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  • 特許-脱酸素剤用包装材及び脱酸素剤包装体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】脱酸素剤用包装材及び脱酸素剤包装体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20231219BHJP
   B32B 3/24 20060101ALI20231219BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20231219BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B3/24 Z
B32B27/18 G
B65D65/40 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023545990
(86)(22)【出願日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2023010508
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2022059645
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 理紗
(72)【発明者】
【氏名】増山 朋央
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-233232(JP,A)
【文献】特開昭61-202843(JP,A)
【文献】特開2007-126212(JP,A)
【文献】特開2012-086855(JP,A)
【文献】特開2010-189025(JP,A)
【文献】特開2006-017650(JP,A)
【文献】特開2005-289409(JP,A)
【文献】特開2002-284217(JP,A)
【文献】特開平05-208473(JP,A)
【文献】特開2005-035216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-79/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含む内層と、耐油紙を含む中間層と、熱可塑性樹脂を含む外層と、をこの順に含み、
中間層が、耐油紙のみで構成されるか、又は、耐油紙と、サイズ剤、耐水剤、撥水剤、紙力増強剤及び染料からなる群より選ばれる1つ以上から構成され、
前記耐油紙がフッ素を含有せず、
前記耐油紙のJIS P8117:2009に準拠した透気抵抗度が100秒以上10万秒以下であり、
前記内層及び前記中間層を貫通する内部通気孔と、前記外層を貫通する外部通気孔とを有し、
前記内部通気孔と前記外部通気孔とが、連通していない、脱酸素剤用包装材。
【請求項2】
前記中間層と前記外層とが、部分溶着されてなる、請求項1に記載の脱酸素剤用包装材。
【請求項3】
前記耐油紙のJIS P8117:2009に準拠した透気抵抗度が100~5000秒である、請求項1に記載の脱酸素剤用包装材。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の脱酸素剤用包装材と、
前記脱酸素剤用包装材に包まれた脱酸素剤と、を含む、脱酸素剤包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱酸素剤用包装材及びこれを脱酸素剤包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素の影響を受けて変質或いは劣化し易い、食品、飲料、医薬品、医療品、化粧品、金属製品及び電子製品等の各種物品について、酸化劣化を防止して長期に保存可能とする目的で、これらを収納した密封容器内の酸素除去を行う脱酸素剤が使用されている。
【0003】
脱酸素剤は、その使用目的や使用態様に応じて種々の使い方がなされており、例えば、粉状や錠剤である脱酸素剤を包装材で包装して小袋状にした脱酸素剤包装体とする方法等が挙げられる。この脱酸素剤包装体を食品等が保存されている密封容器内に入れておけば、脱酸素剤包装体の内部にある脱酸素剤が密封容器内の酸素を除去するので、食品等の酸化劣化を防止できる。
【0004】
このような脱酸素剤の包装材としては、樹脂、紙或いは不織布等をシート状にしたものや、これらを積層したもの等が用いられている。樹脂層や紙や不織布の層を積層した包装材としては、予め通気孔を設けた樹脂層を、紙や不織布の層と積層させた包装材等が用いられている。通気孔が予め設けられた樹脂層を用いることで、外部との通気性を確保し、脱酸素剤の脱酸素性能を有効に発揮させようとするものである。
【0005】
また、脱酸素剤は様々な食品に適用されており、油を多く含む食品に脱酸素剤包装体を使用した際、包装材の耐油性がない、又は不十分である場合には、包装材に油が染み込んでしまい、通気性の低下により脱酸素性能が低下する問題や、染み込んだ油により脱酸素剤包装体の外観が損なわれる問題がある。このような問題を解決するために、従来の包装材には、フッ素系の耐油剤を含ませた耐油紙と熱可塑性樹脂をラミネートした包装材料が多く使用されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-35689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで近年、欧州(EU)や米国(アメリカ)では、フッ素系化合物の使用が規制されつつあり、今後、このような規制が世界基準になることが考えられる。そのため、脱酸素剤用包装材においても、脱フッ素化が求められるところであるが、フッ素を含有しない耐油紙は、脱酸素性能に問題があることが本発明者等の研究で分かった。
【0008】
そこで本発明は、フッ素を含む耐油紙を用いることなく、優れた耐油性及び脱酸素性能を発揮し得る脱酸素剤用包装材、及びこれを用いた脱酸素剤包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1] 熱可塑性樹脂を含む内層と、耐油紙を含む中間層と、熱可塑性樹脂を含む外層と、をこの順に含み、
前記耐油紙がフッ素を含有せず、
前記内層及び前記中間層を貫通する内部通気孔と、前記外層を貫通する外部通気孔とを有する、脱酸素剤用包装材。
[2] 前記中間層と前記外層とが、部分溶着されてなる、上記[1]に記載の脱酸素剤用包装材。
[3] 前記内部通気孔と前記外部通気孔とが、連通していない、上記[1]又は[2]に記載の脱酸素剤用包装材。
[4] 前記耐油紙のJIS P8117:2009に準拠した透気抵抗度が100秒以上である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の脱酸素剤用包装材。
[5] 上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の脱酸素剤用包装材と、
前記脱酸素剤用包装材に包まれた脱酸素剤と、を含む、脱酸素剤包装体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フッ素を含む耐油紙を用いることなく、優れた耐油性及び脱酸素性能を発揮し得る脱酸素剤用包装材、及びこれを用いた脱酸素剤包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態に係る脱酸素剤用包装材の一態様を示す模式断面図である。
図2図2は、本実施形態に係る脱酸素剤用包装材の別の一態様を示す模式断面図である。
図3図3は、従来の脱酸素剤用包装材の一態様を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に従う脱酸素剤用包装材及び脱酸素剤包装体の実施形態について、以下で詳細に説明する。
なお、本明細書において、数値の記載に関する「A~B」という用語は、「A以上B以下」(A<Bの場合)又は「A以下B以上」(A>Bの場合)を意味する。また、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
更に、本明細書おいて、特に断りがない限り「(メタ)アクリレート」や「(メタ)アクリル」や「(メタ)アクリル酸」等は、アクリレート及び/又はメタクリレート、アクリル及び/メタクリル、アクリル酸及び/又はメタクリル酸等をそれぞれ意味する。
【0013】
[脱酸素剤用包装材]
本発明の脱酸素剤用包装材は、熱可塑性樹脂を含む内層と、耐油紙を含む中間層と、熱可塑性樹脂を含む外層と、をこの順に含み、前記耐油紙がフッ素を含有せず、前記内層及び前記中間層を貫通する内部通気孔と、前記外層を貫通する外部通気孔とを有する。
【0014】
図1及び図2は、それぞれ本発明の脱酸素剤用包装材の一態様を示す模式断面図である。脱酸素剤用包装材(以下、単に「包装材」と略称する場合がある。)1は、内層10と、中間層12と、外層14とをこの順で含み、内層10及び中間層12を貫通する内部通気孔H1と、外層14を貫通する外部通気孔H2とを有する。ここで、中間層12を構成する耐油紙はフッ素を含有しない。
【0015】
本発明の包装材1は、上記構成であることにより、フッ素を含む耐油紙を用いることなく、優れた耐油性及び脱酸素性能を発揮することができる。
本発明の包装材が上記効果を奏する理由については定かではないが、一つには以下の理由が考えられる。
従来、中間層には、含フッ素耐油剤により耐油処理が施された、フッ素を含有する耐油紙(以下、単に「フッ素系耐油紙」ということがある。)が広く用いられてきた。
しかし、近年のフッ素系化合物の使用規制の流れを受け、フッ素を含有しない、特に含フッ素耐油剤を使用しない耐油紙(以下、単に「非フッ素系耐油紙」ということがある。)への置き換えが検討されるようになった。
【0016】
本発明者等が、非フッ素系耐油紙への置き換えを検討したところ、図3に示すような、従来の包装材1’において、中間層12’に非フッ素系耐油紙を用いた場合には、フッ素系耐油紙を用いた場合に比べて、脱酸素性能が著しく低下することが分かった。その原因としては以下のように推察する。
【0017】
通常、包装材の脱酸素性能は、その通気性に依存すると考えられる。
図3に示されるように、従来の包装材1’では、内部通気孔H1’は内層10を貫通しているが、耐油紙で構成される中間層12’を貫通していなかった。このような構成においては、包装材1’の通気性は、主に中間層12’を構成する耐油紙の通気性に依存すると考えられる。本発明者等が、更に検討したところ、非フッ素系耐油紙はフッ素系耐油紙に比べて通気性が劣ることが分かった。
【0018】
そこで、本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、図1及び図2に示すように、中間層12に非フッ素系耐油紙を用いた場合には、内層10及び中間層12を貫通する内部通気孔H1を形成することにより十分な通気性を確保でき、その結果優れた脱酸素性能を発揮し得ることを見出した。
【0019】
以下、本実施形態に係る包装材の各層及びその成分等について、詳細を説明する。
【0020】
(内層)
内層10は、包装材1において内面側に位置する層であり、熱可塑性樹脂を含む層である。熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、使用する用途や所望する物性に応じて適宜好適な種類を選択することができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂;エチレン-(メタ)アクリレート共重合樹脂等が挙げられる。これらの中でも、接着性の観点から、オレフィン系樹脂が好ましく、ポリエチレン及びポリプロピレンがより好ましく、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及び無延伸ポリプロピレンが更に好ましい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
熱可塑性樹脂の融点の下限値は、特に限定されないが、好ましくは80℃以上、より好ましくは95℃以上、更に好ましくは110℃以上である。また、熱可塑性樹脂の融点の上限値は、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは150℃以下である。上記下限値以上の融点を有する熱可塑性樹脂を用いることで、包装材を封止する際に、ヒートシールを施しても熱可塑性樹脂が溶け出してしまうといった不具合が起こらず、その結果、粉漏れ等が起こらず脱酸素剤をしっかりと封入することができる。また、上記上限値以下の融点を有する熱可塑性樹脂を用いることで、ヒートシール温度をそれほど高い温度に設定せずとも短時間で十分に密封することができる。より具体的には、熱可塑性樹脂の融点は、好ましくは80~200℃、より好ましくは95~180℃、更に好ましくは110~150℃である。
【0022】
内層10は、熱可塑性樹脂以外の他の成分を更に含んでいてもよい。内層10で使用可能な他の成分としては、安定剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、充填剤、着色剤、可塑剤及び造核剤等の添加剤が挙げられる。
【0023】
内層10の厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.5~80μm、より好ましくは1~60μm、更に好ましくは2~50μm、より更に好ましくは4~40μm、より更に好ましくは15~40μmである。内層10の厚さを上記範囲にすることで、短時間のヒートシールで十分な接着強度を得ることができる。
【0024】
(中間層)
中間層12は、耐油紙を含む層であり、包装材に一定の耐久性や、耐油性、通気性等を付与すると同時に、脱酸素剤包装体内に収容される脱酸素剤の漏れを防止するものである。
【0025】
脱酸素剤包装体は、食品、飲料、医薬品、医療品、化粧品、金属製品及び電子製品等といった幅広いものに使用されるため、保存対象物や保存環境によっては水分や油分等が多いことがある。そのような場合、水分や油分が包装材から脱酸素剤に侵入してしまうことで、脱酸素剤を劣化させて脱酸素性能を低下させてしまったり、脱酸素剤を汚染してしまったりすることがあるが、耐油紙を含む中間層12を設けることで、水分や油分等の侵入を抑制でき、脱酸素剤の劣化や汚染等を防止できる。
【0026】
本明細書において、耐油紙とは、紙又不織布に、耐油性を付与したものである。耐油性を付与する方法は特に限定されないが、例えば、(1)紙又は不織布の目を詰めることでそれ自体に耐油性を持たせる方法、(2)紙又は不織布の表面に耐油性を有する耐油剤や油を固化させる薬剤等を塗布することで耐油性の皮膜を形成する方法、(3)紙又は不織布に耐油性を有する耐油剤を含ませる(含浸又は内添する)方法等が挙げられる。
【0027】
耐油紙に用いられる紙の材質は特に限定されないが、例えば、撥水紙、クラフト紙、上質紙(洋紙)、和紙等が挙げられる。耐油紙に用いられる不織布の材質は特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル等の熱可塑性樹脂が挙げられる。より具体的には、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)系不織布、ポリエチレンテレフタレート系不織布、複合系不織布(ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレンの鞘芯構造等)、TYVEK(登録商標、旭・デュポン フラッシュスパン プロダクツ株式会社製)等が挙げられる。
【0028】
また、本発明で用いる耐油紙は、フッ素を含有しない。
本明細書において、「フッ素を含有しない」とは、意図的に配合され、含まれる成分としての、フッ素を含まないことを意味する。したがって、意図せずに含まれるフッ素を含有する場合は、この限りではない。意図せずに含まれるフッ素としては、例えば、製造工程や、洗浄工程等で、わずかに混入する不可避的不純物としてのフッ素が挙げられる。本発明で用いられるフッ素を含有しない耐油紙において、意図せずに含まれるフッ素の含有量は、例えば100ppm未満である。
フッ素を含有しない耐油紙の具体例としては、含フッ素耐油剤を使用せずに、紙又不織布に耐油性を付与した耐油紙(非フッ素系耐油紙)である。このような非フッ素系耐油紙としては、フッ素を含有せず、一定の耐油性を有する耐油紙であれば特に限定されず、公知の物を使用できるが、例えば(1)紙又は不織布の目を詰めることでそれ自体に耐油性を持たせたものや、(2)紙又は不織布の表面に、耐油性を有する非フッ素系耐油剤や油を固化させる非フッ素系薬剤等を塗布することにより、耐油性の皮膜を形成したもの、(3)紙又は不織布に、耐油性を有する非フッ素系耐油剤を含ませた(含浸又は内添した)もの等が挙げられる。中でも、内部通気孔の内部(孔内側面部)からの油染みを防止する観点から、上記(3)の耐油紙が好ましい。なお、非フッ素系耐油剤としては、例えばデンプン系耐油剤、アクリル系耐油剤、ポリエステル系耐油剤等が挙げられる。
【0029】
耐油紙の坪量は、特に限定されないが、好ましくは5~200g/m、より好ましくは15~150g/m、更に好ましくは25~90g/mである。耐油紙の坪量を上記範囲にすることで、十分な耐油性と、耐久性を得ることができる。
【0030】
また、耐油紙の通気性は、特に限定されず、例えばJIS P8117:2009に準拠した透気抵抗度が100秒以上であってもよい。本発明では、内層10及び中間層12を貫通する内部通気孔H1を形成することにより、包装材1の厚さ方向における通気性を十分に確保することができるため、比較的通気性の低い耐油紙であっても使用することが可能である。上記透気抵抗度の上限は特に限定されないが、例えば10万秒以下、好ましくは5000秒以下、より好ましくは2000秒以下である。より具体的には、上記透気抵抗度は、例えば100~10万秒、好ましくは100~5000秒、より好ましくは100~2000秒である。
【0031】
中間層12は、耐油紙を構成する成分以外の他の成分を含んでいてもよい。中間層12で使用可能な他の成分としては、サイズ剤(滲み防止剤)、耐水剤、撥水剤、紙力増強剤及び染料等が挙げられる。なお、中間層12は、耐油紙のみで構成されることが好ましい。
【0032】
中間層12の厚さは、特に限定されないが、好ましくは5~300μm、より好ましくは15~200μm、更に好ましくは30~150μmである。中間層12の厚さを上記範囲にすることで、十分な耐油性と、耐久性を得ることができる。
【0033】
(内部通気孔)
内部通気孔H1は、内層10の表面から中間層12の表面まで貫通する孔である。
従来は、例えば、予め開孔処理が施された内層10と耐油紙を含む中間層12’とを、積層させる手法が用いられていた(図3)。しかし、この構成の場合、包装材1’の通気性は、中間層12’を構成する耐油紙の通気性に依存すると考えられる。そのため、中間層12’として、フッ素系耐油紙に比べて通気性が劣る非フッ素系耐油紙を用いた場合には、包装材1’の通気性が悪化する問題があった。
これに対し、本発明の包装材1では、内部通気孔H1は内層10に留まるのではなく、内層10及び中間層12を貫通している(図1及び図2)。このような内部通気孔H1により、包装材1の通気性は、耐油紙の通気性に依存することなく、十分に確保できる。そのため、フッ素系耐油紙に比べて通気性が劣る非フッ素系耐油紙を用いた場合であっても、包装材1の全体として十分な通気性を確保できると考えられる。
【0034】
内部通気孔H1の配置は、特に限定されず、(1)内層10及び中間層12を一連で貫通したものであってもよいし、(2)内層10を貫通する通気孔と中間層12を貫通する通気孔とが連通したものであってもよく、貫通孔の形成し易さの観点からは、上記(1)であることが好ましい。
【0035】
内部通気孔H1の径、或いは開孔密度は、包装材1の全体として目的の通気性(透気度)が得られるように、適宜調整することができる。具体的には、刃物や針を用いる場合はその形状や、侵入方向、配置、数等により調整でき、レーザーや電子線を用いる場合はその照射電圧、電流、照射時間、照射方向等の穿孔条件により調整できる。
【0036】
また、内部通気孔H1の形状は、横断面は円形、三角、四角等の方形、楕円径等、特に限定されるものではないが、縦断面は内層10から中間層12へ向かって、或いは中間層12から内層10へ向かって先細りの円錐、角錐状等であることが好ましい。
【0037】
また、内部通気孔H1の径は、特に限定されず、内層10の、中間層12と接していない表面における、内部通気孔H1の径φ1、及び中間層12の、内層10と接していない表面における、内部通気孔H1の径φ2は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。なお内部通気孔H1の径φ1及びφ2は、実施例に記載の方法により測定することができ、開孔径の最も長い部分の寸法(長径)とする。
【0038】
内部通気孔H1の径φ1及びφ2は、包装材1として要求される耐油性及び通気性等に応じて適宜調整すればよいが、例えば100~750μm、好ましくは150~650μm、より好ましくは200~550μmである。上記範囲とすることにより、耐油性と通気性を両立しつつ、脱酸素剤包装体とした際に内部にある脱酸素剤が外部に漏出することを防止できる。
【0039】
(外層)
外層14は、熱可塑性樹脂を含み、外部通気孔H2が形成されている層である。外層14は単層フィルムや、異なる材質からなる2層以上の多層フィルムを用いることができる。外層14と中間層12の接着は熱ラミネートを用いることが好ましいため、外層14は融点の差が大きい2種以上の熱可塑性樹脂からなる多層フィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレートやナイロン等の融点の高い熱可塑性樹脂からなる層が外側に配置され、融点の低い熱可塑性樹脂からなる層が内側に配置された2層フィルムを用いることが好ましい。融点の低い層は、ヒートシール性を有する材料を含むことが好ましく、ヒートシール性を有する材料としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、メタロセン触媒を用いて重合したエチレン-α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂が挙げられる。なお、内層10の熱可塑性樹脂と外層14の熱可塑性樹脂の融点の差が大きい方が、ヒートシール条件(温度、圧力、時間)の自由度が高くなるため好ましい。
【0040】
外層14は、熱可塑性樹脂以外の他の成分を更に含んでいてもよい。外層14で使用可能な他の成分としては、内層10の他の成分として説明したものを適宜用いることができる。
【0041】
外層14の厚さは、特に限定されないが、好ましくは1~50μm、より好ましくは2~40μm、更に好ましくは4~35μm、より更に好ましくは8~30μmである。外層14の厚さを上記範囲にすることで、十分な強度を有する包装材が得られ、かつ、後述する脱酸素剤包装体の製造において折り曲げ等の加工に必要な適度な柔軟性を有する包装材が得られる。
【0042】
外層14は、グラビア印刷等によって表面を印字したり描画することができる。
【0043】
(外部通気孔)
外部通気孔H2は、外層14を貫通する孔である。
内部通気孔H1と外部通気孔H2の配置は、特に限定されず、内部通気孔H1と外部通気孔H2とは連通していないことが好ましい。互いに連通していないことで、脱酸素剤包装体とした際に、外部にある成分が内部にある脱酸素剤に付着することを効果的に防止できると共に、内部にある脱酸素剤が外部に漏出することも効果的に防止できる。
【0044】
外部通気孔H2の径、或いは開孔密度は、包装材1の全体として目的の通気性(透気度)が得られるように、適宜調整することができる。具体的には、外部通気孔H2の形成方法や形状、開孔径等は、内部通気孔H1で説明したような条件で適宜調整することができる。
【0045】
(脱酸素剤用包装材の特性)
本発明の包装材1は、フッ素を含む耐油紙を用いることなく、優れた耐油性及び脱酸素性能を発揮し得る。
【0046】
包装材1の耐油性は、例えばJ.TAPPIパルプ試験方法No.41:2000「紙及び板紙のはつ油度試験方法(キット法)」に準じて評価したキットナンバーを指標とすることができ、好ましくはキットナンバー2以上、より好ましくは4以上である。上記範囲内であると、優れた耐油性が発揮される。
【0047】
また包装材1は、十分な通気性を有するため、優れた脱酸素性能が発揮される。
【0048】
(製造方法)
本発明の包装材1の製造方法は、特に限定されないが、例えば以下の好適例が挙げられる。
【0049】
好適例としては、内層10と中間層12とをこの順で含む積層体(図示せず)を準備する工程と、該積層体に対して、内層10及び中間層12を貫通するように開孔処理を行うことで、内部通気孔H1を形成させる工程と、内部通気孔H1が形成された積層体の中間層12側に、外部通気孔H2を有する外層14をさらに積層させる工程と、を含む、製造方法が挙げられる。
【0050】
内層10及び中間層12を積層させる方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、熱ラミネートでもよいしドライラミネートでもよい。ドライラミネートの場合、接着剤を用いて内層10/接着層(図示せず)/中間層12の順となるように積層させてもよい。接着剤の漏れ出しを防止できるという観点からは、接着剤を用いないことが好ましく、具体的にはドライラミネートよりも熱ラミネートが好ましい。
【0051】
開孔処理の方法は、特に限定されず、例えば、針を用いる方法、刃物を用いる方法、電子線照射を用いる方法、レーザーを用いる方法等が挙げられる。
これらの中でも、開孔の大きさ、位置の制御がし易いという観点から、針を用いて開孔する方法が好ましく、連続的に開孔の密度及び形状が安定した脱酸素剤用包装材を製造する観点から、側面に針をつけた円柱状の治具(以下、「針ロール」ともいう。)を通して開孔する方法がより好ましい。前記針ロールの針の径は、好ましくは0.3~1.0mm、より好ましくは0.5~0.7mmである。針の径を前記好ましい範囲とすることで、開孔形状が安定し、透気度の調節が容易となる。また、針パターンは、透気度や耐油性を考慮して適宜調整することができる。また、前記針ロールを用いる際、針ロールの温度は常温でも開孔可能であるが、開孔する層に用いられる樹脂の融点を超えない範囲で針ロールを加熱することで、開孔処理をより安定して行うことができる。
【0052】
開孔処理の処理方向(内部通気孔H1の形成方向)は、中間層12の表面から内層10を貫通するように形成してもよいし、内層10の表面から中間層12を貫通するように形成してもよい。形成方向によって、内部通気孔H1の縦断面の形状が変わり、透気度や、耐油性を調整することができる。特に、2層を十分に貫通して適切な貫通孔を形成し、これにより通気性を良好とする観点からは、中間層12の表面から内層10を貫通するように形成することが好ましい。
【0053】
内部通気孔H1の径は、開孔処理を行う治具や、形成方向等によって適宜制御し得る。具体的には、先細りの円錐形状の針用いる場合において、内層10の、中間層12と接していない表面における、内部通気孔H1の径をφ1とし、中間層12の、内層10と接していない表面における、内部通気孔H1の径をφ2としたとき、(1)中間層12の表面から内層10を貫通するように内部通気孔H1を形成した場合は、φ1<φ2の関係を満たし、また、(2)内層10の表面から中間層12を貫通するように内部通気孔H1を形成した場合は、φ1>φ2の関係を満たす。
【0054】
開孔処理が施された積層体に、外層14を積層させる方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、熱ラミネートでもよいしドライラミネートでもよい。ドライラミネートの場合、接着剤を用いて中間層12/接着層(図示せず)/外層14の順となるように積層させてもよい。接着剤の漏れ出しを防止できるという観点からは、接着剤を用いないことが好ましく、具体的にはドライラミネートよりも熱ラミネートが好ましい。
【0055】
特に、熱ラミネートの場合、通気性を向上する観点から、部分溶着であることが好ましい。すなわち、本発明の包装材1は、好ましくは中間層12と外層14とが、部分溶着されてなる。このような包装材1においては、内層10及び中間層12を貫通する内部通気孔H1から、中間層12と外層14の隙間を介して、外層14を貫通する外部通気孔H2へと、気体の移動が可能となり、包装材1の通気性を更に向上できると考えられる。
部分溶着する方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができるが、例えば格子模様やドット模様等の模様を有する熱ロールを用いて溶着する方法が挙げられる。中でも、接着性を向上する観点から、格子模様が好ましい。また、部分溶着の溶着率(部分溶着した領域全体の面積における溶着している部分の面積の面積率(%))は、通気性を向上する観点からは、例えば50%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下であり、接着性を向上する観点から、好ましくは8%以上、より好ましくは12%以上である。具体的には、部分溶着の溶着率は、例えば8~50%、好ましくは8~30%、より好ましくは12~20%である。
【0056】
また、内部通気孔H1が形成された成形体と、外部通気孔H2を有する外層14とを積層させる際には、内部通気孔H1と外部通気孔H2とが連通しないように配置することが好ましい。内部通気孔H1と外部通気孔H2とを連通させないことにより、脱酸素剤包装体とした際に、外部にある成分が内部にある脱酸素剤に付着することを効果的に防止できると共に、内部にある脱酸素剤が外部に漏出することも効果的に防止できる。
【0057】
[脱酸素剤包装体]
本発明の包装材1は、脱酸素剤包装体の製造に好適に用いられる。具体的には、本発明の包装材1を用いて脱酸素剤を包装することで、脱酸素剤包装体を得ることができる。
すなわち、本発明の脱酸素剤包装体は、上記した脱酸素剤用包装材1と、該脱酸素剤用包装材1に包まれた脱酸素剤と、を含む。
本発明の包装材1は、耐油性及び通気性に優れるため、これを用いて得られる脱酸素剤包装体は優れた耐油性と脱酸素性能を発揮することができる。
【0058】
本発明の包装材1を用いて脱酸素剤を包装する方法は、特に限定されず、使用する用途や環境等を考慮して適宜好適な方法を採用することができる。例えば、包装材1の内層10と接するように脱酸素剤を包むことが好ましい。上記したように内層10及び中間層12の積層部分は、耐油性に優れ、更に内部通気孔H1が内層10及び中間層12を貫通しているため通気性にも優れるので、内層10と接するように脱酸素剤を含むことで、外部からの油分の侵入を防ぐと共に、十分な脱酸素性能を発揮することができる。
【0059】
脱酸素剤の種類は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、脱酸素剤の主剤としては、鉄粉等の金属粉、アスコルビン酸等の有機化合物、炭素-炭素二重結合を有する高分子化合物等が挙げられる。脱酸素剤は、必ずしも1成分である必要はなく、例えば、鉄粉等の金属粉に金属触媒や、水、金属塩、担体等を併用したものであってもよい。
特に、鉄粉を主剤とする脱酸素剤では、包装材に油が染み込んでしまった場合、染み込んだ油が脱酸素剤の鉄粉と反応して、特有の臭気を発生する場合がある。このような臭気の発生を抑制する上では、鉄を主剤とする脱酸素剤を包む包装材としては、良好な通気性と共に、高い耐油性が求められる。本発明の包装材1は、良好な通気性を有しつつ、特に優れた耐油性を発揮し得るため、特に、脱酸素剤が鉄粉を主剤とする場合に好適に用いられる。鉄粉を主剤とする脱酸素剤としては、鉄粉、金属ハロゲン化物、担体及び水を含む鉄系自力反応型脱酸素剤が好ましい。
【0060】
脱酸素剤の形態は、特に限定されず、使用する用途や環境等を考慮して適宜好適な形態を採用することができる。例えば、粉状であってもよいし、錠剤等に成形加工したものであってもよい。粉状の場合は、粉が内部通気孔H1及び外部通気孔H2から外部に漏れ出さないよう、孔の大きさや形状、さらには層構造等を調整することが好ましい。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例
【0062】
以下、実施例及び比較例を用いて本実施形態を詳しく説明するが、本実施形態は本発明の作用効果を奏する限りにおいて適宜変更することができる。また、実施例及び比較例における各種測定及び評価は以下のように行った。
【0063】
(透気抵抗度)
耐油紙の透気抵抗度は、JIS P8117:2009に準拠して、王研式透気度試験機(旭精工株式会社製、型式EG02)を用いて測定した。なお、測定は、測定可能範囲の中央値が2000のモードで行った。また、測定は、同じ耐油紙に対し10回ずつ行った。
【0064】
(開孔径)
開孔径は、得られた包装材多層フィルムの内層の表面(中間層と接していない面)における内部通気孔H1を観察し、開孔径の最も長い部分の寸法(長径)を測定した。測定は、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX-5000)を用いて、付属のソフトにより2点間距離を測定して行った。また測定は、内層の表面において、任意の6個の内部通気孔H1に対して行い、測定値(N=6)の平均値を、開孔径(径φ1)とした。
【0065】
(耐油性)
耐油性の評価は、得られた包装材多層フィルムを用いて、J.TAPPIパルプ試験方法No.41:2000「紙及び板紙のはつ油度試験方法(キット法)」に準じて行った。なお、試験液の塗布面は、包装材多層フィルムの外層側とした。
キットナンバーは、値が大きい程、耐油性が高いことを意味しており、本実施例では、「2」以上を合格とした。
【0066】
(脱酸素性能)
脱酸素性能の評価は、下記(1)の方法で作製した脱酸素剤包装体を用いて、下記(2)の方法で評価した。以下、脱酸素剤包装体の作製方法及び評価方法を詳しく説明する。
【0067】
(1)脱酸素剤包装体の作製
得られた包装材多層フィルムの内層側が内側となるように折り曲げて、一辺が開口するようにヒートシールして、外寸40mm×40mmの小袋を作製した。その中に、脱酸素剤(鉄粉、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、水を含浸させた珪藻土、活性炭を含む鉄系自力反応型脱酸素剤)1.4gを充填した後に、開口している1辺をヒートシールすることにより閉じて、脱酸素剤包装体を得た。
【0068】
(2)評価
上記(1)で得られた脱酸素剤包装体を、空気250mLとともに、酸素バリア袋(大きさ180mm×250mm、酸素透過度0.53mL/m・24h・MPa以下(Mocon法、20℃、65%RH))に入れて密封した。次いで、密封した酸素バリア袋ごと速やかに25℃の恒温槽に入れた。
その後、一定時間ごとに、酸素バリア袋内の酸素濃度を逐次測定して酸素濃度変化をプロットし、酸素バリア袋内の酸素濃度が0.1体積%以下になった推定時間を、脱酸素時間として評価した。なお、逐次測定の測定間隔は、実施例1~5は16時間後から8時間毎、比較例1~3は24時間毎、比較例4及び5は4時間毎とした。
なお、上記酸素濃度の測定は、ガス分析器(mocon Dansensor社製「Check Mate 3」)を用い、予め酸素バリア袋の表面に接着させておいたサンプリング用ゴムシート(25mm×25mm、厚さ2mm)から測定針を酸素バリア袋内部に挿入して自動測定にて行った。
本実施例では、脱酸素時間が94時間を超えたもの(表中、「>94」と示す)は、脱酸素能力不足と判定した。
【0069】
(実施例1)
まず、包装材多層フィルムを構成する外層、中間層及び内層として使用した材料を以下に示す。
【0070】
<外層>
外層としては、以下の開孔処理を施した2層構成のフィルムを用いた。
まず、ポリエチレンテレフタレート(厚さ12μm、融点265℃;以下、「PET」と記す。)と低密度ポリエチレン(厚さ15μm、融点110℃;以下「PE」と記す。)とを積層し、押出しラミネートして2層構成のフィルム(厚さ27μm)を得た。
次に、得られた2層構成のフィルムに対して、PETの表面から、PEまで貫通するように針ロール(針パターン10.0mm×10.0mm)を用いて開孔処理を施し、外部通気孔を形成した。
【0071】
<中間層>
中間層としては、含フッ素耐油剤を使用していない耐油紙として、デンプン系耐油剤を含浸してなる耐油紙(坪量35g/m;以下「耐油紙35」と記す。)を用いた。
【0072】
<内層>
内層としては、直鎖状低密度ポリエチレン(厚さ30μm、融点130℃;以下「LLDPE30」と記す。)を用いた。
【0073】
まず、上記中間層と上記内層とを積層し、200℃で熱ラミネート加工して、全面溶着し、2層複合フィルムを得た。
この2層複合フィルムに対して、中間層の表面から、内層を貫通するように針ロール(針パターン5.0mm×5.0mm)を用いて開孔処理を施し、内部通気孔を形成した。
【0074】
その後、上記外層のPE側と、上記開孔処理後の2層複合フィルムの中間層側とを、向かい合わせて、内部通気孔と外部通気孔とが連通しないような配置で積層し、200℃で熱ラミネート加工して、部分溶着し、包装材多層フィルム(脱酸素剤用包装材)を得た。
なお、上記部分溶着には、菱形の格子模様の熱ロールを用いた。このとき、溶着率[%](溶着している部分の面積[mm]×100/部分溶着した領域全体の面積[mm])は16.8%であった。
【0075】
得られた包装材多層フィルムは、外層(PET/PE)/中間層(耐油紙35)/内層(LLDPE30)という層構成を有するものであった(図1に対応)。また、得られた包装材多層フィルムに形成された内部通気孔の内層の表面における開孔径(径φ1)は323μmであった。
更に得られた包装材多層フィルムについて、耐油性及び脱酸素性能を評価した。結果を表1に示す。
【0076】
(実施例2及び3)
実施例2及び3は、中間層として、耐油紙35に替えて、表1に示す耐油紙を用いた以外は、実施例1と同様の方法で包装材多層フィルムを得た。評価結果を、表1に示す。
【0077】
(実施例4及び5)
実施例4及び5は、中間層として、耐油紙35に替えて、表1に示す耐油紙を用いると共に、中間層及び内層の2層複合フィルムに対し内部通気孔を形成する際に、内層の表面から、中間層を貫通するよう開孔処理を施した以外は、実施例1と同様の方法で包装材多層フィルムを得た(図2に対応)。評価結果を、表1に示す。
【0078】
(比較例1)
比較例1は、外層のPE側と、以下の方法で作製した2層複合フィルムの中間層側とを、向かい合わせて積層した以外は、実施例1と同様の方法で包装材多層フィルムを得た(図3に対応)。評価結果を、表1に示す。
<2層複合フィルムの作製>
まず、内層(LLDPE30)に対して、針ロール(針パターン5.0mm×5.0mm)を用いて、開孔処理を施した。
その後、針ロールを刺した面が外側なるように、内層と、中間層(耐油紙35)とを積層し、200℃で熱ラミネート加工して、全面溶着し、2層複合フィルムを得た。
得られた2層複合フィルムは、内部通気孔が内層のみに形成され、中間層を貫通していない構成を有するものであった。
【0079】
(比較例2~5)
比較例2~5は、中間層として、耐油紙35に替えて、表1に示す耐油紙を用いた以外は、比較例1と同様の方法で包装材多層フィルムを得た。評価結果を、表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1中の耐油紙の詳細を、以下に示す。
・耐油紙35:デンプン系耐油剤を含浸してなる耐油紙(含フッ素耐油剤を使用しない耐油紙、坪量35g/m、透気抵抗度340~1700秒(平均765秒))
・耐油紙50T:表面に油を固化させる薬剤を塗布してなる耐油紙(含フッ素耐油剤を使用しない耐油紙、坪量50g/m、透気抵抗度550~1900秒(平均1286秒))
・耐油紙50N:紙繊維の目を詰めて耐油性を発現させた耐油紙(含フッ素耐油剤を使用しない耐油紙、坪量50g/m、透気抵抗度10万秒以上)
・F耐油紙38:含フッ素耐油剤を内添してなる耐油紙(含フッ素耐油剤を使用した耐油紙、坪量38g/m、透気抵抗度8~10秒(平均9秒)
・F耐油紙50:表面に含フッ素耐油剤を塗布してなる耐油紙(含フッ素耐油剤を使用した耐油紙、坪量50g/m、透気抵抗度6~9秒(平均7秒))
【0082】
表1に示すように、フッ素を含有しない耐油紙を使用し、内層及び中間層を貫通する内部通気孔を有する包装材多層フィルムは、優れた耐油性及び脱酸素性能を発揮し得ることが確認された(実施例1~5)。
【0083】
一方、フッ素を含有しない耐油紙を使用し、内部通気孔が内層のみに形成され、中間層を貫通していない包装材多層フィルムは、耐油性は高いものの、十分な脱酸素性能が得られないことが確認された(比較例1~3)。
【0084】
なお、フッ素を含有する耐油紙を使用した包装材多層フィルムは、内部通気孔が内層のみに形成され、中間層を貫通していない構成であっても、十分な脱酸素性能を発揮し得るが、将来的にフッ素を含有する耐油紙の使用が規制される可能性がある(比較例4及び5)。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明に係る脱酸素剤用包装材及び脱酸素剤包装体は、例えば、食品、調理食品、飲料、医薬品、健康食品等、対象物を問わず幅広い用途で使用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 包装材
10 内層
12 中間層
14 外層
H1 内部通気孔
H2 外部通気孔
φ1 内層の表面の開孔径
φ2 中間層の表面の開孔径
【要約】
熱可塑性樹脂を含む内層10と、耐油紙を含む中間層12と、熱可塑性樹脂を含む外層14と、をこの順に含み、前記耐油紙がフッ素を含有せず、前記内層10及び前記中間層12を貫通する内部通気孔H1と、前記外層を貫通する外部通気孔H2とを有する、脱酸素剤用包装材1。
図1
図2
図3