(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】エレベーター装置
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
B66B5/02 S
(21)【出願番号】P 2023552432
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2021036798
(87)【国際公開番号】W WO2023058108
(87)【国際公開日】2023-04-13
【審査請求日】2023-10-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮野 一輝
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/198157(WO,A1)
【文献】特開2020-189728(JP,A)
【文献】特開2018-083691(JP,A)
【文献】特開2019-119610(JP,A)
【文献】特開2007-276986(JP,A)
【文献】米国特許第6364066(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信器、報知器、及びドアを有するかごと、
動作時に前記かごを静止保持するためのブレーキ装置と、
前記かごに乗客が閉じ込められたことを検出する第1検出手段と、
前記第1検出手段が閉じ込めを検出した際に特定の開始条件が成立すると、携帯端末と通信するための電波を前記無線通信器から出力する通信制御手段と、
前記第1検出手段が閉じ込めを検出した際に前記開始条件が成立すると、前記携帯端末が前記無線通信器と通信するための情報を前記報知器から提供する報知制御手段と、
前記無線通信器と通信している前記携帯端末から特定の動作指令を受信すると、前記ブレーキ装置を非動作にするブレーキ制御手段と、
乗場の停止位置を含む特定の救出ゾーンに前記かごが配置されたことを検出する第2検出手段と、
を備えたエレベーター装置。
【請求項2】
前記第1検出手段が閉じ込めを検出すると、特定の外部機器に閉じ込め信号を送信する通信手段と、
前記閉じ込め信号の応答として前記外部機器から第1許可信号を受信すると、前記かごに閉じ込められた乗客を救出するための自動救出運転を開始する運転制御手段と、
を更に備え、
前記運転制御手段は、前記閉じ込め信号の応答として前記外部機器から不許可信号を受信すると、前記自動救出運転を開始せず、
前記開始条件に、前記閉じ込め信号の応答として前記外部機器から前記不許可信号を受信することが含まれる請求項1に記載のエレベーター装置。
【請求項3】
前記ドアに隣接する特定の範囲に乗客がいないことを検出する第3検出手段を更に備え、
前記範囲に乗客がいないことを前記第3検出手段が検出すると、前記無線通信器と通信している前記携帯端末に対して、前記動作指令の送信を許可するための第2許可信号が送信される請求項1又は請求項2に記載のエレベーター装置。
【請求項4】
前記かごが前記救出ゾーンに配置されたことを前記第2検出手段が検出すると、前記ドアを開放するドア制御手段を更に備えた請求項1から請求項3の何れか一項に記載のエレベーター装置。
【請求項5】
前記かごが無人であることを検出する第4検出手段と、
前記ドア制御手段が前記ドアを開放した後に前記かごが無人であることを前記第4検出手段が検出すると、特定の手動操作が行われるまでエレベーターの再起動を禁止する禁止手段と、
を更に備えた請求項4に記載のエレベーター装置。
【請求項6】
前記かごを吊り下げるロープと、
前記ロープが巻き掛けられた綱車と、
前記綱車を駆動するためのモータと、
を備え、
前記ブレーキ装置は、動作時に前記綱車の回転を阻止する請求項1から請求項5の何れか一項に記載のエレベーター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、エレベーター装置が記載されている。特許文献1に記載されたエレベーター装置では、閉じ込めが発生すると、監視センターにいるオペレーターが乗客に対して操作盤の操作方法を説明する。乗客がオペレーターの説明の通りに操作盤を操作すると、乗客を救出するための動作が開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、操作盤は、行先階を登録するために使用される。乗客は、操作盤に対して特殊な操作を行うことには慣れていない。このため、閉じ込めが発生しているような非常時には、乗客が操作盤をうまく操作できないことがあった。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされた。本開示の目的は、閉じ込めが発生した場合に、乗客が使い慣れている自分の携帯端末を利用して救出のための動作を開始することができるエレベーター装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベーター装置は、無線通信器、報知器、及びドアを有するかごと、動作時にかごを静止保持するためのブレーキ装置と、かごに乗客が閉じ込められたことを検出する第1検出手段と、第1検出手段が閉じ込めを検出した際に特定の開始条件が成立すると、携帯端末と通信するための電波を無線通信器から出力する通信制御手段と、第1検出手段が閉じ込めを検出した際に開始条件が成立すると、携帯端末が無線通信器と通信するための情報を報知器から提供する報知制御手段と、無線通信器と通信している携帯端末から特定の動作指令を受信すると、ブレーキ装置を非動作にするブレーキ制御手段と、乗場の停止位置を含む特定の救出ゾーンにかごが配置されたことを検出する第2検出手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るエレベーター装置であれば、閉じ込めが発生した場合に、乗客が使い慣れている自分の携帯端末を利用して救出のための動作を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1におけるエレベーター装置を備えたシステムの例を示す図である。
【
図2】制御装置及び監視装置の機能を説明するための図である。
【
図3】制御装置及び監視装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図4】制御装置及び監視装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図5】携帯端末の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】制御装置のハードウェア資源の例を示す図である。
【
図7】制御装置のハードウェア資源の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して詳細な説明を行う。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるエレベーター装置1を備えたシステムの例を示す図である。エレベーター装置1は、ネットワーク2を介して、オペレーターがいる遠隔の情報センター4に接続される。一例として、ネットワーク2は、IPネットワークである。IPネットワークは、通信プロトコルとしてIP(Internet Protocol)を用いた通信ネットワークである。ネットワーク2は、クローズドネットワークでも良いし、オープンネットワークでも良い。情報センター4は、多数のエレベーター装置を管理する。エレベーター装置1は、情報センター4が管理するエレベーター装置の一例である。
【0011】
エレベーター装置1は、かご5、及びつり合いおもり6を備える。かご5は、昇降路7を上下に移動する。かご5及びつり合いおもり6は、ロープ8によって昇降路7に吊り下げられる。つり合いおもり6は、かご5が移動する方向とは逆の方向に昇降路7を上下に移動する。
図1は、1:1ローピング方式のエレベーター装置を一例として示す。
【0012】
巻上機9は、かご5を駆動する。巻上機9は、綱車10、モータ11、エンコーダ12(
図1では図示せず)、及びブレーキ装置13を備える。
【0013】
綱車10は、巻上機9のフレームに回転可能に支持される。綱車10に、ロープ8が巻き掛けられる。モータ11は、綱車10を駆動するための駆動力を発生させる。即ち、モータ11は、綱車10を回転させる。エンコーダ12は、綱車10の回転角に応じた信号を出力する。
【0014】
ブレーキ装置13は、かご5を静止保持するための装置である。ブレーキ装置13は、動作時に綱車10の回転を阻止する。ブレーキ装置13が動作していなければ、綱車10は回転可能である。以下においては、ブレーキ装置13に関して「動作」という表現を、ブレーキ装置13がその機能を発揮している状態、即ち綱車10の回転を阻止している状態を表す際に用いる。ブレーキ装置13に関して「非動作」という表現を、ブレーキ装置13がその機能を発揮していない状態、即ち綱車10の回転を阻止していない状態を表す際に用いる。
【0015】
一例として、ブレーキ装置13は、回転体及びシューを備える。回転体は、綱車10に連動して回転する。シューは、回転体に接触及び離隔するように移動可能に設けられる。シューが回転体に押し付けられることによって、綱車10の回転に対する抵抗力が発生する。このようなブレーキ装置13では、ブレーキ装置13に電力が供給されるとシューが回転体から離れ、ブレーキ装置13は非動作になる。即ち、ブレーキ装置13は開放される。ブレーキ装置13への電力が遮断されるとシューが回転体に押し付けられ、ブレーキ装置13は動作する。
【0016】
制御装置14は、巻上機9を制御する。即ち、かご5の移動は、制御装置14によって制御される。制御装置14に、監視装置15が接続される。監視装置15は、ネットワーク2を介して情報センター4と通信する。
【0017】
図1は、巻上機9及び制御装置14が昇降路7の上方の機械室16に設けられる例を示す。巻上機9及び制御装置14は、昇降路7に設けられても良い。巻上機9は、昇降路7の頂部に設けられても良いし、昇降路7のピットに設けられても良い。
【0018】
かご5と制御装置14とは、制御ケーブル17によって接続される。かご5に備えられた機器は、制御装置14によって制御される。かご5は、ドア21、モータ22、秤装置23、無線通信器24、及び操作盤25を備える。
【0019】
かご5の出入口は、ドア21によって開閉される。モータ22は、ドア21を駆動するための駆動力を発生させる。秤装置23は、かご5の積載荷重を測定する。
図1は、秤装置23がかご5の下部に設けられる例を示す。秤装置23は、ロープ8の端部に設けられても良い。
【0020】
無線通信器24は、かご5に存在する他の機器と無線通信を行うための装置である。例えば、無線通信器24は、Bluetooth(登録商標)といった特定の通信規格で、乗客が所有する携帯端末18と無線通信を行う。一例として、携帯端末18はスマートフォンである。
図1は、無線通信器24が操作盤25に内蔵されている例を示す。
【0021】
操作盤25は、表示器26、及び釦27を備える。表示器26は、かご5にいる乗客に情報を提供するための報知器の一例である。操作盤25に、報知器としてスピーカーが備えられても良い。操作盤25に、報知器として表示器26とスピーカーとの双方が備えられても良い。釦27には、行先釦、戸開釦、及び戸閉釦が含まれる。釦27に他の釦が含まれても良い。
【0022】
エレベーター装置1は、かご5が特定の着床ゾーンに配置されていることを検出するための着床装置を備える。着床ゾーンは、各乗場31の高さに合わせて予め設定される。例えば、N階の乗場31の高さに合わせて設定された着床ゾーンには、かご5がN階の乗場31に停止する位置が含まれる。かご5がN階の乗場31に停止する位置とは、N階の乗場31の床面とかご5の床面との高さが同じになるかご5の位置である。
【0023】
一例として、着床装置は、光電センサ32、及びプレート33を備える。光電センサ32は、かご5に設けられる。プレート33は、昇降路7に設けられる。プレート33は、各乗場31の高さに合わせて配置される。N階の乗場31の高さに合わせて配置されたプレート33を光電センサ32が検出できる範囲が、N階の着床ゾーンである。光電センサ32がプレート33を検出すると、光電センサ32から制御装置14に、検出されたプレート33に対応する検出信号が送信される。
【0024】
図2は、制御装置14及び監視装置15の機能を説明するための図である。
図2に示すように、制御装置14は、閉じ込め検出部41、運転制御部42、条件判定部43、通信制御部44、報知制御部45、ブレーキ制御部46、位置検出部47、ドア制御部48、乗客検出部49、禁止部50、及び乗客検出部51を備える。監視装置15は、通信部52を備える。
【0025】
以下に、
図3から
図5も参照し、本システムの動作について詳しく説明する。
図3及び
図4は、制御装置14及び監視装置15の動作例を示すフローチャートである。
図3及び
図4は、一連の動作を示す。
【0026】
制御装置14では、かご5に乗客が閉じ込められたか否かが判定される(S101)。かご5に乗客が閉じ込められたことは、閉じ込め検出部41によって検出される。閉じ込め検出部41は、秤装置23が測定した積載荷重を利用して乗客の閉じ込めを検出しても良い。かご5にカメラが備えられていれば、閉じ込め検出部41は、カメラが撮影した画像を利用して乗客の閉じ込めを検出しても良い。
【0027】
閉じ込め検出部41が閉じ込めを検出すると、S101でYesと判定される。S101でYesと判定されると、通信部52は、情報センター4に備えられたサーバに閉じ込め信号を送信する(S102)。当該サーバは、外部機器の一例である。通信部52は、S102において特定の外部機器に閉じ込め信号を送信する。
【0028】
閉じ込め信号を受けた情報センター4では、オペレーターが、エレベーター装置1において自動救出運転を行っても良いか否かを判断する。自動救出運転が行われても問題がないことをオペレーターが確認すると、閉じ込め信号の応答として、サーバからエレベーター装置1に対して許可信号S1が送信される。自動救出運転を行うことに問題があるとオペレーターが判断すると、閉じ込め信号の応答として、サーバからエレベーター装置1に対して不許可信号S2が送信される。
【0029】
S102で閉じ込め信号が送信されると、制御装置14では、サーバから不許可信号S2を受信したか否かが判定される(S103)。S103でNoと判定されると、制御装置14では、サーバから許可信号S1を受信したか否かが判定される(S104)。
【0030】
S102で送信した閉じ込め信号の応答として、通信部52がサーバから許可信号S1を受信すると、S104でYesと判定される。S104でYesと判定されると、運転制御部42は、自動救出運転を開始する(S105)。自動救出運転は、かご5に閉じ込められた乗客を救出するための運転である。自動救出運転が開始されると、乗客を救出するために必要な特定の動作が運転制御部42によって自動的に行われる。
【0031】
一方、S102で送信した閉じ込め信号の応答として、通信部52がサーバから不許可信号S2を受信すると、S103でYesと判定される。S103でYesと判定されると、運転制御部42は自動救出運転を開始しない。即ち、S103でYesと判定されると、自動救出運転は行われない。S103でYesと判定されると、条件判定部43は、特定の開始条件が成立したか否かを判定する(S106)。当該開始条件は、乗客の携帯端末18を利用した救出動作を開始するための条件である。当該開始条件は予め設定される。
【0032】
一例として、閉じ込めの原因となった異常が特定の異常であれば、開始条件は成立しない。上記特定の異常に、ブレーキ滑り異常が含まれても良い。ブレーキ装置13が動作しているにも関わらず綱車10が回転していると、ブレーキ滑り異常が検出される。綱車10の回転は、エンコーダ12からの信号に基づいて検出される。上記特定の異常に、トラクション異常が含まれても良い。綱車10が回転していないにも関わらずかご5の位置が変化すると、トラクション異常が検出される。上記特定の異常に、安全回路が動作する異常及びインバータ異常といった他の異常が含まれても良い。
図3に示す例では、開始条件に、閉じ込め信号の応答として通信部52がサーバから不許可信号S2を受信することが含まれる。即ち、
図3に示す例では、通信部52がサーバから不許可信号S2を受信しなければ、開始条件は成立しない。
【0033】
開始条件が成立すると、S106でYesと判定される。S106でYesと判定されると、通信制御部44は、携帯端末18と通信するための電波を無線通信器24から出力する(S107)。また、S106でYesと判定されると、報知制御部45は、携帯端末18が無線通信器24と通信するために必要な情報を表示器26に表示する(S108)。かご5に閉じ込められている乗客は、表示器26に表示された内容を見ながら自分の携帯端末18を操作することにより、携帯端末18を無線通信器24に接続することができる。
【0034】
図5は、携帯端末18の動作例を示すフローチャートである。携帯端末18には、エレベーター用のアプリケーションが予めインストールされていることが好ましい。以下の説明では、このアプリケーションを「アプリケーションA」と表記する。一例として、S107で無線通信器24から出力された電波を携帯端末18が受信すると、アプリケーションAが自動的に起動する。アプリケーションAが起動すると、携帯端末18では、無線通信器24に接続されたか否かが判定される(S201)。
【0035】
乗客は、S108で表示器26に表示された内容を見ることによって、携帯端末18を無線通信器24に接続するための情報を得ることができる。一例として、表示器26に、無線通信器24に接続するためのパスワードが表示される。他の例として、表示器26に、無線通信器24に接続するための二次元バーコードが表示されても良い。乗客は、表示器26に表示されたパスワードを入力したり、二次元バーコードを撮影したりすることにより、携帯端末18を無線通信器24に接続することができる。携帯端末18が無線通信器24に接続されると、S201でYesと判定される。
【0036】
S201でYesと判定されると、携帯端末18では、動作指令を送信するための送信釦が押されたか否かが判定される(S202)。一例として、アプリケーションAでは、携帯端末18が無線通信器24に接続されると、携帯端末18の表示器に当該送信釦が表示される。
【0037】
かご5の表示器26には、S108において以下の情報が表示されても良い。
・送信釦を押す場合はドアから離れること。
・送信釦を押し続けることにより、かごが近くの階に向けて移動すること。
・送信釦から指を離すことにより、かごが停止すること。
・ドアが開いた後、外を確認してかごから出ること。
【0038】
かご5にいる乗客は、表示器26に表示された内容を見ることにより、送信釦を押すことによってかご5が移動することを理解する。乗客が自分の携帯端末18で送信釦を押すことにより(S202のYes)、携帯端末18から無線通信器24に対して動作指令が送信される(S203)。
【0039】
図4に示すように、制御装置14では、S106でYesと判定されると、携帯端末18から動作指令を受信したか否かが判定される(S109)。無線通信器24と通信している携帯端末18から無線通信器24が動作指令を受信すると、S109でYesと判定される。S109でYesと判定されると、制御装置14では、かご5に閉じ込められた乗客からの指令に応じて当該乗客を救出するための救出処理が開始される。
【0040】
救出処理では、先ず、ブレーキ制御部46が、ブレーキ装置13を非動作にする(S110)。これにより、かご5がつり合いおもり6より軽ければ、かご5は上方に移動する。かご5がつり合いおもり6より重ければ、かご5は下方に移動する。例えば、ブレーキ制御部46は、救出処理において、一定時間だけブレーキ装置13を非動作にすることを繰り返す。当該一定時間は、例えば0.5秒である。ブレーキ制御部46は、0.5秒間だけブレーキ装置13を非動作にすると、ブレーキ装置13を動作させる(S111)。これにより、かご5が停止する。
【0041】
また、S109でYesと判定されると、制御装置14では、携帯端末18から中止指令を受信したか否かが判定される(S112)。
【0042】
図5に示すように、携帯端末18では、S203で動作指令を無線通信器24に送信すると、送信釦が押されているか否かが判定される(S204)。乗客が送信釦を押し続けていれば、S204でYesと判定される。乗客が送信釦から指を離すと、S204でNoと判定される。S204でNoと判定されると、携帯端末18から無線通信器24に対して中止指令が送信される(S205)。
【0043】
図4に示すように、無線通信器24と通信している携帯端末18から無線通信器24が中止指令を受信すると、S112でYesと判定される。S112でYesと判定されると、制御装置14では、携帯端末18から動作指令を受信したか否かが判定される(S109)。即ち、S112でYesと判定されると、無線通信器24が携帯端末18から動作指令を再び受信しなければ、ブレーキ制御部46はブレーキ装置13を非動作にしない。
【0044】
S112でNoと判定されると、制御装置14では、かご5が特定の救出ゾーンに配置されたか否かが判定される(S113)。救出ゾーンは、予め設定される。位置検出部47は、かご5が救出ゾーンに配置されたことを検出する。救出ゾーンには、かご5が乗場31に停止する位置が含まれる。救出ゾーンは、着床ゾーンと同じであっても良い。かかる場合、位置検出部47は、光電センサ32からの検出信号に基づいて、かご5が救出ゾーンに配置されたことを検出する。
【0045】
S109でYesと判定された後、かご5が救出ゾーンに配置されたことを位置検出部47が検出すると、S113でYesと判定される。S113でYesと判定されると、ドア制御部48は、モータ22を制御してドア21を開放する(S114)。これにより、乗客は、かご5から降りることができる。
【0046】
S114でドア21が開放すると、制御装置14では、かご5が無人であるか否かが判定される(S115)。乗客検出部49は、かご5が無人であることを検出する。乗客検出部49は、秤装置23が測定した積載荷重に基づいて、かご5が無人であることを検出しても良い。かご5にカメラが備えられていれば、乗客検出部49は、カメラが撮影した画像を利用してかご5が無人であることを検出しても良い。
【0047】
S114でドア21が開放した後に、かご5が無人であることを乗客検出部49が検出すると(S115のYes)、ドア制御部48は、モータ22を制御してドア21を閉じる(S116)。また、S115でYesと判定されると、禁止部50は、特定の手動操作が行われるまでエレベーターの再起動を禁止する(S117)。当該手動操作は、現場に到着した保守員によって行われる操作である。S116でドア21が閉じられた後、通信部52は、救出処理が終了した旨の信号を情報センター4に送信しても良い。
【0048】
本実施の形態に示す例であれば、乗客がかご5に閉じ込められた場合に、乗客は、普段から使い慣れている自分の携帯端末18を利用して、救出のための動作を開始させることができる。乗客は、使い慣れていない機器を操作する必要はない。例えば、乗客は、自分の携帯端末18と無線通信器24とのペアリングを行い、携帯端末18に表示された送信釦を押すことによってかご5を移動させることができる。
【0049】
本実施の形態では、制御装置14に自動救出運転機能が備えられた例を示す。制御装置14は、当該機能を備えていなくても良い。かかる場合、S102からS105に示す処理は行われない。S101でYesと判定されると、S106に示す判定が行われる。即ち、閉じ込め検出部41が閉じ込めを検出した際に開始条件が成立すると、通信制御部44は、無線通信器24から電波を出力する(S107)。また、閉じ込め検出部41が閉じ込めを検出した際に開始条件が成立すると、報知制御部45は、必要な情報を表示器26に表示する(S108)。
【0050】
以下に、本システムが採用可能な他の機能について説明する。本システムでは、可能であれば、以下に示す複数の機能が採用されても良い。
【0051】
本実施の形態では、S108において、表示器26に、送信釦を押す際にドア21から離れる旨の情報を表示する例について説明した。他の例として、乗客がドア21から離れていなければ送信釦を押すことができないようにしても良い。
【0052】
かかる場合、例えば、制御装置14は乗客検出部51を更に備える。乗客検出部51は、かご5の内部のうち、ドア21に隣接する特定の範囲に乗客がいないことを検出する。当該範囲は、予め設定される。一例として、当該範囲は、ドア21までの距離が50cmの範囲である。かご5にカメラが備えられていれば、乗客検出部51は、カメラが撮影した画像を利用して当該範囲に乗客がいないことを検出しても良い。
【0053】
この例では、S109に示す判定が行われる前に、当該範囲に乗客がいないことを乗客検出部51が検出すると、無線通信器24と通信している携帯端末18に対して許可信号S3が送信される。許可信号S3は、携帯端末18に対して動作指令の送信を許可するための信号である。許可信号S3を送信するこの処理は、S108で「ドアから離れる」旨の情報が表示器26に表示された後、S109に示す判定が行われる前に行われる。即ち、許可信号S3が送信されなければ、S109に示す判定は行われない。
【0054】
携帯端末18では、S201でYesと判定された後、許可信号S3を受信したか否かが判定される。携帯端末18では、無線通信器24から許可信号S3を受信することによって送信釦を押すことが可能となる。一例として、携帯端末18では、許可信号S3を受信していなければ、送信釦が表示されない。他の例として、携帯端末18では、許可信号S3を受信していなければ、送信釦が機能しない。これにより、乗客がドア21から離れた状態でかご5の移動を開始することができる。
【0055】
乗客がドア21から離れたことを検出する機能は、携帯端末18に備えられても良い。例えば、携帯端末18は、無線通信器24から受信する電波の強度に基づいて、乗客がドア21から離れたことを検出しても良い。他の例として、携帯端末18が加速度計を備えていれば、当該加速度計によって計測された加速度に基づいて、乗客がドア21から離れたことを検出しても良い。
【0056】
本実施の形態では、S109でYesと判定されると、ブレーキ装置13を非動作にしてかご5を移動させる例について説明した。この時、制御装置14において速度監視及び異常監視を行っても良い。かかる場合、かご5の速度が基準速度を超えると、ブレーキ制御部46は、ブレーキ装置13を動作させる。また、特定の異常が検出されると、ブレーキ制御部46は、ブレーキ装置13を動作させる。
【0057】
図6は、制御装置14のハードウェア資源の例を示す図である。制御装置14は、ハードウェア資源として、プロセッサ61とメモリ62とを含む処理回路60を備える。処理回路60に複数のプロセッサ61が含まれても良い。処理回路60に複数のメモリ62が含まれても良い。
【0058】
本実施の形態において、符号41~51に示す各部は、制御装置14が有する機能を示す。符号41~51に示す各部の機能は、プログラムとして記述されたソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現できる。当該プログラムは、メモリ62に記憶される。制御装置14は、メモリ62に記憶されたプログラムをプロセッサ61によって実行することにより、符号41~51に示す各部の機能を実現する。メモリ62として、半導体メモリ等が採用できる。
【0059】
図7は、制御装置14のハードウェア資源の他の例を示す図である。
図7に示す例では、制御装置14は、プロセッサ61、メモリ62、及び専用ハードウェア63を含む処理回路60を備える。
図7は、制御装置14が有する機能の一部を専用ハードウェア63によって実現する例を示す。制御装置14が有する機能の全部を専用ハードウェア63によって実現しても良い。専用ハードウェア63として、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらの組み合わせを採用できる。
【0060】
なお、監視装置15のハードウェア資源は、
図6或いは
図7に示す例と同様である。監視装置15は、ハードウェア資源として、プロセッサとメモリとを含む処理回路を備える。監視装置15は、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサによって実行することにより、通信部52の機能を実現する。監視装置15は、ハードウェア資源として、プロセッサ、メモリ、及び専用ハードウェアを含む処理回路を備えても良い。監視装置15が有する機能の一部或いは全部を専用ハードウェアによって実現しても良い。
【0061】
また、携帯端末18のハードウェア資源は、
図6或いは
図7に示す例と同様である。携帯端末18は、ハードウェア資源として、プロセッサとメモリとを含む処理回路を備える。携帯端末18は、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサによって実行することにより、上述した各機能を実現する。携帯端末18は、ハードウェア資源として、プロセッサ、メモリ、及び専用ハードウェアを含む処理回路を備えても良い。携帯端末18が有する機能の一部或いは全部を専用ハードウェアによって実現しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本開示に係るエレベーター装置は、閉じ込めを検出する機能を有するものに適用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 エレベーター装置、 2 ネットワーク、 4 情報センター、 5 かご、 6 つり合いおもり、 7 昇降路、 8 ロープ、 9 巻上機、 10 綱車、 11 モータ、 12 エンコーダ、 13 ブレーキ装置、 14 制御装置、 15 監視装置、 16 機械室、 17 制御ケーブル、 18 携帯端末、 21 ドア、 22 モータ、 23 秤装置、 24 無線通信器、 25 操作盤、 26 表示器、 27 釦、 31 乗場、 32 光電センサ、 33 プレート、 41 閉じ込め検出部、 42 運転制御部、 43 条件判定部、 44 通信制御部、 45 報知制御部、 46 ブレーキ制御部、 47 位置検出部、 48 ドア制御部、 49 乗客検出部、 50 禁止部、 51 乗客検出部、 52 通信部、 60 処理回路、 61 プロセッサ、 62 メモリ、 63 専用ハードウェア