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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/12 20060101AFI20231219BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01L29/78 652T
H01L29/78 652D
H01L29/78 658E
H01L29/78 658C
H01L29/78 658G
H01L29/78 653A
H01L21/265 601Z
H01L21/265 V
H01L21/265 F
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023041140
(22)【出願日】2023-03-15
【審査請求日】2023-04-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮
(72)【発明者】
【氏名】上野 勝典
(72)【発明者】
【氏名】高島 信也
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/110285(WO,A1)
【文献】特開2022-136820(JP,A)
【文献】特開2013-182905(JP,A)
【文献】特開2012-059744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面の反対側に位置する第2主面とを有する窒化ガリウム層と、
前記窒化ガリウム層に設けられた電界効果トランジスタと、を備え、
前記電界効果トランジスタは、
前記窒化ガリウム層の前記第1主面側に設けられたゲート絶縁膜と、
前記窒化ガリウム層に設けられ、前記ゲート絶縁膜と接するp型領域と、
前記窒化ガリウム層に設けられ、前記p型領域と前記ゲート絶縁膜との界面に平行な第1方向において前記p型領域と接するn型領域と、
前記第1主面側に配置され、前記n型領域と接する第1電極とを備え、
前記p型領域は、
前記ゲート絶縁膜と接する第1領域と、
前記ゲート絶縁膜と接し、かつ前記第1方向において前記第1領域と前記n型領域との間に介在する第2領域とを有し、
前記第2領域は、前記第1領域よりもp型不純物濃度が高く、
前記電界効果トランジスタは、
前記窒化ガリウム層に設けられ、前記n型領域と前記第2主面との間に位置するp型の高濃度領域をさらに有し、
前記高濃度領域は、前記第1領域よりもp型不純物濃度が高く、かつ前記第2領域と接しており、
前記高濃度領域は、前記第2領域よりもp型不純物濃度が高い、窒化物半導体装置。
【請求項2】
第1主面と、前記第1主面の反対側に位置する第2主面とを有する窒化ガリウム層と、
前記窒化ガリウム層に設けられた電界効果トランジスタと、を備え、
前記電界効果トランジスタは、
前記窒化ガリウム層の前記第1主面側に設けられたゲート絶縁膜と、
前記窒化ガリウム層に設けられ、前記ゲート絶縁膜と接するp型領域と、
前記窒化ガリウム層に設けられ、前記p型領域と前記ゲート絶縁膜との界面に平行な第1方向において前記p型領域と接するn型領域と、
前記第1主面側に配置され、前記n型領域と接する第1電極とを備え、
前記p型領域は、
前記ゲート絶縁膜と接する第1領域と、
前記ゲート絶縁膜と接し、かつ前記第1方向において前記第1領域と前記n型領域との間に介在する第2領域とを有し、
前記第2領域は、前記第1領域よりもp型不純物濃度が高く、
前記電界効果トランジスタは、
前記窒化ガリウム層に設けられ、前記n型領域と前記第2主面との間に位置するp型の高濃度領域をさらに有し、
前記高濃度領域は、前記第1領域よりもp型不純物濃度が高く、かつ前記第2領域と接しており、
前記高濃度領域のp型不純物濃度は、5×1018cm-3以上、1×1020cm-3未満であり、
前記第2領域のp型不純物濃度は、1×1018cm-3以上、5×1018cm-3未満であり、
前記第1領域のp型不純物濃度は、1×1016cm-3以上、1×1018cm-3未満である、窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記電界効果トランジスタのチャネル領域に前記第1領域と前記第2領域とが存在する、請求項1又は2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記電界効果トランジスタのオン電流は、前記窒化ガリウム層の前記第2主面側から前記第1領域と前記第2領域とを通って前記n型領域に流れる、請求項1又は2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記p型領域は、前記第1方向においてp型不純物濃度が最大となるピーク位置を有し、
前記ピーク位置は前記第2領域に存在する、請求項1又は2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
前記第2領域は前記n型領域と接している、請求項1又は2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項7】
前記高濃度領域は前記n型領域と接している、請求項1又は2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項8】
前記高濃度領域は前記第1電極と接している、請求項1又は2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項9】
前記高濃度領域は前記第1領域と接している、請求項1又は2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項10】
前記電界効果トランジスタは、
前記第2主面側に設けられた第2電極をさらに有する、請求項1又は2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項11】
窒化ガリウム層にp型領域を形成する工程と、
前記窒化ガリウム層において前記p型領域と接する領域に、前記p型領域よりもp型不純物を高濃度に含む高濃度領域を形成する工程と、
前記窒化ガリウム層に熱処理を施して、前記高濃度領域から前記p型領域にp型不純物を拡散させることによって、前記p型領域の第1領域よりもp型不純物濃度が高い第2領域を形成する工程と、
前記窒化ガリウム層の第1主面側に、前記第1領域及び前記第2領域と接するゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記窒化ガリウム層の前記第1主面側であって、前記第2領域を介して前記第1領域の反対側にn型領域を形成する工程と、
前記n型領域に接する第1電極を形成する工程と、を含み、
前記熱処理を施す工程の前に、
前記窒化ガリウム層であって、前記高濃度領域と前記第2領域が形成される予定領域との界面を含む領域に、窒素をイオン注入する工程、をさらに有する窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記n型領域を形成する工程では、
前記熱処理を施す工程の前に、前記窒化ガリウム層の前記第1主面側にマスクを形成し、前記窒化ガリウム層において前記マスクから露出している領域にn型不純物をイオン注入し、
前記窒素をイオン注入する工程では、
前記マスクを用いて前記窒化ガリウム層に前記窒素をイオン注入する、請求項11に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記窒素をイオン注入する工程では、
前記第1主面の法線方向に対して斜めの角度で前記窒素をイオン注入する、請求項12に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記熱処理の最高温度は1300℃以上である、請求項11から13のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化物半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、窒化ガリウム(GaN)を用いた縦型MOSFETが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-188687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
GaNを用いた縦型MOSFETの特性向上には、高閾値電圧と高移動度の両立が必要である。しかし、一般的に閾値電圧と移動度はトレードオフの関係にある。例えば、閾値値電圧を増加させるためにp型ウェル領域の濃度を増加させると移動度が低下する。
【0005】
本開示は、高閾値電圧と高移動度の両立を可能とする窒化物半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る窒化物半導体装置は、第1主面と、前記第1主面の反対側に位置する第2主面とを有する窒化ガリウム層と、前記窒化ガリウム層に設けられた電界効果トランジスタと、を備える。前記電界効果トランジスタは、前記窒化ガリウム層の前記第1主面側に設けられたゲート絶縁膜と、前記窒化ガリウム層に設けられ、前記ゲート絶縁膜と接するp型領域と、前記窒化ガリウム層に設けられ、前記p型領域と前記ゲート絶縁膜との界面に平行な第1方向において前記p型領域と接するn型領域と、前記第1主面側に配置され、前記n型領域と接する第1電極とを備える。前記p型領域は、前記ゲート絶縁膜と接する第1領域と、前記ゲート絶縁膜と接し、かつ前記第1方向において前記第1領域と前記n型領域との間に介在する第2領域とを有する。前記第2領域は、前記第1領域よりもp型不純物濃度が高い。
【0007】
本開示の一態様に係る窒化物半導体装置の製造方法は、窒化ガリウム層にp型領域を形成する工程と、前記窒化ガリウム層において前記p型領域と接する領域に、前記p型領域よりもp型不純物を高濃度に含む高濃度領域を形成する工程と、前記窒化ガリウム層に熱処理を施して、前記高濃度領域から前記p型領域にp型不純物を拡散させることによって、前記p型領域の第1領域よりもp型不純物濃度が高い第2領域を形成する工程と、前記窒化ガリウム層の第1主面側に、前記第1領域及び前記第2領域と接するゲート絶縁膜を形成する工程と、前記窒化ガリウム層の前記第1主面側であって、前記第2領域を介して前記第1領域の反対側にn型領域を形成する工程と、前記n型領域に接する第1電極を形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、高閾値電圧と高移動度の両立を可能とする窒化物半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の実施形態1に係るGaN半導体装置の構成例を示す平面図である。
図2図2は、本開示の実施形態1に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
図3図3は、図2の断面図の一部を拡大して示す図である。
図4図4は、図3に示した縦型MOSFETのB-B´線における不純物濃度分布を示すグラフである。
図5A図5Aは、本開示の実施形態1に係る縦型MOSFETの製造方法を工程順に示す断面図である。
図5B図5Bは、本開示の実施形態1に係る縦型MOSFETの製造方法を工程順に示す断面図である。
図5C図5Cは、本開示の実施形態1に係る縦型MOSFETの製造方法を工程順に示す断面図である。
図5D図5Dは、本開示の実施形態1に係る縦型MOSFETの製造方法を工程順に示す断面図である。
図6図6は、本開示の実施形態2に係る縦型MOSFETの構成例を示す断面図である。
図7A図7Aは、本開示の実施形態2に係る縦型MOSFETの製造方法を工程順に示す断面図である。
図7B図7Bは、本開示の実施形態2に係る縦型MOSFETの製造方法を工程順に示す断面図である。
図7C図7Cは、本開示の実施形態2に係る縦型MOSFETの製造方法を工程順に示す断面図である。
図8図8は、本開示の実施形態2の変形例に係る縦型MOSFETの構成例を示す断面図である。
図9図9は、本開示の実施形態3に係る縦型MOSFETの構成例を示す断面図である。
図10A図10Aは、本開示の実施形態3に係る縦型MOSFETの製造方法を工程順に示す断面図である。
図10B図10Bは、本開示の実施形態3に係る縦型MOSFETの製造方法を工程順に示す断面図である。
図11図11は、本開示の実施形態4に係る縦型MOSFETの構成例を示す断面図である。
図12A図12Aは、本開示の実施形態4に係る縦型MOSFETの製造方法を工程順に示す断面図である。
図12B図12Bは、本開示の実施形態4に係る縦型MOSFETの製造方法を工程順に示す断面図である。
図12C図12Cは、本開示の実施形態4に係る縦型MOSFETの製造方法を工程順に示す断面図である。
図13図13は、本開示の実施形態5に係る縦型MOSFETの構成例を示す断面図である。
図14A図14Aは、本開示の実施形態5に係る縦型MOSFETの製造方法を工程順に示す断面図である。
図14B図14Bは、本開示の実施形態5に係る縦型MOSFETの製造方法を工程順に示す断面図である。
図14C図14Cは、本開示の実施形態5に係る縦型MOSFETの製造方法を工程順に示す断面図である。
図14D図14Dは、本開示の実施形態5に係る縦型MOSFETの製造方法を工程順に示す断面図である。
図14E図14Eは、本開示の実施形態5に係る縦型MOSFETの製造方法を工程順に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本開示の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
以下の説明では、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の文言を用いて、方向を説明する場合がある。例えば、X軸方向及びY軸方向は、GaN基板10の表面10aに平行な方向である。X軸方向及びY軸方向を水平方向ともいう。Z軸方向は、GaN基板10の表面10aの法線方向である。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに直交する。
【0012】
以下の説明では、Z軸の矢印方向を「上」と称し、Z軸の矢印の反対方向を「下」と称する場合がある。「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。「上」及び「下」は、領域、層、膜及び基板等における相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本開示の技術的思想を限定するものではない。例えば、紙面を180度回転すれば「上」が「下」に、「下」が「上」になることは勿論である。
【0013】
以下の説明では、半導体領域の導電型を示すPやNに付す+や-は、+及び-が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物濃度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。但し、同じPとP(または、NとN)とが付された半導体領域であっても、それぞれの半導体領域の不純物濃度が厳密に同じであることを意味するものではない。
【0014】
<実施形態1>
(構成例)
図1は、本開示の実施形態1に係るGaN(窒化ガリウム)半導体装置100(本開示の「窒化物半導体装置」の一例)の構成例を示す平面図である。図1では、GaN基板10の表面10aの不純物拡散層を示すために、ゲート絶縁膜21、ゲート電極22、ソース電極25の図示を省略している。図2は、本開示の実施形態1に係るGaN半導体装置100の構成例を示す断面図である。図2は、図1の平面図をA-A´線で切断した断面を示している。図3は、図2の断面図の一部を拡大して示す図である。
【0015】
図1から図3に示すGaN半導体装置100は、パワーデバイスである。図1から図3に示すように、GaN半導体装置100は、表面10a及び裏面10bを有するGaN基板10と、GaN基板10に設けられた複数の縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)1とを備える。
【0016】
GaN基板10は、本開示の「窒化ガリウム層」の一例である。GaN基板10の表面10aが本開示の「第1主面」の一例であり、表面10aの反対側に位置する裏面10bが本開示の「第2主面」の一例である。縦型MOSFET1は、本開示の「電界効果トランジスタ」の一例である。例えば、複数の縦型MOSFET1は、一方向(例えば、X軸方向)に繰り返し設けられている。1つの縦型MOSFET1が繰り返しの単位構造であり、この単位構造が一方向に並んで配置されている。
【0017】
図2及び図3に示すように、GaN基板10は、n+型のGaN単結晶基板11と、GaN単結晶基板11上に設けられたn-型のGaN層12と、を有する。
【0018】
GaN単結晶基板11は、例えばn+型のc面GaN単結晶基板である。GaN単結晶基板11に含まれるn型不純物は、Si(シリコン)、O(酸素)及びGe(ゲルマニウム)のうちの一種類以上である。一例を挙げると、GaN単結晶基板11はn型不純物としてSiを含み、GaN単結晶基板11におけるSiの不純物濃度は5×1017cm-3以上である。
【0019】
GaN単結晶基板11は、転位密度が1×10cm-2未満の低転位自立基板であってもよい。GaN単結晶基板11が低転位自立基板であることにより、GaN単結晶基板11上に形成されるGaN層12の転位密度も低くなる。また、低転位自立基板を用いることで、GaN基板10に大面積のパワーデバイスが形成される場合でも、パワーデバイスにおけるリーク電流を少なくすることができる。これにより、製造装置は、パワーデバイスを高い良品率で製造することができる。また、熱処理において、イオン注入された不純物が転位に沿って深く拡散することを防ぐことができる。
【0020】
GaN層12は、GaN単結晶基板11の表面上にエピタキシャル成長された単結晶GaN層である。GaN層12は、エピタキシャル成長の過程でn型不純物がドープされることにより形成される。n型不純物は、例えばSiである。GaN層12は、n型不純物として例えばSiを1×1015cm-3以上5×1016cm-3以下の濃度で含む。
【0021】
縦型MOSFET1は、GaN基板10の表面10a(すなわち、n-型のGaN層12の表面)側に設けられたp型のウェル領域13(本開示の「p型領域)の一例)と、p++型のコンタクト領域15と、n+型のソース領域23(本開示の「n型領域」の一例)とを有する。また、縦型MOSFET1は、GaN基板10の表面10a側に設けられたゲート絶縁膜21と、ゲート絶縁膜21上に設けられたゲート電極22と、GaN基板10の表面10a側に設けられてソース領域23及びコンタクト領域15と接するソース電極25(本開示の「第1電極」の一例)と、GaN基板10の裏面10b側に設けられてn+型のGaN単結晶基板11と接するドレイン電極26(本開示の「第2電極」の一例)とを有する。
【0022】
また、縦型MOSFET1は、GaN基板10に設けられ、ソース領域23とGaN基板10の第2主面との間に位置するp+型の高濃度領域14を有する。
【0023】
以下、縦型MOSFET1の構成例について、詳細に説明する。GaN基板10の表面10a(すなわち、n-型のGaN層12の表面)側には、p型のウェル領域13と、n+型のソース領域23と、p+型のコンタクト領域15とが設けられている。
【0024】
ウェル領域13は、例えば、GaN基板10の表面10a側にMg(マグネシウム)等のp型不純物がイオン注入され、熱処理により活性化されて形成されたp型層である。ウェル領域13は、p型の第1領域131と、第1領域131よりもp型不純物濃度が高いp+型の第2領域132とを有する。第1領域131と第2領域132は、それぞれゲート絶縁膜21と接している。ゲート絶縁膜21と接している第1領域131の表面及びその近傍と、ゲート絶縁膜21と接している第2領域132の表面及びその近傍とが、縦型MOSFET1のチャネル領域となる。第1領域131と第2領域132とがゲート絶縁膜21と接する方向は、GaN基板10の表面10aの法線方向(例えば、Z軸方向)である。
【0025】
図1から図3に示すように、第2領域132は、ウェル領域13とゲート絶縁膜21との界面に平行な方向(例えば、X軸方向)において、第1領域131とn+型のソース領域23との間に介在する。X軸方向において、第2領域132は、第1領域131とソース領域23とにそれぞれ接している。X軸方向において、第1領域131はソース領域23と直に接続しておらず、第2領域132を介してソース領域23と接続している。
【0026】
図示しないが、第2領域132は、X軸方向だけでなく、上記界面に平行な他の方向(例えば、Y軸方向)においても、第1領域131とソース領域23との間に介在してもよい。すなわち、第2領域132は、X軸方向及びY軸方向を含むXY平面に平行な水平方向において、第1領域131とソース領域23との間に隙間なく介在してもよい。水平方向において、第1領域131はソース領域23と直に接続しておらず、第2領域132を介してソース領域23と接続していてもよい。
【0027】
上述したように、第1領域131よりも第2領域132の方が、p型不純物濃度が高い。第1領域131のp型不純物濃度(例えば、Mg濃度)は、1×1016cm-3以上、1×1018cm-3未満である。第2領域132のp型不純物濃度(例えば、Mg濃度)は、1×1018cm-3以上、5×1018cm-3未満である。第1領域131の表面10aからの深さは、例えば500nm以上である。第2領域132の表面10aからの深さは、例えば10nm以上である。
【0028】
ソース領域23は、GaN基板10の表面10a側にSi、O又はGe等のn型不純物がイオン注入され、熱処理により活性化されて形成されたn+型層である。ソース領域23は、n型不純物として例えばSiを1×1019cm-3以上5×1020cm-3以下の濃度で含む。ソース領域23は、ゲート電極22の両側下のウェル領域13に設けられており、GaN基板10の表面10a(すなわち、ウェル領域13の表面)に面している。ソース領域23は、ウェル領域13の内側に位置し、ウェル領域13の第2領域132と接している。ソース領域23の表面10aからの深さは、例えば10nm以上である。
【0029】
コンタクト領域15は、例えば、GaN基板10の表面10a側にMg等のp型不純物がイオン注入され、熱処理により活性化されて形成されたp++型層である。コンタクト領域15は、例えばp+型の高濃度領域14よりもさらにP型不純物濃度が高い。コンタクト領域15は、p型不純物(例えば、Mg)を好ましくは5×1018cm-3以上1×1021cm-3以下の濃度で含み、より好ましくは1×1019cm-3以上2×1020cm-3以下の濃度で含む。コンタクト領域15の表面10aからの深さは、例えば10nm以上である。
【0030】
コンタクト領域15は、GaN基板10の表面10aに面している。コンタクト領域15は、ウェル領域13の内側に位置する。コンタクト領域15は、p+型の高濃度領域14を介してウェル領域13と接している。
【0031】
p型のウェル領域13は、p+型の高濃度領域14及びp++型のコンタクト領域15を介してソース電極25に接続している。これにより、ウェル領域13の電位は、ソース電極25の電位(例えば、接地電位(GND)等の基準電位)に固定される。
【0032】
ゲート絶縁膜21は、例えばSiO膜である。また、ゲート絶縁膜21は、Al膜、SiON膜、AlSiO膜、AlON膜のいずれか1つを含む単層膜であってもよいし、SiO膜、Al膜、SiON膜、AlSiO膜、AlON膜のいずれか1つ以上を含む積層膜であってもよい。ゲート絶縁膜21の厚さは、例えば50nm以上150nm以下であり、一例を挙げると100nmである。
【0033】
ゲート電極22は、ゲート絶縁膜21を介してチャネル領域と隣り合っている。ゲート電極22は、Al、Ti、Ni、Wなどの金属又は不純物をドープしたポリシリコンで構成されている。また、ゲート電極22は、WSi、NiSiなどのシリサイドで構成されていてもよい。
【0034】
ソース電極25及びドレイン電極26は、Al又はAl-Siの合金、Ni、Ni合金、Ti-Al合金、Ni-Au合金などで構成されている。また、ソース電極25は、ソース領域23との間にバリアメタル層を有してもよい。ドレイン電極26は、n+型のGaN単結晶基板11との間にバリアメタル層を有してもよい。バリアメタル層はTi(チタン)で構成されていてもよい。
【0035】
すなわち、ソース電極25及びドレイン電極26は、Ti層及びAl層の積層、又は、Ti層及びAl-Siの合金層の積層であってもよい。ソース電極25は、図示しないソースパッドを兼ねた電極であってもよいし、ソースパッドとは別に設けられた電極であってもよい。ドレイン電極26は、図示しないドレインパッドを兼ねた電極であってもよいし、ドレインパッドとは別に設けられた電極であってもよい。
【0036】
高濃度領域14は、例えば、GaN基板10の表面10a側にMg等のp型不純物がイオン注入され、熱処理により活性化されて形成されたp+型層である。p+型の高濃度領域14は、p型のウェル領域13の第1領域131よりもP型不純物濃度(例えば、Mg濃度)が高く、第2領域132よりもP型不純物濃度(例えば、Mg濃度)が高い。高濃度領域14のp型不純物濃度(例えば、Mg濃度)は、5×1018cm-3以上、1×1020cm-3未満である。高濃度領域14は、GaN基板10の表面10aから例えば50nm以上500nm以下の範囲に位置する。
【0037】
図2及び図3に示すように、高濃度領域14は、例えば、ソース領域23下及びコンタクト領域15下に連続して設けられており、ソース領域23及びコンタクト領域15とそれぞれZ軸方向で接している。また、高濃度領域14下にはp型のウェル領域13の一部(例えば、第1領域131の一部)が設けられており、第1領域131の一部とZ軸方向で接している。さらに、高濃度領域14は、p型のウェル領域13の他の一部(例えば、第2領域132)とも接している。例えば、高濃度領域14は、第2領域132とX軸方向及びZ軸方向の少なくとも一方向で接している。
【0038】
図4は、図3に示した縦型MOSFET1のB-B´線における不純物濃度分布を示すグラフである。B-B´線は、GaN基板10の表面10aに平行な線であり、ソース領域23の表面近傍とウェル領域13の表面近傍(チャネル領域を含む)とを通る線である。図4の横軸はX軸方向における位置を示し、縦軸は不純物濃度を示す。
【0039】
図4に示すように、ウェル領域13は、X軸方向においてp型不純物濃度(例えば、Mg濃度)が最大となるMgピークを有する。このMgピークは、後述のMg拡散源からのMg拡散によるものである。ウェル領域13におけるMgピーク位置は、第2領域132に存在する。
【0040】
(製造方法)
次に、縦型MOSFET1を備えるGaN半導体装置100の製造方法について説明する。図5Aから図5Dは、本開示の実施形態1に係る縦型MOSFET1の製造方法を工程順に示す断面図である。GaN半導体装置100は、レジスト塗布装置、露光装置、エッチング装置、イオン注入装置、熱処理装置、成膜装置、CMP(Chemical Mechanical Polishing)装置など、各種の装置によって製造される。以下、これらの装置を製造装置と総称する。
【0041】
図5Aにおいて、製造装置は、GaN単結晶基板11上に、SiがドープされたGaN層12をエピタキシャル成長させる。Siは、エピタキシャル成長の過程でGaN層12にドープされる。GaN層12の厚さは、例えば0.5μm以上1μm以下である。また、GaN層12におけるSi濃度は、例えば1×1015cm-3以上5×1016cm-3以下である。
【0042】
次に、製造装置は、GaN層12において、ウェル領域13が形成される予定領域(以下、ウェル形成領域)にp型不純物をイオン注入する。例えば、製造装置はGaN基板10の表面10a上にマスク(図示せず)を形成する。マスクは、フォトレジスト、SiO膜又はAl膜で構成されている。マスクは、ウェル形成領域の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状を有する。製造装置は、マスクが形成されたGaN層12にMgをイオン注入する。このイオン注入により、ウェル形成領域におけるMg濃度は、例えば1×1016cm-3以上、1×1018cm-3未満となる。イオン注入後、製造装置は、GaN基板10の表面10a上からマスクを除去する。
【0043】
次に、製造装置は、GaN基板10に熱処理を施して、ウェル形成領域にイオン注入されたMgを活性化させる。これにより、GaN層12にp型のウェル領域13(ここでは、p型の第1領域131)が形成される。
【0044】
次に、製造装置は、GaN層12において、ソース領域23が形成される予定領域(以下、ソース形成領域)23´にn型不純物をイオン注入する。例えば、製造装置は、GaN層12上にマスクM1を形成する。マスクM1は、フォトレジスト、SiO膜又はAl膜で構成されている。マスクM1は、ソース形成領域23´の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状を有する。製造装置は、マスクM1が形成されたGaN層12にSiをイオン注入する。このイオン注入により、ソース形成領域23´におけるSi濃度は、例えば1×1019cm-3以上5×1020cm-3以下となる。
【0045】
次に、製造装置は、マスクM1が形成されたGaN層12にMgをイオン注入する。このイオン注入により、p+型の高濃度領域14が形成される予定領域(以下、高濃度形成領域)14´にMgが注入される。この製造方法では、高濃度形成領域14´が、本開示の「高濃度領域」の一例となる。このイオン注入により、高濃度形成領域14´におけるMg濃度は、例えば5×1018cm-3以上、1×1020cm-3未満となる。
【0046】
次に、図5Bに示すように、製造装置は、マスクM1をそのまま用いて、GaN層12にN(窒素)をイオン注入する。ここでは、GaN基板10の表面10aの法線方向(例えば、Z軸方向)に対して斜めの角度でNをイオン注入する。すなわち、Nを斜めイオン注入する。Z軸方向に対する斜めの角度は、例えば10°以上60°以下であり、好ましくは20°以上45°以下である。GaN基板10の表面10aからのN注入ピーク深さは、p+型の高濃度領域14の表面10aからのMg注入ピーク深さと同じか、それよりも深いことが好ましい。N注入ピーク深さにおけるN注入濃度(以下、N注入ピーク濃度)が、例えば5×1018cm-3となるように、Nを斜めイオンする。
【0047】
これにより、ソース形成領域23´と、高濃度形成領域14´と、第2領域132が形成される予定領域(以下、第2形成領域)132´とにそれぞれNが導入される。少なくとも、Mgの拡散源となる高濃度形成領域14´と、Mgの拡散先となる第2形成領域132´との界面を含む領域にNが導入される。
【0048】
GaN層12にNをイオン注入する理由は、後述の熱処理で、p型不純物であるMgを拡散し易くするためである。本発明者の知見によれば、GaN層12にNをイオン注入することによって、Mgは拡散し易くなる。Nの注入濃度が大きくなるほど、Mgは拡散し易くなり、Mg拡散層におけるMg濃度も高くなる。Mg拡散層とは、熱処理によりMgが拡散した層のことである。本実施形態では、後の工程で形成される第2領域132が、Mg拡散層に相当する。
【0049】
また、本発明者の知見によれば、GaN層12にNをイオン注入しても、n型不純物であるSiの拡散のし易さはほとんど変わらない。Nの注入濃度を大きくしても、Siの拡散し易さに有意差は現れない。
【0050】
なお、マスクM1を用いたSi、Mg及びNの各イオン注入を実行する順は、上記に限定されず、任意の順で実行してよい。すなわち、Mg、Si、Nの順でイオン注入を行ってもよいし、N、Si、Mgの順でイオン注入を行ってもよいし、N、Mg、Siの順でイオン注入を行ってもよいし、Si、N、Mgの順でイオン注入を行ってもよいし、Mg、N、Siの順でイオン注入を行ってもよい。
【0051】
マスクM1を用いたSi、Mg及びNのイオン注入後、製造装置は、GaN基板10の表面10a上からマスクM1を除去する。
【0052】
次に、図5Cに示すように、製造装置は、GaN層12において、コンタクト領域15が形成される予定領域(以下、コンタクト形成領域)15´にp型不純物をイオン注入する。例えば、製造装置は、GaN層12上にマスクM2を形成する。マスクM2は、フォトレジスト、SiO膜又はAl膜で構成されている。マスクM2は、コンタクト形成領域15´の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状を有する。製造装置は、マスクM2が形成されたGaN層12にMgをイオン注入する。このイオン注入により、コンタクト形成領域15´におけるMg濃度は、高濃度形成領域14´におけるMg濃度よりも高濃度となり、例えば5×1018cm-3以上1×1021cm-3以下となり、より好ましくは1×1019cm-3以上2×1020cm-3以下となる。マスクM2を用いたMgのイオン注入後、製造装置は、GaN基板10の表面10a上からマスクM2を除去する。
【0053】
次に、図5Dに示すように、製造装置は、GaN基板10の表面10a上に保護膜41を形成する。保護膜41は、後述の熱処理においてGaN層12からN(窒素)原子が放出されることを防ぐ機能を有する。GaN層12からN原子が放出されると、放出された位置にはN空孔が形成される。N空孔は、ドナー型欠陥として機能し得るので、p型特性の発現が阻害される可能性がある。これを防ぐため、製造装置は、熱処理を行う前に予め、GaN基板10の表面10aを保護膜41で覆う。保護膜41は、例えば、窒化アルミニウム(AlN)膜、SiO膜又は窒化シリコン(SiN)膜、若しくはこれらのうちの1種以上含む積層膜である。
【0054】
次に、製造装置は、GaN基板10に熱処理を施す。この熱処理により、GaN層12にイオン注入されたSi、Mgはそれぞれ活性化されて、n+型のソース領域23、p+型の高濃度領域14、p++型のコンタクト領域15がそれぞれ形成される。また、高濃度形成領域14´に含まれるMgの一部は、第2形成領域132´へ拡散し、活性化されて、p+型の第2領域132(Mg拡散層)が形成される。この例では、高濃度形成領域14´がMg拡散源として機能する。
【0055】
なお、本発明者の知見によれば、Nのイオン注入によるMgの拡散性向上について、p型領域へは効果的に拡散するが、n型領域にはほとんど拡散しない。したがって、Nのイオン注入により、高濃度形成領域14´から周囲へMg拡散を促進する場合でも、Mgはソース形成領域23´へはほとんど拡散せず、Nがイオン注入されたp型のウェル領域13に選択的に拡散する。N注入領域にソース形成領域23´が重なる場合でも、高濃度(n+型)のソース領域23を形成することの妨げとはならない。
【0056】
また、Si、Mg及びNのイオン注入により、GaN層12に生じた結晶欠陥の少なくとも一部は、この熱処理により回復する。例えば、熱処理が行われるチャンバ内の最高温度は、1300℃以上1500℃以下である。チャンバ内の圧力は、特に限定されない。超高圧熱処理であってもよい。チャンバ内の雰囲気は、N、Ar等の不活性ガスである。上記最高温度での処理時間は、5分以上3時間以下である。熱処理後、製造装置は、GaN層12上から保護膜41を除去する。
【0057】
次に、製造装置は、GaN基板10の表面10a上にゲート絶縁膜21(図3参照)を形成する。次に、製造装置は、ゲート絶縁膜21上にゲート電極22(図3参照)を形成する。次に、製造装置は、n+型のソース領域23上とp++型のコンタクト領域15上とにソース電極25を形成する。また、ソース電極25の形成工程と前後して、製造装置は、GaN基板10の裏面10b側にドレイン電極26を形成する。以上の工程を経て、図1から図3に示した縦型プレーナ構造の縦型MOSFET1を有するGaN半導体装置100が完成する。
【0058】
(実施形態1の効果)
以上説明したように、本開示の実施形態1に係るGaN半導体装置100は、表面10aと、表面10aの反対側に位置する裏面10bとを有するGaN基板10と、GaN基板10に設けられた縦型MOSFET1と、を備える。縦型MOSFET1は、GaN基板10の表面10a側に設けられたゲート絶縁膜21と、GaN基板10に設けられ、ゲート絶縁膜21と接するp型のウェル領域13と、GaN基板10に設けられ、ウェル領域13とゲート絶縁膜21との界面に平行な第1方向(例えば、X軸方向)においてウェル領域13と接するn+型のソース領域23と、表面10a側に配置され、ソース領域23と接するソース電極25とを備える。p型のウェル領域13は、ゲート絶縁膜21と接する第1領域131と、ゲート絶縁膜21と接し、かつX軸方向において第1領域131とソース領域23との間に介在する第2領域132とを有する。第2領域132は、第1領域131よりもp型不純物濃度(例えば、Mg濃度)が高い。例えば、第1領域131はp型であり、Mg拡散層である第2領域132はp+型である。
【0059】
これによれば、縦型MOSFET1のチャネル領域に、p型の第1領域131と、第1領域131よりもp型不純物濃度(例えば、Mg濃度)が高いp+型の第2領域132とが存在する構造となる。縦型MOSFET1のオン電流は、GaN基板10の裏面10b側から、p型の第1領域131とp+型の第2領域132とを通って、n+型のソース領域23に流れる。
【0060】
これにより、p+型の第2領域132で、縦型MOSFET1の閾値電圧を制御することができる。また、p型の第1領域131で、縦型MOSFET1の移動度を確保することができる。縦型MOSFET1の閾値電圧と移動度とを、第1領域131及び第2領域132の各不純物濃度(例えば、Mg濃度)で個別に制御、確保することができ、それぞれを高い値にすることができる。これにより、高閾値電圧と高移動度の両立を可能とする縦型MOSFET1を備えるGaN半導体装置100を提供することができる。
【0061】
本開示の実施形態1に係るGaN半導体装置100の製造方法は、GaN基板10にp型のウェル領域13を形成する工程と、GaN基板10においてウェル領域13と接する領域に、ウェル領域13よりもp型不純物(例えば、Mg)を高濃度に含む高濃度形成領域14´(Mg拡散源)を形成する工程と、GaN基板10に熱処理を施して高濃度形成領域14´からウェル領域13にp型不純物を拡散させることによって、ウェル領域13の第1領域131よりもMg濃度が高いp+型の第2領域132を形成する工程と、GaN基板10の表面10a側に、p型の第1領域131及びp+型の第2領域132と接するゲート絶縁膜21を形成する工程と、GaN基板10の表面10a側であって、第2領域132を介して第1領域131の反対側にn+型のソース領域23を形成する工程と、ソース領域23に接するソース電極25を形成する工程と、を含む。これによれば、高閾値電圧と高移動度の両立を可能とする縦型MOSFET1を製造することができる。
【0062】
また、上記の製造方法では、高濃度形成領域14´(Mg拡散源)からのMgの拡散によってp+型の第2領域132を形成する。この製造方法では、例えばMgのイオン注入によって第2領域132を直接形成する場合と比べて、マスクの最小加工寸法による制限を受けずに済むため、第2領域132をより微細に形成することが容易となる。
【0063】
上記の製造方法では、p+型の第2領域132を形成するための専用マスクも不要であるため、マスク形成工程の増大を抑制することができる。これにより、専用マスクを用いる場合と比べて、製造コストの増大を抑制することができる。
【0064】
上記の製造方法では、熱処理を施す工程の前に、GaN層12であって、Mg拡散源となる高濃度形成領域14´と、Mgの拡散先となる第2形成領域132´との界面を含む領域に、N(窒素)をイオン注入する。これにより、高濃度形成領域14´から第2形成領域132´へp型不純物(例えば、Mg)を効率良く拡散させることが可能となる。
【0065】
(実施形態1の変形例)
なお、本開示の実施形態1では、コンタクト領域15を省いてもよい。このような態様であっても、縦型MOSFET1の閾値電圧と移動度とを、第1領域131及び第2領域132の各Mg濃度で個別に制御、確保することができ、それぞれを高い値にすることができる。したがって、高閾値電圧と高移動度の両立を可能とする縦型MOSFET1を実現することができる。
【0066】
また、本開示の実施形態1では、保護膜41の形成工程を省いてもよい。このような場合であっても、熱処理を行うことにより、高濃度形成領域14´に含まれるMgの一部を、第2形成領域132´へ拡散、活性化させて、p+型の第2領域132を形成することができる。
【0067】
<実施形態2>
上記の実施形態1では、p+型の高濃度領域14がn+型のソース領域23下にのみ配置されている態様を示した。しかしながら、本開示の実施形態はこれに限定されない。高濃度領域14は、ソース領域23下からその外側へ延出していてもよい。
【0068】
図6は、本開示の実施形態2に係る縦型MOSFET1Aの構成例を示す断面図である。図6に示すように、実施形態2に係る縦型MOSFET1Aでは、p+型の高濃度領域14が、ソース領域23下からその外側へ延出しており、JFET領域121と接している。例えば、p型の第1領域131とn-型のJFET領域121とのpn接合面と、p+型の高濃度領域14とn-型のJFET領域121とのpn接合面とが面一、またはほぼ面一となっている。
【0069】
実施形態1と同様に、実施形態2においても、縦型MOSFET1Aのチャネル領域に、p型の第1領域131とp+型の第2領域132とが存在する。縦型MOSFET1Aの閾値電圧と移動度とを、第1領域131及び第2領域132の各Mg濃度で個別に制御、確保することができ、それぞれを高い値にすることができる。したがって、高閾値電圧と高移動度の両立を可能とする縦型MOSFET1Aを実現することができる。
【0070】
図7Aから図7Cは、本開示の実施形態2に係る縦型MOSFET1Aの製造方法を工程順に示す断面図である。図7Aは、ウェル形成領域13´と高濃度形成領域14´とにp型不純物としてMgをイオン注入する工程を示している。図7Aに示すように、製造装置は、GaN基板10の表面10a上にマスクM11を形成する。マスクM11は、ウェル形成領域13´の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状を有する。マスクM11は、フォトレジスト、SiO膜又はAl膜で構成されている。
【0071】
製造装置は、マスクM11が形成されたGaN層12にMgをイオン注入する。このイオン注入により、ウェル形成領域13´にMgが導入される。また、製造装置は、ウェル形成領域13´に対するMgのイオン注入と前後して、高濃度形成領域14´にMgをイオン注入する。高濃度形成領域14´へのMgイオン注入でも、マスクM11を用いる。
【0072】
製造装置は、同一のマスクM11を用いて、かつ互いに異なるイオン注入条件(互いに異なるMgドーズ量、互いに異なるMg注入エネルギー)でGaN層12にMgをイオン注入することによって、ウェル形成領域13´と高濃度形成領域14´とにそれぞれMgを導入することができる。なお、ウェル形成領域13´へのMgイオン注入工程と、高濃度形成領域14´へのMgイオン注入工程は、例えば同一チャンバ内で連続して行う。
【0073】
マスクM11を用いたMgのイオン注入後、製造装置は、GaN基板10の表面10a上からマスクM11を除去する。
【0074】
次に、図7Bに示すように、製造装置は、GaN基板10の表面10a上にマスクM12を形成する。マスクM12は、ウェル形成領域13´の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状を有する。マスクM12は、フォトレジスト、SiO膜又はAl膜で構成されている。マスクM12は、ソース形成領域23´の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状を有する。製造装置は、マスクM12が形成されたGaN層12にSiをイオン注入する。このイオン注入により、ソース形成領域23´にSiが導入される。
【0075】
次に、図7Cに示すように、製造装置は、マスクM12をそのまま用いて、GaN層12にN(窒素)をイオン注入する。製造装置は、実施形態1と同様に、N(窒素)を斜めイオン注入する。これにより、ソース形成領域23´と、高濃度形成領域14´と、第2形成領域132´とにそれぞれNが導入される。マスクM12を用いたNのイオン注入後、製造装置は、GaN基板10の表面10a上からマスクM12を除去する。
【0076】
次に、製造装置は、実施形態1と同様にマスク(図示せず)を用いて、コンタクト形成領域15´にMgをイオン注入する。このイオン注入後、製造装置は、マスクを除去する。
【0077】
次に、製造装置は、GaN基板10の表面10a上に保護膜41を(図5D参照)形成する。そして、製造装置は、GaN基板10に熱処理を施す。この熱処理により、GaN層12にイオン注入されたSi、Mgはそれぞれ活性化されて、図6に示したp型の第1領域131、n+型のソース領域23、p+型の高濃度領域14、p++型のコンタクト領域15がそれぞれ形成される。また、高濃度形成領域14´に含まれるMgの一部は、第2形成領域132´へ拡散し、活性化されて、p+型の第2領域132が形成される。
【0078】
これ以降の工程は実施形態1と同じである。製造装置は、GaN基板10の表面10a上にゲート絶縁膜21(図6参照)を形成する。次に、製造装置は、ゲート絶縁膜21上にゲート電極22(図6参照)を形成する。次に、製造装置は、n+型のソース領域23上とp++型のコンタクト領域15上とにソース電極25を形成する。また、ソース電極25の形成工程と前後して、製造装置は、GaN基板10の裏面10b側にドレイン電極26を形成する。
【0079】
以上の工程を経て、図6に示した縦型プレーナ構造の縦型MOSFET1Aを有するGaN半導体装置100が完成する。上記の製造方法により、高閾値電圧と高移動度の両立を可能とする縦型MOSFET1Aを製造することができる。
【0080】
(実施形態2の変形例)
図8は、本開示の実施形態2の変形例に係る縦型MOSFET1Bの構成例を示す断面図である。図8に示すように、実施形態2の変形例に係る縦型MOSFET1Bでは、p型の第1領域131とn-型のJFET領域121とのpn接合面と、p+型の高濃度領域14とn-型のJFET領域121とのpn接合面とは面一となっていない。p+型の高濃度領域14が、n-型のJFET領域121側へ突出している。
【0081】
このような態様であって、上記の実施形態2と同様に、縦型MOSFET1Bのチャネル領域に、p型の第1領域131とp+型の第2領域132とが存在する。縦型MOSFET1Aの閾値電圧と移動度とを、第1領域131及び第2領域132の各Mg濃度で個別に制御、確保することができ、それぞれを高い値にすることができる。したがって、高閾値電圧と高移動度の両立を可能とする縦型MOSFET1Bを実現することができる。
【0082】
<実施形態3>
上記の実施形態1、2では、p++型のコンタクト領域15を介して、ウェル領域13がソース電極25に接続している態様を示した。しかしながら、本開示の実施形態はこれに限定されない。ウェル領域13は、例えばp+型の第2領域132を介して、ソース電極25に接続してもよい。
【0083】
図9は、本開示の実施形態3に係る縦型MOSFET1Cの構成例を示す断面図である。図9に示すように、実施形態3に係る縦型MOSFET1Cにおいて、p+型の第2領域132は、ソース領域23のX軸方向における両側に配置されている。あるいは、p+型の第2領域132は、ソース領域23の外周に沿って配置されていてもよい。
【0084】
p+型の第2領域132の一部(以下、第2領域132A)が、p+型の高濃度領域14とn+型のソース電極25との間に位置する。ウェル領域13は、高濃度領域14及び第2領域132Aを介してソース電極25に接続している。これにより、ウェル領域13の電位は、ソース電極25の電位(例えば、接地電位(GND)等の基準電位)に固定される。
【0085】
このような態様であっても、上記の実施形態1、2と同様に、縦型MOSFET1Cのチャネル領域に、p型の第1領域131とp+型の第2領域132とが存在する。縦型MOSFET1Cの閾値電圧と移動度とを、第1領域131及び第2領域132の各Mg濃度で個別に制御、確保することができ、それぞれを高い値にすることができる。したがって、高閾値電圧と高移動度の両立を可能とする縦型MOSFET1Cを実現することができる。
【0086】
図10A及び図10Bは、本開示の実施形態3に係る縦型MOSFET1Cの製造方法を工程順に示す断面図である。図10Aにおいて、マスクM12を形成する工程までは、実施形態2の図7Aから図7Cを参照しながら説明した製造工程と同じである。
【0087】
図10Aに示すように、製造装置は、マスクM12を用いて、JFET領域121側に位置する第2形成領域132´にNを斜めイオン注入する。次に、図10Bに示すように、製造装置は、マスクM12をそのまま用いて、ソース形成領域23´を挟んでJFET領域121の反対側に位置する第2形成領域132A´にNを斜めイオン注入する。
【0088】
図10Aに示す斜めイオン注入(以下、第1の斜めN注入)のZ軸方向に対する傾斜角度をθ°とすると、図10Bに示す斜めイオン注入(以下、第2の斜めN注入)のZ軸方向に対する傾斜角度は、例えば-θ°である。第1の斜めN注入と、第2の斜めN注入は、例えば同一チャンバ内で連続して行う。これにより、製造装置は、ソース形成領域23´の両側に位置する第2形成領域132´、132A´にそれぞれNを導入する。Nを導入した後、製造装置は、マスクM12を除去する。
【0089】
次に、製造装置は、GaN基板10の表面10a上に保護膜41を(図5D参照)形成する。そして、製造装置は、GaN基板10に熱処理を施す。この熱処理により、GaN層12にイオン注入されたSi、Mgはそれぞれ活性化されて、図9に示したn+型のソース領域23、p+型の高濃度領域14がそれぞれ形成される。また、高濃度形成領域14´に含まれるMgの一部は、第2形成領域132´へ拡散し、活性化されて、p+型の第2領域132、132Aが形成される。
【0090】
これ以降の工程は実施形態1と同じである。製造装置は、図9に示したゲート絶縁膜21、ゲート電極22、ソース電極25、ドレイン電極26を順次形成する。以上の工程を経て、図9に示した縦型プレーナ構造の縦型MOSFET1Cを有するGaN半導体装置100が完成する。
【0091】
上記の製造方法により、高閾値電圧と高移動度の両立を可能とする縦型MOSFET1Cを製造することができる。また、上記の製造方法によれば、コンタクト領域15の形成程を省くことができるので、製造工程の短縮や、製造コストの低減が可能である。
【0092】
<実施形態4>
上記の実施形態1から3では、p型のウェル領域13及びp+型の高濃度領域14をイオン注入で形成する態様を示した。しかしながら、本開示の実施形態において、ウェル領域13及び高濃度領域14の形成方法はこれに限定されない。ウェル領域13及び高濃度領域14は、例えばエピタキシャル法で形成してもよい。
【0093】
また、GaN層12において、JFET領域121を他の領域よりもn型不純物濃度を高くしてもよい。JFET領域121のn型不純物濃度を他の領域よりも高める方法として、JFET領域121へn型不純物(例えば、Si)をイオン注入したり、JFET領域121を他の領域とは別に選択エピタキシャル成長法で形成したりする方法が挙げられる。
【0094】
図11は、本開示の実施形態4に係る縦型MOSFET1Dの構成例を示す断面図である。図11に示す縦型MOSFET1Dにおいて、p型のウェル領域13とp+型の高濃度領域14は、それぞれエピタキシャル成長法で形成されている。また、JFET領域121は、例えばn型である。JFET領域121は、イオン注入によって、GaN層12の他の領域よりもn型不純物濃度が高く形成されている。
【0095】
このような態様であっても、上記の実施形態1から3と同様に、縦型MOSFET1Dのチャネル領域に、p型の第1領域131とp+型の第2領域132とが存在する。縦型MOSFET1Dの閾値電圧と移動度とを、第1領域131及び第2領域132の各Mg濃度で個別に制御、確保することができ、それぞれを高い値にすることができる。したがって、高閾値電圧と高移動度の両立を可能とする縦型MOSFET1Dを実現することができる。
【0096】
図12Aから図12Cは、本開示の実施形態4に係る縦型MOSFET1Dの製造方法を工程順に示す断面図である。図12Aに示すように、製造装置は、n-型のGaN層12上に、p型のウェル領域13の下層部と、p+型の高濃度領域14と、p型のウェル領域13の上層部とをこの順でエピタキシャル成長させる。
【0097】
次に、図12Bに示すように、ウェル領域13の上層部上にマスクM21を形成する。マスクM21は、例えばSiO膜で構成されている。マスクM21は、JFET領域121の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状を有する。製造装置は、マスクM21が形成されたGaN層12をエッチングして、JFET領域121を除去する。
【0098】
次に、図12Cに示すように、製造装置は、マスクM21から露出しているn-型のGaN層12上に、n型のGaN層で構成されるJFET領域121を選択エピタキシャル成長させる。その後、製造装置は、マスクM21を除去する。
【0099】
これ以降の工程は、例えば実施形態1の図5A以降と同じである。製造装置は、GaN層12にN(窒素)をイオン注入し、熱処理を行って、p+型の第2領域132(図11参照)を形成する。この熱処理では、p+型の高濃度領域14がMgの拡散源となる。次に、製造装置は、図11に示したゲート絶縁膜21、ゲート電極22、ソース電極25、ドレイン電極26を順次形成する。
【0100】
以上の工程を経て、図11に示した縦型プレーナ構造の縦型MOSFET1Dを有するGaN半導体装置100が完成する。上記の製造方法により、高閾値電圧と高移動度の両立を可能とする縦型MOSFET1Dを製造することができる。
【0101】
(実施形態4の変形例)
上記の製造方法では、n型のJFET領域121を選択エピタキシャル成長法で形成することを説明したが、n型のJFET領域121はイオン注入で形成してもよい。例えば、マスクM21が形成されたGaN層12をエッチングするのではなく、n型不純物(例えば、Si)をイオン注入することによって、マスクM21から露出しているGaN層12にn型のJFET領域121を形成してもよい。
【0102】
このような製造方法であっても、図11に示した縦型MOSFET1Dを形成することができる。なお、n型のJFET領域121をイオン注入で形成する場合は、マスクM21にフォトレジストを用いてもよい。
【0103】
<実施形態5>
上記の実施形態1から4では、GaN半導体装置100が備える縦型MOSFETが縦型プレーナ構造であることを説明した。しかしながら、GaN半導体装置100が備える縦型MOSFETは、縦型プレーナ構造に限定されず、例えばトレンチゲート構造であってもよい。
【0104】
図13は、本開示の実施形態5に係る縦型MOSFET1Eの構成例を示す断面図である。図13に示すように、実施形態5に係る縦型MOSFET1Eは、トレンチゲート構造を有する。具体的には、縦型MOSFET1Eは、GaN基板10に設けられたトレンチHを有する。トレンチHは、GaN基板10の表面10a側に開口している。トレンチHはp型のウェル領域13よりも深く形成されており、トレンチHの底部はN-型のGaN層12まで達している。
【0105】
トレンチHの内側には、ゲート絶縁膜21とゲート電極22とが配置されている。トレンチHの内側の側面と底面とをゲート絶縁膜21が覆っている。また、ゲート電極22は、ゲート絶縁膜21を介してトレンチHに埋め込まれている。縦型MOSFET1Eでは、p型のウェル領域13のうち、トレンチHの内側の側面に設けられたゲート絶縁膜21を介してゲート電極22と向かい合う領域がチャネル領域となる。
【0106】
縦型MOSFET1Eにおいても、p型のウェル領域13は、p型の第1領域131と、p+型の第2領域132とを有する。p型の第1領域131及びp+型の第2領域132はそれぞれ、X軸方向においてゲート絶縁膜21と接している。あるいは、p型の第1領域131及びp+型の第2領域132はそれぞれ、X軸方向及びY軸方向を含むXY平面に平行な水平方向において、ゲート絶縁膜21と接していてもよい。
【0107】
実施形態5では、p型のウェル領域13とゲート絶縁膜21との界面に平行な第1方向が、例えばZ軸方向となる。p+型の第2領域132は、Z軸方向においてp型の第1領域131とn+型のソース領域23との間に介在している。
【0108】
このような態様であっても、上記の実施形態1から4と同様に、縦型MOSFET1Eのチャネル領域に、p型の第1領域131とp+型の第2領域132とが存在する。縦型MOSFET1Eの閾値電圧と移動度とを、第1領域131及び第2領域132の各Mg濃度で個別に制御、確保することができ、それぞれを高い値にすることができる。したがって、高閾値電圧と高移動度の両立を可能とする縦型MOSFET1Eを実現することができる。
【0109】
また、ウェル領域13とソース電極25との間に高濃度領域14が位置する。例えばZ軸方向において、ソース電極13は高濃度領域14と接しており、高濃度領域はウェル領域13と接している。これにより、ウェル領域13は、高濃度領域14を介してソース電極25に接続している。ウェル領域13の電位は、高濃度領域14を介してソース電極25の電位(例えば、接地電位(GND)等の基準電位)に固定される。
【0110】
実施形態5において、高濃度領域14は、第2形成領域132´へのMg拡散源として機能するだけでなく、例えば図3等に示したp++型のコンタクト領域15の代わりとしても機能する。高濃度領域14は、Mg拡散源と、ソースコンタクト用のp型領域とを兼ねている。
【0111】
図14Aから図14Eは、本開示の実施形態5に係る縦型MOSFET1Eの製造方法を工程順に示す断面図である。図14Aは、高濃度形成領域14´にp型不純物としてMgをイオン注入する工程を示している。図14Aに示すように、製造装置は、GaN基板10の表面10a上にマスクM31を形成する。マスクM31は、高濃度形成領域14´の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状を有する。マスクM31は、フォトレジスト、SiO膜又はAl膜で構成されている。
【0112】
製造装置は、マスクM31が形成されたGaN層12にMgをイオン注入する。このイオン注入により、高濃度形成領域14´にMgが導入される。マスクM31を用いたMgのイオン注入後、製造装置は、GaN基板10の表面10a上からマスクM31を除去する。
【0113】
次に、図14Bに示すように、製造装置は、GaN基板10の表面10a上にマスクM32を形成する。マスクM32は、ソース形成領域23´の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状を有する。製造装置は、マスクM32が形成されたGaN層12にSiをイオン注入する。このイオン注入により、ソース形成領域23´にSiが導入される。
【0114】
次に、図14Cに示すように、製造装置は、マスクM32をそのまま用いて、GaN層12にN(窒素)をイオン注入する。これにより、ソース形成領域23´と、その下方に位置するp型のウェル領域13とにそれぞれNが導入される。マスクM32を用いたSi及びNのイオン注入後、製造装置は、GaN基板10の表面10a上からマスクM32を除去する。
【0115】
次に、製造装置は、GaN基板10の表面10a上に保護膜41を形成する。そして、製造装置は、GaN基板10に熱処理を施す。この熱処理により、GaN層12にイオン注入されたMg、Siはそれぞれ活性化されて、図14Dに示すように、p+型の高濃度領域14と、n+型のソース領域23とが形成される。また、高濃度形成領域14´に含まれるMgの一部は、Nがイオン注入された第2形成領域132´へ拡散し、活性化されて、p+型の第2領域132が形成される。この例では、高濃度形成領域14´からX軸方向(または、水平方向)へMgが拡散する。
【0116】
次に、図14Eに示すように、製造装置は、GaN基板10の表面10a上にマスクM33を形成する。マスクM33は、トレンチHが形成される形成領域の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状を有する。製造装置は、マスクM32が形成されたGaN層12をエッチングして、トレンチHを形成する。トレンチHの形成後、製造装置は、GaN基板10の表面10a上からマスクM33を除去する。その後、製造装置は、図13に示したゲート絶縁膜21、ゲート電極22、ソース電極25、ドレイン電極26を順次形成する。
【0117】
以上の工程を経て、図13示したトレンチゲート構造の縦型MOSFET1Eを有するGaN半導体装置100が完成する。上記の製造方法により、高閾値電圧と高移動度の両立を可能とする縦型MOSFET1Eを製造することができる。
【0118】
<その他の実施形態>
上記のように、本開示は実施形態及び変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本開示を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、変形例が明らかとなろう。本開示はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。
【0119】
例えば、上記の実施形態1から5では、p+型の第2領域132がn+型のソース領域23と接している態様を示した。しかしながら、本開示の実施形態では、第2領域132とソース領域23は必ずしも接していなくてもよい。p+型の第2領域132とn+型のソース領域23との間に、p型の第1領域131が介在していてもよい。
【0120】
p+型の第2領域132はX軸方向に沿って複数配置されていてもよい。複数の第2領域132のうち、X軸方向で隣り合う一方の第2領域132と他方の第2領域132の間に、p型の第1領域131が介在していてもよい。
【0121】
p+型の第2領域132は、熱処理による高濃度形成領域14´又は高濃度領域14からのMg拡散ではなく、Mgのイオン注入で形成してもよい。この場合、Mg拡散源となる高濃度形成領域14´又は高濃度領域14は無くてもよい。
【0122】
このように、上述した実施形態及び変形例の要旨を逸脱しない範囲で、構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。また、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。本開示の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0123】
なお、本開示は以下のような構成も取ることができる。
(1)
第1主面と、前記第1主面の反対側に位置する第2主面とを有する窒化ガリウム層と、
前記窒化ガリウム層に設けられた電界効果トランジスタと、を備え、
前記電界効果トランジスタは、
前記窒化ガリウム層の前記第1主面側に設けられたゲート絶縁膜と、
前記窒化ガリウム層に設けられ、前記ゲート絶縁膜と接するp型領域と、
前記窒化ガリウム層に設けられ、
前記p型領域と前記ゲート絶縁膜との界面に平行な第1方向において前記p型領域と接するn型領域と、
前記第1主面側に配置され、前記n型領域と接する第1電極とを備え、
前記p型領域は、
前記ゲート絶縁膜と接する第1領域と、
前記ゲート絶縁膜と接し、かつ前記第1方向において前記第1領域と前記n型領域との間に介在する第2領域とを有し、
前記第2領域は、前記第1領域よりもp型不純物濃度が高い、窒化物半導体装置。
(2)
前記電界効果トランジスタのチャネル領域に前記第1領域と前記第2領域とが存在する、前記(1)に記載の窒化物半導体装置。
(3)
前記電界効果トランジスタのオン電流は、前記窒化ガリウム層の前記第2主面側から前記第1領域と前記第2領域とを通って前記n型領域に流れる、前記(1又は2に記載の窒化物半導体装置。
(4)
前記p型領域は、前記第1方向においてp型不純物濃度が最大となるピーク位置を有し、
前記ピーク位置は前記第2領域に存在する、前記(1)から(3)のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
(5)
前記第2領域は前記n型領域と接している、前記(1)から(4)のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
(6)
前記電界効果トランジスタは、
前記窒化ガリウム層に設けられ、前記n型領域と前記第2主面との間に位置するp型の高濃度領域をさらに有し、
前記高濃度領域は、前記第1領域よりもp型不純物濃度が高く、かつ前記第2領域と接している、前記(1)から(5)のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
(7)
前記高濃度領域は、前記第2領域よりもp型不純物濃度が高い、前記(6)に記載の窒化物半導体装置。
(8)
前記高濃度領域は前記n型領域と接している、前記(6)又は(7)に記載の窒化物半導体装置。
(9)
前記高濃度領域は前記第1電極と接している、前記(6)から(8)のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
(10)
前記高濃度領域は前記第1領域と接している、前記(6)から(9)のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
(11)
前記高濃度領域のp型不純物濃度は、5×1018cm-3以上、1×1020cm-3未満であり、
前記第2領域のp型不純物濃度は、1×1018cm-3以上、5×1018cm-3未満であり、
前記第1領域のp型不純物濃度は、1×1016cm-3以上、1×1018cm-3未満である、前記(6)から(10)のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
(12)
前記電界効果トランジスタは、
前記第2主面側に設けられた第2電極をさらに有する、前記(1)から(11)のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
(13)
窒化ガリウム層にp型領域を形成する工程と、
前記窒化ガリウム層において前記p型領域と接する領域に、前記p型領域よりもp型不純物を高濃度に含む高濃度領域を形成する工程と、
前記窒化ガリウム層に熱処理を施して、前記高濃度領域から前記p型領域にp型不純物を拡散させることによって、前記p型領域の第1領域よりもp型不純物濃度が高い第2領域を形成する工程と、
前記窒化ガリウム層の第1主面側に、前記第1領域及び前記第2領域と接するゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記窒化ガリウム層の前記第1主面側であって、前記第2領域を介して前記第1領域の反対側にn型領域を形成する工程と、
前記n型領域に接する第1電極を形成する工程と、を含む窒化物半導体装置の製造方法。
(14)
前記熱処理を施す工程の前に、
前記窒化ガリウム層であって、前記高濃度領域と前記第2領域が形成される予定領域との界面を含む領域に、窒素をイオン注入する工程、をさらに有する前記(13)に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
(15)
前記n型領域を形成する工程では、
前記熱処理を施す工程の前に、前記窒化ガリウム層の前記第1主面側にマスクを形成し、前記窒化ガリウム層において前記マスクから露出している領域にn型不純物をイオン注入し、
前記窒素をイオン注入する工程では、
前記マスクを用いて前記窒化ガリウム層に前記窒素をイオン注入する、前記(14)に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
(16)
前記窒素をイオン注入する工程では、
前記第1主面の法線方向に対して斜めの角度で前記窒素をイオン注入する、前記(15)に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
(17)
前記熱処理の最高温度は1300℃以上である、前記(13)から(16)のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0124】
1、1A、1B、1C、1D、1E 縦型MOSFET
10 GaN基板
10a 表面
10b 裏面
11 GaN単結晶基板
12 GaN層
13 ウェル領域
13´ ウェル形成領域
14 高濃度領域
14´ 高濃度形成領域
15 コンタクト領域
15´ コンタクト形成領域
21 ゲート絶縁膜
22 ゲート電極
23 ソース領域
23´ ソース形成領域
25 ソース電極
26 ドレイン電極
41 保護膜
100 GaN半導体装置
121 JFET領域
131 第1領域
132、132A 第2領域
132´、132A´ 第2形成領域
H トレンチ
M1、M2、M11。M12、M21、M31、M32、M33 マスク
【要約】
【課題】高閾値電圧と高移動度の両立を可能とする窒化物半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】窒化物半導体装置は、窒化ガリウム層と、窒化ガリウム層に設けられた電界効果トランジスタと、を備える。電界効果トランジスタは、窒化ガリウム層の第1主面側に設けられたゲート絶縁膜と、窒化ガリウム層に設けられ、ゲート絶縁膜と接するp型領域と、窒化ガリウム層に設けられ、p型領域とゲート絶縁膜との界面に平行な第1方向においてp型領域と接するn型領域と、第1主面側に配置され、n型領域と接する第1電極とを備える。p型領域は、ゲート絶縁膜と接する第1領域と、ゲート絶縁膜と接し、かつ第1方向において第1領域とn型領域との間に介在する第2領域とを有する。第2領域は、第1領域よりもp型不純物濃度が高い。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E