵抗が低い電池を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、セパレータを介して帯状の正極と帯状の負極とが積層され、中心軸の周りに巻回された構造を有する電極巻回体と、正極集電板及び負極集電板とが、電池缶に収容された二次電池であって、
正極は、帯状の正極箔上に、正極活物質層が被覆された正極活物質被覆部と正極活物質非被覆部とを有し、
負極は、帯状の負極箔上に、負極活物質層が被覆された負極活物質被覆部と負極活物質非被覆部とを有し、
正極活物質非被覆部は、電極巻回体の一方の端部において、正極集電板と接合され、
負極活物質非被覆部は、電極巻回体の他方の端部において、負極集電板と接合され、
電極巻回体は、正極活物質非被覆部と負極活物質非被覆部の両方が、巻回された構造の中心軸に向かって曲折し、重なり合うことによって形成された平坦面と、平坦面に形成された溝とを有し、
正極集電板は表面に正極ビードを有し、負極集電板は表面に負極ビードを有し、
正極ビードの幅は0.05mm以上0.18mm以下であり、負極ビードの幅は0.03mm以上0.12mm以下であり、
正極集電板の厚さは0.07mm以上0.20mm以下であり、負極集電板の厚さは0.05mm以上0.15mm以下であり、
正極活物質非被覆部の厚さは5μm以上20μm以下であり、負極活物質非被覆部の厚さは6μm以上20μm以下であり、
正極側での正極活物質非被覆部の重なり枚数が2以上、かつ負極側での負極活物質非被覆部の重なり枚数が2以上である二次電池である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の少なくとも実施の形態によれば、ハイレート放電に適した内部抵抗の低い電池を提供できる。なお、本明細書で例示された効果により本発明の内容が限定して解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施の形態に係る電池の断面図である。
図2図2は、電極巻回体における正極、負極とセパレータの配置関係の一例を説明する図である。
図3図3Aは、正極集電板の平面図であり、図3Bは負極集電板の平面図である。
図4図4Aから図4Fは、一実施の形態に係る電池の組み立て工程を説明する図である。
図5図5は、レーザー溶接痕の位置を説明するための図である。
図6図6は、活物質非被覆部の重なり枚数を説明するための図である。
図7図7は、比較例1を説明するための図である。
図8図8は、比較例2から比較例6を説明するための図である。
図9図9は、変形例を説明するための図である。
図10図10は、本発明の応用例としての電池パックの説明に使用する接続図である。
図11図11は、本発明の応用例としての電動工具の説明に使用する接続図である。
図12図12は、本発明の応用例としての電動車両の説明に使用する接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態等について図面を参照しながら説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
<1.一実施の形態><2.変形例><3.応用例>
以下に説明する実施の形態等は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容がこれらの実施の形態等に限定されるものではない。
【0011】
本発明の実施の形態では、二次電池として、円筒形状のリチウムイオン電池を例にして説明する。
【0012】
<1.一実施の形態>
まず、リチウムイオン電池の全体構成に関して説明する。図1は、リチウムイオン電池1の概略断面図である。リチウムイオン電池1は、例えば、図1に示すように、電池缶11の内部に電極巻回体20が収納されている円筒型のリチウムイオン電池1である。
【0013】
具体的には、リチウムイオン電池1は、例えば、円筒状の電池缶11の内部に、一対の絶縁板12,13と、電極巻回体20とを備えている。ただし、リチウムイオン電池1は、例えば、さらに、電池缶11の内部に、熱感抵抗(PTC)素子及び補強部材などのうちのいずれか1種類又は2種類以上を備えていてもよい。
【0014】
[電池缶]
電池缶11は、主に、電極巻回体20を収納する部材である。この電池缶11は、例えば、一端面が開放されると共に他端面が閉塞された円筒状の容器である。すなわち、電池缶11は、開放された一端面(開放端面11N)を有している。この電池缶11は、例えば、鉄、アルミニウム及びそれらの合金などの金属材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。ただし、電池缶11の表面には、例えば、ニッケルなどの金属材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上が鍍金されていてもよい。
【0015】
[絶縁板]
絶縁板12,13は、電極巻回体20の巻回軸(図1のZ軸)に対して略垂直な面を有する皿状の板である。また、絶縁板12,13は、例えば、互いに電極巻回体20を挟むように配置されている。
【0016】
[かしめ構造]
電池缶11の開放端面11Nには、電池蓋14及び安全弁機構30がガスケット15を介して、かしめられており、かしめ構造11R(クリンプ構造)が形成されている。これにより、電池缶11の内部に電極巻回体20などが収納された状態において、その電池缶11は密閉されている。
【0017】
[電池蓋]
電池蓋14は、主に、電池缶11の内部に電極巻回体20などが収納された状態において、その電池缶11の開放端面11Nを閉塞する部材である。この電池蓋14は、例えば、電池缶11の形成材料と同様の材料を含んでいる。電池蓋14のうちの中央領域は、例えば、+Z方向に突出している。これにより、電池蓋14のうちの中央領域以外の領域(周辺領域)は、例えば、安全弁機構30に接触している。
【0018】
[ガスケット]
ガスケット15は、主に、電池缶11(折り曲げ部11P)と電池蓋14との間に介在することにより、その折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間を封止する部材である。ただし、ガスケット15の表面には、例えば、アスファルトなどが塗布されていてもよい。
【0019】
このガスケット15は、例えば、絶縁性材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。絶縁性材料の種類は、特に限定されないが、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリプロピレン(PP)などの高分子材料である。中でも、絶縁性材料は、ポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。電池缶11と電池蓋14とを互いに電気的に分離しながら、折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間が十分に封止されるからである。
【0020】
[安全弁機構]
安全弁機構30は、主に、電池缶11の内部の圧力(内圧)が上昇した際に、必要に応じて電池缶11の密閉状態を解除することにより、その内圧を開放する。電池缶11の内圧が上昇する原因は、例えば、充放電時において電解液の分解反応に起因して発生するガスなどである。
【0021】
[電極巻回体]
円筒形状のリチウムイオン電池では、帯状の正極21と帯状の負極22がセパレータ23を挟んで渦巻き状に巻回されて、電解液に含浸された状態で、電池缶11に収まっている。正極21は正極箔21Aの片面又は両面に正極活物質層を形成したものであり、正極箔21Aの材料は例えば、アルミニウムやアルミニウム合金でできた金属箔である。負極22は負極箔22Aの片面又は両面に負極活物質層を形成したものであり、負極箔22Aの材料は例えば、ニッケル、ニッケル合金、銅や銅合金でできた金属箔である。セパレータ23は多孔質で絶縁性のあるフィルムであり、正極21と負極22とを電気的に絶縁しながら、イオンや電解液等の物質の移動を可能にしている。
【0022】
正極活物質層と負極活物質層はそれぞれ、正極箔21Aと負極箔22Aとの多くの部分を覆うが、どちらも帯の短手方向にある片方の端周辺を意図的に被覆していない。この活物質層が被覆されていない部分を、以下、適宜、活物質非被覆部21C,22Cと称し、活物質層が被覆されている部分を、以下、適宜、活物質被覆部21B,22Bと称する。円筒形状の電池では、電極巻回体20は正極の活物質非被覆部21Cと負極の活物質非被覆部22Cが逆方向を向くようにしてセパレータ23を介して重ねられて巻回されている。
【0023】
図2に正極21、負極22とセパレータ23を積層した巻回前の構造の一例を示す。正極の活物質非被覆部21C(図2の上側の斜線部分)の幅はAであり、負極の活物質非被覆部22C(図2の下側の斜線部分)の幅はBである。一実施の形態ではA>Bであることが好ましく、例えばA=7(mm)、B=4(mm)である。正極の活物質非被覆部21Cがセパレータ23の幅方向の一端から突出した部分の長さはCであり、負極の活物質非被覆部22Cがセパレータ23の幅方向の他端から突出した部分の長さはDである。一実施の形態ではC>Dであることが好ましく、例えば、C=4.5(mm)、D=3(mm)である。
【0024】
正極の活物質非被覆部21Cは例えばアルミニウムなどからなり、負極の活物質非被覆部22Cは例えば銅などからなるので、一般的に正極の活物質非被覆部21Cの方が負極の活物質非被覆部22Cよりも柔らかい(ヤング率が低い)。このため、一実施の形態では、A>BかつC>Dがより好ましく、この場合、両極側から同時に同じ圧力で正極の活物質非被覆部21Cと負極の活物質非被覆部22Cとが折り曲げられるとき、折り曲げられた部分のセパレータ23の先端から測った高さは正極21と負極22とで同じくらいになることがある。このとき、活物質非被覆部21C,22Cが折り曲げられて適度に重なり合うので、活物質非被覆部21C,22Cと集電板24,25とのレーザー溶接による接合を容易に行うことができる。一実施の形態における接合とは、電気的に接続していることを意味するが、接合方法はレーザー溶接に限定されない。
【0025】
正極21は、活物質非被覆部21Cと活物質被覆部21Bとの境界を含む幅3mmの区間が絶縁層101(図2の灰色の領域部分)で被覆されている。そして、セパレータを介して負極の活物質被覆部22Bに対向する正極の活物質非被覆部21Cの全ての領域が絶縁層101で覆われている。絶縁層101は、負極の活物質被覆部22Bと正極の活物質非被覆部21Cとの間に異物が侵入したときに、電池1の内部短絡を確実に防ぐ効果がある。また、絶縁層101は、電池1に衝撃が加わったときに、その衝撃を吸収し、正極の活物質非被覆部21Cが折れ曲がりや、負極22との短絡を確実に防ぐ効果がある。
【0026】
電極巻回体20の中心軸には、貫通孔26が空いている。貫通孔26は電極巻回体20の組み立て用の巻き芯と溶接用の電極棒を差し込むための孔である。電極巻回体20は、正極の活物質非被覆部21Cと負極の活物質非被覆部22Cが逆方向を向くように重ねて巻回してあるので、電極巻回体の端面の一方(端面41)には、正極の活物質非被覆部21Cが集まり、電極巻回体20の端面の他方(端面42)には、負極の活物質非被覆部22Cが集まる。電流を取り出すための集電板24,25との接触を良くするために、活物質非被覆部21C,22Cは曲折されて、端面41,42が平坦面となっている。曲折する方向は端面41,42の外縁部27,28から貫通孔26に向かう方向であり、巻回された状態で隣接する周の活物質非被覆部同士が重なって曲折している。なお、本明細書において「平坦面」とは、完全に平坦な面のみならず、活物質非被覆部と集電板が接合可能な程度において、多少の凹凸や表面粗さを有する表面も含む。
【0027】
活物質非被覆部21C,22Cがそれぞれ重なるようにして曲折することで、一見、端面41,42を平坦面にすることが可能に思われるが、曲折する前に何らの加工もないと、曲折するときに端面41,42にシワやボイド(空隙、空間)が発生して、端面41,42が平坦面とならない。ここで、「シワ」や「ボイド」とは曲折した活物質非被覆部21C,22Cに偏りが生じ、端面41,42が平坦面とはならない部分である。このシワやボイドの発生を防止するために、貫通孔26から放射方向に予め溝43(例えば図4Bを参照)が形成されている。溝43は端面41,42の外縁部27,28から貫通孔26まで延在している。電極巻回体20の中心には貫通孔26があり、貫通孔26はリチウムイオン電池1の組み立て工程で、溶接器具を差し込む孔として使用される。貫通孔26の付近にある、正極21と負極22との巻き始めの活物質非被覆部21C,22Cには切欠きがある。これは貫通孔26に向かって曲折したとき貫通孔26を塞がないようにするためである。溝43は、活物質非被覆部21C,22Cを曲折した後も平坦面内に残っており、溝43の無い部分が、正極集電板24又は負極集電板25と接合(溶接等)されている。なお、平坦面のみならず、溝43が集電板24,25の一部と接合されていてもよい。
電極巻回体20の詳細な構成、すなわち正極21、負極22、セパレータ23及び電解液のそれぞれの詳細な構成に関しては、後述する。
【0028】
[集電板]
通常のリチウムイオン電池では例えば、正極と負極の一か所ずつに電流取出し用のリードが溶接されているが、これでは電池の内部抵抗が大きく、放電時にリチウムイオン電池が発熱し高温になるため、ハイレート放電には適さない。そこで、一実施の形態のリチウムイオン電池では、端面41,42に正極集電板24と負極集電板25とを配置し、端面41,42に存在する正極や負極の活物質非被覆部21C,22Cと多点で溶接することで、電池の内部抵抗を低く抑えている。端面41,42が曲折して平坦面となっていることも低抵抗化に寄与している。
【0029】
図3A及び図3Bに、集電板の一例を示す。図3Aが正極集電板24であり、図3Bは負極集電板25である。正極集電板24の材料は例えば、アルミニウムやアルミニウム合金の単体若しくは複合材でできた金属板であり、負極集電板25の材料は例えば、ニッケル、ニッケル合金、銅や銅合金の単体若しくは複合材(クラッド材)でできた金属板である。図3Aに示すように、正極集電板24の形状は平坦な扇形をした板状部31に、矩形の帯状部32が付いた形状になっている。板状部31の中央付近に孔35があいていて、孔35の位置は貫通孔26に対応する位置である。
【0030】
図3Aの斜線で示す部分は帯状部32に絶縁テープが貼付されているか絶縁材料が塗布された絶縁部32Aであり、図面の斜線部より下側の部分は外部端子を兼ねた封口板への接続部32Bである。なお、貫通孔26に金属製のセンターピン(図示せず)を備えていない電池構造の場合には帯状部32が負極電位の部位と接触する可能性が低いため、絶縁部32Aが無くても良い。その場合には、正極21と負極22との幅を絶縁部32Aの厚さに相当する分だけ大きくして充放電容量を大きくすることができる。
【0031】
負極集電板25の形状は正極集電板24と殆ど同じ形状だが、帯状部が異なっている。図3Bの負極集電板の帯状部34は、正極集電板の帯状部32より短く、絶縁部32Aに相当する部分がない。帯状部34には、複数の丸印で示される丸型の突起部(プロジェクション)37がある。抵抗溶接時には、電流が突起部に集中し、突起部が溶けて帯状部34が電池缶11の底に溶接される。正極集電板24と同様に、負極集電板25には板状部33の中央付近に孔36があいていて、孔36の位置は貫通孔26に対応する位置である。正極集電板24の板状部31と負極集電板25の板状部33は扇形の形状をしているため、端面41,42の一部を覆うようになっている。全部を覆わない理由は、電池を組み立てる際に電極巻回体へ電解液を円滑に浸透させる為、あるいは電池が異常な高温状態や過充電状態になったときに発生したガスを電池外へ放出しやすくする為である。
【0032】
[正極]
正極活物質層は、リチウムを吸蔵及び放出することが可能である正極材料(正極活物質)を少なくとも含み、さらに、正極結着剤及び正極導電剤などを含んでいてもよい。正極材料は、リチウム含有複合酸化物又はリチウム含有リン酸化合物が好ましい。リチウム含有複合酸化物は、例えば、層状岩塩型又はスピネル型の結晶構造を有している。リチウム含有リン酸化合物は、例えば、オリビン型の結晶構造を有している。
【0033】
正極結着剤は、合成ゴム又は高分子化合物を含んでいる。合成ゴムは、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴム及びエチレンプロピレンジエンなどである。高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)及びポリイミドなどである。
【0034】
正極導電剤は、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック又はケッチェンブラックなどの炭素材料である。ただし、正極導電剤は、金属材料及び導電性高分子でもよい。
【0035】
正極箔21Aの厚みは5μm以上、20μm以下にすることが好ましい。正極箔21Aの厚みを5μm以上にすることで、正極21と負極22とセパレータ23とを重ねて巻回する際に正極21が破断することなく製造することが可能になるためである。正極箔21Aの厚みを20μm以下にすることで、電池1のエネルギー密度の低下を防ぐことができると共に、正極21と負極22との対向面積が大きくなり、出力の大きい電池1にすることができるからである。
【0036】
[負極]
負極箔22Aの表面は、負極活物質層との密着性向上のために粗面化されていることが好ましい。負極活物質層は、リチウムを吸蔵及び放出することが可能である負極材料(負極活物質)を少なくとも含み、さらに、負極結着剤及び負極導電剤などを含んでいてもよい。
【0037】
負極材料は、例えば、炭素材料を含む。炭素材料は、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、黒鉛、低結晶性炭素、又は非晶質炭素である。炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状又は鱗片状を有している。
【0038】
また、負極材料は、例えば金属系材料を含む。金属系材料の例としては、Li(リチウム)、Si(ケイ素)、Sn(スズ)、Al(アルミニウム)、Zr(亜鉛)、Ti(チタン)が挙げられる。金属系元素は、他の元素と化合物、混合物又は合金を形成しており、その例としては、酸化ケイ素(SiO(0<x≦2))、炭化ケイ素(SiC)又は炭素とケイ素の合金、チタン酸リチウム(LTO)が挙げられる。
【0039】
負極箔22Aの厚みは5μm以上、20μm以下にすることが好ましい。負極箔22Aの厚みを5μm以上にすることで、正極21と負極22とセパレータ23とを重ねて巻回する際に負極22が破断することなく製造することが可能になるためである。負極箔22Aの厚みを20μm以下にすることで、電池1のエネルギー密度の低下を防ぐことができると共に、正極21と負極22との対向面積が大きくなり、出力の大きい電池1にすることができるからである。
【0040】
[セパレータ]
セパレータ23は、樹脂を含む多孔質膜であり、2種類以上の多孔質膜の積層膜でもよい。樹脂は、ポリプロピレン及びポリエチレンなどである。セパレータ23は、多孔質膜を基材層として、その片面又は両面に樹脂層を含んでいてもよい。正極21及び負極22のそれぞれに対するセパレータ23の密着性が向上するため、電極巻回体20の歪みが抑制されるからである。
【0041】
樹脂層は、PVdFなどの樹脂を含んでいる。この樹脂層を形成する場合には、有機溶剤に樹脂が溶解された溶液を基材層に塗布したのち、その基材層を乾燥させる。なお、溶液中に基材層を浸漬させたのち、その基材層を乾燥させてもよい。樹脂層には、無機粒子又は有機粒子を含んでいることが、耐熱性、電池の安全性向上の観点で好ましい。無機粒子の種類は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、タルク、シリカ、雲母などである。また、樹脂層に代えて、スパッタ法、ALD(原子層堆積)法などで形成された、無機粒子を主成分とする表面層を用いてもよい。
【0042】
セパレータ23の厚さは4μm以上30μm以下が好ましい。セパレータの厚さを4μm以上とすることで、セパレータ23を介して対向する正極21と負極22との接触による内部短絡を防止できる。セパレータ23の厚さを30μm以下とすることで、リチウムイオンや電解液がセパレータ23を通過しやすくでき、また、巻回したとき、正極21と負極22の電極密度を高くすることができる。
【0043】
[電解液]
電解液は、溶媒及び電解質塩を含み、必要に応じてさらに添加剤などを含んでいてもよい。溶媒は、有機溶媒などの非水溶媒、又は水である。非水溶媒を含む電解液を非水電解液という。非水溶媒は、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、ラクトン、鎖状カルボン酸エステル又はニトリル(モノニトリル)などである。
【0044】
電解質塩の代表例はリチウム塩であるが、リチウム塩以外の塩を含んでいてもよい。リチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3SO3)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2SF6)などである。これらの塩を混合して用いることもでき、中でも、LiPF6、LiBF4を混合して用いることが、電池特性向上の観点で好ましい。電解質塩の含有量は特に限定されないが、溶媒に対して0.3mol/kgから3mol/kgであることが好ましい。
【0045】
[リチウムイオン電池の作製方法]
図4Aから図4Fを参照して、一実施の形態のリチウムイオン電池1の作製方法について述べる。まず、正極活物質を、帯状の正極箔21Aの表面に塗着させ、これを正極21の被覆部とし、負極活物質を、帯状の負極箔22Aの表面に塗着させ、これを負極22の被覆部とした。このとき、正極21の短手方向の一端と負極22の短手方向の一端に、正極活物質と負極活物質が塗着されていない活物質非被覆部21C,22Cを作製した。活物質非被覆部21C,22Cの一部であって、巻回するときの巻き始めに当たる部分に、切欠きを作製した。正極21と負極22とには乾燥等の工程を行った。そして、正極の活物質非被覆部21Cと負極の活物質非被覆部22Cが逆方向となるようにセパレータ23を介して重ね、中心軸に貫通孔26ができるように、且つ、作製した切欠きが中心軸付近に配置されるように、渦巻き状に巻回して、図4Aのような電極巻回体20を作製した。
【0046】
次に、図4Bのように、薄い平板(例えば厚さ0.5mm)などの端を端面41,42に対して垂直に押し付けることで、端面41と端面42の一部に溝43を作製した。この方法で貫通孔26から放射状に向かって延びる溝43を作製した。図4Bに示される、溝43の数や配置はあくまでも一例である。そして、図4Cのように、両極側から同時に同じ圧力を端面41,42に対して略垂直方向に加え、正極の活物質非被覆部21Cと負極の活物質非被覆部22Cを折り曲げて、端面41,42が平坦面となるように形成した。このとき、端面41,42にある活物質非被覆部が、中心軸に向かって曲折し重なり合うように、平板の板面などで荷重を加えた。その後、端面41に正極集電板24の板状部31をレーザー溶接し、端面42に負極集電板25の板状部33をレーザー溶接し、接合した。
【0047】
その後、図4Dのように、集電板24,25の帯状部32,34を折り曲げ、正極集電板24と負極集電板25に絶縁板12,13(又は絶縁テープ)を貼り付け、図4Eに示される電池缶11内に上記のように組立てを行った電極巻回体20を挿入し、電池缶11の底の溶接を行った。電解液を電池缶11内に注入後、図4Fのように、ガスケット15及び電池蓋14にて封止を行った。
【実施例
【0048】
以下、上記のようにして作製したリチウムイオン電池1を用い、穴あき面積比率と電池の内部抵抗について比較した実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0049】
以下の全ての実施例及び比較例において、電池サイズを21700(直径21mm、高さ70mm)とし、溝43の数を8とし、溝43を略等角間隔に配置した。正極集電板24と正極の活物質非被覆部21Cとの接合及び負極集電板25と負極の活物質非被覆部22Cとの接合に、図5で示されるような配置でレーザー溶接を行った。図5はレーザー溶接痕の位置を説明する為に、集電板を通して巻回体の端面および溝を透視するように表現した模式図である。図5の黒色の太実線部で示される部分はレーザー溶接痕51である。レーザー溶接痕51を隣り合う溝43の間ごとに1本ずつ、孔35,36付近から外周部まで、略等角間隔に線状に配置した。図5のように、集電板24,25が覆う部分で、レーザー溶接痕51を6本配置し、レーザー溶接痕51の1本当たりの長さを6mmとした。
【0050】
以下では、正極集電板24の表面のうち、電極巻回体と対向しない面にあるレーザー溶接痕51の幅を正極のビード幅と称し、負極集電板25の表面のうち、電極巻回体と対向しない面にあるレーザー溶接痕51の幅を負極のビード幅と称し、正極のビード幅と負極のビード幅を区別しないときはビード幅と称した。ビード幅は、正極集電板24や負極集電板25の表面にあるレーザー溶接痕51を光学顕微鏡で観察した結果から求めた。レーザー溶接はファイバーレーザー(波長1070±10nm)を用いて行った。ファイバーレーザーは一般のYAGレーザーと比べて焦点の直径を小さくできるので、正極の活物質非被覆部や負極の活物質被覆部のような金属箔を確実に溶接する用途に適している。レーザー溶接を行うときに、溶接出力値、掃引速度、焦点距離などの溶接条件を変えることによってビード幅を調整した。
【0051】
図6は正極の活物質非被覆部21Cと正極集電板24のレーザー溶接痕51の断面の様子を模式的に示している。端面41において、電極巻回体20の側面から距離aの地点から所定の範囲においてレーザー光52を照射することで溶接を行った。正極側での活物質非被覆部の重なり枚数mは、図6の距離aの地点の直下における活物質非被覆部21C(正極箔)が溶接されている枚数である。距離aの地点とは、レーザー光52で形成された軌跡のうち、中心軸から最も遠い地点のことである。電池を中心軸に平行な面で切断し、溶接部を観察することで活物質非被覆部の重なり枚数を確認することができる。負極の活物質非被覆部22Cと負極集電板25とのレーザー溶接状態の図は省略する。負極側での活物質非被覆部の重なり枚数nは、距離aの地点の直下における活物質非被覆部22C(負極箔)が溶接されている枚数である。図2の正極の活物質非被覆部21Cがセパレータ23の幅方向の一端から突出した部分の長さC、負極の活物質非被覆部22Cがセパレータ23の幅方向の他端から突出した部分の長さDを変えること、および前記溶接条件を変えることによって活物質非被覆部の重なり枚数m、nを調整した。
【0052】
[実施例1]
正極のビード幅を0.10mmとし、正極集電板24の厚さを0.15mmとし、正極の活物質非被覆部21Cの厚さを10μmとし、正極側での活物質非被覆部の重なり枚数mを3とし、負極のビード幅を0.06mmとし、負極集電板の厚さを0.08mmとし、負極の活物質非被覆部の厚さを10μmとし、負極側での活物質非被覆部の重なり枚数nを2とした。
【0053】
[実施例2]
正極のビード幅を0.05mmとし、正極集電板24の厚さを0.15mmとし、正極の活物質非被覆部21Cの厚さを10μmとし、正極側での活物質非被覆部の重なり枚数mを2とし、負極のビード幅を0.03mmとし、負極集電板25の厚さを0.08mmとし、負極の活物質非被覆部22Cの厚さを10μmとし、負極側での活物質非被覆部の重なり枚数nを2とした。
【0054】
[実施例3]
正極のビード幅を0.18mmとし、正極集電板24の厚さを0.15mmとし、正極の活物質非被覆部21Cの厚さを10μmとし、正極側での活物質非被覆部の重なり枚数mを2とし、負極のビード幅を0.12mmとし、負極集電板25の厚さを0.08mmとし、負極の活物質非被覆部22Cの厚さを10μmとし、負極側での活物質非被覆部の重なり枚数nを2とした。
【0055】
[実施例4]
正極のビード幅を0.10mmとし、正極集電板24の厚さを0.07mmとし、正極の活物質非被覆部21Cの厚さを10μmとし、正極側での活物質非被覆部の重なり枚数mを2とし、負極のビード幅を0.06mmとし、負極集電板25の厚さを0.05mmとし、負極の活物質非被覆部22Cの厚さを10μmとし、負極側での活物質非被覆部の重なり枚数nを2とした。
【0056】
[実施例5]
正極のビード幅を0.10mmとし、正極集電板24の厚さを0.20mmとし、正極の活物質非被覆部21Cの厚さを10μmとし、正極側での活物質非被覆部の重なり枚数mを2とし、負極のビード幅を0.06mmとし、負極集電板25の厚さを0.15mmとし、負極の活物質非被覆部22Cの厚さを10μmとし、負極側での活物質非被覆部の重なり枚数nを2とした。
【0057】
[実施例6]
正極のビード幅を0.10mmとし、正極集電板24の厚さを0.15mmとし、正極の活物質非被覆部21Cの厚さを5μmとし、正極側での活物質非被覆部の重なり枚数mを2とし、負極のビード幅を0.06mmとし、負極集電板25の厚さを0.08mmとし、負極の活物質非被覆部22Cの厚さを6μmとし、負極側での活物質非被覆部の重なり枚数nを2とした。
【0058】
[実施例7]
正極のビード幅を0.10mmとし、正極集電板24の厚さを0.15mmとし、正極の活物質非被覆部21Cの厚さを20μmとし、正極側での活物質非被覆部の重なり枚数mを2とし、負極のビード幅を0.06mmとし、負極集電板25の厚さを0.08mmとし、負極の活物質非被覆部22Cの厚さを20μmとし、負極側での活物質非被覆部の重なり枚数nを2とした。
【0059】
[実施例8]
正極のビード幅を0.18mmとし、正極集電板24の厚さを0.12mmとし、正極の活物質非被覆部21Cの厚さを15μmとし、正極側での活物質非被覆部の重なり枚数mを2とし、負極のビード幅を0.10mmとし、負極集電板25の厚さを0.07mmとし、負極の活物質非被覆部22Cの厚さを12μmとし、負極側での活物質非被覆部の重なり枚数nを3とした。
【0060】
[実施例9]
正極のビード幅を0.05mmとし、正極集電板24の厚さを0.07mmとし、正極の活物質非被覆部21Cの厚さを12μmとし、正極側での活物質非被覆部の重なり枚数mを2とし、負極のビード幅を0.03mmとし、負極集電板25の厚さを0.05mmとし、負極の活物質非被覆部22Cの厚さを8μmとし、負極側での活物質非被覆部の重なり枚数nを3とした。
【0061】
[比較例1]
正極のビード幅を0.10mmとし、正極集電板24の厚さを0.15mmとし、正極の活物質非被覆部21Cの厚さを10μmとし、正極側での活物質非被覆部の重なり枚数mを1とし、負極のビード幅を0.10mmとし、負極集電板25の厚さを0.08mmとし、負極の活物質非被覆部22Cの厚さを10μmとし、負極側での活物質非被覆部の重なり枚数nを1とした。
【0062】
[比較例2]
正極のビード幅を0.25mmとし、正極集電板24の厚さを0.15mmとし、正極の活物質非被覆部21Cの厚さを10μmとし、正極側での活物質非被覆部の重なり枚数mを2とし、負極のビード幅を0.21mmとし、負極集電板25の厚さを0.08mmとし、負極の活物質非被覆部22Cの厚さを10μmとし、負極側での活物質非被覆部の重なり枚数nを3とした。
【0063】
[比較例3]
正極のビード幅を0.46mmとし、正極集電板24の厚さを0.15mmとし、正極の活物質非被覆部21Cの厚さを10μmとし、正極側での活物質非被覆部の重なり枚数mを3とし、負極のビード幅を0.41mmとし、負極集電板25の厚さを0.08mmとし、負極の活物質非被覆部22Cの厚さを10μmとし、負極側での活物質非被覆部の重なり枚数nを2とした。
【0064】
[比較例4]
正極のビード幅を0.69mmとし、正極集電板24の厚さを0.15mmとし、正極の活物質非被覆部21Cの厚さを10μmとし、正極側での活物質非被覆部の重なり枚数mを2とし、負極のビード幅を0.63mmとし、負極集電板25の厚さを0.08mmとし、負極の活物質非被覆部22Cの厚さを10μmとし、負極側での活物質非被覆部の重なり枚数nを3とした。
【0065】
[比較例5]
正極のビード幅を1.20mmとし、正極集電板24の厚さを0.15mmとし、正極の活物質非被覆部21Cの厚さを10μmとし、正極側での活物質非被覆部の重なり枚数mを2とし、負極のビード幅を0.80mmとし、負極集電板25の厚さを0.08mmとし、負極の活物質非被覆部22Cの厚さを10μmとし、負極側での活物質非被覆部の重なり枚数nを2とした。
【0066】
[比較例6]
正極のビード幅を0.40mmとし、正極集電板24の厚さを0.25mmとし、正極の活物質非被覆部21Cの厚さを10μmとし、正極側での活物質非被覆部の重なり枚数mを2とし、負極のビード幅を0.38mmとし、負極集電板25の厚さを0.20mmとし、負極の活物質非被覆部22Cの厚さを10μmとし、負極側での活物質非被覆部の重なり枚数nを2とした。
【0067】
[比較例7]
正極のビード幅を0.10mmとし、正極集電板24の厚さを0.15mmとし、正極の活物質非被覆部21Cの厚さを30μmとし、正極側での活物質非被覆部の重なり枚数mを3とし、負極のビード幅を0.06mmとし、負極集電板25の厚さを0.08mmとし、負極の活物質非被覆部22Cの厚さを30μmとし、負極側での活物質非被覆部の重なり枚数nを2とした。
【0068】
[比較例8]
正極のビード幅を0.10mmとし、正極集電板24の厚さを0.05mmとし、正極の活物質非被覆部21Cの厚さを10μmとし、正極側での活物質非被覆部の重なり枚数mを2とし、負極のビード幅を0.06mmとし、負極集電板25の厚さを0.03mmとし、負極の活物質非被覆部22Cの厚さを10μmとし、負極側での活物質非被覆部の重なり枚数nを2とした。
【0069】
[比較例9]
正極のビード幅を0.02mmとし、正極集電板24の厚さを0.15mmとし、正極の活物質非被覆部21Cの厚さを10μmとし、正極側での活物質非被覆部の重なり枚数mを0とし、負極のビード幅を0.02mmとし、負極集電板25の厚さを0.08mmとし、負極の活物質非被覆部22Cの厚さを10μmとし、負極側での活物質非被覆部の重なり枚数nを0とした。
【0070】
[評価]
上記の実施例及び比較例について、穴あき面積比率と電池の内部抵抗と活物質非被覆部の重なり枚数を求めた。レーザー溶接を行った後に、顕微鏡(キーエンス製レーザー顕微鏡VK-Xシリーズ)を用いて集電板を観察し、レーザー溶接痕51全体の面積(すなわちビード幅と溶接長6mmと溶接本数6との積であって、穴あき面積を含む面積)を求めた。次に、貫通孔があいたと認められる全ての部分の面積を合計して穴あき面積とし、レーザー溶接痕51全体の面積に対する比率(%)を算出した。正極集電板24と正極の活物質非被覆部21Cとをレーザー溶接した結果から求めた穴あき面積比率を正極の穴あき面積比率と称し、負極集電板25と負極の活物質非被覆部22Cとをレーザー溶接した結果から求めた穴あき面積比率を負極の穴あき面積比率と称した。
電池の内部抵抗は、直流抵抗(DCR)の値であり、放電電流を5秒間で0Aから100Aまで上昇させたときの電圧値の傾きを算出したものである。電池の内部抵抗が、10.5mΩ以下である例を判定がOKであるとし、10.5mΩより大きい例を判定がNGであるとした。結果を表1に示す。
【0071】
[表1]
【0072】
実施例1から実施例9では、正極の穴あき面積比率と負極の穴あき面積比率が0%であり、電池の内部抵抗が10.5mΩ以下であった(判定がOK)のに対し、比較例1から比較例7では、正極の穴あき面積比率と負極の穴あき面積比率が0%とならず、電池の内部抵抗が10.5mΩより大きかった(判定がNG)。比較例8と比較例9では穴あき面積比率が0%となったが、電池の内部抵抗が10.5mΩより大きかった(判定がNG)。
【0073】
比較例1では、図7に示されるように、活物質非被覆部の重なり枚数が1であり、折り曲げられた活物質非被覆部21C,22Cの間に隙間があるから、穴あきやスパッタが発生したと考えられる。比較例2から比較例6では、図8に示されるように、穴あき53が発生した。図8はレーザー溶接痕の位置を説明する為に、集電板を通して巻回体の端面および溝を透視するように表現した模式図である。図8の黒色の太実線部で示される部分はレーザー溶接痕51であり、白色の部分はレーザー溶接によってできた穴あき53の部分である。これは、溶接エネルギーが大きすぎるためと考えられる。比較例7では、レーザー溶接をした結果、穴あき53が発生した。これは、活物質非被覆部21C,22Cの厚さが大きすぎるためと考えられる。比較例8では、正極の穴あき面積比率と負極の穴あき面積比率が0%であるが、電池の内部抵抗は10.5mΩより大きかった。これは、集電板24,25の厚さが比較的小さいからと考えられる。比較例9では、レーザー溶接を試みたが未溶接となった。これは、溶接エネルギーが比較的小さいためと考えられる。
【0074】
実施例1から実施例9では、レーザー溶接に成功した。実施例1から実施例9の正極のビード幅は0.05mm以上0.18mm以下であり、正極集電板24の厚さは0.07mm以上0.20mm以下であり、負極のビード幅は0.03mm以上0.12mm以下であり、負極集電板25の厚さは0.05mm以上0.15mm以下であり、正極側での活物質非被覆部の重なり枚数mと負極側での活物質非被覆部の重なり枚数nはそれぞれ2以上であった。実施例1から実施例9の正極の活物質非被覆部21Cの厚さは5μm以上20μm以下であり、負極の活物質非被覆部22Cの厚さは6μm以上20μm以下であった。このとき、電池1の内部抵抗は全て10.5mΩ以下であった。
【0075】
<2.変形例>
以上、本発明の一実施の形態について具体的に説明したが、本発明の内容は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0076】
一実施の形態では、図5に示されるように、隣り合う溝43の間ごとに1本ずつのレーザー溶接痕を配置したが、図9に示されるように、隣り合う溝43の間ごとに複数本のレーザー溶接痕を配置してもよい。図9はレーザー溶接痕の位置を説明する為に、集電板を通して巻回体の端面および溝を透視するように表現した模式図である。図8の黒色の太実線部で示される部分はレーザー溶接痕51である。この場合、レーザー溶接痕の面積がより増えるので、電池の内部抵抗がより低くなる。
【0077】
実施例及び比較例では、溝43の数を8としていたが、これ以外の数であってもよい。電池サイズを21700(直径21mm、高さ70mm)としていたが、18650(直径18mm、高さ65mm)やこれら以外のサイズであってもよい。
正極集電板24と負極集電板25は、扇形の形状をした板状部31,33を備えていたが、それ以外の形状であってもよい。
【0078】
本発明の趣旨を逸脱しない限り、本発明は、リチウムイオン電池以外の他の電池や、円筒形状以外の電池(例えば、ラミネート型電池、角型電池、コイン型電池、ボタン型電池)に適用することも可能である。この場合において、「電極巻回体の端面」の形状は、円筒形状のみならず、楕円形状や扁平形状なども採り得る。
【0079】
<3.応用例>
(1)電池パック
図10は、本発明の実施形態又は実施例にかかる電池1を電池パック300に適用した場合の回路構成例を示すブロック図である。電池パック300は、組電池301、充電制御スイッチ302aと、放電制御スイッチ303a、を備えるスイッチ部304、電流検出抵抗307、温度検出素子308、制御部310を備えている。制御部310は各デバイスの制御を行い、さらに異常発熱時に充放電制御を行ったり、電池パック300の残容量の算出や補正を行ったりすることが可能である。電池パック300の正極端子321及び負極端子322は、充電器や電子機器に接続され、充放電が行われる。
【0080】
組電池301は、複数の二次電池301aを直列及び/又は並列に接続してなる。図10では、6つの二次電池301aが、2並列3直列(2P3S)に接続された場合が例として示されている。
【0081】
温度検出部318は、温度検出素子308(例えばサーミスタ)と接続されており、組電池301又は電池パック300の温度を測定して、測定温度を制御部310に供給する。電圧検出部311は、組電池301及びそれを構成する各二次電池301aの電圧を測定し、この測定電圧をA/D変換して、制御部310に供給する。電流測定部313は、電流検出抵抗307を用いて電流を測定し、この測定電流を制御部310に供給する。
【0082】
スイッチ制御部314は、電圧検出部311及び電流測定部313から入力された電圧及び電流をもとに、スイッチ部304の充電制御スイッチ302a及び放電制御スイッチ303aを制御する。スイッチ制御部314は、二次電池301aが過充電検出電圧(例えば4.20V±0.05V)以上若しくは過放電検出電圧(2.4V±0.1V)以下になったときに、スイッチ部304にOFFの制御信号を送ることにより、過充電又は過放電を防止する。
【0083】
充電制御スイッチ302a又は放電制御スイッチ303aがOFFした後は、ダイオード302b又はダイオード303bを介することによってのみ、充電又は放電が可能となる。これらの充放電スイッチは、MOSFETなどの半導体スイッチを使用することができる。なお、図10では+側にスイッチ部304を設けているが、-側に設けても良い。
【0084】
メモリ317は、RAMやROMからなり、制御部310で演算された電池特性の値や、満充電容量、残容量などが記憶され、書き換えられる。
【0085】
(2)電子機器
上述した本発明の実施形態又は実施例に係る電池1は、電子機器や電動輸送機器、蓄電装置などの機器に搭載され、電力を供給するために使用することができる。
【0086】
電子機器としては、例えばノート型パソコン、スマートフォン、タブレット端末、PDA(携帯情報端末)、携帯電話、ウェアラブル端末、デジタルスチルカメラ、電子書籍、音楽プレイヤー、ゲーム機、補聴器、電動工具、テレビ、照明機器、玩具、医療機器、ロボットが挙げられる。また、後述する電動輸送機器、蓄電装置、電動工具、電動式無人航空機も、広義では電子機器に含まれ得る。
【0087】
電動輸送機器としては電気自動車(ハイブリッド自動車を含む。)、電動バイク、電動アシスト自転車、電動バス、電動カート、無人搬送車(AGV)、鉄道車両などが挙げられる。また、電動旅客航空機や輸送用の電動式無人航空機も含まれる。本発明に係る二次電池は、これらの駆動用電源のみならず、補助用電源、エネルギー回生用電源などとしても用いられる。
【0088】
蓄電装置としては、商業用又は家庭用の蓄電モジュールや、住宅、ビル、オフィスなどの建築物用又は発電設備用の電力貯蔵用電源などが挙げられる。
【0089】
(3)電動工具
図11を参照して、本発明が適用可能な電動工具として電動ドライバの例について概略的に説明する。電動ドライバ431には、シャフト434に回転動力を伝達するモータ433と、ユーザが操作するトリガースイッチ432が設けられている。電動ドライバ431の把手の下部筐体内に、本発明に係る電池パック430及びモータ制御部435が収納されている。電池パック430は、電動ドライバ431に対して内蔵されているか、又は着脱自在とされている。電池パック430を構成する電池に、本発明の電池1を適用できる。
【0090】
電池パック430及びモータ制御部435のそれぞれには、マイクロコンピュータ(図示せず)が備えられており、電池パック430の充放電情報が相互に通信できるようにしてもよい。モータ制御部435は、モータ433の動作を制御すると共に、過放電などの異常時にモータ433への電源供給を遮断することができる。
【0091】
(4)電動車両用蓄電システム
本発明を電動車両用の蓄電システムに適用した例として、図12に、シリーズハイブリッドシステムを採用したハイブリッド車両(HV)の構成例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンを動力とする発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0092】
このハイブリッド車両600には、エンジン601、発電機602、電力駆動力変換装置603(直流モータ又は交流モータ。以下単に「モータ603」という。)、駆動輪604a、駆動輪604b、車輪605a、車輪605b、バッテリ608、車両制御装置609、各種センサ610、充電口611が搭載されている。バッテリ608としては、本発明の電池パック300、又は本発明の電池1を複数搭載した蓄電モジュールが適用され得る。
【0093】
バッテリ608の電力によってモータ603が作動し、モータ603の回転力が駆動輪604a、604bに伝達される。エンジン601によって産み出された回転力によって、発電機602で生成された電力をバッテリ608に蓄積することが可能である。各種センサ610は、車両制御装置609を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度を制御したりする。
【0094】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両600が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ603に回転力として加わり、この回転力によって生成された回生電力がバッテリ608に蓄積される。またバッテリ608は、ハイブリッド車両600の充電口611を介して外部の電源に接続されることで充電することが可能である。このようなHV車両を、プラグインハイブリッド車(PHV又はPHEV)という。
【0095】
なお、本発明に係る二次電池を小型化された一次電池に応用して、車輪604、605に内蔵された空気圧センサシステム(TPMS: Tire Pressure Monitoring system)の電源として用いることも可能である。
【0096】
以上では、シリーズハイブリッド車を例として説明したが、エンジンとモータを併用するパラレル方式、又は、シリーズ方式とパラレル方式を組み合わせたハイブリッド車に対しても本発明は適用可能である。さらに、エンジンを用いない駆動モータのみで走行する電気自動車(EV又はBEV)や、燃料電池車(FCV)に対しても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0097】
1・・・リチウムイオン電池,12・・・絶縁板,21・・・正極,21A・・・正極箔,21B・・・正極活物質被覆部,21C・・・正極の活物質非被覆部,22・・・負極,22A・・・負極箔,22B・・・負極活物質被覆部,22C・・・負極の活物質非被覆部,23・・・セパレータ,24・・・正極集電板,25・・・負極集電板,26・・・貫通孔,27,28・・・外縁部,41,42・・・端面,43・・・溝,51・・・レーザー溶接痕
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12