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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/04 20060101AFI20231219BHJP
   H02K 11/30 20160101ALI20231219BHJP
【FI】
H02K5/04
H02K11/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022552060
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2021034993
(87)【国際公開番号】W WO2022065412
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2020161129
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】井上 亮平
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-193440(JP,A)
【文献】特開2020-028136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/04
H02K 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ及びロータを備え、車輪の駆動力源として機能する回転電機と、
前記ロータに駆動連結された入力部材と、
前記車輪に駆動連結される出力部材と、
前記入力部材と前記出力部材とを駆動連結する伝達ギヤ機構と、
前記回転電機を制御する制御ユニットと、
第1信号線を介して前記制御ユニットと接続され、前記ロータの回転を検出する回転センサと、
第2信号線を介して前記制御ユニットと接続され、前記ステータの温度を検出する温度センサと、
前記回転電機、前記入力部材、前記伝達ギヤ機構、前記回転センサ、及び前記温度センサを収容する第1収容室と、前記制御ユニットを収容する第2収容室と、が形成されたケースと、を備え、
前記ケースは、前記第1収容室と前記第2収容室とを区画する第1区画部を備え、
前記第1区画部は、前記第1収容室と前記第2収容室とを連通する第1連通部を備え、
前記第1信号線及び前記第2信号線が、前記第1連通部を通るように配置されている、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記回転電機の回転軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側として、
前記ステータは、ステータコアと、前記ステータコアに対して前記軸方向第2側に突出したコイルエンド部と、を備え、
前記制御ユニットは、導電性を有する導電部材を介して、前記コイルエンド部と電気的に接続され、
前記第1区画部は、前記第1収容室と前記第2収容室とを連通する第2連通部を更に備え、
前記導電部材が、前記第2連通部を通るように配置され、
前記第1連通部は、前記回転電機の前記軸方向の中央部に対して前記軸方向第1側に配置され、
前記第2連通部は、前記回転電機の前記軸方向の前記中央部に対して前記軸方向第2側に配置されている、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記ケースは、前記第1収容室を、前記回転電機、前記回転センサ、及び前記温度センサを収容する回転電機室と、前記伝達ギヤ機構を収容するギヤ機構室と、に区画する第2区画部を備え、
前記第1連通部は、前記回転電機室と前記第2収容室とを連通するように形成されている、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記回転電機の回転軸心に沿う方向を軸方向とし、前記回転軸心に直交する方向を径方向として、
前記回転電機室と前記ギヤ機構室とが前記軸方向に並んで配置され、
前記回転電機室と前記第2収容室とが前記径方向に並んで配置されている、請求項3に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
第3信号線を介して前記制御ユニットと接続され、前記ケース内の油の温度を検出する油温センサと、
第4信号線を介して前記制御ユニットと接続され、少なくとも前記回転電機に油を供給する油圧ポンプと、を更に備え、
前記油温センサ及び前記油圧ポンプは、前記回転電機室に収容され、
前記第3信号線及び前記第4信号線が、前記第1連通部を通るように配置されている、請求項3又は4に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記回転電機の回転軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側として、
前記伝達ギヤ機構は、前記回転電機に対して前記軸方向第1側に配置され、
前記回転センサは、前記ロータに対して前記軸方向第2側に配置され、
前記ステータは、ステータコアと、前記ステータコアに対して前記軸方向第2側に突出したコイルエンド部と、を備え、
前記温度センサは、前記コイルエンド部に配置されている、請求項1からのいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪の駆動力源として機能する回転電機と、当該回転電機のロータに駆動連結された入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、入力部材と出力部材とを駆動連結する伝達ギヤ機構と、回転電機を制御する制御ユニットと、回転電機のロータの回転を検出する回転センサと、回転電機のステータの温度を検出する温度センサと、回転電機及び制御ユニット等を収容するケースと、を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用駆動装置の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、「背景技術」及び「発明が解決しようとする課題」の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の車両用駆動装置では、回転電機(20)のロータ(21)の回転を検出する回転センサ(30)、及び回転電機(20)のステータ(22)の温度を検出する温度センサが、制御ユニット(44)と電気的に接続されている。そして、制御ユニット(44)は、回転センサ(30)の検出信号、及び温度センサの検出信号に基づいて、回転電機(20)を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/208096号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の車両用駆動装置では、回転電機(20)、回転センサ(30)、温度センサ等を収容する第1ケース(10)に対して、制御ユニット(44)を収容する第2ケース(41)が固定されている。第1ケース(10)の外面には、回転センサ(30)と電気的に接続された端子(70)及び温度センサと電気的に接続された端子を有する第1コネクタ(51)が設けられている。また、第2ケース(41)の外面には、制御ユニット(44)と電気的に接続された端子を有する第2コネクタ(52)が設けられている。そして、第1コネクタ(51)と第2コネクタ(52)とがケーブル(60)によって接続されることで、回転センサ(30)及び温度センサが制御ユニット(44)と電気的に接続されている。
【0006】
上記の車両用駆動装置では、第1ケース(10)に収容された回転センサ(30)及び温度センサを、第2ケース(41)に収容された制御ユニット(44)と電気的に接続するために、第1コネクタ(51)、第2コネクタ(52)、及びケーブル(60)が設けられている。そのため、制御ユニット(44)に回転センサ(30)及び温度センサを電気的に接続するための部品点数が多くなっていた。また、上記の車両用駆動装置では、第1コネクタ(51)、第2コネクタ(52)、及びケーブル(60)がケースの外部に露出しているため、それらに水等が侵入し難いようにするためのシール構造が各部に必要であった。このように、上記の車両用駆動装置では、制御ユニット(44)に対する回転センサ(30)及び温度センサの接続構造が複雑になっていた。
【0007】
そこで、制御ユニットに対する回転センサ及び温度センサの接続構造が簡易な車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記に鑑みた、車両用駆動装置の特徴構成は、
ステータ及びロータを備え、車輪の駆動力源として機能する回転電機と、
前記ロータに駆動連結された入力部材と、
前記車輪に駆動連結される出力部材と、
前記入力部材と前記出力部材とを駆動連結する伝達ギヤ機構と、
前記回転電機を制御する制御ユニットと、
第1信号線を介して前記制御ユニットと接続され、前記ロータの回転を検出する回転センサと、
第2信号線を介して前記制御ユニットと接続され、前記ステータの温度を検出する温度センサと、
前記回転電機、前記入力部材、前記伝達ギヤ機構、前記回転センサ、及び前記温度センサを収容する第1収容室と、前記制御ユニットを収容する第2収容室と、が形成されたケースと、を備え、
前記ケースは、前記第1収容室と前記第2収容室とを区画する第1区画部を備え、
前記第1区画部は、前記第1収容室と前記第2収容室とを連通する第1連通部を備え、
前記第1信号線及び前記第2信号線が、前記第1連通部を通るように配置されている点にある。
【0009】
この特徴構成によれば、回転センサ及び温度センサが収容された第1収容室と、制御ユニットが収容された第2収容室とを区画する第1区画部に、第1収容室と第2収容室とを連通する第1連通部が設けられている。そして、回転センサと制御ユニットとを接続する第1信号線と、温度センサと制御ユニットとを接続する第2信号線とが、第1連通部を通るように配置されている。このように、第1信号線及び第2信号線が、ケースの内部に配置された第1区画部の第1連通部を通って、第1収容室から第2収容室に亘って配置されている。そのため、ケースに外部に露出するコネクタ、及び当該コネクタに接続される外部ケーブル等を設けることなく、第1信号線及び第2信号線を適切に配置することができる。したがって、制御ユニットに回転センサ及び温度センサを電気的に接続するための部品点数を削減することができる。
また、上記の特徴構成によれば、第1信号線及び第2信号線を、ケースの外部を通すことなく、ケースの内部に配置することができる。そのため、ケースの内部に水等が侵入することを防ぐシール構造を設ける場所を少なくすることができる。
以上のように、上記の特徴構成によれば、制御ユニットに対する回転センサ及び温度センサの接続構造を簡易なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る車両用駆動装置の軸方向に沿う断面図
図2】実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図
図3】実施形態に係る車両用駆動装置の各要素の接続構造を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、実施形態に係る車両用駆動装置100について、図面を参照して説明する。図1及び図2に示すように、車両用駆動装置100は、回転電機MGと、制御ユニットINVと、入力部材1と、伝達ギヤ機構2と、出力部材3と、ケース9と、を備えている。
【0012】
以下の説明では、回転電機MGの回転軸心である第1軸X1に沿う方向を「軸方向L」とする。そして、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」とし、他方側を「軸方向第2側L2」とする。また、回転電機MG等の回転部材の回転軸心に直交する方向を、各回転軸心を基準とした「径方向R」とする。なお、どの回転軸心を基準とするかを区別する必要がない場合やどの回転軸心を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向R」と記す場合がある。
【0013】
ケース9は、第1収容室A1と第2収容室A2とを区画する第1区画部91を備えている。本実施形態では、第1区画部91は、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。そのため、本実施形態では、第1収容室A1と第2収容室A2とが径方向Rに並んで配置されている。第1収容室A1は、ケース9の内部に形成された空間であり、回転電機MG、入力部材1、及び伝達ギヤ機構2を収容している。第2収容室A2は、ケース9の内部に形成された空間であり、制御ユニットINVを収容している。
【0014】
本実施形態では、ケース9は、第1収容室A1を回転電機室A11とギヤ機構室A12とに区画する第2区画部92を備えている。回転電機室A11は、回転電機MGを収容する空間である。ギヤ機構室A12は、伝達ギヤ機構2を収容する空間である。本実施形態では、ギヤ機構室A12は、回転電機室A11に対して軸方向第1側L1に配置されている。つまり、本実施形態では、伝達ギヤ機構2は、回転電機MGに対して軸方向第1側L1に配置されている。
【0015】
本実施形態では、第1収容室A1は、周壁部93と、第1側壁部94と、第2側壁部95と、によって囲まれている。つまり、本実施形態では、ケース9の内部における周壁部93と第1側壁部94と第2側壁部95とによって囲まれた空間が、第1収容室A1として形成されている。
【0016】
周壁部93は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成されている。第1側壁部94は、周壁部93の軸方向第1側L1の開口を閉塞するように形成されている。第2側壁部95は、周壁部93の軸方向第2側L2の開口を閉塞するように形成されている。
【0017】
本実施形態では、第2区画部92は、第1収容室A1を軸方向Lに区画するように形成されている。つまり、本実施形態では、第2区画部92は、第1側壁部94と第2側壁部95との軸方向Lの間において、径方向Rに沿って延在するように形成されている。そのため、本実施形態では、第1収容室A1における第2区画部92と第2側壁部95との軸方向Lの間に、回転電機室A11が形成されている。そして、第1収容室A1における第2区画部92と第1側壁部94との軸方向Lの間に、ギヤ機構室A12が形成されている。図1に示す例では、第2区画部92は、ボルト締結によって周壁部93に固定されている。
【0018】
本実施形態では、第2収容室A2は、第3側壁部96と、蓋部97と、によって囲まれている。つまり、本実施形態では、ケース9の内部における第3側壁部96と蓋部97とによって囲まれた空間が、第2収容室A2として形成されている。
【0019】
第3側壁部96は、制御ユニットINVの側方を囲む筒状に形成されている。第3側壁部96は、制御ユニットINVを第2収容室A2に対して出し入れするための開口が形成されるように、周壁部93から径方向Rに延在している。本実施形態では、第3側壁部96は、特定の径方向R(図1における上下方向)に沿う方向を軸とする四角筒状に形成されている。そして、径方向Rの外側(図1における上側)に向かって開口が形成されている。蓋部97は、第3側壁部96の上記開口を閉塞するように形成されている。
【0020】
回転電機MGは、車輪W(図2参照)の駆動力源として機能する。回転電機MGは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。具体的には、回転電機MGは、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置(図示を省略)と電気的に接続されている。そして、回転電機MGは、蓄電装置に蓄えられた電力により力行して駆動力を発生する。また、回転電機MGは、車輪Wの側から伝達される駆動力により発電を行って蓄電装置を充電する。
【0021】
回転電機MGは、ステータSTとロータRTとを備えている。ステータSTは、非回転部材(ここでは、ケース9)に固定されたステータコアSTCを有している。ロータRTは、ステータSTに対して回転可能に支持されたロータコアRTCと、当該ロータコアRTCと一体的に回転するように連結されたロータ軸RTSと、を有している。
【0022】
本実施形態では、回転電機MGは回転界磁型の回転電機である。そのため、ステータコアSTCには、ステータコイルが巻装されている。本実施形態では、ステータコイルは、ステータコアSTCに対して軸方向第1側L1に突出した第1コイルエンド部C1と、ステータコアSTCに対して軸方向第2側L2に突出した第2コイルエンド部C2とが形成されるように、ステータコアSTCに巻装されている。そして、ロータコアRTCには、永久磁石(図示を省略)が設けられている。
【0023】
また、本実施形態では、回転電機MGはインナロータ型の回転電機である。そのため、ロータコアRTCが、ステータコアSTCよりも径方向Rの内側に配置されている。そして、ロータコアRTCは、ロータ軸RTSを径方向Rの外側から支持している。
【0024】
ロータ軸RTSは、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、ロータ軸RTSは、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成されている。また、ロータ軸RTSは、第1ロータ軸受B11、及び当該第1ロータ軸受B11よりも軸方向第2側L2に配置された第2ロータ軸受B12によって、ケース9に対して回転可能に支持されている。図1に示す例では、ロータ軸RTSの軸方向第1側L1の端部が、第1ロータ軸受B11を介して、ケース9の第2区画部92に対して回転可能に支持されている。そして、ロータ軸RTSの軸方向第2側L2の端部が、第2ロータ軸受B12を介して、ケース9の第2側壁部95に対して回転可能に支持されている。なお、本例では、第1ロータ軸受B11及び第2ロータ軸受B12は玉軸受である。
【0025】
入力部材1は、回転電機MGのロータRTに駆動連結されている。本実施形態では、入力部材1は、入力ギヤ11と、入力軸12と、を備えている。
【0026】
ここで、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。
【0027】
入力ギヤ11は、入力軸12と一体的に回転するように連結されている。図1に示す例では、入力ギヤ11は、入力軸12と一体的に形成されている。本実施形態では、入力ギヤ11は、軸方向Lにおける第1入力軸受B21と第2入力軸受B22との間に配置されている。
【0028】
入力軸12は、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、入力軸12は、ケース9の第2区画部92を軸方向Lに貫通し、回転電機室A11とギヤ機構室A12とに亘って配置されている。そして、入力軸12は、回転電機MGのロータ軸RTSと同軸に配置され、回転電機室A11にてロータ軸RTSと一体的に回転するように連結されている。図1に示す例では、入力軸12における第2区画部92よりも軸方向第2側L2の部分が、ロータ軸RTSにおけるロータコアRTCよりも軸方向第1側L1に突出した部分に対して径方向Rの内側に配置されている。そして、それらの部分が、スプライン係合によって一体的に回転するように互いに連結されている。
【0029】
伝達ギヤ機構2は、入力部材1と出力部材3とを駆動連結している。つまり、伝達ギヤ機構2は、入力部材1からの回転を出力部材3に伝達する。本実施形態では、伝達ギヤ機構2は、カウンタギヤ機構4と、差動歯車機構5と、を備えている。
【0030】
カウンタギヤ機構4は、第1軸X1とは異なる第2軸X2に配置されている。第2軸X2は、カウンタギヤ機構4の回転軸心である。本実施形態では、第2軸X2は、第1軸X1と平行に配置されている。つまり、本実施形態では、第2軸X2は、軸方向Lに沿って配置されている。
【0031】
カウンタギヤ機構4は、入力ギヤ11に噛み合うカウンタ入力ギヤ41と、当該カウンタ入力ギヤ41と一体的に回転するカウンタ出力ギヤ42と、カウンタ入力ギヤ41とカウンタ出力ギヤ42とを連結するカウンタ軸43と、を備えている。
【0032】
カウンタ入力ギヤ41及びカウンタ出力ギヤ42のそれぞれは、カウンタ軸43と一体的に回転するように連結されている。図1に示す例では、カウンタ入力ギヤ41は、スプライン係合によってカウンタ軸43に連結されている。そして、カウンタ出力ギヤ42は、カウンタ軸43と一体的に形成されている。また、カウンタ出力ギヤ42は、カウンタ入力ギヤ41よりも小径に形成されている。
【0033】
カウンタ軸43は、第2軸X2に沿って延在するように形成されている。本実施形態では、カウンタ軸43は、第1カウンタ軸受B31、及び当該第1カウンタ軸受B31よりも軸方向第2側L2に配置された第2カウンタ軸受B32によって、ケース9に対して回転可能に支持されている。図1に示す例では、カウンタ軸43の軸方向第1側L1の端部が、第1カウンタ軸受B31を介して、ケース9の第1側壁部94に対して回転可能に支持されている。そして、カウンタ軸43の軸方向第2側L2の端部が、第2カウンタ軸受B32を介して、ケース9の第2区画部92に対して回転可能に支持されている。なお、本例では、第1カウンタ軸受B31及び第2カウンタ軸受B32は円錐ころ軸受である。
【0034】
差動歯車機構5は、カウンタギヤ機構4から伝達される回転を、一対の出力部材3に分配するように構成されている。本実施形態では、差動歯車機構5は、カウンタギヤ機構4のカウンタ出力ギヤ42に噛み合う差動入力ギヤ51を備えている。そのため、本実施形態では、差動歯車機構5は、差動入力ギヤ51の回転を一対の出力部材3に分配する。
【0035】
差動入力ギヤ51は、第1軸X1及び第2軸X2とは異なる第3軸X3に配置されている。第3軸X3は、差動入力ギヤ51の回転軸心である。本実施形態では、第3軸X3は、第1軸X1及び第2軸X2の双方と平行に配置されている。つまり、本実施形態では、第3軸X3は、軸方向Lに沿って配置されている。
【0036】
本実施形態では、差動歯車機構5は、差動ケース52と、一対のピニオンギヤ53と、第1サイドギヤ54及び第2サイドギヤ55と、を更に備えている。ここでは、一対のピニオンギヤ53、並びに第1サイドギヤ54及び第2サイドギヤ55は、いずれも傘歯車である。
【0037】
差動ケース52は、一対のピニオンギヤ53、並びに第1サイドギヤ54及び第2サイドギヤ55を収容する中空の部材である。差動ケース52は、差動入力ギヤ51と一体的に回転するように連結されている。図1に示す例では、差動入力ギヤ51が、ボルト締結によって差動ケース52に連結されている。
【0038】
本実施形態では、差動ケース52は、第1差動軸受B41、及び当該第1差動軸受B41よりも軸方向第2側L2に配置された第2差動軸受B42によって、ケース9に対して回転可能に支持されている。図1に示す例では、差動ケース52の軸方向第1側L1の端部が、第1差動軸受B41を介して、ケース9の第1側壁部94に対して回転可能に支持されている。そして、差動ケース52の軸方向第2側L2の端部が、第2差動軸受B42を介して、ケース9の第2区画部92に対して回転可能に支持されている。なお、本例では、第1差動軸受B41及び第2差動軸受B42は円錐ころ軸受である。
【0039】
一対のピニオンギヤ53は、第3軸X3を基準とした径方向Rに間隔を空けて、互いに対向するように配置されている。そして、一対のピニオンギヤ53は、差動ケース52と一体的に回転するように支持されたピニオンシャフト56に取り付けられている。一対のピニオンギヤ53のそれぞれは、ピニオンシャフト56を中心として回転(自転)可能、かつ、第3軸X3を中心として回転(公転)可能に構成されている。
【0040】
第1サイドギヤ54及び第2サイドギヤ55は、一対のピニオンギヤ53に噛み合っている。第1サイドギヤ54及び第2サイドギヤ55は、第3軸X3を回転軸心として回転するように配置されている。第1サイドギヤ54と第2サイドギヤ55とは、互いに軸方向Lに間隔を空けて、ピニオンシャフト56を挟んで対向するように配置されている。第1サイドギヤ54は、第2サイドギヤ55よりも軸方向第1側L1に配置されている。
【0041】
出力部材3は、車輪W(図2参照)に駆動連結されている。本実施形態では、一対の出力部材3が、軸方向Lに間隔を空けて、第3軸X3に配置されている。また、本実施形態では、一対の出力部材3は、ギヤ機構室A12に収容されている。以下の説明では、一対の出力部材3のうち、軸方向第1側L1の出力部材3を「第1出力部材31」とし、軸方向第2側L2の出力部材3を「第2出力部材32」とする。
【0042】
本実施形態では、第1出力部材31は、第1サイドギヤ54と一体的に回転するように連結されている。図1に示す例では、第1出力部材31は、第1サイドギヤ54と一体的に形成されている。また、本実施形態では、第1出力部材31は、軸方向第1側L1のドライブシャフトDSと一体的に回転するように連結されている。図1に示す例では、第1出力部材31は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成され、第1サイドギヤ54に対して径方向Rの内側に配置されている。そして、第1出力部材31に対して径方向Rの内側に、軸方向第1側L1からドライブシャフトDSが挿入され、それらがスプライン係合によって互いに連結されている。
【0043】
本実施形態では、第2出力部材32は、第2サイドギヤ55と一体的に回転するように連結されている。図1に示す例では、第2出力部材32は、第2サイドギヤ55と一体的に形成されている。また、本実施形態では、第2出力部材32は、伝達軸32aを介して、軸方向第2側L2のドライブシャフトDSと一体的に回転するように連結されている。図1に示す例では、第2出力部材32は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成され、第2サイドギヤ55に対して径方向Rの内側に配置されている。そして、第2出力部材32に対して径方向Rの内側に、軸方向第2側L2から伝達軸32aが挿入され、それらがスプライン係合によって互いに連結されている。
【0044】
伝達軸32aは、第3軸X3を回転軸心とする軸部材である。本実施形態では、伝達軸32aは、ケース9の第2区画部92を軸方向Lに貫通し、回転電機室A11とギヤ機構室A12とに亘って配置されている。そして、伝達軸32aは、軸方向第2側L2のドライブシャフトDSと一体的に回転するように連結されている。図1に示す例では、伝達軸32aにおける、軸方向第2側L2の端面から、軸方向Lの中央よりも軸方向第2側L2までの部分が、軸方向第2側L2に開口する筒状に形成されている。そして、この伝達軸32aの筒状部分に対して径方向Rの内側に、軸方向第2側L2からドライブシャフトDSが挿入され、それらがスプライン係合によって互いに連結されている。
【0045】
本実施形態では、伝達軸32aは、出力軸受B5によって、ケース9に対して回転可能に支持されている。図1に示す例では、伝達軸32aの軸方向第2側L2の端部が、出力軸受B5を介して、ケース9の第2側壁部95に対して回転可能に支持されている。
【0046】
制御ユニットINVは、回転電機MGを制御するように構成されている。本実施形態では、制御ユニットINVは、インバータ装置を備えている。このインバータ装置は、上記の蓄電装置及び回転電機MGと電気的に接続され、当該蓄電装置の直流と回転電機MGの複数相(ここでは3相)の交流との間で電力を変換する装置である。本例では、制御ユニットINVは、上記インバータ装置の直流電源側の電圧の平滑化を行う平滑コンデンサ、及び上記インバータ装置におけるインバータ回路の制御を行う制御基板を更に備えている。
【0047】
ケース9の第1区画部91は、第2連通部91aを備えている。第2連通部91aは、第1収容室A1と第2収容室A2とを連通するように形成されている。本実施形態では、第2連通部91aは、回転電機室A11と第2収容室A2とを連通するように形成された貫通孔である。
【0048】
本実施形態では、制御ユニットINVは、導電性を有する導電部材10aを介して、回転電機MGの第2コイルエンド部C2と電気的に接続されている。導電部材10aは、第2連通部91aを通るように配置されている。つまり、導電部材10aは、ケース9の第1区画部91を貫通して、第2収容室A2と第1収容室A1(ここでは、回転電機室A11)とに亘って配置されている。本実施形態では、導電部材10aは、電気的絶縁性を有する絶縁部材10bを介して、第1区画部91に支持されている。絶縁部材10bは、第2連通部91aに挿入されている。絶縁部材10bと第2連通部91aとの間には、封止材10cが設けられている。封止材10cは、絶縁部材10bと第2連通部91aとの間を油密状に封止する部材(例えば、Oリング等)である。
【0049】
図1及び図3に示すように、車両用駆動装置100は、回転センサ61と、温度センサ62と、を備えている。本実施形態では、車両用駆動装置100は、油温センサ63と、油圧ポンプ7と、を更に備えている。回転センサ61、温度センサ62、油温センサ63、及び油圧ポンプ7は、第1収容室A1に収容されている。本実施形態では、回転センサ61、温度センサ62、油温センサ63、及び油圧ポンプ7は、回転電機室A11に収容されている。
【0050】
回転センサ61は、回転電機MGのロータRTの回転を検出するセンサである。図1に示すように、本実施形態では、回転センサ61は、ロータRTに対して軸方向第2側L2に配置されている。図示の例では、回転センサ61は、ステータSTの第2コイルエンド部C2に対して径方向Rの内側であって、径方向Rに沿う径方向視で第2コイルエンド部C2と重複する位置に配置されている。ここで、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
【0051】
本実施形態では、回転センサ61は、固定体61aと回転体61bとを備えている。固定体61a及び回転体61bのそれぞれは、第1軸X1を軸心とする円環状に形成されている。固定体61aは、ケース9に対して固定されている。本実施形態では、固定体61aは、ケース9の第2側壁部95に支持されている。回転体61bは、固定体61aと径方向Rに対向するように、固定体61aに対して径方向Rの内側に配置されている。そして、回転体61bは、ロータRTと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、回転体61bは、ロータ軸RTSと一体的に回転するように連結されている。
【0052】
本例では、回転センサ61は、レゾルバとして構成されている。よって、回転センサ61は、固定体61aに設けられたコイルに交流電流を通した場合における、固定体61aに対する回転体61bの相対角度に応じた交流電圧の位相を検出して、ロータ軸RTSの回転位置を検出する。なお、回転センサ61は、レゾルバに限らず、例えば、ホール素子センサ、エンコーダ、磁気式回転センサ等の各種センサにより構成することができる。
【0053】
温度センサ62は、回転電機MGのステータSTの温度を検出するセンサである。本実施形態では、温度センサ62は、回転電機MGの第2コイルエンド部C2に配置されている。また、本実施形態では、温度センサ62は、サーミスタにより構成されている。このサーミスタは、負の温度係数を有し、温度が上昇すると抵抗値が減少するNTCサーミスタ、及び正の温度係数を有し、温度が上昇すると抵抗値が増加するPTCサーミスタを含む。なお、温度センサ62は、サーミスタに限らず、例えば熱電対により構成することができる。
【0054】
油温センサ63は、ケース9内の油の温度を検出するセンサである。本実施形態では、油温センサ63は、ケース9の第2側壁部95に形成された油路Pを流動する油の温度を検出するように、第2側壁部95に支持されている。本例では、油温センサ63は、油圧ポンプ7から吐出された油を冷却するオイルクーラ(図示を省略)の下流側に配置されている。つまり、本例では、油温センサ63は、油圧ポンプ7からオイルクーラを通って冷却された油の温度を検出する。
【0055】
油圧ポンプ7は、少なくとも回転電機MGに油を供給するポンプである。具体的には、油圧ポンプ7は、回転電機MGのステータST及びロータRTに冷却用の油を供給する。本実施形態では、油圧ポンプ7は、更に、ロータ軸RTSを回転可能に支持する軸受、入力部材1及び伝達ギヤ機構2の各軸を回転可能に支持する軸受、ギヤの噛み合い部等を潤滑するために、それらに油を供給する。油圧ポンプ7は、電動モータ(図示を省略)により駆動される電動式の油圧ポンプである。油圧ポンプ7は、ケース9に対して固定されている。
【0056】
図3に示すように、回転センサ61は、第1信号線S1を介して制御ユニットINVと接続されている。温度センサ62は、第2信号線S2を介して制御ユニットINVと接続されている。油温センサ63は、第3信号線S3を介して制御ユニットINVと接続されている。油圧ポンプ7は、第4信号線S4を介して制御ユニットINVと接続されている。制御ユニットINVは、回転センサ61の検出信号、温度センサ62の検出信号、及び油温センサ63の検出信号に基づいて、回転電機MG、及び油圧ポンプ7(ここでは、油圧ポンプ7を駆動するモータ)を制御する。
【0057】
ケース9の第1区画部91は、第1連通部91bを備えている。第1連通部91bは、第1収容室A1と第2収容室A2とを連通するように形成されている。本実施形態では、第1連通部91bは、回転電機室A11と第2収容室A2とを連通するように形成された貫通孔である。本例では、第1連通部91bは、第1区画部91の1箇所に形成されている。
【0058】
第1信号線S1及び第2信号線S2は、第1連通部91bを通るように配置されている。本実施形態では、第3信号線S3及び第4信号線S4も、第1連通部91bを通るように配置されている。
【0059】
本実施形態では、第1連通部91bは、回転電機MGの軸方向Lの中央部に対して軸方向第1側L1に配置されている。そして、第2連通部91aは、回転電機MGの軸方向Lの中央部に対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0060】
このように、本実施形態では、ステータSTは、ステータコアSTCと、当該ステータコアSTCに対して軸方向第2側L2に突出した第2コイルエンド部C2と、を備え、
制御ユニットINVは、導電性を有する導電部材10aを介して、第2コイルエンド部C2と電気的に接続され、
第1区画部91は、第1収容室A1と第2収容室A2とを連通する第2連通部91aを更に備え、
導電部材10aが、第2連通部91aを通るように配置され、
第1連通部91bは、回転電機MGの軸方向Lの中央部に対して軸方向第1側L1に配置され、
第2連通部91aは、回転電機MGの軸方向Lの中央部に対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0061】
この構成によれば、第1信号線S1及び第2信号線S2が挿通された第1連通部91bと、導電部材10aが挿通された第2連通部91aとが、軸方向Lに離れて配置されている。これにより、第1信号線S1及び第2信号線S2と、導電部材10aとの間の絶縁性を確保し易い。
【0062】
また、本実施形態では、ケース9は、第1収容室A1を、回転電機MG、回転センサ61、及び温度センサ62を収容する回転電機室A11と、伝達ギヤ機構2を収容するギヤ機構室A12と、に区画する第2区画部92を備え、
第1連通部91bは、回転電機室A11と第2収容室A2とを連通するように形成されている。
【0063】
この構成によれば、制御ユニットINVと電気的に接続される回転センサ61及び温度センサ62の双方が、回転電機室A11に配置されている。そして、回転センサ61と制御ユニットINVとを接続する第1信号線S1と、温度センサ62と制御ユニットINVとを接続する第2信号線S2とが、回転電機室A11と第2収容室A2とを連通するように形成された第1連通部91bを通るように配置されている。これにより、第1信号線S1及び第2信号線S2がギヤ機構室A12を通ることなく、回転センサ61及び温度センサ62と制御ユニットINVとを電気的に接続することができる。したがって、第1連通部91bがギヤ機構室A12と第2収容室A2とを連通するように形成された構成と比べて、制御ユニットINVに対する回転センサ61及び温度センサ62の接続構造を簡易なものとすることができる。
また、本構成によれば、第1連通部91bが回転電機室A11と第2収容室A2とを連通するように形成されている。ここで、回転電機室A11に収容された回転電機MGのロータRTの回転に伴って飛散する油は比較的少ない。これに対して、ギヤ機構室A12に収容された伝達ギヤ機構2の各要素の回転に伴って飛散する油は比較的多い。したがって、本構成によれば、第1連通部91bがギヤ機構室A12と第2収容室A2とを連通するように形成された構成と比べて、油が第1連通部91bに侵入し難いようにするための部材を設ける必要性を低減することができる。
【0064】
また、本実施形態では、ケース9が第2区画部92を備えた構成において、
車両用駆動装置100は、
第3信号線S3を介して制御ユニットINVと接続され、ケース9内の油の温度を検出する油温センサ63と、
第4信号線S4を介して制御ユニットINVと接続され、少なくとも回転電機MGに油を供給する油圧ポンプ7と、を更に備え、
油温センサ63及び油圧ポンプ7は、回転電機室A11に収容され、
第3信号線S3及び第4信号線S4が、第1連通部91bを通るように配置されている。
【0065】
この構成によれば、第1信号線S1及び第2信号線S2に加えて、第3信号線S3及び第4信号線S4も、ケース9の内部に配置された第1区画部91の第1連通部91bを通って、回転電機室A11と第2収容室A2とに亘って配置されている。そして、回転センサ61及び温度センサ62に加えて、油温センサ63及び油圧ポンプ7も、回転電機室A11に収容されている。したがって、制御ユニットINVに対する回転センサ61、温度センサ62、油温センサ63、及び油圧ポンプ7の接続構造を簡易なものとすることができる。
【0066】
また、本実施形態では、伝達ギヤ機構2は、回転電機MGに対して軸方向第1側L1に配置され、
回転センサ61は、ロータRTに対して軸方向第2側L2に配置され、
ステータSTは、ステータコアSTCと、当該ステータコアSTCに対して軸方向第2側L2に突出した第2コイルエンド部C2と、を備え、
温度センサ62は、第2コイルエンド部C2に配置されている。
【0067】
この構成によれば、制御ユニットINVと電気的に接続される回転センサ61及び温度センサ62の双方を、軸方向第2側L2に寄せて配置することができる。これにより、回転センサ61と制御ユニットINVとを接続する第1信号線S1と、温度センサ62と制御ユニットINVとを接続する第2信号線S2とを、まとめて配置することが容易となる。したがって、制御ユニットINVに対する回転センサ61及び温度センサ62の接続構造を更に簡易なものとすることができる。
【0068】
図1に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、閉塞部材81と、シール部材82と、を更に備えている。閉塞部材81は、第1連通部91bを塞ぐように当該第1連通部91bに収容される部材である。シール部材82は、閉塞部材81と第1連通部91bとの間を油密状に封止する部材(例えば、Oリング等)である。本実施形態では、シール部材82は、貫通孔としての第1連通部91bを構成する第1区画部91の内面と、閉塞部材81の外面との間に配置されている。
【0069】
図3に示すように、本実施形態では、第1信号線S1及び第2信号線S2は、閉塞部材81の内部を通るように配置されている。本例では、第3信号線S3及び第4信号線S4も、閉塞部材81の内部を通るように配置されている。
【0070】
このように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、第1連通部91bを塞ぐように当該第1連通部91bに収容される閉塞部材81と、当該閉塞部材81と第1連通部91bとの間を油密状に封止するシール部材82と、を更に備え、
第1信号線S1及び第2信号線S2が、閉塞部材81の内部を通るように配置されている。
【0071】
この構成によれば、回転センサ61及び温度センサ62と制御ユニットINVとを、閉塞部材81の内部を通るように配置された第1信号線S1及び第2信号線S2によって適切に接続しつつ、閉塞部材81と第1連通部91bとの間を油密状に封止するシール部材82によって、回転電機MG及び伝達ギヤ機構2等が収容された第1収容室A1から、制御ユニットINVが収容された第2収容室A2に油が侵入し難くすることができる。
【0072】
本例では、閉塞部材81は、第1ワイヤハーネスWH1の端部に取り付けられたコネクタである。第1ワイヤハーネスWH1は、回転センサ61に接続されて第1信号線S1の一部を成す配線と、温度センサ62に接続されて第2信号線S2の一部を成す配線と、油温センサ63に接続されて第3信号線S3の一部を成す配線と、油圧ポンプ7に接続されて第4信号線S4の一部を成す配線とが、一体的に連結された部材である。
【0073】
そして、本例では、閉塞部材81に対して接続部材83が着脱可能に設けられている。接続部材83は、第2ワイヤハーネスWH2の端部に取り付けられたコネクタである。第2ワイヤハーネスWH2は、制御ユニットINVに接続されて第1信号線S1の一部を成す配線と、制御ユニットINVに接続されて第2信号線S2の一部を成す配線と、制御ユニットINVに接続されて第3信号線S3の一部を成す配線と、制御ユニットINVに接続されて第4信号線S4の一部を成す配線とが、一体的に連結された部材である。本例では、閉塞部材81に対して接続部材83を接続することで、第1信号線S1、第2信号線S2、第3信号線S3、及び第4信号線S4が連続的に形成された状態となる。
【0074】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、第1信号線S1~第4信号線S4が、ケース9の第1区画部91に形成された1つの貫通孔である第1連通部91bを通るように配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1区画部91に2つの貫通孔が第1連通部91bとして形成され、第1信号線S1及び第2信号線S2が一方の貫通孔を通るように配置されると共に、第3信号線S3及び第4信号線S4が他方の貫通孔を通るように配置された構成としても良い。或いは、第1区画部91に4つの貫通孔が第1連通部91bとして形成され、第1信号線S1~第4信号線S4が、4つの貫通孔をそれぞれ通るように配置された構成としても良い。
【0075】
(2)上記の実施形態では、閉塞部材81が接続部材83と接続可能なコネクタであり、閉塞部材81に対する接続部材83の着脱により、第1信号線S1~第4信号線S4が形成された状態と形成されていない状態とを切り替える構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、閉塞部材81がコネクタとして構成されておらず、第1連通部91bを塞ぐと共に第1信号線S1~第4信号線S4を成す配線を保持する部材として構成されていても良い。この構成では、第1信号線S1~第4信号線S4は、閉塞部材81を連続的に貫通した状態で、当該閉塞部材81により保持される。
【0076】
(3)上記の実施形態では、第1連通部91bが回転電機室A11と第2収容室A2とを連通するように形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1連通部91bがギヤ機構室A12と第2収容室A2とを連通するように形成されていても良い。
【0077】
(4)上記の実施形態では、伝達ギヤ機構2が回転電機MGに対して軸方向第1側L1に配置され、回転センサ61がロータRTに対して軸方向第2側L2に配置され、温度センサ62が第2コイルエンド部C2に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、回転センサ61がロータRTに対して軸方向第1側L1に配置されていても良い。また、温度センサ62が第1コイルエンド部C1に配置されていても良い。
【0078】
(5)上記の実施形態では、ケース9が、第1収容室A1を回転電機室A11とギヤ機構室A12とに区画する第2区画部92を備えた構成を例として説明したが、そのような構成には限定されない。例えば、ケース9が第2区画部92を備えず、1つの連続する第1収容室A1に、回転電機MG及び伝達ギヤ機構2が収容された構成であっても良い。或いは、ケース9が第2区画部92に加えて、更なる区画部を備え、第1収容室A1が3つ以上の空間に分割された構成であっても良い。
【0079】
(6)上記の実施形態では、車両用駆動装置100が、油温センサ63及び当該油温センサ63と制御ユニットINVとを接続する第3信号線S3、並びに、油圧ポンプ7及び当該油圧ポンプ7と制御ユニットINVとを接続する第4信号線S4を備えた構成を例として説明したが、そのような構成には限定されない。例えば、車両用駆動装置100が、油温センサ63及び第3信号線S3と油圧ポンプ7及び第4信号線S4との少なくとも一方を備えない構成であっても良い。また、これを備える場合であっても、第3信号線S3及び第4信号線S4の少なくとも一方が、第1連通部91bを通らないように構成されていても良い。
【0080】
(7)上記の実施形態では、車両用駆動装置100が、第1連通部91bを塞ぐように当該第1連通部91bに収容される閉塞部材81と、当該閉塞部材81と第1連通部91bとの間を油密状に封止するシール部材82とを備えた構成を例として説明したが、そのような構成には限定されない。例えば、第1連通部91bに閉塞部材81が配置されず、シール部材82のみによって、第1信号線S1及び第2信号線S2等と第1連通部91bとの間が油密状に封止された構成としても良い。或いは、第1連通部91bに閉塞部材81及びシール部材82の双方が配置されない構成としても良い。
【0081】
(8)上記の実施形態では、第1連通部91bが回転電機MGの軸方向Lの中央部に対して軸方向第1側L1に配置され、第2連通部91aが回転電機MGの軸方向Lの中央部に対して軸方向第2側L2に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1連通部91b及び第2連通部91aの双方が、回転電機MGの軸方向Lの中央部に対して軸方向第2側L2に配置されていても良い。
【0082】
(9)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0083】
〔上記実施形態の概要〕
以下では、上記において説明した車両用駆動装置(100)の概要について説明する。
【0084】
車両用駆動装置(100)は、
ステータ(ST)及びロータ(RT)を備え、車輪(W)の駆動力源として機能する回転電機(MG)と、
前記ロータ(RT)に駆動連結された入力部材(1)と、
前記車輪(W)に駆動連結される出力部材(3)と、
前記入力部材(1)と前記出力部材(3)とを駆動連結する伝達ギヤ機構(2)と、
前記回転電機(MG)を制御する制御ユニット(INV)と、
第1信号線(S1)を介して前記制御ユニット(INV)と接続され、前記ロータ(RT)の回転を検出する回転センサ(61)と、
第2信号線(S2)を介して前記制御ユニット(INV)と接続され、前記ステータ(ST)の温度を検出する温度センサ(62)と、
前記回転電機(MG)、前記入力部材(1)、前記伝達ギヤ機構(2)、前記回転センサ(61)、及び前記温度センサ(62)を収容する第1収容室(A1)と、前記制御ユニット(INV)を収容する第2収容室(A2)と、が形成されたケース(9)と、を備え、
前記ケース(9)は、前記第1収容室(A1)と前記第2収容室(A2)とを区画する第1区画部(91)を備え、
前記第1区画部(91)は、前記第1収容室(A1)と前記第2収容室(A2)とを連通する第1連通部(91b)を備え、
前記第1信号線(S1)及び前記第2信号線(S2)が、前記第1連通部(91b)を通るように配置されている。
【0085】
この構成によれば、回転センサ(61)及び温度センサ(62)が収容された第1収容室(A1)と、制御ユニット(INV)が収容された第2収容室(A2)とを区画する第1区画部(91)に、第1収容室(A1)と第2収容室(A2)とを連通する第1連通部(91b)が設けられている。そして、回転センサ(61)と制御ユニット(INV)とを接続する第1信号線(S1)と、温度センサ(62)と制御ユニット(INV)とを接続する第2信号線(S2)とが、第1連通部(91b)を通るように配置されている。このように、第1信号線(S1)及び第2信号線(S2)が、ケース(9)の内部に配置された第1区画部(91)の第1連通部(91b)を通って、第1収容室(A1)から第2収容室(A2)に亘って配置されている。そのため、ケース(9)に外部に露出するコネクタ、及び当該コネクタに接続される外部ケーブル等を設けることなく、第1信号線(S1)及び第2信号線(S2)を適切に配置することができる。したがって、制御ユニット(INV)に回転センサ(61)及び温度センサ(62)を電気的に接続するための部品点数を削減することができる。
また、上記の構成によれば、第1信号線(S1)及び第2信号線(S2)を、ケース(9)の外部を通すことなく、ケース(9)の内部に配置することができる。そのため、ケース(9)の内部に水等が侵入することを防ぐシール構造を設ける場所を少なくすることができる。
以上のように、上記の構成によれば、制御ユニット(INV)に対する回転センサ(61)及び温度センサ(62)の接続構造を簡易なものとすることができる。
【0086】
ここで、前記回転電機(MG)の回転軸心に沿う方向を軸方向(L)とし、前記軸方向(L)の一方側を軸方向第1側(L1)とし、前記軸方向(L)の他方側を軸方向第2側(L2)として、
前記ステータ(ST)は、ステータコア(STC)と、前記ステータコア(STC)に対して前記軸方向第2側(L2)に突出したコイルエンド部(C2)と、を備え、
前記制御ユニット(INV)は、導電性を有する導電部材(10a)を介して、前記コイルエンド部(C2)と電気的に接続され、
前記第1区画部(91)は、前記第1収容室(A1)と前記第2収容室(A2)とを連通する第2連通部(91a)を更に備え、
前記導電部材(10a)が、前記第2連通部(91a)を通るように配置され、
前記第1連通部(91b)は、前記回転電機(MG)の前記軸方向(L)の中央部に対して前記軸方向第1側(L1)に配置され、
前記第2連通部(91a)は、前記回転電機(MG)の前記軸方向(L)の前記中央部に対して前記軸方向第2側(L2)に配置されていると好適である。
【0087】
この構成によれば、第1信号線(S1)及び第2信号線(S2)が挿通された第1連通部(91b)と、導電部材(10a)が挿通された第2連通部(91a)とが、軸方向(L)に離れて配置されている。これにより、第1信号線(S1)及び第2信号線(S2)と、導電部材(10a)との間の絶縁性を確保し易い。
【0088】
また、前記ケース(9)は、前記第1収容室(A1)を、前記回転電機(MG)、前記回転センサ(61)、及び前記温度センサ(62)を収容する回転電機室(A11)と、前記伝達ギヤ機構(2)を収容するギヤ機構室(A12)と、に区画する第2区画部(92)を備え、
前記第1連通部(91b)は、前記回転電機室(A11)と前記第2収容室(A2)とを連通するように形成されていると好適である。
【0089】
この構成によれば、制御ユニット(INV)と電気的に接続される回転センサ(61)及び温度センサ(62)の双方が、回転電機室(A11)に配置されている。そして、回転センサ(61)と制御ユニット(INV)とを接続する第1信号線(S1)と、温度センサ(62)と制御ユニット(INV)とを接続する第2信号線(S2)とが、回転電機室(A11)と第2収容室(A2)とを連通するように形成された第1連通部(91b)を通るように配置されている。これにより、第1信号線(S1)及び第2信号線(S2)がギヤ機構室(A12)を通ることなく、回転センサ(61)及び温度センサ(62)と制御ユニット(INV)とを電気的に接続することができる。したがって、第1連通部(91b)がギヤ機構室(A12)と第2収容室(A2)とを連通するように形成された構成と比べて、制御ユニット(INV)に対する回転センサ(61)及び温度センサ(62)の接続構造を簡易なものとすることができる。
また、本構成によれば、第1連通部(91b)が回転電機室(A11)と第2収容室(A2)とを連通するように形成されている。ここで、回転電機室(A11)に収容された回転電機(MG)のロータ(RT)の回転に伴って飛散する油は比較的少ない。これに対して、ギヤ機構室(A12)に収容された伝達ギヤ機構(2)の各要素の回転に伴って飛散する油は比較的多い。したがって、本構成によれば、第1連通部(91b)がギヤ機構室(A12)と第2収容室(A2)とを連通するように形成された構成と比べて、油が第1連通部(91b)に侵入し難いようにするための部材を設ける必要性を低減することができる。
【0090】
前記ケース(9)が前記第2区画部(92)を備えた構成において、
車両用駆動装置(100)は、
第3信号線(S3)を介して前記制御ユニット(INV)と接続され、前記ケース(9)内の油の温度を検出する油温センサ(63)と、
第4信号線(S4)を介して前記制御ユニット(INV)と接続され、少なくとも前記回転電機(MG)に油を供給する油圧ポンプ(7)と、を更に備え、
前記油温センサ(63)及び前記油圧ポンプ(7)は、前記回転電機室(A11)に収容され、
前記第3信号線(S3)及び前記第4信号線(S4)が、前記第1連通部(91b)を通るように配置されていると好適である。
【0091】
この構成によれば、第1信号線(S1)及び第2信号線(S2)に加えて、第3信号線(S3)及び第4信号線(S4)も、ケース(9)の内部に配置された第1区画部(91)の第1連通部(91b)を通って、回転電機室(A11)と第2収容室(A2)とに亘って配置されている。そして、回転センサ(61)及び温度センサ(62)に加えて、油温センサ(63)及び油圧ポンプ(7)も、回転電機室(A11)に収容されている。したがって、制御ユニット(INV)に対する回転センサ(61)、温度センサ(62)、油温センサ(63)、及び油圧ポンプ(7)の接続構造を簡易なものとすることができる。
【0092】
また、前記回転電機(MG)の回転軸心に沿う方向を軸方向(L)とし、前記軸方向(L)の一方側を軸方向第1側(L1)とし、前記軸方向(L)の他方側を軸方向第2側(L2)として、
前記伝達ギヤ機構(2)は、前記回転電機(MG)に対して前記軸方向第1側(L1)に配置され、
前記回転センサ(61)は、前記ロータ(RT)に対して前記軸方向第2側(L2)に配置され、
前記ステータ(ST)は、ステータコア(STC)と、前記ステータコア(STC)に対して前記軸方向第2側(L2)に突出したコイルエンド部(C2)と、を備え、
前記温度センサ(62)は、前記コイルエンド部(C2)に配置されていると好適である。
【0093】
この構成によれば、制御ユニット(INV)と電気的に接続される回転センサ(61)及び温度センサ(62)の双方を、軸方向第2側(L2)に寄せて配置することができる。これにより、回転センサ(61)と制御ユニット(INV)とを接続する第1信号線(S1)と、温度センサ(62)と制御ユニット(INV)とを接続する第2信号線(S2)とを、まとめて配置することが容易となる。したがって、制御ユニット(INV)に対する回転センサ(61)及び温度センサ(62)の接続構造を更に簡易なものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本開示に係る技術は、車輪の駆動力源として機能する回転電機と、当該回転電機のロータに駆動連結された入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、入力部材と出力部材とを駆動連結する伝達ギヤ機構と、回転電機を制御する制御ユニットと、回転電機のロータの回転を検出する回転センサと、回転電機のステータの温度を検出する温度センサと、回転電機及び制御ユニット等を収容するケースと、を備えた車両用駆動装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
100:車両用駆動装置、1:入力部材、2:伝達ギヤ機構、3:出力部材、4:出力部材、61:回転センサ、62:温度センサ、9:ケース、91:第1区画部、91b:第1連通部、A1:第1収容室、A2:第2収容室、INV:制御ユニット、MG:回転電機、ST:ステータ、RT:ロータ、S1:第1信号線、S2:第2信号線、W:車輪
図1
図2
図3