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特許7405263CaO含有物質の炭酸化方法及び炭酸化物質の製造方法
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  • 特許-CaO含有物質の炭酸化方法及び炭酸化物質の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】CaO含有物質の炭酸化方法及び炭酸化物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 5/00 20060101AFI20231219BHJP
   C04B 18/16 20230101ALI20231219BHJP
   C22B 7/04 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C04B5/00 C ZAB
C04B18/16
C22B7/04 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022542102
(86)(22)【出願日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 JP2022017523
(87)【国際公開番号】W WO2022264668
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2021102032
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】田 恵太
(72)【発明者】
【氏名】松永 久宏
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-131074(JP,A)
【文献】中国実用新案第212451213(CN,U)
【文献】特表2020-535320(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101269920(CN,A)
【文献】特開平05-238791(JP,A)
【文献】特開2004-238234(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110982967(CN,A)
【文献】特開2020-015659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
C21C 1/02
C21C 1/05
C21C 7/00
C21C 5/28
B01D 53/00
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CaO含有物質の炭酸化方法であって、
前記CaO含有物質がβ-C Sを含み、
前記CaO含有物質の温度が400℃以上1200℃以下の状態で、前記CaO含有物質に二酸化炭素及び水蒸気を含むガスを、前記ガス中のH O/(H O+CO )の流量比を0.03以上0.30以下として、10分以上吹きつける、CaO含有物質の炭酸化方法。
【請求項2】
二酸化炭素の供給量が前記CaO含有物質1tあたり5kg以上となるように、前記ガスを前記CaO含有物質に吹きつける、請求項に記載のCaO含有物質の炭酸化方法。
【請求項3】
前記CaO含有物質が、CaOを30質量%以上含み、かつ、CaO/SiOの質量比が1.5以上である、請求項に記載のCaO含有物質の炭酸化方法。
【請求項4】
前記CaO含有物質が鉄鋼スラグである、請求項に記載のCaO含有物質の炭酸化方法。
【請求項5】
前記鉄鋼スラグが製鋼スラグである、請求項に記載のCaO含有物質の炭酸化方法。
【請求項6】
前記CaO含有物質が廃コンクリートである、請求項に記載のCaO含有物質の炭酸化方法。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載のCaO含有物質の炭酸化方法で、前記CaO含有物質を炭酸化処理して炭酸化物質を製造する、炭酸化物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝固したCaO含有物質に対して二酸化炭素を含むガスを吹きつけて、当該CaO含有物質を炭酸化させる工程を含むCaO含有物質の炭酸化方法及び炭酸化物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉法では、1tの銑鉄を製造するのに2tの二酸化炭素が発生すると言われており、二酸化炭素の排出量の削減に向けた取り組みが急務となっている。そこで、二酸化炭素の排出量を削減する方法の一つとして、製鉄所で発生するスラグに含まれるCaO成分を二酸化炭素と反応させて、炭酸塩として二酸化炭素を固定化する炭酸化処理が考案されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、二酸化炭素を含有するガスを乾燥処理した製鋼スラグに供給して、スラグ粒子の造粒を抑えながら効率的に製鋼スラグを炭酸化する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-234332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、0~80℃と低温での炭酸化処理となるため、反応速度が遅く、二酸化炭素の固定量が少なくなること、すなわち炭酸固定率が小さくなることが想定される。また、スラグの水分調整をする必要があり、処理が煩雑である。
【0006】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、CaO含有物質に対して水分調整を行うことなく、高い炭酸固定率を実現することが可能なCaO含有物質の炭酸化方法と、該炭酸化方法を用いた炭酸化物質の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが検討したところ、CaO含有物質の温度を400℃以上1200℃以下にした状態で、当該CaO含有物質に二酸化炭素を含むガスを10分以上吹きつけることによって、高い炭酸固定率を実現することができるとの知見を得た。
【0008】
上記知見に基づき完成された本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1]CaO含有物質の炭酸化方法であって、前記CaO含有物質の温度が400℃以上1200℃以下の状態で、前記CaO含有物質に二酸化炭素を含むガスを10分以上吹きつける、CaO含有物質の炭酸化方法。
【0009】
[2]前記ガスが水蒸気を含む、上記[1]に記載のCaO含有物質の炭酸化方法。
【0010】
[3]前記ガス中のHO/(HO+CO)の流量比を0.03以上0.30以下とする、上記[1]又は[2]に記載のCaO含有物質の炭酸化方法。
【0011】
[4]二酸化炭素の供給量が前記CaO含有物質1tあたり5kg以上となるように、前記ガスを前記CaO含有物質に吹きつける、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のCaO含有物質の炭酸化方法。
【0012】
[5]前記CaO含有物質が、CaOを30質量%以上含み、かつ、CaO/SiOの質量比が1.5以上である、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載のCaO含有物質の炭酸化方法。
【0013】
[6]前記CaO含有物質が鉄鋼スラグである、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載のCaO含有物質の炭酸化方法。
【0014】
[7]前記鉄鋼スラグが製鋼スラグである、上記[6]に記載のCaO含有物質の炭酸化方法。
【0015】
[8]前記CaO含有物質が廃コンクリートである、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載のCaO含有物質の炭酸化方法。
【0016】
[9]上記[1]~[8]のいずれか一つに記載のCaO含有物質の炭酸化方法で、前記CaO含有物質を炭酸化処理して炭酸化物質を製造する、炭酸化物質の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明のCaO含有物質の炭酸化方法及び炭酸化物質の製造方法によれば、CaO含有物質に対して水分調整を行うことなく、高い炭酸固定率を実現することができる。このように、大気中の二酸化炭素を高い炭酸固定率でCaO含有物質に固定化することは、二酸化炭素の排出量の削減に大きく寄与するため、本発明は工業上極めて有効なプロセスである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実験例1における、スラグ温度と炭酸固定率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(CaO含有物質の炭酸化方法)
本発明の一実施形態によるCaO含有物質の炭酸化方法は、当該CaO含有物質の温度が400℃以上1200℃以下の状態で、前記CaO含有物質に二酸化炭素を含むガスを10分以上吹きつける工程を含む。以下、本実施形態によるCaO含有物質の炭酸化方法の詳細を説明する。
【0020】
[CaO含有物質]
本実施形態における被処理物質は、凝固したCaO含有物質である。凝固したCaO含有物質に対して二酸化炭素を含むガスを供給して、以下の反応により、CaO含有物質を炭酸化処理しつつ、二酸化炭素をCaO含有物質に固定する。
CaO + CO → CaCO
【0021】
本実施形態において、被処理物質であるCaO含有物質は、CaO/SiOの質量比が1.5以上であり、かつ、CaOを30質量%以上含む成分組成を有することが好ましい。このような成分組成のCaO含有物質は、鉱物相としてfree-CaO及びβ-2CaOSiO(以後、「β-CS」と記載する。)を含む。free-CaOは、二酸化炭素を含むガスによって好適に炭酸化される。また、詳細は後述するが、β-CSは、水蒸気と二酸化炭素を含有するガスによって高い炭酸固定率を発揮する。
【0022】
上記のCaO含有物質としては、鉄鋼製造工程において副産物として発生する鉄鋼スラグが例示される。鉄鋼スラグは、高炉スラグ及び製鋼スラグに大別される。鉄鋼スラグは種類にもよるが、CaOを30~50質量%含むことから、このCaOを含む鉱物相に対して二酸化炭素を吹きつけることで、二酸化炭素の固定化が期待できる。また、CaOだけでなく、アルカリ金属の酸化物であるMgOも同様の効果が期待できる。
【0023】
CaO含有物質として用いる鉄鋼スラグは、製鋼スラグであることが好ましい。製鋼スラグは、鉄鋼スラグの中でも多くのfree-CaOを含むことから、より高い炭酸固定率を実現できる。また、製鋼スラグは、β-CSも含む点でも好ましい。
【0024】
上記のCaO含有物質としては、他に、廃コンクリートが例示される。廃コンクリートとは、建設廃材であって、建設リサイクル法によって分別解体や再資源化が義務付けられている特定建設資材となるコンクリートなどである。これら廃コンクリートには、使用されたコンクリートを破砕して、JIS A 5023:2018 再生骨材コンクリートLの附属書Aに適合させたコンクリート用再生材、JIS A 5023:2018 再生骨材コンクリートMの付属書Aに適合させたコンクリート用再生骨材M、および、舗装再生便覧(日本道路協会、平成22年度)記載の再生クラッシャラン、再生砂などが含まれる。これら廃コンクリートにはポルトランドセメントなどのセメントが含まれており、約60質量%のCaOが含まれることから、より高い炭酸固定率を実現できる。
【0025】
CaO含有物質の粒度は特に限定されないが、例えば、道路用鉄鋼スラグに適した粒度とすることができる。道路用鉄鋼スラグの粒度分布は、JIS A 5015-2018で規定されており、特にCS-40が用いられている。CS-40は、粒度範囲が40~0mmであり、JIS Z 8801-1に規定する金属製網ふるいの公称目開きで、53mmの篩い通過率が100質量%、37.5mmの篩い通過率が95~100質量%、19mmの篩い通過率が50~80質量%、4.75mmの篩い通過率が15~40質量%、2.36mmの篩い通過率が5~25質量%の粒度分布を有する。
【0026】
[炭酸化処理]
本実施形態では、炭酸化処理時にCaO含有物質の温度を400℃以上1200℃以下の範囲内にすることが肝要である。当該温度が400℃未満の場合、反応速度が遅く、高い炭酸固定率を実現することができない。このため、当該温度は400℃以上とする。より高い炭酸固定率を実現する観点から、当該温度は600℃以上とすることが好ましく、800℃以上とすることがより好ましい。他方で、当該温度が1200℃を超えると、スラグ中に含まれるFeとCOとが反応して、FeOとCOガスに変化する反応が起こり、供給した二酸化炭素が炭酸カルシウムの生成に利用されづらくなるので好ましくない。このため、当該温度は1200℃以下とする。また、より高い炭酸固定率を実現する観点から、当該温度は1100℃以下とすることが好ましく、1000℃以下とすることがより好ましい。
【0027】
CaO含有物質の温度を上記範囲内にする方法は特に限定されないが、例えば、熱間破砕後のCaO含有物質の温度が上記範囲内にある場合には、そのまま本実施形態の炭酸化処理を行うことができる。
【0028】
CaO含有物質の温度が上記範囲内の状態での炭酸化処理時間(ガスの吹つけ時間)は、10分以上とする。これにより、高い炭酸固定率を実現することができる。当該処理時間が10分未満の場合、処理時間が短いため、高い炭酸固定率を実現することができない。より高い炭酸固定率を実現する観点から、当該処理時間は30分以上とすることが好ましい。他方で、当該処理時間が長すぎる場合、CaO含有物質の温度が低下するため好ましくない。このため、当該処理時間は、180分以下とすることが好ましく、60分以下とすることがより好ましい。
【0029】
炭酸化処理は、CaO含有物質を大気下に配置して行ってもよいし、CaO含有物質を密閉容器に収容し、当該密閉容器内で行ってもよい。密閉容器内の初期雰囲気は特に限定されず、空気であってもよいし、窒素(N)などの不活性ガスであってもよい。密閉容器内で炭酸化処理を行う場合、密閉容器を回転させるなどして、CaO含有物質を撹拌しながら炭酸化処理を行ってもよい。炭酸化処理時にCaO含有物質が配置される雰囲気の温度は、CaO含有物質の温度と同じ温度とすることが好ましい。
【0030】
CaO含有物質に吹きつけるガス(供給ガス)は、二酸化炭素を含むガスであれば特に限定されない。高い炭酸固定率を実現する観点から好ましい供給ガスの一例は、水蒸気及び二酸化炭素を含むガスであり、好ましくは水蒸気及び二酸化炭素からなるガスである。本発明者らの検討によると、CaO含有物質がβ-CSを含む場合、このβ-CSは水蒸気と二酸化炭素を含有するガスによって高い炭酸固定率を発揮することが分かった。この場合、供給ガス中のHO/(HO+CO)の流量比(体積比)を0.03以上0.30以下とすることが好ましい。当該流量比を0.03以上とすることによって、β-CSでの炭酸固定率が顕著に向上する。他方で、安定した流量制御を実現し、ガス供給装置の腐食を抑制する観点から、当該流量比は0.30以下とすることが好ましい。
【0031】
高い炭酸固定率を実現する観点から、供給ガスが水蒸気を含むか否かに関わらず、二酸化炭素の供給量はCaO含有物質1tあたり5kg以上とすることが好ましく、50kg以上とすることがより好ましい。二酸化炭素の供給量の上限は特に限定されないが、CaO含有物質の質量に対して、ガスの供給量が多くなり過ぎると、当該供給ガスによって、CaO含有物質の温度が低下してしまうことから、CaO含有物質1tあたり200kg以下とすることが好ましい。また、供給ガスの温度は、20℃以上1300℃以下であることが好ましく、CaO含有物質の温度と同じ温度とすることがより好ましい。
【0032】
(炭酸化物質の製造方法)
本発明の一実施形態による炭酸化物質の製造方法は、上記の実施形態によるCaO含有物質の炭酸化方法でCaO含有物質を炭酸化処理して、炭酸化物質を製造する工程を含む。これにより、多くの二酸化炭素を固定した炭酸化物質を製造することができる。
【実施例
【0033】
(実験例1)
以下の手順で炭酸化処理試験を行った。まず、CaO含有物質として、製鋼スラグの一種である脱炭スラグの未エージングのものを用意した。脱炭スラグを分級してCS-40の粒度分布とした。脱炭スラグの組成を表1に示す。電気炉内に脱炭スラグを配置し、電気炉内をN雰囲気として、表2に示すスラグ温度まで脱炭スラグを加熱し、当該温度の状態で、表2に示す組成を有するガス(ガス温度:100℃)を10分間吹き込んで、炭酸化処理を行った。各例において、二酸化炭素の供給量は脱炭スラグ1tあたり200kgとした。炉冷後、スラグ重量の変化量から炭酸固定率を計測した。表2及び図1に試験結果を示す。
【0034】
表2及び図1から明らかなとおり、スラグ温度が400~1200℃の範囲内の場合に、5kg-CO/t-slag以上の高い炭酸固定率が実現された。なお、供給ガスが水蒸気を含有しない場合であっても、脱炭スラグ中のfree-CaOが炭酸化されるものと考えられる。スラグ温度が1200℃を超えると、スラグ自体が溶融し始めることや二酸化炭素の分解も起こるため、炭酸固定率が低くなった。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
(実験例2)
製鋼スラグに含まれる主要な鉱物相のうち、表3に示す5種類の鉱物相の単相を作製し、粒子径を0.075mm以下とした。雰囲気制御可能な熱重量示差熱分析装置(TG-DTA装置)を用いて、鉱物相の温度が500℃になるまではNガスを吹き込み、N雰囲気で鉱物相を昇温し、鉱物相の温度が500℃になった時点でNガスから各鉱物相に対して表3に示す組成を有するガス(ガス温度:100℃)に切り替えて吹き込んで、炭酸化処理を行った。炭酸化処理は60分間行い、その後、Nガスに切り替えて、各鉱物相を冷却した。二酸化炭素の供給量は鉱物相1tあたり100kgとした。各鉱物相の重量の変化量から、各鉱物相における炭酸固定率を計測した。結果を表3に示す。
【0038】
表3から明らかなように、β-CSでの炭酸固定率は、供給ガスが水蒸気を含むことで顕著に高くなった。他の鉱物相は、二酸化炭素をほぼ固定しなかった。この反応は10分以下の短時間で完了したことから、高温の製鋼スラグに水蒸気と二酸化炭素とを含むガスを10分以上吹きつけることでβ-CSに二酸化炭素を十分に固定できることがわかる。HO/(HO+CO)の流量比が0.30を超えると、水蒸気の供給が多くなり、水の凝縮が起きてしまい、流量が不安定となって条件を作ることができなかった。
【0039】
【表3】
【0040】
(実験例3)
試薬を用いてβ-CSの単相を作製し、粒子径を0.075mm以下とした。雰囲気制御可能な熱重量示差熱分析装置(TG-DTA装置)を用いて、β-CSの温度が表4に示す値になるまではNガスを吹き込み、N雰囲気でβ-CSを昇温し、β-CSの温度が表4に示す値になった時点でNガスからβ-CSに対して表4に示す組成を有するガス(ガス温度:100℃)に切り替えて吹き込んで、炭酸化処理を行った。炭酸化処理は60分間行い、その後、Nガスに切り替えて、β-CSを冷却した。二酸化炭素の供給量はβ-CS1tあたり100kgとした。β-CSの重量の変化量から、β-CSにおける炭酸固定率を計測した。結果を表4に示す。なお、β-CSの温度が500℃場合は実験例2と同一の試験である。すなわち、この実験例3は、実験例2における5種類の鉱物相のうちβ-CSに関して、β-CSの温度を種々変更して、実験例2と同様の試験を行ったものである。
【0041】
表4から明らかなように、β-CSでの炭酸固定率は、供給ガスが水蒸気を含むことで顕著に高くなり、その効果は、β-CSの温度が400~1200℃の範囲内の場合に発揮された。
【0042】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のCaO含有物質の炭酸化方法及び炭酸化物質の製造方法によれば、CaO含有物質に対して水分調整を行うことなく、高い炭酸固定率を実現することができる。このように、大気中の二酸化炭素を高い炭酸固定率でCaO含有物質に固定化することは、二酸化炭素の排出量の削減に大きく寄与するため、本発明は工業上極めて有効なプロセスである。
図1