(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ネガ型感光性ポリマー、ポリマー溶液、ネガ型感光性樹脂組成物、硬化膜および半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20231219BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20231219BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C08G73/10
C08F299/02
C08F290/14
(21)【出願番号】P 2023530097
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2022024912
(87)【国際公開番号】W WO2022270546
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2021105682
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022019323
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】今井 啓太
(72)【発明者】
【氏名】乙黒 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】中島 数矢
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/255825(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/10
C08F 299/02
C08F 290/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イミド環を含有する下記一般式(1)で表される構造単位を含み、末端二重結合を有する基を備える、溶剤可溶性ネガ型感光性ポリマーであって、
電荷平衡法で計算された、前記イミド環の2つのカルボニル炭素のプラスの電荷(δ+)の平均値が0.099以下である、ネガ型感光性ポリマー。
【化3】
(一般式(1)中、Aはイミド環の2つの炭素を含む環構造を示し、
Qは2価の有機基を示し、
Xは、下記一般式(1a)、または下記一般式(1b)で表される2価の基である。
【化4】
(一般式(1a)中、R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基または炭素数1~3のアルコキシ基を示し、R
1とR
2は異なる基であり、R
3とR
4は異なる基である。
X
1は単結合、-SO
2-、-C(=O)-、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキレン基、またはフルオレニレン基を示す。*は結合手を示す。
一般式(1b)中、R
a、R
bは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基または炭素数1~3のアルコキシ基を示す。複数存在するR
a同士、複数存在するR
b同士は同一でも異なっていてもよい。*は結合手を示す。))
【請求項2】
下記一般式(1)で表され、Xが下記一般式(1a)で表される2価の基である構造単位と、下記一般式(1)で表され、Xが下記一般式(1c)で表される2価の基である構造単位とを含み、末端二重結合を有する基を備える、溶剤可溶性ネガ型感光性ポリマーであって、
電荷平衡法で計算された、前記イミド環の2つのカルボニル炭素のプラスの電荷(δ+)の平均値が0.099以下である、ネガ型感光性ポリマー。
【化5】
(一般式(1)中、Aはイミド環の2つの炭素を含む環構造を示し、
Qは2価の有機基を示し、
Xは、下記一般式(1a)、または下記一般式(1c)で表される2価の基である。
【化6】
(一般式(1a)中、R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基または炭素数1~3のアルコキシ基を示し、R
1とR
2は異なる基であり、R
3とR
4は異なる基である。
X
1は単結合、-SO
2-、-C(=O)-、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキレン基、またはフルオレニレン基を示す。*は結合手を示す。
【化7】
(一般式(1c)中、Qは、2価~4価の炭素数1~10の有機基を示し、複数存在するQは同一でも異なっていてもよい。
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示す。
m1およびm2は、それぞれ独立して1~3の整数を示す。
X
2は単結合、-SO
2-、-C(=O)-、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキレン基を示す。*は結合手を示す。))
【請求項3】
イミド環を含有する下記一般式(1)で表される構造単位を含み、末端二重結合を有する基を備える、溶剤可溶性ネガ型感光性ポリマーであって、
分子構造中にフッ素原子を含まず、
電荷平衡法で計算された、前記イミド環の2つのカルボニル炭素のプラスの電荷(δ+)の平均値が0.099以下である、ネガ型感光性ポリマー。
【化8】
(一般式(1)中、
Aはイミド環の2つの炭素を含む環構造を示し、
Qは2価の有機基を示し、
Xは、末端二重結合を有する基を備える下記一般式(1c)で表される2価の基を含む。
【化9】
(一般式(1c)中、Qは、2価~4価の炭素数1~10の有機基を示し複数存在するQは同一でも異なっていてもよい。
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示す。
m1およびm2は、それぞれ独立して1~3の整数を示す。
X
2は単結合、-SO
2-、-C(=O)-、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキレン基を示す。*は結合手を示す。))
【請求項4】
分子構造中にフッ素原子を含まない、請求項1
または2に記載のネガ型感光性ポリマー。
【請求項5】
一般式(1c)中、Qは、エステル基、2価~4価の炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、2価~4価の炭素数3~10の脂環式炭化水素基を示し、これらの炭化水素基はヘテロ原子を含んでいてもよく、エステル結合、チオエステル結合、ウレタン結合、チオウレタン結合、またはウレア結合を構造中に有していてもよい、請求項
2または
3に記載のネガ型感光性ポリマー。
【請求項6】
前記一般式(1)のXの2価の有機基に含まれる芳香族基は、前記一般式(1)中の窒素原子に結合しており、当該窒素原子と結合している炭素原子に対する2つオルト位に電子供与性基を備える、請求項1~
3のいずれかに記載のネガ型感光性ポリマー。
【請求項7】
前記一般式(1)の前記Xは、下記一般式(1a)、または下記一般式(1b)で表される2価の基を含む、請求項
3に記載のネガ型感光性ポリマー。
【化11】
(一般式(1a)中、R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基または炭素数1~3のアルコキシ基を示し、R
1とR
2は異なる基であり、R
3とR
4は異なる基である。
X
1は単結合、-SO
2-、-C(=O)-、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキレン基、またはフルオレニレン基を示す。*は結合手を示す。
一般式(1b)中、R
a、R
bは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基または炭素数1~3のアルコキシ基を示す。複数存在するR
a同士、複数存在するR
b同士は同一でも異なっていてもよい。*は結合手を示す。)
【請求項8】
前記一般式(1)中のXは、末端二重結合を有する基を備える下記一般式(1c)で表される2価の基を含む、請求項
1に記載のネガ型感光性ポリマー。
【化12】
(一般式(1c)中、Qは、2価~4価の炭素数1~10の有機基を示し、複数存在するQは同一でも異なっていてもよい。
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示す。
m1およびm2は、それぞれ独立して1~3の整数を示す。
X
2は単結合、-SO
2-、-C(=O)-、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキレン基を示す。*は結合手を示す。)
【請求項9】
前記一般式(1)中のXは、末端二重結合を有する基を備える下記一般式(1b)で表される2価の基を含む、請求項
2に記載のネガ型感光性ポリマー。
【化13】
(一般式(1b)中、R
a、R
bは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基または炭素数1~3のアルコキシ基を示す。複数存在するR
a同士、複数存在するR
b同士は同一でも異なっていてもよい。*は結合手を示す。)
【請求項10】
両末端の少なくとも一方に末端二重結合を有する基を備える、請求項1~
3のいずれかに記載のネガ型感光性ポリマー。
【請求項11】
前記一般式(1)中の前記Aは芳香族環である、請求項1~
3のいずれかに記載のネガ型感光性ポリマー。
【請求項12】
前記一般式(1)中の前記Qは、イミド環を含有する2価の基である、請求項1~
3のいずれかに記載のネガ型感光性ポリマー。
【請求項13】
前記一般式(1)で表される構造単位は、下記一般式(1-1)で表される構造単位を含む、請求項
1に記載のネガ型感光性ポリマー。
【化14】
(一般式(1-1)中、Xは前記一般式(1a)、前記一般式(1b)で表される2価の基であり、Yは2価の有機基である。)
【請求項14】
前記一般式(1)で表される構造単位は、下記一般式(1-1)で表される構造単位を含む、請求項
2に記載のネガ型感光性ポリマー。
【化16】
(一般式(1-1)中、Xは前記一般式(1a)、前記一般式(1c)で表される2価の基であり、Yは2価の有機基である。)
【請求項15】
前記一般式(1)で表される構造単位は、下記一般式(1-1)で表される構造単位を含む、請求項
3に記載のネガ型感光性ポリマー。
【化17】
(一般式(1-1)中、Xは前記一般式(1c)で表される2価の基であり、Yは2価の有機基である。)
【請求項16】
一般式(1-1)中のXは、下記一般式(1c)で表される2価の基を含む、請求項
13に記載のネガ型感光性ポリマー。
【化18】
(一般式(1c)中、Qは、2価~4価の炭素数1~10の有機基を示し複数存在するQは同一でも異なっていてもよい。
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示す。
m1およびm2は、それぞれ独立して1~3の整数を示す。
X
2は単結合、-SO
2-、-C(=O)-、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキレン基を示す。*は結合手を示す。)
【請求項17】
一般式(1-1)中のXは、下記一般式(1b)で表される2価の基を含む、請求項
14に記載のネガ型感光性ポリマー。
【化20】
(一般式(1b)中、R
a、R
bは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基または炭素数1~3のアルコキシ基を示す。複数存在するR
a同士、複数存在するR
b同士は同一でも異なっていてもよい。*は結合手を示す。)
【請求項18】
一般式(1-1)中のXは、下記一般式(1a)、下記一般式(1b)で表される2価の基で表される2価の基を含む、請求項
15に記載のネガ型感光性ポリマー。
【化21】
(一般式(1a)中、R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基または炭素数1~3のアルコキシ基を示し、R
1とR
2は異なる基であり、R
3とR
4は異なる基である。
X
1は単結合、-SO
2-、-C(=O)-、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキレン基、またはフルオレニレン基を示す。*は結合手を示す。
一般式(1b)中、R
a、R
bは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基または炭素数1~3のアルコキシ基を示す。複数存在するR
a同士、複数存在するR
b同士は同一でも異なっていてもよい。*は結合手を示す。)
【請求項19】
前記一般式(1-1)中のYは、下記一般式(a1-1)、下記一般式(a1-2)、下記一般式(a1-3)および下記一般式(a1-4)から選択される2価の有機基である、請求項
13~
18のいずれかに記載のネガ型感光性ポリマー。
【化22】
(一般式(a1-1)中、R
7およびR
8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR
7同士、複数存在するR
8同士は同一でも異なっていてもよい。R
9は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR
9同士は同一でも異なっていてもよい。*は結合手を示す。
一般式(a1-2)中、R
10およびR
11は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR
10同士、複数存在するR
11同士は同一でも異なっていてもよい。*は結合手を示す。
一般式(a1-3)中、Z
1は炭素数1~5のアルキレン基、2価の芳香族基を示す。
*は結合手を示す。
一般式(a1-4)中、Z
2は2価の芳香族基を示す。*は結合手を示す。)
【請求項20】
N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチルラクトン(GBL)、シクロペンタノンから選択される溶剤に5質量%以上溶解する、請求項1~
3のいずれかに記載のネガ型感光性ポリマー。
【請求項21】
γ-ブチルラクトン(GBL)に5質量%以上溶解する、請求項1~
3のいずれかに記載のネガ型感光性ポリマー。
【請求項22】
以下の条件で測定された重量平均分子量の減少率が15%以下である、請求項1~
3のいずれかに記載のネガ型感光性ポリマー。
(条件)
前記ネガ型感光性ポリマー100質量部に、γ-ブチロラクトン400質量部、4-メチルテトラヒドロピラン200質量部、および水50質量部を加え、100℃で6時間攪拌した場合において、下記式で算出する。
式:[(試験前の重量平均分子量-試験後の重量平均分子量)/試験前の重量平均分子量]×100
【請求項23】
請求項1~
3のいずれかに記載のネガ型感光性ポリマーを含むポリマー溶液。
【請求項24】
(A)請求項1~
3のいずれかに記載のネガ型感光性ポリマーと、
(B)多官能(メタ)アクリレートを含む架橋剤と、
(C)光重合開始剤と、
を含む、ネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項25】
請求項
24に記載のネガ型感光性樹脂組成物の硬化物からなる硬化膜。
【請求項26】
請求項
24に記載のネガ型感光性樹脂組成物の硬化物を含む樹脂膜を備える半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型感光性ポリマー、ポリマー溶液、ネガ型感光性樹脂組成物、硬化膜および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、高い機械的強度、耐熱性、絶縁性、耐溶剤性を有しているため、液晶表示素子や半導体における保護材料、絶縁材料、カラーフィルタ等の電子材料用薄膜として広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、特定の有機基を有するポリイミド樹脂を含有する樹脂組成物が開示されている。当該文献には、当該樹脂組成物によれば、露光前はアルカリ現像液に容易に溶解し、露光するとアルカリ現像液に不溶となり、キュアによる膜の収縮が小さく高矩形のキュア後パターンを得ることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の従来のポリマーは、加水分解により伸び等の機械的強度が低下することを見出した。また、ネガ型感光性ポリマーはワニスに使用される一般的な溶剤に対し溶解性に優れることも要求される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、イミド環を含有する構造単位を含む所定のネガ型感光性ポリマーにおいて、当該イミド環のカルボニル炭素のプラスの電荷が所定の範囲にあれば、加水分解が抑制されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0007】
[1] イミド環を含有する構造単位を含み、末端二重結合を有する基を備える、溶剤可溶性ネガ型感光性ポリマーであって、
電荷平衡法で計算された、前記イミド環の2つのカルボニル炭素のプラスの電荷(δ+)の平均値が0.099以下である、ネガ型感光性ポリマー。
[2] 分子構造中にフッ素原子を含まない、[1]に記載のネガ型感光性ポリマー。
[3] 前記構造単位は下記一般式(1)で表される、[1]または[2]に記載のネガ型感光性ポリマー。
【化1】
(一般式(1)中、Xは芳香族基を含む2価の有機基を示し、
Aはイミド環の2つの炭素を含む環構造を示し、
Qは2価の有機基を示す。)
[4] 前記一般式(1)のXの2価の有機基に含まれる芳香族基は、前記一般式(1)中の窒素原子に結合しており、当該窒素原子と結合している炭素原子に対する2つオルト位に電子供与性基を備える、[3]に記載のネガ型感光性ポリマー。
[5] 前記一般式(1)の前記Xは、下記一般式(1a)、または下記一般式(1b)で表される2価の基である、[3]または[4]に記載のネガ型感光性ポリマー。
【化2】
(一般式(1a)中、R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基または炭素数1~3のアルコキシ基を示し、R
1とR
2は異なる基であり、R
3とR
4は異なる基である。
X
1は単結合、-SO
2-、-C(=O)-、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキレン基、またはフルオレニレン基を示す。*は結合手を示す。
一般式(1b)中、R
a、R
bは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基または炭素数1~3のアルコキシ基を示す。複数存在するR
a同士、複数存在するR
b同士は同一でも異なっていてもよい。*は結合手を示す。)
[6] 前記一般式(1)中のXは、末端二重結合を有する基を備える下記一般式(1c)で表される2価の基を含む、[3]~[5]のいずれかに記載のネガ型感光性ポリマー。
【化3】
(一般式(1c)中、Qは、2価~4価の炭素数1~10の有機基を示し、複数存在するQは同一でも異なっていてもよい。
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示す。
m1およびm2は、それぞれ独立して1~3の整数を示す。
X
2は単結合、-SO
2-、-C(=O)-、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキレン基を示す。*は結合手を示す。)
[7] 両末端の少なくとも一方に末端二重結合を有する基を備える、[1]~[5]のいずれかに記載のネガ型感光性ポリマー。
[8] 前記一般式(1)中の前記Aは芳香族環である、[3]~[7]のいずれかに記載のネガ型感光性ポリマー。
[9] 前記一般式(1)中の前記Qは、イミド環を含有する2価の基である、[3]~[8]のいずれかに記載のネガ型感光性ポリマー。
[10] 前記一般式(1)で表される構造単位は、下記一般式(1-1)で表される構造単位を含む、[5]~[9]のいずれかに記載のネガ型感光性ポリマー。
【化4】
(一般式(1-1)中、Xは前記一般式(1a)、前記一般式(1b)で表される2価の基であり、Yは2価の有機基である。)
[11] 一般式(1-1)中のXは、前記一般式(1c)で表される2価の基を含む、[10]に記載のネガ型感光性ポリマー。
[12] 前記一般式(1-1)中のYは、下記一般式(a1-1)、下記一般式(a1-2)、下記一般式(a1-3)および下記一般式(a1-4)から選択される2価の有機基である、[10]または[11]に記載のネガ型感光性ポリマー。
【化5】
(一般式(a1-1)中、R
7およびR
8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR
7同士、複数存在するR
8同士は同一でも異なっていてもよい。R
9は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR
9同士は同一でも異なっていてもよい。*は結合手を示す。
一般式(a1-2)中、R
10およびR
11は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR
10同士、複数存在するR
11同士は同一でも異なっていてもよい。*は結合手を示す。
一般式(a1-3)中、Z
1は炭素数1~5のアルキレン基、2価の芳香族基を示す。
*は結合手を示す。
一般式(a1-4)中、Z
2は2価の芳香族基を示す。*は結合手を示す。)
[13] N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチルラクトン(GBL)、シクロペンタノンから選択される溶剤に5質量%以上溶解する、[1]~[12]のいずれかに記載のネガ型感光性ポリマー。
[14] γ-ブチルラクトン(GBL)に5質量%以上溶解する、[1]~[13]のいずれかに記載のネガ型感光性ポリマー。
[15] 以下の条件で測定された重量平均分子量の減少率が15%以下である、[1]~[14]のいずれかに記載のネガ型感光性ポリマー。
(条件)
前記ネガ型感光性ポリマー100質量部に、γ-ブチロラクトン400質量部、4-メチルテトラヒドロピラン200質量部、および水50質量部を加え、100℃で6時間攪拌した場合において、下記式で算出する。
式:[(試験前の重量平均分子量-試験後の重量平均分子量)/試験前の重量平均分子量]×100
[16] [1]~[15]のいずれかに記載のネガ型感光性ポリマーを含むポリマー溶液。
[17] (A)[1]~[15]のいずれかに記載のネガ型感光性ポリマーと、
(B)多官能(メタ)アクリレートを含む架橋剤と、
(C)光重合開始剤と、
を含む、ネガ型感光性樹脂組成物。
[18] [17]に記載のネガ型感光性樹脂組成物の硬化物からなる硬化膜。
[19] [17]に記載のネガ型感光性樹脂組成物の硬化物を含む樹脂膜を備える半導体装置。
【0008】
本発明において、「プラスの電荷(δ+)」とは、電荷平衡法(Charge(Q) Equilibration(Eq):QEq)により、分子中の原子の上の電荷を計算し、所定の原子のプラスの電荷をデルタプラス(δ+)で表したものである。
【0009】
前記電荷平衡法は以下のようなものである。
原子は結合を作る際に、電気陰性度が互いに等しくなるまで(平衡に達するまで)電子密度を変化させる。最初は、分子中の全ての原子上の電荷が0から出発して、電子は電気陰性度の小さい原子から大きい原子へ流れる。原子上に電子が貯まれば電気陰性度が低下し、平衡に達すると各原子の電気陰性度は等しくなり電子の流れは止まる。電荷平衡法は、こうした繰り返し計算を行って分子中の原子の上の電荷を計算し、所定の原子のプラスの電荷をデルタプラス(δ+)で表し、所定の原子のマイナスの電荷をデルタマイナス(δ-)で表すことができる。
【0010】
また、本発明のネガ型感光性ポリマーは溶剤に溶解させてワニスとして使用される。「溶剤可溶性」とは、ワニスに使用される一般的な溶剤のいずれかに可溶であることを意味する。一般的な溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチルラクトン(GBL)、シクロペンタノン等が挙げられる。
「可溶」とは、本発明のネガ型感光性ポリマーがこれらの所定の溶剤100質量%に対して5質量%以上溶解することを意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、有機溶剤への溶解性に優れるとともに、加水分解が抑制され伸び等の機械的強度の低下が抑制されたフィルム等の硬化物が得られるネガ型感光性ポリマーおよび当該ポリマーを含むネガ型感光性樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の半導体装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、例えば「1~10」は特に断りがなければ「1以上」から「10以下」を表す。
【0014】
本実施形態の溶剤可溶性ネガ型感光性ポリマーは、イミド環を含有する構造単位を含み、末端二重結合を有する基を備えるポリマーであって、
電荷平衡法で計算された、前記イミド環の2つのカルボニル炭素のプラスの電荷(δ+)の平均値が0.099以下、好ましくは0.098以下、より好ましくは0.097以下、さらに好ましくは0.095以下である。
これにより、有機溶剤への溶解性に優れるとともに、加水分解が抑制され伸び等の機械的強度の低下が抑制されたフィルム等の硬化物を提供することができる。
また、前記イミド環の2つのカルボニル炭素のプラスの電荷(δ+)の平均値の下限値は特に限定されないが、好ましくは0.070以上、より好ましくは0.080以上、さらに好ましくは0.085以上である。上記の下限値以上であると、電荷の偏りに起因する着色を抑制できると考えられ、本実施形態のネガ型感光性ポリマーを感光性樹脂組成物とした際の感度の低下を抑制できると考えられる。
なお、上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
【0015】
本実施形態のネガ型感光性ポリマーによれば、有機溶剤への溶解性に優れるとともに、加水分解が抑制され伸び等の機械的強度の低下が抑制されたフィルム等の硬化物を提供することができる。
【0016】
本実施形態の溶剤可溶性ネガ型感光性ポリマーは、前記カルボニル炭素のプラスの電荷(δ+)の平均値が所定の範囲に含まれ本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で分子構造中にフッ素原子を含むことができるが、分子構造中に電子吸引性の強いフッ素原子を含まないことが好ましい。
【0017】
溶剤可溶性ネガ型感光性ポリマーに含まれる、イミド環を含有する構造単位は、下記一般式(1)で表すことができる。
【0018】
【0019】
一般式(1)中のAはイミド環の2つの炭素を含む環構造を示し、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族環であることが好ましい。
【0020】
一般式(1)中のQは2価の有機基を示し、好ましくはイミド環を含有する2価の基である。
一般式(1)中、Xは芳香族基を含む2価の有機基を示す。
前記一般式(1)のXにおいて、2価の有機基に含まれる芳香族基は、前記一般式(1)中の窒素原子に結合していることが好ましい。前記窒素原子と結合している芳香族基の炭素原子に対する2つオルト位は、電子供与性基を備えることがより好ましく、非対称の電子供与性基を備えることがさらに好ましい。電子供与性基としては、水素原子、炭素数1~3のアルキル基または炭素数1~3のアルコキシ基を挙げることができる。
Xの前記2価の有機基としては、下記一般式(1a)、または下記一般式(1b)で表される2価の基を挙げることができる。
Xは、一般式(1a)で表される2価の基を少なくとも1種、または一般式(1b)で表される2価の基を少なくとも1種含むことができ、これらの基を組み合わせて含むこともできる。
【0021】
【0022】
一般式(1a)中、R1~R4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基または炭素数1~3のアルコキシ基を示し、R1とR2は異なる基であり、R3とR4は異なる基である。
【0023】
X1は単結合、-SO2-、-C(=O)-、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキレン基、またはフルオレニレン基を示す。*は結合手を示す。
【0024】
一般式(1b)中、Ra、Rbは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基または炭素数1~3のアルコキシ基を示す。複数存在するRa同士、複数存在するRb同士は同一でも異なっていてもよい。*は結合手を示す。
一般式(1)の窒素原子に直結するベンゼン環の炭素原子に対する2つのオルト位(R1およびR2(またはR3およびR4))に所定の電子供与性基を有する点が本発明の効果において好ましく、前記一般式(1)のXは前記一般式(1a)で表される2価の基がより好ましい。
【0025】
末端二重結合を有する基を側鎖に備える場合、Xは、下記一般式(1c)で表される2価の基を含むことができる。
【0026】
【0027】
一般式(1c)中、Qは、2価~4価の炭素数1~10の有機基を示し、複数存在するQは同一でも異なっていてもよい。
【0028】
2価~4価の炭素数1~10の有機基としては、エステル基、2価~4価の炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、2価~4価の炭素数3~10の脂環式炭化水素基等が挙げられ、これらの炭化水素基は、酸素、窒素、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいてもよく、エステル結合、チオエステル結合、ウレタン結合、チオウレタン結合、ウレア結合等を構造中に有していてもよい。
【0029】
R5およびR6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示す。
m1およびm2は、それぞれ独立して1~3の整数を示す。
X2は単結合、-SO2-、-C(=O)-、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキレン基を示す。*は結合手を示す。
【0030】
前記一般式(1)で表される構造単位は、具体的に、下記一般式(1-1)で表される構造単位を含むことが好ましい。
【0031】
【0032】
一般式(1-1)中、Xは前記一般式(1a)、前記一般式(1b)で表される2価の基を挙げることができる。
【0033】
末端二重結合を有する基は、溶剤可溶性ネガ型感光性ポリマーの両末端の少なくとも一方か、側鎖に備えることができ、いずれにも備えることも好ましい。
末端二重結合を有する基を側鎖に備える場合、Xは、前記一般式(1c)で表される2価の基を含むことができる。
【0034】
一般式(1-1)のYは2価の有機基である。
Yの2価の有機基としては、下記一般式(a1-1)、下記一般式(a1-2)、下記一般式(a1-3)および下記一般式(a1-4)から選択することができる。
【0035】
【0036】
一般式(a1-1)中、R7およびR8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR7同士、複数存在するR8同士は同一でも異なっていてもよい。
R7およびR8は、本発明の効果の観点から、好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましく水素原子である。
【0037】
R9は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR9同士は同一でも異なっていてもよい。
R9は、本発明の効果の観点から、好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましく水素原子である。
*は結合手を示す。
【0038】
一般式(a1-2)中、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR10同士、複数存在するR11同士は同一でも異なっていてもよい。
【0039】
R10およびR11は、本発明の効果の観点から、好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはR10の少なくとも1つおよびR11の少なくとも1つは炭素数1~3のアルキル基であり、さらに好ましくは3つのR10が炭素数1~3のアルキル基であり1つのR10が水素原子であり、かつ3つのR11が炭素数1~3のアルキル基であり1つのR11が水素原子であり、特に好ましくは3つのR10がメチル基であり1つのR10が水素原子であり、かつ3つのR11がメチル基であり1つのR11が水素原子である。
*は結合手を示す。
【0040】
一般式(a1-3)中、Z1は炭素数1~5のアルキレン基、2価の芳香族基を示す。
*は結合手を示す。
【0041】
一般式(a1-4)中、Z2は2価の芳香族基を示し、好ましくは2価のベンゼン環である。*は結合手を示す。
【0042】
本実施形態のネガ型感光性ポリマーは下記一般式(1-1a)で表される構造単位(1-1a)および下記一般式(1-1b)で表される構造単位(1-1b)から選択される少なくとも1種の構造単位を含むことができる。
【0043】
【0044】
一般式(1-1a)中、R1~R4、X1は一般式(1a)と同義であり、Yは一般式(1-1)と同義である。
【0045】
【0046】
一般式(1-1b)中、RaおよびRbは一般式(1b)と同義であり、Yは一般式(1-1)と同義である。
【0047】
末端二重結合を有する基を、溶剤可溶性ネガ型感光性ポリマーの両末端の少なくとも一方か、側鎖に備えることができる。末端二重結合を有する基を側鎖に備える場合、下記一般式(1-1c)で表される構造単位(1-1c)を含むことができる。
【0048】
【0049】
一般式(1-1c)中、R5、R6、Q、m1、m2、X2は一般式(1c)と同義であり、Yは一般式(1-1)と同義である。
【0050】
本実施形態においては、例えば、前記一般式(1-1)で表される構造単位を含むネガ型感光性ポリマーにおいて、イミド環の2つのカルボニル炭素のプラスの電荷(δ+)の平均値は以下のように測定される。
【0051】
下記条件で測定された、下記一般式(1-1’)で表される化合物に含まれるイミド環の2つのカルボニル炭素のδ+の平均値を算出する。
[条件]
前記一般式(1-1’)で表される化合物を、ソフトHSPiP(ver5.3)を用いて電荷平衡法にて測定し、前記化合物に含まれるイミド環の2つのカルボニル炭素のδ+を平均して求める。
【0052】
【0053】
一般式(1-1’)中、Yは一般式(1-1)と同義である。X’は下記一般式(1a-1)または下記一般式(1b-1)で表される1価の基である。
【0054】
【0055】
一般式(1a-1)中、R1~R4、X1は一般式(1a)と同義である。*は結合手を示す。一般式(1b-1)中、Ra、Rbは一般式(1b)と同義である。*は結合手を示す。
【0056】
前記一般式(1-1)で表される構造単位を含むネガ型感光性ポリマーが、Xとして複数の基を含む場合、可能な組み合わせごとにδ+の平均値を算出し、仕込み量に応じて加重平均をとり、イミド環の2つのカルボニル炭素のプラスの電荷(δ+)の平均値を算出する。
【0057】
具体的には、一般式(1-1)で表される構造単位を含むネガ型感光性ポリマーが、Xとして一般式(1a)の基を備える構造単位(1-1a)と、Xとして一般式(1b)の基を備える構造単位(1-1b)と、を含む場合、
一般式(1a-1)の基を備える前記一般式(1-1’)で表される化合物を、ソフトHSPiP(ver5.3)を用いて電荷平衡法にて測定し、前記化合物に含まれるイミド環の2つのカルボニル炭素のδ+を平均して平均値(1)を得る。一般式(1b-1)の基を備える前記一般式(1-1’)で表される化合物を、同様に測定し、前記化合物に含まれるイミド環の2つのカルボニル炭素のδ+を平均して平均値(2)を得る。そして、構造単位(1-1a)のモル数(1)と構造単位(1-1b)のモル数(2)との合計を100とした場合に、以下の式でδ+を算出する。
式:[δ+の平均値(1)×モル分率(1)+δ+の平均値(2)×モル分率(2)]/100
【0058】
さらに、末端二重結合を有する基をネガ型感光性ポリマーの側鎖に備える場合、X’は下記一般式(1c-1)で表される1価の基を含むことができる。
【0059】
【0060】
一般式(1c-1)中、R5、R6、Q、m1、m2、X2は一般式(1c)と同義である。
例えば、一般式(1-1)で表される構造単位を含むネガ型感光性ポリマーが、Xとして一般式(1a)の基を備える構造単位(1-1a)と、Xとして一般式(1b)の基を備える構造単位(1-1b)と、Xとして一般式(1c)の基を備える構造単位(1-1c)とを含む場合、
一般式(1a-1)の基を備える前記一般式(1-1’)で表される化合物を、ソフトHSPiP(ver5.3)を用いて電荷平衡法にて測定し、前記化合物に含まれるイミド環の2つのカルボニル炭素のδ+を平均して平均値(1)を得る。一般式(1b-1)の基を備える前記一般式(1-1’)で表される化合物を、同様に測定し、前記化合物に含まれるイミド環の2つのカルボニル炭素のδ+を平均して平均値(2)を得る。さらに一般式(1c-1)の基を備える前記一般式(1-1’)で表される化合物を、同様に測定し、前記化合物に含まれるイミド環の2つのカルボニル炭素のδ+を平均して平均値(3)を得る。そして、構造単位(1-1a)のモル数(1)と構造単位(1-1b)のモル数(2)と構造単位(1-1c)のモル数(3)の合計を100とした場合に、以下の式でδ+を算出する。
式:[δ+の平均値(1)×モル分率(1)+δ+の平均値(2)×モル分率(2)+δ+の平均値(3)×モル分率(3)]/100
【0061】
前記一般式(1-1)で表される構造単位を含むネガ型感光性ポリマーが、Xとして4種以上の基を含む場合においても、上記と同様にして、可能な組み合わせごとにδ+の平均値を算出し、仕込み量に応じて加重平均をとることにより、ネガ型感光性ポリマーのイミド環の2つのカルボニル炭素のプラスの電荷(δ+)の平均値を算出する。
【0062】
本実施形態のネガ型感光性ポリマーは、前記構造単位を含み、末端二重結合を有する基をネガ型感光性ポリマーの側鎖に備える構造を有する場合、さらに一部に以下の構造単位を含んでいてもよい。
【0063】
【0064】
これらの一般式中、R5、R6、Q、m1、m2、X2は一般式(1c)と同義であり、Yは一般式(1-1)と同義である。
本実施形態において、ネガ型感光性ポリマーは両末端の少なくとも一方に末端二重結合を有する基を備えることが好ましく、当該基としては(メタ)アクリレート基であることがより好ましい。当該基を含むことにより、伸び等の機械的強度により優れる。
(メタ)アクリレート基を有することは、1H-NMRにより分析することができる。
【0065】
具体的には、前記一般式(1c)で表される2価の基を含むネガ型感光性ポリマーが、その両末端の少なくとも一方に末端二重結合を有する基を備える場合、末端構造として、下記一般式(a4)~下記一般式(a13)で表される末端構造(a4)~末端構造(a13)の少なくとも1つを備えることが好ましく、末端構造(a4)を備えることがより好ましい。
一方、前記一般式(1c)で表される2価の基を含まないネガ型感光性ポリマーは、その両末端の少なくとも一方に、下記一般式(a4)~下記一般式(a6)で表される末端構造(a4)~末端構造(a6)の少なくとも1つを備えることが好ましく、末端構造(a4)を備えることがより好ましい。
【化18】
【0066】
一般式(a4)中、Qは一般式(1c)と同義であり、Yは一般式(1-1)と同義である。R7は水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示す。m3は1~3の整数を示す。*は結合手を示す。
一般式(a5)中、Qは一般式(1c)と同義であり、X1、R1~R4は一般式(1a)と同義である。R7、m3は一般式(a4)と同義である。*は結合手を示す。
一般式(a6)中、Qは一般式(1c)と同義であり、Ra、Rbは一般式(1b)と同義である。R7、m3は一般式(a4)と同義である。*は結合手を示す。
一般式(a7)~(a13)中、Q、R5、R6、m1、m2、およびX2は一般式(1c)と同義である。R7、m3は一般式(a4)と同義である。*は結合手を示す。
【0067】
本実施形態のネガ型感光性ポリマーの重量平均分子量は、5,000~200,000であり、好ましくは10,000~100,000である。
【0068】
本実施形態のネガ型感光性ポリマーは、加水分解が抑制されており、ネガ型感光性ポリマーおよびネガ型感光性ポリマーを含むネガ型感光性樹脂組成物は、伸び等の機械的強度に優れたフィルム等の硬化物を得ることができる。
【0069】
また、本実施形態のネガ型感光性ポリマーは、溶剤への溶解性に優れており前駆体の状態でワニスとする必要がないことから、ネガ型感光性ポリマーを含むワニスを調製することができ、当該ワニスからフィルム等の硬化物を得ることができる。
【0070】
<ネガ型感光性ポリマーの製造方法>
[第1実施形態]
側鎖に末端二重結合を有する基を備えるネガ型感光性ポリマーの製造方法を説明する。
例えば、構造単位(1-1a)および/または構造単位(1-1b)と、構造単位(1-1c)とを有するネガ型感光性ポリマーの製造方法は、
【0071】
下記一般式(i)で表される酸無水物(i)と、下記一般式(ii)で表されるジアミン(ii)および/または下記一般式(iii)で表されるジアミン(iii)と、下記一般式(iv)で表されるビスアミノフェノール(iv)とを、100℃以上250℃以下の温度下でイミド化する工程1と、
【0072】
工程1で得られた重合体の前記一般式(iv)のビスアミノフェノール(iv)由来の構造単位の水酸基に(メタ)アクリレート基を備える化合物を反応させて、(メタ)アクリレート基を含む基を導入する工程2と、
を含む。
本実施形態によれば、溶剤溶解性に優れたネガ型感光性ポリマーを簡便な方法で合成することができる。
【0073】
【0074】
一般式(i)中、Yは一般式(1-1)と同義であり、好ましくは前記一般式(a1-1)、(a1-2)、(a1-3)または(a1-4)で表される基から選択される。
【0075】
【0076】
一般式(ii)中、R1~R4、X1は一般式(1a)と同義である。
【0077】
【0078】
一般式(iii)中、Ra、Rbは一般式(1b)と同義である。
【0079】
【0080】
一般式(iv)中、X2は一般式(1c)と同義である。
得られるポリヒドロキシイミドの分子量を制御するために、エンドキャップ剤として少量の酸無水物や芳香族アミンを添加して反応を行うことも可能である。
【0081】
エンドキャップ剤である酸無水物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸等が、芳香族アミンとしては、p-メチルアニリン、p-メトキシアニリン、p-フェノキシアニリン等が挙げられる。これらエンドキャップ剤である酸無水物、又は芳香族アミンの添加量は5モル%以下であることが好ましい。5モル%を越えると、得られるポリヒドロキシイミドの分子量が著しく低下し、耐熱性や機械的特性に問題を生じる。
【0082】
工程1のイミド化反応における酸無水物(i)とジアミン(ii)および/またはジアミン(iii)とビスアミノフェノール(iv)との当量比は、得られる重合体の分子量を決定する重要な因子である。一般に、ポリマーの分子量と機械的性質の間に相関があることは良く知られており、分子量が大きいほど機械的性質が優れている。従って、実用的に優れた強度の重合体を得るためには、ある程度高分子量であることが必要である。本発明では、使用する酸無水物(i)とジアミン(ii)および/またはジアミン(iii)とビスアミノフェノール(iv)との当量比は特に制限されないが、酸無水物(i)に対する、ジアミン(ii)および/またはジアミン(iii)およびビスアミノフェノール(iv)の当量比が0.70~1.30の範囲にあることが好ましい。当該当量比が上記範囲内にあれば、機械的強度に優れ、製造安定性に優れる。
【0083】
なお、機械特性を改善する観点からは、酸無水物(i)に対するジアミン(ii)および/またはジアミン(iii)およびビスアミノフェノール(iv)の当量比が上記範囲を外れる場合であっても、樹脂を側鎖架橋させることで見かけの分子量を上げることもできる。
工程1(イミド化反応工程)は、有機溶媒中で、公知の方法で行うことができる。
【0084】
有機溶媒としては、γ-ブチルラクトン(GBL)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、シクロヘキサノン、1,4-ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒類が挙げられ、1種類又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。この時、上記非プロトン性極性溶媒と相溶性がある非極性溶媒を混合して使用しても良い。非極性溶媒としては、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類やシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられる。混合溶媒における非極性溶媒の割合については、溶媒の溶解度が低下し、反応して得られるポリアミド酸樹脂が析出しない範囲であれば、攪拌装置能力や溶液粘度等の樹脂性状に応じて任意に設定することができる。
【0085】
反応温度は、0℃以上100℃以下、好ましくは20℃以上80℃以下で30分~2時間程度反応させた後、100℃以上250℃以下、好ましくは120℃以上200℃以下で1~5時間程度反応させる。
【0086】
工程1により、構造単位(1-1a)および/または構造単位(1-1b)と、下記一般式(1-1d)で表される構造単位(1-1d)を有するポリヒドロキシイミドを得ることができる。なお、工程1においては、ポリヒドロキシイミドを公知の方法で精製することができるが、重合での脱水効率を向上させ、得られたポリヒドロキシイミドを精製することなく工程1および工程2を連続的に行うことができる。
【0087】
【0088】
一般式(1-1d)中、X2は一般式(1c)と同義であり、Yは一般式(1-1)と同義であり、好ましくは前記一般式(a1-1)、(a1-2)、(a1-3)または(a1-4)で表される基から選択される。
工程2は、工程1で得られたポリヒドロキシイミドの水酸基に(メタ)アクリレート基を備える化合物を反応させて、(メタ)アクリレート基を含む架橋基を導入する。
ネガ型感光性ポリマー(A)に導入された架橋基が、露光工程において後述する架橋剤(B)と反応し、露光部が有機溶媒に不溶となる。
【0089】
(メタ)アクリレート基を備える化合物としては、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、メタクリル酸グリシジル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0090】
ポリヒドロキシイミドに(メタ)アクリレート基を含む架橋基を導入するには、有機溶媒中に、ポリヒドロキシイミドと、(メタ)アクリレート基を備える化合物とを混合しながら、60℃~150℃で2~10時間程度反応させる。反応は、特に限定されないが常圧で行うことができる。
【0091】
(メタ)アクリレート基を備える化合物は、ポリヒドロキシイミドに対する架橋基の導入量に合わせて適宜選択することができるが、例えば、ポリヒドロキシイミドの水酸基モル量に対して0.8~3.0モル倍となるように添加することができ、2.0~3.0モル倍であることが好ましい。なお、ポリヒドロキシイミドが架橋基を導入することができる基を有している場合には、その基をモル量に加えることができる。
【0092】
有機溶媒としては、γ-ブチルラクトン(GBL)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、シクロヘキサノン、1,4-ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒類が挙げられ、1種類又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。この時、上記非プロトン性極性溶媒と相溶性がある非極性溶媒を混合して使用しても良い。非極性溶媒としては、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられる。
【0093】
反応に際しては、トリエチルアミン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンなどの塩基を加えることもできる。
工程2により、構造単位(1-1a)および/または構造単位(1-1b)と、構造単位(1-1c)とを有するネガ型感光性ポリマーを得ることができる。
【0094】
工程2においては、工程1で得られたポリヒドロキシイミドを含む反応溶液を、再沈殿等により精製し、得られたポリヒドロキシイミドを用いることもできるが、工程1の反応溶液をそのまま工程2に用いることができる。
【0095】
以上の本実施形態の製造方法により、本実施形態のネガ型感光性ポリマーを含む反応溶液を得ることができ、さらに必要に応じて有機溶媒等で希釈し、ポリマー溶液(塗布用ワニス)として使用することができる。有機溶剤としては、反応工程において例示したものを用いることができ、反応工程と同じ有機溶剤であってもよく、異なる有機溶剤であってもよい。
【0096】
また、この反応溶液を貧溶媒中に投入してネガ型感光性ポリマーを再沈殿析出させて未反応モノマーを除去し、乾燥固化させたもの再び有機溶剤に溶解し精製品として用いることもできる。特に不純物や異物が問題になる用途では、再び有機溶剤に溶解して濾過精製ワニスとすることが好ましい。
【0097】
[第2実施形態]
両末端の少なくとも一方に末端二重結合を有する基を備える、ネガ型感光性ポリマーの製造方法を説明する。
【0098】
当該ネガ型感光性ポリマーは、前記一般式(iv)で表されるビスアミノフェノール(iv)を用いない以外は、第1実施形態と同様な方法により行うことができる。
【0099】
なお、本実施形態では、使用する酸無水物(i)とジアミン(ii)および/またはジアミン(iii)の当量比は特に制限はしないが、酸無水物(i)に対するジアミン(ii)および/またはジアミン(iii)の当量比が0.70~1.30の範囲にあることが好ましい。0.70未満では、分子量が低くて脆くなるため機械的強度が弱くなる。また、1.30を越えると、分子量が低くて脆くなるため機械的強度が弱くなる。すなわち、当該当量比が上記範囲にあれば、機械的強度に優れ、製造安定性に優れる。
【0100】
[ネガ型感光性ポリマーの特性]
本実施形態のネガ型感光性ポリマーは、溶剤溶解性に優れており、特にγ-ブチルラクトン(GBL)に5質量%以上溶解することができる。
本実施形態のネガ型感光性ポリマーは、溶剤溶解性であることによりポリマー溶液(ワニス)として好適に用いることができる。
【0101】
本実施形態のネガ型感光性ポリマーは、耐加水分解性に優れており、以下の条件で測定された重量平均分子量の減少率が15%以下、好ましくは12%以下である。
(条件)
前記ネガ型感光性ポリマー100質量部に、γ-ブチロラクトン400質量部、4-メチルテトラヒドロピラン200質量部、および水50質量部を加え、100℃で6時間攪拌した場合において、下記式で算出する。
式:[(試験前の重量平均分子量-試験後の重量平均分子量)/試験前の重量平均分子量]×100
【0102】
本実施形態のネガ型感光性ポリマーは、重量平均分子量の減少率が上記範囲にあることにより、伸び等の機械的強度に優れたフィルム等の硬化物を得ることができる。
【0103】
本実施形態のネガ型感光性ポリマーの好ましい配合例を以下の表Aに示す。
【0104】
【0105】
・MED-J:4,4-ジアミノ-3,3-ジエチル-5,5-ジメチルジフェニルメタン
・TMDA:1-(4-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルフェニルインダン-6-アミンと1-(4-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルフェニルインダン-5-アミンの混合物
・BTFL:9,9-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)フルオレン
・BAPA:2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン
・TMPBP-TME:4-[4-(1,3-ジオキソイソベンゾフラン-5-イルカルボニロキシ)-2,3,5-トリメチルフェニル]-2,3,6-トリメチルフェニル 1,3-ジオキソイソベンゾフラン-5-カルボキシレート
・TMHQ:p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)
・AOI:2-イソシアナトエチルアクリレート
・MOI:2-イソシアナトエチルメタクリレート
【0106】
<ネガ型感光性樹脂組成物>
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、(A)前述のネガ型感光性ポリマーと、(B)多官能(メタ)アクリレートを含む架橋剤と、(C)光重合開始剤と、を含む。
【0107】
[架橋剤(B)]
架橋剤(B)は、多官能(メタ)アクリレートを含む。
前記多官能(メタ)アクリレートは、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、本発明の効果を発揮することができれば、従来公知の化合物を用いることができる。なお、本実施形態において、(メタ)アクリル基とは、アクリル基、またはメタクリル基を示す。
【0108】
具体的な多官能(メタ)アクリレートとしては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート等の三官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の四官能(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の六官能(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等の八官能(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート等の十官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのうち、1種または2種以上を使用してもよい。
【0109】
ネガ型感光性ポリマー(A)100質量部に対する、架橋剤(B)の量は、本発明の効果の観点から、1質量部以上30質量部以下、好ましくは2質量部以上20質量部以下、好ましくは3質量部以上15質量部以下とすることができる。当該範囲であることにより、伸びがより改善される。
【0110】
[光重合開始剤(C)]
光重合開始剤(C)としては、例えば光ラジカル発生剤を用いることができる。光ラジカル発生剤としては、紫外線等の活性光線の照射によりラジカルを発生して、上述したネガ型感光性ポリマー(A)の光重合開始剤として機能する光ラジカル発生剤を含有する。
【0111】
前記光ラジカル発生剤としては、アルキルフェノン型の開始剤、オキシムエステル型の開始剤、アシルフォスフィンオキサイド型の開始剤等が挙げられる。例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム))、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-(4-モルホリノ)フェニル)-2-(フェニルメチル)-1-ブタノン、Irgacure Oxe01(BASFジャパン株式会社)、Irgacure Oxe02(BASFジャパン株式会社)、Irgacure Oxe03(BASFジャパン株式会社)、Irgacure Oxe04(BASFジャパン株式会社)、N-1919T(株式会社ADEKA)、NCI-730(株式会社ADEKA)、NCI-831E(株式会社ADEKA)、NCI-930(株式会社ADEKA)等を挙げることができる。これらのうちいずれか1種以上を使用できる。
【0112】
これらの中でも、本発明の効果の観点、さらにより露光感度の優れた感光性樹脂組成物で構成される樹脂膜を作製する観点から、オキシムエステル型の開始剤が好ましい。
【0113】
重合開始剤(C)の添加量は、特に限定されないが、ネガ型感光性樹脂組成物の溶剤を除く不揮発成分100質量%の0.3~20質量%程度であるのが好ましく、0.5~15質量%程度であるのがより好ましく、1~10質量%程度であるのがさらに好ましい。重合開始剤(C)の添加量を前記範囲内に設定することにより、ネガ型感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層のパターニング性を高めるとともに、ネガ型感光性樹脂組成物の長期保管性を向上させることができる。
【0114】
(溶媒)
本実施形態に係るネガ型感光性樹脂組成物は、溶剤を含むことができる。これにより、各種の基板表面に均一な感光性樹脂膜を形成することができる。
【0115】
溶剤としては有機溶剤が好ましく用いられる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ラクトン系溶剤、カーボネート系溶剤などのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0116】
溶剤の例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、乳酸エチル、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)、ガンマブチロラクトン(GBL)、N-メチルピロリドン(NMP)、メチル-n-アミルケトン(MAK)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、シクロヘキサノン、又は、これらの混合物を挙げることができる。
溶剤の使用量は特に限定されない。例えば、不揮発成分の濃度が例えば10~70質量%、好ましくは15~60質量%となるような量で使用される。
【0117】
(界面活性剤)
本実施形態に係るネガ型感光性樹脂組成物は、界面活性剤をさらに含んでいてもよい。
【0118】
界面活性剤としては、限定されず、具体的にはポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレートなどのポリオキシエチレンジアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤;エフトップEF301、エフトップEF303、エフトップEF352(新秋田化成社製)、メガファックF171、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF177、メガファックF444、メガファックF470、メガファックF471、メガファックF475、メガファックF482、メガファックF477(DIC社製)、フロラードFC-430、フロラードFC-431、ノベックFC4430、ノベックFC4432(スリーエムジャパン社製)、サーフロンS-381、サーフロンS-382、サーフロンS-383、サーフロンS-393、サーフロンSC-101、サーフロンSC-102、サーフロンSC-103、サーフロンSC-104、サーフロンSC-105、サーフロンSC-106、(AGCセイミケミカル社製)などの名称で市販されているフッ素系界面活性剤;オルガノシロキサン共重合体KP341(信越化学工業社製);(メタ)アクリル酸系共重合体ポリフローNo.57、95(共栄社化学社製)などが挙げられる。
【0119】
これらのなかでも、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤を用いることが好ましい。パーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤としては、上記具体例のうち、メガファックF171、メガファックF173、メガファックF444、メガファックF470、メガファックF471、メガファックF475、メガファックF482、メガファックF477(DIC社製)、サーフロンS-381、サーフロンS-383、サーフロンS-393(AGCセイミケミカル社製)、ノベックFC4430及びノベックFC4432(スリーエムジャパン社製)から選択される1種または2種以上を用いることが好ましい。
【0120】
また、界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤(例えばポリエーテル変性ジメチルシロキサンなど)も好ましく用いることができる。シリコーン系界面活性剤として具体的には、東レダウコーニング社のSHシリーズ、SDシリーズおよびSTシリーズ、ビックケミー・ジャパン社のBYKシリーズ、信越化学工業株式会社のKPシリーズ、日油株式会社のディスフォーム(登録商標)シリーズ、東芝シリコーン社のTSFシリーズなどを挙げることができる。
【0121】
ネガ型感光性樹脂組成物中の界面活性剤の含有量の上限値は、ネガ型感光性樹脂組成物の全体(溶媒を含む)に対して1質量%(10000ppm)以下であることが好ましく、0.5質量%(5000ppm)以下であることであることがより好ましく、0.1質量%(1000ppm)以下であることが更に好ましい。
【0122】
また、ネガ型感光性樹脂組成物中の界面活性剤の含有量の下限値は、特には無いが、界面活性剤による効果を十分に得る観点からは、例えば、ネガ型感光性樹脂組成物の全体(溶媒を含む)に対して0.001質量%(10ppm)以上である。
界面活性剤の量を適当に調整することで、他の性能を維持しつつ、塗布性や塗膜の均一性などを向上させることができる。
【0123】
(酸化防止剤)
本実施形態に係るネガ型感光性樹脂組成物は、酸化防止剤をさらに含んでもよい。酸化防止剤としては、フェノ-ル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤およびチオエ-テル系酸化防止剤から選択される1種以上を使用できる。酸化防止剤は、ネガ型感光性樹脂組成物により形成される樹脂膜の酸化を抑制できる。
【0124】
フェノ-ル系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、3,9-ビス{2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル}2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6-ヘキサンジオール-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、4,4'-チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、2-オクチルチオ-4,6-ジ(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノキシ)-s-トリアジン、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチル-6-ブチルフェノール)、2,-2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス〔3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4'-ブチリデンビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、2,2'-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2'-エチリデンビス(4-s-ブチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2-t-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-t-ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリス〔(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2-t-ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-t-ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4-8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン-ビス〔β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコ-ルビス〔β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、1,1'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(6-(1-メチルシクロヘキシル)-4-メチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス(2-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルプロピオニロキシ)1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)サルファイド、4,4'-チオビス(6-t-ブチル-2-メチルフェノール)、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジメチル-6-(1-メチルシクロヘキシル、スチレネイティッドフェノール、2,4-ビス((オクチルチオ)メチル)-5-メチルフェノール、などが挙げられる。
【0125】
リン系酸化防止剤としては、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニルホスファイト)、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4'-ビフェニレンジホスホナイト、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート-ジエチルエステル、ビス-(2,6-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ミックスドモノandジ-ノニルフェニルホスファイト)、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メトキシカルボニルエチル-フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-オクタデシルオキシカルボニルエチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0126】
チオエ-テル系酸化防止剤としては、ジラウリル-3,3'-チオジプロピオネート、ビス(2-メチル-4-(3-n-ドデシル)チオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル)スルフィド、ジステアリル-3,3'-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリル)チオプロピオネートなどが挙げられる。
【0127】
(密着助剤)
本実施形態に係るネガ型感光性樹脂組成物は、密着助剤をさらに含んでもよい。
【0128】
密着助剤としては、例えば、アミノシラン、エポキシシラン、(メタ)アクリルシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン、ウレイドシラン、酸無水物官能型シラン、スルフィドシラン等のシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エポキシシラン(すなわち、1分子中に、エポキシ部位と、加水分解によりシラノール基を発生する基の両方を含む化合物)または酸無水物官能型シラン(すなわち、1分子中に、酸無水物基と、加水分解によりシラノール基を発生する基の両方を含む化合物)が好ましい。
【0129】
アミノシランとしては、例えば、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、またはN-フェニル-γ-アミノ-プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0130】
エポキシシランとしては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、またはβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシジルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0131】
アクリルシランとしては、例えば、γ-(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、またはγ-(メタクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン等が挙げられる。
メルカプトシランとしては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0132】
ビニルシランとしては、例えば、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、またはビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ウレイドシランとしては、例えば、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0133】
酸無水物官能型シランをとしては、例えば、信越化学工業社製の、商品名X-12-967C(化合物名:3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物)等が挙げられる。
【0134】
スルフィドシランとしては、例えば、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、またはビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド等が挙げられる。
密着助剤の添加量は、特に限定されないが、ネガ型感光性樹脂組成物の固形分全体の0.1~5質量%、好ましくは0.5~3質量%である。
【0135】
(ネガ型感光性樹脂組成物の調製)
本実施形態におけるネガ型感光性樹脂組成物を調製する方法は限定されず、ネガ型感光性樹脂組成物に含まれる成分に応じて、公知の方法を用いることができる。
例えば、上記各成分を、溶媒に混合して溶解することにより調製することができる。
【0136】
(硬化膜)
本実施形態に係るネガ型感光性樹脂組成物は、該ネガ型感光性樹脂組成物をAl、Cuといった金属を備える面に対して塗工し、次いで、プリベークすることで乾燥させ樹脂膜を形成し、次いで、露光及び現像することで所望の形状に樹脂膜をパターニングし、次いで、樹脂膜を熱処理することで硬化させ硬化膜を形成することで使用される。
【0137】
なお、上記永久膜を作製する場合、プリベークの条件としては、例えば、温度90℃以上130℃以下で、30秒間以上1時間以下の熱処理とすることができる。また、熱処理の条件としては、例えば、温度150℃以上250℃以下で、30分間以上10時間以下の熱処理とすることができ、好ましくは170℃程度で1~6時間熱処理することができる。
【0138】
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物から得られるフィルムは、テンシロン試験機による引張試験により測定された伸び率が、最大値15~200%、好ましくは20~150%であり、平均値10~150%、好ましくは15~120%である。
【0139】
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物から得られるフィルムは、は、テンシロン試験機による引張試験により測定された引張強度が20MPa以上であるのが好ましく、30~300MPaであるのがより好ましい。
【0140】
また、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、耐加水分解性に優れたネガ型感光性ポリマー(A)を含むことから、温度130℃、相対湿度85%RHの条件で、96時間、HAST試験(不飽和加圧蒸気試験)を行った後においても、下記式で表される伸び率(最大値、平均値)の低下率が20%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは12%以下である。
[(試験前の伸び率-試験後の伸び率)/試験前の伸び率)]×100
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は低温硬化性に優れる。
【0141】
例えば、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物を170℃で4時間硬化させて得られた硬化物は、ガラス転移温度(Tg)が200℃以上、好ましくは210℃以上、さらに好ましくは220℃以上とすることができる。
【0142】
さらに、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物を170℃で4時間硬化させて得られた硬化物は、30℃における貯蔵弾性率E’が2.0GPa以上、好ましくは2.5GPa以上、さらに好ましくは3.0GPa以上とすることができる。さらに、200℃における貯蔵弾性率E’が0.5GPa以上、好ましくは0.7GPa以上、さらに好ましくは0.8GPa以上とすることができる。
【0143】
本実施形態に係るネガ型感光性樹脂組成物の粘度は、所望の樹脂膜の厚みに応じて適宜設定することができる。ネガ型感光性樹脂組成物の粘度の調整は、溶媒を添加することでできる。
【0144】
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物から得られるフィルム等の硬化物は耐薬品性に優れる。
具体的には、フィルムをジメチルスルホキシド99質量%未満と水酸化テトラメチルアンモニウム2質量%未満との溶液に40℃で10分間浸漬し、その後イソプロピルアルコールで十分洗浄後風乾し、処理後の膜厚を測定する。処理後の膜厚と処理前の膜厚の膜厚変化率を下記式より算出し、フィルムの減少率として評価する。
式:フィルムの減少率(%){(浸漬後の膜厚-浸漬前の膜厚)/浸漬前の膜厚×100(%)}
【0145】
膜厚変化率は、40%以下であるのが好ましく、30%以下であるのがより好ましい。これにより、硬化膜がジメチルスルホキシドに浸される工程に供された場合でも、膜厚がほとんど減少しない。このため、かかる工程に供された後でも機能を維持し得る硬化膜が得られる。
【0146】
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は硬化収縮が抑制されており、シリコンウェハ表面に乾燥後の膜厚が10μmになるようにスピンコートし、120℃3分間のプリベーク後、高圧水銀灯にて600mJ/cm2の露光を行い、その後、窒素雰囲気下で170℃120分間熱処理を行ってフィルムを調製した場合において、前記プリベーク後のフィルム膜厚を膜厚A、前記熱処理後のフィルム膜厚を膜厚Bとし、下記式から算出される硬化収縮率を好ましくは12%以下、より好ましくは10%以下とすることができる。
式:硬化収縮率[%]={(膜厚A-膜厚B)/膜厚A}x100
【0147】
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は耐熱性が高く、得られるフィルムは、熱重量示差熱同時測定により測定した重量減少温度(Td5)が、200℃以上、好ましくは300℃以上とすることができる。
【0148】
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物からなるフィルムは、硬化収縮が抑制されており、線熱膨張率(CTE)は200ppm/℃以下、好ましくは100ppm/℃以下とすることができる。
【0149】
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物からなるフィルムは、機械的強度に優れており、25℃での弾性率は、1.0~5.0GPa、好ましくは1.5~3.0GPaとすることができる。
【0150】
(用途)
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、永久膜、レジストなどの半導体装置用の樹脂膜を形成するために用いられる。これらの中でも、プリベーク後のネガ型感光性樹脂組成物及びAlパッドの密着性向上と、現像時のネガ型感光性樹脂組成物の残渣の発生の抑制とをバランスよく発現する観点、熱処理後のネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜と、金属との密着性を向上する観点、加えて、熱処理後のネガ型感光性樹脂組成物の耐薬品性を向上する観点から、永久膜を用いる用途に用いられることが好ましい。
【0151】
なお、本実施形態において、樹脂膜は、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜を含む。すなわち、本実施形態にかかる樹脂膜とは、ネガ型感光性樹脂組成物を硬化させてなるものである。
【0152】
上記永久膜は、ネガ型感光性樹脂組成物に対してプリベーク、露光及び現像を行い、所望の形状にパターニングした後、熱処理することによって硬化させることにより得られた樹脂膜で構成される。永久膜は、半導体装置の保護膜、層間膜、ダム材などに用いることができる。
【0153】
上記レジストは、例えば、ネガ型感光性樹脂組成物をスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の方法で、レジストにとってマスクされる対象に塗工し、ネガ型感光性樹脂組成物から溶媒を除去することにより得られた樹脂膜で構成される。
【0154】
本実施形態に係る半導体装置の一例を
図1に示す。
本実施形態に係る半導体装置100は、上記樹脂膜を備える半導体装置とすることができる。具体的には、半導体装置100のうち、パッシベーション膜32、絶縁層42および絶縁層44からなる群の1つ以上を、本実施形態の硬化物を含む樹脂膜とすることができる。ここで、樹脂膜は、上述した永久膜であることが好ましい。
【0155】
半導体装置100は、たとえば半導体チップである。この場合、たとえば半導体装置100を、バンプ52を介して配線基板上に搭載することにより半導体パッケージが得られる。
【0156】
半導体装置100は、トランジスタ等の半導体素子が設けられた半導体基板と、半導体基板上に設けられた多層配線層(図示せず。)と、を備えている。多層配線層のうち最上層には、層間絶縁膜30と、層間絶縁膜30上に設けられた最上層配線34が設けられている。最上層配線34は、たとえば、アルミニウムAlにより構成される。また、層間絶縁膜30上および最上層配線34上には、パッシベーション膜32が設けられている。パッシベーション膜32の一部には、最上層配線34が露出する開口が設けられている。
【0157】
パッシベーション膜32上には、再配線層40が設けられている。再配線層40は、パッシベーション膜32上に設けられた絶縁層42と、絶縁層42上に設けられた再配線46と、絶縁層42上および再配線46上に設けられた絶縁層44と、を有する。絶縁層42には、最上層配線34に接続する開口が形成されている。再配線46は、絶縁層42上および絶縁層42に設けられた開口内に形成され、最上層配線34に接続されている。絶縁層44には、再配線46に接続する開口が設けられている。
【0158】
絶縁層44に設けられた開口内には、たとえばUBM(Under Bump Metallurgy)層50を介してバンプ52が形成される。半導体装置100は、たとえばバンプ52を介して配線基板等に接続される。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例】
【0159】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ポリマーの合成においては以下の化合物を用いた。
【0160】
下記式で示される、4,4-ジアミノ-3,3-ジエチル-5,5-ジメチルジフェニルメタン(以下、MED-Jとも示す)
【化24】
【0161】
下記式で示される、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、BAPAとも示す)
【化25】
【0162】
下記式で示される、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以下、BAFAとも示す)
【化26】
【0163】
下記式で示される、4,4'-ジアミノ-2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(以下、TFMBとも示す)
【化27】
【0164】
下記式で示される、4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス[(4-アミノフェノキシ)ベンゼン](以下、HFBAPPとも示す)
【化28】
【0165】
下記式で示される、1-(4-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルフェニルインダン-6-アミンと1-(4-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルフェニルインダン-5-アミンの混合物(以下、TMDAとも示す)
【化29】
【0166】
下記式で示される、9,9-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)フルオレン(以下、BTFLとも示す)
【化30】
【0167】
下記式で示される、4-[4-(1,3-ジオキソイソベンゾフラン-5-イルカルボニロキシ)-2,3,5-トリメチルフェニル]-2,3,6-トリメチルフェニル 1,3-ジオキソイソベンゾフラン-5-カルボキシレート(以下、TMPBP-TMEとも示す)
【化31】
【0168】
下記式で示される、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)(以下、TMHQとも示す)
【化32】
【0169】
[実施例1]
はじめに、撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、MED-J 9.67g(34.2mmol)と、BAPA 2.95g(11.4mmol)と、TMPBP-TME 33.62g(54.3mmol)とを入れた。その後、反応容器に、さらにGBL138.71gを加えた。
窒素を10分間通気した後、撹拌しつつ温度60℃まで上げ、1.5時間反応させた。その後、さらに180℃で3時間反応させることで、ビスアミノフェノールと酸無水物を重合させ、重合溶液を作製した。
ポリマーをGPC測定したところ、重量平均分子量Mwは21,500、多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は2.02であった。
次いで、得られたポリイミド溶液全量(水酸基換算22.8mmol)に、2-イソシアナトエチルアクリレート(以下AOIとも示す、昭和電工社製)6.44g(45.6mmol)と、γ-ブチルラクトン(GBL)43.02gを入れた。その後、撹拌しつつ温度120℃まで上げ、6時間反応させた。
得られた反応溶液を、テトラヒドロフランで希釈して希釈液を作製し、次いで、希釈液をメタノールに滴下することで、白色固体を析出させた。得られた白色固体を回収し、温度40℃で真空乾燥することにより、ポリマー43.73gを得た。
ポリマーをGPC測定したところ、重量平均分子量Mwは22,800、多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は2.15であった。
また、
1H-NMR測定を行ったところ、芳香族領域(6.8ppm~8.8ppm)にプロトン数に対応した面積比でピークを確認した。
また、芳香族領域(6.8ppm~8.8ppm)と、アルケン領域(5.8ppm~6.3ppm)の面積比から、架橋基の導入率は100%であった。
架橋基が導入されたポリマーは、その一部に下記式で表される繰り返し単位が含まれていた。
【化33】
【0170】
[実施例2]
はじめに、撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、MED-J 12.89g(45.7mmol)と、TMPBP-TME 33.62g(54.3mmol)とを入れた。その後、反応容器に、さらにGBL 125.58gを加えた。
窒素を10分間通気した後、撹拌しつつ温度60℃まで上げ、1.5時間反応させた。その後、さらに180℃で3時間反応させることで、ビスアミノフェノールと酸無水物を重合させ、重合溶液を作製した。
ポリマーをGPC測定したところ、重量平均分子量Mwは23,600、多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は2.05であった。
次いで、得られたポリイミド溶液全量(末端酸無換算17.4mmol)に、2-イソシアナトエチルアクリレート(以下AOIとも示す、昭和電工社製)4.91g(34.8mmol)と、γ-ブチルラクトン(GBL)44.06gを入れた。その後、撹拌しつつ温度120℃まで上げ、6時間反応させた。
得られた反応溶液を、テトラヒドロフランで希釈して希釈液を作製し、次いで、希釈液をメタノールに滴下することで、白色固体を析出させた。得られた白色固体を回収し、温度40℃で真空乾燥することにより、ポリマー41.73gを得た。
ポリマーをGPC測定したところ、重量平均分子量Mwは23,100、多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は2.09であった。
また、
1H-NMR測定を行ったところ、芳香族領域(6.9ppm~8.9ppm)にプロトン数に対応した面積比でピークを確認した。
また、芳香族領域(6.9ppm~8.9ppm)と、アルケン領域(5.8ppm~6.5ppm)の面積比と、重合度からの計算により、架橋基の末端への導入率は100%であった。
得られたポリマーは、その一部に下記式で表される繰り返し単位が含まれ、末端に架橋基が導入されていた。
【化34】
【0171】
[実施例3~6、比較例1~5]
実施例3~6、比較例1~5について、表1中に記載の条件以外は、実施例1と同様の手法で合成を行った。得られたMw,Mw/Mn,架橋基導入率については表中に記載した。
比較例1、2については、重合反応中にゲル化し反応継続が困難であったため、GBLへの溶剤溶解性を×とした。
【0172】
[イミド環の2つのカルボニル炭素のプラスの電荷(δ+)の平均値]
実施例1で得られたネガ型感光性ポリマーのイミド環の2つのカルボニル炭素のプラスの電荷(δ+)の平均値は以下のように算出した。
実施例1のネガ型感光性ポリマーは、下記化学式(A)の構造単位(A)と、下記化学式(B)の構造単位(B)と、を含む。
【化35】
この場合、下記化学式(A’)で表される化合物(A’)を、ソフトHSPiP(ver5.3)を用いて電荷平衡法にて測定し、前記化合物(A’)に含まれるイミド環の2つのカルボニル炭素(*1、*2)のδ+を平均して平均値(1)を得た。下記化学式(B’)で表される化合物(B’)を、同様に測定し、前記化合物に含まれるイミド環の2つのカルボニル炭素(*1、*2)のδ+を平均して平均値(2)を得た。そして、構造単位(A)のモル数34.2mmolと構造単位(B)のモル数11.4mmolとの合計を100とした場合に、以下の式でδ+を算出した。
式:[δ+の平均値(1)×モル分率(1)+δ+の平均値(2)×モル分率(2)]/100=[0.087×75+0.098×25]/100=0.090
他の実施例、比較例においても同様に算出した。
【化36】
【0173】
[有機溶媒に対する溶解性]
実施例および比較例で得られたネガ型感光性ポリマーのγ-ブチルラクトン(GBL)またはOK73(プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)との混合溶液(混合比7:3)、東京応用化学工業社製)に対する溶解性を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
(溶解性の評価基準)
○:ポリマーが5質量%以上溶解
△:ポリマーが1~5質量%溶解
×:ポリマー溶解が1質量%未満
【0174】
[耐加水分解性]
以下の条件で、実施例および比較例で得られたネガ型感光性ポリマーの重量平均分子量の減少率を測定した。結果を表1に示す。
【0175】
(条件(トリエチルアミン無添加))
ネガ型感光性ポリマー100質量部に、γ-ブチロラクトン400質量部、4-メチルテトラヒドロピラン200質量部、および水50質量部を加え、100℃で6時間攪拌した場合において、下記式で算出した。
式:[(試験前の重量平均分子量-試験後の重量平均分子量)/試験前の重量平均分子量]×100
【0176】
(条件(トリエチルアミン添加))
ネガ型感光性ポリマー100質量部に、トリエチルアミン10質量部、γ-ブチロラクトン400質量部、4-メチルテトラヒドロピラン200質量部、および水50質量部を加え、100℃で6時間攪拌した場合において、下記式で算出した。
式:[(試験前の重量平均分子量-試験後の重量平均分子量)/試験前の重量平均分子量]×100
【0177】
[伸び率]
比較例で得られたポリマー溶液(ポリマー100質量部)、熱ラジカル発生剤パーカドックスBCを5質量部、密着助剤KBM-503Pを2質量部、および界面活性剤FC4432を0.1質量部含む組成物をシリコンウェハ表面にスピンコートし、110℃3分間のプリベーク後、170℃240分間、窒素下での熱処理により、フィルムを調製した。なお、各成分の詳細については後述した。
得られたフィルムから切り出した試験片(6.5mm×60mm×10μm厚)に対して引張試験(延伸速度:5mm/分)を23℃雰囲気中で実施した。引張試験は、オリエンテック社製引張試験機(テンシロンRTC-1210A)を用いて行った。試験片10本を測定し、破断した距離と初期距離から引張伸び率を算出し、伸び率の最大値を求めた。
さらに、前記フィルムから切り出した前記試験片を、温度130℃、相対湿度85%RHの条件で、96時間、HAST(不飽和加圧蒸気試験)を行った後、前記と同様にして伸び率の最大値を求めた。
【0178】
【0179】
表1に示すように、イミド環の2つのカルボニル炭素のプラスの電荷(δ+)の平均値が0.099以下である実施例で得られた本発明のネガ型感光性ポリマーは有機溶剤への溶解性に優れるとともに、加水分解が抑制されていることから伸び率の低下が少なく機械的強度の低下が抑制されていると推察された。
【0180】
ネガ型感光性樹脂組成物の調製においては以下の化合物を用いた。
(架橋剤)
・アクリレート化合物1:ジペンタエリスリトールへキサアクリレート(新中村化学工業社製、NKエステル A-DPH)
【0181】
(重合開始剤)
・光ラジカル発生剤:2-(ジメチルアミノ)-1-(4-(4-モルホリノ)フェニル)-2-(フェニルメチル)-1-ブタノン(Irgacure Oxe01、BASFジャパン社製)
・熱ラジカル発生剤:ジクミルパーオキサイド(パーカドックスBC、過酸化物、化薬アクゾ社製)
【0182】
(密着助剤)
・密着助剤1:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503P、信越化学社製)
【0183】
(界面活性剤)
・界面活性剤1:フルオロカーボン鎖を有する界面活性剤(FC-4432,住友スリーエム社製)
【0184】
(溶剤)
・溶剤1:γ-ブチルラクトン(GBL)
【0185】
[実施例7]
(ネガ型感光性樹脂組成物の調製)
実施例3のポリマー(ポリマー100質量部)と、表2に示す成分を22wt%GBL溶液となるように事前溶解したものを混合し、感光性樹脂組成物を調製した。
得られたネガ型感光性樹脂組成物を、シリコンウェハ表面に乾燥後の膜厚が10μmになるようにスピンコートし、120℃3分間のプリベーク後、高圧水銀灯にて600mJ/cm2の露光を行い、その後、窒素雰囲気下で170℃120分間熱処理を行ってフィルムを調製した。
得られたフィルムについて、下記方法にて、ガラス転移温度(Tg)および伸びを測定し、パターニング特性を評価した。結果を表2に示す。
【0186】
[ガラス転移温度(Tg)]
実施例7で得られたフィルムから8mm×40mmの試験片を切り出し、その試験片に対し、動的粘弾性測定(DMA装置、TAインスツルメント社製、Q800)を用いて、昇温速度5℃/min、周波数1Hzで動的粘弾性測定を行い、損失正接tanδが最大値を示す温度をガラス転移温度として測定した。
【0187】
[伸び率]
実施例7で得られたフィルムから切り出した試験片(6.5mm×60mm×10μm厚)に対して引張試験(延伸速度:5mm/分)を23℃雰囲気中で実施した。引張試験は、オリエンテック社製引張試験機(テンシロンRTC-1210A)を用いて行った。試験片5本を測定し、破断点の応力を平均化したものを強度とした。破断した距離と初期距離から引張伸び率を算出し、伸び率の平均値と最大値を求めた。
さらに、実施例7で得られたフィルムから切り出した前記試験片を、温度130℃、相対湿度85%RHの条件で、96時間、HAST(不飽和加圧蒸気試験)を行った後、前記と同様にして伸び率の平均値と最大値を求めた。
【0188】
[パターニング特性に関する評価]
実施例7の感光性樹脂組成物が、露光・現像により十分にパターニング可能であることを、以下のようにして確認した。
実施例7の感光性樹脂組成物を、8インチシリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布した。塗布後、大気下でホットプレートにて110℃で3分間プリベークし、膜厚約5.0μmの塗膜を得た。
この塗膜に、幅20μmのビアパターンが描かれているマスクを通して、i線を照射した。照射には、i線ステッパー(ニコン社製・NSR-4425i)を用いた。
露光後、現像液としてシクロペンタノンを用い、40秒間スプレー現像し、さらに現像液としてPGMEAを用い、10秒間スプレー現像を行うことによって、未露光部を溶解除去して、ビアパターンを得た。
得られたビアパターンの断面を、卓上SEMを用いて観察した。ビアパターンの底面と開口部の中間の高さにおける幅をビア幅とし、以下基準で評価した。
パターニング性良好:20μmのビアパターンが開口
パターニング性不良:20μmのビアパターンが開口しない
実施例7の感光性樹脂組成物から得られた塗膜はパターニング性が良好であった。
【0189】
【0190】
表2に記載のように、イミド環の2つのカルボニル炭素のプラスの電荷(δ+)の平均値が0.099以下であるネガ型感光性ポリマーを含むネガ型感光性樹脂組成物から得られたフィルムは、伸びに優れており、さらに耐加水分解性に優れたネガ型感光性ポリマーを含むことからHAST試験後においても機械的強度に優れることが明らかとなった。また、パターニング性も良好であり、ネガ型感光性樹脂組成物として好適に用いることが確認された。
【0191】
この出願は、2021年6月25日に出願された日本出願特願2021-105682号および2022年2月10日に出願された日本出願特願2022-019323号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0192】
100 半導体装置
30 層間絶縁膜
32 パッシベーション膜
34 最上層配線
40 再配線層
42 絶縁層
44 絶縁層
46 再配線
50 UBM層
52 バンプ