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特許7405276化合物、樹脂組成物、樹脂シート、樹脂硬化物および積層基板
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  • 特許-化合物、樹脂組成物、樹脂シート、樹脂硬化物および積層基板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】化合物、樹脂組成物、樹脂シート、樹脂硬化物および積層基板
(51)【国際特許分類】
   C07C 43/23 20060101AFI20231219BHJP
   C07C 217/86 20060101ALI20231219BHJP
   C07C 255/54 20060101ALI20231219BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20231219BHJP
   C08G 65/34 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C07C43/23 C CSP
C07C217/86
C07C255/54
C08G59/40
C08G65/34
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022554773
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2022008037
(87)【国際公開番号】W WO2022209495
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2021061845
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 尭
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 寛史
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-134412(JP,A)
【文献】特開2016-155953(JP,A)
【文献】特開2012-131992(JP,A)
【文献】国際公開第2013/065159(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/203444(WO,A1)
【文献】VELMURUGAN, K. et al.,Dual Functional Fluorescent Chemosensor for Discriminative Detection of Ni2+ and Al3+ Ions and Its Imaging in Living Cells,ACS Sustainable Chemistry & Engineering,2018年10月18日,Vol.6, No.12,pp.16532-16543,ISSN: 2168-0485
【文献】SHIRBHATE, M.E. et al.,Selective fluorescent recognition of Zn2+ by using chiral binaphthol-pyrene probes,Dyes and Pigments,2019年04月01日,Vol.167,p.29-35,ISSN: 0143-7208
【文献】VELMURUGAN, K. et al.,A Novel Dimeric BINOL for Enantioselective Recognition of 1,2-Amino Alcohols,Chinese Journal of Chemistry,2014年09月15日,Vol.32, No.11,p.1157-1160,ISSN: 1001-604X
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C08G
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(10)~(13)で表されるいずれかである、化合物。
【化1】

(式(10)において、R1~R12はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。Zは水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基から選ばれるいずれか1種の末端基である。nは1以上の整数である。)
【化2】

(式(11)において、R1~R12はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。Zは水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基から選ばれるいずれか1種の末端基である。nは1以上の整数である。)
【化3】

(式(12)において、R1~R12はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。Zは水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基から選ばれるいずれか1種の末端基である。nは1以上の整数である。)
【化4】

(式(13)において、R1~R12はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。Zは水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基から選ばれるいずれか1種の末端基である。nは1以上の整数である。)
【請求項2】
前記一般式(13)で表される化合物であって、
前記R1~前記R4が水素であり、
前記R5~前記R8のうちいずれか1つがメチル基で他が水素であり、
前記R9~前記R12のうちいずれか1つがメチル基で他が水素である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の化合物を含む樹脂組成物。
【請求項4】
芳香族環基、エーテル酸素、メチレン基、芳香族環基、メチレン基、エーテル酸素、芳香族環基が、この順に結合された鎖状構造を有し、
前記鎖状構造の両末端に配置された前記芳香族環基の炭素に、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基から選ばれるいずれか1種の末端基がそれぞれ結合している化合物と、前記鎖状構造の両末端に配置された前記芳香族環基の炭素にヒドロキシメチル基が結合している化合物のうち一方または両方を含む請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
エポキシ樹脂と、硬化剤とを含む樹脂組成物であり、
前記硬化剤が、請求項1または請求項2に記載の化合物を含む樹脂組成物。
【請求項6】
請求項3請求項5のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む樹脂シート。
【請求項7】
請求項3請求項5のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む樹脂硬化物。
【請求項8】
複数の樹脂基板が積層されてなり、前記複数の樹脂基板のうち、少なくとも一つが請求項7に記載の樹脂硬化物である積層基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、樹脂組成物、樹脂シート、樹脂硬化物および積層基板に関する。
本願は、2021年3月31日に、日本に出願された特願2021-061845号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクスデバイスの小型化の要求に伴って、電子部品の高機能化および高密度化実装がすすめられている。そのため、電子部品から発生する熱の処理が重要となっている。
電子部品で発生した熱は、主に基板を通して外部に放熱されている。樹脂基板を積層した電源用の積層基板では、特に高い放熱性が要求される。このため、樹脂基板中にアルミナ、窒化ホウ素、酸化マグネシウムなどの無機粒子を添加して、樹脂基板の熱伝導性を高めている。例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂と硬化剤と無機フィラーを含有するエポキシ樹脂組成物が記載されている。
【0003】
しかし、熱伝導率を向上させるために樹脂基板中における無機粒子の含有率を増加させると、樹脂基板の加工性および強度が低下する。そこで、樹脂基板中における無機粒子の含有率を抑制して樹脂基板の加工性および強度を確保しても、放熱性の高い樹脂基板が得られるように、熱伝導率の高い硬化物の得られる樹脂の開発が進められている。
【0004】
熱伝導率の高い樹脂として、メソゲン骨格を導入したエポキシ樹脂がある(例えば、非特許文献1参照)。
また、特許文献2には、少なくとも2官能エポキシ樹脂とビフェノール化合物とを反応させて得られるエポキシ樹脂の混合物が開示されている。
特許文献3には、フィラーと分子内にメソゲン基を有する熱硬化性樹脂とを含む樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特許第6074447号公報(B)
【文献】日本国特開2012-131992号公報(A)
【文献】国際公開第2013/065159号(A)
【非特許文献】
【0006】
【文献】竹澤由高、高分子65巻2月号、p65-67、2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の樹脂組成物は、十分に熱伝導率の高い硬化物が得られるものではなかった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、熱伝導率の高い硬化物の得られる樹脂組成物の材料として使用される化合物を提供することを課題とする。
また、本発明は、本発明の化合物を含み、熱伝導率の高い硬化物の得られる樹脂組成物、樹脂シート、樹脂硬化物および積層基板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために、樹脂組成物の材料として使用される化合物の骨格および末端基に着目して、鋭意検討を重ねた。
その結果、置換基を有してもよい芳香族環基とエーテル酸素とメチレン基とが特定の順序で結合された鎖状構造を有し、鎖状構造の第1末端に配置された前記芳香族環基の炭素に、ヒドロキシメチル基が結合し、鎖状構造の第2末端に配置された前記芳香族環基の炭素に、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基から選ばれるいずれか1種の末端基が結合している化合物とすればよいことを見出した。
すなわち、本発明は、以下の発明に関わる。
【0009】
[1]芳香族環基、エーテル酸素、メチレン基、芳香族環基、メチレン基、エーテル酸素、芳香族環基が、この順に結合された鎖状構造を有し、
前記鎖状構造の第1末端に配置された前記芳香族環基の炭素に、ヒドロキシメチル基が結合し、
前記鎖状構造の第2末端に配置された前記芳香族環基の炭素に、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基から選ばれるいずれか1種の末端基が結合している化合物。
【0010】
[2]第1芳香族環基と、前記第1芳香族環基に結合する2つのエーテル酸素とからなる第1芳香族環ユニットと、
第2芳香族環基と、前記第2芳香族環基に結合する2つのメチレン基とからなる第2芳香族環ユニットと、
第3芳香族環基と、前記第3芳香族環基に結合するヒドロキシメチル基とからなる第3芳香族環ユニットと、
第4芳香族環基と、前記第4芳香族環基に結合する前記末端基とからなる第4芳香族環ユニットと、を含み、
前記鎖状構造が、前記第1芳香族環ユニットと前記第2芳香族環ユニットとが交互に配置され、両端に前記第1芳香族環ユニットが配置された骨格を有し、前記骨格の第1末端にメチレン基によって前記第3芳香族環基が結合され、前記骨格の第2末端にメチレン基によって前記第4芳香族環基が結合されている、
または前記鎖状構造が、前記第1芳香族環ユニットと前記第2芳香族環ユニットとが交互に配置され、両端に前記第2芳香族環ユニットが配置された骨格を有し、前記骨格の第1末端にエーテル酸素によって前記第3芳香族環基が結合され、前記骨格の第2末端にエーテル酸素によって前記第4芳香族環基が結合されている[1]に記載の化合物。
【0011】
[3]第1芳香族環基と、前記第1芳香族環基に結合する2つのエーテル酸素とからなる第1芳香族環ユニットと、
第2芳香族環基と、前記第2芳香族環基に結合する2つのメチレン基とからなる第2芳香族環ユニットと、
第3芳香族環基と、前記第3芳香族環基に結合するヒドロキシメチル基とからなる第3芳香族環ユニットと、
第4芳香族環基と、前記第4芳香族環基に結合する前記末端基とからなる第4芳香族環ユニットと、を含み、
前記鎖状構造が、前記第1芳香族環ユニットと前記第2芳香族環ユニットとが交互に配置された骨格を有し、
前記第1芳香族環ユニット側の末端にメチレン基によって前記第3芳香族環基が結合され、前記第2芳香族環ユニット側の末端にエーテル酸素によって前記第4芳香族環基が結合されている、
または前記第1芳香族環ユニット側の末端にメチレン基によって前記第4芳香族環基が結合され、前記第2芳香族環ユニット側の末端にエーテル酸素によって前記第3香族環基が結合されている[1]に記載の化合物。
【0012】
[4]下記一般式(1)~(4)で表されるいずれかである[1]に記載の化合物。
【0013】
【化1】
(式(1)において、Arはそれぞれ独立に置換基を有してもよい第1芳香族環基であり、Arはそれぞれ独立に置換基を有してもよい第2芳香族環基であり、Arは置換基を有してもよい第3芳香族環基であり、Arは置換基を有してもよい第4芳香族環基である。Zは前記末端基である。nは0以上の整数である。)
【化2】
(式(2)において、Arはそれぞれ独立に置換基を有してもよい第1芳香族環基であり、Arはそれぞれ独立に置換基を有してもよい第2芳香族環基であり、Arは置換基を有してもよい第3芳香族環基であり、Arは置換基を有してもよい第4芳香族環基である。Zは前記末端基である。nは1以上の整数である。)
【化3】
(式(3)において、Arはそれぞれ独立に置換基を有してもよい第1芳香族環基であり、Arはそれぞれ独立に置換基を有してもよい第2芳香族環基であり、Arは置換基を有してもよい第3芳香族環基であり、Arは置換基を有してもよい第4芳香族環基である。Zは前記末端基である。nは1以上の整数である。)
【化4】
(式(4)において、Arはそれぞれ独立に置換基を有してもよい第1芳香族環基であり、Arはそれぞれ独立に置換基を有してもよい第2芳香族環基であり、Arは置換基を有してもよい第3芳香族環基であり、Arは置換基を有してもよい第4芳香族環基である。Zは前記末端基である。nは1以上の整数である。)
【0014】
[5]前記第1芳香族環基と前記第2芳香族環基と前記第3芳香族環基と前記第4芳香族環基のいずれか1つ以上が、下記式(5)~(9)で表されるいずれかの芳香族環基である[2]~[4]のいずれかに記載の化合物。
【0015】
【化5】
(式(5)において、R21~R24はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。*は結合手である。)
【0016】
【化6】
(式(6)において、R25~R30はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。*は結合手である。)
【0017】
【化7】
(式(7)において、R31~R36はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。*は結合手である。)
【0018】
【化8】
(式(8)において、R37~R42はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。*は結合手である。)
【0019】
【化9】
(式(9)において、R43~R50はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。*は結合手である。)
【0020】
[6]前記第1芳香族環基と前記第2芳香族環基と前記第3芳香族環基と前記第4芳香族環基のいずれか1つ以上が、置換基を有してもよいパラフェニレン基である[2]~[5]のいずれかに記載の化合物。
[7]前記第1芳香族環基と前記第4芳香族環基とが同一であり、
前記第2芳香族環基が、パラフェニレン基である[2]~[5]のいずれかに記載の化合物。
【0021】
[8]下記一般式(10)~(13)で表されるいずれかである[1]に記載の化合物。
【0022】
【化10】
(式(10)において、R1~R12はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。Zは前記末端基である。nは1以上の整数である。)
【0023】
【化11】
(式(11)において、R1~R12はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。Zは前記末端基である。nは1以上の整数である。)
【0024】
【化12】
(式(12)において、R1~R12はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。Zは前記末端基である。nは1以上の整数である。)
【0025】
【化13】
(式(13)において、R1~R12はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。Zは前記末端基である。nは1以上の整数である。)
【0026】
[9]前記一般式(13)で表される化合物であって、
前記R1~前記R4が水素であり、
前記R5~前記R8のうちいずれか1つがメチル基で他が水素であり、
前記R9~前記R12のうちいずれか1つがメチル基で他が水素である[8]に記載の化合物。
【0027】
[10][1]~[9]のいずれかに記載の化合物を含む樹脂組成物。
[11]芳香族環基、エーテル酸素、メチレン基、芳香族環基、メチレン基、エーテル酸素、芳香族環基が、この順に結合された鎖状構造を有し、
前記鎖状構造の両末端に配置された前記芳香族環基の炭素に、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基から選ばれるいずれか1種の末端基がそれぞれ結合している化合物と、前記鎖状構造の両末端に配置された前記芳香族環基の炭素にヒドロキシメチル基が結合している化合物のうち一方または両方を含む[10]に記載の樹脂組成物。
【0028】
[12]エポキシ樹脂と、硬化剤とを含む樹脂組成物であり、
前記硬化剤が、[1]~[9]のいずれかに記載の化合物を含む樹脂組成物。
【0029】
[13][10]~[12]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む樹脂シート。
[14][10]~[12]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物を含む樹脂硬化物。
[15]複数の樹脂基板が積層されてなり、前記複数の樹脂基板のうち、少なくとも一つが[14]に記載の樹脂硬化物である積層基板。
【発明の効果】
【0030】
本発明の化合物は、芳香族環基、エーテル酸素、メチレン基、芳香族環基、メチレン基、エーテル酸素、芳香族環基が、この順に結合された鎖状構造を有している。本発明の化合物の有する鎖状構造は、液晶性を発現するメソゲン基であり、剛直性を付与する芳香族環基と、運動性を付与するメチレン基およびエーテル酸素とが、特定の順序で配置された構造を有する。このことから、本発明の化合物は、メソゲン基自体の適度な運動性によってスメクチック液晶相を安定化できる。よって、本発明の化合物は、高い配向性を有する。
【0031】
さらに、本発明の化合物は、鎖状構造の第1末端に配置された芳香族環基の炭素に、ヒドロキシメチル基が結合し、鎖状構造の第2末端に配置された芳香族環基の炭素に、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基から選ばれるいずれか1種の末端基が結合している。このため、本発明の化合物を含む樹脂組成物を重合させることにより、メソゲン構造に起因するスメクチック液晶構造を有し、高い熱伝導性を有する硬化物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の樹脂シートおよび樹脂基板一例を示した斜視図である。
図2図2は、図1に示す樹脂シートおよび樹脂基板のII-II線断面図である。
図3図3は、本発明の積層基板の一例を示した斜視図である。
図4図4は、図3に示す積層基板のIV-IV線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。したがって、図面に記載の各構成要素の寸法比率などは、実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施可能である。
【0034】
「化合物」
本実施形態の化合物は、芳香族環基、エーテル酸素、メチレン基、芳香族環基、メチレン基、エーテル酸素、芳香族環基が、この順に結合された鎖状構造を有する。
本実施形態の化合物では、鎖状構造の第1末端に配置された芳香族環基の炭素に、ヒドロキシメチル基が結合し、鎖状構造の第2末端に配置された芳香族環基の炭素に、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基から選ばれるいずれか1種の末端基が結合している。
【0035】
本実施形態の化合物は、以下に示す第1芳香族環ユニットと、第2芳香族環ユニットと、第3芳香族環ユニットと、第4芳香族環ユニットと、を含むことが好ましい。
第1芳香族環ユニットは、第1芳香族環基と、第1芳香族環基に結合する2つのエーテル酸素とからなる。
第2芳香族環ユニットは、第2芳香族環基と、第2芳香族環基に結合する2つのメチレン基とからなる。
第3芳香族環ユニットは、第3芳香族環基と、第3芳香族環基に結合するヒドロキシメチル基とからなる。
第4芳香族環ユニットは、第4芳香族環基と、第4芳香族環基に結合する末端基とからなる。
【0036】
本実施形態の化合物における鎖状構造は、第1芳香族環ユニットと第2芳香族環ユニットとが交互に配置され、両端に第1芳香族環ユニットが配置された骨格を有していてもよい。この場合、骨格の第1末端にメチレン基によって第3芳香族環基が結合され、骨格の第2末端にメチレン基によって第4芳香族環基が結合されていることが好ましい。
本実施形態の化合物における鎖状構造は、第1芳香族環ユニットと第2芳香族環ユニットとが交互に配置され、両端に第2芳香族環ユニットが配置された骨格を有していてもよい。この場合、骨格の第1末端にエーテル酸素によって第3芳香族環基が結合され、骨格の第2末端にエーテル酸素によって第4芳香族環基が結合されていることが好ましい。
【0037】
鎖状構造は、第1芳香族環ユニットと第2芳香族環ユニットとが交互に配置され、両端に第1芳香族環ユニットが配置された骨格、または両端に第2芳香族環ユニットが配置された骨格であることにより、対称構造を有する骨格とされていることが好ましい。骨格が対称構造を有する場合、硬化物が秩序構造を形成しやすいため、より一層高い熱伝導性を有する硬化物が得られる。
【0038】
本実施形態の化合物における鎖状構造は、第1芳香族環ユニットと第2芳香族環ユニットとが交互に配置され、一方の端部に第1芳香族環ユニットが配置され、他方の端部に第2芳香族環ユニットが配置された骨格を有していてもよい。
このような骨格を有する場合、第1芳香族環ユニット側の末端にメチレン基によって第3芳香族環基が結合され、第2芳香族環ユニット側の末端にエーテル酸素によって第4芳香族環基が結合されていることが好ましい。また、第1芳香族環ユニット側の末端にメチレン基によって第4芳香族環基が結合され、第2芳香族環ユニット側の末端にエーテル酸素によって第3香族環基が結合されていることも好ましい。
【0039】
本実施形態の化合物における第1芳香族環基、第2芳香族環基、第3芳香族環基および第4芳香族環基は、いずれも芳香族環基であればよく、置換基を有していてもよい。第1芳香族環基、第2芳香族環基、第3芳香族環基および第4芳香族環基は、それぞれ異なっていてもよいし、一部または全部が同じであってもよく、化合物の用途などに応じて適宜決定できる。
【0040】
本実施形態の化合物が複数の第1芳香族環基を有する場合、複数の第1芳香族環基は、それぞれ異なるものであってもよいし、一部または全部が同じであってもよい。複数の第1芳香族環基が全て同じである化合物は、容易に製造できるため、好ましい。
また、本実施形態の化合物が複数の第2芳香族環基を有する場合、複数の第2芳香族環基は、それぞれ異なるものであってもよいし、一部または全部が同じであってもよい。複数の第2芳香族環基が全て同じである化合物は、容易に製造できるため、好ましい。
【0041】
本実施形態の化合物において、第1芳香族環基、第2芳香族環基、第3芳香族環基および第4芳香族環基における置換基は、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種であることが好ましく、化合物の用途などに応じて適宜決定でき、特に限定されない。これらの置換基の中でも特に、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基が、化学的安定性および環境負荷低減の面から好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0042】
本実施形態の化合物における第1芳香族環基、第2芳香族環基、第3芳香族環基および第4芳香族環基のいずれか1つ以上は、例えば、下記一般式(5)~(9)で表されるいずれかの芳香族環基であってもよい。第1芳香族環基、第2芳香族環基、第3芳香族環基、第4芳香族環基のいずれか1つ以上が、一般式(5)~(9)で表される芳香族環基である場合、より熱伝導率の高い重合物が得られ、しかもハンドリング性が良好な化合物となるため、好ましい。
【0043】
【化14】
(式(5)において、R21~R24はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。*は結合手である。)
【0044】
【化15】
(式(6)において、R25~R30はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。*は結合手である。)
【0045】
【化16】
(式(7)において、R31~R36はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。*は結合手である。)
【0046】
【化17】
(式(8)において、R37~R42はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。*は結合手である。)
【0047】
【化18】
(式(9)において、R43~R50はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。*は結合手である。)
【0048】
本実施形態の化合物における第1芳香族環基と第2芳香族環基と第3芳香族環基と第4芳香族環基のいずれか1つ以上は、より熱伝導率の高い重合物が得られる化合物とするため、置換基を有してもよいフェニレン基であることが好ましい。置換基を有してもよいフェニレン基におけるフェニレン基は、オルトフェニレン基、メタフェニレン基、パラフェニレン基のいずれであってもよく、高い配向性を示す骨格を有する化合物となるため、式(5)で表されるパラフェニレン基であることが特に好ましい。特に、第2芳香族環基がパラフェニレン基であると、パラフェニレン基の両側にメチレン基が結合した構造を含む化合物となり、より熱伝導性の良好な重合物が得られるため、好ましい。
【0049】
本実施形態の化合物においては、特に、第1芳香族環基と第4芳香族環基とが同一であり、第2芳香族環基がパラフェニレン基であることが好ましい。このような化合物は、液晶状態を取りやすいため秩序化に有利である。
また、本実施形態の化合物における第2芳香族環基が、置換基を有さないパラフェニレン基であると、原料の入手が容易であるとともに、低融点で溶媒への溶解性が良好な化合物となる。
【0050】
本実施形態の化合物としては、例えば、下記一般式(1)~(4)で表されるいずれかの化合物が挙げられる。
【0051】
【化19】
(式(1)において、Arはそれぞれ独立に置換基を有してもよい第1芳香族環基であり、Arはそれぞれ独立に置換基を有してもよい第2芳香族環基であり、Arは置換基を有してもよい第3芳香族環基であり、Arは置換基を有してもよい第4芳香族環基である。Zは前記末端基である。nは0以上の整数である。)
【0052】
【化20】
(式(2)において、Arはそれぞれ独立に置換基を有してもよい第1芳香族環基であり、Arはそれぞれ独立に置換基を有してもよい第2芳香族環基であり、Arは置換基を有してもよい第3芳香族環基であり、Arは置換基を有してもよい第4芳香族環基である。Zは前記末端基である。nは1以上の整数である。)
【0053】
【化21】
(式(3)において、Arはそれぞれ独立に置換基を有してもよい第1芳香族環基であり、Arはそれぞれ独立に置換基を有してもよい第2芳香族環基であり、Arは置換基を有してもよい第3芳香族環基であり、Arは置換基を有してもよい第4芳香族環基である。Zは前記末端基である。nは1以上の整数である。)
【0054】
【化22】
(式(4)において、Arはそれぞれ独立に置換基を有してもよい第1芳香族環基であり、Arはそれぞれ独立に置換基を有してもよい第2芳香族環基であり、Arは置換基を有してもよい第3芳香族環基であり、Arは置換基を有してもよい第4芳香族環基である。Zは前記末端基である。nは1以上の整数である。)
【0055】
一般式(1)~(4)で表されるいずれかの化合物は、いずれも第1芳香族環ユニット(式(1)~(4)において-O-Ar-O-で示される)と、第2芳香族環ユニットと(式(1)~(4)において-CH-Ar-CH-で示される)と、第3芳香族環ユニット(式(1)~(4)において-Ar-CH-OHで示される)と、第4芳香族環ユニット(式(1)~(4)において-Ar-Zで示される)とを含む。
【0056】
一般式(1)~(4)で表される化合物において、第1芳香族環ユニットは、上記の第1芳香族環基(式(1)~(4)においてArで示される)と、第1芳香族環基に結合する2つのエーテル酸素とを有する。
第2芳香族環ユニットは、上記の第2芳香族環基(式(1)~(4)においてArで示される)と、第2芳香族環基に結合する2つのメチレン基とを有する。
第3芳香族環ユニットは、上記の第3芳香族環基(式(1)~(4)のArで示される)と、ヒドロキシメチル基(式(1)~(4)において-CH-OHで示される)とからなる。
第4芳香族環ユニットは、上記の第4芳香族環基(式(1)~(4)のArで示される)と、末端基(式(1)~(4)においてZで示される)とからなる。
【0057】
一般式(1)で表される化合物は、第1芳香族環ユニットと、第2芳香族環ユニットとが鎖状に交互に配置され、両端が第2芳香族環ユニットで終端された骨格を有する。一般式(1)で表される化合物では、第2芳香族環ユニットのメチレン基が骨格の両端に配置され、第1末端の第2芳香族環ユニットがエーテル酸素によって式(1)のArで示される第3芳香族環基と結合され、第2末端の第2芳香族環ユニットがエーテル酸素によって式(1)のArで示される第4芳香族環基と結合している。
【0058】
また、一般式(2)で表される化合物は、第1芳香族環ユニットと、第2芳香族環ユニットとが鎖状に交互に配置され、両端が第1芳香族環ユニットで終端された骨格を有する。一般式(2)で表される化合物では、第1芳香族環ユニットのエーテル酸素が骨格の両端に配置され、第1末端の第1芳香族環ユニットがメチレン基によって式(2)のArで示される第3芳香族環基と結合され、第2末端の第1芳香族環ユニットがメチレン酸素によって式(1)のArで示される第4芳香族環基と結合している。
【0059】
また、一般式(3)で表される化合物は、第1芳香族環ユニットと、第2芳香族環ユニットとが鎖状に交互に配置された骨格を有する。一般式(3)で表される化合物では、第1芳香族環ユニット側の末端にメチレン基によって第4芳香族環基が結合され、第2芳香族環ユニット側の末端にエーテル酸素によって第3芳香族環基が結合されている。
また、一般式(4)で表される化合物は、第1芳香族環ユニットと、第2芳香族環ユニットとが鎖状に交互に配置された骨格を有する。一般式(4)で表される化合物では、第1芳香族環ユニット側の末端にメチレン基によって第3香族環基が結合され、第2芳香族環ユニット側の末端にエーテル酸素によって第4芳香族環基が結合されている。
【0060】
したがって、一般式(1)~(4)で表される化合物は、いずれも鎖状構造の第1末端に配置された芳香族環基の炭素にヒドロキシメチル基(-CH-OH)が結合し、鎖状構造の第2末端に配置された芳香族環基の炭素に式(1)~(4)においてZで示される末端基が結合したものである。
【0061】
本実施形態の化合物において、第1芳香族環基と第3芳香族環基と第4芳香族環基とが、式(5)で表される置換基を有してもよいパラフェニレン基であって、第2芳香族環基が、置換基を有さないパラフェニレン基である化合物としては、例えば、下記一般式(10)~(13)で表される化合物が挙げられる。
【0062】
【化23】
(式(10)において、R1~R12はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。Zは前記末端基である。nは1以上の整数である。)
【0063】
【化24】
(式(11)において、R1~R12はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。Zは前記末端基である。nは1以上の整数である。)
【0064】
【化25】
(式(12)において、R1~R12はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。Zは前記末端基である。nは1以上の整数である。)
【0065】
【化26】
(式(13)において、R1~R12はそれぞれ独立に水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれるいずれか1種である。Zは前記末端基である。nは1以上の整数である。)
【0066】
一般式(10)~(13)で表される化合物は、第1芳香族環基と第3芳香族環基と第4芳香族環基が、一般式(5)で表される置換基を有してもよいパラフェニレン基であって、第2芳香族環基が、置換基を有さないパラフェニレン基である。したがって、一般式(10)~(13)で表される化合物は、置換基を有さないパラフェニレン基の両側にメチレン基が結合した構造を含む骨格を有するものとなり、高い配向性を示す。よって、一般式(10)~(13)で表される化合物を含む樹脂組成物は、より熱伝導性の良好な重合物が得られる。また、一般式(10)~(13)で表される化合物は、第2芳香族環基が置換基を有さないパラフェニレン基であるため、原料の入手が容易である。
【0067】
一般式(10)で表される化合物は、第1芳香族環ユニットと第2芳香族環ユニットとからなる対称構造の骨格を有し、硬化物が秩序構造を形成しやすいため、より一層高い熱伝導性を有する硬化物が得られる。しかも、一般式(10)で表される化合物は、骨格の第1末端の構造と第2末端の構造とが異なる非対称の分子構造を有しているため、硬化反応が段階的に進行する。すなわち、一般式(10)で表される化合物においては、用途などに応じて末端基の種類を適宜選択することにより、硬化反応を制御できる。また、一般式(10)で表される化合物は、鎖状構造の第1末端に配置された芳香族環基の炭素に、ヒドロキシメチル基が結合しているので、溶解性に優れる。
【0068】
一般式(11)で表される化合物は、第1芳香族環ユニットと第2芳香族環ユニットとからなる対称構造の骨格を有し、硬化物が秩序構造を形成しやすいため、より一層高い熱伝導性を有する硬化物が得られる。しかも、一般式(11)で表される化合物は、骨格の第1末端の構造と第2末端の構造とが異なる非対称の分子構造を有しているため、硬化反応が段階的に進行する。すなわち、一般式(11)で表される化合物においては、用途などに応じて末端基の種類を適宜選択することにより、硬化反応を制御できる。また、一般式(11)で表される化合物は、鎖状構造の第1末端に配置された芳香族環基の炭素に、ヒドロキシメチル基が結合しているので、溶解性に優れる。
【0069】
一般式(12)で表される化合物は、第1芳香族環ユニットと第2芳香族環ユニットとが交互に配置された骨格を有し、硬化物が秩序構造を形成しやすいため、より一層高い熱伝導性を有する硬化物が得られる。しかも、一般式(12)で表される化合物は、骨格の第1末端の構造と第2末端の構造とが異なる非対称の分子構造を有しているため、硬化反応が段階的に進行する。すなわち、一般式(12)で表される化合物においては、用途などに応じて末端基の種類を適宜選択することにより、硬化反応を制御できる。また、一般式(12)で表される化合物は、鎖状構造の第1末端に配置された芳香族環基の炭素に、ヒドロキシメチル基が結合しているので、溶解性に優れる。
【0070】
一般式(13)で表される化合物は、第1芳香族環ユニットと第2芳香族環ユニットとが交互に配置された骨格を有し、硬化物が秩序構造を形成しやすいため、より一層高い熱伝導性を有する硬化物が得られる。しかも、一般式(13)で表される化合物は、骨格の第1末端の構造と第2末端の構造とが異なる非対称の分子構造を有しているため、硬化反応が段階的に進行する。すなわち、一般式(13)で表される化合物においては、用途などに応じて末端基の種類を適宜選択することにより、硬化反応を制御できる。また、一般式(13)で表される化合物は、鎖状構造の第1末端に配置された芳香族環基の炭素に、ヒドロキシメチル基が結合しているので、溶解性に優れる。
【0071】
本実施形態の化合物が一般式(13)で表される化合物である場合、式(13)中のR1~R4が水素であり、R5~R8のうちいずれか1つがメチル基で他が水素であり、R9~R12のうちいずれか1つがメチル基で他が水素であることが好ましい。このような化合物は、原料の入手が容易であり、容易に製造できる。
【0072】
本実施形態の化合物においては、第1芳香族環基と第2芳香族環基とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。したがって、第1芳香族環基と第2芳香族環基は、両方とも置換基を有さないパラフェニレン基であってもよい。この場合、原料の入手が容易であり、好ましい。また、第1芳香族環基と第2芳香族環基とが異なる場合、第1芳香族環基と第2芳香族環基が同じである場合と比較して、骨格における構造の対称性が低くなる。このため、化合物の結晶性が低下し、スメクチック液晶相が安定化する。その結果、より熱伝導性の良好な重合物が得られる化合物となる。
【0073】
一般式(1)~(4)(10)~(13)で表される化合物において、nは括弧内に記載された繰り返し単位の数である。一般式(1)で表される化合物において、nは0以上の整数である。nが0以上であると、上記骨格を有することによる重合物の熱伝導率を向上させる効果が得られる。上記骨格を有することによる重合物の熱伝導率を向上させる効果がより顕著となるように、nは1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。一般式(2)~(4)(10)~(13)で表される化合物において、nは1以上の整数である。nが1以上であると、上記骨格を有することによる重合物の熱伝導率を向上させる効果が得られる。上記骨格を有することによる重合物の熱伝導率を向上させる効果がより顕著となるように、nは2以上であることが好ましい。
【0074】
また、一般式(1)~(4)(10)~(13)中のnの上限は特に限定されないが、化合物の溶媒への溶解性を確保するため、20以下であることが好ましい。溶媒への溶解性がより良好な化合物となるため、nは、10以下であることがより好ましく、6以下であることがさらに好ましい。
【0075】
本実施形態の化合物の骨格は、1つの第1芳香族環ユニットと1つの第2芳香族環ユニットとからなる繰り返し単位を有することが好ましい。本実施形態の化合物は、繰り返し単位の数が異なる複数種の化合物を含む混合物であってもよいし、繰り返し単位の数が同じである単独種の化合物であってもよい。
本実施形態の化合物が、繰り返し単位の数が異なる複数種の化合物を含む混合物である場合、混合物に含まれる化合物の繰り返し単位の数の平均値である平均重合度は、1.0~6.0であることが好ましく、2.0~5.0であることがより好ましい。平均重合度が1.0以上であると、この化合物を含む樹脂組成物は、より熱伝導性の高い重合物が得られるものとなる。また、平均重合度が6.0以下であると、溶媒への溶解性がより良好な化合物となる。
【0076】
本実施形態の化合物においては、鎖状構造の第1末端に配置された第3芳香族環基の炭素に、ヒドロキシメチル基が結合している。また、鎖状構造の第2末端に配置された第4芳香族環基の炭素に、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基から選ばれるいずれか1種の末端基がそれぞれ結合している。末端基は、化合物の用途などに応じて適宜決定できる。
【0077】
本実施形態の化合物において、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基から選ばれるいずれか1種の末端基は、いずれも鎖状構造の第2末端に配置された第4芳香族環基の炭素に、容易に結合させることができる。したがって、本実施形態の化合物は、容易に製造できる。特に、末端基が水酸基である場合、少ない工程で効率よく製造できるため、好ましい。また、これらの末端基は、エポキシ基と反応する。このため、本実施形態の化合物は、エポキシ樹脂の硬化剤として、好適に使用できる。
【0078】
また、本実施形態の化合物とエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物を、重合してなる重合生成物(硬化物)は、高い熱伝導性を有する。本実施形態の化合物を、エポキシ樹脂の硬化剤として使用する場合、末端基としては上記の中でも特に水酸基が好ましい。それは、第1末端にヒドロキシメチル基が結合し、第2末端に末端基として水酸基が結合した化合物と、エポキシ樹脂とを含む樹脂組成物は、重合反応の制御が容易であるとともに、より熱伝導性および化学的安定性の良好な硬化物が得られるためである。
本実施形態の化合物においては、用途などに応じて末端基の種類を適宜選択できる。このことにより、本実施形態の化合物を含む樹脂組成物中において、他の単量体などとの反応性を調整できる。
【0079】
「化合物の製造方法」
本実施形態の化合物は、例えば、以下に示す方法により製造できる。本実施形態では、化合物の製造方法として、一般式(1)~一般式(4)で表される化合物の製造方法を例に挙げて説明する。
【0080】
「一般式(1)で表される化合物の製造方法」
2つのフェノール性水酸基を有する芳香族化合物である第1原料と、モノハロゲン化メチル基を有する芳香族化合物である第2原料とを用意する。
そして、第1原料と第2原料とを、炭酸カリウムを用いて二分子求核置換反応(S2反応)させて、本実施形態の化合物における鎖状構造の由来となる骨格を有する第1前駆体化合物を合成する。このとき、第1原料よりも第2原料のモル比を多くすることにより、両端に第2原料に由来する構造が配置された骨格を有する第1前駆体化合物を製造する。第1原料と第2原料とを反応させる条件は、第1原料と第2原料との組み合わせに応じて適宜決定でき、特に限定されない。
【0081】
本実施形態の化合物の製造方法において使用される第1原料は、2つのフェノール性水酸基を有する芳香族化合物であり、製造する化合物における第1芳香族環基の構造に応じて適宜選択される。第1原料としては、例えば、メチルヒドロキノン、ヒドロキノン、テトラメチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、2-(トリフルオロメチル)-1,4-ベンゼンジオール、フルオロヒドロキノン、クロロヒドロキノン、ブロモヒドロキノン、2,5-ジヒドロキシニトロベンゼン、テトラフルオロヒドロキノン、テトラクロロヒドロキノン、テトラブロモヒドロキノン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル-4,4’-ジオールなどが挙げられる。
【0082】
本実施形態の化合物の製造方法において使用される第2原料は、モノハロゲン化メチル基を有する芳香族化合物であり、製造する化合物における第2芳香族環基の構造に応じて適宜選択される。第2原料としては、例えば、α,α’-ジクロロ-p-キシレン、1,4-ビス(クロロメチル)-2-メチルベンゼン、3,6-ビス(クロロメチル)デュレン、1,4-ビス(ブロモメチル)-2-フルオロベンゼン、1,4-ビス(ブロモメチル)-2-クロロベンゼン、2-ブロモ-1,4-ビス(ブロモメチル)ベンゼン、1,4-ビス(クロロメチル)-2-ニトロベンゼン、1,4-ビス(ブロモメチル)-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼン、α,α’,2,3,5,6-ヘキサクロロ-p-キシレン、1,2,4,5-テトラブロモ-3,6-ビス(ブロモメチル)ベンゼン、1,2-ジブロモ-3,6-ビス(クロロメチル)-4,5-ジメチルベンゼン、1,4-ビス(ブロモメチル)-2,5-ジメチルベンゼン、4,4’-ビス(クロロメチル)ビフェニル、2,6-ビス(ブロモメチル)ナフタレン、1,5-ビス(クロロメチル)ナフタレン、1,4-ビス(ブロモメチル)ナフタレンなどが挙げられる。
【0083】
次に、第1前駆体化合物と、ヒドロキシメチル基を有する芳香族化合物である第3原料とを反応させて、第2前駆体化合物を合成する。第1前駆体化合物と第3原料とを反応させる条件は、第1前駆体化合物と第3原料との組み合わせに応じて適宜決定でき、特に限定されない。
本実施形態の化合物の製造方法において使用される第3原料は、ヒドロキシメチル基を有する芳香族化合物であり、製造する化合物における第3芳香族環基の構造などに応じて適宜選択される。
【0084】
第1前駆体化合物が、骨格の両末端に配置された元素が第2原料に由来する構造を有する場合、第3原料として、具体的には、例えば、2,6-ジフルオロ-4-ヒドロキシ-ベンジルアルコール、2-フルオロ-4-ヒドロキシ-ベンジルアルコール、3-ブロモ-4-ヒドロキシ-ベンジルアルコール、4-ヒドロキシ-3-ニトロ-ベンジルアルコール、4-ヒドロキシ-3-メチル-ベンジルアルコール、4-ヒドロキシ-3,5-ジメチル-ベンジルアルコール、2-クロロ-4-ヒドロキシ-ベンジルアルコール、3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシ-ベンジルアルコール、4-ヒドロキシ-2,6-ジメチル-ベンジルアルコール、4-ヒドロキシ-2-メチル-ベンジルアルコール、4-ヒドロキシ-2-ニトロ-ベンジルアルコール、4-ヒドロキシ-3-(トリフルオロメチル)-ベンジルアルコール、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-ベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0085】
次に、第1前駆体化合物と第3原料とを反応させて得られた第2前駆体化合物と、末端基の由来となる構造を有する芳香族化合物である第4原料とを反応させることにより、一般式(1)で表される化合物が得られる。
第2前駆体化合物と第4原料とを反応させる条件は、第2前駆体化合物と第4原料との組み合わせに応じて適宜決定でき、特に限定されない。
本実施形態の化合物の製造方法において使用される第4原料は、末端基の由来となる構造を有する芳香族化合物であり、製造する化合物における第4芳香族環基の構造および末端基の構造などに応じて適宜選択される。
【0086】
本実施形態では、第1前駆体化合物が、骨格の両末端に配置された元素が第2原料に由来する構造を有するため、第4原料として、第1原料と同様に、2つのフェノール性水酸基を有する芳香族化合物を用いることができる。また、第4原料として、1つのフェノール性水酸基とアミノ基またはカルボキシアルキル基とを有する芳香族化合物を用いてもよい。具体的には、例えば、メチルヒドロキノン、ヒドロキノン、2-フルオロ-1,4-ベンゼンジオール、2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-ベンゼンジオール、2、3-ジフルオロ-1,4-ベンゼンジオール、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-アミノフェノールなどが挙げられる。
【0087】
本実施形態では、上記の方法により得られた一般式(1)で表される化合物の末端基がカルボキシル基である場合、例えば、一般式(1)で表される化合物とアンモニア水とを反応させることにより末端基をアミド化し、末端基がアミド基(-CONH)である式(1)で表される化合物を製造してもよい。
【0088】
「一般式(2)で表される化合物の製造方法」
一般式(1)で表される化合物の製造方法と同様に、2つのフェノール性水酸基を有する芳香族化合物である第1原料と、モノハロゲン化メチル基を有する芳香族化合物である第2原料とを用意する。
そして、一般式(1)で表される化合物の製造方法と同様に、第1原料と第2原料とを、炭酸カリウムを用いて二分子求核置換反応(S2反応)させて、本実施形態の化合物における鎖状構造の由来となる骨格を有する第1前駆体化合物を合成する。
【0089】
一般式(2)で表される化合物を製造する場合には、第1原料よりも第2原料のモル比を少なくすることにより、両端に第1原料に由来する構造が配置された骨格を有する第1前駆体化合物を製造する。
一般式(2)で表される化合物を製造する場合において使用される第1原料および第2材料としては、一般式(1)で表される化合物の製造方法と同様のものを用いることができる。
【0090】
次に、第1前駆体化合物と、末端基の由来となる構造を有する芳香族化合物である第4原料とを反応させて、第2前駆体化合物を合成する。第1前駆体化合物と第4原料とを反応させる条件は、第1前駆体化合物と第4原料との組み合わせに応じて適宜決定でき、特に限定されない。
本実施形態の化合物の製造方法において使用される第4原料は、末端基の由来となる構造を有する芳香族化合物であり、製造する化合物における第4芳香族環基の構造などに応じて適宜選択される。
【0091】
第1前駆体化合物が、骨格の両末端に配置された元素が第1原料に由来する構造を有する場合、第4原料として、モノハロゲン化メチル基を有する芳香族化合物を用いることが好ましい。具体的には、例えば、4-(ブロモメチル)-安息香酸メチル、4-(ブロモメチル)-3-フルオロ-安息香酸メチル、2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-安息香酸メチル、4-(ブロモメチル)-3-クロロ-安息香酸メチル、4-(クロロメチル)-3,5-ジフルオロ-安息香酸メチル、4-(ブロモメチル)-2-メチル-安息香酸メチル、4-(ブロモメチル)-3-ニトロ-安息香酸メチル、2-クロロ-4-(クロロメチル)-6-シアノ-安息香酸メチル、4-(ブロモメチル)-2,6-ジフルオロ-安息香酸メチル、4-(ブロモメチル)-3-トリフルオロメチル-安息香酸メチル、4-(ブロモメチル)-2,5-ジフルオロ-安息香酸メチル、4-(ブロモメチル)-3-シアノ-安息香酸メチル、5-ブロモ-4-(ブロモメチル)-2-フルオロ-安息香酸メチル、4-(ブロモメチル)-2-ニトロ-安息香酸メチル、4-(ブロモメチル)-2,3-ジフルオロ-安息香酸メチル、1-(ブロモメチル)-4-ニトロ-ベンゼン、1-(ブロモメチル)-4-ニトロ-2-(トリフルオロメチル)-ベンゼン、4-(ブロモメチル)-2-メチル-1-ニトロ-ベンゼンなどが挙げられる。
【0092】
次に、第1前駆体化合物と第4原料とを反応させて得られた第2前駆体化合物と、ヒドロキシメチル基を有する芳香族化合物である第3原料とを反応させて、第3前駆体化合物を合成する。第2前駆体化合物と第3原料とを反応させる条件は、第2前駆体化合物と第3原料との組み合わせに応じて適宜決定でき、特に限定されない。
本実施形態の化合物の製造方法において使用される第3原料は、ヒドロキシメチル基を有する芳香族化合物であり、製造する化合物における第3芳香族環基の構造および末端基の構造などに応じて適宜選択される。
【0093】
一般式(2)で表される化合物を製造する場合、第3原料として、具体的には、例えば、5-(ブロモメチル)-2-ヒドロキシメチル-2-ベンゾニトリルなどが挙げられる。
その後、第3前駆体化合物と、式(2)においてZで示される末端基の由来となる構造を有する化合物とを反応させることにより、一般式(2)で表される化合物が得られる。
【0094】
本実施形態では、上記の方法により得られた一般式(2)で表される化合物の末端基がカルボキシル基である場合、例えば、一般式(2)で表される化合物とアンモニア水とを反応させることにより末端基をアミド化し、末端基がアミド基(-CONH)である式(2)で表される化合物を製造してもよい。
【0095】
「一般式(3)で表される化合物の製造方法」
一般式(1)および一般式(2)で表される化合物の製造方法と同様に、2つのフェノール性水酸基を有する芳香族化合物である第1原料と、モノハロゲン化メチル基を有する芳香族化合物である第2原料とを用意する。
そして、一般式(1)および一般式(2)で表される化合物の製造方法と同様に、第1原料と第2原料とを、炭酸カリウムを用いて二分子求核置換反応(S2反応)させて、本実施形態の化合物における鎖状構造の由来となる骨格を有する第1前駆体化合物を合成する。
【0096】
一般式(3)で表される化合物を製造する場合には、第1原料と第2原料のモル比を略同じとすることにより、一方の末端に第1原料に由来する構造が配置され、他方の末端に第2原料に由来する構造が配置された骨格を有する第1前駆体化合物を製造する。
一般式(3)で表される化合物を製造する場合において使用される第1原料および第2材料としては、一般式(1)および一般式(2)で表される化合物の製造方法と同様のものを用いることができる。
【0097】
その後、必要に応じて、第1前駆体化合物と、式(3)においてZで示される末端基の由来となる構造を有する化合物とを反応させることにより、一般式(3)で表される化合物が得られる。
第1芳香族環基と第4芳香族環基とが同じで、第2芳香族環基と第3芳香族環基とが同じであって、一般式(3)で表される化合物における末端基が水酸基である場合、第1前駆体化合物が、本実施形態の一般式(3)で表される化合物となる。
【0098】
「一般式(4)で表される化合物の製造方法」
一般式(1)~一般式(3)で表される化合物の製造方法と同様に、2つのフェノール性水酸基を有する芳香族化合物である第1原料と、モノハロゲン化メチル基を有する芳香族化合物である第2原料とを用意する。
そして、一般式(1)~一般式(3)で表される化合物の製造方法と同様に、第1原料と第2原料とを、炭酸カリウムを用いて二分子求核置換反応(S2反応)させて、本実施形態の化合物における鎖状構造の由来となる骨格を有する第1前駆体化合物を合成する。
【0099】
一般式(4)で表される化合物を製造する場合には、一般式(1)で表される化合物の製造方法と同様に、第1原料よりも第2原料のモル比を多くすることにより、両端に第2原料に由来する構造が配置された骨格を有する第1前駆体化合物を製造する。
一般式(4)で表される化合物を製造する場合において使用される第1原料および第2材料としては、一般式(1)~一般式(3)で表される化合物の製造方法と同様のものを用いることができる。
【0100】
次に、第1前駆体化合物と、末端基の由来となる構造を有する芳香族化合物である第4原料とを反応させて、第2前駆体化合物を合成する。第1前駆体化合物と第4原料とを反応させる条件は、第1前駆体化合物と第4原料との組み合わせに応じて適宜決定でき、特に限定されない。
本実施形態の化合物の製造方法において使用される第4原料は、末端基の由来となる構造を有する芳香族化合物であり、製造する化合物における第4芳香族環基の構造などに応じて適宜選択される。
【0101】
一般式(4)で表される化合物を製造する場合、第1前駆体化合物が、骨格の両末端に配置された元素が第2原料に由来する構造を有するため、第4原料として、一般式(1)で表される化合物の製造方法と同様のものを用いることができる。
その後、第2前駆体化合物中の式(4)において第3芳香族環基となる芳香族環基に、ヒドロキシメチル基を導入することにより、一般式(4)で表される化合物が得られる。
【0102】
本実施形態では、上記の方法により得られた一般式(4)で表される化合物の末端基がカルボキシル基である場合、例えば、一般式(4)で表される化合物とアンモニア水とを反応させることにより末端基をアミド化し、末端基がアミド基(-CONH)である式(4)で表される化合物を製造してもよい。
【0103】
本実施形態の化合物の製造方法では、本実施形態の化合物と同時に、鎖状構造の第1末端および/または第2末端に配置された芳香族環基の炭素に結合した末端基が、本実施形態の化合物とは異なる化合物を生成させることが好ましい。
本実施形態の化合物を含む樹脂組成物を用いて重合物を製造する場合、用途など必要に応じて、本実施形態の化合物とは異なる化合物を混合して用いることが好ましい場合がある。鎖状構造の第1末端および/または第2末端に配置された芳香族環基の炭素に結合した末端基が、本実施形態の化合物とは異なる化合物を、本実施形態の化合物と同時に生成させる場合、本実施形態の化合物を含む樹脂組成物を製造する際に、複数種の化合物を混合する工程を行うことなく、効率よく樹脂組成物を製造できる場合がある。
【0104】
本実施形態の化合物の製造方法においては、鎖状構造の第1末端および/または第2末端に配置された芳香族環基の炭素に結合した末端基が、本実施形態の化合物とは異なる化合物を、本実施形態の化合物と同時に生成させて混合物を得た後、必要に応じて混合物から、公知の方法を用いて、特定の単独種の化合物を分離してもよい。
【0105】
本実施形態の化合物は、芳香族環基、エーテル酸素、メチレン基、芳香族環基、メチレン基、エーテル酸素、芳香族環基が、この順に結合された鎖状構造を有している。この鎖状構造は、液晶性を発現するメソゲン基であり、剛直性を付与する芳香族環基と、運動性を付与するメチレン基およびエーテル酸素とが、特定の順序で配置された構造を有する。
また、本実施形態の化合物は、鎖状構造の第1末端に配置された芳香族環基の炭素に、ヒドロキシメチル基が結合し、鎖状構造の第2末端に配置された芳香族環基の炭素に、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基から選ばれるいずれか1種の末端基が結合している。したがって、本実施形態の化合物を含む樹脂組成物を重合させることにより、化合物のメソゲン構造に起因するスメクチック液晶構造を有し、フォノンの散乱が抑制された高い熱伝導性を有する硬化物が得られる。また、本実施形態の化合物は、鎖状構造の第1末端に配置された芳香族環基の炭素に、ヒドロキシメチル基が結合しているので、溶解性に優れる。
【0106】
「樹脂組成物」
本実施形態の樹脂組成物は、上述した本実施形態の化合物を含む。本実施形態の樹脂組成物は、本実施形態の化合物を1種のみ含むものであってもよいし、2種以上含むものであってもよい。
本実施形態の樹脂組成物は、本実施形態の化合物とともに、必要に応じて、その他の成分を含むことが好ましい。
【0107】
その他の成分としては、本実施形態の化合物と同様に、芳香族環基、エーテル酸素、メチレン基、芳香族環基、メチレン基、エーテル酸素、芳香族環基が、この順に結合された鎖状構造を有する1種または2種以上の化合物が挙げられる。このような化合物としては、例えば、上記鎖状構造の両末端に配置された芳香族環基の炭素に、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基から選ばれるいずれか1種の末端基がそれぞれ結合している化合物、上記鎖状構造の両末端に配置された芳香族環基の炭素にヒドロキシメチル基が結合している化合物が挙げられる。
【0108】
本実施形態の樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、本実施形態の化合物とを含むものであってもよい。この場合、本実施形態の化合物は、エポキシ樹脂の硬化剤として機能する。
エポキシ樹脂としては、例えば、4,4’-ビフェノールジグリシジルエーテル、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス(グリシジルオキシ)-1,1’-ビフェニル、トリグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジル-p-アミノフェノール、1,6-ビス(2,3-エポキシプロパン-1-イルオキシ)ナフタレン、クレゾールノボラック系エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂など公知のエポキシ化合物を用いることができ、市販のエポキシ樹脂を用いてもよい。エポキシ樹脂は、1種のみ含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
【0109】
本実施形態の樹脂組成物は、本実施形態の化合物およびエポキシ樹脂とともに、必要に応じて、他の樹脂成分を含んでいてもよい。他の樹脂成分としては、p-フェニレンジアミン等のアミノ基を有する化合物、スルファニルアミド等のアミド基を有する化合物、フェノール樹脂などの化合物が挙げられる。これらの他の樹脂成分は、1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
【0110】
本実施形態の樹脂組成物は、本実施形態の化合物とともに、必要に応じて、硬化促進剤を含有していてもよい。硬化促進剤としては、例えば、本実施形態の樹脂組成物が、エポキシ樹脂と、本実施形態の化合物とを含む場合、高沸点の塩基性の有機化合物などを用いることができる。具体的には、硬化促進剤として、3級アミン類、3級ホスフィン類、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、イミダゾール類などから選ばれる沸点が200℃以上のものなどが挙げられる。これらの中でも特に、取り扱いのしやすさから硬化促進剤として、イミダゾール系エポキシ樹脂硬化促進剤である2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)、1-(2-シアノエチル)-2-フェニルイミダゾールを用いることが好ましい。
【0111】
本実施形態の樹脂組成物は、本実施形態の化合物とともに、必要に応じて、硬化剤を含有していてもよい。硬化剤としては、例えば、p-フェニレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、ヒドロキノン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、フロログルシノール、4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4-アミノ安息香酸、フェノール樹脂、ポリアミドアミンなどが挙げられる。硬化剤としては、より高い熱伝導性を有する硬化物が得られるため、上記の中でも特に、4-アミノ安息香酸を用いることが好ましい。
【0112】
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、無機粒子を含んでいてもよい。無機粒子としては、窒化ホウ素粒子、酸化マグネシウム粒子、アルミナ粒子、水酸化アルミニウム粒子、窒化アルミニウム粒子、及びシリカ粒子等が挙げられる。無機粒子としては、これらのうち一種のみを単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0113】
無機粒子の含有量は、無機粒子以外の樹脂組成物成分の合計100質量部に対して、200~700質量部であることが好ましく、より好ましくは300~600質量部である。無機粒子の含有量が200質量部以上であると、樹脂組成物の硬化物における熱伝導性向上効果が顕著となる。また、無機粒子の含有量が700質量部以下であると、樹脂組成物の硬化物を用いて樹脂基板を成形する際に十分な成形加工性が得られる。
【0114】
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類、テトラヒドロフラン(THF)、1,3-ジオキソラン等のエーテル類、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル類、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン等のアミド類などが挙げられる。溶媒としては、これらのうち一種のみを単独で用いてもよいし、二種以上を組みあわせて用いてもよい。
【0115】
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、上述の成分以外の任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等のカップリング剤、ハロゲン等の難燃剤、可塑剤、並びに滑剤等が挙げられる。
【0116】
本実施形態の樹脂組成物は、例えば、上述した本実施形態の化合物と、必要に応じて含有されるその他の成分を混合する方法により製造できる。
本実施形態の樹脂組成物は、上述した本実施形態の化合物を含むため、これを重合させることにより、熱伝導率の高い重合物(硬化物)が得られる。
【0117】
「樹脂シート」
図1は、本発明の樹脂シートおよび樹脂基板一例を示した斜視図である。図1に示す樹脂シート12は、本実施形態の樹脂組成物を成形したシートである。樹脂シート12は、樹脂組成物をそのまま含有していてもよいし、樹脂組成物の一部または全部がBステージ(半硬化)とされた状態で含有していてもよい。
【0118】
図2は、図1に示す樹脂シートおよび樹脂基板のII-II線断面図である。図2は、樹脂シート12を厚さ方向に沿って切断したときの断面を示している。樹脂シート12は、芯材30と、芯材30に含浸されるとともに芯材30の両面を被覆する樹脂成分22とを含有する。図2中の○は、芯材30に含まれるガラス繊維を示している。樹脂成分22は、未硬化の樹脂組成物であってもよいし、一部または全部が樹脂組成物の半硬化物であってもよい。
【0119】
芯材30としては、例えば、織布または不織布などが挙げられる。織布および不織布の材料としては、例えば、図2に示すガラス繊維に限定されるものではなく、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、天然繊維、及び、ポリエステル繊維又はポリアミド繊維等の合成繊維等から選ばれる少なくとも一種の繊維などが挙げられる。
【0120】
樹脂シート12は、次のようにして製造できる。
芯材30に、塗布または浸漬などの手法によって、樹脂組成物を含浸させる。樹脂組成物が溶媒を含む場合、芯材30に樹脂組成物を含浸させた後に加熱して乾燥させ、溶媒を除去する。樹脂組成物中の溶媒を除去するための加熱条件は、例えば、60~150℃で1~120分間程度とすることができ、70~120℃で3~90分間程度とすることが好ましい。
【0121】
樹脂シート12に含まれる樹脂成分22の一部または全部が、樹脂組成物の半硬化物である場合、樹脂組成物中の溶媒を除去するための加熱と同時に、芯材30に含浸させた樹脂組成物の一部または全部を硬化させて半硬化状態とする。また、樹脂組成物中の溶媒を除去するための加熱の後に、樹脂組成物中の溶媒を除去するための加熱と同様の条件で、芯材30に含浸させた樹脂組成物の一部または全部を硬化させて半硬化状態としてもよい。
以上の工程により、未硬化または少なくとも一部が半硬化された樹脂組成物からなる樹脂成分22を有する樹脂シート12が得られる。
【0122】
図1に示す樹脂シート12は、本実施形態の樹脂組成物を成形したものであるため、これを熱処理して樹脂組成物を硬化させることにより、高い熱伝導率を有する樹脂硬化物が得られる。したがって、図1に示す樹脂シート12は、樹脂基板の材料として好適である。
本実施形態の樹脂シート12は、樹脂組成物の硬化物を含む樹脂基板(樹脂硬化物)の前駆体として用いることができる。
【0123】
なお、本実施形態においては、樹脂シート12として、図2に示すように、芯材30を有するものを例に挙げて説明したが、本発明の樹脂シートは、芯材を有さずに、樹脂成分のみで形成されているものであってもよい。
また、樹脂シートの表面上には、銅箔などの金属箔が積層されていてもよい。
【0124】
「樹脂硬化物」
図1および図2に示す本実施形態の樹脂基板10(樹脂硬化物)は、樹脂シート12に含まれる樹脂成分22を熱硬化させたものであり、本実施形態の樹脂組成物の硬化物20を含む。
【0125】
本実施形態の樹脂基板10は、上述した本実施形態の樹脂シート12を前駆体として用い、樹脂シート12を加熱する方法により製造できる。
具体的には、本実施形態の樹脂シート12を加熱して、未硬化状態または半硬化状態にある樹脂成分22を熱硬化させて、硬化物20とする。樹脂成分22を硬化させるときの加熱条件は、例えば、100~250℃で1~300分間程度とすることが好ましい。樹脂成分22を硬化させるための加熱は、必要に応じて、加圧または減圧下で行ってもよい。
【0126】
本実施形態の樹脂基板10は、本実施形態の樹脂組成物の硬化物を含む樹脂硬化物であるため、高い熱伝導率を有する。
【0127】
本実施形態においては、樹脂基板10(樹脂硬化物)として、図2に示すように、芯材30と、芯材30を被覆する硬化物20とを含むものを例に挙げて説明したが、本発明の樹脂硬化物および樹脂基板は、樹脂組成物の硬化物のみで構成されていてもよい。
また、本発明の樹脂硬化物および樹脂基板は、例えば、樹脂組成物を接着剤として用いる場合のように、不定形の樹脂組成物を加熱することによって製造されたものであってもよい。
【0128】
「積層基板」
図3は、本発明の積層基板の一例を示した斜視図である。図4は、図3に示す積層基板のIV-IV線断面図である。図4は、積層基板の積層方向に沿って切断したときの断面を示している。図3および図4に示されるように、積層基板50は、図2に示す樹脂基板10が複数積層されて一体化されている。
【0129】
積層基板50は、例えば、複数枚の樹脂基板10を重ね合わせた状態で、加熱する方法により製造できる。積層基板50は、複数枚の樹脂シート12を重ね合わせた状態で、加熱することにより、未硬化状態または半硬化状態にある樹脂成分を熱硬化させて、硬化物20とする方法により製造してもよい。複数枚の樹脂基板10の加熱条件および複数枚の樹脂シート12の加熱条件は、例えば、100~250℃で1~300分間程度とすることができる。
【0130】
複数枚の樹脂基板10または複数枚の樹脂シート12を加熱する際には、必要に応じて加圧してもよい。加圧条件は、例えば、0.1~10MPa程度とすることができる。複数枚の樹脂基板10または複数枚の樹脂シート12を加熱する際に、加圧は必須ではない。また、複数枚の樹脂基板10または複数枚の樹脂シート12の加熱は、減圧または真空下で行ってもよい。
【0131】
本実施形態の積層基板50は、樹脂基板10が積層されたものであるため、高い熱伝導率を有する。
【0132】
本実施形態においては、積層基板50として、樹脂組成物の硬化物20を含む図2に示す樹脂基板10が複数積層されたものを例に挙げて説明したが、本発明の積層基板は、複数の樹脂基板のうち、少なくとも一つが本発明の樹脂組成物の硬化物を含む樹脂基板であればよい。
【0133】
また、本発明の積層基板は、例えば、上面および/または下面に金属層を有する金属張り積層板とされていてもよい。この場合、金属層としては、各種公知のものを適宜選択して用いることができる。具体的には、金属層として、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム等の金属からなる金属板または金属箔などを用いることができる。金属層の厚みは、特に限定されず、例えば3~150μm程度とすることができる。金属層として、金属板または金属箔に、エッチング及び/又は穴開け加工が施されたものを用いてもよい。
【0134】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【実施例
【0135】
<一般式(1)で表される化合物の合成>
「合成例1~合成例19」
表1に示す第1原料と第2原料とを、表1に示す割合で3口フラスコに量りとり、テトラヒドロフラン(THF)1Lに溶解させて第1混合溶液を得た。その後、第1混合溶液を窒素気流中でリフラックス(還流)させて、第1混合溶液中の溶存酸素を除去した。次いで、第1混合溶液に表1に示す割合で炭酸カリウムを加えて、12時間リフラックス状態を保ち反応させた。
【0136】
【表1】
【0137】
反応終了後、得られた懸濁液を水に注ぎ、30分間撹拌し、生成した沈殿物をろ過して回収した。回収した沈殿物を12時間以上真空乾燥し、クロロホルムに溶解させ、シリカゲルクロマトグラフィーによって第1流出物を回収した。第1流出物から溶媒を除去し、合成例1~合成例19の第1前駆体化合物を得た。得られた第1前駆体化合物についてサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析を行い、数平均分子量(Mn)を求めた。
【0138】
続いて、第1前駆体化合物(0.02mol)と、表1に示す第3原料(0.02mol)とを3口フラスコに量りとり、テトラヒドロフラン(THF)1Lに溶解させて第2混合溶液を得た。その後、第2混合溶液を窒素気流中でリフラックス(還流)させて、第2混合溶液中の溶存酸素を除去した。次いで、第2混合溶液に炭酸カリウム(0.02mol)を加えて、12時間リフラックス状態を保ち反応させた。
【0139】
反応終了後、得られた懸濁液を水に注ぎ、30分間撹拌し、生成した沈殿物をろ過して回収した。回収した沈殿物を12時間真空乾燥し、クロロホルムに溶解させ、シリカゲルクロマトグラフィーによって第2流出物を回収した。第2流出物から溶媒を除去し、合成例1~合成例19の第2前駆体化合物を得た。得られた第2前駆体化合物についてSEC分析を行い、数平均分子量(Mn)を求めた。
【0140】
続いて、第2前駆体化合物(0.01mol)と、表1に示す第4原料(0.01mol)とを3口フラスコに量りとり、テトラヒドロフラン(THF)1Lに溶解させて第3混合溶液を得た。その後、第3混合溶液を窒素気流中でリフラックス(還流)させて、第3混合溶液中の溶存酸素を除去した。次いで、第3混合溶液に炭酸カリウム(0.01mol)を加えて、12時間リフラックス状態を保ち反応させた。
【0141】
反応終了後、得られた懸濁液を水に注ぎ、30分間撹拌し、生成した沈殿物をろ過して回収した。回収した沈殿物を12時間真空乾燥し、一般式(1)で表される合成例1~合成例17、合成例19の化合物を得た。
このようにして得られた合成例17の化合物50gを、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)500mLに加え、100℃に加熱して合成例17の化合物を溶解させた後、加熱を止め、濃アンモニア水(15モル/L)10mLを滴下した。得られた混合液を1時間撹拌し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣を120℃で12時間真空乾燥させて目的物である一般式(1)で表される合成例18の化合物を得た。
【0142】
<一般式(2)で表される化合物の合成>
「合成例20~合成例39」
表2に示す第1原料と第2原料と炭酸カリウムとを、表2に示す割合で用いたこと以外は、合成例1の第1前駆体化合物と同様にして、合成例20~合成例39の第1前駆体化合物を得た。得られた第1前駆体化合物についてサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析を行い、数平均分子量(Mn)を求めた。
【0143】
【表2】
【0144】
続いて、第1前駆体化合物(0.02mol)と、表2に示す第4原料(0.02mol)とを3口フラスコに量りとり、テトラヒドロフラン(THF)1Lに溶解させて第2混合溶液を得た。その後、第2混合溶液を窒素気流中でリフラックス(還流)させて、第2混合溶液中の溶存酸素を除去した。次いで、第2混合溶液に炭酸カリウム(0.02mol)を加えて、12時間リフラックス状態を保ち反応させた。
【0145】
反応終了後、得られた懸濁液を水に注ぎ、30分間撹拌し、生成した沈殿物をろ過して回収した。回収した沈殿物を12時間真空乾燥し、クロロホルムに溶解させ、シリカゲルクロマトグラフィーによって第2流出物を回収した。第2流出物から溶媒を除去し、合成例20~合成例39の第2前駆体化合物を得た。得られた第2前駆体化合物についてSEC分析を行い、数平均分子量(Mn)を求めた。
【0146】
続いて、第2前駆体化合物(0.01mol)と、表2に示す第3原料(0.01mol)とを3口フラスコに量りとり、テトラヒドロフラン(THF)1Lに溶解させて第3混合溶液を得た。その後、第3混合溶液を窒素気流中でリフラックス(還流)させて、第3混合溶液中の溶存酸素を除去した。次いで、第3混合溶液に炭酸カリウム(0.01mol)を加えて、12時間リフラックス状態を保ち反応させた。
【0147】
反応終了後、得られた懸濁液を水に注ぎ、30分間撹拌し、生成した沈殿物をろ過して回収した。回収した沈殿物を12時間真空乾燥し、合成例20~合成例39の第3前駆体化合物を得た。得られた第3前駆体化合物についてSEC分析を行い、数平均分子量(Mn)を求めた。
【0148】
続いて、合成例20~合成例36の第3前駆体化合物(0.01mol)を3口フラスコに量りとり、テトラヒドロフラン(THF)1Lに溶解させて第4混合溶液を得た。その後、第4混合溶液を窒素気流中でリフラックス(還流)させて、第4混合溶液中の溶存酸素を除去した。次いで、第4混合溶液に水酸化カリウム(0.01mol)と水(10mL)を加えて、12時間リフラックス状態を保ち反応させた。
反応終了後、得られた懸濁液を水に注ぎ、pHが2以下になるように塩酸で中和して、30分間撹拌し、生成した沈殿物をろ過して回収した。回収した沈殿物を12時間真空乾燥し、一般式(2)で表される合成例20、合成例22~合成例36の化合物を得た。
【0149】
このようにして得られた合成例20の化合物50gを、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)500mLに加え、100℃に加熱して合成例20の化合物を溶解させた後、加熱を止め、濃アンモニア水(15モル/L)10mLを滴下した。得られた混合液を1時間撹拌し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣を120℃で12時間真空乾燥させて目的物である一般式(2)で表される合成例21の化合物を得た。
【0150】
また、合成例37~合成例39の第3前駆体化合物(0.01mol)を3口フラスコに量りとり、ベンジルアルコール1L、鉄(3g)を加えて反応混合物を得た。反応混合物を80℃に熱し、滴下ロートを使用して濃塩酸(15mL)を30分間かけて加え、1時間還流させた後、室温に戻した。反応混合物を水に注ぎ、撹拌しながら、pHが7以上になるまで2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えた。続いて、クロロホルムを用いて抽出分離を行い、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過して回収した沈殿物を減圧留去し、一般式(2)で表される合成例37~合成例39の化合物を得た。
【0151】
<一般式(3)で表される化合物の合成>
「合成例40~合成例68」
表3に示す第1原料と第2原料と炭酸カリウムとを、表3に示す割合で用いたこと以外は、合成例1の第1前駆体化合物と同様にして、合成例40~合成例68の第1前駆体化合物を得た。得られた第1前駆体化合物についてサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析を行い、数平均分子量(Mn)を求めた。
【0152】
【表3】
【0153】
続いて、第1前駆体化合物(0.01mol)を3口フラスコに量りとり、テトラヒドロフラン(THF)1Lに溶解させて第2混合溶液を得た。次いで、第2混合溶液に炭酸水素ナトリウム(0.01mol)と水10mLを加えて、12時間リフラックス状態を保ち反応させた。
反応終了後、得られた懸濁液を水に注ぎ、30分間撹拌し、生成した沈殿物をろ過して回収した。回収した沈殿物を12時間真空乾燥し、一般式(3)で表される合成例40~合成例68の化合物を得た。
【0154】
<一般式(4)で表される化合物の合成>
「合成例69~合成例75」
表4に示す第1原料と第2原料と炭酸カリウムとを、表4に示す割合で用いたこと以外は、合成例1の第1前駆体化合物と同様にして、合成例69~合成例75の第1前駆体化合物を得た。得られた第1前駆体化合物についてサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析を行い、数平均分子量(Mn)を求めた。
【0155】
【表4】
【0156】
続いて、第1前駆体化合物(0.02mol)と、表4に示す第4原料(0.02mol)とを3口フラスコに量りとり、テトラヒドロフラン(THF)1Lに溶解させて第2混合溶液を得た。その後、第2混合溶液を窒素気流中でリフラックス(還流)させて、第2混合溶液中の溶存酸素を除去した。次いで、第2混合溶液に炭酸カリウム(0.02mol)を加えて、12時間リフラックス状態を保ち反応させた。
【0157】
反応終了後、得られた懸濁液を水に注ぎ、30分間撹拌し、生成した沈殿物をろ過して回収した。回収した沈殿物を12時間真空乾燥し、クロロホルムに溶解させ、シリカゲルクロマトグラフィーによって第2流出物を回収した。第2流出物から溶媒を除去し、合成例69~合成例75の第2前駆体化合物を得た。得られた第2前駆体化合物についてSEC分析を行い、数平均分子量(Mn)を求めた。
【0158】
続いて、第2前駆体化合物を3口フラスコに量りとり、テトラヒドロフラン(THF)1Lに溶解させて第3混合溶液を得た。その後、第3混合溶液を窒素気流中でリフラックス(還流)させて、第3混合溶液中の溶存酸素を除去した。次いで、第3混合溶液に炭酸水素ナトリウム(0.01mol)と水10mLを加えて、12時間リフラックス状態を保ち反応させた。
反応終了後、得られた懸濁液を水に注ぎ、30分間撹拌し、生成した沈殿物をろ過して回収した。回収した沈殿物を12時間真空乾燥し、一般式(4)で表される合成例69~合成例73、合成例75の化合物を得た。
【0159】
このようにして得られた合成例73の化合物50gを、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)500mLに加え、100℃に加熱して合成例73の化合物を溶解させた後、加熱を止め、濃アンモニア水(15モル/L)10mLを滴下した。得られた混合液を1時間撹拌し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣を120℃で12時間真空乾燥させて目的物である一般式(4)で表される合成例74の化合物を得た。
【0160】
表1~表4に示す第1原料における1-1~1-13は、下記の化合物である。
[第1原料]
(1-1)メチルヒドロキノン(Methylhydroquinone)
(1-2)ヒドロキノン(Hydroquinone)
(1-3)テトラメチルヒドロキノン(Tetramethylhydroquinone)(1-4)トリメチルヒドロキノン(Trimethylhydroquinone)
(1-5)2-(トリフルオロメチル)-1,4-ベンゼンジオール(2-(trifluoromethyl)-1,4-benzenediol)
【0161】
(1-6)フルオロヒドロキノン(Fluorohydroquinone)
(1-7)クロロヒドロキノン(Chlorohydroquinone)
(1-8)ブロモヒドロキノン(Bromohydroquinone)
(1-9)2,5-ジヒドロキシニトロベンゼン(2,5-Dihydroxynitrobenzene)(1-10)1,5-ジヒドロキシナフタレン(1,5-Dihydroxynaphthalene)(1-11)2,6-ジヒドロキシナフタレン(2,6-Dihydroxynaphthalene)(1-12)3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル-4,4’-ジオール(3,3’,5,5’-Tetramethylbiphenyl-4,4’-diol)
(1-13)4,4’-ジヒドロキシビフェニル(4,4’-Dihydroxybiphenyl)
【0162】
表1~表4に示す第2原料における2-1~2-10は、下記の化合物である。
[第2原料]
(2-1)α,α’-ジクロロ-p-キシレン(α,α’-p-Dichloroxylene)(2-2)1,4-ビス(クロロメチル)-2-メチルベンゼン(1,4-BIS(CHLOROMETHYL)-2-METHYLBENZENE)
(2-3)3,6-ビス(クロロメチル)デュレン(3,6-Bis(chloromethyl)durene)
(2-4)1,4-ビス(ブロモメチル)-2-フルオロベンゼン(1,4-bis(bromomethyl)-2-fluorobenzene)
【0163】
(2-5)1,4-ビス(ブロモメチル)-2-クロロベンゼン(1,4-bis(bromomethyl)-2-chlorobenzene)
(2-6)2-ブロモ-1,4-ビス(ブロモメチル)ベンゼン(2-bromo-1,4-bis(bromomethyl)benzene
(2-7)1,4-ビス(クロロメチル)-2-ニトロベンゼン(1,4-bis(chloromethyl)-2-nitrobenzene)
(2-8)4,4’-ビス(クロロメチル)ビフェニル(4,4’-Bis(chloromethyl)biphenyl)
(2-9)2,6-ビス(ブロモメチル)ナフタレン(2,6-Bis(bromomethyl)naphthalene)
(2-10)1,5-ビス(クロロメチル)ナフタレン(1,5-bis(chloromethyl)naphthalene)
(2-11)1,4-ビス(ブロモメチル)ナフタレン(1,4-bis(bromomethyl)naphthalene)
【0164】
表1~表2に示す第3原料における3-1~3-14は、下記の化合物である。
[第3原料]
(3-1)2,6-ジフルオロ-4-ヒドロキシ-ベンジルアルコール(2,6-difluoro-4-hydroxy-Benzenemethanol)
(3-2)2-フルオロ-4-ヒドロキシ-ベンジルアルコール(2-fluoro-4-hydroxy-Benzenemethanol)
(3-3)3-ブロモ-4-ヒドロキシ-ベンジルアルコール(3-bromo-4-hydroxy-Benzenemethanol)
(3-4)4-ヒドロキシ-3-ニトロ-ベンジルアルコール(4-hydroxy-3-nitro-Benzenemethanol)
(3-5)4-ヒドロキシ-3-メチル-ベンジルアルコール(4-hydroxy-3-methyl-Benzenemethanol)
(3-6)4-ヒドロキシ-3,5-ジメチル-ベンジルアルコール(4-hydroxy-3,5-dimethyl-Benzenemethanol)
【0165】
(3-7)2-クロロ-4-ヒドロキシ-ベンジルアルコール(2-chloro-4-hydroxy-Benzenemethanol)
(3-8)3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシ-ベンジルアルコール(3,5-difluoro-4-hydroxy-Benzenemethanol)
(3-9)4-ヒドロキシ-2,6-ジメチル-ベンジルアルコール(4-hydroxy-2,6-dimethyl-Benzenemethanol)
(3-10)4-ヒドロキシ-2-メチル-ベンジルアルコール(4-hydroxy-2-methyl-Benzenemethanol)
(3-11)4-ヒドロキシ-2-ニトロ-ベンジルアルコール(4-hydroxy-2-nitro-Benzenemethanol)
(3-12)4-ヒドロキシ-3-(トリフルオロメチル)-ベンジルアルコール(4-hydroxy-3-(trifluoromethyl)-Benzenemethanol)
(3-13)4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-ベンジルアルコール(4-hydroxy-2,5-dimethyl-Benzenemethano)
(3-14)5-(ブロモメチル)-2-ヒドロキシメチル-2-ベンゾニトリル(5-(Bromomethyl)-2-(hydroxymethyl)-benzonitrile)
【0166】
表1、表2、表4に示す第4原料における4-1~5-24は、下記の化合物である。
[第4原料]
(4-1)ヒドロキノン(Hydroquinone)
(4-2)2-フルオロ-1,4-ベンゼンジオール(2-fluoro-1,4-Benzenediol)
(4-3)2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-ベンゼンジオール(2,3,5,6-tetrafluoro-1,4-Benzenediol)
(4-4)2、3-ジフルオロ-1,4-ベンゼンジオール(2,3-difluoro-1,4-Benzenediol)
(4-5)4-ヒドロキシ安息香酸メチル(Methyl 4-Hydroxybenzoate)
(4-6)p-アミノフェノール(4-Aminophenol)
(4-7)4-(ブロモメチル)-安息香酸メチル(4-(bromomethyl)-Benzoic acid methyl ester)
(4-8)4-(ブロモメチル)-3-フルオロ-安息香酸メチル(4-(bromomethyl)-3-fluoro-Benzoic acid methyl ester)
【0167】
(4-9)2-ブロモ-4-(ブロモメチル)-安息香酸メチル(2-bromo-4-(bromomethyl)-Benzoic acid methyl ester)
(4-10)4-(ブロモメチル)-3-クロロ-安息香酸メチル(4-(bromomethyl)-3-chloro-Benzoic acid methyl ester)
(4-11)4-(クロロメチル)-3,5-ジフルオロ-安息香酸メチル(4-(chloromethyl)-3,5-difluoro-Benzoic acid methyl ester)
(4-12)4-(ブロモメチル)-2-メチル-安息香酸メチル(4-(bromomethyl)-2-methyl-Benzoic acid methyl ester)
(4-13)4-(ブロモメチル)-3-ニトロ-安息香酸メチル(4-(bromomethyl)-3-nitro-Benzoic acid methyl ester)
(4-14)2-クロロ-4-(クロロメチル)-6-シアノ-安息香酸メチル(2-chloro-4-(chloromethyl)-6-cyano-Benzoic acid ethyl ester)
(4-15)4-(ブロモメチル)-2,6-ジフルオロ-安息香酸メチル(4-(bromomethyl)-2,6-difluoro-Benzoic acid methyl ester)
(4-16)4-(ブロモメチル)-3-トリフルオロメチル-安息香酸メチル(4-(bromomethyl)-3-(trifluoromethyl)-Benzoic acid methyl ester)
【0168】
(4-17)4-(ブロモメチル)-2,5-ジフルオロ-安息香酸メチル(4-(bromomethyl)-2,5-difluoro-Benzoic acid methyl ester)
(4-18)4-(ブロモメチル)-3-シアノ-安息香酸メチル(4-(bromomethyl)-3-cyano-Benzoic acid methyl ester)
(4-19)5-ブロモ-4-(ブロモメチル)-2-フルオロ-安息香酸メチル(5-bromo-4-(bromomethyl)-2-fluoro-Benzoic acid methyl ester)
(4-20)4-(ブロモメチル)-2-ニトロ-安息香酸メチル(4-(bromomethyl)-2-nitro-Benzoic acid methyl ester)
(4-21)4-(ブロモメチル)-2,3-ジフルオロ-安息香酸メチル(4-(bromomethyl)-2,3-difluoro-Benzoic acid methyl ester)
(4-22)1-(ブロモメチル)-4-ニトロ-ベンゼン(Benzene,1-(bromomethyl)-4-nitro-)
(4-23)1-(ブロモメチル)-4-ニトロ-2-(トリフルオロメチル)-ベンゼン(Benzene,1-(bromomethyl)-4-nitro-2-(trifluoromethyl)-)
(4-24)4-(ブロモメチル)-2-メチル-1-ニトロ-ベンゼン(Benzene,4-(bromomethyl)-2-methyl-1-nitro-)
【0169】
このようにして得られた合成例1~合成例75の化合物について、分子量測定装置(GPC-104、Shodex製)を用いて、サイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography、SEC法)によって分析を行った。
分析用試料溶液は、以下に示す方法により作成した。合成例1~合成例75の化合物を、それぞれ2mgを採取し、テトラヒドロフラン(THF)10mLに加え、バイブレータを用いて7時間振とうした。振とう後の溶液を、オーブンを用いて55℃で2時間加熱し、静置した。その後、孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターを用いてろ過し、ろ液を分析用試料溶液とした。
【0170】
分析は、4つのカラム(Shodex製、SEC(GPC)用カラム:KF-403HQ、KF-402.5HQ、KF-402HQ、KF-401HQ)を連結し、カラム温度を40℃に保持して行った。移動相としては、THF(BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を0.03質量%含む)を用い、流速0.3ml/minで流した。検出器としては、波長254nmのUV(紫外線)検出器を使用した。標準物質としては、ポリスチレンを使用した。
【0171】
このような分析を行った結果から合成例1~合成例75の化合物の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Mw/Mn、最小分子量(Mn)、最大分子量(Mn)を求めた。その結果を、表5~表8に示す。
【0172】
【表5】
【0173】
【表6】
【0174】
【表7】
【0175】
【表8】
【0176】
また、上記の分析結果から同定した合成例1~合成例75の構造を以下に示す。
合成例1~合成例19の化合物は、一般式(1)で示される化合物であった。式(1)におけるAr、Ar、Ar、Ar4、Zをそれぞれ表9に示す。
合成例20~合成例39の化合物は、一般式(2)で示される化合物であった。式(2)におけるAr、Ar、Ar、Ar4、Zをそれぞれ表10に示す。
合成例40~合成例68の化合物は、一般式(3)で示される化合物であった。式(3)におけるAr、Ar、Ar、Ar4、Zをそれぞれ表11に示す。
合成例69~合成例75の化合物は、一般式(4)で示される化合物であった。式(4)におけるAr、Ar、Ar、Ar4、Zをそれぞれ表12に示す。
【0177】
【表9】
【0178】
【表10】
【0179】
【表11】
【0180】
【表12】
【0181】
<樹脂組成物の製造>
「実施例1~56、65~67、69~83、参考例57~64、68
表13~表16に示すエポキシ樹脂と、硬化剤としての表13~表16に示す化合物と、表13~表16に示す硬化促進剤とを、それぞれ表13~表16に示す割合で混合し、実施例1~56、65~67、69~83、参考例57~64、68の樹脂組成物を得た。
【0182】
【表13】
【0183】
【表14】
【0184】
【表15】

【0185】
【表16】
【0186】
「実施例84」
硬化剤として、合成例40の化合物と、下記式(A)で示される化合物(数平均分子量(Mn)1728、重量平均分子量(Mw)3300)とを、質量比で1:1の割合で混合したものを用い、表16に示すエポキシ樹脂と、表16示す硬化促進剤とを、それぞれ表16に示す割合で混合し、実施例84の樹脂組成物を得た。
【0187】
【化27】
【0188】
表13~表17に示すエポキシ樹脂、硬化促進剤は、下記の化合物である。
「エポキシ樹脂」
TEPIC-SS;トリグリシジルイソシアヌレート(日産化学株式会社製)
JER630;トリグリシジル-p-アミノフェノール(三菱ケミカル株式会社製)
EPICLON HP-4032;1,6-ビス(2,3-エポキシプロパン-1-イルオキシ)ナフタレン(DIC社製)
N-655-EXP-S;クレゾールノボラック系エポキシ樹脂(DIC社製)
JER152;下記式(B-1)で示されるクレゾールノボラック系エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製)
JER828;ビフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製)
「硬化促進剤」
2E4MZ;2-エチル-4-メチルイミダゾール
【0189】
【化28】
【0190】
「実施例85~実施例93」
硬化剤として、合成例40又は合成例75の化合物と、上記式(A)で示される化合物(数平均分子量(Mn)1728、重量平均分子量(Mw)3300)とを、質量比で1:1の割合で混合したものを用い、表17に示すビスマレイミド化合物と、表17示す硬化促進剤とを、それぞれ表17に示す割合で混合し、実施例85~93の樹脂組成物を得た。
具体的には、表17に示す硬化剤及びビスマレイミド化合物を150℃に加熱し溶融混合を行った。そこに硬化促進剤を添加し手早く混合を行った。その後、得られた混合物を150℃で1時間180℃でさらに1時間反応させることで硬化物(実施例85~93の樹脂組成物)を調製した。
【0191】
【表17】
【0192】
このようにして得られた実施例1~56、65~67、69~93、参考例57~64、68の樹脂組成物について、それぞれ以下に示す方法により、熱伝導率を求めた。その結果を表13~表17に示す。
【0193】
(熱伝導率の測定)
樹脂硬化物の密度と、比熱と、熱拡散率を、以下に示す方法によりそれぞれ測定し、それらを掛けることにより、熱伝導率を求めた。
密度は、アルキメデス法を用いて求めた。
比熱は、示差走査熱量計(DSC)(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて求めた。
熱拡散率は、キセノンフラッシュ熱拡散率測定装置(アドバンス理工)を用いて求めた。
熱拡散率の測定には、以下に示す方法により製造した測定用サンプルを用いた。すなわち、樹脂硬化物をアルミカップ内で150℃の温度で溶融混合し、室温まで冷却した。その後、未硬化の樹脂組成物を、150℃で12時間加熱し、硬化させた。得られた樹脂硬化物を直径10mm、厚さ0.5mmの円柱形に加工し、測定用サンプルとした。
【0194】
表13~表17に示すように、実施例1~56、65~67、69~93、参考例57~64、68の樹脂組成物の硬化物は、いずれも熱伝導率が0.4W/(m・K)以上であり、熱伝導率の高いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0195】
より高い熱伝導性を有する硬化物を得ることができる。
【符号の説明】
【0196】
10 樹脂基板
12 樹脂シート
20 硬化物
22 樹脂成分
30 芯材
50 積層基板
図1
図2
図3
図4