(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】磁石配列方法、ロータの製造方法、磁石配列治具及び磁石誘導装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/03 20060101AFI20231219BHJP
H01F 7/02 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H02K15/03 H
H01F7/02 Z
(21)【出願番号】P 2023506838
(86)(22)【出願日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2022003940
(87)【国際公開番号】W WO2022196148
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2021044583
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】竹内 雄志
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0057011(KR,A)
【文献】特開昭55-111645(JP,A)
【文献】特開2010-200518(JP,A)
【文献】特開昭62-189953(JP,A)
【文献】特開2013-66375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/03
H01F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の着磁磁石を配列する方法であって、
磁性体から成る磁石配列治具に前記複数の着磁磁石を配列する配列工程を備え、
前記配列工程では、新たに配列される着磁磁石を前記磁石配列治具に接触させて吸着させた状態で、前記新たに配列される着磁磁石の磁束ループが、前記磁石配列治具に既に配列された着磁磁石の磁束ループに重なるように、前記新たに配列される着磁磁石の磁束ループの軸心方向に当該新たに配列される着磁磁石を移動させて前記既に配置された着磁磁石に隣接させる、磁石配列方法。
【請求項2】
前記磁石配列治具には、溝部が形成されており、
前記着磁磁石が配列された際に隣接する着磁磁石の境界部分に前記溝部が配置されるように、前記新たに配列される着磁磁石を配列する、請求項1に記載の磁石配列方法。
【請求項4】
着磁磁石を配列するために用いられる磁石配列治具であって、
磁性体から成る第1の治具を備え、
前記第1の治具の表面には、前記着磁磁石が配列され、前記着磁磁石が配列された場合に隣接する着磁磁石の境界部分に配置される溝部を有し、
前記磁石配列治具における前記溝部が延在する方向の一方の端部の側には、前記着磁磁石を前記第1の治具の表面に配列するために当該着磁磁石を挿入する挿入部を有する、磁石配列治具。
【請求項5】
磁性体から成る第2の治具を備え、
前記第2の治具は、前記第1の治具に対して当該第1の治具における前記溝部が延在する方向の他方の端部の側に配置され、
前記第2の治具は、前記着磁磁石における挿入方向の側の端部が接触するように、前記第1の治具における前記溝部が形成された側の表面から突出する、請求項4に記載の磁石配列治具。
【請求項6】
着磁磁石を誘導するための装置であって、
前記着磁磁石が挿入される挿入部と、
前記挿入部に設けられ、前記着磁磁石を案内する案内部と、
前記挿入部に設けられ、前記着磁磁石を磁力によって誘導する誘導磁石と、
前記着磁磁石の磁束ループが、前記誘導磁石の磁束ループに重なるように、前記着磁磁石の磁束ループの軸心方向に当該着磁磁石を押し込む押し込み部と、
を備え、
前記着磁磁石は、前記案内部及び前記誘導磁石が設けられた前記挿入部に挿入される、磁石誘導装置。
【請求項7】
前記誘導磁石は、前記着磁磁石を押し込む方向に向かって見て、前記案内部の両側に配置されている、請求項6に記載の磁石誘導装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁石配列方法、ロータの製造方法、磁石配列治具及び磁石誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータコアなどに磁石を配列した後に当該磁石を着磁する場合、磁石が精度良く着磁されない場合があるため、予め着磁された磁石(即ち、着磁磁石)を配列して当該着磁磁石をロータコアなどに固定している。例えば、特許文献1では、鉄製の帯状薄板から成るプレートに複数の着磁磁石をエポキシ樹脂で固定した磁石ユニットを、ロータコアに巻き付けている。また、特許文献2では、バックヨークの凹凸を利用して主磁極永久磁石と副磁極永久磁石とを当該バックヨークに固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-107929号公報
【文献】特開2007-110822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人は、以下の課題を見出した。着磁磁石を配列する場合、隣接する着磁磁石の間で吸着力や反発力が発生するため、着磁磁石を精度良く定められた位置に配列することが困難である。
【0005】
本開示は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、着磁磁石を精度良く定められた位置に配列することが可能な、磁石配列方法、ロータの製造方法、磁石配列治具及び磁石誘導装置を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る磁石配列方法は、複数の着磁磁石を配列する方法であって、
磁性体から成る磁石配列治具に前記複数の着磁磁石を配列する配列工程を備え、
前記配列工程では、新たに配列される着磁磁石を前記磁石配列治具に接触させて吸着させた状態で、前記新たに配列される着磁磁石の磁束ループが、前記磁石配列治具に既に配列された着磁磁石の磁束ループに重なるように、前記新たに配列される着磁磁石の磁束ループの軸心方向に当該新たに配列される着磁磁石を移動させて前記既に配置された着磁磁石に隣接させる。
【0007】
上述の磁石配列方法において、前記磁石配列治具には、溝部が形成されており、
前記着磁磁石が配列された際に隣接する着磁磁石の境界部分に前記溝部が配置されるように、前記新たに配列される着磁磁石を配列することが好ましい。
【0008】
本開示の一態様に係るロータの製造方法は、上述の磁石配列方法を備える。
【0009】
本開示の一態様に係る磁石配列治具は、着磁磁石を配列するために用いられる磁石配列治具であって、
磁性体から成る第1の治具を備え、
前記第1の治具の表面には、前記着磁磁石が配列され、前記着磁磁石が配列された場合に隣接する着磁磁石の境界部分に配置される溝部を有し、
前記磁石配列治具における前記溝部が延在する方向の一方の端部の側には、前記着磁磁石を前記第1の治具の表面に配列するために当該着磁磁石を挿入する挿入部を有する。
【0010】
上述の磁石配列治具は、磁性体から成る第2の治具を備え、
前記第2の治具は、前記第1の治具に対して当該第1の治具における前記溝部が延在する方向の他方の端部の側に配置され、
前記第2の治具は、前記着磁磁石における挿入方向の側の端部が接触するように、前記第1の治具における前記溝部が形成された側の表面から突出することが好ましい。
【0011】
本開示の一態様に係る磁石誘導装置は、着磁磁石を誘導するための装置であって、
前記着磁磁石を案内する案内部と、
前記着磁磁石を磁力によって誘導する誘導磁石と、
前記着磁磁石の磁束ループが、前記誘導磁石の磁束ループに重なるように、前記着磁磁石の磁束ループの軸心方向に当該着磁磁石を押し込む押し込み部と、
を備える。
【0012】
上述の磁石誘導装置において、前記誘導磁石は、前記着磁磁石を押し込む方向に向かって見て、前記案内部の両側に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、着磁磁石を精度良く定められた位置に配列することが可能な、磁石配列方法、ロータの製造方法、磁石配列治具及び磁石誘導装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1の磁石配列方法において、磁石配列治具に新たに配列される着磁磁石を配列する様子を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態1の磁石配列方法において、磁石配列治具に新たに配列される着磁磁石が配列された状態をZ軸+側から見た図である。
【
図3】磁石配列治具に着磁治具が配列された際の力関係を示すXY断面図である。
【
図4】新たに配列される着磁磁石をX軸+側に向かって既に配列された着磁磁石に近付けた場合の着磁磁石同士の磁束ループを示す図である。
【
図5】実施の形態2の磁石配列装置を用いて着磁磁石を配列する様子を示す図である。
【
図6】着磁磁石を配列する様子をZ軸+側から見た斜視図である。
【
図7】着磁磁石を磁石配列治具に接触させた状態をY軸-側から見た図である。
【
図8】着磁磁石が配列された状態をY軸-側から見た図である。
【
図9】実施の形態3の磁石誘導装置を示す斜視図である。
【
図10】実施の形態3の磁石誘導装置を用いてロータコアの挿入部に着磁磁石を挿入する様子を示す斜視図である。
【
図11】実施の形態3の磁石誘導装置を用いてロータコアの挿入部に着磁磁石を挿入した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本開示が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0016】
<実施の形態1>
先ず、本実施の形態の磁石配列方法で用いる着磁磁石及び磁石配列治具を説明する。なお、以下の説明では、説明を明確にするために、三次元(XYZ)座標系を用いて説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態の磁石配列方法において、磁石配列治具に新たに配列される着磁磁石を配列する様子を示す斜視図である。
図2は、本実施の形態の磁石配列方法において、磁石配列治具に新たに配列される着磁磁石が配列された状態をZ軸+側から見た図である。
図3は、磁石配列治具に着磁治具が配列された際の力関係を示すXY断面図である。
【0018】
着磁磁石1は、例えば、
図1乃至
図3に示すように、Z軸方向に長い四角柱形状であり、Z軸方向に向かって螺旋状の磁束ループRを形成するように、N極部分とS極部分とが配置されている。
【0019】
但し、着磁磁石1は、四角柱形状に限定されず、円柱形状や他の多角柱形状でもよく、着磁磁石1の形状は、限定されない。ちなみに、
図1などでは、磁束ループRの一部を簡略的に示している。
【0020】
磁石配列治具2は、磁性体から成り、例えば、
図1乃至
図3に示すように、第1の治具21及び第2の治具22を備えている。第1の治具21は、例えば、YZ平面と略平行な平板体を基本形態としている。第1の治具21のX軸-側の面は、着磁磁石1が配列される配列面であると共に、着磁磁石1を配列する際に当該着磁磁石1を案内するための案内面として機能する。
【0021】
第1の治具21のX軸-側の面には、Z軸方向に延在する溝部21aが形成されている。溝部21aは、
図2に示すように、第1の治具21のX軸-側の面に着磁磁石1が配列された際に隣接する着磁磁石1の境界部分に配置されるように、Y軸方向に間隔を開けて配置されている。そのため、第1の治具21のX軸-側の面における隣接する溝部21aの間のY軸方向の幅寸法は、着磁磁石1のY軸方向の幅寸法に対して短い。
【0022】
このとき、溝部21aは、
図3に示すように、隣接する着磁磁石1の間で発生する磁束を減少させることができ、且つ、着磁磁石1における第1の治具21のX軸-側の面への吸着力Aが隣接する着磁磁石1同士の反発力Re(又は吸着力)に対して大きくなる、X軸方向の深さ及びY軸方向の幅寸法であるとよい。そして、溝部21aのZ軸方向の長さは、着磁磁石1のZ軸方向の長さに対して長いとよい。
【0023】
第2の治具22は、
図1に示すように、XY平面と略平行な平板体であり、第1の治具21に対してZ軸-側に配置されている。そして、第2の治具22は、第1の治具21のZ軸-側の端部からX軸-側に突出している。第2の治具22のZ軸+側の面は、配列された着磁磁石1のZ軸-側の端部が接触して当該着磁磁石1のZ軸-側の位置を定める規定面として機能する。
【0024】
次に、本実施の形態の着磁磁石1の配列方法を説明する。ここで、
図4は、新たに配列される着磁磁石をX軸+側に向かって既に配列された着磁磁石に近付けた場合の着磁磁石同士の磁束ループを示す図である。ちなみに、
図4でも、磁束ループRの一部を簡略的に示している。
【0025】
なお、以下の説明では、説明を明確にするために、既に配列された着磁磁石に符号1aを付し、新たに配列される着磁磁石に符号1bを付する場合がある。また、既に配列された着磁磁石1aの磁束ループに符号Raを付し、新たに配列される着磁磁石1bの磁束ループに符号Rbを付する場合がある。
【0026】
図4に示すように、第1の治具21のX軸-側の面に着磁磁石1aが配列された状態で、新たに配列される着磁磁石1bをX軸+側に向かって既に配列された着磁磁石1aに近付けると、着磁磁石1aの磁束ループRaと着磁磁石1bの磁束ループRbとが反発し合って、新たに配列される着磁磁石1bを既に配列された着磁磁石1aにY軸方向で隣接するように配列することが困難である。
【0027】
一方、磁束ループの特性上、新たに配列される着磁磁石1bの磁束ループRbを既に配列された着磁磁石1aの磁束ループRaに重なるように、新たに配列される着磁磁石1bを当該着磁磁石1bの磁束ループRbの軸心方向であるZ軸-側に向かって既に配列された着磁磁石1aに近付けると、既に配列された着磁磁石1aの磁束ループRaと新たに配列される着磁磁石1bの磁束ループRbとによって、新たに配列される着磁磁石1bがZ軸-側に引き込まれ、新たに配列される着磁磁石1bを既に配列された着磁磁石1aにY軸方向で隣接するように配列することができる。
【0028】
そこで、本実施の形態では、
図1及び
図2に示すように、先ず、新たに配列される着磁磁石1bのX軸+側の面を磁石配列治具2における第1の治具21のX軸-側の面に接触させて吸着させる。
【0029】
次に、その状態で、新たに配列される着磁磁石1bの磁束ループRbが既に配列された着磁磁石1aの磁束ループRaに重なるように、新たに配列される着磁磁石1bを当該着磁磁石1bの磁束ループRbの軸心方向であるZ軸-側に向かって既に配列された着磁磁石1aに近付ける。
【0030】
このとき、
図1に示すように、磁石配列治具2のZ軸+側の端部であって、且つ、第1の治具21に対してX軸-側の空間は、新たに配列される着磁磁石1bを挿入するための挿入部2aとして機能する。ちなみに、
図1では、挿入部2aを一点鎖線(仮想線)によって示している。
【0031】
その結果、既に配列された着磁磁石1aの磁束ループRaと新たに配列される着磁磁石1bの磁束ループRbとによって、当該着磁磁石1bがZ軸-側に引き込まれ、新たに配列される着磁磁石1bを既に配列された着磁磁石1aにY軸方向で隣接するように配列することができる。
【0032】
このように、既に配列された着磁磁石1aの磁束ループRaと新たに配列される着磁磁石1bの磁束ループRbによって、新たに配列される着磁磁石1bを既に配列された着磁磁石1aに隣接するようにZ軸-側に引き込むことができる。
【0033】
しかも、磁石配列治具2における第1の治具21のX軸-側の面に溝部21aが形成されていても、当該溝部21aは、着磁磁石1における第1の治具21のX軸-側の面への吸着力Aが隣接する着磁磁石1同士の反発力Re(又は吸着力)に対して大きくなるように形成されている。そのため、新たに配列される着磁磁石1bを第1の治具21に接触させて吸着させると、吸着力が隣接する着磁磁石1同士の反発力又は吸着力に打ち勝って新たに配列される着磁磁石1bをZ軸-側に精度良く移動させることができる。
【0034】
また、第1の治具21のX軸-側の面を案内面として機能させて着磁磁石1を移動させることができる。これらにより、新たに配列される着磁磁石1bを定められた位置に精度良く配列することができる。
【0035】
このとき、磁石配列治具2における第1の治具21のX軸-側の面に形成された溝部21aのうち、既に配列された着磁磁石1aにY軸方向で隣接する溝部21aを見印にして、新たに配列される着磁磁石1bを第1の治具21のX軸-側の面に接触させて吸着させ、その状態で新たに配列される着磁磁石1bをZ軸-側に移動させて当該着磁磁石1bのZ軸-側の端部を第2の治具22に接触させるとよい。
【0036】
これにより、溝部21aを目印にして着磁磁石1を配列することができる。しかも、溝部21aは、隣接する着磁磁石1の間で発生する磁束を減少させることができる。また、第2の治具22のZ軸+側の面を規定面として機能させて着磁磁石1のZ軸-側の端部の位置を精度良く定めることができる。その結果、新たに配列される着磁磁石1bを定められた位置に精度良く配列することができる。
【0037】
なお、本実施の形態の磁石配列治具2は、第2の治具22を備えているが、省略してもよい。また、第1の治具21は、平板体に限らず、円筒形状などであってもよい。さらに、磁石配列治具2の溝部21aを省略してもよい。また、磁石配列治具2の溝部21aは、隣接する着磁磁石1の全ての境界部分に配置される場合に限らず、一部の境界部分に配置されるように磁石配列治具2に形成されてもよい。
【0038】
本実施の形態の磁石配列方法は、例えば、着磁磁石1をハルバッハ配列する場合に好適であるが、Z軸方向に螺旋状の磁束ループRを形成する着磁磁石1を配列する場合に実施することができる。
【0039】
<実施の形態2>
本実施の形態では、上述の磁石配列方法の原理を利用したロータの製造方法を説明する。本実施の形態のロータの製造方法は、ラジアルギャップ型のロータを製造する際に好適である。
【0040】
先ず、本実施の形態のロータの製造方法で用いられる磁石配列装置の構成を説明する。
図5は、本実施の形態の磁石配列装置を用いて着磁磁石を配列する様子を示す図である。
図6は、着磁磁石を配列する様子をZ軸+側から見た斜視図である。
図7は、着磁磁石を磁石配列治具に接触させた状態をY軸-側から見た図である。
図8は、着磁磁石が配列された状態をY軸-側から見た図である。ちなみに、
図6乃至
図8では、新たに配列される着磁磁石が明確に示されるように、一部の着磁磁石を抽出して示している。
【0041】
磁石配列装置3は、
図5乃至
図8に示すように、磁石配列治具4、仕切り板5及び磁石挿入装置6を備えている。磁石配列治具4は、磁性体から成り、
図6などに示すように、第1の治具41及び第2の治具42を備えている。
【0042】
第1の治具41は、円筒形状を基本形態としており、第1の治具41の中心軸がZ軸と略平行に配置されている。第1の治具41の外周面は、着磁磁石1の配列面とされると共に、着磁磁石1を配列する際に当該着磁磁石1を案内するための案内面として機能する。第1の治具41の外周面には、Z軸方向に延在する溝部41aが形成されている。
【0043】
溝部41aは、第1の治具41の外周面に着磁磁石1が配列された際に隣接する着磁磁石1の境界部分に配置されるように、第1の治具41の周方向に間隔を開けて配置されている。そのため、第1の治具41の外周面における隣接する溝部41aの間の幅寸法は、着磁磁石1の幅寸法に対して短い。なお、溝部41aは、隣接する着磁磁石1の全ての境界部分に配置される場合に限らず、一部の境界部分に配置されるように第1の治具41に形成されてもよい。
【0044】
このとき、溝部41aは、隣接する着磁磁石1の間で発生する磁束を減少させることができ、且つ、着磁磁石1における第1の治具41の外周面への吸着力が隣接する着磁磁石1同士の反発力又は吸着力に対して大きくなる、第1の治具41の径方向の深さ及び周方向の幅寸法であるとよい。そして、溝部41aのZ軸方向の長さは、着磁磁石1のZ軸方向の長さに対して長いとよい。
【0045】
第2の治具42は、
図6などに示すように、円環形状を基本形態としており、XY平面と略平行に配置されている。そして、第2の治具42は、第1の治具41のZ軸-側の端部から当該第1の治具41の径方向外側に突出している。第2の治具42のZ軸+側の面は、配列された着磁磁石1のZ軸-側の端部が接触して当該着磁磁石1のZ軸-側の位置を定める規定面として機能する。
【0046】
第2の治具42のZ軸+側の面には、第2の治具42の径方向に延在する溝部42aが形成されている。溝部42aは、Z軸方向から見て、第1の治具41の径方向において当該第1の治具41の溝部41aの延長線上に配置されている。
【0047】
このとき、溝部42aは、例えば、
図6などに示すように、第2の治具42の径方向外側の部分に配置されている。つまり、溝部42aにおける第2の治具42の径方向内側の部分は、第1の治具41の溝部41aまで到達していない。溝部42aにおける第2の治具42の周方向の幅寸法は、仕切り板5を保持することができるように、仕切り板5の厚さと略等しい。
【0048】
このような磁石配列治具4は、図示を省略した駆動機構によって、第1の治具41の中心軸回りに回転可能であるとよい。
【0049】
仕切り板5は、着磁磁石1を円筒形状に配列するために隣接する着磁磁石1の間に配置される。仕切り板5は、非磁性体から成る平板体であり、第2の治具42の溝部42aに挿入された状態で固定されている。
【0050】
磁石挿入装置6は、保持した着磁磁石1をZ軸方向に移動させることができる構成とされている。つまり、磁石挿入装置6は、
図5に示すように、着磁磁石1を保持する保持部61、及び保持部61をZ軸方向に移動させる駆動機構62を備えている。
【0051】
次に、上述の構成の磁石配列装置3を用いてロータを製造する流れを説明する。先ず、磁石挿入装置6の保持部61で新たに配列される着磁磁石1bを保持した状態で保持部61をZ軸-側に移動させ、
図6及び
図7に示すように、着磁磁石1bを第1の治具41の外周面に接触させて吸着させる。
【0052】
このとき、
図7に示すように、新たに配列される着磁磁石1bにおける既に配列された着磁磁石1aの側に対して逆側の側面に接着剤10を塗布している。そのため、既に配列された着磁磁石1aにおける新たに着磁磁石が配列される側の側面にも、接着剤10が塗布されている。
【0053】
次に、新たに配列される着磁磁石1bの磁束ループが既に配列された着磁磁石1aの磁束ループに重なるように、磁石挿入装置6の保持部61をZ軸-側に移動させて、
図8に示すように、新たに配列される着磁磁石1bを当該着磁磁石1bの磁束ループの軸心方向に移動させ、新たに配列される着磁磁石1bのZ軸-側の端部を第2の治具42のZ軸+側の面に接触させる。
【0054】
このとき、実施の形態1と同様に、既に配列された着磁磁石1aの磁束ループと新たに配列される着磁磁石1bの磁束ループとによって、新たに配列される着磁磁石1bがZ軸-側に引き込まれる。その結果、新たに配列される着磁磁石1bを既に配列された着磁磁石1aと隣接するように配列することができる。
【0055】
そして、既に配列された着磁磁石1aと新たに配列される着磁磁石1bとの隙間における磁石配列治具4の第1の治具41の径方向外側の部分に仕切り板5が配置される。これにより、Z軸方向から見て着磁磁石1を所望の円弧形状に配列することができる。ここで、配列する着磁磁石1の半径に応じて、仕切り板5の厚さや形状(例えば、三角形状)などを設計すればよい。
【0056】
また、既に配列された着磁磁石1aの側面に接着剤10が塗布されているので、既に配列された着磁磁石1aに隣接するように新たに配列される着磁磁石1bが配列されると、新たに配列される着磁磁石1bを既に配列された着磁磁石1aに接合することができる。
【0057】
このような新たに配列される着磁磁石1bを配列する工程を、磁石配列治具4を回転させつつ繰り返すと、着磁磁石1を円筒形状に配列することができる。その後、円筒形状に配列された着磁磁石1を磁石配列治具4に対してZ軸+側に移動させて当該磁石配列治具4から取り出し、図示を省略したロータコアに固定して回転軸を取り付けるとロータを構成することができる。このとき、ロータは、インナーロータ又はアウターロータの何れであってもよい。
【0058】
このような磁石配列方法、ロータの製造方法及び磁石配列装置3も、実施の形態1と同様に、既に配列された着磁磁石1aの磁束ループと新たに配列される着磁磁石1bの磁束ループとによって、新たに配列される着磁磁石1bを既に配列された着磁磁石1aに隣接するようにZ軸-側に引き込むことができる。
【0059】
しかも、磁石配列治具4における第1の治具41の外周面に溝部41aが形成されていても、当該溝部41aは、着磁磁石1における第1の治具41の外周面への吸着力が隣接する着磁磁石1同士の反発力又は吸着力に対して大きくなるように形成されている。そのため、新たに配列される着磁磁石1bを第1の治具41に接触させて吸着させると、吸着力が隣接する着磁磁石1同士の反発力又は吸着力に打ち勝って新たに配列される着磁磁石1bをZ軸-側に精度良く移動させることができる。
【0060】
また、第1の治具41の外周面を案内面として機能させて新たに配列される着磁磁石1bを移動させることができる。これらにより、新たに配列される着磁磁石1bを定められた位置に精度良く配列することができる。
【0061】
なお、本実施の形態の磁石配列装置3は、磁石配列治具4が第1の治具41の中心軸回りに回転する構成としているが、磁石挿入装置6が第1の治具41の中心軸回りに回転する構成としてもよい。要するに、少なくとも一方が第1の治具41の中心軸回りに回転する構成であればよい。
【0062】
<実施の形態3>
本実施の形態では、上述の磁石配列方法の原理を利用した磁石誘導装置を説明する。先ず、本実施の形態の磁石誘導装置の構成を説明する。本実施の形態の磁石誘導装置は、ロータコアなどの磁性体に着磁磁石を配置する際に好適である。
図9は、本実施の形態の磁石誘導装置を示す斜視図である。
【0063】
磁石誘導装置7は、
図9に示すように、ランナー71、案内部72、誘導磁石73及び押し込み部74を備えている。ランナー71は、非磁性体から成り、挿入部71a及びレール71bを備えている。
【0064】
挿入部71aは、当該挿入部71aをZ軸方向に貫通する貫通部71cを有する筒形状である。レール71bは、Z軸方向に延在しており、X軸方向に間隔を開けて配置されている。レール71bのZ軸-側の端部は、挿入部71aからX軸+側に突出する固定部71dに固定されている。
【0065】
案内部72は、Z軸方向に延在する磁性体であり、挿入部71aの貫通部71cのX軸+側の部分に固定されている。このとき、案内部72のX軸+側の面は、YZ平面と略平行に配置されるとよい。
【0066】
誘導磁石73は、例えば、Z軸方向に長い略四角柱形状であり、Z軸方向から見てY軸方向で案内部72の両側に配置されている。言い換えると、誘導磁石73は、X軸方向から見て案内部72を挟むように当該案内部72の両側に配置されている。
【0067】
誘導磁石73は、挿入部71aの貫通部71cのY軸+側の部分及びY軸-側の部分に固定されている。これらの誘導磁石73の磁束ループの軸心は、Z軸と略平行である。但し、誘導磁石73は、四角柱形状に限定されず、円柱形状や他の多角柱形状でもよく、誘導磁石73の形状は、限定されない。
【0068】
押し込み部74は、スライダ74a及び保持部74bを備えている。スライダ74aは、レール71bがZ軸方向に挿通しており、当該レール71bに沿って移動可能である。保持部74bは、スライダ74aのX軸-側の端部からZ軸-側に突出しており、保持部74bのZ軸-側の端部に着磁磁石1を保持可能な機構を備えている。
【0069】
次に、本実施の形態の磁石誘導装置を用いてロータコアの挿入部に着磁磁石を挿入する流れを説明する。
図10は、本実施の形態の磁石誘導装置を用いてロータコアの挿入部に着磁磁石を挿入する様子を示す斜視図である。
図11は、本実施の形態の磁石誘導装置を用いてロータコアの挿入部に着磁磁石を挿入した状態を示す斜視図である。
【0070】
先ず、ロータコア8に形成された挿入部8aがZ軸方向でランナー71の挿入部71aと重なるように配置する。そして、
図10に示すように、押し込み部74の保持部74bで着磁磁石1を保持する。
【0071】
次に、押し込み部74をレール71bに沿ってZ軸-側に移動させ、着磁磁石1を挿入部71aの内部に挿入する。このとき、着磁磁石1のX軸-側の面は、案内部72のX軸+側の面に略面接触するように、着磁磁石1を挿入部71aの内部に挿入する。
【0072】
そして、着磁磁石1のX軸-側の面が案内部72のX軸+側の面に略面接触した状態を維持しつつ、押し込み部74によって着磁磁石1がロータコア8の挿入部8aに挿入されるまで当該着磁磁石1を押し込み、その後、押し込み部74の保持部74bよる着磁磁石1の保持を解除する。
【0073】
このとき、着磁磁石1の磁束ループと誘導磁石73の磁束ループとが重なるように、着磁磁石1が当該着磁磁石1の磁束ループの軸心方向に押し込まれると共に、実施の形態1と同様に、着磁磁石1の磁束ループと誘導磁石73の磁束ループとによって当該着磁磁石1がZ軸-側に引き込まれて、ロータコア8の挿入部8aに誘導される。つまり、誘導磁石73は、当該誘導磁石73の磁力によって着磁磁石1を誘導する。
【0074】
このように本実施の形態の磁石誘導装置7は、実施の形態1の原理を用いて、着磁磁石1の磁束ループと誘導磁石73の磁束ループとによって、着磁磁石1をZ軸-側に誘導することができる。しかも、案内部72のX軸-側の面を案内面として機能させて着磁磁石1を移動させることができる。その結果、着磁磁石1を簡単に定められた位置に精度良く誘導することができる。
【0075】
なお、本実施の形態では、Z軸方向から見てY軸方向で誘導磁石73が案内部72の両側に配置されているが、少なくとも一方の誘導磁石73を備えていればよい。但し、誘導磁石73が案内部72の両側に配置されている場合、着磁磁石1のY軸方向の位置制御を安定させることができる。
【0076】
また、本実施の形態では、着磁磁石1を埋込磁石としてロータコア8の挿入部8aに挿入しているが、磁石誘導装置7を用いてロータコアの内周面又は外周面に着磁磁石1を配列する場合も同様に実施することができる。
【0077】
本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0078】
この出願は、2021年3月18日に出願された日本出願特願2021-44583を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0079】
1 着磁磁石、1a 既に配列された着磁磁石、1b 新たに配列される着磁磁石
2 磁石配列治具、2a 挿入部
21 第1の治具、21a 溝部
22 第2の治具
3 磁石配列装置
4 磁石配列治具
41 第1の治具、41a 溝部
42 第2の治具、42a 溝部
5 仕切り板
6 磁石挿入装置、61 保持部、62 駆動機構
10 接着剤
7 磁石誘導装置
71 ランナー、71a 挿入部、71b レール、71c 貫通部、71d 固定部
72 案内部
73 誘導磁石
74 押し込み部、74a スライダ、74b 保持部
8 ロータコア、8a 挿入部
A 吸着力
R 磁束ループ、Ra 既に配列された着磁磁石の磁束ループ、Rb 新たに配列される着磁磁石の磁束ループ
Re 反発力