(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 41/30 20060101AFI20231219BHJP
F01N 3/025 20060101ALI20231219BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20231219BHJP
F02D 41/08 20060101ALI20231219BHJP
F02D 41/12 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
F02D41/30
F01N3/025 101
F02D45/00 362
F02D41/08
F02D41/12
(21)【出願番号】P 2022569388
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2020046900
(87)【国際公開番号】W WO2022130527
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】神谷 光平
(72)【発明者】
【氏名】遠田 譲
(72)【発明者】
【氏名】鄭 柱勇
【審査官】藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-337171(JP,A)
【文献】特開2005-147082(JP,A)
【文献】特開2013-060834(JP,A)
【文献】特開2013-108474(JP,A)
【文献】特開2009-024589(JP,A)
【文献】特開2010-121544(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123160(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00 - 41/40
F01N 3/025
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射を停止して内燃機関の自動停止が可能な車両に搭載された内燃機関の制御方法であって、
内燃機関の排気通路に設けられた排気微粒子フィルタの温度が所定温度よりも高く、上記排気微粒子フィルタに堆積している排気微粒子の堆積量が所定量以上のときに燃料噴射の停止を禁止し、
上記排気微粒子フィルタの温度が上記所定温度よりも高く、上記排気微粒子フィルタに堆積している排気微粒子の堆積量が上記所定量未満の場合には、燃料噴射の停止を可能とし、
上記排気微粒子フィルタの温度が上記所定温度よりも高い状態で上記車両が停止した場合には燃料噴射を停止して、内燃機関の自動停止を可能とする内燃機関の制御方法。
【請求項2】
上記車両が停止した際に、上記排気微粒子フィルタの温度が上記所定温度以下であるとともに、上記排気微粒子フィルタに堆積している排気微粒子の堆積量が上記所定量以上の場合には、燃料噴射の停止を禁止する請求項1に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項3】
上記車両の停止は、上記車両の速度を検出する車速センサの検出信号と上記車両の前後方向に沿った加速度を検出する加速度センサの検出信号とを用いて判定する請求項1または2に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項4】
車両が停止してから所定時間経過した場合には、燃料噴射を停止する請求項
1に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項5】
燃料噴射を停止して内燃機関の自動停止が可能な車両に搭載された内燃機関と、
上記内燃機関の排気通路に設けられた排気微粒子フィルタと、
上記排気微粒子フィルタの温度が所定温度よりも高く、上記排気微粒子フィルタに堆積している排気微粒子の堆積量が所定量以上のときに燃料噴射の停止を禁止し、上記排気微粒子フィルタの温度が上記所定温度よりも高く、上記排気微粒子フィルタに堆積している排気微粒子の堆積量が上記所定量未満の場合には、燃料噴射の停止を可能とし、上記排気微粒子フィルタの温度が上記所定温度よりも高い状態で上記車両が停止した場合には燃料噴射を停止して、内燃機関の自動停止を可能とする制御部と、を有する内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車両の減速運転時に内燃機関の排気通路に設けられたGPF(Gasoline Particulate Filter)の温度が所定温度(禁止温度)よりも高い場合に、内燃機関の燃料カットを禁止することでGPFへの酸素供給量を制限し、GPFに堆積した煤が一気に燃焼しないようにして、GPFの熱劣化を防止する技術が開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1においては、GPFの温度が所定温度(禁止温度)よりも高ければ常に燃料カットが禁止されることになり、内燃機関の燃費が悪化する虞がある。
【0004】
例えば、GPFへの酸素供給量が制限された状態であれば、GPFの温度が所定温度(禁止温度)よりも高いときに内燃機関の燃料カット(燃料噴射の停止)を実施しても、GPFに堆積し煤が一気に燃焼することはないと考えられる。
【0005】
つまり、GPFを備えた内燃機関においては、GPFの温度に応じ内燃機関の燃料カットの禁止を行うにあたって更なる改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
本発明の内燃機関は、内燃機関の排気通路に設けられた排気微粒子フィルタの温度が所定温度よりも高いときに燃料噴射の停止を禁止し、上記排気微粒子フィルタの温度が上記所定温度よりも高い状態で上記車両が停止した場合には燃料噴射の停止を可能とする。
【0008】
本発明によれば、車両が停止した状態では、燃料噴射を停止しても排気微粒子フィルタが所期の性能を損なうことはなく、燃料噴射を停止することによる燃費向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明が適用される内燃機関のシステム構成を模式的に示した説明図。
【
図3】車両が一時停止した際の動作の一例を示すタイミングチャート。
【
図4】車両が一時停止した際の動作の一例を示すタイミングチャート。
【
図5】本発明に係る内燃機関の制御の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、内燃機関1のシステム構成を模式的に示した説明図である。
【0011】
内燃機関1は、例えば直列3気筒の火花点火式内燃機関であって、ガソリンを燃料とし、自動車等の車両に駆動源として搭載されるものである。すなわち、内燃機関1は、内燃機関1が搭載された車両の駆動輪(図示せず)を駆動する。
【0012】
内燃機関1は、例えば直列3気筒の火花点火式内燃機関であって、吸気弁2と排気弁3とで囲まれた燃焼室中央部に点火プラグ4を有している。
【0013】
内燃機関1の吸気ポート6には、吸気弁2へ向けて燃料を噴射する燃料噴射弁5が配置されている。なお、内燃機関1は、筒内へ燃料を直接噴射する筒内直接噴射型内燃機関であってもよい。
【0014】
吸気ポート6に接続された吸気通路7は、吸気コレクタ7aを備えている。吸気コレクタ7aの上流側には、エアクリーナ8、エアフローメータ9、電子制御型スロットルバルブ10が上流側から順に配置されている。
【0015】
内燃機関1の排気ポート13に接続された排気通路14には、三元触媒からなる触媒装置15が設けられている。
【0016】
触媒装置15の上流側には、空燃比センサ16が配置されている。触媒装置15の下流側には、O2センサ17が配置されている。また、排気通路14のO2センサ17よりも下流側には、排気中の排気微粒子(Particulate Matter)であるPMを捕集する排気微粒子フィルタ(以下、GPFと略記する)18が配置されている。GPF18は、例えば、目封じ型のセラミック製モノリスフィルタに三元触媒をコーティングした構成となっている。上流側の触媒装置15は、例えば車両のエンジンルーム内に位置している。また、GPF18は、例えば車両の床下に位置している。
【0017】
GPF18は、その入口側に入口側温度センサ19を備え、その出口側に出口側温度センサ20を備えている。入口側温度センサ19は、GPF18の入口側の排気温度を検出している。出口側温度センサ20は、GPF18の出口側の排気温度を検出している。また、GPF18は、GPF18における圧力損失(つまり微粒子堆積状態)を検出するために、GPF18の入口側と出口側との間の圧力差に応答する差圧センサ21を備えている。
【0018】
内燃機関1は、排気通路14から排気の一部をEGRガスとして吸気通路7へ導入(還流)する排気還流(EGR)が実施可能なものであって、排気通路14から分岐して吸気通路7に接続された排気還流通路23を有している。
【0019】
この排気還流通路23には、排気還流通路23内のEGRガスの流量を制御する電動のEGR弁25と、EGRガスを冷却可能なEGRクーラ24と、が設けられている。
【0020】
また、内燃機関1は、内燃機関1の冷却水の温度を検出する冷却水温センサ27、クランクシャフト(図示せず)のクランク角を検出するクランク角センサ31等の各種センサを備えている。クランク角センサ31は、内燃機関1の機関回転数を検出可能なものである。
【0021】
上述した種々のセンサ類の検出信号は、エンジンコントローラ35に入力される。エンジンコントローラ35には、さらに、運転者により操作されるアクセルペダルの踏込量を検出するアクセル開度センサ36の検出信号、車両の加速度を検出可能な加速度センサ37の検出信号、車両の車速を検出可能な車速センサ38からの車速信号、などが入力される。加速度センサ37は、車両の前後方向に沿った加速度を検出可能なものである。
【0022】
エンジンコントローラ35は、アクセル開度センサ36の検出信号(検出値)を用いて、内燃機関1の要求負荷(エンジン負荷)を算出する。また、エンジンコントローラ35は、車載バッテリ(図示せず)の充電容量に対する充電残量の比率であるSOC(State Of Charge)を算出可能となっている。
【0023】
エンジンコントローラ35は、これらの検出信号に基づき、内燃機関1の全体的な制御を行っている。例えば、各気筒の燃料噴射弁5の燃料噴射量及び噴射時期、点火プラグ4の点火時期、スロットルバルブ10の開度、EGR弁25の開度等を最適に制御している。
【0024】
エンジンコントローラ35は、GPF18に所定レベル以上の微粒子堆積状態(いわゆる目詰まり状態)が検出されたときに、GPF18の温度など他の条件も考慮しながらGPF18の強制的な再生を行う制御(GPF再生制御)を行っている。
【0025】
GPF再生制御は、具体的には、例えば、スロットルバルブ10の開度を増加して吸入空気量及び燃料量を増量するとともに、点火時期を遅角させて排気温度を高めることで、堆積していた排気微粒子を燃焼させ、除去する。
【0026】
GPF18の温度は、例えば入口側温度センサ19及び出口側温度センサ20の検出信号を用いてエンジンコントローラ35で算出される。GPF18に堆積している排気微粒子の堆積量は、例えば差圧センサ21の検出信号を用いてエンジンコントローラ35で算出される。
【0027】
なお、一般に、高負荷運転などによりGPF18の温度が高いときにはGPF18は自然に再生可能であるので、GPF18の強制的な再生は、低負荷運転の継続などによりGPF18の温度が低いときに行われる。例えば、運転者がアクセルペダルを解放した状態であるアクセル開度が「0」であるときにも、GPF18の強制的な再生がなされる。
【0028】
内燃機関1は、車両の走行時もしくは車両の停止時に、所定の自動停止条件が成立すると、燃料供給を停止して自動停止する。そして、内燃機関1は、自動停止中に所定の自動再始動条件が成立すると再始動する。つまり、エンジンコントローラ35は、所定の自動停止条件が成立すると内燃機関1を自動停止し、所定の自動再始動条件が成立すると内燃機関1を自動再始動する。
【0029】
内燃機関1の自動停止条件は、例えば、アクセルペダルが踏み込まれていない状態であること、車載バッテリのバッテリSOCが所定のバッテリ閾値よりも大きいこと等である。
【0030】
内燃機関1は、これらの自動停止条件が全て成立した場合に自動停止する。換言すれば、エンジンコントローラ35は、内燃機関1の運転中にこれらの自動停止条件が全て成立すると内燃機関1を自動停止させる。つまり、エンジンコントローラ35は、所定の自動停止条件が成立すると燃料噴射を停止して内燃機関1を自動停止する制御部に相当する。
【0031】
内燃機関1の自動再始動条件は、例えば、アクセルペダルが踏み込まれた状態であること、車載バッテリのバッテリSOCが所定のバッテリ閾値以下であること等である。
【0032】
内燃機関1は、自動停止中に再始動要求があると再始動する。換言すれば、エンジンコントローラ35は、内燃機関1の自動停止中に上述した自動再始動条件のいずれかが成立すると内燃機関1を再始動させる。例えば、自動停止中の内燃機関1は、車載バッテリのバッテリSOCが所定のバッテリ閾値以下になると再始動する。
【0033】
つまり、エンジンコントローラ35は、所定の自動再始動条件が成立すると内燃機関1を自動停再始動する制御部に相当する。
【0034】
内燃機関1の自動停止として、例えば、アイドルストップ、コーストストップ及びセーリングストップがある。
【0035】
アイドルストップは、車両の一時停止時に、例えば上記のような自動停止条件が成立した場合に実施される。また、アイドルストップは、例えば上記のような自動再始動条件のいずれかが成立すると解除される。
【0036】
コーストストップは、車両の走行中に、例えば上記のような自動停止条件が成立した場合に実施される。また、コーストストップは、例えば上記のような自動再始動条件のいずれかが成立すると解除される。なお、コーストストップとは、例えば、低車速でブレーキペダルが踏み込まれた状態の減速中に内燃機関1を自動停止することである。
【0037】
セーリングストップは、車両の走行中に、例えば上記のような自動停止条件が成立した場合に実施される。また、セーリングストップは、例えば上記のような自動再始動条件のいずれかが成立した場合に解除される。なお、セーリングストップとは、例えば中高車速でブレーキペダルが踏まれていない惰性走行中に内燃機関1を自動停止することである。
【0038】
つまり、上述した自動停止条件は、アイドルストップを行うためのアイドルストップ条件、コーストストップを行うためのコーストストップ条件及びセーリングストップを行うためのセーリングストップ条件、を包括する上位概念である。
【0039】
また、上述した自動再始動条件は、アイドルストップの解除を行うためのアイドルストップ解除条件、コーストストップの解除を行うためのコーストストップ解除条件及びセーリングストップの解除を行うためのセーリングストップ解除条件、を包括する上位概念である。
【0040】
ここで、車両の運転中、GPF18の再生中等によりGPF18の温度が高い状態で内燃機関1の燃料噴射を停止(燃料カット)した場合には、新気がGPF18に流入してGPF18の温度が過度に上昇し、GPF18の排気性能等に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0041】
GPF18の温度が高い場合に内燃機関1の燃料噴射の停止(燃料カット)を禁止した場合には、新気の流入によりGPF18の温度が過度に上昇することが防止されるものの、GPF18の温度が高い場合に内燃機関1の燃料噴射の停止(燃料カット)が常に禁止されて燃費が悪化する虞がある。
【0042】
また、車両が停止した状態で行われるアイドルストップでは、内燃機関1の燃料噴射を停止(燃料カット)すると、クランクシャフトの回転が停止し、新気がGPF18に流入することはない。
【0043】
そこで、エンジンコントローラ35は、車両の運転中、燃料噴射を停止(燃料カット)しても新気がGPF18に流入しない場合、GPF18の温度が高い状態のときでも燃料噴射の停止(燃料カット)が許可されるよう内燃機関1を制御する。
【0044】
すなわち、エンジンコントローラ35は、基本的にはGPF18の温度が所定温度よりも高いときに燃料噴射の停止を禁止し、GPF18の温度が上記所定温度よりも高い状態で車両が停止した場合には燃料噴射の停止を可能とする。
【0045】
詳述すると、エンジンコントローラ35は、制御部に相当するものであって、車両の運転中、GPF18の再生中の温度が所定温度T1よりも高く、GPF18に堆積している排気微粒子の堆積量が所定の第2堆積量V2(第1の堆積量)以上のときに燃料噴射の停止を禁止するが、GPF18の温度が所定温度T1よりも高くGPF18に堆積している排気微粒子の堆積量が上記第2堆積量V2以上の状態でGPF18の再生中であっても車両が停止した場合には燃料噴射の停止を可能とする。
【0046】
車両が停止した状態では、内燃機関1のクランクシャフトの回転が停止してGPF18に新気が入ることはなく、燃料噴射を停止(燃料カット)してもGPF18が過度に高温となることを回避することができる。つまり、車両が停止した状態では、燃料噴射を停止(燃料カット)してもGPF18が所期の性能を損なうことはなく、燃料噴射を停止(燃料カット)することによる燃費向上を図ることが可能となる。
【0047】
また、エンジンコントローラ35は、車両が停止した際に、GPF18の温度が所定温度以下であるとともに、GPF18に堆積している排気微粒子の堆積量が所定量以上の場合に、燃料噴射の停止を禁止する。
【0048】
詳述すると、エンジンコントローラ35は、車両が停止した際に、GPF18の温度が所定温度T1以下であるとともに、GPF18に堆積している排気微粒子の堆積量が所定の第1堆積量V1(第2の堆積量)以上の場合に、燃料噴射の停止を禁止する。第1堆積量V1は、上述した第2堆積量V2とよりも小さい値である。
【0049】
GPF18の温度が低く(所定温度T1以下)、GPF18における排気微粒子の堆積量が所定量(第1堆積量V1)以上の場合は、燃料噴射の停止(燃料カット)を禁止してGPF18の温度上昇を促すことで、常に適切なGPF18の浄化効果を得ることができる。
【0050】
そして、エンジンコントローラ35は、GPF18の温度が所定温度よりも高くなるとともに、GPF18に堆積している排気微粒子の堆積量が所定量未満の場合に、燃料噴射の停止を可能とする。
【0051】
詳述すると、エンジンコントローラ35は、GPF18の温度が所定温度T1よりも高くなるとともに、GPF18に堆積している排気微粒子の堆積量が第1堆積量V1未満の場合には、燃料噴射を停止(燃料カット)することを可能とする。
【0052】
GPF18の浄化効果が適切に得られて排気性能に影響がないシーンでは、燃料噴射の停止(燃料カット)を許可可能にすることにより燃費向上を図ることができる。
【0053】
エンジンコントローラ35は、加速度センサ37の検出信号と車速センサ38の検出信号とを用いて車両の停止を判定している。
【0054】
このように、異なる2つ(2種類)のセンサを用いて車両の停止を判定することで、一方のセンサが故障した場合でも、誤って車両が停車していると判定してGPF18が過度に高温となって所期の性能を損なうことを防止することができる。
【0055】
図2は、GPF18の温度を縦軸、GPF18における排気微粒子の堆積量(PM堆積量)を横軸としてGPF18の状態を模式的に示した説明図である。
【0056】
領域1は、GPF18の温度が所定温度T1よりも高くなるとともに、GPF18のPM堆積量が上記第1堆積量V1未満となる領域を含む領域である。
【0057】
詳述すると、領域1は、GPF18の温度が所定温度T1よりも高く所定の高温閾値T2以下で、GPF18のPM堆積量が第1堆積量V1未満となる領域と、GPF18の温度が所定温度T1よりも高く所定の高温閾値T2以下で、GPF18のPM堆積量が第1堆積量V1以上で第2堆積量V2未満となる領域と、GPF18の温度が所定温度T1以下で、GPF18のPM堆積量が第1堆積量V1未満となる領域と、を合わせた領域である。
【0058】
領域1は、GPF18による排気浄化効果が得られる通常領域である。GPF18の状態が領域1内にある場合は、内燃機関1の自動停止による燃料カットが許可される。
【0059】
領域2は、GPF18の温度が所定温度T1以下になるとともに、GPF18のPM堆積量が所定の第1堆積量以上となる領域を含む領域である。
【0060】
詳述すると、領域2は、GPF18の温度が所定温度T1未満で、GPF18のPM堆積量が第1堆積量V1以上で所定の第3堆積量V3未満となる領域である。第3堆積量V3は、第2堆積量V2とよりも大きい値である。
【0061】
領域2は、GPF18の温度を上げるヒートアップ領域である。領域2では、例えば、内燃機関1の残ガス率を下げて燃焼室の流動性を高めるように内燃機関1が制御される。また、領域2では、例えば、領域1に比べて高負荷側の運転点で内燃機関1が運転されるよう制御される。また領域2では、例えば、空燃比をストイキにして領域1に比べて点火時期を通常の点火時期よりもリタードするよう内燃機関1が制御される。GPF18の状態が領域2内にある場合は、内燃機関1の自動停止による燃料カットが禁止される。GPF18の状態が領域2内にある場合は、総じて、GPF18の温度及びPM堆積量が領域1または領域3となるように内燃機関1が制御される。
【0062】
領域3は、GPF18の温度が所定温度T1よりも高くなるとともに、GPF18のPM堆積量が所定の第2堆積量V2以上となる領域を含む領域である。
【0063】
詳述すると、領域3は、GPF18の温度が所定温度T1よりも高く所定の高温閾値T2未満で、GPF18のPM堆積量が第2堆積量V2以上で第3堆積量V3未満となる領域である。
【0064】
領域3は、GPF18の再生が行われる再生領域である。また。領域3は、GPF18の温度が高くPM堆積量が多くなる領域であり、領域2よりも排気温度を下げたい領域である。
【0065】
領域3では、例えば、排気温度を下げるために領域2よりも空燃比をリッチにし、点火時期を通常の点火時期からリタードさせないように内燃機関1が制御される。GPF18の状態が領域3内にある場合は、車両が停止中であれば、内燃機関1の自動停止による燃料カットが許可される。GPF18の状態が領域3内にある場合は、車両が停止中でなければ、内燃機関1の自動停止による燃料カットが禁止される。GPF18の状態が領域3内にある場合は、総じて、GPF18の温度及びPM堆積量が領域1または領域2になるように制御される。
【0066】
領域4は、GPF18の温度が高温閾値T2よりも高くなるとともに、GPF18のPM堆積量が所定の第3堆積量V3未満となる領域である。領域4は、GPF18の温度が高いオーバーヒート領域である。エンジンコントローラ35は、GPF18の状態が領域4内に入らないように内燃機関1を制御する。
【0067】
領域5は、GPF18のPM堆積量が所定の第3堆積量V以上となる領域である。領域5は、使用禁止領域である。エンジンコントローラ35は、GPF18の状態が領域4内に入らないように内燃機関1を制御する。GPF18の状態が領域5内に入った場合には、例えば警告灯を表示する等して運転者に告知し、修理工場等でDPF18のメンテナンスを行う必要がある。
【0068】
図3は、GPF18の状態が領域3内にあるときに、車両が一時停止した際の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0069】
図3の時刻t1は、車速センサ38で検出された車速が「0」となるタイミングである。
図3の時刻t2は、車両の実際の車速が「0」となるタイミングである。
図3の時刻t3は、加速度センサ37で検出された車両の減速度が「0」となるタイミングである。
図3における時刻t4は、車両が停止した状態から動き始めるタイミングである。
【0070】
図3に示す例では、車両が平地で停止しているため、減速度は時刻t3~時刻t4の間「0」となっている。
図3に示す例では、時刻t3のタイミングでアイドルストップ条件(自動停止条件)が成立し、アイドルストップ要求を示すフラグが「0」から「1」に切り替わる。アイドルストップ要求は、フラグが「0」のときアイドルストップを要求せず、フラグが「1」のときアイドルストップを要求する。
【0071】
図3に示すように、車速センサ38の検出値は、停止直前に精度が落ちる可能性がある。そのため、加速度センサ37の検出信号で車両が停止したと検出されるタイミングと車速センサ38で車両が停止したと検出されるタイミングにずれが生じている。上述した実施例では、車速センサ38で停止したと検出されるタイミングから所定時間経過したタイミング(加速度センサ37の検出信号で車両が停止したと検出される時刻t3)で車両が停止したと判定している。
【0072】
図3に示す例では、時刻t3のときGPF18の状態が上述した領域3内にあるため、車両が停止したと判定された時刻t3のタイミングで、GPF18からの燃料カット要求を示すフラグが「1」から「0」に切り替わる。GPF18からの燃料カット要求は、フラグが「0」のとき燃料カットを許可し、フラグが「1」のとき燃料カットを禁止する。
【0073】
GPF18からの燃料カット要求を示すフラグは、GPF18の状態が領域1にある場合は燃料カットが許可されるため「0」となる。GPF18からの燃料カット要求を示すフラグは、GPF18の状態が領域2にある場合は燃料カットが禁止されるため「1」となる。GPF18からの燃料カット要求を示すフラグは、GPF18の状態が領域3にある場合、車両が停止中であれば燃料カットが許可されるため「0」となる。GPF18からの燃料カット要求を示すフラグは、GPF18の状態が領域3にある場合、車両が停止中でなければ燃料カットが禁止されるため「1」となる。
【0074】
従って、
図3に示す例では、時刻t3のタイミングで、アイドルストップ要求を示すフラグが「1」となりGPF18からの燃料カット要求を示すフラグが「0」となって、内燃機関1の燃料噴射が停止され、内燃機関1が停止する。
【0075】
図3に示す例では、時刻t4のタイミングでアイドルストップ解除条件(自動再始動条件)が成立し、アイドルストップ要求を示すフラグが「1」から「0」に切り替わる。GPF18からの燃料カット要求を示すフラグは、
図3に示す例では、車両が動き出したことを受けて、時刻t4のタイミングで「0」から「1」に切り替わる。
【0076】
従って、
図3に示す例では、時刻t4のタイミングで、アイドルストップ要求を示すフラグが「0」となりGPF18からの燃料カット要求を示すフラグが「1」となって、内燃機関1の燃料噴射が再開され、内燃機関1が始動する。
【0077】
GPF18の温度が高い場合に内燃機関1の燃料噴射の停止(燃料カット)を一律禁止した場合には、
図3中に破線で示すように、時刻t3においてGPF18からの燃料カット要求が「0」に切り替わらず、時刻t3~時刻t4の間内燃機関1が運転される分だけ燃費が悪化することなる。
【0078】
すなわち、GPF18の状態が領域3内にある場合に、温度が高いからといってアイドルストップ条件が成立しても内燃機関1の燃料カットを禁止すると、
図3に破線で示すように、時刻t3~時刻t4の間内燃機関1が運転される分だけ燃費が悪化することなる。
【0079】
図4は、GPF18の状態が領域2内にあるときに、車両が一時停止した際の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0080】
図4の時刻t1は、車速センサ38で検出された車速が「0」となるタイミングである。
図4の時刻t2は、車両の実際の車速が「0」となるタイミングである。
図4の時刻t3は、加速度センサ37で検出された車両の減速度が「0」となるタイミングである。
図4における時刻t4は、車両が停止した状態から動き始めるタイミングである。
【0081】
図4に示す例では、GPF18の温度が低いため、時刻t3のタイミングでアイドルストップ条件(自動停止条件)が成立せず、アイドルストップ要求を示すフラグが「0」を維持する。
図4に示す例では、時刻t3のときGPF18の状態が上述した領域2内にあるため、車両が停止したと判定された時刻t3のタイミングで、GPF18からの燃料カット要求を示すフラグが「1」から「0」に切り替わらない。
【0082】
従って、
図4に示す例では、時刻t3のタイミング以降、内燃機関1の燃料噴射が停止せず、内燃機関1がアイドリング運転を継続する。
【0083】
GPF18の温度が低い場合に内燃機関1の燃料噴射の停止(燃料カット)した場合には、
図4中に破線で示すように、時刻t3においてGPF18からの燃料カット要求が「0」に切り替わり、アイドルストップ要求が「1」に切り替わることで、時刻t3~時刻t4の間内燃機関1が停止する分だけGPF18の温度が低下し、排気性能が悪化することなる。
【0084】
図5は、上述した内燃機関1の制御の流れを示すフローチャートである。
【0085】
ステップS1では、車両が停車(停止)しているか否かを判定する。車両が停車している場合は、ステップS2へ進む。車両が停車していない場合は、今回のルーチンを終了する。
【0086】
ステップS2では、GPF18が再生中であるか否かを判定する。GPF18が再生中の場合はステップS3へ進む。GPF18が再生中でない場合はステップS5へ進む。
【0087】
ステップS3では、アイドルストップが許可されるか否かを判定する。すなわち、ステップS3では、アイドルストップ条件が成立し、かつGPF18からの燃料カット要求により燃料カットが許可されている場合にアイドルストップが許可されていると判定する。アイドルストップが許可されていると判定された場合は、ステップS4へ進んで燃料カットを実施する。
【0088】
ステップS5では、GPF18がヒートアップモードであるか否かを判定する。すなわち、ステップS5では、GPF18の状態が領域2内にあるか否かを判定する。GPF18の状態が領域2内にあると判定された場合は、ステップS6へ進んで燃料カットの禁止を実施する。GPF18の状態が領域2内にあると判定されなかった場合は、ステップS3へ進む。
【0089】
以上、本発明の具体的な実施例を説明してきたが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0090】
高温閾値T2は、例えば、GPF18のPM堆積量に応じて変化するよう設定してもよい。詳述すると、高温閾値T2は、例えば、GPF18のPM堆積量が多くなるほど低くなるように設定してもよい。
【0091】
加速度センサ37の検出信号を用いて車両の停止を判定する場合、車両の減速度ではなく、車両の減速度の変化量を用いて車両の停止を判定してもよい。
【0092】
上述した実施例は、内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置に関するものである。