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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】駐車支援方法及び駐車支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/06 20060101AFI20231219BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20231219BHJP
   G08G 1/14 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B60W30/06
G08G1/16 C
G08G1/14 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022558363
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(86)【国際出願番号】 IB2020000915
(87)【国際公開番号】W WO2022090758
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康啓
(72)【発明者】
【氏名】竹田 椋
【審査官】竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-197314(JP,A)
【文献】特開2018-163530(JP,A)
【文献】特開2007-011994(JP,A)
【文献】特開2007-315956(JP,A)
【文献】特開2009-111536(JP,A)
【文献】特開2017-067466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが実行する駐車支援方法であって、
自車両を目標駐車スペースに駐車した状態で、自車両に装着した撮像装置を用いて自車両の周囲を撮像して生成した、前記目標駐車スペースを特定する異なる複数の基準画像を予め記憶しておき、
その後に自車両を前記目標駐車スペースに駐車させる場合には、現在の自車両の周囲の画像と、前記異なる複数の基準画像の少なくとも一つの基準画像とを照合して前記目標駐車スペースを認識し、
前記認識された目標駐車スペースの位置情報に基づいて、前記目標駐車スペースに至る自車両の走行動作を自律制御する駐車支援方法。
【請求項2】
前記現在の自車両の周囲の画像と、前記異なる複数の基準画像の全部の基準画像とを照合して前記目標駐車スペースを認識する請求項1に記載の駐車支援方法。
【請求項3】
前記現在の自車両の周囲の画像と、前記異なる複数の基準画像の一部の基準画像とを照合して前記目標駐車スペースを認識する請求項1に記載の駐車支援方法。
【請求項4】
前記異なる複数の基準画像は、視点位置が異なる複数の基準画像、視線方向が異なる複数の基準画像及び変換方法が異なる複数の基準画像のうちの少なくともいずれかの基準画像を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の駐車支援方法。
【請求項5】
現在の自車両の周囲の画像と、前記異なる複数の基準画像の少なくとも一つの基準画像とを照合する場合に、前記現在の自車両の周囲の画像を、前記異なる複数の基準画像にそれぞれ対応する画像形態に変換する請求項1~4のいずれか一項に記載の駐車支援方法。
【請求項6】
前記異なる複数の基準画像ごとに、照合する場合の適合度を設定しておき、現在の自車両の周囲の画像と、前記異なる複数の基準画像の少なくとも一つの基準画像とを照合する場合に、設定された適合度を用いた重み付けにより目標駐車スペースを認識する請求項1~5のいずれか一項に記載の駐車支援方法。
【請求項7】
前記複数の基準画像を予め記憶するときに、所定の駐車開始位置から前記目標駐車スペースに至る走行経路を記憶しておき、
その後に自車両を前記目標駐車スペースに駐車させる場合に、前記目標駐車スペースを認識したら、記憶しておいた走行経路に沿って自車両の走行動作を自律制御する請求項1~6のいずれか一項に記載の駐車支援方法。
【請求項8】
自車両を目標駐車スペースに駐車した状態で、自車両に装着した撮像装置を用いて自車両の周囲を撮像して生成した、前記目標駐車スペースを含む異なる複数の基準画像を予め記憶するメモリと、
その後に自車両を前記目標駐車スペースに駐車させる場合には、現在の自車両の周囲の画像と、前記異なる複数の基準画像の少なくとも一つの基準画像とを照合して前記目標駐車スペースを認識し、前記認識された目標駐車スペースの位置情報に基づいて、前記目標駐車スペースに至る自車両の走行動作を自律制御するコントローラと、を備える駐車支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車支援方法及び駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的利用頻度が高い駐車場に対し、その駐車スペースの位置情報などを予め登録しておき、次回以降その駐車スペースに駐車する際は、メモリから駐車スペースの位置情報などを読み出し、駐車支援制御を実行する駐車支援装置が知られている(特許文献1)。この駐車支援装置では、車両のフロントバンパ、リヤトランク、左右のドアミラーのそれぞれに設けられた4つのカメラを用い、1つの仮想視点から車両と車両の周辺領域とを見た視点画像、たとえば、車両の直上位置から車両を見下ろすような俯瞰画像を生成し、この画像に映った駐車スペースをメモリに登録したり、メモリに登録されたテンプレート画像と照合したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-202697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、1つの俯瞰画像を生成し、これを現在の停止位置で撮像された車両周囲の画像としたり、テンプレート画像として記憶したりする。そのため、現在の車両周囲の画像又は予めメモリに登録したテンプレート画像自体が、照合し易い特徴点が存在しないなど、認識処理に不適合な画像であると、これから駐車すべき目標駐車スペースの認識精度が低下するという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、目標駐車スペースの認識精度が高い駐車支援方法及び駐車支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自車両を目標駐車スペースに駐車した状態で、自車両に装着した撮像装置を用いて自車両の周囲を撮像して生成した、前記目標駐車スペースを含む異なる複数の基準画像を予め記憶しておき、その後に自車両を前記目標駐車スペースに駐車させる場合には、現在の自車両の周囲の画像と、前記異なる複数の基準画像の少なくとも一つの基準画像とを照合して前記目標駐車スペースを認識し、認識された目標駐車スペースの位置情報に基づいて、目標駐車スペースに至る自車両の走行動作を自律制御することによって、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、異なる複数の基準画像を用いて目標駐車スペースの照合処理を実行するので、目標駐車スペースの認識精度が高い駐車支援方法及び駐車支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の駐車支援方法及び駐車支援装置を適用した駐車支援システムの一実施の形態を示すブロック図である。
図2図1の駐車支援システムの撮像装置を示す斜視図である。
図3図1の駐車支援システムの画像処理装置によって生成された俯瞰画像を示すディスプレイの表示画像の一例である。
図4図1の駐車支援システムの測距装置を示す平面図である。
図5】本発明の実施形態に係る駐車スペースを規定する線のパターンの例を示す平面図である。
図6】駐車スペースの一例を示す平面図である。
図7A図1の駐車支援装置に登録する第1基準画像の一例を示す図である。
図7B図1の駐車支援装置に登録する第2基準画像の一例を示す図である。
図8図1の駐車支援装置にて実行される駐車制御手順の一例を示すフローチャートである。
図9図6のステップS6のサブルーチンの一例を示すフローチャートである。
図10図6のステップS6のサブルーチンの他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態例を説明する。図1は、本発明の駐車支援方法及び駐車支援装置を適用した駐車支援システム1の一実施の形態を示すブロック図である。以下に説明する駐車支援システム1は、特に限定はされないが、たとえば自宅の駐車場や勤務先の駐車場のように、比較的頻繁に利用する駐車場の駐車スペースを予め駐車支援システム1に登録しておき、その後、この登録された駐車スペースに自車両を駐車する場合には、予め登録した駐車スペースの情報と自律走行制御を用いて駐車操作を支援するものである。
【0010】
本実施形態の駐車支援システム1は、駐車支援装置10と、撮像装置20と、画像処理装置30と、測距装置40と、車両コントローラ50と、駆動システム60と、車速センサ70と、操舵角センサ80とを備える。これらの装置は、相互に情報の授受を行うためにCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
【0011】
本実施形態の駐車支援装置10は、制御装置11と、出力装置12とを備える。制御装置11は、駐車支援プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)111と、ROM111に格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)112と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)113とを備えるコンピュータである。本実施形態に係るROM111には、たとえば自車両が駐車可能な駐車スペースを検出し、この駐車スペースをディスプレイ121に表示し、ドライバーにより設定された目標駐車スペースに自車両を駐車するための駐車経路を演算し、自車両をその駐車経路に沿って自律走行などを実行する駐車支援プログラムが格納されている。また、自車両が駐車可能な駐車スペースを検出することに代えて、予め登録しておいた駐車スペースがある場合に、ドライバーがその駐車スペースに駐車する旨の設定がされたときは、その登録された駐車スペースに自車両を駐車するための駐車経路を演算し(又は予め登録されている場合はメモリから読み出し)、自車両をその駐車経路に沿って自律走行などを実行する駐車支援プログラムが格納されている。出力装置12は、自車両の駐車候補となる駐車スペースなどの画像情報をドライバーに提示するためのディスプレイ121と、ドライバーへの指示内容などを音声で出力するためのスピーカ122とを備える。
【0012】
本実施形態の駐車支援装置10は、ステアリング、アクセル、ブレーキの全てを自律操作する自律駐車のほか、ステアリング、アクセル、ブレーキのうち、少なくとも何れか1つを手動操作し、残りの操作を自律制御する半自律駐車にも適用することができる。また、本実施形態の駐車支援装置10は、ドライバーに駐車経路を提示し、ドライバーがステアリング、アクセル、及びブレーキを手動操作することで自車両を目標駐車スペースに駐車させる駐車支援にも適用することができる。なお、自律駐車及び半自律駐車を実行する場合、デッドマンスイッチなどの自動復帰型スイッチを用いることがより好ましい。デッドマンスイッチを用いた駐車支援装置10では、デッドマンスイッチが押されている場合に限り、自車両の自律走行制御が実行され、デッドマンスイッチの押し下げが解除されると自車両の自律走行制御及び半自律走行制御が中止されるからである。
【0013】
また、駐車支援装置10は、当該駐車支援装置10と情報の授受が可能な携帯端末装置(スマートフォン、PDAなどの機器)から送信された信号により遠隔操作してもよい。たとえば、本実施形態の駐車支援装置10は、ドライバーが車外から自車両を操作して駐車させるリモートパーキングにも適用することができる。
【0014】
本実施形態の撮像装置20、画像処理装置30及び測距装置40は、自車両の前方、側方及び後方といった自車両の全周囲など、自車両の周囲にある駐車スペースを表示する白線、駐車スペースの目印となる縁石、段差又は壁、自車両の周囲にある障害物などを含む走行環境に関する情報その他の自車両の周囲の状況を検出するための装置である。
【0015】
本実施形態の撮像装置20は、自車両周囲の走行環境に関する情報を画像により認識するための車載装置である。撮像装置20は、自車両の周囲を撮像し、自車両の周囲に存在する駐車スペースを表示する白線、駐車スペースの目印となる縁石、段差又は壁、自車両の周囲にある障害物を含む画像データを取得することによって、自車両周囲の走行環境に関する情報を取得する。また、撮像装置20は、CCD等の撮像素子を備えるカメラ、超音波カメラ、赤外線カメラその他のカメラを含む。撮像装置20により取得された自車両周囲の走行環境に関する情報は、制御装置11に出力される。
【0016】
図2は、本実施形態の駐車支援システム1の撮像装置20を示す斜視図であって、自車両V1に搭載された撮像装置20の配置例を示す。図2に示す配置例では、自車両V1のフロントグリル部に撮像装置20aを配置し、左ドアミラーの下部に撮像装置20bを配置し、右ドアミラーの下部に撮像装置20cを配置し、リアバンパ上部に撮像装置20dを配置している。撮像装置20a~20dは、視野角の大きい広角レンズを備えたカメラであってもよい。図2に示すように、撮像装置20aは、主として自車両V1の右前方から左前方までを撮像し、撮像装置20bは、主として自車両V1の左前方から左後方までを撮像し、撮像装置20cは、主として自車両V1の左後方から右後方までを撮像し、撮像装置20dは、主として自車両V1の右後方から右前方までを撮像する。このように撮像装置20を配置することで、自車両V1の周囲の環境情報を取得する場合に、情報が取得できない死角を減らすことができる。なお、撮像装置20による障害物の検出には、撮像装置20a~20dを用いたモーションステレオの技術を用いてもよい。
【0017】
本実施形態の画像処理装置30は、自車両V1を上方の仮想視点から見た場合に、自車両V1の周囲の状況を示す俯瞰画像を生成するための装置である。仮想視点は、たとえば図2に示す仮想視点VP1である。画像処理装置30は、撮像装置20を用いて取得した複数の撮像画像を用いて、俯瞰画像を生成する。画像処理装置30において俯瞰画像を生成するために行われる画像処理は特に限定されないが、たとえば「鈴木政康・知野見聡・高野照久,俯瞰ビューシステムの開発,自動車技術会学術講演会前刷集,116-07(2007-10),17-22.」に記載された処理方法である。画像処理装置30によって生成された俯瞰画像は、制御装置11に出力され、図2及び3に示すディスプレイ121によってドライバーに提示される。なお、図2に示すディスプレイ121は、ダッシュボード上部の、運転席と助手席の間に配置されているが、ディスプレイ121の設置位置は特に限定されず、ドライバーが視認可能な適宜の位置に設置できる。また、ディスプレイ121に表示される画像は仮想視点VP1からの俯瞰画像であるが、他の仮想視点VP2から水平方向を見た画像なども同様の画像変換方法で生成することができ、後述する駐車スペースの登録に利用される。詳細は後述する。
【0018】
図3は、画像処理装置30によって生成された俯瞰画像の一例を示すディスプレイ121の表示画面である。図3は、自車両V1が、適当な駐車スペースPを見つけるために駐車場を徐行しているシーンを示す。図3に示すディスプレイ121の表示画面の左側には、画像処理装置30によって生成された俯瞰画像IM1が表示され、右側には、自車両V1の周囲を監視するための監視画像IM2が表示される。俯瞰画像IM1の中心には、自車両V1が表示され、自車両V1の左右には、白線で区切られた駐車スペースが表示される。これらの駐車スペースのうち、他車両V2が検出された駐車スペースには他車両V2が表示される。一方、他車両V2などの障害物が検出されていない駐車スペースには、自車両V1が駐車可能なスペースとして、駐車スペースPを示す破線の枠が表示される。そして、駐車スペースPの中からドライバーにより選択された目標駐車スペースPtには、太い実線の枠が表示される。これに対して、監視画像IM2には、自車両V1の現在の走行方向である前方の周辺環境情報を提示するために、自車両V1のフロントグリル部に配置された撮像装置20aから取得した画像を表示する。監視画像IM2には、白線で区切られた駐車スペースのほかに、たとえば他車両V2のような障害物が表示される。
【0019】
本実施形態の測距装置40は、自車両V1と対象物との相対距離および相対速度を演算するための装置である。測距装置40は、たとえばレーザーレーダー、ミリ波レーダー(LRF)、LiDARユニット(light detection and ranging unit)、超音波レーダーなどのレーダー装置又はソナーである。測距装置40は、レーダー装置又はソナーの受信信号に基づいて対象物の存否、対象物の位置、対象物までの距離を検出する。対象物は、たとえば自車両V1の周囲の障害物、歩行者、自転車、他車両である。測距装置40により検出された対象物の情報は、制御装置11に出力される。駐車支援中に、測距装置40により検出された対象物に自車両V1が接触しそうな場合には、制御装置11は、自車両V1を停止させ、対象物と自車両V1が接近している旨をディスプレイ121やスピーカ122によりドライバーに報知する。
【0020】
図4は、本実施形態の駐車支援システム1の測距装置40を示す平面図であって、測距装置40を自車両V1に搭載する場合の配置例を示したものである。図4に示す自車両V1には、自車両V1の前方の対象物を検出するための4つの前方測距装置40a、自車両V1の右側の対象物を検出するための2つの右側方測距装置40b、自車両V1の左側の対象物を検出するための2つの左側方測距装置40c、自車両V1の後方の対象物を検出するための4つの後方測距装置40dが設けられている。これらの測距装置40a~40dは、たとえば自車両V1のフロントバンパ及びリアバンパに設置することができる。このように測距装置40を配置することで、自車両V1の周囲の対象物との相対距離および相対速度を正確に演算することができる。
【0021】
図1に戻り、本実施形態の車両コントローラ50は、自車両V1の運転を律する駆動システム60を電子的に制御するための電子コントロールユニット(ECU:Electronic Control Unit)などの車載コンピュータである。車両コントローラ50は、駆動システム60に含まれる駆動装置、制動装置および操舵装置を制御し、駐車支援ルーチンを実行する場合には、自車両V1が現在位置から目標駐車スペースPtまで移動して駐車するための走行動作を支援する。車両コントローラ50は、駐車支援装置10から、予め算出された駐車経路、目標車速及び目標舵角に基づいた制御命令を受け取る。これら駐車経路、目標車速及び目標舵角の細部については後述する。
【0022】
本実施形態の駆動システム60は、走行駆動源である内燃機関及び/又は電動モータ、これら走行駆動源からの出力を駆動輪に伝達するドライブシャフトや変速機を含む動力伝達装置、この動力伝達装置を制御する駆動装置、車輪を制動する制動装置、及びステアリングホイール(いわゆるハンドル)の操舵角に応じて操舵輪を制御する操舵装置などの各種装置を含む。駐車支援ルーチンを実行する場合には、車両コントローラ50は、駐車支援装置10から、予め算出された駐車経路と目標車速に基づく制御命令を受信する。そして、車両コントローラ50は、駐車支援装置10からの制御命令に基づいて、駆動システム60の駆動装置及び制動装置への制御信号を生成し、車両の加減速を含む運転行動の制御を実行する。駆動システム60は、車両コントローラ50からの制御信号を受信することで、自車両V1の車速を自律的に制御することができる。
【0023】
また、駆動システム60は、操舵装置を備える。操舵装置は、ステアリングアクチュエータを備え、ステアリングアクチュエータは、ステアリングのコラムシャフトに取り付けられるモータ等を含む。駐車支援ルーチンを実行する場合には、駆動システム60の操舵装置は、予め算出された駐車経路に対する自車両の所定の横位置(車両の左右方向の位置)を維持しながら走行するように、車両コントローラ50により制御される。また、車両コントローラ50は、撮像装置20により取得した自車両V1の周囲の環境情報と、画像処理装置30が生成した俯瞰画像IM1と、測距装置40により検出された自車両V1の周囲の障害物、歩行者、他車両の情報のうち少なくとも一つ以上を用いて、操舵装置の制御を行う。この場合、駐車支援装置10は、車両コントローラ50に、予め算出された駐車経路と目標舵角に基づく制御命令を送信する。そして、車両コントローラ50は、駐車支援装置10からの制御命令に基づいて、駆動システム60の操舵装置への制御信号を生成し、自車両V1の操舵制御を実行する。駆動システム60は、車両コントローラ50からの制御信号を受信することで、自車両V1の操舵を自律的に制御することができる。
【0024】
本実施形態の車速センサ70は、駆動システム60の駆動装置に備えられた、自車両V1の車速を検出するためのセンサである。また、本実施形態の操舵角センサ80は、駆動システム60の操舵装置に備えられた、自車両V1の舵角を検出するためのセンサである。車速センサ70により検出された自車両V1の車速及び操舵角センサ80により検出された自車両V1の舵角は、車両コントローラ50を介して制御装置11に出力される。
【0025】
本実施形態の制御装置11は、ROM111に格納された駐車支援プログラムをCPU112により実行することにより、自車両V1の周辺の環境情報を取得する環境情報取得機能と、自車両V1が駐車可能な駐車領域を検出する駐車スペース検出機能と、検出した駐車スペースPを俯瞰画像IM1としてディスプレイ121に表示する駐車スペース表示機能と、自車両V1が現在位置から目標駐車スペースPtまで移動して駐車するための駐車経路を算出する駐車経路算出機能と、算出された駐車経路に沿って自車両V1が駐車するための走行動作を計画する走行動作計画機能を実現する。
【0026】
本実施形態の制御装置11は、環境情報取得機能により、自車両V1の周辺に位置する障害物の存在を含む周辺環境に関する情報を取得する。たとえば、制御装置11は、環境情報取得機能により、車速センサ70によって検出された自車両V1の車速情報と、操舵角センサ80によって検出された自車両V1の舵角情報とを、周辺環境に関する情報として取得する。またたとえば、制御装置11は、環境情報取得機能により、GPSユニット及びジャイロセンサなどを備えた自車位置検出装置によって検出された自車両V1の位置情報又はROM111に格納された三次元高精度地図(各種施設や特定の地点の位置情報を含む)によって検出された自車両V1の位置情報を、周辺環境に関する情報として取得する。なお、これらの周辺環境に関する情報を用いて、制御装置11の環境情報取得機能により、自車両V1の走行状況が自車両V1を目標駐車スペースPtに駐車するシーンであるか否かを自動的に判定してもよい。
【0027】
駐車スペース検出機能は、環境情報取得機能によって取得した自車両V1の周辺の環境情報を用いて、自車両V1が駐車可能な駐車領域を検出するための機能である。駐車スペースPの検出において、制御装置11は、撮像装置20によって取得した撮像画像を用いて、画像処理装置30により俯瞰画像IM1を作成する。制御装置11は、駐車スペース検出機能により、作成した俯瞰画像IM1から領域の境界を規定する線を検出し、検出された線から駐車領域を規定する線の候補を特定する。そして、制御装置11は、駐車スペース検出機能により、特定された線の候補が駐車領域を規定するか否かを判定し、特定された線の候補が駐車領域を規定すると判定した場合には、検出した駐車領域に自車両V1が駐車可能であるか否かを判定する。
【0028】
俯瞰画像IM1から領域の境界を規定する線を検出するために、制御装置11は、駐車スペース検出機能により、俯瞰画像IM1に対してエッジ検出を行い、輝度差(コントラスト)を算出する。そして、制御装置11は、駐車スペース検出機能により、俯瞰画像IM1の中から輝度差が所定値以上の画素列を特定し、線の太さと線の長さを算出する。検出される線の色は、必ずしも白色である必要はなく、赤色、黄色その他の色であってもよい。
【0029】
検出された線から駐車領域を規定する線の候補を特定するために、制御装置11は、パターンマッチングなどの公知の画像処理技術を用いる。パターンマッチングに用いるパターンは、制御装置11のROM111に予め記憶されている。たとえば、図5Aは、自車両V1が、他車両V2aと他車両V2bの間にある、自車両V1が駐車可能な目標駐車スペースPt1に駐車しようとしているシーンを示す。図5Aのシーンにおいて、目標駐車スペースPt1に対応する駐車スペースを規定する線は、目標駐車スペースPt1の長方形を構成する辺のうち3辺である線L1、線L2、及び線L3である。制御装置11のROM111は、駐車スペースを規定する線L1、線L2、及び線L3の組み合わせを、図5Aのシーンに対応するパターンとして記憶している。
【0030】
また、図5Bは、自車両V1が、他車両V2cと他車両V2dの間にある目標駐車スペースPt2に縦列駐車しようとしているシーンを示す。図5Bのシーンにおいて、制御装置11は、線L4を目標駐車スペースPt2に対応する駐車スペースを規定する線として撮像装置20を用いて検出し、他車両V2cと他車両V2dの左側に位置する縁石又は壁など(図示せず)をさらに検出する。ただし、線L4と縁石のみでは、制御装置11は、駐車スペースを認識できない。そこで、図5Bのシーンにおいて、制御装置11は、他車両V2cの後方に仮想の線L5を設定し、他車両V2dの前方に仮想の線L6を設定する。そして、撮像装置20により検出した線L4に、仮想の線L5と線L6を加えることにより駐車スペースを認識できる場合には、線L4が駐車スペースを規定する線であると判定する。制御装置11のROM111は、線L4と、他車両V2cの後方に配置された仮想の線L5と、他車両V2dの前方に配置された仮想の線L6の組み合わせを、図5Bのシーンに対応するパターンとして記憶している。
【0031】
さらに、図5Cは、自車両V1が、他車両V2eと他車両V2fの間にある、自車両V1が駐車可能な目標駐車スペースPt3に、斜め姿勢で駐車しようとしているシーンを示す。図5Cのシーンにおいて、目標駐車スペースPt3に対応する駐車領域を規定する線は、目標駐車スペースPt3の平行四辺形を構成する辺である線L7、線L8、線L9、及び線L10となる。制御装置11のROM111は、駐車領域を規定する線L7、線L8、線L9、及び線L10の組み合わせを、図5Cのシーンに対応するパターンとして記憶している。そして、駐車スペース検出機能により検出した駐車スペースPは、駐車スペース表示機能によりドライバーに提示される。
【0032】
本実施形態の制御装置11の駐車スペース検出機能は、上述したように、任意の場所において自車両が駐車可能なスペースが存在するか否かを検出するが、このほかに、自宅の駐車場や勤務先の駐車場のように、比較的頻繁に利用する駐車場の駐車スペースを予め駐車支援システム1に登録しておいた場合、この予め登録された駐車スペースを検出する機能も備えている。
【0033】
ここで、特定の駐車スペースの登録処理と、その照合処理について説明する。自宅の駐車場や勤務先の駐車場その他、ドライバーが次に駐車する際に自律駐車制御を利用したいと考える駐車スペースがある場合、たとえば自車両をその駐車スペースに駐車し、この状態で、駐車支援装置10に設けられた駐車スペース登録ボタンを押す。これにより、制御装置11が備えるGPSユニット及びジャイロセンサなどの自車位置検出装置(環境情報取得機能)により、その駐車スペースの緯度経度が当該制御装置11のメモリに記憶される。これと同時に、撮像装置20を用いて自車両の周囲を撮像し、これを基準画像として制御装置11のメモリに記憶する。この操作により、その駐車スペースの位置情報と基準画像とが関連付けられて記憶され、特定の駐車スペースの登録処理が終了する。そして、その後に当該駐車スペースに近づいて駐車しようとした場合、自律駐車制御の目標駐車スペースの一つとして設定することができる。
【0034】
本実施形態の制御装置11に予め記憶する基準画像は、この目標駐車スペースを特定するための画像であるが、1つではなく、異なる複数の基準画像を記憶する。ここでいう異なる複数の基準画像とは、視点位置が異なる複数の基準画像、視線方向が異なる複数の基準画像及び変換方法が異なる複数の基準画像のうちの少なくともいずれかの基準画像を含む意味である。
【0035】
視点位置が異なる複数の基準画像は、図2を参照して説明した画像処理装置30を用いた画像処理と同様に、撮像装置20で撮像された画像データを用いて生成することができる。たとえば、視線方向が同じ上から下方向であっても高さ(z座標)や平面上の位置(x-y座標)が異なる視点位置からの画像を基準画像とすることができる。同様に、視線方向が異なる複数の基準画像も、画像処理装置30により、撮像装置20で撮像された画像データを用いて生成することができる。たとえば、視点位置が同じ自車両の上部であっても鉛直下向きの視線と水平方向の視線のように、異なる視線方向の画像を基準画像とすることができる。また、変換方法が異なる複数の基準画像も、画像処理装置30により、撮像装置20で撮像された画像データを用いて生成することができ、たとえば魚眼変換を施した画像と施していない画像である。また、このほかにも、視点位置と視線方向の両方、視点位置と変換方法の両方、視線方向と変換方法の両方、又はこれら3つの全てが異なる複数の基準画像を生成して記憶してもよい。
【0036】
また、基準画像の生成に用いられる撮像装置20で撮像された画像データとしては、一つのカメラで撮像された画像データのみを用いて基準画像を生成してもよいし、複数のカメラで撮像された複数の画像データを用いて基準画像を生成してもよい。
【0037】
このような基準画像は、本実施形態の駐車支援装置10に設けられた登録ボタンなどを押すことで生成され、制御装置11のメモリに記憶される。すなわち、登録ボタンを押すと、撮像装置20により自車両の周囲の画像が撮像され、これを画像処理装置30で画像処理することにより基準画像が生成される。このとき、記憶する異なる複数の基準画像は、視点位置、視線方向又は返還方法など、予め所定の形態に設定したものを自動的に記憶してもよいし、一部又は全部の形態をドライバーに提示し、当該ドライバーが選択してもよい。また、基準画像とする場合、画像処理装置30で生成した画像全体を基準画像としてもよいし、画像処理装置30で生成した画像のうち特徴部分となるべき部分を自動的に抽出してもよいし、ドライバーが選択してもよい。
【0038】
図6は、予め登録する駐車スペースの一例を示す平面図である。同図に示す駐車スペースはドライバーの自宅の駐車スペースであり、ドライバーの自宅には、家屋H1、中庭H2、中庭の通路H3があり、中庭H2の隣に目標駐車スペースPtがあるものとする。H4は通路H3の端に立設されたポールを示し、RDは自宅前の道路を示す。本実施形態の駐車支援装置10では、自車両V1を目標駐車スペースPtに駐車した状態、すなわち駐車完了の状態で、撮像装置20の左ドアミラーに取り付けられた撮像装置20bにより撮像した画像データを用い、画像処理装置30により、図2に示す仮想視点VP1から真下を見た画像IM3と、仮想視点VP2から水平方向外側を見た画像IM4とを生成するものとする。
【0039】
図7Aは、駐車支援装置10に登録する第1基準画像IM31の一例を示す図、図7Bは、同じく駐車支援装置10に登録する第2基準画像IM41,IM42の一例を示す図である。図7Aに示す画像IM3は、目標駐車スペースPtに停めた自車両V1の左側の景色を、仮想視点VP1から真下に見た平面画像である。そのため、中庭H2と通路H3との境界線L11や、中庭H2と駐車スペースPtとの境界線L12が照合に適した特徴点となる。これに対して、中庭H2そのものは色彩が一様で模様などがなく特徴点がないので、照合には適さない。したがって、本実施形態では、境界線L11,L12が含まれた部分の画像IM31を第1基準画像とする。
【0040】
図7Bに示す画像IM4は、目標駐車スペースPtに停めた自車両V1の左側の景色を、仮想視点VP2から水平方向の家屋H1に向かって見た正面画像である。そのため、家屋H1の入口壁の縦線L13や、通路H3の端のポールH4が照合に適した特徴点となる。これに対して、中庭H2や通路H3は、境界線L11,L12はあるものの水平視した正面画像では特徴がそれほど出ないので、照合には適さない。したがって、本実施形態では、縦線L13が含まれた部分の画像IM41と、ポールH4が含まれた部分の画像IM42の少なくとも一方を第2基準画像とする。
【0041】
これら制御装置11のメモリに記憶された異なる複数の基準画像、すなわち第1基準画像IM31及び第2基準画像IM41,IM42は、その後にドライバーが当該自宅の駐車スペースを目標駐車スペースPtとして設定した場合に、制御装置11のメモリから読み出され、照合処理のための基準画像となる。なお、制御装置11のメモリに記憶する基準画像は、図7A及び図7Bに示すように、全体の画像IM3,IM4の中でも特に特徴点となる一部を切り出した画像IM31,IM41,IM42としたが、これに代えて全体の画像IM3及び画像IM4を基準画像にしてもよい。
【0042】
また、本実施形態において、異なる複数の基準画像ごとに、照合する場合の適合度を設定し、設定した適合度を目標駐車スペースPtの位置情報の算出に用いてもよい。本実施形態の適合度とは、基準画像の、照合確率が高いと推定される尤度、相関係数その他の度合いであって、全ての基準画像の適合度を合算すると1又は100%になる特性値である。たとえば、他の画像と識別し易い特徴点を含んでいたり、複数の異なる特徴点を含んでいたりすると適合度が高くなる。そして、たとえば40%と60%の適合度が設定された2つの基準画像が登録されている場合、現在の自車両の周囲の画像に対し、これら2つの基準画像の両方ともに認識できたときに、適合度が60%の基準画像に基づいて算出される目標スペースの位置情報に60%の重み付けをし、適合度が40%の基準画像に基づいて算出される目標スペースの位置情報に40%の重み付けをし、これらを加重して最終的な目標駐車スペースの位置情報を算出してもよい。
【0043】
また、本実施形態において、図6に示すように、自宅など所望の目標駐車スペースPtを登録する場合、これに関連付けて、道路RDの所定の駐車開始位置P0から目標駐車スペースPtに至る走行経路Rをトラッキングし、予め制御装置11のメモリに記憶しておいてもよい。そして、その後に、自車両V1を目標駐車スペースPtに駐車させる場合において、照合処理により目標駐車スペースPtを認識したら、記憶しておいた走行経路Rに沿って自車両の走行動作を自律制御してもよい。
【0044】
また、本実施形態において、制御装置11のメモリに異なる複数の基準画像を記憶させたのち、その駐車スペースに自車両を駐車させる場合、撮像装置20を用いて自車両の周囲の画像を撮像し、この画像と基準画像とを比較することで、基準画像で特定される目標駐車スペースの位置情報を算出する。このとき、現在の自車両の周囲の画像を、異なる複数の基準画像にそれぞれ対応する画像形態に変換する。たとえば、1つの基準画像が、図7Aに示す仮想視点VP1から真下に見た平面画像である第1基準画像IM31の場合、この第1基準画像IM31との照合を行うときは、画像処理装置30を用いて、撮像装置20で撮像した画像データを、仮想視点VP1から真下に見た平面画像に変換する。同様に、他の1つの基準画像が、図7Bに示す仮想視点VP2から水平方向に見た正面画像である第2基準画像IM41,IM42の場合、この第2基準画像IM41,IM42との照合を行うときは、画像処理装置30を用いて、撮像装置20で撮像した画像データを、仮想視点VP2から水平方向に見た正面画像に変換する。
【0045】
また、本実施形態において、現在の自車両の周囲の画像と、異なる複数の基準画像とを照合処理する場合に、現在の自車両の周囲の画像と、全ての異なる複数の基準画像とを照合処理してもよいし、異なる複数の基準画像の一部の基準画像と照合処理してもよい。そして、現在の自車両の周囲の画像と、全ての異なる複数の基準画像とを照合処理する場合には、認識できた基準画像の全部から、上述した適合度で重み付けするなどして目標駐車スペースPtの位置情報を算出する。また、現在の自車両の周囲の画像と、異なる複数の基準画像の一部の基準画像とを照合処理する場合には、異なる複数の基準画像を順に照合処理し、認識できた基準画像があったときに、残りの基準画像があったとしてもそこで照合処理を終了し、その認識できた基準画像に基づいて目標駐車スペースPtの位置情報を算出する。
【0046】
図1に戻り、本実施形態の制御装置11の駐車スペース表示機能は、ドライバーに駐車スペースPを提示するために、制御装置11が検出した駐車スペースP又は予め登録しておいた駐車スペース(図6のPtなど)をディスプレイ121に表示する機能である。たとえば図3に示すように、制御装置11は、破線の枠で駐車スペースPをドライバーに提示する。ドライバーは、図3に示す駐車スペースPの中から、自車両V1を駐車させる目標駐車スペースPtを選択する。目標駐車スペースPtの選択は、たとえばタッチパネルからなるディスプレイ121の画面に触れることによって行うことができる。このようにドライバーが目標駐車スペースPtを設定することで、制御装置11は、駐車経路算出機能により駐車経路を算出することができるようになる。
【0047】
本実施形態の制御装置11の駐車経路算出機能は、設定された目標駐車スペースPtに自車両V1を駐車させるために、目標駐車スペースPtまでの駐車経路を算出する機能である。
【0048】
次に、図8図10を参照して、本実施形態の制御装置11における駐車支援処理を説明する。図8は、本実施形態の駐車支援処理の基本的な処理を示すフローチャートの一例、図9は、図8のステップS6のサブルーチンの一例を示すフローチャート、図10は、図8のステップS6のサブルーチンの他の例を示すフローチャートである。なお、以下に説明する駐車支援処理は、制御装置11により所定時間間隔で実行される。
【0049】
図8のステップS1において、制御装置11は、自律駐車開始ボタンが押されたか否かを判定する。たとえば、ドライバーが駐車場に入ったところで自律駐車ボタンを押すと、本実施形態の駐車支援処理が開始する。またはこれに代えて、環境情報取得機能により自動的に自律駐車を開始するか否かを判定してもよい。自律駐車を開始すると判定した場合はステップS2へ進み、そうでない場合はこのステップS1を繰り返す。
【0050】
ステップS2において、ドライバーが、制御装置11のメモリに予め登録しておいた登録駐車スペースを選択したか否かを判定する。登録駐車スペースを選択した場合はステップS6へ進み、そうでない場合はステップS3へ進む。
【0051】
登録駐車スペースを選択していない場合は、ステップS3において、制御装置11は、駐車スペース検出機能により、撮像装置200によって取得した画像を用いて、画像処理装置30により俯瞰画像IM1を作成する。そして、俯瞰画像IM1から駐車領域を検出し、撮像装置200及び測距装置40を用いて、駐車領域から駐車スペースPを検出する。
【0052】
続くステップS4において、制御装置11は、駐車スペース表示機能により、ディスプレイ121を用いて駐車スペースPをドライバーに提示する。ドライバーは、表示された駐車スペースPの中から所望の駐車スペースを選択し、これを目標駐車スペースに設定する。ステップS5において、制御装置11は、駐車スペースPの中から、自車両V1を駐車させる目標駐車スペースPtが設定されたか否かを判定する。ドライバーが、駐車スペースPの中から自車両V1を駐車させる目標駐車スペースPtを選択していないと判定した場合は、ステップS4に戻り、ドライバーが目標駐車スペースPtを選択するまで駐車スペースPをドライバーに提示し続ける。これに対して、ドライバーが、駐車スペースPの中から自車両V1を駐車させる目標駐車スペースPtを選択したと判定した場合は、ステップS7に進む。
【0053】
ステップS2に戻り、ステップS2においてドライバーが登録駐車スペースを選択した場合はステップS6へ進む。図9はステップS6のサブルーチンを示すフローチャートであり、ドライバーが登録駐車スペースを選択した場合、撮像装置20により撮像された現在の自車両の周囲の画像と、予め登録された異なる複数の基準画像とを照合し、目標駐車スペースPtを認識して当該目標駐車スペースPtの位置情報を算出する。
【0054】
具体的には、図9のステップS611において、撮像装置20により撮像された現在の自車両の周囲の画像を第1基準画像IM31の形態に合わせて変換し、第1基準画像IM31と照合する。本実施形態では、第1基準画像IM31は、仮想視点VP1から真下に見た平面画像であるため、撮像装置20により撮像された現在の自車両の周囲の画像を仮想視点VP1から真下に見た平面画像に変換する。そして、従来公知のテンプレート画像によるマッチング手法や特徴点照合手法その他の照合手法を用いて、現在の自車両の周囲の画像における第1基準画像IM31を認識する。
【0055】
続くステップS612では、撮像装置20により撮像された現在の自車両の周囲の画像を第2基準画像IM41,IM42の形態に合わせて変換し、第2基準画像IM41,IM42と照合する。本実施形態では、第2基準画像IM41,IM42は、仮想視点VP2から水平方向に見た正面画像であるため、撮像装置20により撮像された現在の自車両の周囲の画像を仮想視点VP2から水平方向に見た正面画像に変換する。そして、従来公知のテンプレート画像によるマッチング手法や特徴点照合手法その他の照合手法を用いて、現在の自車両の周囲の画像における第2基準画像IM41,IM42を認識する。
【0056】
続くステップS613では、ステップS611で実行した照合の結果、現在の自車両の周囲の画像に第1基準画像IM31と合致する部分があったか否かを判定し、合致する部分があったと判定した場合はステップS614へ進み、合致する部分がなかったと判定した場合はステップS617へ進む。
【0057】
ステップS614では、ステップS612で実行した照合の結果、現在の自車両の周囲の画像に第2基準画像IM41,IM42と合致する部分があったか否かを判定し、合致する部分があったと判定した場合はステップS615へ進み、合致する部分がなかったと判定した場合はステップS616へ進む。一方、ステップS613において、現在の自車両の周囲の画像に第1基準画像IM31と合致する部分がなかったと判定した場合、ステップS617にて、ステップS612で実行した照合の結果、現在の自車両の周囲の画像に第2基準画像IM41,IM42と合致する部分があったか否かを判定し、合致する部分があったと判定した場合はステップS618へ進み、合致する部分がなかったと判定した場合はステップS619へ進む。
【0058】
ステップS615では、ステップS613にて第1基準画像IM31に合致する部分があると判定され、さらにステップS614にて第2基準画像IM41,IM42に合致する部分があると判定されたので、第1基準画像IM31及び第2基準画像IM41,IM42の検出位置に基づいて、目標駐車スペースPtの位置を算出する。このとき、第1基準画像IM31と第2基準画像IM41,IM42に適合度が設定されている場合は、当該適合度を用いた加重平均により目標駐車スペースPtの位置を算出する。
【0059】
ステップS616では、ステップS613にて第1基準画像IM31に合致する部分があると判定され、ステップS614にて第2基準画像IM41,IM42に合致する部分がないと判定されたので、第1基準画像IM31の検出位置に基づいて、目標駐車スペースPtの位置を算出する。この場合、第2基準画像IM41,IM42は、目標駐車スペースPtの位置算出には用いない。
【0060】
ステップS618では、ステップS613にて第1基準画像IM31に合致する部分がないと判定され、ステップS614にて第2基準画像IM41,IM42に合致する部分があると判定されたので、第2基準画像IM41,IM42の検出位置に基づいて、目標駐車スペースPtの位置を算出する。この場合、第1基準画像IM31は、目標駐車スペースPtの位置算出には用いない。
【0061】
ステップS619では、ステップS613にて第1基準画像IM31に合致する部分がないと判定され、さらにステップS614にて第2基準画像IM41,IM42に合致する部分がないと判定されたので、目標駐車スペースPtの位置を算出しないで、駐車支援処理を終了する。
【0062】
ステップS615,S616,S618の各処理を実行したら、図8のステップS7へ進む。
【0063】
ステップS7において、制御装置11は、駐車経路算出機能により、たとえば現在位置から、又は走行方向を変更した後の位置から、設定した目標駐車スペースPtまで自車両V1が移動する駐車経路Rを算出する。ステップS8において、制御装置11は、走行動作計画機能により、算出された駐車経路Rに沿って自車両V1が駐車するための走行動作を計画し、算出された駐車経路Rと、計画された走行動作によって、車両コントローラ50、駆動システム60、車速センサ70、及び操舵角センサ80を用いて自車両V1の駐車支援を実行する。なお、ステップS2において、登録駐車スペースを選択した場合に、当該登録された目標駐車スペースPtの位置情報に関連付けた駐車経路Rが記憶されているときは、ステップS7においてこれを読み出す。
【0064】
なお、制御装置11は、ステップS8の駐車支援の実行中に、環境情報取得機能により、撮像装置200及び測距装置40を用いて、自車両V1の周囲の障害物を検出し、障害物との干渉を避けながら駐車支援を実行する。
【0065】
ステップS9において、自車両V1が目標駐車スペースPtに駐車し終えたか否かを判定し、自車両V1が駐車を完了するまでステップS8の駐車支援を継続する。
【0066】
図9に示す駐車スペースの認識処理では、制御装置11のメモリに登録された基準画像の全部、すなわち第1基準画像IM31及び第2基準画像IM41,IM42との照合を行ったが、図10に示すように制御装置11のメモリに登録された基準画像の一部との照合を実行してもよい。図10は、図8のステップS6のサブルーチンの他の例を示すフローチャートである。
【0067】
具体的には、図9のステップS621において、撮像装置20により撮像された現在の自車両の周囲の画像を第1基準画像IM31の形態に合わせて変換し、第1基準画像IM31と照合する。本実施形態では、第1基準画像IM31は、仮想視点VP1から真下に見た平面画像であるため、撮像装置20により撮像された現在の自車両の周囲の画像を仮想視点VP1から真下に見た平面画像に変換する。そして、従来公知のテンプレート画像によるマッチング手法や特徴点照合手法その他の照合手法を用いて、現在の自車両の周囲の画像における第1基準画像IM31を認識する。
【0068】
続くステップS622では、ステップS621で実行した照合の結果、現在の自車両の周囲の画像に第1基準画像IM31と合致する部分があったか否かを判定し、合致する部分があったと判定した場合はステップS623へ進み、合致する部分がなかったと判定した場合はステップS624へ進む。
【0069】
ステップS623では、ステップS622にて第1基準画像IM31に合致する部分があると判定されたので、第1基準画像IM31の検出位置に基づいて、目標駐車スペースPtの位置を算出する。この場合、第2基準画像IM41,IM42は、目標駐車スペースPtの位置算出には用いない。
【0070】
一方、ステップS624では、撮像装置20により撮像された現在の自車両の周囲の画像を第2基準画像IM41,IM42の形態に合わせて変換し、第2基準画像IM41,IM42と照合する。本実施形態では、第2基準画像IM41,IM42は、仮想視点VP2から水平方向に見た正面画像であるため、撮像装置20により撮像された現在の自車両の周囲の画像を仮想視点VP2から水平方向に見た正面画像に変換する。そして、従来公知のテンプレート画像によるマッチング手法や特徴点照合手法その他の照合手法を用いて、現在の自車両の周囲の画像における第2基準画像IM41,IM42を認識する。
【0071】
続くステップS625では、ステップS624で実行した照合の結果、現在の自車両の周囲の画像に第2基準画像IM41,IM42と合致する部分があったか否かを判定し、合致する部分があったと判定した場合はステップS626へ進み、合致する部分がなかったと判定した場合はステップS627へ進む。
【0072】
ステップS626では、ステップS622にて第1基準画像IM31に合致する部分がないと判定され、ステップS624にて第2基準画像IM41,IM42に合致する部分があると判定されたので、第2基準画像IM41,IM42の検出位置に基づいて、目標駐車スペースPtの位置を算出する。この場合、第1基準画像IM31は、目標駐車スペースPtの位置算出には用いない。
【0073】
ステップS627では、ステップS622にて第1基準画像IM31に合致する部分がないと判定され、さらにステップS625にて第2基準画像IM41,IM42に合致する部分がないと判定されたので、目標駐車スペースPtの位置を算出しないで、駐車支援処理を終了する。
【0074】
以上のように、本実施形態に係る駐車支援装置10及び駐車支援方法によれば、自車両V1の周囲を撮像する撮像装置20を用いて生成した、目標駐車スペースPtを特定する異なる複数の基準画像(第1基準画像IM31、第2基準画像IM41,IM42)を予め記憶しておき、その後に自車両V1を目標駐車スペースPtに駐車させる場合には、現在の自車両V1の周囲の画像と、異なる複数の基準画像の少なくとも一つの基準画像とを照合して目標駐車スペースPtを認識するので、目標駐車スペースPtの認識精度を高めることができる。
【0075】
また、本実施形態に係る駐車支援装置10及び駐車支援方法によれば、認識された目標駐車スペースPtの位置情報に基づいて、目標駐車スペースPtに至る走行経路Rに沿った自車両V1の走行動作を自律制御するので、より一層確実に自車両V1を自律制御することができる。
【0076】
また、本実施形態に係る駐車支援装置10及び駐車支援方法によれば、現在の自車両V1の周囲の画像と、異なる複数の基準画像(第1基準画像IM31、第2基準画像IM41,IM42)の全部とを照合して目標駐車スペースPtを認識するので、目標駐車スペースPtの認識精度がより一層高くなる。
【0077】
また、本実施形態に係る駐車支援装置10及び駐車支援方法によれば、現在の自車両V1の周囲の画像と、異なる複数の基準画像(第1基準画像IM31、第2基準画像IM41,IM42)の一部とを照合して目標駐車スペースPtを認識するので、目標駐車スペースPtの認識処理時間が短縮され、認識処理負荷も軽減される。
【0078】
また、本実施形態に係る駐車支援装置10及び駐車支援方法によれば、異なる複数の基準画像(第1基準画像IM31、第2基準画像IM41,IM42)は、視点位置が異なる複数の基準画像、視線方向が異なる複数の基準画像及び変換方法が異なる複数の基準画像のうちの少なくともいずれかの基準画像を含むので、目標駐車スペースPtの認識精度がより一層高くなる。
【0079】
また、本実施形態に係る駐車支援装置10及び駐車支援方法によれば、現在の自車両V1の周囲の画像と、異なる複数の基準画像(第1基準画像IM31、第2基準画像IM41,IM42)の少なくとも一つの基準画像とを照合する場合に、現在の自車両の周囲の画像を、異なる複数の基準画像にそれぞれ対応する画像形態に変換するので、照合処理が簡素化され、照合精度も高くなる。
【0080】
また、本実施形態に係る駐車支援装置10及び駐車支援方法によれば、異なる複数の基準画像(第1基準画像IM31、第2基準画像IM41,IM42)ごとに、照合する場合の適合度を設定しておき、現在の自車両V1の周囲の画像と、異なる複数の基準画像の少なくとも一つの基準画像とを照合する場合に、設定された適合度を用いた重み付けにより目標駐車スペースPtを認識するので、予め登録する目標駐車スペースPtの環境に応じて照合の適合性を高めることができ、目標駐車スペースPtの認識精度がより一層高くなる。
【0081】
また、本実施形態に係る駐車支援装置10及び駐車支援方法によれば、複数の基準画像(第1基準画像IM31、第2基準画像IM41,IM42)を予め記憶するときに、所定の駐車開始位置から目標駐車スペースPtに至る走行経路Rを記憶しておき、その後に自車両V1を目標駐車スペースPtに駐車させる場合に、目標駐車スペースPtを認識したら、記憶しておいた走行経路Rに沿って自車両V1の走行動作を自律制御するので、走行経路の算出負荷を軽減することができると同時に、駐車支援開始までの時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0082】
1…駐車支援システム
10…駐車支援装置
11…制御装置
111…ROM
112…CPU
113…RAM
12…出力装置
121…ディスプレイ
122…スピーカ
20…撮像装置
2a…車両のフロントグリル部に配置された撮像装置
2b…車両の左ドアミラーの下部に配置された撮像装置
2c…車両の右ドアミラーの下部に配置された撮像装置
2d…車両のリアバンパ近傍に配置された撮像装置
30…画像処理装置
40…測距装置
4a…前方測距装置
4b…右側方測距装置
4c…左側方測距装置
4d…後方測距装置
50…車両コントローラ
60…駆動システム
70…車速センサ
IM1…俯瞰画像
IM2…監視画像
IM31…第1基準画像
IM41,IM42…第2基準画像
L1~L10…線
P…駐車スペース
Pt、Pt1、Pt2、Pt3…目標駐車スペース
V1…自車両
V2、V2a、V2b、V2c、V2d、V2e…他車両
VP1,VP2…仮想視点
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10