(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20231219BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B60C11/13 A
B60C11/03 300D
(21)【出願番号】P 2023064599
(22)【出願日】2023-04-12
(62)【分割の表示】P 2019053420の分割
【原出願日】2019-03-20
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】野津 良司
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/043036(WO,A1)
【文献】特開2010-254222(JP,A)
【文献】国際公開第2013/015375(WO,A1)
【文献】特開2016-222208(JP,A)
【文献】特開2011-42328(JP,A)
【文献】特開2016-107883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、タイヤ周方向に延びる一対の周方向溝によって区分されたクラウン陸部が形成されており、
前記クラウン陸部には、前記一対の周方向溝から前記クラウン陸部の内側に延びる複数のクラウン溝が設けられており、
前記クラウン溝には、溝幅が大きい幅広領域と、溝幅が小さい幅狭領域とが設けられ、
前記クラウン溝は、前記周方向溝に開口する外端部と、タイヤ周方向に隣接する前記クラウン溝に連通する内端部とを含み、
前記外端部は、前記幅狭領域として形成される、
タイヤ。
【請求項2】
前記クラウン溝は、前記外端部と前記内端部との間に、少なくとも1組の前記幅広領域と前記幅狭領域とを有する、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記内端部は、前記幅広領域として形成される、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記幅広領域と前記幅狭領域との境界は、前記クラウン溝の溝壁の少なくとも一方が急激に変化する部分である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記幅広領域の少なくとも1つは、前記幅広領域内で溝幅が変化する変化領域として形成され、
前記幅狭領域の少なくとも1つは、前記幅狭領域内で溝幅が変化する変化領域として形成され、
前記幅広領域と前記幅狭領域とが共に前記変化領域として形成されている場合の前記幅広領域と前記幅狭領域との境界は、なだらかに変化する前記幅広領域と前記幅狭領域との中間部分である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部に溝が設けられたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なタイヤのトレッド部には、複数の溝が設けられている。例えば、下記特許文献1には、タイヤ周方向に連続してジグザグ状に延びる複数の主溝と主溝間を連通する複数の横溝とによってブロックに区分されたトレッド部を有する空気入りタイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ウェット性能を向上し得るタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部には、タイヤ周方向に延びる一対の周方向溝によって区分されたクラウン陸部が形成されており、前記クラウン陸部には、前記一対の周方向溝から前記クラウン陸部の内側に延びる複数のクラウン溝が設けられており、前記クラウン溝には、溝幅が大きい幅広領域と、溝幅が小さい幅狭領域とが設けられ、前記クラウン溝は、前記周方向溝に開口する外端部と、タイヤ周方向に隣接する前記クラウン溝に連通する内端部とを含み、前記外端部は、前記幅狭領域として形成されることを特徴とする。
【0006】
本発明のタイヤにおいて、前記クラウン溝は、前記外端部と前記内端部との間に、少なくとも1組の前記幅広領域と前記幅狭領域とを有するのが望ましい。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記内端部は、前記幅広領域として形成されるのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記幅広領域と前記幅狭領域との境界は、前記クラウン溝の溝壁の少なくとも一方が急激に変化する部分であるのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記幅広領域の少なくとも1つは、前記幅広領域内で溝幅が変化する変化領域として形成され、前記幅狭領域の少なくとも1つは、前記幅狭領域内で溝幅が変化する変化領域として形成され、前記幅広領域と前記幅狭領域とが共に前記変化領域として形成されている場合の前記幅広領域と前記幅狭領域との境界は、なだらかに変化する前記幅広領域と前記幅狭領域との中間部分であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のタイヤにおいて、クラウン溝には、溝幅が大きい幅広領域と、溝幅が小さい幅狭領域とが設けられ、クラウン溝は、周方向溝に開口する外端部と、タイヤ周方向に隣接するクラウン溝に連通する内端部とを含み、外端部は、幅狭領域として形成されている。このようなクラウン溝は、クラウン溝の溝壁とクラウン溝内の水との粘性を低減させることができ、タイヤのウェット性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のタイヤのトレッド部の一実施形態を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2を示す展開図である。
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、雪上路面を走行するのに適したトレッド部2を有する空気入りタイヤとして好適に用いられる。
【0013】
タイヤ1は、雪上路面の他にも、例えば、泥濘地等の不整地路面を走行する空気入りタイヤとして用いられてもよい。また、タイヤ1は、空気入りタイヤに限定されるものではなく、例えば、タイヤ1の内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤであってもよい。
【0014】
本実施形態のトレッド部2には、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝3と、周方向溝3によって区分された複数の陸部4とが形成されている。周方向溝3は、例えば、タイヤ赤道Cとトレッド端Teとの間に各1本ずつ形成されている。
【0015】
ここで、トレッド端Teは、空気入りタイヤの場合、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。このトレッド端Te間のタイヤ軸方向の中央位置が、タイヤ赤道Cである。
【0016】
「正規状態」とは、タイヤ1が正規リムにリム組みされかつ正規内圧に調整された無負荷の状態である。以下、特に言及されない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、この正規状態で測定された値である。
【0017】
「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば"Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0018】
「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0019】
「正規荷重」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0020】
本実施形態のトレッド部2には、一対の周方向溝3によって区分されたクラウン陸部4Aと、周方向溝3とトレッド端Teとによって区分されたショルダー陸部4Bとが形成されている。このように、本実施形態の陸部4は、クラウン陸部4Aとショルダー陸部4Bとを含んでいる。
【0021】
周方向溝3は、タイヤ周方向にジグザグ状に形成されているのが望ましい。このような周方向溝3は、雪上路面を走行するときのトラクションを維持しつつ、ウェット路面を走行するときの排水性を向上させることができ、タイヤ1の雪上性能とウェット性能とを両立させることができる。
【0022】
本実施形態のクラウン陸部4Aには、一対の周方向溝3からクラウン陸部4Aの内側に延びる複数のクラウン溝9が設けられている。複数のクラウン溝9のそれぞれは、例えば、周方向溝3に開口する外端部9aと、タイヤ周方向に隣接するクラウン溝9に連通する内端部9bとを含んでいる。本実施形態のクラウン溝9は、タイヤ赤道Cを横断することなく、複数のクラウン溝9により全体としてタイヤ周方向に連続して延びている。
【0023】
クラウン陸部4Aは、タイヤ軸方向に隣接するクラウン溝9の間に区分されるセンター部4aと、クラウン溝9と周方向溝3との間に区分される複数のサイドブロック4bとを含むのが望ましい。本実施形態では、1つのクラウン溝9に対応して1つのサイドブロック4bが形成されている。
【0024】
クラウン溝9には、溝幅が大きい複数の幅広領域9Aと、溝幅が小さい複数の幅狭領域9Bとが交互に設けられるのが望ましい。本実施形態のクラウン溝9は、外端部9aが幅狭領域9Bとして形成され、内端部9bが幅広領域9Aとして形成されている。クラウン溝9は、外端部9aと内端部9bとの間に、少なくとも1組の幅広領域9Aと幅狭領域9Bとを有するのが望ましい。
【0025】
このようなクラウン溝9は、クラウン溝9の溝壁とクラウン溝9内の水との粘性を低減させることができ、タイヤ1のウェット性能を向上させることができる。また、このクラウン溝9は、幅広領域9Aと幅狭領域9Bとが繰り返されているので、クラウン陸部4Aの剛性を均一化することができ、タイヤ1の耐偏摩耗性能を向上させることができる。
【0026】
幅広領域9Aの少なくとも1つは、幅広領域9A内で溝幅が変化する変化領域として形成されるのが望ましい。また、幅狭領域9Bの少なくとも1つは、幅狭領域9B内で溝幅が変化する変化領域として形成されるのが望ましい。幅広領域9A及び幅狭領域9Bは、例えば、それぞれの範囲内で溝幅が変化しない一定領域を含んでいてもよい。本実施形態の外端部9aは、一定領域として形成されている。一方、内端部9bは、変化領域として形成されるのが望ましい。
【0027】
ここで、幅広領域9Aと幅狭領域9Bとの境界は、クラウン溝9の溝壁の少なくとも一方が急激に変化している部分である。また、幅広領域9Aと幅狭領域9Bとが共に変化領域として形成されている場合は、その境界がなだらかに変化する幅広領域9Aと幅狭領域9Bとの中間部分であってもよい。このような幅広領域9A及び幅狭領域9Bは、溝壁と水との粘性をより低減させることができ、タイヤ1のウェット性能をより向上させることができる。
【0028】
図2は、クラウン陸部4Aのセンター部4aの拡大図である。
図2に示されるように、クラウン溝9は、複数の屈曲部9cによりジグザグ状に形成されるのが望ましい。クラウン溝9は、例えば、屈曲部9c間を円弧状に延びる円弧部9dを含んでいる。ここで、クラウン溝9の形状は、クラウン溝9の溝幅方向の中心線に基づき決定されるものであり、幅広領域9Aと幅狭領域9Bとの境界のように溝壁の一方が変化している部分の中心線は変化しないものとしている。
【0029】
このようなクラウン溝9は、舗装路面を走行するときのパターンノイズを抑制しつつ、雪上路面を走行するときに大きいトラクションを発揮することができ、タイヤ1の雪上性能とノイズ性能とを両立させることができる。
【0030】
本実施形態のセンター部4aには、タイヤ軸方向に隣接するクラウン溝9の間を延びるセンター横溝5と、タイヤ軸方向に隣接するクラウン溝9の間を延びるセンターサイプ6と、クラウン溝9からタイヤ軸方向の内側に凹むセンター切欠部7とが設けられている。このようなセンター部4aは、舗装路面を走行するときのヒールアンドトゥ摩耗やチッピングを抑制しつつ、雪上路面を走行するときのエッジ成分を増やすことができ、タイヤ1の雪上性能と耐偏摩耗性能とを両立させることができる。
【0031】
本実施形態のセンター部4aは、複数のセンター横溝5によって複数のセンターブロック4cに区分されている。センターブロック4cのそれぞれには、複数のセンターサイプ6と複数のセンター切欠部7とが設けられるのが望ましい。このようなセンターブロック4cは、雪上路面を走行するときのエッジ成分をより増やすことができ、タイヤ1の雪上性能をより向上させることができる。
【0032】
センター横溝5は、例えば、タイヤ軸方向に隣接するクラウン溝9に連通する一対のセンター端部5aを含んでいる。センター横溝5の一対のセンター端部5aの少なくとも一方側には、センタータイバー8が設けられるのが望ましい。本実施形態のセンター横溝5は、両側のセンター端部5aにセンタータイバー8が設けられている。このようなセンター横溝5は、センタータイバー8によりセンターブロック4cの剛性を向上させ、センターブロック4cのヒールアンドトゥ摩耗やチッピングを抑制させることができ、タイヤ1の耐偏摩耗性能を向上させることができる。
【0033】
センター横溝5のセンター端部5aでの深さは、好ましくは、クラウン溝9の最大深さの30%~60%である。センター端部5aでの深さがクラウン溝9の最大深さの30%よりも小さいと、センター横溝5によって形成される雪柱が小さくなり、タイヤ1の雪上性能の向上効果が低減するおそれがある。センター端部5aでの深さがクラウン溝9の最大深さの60%よりも大きいと、センターブロック4cの剛性が向上せず、タイヤ1の耐偏摩耗性能の向上効果が低減するおそれがある。
【0034】
センターサイプ6は、例えば、タイヤ軸方向両側の端部6aを有している。センターサイプ6の端部6aの少なくとも一方は、センター切欠部7に連通するのが望ましい。このようなセンターサイプ6は、センターブロック4cが接地したときにセンターブロック4cを変形させ易く、クラウン溝9の排雪性を向上させ、タイヤ1の雪上性能を向上させることができる。
【0035】
本実施形態のセンターサイプ6は、両側の端部6aがセンター切欠部7に連通する第1センターサイプ6Aと、端部6aの一方がセンター切欠部7に連通しかつ端部6aの他方が屈曲部9cに連通する第2センターサイプ6Bとを含んでいる。このようなセンターサイプ6は、両側の端部6aがセンター切欠部7又は屈曲部9cに連通しているので、センターブロック4cをより変形させ易く、タイヤ1の雪上性能をより向上させることができる。
【0036】
センターサイプ6は、例えば、両側の端部6aの深さがセンターサイプ6の中央部分の最大深さよりも小さい。センターサイプ6の端部6aの深さは、好ましくは、クラウン溝9の最大深さの20%~40%である。端部6aの深さがクラウン溝9の最大深さの20%よりも小さいと、センターブロック4cが接地したときにも変形し難く、クラウン溝9の排雪性が低下するおそれがある。端部6aの深さがクラウン溝9の最大深さの40%よりも大きいと、センターブロック4cの剛性が低下し、ヒールアンドトゥ摩耗やチッピングが発生するおそれがある。
【0037】
センター切欠部7の最大深さは、センターサイプ6の端部6aの深さと同等以上であるのが望ましい。センター切欠部7の最大深さがセンターサイプ6の端部6aの深さよりも小さいと、継続して使用したときの摩耗により、センター切欠部7がセンターサイプ6よりも早く消失し、クラウン溝9の排雪性が低下するおそれがある。
【0038】
図3は、クラウン陸部4Aのサイドブロック4bの拡大図である。
図3に示されるように、本実施形態のサイドブロック4bを区分するクラウン溝9は、タイヤ軸方向の内側でタイヤ軸方向に対して傾斜して延びる第1傾斜部9Cと、タイヤ軸方向の外側でタイヤ軸方向に沿って延びる第1軸方向部9Dとを含んでいる。
【0039】
第1傾斜部9Cは、内端部9bからタイヤ周方向に沿ってジグザグ状に延びるのが望ましい。第1軸方向部9Dは、外端部9aからタイヤ軸方向に沿って直線状に延びるのが望ましい。このようなクラウン溝9は、第1傾斜部9Cと第1軸方向部9Dとが屈曲していることから、強い雪柱を形成することができ、タイヤ1の雪上性能を向上させることができる。
【0040】
本実施形態の第1傾斜部9Cの内端部9b側には、クラウンタイバー17が設けられている。クラウンタイバー17は、例えば、内端部9bから後述する第1サイド切欠部16Aまで形成されている。このようなクラウンタイバー17は、サイドブロック4bの剛性を高め、タイヤ1の耐偏摩耗性能を向上させることができる。
【0041】
クラウンタイバー17の長さは、好ましくは、タイヤ周方向に隣接するクラウンタイバー17間のピッチ長さの20%~40%である。クラウンタイバー17のクラウン溝9の溝底からの高さは、好ましくは、クラウン溝9の最大深さの50%~80%である。このため、クラウン溝9の内端部9bでの深さは、クラウン溝9の最大深さの20%~50%である。このようなクラウンタイバー17は、優れた排水性を維持しつつサイドブロック4bの剛性を向上させ、タイヤ1のウェット性能と耐偏摩耗性能とを両立させることができる。
【0042】
第1軸方向部9Dに隣接する第1傾斜部9Cは、幅広領域9Aとして形成されるのが望ましい。また、第1軸方向部9Dは、幅狭領域9Bとして形成されるのが望ましい。このような第1傾斜部9C及び第1軸方向部9Dは、舗装路面を走行したときのパターンノイズを抑制することができ、タイヤ1のノイズ性能を向上させることができる。
【0043】
第1軸方向部9Dの溝幅は、好ましくは、第1軸方向部9Dに隣接する第1傾斜部9Cの溝幅の25%~75%である。このような第1軸方向部9Dは、サイドブロック4bの剛性を維持しつつパターンノイズを抑制することができ、タイヤ1のノイズ性能と耐偏摩耗性能とを両立させることができる。
【0044】
本実施形態の第1軸方向部9Dの外端部9a側には、サイドタイバー11が設けられている。このようなサイドタイバー11は、パターンノイズを抑制しつつサイドブロック4bの剛性をより向上させ、タイヤ1のノイズ性能と耐偏摩耗性能とを両立させることができる。
【0045】
サイドタイバー11のクラウン溝9の溝底からの高さは、好ましくは、クラウン溝9の最大深さの50%~80%である。このため、クラウン溝9の外端部9aでの深さは、クラウン溝9の最大深さの20%~50%である。このようなサイドタイバー11は、パターンノイズを抑制しつつサイドブロック4bの剛性を向上させ、タイヤ1のノイズ性能と耐偏摩耗性能とを両立させることができる。
【0046】
サイドタイバー11には、両端がサイドタイバー11内で終端する第1タイバーサイプ12が設けられるのが望ましい。このような第1タイバーサイプ12は、舗装路面を走行するときのパターンノイズを増加させることなく、雪上路面を走行するときのエッジ成分を増やすことができ、タイヤ1の雪上性能とノイズ性能とを両立させることができる。
【0047】
第1タイバーサイプ12の深さは、好ましくは、サイドタイバー11のクラウン溝9の溝底からの高さの75%~100%である。このような第1タイバーサイプ12は、タイヤ1の雪上性能とノイズ性能とをバランスよく向上させるのに好適である。
【0048】
図4は、周方向溝3の拡大図である。
図4に示されるように、クラウン溝9の外端部9aでのタイヤ軸方向に対する角度θ1は、好ましくは、5~10°である。角度θ1が5°よりも小さいと、パターンノイズが大きくなり、タイヤ1のノイズ性能の向上効果が低減するおそれがある。角度θ1が10°よりも大きいと、クラウン溝9の排雪性が低下し、タイヤ1の雪上性能の向上効果が低減するおそれがある。
【0049】
図3に示されるように、サイドブロック4bには、周方向溝3からタイヤ軸方向内側に延びかつサイドブロック4b内で終端するサイド横溝10が設けられるのが望ましい。本実施形態のサイド横溝10は、タイヤ軸方向の内側でタイヤ軸方向に対して傾斜して延びる第2傾斜部10Aと、タイヤ軸方向の外側でタイヤ軸方向に沿って延びる第2軸方向部10Bとを含んでいる。このようなサイド横溝10は、第2傾斜部10Aと第2軸方向部10Bとが屈曲していることから、強い雪柱を形成することができ、タイヤ1の雪上性能を向上させることができる。
【0050】
本実施形態のサイドブロック4bは、トレッド平面視において、タイヤ周方向に隣接する2つのクラウン溝9により、クラウン溝9の内端部9bに隣接して、鋭角で先細状となる第1角部4dが区分されるのが望ましい。このような第1角部4dは、雪上路面を走行するときに雪に食い込み、タイヤ1の雪上性能を向上させることができる。
【0051】
本実施形態の第1角部4dには、タイヤ半径方向内側に向かって階段状に延びる段差部13が設けられている。段差部13は、2段以上、本実施形態では3段の段部を有している。このような段差部13は、舗装路面を走行するときに第1角部4dの先端が接地することを抑制しつつ、雪上路面を走行するときのエッジ成分を増やすことができ、タイヤ1の雪上性能と耐偏摩耗性能とを両立させることができる。
【0052】
サイドブロック4bには、周方向溝3に沿って延びる第1側壁4eが形成されている。第1側壁4eには、タイヤ半径方向内側に向かって階段状に延びる段差部14が設けられている。段差部14は、例えば、3段の段部を有している。段差部14は、クラウン溝9の外端部9aに隣接して設けられるのが望ましい。このような段差部14は、雪上路面を走行するときのタイヤ軸方向のエッジ成分を増やすことができ、タイヤ1の雪上性能を向上させることができる。また、この段差部14は、クラウン溝9内の水との粘性を低減させ、タイヤ1のウェット性能をより向上させることができる。
【0053】
サイドブロック4bには、周方向溝3からクラウン溝9に延びる複数のサイドサイプ15と、クラウン溝9からタイヤ軸方向の外側に凹むサイド切欠部16とが設けられるのが望ましい。サイドサイプ15は、例えば、クラウン溝9の側の端部15aがサイド切欠部16に連通している。このようなサイドサイプ15は、サイドブロック4bが接地したときにサイドブロック4bを変形させ易く、クラウン溝9の排雪性を向上させ、タイヤ1の雪上性能を向上させることができる。
【0054】
サイドサイプ15は、第1側壁4eから延びる第1サイドサイプ15Aを含むのが望ましい。サイド切欠部16は、第1サイドサイプ15Aが連通する第1サイド切欠部16Aを含むのが望ましい。このような第1サイドサイプ15Aは、両側が第1側壁4eとサイド切欠部16とに連通しているので、サイドブロック4bをより変形させ易く、タイヤ1の雪上性能をより向上させることができる。
【0055】
図1に示されるように、ショルダー陸部4Bには、例えば、周方向溝3からトレッド端Teに延びるショルダー横溝18と、周方向溝3からタイヤ軸方向外側に延びかつショルダー陸部4B内で終端するショルダーサイプ19とが設けられている。
【0056】
本実施形態のショルダー陸部4Bは、複数のショルダー横溝18によってショルダーブロック4fに区分されている。ショルダーブロック4fのそれぞれには、複数のショルダーサイプ19が設けられるのが望ましい。このようなショルダーブロック4fは、雪上路面を走行するときのエッジ成分を増やすことができ、タイヤ1の雪上性能を向上させることができる。
【0057】
ショルダー横溝18は、ジグザグ状に形成されるのが望ましい。このようなショルダー横溝18は、舗装路面を走行するときのパターンノイズを低減させ、タイヤ1のノイズ性能を向上させることができる。
【0058】
図4に示されるように、ショルダー横溝18は、タイヤ周方向において、少なくとも一部が外端部9aに重なる位置で周方向溝3に連通するショルダー端部18aを含んでいる。このようなショルダー横溝18は、周方向溝3を介してクラウン溝9に滑らかに連続しており、周方向溝3との交差部に強い雪柱を形成することができるので、タイヤ1の雪上性能を向上させることができる。
【0059】
ショルダー端部18aと外端部9aとの重なり部分のタイヤ周方向の長さは、好ましくは、外端部9aのタイヤ周方向の長さの25%以下である。このようなショルダー横溝18とクラウン溝9とは、走行時に同時に接地する部分が少なく、タイヤ1のノイズ性能を向上させることができる。
【0060】
ショルダー横溝18のショルダー端部18a側には、ショルダータイバー20が設けられるのが望ましい。このようなショルダータイバー20は、優れた排水性を維持しつつショルダー陸部4Bの剛性を向上させ、タイヤ1のウェット性能と耐偏摩耗性能とを両立させることができる。
【0061】
ショルダータイバー20のショルダー横溝18の溝底からの高さは、好ましくは、ショルダー横溝18の最大深さの50%~80%である。このようなショルダータイバー20は、パターンノイズを抑制しつつショルダー陸部4Bの剛性を向上させ、タイヤ1のノイズ性能と耐偏摩耗性能とを両立させることができる。
【0062】
ショルダー横溝18のショルダー端部18aでのタイヤ軸方向に対する角度θ2は、好ましくは、5~10°である。角度θ2が5°よりも小さいと、パターンノイズが大きくなり、タイヤ1のノイズ性能の向上効果が低減するおそれがある。角度θ2が10°よりも大きいと、排雪性が低下し、タイヤ1の雪上性能の向上効果が低減するおそれがある。
【0063】
図5は、他の実施形態の周方向溝3の拡大図である。上述の実施形態と同様の機能を有する構成要素は、同一の符号が付され、その説明が省略される。
図5に示されるように、この実施形態のショルダー横溝18は、タイヤ周方向において、クラウン溝9の外端部9aのタイヤ周方向の長さの50%以上と重なる位置で周方向溝3に連通するショルダー端部18aを含んでいる。このようなショルダー横溝18は、クラウン溝9と協働して、周方向溝3との交差部により強い雪柱を形成することができるので、タイヤ1の雪上性能をより向上させることができる。
【0064】
この実施形態のショルダー横溝18のショルダー端部18a側には、ショルダータイバー21が設けられている。ショルダータイバー21には、両端がショルダータイバー21内で終端する第2タイバーサイプ22が設けられるのが望ましい。このような第2タイバーサイプ22は、パターンノイズを増加させることなく雪上路面を走行するときのエッジ成分を増やすことができ、タイヤ1の雪上性能とノイズ性能とを両立させることができる。
【0065】
第2タイバーサイプ22の深さは、好ましくは、ショルダータイバー21のショルダー横溝18の溝底からの高さの75%~100%である。このような第2タイバーサイプ22はタイヤ1の雪上性能とノイズ性能とをバランスよく向上させるのに好適である。
【0066】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施し得る。
【実施例】
【0067】
図1の基本パターンを有するタイヤが、表1及び表2の仕様に基づき試作された。各試作タイヤのウェット性能と耐偏摩耗性能とがテストされた。各試作タイヤの共通仕様やテスト方法は、以下のとおりである。
【0068】
<共通仕様>
タイヤサイズ:265/65R17 112S
リムサイズ:17×8.0J
空気圧:220kPa
【0069】
<ウェット性能>
試作タイヤが全輪に装着された中型SUVのテスト車両にテストドライバー1名が乗車し、ウェットの舗装路のテストコースを走行したときのグリップ性能が、テストドライバーの官能評価により評価された。評価は、比較例1を100とする指数で示され、数値が大きいほど排水性が良好であり、ウェット性能に優れていることを示す。
【0070】
<耐偏摩耗性能>
摩耗エネルギー測定装置を用いて、試作タイヤのトレッド部の各部の摩耗エネルギーが測定された。結果は、比較例を100とする指数で表され、数値が大きいほど摩耗エネルギーのバラツキが小さく、耐偏摩耗性能に優れていることを示す。
【0071】
テストの結果が表1及び表2に示される。
【表1】
【表2】
【0072】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例に対して、ウェット性能と耐偏摩耗性能とが向上しており、ウェット性能と耐偏摩耗性能とを両立していることが確認できた。
【符号の説明】
【0073】
1 タイヤ
2 トレッド部
3 周方向溝
4A クラウン陸部
9 クラウン溝
9A 幅広領域
9B 幅狭領域