(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】集電体、蓄電素子及び蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 4/66 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
H01M4/66 A
(21)【出願番号】P 2022510388
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014259
(87)【国際公開番号】W WO2021192289
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【氏名又は名称】荻野 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】野島 昭信
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-129114(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0315537(US,A1)
【文献】特開2019-186204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面と反対側を向く第2面と、を有する樹脂層と、
前記樹脂層の前記第1面上にあ
り、正極集電体として機能する第1金属層と、
前記樹脂層の前記第2面上にあ
り、負極集電体として機能する第2金属層と、を有し、
前記第1金属層は第1開口を有
し、
前記第1開口は、外部との電気的な接続を担う金属板を接合する前記第2金属層の金属板接合箇所と対向する位置にある、集電体。
【請求項2】
前記第1金属層は、第1領域と第2領域とを有し、
前記第1領域と前記第2領域とは、前記第1開口で分離されている、請求項
1に記載の集電体。
【請求項3】
前記第2金属層は、第2開口を有する、請求項1
又は2に記載の集電体。
【請求項4】
前記第2開口は、外部との電気的な接続を担う金属板を接合する前記第1金属層の金属板接合箇所と対向する位置にある、請求項
3に記載の集電体。
【請求項5】
前記第2金属層は、第3領域と第4領域とを有し、
前記第3領域と前記第4領域とは、前記第2開口で分離されている、請求項
3又は
4に記載の集電体。
【請求項6】
前記樹脂層は、1.0×10
9Ω・cm以上の絶縁層である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の集電体。
【請求項7】
前記樹脂層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)からなる群から選択されるいずれかを含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の集電体。
【請求項8】
前記第1金属層と前記第2金属層とはそれぞれ、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、銅、白金、金から選択されるいずれかである、請求項1~
7のいずれか一項に記載の集電体。
【請求項9】
前記第1金属層と前記第2金属層とは、異なる金属又は合金を含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の集電体。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の集電体と、前記集電体の第1面に形成された第1活物質層と、前記集電体の第1面と反対側の第2面に形成された第2活物質層と、前記第1活物質層又は前記第2活物質層の一面に積層されたセパレータ又は固体電解質層と、を備える、蓄電素子。
【請求項11】
請求項
10に記載の蓄電素子を備える、蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集電体、蓄電素子及び蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、携帯電話、ノートパソコン等のモバイル機器やハイブリットカー等の動力源としても広く用いられている。これらの分野の発展と共に、リチウムイオン二次電池は、より高い性能が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、樹脂集電体が記載されている。樹脂集電体は、樹脂層と、その両面に形成された金属層と、からなる。樹脂集電体を用いた二次電池は、二次電池の重量当たりの出力密度が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓄電電池内部で生じた電力は、集電体に接続されたタブを介して外部に出力される。タブは、集電体に接着、溶着、ねじ止め等で接続される。樹脂集電体の樹脂層は金属と比較して強度が弱く、タブを接続する際に樹脂層が破損し、樹脂層を挟む2つの金属層が短絡する場合がある。
【0006】
本開示は上記問題に鑑みてなされたものであり、短絡しにくい集電体及び蓄電素子、それを用いた蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0008】
(1)第1の態様にかかる集電体は、第1面と、前記第1面と反対側を向く第2面と、を有する樹脂層と、前記樹脂層の前記第1面上にある第1金属層と、前記樹脂層の前記第2面上にある第2金属層と、を有し、前記第1金属層は第1開口を有する。
【0009】
(2)上記態様にかかる集電体において、前記第1開口は、外部との電気的な接続を担う金属板を接合する前記第2金属層の金属板接合箇所と対向する位置にあってもよい。
【0010】
(3)上記態様にかかる集電体において、前記第1金属層は、第1領域と第2領域とを有し、前記第1領域と前記第2領域とは、前記第1開口で分離されていてもよい。
【0011】
(4)上記態様にかかる集電体において、前記第2金属層は、第2開口を有してもよい。
【0012】
(5)上記態様にかかる集電体において、前記第2開口は、外部との電気的な接続を担う金属板を接合する前記第1金属層の金属板接合箇所と対向する位置にあってもよい。
【0013】
(6)上記態様にかかる集電体において、前記第2金属層は、第3領域と第4領域とを有し、前記第3領域と前記第4領域とは、前記第2開口で分離されていてもよい。
【0014】
(7)上記態様にかかる集電体において、前記樹脂層は、1.0×109Ω・cm以上の絶縁層であってもよい。
【0015】
(8)上記態様にかかる集電体において、前記樹脂層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)からなる群から選択されるいずれかを含んでもよい。
【0016】
(9)上記態様にかかる集電体において、前記第1金属層と前記第2金属層とはそれぞれ、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、銅、白金、金から選択されるいずれかであってもよい。
【0017】
(10)上記態様にかかる集電体において、前記第1金属層と前記第2金属層とは、異なる金属又は合金を含んでもよい。
【0018】
(11)第2の態様にかかる蓄電素子は、上記態様にかかる集電体と、前記集電体の第1面に形成された第1電極と、前記集電体の第1面と反対側の第2面に形成された第2電極と、前記第1電極又は前記第2電極の一面に積層されたセパレータ又は固体電解質層と、を備える。
【発明の効果】
【0019】
上記態様に係る集電体及び蓄電素子は、短絡を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る蓄電素子の模式図である。
【
図3】第1実施形態に係る電極体を展開した断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る集電体の特徴部分を拡大した断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る集電体の特徴部分を拡大した平面図である。
【
図6】第1変形例に係る集電体の特徴部分を拡大した平面図である。
【
図7】第2変形例に係る集電体の特徴部分を拡大した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0022】
以下、添付された図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【0023】
本発明の実施例は当該技術分野の当業者に本発明を詳細に説明するために提供されるものであり、下記の実施例は多様な他の形態に変形され得、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
【0024】
また、以下の図面において各層の厚さや大きさは説明の便宜および明確性のために記載されたものであり、図面上で同一符号は同じ要素を指し示すものである。本明細書で使われた通り、用語「および/または」は該当列挙された項目のうちいずれか一つおよび一つ以上のすべての組み合わせを含むものである。
【0025】
本明細書で使われた用語は特定の実施例を説明するために使われるものであって、本発明を制限するためのものではない。本明細書で使われた通り、単数の形態は文脈上異なる場合を明確に指摘しない限り、複数の形態を含むことができる。また、本明細書で使われる場合、「含む」は言及した形状、数字、段階、動作、部材、要素および/またはこれらのグループの存在を特定するものであり、一つ以上の他の形状、数字、動作、部材、要素および/またはグループの存在または付加を排除するものではない。
【0026】
「下部」、「下」、「低い」、「上部」、「上」、「左」、「右」のような空間と関連した用語が、図面に図示された一つの要素または特徴と他の要素または特徴の容易な理解のために利用され得る。このような空間と関連した用語は本発明の多様な工程状態または使用状態により本発明を容易に理解するためのものであって、本発明を限定するためのものではない。例えば、図面の要素または特徴がひっくり返されると、「下部」または「下」で説明された要素または特徴は「上部」または「の上に」となる。したがって、「下部」は「上部」または「下」を包括する概念である。また図面の要素を見る方向によっては、「左」と「右」が反転する場合がある。
【0027】
「第1実施形態」
図1は、本実施形態にかかる蓄電素子の模式図である。蓄電素子200は、例えば、非水電解液二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池である。
図1では、理解を容易にするために、電極体100が外装体C内に収容される直前の状態を図示している。
【0028】
蓄電素子200は、電極体100と外装体Cとを備える。電極体100の構造については後述する。電極体100は、電解液と共に、外装体Cの収容空間Kに収容される。電極体100は、外部との電気的な接続を担うタブt1、t2を有する。タブt1、t2は、外装体Cの内部から外部に突出する。
【0029】
タブt1、t2は金属を含んで構成される。金属としては、例えばアルミニウム、銅、ニッケル、SUS等である。
【0030】
タブt1、t2は、例えば第1方向視(後述するz方向からの平面視)で矩形であるが、同形状に限らず種々形状を採用可能である。
【0031】
外装体Cは、その内部に電極体100及び電解液を密封するものである。外装体Cは、電解液の外部への漏出や、外部からの電極体100への水分等の侵入等を抑止する。
【0032】
外装体Cは、例えば、金属箔を高分子膜で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムである。金属箔は例えばアルミ箔であり、高分子膜は、例えばポリプロピレン等の樹脂である。外側の高分子膜は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等であり、内側の高分子膜は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等である。熱により溶着しやすくするために、内側の高分子膜は、例えば、外側の高分子膜より融点が低い。
【0033】
外装体Cと電極体100との間には、粘着性物質を含む粘着層を有してもよい。外装体Cは、電極体100の最外面を覆う。外装体Cの内面は、電極体100の最外面と対向する。粘着層は、例えば、外装体Cの電極体100と対向する面(内面)、電極体100の外装体Cと対向する面(電極体の最外面)にある。粘着層は、例えば、電解液耐性のある両面テープ等である。粘着層は、例えば、ポリプロピレン基材にポリイソブチレンゴムの粘着層が形成されたもの、ブチルゴム等のゴム、飽和炭化水素樹脂等でもよい。粘着層は、電極体100が外装体C内部で動くことを抑制する。また粘着層は、釘等の金属体が刺さった場合においても、釘等の金属体に粘着性物質が纏わりつくことで、短絡を抑制する。
【0034】
電解液は、例えば、リチウム塩等を含む非水電解液である。電解液は、非水溶媒に電解質が溶解されたものであり、非水溶媒として環状カーボネートと鎖状カーボネートとを含有してもよい。
【0035】
環状カーボネートは、電解質を溶媒和する。環状カーボネートは、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネートなどである。鎖状カーボネートは、環状カーボネートの粘性を低下させる。鎖状カーボネートは、例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートである。鎖状カーボネートとして、その他、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタンなどを混合して使用してもよい。環状カーボネートと鎖状カーボネートとの割合は、例えば、体積比にして1:9~1:1である。
【0036】
非水溶媒は、例えば、環状カーボネート又は鎖状カーボネートの水素の一部がフッ素に置換されたものでもよい。非水溶媒は、例えば、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート等を有してもよい。
【0037】
電解質は、例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、LiCF3CF2SO3、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3CF2SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiN(CF3CF2CO)2、LiBOB等のリチウム塩である。これらのリチウム塩は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。電離度の観点から、電解質としてLiPF6を含むことが好ましい。
【0038】
LiPF6を非水溶媒に溶解する際は、電解液中の電解質の濃度を、例えば、0.5~2.0mol/Lに調整する。電解質の濃度が0.5mol/L以上であると、非水電解液のリチウムイオン濃度を充分に確保することができ、充放電時に十分な容量が得られやすい。また、電解質の濃度が2.0mol/L以内に抑えることで、非水電解液の粘度上昇を抑え、リチウムイオンの移動度を充分に確保することができ、充放電時に十分な容量が得られやすくなる。
【0039】
LiPF6をその他の電解質と混合する場合にも、例えば、非水電解液中のリチウムイオン濃度が0.5~2.0mol/Lに調整し、LiPF6からのリチウムイオン濃度がその50mol%以上であることが好ましい。
【0040】
非水溶媒は、例えば、常温溶融塩を有してもよい。常温溶融塩は、カチオンとアニオンの組合せによって得られる100℃未満でも液体状の塩である。常温溶融塩は、イオンのみからなる液体であるため、静電的な相互作用が強く、不揮発性、不燃性と言う特徴を有する。
【0041】
常温溶融塩のカチオン成分としては、窒素を含む窒素系カチオン、リンを含むリン系カチオン、硫黄を含む硫黄系カチオンなどが挙げられる。これらのカチオン成分は、1種を単独で含んでいてもよいし、2種以上を組合せて含んでいてもよい。
【0042】
窒素系カチオンとしては、イミダゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、アゾニアスピロカチオンなど鎖状または環状のアンモニウムカチオンが挙げられる。
【0043】
リン系カチオンとしては、鎖状または環状のホスホニウムカチオンが挙げられる。
【0044】
硫黄系カチオンの例としては、鎖状または環状のスルホニウムカチオンが挙げられる。
【0045】
カチオン成分としては、特に、リチウムイミド塩を溶解させた際に、高いリチウムイオン伝導を有し、かつ広い酸化還元耐性をもつため、窒素系カチオンであるN-メチル-N-プロピル-ピロリジニウム(P13)が好ましい。
【0046】
常温溶融塩のアニオン成分としては、AlCl4
-、NO2
-、NO3
-、I-、BF4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-、NbF6
-、TaF6
-、F(HF)2.3
-、p-CH3PhSO3
-、CH3CO2
-、CF3CO2
-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、(CF3SO2)3C-、C3F7CO2
-、C4F9SO3
-、(FSO2)2N-(ビス(フルオロスルホニル)イミド:FSI)、(CF3SO2)2N-(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド:TFSI)、(C2F5SO2)2N-(ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド)、(CF3SO2)(CF3CO)N-((トリフルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンカルボニル)イミド)、(CN)2N-(ジシアノイミド)等が挙げられる。これらのアニオン成分は、1種を単独で含んでいてもよいし、2種以上を組合せて含んでいてもよい。
【0047】
図2は、第1実施形態にかかる電極体100の断面図である。
図2は、電極体100の巻軸方向と直交する電極体100の断面である。電極体100は、集電体10と正極活物質層20と負極活物質層30とセパレータ40とが巻回されたものである。電極体100は、例えば、セパレータ40、負極活物質層30、集電体10、正極活物質層20の順に、巻き内側から巻き外側に向かって、繰り返す。負極活物質層30は、例えば、正極活物質層20より巻き内側にある。負極活物質層30が巻き内側にあると、蓄電素子200のエネルギー密度が高まる。負極活物質層30の重量は、正極活物質層20の重量より軽い場合が多く、巻き内側で負極同士が対向した場合でも、重量エネルギー密度の損失が少ないためである。
【0048】
図3は、第1実施形態にかかる電極体100を展開した断面図である。電極体100は、例えば、
図3の左端を巻き中心として巻回されている。
【0049】
電極体100を展開した展開体において、各層の積層方向をz方向とする。第2金属層13から第1金属層12へ向かう方向を+z方向、+z方向と反対の方向を-z方向とする。電極体100を展開した展開体の広がる面内の一方向をx方向とし、x方向と直交する方向をy方向とする。x方向は、例えば、電極体100を展開した展開体の長さ方向である。y方向は、例えば、電極体100を展開した展開体の幅方向である。
【0050】
電極体100は、集電体10と正極活物質層20と負極活物質層30とセパレータ40とを有する。正極活物質層20は、集電体10の第1面10a側に形成されている。負極活物質層30は、集電体10の第2面10b側に形成されている。第2面10bは、集電体10において、第1面10aの反対側の面である。集電体10は、第1面10aと、第1面10とは反対側を向く第2面20と、を有する。正極活物質層20は、第1活物質層の一例である。負極活物質層30は、第2活物質層の一例である。セパレータ40は、正極活物質層20又は負極活物質層30に接する。セパレータ40は、電極体100が巻回された状態において、正極活物質層20と負極活物質層30との間にある。
【0051】
集電体10は、樹脂層11と第1金属層12と第2金属層13とを有する。第1金属層12は、樹脂層11の第1面11a側に形成されている。第2金属層13は、樹脂層11の第2面11b側に形成されている。第2面11bは、樹脂層11において第1面11aと反対側の面である。第1金属層12は、例えば、正極集電体である。第2金属層13は、例えば、負極集電体である。例えば、第1金属層12の樹脂層11と反対側の面に正極活物質層20が形成されている。この場合、第1金属層12と正極活物質層20とで正極となる。例えば、第2金属層13の樹脂層11と反対側の面に負極活物質層30が形成されている。この場合、第2金属層13と負極活物質層30とで負極となる。第1金属層12と第2金属層13との関係が反対であり、第1金属層12が負極集電体で、第2金属層13が正極集電体でもよい。第1金属層12、第2金属層は、導電層であればよい。
【0052】
樹脂層11は、絶縁性を有する材料を含んで構成されている。本明細書において、絶縁性とは、抵抗値が1.0×109Ω・cm以上を意味する。樹脂層11は、例えば、絶縁性を有する絶縁層である。樹脂層11は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)からなる群から選択されるいずれかを含む。樹皮層11は、上記の材料に限られない。樹脂層11は、例えば、PETフィルムである。樹脂層11の厚みは、例えば、3μm以上9μm以下であり、好ましくは4μm以上6μm以下である。
【0053】
第1金属層12と第2金属層13とは、それぞれ、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、銅、白金、金から選択されるいずれかである。第1金属層12と第2金属層13とは、それぞれこれらの材料に限られない。第1金属層12と第2金属層13とは、例えば、異なる金属又は合金を含む。第1金属層12は、例えば、アルミニウムであり、第2金属層13は、例えば、銅である。第1金属層12と第2金属層13とは、同じ材質からなってもよい。例えば、第1金属層12と第2金属層13は、いずれもアルミニウムである。第1金属層12と第2金属層13の具体的な構成は、後述する。
【0054】
第1金属層12と第2金属層13とは、両方ともがアルミニウムである構成、または第1金属層12と第2金属層13とのうち一方がアルミニウムで他方が銅である構成が好ましい。
【0055】
第1金属層12と第2金属層13との厚みは同じであってもよく、違っていてもよい。第1金属層12と第2金属層13の厚みは、例えば、0.3μm以上2μm以下であることが好ましく、0.4μm以上1μm以下であることが好ましい。
【0056】
第1金属層12は、例えば、樹脂層11より厚い。第1金属層12が樹脂層11より厚いと、重量エネルギー密度が向上し、柔軟性低下が抑制される。
【0057】
第2金属層13は、例えば、樹脂層11より厚い。第2金属層13が樹脂層11より厚いと、重量エネルギー密度が向上し、柔軟性低下が抑制される。
【0058】
また第1金属層12の厚みと、第2金属層13の厚みとの和に対して樹脂層11の厚みが厚くてもよい。当該構成を満たすと、集電体10の柔軟性低下をより抑制することができる。また、集電体10における割合として比重が低い樹脂層11の比率が増えることで、これを用いた蓄電素子の重量エネルギー密度が向上する。
【0059】
正極活物質層20は、例えば、正極活物質と導電助材とバインダーとを有する。
【0060】
正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンとカウンターアニオンのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることができる。
【0061】
正極活物質は、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn2O4)、及び、一般式:LiNixCoyMnzMaO2(x+y+z+a=1、0≦x<1、0≦y<1、0≦z<1、0≦a<1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV2O5)、オリビン型LiMPO4(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素又はVOを示す)、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)、LiNixCoyAlzO2(0.9<x+y+z<1.1)等の複合金属酸化物、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセンなどである。また正極活物質は、これらを混合したものでもよい。
【0062】
導電助材は、正極活物質層内に点在している。導電助材は、正極活物質層における正極活物質の間の導電性を高める。導電助材は、例えば、カーボンブラック類等のカーボン粉末、カーボンナノチューブ、炭素材料、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、ITO等の導電性酸化物である。導電助材は、カーボンブラック等の炭素材料が好ましい。活物質で十分な導電性を確保できる場合は、正極活物質層20は導電助材を含まなくてもよい。
【0063】
バインダーは、正極活物質層における正極活物質同士を結合する。バインダーは、公知のものを用いることができる。バインダーは、例えば、フッ素樹脂である。フッ素樹脂は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等である。
【0064】
上記の他に、バインダーは、例えば、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-HFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-パーフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFMVE-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴムでもよい。
【0065】
正極活物質層20は、例えば、集電体10よりも厚い。当該構成を満たすとにより、集電体10を用いた蓄電素子の容量と、体積エネルギー密度がより高まる。
【0066】
充放電反応に起因しない集電体10に対して、充放電反応に起因する正極活物質層20の厚みを厚くすることで、蓄電素子内の容量ロスがより低減される。また、集電体10の厚みが正極活物質層20の厚みに対して厚い場合、柔軟性の高い集電体10の占める割合が大きくなることから、これを用いて作製した電極体100の剛性が低下し、電極体100が変形しやすくなる。
【0067】
負極活物質層30は、負極活物質を含む。また必要に応じて、導電助材、バインダー、固体電解質を含んでもよい。
【0068】
負極活物質は、イオンを吸蔵・放出可能な化合物であればよく、公知のリチウムイオン二次電池に用いられる負極活物質を使用できる。負極活物質は、例えば、金属リチウム、リチウム合金、イオンを吸蔵・放出可能な黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、カーボンナノチューブ、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等の炭素材料、アルミニウム、シリコン、スズ、ゲルマニウム等のリチウム等の金属と化合することのできる半金属または金属、SiOx(0<x<2)、二酸化スズ等の酸化物を主体とする非晶質の化合物、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)等を含む粒子である。
【0069】
負極活物質層30は、上述のように例えば、シリコン、スズ、ゲルマニウムを含んでもよい。シリコン、スズ、ゲルマニウムは、単体元素として存在してもよいし、化合物として存在してもよい。化合物は、例えば、合金、酸化物等である。一例として、負極活物質がシリコンの場合、負極はSi負極と呼ばれることがある。負極活物質は、例えば、シリコン、スズ、ゲルマニウムの単体又は化合物と炭素材との混合系でもよい。炭素材は、例えば天然黒鉛である。また負極活物質は、例えば、シリコン、スズ、ゲルマニウムの単体又は化合物の表面が炭素で被覆されたものでもよい。炭素材及び被覆された炭素は、負極活物質と導電助剤との間の導電性を高める。負極活物質層がシリコン、スズ、ゲルマニウムを含むと、蓄電素子200の容量が大きくなる。
【0070】
負極活物質層30は、上述のように例えば、リチウムを含んでもよい。リチウムは、金属リチウムでもリチウム合金でもよい。負極活物質層30は、金属リチウム又はリチウム合金でもよい。リチウム合金は、例えば、Si、Sn、C、Pt、Ir、Ni、Cu、Ti、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Alからなる群から選択される1種以上の元素と、リチウムと、の合金である。一例として、負極活物質が金属リチウムの場合、負極はLi負極と呼ばれることがある。負極活物質層30は、リチウムのシートでもよい。
【0071】
負極は、作製時に負極活物質層30を有さずに、負極集電体(第2金属層13)のみであってもよい。蓄電素子200を充電すると、負極集電体の表面に金属リチウムが析出する。金属リチウムはリチウムイオンが析出した単体のリチウムであり、金属リチウムは負極活物質層として機能する。
【0072】
導電助材及びバインダーは、正極活物質層20と同様のものを用いることができる。負極活物質層30におけるバインダーは、正極活物質層20に挙げたものの他に、例えば、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂等でもよい。セルロースは、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)でもよい。
【0073】
負極活物質層30は、例えば、集電体10よりも厚い。当該構成を満たすと、集電体10を用いた蓄電素子の容量と、体積エネルギー密度がより高まる。
【0074】
充放電反応に起因しない集電体10に対して、充放電反応に起因する負極活物質層30の厚みを厚くすることで、蓄電素子内の容量ロスがより低減される。また、集電体10の厚みが負極活物質層30の厚みに対して厚い場合、柔軟性の高い集電体10の占める割合が大きくなることから、これを用いて作製した電極体100の剛性が低下し、電極体100が変形しやすくなる。
【0075】
セパレータ40は、例えば、電気絶縁性の多孔質構造を有する。セパレータ40は、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィンからなるフィルムの単層体、積層体や上記樹脂の混合物の延伸膜、或いはセルロース、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の構成材料からなる繊維不織布が挙げられる。
【0076】
セパレータ40の厚みは、例えば、樹脂層11の厚みよりも厚い。また、セパレータ40の厚みは、例えば、集電体10の厚みよりも厚い。より厚みの厚いセパレータを用いることで、セパレータが優先的に絶縁することによって、集電体10において起こりえる第1金属層12と第2金属層13との短絡を抑制することが可能となる。
【0077】
セパレータ40に変えて、固体電解質層を設けてもよい。固体電解質層を用いる場合は、電解液が不要となる。固体電解質層とセパレータ40とを併用してもよい。
【0078】
固体電解質は、例えば、イオン電導度が1.0×10-8S/cm以上1.0×10-2S/cm以下のイオン導電膜である。固体電解質は、例えば、高分子固体電解質、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質である。高分子固体電解質は、例えば、ポリエチレンオキサイド系高分子にアルカリ金属塩を溶解させたものである。酸化物系固体電解質は、例えば、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3(ナシコン型)、Li1.07Al0.69Ti1.46(PO4)3(ガラスセラミックス)、Li0.34La0.51TiO2.94(ペロブスカイト型)、Li7La3Zr2O12(ガーネット型)、Li2.9PO3.3N0.46(アモルファス、LIPON)、50Li4SiO4・50Li2BO3(ガラス)、90Li3BO3・10Li2SO4(ガラスセラミックス)である。硫化物系固体電解質は、例えば、Li3.25Ge0.25P0.75S4(結晶)、Li10GeP2S12(結晶、LGPS)、Li6PS5Cl(結晶、アルジロダイト型)、Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3(結晶)、Li3.25P0.95S4(ガラスセラミックス)、Li7P3S11(ガラスセラミックス)、70Li2S・30P2S5(ガラス)、30Li2S・26B2S3・44LiI(ガラス)、50Li2S・17P2S5・33LiBH4(ガラス)、63Li2S・36SiS2・Li3PO4(ガラス)、57Li2S・38SiS2・5Li4SiO4(ガラス)である。
【0079】
図4は、第1実施形態に係る集電体10の特徴部分を拡大した平面図である。
図5は、第1実施形態に係る集電体10の特徴部分を拡大した断面図である。
図5は、
図4におけるA-A線に沿った断面である。
【0080】
第1金属層12には、タブt1が接続されている。タブt1は、例えば、第1金属層12の樹脂層11と反対側の面上に設けられている。タブt1は、第1金属板の一例である。第2金属層13には、タブt2が接続されている。タブt2は、例えば、第2金属層13の樹脂層11と反対側の面上に設けられている。タブt2は、第2金属板の一例である。タブt1、t2は、外部との電気的な接続を担う。タブt1は第1金属層12に接着、溶着、ねじ止め等で接続されている。また、タブt2は第2金属層13に、接着、溶着、ねじ止め等で接続されている。タブt1は、例えば、超音波により第1金属層12、第2金属層13のそれぞれと溶着されている。また、t2はそれぞれ、例えば、超音波により第2金属層13と溶着されている。
【0081】
第1金属層12は、開口12Aを有する。第2金属層13は、開口13Aを有する。開口12Aは、z方向からの平面視において、第2金属層13のタブt2が接続されている領域と、樹脂層11を挟んで反対側にある。開口12Aの少なくとも一部は、平面視において、タブt2の少なくとも一部と重なる部分を有する。開口13Aは、平面視において、第1金属層12のタブt1が接続されている領域と、樹脂層11を挟んで反対側にある。開口13Aの少なくとも一部は、平面視において、タブt1の少なくとも一部と重なる部分を有する。開口12A、13Aは、樹脂層11まで至っている。開口12A、13Aの位置において、樹脂層11が露出している。
【0082】
次いで、蓄電素子の製造方法について説明する。まず、市販の樹脂フィルムの両面に金属層を形成する。金属層は、例えば、スパッタリング法、化学気相成長法(CVD法)等で成膜できる。
【0083】
次いで、タブt1、t2を接合する箇所と対向する位置にある金属層を除去する。金属層は、例えば、フォトリソグラフィー法等により除去できる。そして、金属層を一部除去した後に、除去した部分と対向する位置に、タブt1、t2を接合する。タブt1、t2は、例えば、超音波により金属層と溶着される。タブt1、t2は、金属層に接着してもよいし、ねじ止めしてもよいし、熱等により溶着してもよい。タブt1、t2は、正極活物質層20及び負極活物質層30を積層し、タブ接合箇所の正極活物質層20及び負極活物質層30を除去した後に、接合してもよい。
【0084】
次いで、一方の金属層(第1金属層12)の表面に、正極スラリーを塗布する。正極スラリーは、正極活物質、バインダー及び溶媒を混合して、ペースト化したものである。正極スラリーは、例えば、スリットダイコート法、ドクターブレード法等で塗布できる。
【0085】
塗布後の正極スラリー中の溶媒を除去する。除去方法は特に限定されない。例えば、正極スラリーが塗布された集電体10を、80℃~150℃の雰囲気下で乾燥させる。次いで、得られた塗膜をプレスして、正極活物質層20を高密度化する。プレスの手段は、例えばロールプレス機、静水圧プレス機等を用いることができる。
【0086】
次いで、正極スラリーを塗布した面と反対側の金属層(第2金属層13)の表面に、負極スラリーを塗布する。負極スラリーは負極活物質、バインダー及び溶媒を混合して、ペースト化したものである。負極スラリーは、正極スラリーと同様の方法で塗布できる。塗布後の負極スラリー中の溶媒は、乾燥により除去され、負極活物質層30となる。負極活物質が金属リチウムの場合は、第2金属層13にリチウム箔を貼り付けてもよい。
【0087】
次いで、正極活物質層20又は負極活物質層30と接する位置にセパレータ40を設け、一端側を軸として巻回する。その後、電極体100を電解液と共に、外装体C内に封入する。封入は、減圧、加熱しながら行うことで、電極体100の内部まで、電解液が含侵する。外装体Cを熱等で封止すると、蓄電素子200が得られる。
【0088】
第1実施形態にかかる集電体10は、タブt1、t2を接合する位置と対向する位置に開口12A、13Aを有し、第1金属層12と第2金属層13との短絡を抑制できる。タブt1、t2を接合する際に、樹脂層11にダメージが加わる。樹脂層11には、例えば亀裂が生じる。樹脂層11の両面に金属層が存在する場合、亀裂を介して第1金属層12と第2金属層13とが短絡する場合がある。第1金属層12と第2金属層13とが短絡すると、蓄電素子200は、正常に機能しない。これに対し、第1実施形態にかかる集電体は、タブt1、t2を接合する位置と対向する位置に開口12A、13Aを有するため、例え樹脂層11に亀裂した場合でも、第1金属層12と第2金属層13との短絡を抑制できる。また、タブt1、t2を接合する位置と対向する位置に開口12A、13Aを有することで、タブt1、t2を接合することで生じる局所的な厚み増加を緩和することができる。これによって、タブt1、t2の接合箇所における厚み差によって生じる応力を緩和することができる。
【0089】
例えば、上述の集電体10は、タブt1、t2と対向する位置のそれぞれに、開口12A、13Aを有する例を提示したが、タブt1、t2のいずれか一方と対向する位置に開口12A又は開口13Aを設けてもよい。この場合、開口12A、13Aを共に有さない場合よりは短絡のリスクが低い。
【0090】
また蓄電素子200は、電極体に限られず、積層体でもよい。積層体は、セパレータ40、負極活物質層30、集電体10、正極活物質層20が順に積層された電池シートが積層されたものである。
【0091】
また
図6は、第1変形例に係る集電体10Aの特徴部分を拡大した平面図である。集電体10Aは、開口13Bの形状が
図5に示す集電体10と異なる。集電体10Aにおいて、
図5に示す集電体10と同様の構成については、同様の符号を付し、説明を省く。
【0092】
開口13Bは、第1金属層12のタブt1が接続されている領域と、樹脂層11を挟んで反対側にある。開口13Bは、第2金属層13の幅方向の一端から他端まで至る。開口13Bは、樹脂層11まで至っている。
【0093】
「第2実施形態」
第2実施形態にかかる蓄電素子は、第1実施形態にかかる蓄電素子200と集電体の形状が異なる。第2実施形態にかかる蓄電素子において、第1実施形態にかかる蓄電素子200と同様の構成については、説明を省く。
【0094】
図7は、第2実施形態に係る集電体50の特徴部分を拡大した平面図である。集電体50は、樹脂層と、樹脂層の第1面に設けられた第1金属層52と、樹脂層の第2面に設けられた第2金属層53と、を有する。
【0095】
第1金属層52は、第1領域52Aと第2領域52Bとを有する。第1領域52Aは、平面視において、第2金属層53においてタブt2が接合されるタブ接合箇所と対向する位置にある。第1領域52Aの少なくとも一部は、平面視において、タブt2の少なくとも一部と重なる部分を有する。第2領域52Bは、第1金属層52において第1領域52A以外の領域である。第1領域52Aと第2領域52Bとの間には開口があり、第1領域52Aと第2領域52Bとは、電気的に絶縁されている。第1領域52Aと第2領域52Bとの間の開口は、絶縁体で埋めてもよい。
【0096】
第2金属層53は、第3領域53Aと第4領域53Bとを有する。第3領域53Aは、平面視において、第1金属層52においてタブt1が接合されるタブ接合箇所と対向する位置にある。第3領域53Aの少なくとも一部は、平面視において、タブt2の少なくとも一部と重なる部分を有する。第4領域53Bは、第2金属層53において第3領域53A以外の領域である。第3領域53Aと第4領域53Bとの間には開口があり、第3領域53Aと第4領域53Bとは、電気的に絶縁されている。第3領域53Aと第4領域53Bとの間の開口は、絶縁体で埋めてもよい。
【0097】
第2実施形態にかかる集電体50は、第1領域52Aと第2領域52B又は第3領域53Aと第4領域54Aとが、絶縁されている。そのため、例えば、第1領域52Aと第2領域53B、又は、第3領域53Aと第4領域52Bとが短絡しても電池の挙動への影響が少ない。したがって、例え樹脂層11に亀裂した場合でも、蓄電素子への影響を抑えることができる。
【0098】
第2実施形態にかかる蓄電素子も第1実施形態にかかる蓄電素子200と同様の変形例が適用可能である。
【実施例】
【0099】
「実施例1」
厚み6.0μmのPETフィルムの一面に、第1金属層として、厚み2.1μmのアルミニウムを積層した。次いで、PETフィルムのアルミニウムを積層した面と反対側の面に、第1金属層として、厚み2.0μmの銅を積層した。
【0100】
次いで、第1金属層及び第2金属層の所定の位置にフォトリソグラフィーにより開口を形成した。開口は、取り付けるタブと第1金属層又は第2金属層とが重なる領域の相似形であり、取り付けるタブと第1金属層又は第2金属層とが重なる領域より10%大きくした。
【0101】
次いで、第1金属層と第2金属層とのそれぞれにタブを接続した。タブは、それぞれの開口と対向する位置に接続した。そして、第1金属層と第2金属層との間の電位差を測定した。同様の試験を10サンプルで行った。実施例1の集電体は、10サンプルのいずれも短絡していなかった。
【0102】
「実施例2」
実施例2は、
図7に示すように、第1金属層及び第2金属層のそれぞれに第1領域と第2領域とを形成し、これらの間を絶縁した点が、実施例1と異なる。
【0103】
第1領域はそれぞれ、取り付けるタブと第1金属層又は第2金属層とが重なる領域と同じサイズとした。第1領域と第2領域との間の開口の外形はそれぞれ、取り付けるタブと第1金属層又は第2金属層とが重なる領域の相似形とし、取り付けるタブと第1金属層又は第2金属層とが重なる領域より10%大きくした。
【0104】
次いで、第1金属層と第2金属層とのそれぞれにタブを接続した。タブは、それぞれの第1領域と対向する位置に接続した。そして、第1金属層と第2金属層との間の電位差を測定した。同様の試験を10サンプルで行った。実施例2の集電体は、10サンプルのいずれも短絡していなかった。
【0105】
「比較例1」
比較例1は、タブを取り付ける箇所と対向する位置に開口を設けなかった点が実施例1と異なる。その他の条件は、実施例1と同様にして試験を行った。比較例1の集電体は、10サンプルのうちの10サンプルが短絡した。
【符号の説明】
【0106】
10、10A、50 集電体
11 樹脂層
12、52 第1金属層
12A、13A、13B 開口
13、53 第2金属層
20 正極活物質層
30 負極活物質層
40 セパレータ
52A、53A 第1領域
52B、53B 第2領域
100 電極体
200 蓄電素子
C 外装体
K 収容空間
t1、t2 タブ