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特許7405316反射構造体、反射構造体の製造方法、および周波数選択反射板セット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】反射構造体、反射構造体の製造方法、および周波数選択反射板セット
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/14 20060101AFI20231219BHJP
   G03F 9/00 20060101ALI20231219BHJP
   H01Q 15/10 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01Q15/14 Z
G03F9/00 Z
H01Q15/10
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2023553394
(86)(22)【出願日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2023023785
【審査請求日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2022102694
(32)【優先日】2022-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 裕之
(72)【発明者】
【氏名】中村 厚生
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 祐一
(72)【発明者】
【氏名】井澤 優佑
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5208603(US,A)
【文献】特開2003-114317(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0303885(US,A1)
【文献】米国特許第5861860(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0077401(US,A1)
【文献】BAYATPUR, F. et al.,“Multipole Spatial Filters Using Metamaterial-Based Miniaturized-Element Frequency-Selective Surfaces”,IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques,2008年12月,Vol. 56, No. 12,p.2742-2747,DOI: 10.1109/TMTT.2008.2007332
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 15/14
H01Q 15/10
G03F 9/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を有する反射構造体であって、
第1アライメントマークを有する基材と、
前記基材の一方の面に並べて配置された複数の前記周波数選択反射板と、
を有し、隣接する前記周波数選択反射板間の距離が、前記電磁波の波長の1/2未満である、反射構造体。
【請求項2】
前記周波数選択反射板が第2アライメントマークを有する、請求項1に記載の反射構造体。
【請求項3】
前記基材が光透過性を有し、
前記周波数選択反射板の外周領域が光不透過性を有する、請求項1に記載の反射構造体。
【請求項4】
隣接する前記周波数選択反射板が、互いに対向する側面に、互いに嵌合可能な凹凸部を有し、前記凹凸部が嵌合するように、前記隣接する周波数選択反射板が配置されている、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の反射構造体。
【請求項5】
前記隣接する周波数選択反射板の前記凹凸部の厚さが等しい、請求項4に記載の反射構造体。
【請求項6】
隣接する前記周波数選択反射板の間に接着部が配置されている、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の反射構造体。
【請求項7】
前記周波数選択反射板が、前記電磁波を反射する反射部材を有し、
前記反射部材では、寸法の異なる複数の反射素子が配列されており、
前記複数の周波数選択反射板における前記反射素子の配列が互いに異なる、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の反射構造体。
【請求項8】
前記周波数選択反射板が、前記基材側から順に、前記電磁波を反射する反射部材と、前記電磁波を透過する誘電体層と、を有し、
前記誘電体層では、厚さの異なる複数のセル領域が配列されており、
前記複数の周波数選択反射板における前記セル領域の配列が互いに異なる、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の反射構造体。
【請求項9】
前記周波数選択反射板が、前記周波数選択反射板を識別するための第2識別マークを有する、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の反射構造体。
【請求項10】
前記基材が、前記周波数選択反射板の位置を識別するための第1識別マークを有する、請求項に記載の反射構造体。
【請求項11】
前記周波数選択反射板が、前記基材側から順に、
前記電磁波を反射する反射部材と、
所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、前記電磁波を透過する誘電体層と、
を有し、前記誘電体層の前記単位構造は、厚さの異なる複数のセル領域を有し、
前記誘電体層の各単位構造では、前記単位構造の前記所定の方向の長さを横軸とし、前記電磁波が前記誘電体層を透過し前記反射部材で反射され前記誘電体層を再度透過して前記電磁波の入射側に放出される際の相対反射位相を縦軸とし、前記電磁波の相対反射位相の値が-360度超0度以下であるグラフに、各セル領域の前記所定の方向の中心位置および各セル領域での前記電磁波の相対反射位相に対応する点をプロットし、最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点を通る直線を引いたとき、各点が同一直線上にあり、
前記誘電体層が、前記単位構造として、厚さの異なる3つ以上の前記セル領域を有する第1の単位構造を少なくとも有し、
前記誘電体層の厚さ分布によって前記電磁波の相対反射位相分布を制御することにより、前記電磁波の反射方向を制御する、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の反射構造体。
【請求項12】
前記反射部材が、前記電磁波のみを反射する周波数選択板である、請求項11に記載の反射構造体。
【請求項13】
前記反射部材が、前記電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有する、請求項12に記載の反射構造体。
【請求項14】
前記周波数選択反射板が、前記電磁波を反射する反射部材を有し、
前記反射部材が、前記電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有する、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の反射構造体。
【請求項15】
前記反射部材が、誘電体基板と、前記誘電体基板の少なくとも一方の面に配置された複数の反射素子とを有し、
隣接する前記周波数選択反射板同士が対向する端部領域に、前記反射素子が配置されていない、請求項14に記載の反射構造体。
【請求項16】
隣接する前記周波数選択反射板同士が対向する端部領域に前記反射素子が配置されている反射構造体における前記電磁波の反射強度を100%としたとき、隣接する前記周波数選択反射板同士が対向する端部領域に前記反射素子が配置されていない反射構造体における前記電磁波の反射強度が85%超である、請求項15に記載の反射構造体。
【請求項17】
特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を有する反射構造体であって、
第1アライメントマークを有する基材と、
前記基材の一方の面に配置された前記周波数選択反射板と、を有し、
前記周波数選択反射板が、
前記基材の一方の面に配置され、前記電磁波を反射する反射部材と、
前記基材の前記反射部材側の面に並べて配置され、前記電磁波を透過する、複数の誘電体層と、を有し、
隣接する前記誘電体層間の距離が、前記電磁波の波長の1/2未満であり、
前記誘電体層は、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、
前記誘電体層の前記単位構造は、厚さの異なる複数のセル領域を有し、
前記誘電体層の各単位構造では、前記単位構造の前記所定の方向の長さを横軸とし、前記電磁波が前記誘電体層を透過し前記反射部材で反射され前記誘電体層を再度透過して前記電磁波の入射側に放出される際の相対反射位相を縦軸とし、前記電磁波の相対反射位相の値が-360度超0度以下であるグラフに、各セル領域の前記所定の方向の中心位置および各セル領域での前記電磁波の相対反射位相に対応する点をプロットし、最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点を通る直線を引いたとき、各点が同一直線上にあり、
前記誘電体層が、前記単位構造として、厚さの異なる3つ以上の前記セル領域を有する第1の単位構造を少なくとも有し、
前記誘電体層の厚さ分布によって前記電磁波の相対反射位相分布を制御することにより、前記電磁波の反射方向を制御する、反射構造体。
【請求項18】
前記反射部材が、誘電体基板と、前記誘電体基板の少なくとも一方の面に配置された複数の反射素子と、を有し、
前記誘電体基板が前記基材とは別の部材であり、
前記基材に対して1つの前記誘電体基板が配置されている、請求項17に記載の反射構造体。
【請求項19】
前記反射部材が、誘電体基板と、前記誘電体基板の少なくとも一方の面に配置された複数の反射素子と、を有し、
前記誘電体基板が前記基材を兼ねている、請求項17に記載の反射構造体。
【請求項20】
前記反射部材が、前記基材に接して配置された複数の反射素子を有する、請求項17に記載の反射構造体。
【請求項21】
前記誘電体層が第3アライメントマークを有する、請求項17に記載の反射構造体。
【請求項22】
隣接する前記誘電体層の間に第2の接着部が配置されている、請求項17に記載の反射構造体。
【請求項23】
隣接する前記誘電体層が、互いに対向する側面に、互いに嵌合可能な凹凸部を有し、前記凹凸部が嵌合するように、前記隣接する誘電体層が配置されている、請求項17に記載の反射構造体。
【請求項24】
前記隣接する誘電体層の前記凹凸部の厚さが等しい、請求項23に記載の反射構造体。
【請求項25】
前記誘電体層が、前記誘電体層を識別するための第4識別マークを有する、請求項17に記載の反射構造体。
【請求項26】
前記基材が、前記誘電体層の位置を識別するための第3識別マークを有する、請求項25に記載の反射構造体。
【請求項27】
前記反射部材が、前記電磁波のみを反射する周波数選択板である、請求項17に記載の反射構造体。
【請求項28】
前記反射部材が、前記電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有する、請求項27に記載の反射構造体。
【請求項29】
特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を複数有する反射構造体を製造する反射構造体の製造方法であって、
隣接する前記周波数選択反射板間の距離が、前記電磁波の波長の1/2未満になるように、第1アライメントマークを有する支持体の一方の面に、前記複数の周波数選択反射板を並べて配置する配置工程を有する、反射構造体の製造方法。
【請求項30】
前記周波数選択反射板が第2アライメントマークを有する、請求項29に記載の反射構造体の製造方法。
【請求項31】
前記支持体が光透過性を有し、
前記周波数選択反射板の外周領域が光不透過性を有する、請求項29に記載の反射構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を有する反射構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムにおいては、伝搬環境およびエリアを改善するために、リフレクトアレイの技術が検討されている(例えば、特許文献1~2、非特許文献1)。特に、第5世代通信システム(5G)に使用されるような高周波では、直進性が強いため、カバレッジホール(電波が届かない領域)の解消が重要な課題である。
【0003】
リフレクトアレイとしては、所定の方向の基地局から入射する特定の周波数の電磁波に対し、所望の方向に電磁波を反射することが可能であることが望まれている。このようなリフレクトアレイとしては、例えば、複数の反射素子が配列されており、反射素子の寸法や形状を変化させることによって、反射素子毎の共振周波数を変化させ、電磁波の反射位相を制御し、それにより、電磁波の入射方向および反射方向を制御する技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5371633号公報
【文献】特許第5162677号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】芳野真弓ら、「メタ・サーフェス反射板によるL字型廊下見通し外環境の受信電力の改善」、信学技報(IEICE TechnicalReport)、A・P2020-5(2020-04)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カバレッジホールに高強度の電磁波を反射させるためには、大面積のリフレクトアレイが必要になる。しかし、製造装置の制約から、大面積のリフレクトアレイを製造するのは困難である。
【0007】
ところで、リフレクトアレイを大面積化するには、例えば、リフレクトアレイを並べて配置する、タイリング技術が考えられる。しかし、リフレクトアレイのタイリングにより大面積化する場合、複数のリフレクトアレイ間における相対位置のずれが問題となる。リフレクトアレイの相対位置のずれによって、電磁波の反射強度が低下したり、電磁波の反射位相が変化したりするため、所望の反射特性が得られなくなってしまう。
【0008】
なお、リフレクトアレイではないが、表示装置の分野においては、タイリング技術の開発が行われている。しかし、表示装置では、各表示装置の継ぎ目が見えることが重要な課題であるのに対して、リフレクトアレイでは、各リフレクトアレイの相対位置精度が重要な課題となる。また、リフレクトアレイでは、表示装置と比較して、高い位置精度が要求されると考えられる。そのため、リフレクトアレイに、表示装置のタイリング技術をそのまま適用することは困難であると考えられる。
【0009】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を有する反射構造体において、反射特性が良好であり、大面積化が可能な反射構造体を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一実施形態は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を有する反射構造体であって、第1アライメントマークを有する基材と、上記基材の一方の面に並べて配置された複数の上記周波数選択反射板と、を有し、隣接する上記周波数選択反射板間の距離が、上記電磁波の波長の1/2未満である、反射構造体を提供する。
【0011】
本開示の他の実施形態は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を有する反射構造体であって、基材と、上記基材の一方の面に並べて配置された複数の上記周波数選択反射板と、を有し、少なくとも1つの上記周波数選択反射板における隣り合う2辺が、上記基材における隣り合う2辺に揃い、隣接する上記周波数選択反射板間の距離が、上記電磁波の波長の1/2未満である、反射構造体を提供する。
【0012】
本開示の他の実施形態は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を有する反射構造体であって、第1アライメントマークを有する基材と、上記基材の一方の面に配置された上記周波数選択反射板と、を有し、上記周波数選択反射板が、上記基材の一方の面に配置され、上記電磁波を反射する反射部材と、上記基材の上記反射部材側の面に並べて配置され、上記電磁波を透過する、複数の誘電体層と、を有し、隣接する上記誘電体層間の距離が、上記電磁波の波長の1/2未満であり、上記誘電体層は、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、上記誘電体層の上記単位構造は、厚さの異なる複数のセル領域を有し、上記誘電体層の各単位構造では、上記単位構造の上記所定の方向の長さを横軸とし、上記電磁波が上記誘電体層を透過し上記反射部材で反射され上記誘電体層を再度透過して上記電磁波の入射側に放出される際の相対反射位相を縦軸とし、上記電磁波の相対反射位相の値が-360度超0度以下であるグラフに、各セル領域の上記所定の方向の中心位置および各セル領域での上記電磁波の相対反射位相に対応する点をプロットし、最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点を通る直線を引いたとき、各点が同一直線上にあり、上記誘電体層が、上記単位構造として、厚さの異なる3つ以上の上記セル領域を有する第1の単位構造を少なくとも有し、上記誘電体層の厚さ分布によって上記電磁波の相対反射位相分布を制御することにより、上記電磁波の反射方向を制御する、反射構造体を提供する。
【0013】
本開示の他の実施形態は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を有する反射構造体であって、基材と、上記基材の一方の面に配置された上記周波数選択反射板と、を有し、上記周波数選択反射板が、上記基材の一方の面に配置され、上記電磁波を反射する反射部材と、上記基材の上記反射部材側の面に並べて配置され、上記電磁波を透過する、複数の誘電体層と、を有し、少なくとも1つの上記誘電体層における隣り合う2辺が、上記基材における隣り合う2辺に揃い、隣接する上記誘電体層間の距離が、上記電磁波の波長の1/2未満であり、上記誘電体層は、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、上記誘電体層の上記単位構造は、厚さの異なる複数のセル領域を有し、上記誘電体層の各単位構造では、上記単位構造の上記所定の方向の長さを横軸とし、上記電磁波が上記誘電体層を透過し上記反射部材で反射され上記誘電体層を再度透過して上記電磁波の入射側に放出される際の相対反射位相を縦軸とし、上記電磁波の相対反射位相の値が-360度超0度以下であるグラフに、各セル領域の上記所定の方向の中心位置および各セル領域での上記電磁波の相対反射位相に対応する点をプロットし、最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点を通る直線を引いたとき、各点が同一直線上にあり、上記誘電体層が、上記単位構造として、厚さの異なる3つ以上の上記セル領域を有する第1の単位構造を少なくとも有し、上記誘電体層の厚さ分布によって上記電磁波の相対反射位相分布を制御することにより、上記電磁波の反射方向を制御する、反射構造体を提供する。
【0014】
本開示の他の実施形態は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を複数有する反射構造体を製造する反射構造体の製造方法であって、隣接する上記周波数選択反射板間の距離が、上記電磁波の波長の1/2未満になるように、第1アライメントマークを有する支持体の一方の面に、上記複数の周波数選択反射板を並べて配置する配置工程を有する、反射構造体の製造方法を提供する。
【0015】
本開示の他の実施形態は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を複数有する周波数選択反射板セットであって、上記複数の周波数選択反射板は、設置面に並べて配置されて用いられ、上記周波数選択反射板が、上記周波数選択反射板を識別するための第2識別マークを有する、周波数選択反射板セットを提供する。
【0016】
本開示の他の実施形態は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を複数有する周波数選択反射板セットであって、上記複数の周波数選択反射板は、設置面に並べて配置されて用いられ、上記周波数選択反射板が、上記電磁波を反射する反射部材を有し、上記反射部材では、寸法の異なる複数の反射素子が配列されており、上記複数の周波数選択反射板における上記反射素子の配列が互いに異なる、周波数選択反射板セットを提供する。
【0017】
本開示の他の実施形態は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を複数有する周波数選択反射板セットであって、上記複数の周波数選択反射板は、設置面に並べて配置されて用いられ、上記周波数選択反射板が、上記設置面側から順に、上記電磁波を反射する反射部材と、上記電磁波を透過する誘電体層と、を有し、上記誘電体層では、厚さの異なる複数のセル領域が配列されており、上記複数の周波数選択反射板における上記セル領域の配列が互いに異なる、周波数選択反射板セットを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本開示における反射構造体は、反射特性が良好であり、大面積化が可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示における反射構造体を例示する概略平面図である。
図2】本開示における反射構造体を例示する概略平面図である。
図3】本開示における反射構造体を例示する概略平面図および断面図である。
図4】本開示における反射構造体を例示する概略平面図および断面図である。
図5】本開示における反射構造体を例示する概略平面図および断面図、ならびに本開示における周波数選択反射板における誘電体層の単位構造の各セル領域での電磁波の相対反射位相を説明するための模式図である。
図6】本開示における周波数選択反射板における反射特性を例示する模式図である。
図7】本開示における周波数選択反射板における誘電体層の単位構造を例示する概略斜視図および平面図である。
図8】本開示における周波数選択反射板における誘電体層の単位構造を例示する概略平面図である。
図9】本開示における周波数選択反射板を例示する概略平面図である。
図10】本開示における周波数選択反射板を例示する概略断面図、ならびに本開示における周波数選択反射板における誘電体層の単位構造の各セル領域での電磁波の相対反射位相を説明するための模式図である。
図11】本開示における周波数選択反射板における反射特性を例示する模式図である。
図12】本開示における周波数選択反射板を例示する概略平面図である。
図13】本開示における周波数選択反射板を例示する概略断面図、ならびに本開示における周波数選択反射板における誘電体層の単位構造の各セル領域での電磁波の相対反射位相を説明するための模式図である。
図14】本開示における周波数選択反射板における反射特性を例示する模式図である。
図15】本開示における周波数選択反射板を例示する概略断面図である。
図16】本開示における周波数選択反射板を例示する概略平面図および断面図である。
図17】本開示における周波数選択反射板を例示する概略平面図および断面図である。
図18】本開示における周波数選択反射板を例示する概略断面図である。
図19】本開示における反射構造体を例示する概略平面図である。
図20】本開示における反射構造体を例示する概略平面図である。
図21】本開示における反射構造体を例示する概略平面図である。
図22】本開示における反射構造体を例示する概略平面図である。
図23】本開示における反射構造体を例示する概略断面図である。
図24】本開示における反射構造体を例示する概略平面図である。
図25】本開示における反射構造体を例示する概略平面図である。
図26】本開示における反射構造体を例示する概略平面図である。
図27】本開示における反射構造体を例示する概略平面図である。
図28】本開示における反射構造体を例示する概略断面図である。
図29】本開示における反射構造体を例示する概略平面図および断面図である。
図30】本開示における反射構造体を例示する概略平面図である。
図31】本開示における反射構造体を例示する概略平面図および断面図である。
図32】本開示における反射構造体を例示する概略平面図である。
図33】比較例1のシミュレーション結果を示す受信電力分布図である。
図34】実施例1のシミュレーション結果を示す受信電力分布図である。
図35】参考例1のシミュレーションモデルを示す概略斜視図およびシミュレーション結果を示すグラフである。
図36】参考例2のシミュレーションモデルを示す概略斜視図およびシミュレーション結果を示すグラフである。
図37】伝送線路等価回路を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定しない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0021】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上あるいは下に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。ある部材の上方に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上方に」あるいは「下方に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上あるいは下に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、空間を介して他の部材を配置する場合とのいずれも含む。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上あるいは下に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0022】
以下、本開示における反射構造体、反射構造体の製造方法、および周波数選択反射板セットについて詳細に説明する。
【0023】
A.反射構造体
本開示における反射構造体は、4つの実施態様を有する。以下、各実施態様に分けて説明する。
【0024】
I.反射構造体の第1実施態様
本開示における反射構造体の第1実施態様は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を有する反射構造体であって、第1アライメントマークを有する基材と、上記基材の一方の面に並べて配置された複数の上記周波数選択反射板と、を有し、隣接する上記周波数選択反射板間の距離が、上記電磁波の波長の1/2未満である。
【0025】
図1は、本実施態様の反射構造体の一例を示す概略平面図である。図1に示すように、反射構造体20は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板1を有するものであり、第1アライメントマーク22を有する基材21と、基材21の一方の面に並べて配置された複数の周波数選択反射板1と、を有している。隣接する周波数選択反射板1の間の距離d1、d2は、特定の周波数帯の電磁波の波長の1/2未満となっている。
【0026】
例えば図1においては、基材21が十字形状の第1アライメントマーク22を有しており、基材21の第1アライメントマーク22を基準として、周波数選択反射板1のエッジの位置を合わせて、複数の周波数選択反射板1の位置合わせを行う。
【0027】
ここで、リフレクトアレイではないが、複数のサブアレイが並べて配置されたフェーズドアレイアンテナにおいては、各サブアレイでの電磁波の位相を揃え、電磁波の強度を強くするために、通常、隣接するサブアレイ間の距離は、電磁波の波長の1/2未満とされている。
【0028】
そのため、複数の周波数選択反射板が並べて配置された反射構造体においても、例えば各周波数選択反射板での反射波の位相を揃え、反射波の強度を強くする等、反射構造体全体での反射波の波面の乱れを抑制するためには、隣接する周波数選択反射板間の距離は、電磁波の波長の1/2未満とすることが望ましいと考えられる。
【0029】
本実施態様においては、基材が第1アライメントマークを有することにより、複数の周波数選択反射板の位置合わせを精度良く行うことができる。そのため、隣接する周波数選択反射板間の距離の精度を確保できる。よって、隣接する周波数選択反射板間の距離が、特定の周波数帯の電磁波の波長の1/2未満となるように、複数の周波数選択反射板を高い位置精度でタイリングすることができる。したがって、反射構造体全体での反射波の波面の乱れを抑制して、所望の反射特性を得ることができるとともに、反射構造体の大面積化が可能である。
【0030】
以下、本実施態様の反射構造体の各構成について説明する。
【0031】
1.基材
本実施態様における基材は、周波数選択反射板を支持する部材であり、第1アライメントマークを有する。
【0032】
(1)基材
基材は、周波数選択反射板を支持することができる基材であれば特に限定されず、例えば樹脂基材や金属基材を挙げることができる。樹脂基材は、例えば、樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂板のいずれであってもよい。また、樹脂基材は、プラスチックダンボールのように中空構造を有するもの、または、多層構造を有するものであってもよい。金属基材は、例えばアルミニウム、ステンレス等の金属板、アルミ合板等の合板が挙げられる。
【0033】
金属基材は、剛性や耐久性に優れる上に、電磁波を反射するため、後述するように周波数選択反射板が基材側の面にグラウンド層を持つ場合に好適に用いられる。周波数選択反射板がグラウンド層を持たない場合は、基材と周波数選択反射板との間に後述の干渉緩和層を配置してもよく、あるいは金属基材の特性を考慮して周波数選択反射板の反射部材を設計してもよい。
【0034】
基材の形状は特に限定されないが、一般的には矩形である。設置面に反射構造体を設置する場合において、設置面内での反射構造体の面の向きは予め決められていることが多いが、反射構造体のデザイン上、面の向きがわかりにくい場合は、基材は、基材の1つの角部が切断された角落とし部、いわゆるノッチのような切込み部、またはいわゆるオリエンテーションフラットのような曲線部の一部が切断された部分等の、面の向きを示す部分を有していてもよい。反射構造体にこのような非対称な形状を付与することにより、反射構造体の上下左右や表裏を容易に識別できるので、反射構造体を正しい向きで設置できる。
【0035】
基材は、光透過性を有していてもよく、光不透過性を有していてもよい。これらの基材の光学特性は、第1アライメントマークの検出方法や第1アライメントマークの配置等に応じて適宜選択される。例えば、透過光により第1アライメントマークを検出する場合には、基材は光透過性を有する。また、例えば、反射光により第1アライメントマークを検出する場合には、基材は光透過性を有していてもよく、光不透過性を有していてもよい。また、後述するように、例えば、第1アライメントマークが基材の周波数選択反射板とは反対側の面に配置されている場合には、基材は光透過性を有する。
【0036】
なお、本明細書において、「光透過性」とは、可視光に対する透過性を意味する。また、「光不透過性」とは、可視光に対する不透過性を意味する。
【0037】
また、基材は、X線透過性を有していてもよい。基材がX線透過性を有する場合には、透過X線により第1アライメントマークを検出できる。
【0038】
基材の透過率は、第1アライメントマークを透過光または反射光によって検出可能であれば特に限定されず、基材の材料や厚さ等に応じて適宜設定できる。
【0039】
樹脂基材を構成する樹脂は、特に限定されず、例えば、エンジニアリングプラスチックを挙げることができる。
【0040】
また、樹脂基材は、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、着色剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0041】
基材の厚さは、特に限定されない。
【0042】
(2)第1アライメントマーク
第1アライメントマークは、周波数選択反射板の位置合わせを行うためのマークである。
【0043】
第1アライメントマークは、光不透過性を有していてもよい。また、第1アライメントマークは、光反射性を有していてもよい。これらの第1アライメントマークの光学特性は、透過光および反射光のいずれにより第1アライメントマークを検出するのかに応じて適宜選択される。例えば、透過光により第1アライメントマークを検出する場合には、第1アライメントマークは光不透過性を有する。また、例えば、反射光により第1アライメントマークを検出する場合には、第1アライメントマークは光反射性を有する。
【0044】
なお、本明細書において、「光反射性」とは、可視光に対する反射性を意味する。
【0045】
また、第1アライメントマークは、X線透過性を有していてもよい。基材および第1アライメントマークがX線透過性を有する場合には、透過X線により第1アライメントマークを検出できる。
【0046】
第1アライメントマークの透過率や反射率は、第1アライメントマークを透過光または反射光によって検出可能であれば特に限定されず、第1アライメントマークの材料や厚さ等に応じて適宜設定できる。
【0047】
また、第1アライメントマークは、基材を貫通する貫通孔であってもよい。
【0048】
第1アライメントマークの平面視形状は、特に限定されず、一般的なアライメントマークの平面視形状と同様である。第1アライメントマークの平面視形状は、例えば、十字形状、X字形状、田の字形状、井の字形状、円形状、四角形状、三角形状、二重丸形状、二重四角形状、中抜きの円形状、中抜きの四角形状、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0049】
第1アライメントマークの大きさや線幅は、第1アライメントマークを検出可能であり、隣接する周波数選択反射板間の距離を所定の範囲とすることを妨げなければ特に限定されない。
【0050】
第1アライメントマークの数は、複数の周波数選択反射板の位置合わせを行うことが可能であれば特に限定されない。
【0051】
基材における第1アライメントマークの位置は、複数の周波数選択反射板を配置する所望の位置に応じて適宜設定される。
【0052】
第1アライメントマークは、基材の周波数選択反射板側の面に配置されていてもよく、基材の周波数選択反射板とは反対側の面に配置されていてもよい。また、第1アライメントマークの検出を妨げなければ、第1アライメントマークの上に保護層等の何らかの被覆層が配置されていてもよい。
【0053】
第1アライメントマークの厚さは、第1アライメントマークを精度良く形成することが可能な厚さであれば特に限定されず、第1アライメントマークの光学特性等に応じて適宜調整される。
【0054】
第1アライメントマークの材料は、例えば、金属、合金、金属酸化物、金属窒化物等の金属材料や、樹脂が挙げられる。樹脂の場合、着色剤を添加できる。中でも、第1アライメントマークによる電磁波の反射の影響を考慮すると、樹脂が好ましい。
【0055】
第1アライメントマークの形成方法は、第1アライメントマークの材料等に応じて適宜選択される。金属材料の場合、第1アライメントマークの形成方法は、例えば、フォトリソグラフィ法、マスク蒸着法、リフトオフ法、印刷法が挙げられる。また、樹脂の場合、第1アライメントマークの形成方法は、例えば、フォトリソグラフィ法、印刷法が挙げられる。印刷法としては、インクジェット法、シルクスクリーン印刷法、転写法等の一般的な方法を用いることができる。
【0056】
(3)第1識別マーク
本実施態様においては、例えば図2に示すように、基材21は、周波数選択反射板1の位置を識別するための第1識別マーク23を有していてもよい。例えば図2において、基材21は、「No1」「No2」「No3」「No4」の第1識別マーク23を有している。基材が第1識別マークを有することにより、各周波数選択反射板の位置を容易に識別できるので、各周波数選択反射板を正しい位置に確実かつ容易に配置できる。特に、後述するように、複数の周波数選択反射板の反射特性が互いに異なる場合には有用である。
【0057】
第1識別マークは、光不透過性を有していてもよい。また、第1識別マークは、光反射性を有していてもよい。これらの第1識別マークの光学特性は、上記第1アライメントマークと同様に、透過光および反射光のいずれにより第1識別マークを検出するのかに応じて適宜選択される。
【0058】
第1識別マークの透過率や反射率は、第1識別マークを透過光または反射光によって検出可能であれば特に限定されず、第1識別マークの材料や厚さ等に応じて適宜設定できる。
【0059】
第1識別マークは、識別可能なマークであれば特に限定されず、例えば、文字、記号、図形が挙げられる。具体的には、コードが挙げられる。また、第1識別マークは、光学文字認識(Optical Character Recognition;OCR)可能なデータであってもよい。
【0060】
第1識別マークの大きさや線幅は、第1識別マークを検出可能であれば特に限定されない。
【0061】
基材における第1識別マークの位置は、各周波数選択反射板の位置を識別することが可能であれば特に限定されない。
【0062】
第1識別マークは、基材の周波数選択反射板側の面に配置されていてもよく、基材の周波数選択反射板とは反対側の面に配置されていてもよい。また、第1識別マークの検出を妨げなければ、第1識別マークの上に保護層等の何らかの被覆層が配置されていてもよい。
【0063】
第1識別マークの厚さ、材料、形成方法は、第1アライメントマークの厚さ、材料、形成方法と同様である。
【0064】
第1識別マークの材料が第1アライメントマークの材料と同一である場合には、第1アライメントマークおよび第1識別マークを同時に形成できる。
【0065】
2.周波数選択反射板
本実施態様における周波数選択反射板は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する部材である。
【0066】
(1)隣接する周波数選択反射板間の距離
本実施態様において、隣接する周波数選択反射板間の距離は、特定の周波数帯の電磁波の波長の1/2未満であり、1/5以下が好ましく、1/10以下がより好ましい。隣接する周波数選択反射板間の距離が上記範囲であることにより、反射構造体全体での反射波の波面の乱れを抑制できる。後述するように、電磁波の周波数帯は、2.5GHz以上が好ましく、24GHz以上がより好ましい。すなわち、電磁波の空気中での波長は、119.92mm以下が好ましく、12.49mm以下がより好ましい。そのため、隣接する周波数選択反射板間の距離は、具体的には、好ましくは59.96mm以下程度、より好ましくは6.245mm以下程度である。また、隣接する周波数選択反射板間の距離は短いほど好ましく、下限値は特に限定されない。
【0067】
(2)周波数選択反射板の実施態様
周波数選択反射板としては、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する部材であれば特に限定されず、例えば、上記電磁波を反射する反射部材を有し、この反射部材が、上記電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有していてもよく、あるいは、基材側から順に、上記電磁波を反射する反射部材と、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、上記電磁波を透過する誘電体層とを有していてもよい。
【0068】
以下、周波数選択反射板が、上記電磁波を反射する反射部材を有し、この反射部材が、上記電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有する第1態様と、基材側から順に、上記電磁波を反射する反射部材と、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、上記電磁波を透過する誘電体層とを有する第2態様とに分けて説明する。
【0069】
(2-1)周波数選択反射板の第1態様
本実施態様における周波数選択反射板の第1態様は、上記電磁波を反射する反射部材を有し、この反射部材が、上記電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有する。
【0070】
(a)反射部材
本態様における反射部材は、特定の周波数帯の電磁波を反射し、電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有する部材である。
【0071】
本態様において、反射部材は、通常、特定の周波数帯の電磁波のみを反射する波長選択機能を有する。このような反射部材としては、例えば、周波数選択板を挙げることができる。
【0072】
周波数選択板は、特定の周波数帯の電磁波に対して反射、透過を制御する周波数選択性表面(FSS;Frequency Selective Surface)を有しており、特定の周波数帯の電磁波に対する反射板として機能する場合は、面内に複数の反射素子(散乱素子)が配列されたものである。周波数選択板としては、例えば、誘電体基板と、誘電体基板の電磁波入射側の面に配列された複数の反射素子とを有するものを挙げることができる。
【0073】
図3(a)、(b)は、本態様の周波数選択反射板を有する反射構造体の一例を示す概略平面図および断面図であり、図3(b)は図3(a)のA-A線断面図である。図3(a)、(b)に示すように、周波数選択反射板1は、特定の周波数帯の電磁波を反射する反射部材2を有しており、反射部材2は、複数のリング状の反射素子3が配列されたものであり、誘電体基板4と、誘電体基板4の基材21とは反対側の面(電磁波入射側の面)に配置された複数の反射素子3とを有している。図3(a)、(b)は、反射部材2が周波数選択板である例である。反射部材2は、電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有しており、例えば図3(a)、(b)に示す反射部材2においては、反射素子3の寸法を変化させることによって、反射素子3毎に共振周波数を変化させ、対象とする電磁波の反射位相を制御できる。これにより、電磁波の所定の入射方向に対する反射方向を任意の方向に制御できる。
【0074】
図4(a)~(c)は、本態様の周波数選択反射板を有する反射構造体の他の例を示す概略平面図および断面図であり、図4(a)は周波数選択反射板の一方の面Sf1から見た平面図、図4(b)は周波数選択反射板の他方の面Sf2から見た平面図、図4(c)は図4(a)および図4(b)のA-A線断面図である。図4(a)~(c)に示すように、周波数選択反射板1は、特定の周波数帯の電磁波を反射する反射部材2を有しており、反射部材2は、複数のリング状の反射素子3が配列されたものであり、誘電体基板4と、誘電体基板4の基材21とは反対側の面(電磁波入射側の面)に配置された複数の反射素子3aと、誘電体基板4の基材21側の面に配置された複数の反射素子3bとを有している。図4(a)~(c)は、反射部材2が周波数選択板である例である。反射部材2は、電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有しており、例えば図4(a)~(c)に示す反射部材2においては、反射素子3aの寸法を変化させることによって、反射素子3a毎に共振周波数を変化させ、対象とする電磁波の反射位相を制御できる。これにより、電磁波の所定の入射方向に対する反射方向を任意の方向に制御できる。
【0075】
周波数選択板は、公知の周波数選択板の中から適宜選択して用いることができる。
【0076】
周波数選択性表面を形成する反射素子の形状としては、特に限定されず、例えば、リング状、十字状、正方形状、長方形状、円形状、楕円形状、棒状、近接した複数領域に分割されたパターン等の平面パターン、及びスルーホールビア等による三次元構造等、任意の形状を挙げることができる。
【0077】
また、反射素子は、例えば、単層であってもよく、多層であってもよい。反射素子が単層である場合、周波数選択板としては、例えば、図3(a)~(b)に示すような誘電体基板の片面に複数の反射素子が配列されたものを挙げることができる。また、反射素子が多層である場合、周波数選択板としては、例えば、図4(a)~(c)に示すような誘電体基板の両面に複数の反射素子が配列されたもの、誘電体基板と複数の反射素子と誘電体基板と複数の反射素子とが順に配置されたもの、電磁波の入射側の面から最も遠い面に一面導体が配置されているものを挙げることができる。この一面導体は後述のグラウンド層の機能を有するが、グラウンド層よりも電磁波の入射側の面にある複数の反射素子はグラウンド層が存在する前提で設計される。
【0078】
本態様において、反射部材は、電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有する。このような反射部材においては、反射素子の寸法や形状を変化させることによって、反射素子毎に共振周波数を変化させ、電磁波の反射位相を制御でき、これにより、所定の方向から入射した電磁波の反射方向を制御できる。
【0079】
反射位相制御機能を有する反射部材としては、一般的な周波数選択性表面を適用することができる。これらは設計に一長一短はあるが、いずれも反射素子の寸法や形状を変化させることで電磁波の反射位相を変化させることが可能である。
【0080】
反射素子の異なる寸法としては、反射素子の形状に応じて適宜選択される。
【0081】
誘電体基板は、光透過性を有していてもよく、光不透過性を有していてもよい。
【0082】
(b)他の構成
本態様の周波数選択反射板は、上記の反射部材の他に、必要に応じて他の構成を有していてもよい。
【0083】
(i)保護部材
本実施態様の周波数選択反射板は、上記反射部材の上記基材とは反対側の面に保護部材を有していてもよい。保護部材によって、反射部材を保護できる。また、保護部材によって、意匠性を付与することもできる。
【0084】
(ii)グラウンド層
本態様の周波数選択反射板は、上記反射部材の上記基材側の面にグラウンド層を有していてもよい。グラウンド層によって、周波数選択反射板の裏面に存在する物体との干渉を遮断し、ノイズの発生を抑えることができる。グラウンド層としては、導電性を有していればよく、例えば、金属層、金属メッシュ、カーボン膜、ITO膜等の一般的な導電層を用いることができる。
【0085】
(iii)平坦化層
本態様の周波数選択反射板は、上記反射部材の上記基材とは反対側の面に平坦化層を有していてもよい。反射部材が複数の反射素子が配列された部材である場合には、平坦化層によって、反射素子による凹凸を平坦化することができ、反射部材上に保護部材を配置する際の反射素子による凹凸の影響を抑えることができる。平坦化層としては、反射素子を包埋する状態で配置された電離放射線硬化樹脂層を例示することができる。また、反射部材と保護部材との間に空間を設ける形態の場合は、平坦化層に反射素子を保護する機能を持たせてもよい。
【0086】
(2-2)周波数選択反射板の第2態様
本実施態様における周波数選択反射板の第2態様は、上記基材側から順に、上記電磁波を反射する反射部材と、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、上記電磁波を透過する誘電体層と、を有する。本態様の周波数選択反射板においては、上記誘電体層の上記単位構造は、厚さの異なる複数のセル領域を有し、上記誘電体層の各単位構造では、上記単位構造の上記所定の方向の長さを横軸とし、上記電磁波が上記誘電体層を透過し上記反射部材で反射され上記誘電体層を再度透過して上記電磁波の入射側に放出される際の相対反射位相を縦軸とし、上記電磁波の相対反射位相の値が-360度超0度以下であるグラフに、各セル領域の上記所定の方向の中心位置および各セル領域での上記電磁波の相対反射位相に対応する点をプロットし、最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点を通る直線を引いたとき、各点が同一直線上にあり、上記誘電体層が、上記単位構造として、厚さの異なる3つ以上の上記セル領域を有する第1の単位構造を少なくとも有し、上記誘電体層の厚さ分布によって上記電磁波の相対反射位相分布を制御することにより、上記電磁波の反射方向を制御するものである。
【0087】
図5(a)、(b)は、本態様の周波数選択反射板を有する反射構造体の一例を示す概略平面図および断面図であり、図5(b)は図5(a)のA-A線断面図である。図5(a)、(b)に示すように、周波数選択反射板1は、基材21側から順に、特定の電磁波を反射する反射部材2と、所定の方向D1に厚さt1~t6が増加する厚さ分布を有する単位構造10が複数配置された凹凸構造を有し、特定の電磁波を透過する誘電体層5と、を有する。また、周波数選択反射板1は、反射部材2および誘電体層5の間に接着層6を有することができる。誘電体層5の単位構造10は、厚さt1~t6の異なる複数のセル領域11a~11fを有する。例えば図5(b)においては、誘電体層5の単位構造10は、所定の方向D1に厚さt1~t6が段階的に増加する階段形状を有しており、階段形状の段数が6段であり、誘電体層5の単位構造10は6個のセル領域11a~11fを有している。誘電体層5の単位構造10の各セル領域11a~11fでは、厚さt1~t6が異なるため、電磁波が誘電体層5を透過し反射部材2で反射され誘電体層5を再度透過して電磁波の入射側に放出される際の往復の光路長が異なることになり、これらの誘電体層での往復光路長の差、つまり光路差が相対反射位相の差を生み出すことになる。
【0088】
ここで、本明細書において、「光路長」という用語を用いたのは、本開示において対象とする周波数帯の波長が従来のLTE以前の周波数帯に比べると光に近づき直進性も高くなることから、光に類似の挙動としたほうが説明しやすいためであり、実際には誘電体層の中を電磁波が通過する際の実効距離を意味する。
【0089】
そして、誘電体層5の単位構造10では、単位構造10の所定の方向D1の長さLを横軸とし、電磁波が誘電体層5を透過し反射部材2で反射され誘電体層5を再度透過して電磁波の入射側に放出される際の相対反射位相を縦軸とし、電磁波の相対反射位相の値が-360度超0度以下であるグラフに、各セル領域の所定の方向D1の中心位置および各セル領域での電磁波の相対反射位相に対応する点をプロットし、最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点を通る直線を引いたとき、各点が同一直線上にある。
【0090】
図5(c)は、誘電体層5の単位構造10の所定の方向D1の長さLを横軸とし、電磁波が誘電体層5を透過し反射部材2で反射され誘電体層5を再度透過して電磁波の入射側に放出される際の相対反射位相を縦軸とし、電磁波の相対反射位相の値が-360度超0度以下であるグラフであり、図5(a)、(b)に示す周波数選択反射板における誘電体層の単位構造の各セル領域での電磁波の相対反射位相の例である。図5(c)に示すように、誘電体層5の単位構造10の各セル領域11a~11fでの電磁波の相対反射位相はそれぞれ、0度、-60度、-120度、-180度、-240度、-300度であり、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差の絶対値は60度である。この場合、誘電体層5の単位構造10の6個のセル領域11a~11fの厚さt1~t6は、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差の絶対値が360度を6で除した値、つまり60度になるように、設計されている。そして、図5(c)に示すように、誘電体層5の単位構造10の各セル領域11a~11fの所定の方向D1の中心位置および各セル領域11a~11fでの電磁波の相対反射位相に対応する点をプロットし、各セル領域11a~11fのうち最小厚さt1を有する最小厚さセル領域11aに対応する点を通る直線(グラフ中の実線)を引いたとき、各点は同一直線上にある。
【0091】
ここで、本明細書において、「反射位相」とは、ある表面に入射する入射波の位相に対する、反射波の位相の変化量をいうが、本態様の反射部材および誘電体層を有する周波数選択反射板においては、入射波の位相に対する、入射波が誘電体層を透過し反射部材で反射され誘電体層を再度透過して放出される際の反射波の位相の変化量をいう。
【0092】
また、本明細書において、「相対反射位相」とは、誘電体層の一つの単位構造において、反射位相の遅れが最も少ないセル領域での反射位相を基準として、その基準の反射位相に対する、あるセル領域での反射位相の遅れを負号で示すものである。例えば、誘電体層の一つの単位構造において、反射位相の遅れが最も少ないセル領域での反射位相が-10度である場合、反射位相が-40度であるセル領域での相対反射位相は-30度になる。
【0093】
なお、後述するように、反射部材が反射位相制御機能を有する場合には、セル領域での電磁波の相対反射位相は、反射部材での反射位相も合成した値とする。
【0094】
また、本明細書において、「セル領域」とは、誘電体層の単位構造において、電磁波の相対反射位相が同じである領域をいう。
【0095】
なお、反射位相は、特に断りのない限り、-360度超360度未満の範囲内であり、-360度および+360度は0度に戻る。また、相対反射位相は、特に断りのない限り、-360度超0度以下の範囲内であり、-360度は0度に戻る。
【0096】
従来のような複数の反射素子が配列されたリフレクトアレイでは、例えば、反射素子の寸法や形状を調整することで、反射位相を遅らせることも、反射位相を進めることもできるが、本態様の周波数選択反射板においては、誘電体層の単位構造の各セル領域の厚さを調整することによって、基本的に反射位相が遅れることになる。そのため、相対反射位相については、反射位相の遅れが最も少ないセル領域での反射位相を基準としている。
【0097】
また、通常、誘電体層の一つの単位構造において、反射位相の遅れが最も少ないセル領域は、厚さが増加する所定の方向において最小厚さを有する最小厚さセル領域となる。そのため、上記のグラフにおいては、最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点を通る直線を引くこととしている。
【0098】
上述のように、誘電体層5の単位構造10の各セル領域11a~11fでは、厚さt1~t6が変化することで、誘電体層5での往復光路長が変化し、電磁波の相対反射位相が変化するため、図6に例示するように、電磁波の入射波W1を正反射(鏡面反射)方向とは異なる方向に反射させることができる。この場合、電磁波の入射波W1の入射角θ1と、電磁波の反射波W2の反射角θ2とは異なる。
【0099】
したがって、本態様の周波数選択反射板においては、誘電体層の単位構造の各セル領域の厚さを変化させることによって、セル領域毎に誘電体層での往復光路長を変化させ、電磁波の反射位相を制御できる。これにより、電磁波の所定の入射方向に対する反射方向を任意の方向に制御できる。
【0100】
また、本態様における誘電体層の凹凸構造は、例えば、切削、レーザー加工、金型を使用した賦型、3Dプリンタ、小片パーツの接合等の種々の手法によって形成できる。そのため、従来のリフレクトアレイにおける金属層のフォトリソグラフィ加工のように、フォトマスクを必要としない。よって、シチュエーションに合わせて目的の入射角および反射角をもつ反射特性になるように、誘電体層の単位構造の各セル領域の厚さを設計し、誘電体層を形成する場合に、比較的安価、短期に所望の誘電体層を形成することができ、少量多品種のニーズに対応することが容易である。また、反射特性の制御に影響する誘電体層の厚さや誘電体層の単位構造のサイズについては、加工可能範囲が比較的広いことから、例えば電磁波の入射・反射角を大きくすることも可能であり、反射特性の制御域を広くすることができる。さらに、誘電体層の厚さや誘電体層の単位構造のセル領域のピッチについては、所望の反射位相を実現するための寸法加工精度のマージンが比較的広いことから、所望の反射特性を得られやすく、寸法ばらつきの影響も軽減することができる。したがって、周波数選択反射板の反射特性をカスタマイズすることが容易である。
【0101】
また、本態様の周波数選択反射板においては、反射部材は、特定の電磁波のみを反射する周波数選択板とすることができる。例えば図5(a)、(b)においては、反射部材2は、複数のリング状の反射素子3が配列されたものであり、誘電体基板4と、誘電体基板4の誘電体層5側の面に配置された複数の反射素子3とを有している。
【0102】
さらに、本態様の周波数選択反射板においては、反射部材は、特定の電磁波のみを反射する周波数選択板であり、かつ、電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有する部材とすることができる。このような反射部材においては、反射素子の寸法や形状を変化させることによって、反射素子毎に共振周波数を変化させ、対象とする電磁波の反射位相を制御できる。この場合、誘電体層の厚さだけでなく反射素子の寸法や形状によっても電磁波の反射位相を制御でき、反射特性の制御についての設計自由度を向上させることができる。
【0103】
よって、本態様の周波数選択反射板においては、上記のような反射部材を用いる場合には、上記誘電体層と組み合わせることにより、反射特性の制御の自由度を広げることができる。そのため、周波数選択反射板の反射特性のカスタマイズをより容易にすることができる。例えば、天地方向の反射特性は反射部材で複数種類を準備しておき、水平方向の反射特性を調整する誘電体層と組み合わせるといった運用は一つの例である。
【0104】
また、本開示の発明者らは、本態様の反射部材および誘電体層を有する周波数選択反射板において、反射部材を、特定の電磁波のみを反射する反射素子を有する周波数選択板とした場合に、特定の周波数帯の電磁波の反射特性のシミュレーションを行ったところ、反射部材(周波数選択板)に誘電体層が近接することによる反射素子での反射位相のずれよりも、誘電体層の単位構造のセル領域の厚さを変化させて、セル領域毎に誘電体層での往復光路長を変化させたときの反射位相のずれのほうが大きく、実質的な反射特性の設計は、誘電体層の凹凸構造の設計でほぼ決めることが可能であることを見出した。このとき、反射素子の共振周波数は、近接する誘電体層の有無で変動するが、誘電体層が存在する前提で設計をしておけば、実用上の問題は解消される。さらに、周波数選択反射板における反射位相の面内分布設計を実現する誘電体層の凹凸構造の面内配置は、反射部材の反射素子の面内配置に対して一定の位置関係である必要はなく、誘電体層の凹凸構造を反射素子の面内配置に対してずらして配置しても反射特性に大きな影響を与えないことを見出した。
【0105】
よって、本態様の周波数選択反射板において、上記誘電体層と、上記のような反射部材とを組み合わせる場合には、誘電体層および反射部材をそれぞれ独立して設計し、組み合わせることが可能である。この場合、使用環境に応じた反射特性を実現する誘電体層をその都度作製してもよく、事前に複数仕様を準備しておいてもよい。そのため、使用環境に応じて変化する周波数選択反射板の反射方向設計をより簡便にカスタマイズすることができ、多様なシチュエーションへの適用が容易となる。なお、上述したように、反射部材および誘電体層のそれぞれの反射位相分布の組み合わせにより周波数選択反射板の全体の反射特性を調整する場合は、要求仕様に応じて反射部材および誘電体層の配置ずれの精度が求められるが、誘電体層の反射位相分布のみにより周波数選択反射板の反射特性を調整する場合は、反射部材および誘電体層の配置ずれの精度はあまり求められない。
【0106】
また、例えば3Dプリンタを用いて誘電体層を形成する場合、複数の3Dプリンタを使用することによって、複数の周波数選択反射板を同時に製造することができる。そのため、周波数選択反射板をタイリングすることによって、反射構造体の製造時間を短縮することができる。
【0107】
また、本態様の周波数選択反射板は、後述の第2実施態様の反射構造体において、反射部材が、基材に接して配置された反射層を有する場合、あるいは、反射部材が、基材に接して配置された複数の反射素子を有する場合と比較して、基材の厚さおよびサイズの自由度が高いという利点を有する。
【0108】
以下、本態様の周波数選択反射板の各構成について説明する。
【0109】
(a)誘電体層
本実施態様における誘電体層は、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、特定の周波数帯の電磁波を透過する部材である。また、誘電体層の単位構造は、厚さの異なる複数のセル領域を有しており、誘電体層の各単位構造では、単位構造の所定の方向の長さを横軸とし、電磁波が誘電体層を透過し反射部材で反射され誘電体層を再度透過して電磁波の入射側に放出される際の相対反射位相を縦軸とし、電磁波の相対反射位相の値が-360度超0度以下であるグラフに、各セル領域の所定の方向の中心位置および各セル領域での電磁波の相対反射位相に対応する点をプロットし、最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点を通る直線を引いたとき、各点が同一直線上にある。また、誘電体層は、単位構造として、厚さの異なる3つ以上のセル領域を有する第1の単位構造を少なくとも有する。
【0110】
(i)誘電体層の構造
誘電体層は、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有する。
【0111】
誘電体層の単位構造は、厚さの異なる複数のセル領域を有しており、誘電体層の各単位構造では、単位構造の上記所定の方向の長さを横軸とし、電磁波が誘電体層を透過し反射部材で反射され誘電体層を再度透過して電磁波の入射側に放出される際の相対反射位相を縦軸とし、電磁波の相対反射位相の値が-360度超0度以下であるグラフに、各セル領域の上記所定の方向の中心位置および各セル領域での電磁波の相対反射位相に対応する点をプロットし、最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点を通る直線を引いたとき、各点が同一直線上にある。
【0112】
なお、各点が同一直線上にあるとは、その直線に対する各点の縦軸方向の差が±72度以内であることをいう。上記の直線に対する各点の縦軸方向の差は、好ましくは±54度以内であり、より好ましくは±36度以内であり、さらに好ましくは±18度以内である。なお、各点が上記の直線に対して縦軸方向にずれを含む場合であって、各点を通る直線を引きづらい場合には、「最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点(相対反射位相0度)と、その単位構造に隣接する単位構造での最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点(相対反射位相-360度とみなす)とを結んだ直線」を考えるとよい。
【0113】
誘電体層の単位構造は、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する。誘電体層の単位構造は、例えば、一方向のみに厚さが増加する厚さ分布を有していてもよく、あるいは、第一方向および第一方向に垂直な第二方向の二方向に厚さが増加する厚さ分布を有していてもよい。例えば、図7(a)は、誘電体層の単位構造10が第一方向D1のみに厚さが増加する厚さ分布を有する例であり、図7(c)、(e)、図8(a)は、誘電体層の単位構造10が第一方向D1および第二方向D2に厚さが増加する厚さ分布を有する例である。
【0114】
誘電体層の単位構造が一方向のみに厚さが増加する厚さ分布を有する場合には、その一方向での単位構造の長さを横軸とする上記グラフに上記点をプロットしたときに、各点が同一直線上にあることになる。また、誘電体層の単位構造が互いに垂直な二方向に厚さが増加する厚さ分布を有する場合には、その二方向での単位構造の長さをそれぞれ横軸とする上記グラフにそれぞれ上記点をプロットしたときに、各グラフにおいて、各点が同一直線上にあることになる。
【0115】
誘電体層の一つの単位構造において、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差の絶対値は、180度未満であり、120度以下であることが好ましく、60度以下であることがより好ましい。隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差の絶対値が小さいほど、反射波の波面を滑らかにすることができる。また、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差の絶対値は、0度超である。
【0116】
また、隣接する単位構造において、一方の単位構造での最大厚さを有する最大厚さセル領域と、他方の単位構造での最小厚さを有する最小厚さセル領域とが隣接している場合、一方の単位構造での反射位相の遅れが最も少ないセル領域での反射位相を基準として、他方の単位構造での最小厚さを有する最小厚さセル領域での電磁波の相対反射位相を、一周期分ずらした-720度超-360度以下で示すとき、一方の単位構造での最大厚さを有する最大厚さセル領域での電磁波の相対反射位相と、他方の単位構造での最小厚さを有する最小厚さセル領域での電磁波の相対反射位相との差の絶対値は、180度未満であり、120度以下であることが好ましく、60度以下であることがより好ましい。これらの隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差の絶対値が小さいほど、反射波の波面を滑らかにすることができる。また、これらの隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差の絶対値は、0度超である。例えば、図5(c)においては、隣接する単位構造10a、10bにおいて、一方の単位構造10aの最大厚さt6を有する最大厚さセル領域11fでの電磁波の相対反射位相は-300度であり、他方の単位構造10bの最小厚さt1を有する最小厚さセル領域11aでの電磁波の相対反射位相は-360度であり、一方の単位構造10aの最大厚さt6を有する最大厚さセル領域11fでの電磁波の相対反射位相と、他方の単位構造10bの最小厚さt1を有する最小厚さセル領域11aでの電磁波の相対反射位相との差の絶対値は、60度である。
【0117】
また、誘電体層の一つの単位構造において、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差は、等しいことが好ましい。例えば、図5(b)に示すように、誘電体層5の単位構造10が6個のセル領域を有する場合、隣接するセル領域11a、11bでの電磁波の相対反射位相の差と、隣接するセル領域11b、11cでの電磁波の相対反射位相の差と、隣接するセル領域11c、11dでの電磁波の相対反射位相の差と、隣接するセル領域11d、11eでの電磁波の相対反射位相の差と、隣接するセル領域11e、11fでの電磁波の相対反射位相の差とは、それぞれ等しいことが好ましい。例えば、図5(c)においては、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差の絶対値はいずれも60度であり、等しくなっている。
【0118】
また、隣接する単位構造において、一方の単位構造での最大厚さを有する最大厚さセル領域と、他方の単位構造での最小厚さを有する最小厚さセル領域とが隣接している場合、一方の単位構造での反射位相の遅れが最も少ないセル領域での反射位相を基準として、他方の単位構造での最小厚さを有する最小厚さセル領域での電磁波の相対反射位相を、一周期分ずらした-720度超-360度以下で示すとき、一方の単位構造での全てのセル領域だけでなく、他方の単位構造での最小厚さを有する最小厚さセル領域も含めて、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差が等しいことが好ましい。例えば、図5(c)においては、隣接する単位構造10a、10bにおいて、一方の単位構造10aの各セル領域11a~11fでの電磁波の相対反射位相はそれぞれ、0度、-60度、-120度、-180度、-240度、-300度であり、他方の単位構造10bの最小厚さt1を有する最小厚さセル領域11aでの電磁波の相対反射位相は-360度であり、一方の単位構造10aでの全てのセル領域11a~11f、および、他方の単位構造10bでの最小厚さt1を有する最小厚さセル領域11aを含めて、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差の絶対値はいずれも60度であり、等しくなっている。
【0119】
また、誘電体層の一つの単位構造において、最小厚さを有する最小厚さセル領域での電磁波の相対反射位相と、最大厚さを有する最大厚さセル領域での電磁波の相対反射位相との差の絶対値は、360度未満である。また、誘電体層の一つの単位構造において、最小厚さを有する最小厚さセル領域での電磁波の相対反射位相と、最大厚さを有する最大厚さセル領域での電磁波の相対反射位相との差の絶対値は、180度より大きい必要があり、300度以上360度未満であることがより好ましい。例えば、図5(b)に示すように、誘電体層5の単位構造10が6個のセル領域を有する場合、一つの単位構造10において、最小厚さt1を有する最小厚さセル領域11aでの電磁波の相対反射位相と、最大厚さt6を有する最大厚さセル領域11fでの電磁波の相対反射位相との差の絶対値は、360度未満であることが好ましい。例えば、図5(c)においては、誘電体層5の一つの単位構造10では、最小厚さt1を有する最小厚さセル領域11aでの電磁波の相対反射位相は0度であり、最大厚さt6を有する最大厚さセル領域11fでの電磁波の相対反射位相は-300度であり、最小厚さt1を有する最小厚さセル領域11aでの電磁波の相対反射位相と、最大厚さt6を有する最大厚さセル領域11fでの電磁波の相対反射位相との差の絶対値は、300度である。
【0120】
誘電体層の単位構造のサイズ、具体的には、厚さが増加する所定の方向における単位構造の長さは、目的の反射特性に応じて適宜設定される。厚さが増加する所定の方向における単位構造の長さによって、1波長分(位相差:360度)ずれることになるため、反射角を調整することができる。例えば、厚さが増加する所定の方向における単位構造の長さを短くすることで、正反射角に対する反射角の差を大きくすることができ、一方、厚さが増加する所定の方向における単位構造の長さを長くすることで、正反射角に対する反射角の差を小さくすることができる。
【0121】
また、誘電体層の単位構造の断面形状としては、例えば、所定の方向に厚さが段階的に増加する階段形状であってもよく、あるいは、所定の方向に厚さが漸次的に増加するテーパー形状であってもよい。例えば、図5(b)は、誘電体層5の単位構造10が階段形状を有する例であり、図9は、誘電体層5の単位構造10がテーパー形状を有する例である。
【0122】
なお、誘電体層の単位構造は厚さの異なる複数のセル領域を有するが、誘電体層の単位構造の断面形状がテーパー形状を有する場合は、単位構造におけるセル領域の数を無限に多くしたものとみなすことができる。この場合でも、単位構造が有する厚さ分布は、各セル領域での電磁波の相対反射位相が上述した設定になるように設計される。
【0123】
また、誘電体層は、厚さ分布を有する単位構造が複数配置されたものであるため、単位構造の平面視のパターン形状は、隙間なく配列することが可能な形状であればよく、例えば、矩形状、正六角形状等を挙げることができる。例えば、図7(a)~(f)、図8(a)は、誘電体層の単位構造10の平面視のパターン形状が矩形状である例である。
【0124】
誘電体層の単位構造において、隣接するセル領域での往復光路長の差は、各セル領域での電磁波の相対反射位相が上述した設定になるように設計されており、各セル領域の厚さは、隣接するセル領域の厚さの差が、上記の隣接するセル領域での往復光路長の差になるように設定されている。各セル領域の厚さは、電磁波の波長、誘電体層の材料の誘電率、および目的の反射特性に応じて適宜設定される。例えば、誘電体を通過する電磁波の実効波長をλとし、ベースの厚さをαとした場合、各セル領域の厚さは、α+0λ以上、α+2λ以下程度であることが好ましい。ベースの厚さαは、誘電体層の一つの単位構造において、最小厚さを有する最小厚さセル領域の最小厚さと同一とすることができる。ベースの厚さαは、全体的な強度、形成の容易さ等を考慮して適宜設定されるが、電磁波への影響を考慮すると、通常は0.1λ以下程度であることが好ましい。具体的には、電磁波の空気中の波長λが10mmであり、誘電体層の比誘電率が2.57である場合、各セル領域の厚さは、0mm以上8.6mm以下であることが好ましい。なお、セル領域の厚さが0mmである場合とは、反射部材上に位置する当該セル領域には誘電体層が形成されていない形態を意味する。
【0125】
ここで、電磁波の実効波長とは、電磁波が誘電体層等の空気以外の材質中を通過する際の波長を意味する。なお、単に波長という場合は、空気中での波長を意味する。
【0126】
誘電体層の単位構造において、セル領域のピッチや幅は適宜設定される。
【0127】
また、反射部材が、複数の反射素子が配列された部材である場合、誘電体層の単位構造のセル領域のピッチは、反射部材の反射素子のピッチと同じであってもよく異なっていてもよい。誘電体層の単位構造のセル領域のピッチが反射部材の反射素子のピッチと同じである場合には、設計が容易となる。また、例えば、誘電体層の単位構造のセル領域のピッチを、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差を保ったまま狭くすることにより、反射部材の反射素子のピッチとは関係なく、反射特性の制御域を広げることができる。
【0128】
また、誘電体層の一つの単位構造において、セル領域のピッチは等しいことが好ましい。
【0129】
なお、セル領域のピッチとは、1つのセル領域の中心から隣接するセル領域の中心までの距離をいう。
【0130】
また、誘電体層の一つの単位構造において、厚さが増加する所定の方向におけるセル領域の幅は等しいことが好ましい。
【0131】
誘電体層の単位構造において、セル領域の平面視のパターン形状としては、例えば、ストライプ状、同心正方形を辺に平行で互いに垂直な直線で四等分したときの一つの形状、マイクロアレイ状、同心円を互いに垂直な直径で四等分したときの一つの形状である同心四分円状、曲線階段状等が挙げられる。例えば、図7(b)はストライプ状の例であり、図7(d)は同心正方形を辺に平行で互いに垂直な直線で四等分したときの一つの形状の例であり、図7(f)、図8(a)はマイクロアレイ状の例であり、図8(b)は同心四分円状の例であり、図8(c)は曲線階段状の例である。なお、図7(b)は図7(a)の上面図、図7(d)は図7(c)の上面図、図7(f)は図7(e)の上面図である。また、これらの例示された単位構造を隙間なく配置する場合、配列の方向には特に制限はなく、例えば矩形の単位構造を平面視で時計回りに30度回転させた状態で全面に配列させることもでき、必要とされる反射特性設計に応じて単位構造を適切な角度、適切な配列方向を選択し配置すればよい。
【0132】
誘電体層の単位構造は、複数のセル領域を有する。誘電体層の一つの単位構造において、セル領域の数は、例えば、3以上であり、6以上であることが好ましい。誘電体層の一つの単位構造におけるセル領域の数が多いほど、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差を小さくすることができ、反射波の波面を滑らかにすることができる。また、誘電体層の一つの単位構造におけるセル領域の数は多いほど好ましく、上限は特に限定されない。なお、単位構造の断面形状が階段形状である場合、セル領域の数は、階段形状の段数に相当する。また、単位構造の断面形状がテーパー形状である場合、上述したように、テーパー形状は、セル領域の数を無限に多くしたものとみなすことができる。
【0133】
誘電体層は、単位構造として、厚さの異なる3つ以上のセル領域を有する第1の単位構造を少なくとも有する。
【0134】
また、誘電体層は、単位構造として、第1の単位構造のみを有していてもよく、第1の単位構造とは異なる第2の単位構造をさらに有していてもよい。すなわち、誘電体層は、単位構造として、同一の単位構造のみを有していてもよく、互いに異なる単位構造を有していてもよい。誘電体層が、互いに異なる単位構造が複数配置されたものである場合には、周波数選択反射板の全体の反射特性に影響を与えることができる。具体的には、偏波特性の調整、ビームプロファイル(高指向性、拡散、マルチビーム等)に対する影響等が例示される。
【0135】
第1の単位構造および第2の単位構造においては、反射特性を異ならせることができ、例えば、厚さが増加する方向における単位構造の長さ、厚さ分布、セル領域の数、幅、ピッチ、単位構造の平面視のパターン形状、セル領域の平面視のパターン形状の少なくともいずれかを異ならせることができる。
【0136】
また、誘電体層が、単位構造として、互いに異なる単位構造を有する場合、単位構造の種類の数は特に限定されない。
【0137】
誘電体層においては、所定の入射角で入射した入射波に対する反射波の同一位相面の法線ベクトルが所望の反射方向になるように、誘電体層の厚さ分布を適宜選択し、複数の単位構造を配置するが、例えば、入射波を単一の方向に反射する、いわゆる平面波として反射する場合は、誘電体層は、同一の単位構造のみが複数配置されたものであることが好ましく、厚さが増加する方向における単位構造の長さが同じであり、セル領域の平面視のパターン形状がストライプ状であることがより好ましい。例えば、図5(a)~(c)では、誘電体層5は同一の単位構造のみを複数有しており、所定の方向D1における単位構造10a、10bの長さLが同じであり、セル領域11a~11fの平面視のパターン形状がストライプ状である例である。この場合、図5に例示するように、所定の入射角θ1で入射した入射波W1を、単一の反射角θ2で反射させることができ、反射波W2を広がりのない平面波とすることができる。また、図5(a)には、周波数選択反射板の短手方向に対してセル領域のストライプの長手方向が平行である配置が示されているが、これに限定されず、実際の周波数選択反射板においては、セル領域のストライプの長手方向および短手方向は反射特性の設計に応じて任意に設定できる。
【0138】
また、例えば、電磁波を拡散する、すなわち円柱状の波として反射する場合は、誘電体層は、互いに異なる単位構造が複数配置されたものであることが好ましく、厚さが増加する方向における単位構造の長さが異なり、セル領域の平面視のパターン形状がストライプ状である態様を挙げることができる。例えば、図10(a)において、誘電体層5は、互いに異なる3種類の単位構造10aと10b、10cと10dとを有しており、これらの単位構造10aと10b、10cと10dとでは、所定の方向D1における単位構造の長さL1、L2、L3が互いに異なり、セル領域11a~11g、12a~12f、13a~13eの数が互いに異なっている。これにより、図10(b)に示すように、単位構造10aの各セル領域11a~11gでの電磁波の相対反射位相はそれぞれ、0度、-51.4度、-103度、-154度、-206度、-257度、-309度であり、単位構造10b、10cの各セル領域12a~12fでの電磁波の相対反射位相はそれぞれ、0度、-60度、-120度、-180度、-240度、-300度であり、単位構造10dの各セル領域13a~13eでの電磁波の相対反射位相はそれぞれ、0度、-72度、-144度、-216度、-288度であり、単位構造10aと10b、10cと10dとは、反射特性が互いに異なっている。また、図示しないが、セル領域11a~11g、12a~12f、13a~13eの平面視のパターン形状はストライプ状である。この場合、図11に例示するように、所定の入射角θ1で入射した入射波W1を、単位構造に応じて反射角θ2、θ2’、θ2”で反射させ、広がりを持って反射させることができ、反射波W2の波面を広げることができる。
【0139】
また、誘電体層が、単位構造として、互いに異なる単位構造を有する場合、反射特性が互いに異なる複数種類の単位構造を用い、種類毎に単位構造を複数配置し、同じ種類の単位構造が複数配置された領域を平面配列してもよい。例えば、図12においては、反射特性が互いに異なる2種類の単位構造10a、10bを用い、一方の種類の単位構造10aが複数配置された第1領域5aと、他方の種類の単位構造10bが複数配置された第2領域5bとが平面配列されてなる誘電体層5としている。このような態様においては、複数のカバレッジホールに対応することができる。
【0140】
また、例えば、後述の反射部材が周波数選択板であり、互いに異なる周波数帯の電磁波を選択的に反射する複数種類の周波数選択性表面(FSS)を有する場合、それらの周波数選択性表面の周波数選択性に応じて、単位構造の反射特性をそれぞれ設計し、誘電体層を、単位構造として、反射特性が互いに異なる単位構造を有するものとしてもよい。この場合も、例えば図12に示すような配置とすることができる。このような態様においては、デュアルバンドあるいはそれ以上の帯域数に対応することができる。
【0141】
また、誘電体層が、単位構造として、互いに異なる単位構造を有する場合、例えば、n個の単位構造によってn波長分(位相差:n×360度)ずれるように、n個の単位構造の各セル領域での電磁波の相対反射位相が設定されていてもよい。なお、nは2以上の整数である。例えば、図13(a)~(c)は、誘電体層5は、互いに異なる2種類の単位構造10a、10bを有しており、二つの単位構造10a、10bによって2波長分(位相差:720度)ずれるように、二つの単位構造10a、10bの各セル領域11a~11c、12a~12bでの電磁波の相対反射位相が設定されている例である。なお、図13(b)は、電磁波の相対反射位相のレンジを-360度超0度以下として表記したグラフであり、図13(c)は、電磁波の相対反射位相のレンジを-720度超0度以下とし、相対反射位相が360度ずれた実質同位相の点を補完したグラフである。これらの単位構造10a、10bでは、所定の方向D1における単位構造の長さL1、L2が互いに異なり、セル領域11a~11c、12a~12bの数が互いに異なっている。
【0142】
上記の場合、一方の単位構造10aは、3つのセル領域11a~11cを有しているが、他方の単位構造10bは、2つのセル領域12a、12bを有している。このように、誘電体層が、単位構造として、互いに異なる単位構造を有する場合、少なくとも1種類の単位構造が厚さの異なる3つ以上のセル領域を有していればよく、他の種類の単位構造ではセル領域の数が3つ以上であるとは限らず、2つであってもよい。
【0143】
また、入射波および反射波を平面波とする場合、誘電体層は、単位構造が繰り返し配置されている周期構造を有する。なお、「周期構造」とは、単位構造が周期的に繰り返し配置された構造をいう。周期構造における単位構造において、反射特性が同一である単位構造では、厚さが増加する方向における単位構造の長さ、厚さ分布、セル領域の数、幅、ピッチ、単位構造の平面視のパターン形状、セル領域の平面視のパターン形状等を同じにすることができる。また、誘電体層が周期構造を有する場合においても、上述したように、反射特性の異なる単位構造を組み合わせることができる。その場合、組み合わせる単位構造の反射特性は、目的の反射特性に応じて適宜設計され、具体的には、組み合わせる単位構造における、厚さが増加する方向における単位構造の長さ、厚さ分布、セル領域の数、幅、ピッチ、単位構造の平面視のパターン形状、セル領域の平面視のパターン形状等は、目的の反射特性に応じて適宜設定される。
【0144】
一般的に、平面波を正反射方向とは異なる方向に平面波として反射させる反射特性設計においては、例えば反射板の面内x方向と面内y方向の入射・反射特性に分解したのち、x方向、y方向の反射位相分布に変換し、それを単位構造の厚さ分布として組み入れることで設計が可能である。例えば、図14に示すように、反射位相を個別に調整できる同一サイズのセル領域が10×10(i=10、j=10)配置された周波数選択反射板の一部を例として説明する。このとき、必ずしもセル領域の10×10の大きさは単位構造のサイズでないことに留意する必要がある。入射角(θin、φin)の方向から入射する平面波を、反射角(θout、φout)の方向に平面波で反射する場合の(i、j)位置のセル領域に求められる反射位相δi,jは、次式で与えられる。
【0145】
δi,j=2π{p×i×(sinθout×cosφout-sinθin×cosφin)+
p×j×(sinθout×sinφout-sinθin×sinφin)}/λ
ここで、上記式において、
δi,j:位相中心(0,0)に対して(i,j)位置にあるセル領域の反射位相
λ:反射波の波長[m]
p:セル領域の大きさ[m]
θin:入射波のθ傾き
φin:入射波のφ傾き
θout:反射波のθ傾き
φout:反射波のφ傾き
を示す。
【0146】
誘電体層は、例えば、単層であってもよく、多層であってもよい。また、誘電体層は、ベースとなる基材層と、基材層上に配置された凹凸層とを有していてもよい。また、誘電体層は、例えば、全てのセル領域が一体に形成されている単一部材であってもよく、個々のセル領域が別々に形成されており、ブロック状のセル領域が配列されたものであってもよい。
【0147】
(ii)誘電体層の特性
誘電体層は、特定の周波数帯の電磁波を透過すればよく、他の周波数帯の電磁波を透過してもよく、しなくてもよい。
【0148】
誘電体層の誘電正接は、比較的小さいことが好ましい。誘電体層の誘電正接が小さいことにより、誘電損失を小さくすることができ、高周波損失を低減することができる。具体的には、対象周波数の電磁波に対する誘電体層の誘電正接は、0.01以下であることが好ましい。また、誘電体層の誘電正接は小さいほど好ましく、下限値は特に限定されない。
【0149】
また、誘電体層の誘電率は、比較的高いことが好ましい。誘電体層の誘電率が高いことにより、誘電体層の厚さを薄くできる効果が期待できる。具体的には、対象周波数の電磁波における誘電体層の誘電率は、2以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましく、正反射角に対する反射角の差を大きくする場合は3以上であることがさらに好ましい。
【0150】
ここで、誘電体層の誘電正接および誘電率は、共振器法により測定することができる。
【0151】
(iii)誘電体層の材料
誘電体層の材料としては、所定の電磁波を透過することができる誘電体であれば特に限定されず、例えば樹脂、ガラス、石英、セラミックス等を用いることができる。中でも、凹凸構造の形成の容易さを考慮すると、樹脂が好適である。
【0152】
樹脂は、所定の電磁波を透過することができるものであれば特に限定されないが、上記電磁波の吸収が比較的少なく、上記電磁波の透過率が比較的高いものであることが好ましい。また、樹脂は、上述の誘電正接を満たすものであることが好ましく、上述の誘電率を満たすものであることがより好ましい。このような樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS樹脂、PLA樹脂、オレフィン系樹脂、あるいはそれらの共重合体等を挙げることができる。中でも、ポリカーボネートは、寸法安定性に優れ、高周波損失も少なく、好適である。
【0153】
また、誘電体層は、フィラーをさらに含有することができる。誘電体層がフィラーを含有することにより、誘電体層の誘電率や機械的強度を調整することができる。フィラーの誘電率は、樹脂の誘電率よりも高いことが好ましい。これにより、誘電体層の誘電率を高くすることができ、必要な誘電体層の厚さを薄くすることができる。高誘電率フィラーとしては、特に限定されず、例えば、ガラスやシリカ等の無機粒子や微細繊維等を挙げることができる。
【0154】
フィラーの材質、形状、サイズ、含有量は、目的とする誘電率や機械的強度、分散性の難易度等から適宜選定することができる。フィラーのサイズは、誘電体を通過する電磁波の実効波長よりも十分に小さい必要があり、電磁波の実効波長をλとした場合、フィラーの球相当の直径は例えば0.01λ以下であることが好ましい。ただし、フィラーのサイズがナノメートルオーダーに近づくと均一な分散が難しくなる傾向があるため、加工プロセスの負荷が増大するおそれがある。また、誘電体層中のフィラーの含有量は、誘電体及びフィラーの材質の組み合わせ、フィラーの形状、フィラーのサイズ等に応じて異なり、適宜調整される。
【0155】
また、誘電体層の凹凸構造を、金型を用いた賦型等で形成する場合、誘電体層に、例えば離型剤や帯電防止剤等を添加してもよい。これらは、一般的なものを適宜選択して使用可能である。また、誘電体層は、例えばカーボンブラックや金属粒子等の導電性を付与するような添加剤やフィラーを含有しないことが好ましい。
【0156】
誘電体層は、通常、光透過性を有する。
【0157】
(iv)誘電体層の形成方法
誘電体層の形成方法としては、所定の凹凸構造を形成することが可能な方法であれば特に限定されず、例えば、樹脂シートの切削、レーザー加工、金型を用いた賦型や真空注型、3Dプリンタによる造形、小片パーツの接合等を挙げることができる。切削、レーザー加工や3Dプリンタ等の、金型を用いない形成方法の場合、目的の反射角に応じたカスタマイズが容易であるため、特殊な設置のシチュエーションや、シミュレーションが困難であるような大規模な周波数選択反射板を設計、開発する場合の設計のチューニングにも好適に用いることができる。金型を用いた賦型の場合には、誘電体からなる基材の上に賦型してもよく、この場合の基材および賦型樹脂は所定の電磁波を透過する材料であれば互いに異なる材料を使用してもよい。また、例えば、反射部材および誘電体層を別々に設計し作製する場合において、所定の入射角および反射角をもつ反射特性を有する誘電体層を予め複数種類準備し、シチュエーションに合わせて誘電体層の種類を選択し、反射部材に対して誘電体層を、法線方向を軸として面内で回転させることで、電磁波の反射方向の微調整を行う場合には、同じ仕様の誘電体層をまとめて作製するほうがコスト的に有利になることがあり、その場合は金型を用いた賦型の手法が好適である。
【0158】
(b)反射部材
本態様における反射部材は、特定の周波数帯の電磁波を反射する部材である。
【0159】
反射部材としては、特定の周波数帯の電磁波を反射するものであれば特に限定されず、例えば、特定の周波数帯の電磁波のみを反射するものであってもよく、あるいは、特定の周波数帯の電磁波だけでなく他の周波数帯の電磁波も反射するものであってもよい。中でも、反射部材は、特定の周波数帯の電磁波のみを反射する波長選択機能を有することが好ましい。
【0160】
特定の周波数帯の電磁波だけでなく他の周波数帯の電磁波も反射する反射部材としては、例えば、周波数選択反射板の全面に配置された反射層を挙げることができる。例えば、図15は、反射部材2が反射層7である例である。図15において、反射層7は、周波数選択反射板1の全面に配置されている。
【0161】
反射層の材料としては、特定の周波数帯の電磁波を反射することができる材料であれば特に限定されず、例えば、金属材料、カーボン、ITO等の導電性材料を挙げることができる。
【0162】
反射層の厚さとしては、特定の周波数帯の電磁波を反射することができる厚さであれば特に限定されず、適宜設定される。
【0163】
また、特定の周波数帯の電磁波のみを反射する反射部材としては、特定の周波数帯の電磁波のみを反射する波長選択機能を有するものであればよく、例えば、周波数選択板を挙げることができる。
【0164】
なお、周波数選択板については、上記第1態様に記載した内容と同様である。例えば、図5(b)は、反射部材2が周波数選択板である例であり、反射部材2は、誘電体基板4と、誘電体基板4の誘電体層5側の面に配列された複数の反射素子3とを有している。
【0165】
また、反射素子の形状や構成についても、上記第1態様に記載した内容と同様である。
【0166】
また、周波数選択板は、すなわち反射部材は、電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有することが好ましい。このような反射部材においては、反射素子の寸法や形状を変化させることによって、反射素子毎に共振周波数を変化させ、電磁波の反射位相を制御できる。そのため、周波数選択板が反射位相制御機能を有する場合には、誘電体層の厚さおよび反射素子の寸法や形状によって電磁波の反射位相分布を制御することにより、電磁波の反射特性を制御できる。よって、例えば周波数選択反射板の面内の直交する2方向(例えばx軸方向、y軸方向)の反射特性を周波数選択板および誘電体層で個別に設計でき、また誘電体層の厚さを抑えつつ、所望の電磁波の反射特性を得ることができる。
【0167】
反射位相制御機能を有する周波数選択板としては、一般的な周波数選択性表面を適用することができる。これらは設計に一長一短はあるが、いずれも反射素子の寸法や形状を変化させることで電磁波の反射位相を変化させることが可能である。
【0168】
反射素子の寸法としては、反射素子の形状に応じて適宜選択される。
【0169】
誘電体基板は、光透過性を有していてもよく、光不透過性を有していてもよい。
【0170】
(c)電磁波の反射方向の制御
本態様の周波数選択反射板においては、誘電体層の単位構造の各セル領域の厚さを変えることで、セル領域毎に誘電体層での往復光路長を変化させ、電磁波の相対反射位相を制御できる。これにより、誘電体層の単位構造のサイズおよび平面視パターン、ならびに、誘電体層の単位構造のセル領域の数および厚さを調整することで、所定の方向から入射した電磁波の反射方向を制御できる。
【0171】
また、反射部材が、周波数選択板であり、かつ、反射位相制御機能を有する部材である場合、誘電体層の単位構造の各セル領域の厚さを変化させることによって、セル領域毎に誘電体層での往復光路長を変化させるだけでなく、反射部材の反射素子の寸法や形状を変化させることによって、反射素子毎の共振周波数を変化させ、電磁波の反射位相を制御でき、これにより、反射特性制御に関する設計の自由度を拡大することができる。
【0172】
この場合、反射部材での反射制御方向と誘電体層での反射制御方向とを分け、周波数選択反射板の全体で二次元的な反射方向制御を行うということも可能になる。また、反射部材および誘電体層での反射制御方向をオーバーラップさせる場合は、例えば、ある程度決まった方向に反射させる反射位相分布を反射部材で実現し、さらに誘電体層で微調整することもできる。この場合、誘電体層の厚さを薄くできるという利点がある。
【0173】
誘電体層の厚さ分布および反射部材の反射素子の寸法分布の配置としては、例えば、図16(a)、(b)に示すように、反射部材2の反射素子3の寸法が大きくなるにつれて、誘電体層5の単位構造10のセル領域11a~11fの厚さが厚くなるように、誘電体層5および反射部材2を配置できる。このような態様においては、誘電体層の厚さを抑えることができる。これにより、誘電体層が薄くなるため、周波数選択反射板の軽量化や低コスト化を図ることができ、また、反射角が大きくなった場合でも、反射波が誘電体層の凹凸構造側の面に当たりにくくなる。
【0174】
また、誘電体層の厚さ分布および反射部材の反射素子の寸法分布の配置としては、例えば、図17(a)、(b)に示すように、反射部材2の反射素子3の寸法は方向D2に沿って大きくなり、誘電体層5の単位構造10のセル領域11a~11fの厚さは方向D2に垂直な方向D1に沿って厚くなるように、誘電体層5および反射部材2を配置してもよい。
【0175】
なお、図17(a)、(b)においては、一つのセル領域において、反射素子の寸法が異なるため、反射素子の寸法に応じて、一つのセル領域での電磁波の相対反射位相が部分的に異なることになる。このような場合においても、厚さが増加する所定の方向D1に切り取った場合、上述したグラフにおいて、各点が同一直線上にあることになる。
【0176】
また、反射部材および誘電体層を別々に設計し組み合わせる仕様の場合、反射部材に対して、誘電体層を、法線方向を軸として面内で回転させて、反射部材に対する、誘電体層の単位構造のセル領域の配列方向の向きを調整することにより、電磁波の反射方向を微調整することもできる。
【0177】
また、上述したように、誘電体層の単位構造において、厚さが増加する所定の方向における単位構造の長さを調整することにより、反射特性を制御できる。例えば、厚さが増加する所定の方向における単位構造の長さを短くすることで、電磁波の反射角を大きくすることができ、一方、厚さが増加する所定の方向における単位構造の長さを長くすることで、電磁波の反射角を小さくすることができる。
【0178】
なお、誘電体層の単位構造において、厚さが増加する所定の方向における単位構造の長さとは、誘電体層の単位構造が、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する場合において、その所定の方向における単位構造の長さをいう。例えば図15においては、誘電体層5の単位構造10では、所定の方向D1に厚さが増加しており、この所定の方向D1における単位構造10の長さはLである。
【0179】
なお、上述したように、周波数選択反射板における反射位相の面内分布設計を実現する誘電体層の凹凸構造の面内配置は、反射部材の反射素子の面内配置に対して一定の位置関係である必要はなく、誘電体層の凹凸構造を反射素子の面内配置に対してずらして配置しても反射特性に大きな影響を与えない。そのため、反射部材が、周波数選択板であり、かつ、反射位相制御機能を有する部材である場合、誘電体層および反射部材をそれぞれ独立して設計することが可能である。
【0180】
(d)他の構成
本態様の周波数選択反射板は、上記の反射部材および誘電体層の他に、必要に応じて他の構成を有していてもよい。
【0181】
(i)接着層
本態様の周波数選択反射板は、上記反射部材と上記誘電体層との間に接着層を有していてもよい。接着層によって、反射部材および誘電体層を接着することができる。また、反射部材が複数の反射素子が配列された部材である場合には、接着層によって、反射素子による凹凸を平坦化することができ、反射部材上に誘電体層を積層する際の反射素子による凹凸の影響を抑えることができる。例えば、図5(b)において、反射部材2と誘電体層5との間には接着層6が配置されている。
【0182】
接着層には、例えば、接着剤や粘着剤を用いることができ、公知の接着剤および粘着剤の中から適宜選択して用いることができる。その場合、接着剤や粘着剤は、不導体である必要がある。また、接着剤や粘着剤が液状である場合は、均一に塗り広げることができ、気泡の噛みこみを除去できる程度の流動性を持つことが好ましい。また、接着剤や粘着剤がシート状である場合は、厚みが均一であることが好ましく、かつ貼合界面の凹凸に追従し、気泡の噛みこみを抑制することが可能な程度の柔軟性を有することが好ましい。
【0183】
接着層の厚さとしては、所望の接着力を得ることができる厚さであり、均一であることが好ましい。また、反射部材が複数の反射素子が配列された部材である場合には、接着層の厚さは、平坦化の点から、反射素子の厚さと同等以上であることが好ましい。このとき、接着層が反射素子の厚さよりも厚い場合は、反射素子が接着層に埋め込まれた状態となる。また、接着層の厚さは、対象となる電磁波の実効波長よりも十分に小さいことが好ましく、電磁波の実効波長をλとした場合、具体的には0.01λ以下であることが好ましい。
【0184】
(ii)空間
本態様の周波数選択反射板は、上記反射部材と上記誘電体層との間に空間を有していてもよい。例えば、図18において、反射部材2と誘電体層5との間には空間8が配置されている。
【0185】
反射部材と誘電体層との間に空間が配置されている場合、反射部材と誘電体層との距離は一定であることが好ましい。これにより、空間での光路長を揃えることができる。
【0186】
(iii)保護部材
本態様の周波数選択反射板は、上記誘電体層の上記反射部材とは反対側の面に保護部材を有していてもよい。保護部材によって、誘電体層を保護することができる。また、保護部材によって、意匠性を付与することもできる。
【0187】
(iv)グラウンド層
本態様の周波数選択反射板は、上記反射部材の上記誘電体層とは反対側の面にグラウンド層を有していてもよい。グラウンド層によって、周波数選択反射板の裏面に存在する物体との干渉を遮断し、ノイズの発生を抑えることができる。また、グラウンド層は、波長選択性を有しない反射部材の一部にもなり得る。グラウンド層としては、例えば、金属層、金属メッシュ、カーボン膜、ITO膜等の一般的な導電層を用いることができる。
【0188】
(v)平坦化層
本態様の周波数選択反射板は、上記反射部材と上記誘電体層との間に平坦化層を有していてもよい。反射部材が複数の反射素子が配列された部材である場合には、平坦化層によって、反射素子による凹凸を平坦化することができ、反射部材上に誘電体層を積層する際の反射素子による凹凸の影響を抑えることができる。なお、ここでいう平坦化層は、接着層とは別に配置するものをいう。反射素子を包埋する状態で配置された電離放射線硬化樹脂層を例示することができる。また、反射部材と誘電体層との間に空間を設ける形態の場合は、平坦化層に反射素子を保護する機能を持たせてもよい。
【0189】
(vi)反射防止層
高周波の場合には誘電体層界面での反射の影響も考えられるため、本態様の周波数選択反射板においては、必要に応じて、誘電体層と空気との界面に反射防止層を配置してもよい。反射防止層は、例えば、誘電率の異なる多層構造を有していてもよく、電磁波の実効波長よりも小さい凹凸構造を有していてもよい。
【0190】
(3)周波数選択反射板の位置合わせ
本実施態様においては、基材の第1アライメントマークを用いて、複数の周波数選択反射板の位置合わせを行うことができる。例えば、基材の第1アライメントマークを基準として、周波数選択反射板のエッジの位置を合わせて、周波数選択反射板の位置合わせを行ってもよい。また、例えば、周波数選択反射板が第2アライメントマークを有しており、基材の第1アライメントマークを基準として、周波数選択反射板の第2アライメントマークの位置を合わせて、周波数選択反射板の位置合わせを行ってもよい。
【0191】
例えば図1においては、基材21が十字形状の第1アライメントマーク22を有しており、基材21の第1アライメントマーク22を基準として、周波数選択反射板1のエッジの位置を合わせて、周波数選択反射板1の位置合わせを行う。具体的には、周波数選択反射板1の外周領域が光不透過性を有しており、基材21が光透過性を有し、第1アライメントマーク22が光不透過性を有する場合には、透過光によって基材21の第1アライメントマーク22および周波数選択反射板1のエッジを検出し、周波数選択反射板1の位置合わせを行うことができる。また、周波数選択反射板1の外周領域が光反射性を有しており、第1アライメントマーク22が光反射性を有する場合には、反射光によって基材21の第1アライメントマーク22および周波数選択反射板1のエッジを検出し、周波数選択反射板1の位置合わせを行うことができる。
【0192】
周波数選択反射板の外周領域が光不透過性を有する場合について、例えば第1態様の周波数選択反射板の場合には、反射部材の誘電体基板を光不透過性とする、反射部材の基材側の面の全面にグラウンド層を配置する、あるいは、反射部材の基材側の面の全面または外周領域のみに、金属材料または樹脂を含有する遮光層を配置することにより、周波数選択反射板の外周領域を光不透過性とすることができる。
【0193】
また、周波数選択反射板の外周領域が光不透過性を有する場合について、例えば第2態様の周波数選択反射板の場合には、反射部材の誘電体基板を光不透過性とする、反射部材の基材側の面の全面にグラウンド層を配置する、反射部材を、周波数選択反射板の全面に配置される反射層とする、あるいは、反射部材の基材側の面の全面または外周領域のみに、金属材料または樹脂を含有する遮光層を配置することにより、周波数選択反射板の外周領域を光不透過性とすることができる。
【0194】
また、周波数選択反射板の外周領域が光反射性を有する場合について、例えば第1態様の周波数選択反射板の場合には、反射部材の基材側の面の全面にグラウンド層を配置する、あるいは、反射部材の基材側の面の全面または外周領域のみに、金属材料を含有する遮光層を配置することにより、周波数選択反射板の外周領域を光反射性とすることができる。
【0195】
また、周波数選択反射板の外周領域が光反射性を有する場合について、例えば第2態様の周波数選択反射板の場合には、反射部材の基材側の面の全面にグラウンド層を配置する、反射部材を、周波数選択反射板の全面に配置される反射層とする、あるいは、反射部材の基材側の面の全面または外周領域のみに、金属材料を含有する遮光層を配置することにより、周波数選択反射板の外周領域を光反射性とすることができる。
【0196】
また、例えば図19においては、基材21が円形状の第1アライメントマーク22を有し、周波数選択反射板1が中抜きの円形状の第2アライメントマーク24を有しており、基材21の第1アライメントマーク22を基準として、周波数選択反射板1の第2アライメントマーク24の位置を合わせて、周波数選択反射板1の位置合わせを行う。具体的には、基材21が光透過性を有し、第1アライメントマーク22が光不透過性を有しており、第2アライメントマーク24が光不透過性を有する場合であって、周波数選択反射板1の反射部材の誘電体基板が光透過性を有する場合には、透過光によって基材21の第1アライメントマーク22および周波数選択反射板1の第2アライメントマーク24を検出し、周波数選択反射板1の位置合わせを行うことができる。また、第1アライメントマーク22が光反射性を有しており、第2アライメントマーク24が光反射性を有する場合であって、周波数選択反射板1の反射部材の誘電体基板が光透過性を有する場合には、反射光によって基材21の第1アライメントマーク22および周波数選択反射板1の第2アライメントマーク24を検出し、周波数選択反射板1の位置合わせを行うことができる。
【0197】
なお、周波数選択反射板の反射部材を構成する反射素子は、光不透過性や光反射性を有する場合がある。このような場合であっても、例えば、反射素子の大きさと、第1アライメントマークおよび第2アライメントマークの大きさとを、大きく異ならせることにより、第1アライメントマークおよび第2アライメントマークによる透過光または反射光と、反射素子による透過光または反射光とを区別できる。また、上記のような場合であっても、例えば、周波数選択反射板において、第2アライメントマークの周囲に反射素子を配置しないことにより、第1アライメントマークおよび第2アライメントマークによる透過光または反射光と、反射素子による透過光または反射光とを区別できる。よって、周波数選択反射板の位置合わせが可能である。
【0198】
なお、周波数選択反射板において、第2アライメントマークの周囲に反射素子を配置しない場合、反射素子が配置されていない領域の合計面積は、周波数選択反射板全体の面積に対して十分小さいため、反射特性にはほとんど影響がないと考えられる。
【0199】
また、例えば図20においては、基材21が十字形状の第1アライメントマーク22を有し、周波数選択反射板1が四角形状の貫通孔である第2アライメントマーク24を有しており、基材21の第1アライメントマーク22を基準として、周波数選択反射板1の第2アライメントマーク24の位置を合わせて、周波数選択反射板1の位置合わせを行う。具体的には、基材21が光透過性を有し、第1アライメントマーク22が光不透過性を有する場合には、透過光によって周波数選択反射板1の貫通孔(第2アライメントマーク24)を介して基材21の第1アライメントマーク22を検出し、周波数選択反射板1の位置合わせを行うことができる。また、第1アライメントマーク22が光反射性を有する場合には、反射光によって周波数選択反射板1の貫通孔(第2アライメントマーク24)を介して基材21の第1アライメントマーク22を検出し、周波数選択反射板1の位置合わせを行うことができる。
【0200】
また、図示しないが、基材が貫通孔である第1アライメントマークを有し、周波数選択反射板が貫通孔である第2アライメントマークを有する場合、基材の第1アライメントマークを基準として、周波数選択反射板の第2アライメントマークの位置を合わせて、周波数選択反射板の位置合わせを行う。具体的には、透過光によって周波数選択反射板の貫通孔(第2アライメントマーク)および基材の貫通孔(第1アライメントマーク)を検出し、周波数選択反射板の位置合わせを行うことができる。また、基材の貫通孔(第1アライメントマーク)にピンを挿入し、ピンに周波数選択反射板の貫通孔(第2アライメントマーク)を嵌めることにより、周波数選択反射板の位置合わせを行うこともできる。この場合、ピンにより、基材に周波数選択反射板を固定できる。
【0201】
なお、第2アライメントマークが貫通孔である場合には、周波数選択反射板において、第2アライメントマークの部分には反射素子が存在しないことになる。この場合、周波数選択反射板において、反射素子が存在しない、第2アライメントマークである貫通孔の合計面積は、周波数選択反射板全体の面積に対して十分小さいため、反射特性にはほとんど影響がないと考えられる。
【0202】
(a)第2アライメントマーク
本実施態様において、周波数選択反射板は第2アライメントマークを有していてもよい。第2アライメントマークは、周波数選択反射板の位置合わせを行うためのマークである。
【0203】
第2アライメントマークは、光不透過性を有していてもよい。また、第2アライメントマークは、光反射性を有していてもよい。これらの第2アライメントマークの光学特性は、透過光および反射光のいずれにより第2アライメントマークを検出するのかに応じて適宜選択される。
【0204】
第2アライメントマークの透過率や反射率は、第2アライメントマークを透過光または反射光によって検出可能であれば特に限定されず、第2アライメントマークの材料や厚さ等に応じて適宜設定できる。
【0205】
また、第2アライメントマークは、周波数選択反射板を貫通する貫通孔であってもよい。
【0206】
第2アライメントマークの平面視形状は、特に限定されず、一般的なアライメントマークの平面視形状と同様である。第2アライメントマークの平面視形状の具体例は、上記第1アライメントマークと同様である。
【0207】
第2アライメントマークの大きさや線幅は、第2アライメントマークを検出可能であれば特に限定されない。
【0208】
第2アライメントマークの数は、周波数選択反射板の位置合わせを行うことが可能であれば特に限定されない。
【0209】
周波数選択反射板における第2アライメントマークの位置は、特に限定されないが、通常、第2アライメントマークは周波数選択反射板の外周領域に配置される。
【0210】
第2アライメントマークは、周波数選択反射板の基材側の面に配置されていてもよく、周波数選択反射板の基材とは反対側の面に配置されていてもよい。
【0211】
第2アライメントマークの厚さは、第2アライメントマークを精度良く形成することが可能な厚さであれば特に限定されず、第2アライメントマークの光学特性等に応じて適宜調整される。
【0212】
第2アライメントマークの材料および形成方法は、上記第1アライメントマークと同様である。
【0213】
また、周波数選択反射板の位置合わせが可能であれば、周波数選択反射板の反射部材を構成する反射素子の一部を、第2アライメントマークとして利用してもよい。
【0214】
(b)第2識別マーク
本実施態様においては、例えば図2に示すように、周波数選択反射板1は、周波数選択反射板1を識別するための第2識別マーク25を有していてもよい。例えば図2において、周波数選択反射板1は、「No1」「No2」「No3」「No4」の第2識別マーク25を有している。周波数選択反射板が第2識別マークを有することにより、各周波数選択反射板を容易に識別できるとともに、周波数選択反射板の上下左右や表裏を容易に識別できるので、各周波数選択反射板を正しい位置に確実かつ容易に配置できる。特に、複数の周波数選択反射板の反射特性が互いに異なる場合には有用である。
【0215】
第2識別マークは、光不透過性を有していてもよい。また、第2識別マークは、光反射性を有していてもよい。これらの第2識別マークの光学特性は、上記第2アライメントマークと同様に、透過光および反射光のいずれにより第2識別マークを検出するのかに応じて適宜選択される。
【0216】
第2識別マークの透過率や反射率は、第2識別マークを透過光または反射光によって検出可能であれば特に限定されず、第2識別マークの材料や厚さ等に応じて適宜設定できる。
【0217】
第2識別マークは、識別可能なマークであれば特に限定されず、例えば、文字、記号、図形が挙げられる。具体的には、コードが挙げられる。また、例えば、「No1」「No2」「No3」「No4」、「1」「2」「3」「4」の他に、「天」「地」、「右上」「左上」「右下」「左下」、「UR」「UL」「LR」「LL」が挙げられる。また、第2識別マークは、光学文字認識(Optical Character Recognition;OCR)可能なデータであってもよい。
【0218】
第2識別マークの大きさや線幅は、第2識別マークを検出可能であれば特に限定されない。
【0219】
周波数選択反射板における第2識別マークの位置は、各周波数選択反射板を識別可能であれば特に限定されない。また、周波数選択反射板における第2識別マークの位置により、周波数選択反射板の上下左右を識別することもできる。
【0220】
また、第2識別マークを、各周波数選択反射板の対向する辺に配置する、または各周波数選択反射板の角部に近い位置に配置すれば、各周波数選択反射板が正しい位置に配置されているかを容易に検査または記録できる。例として、4枚の周波数選択反射板を左上、右上、左下、右下の配置で並べる場合、各周波数選択反射板において、4枚の周波数選択反射板全体における中央部に近い角付近に第2識別マークを集めて配置することで、1回の写真撮影により各周波数選択反射板が正しく配置されているかを検査または記録できる。
【0221】
第2識別マークは、周波数選択反射板の基材側の面に配置されていてもよく、周波数選択反射板の基材とは反対側の面に配置されていてもよい。
【0222】
第2識別マークの厚さ、材料、形成方法は、第2アライメントマークの厚さ、材料、形成方法と同様である。
【0223】
第2識別マークの材料が第2アライメントマークの材料と同一である場合には、第2アライメントマークおよび第2識別マークを同時に形成できる。
【0224】
周波数選択反射板が第2識別マークを有する場合、上記基材は第1識別マークを有していてもよく、有していなくてもよい。周波数選択反射板の数が少ない場合、各周波数選択反射板の位置が分かる第2識別マークを用いることにより、上記基材が第1識別マークを有さない場合でも、各周波数選択反射板を正しい位置に配置できる。このような第2識別マークとしては、例えば、「天」「地」、「右上」「左上」「右下」「左下」、「UR」「UL」「LR」「LL」が挙げられる。周波数選択反射板が第2識別マークを有し、上記基材が第1識別マークを有さない場合、周波数選択反射板の数は、3行以下および3列以下であることが好ましい。
【0225】
(c)切断部
周波数選択反射板は、周波数選択反射板の一部が切断された切断部を有していてもよい。この場合、周波数選択反射板は、上記第2識別マークに代えて、切断部を有していてもよく、上記第2識別マークに加えて、切断部を有していてもよい。切断部は、周波数選択反射板の面の向きを示す目印である。周波数選択反射板が切断部を有することにより、周波数選択反射板の上下左右や表裏を容易に識別できるので、各周波数選択反射板を正しい位置に容易に配置できる。
【0226】
切断部としては、周波数選択反射板に非対称な形状を付与することにより、周波数選択反射板の面の向きを示すことができる部分であれば特に限定されず、例えば、周波数選択反射板の1つの角部が切断された角落とし部、いわゆるノッチのような切込み部、いわゆるオリエンテーションフラットのような曲線部の一部が切断された部分が挙げられる。切込み部の平面視形状は、特に限定されず、例えば、V字、U字が挙げられる。
【0227】
(d)凹凸部
本実施態様においては、例えば図21および図22に示すように、隣接する周波数選択反射板1が、互いに対向する側面に、互いに嵌合可能な凹凸部26を有し、凹凸部26が嵌合するように、隣接する周波数選択反射板1が配置されていてもよい。凹凸部の嵌合によって、複数の周波数選択反射板の位置合わせを容易に行うことができる。また、隣接する周波数選択反射板の接触面積が増えるため、強度を高めることができる。
【0228】
また、例えば図22においては、各周波数選択反射板1において、凹凸部26の数が互いに異なっている。このように、各周波数選択反射板において、凹凸部の数、形状、大きさ等が互いに異なる場合には、周波数選択反射板を識別することができる。そのため、複数の周波数選択反射板の反射特性が互いに異なる場合には、周波数選択反射板が第2識別マークを有することにより、各周波数選択反射板を容易に識別できるとともに、周波数選択反射板の上下左右や表裏を容易に識別できるので、各周波数選択反射板を正しい位置に確実かつ容易に配置できる。
【0229】
凹凸部の形状は、嵌合可能な形状であれば特に限定されない。
【0230】
凹凸部の数や大きさは、周波数選択反射板の側面に凹凸部を形成することが可能であれば特に限定されない。
【0231】
隣接する周波数選択反射板において、凹凸部の厚さは等しいことが好ましい。隣接する周波数選択反射板の位置合わせが容易になる。
【0232】
なお、隣接する周波数選択反射板の互いに対向する側面において、凹凸部は隙間なく嵌合していなくてもよい。すなわち、嵌合している凹凸部の間には隙間があってもよい。
【0233】
(4)変形例
本実施態様においては、第1態様の周波数選択反射板の場合、隣接する周波数選択反射板同士が対向する端部領域に、反射素子が配置されていなくてもよい。例えば図23および図24(b)においては、隣接する周波数選択反射板1同士が対向する端部領域27では、誘電体基板4上に反射素子3が配置されていない。
【0234】
このように、隣接する周波数選択反射板同士が対向する端部領域に、反射素子が配置されていない場合には、隣接する周波数選択反射板同士が対向する端部領域に、反射素子が配置されている場合と比較して、基材の一方の面に周波数選択反射板を配置する際の位置ずれのマージンを小さくすることができる。その結果、周波数選択反射板の位置ずれを抑制できる。
【0235】
例えば図24(a)は、隣接する周波数選択反射板1同士が対向する端部領域27に、反射素子3が配置されている例である。一方、例えば図24(b)は、隣接する周波数選択反射板1同士が対向する端部領域27に、反射素子3が配置されていない例である。ここで、図24(a)、(b)において、反射素子3が配置されている領域について着目する。図24(a)では、隣接する周波数選択反射板1同士が対向する端部領域27に、反射素子3が配置されており、隣接する周波数選択反射板1の反射素子3が配置されている領域間の距離は、隣接する周波数選択反射板1間の距離d1、d2である。これに対し、図24(b)では、隣接する周波数選択反射板1同士が対向する端部領域27に、反射素子3が配置されておらず、隣接する周波数選択反射板1の反射素子3が配置されている領域間の距離d3、d4は、隣接する周波数選択反射板1間の距離d1、d2よりも大きくなる。
【0236】
これらの例において、隣接する周波数選択反射板1の反射素子3が配置されている領域間の距離が例えば1mmになるように設計した場合を考える。
【0237】
図24(a)では、隣接する周波数選択反射板1の反射素子3が配置されている領域間の距離、すなわち、隣接する周波数選択反射板1間の距離d1、d2が例えば1mmになるように設計した場合、隣接する周波数選択反射板1同士が重ならないように配置しようとすると、周波数選択反射板1は設計位置から1mmまでずれることができる。
【0238】
これに対し、図24(b)では、隣接する周波数選択反射板1の反射素子3が配置されている領域間の距離d3、d4が例えば1mmになるように設計した場合、隣接する周波数選択反射板1同士が重ならないように配置しようとすると、端部領域27が存在することから、設計位置からの位置ずれのマージンは1mmよりも小さくなる。この場合において、隣接する周波数選択反射板1間の距離d1、d2が0.5mmになるように設計した場合、隣接する周波数選択反射板1同士が重ならないように配置しようとすると、周波数選択反射板1は設計位置から0.5mmまでずれることができる。
【0239】
よって、隣接する周波数選択反射板同士が対向する端部領域に、反射素子が配置されていない場合には、隣接する周波数選択反射板同士が対向する端部領域に、反射素子が配置されている場合と比較して、周波数選択反射板の設計位置からの位置ずれのマージンを小さくすることができる。これにより、周波数選択反射板の位置ずれを抑制できる。
【0240】
ここで、複数の周波数選択反射板の反射特性が互いに異なる場合には、例えば、各周波数選択反射板による反射ビームが重なり合うことで、反射構造体全体による反射ビームを形成できる。そのため、複数の周波数選択反射板の反射特性が互いに異なる場合には、複数の周波数選択反射板の反射特性が同一である場合と比較して、周波数選択反射板の位置ずれによる、反射構造体全体の反射ビームプロファイルへの影響が大きい。よって、複数の周波数選択反射板の反射特性が互いに異なる場合には、周波数選択反射板の位置ずれによって、反射構造体全体の反射ビームプロファイルが乱れる可能性がある。
【0241】
したがって、複数の周波数選択反射板の反射特性が互いに異なる場合には、隣接する周波数選択反射板同士が対向する端部領域に、反射素子が配置されていないことにより、周波数選択反射板の位置ずれを抑制することができ、その結果、反射構造体全体による反射ビームプロファイルの乱れを抑制できる。
【0242】
隣接する周波数選択反射板同士が対向する端部領域に、反射素子が配置されていない場合、隣接する周波数選択反射板同士が対向する端部領域に、反射素子が配置されている場合と比較して、反射構造体全体における電磁波の反射強度が低下する。隣接する周波数選択反射板同士が対向する端部領域に、反射素子が配置されている反射構造体における電磁波の反射強度を100%としたとき、隣接する周波数選択反射板同士が対向する端部領域に、反射素子が配置されていない反射構造体における電磁波の反射強度は、例えば85%超であることが好ましい。これにより、端部領域に反射素子が配置されていないことによる、電磁波の反射強度の低下を抑制できる。
【0243】
(5)周波数選択反射板のその他の点
本実施態様における周波数選択反射板のサイズは、基材のサイズや、反射構造体の用途等に応じて適宜選択される。中でも、第1態様の周波数選択反射板の場合、周波数選択反射板のサイズは、例えば、150mm角以上が好ましく、200mm角以上がより好ましい。例えば、第1態様の周波数選択反射板の場合、周波数選択反射板を所望のサイズになるように加工する際に、端部において反射素子が欠損する場合がある。このような場合において、周波数選択反射板のサイズを、上記のように比較的大きくすることにより、周波数選択反射板全体に対して、反射素子が欠損している領域の割合を小さくすることができ、反射素子の欠損による、反射特性への影響を少なくすることができる。
【0244】
本実施態様において、複数の周波数選択反射板の反射特性は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0245】
複数の周波数選択反射板の反射特性が互いに異なる場合、各周波数選択反射板の反射特性は、例えば、電磁波が拡散するように設計してもよく、電磁波が収束するように設計してよい。また、各周波数選択反射板の反射特性は、球面波を平面波に変換するように設計してもよい。また、各周波数選択反射板の反射特性は、マルチビームの反射構造体となるように設計してもよい。
【0246】
周波数選択反射板の第1態様においては、反射部材において、寸法の異なる複数の反射素子が配列されており、複数の周波数選択反射板における反射素子の配列が互いに異なる場合、複数の周波数選択反射板の反射特性が互いに異なるようになる。
【0247】
例えば図25に示すように、周波数選択反射板1は、互いに外径が異なる複数のリング状の反射素子3が配列された反射部材2を有する。4つの周波数選択反射板1において、反射素子3の配列は互いに異なっている。このような場合、複数の周波数選択反射板の反射特性が互いに異なるようになる。
【0248】
また、周波数選択反射板の第2態様においては、誘電体層において、厚さの異なる複数のセル領域が配列されており、複数の周波数選択反射板におけるセル領域の配列が互いに異なる場合、複数の周波数選択反射板の反射特性が互いに異なるようになる。
【0249】
複数の周波数選択反射板の反射特性が互いに異なる場合については、国際公開第2023/027195号を参照できる。
【0250】
本実施態様における周波数選択反射板は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する。電磁波の周波数帯は、直進性が強いマイクロ波以上の周波数帯であることが好ましい。電磁波の周波数帯は、例えば、2.5GHz以上が好ましく、24GHz以上がより好ましく、24GHz以上300GHz以下がさらに好ましい。電磁波の周波数帯が上記範囲であれば、本実施態様の反射構造体を第5世代移動通信システム、いわゆる5Gに利用することができる。
【0251】
本実施態様における周波数選択反射板は、例えば、通信用の周波数選択反射板として用いることができ、中でも、移動通信用の周波数選択反射板として好適である。
【0252】
3.他の構成
本実施態様の反射構造体は、上記の周波数選択反射板および基材の他に、必要に応じて他の構成を有していてもよい。
【0253】
(1)接着部
本実施態様の反射構造体においては、例えば図26に示すように、隣接する周波数選択反射板1の間に接着部28が配置されていてもよい。接着部によって、隣接する周波数選択反射板の間が補強され、全体として強度を高めることができる。
【0254】
接着部には、例えば、接着剤や粘着剤を用いることができ、公知の接着剤および粘着剤の中から適宜選択して用いることができる。接着剤および粘着剤は、液状であってもよく、シート状であってもよい。
【0255】
接着部の厚さとしては、所望の接着力を得ることができれば特に限定されない。
【0256】
(2)第2の接着層
本実施態様の反射構造体においては、基材と周波数選択反射板との間に第2の接着層を配置できる。第2の接着層は、周波数選択反射板を基材に直接的または間接的に接着させるための層である。なお、図3(b)および図4(c)において、第2の接着層は省略されている。
【0257】
第2の接着層には、例えば、接着剤や粘着剤を用いることができ、公知の接着剤および粘着剤の中から適宜選択して用いることができる。
【0258】
第2の接着層の厚さとしては、所望の接着力を得ることができれば特に限定されない。
【0259】
(3)固定部材
本実施態様の反射構造体を、壁等に取り付けて使用する場合には、上記基材の上記周波数選択反射板とは反対側の面に、反射構造体を取り付けるための機構を有する固定部材を配置してもよい。また、固定部材と周波数選択反射板との干渉を抑えるために、固定部材と周波数選択反射板との間に金属層を配置してもよく、固定部材が金属層を兼ねてもよい。また、本実施態様の反射構造体を壁等に取り付ける場合に、設計した電磁波の入射方向および反射方向と、実際の電磁波の入射方向および反射方向とのずれを補正できるように、固定部材は周波数選択反射板の法線方向の角度を可変にする機構を有していてもよい。
【0260】
(4)干渉緩和層
本実施態様の反射構造体は、基材の周波数選択反射板とは反対側の面に、反射構造体を設置する面との相互作用による特性変化を緩和するための干渉緩和層を有していてもよい。干渉緩和層としては、空気に近い誘電率を持ち、接地面と反射部材との相互作用が小さくなる適切な距離を確保できれば特に限定されず、例えば、誘電率が空気に近いウレタンフォーム等の発泡体、空気を多く含むプラスチックダンボールを用いることができる。
【0261】
また、周波数選択反射板がグラウンド層を有しない場合には、基材と周波数選択反射板との間の干渉を抑えるために、基材と周波数選択反射板との間に干渉緩和層を配置してもよく、基材自体を干渉緩和層としてもよい。基材と周波数選択反射板との間に干渉緩和層を配置する場合は、基材の第1アライメントマークに干渉しないように、干渉緩和層の形状または光透過性等を調整したり、干渉緩和層に追加のアライメントマークを配置したりする等の一般的な対応を行ってもよい。
【0262】
II.反射構造体の第2実施態様
本開示における反射構造体の第2実施態様は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を有する反射構造体であって、第1アライメントマークを有する基材と、上記基材の一方の面に配置された上記周波数選択反射板と、を有し、上記周波数選択反射板が、上記基材の一方の面に配置され、上記電磁波を反射する反射部材と、上記基材の上記反射部材側の面に並べて配置され、上記電磁波を透過する、複数の誘電体層と、を有し、隣接する上記誘電体層間の距離が、上記電磁波の波長の1/2未満であり、上記誘電体層は、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、上記誘電体層の上記単位構造は、厚さの異なる複数のセル領域を有し、上記誘電体層の各単位構造では、上記単位構造の上記所定の方向の長さを横軸とし、上記電磁波が上記誘電体層を透過し上記反射部材で反射され上記誘電体層を再度透過して上記電磁波の入射側に放出される際の相対反射位相を縦軸とし、上記電磁波の相対反射位相の値が-360度超0度以下であるグラフに、各セル領域の上記所定の方向の中心位置および各セル領域での上記電磁波の相対反射位相に対応する点をプロットし、最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点を通る直線を引いたとき、各点が同一直線上にあり、上記誘電体層が、上記単位構造として、厚さの異なる3つ以上の上記セル領域を有する第1の単位構造を少なくとも有し、上記誘電体層の厚さ分布によって上記電磁波の相対反射位相分布を制御することにより、上記電磁波の反射方向を制御する。
【0263】
図27は、本実施態様の反射構造体の一例を示す概略平面図である。図27に示すように、反射構造体20は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板1を有するものであり、第1アライメントマーク22を有する基材21と、基材21の一方の面に配置された周波数選択反射板1と、を有している。周波数選択反射板1は、基材21の一方の面に配置され、電磁波を反射する反射部材2と、基材21の反射部材2側の面に並べて配置され、電磁波を透過する、複数の誘電体層5と、を有する。隣接する誘電体層5の間の距離d5、d6は、特定の周波数帯の電磁波の波長の1/2未満となっている。
【0264】
例えば図27においては、基材21が十字形状の第1アライメントマーク22を有しており、基材21の第1アライメントマーク22を基準として、誘電体層5のエッジの位置を合わせて、複数の誘電体層5の位置合わせを行う。
【0265】
ここで、上述したように、リフレクトアレイではないが、複数のサブアレイが並べて配置されたフェーズドアレイアンテナにおいては、各サブアレイでの電磁波の位相を揃え、電磁波の強度を強くするために、通常、隣接するサブアレイ間の距離は、電磁波の波長の1/2未満とされている。
【0266】
そのため、複数の誘電体層が並べて配置された周波数選択反射板を有する反射構造体においても、例えば各誘電体層での反射波の位相を揃え、反射波の強度を強くする等、反射構造体全体での反射波の波面の乱れを抑制するためには、隣接する誘電体層間の距離は、電磁波の波長の1/2未満とすることが望ましいと考えられる。
【0267】
本実施態様においては、基材が第1アライメントマークを有することにより、複数の誘電体層の位置合わせを精度良く行うことができる。そのため、隣接する誘電体層間の距離の精度を確保できる。よって、隣接する誘電体層間の距離が、特定の周波数帯の電磁波の波長の1/2未満となるように、複数の誘電体層を高い位置精度でタイリングすることができる。したがって、反射構造体全体での反射波の波面の乱れを抑制して、所望の反射特性を得ることができるとともに、反射構造体の大面積化が可能である。
【0268】
以下、本実施態様の反射構造体の各構成について説明する。
【0269】
1.基材
本実施態様における基材は、周波数選択反射板を支持する部材であり、第1アライメントマークを有する。基材については、上記第1実施態様と同様である。
【0270】
第1アライメントマークは、誘電体層の位置合わせを行うためのマークである。第1アライメントマークについては、上記第1実施態様と同様である。
【0271】
また、後述するように、反射部材が反射層を有する場合であって、反射部材が、誘電体基板と、誘電体基板の全面に配置された反射層とを有する場合、誘電体基板が基材を兼ねており、誘電体基板が第1アライメントマークを有していてもよい。
【0272】
また、後述するように、反射部材が複数の反射素子を有する場合であって、反射部材が、誘電体基板と、誘電体基板の少なくとも一方の面に配置された複数の反射素子とを有する場合、誘電体基板が基材を兼ねており、誘電体基板が第1アライメントマークを有していてもよい。
【0273】
本実施態様においては、基材は、誘電体層の位置を識別するための第3識別マークを有していてもよい。基材が第3識別マークを有することにより、各誘電体層の位置を容易に識別できるので、各誘電体層を正しい位置に確実かつ容易に配置できる。特に、周波数選択反射板において、複数の誘電体層での反射特性が互いに異なる場合には、有用である。
【0274】
第3識別マークについては、上記第1実施態様における第1識別マークと同様である。
【0275】
2.周波数選択反射板
本実施態様における周波数選択反射板は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する部材である。また、本実施態様における周波数選択反射板は、基材の一方の面に配置され、電磁波を反射する反射部材と、基材の反射部材側の面に並べて配置され、電磁波を透過する、複数の誘電体層と、を有する。本実施態様においては、隣接する誘電体層間の距離が、電磁波の波長の1/2未満である。また、本実施態様における周波数選択反射板においては、誘電体層は、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、誘電体層の単位構造は、厚さの異なる複数のセル領域を有し、誘電体層の各単位構造では、単位構造の所定の方向の長さを横軸とし、電磁波が誘電体層を透過し反射部材で反射され誘電体層を再度透過して電磁波の入射側に放出される際の相対反射位相を縦軸とし、電磁波の相対反射位相の値が-360度超0度以下であるグラフに、各セル領域の所定の方向の中心位置および各セル領域での電磁波の相対反射位相に対応する点をプロットし、最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点を通る直線を引いたとき、各点が同一直線上にあり、誘電体層が、単位構造として、厚さの異なる3つ以上のセル領域を有する第1の単位構造を少なくとも有し、誘電体層の厚さ分布によって電磁波の相対反射位相分布を制御するものである。
【0276】
(1)隣接する誘電体層間の距離
本実施態様において、隣接する誘電体層間の距離は、特定の周波数帯の電磁波の波長の1/2未満であり、1/5以下が好ましく、1/10以下がより好ましい。隣接する誘電体層間の距離が上記範囲であることにより、反射構造体全体での反射波の波面の乱れを抑制できる。後述するように、電磁波の周波数帯は、2.5GHz以上が好ましく、24GHz以上がより好ましい。すなわち、電磁波の空気中での波長は、119.92mm以下が好ましく、12.49mm以下がより好ましい。そのため、隣接する誘電体層間の距離は、具体的には、好ましくは59.96mm以下程度、より好ましくは6.245mm以下程度である。また、隣接する誘電体層間の距離は短いほど好ましく、下限値は特に限定されない。
【0277】
(2)誘電体層
誘電体層については、上記の第1実施態様の反射構造体における第2態様の周波数選択反射板の誘電体層と同様である。
【0278】
誘電体層は、光透過性を有していてもよく、光不透過性を有していてもよい。また、誘電体層は、光反射性を有していてもよい。誘電体層の光学特性は、第1アライメントマークを用いた誘電体層の位置合わせの方法等に応じて適宜選択される。
【0279】
誘電体層が光不透過性を有する場合、例えば、誘電体層が着色剤やフィラーを含有することで、誘電体層を光不透過性とすることができる。着色剤およびフィラーとしては、導電性を有さず、かつ、磁性を有さないものが用いられる。
【0280】
また、誘電体層が光反射性を有する場合、例えば、誘電体層の表面を荒らす、あるいは、誘電体層に、誘電体層を構成する樹脂とは異なる屈折率を有する微粒子を含有させることで、誘電体層に光散乱性を持たせることができる。また、誘電体層の位置合わせのために、誘電体層の一部に光反射性を付与してもよい。誘電体層の一部としては、例えば、誘電体層の外周部や、誘電体層の第1アライメントマーク近傍部が挙げられる。誘電体層の一部に光反射性を付与する方法としては、例えば、白色顔料インキや非導電性メタリックインキを印刷する方法が挙げられる。
【0281】
(3)反射部材
反射部材については、上記の第1実施態様の反射構造体における第2態様の周波数選択反射板の反射部材と同様である。
【0282】
反射部材が反射層を有する場合、例えば、反射部材は、基材側から順に、誘電体基板と、誘電体基板の全面に配置された反射層とを有していてもよく、あるいは、反射部材は、基材に接して配置された反射層を有していてもよい。また、反射部材が誘電体基板と反射層とを有する場合は、誘電体基板が基材とは別の部材であってもよく、あるいは、誘電体基板が基材を兼ねていてもよい。誘電体基板が基材を兼ねる場合は、誘電体基板が第1アライメントマークを有することができる。また、誘電体基板が基材を兼ねる場合、基材は、反射部材側から順に、誘電体基板と、周波数選択反射板を支持する支持基板とを有していてもよい。具体的には、反射部材が誘電体基板と反射層とを有し、誘電体基板が基材とは別の部材であり、基材の一方の面に、誘電体基板と反射層とを有する反射部材が配置されていてもよい。また、反射部材が誘電体基板と反射層とを有し、誘電体基板が基材を兼ねており、基材が誘電体基板と支持基板とを有し、誘電体基板が第1アライメントマークを有しており、支持基板と誘電体基板とを有する基材の誘電体基板側の面に、反射層が配置されていてもよい。また、基材に接して反射層が配置されていてもよい。
【0283】
反射部材が誘電体基板と反射層とを有する場合であって、誘電体基板が基材とは別の部材である場合には、基材の厚さおよびサイズの自由度があるという利点を有する。また、この場合、上記の第1実施態様の反射構造体における第2態様の周波数選択反射板と比較して、製造工程が簡素である。
【0284】
また、反射部材が誘電体基板と反射層とを有する場合であって、誘電体基板が基材を兼ねており、基材が誘電体基板と支持基板とを有し、誘電体基板が第1アライメントマークを有しており、基材の誘電体基板側の面に反射層が配置されている場合には、基材を構成する支持基板の厚さおよびサイズの自由度があるという利点を有する。また、この場合、上記の第1実施態様の反射構造体における第2態様の周波数選択反射板と比較して、製造工程が簡素である。また、この場合、誘電体基板の一方の面に反射層および第1アライメントマークを配置する、すなわち、反射層および第1アライメントマークを同一平面上に配置できる。そのため、この場合は、第1アライメントマークと反射層とが重ならないように配置できるため、第1アライメントマークの視認性を高めることができる。また、この場合、反射層および第1アライメントマークに同一材料を用いて、誘電体基板上に反射層および第1アライメントマークを同時に形成してもよい。
【0285】
また、反射部材が、基材に接して配置された反射層を有する場合には、基材の自由度は低くなるものの、誘電体基板が不要であるため、製造工程をさらに簡素にすることができる。また、この場合、基材の一方の面に反射層および第1アライメントマークを配置する、すなわち、反射層および第1アライメントマークを同一平面上に配置できる。そのため、この場合は、上記と同様に、第1アライメントマークと反射層とが重ならないように配置できるため、第1アライメントマークの視認性を高めることができる。また、この場合、反射層および第1アライメントマークに同一材料を用いて、基材上に反射層および第1アライメントマークを同時に形成してもよい。
【0286】
また、反射部材が反射層を有する場合、隣接する誘電体層間の領域には、反射層が配置されていてもよく、配置されていなくてもよい。なお、隣接する誘電体層間の領域に、反射層が配置されている場合であっても、隣接する誘電体層間の領域の合計面積は、周波数選択反射板全体の面積に対して十分小さいため、反射特性にはほとんど影響がないと考えられる。
【0287】
また、反射部材が複数の反射素子を有する場合、例えば、反射部材は、誘電体基板と、誘電体基板の少なくとも一方の面に配置された複数の反射素子とを有していてもよく、あるいは、反射部材は、基材に接して配置された複数の反射素子を有していてもよい。また、反射部材が誘電体基板と複数の反射素子とを有する場合は、誘電体基板が基材とは別の部材であってもよく、あるいは、誘電体基板が基材を兼ねていてもよい。誘電体基板が基材を兼ねる場合は、誘電体基板が第1アライメントマークを有することができる。また、誘電体基板が基材を兼ねる場合、基材は、反射部材側から順に、誘電体基板と、周波数選択反射板を支持する支持基板とを有していてもよい。例えば図28(a)に示すように、反射部材2が誘電体基板4と複数の反射素子3とを有し、誘電体基板4が基材21とは別の部材であり、基材21の一方の面に、誘電体基板4と複数の反射素子3とを有する反射部材2が配置されていてもよい。また、例えば図28(b)に示すように、反射部材2が誘電体基板4と複数の反射素子3とを有し、誘電体基板4が基材21を兼ねており、基材21が誘電体基板4と支持基板21aとを有し、誘電体基板4が第1アライメントマーク22を有しており、支持基板21aと誘電体基板4とを有する基材21の誘電体基板4側の面に、複数の反射素子3が配置されていてもよい。また、図28(c)に示すように、基材21に接して複数の反射素子3が配置されていてもよい。
【0288】
反射部材が、誘電体基板と複数の反射素子とを有する場合であって、誘電体基板が基材とは別の部材である場合には、基材の厚さおよびサイズの自由度があるという利点を有する。また、この場合、上記の第1実施態様の反射構造体における第2態様の周波数選択反射板と比較して、製造工程が簡素である。
【0289】
また、反射部材が誘電体基板と複数の反射素子とを有する場合であって、誘電体基板が基材を兼ねており、基材が誘電体基板と支持基板とを有し、誘電体基板が第1アライメントマークを有しており、基材の誘電体基板側の面に複数の反射素子が配置されている場合には、基材を構成する支持基板の厚さおよびサイズの自由度があるという利点を有する。また、この場合、上記の第1実施態様の反射構造体における第2態様の周波数選択反射板と比較して、製造工程が簡素である。また、この場合、例えば図28(b)に示すように、誘電体基板4の一方の面に複数の反射素子3および第1アライメントマーク22を配置する、すなわち、複数の反射素子3および第1アライメントマーク22を同一平面上に配置できる。そのため、この場合は、第1アライメントマークと複数の反射素子とが重ならないように配置できるため、第1アライメントマークの視認性を高めることができる。また、この場合、複数の反射素子および第1アライメントマークに同一材料を用いて、誘電体基板上に複数の反射素子および第1アライメントマークを同時に形成してもよい。
【0290】
また、反射部材が、基材に接して配置された複数の反射素子を有する場合には、基材の自由度は低くなるものの、誘電体基板が不要であるため、製造工程をさらに簡素にすることができる。また、この場合、例えば図28(c)に示すように、基材21の一方の面に複数の反射素子3および第1アライメントマーク22を配置する、すなわち、複数の反射素子3および第1アライメントマーク22を同一平面上に配置できる。そのため、この場合は、上記と同様に、第1アライメントマークと複数の反射素子とが重ならないように配置できるため、第1アライメントマークの視認性を高めることができる。また、この場合、複数の反射素子および第1アライメントマークに同一材料を用いて、基材上に複数の反射素子および第1アライメントマークを同時に形成してもよい。
【0291】
また、反射部材が複数の反射素子を有する場合、隣接する誘電体層間の領域には、反射素子が配置されていてもよく、配置されていなくてもよい。なお、隣接する誘電体層間の領域に、反射素子が配置されている場合であっても、隣接する誘電体層間の領域の合計面積は、周波数選択反射板全体の面積に対して十分小さいため、反射特性にはほとんど影響がないと考えられる。
【0292】
(4)電磁波の反射方向の制御
本実施態様における周波数選択反射板において、電磁波の反射方向の制御については、上記の第1実施態様の反射構造体における第2態様の周波数選択反射板と同様である。
【0293】
(5)他の構成
本実施態様における周波数選択反射板は、上記の反射部材および誘電体層の他に、必要に応じて他の構成を有していてもよい。他の構成としては、例えば、接着層、空間、保護部材、グラウンド層、平坦化層、反射防止層が挙げられる。これらの構成については、上記の第1実施態様の反射構造体における第2態様の周波数選択反射板と同様である。
【0294】
本実施態様における周波数選択反射板においては、隣接する誘電体層の間に第2の接着部が配置されていてもよい。つまり、周波数選択反射板は、隣接する誘電体層の間に、上記第1実施態様における図26に示される接着部28と同様の第2の接着部を有していてもよい。第2の接着部によって、隣接する誘電体層の間が補強され、全体として強度を高めることができる。
【0295】
第2の接着部については、上記の第1実施態様の反射構造体における接着部と同様である。
【0296】
(6)誘電体層の位置合わせ
本実施態様においては、基材の第1アライメントマークを用いて、複数の誘電体層の位置合わせを行うことができる。例えば、基材の第1アライメントマークを基準として、誘電体層のエッジの位置を合わせて、誘電体層の位置合わせを行ってもよい。また、例えば、誘電体層が第3アライメントマークを有しており、基材の第1アライメントマークを基準として、誘電体層の第3アライメントマークの位置を合わせて、誘電体層の位置合わせを行ってもよい。
【0297】
例えば図27においては、基材21が十字形状の第1アライメントマーク22を有しており、基材21の第1アライメントマーク22を基準として、誘電体層5のエッジの位置を合わせて、誘電体層5の位置合わせを行う。具体的には、誘電体層が光不透過性を有しており、基材が光透過性を有し、第1アライメントマークが光不透過性を有する場合には、透過光によって基材の第1アライメントマークおよび誘電体層のエッジを検出し、誘電体層の位置合わせを行うことができる。また、誘電体層が光反射性を有しており、第1アライメントマークが光反射性を有する場合には、反射光によって基材の第1アライメントマークおよび誘電体層のエッジを検出し、誘電体層の位置合わせを行うことができる。
【0298】
また、例えば、基材が円形状の第1アライメントマークを有し、誘電体層が中抜きの円形状の第3アライメントマークを有しており、基材の第1アライメントマークを基準として、誘電体層の第3アライメントマークの位置を合わせて、誘電体層の位置合わせを行うことができる。
【0299】
また、例えば、基材が十字形状の第1アライメントマークを有し、誘電体層が四角形状の貫通孔である第3アライメントマークを有しており、基材の第1アライメントマークを基準として、誘電体層の第3アライメントマークの位置を合わせて、誘電体層の位置合わせを行うことができる。
【0300】
なお、誘電体層の位置合わせの具体例については、上記の第1実施態様の反射構造体における周波数選択反射板の位置合わせと同様である。
【0301】
(a)第3アライメントマーク
本実施態様において、誘電体層は第3アライメントマークを有していてもよい。第3アライメントマークは、誘電体層の位置合わせを行うためのマークである。
【0302】
第3アライメントマークについては、上記の第1実施態様の反射構造体の第2アライメントマークと同様である。
【0303】
(b)第4識別マーク
本実施態様においては、誘電体層は、誘電体層を識別するための第4識別マークを有していてもよい。誘電体層が第4識別マークを有することにより、各誘電体層を容易に識別できるとともに、誘電体層の上下左右や表裏を容易に識別できるので、各誘電体層を正しい位置に確実かつ容易に配置できる。特に、周波数選択反射板において、複数の誘電体層での反射特性が互いに異なる場合には、有用である。
【0304】
第4識別マークについては、上記の第1実施態様の反射構造体の第2識別マークと同様である。
【0305】
(c)凹凸部
本実施態様においては、隣接する誘電体層が、互いに対向する側面に、互いに嵌合可能な凹凸部を有し、凹凸部が嵌合するように、隣接する誘電体層が配置されていてもよい。つまり、隣接する誘電体層は、互いに対向する側面に、上記第1実施態様における図21及び図22に示される凹凸部26と同様の凹凸部を有していてもよい。凹凸部の嵌合によって、複数の誘電体層の位置合わせを容易に行うことができる。また、隣接する誘電体層の接触面積が増えるため、強度を高めることができる。
【0306】
凹凸部については、上記の第1実施態様の反射構造体の凹凸部と同様である。
【0307】
(7)周波数選択反射板のその他の点
本実施態様において、誘電体層のサイズは、基材のサイズや、反射構造体の用途等に応じて適宜選択される。誘電体層のサイズは、例えば、150mm角以上であることが好ましく、200mm角以上であることがより好ましい。
【0308】
本実施態様において、複数の誘電体層での反射特性は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0309】
複数の誘電体層での反射特性が互いに異なる場合、各誘電体層での反射特性は、例えば、電磁波が拡散するように設計してもよく、電磁波が収束するように設計してよい。また、各誘電体層での反射特性は、球面波を平面波に変換するように設計してもよい。また、各誘電体層での反射特性は、マルチビームの反射構造体となるように設計してもよい。
【0310】
誘電体層において、厚さの異なる複数のセル領域が配列されており、複数の誘電体層におけるセル領域の配列が互いに異なる場合、複数の誘電体層での反射特性が互いに異なるようになる。
【0311】
複数の誘電体層での反射特性が互いに異なる場合については、国際公開第2023/027195号を参照できる。
【0312】
本実施態様における周波数選択反射板は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する。電磁波の周波数帯については、上記第1実施態様と同様である。
【0313】
本実施態様における周波数選択反射板は、例えば、通信用の周波数選択反射板として用いることができ、中でも、移動通信用の周波数選択反射板として好適である。
【0314】
3.他の構成
本実施態様の反射構造体は、上記の周波数選択反射板および基材の他に、必要に応じて他の構成を有していてもよい。他の構成としては、例えば、第2の接着層、固定部材、干渉緩和層が挙げられる。これらの構成については、上記の第1実施態様と同様である。
【0315】
III.反射構造体の第3実施態様
本開示における反射構造体の第3実施態様は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を有する反射構造体であって、基材と、上記基材の一方の面に並べて配置された複数の上記周波数選択反射板と、を有し、少なくとも1つの上記周波数選択反射板における隣り合う2辺が、上記基材における隣り合う2辺に揃い、隣接する上記周波数選択反射板間の距離が、上記電磁波の波長の1/2未満である。
【0316】
図29(a)は、本実施態様の反射構造体の一例を示す概略平面図であり、図29(b)は、図29(a)のA-A線断面図である。図29(a)、(b)に示すように、反射構造体20は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板1A~1Dを有するものであり、基材21と、基材21の一方の面に並べて配置された複数の周波数選択反射板1A~1Dと、を有している。隣接する周波数選択反射板1A~1Dの間の距離d1、d2は、特定の周波数帯の電磁波の波長の1/2未満となっている。
【0317】
例えば図29(a)、(b)においては、周波数選択反射板1Aにおける隣り合う2辺Sa1、Sa2が、基材21における隣り合う2辺S01、S02に揃っている。そのため、周波数選択反射板1Aについては、基材21の隣り合う2辺S01、S02を基準として、周波数選択反射板1Aの隣り合う2辺Sa1、Sa2の位置を合わせて、周波数選択反射板1Aの位置合わせを行う。
【0318】
周波数選択反射板1B~1Dについては、例えば図30(a)に示すように、基材の辺を基準とするとともに、周波数選択反射板のエッジを隣接する周波数選択反射板のエッジに突き当てることにより、周波数選択反射板1B~1Dの位置合わせを行ってもよい。例えば、周波数選択反射板1Bについては、基材21の1辺S01を基準として、周波数選択反射板1Bの1辺Sb1の位置を合わせ、周波数選択反射板1Bに隣接する周波数選択反射板1Aのエッジに周波数選択反射板1Bのエッジを突き当てて、周波数選択反射板1Bの位置合わせを行う。この場合、周波数選択反射板1Bの隣り合う2辺Sb1、Sb2のうち、周波数選択反射板1Bの辺Sb1は、基材21の辺S01に揃い、周波数選択反射板1Bの辺Sb2は、周波数選択反射板1Aの辺Sa4に接することになる。周波数選択反射板1Cについては、基材21の1辺S02を基準として、周波数選択反射板1Cの1辺Sc2の位置を合わせ、周波数選択反射板1Cに隣接する周波数選択反射板1Aのエッジに周波数選択反射板1Cのエッジを突き当てて、周波数選択反射板1Cの位置合わせを行う。この場合、周波数選択反射板1Cの隣り合う2辺Sc1、Sc2のうち、周波数選択反射板1Cの辺Sc2は、基材21の辺S02に揃い、周波数選択反射板1Cの辺Sc1は、周波数選択反射板1Aの辺Sa3に接することになる。周波数選択反射板1Dについては、周波数選択反射板1Dに隣接する周波数選択反射板1B、1Cのエッジに周波数選択反射板1Dのエッジを突き当てて、周波数選択反射板1Dの位置合わせを行う。この場合、周波数選択反射板1Dの隣り合う2辺Sd1、Sd2のち、周波数選択反射板1Dの辺Sd2は、周波数選択反射板1Cの辺Sc4に接し、周波数選択反射板1Dの辺Sd1は、周波数選択反射板1Bの辺Sb3に接することになる。
【0319】
また、周波数選択反射板1B~1Dについては、例えば図30(b)に示すように、基材の辺を基準として、周波数選択反射板1B~1Dの位置合わせを行ってもよい。例えば、周波数選択反射板1Bについては、基材21の隣り合う2辺S01、S04を基準として、周波数選択反射板1Bの隣り合う2辺Sb1、Sb4の位置を合わせ、周波数選択反射板1Bの位置合わせを行う。この場合、周波数選択反射板1Bの隣り合う2辺Sb1、Sb4は、基材21の隣り合う2辺S01、S04に揃うことになる。周波数選択反射板1Cについては、基材21の隣り合う2辺S02、S03を基準として、周波数選択反射板1Cの隣り合う2辺Sc2、Sc3の位置を合わせ、周波数選択反射板1Cの位置合わせを行う。この場合、周波数選択反射板1Cの隣り合う2辺Sc2、Sc3は、基材21の隣り合う2辺S02、S03に揃うことになる。周波数選択反射板1Dについては、基材21の隣り合う2辺S03、S04を基準として、周波数選択反射板1Dの隣り合う2辺Sd3、Sd4の位置を合わせ、周波数選択反射板1Dの位置合わせを行う。この場合、周波数選択反射板1Dの隣り合う2辺Sd3、Sd4は、基材21の隣り合う2辺S03、S04に揃うことになる。
【0320】
また、周波数選択反射板1B~1Dについては、図示しないが、各周波数選択反射板1A~1Dが第2アライメントマークを有しており、周波数選択反射板1Aの第2アライメントマークを基準として、周波数選択反射板1Aに隣接する周波数選択反射板1B、1Cの第2アライメントマークの位置を合わせて、周波数選択反射板1B、1Cの位置合わせを行い、周波数選択反射板1B、1Cの第2アライメントマークを基準として、周波数選択反射板1B、1Cに隣接する周波数選択反射板1Dの第2アライメントマークの位置を合わせて、周波数選択反射板1Dの位置合わせを行ってもよい。
【0321】
また、周波数選択反射板1B~1Dについては、周波数選択反射板の第2アライメントマークによる位置合わせと、周波数選択反射板のエッジの突き当てによる位置合わせとを併用してもよい。例えば、周波数選択反射板1B、1Cは、周波数選択反射板1Aに対して周波数選択反射板1A~1Cの第2アライメントマークを用いて位置合わせを行い、周波数選択反射板1Dは、周波数選択反射板1B、1Cのエッジに周波数選択反射板1Dのエッジを突き当てることで位置合わせを行うことができる。
【0322】
本実施態様の反射構造体においても、上記の反射構造体の第1実施態様と同様に、例えば各周波数選択反射板での反射波の位相を揃え、反射波の強度を強くする等、反射構造体全体での反射波の波面の乱れを抑制するためには、隣接する周波数選択反射板間の距離は、電磁波の波長の1/2未満とすることが望ましいと考えられる。
【0323】
本実施態様においては、少なくとも1つの周波数選択反射板における隣り合う2辺が、基材における隣り合う2辺に揃っていることにより、複数の周波数選択反射板の位置合わせを精度良く行うことができる。そのため、隣接する周波数選択反射板間の距離の精度を確保できる。よって、隣接する周波数選択反射板間の距離が、特定の周波数帯の電磁波の波長の1/2未満となるように、複数の周波数選択反射板を高い位置精度でタイリングすることができる。したがって、反射構造体全体での反射波の波面の乱れを抑制して、所望の反射特性を得ることができるとともに、反射構造体の大面積化が可能である。
【0324】
以下、本実施態様の反射構造体の各構成について説明する。
【0325】
1.基材
本実施態様における基材は、周波数選択反射板を支持する部材である。基材については、基材が第1アライメントマークを有さないこと以外は、上記第1実施態様における基材と同様である。
【0326】
本実施態様において、基材の形状は、矩形に限定されず、三角形、五角形等の多角形であってもよい。また、基材の形状は、基準となる角部を有する形状であってもよい。しずく形、三日月状、円の一部を切り取った形状のように、基準となる角部が存在していれば、その角部から両側に伸びる輪郭線を、基材の隣り合う2辺とみなすことができる。
【0327】
本実施態様において、基材のサイズは、全ての周波数選択反射板を並べて配置したときの合計サイズと略同一であることが好ましい。基材のサイズが、全ての周波数選択反射板を並べて配置したときの合計サイズと略同一であるとは、基材の輪郭線と、全ての周波数選択反射板を並べて配置したときの外形の輪郭線とを重ねた時の内外方向の寸法差が、特定の周波数帯の電磁波の波長の1/2未満であることをいう。上記寸法差は、好ましくは1/5以下であり、より好ましくは1/10以下である。なお、基材の輪郭線と、すべての周波数選択反射板を並べて配置したときの外形の輪郭線は、類似形状であることが好ましいが、例えば、デザイン上、基材の輪郭線が局所的に外側に突出するといった形状であっても、周波数選択反射板の配置の点では、特に問題はない。
【0328】
2.周波数選択反射板
本実施態様における周波数選択反射板は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する部材である。
【0329】
隣接する周波数選択反射板間の距離については、上記第1実施態様と同様である。
【0330】
周波数選択反射板の実施態様については、上記第1実施態様と同様である。
【0331】
本実施態様においては、基材の隣り合う2辺を基準として、少なくとも1つの周波数選択反射板の隣り合う2辺の位置を合わせ、少なくとも1つの周波数選択反射板の位置合わせを行うことができる。少なくとも1つの周波数選択反射板の位置合わせを行った後、他の周波数選択反射板については、例えば、基材の辺を基準とするとともに、周波数選択反射板のエッジを隣接する周波数選択反射板のエッジに突き当てることにより、他の周波数選択反射板の位置合わせを行ってもよい。また、他の周波数選択反射板については、各周波数選択反射板が第2アライメントマークを有しており、第2アライメントマークを用いて、各周波数選択反射板の相対位置を合わせてもよい。また、他の周波数選択反射板については、周波数選択反射板の第2アライメントマークによる位置合わせと、周波数選択反射板のエッジの突き当てによる位置合わせとを併用してもよい。また、全ての周波数選択反射板について、基材の隣り合う2辺を基準として、周波数選択反射板の隣り合う2辺の位置を合わせ、全ての周波数選択反射板の位置合わせを行ってもよい。
【0332】
周波数選択反射板の位置合わせの具体例については、上述した通りである。
【0333】
また、周波数選択反射板の位置合わせの際、周波数選択反射板のエッジを隣接する周波数選択反射板のエッジに突き当てる場合、周波数選択反射板のエッジをスペーサを介して隣接する周波数選択反射板のエッジに突き当ててもよい。
【0334】
本実施態様において、周波数選択反射板は第2アライメントマークを有していてもよい。第2アライメントマークは、周波数選択反射板の位置合わせを行うためのマークであり、各周波数選択反射板の相対位置を合わせるためのマークである。
【0335】
第2アライメントマークについては、上記第1実施態様と同様である。第2アライメントマークは、周波数選択反射板の外周領域に配置されることが好ましい。周波数選択反射板のエッジを隣接する周波数選択反射板のエッジに突き当てる場合、周波数選択反射板のエッジに平行な方向のずれを調整しやすくなる。
【0336】
本実施態様においては、周波数選択反射板は、周波数選択反射板を識別するための第2識別マークを有していてもよい。第2識別マークについては、上記第1実施態様と同様である。
【0337】
本実施態様においては、隣接する周波数選択反射板が、互いに対向する側面に、互いに嵌合可能な凹凸部を有し、凹凸部が嵌合するように、隣接する周波数選択反射板が配置されていてもよい。凹凸部の嵌合によって、複数の周波数選択反射板の位置合わせを容易に行うことができる。この場合、凹凸部は実質的に第2アライメントマークのように機能する。凹凸部については、上記の第1実施態様の反射構造体の凹凸部と同様である。
【0338】
周波数選択反射板のサイズについては、上記第1実施態様と同様である。
【0339】
本実施態様においては、上述したように、基材が第1アライメントマークを有するのではなく、基材の隣り合う2辺を基準として、少なくとも1つの周波数選択反射板の隣り合う2辺の位置を合わせ、少なくとも1つの周波数選択反射板の位置合わせを行う。よって、周波数選択反射板の外形寸法のばらつきは、特定の周波数帯の電磁波の波長の1/2未満であることが好ましく、1/5以下がより好ましく、1/10以下がさらに好ましい。例えば、材料や機械の種類等によっても異なるが、一般的には切断加工の寸法のばらつきは±1mm程度である。そのため、周波数選択反射板の外形寸法のばらつきは、特定の周波数帯の電磁波の波長の1/2未満を満たし得る。
【0340】
本実施態様において、複数の周波数選択反射板の反射特性は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。複数の周波数選択反射板の反射特性が互いに異なる場合については、上記第1実施態様と同様である。
【0341】
本実施態様における周波数選択反射板は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する。電磁波の周波数帯については、上記第1実施態様と同様である。上述したように、周波数選択反射板の外形寸法のばらつきは、特定の周波数帯の電磁波の波長の1/2未満であることが好ましいことから、電磁波の波長が長いほど、つまり電磁波の周波数帯が短いほど、より大きな外形寸法のばらつきが許容される。そのため、電磁波の周波数帯は、所定の範囲の中でも低いことが好ましい。具体的には、電磁波の周波数帯は、2.5GHz以上149.9GHz以下が好ましく、2.5GHz以上60.0GHz以下がより好ましく、2.5GHz以上30.0GHz以下がさらに好ましい。
【0342】
本実施態様における周波数選択反射板は、例えば、通信用の周波数選択反射板として用いることができ、中でも、移動通信用の周波数選択反射板として好適である。
【0343】
3.他の構成
本実施態様の反射構造体は、上記の周波数選択反射板および基材の他に、必要に応じて他の構成を有していてもよい。他の構成としては、例えば、接着部、第2の接着層、固定部材、干渉緩和層が挙げられる。これらの構成については、上記第1実施態様と同様である。
【0344】
IV.反射構造体の第4実施態様
本開示における反射構造体の第4実施態様は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を有する反射構造体であって、基材と、上記基材の一方の面に配置された上記周波数選択反射板と、を有し、上記周波数選択反射板が、上記基材の一方の面に配置され、上記電磁波を反射する反射部材と、上記基材の上記反射部材側の面に並べて配置され、上記電磁波を透過する、複数の誘電体層と、を有し、少なくとも1つの上記誘電体層における隣り合う2辺が、上記基材における隣り合う2辺に揃い、隣接する上記誘電体層間の距離が、上記電磁波の波長の1/2未満であり、上記誘電体層は、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、上記誘電体層の上記単位構造は、厚さの異なる複数のセル領域を有し、上記誘電体層の各単位構造では、上記単位構造の上記所定の方向の長さを横軸とし、上記電磁波が上記誘電体層を透過し上記反射部材で反射され上記誘電体層を再度透過して上記電磁波の入射側に放出される際の相対反射位相を縦軸とし、上記電磁波の相対反射位相の値が-360度超0度以下であるグラフに、各セル領域の上記所定の方向の中心位置および各セル領域での上記電磁波の相対反射位相に対応する点をプロットし、最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点を通る直線を引いたとき、各点が同一直線上にあり、上記誘電体層が、上記単位構造として、厚さの異なる3つ以上の上記セル領域を有する第1の単位構造を少なくとも有し、上記誘電体層の厚さ分布によって上記電磁波の相対反射位相分布を制御することにより、上記電磁波の反射方向を制御する。
【0345】
図31(a)は、本実施態様の反射構造体の一例を示す概略平面図であり、図31(b)は、図31(a)のA-A線断面図である。図31(a)、(b)に示すように、反射構造体20は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板1を有するものであり、基材21と、基材21の一方の面に並べて配置された周波数選択反射板1と、を有している。周波数選択反射板1は、基材21の一方の面に配置され、電磁波を反射する反射部材2と、基材21の反射部材2側の面に並べて配置され、電磁波を透過する、複数の誘電体層5A~5Dと、を有する。隣接する誘電体層5A~5Dの間の距離d5、d6は、特定の周波数帯の電磁波の波長の1/2未満となっている。
【0346】
例えば図31(a)、(b)においては、誘電体層5Aにおける隣り合う2辺Sa11、Sa12が、基材21における隣り合う2辺S01、S02に揃っている。そのため、誘電体層5Aについては、基材21の隣り合う2辺S01、S02を基準として、誘電体層5Aの隣り合う2辺Sa11、Sa12の位置を合わせて、誘電体層5Aの位置合わせを行う。
【0347】
誘電体層5B~5Dについては、例えば図32(a)に示すように、基材の辺を基準とするとともに、誘電体層のエッジを隣接する誘電体層のエッジに突き当てることにより、誘電体層5B~5Dの位置合わせを行ってもよい。例えば、誘電体層5Bについては、基材21の1辺S01を基準として、誘電体層5Bの1辺Sb11の位置を合わせ、誘電体層5Bに隣接する誘電体層5Aのエッジに誘電体層5Bのエッジを突き当てて、誘電体層5Bの位置合わせを行う。この場合、誘電体層5Bの隣り合う2辺Sb11、Sb12のうち、誘電体層5Bの辺Sb11は、基材21の辺S01に揃い、誘電体層5Bの辺Sb12は、誘電体層5Aの辺Sa14に接することになる。誘電体層5Cについては、基材21の1辺S02を基準として、誘電体層5Cの1辺Sc12の位置を合わせ、誘電体層5Cに隣接する誘電体層5Aのエッジに誘電体層5Cのエッジを突き当てて、誘電体層5Cの位置合わせを行う。この場合、周誘電体層5Cの隣り合う2辺Sc11、Sc12のうち、誘電体層5Cの辺Sc12は、基材21の辺S02に揃い、誘電体層5Cの辺Sc11は、誘電体層5Aの辺Sa13に接することになる。誘電体層5Dについては、誘電体層5Dに隣接する誘電体層5B、5Cのエッジに誘電体層5Dのエッジを突き当てて、誘電体層5Dの位置合わせを行う。この場合、誘電体層5Dの隣り合う2辺Sd11、Sd12のち、誘電体層5Dの辺Sd12は、誘電体層5Cの辺Sc14に接し、誘電体層5Dの辺Sd11は、誘電体層5Bの辺Sb13に接することになる。
【0348】
また、誘電体層5B~5Dについては、例えば図32(b)に示すように、基材の辺を基準として、誘電体層5B~5Dの位置合わせを行ってもよい。例えば、誘電体層5Bについては、基材21の隣り合う2辺S01、S04を基準として、誘電体層5Bの隣り合う2辺Sb11、Sb14の位置を合わせ、誘電体層5Bの位置合わせを行う。この場合、誘電体層5Bの隣り合う2辺Sb11、Sb14は、基材21の隣り合う2辺S01、S04に揃うことになる。誘電体層5Cについては、基材21の隣り合う2辺S02、S03を基準として、誘電体層5Cの隣り合う2辺Sc12、Sc13の位置を合わせ、誘電体層5Cの位置合わせを行う。この場合、誘電体層5Cの隣り合う2辺Sc12、Sc13は、基材21の隣り合う2辺S02、S03に揃うことになる。誘電体層5Dについては、基材21の隣り合う2辺S03、S04を基準として、誘電体層5Dの隣り合う2辺Sd13、Sd14の位置を合わせ、誘電体層5Dの位置合わせを行う。この場合、誘電体層5Dの隣り合う2辺Sd13、Sd14は、基材21の隣り合う2辺S03、S04に揃うことになる。
【0349】
また、誘電体層5B~5Dについては、図示しないが、各誘電体層5A~5Dが第3アライメントマークを有しており、誘電体層5Aの第3アライメントマークを基準として、誘電体層5Aに隣接する誘電体層5B、5Cの第3アライメントマークの位置を合わせて、誘電体層5B、5Cの位置合わせを行い、誘電体層5B、5Cの第3アライメントマークを基準として、誘電体層5B、5Cに隣接する誘電体層5Dの第3アライメントマークの位置を合わせて、誘電体層5Dの位置合わせを行ってもよい。
【0350】
また、誘電体層5B~5Dについては、誘電体層の第3アライメントマークによる位置合わせと、誘電体層のエッジの突き当てによる位置合わせとを併用してもよい。例えば、誘電体層5B、5Cは、誘電体層5Aに対して誘電体層5A~5Cの第3アライメントマークを用いて位置合わせを行い、誘電体層5Dは、誘電体層5B、1Cのエッジに誘電体層5Dのエッジを突き当てることで位置合わせを行うことができる。
【0351】
本実施態様の反射構造体においても、上記の反射構造体の第2実施態様と同様に、例えば各誘電体層での反射波の位相を揃え、反射波の強度を強くする等、反射構造体全体での反射波の波面の乱れを抑制するためには、隣接する誘電体層間の距離は、電磁波の波長の1/2未満とすることが望ましいと考えられる。
【0352】
本実施態様においては、少なくとも1つの誘電体層における隣り合う2辺が、基材における隣り合う2辺に揃っていることにより、複数の誘電体層の位置合わせを精度良く行うことができる。そのため、隣接する誘電体層間の距離の精度を確保できる。よって、隣接する誘電体層間の距離が、特定の周波数帯の電磁波の波長の1/2未満となるように、複数の誘電体層を高い位置精度でタイリングすることができる。したがって、反射構造体全体での反射波の波面の乱れを抑制して、所望の反射特性を得ることができるとともに、反射構造体の大面積化が可能である。
【0353】
以下、本実施態様の反射構造体の各構成について説明する。
【0354】
1.基材
本実施態様における基材は、周波数選択反射板を支持する部材である。基材については、上記第3実施態様における基材と同様である。
【0355】
本実施態様において、基材のサイズは、全ての誘電体層を並べて配置したときの合計サイズと略同一であることが好ましい。基材のサイズが、全ての誘電体層を並べて配置したときの合計サイズと略同一であるとは、基材の輪郭線と、全ての誘電体層を並べて配置したときの外形の輪郭線とを重ねた時の内外方向の寸法差が、特定の周波数帯の電磁波の波長の1/2未満であることをいう。上記寸法差は、好ましくは1/5以下であり、より好ましくは1/10以下である。
【0356】
2.周波数選択反射板
本実施態様における周波数選択反射板は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する部材である。
【0357】
隣接する誘電体層間の距離については、上記第2実施態様と同様である。
【0358】
誘電体層、反射部材および他の構成については、上記第2実施態様と同様である。また、電磁波の反射方向の制御についても、上記第2実施態様と同様である。
【0359】
本実施態様においては、基材の隣り合う2辺を基準として、少なくとも1つの誘電体層の隣り合う2辺の位置を合わせ、少なくとも1つの誘電体層の位置合わせを行うことができる。少なくとも1つの誘電体層の位置合わせを行った後、他の誘電体層については、例えば、基材の辺を基準とするとともに、誘電体層のエッジを隣接する誘電体層のエッジに突き当てることにより、他の誘電体層の位置合わせを行ってもよい。また、他の誘電体層については、各誘電体層が第3アライメントマークを有しており、第3アライメントマークを用いて、各誘電体層の相対位置を合わせてもよい。また、他の誘電体層については、誘電体層の第3アライメントマークによる位置合わせと、誘電体層のエッジの突き当てによる位置合わせとを併用してもよい。また、全ての誘電体層について、基材の隣り合う2辺を基準として、誘電体層の隣り合う2辺の位置を合わせ、全ての誘電体層の位置合わせを行ってもよい。
【0360】
誘電体層の位置合わせの具体例については、上述した通りである。
【0361】
また、誘電体層の位置合わせの際、誘電体層のエッジを隣接する誘電体層のエッジに突き当てる場合、誘電体層のエッジをスペーサを介して隣接する誘電体層のエッジに突き当ててもよい。
【0362】
本実施態様において、誘電体層は第3アライメントマークを有していてもよい。第3アライメントマークは、誘電体層の位置合わせを行うためのマークであり、各誘電体層の相対位置を合わせるためのマークである。
【0363】
第3アライメントマークについては、上記第2実施態様と同様である。第3アライメントマークは、誘電体層の外周領域に配置されることが好ましい。誘電体層のエッジを隣接する誘電体層のエッジに突き当てる場合、誘電体層のエッジに平行な方向のずれを調整しやすくなる。
【0364】
本実施態様においては、誘電体層は、誘電体層を識別するための第4識別マークを有していてもよい。第4識別マークについては、上記第2実施態様と同様である。
【0365】
本実施態様においては、隣接する誘電体層が、互いに対向する側面に、互いに嵌合可能な凹凸部を有し、凹凸部が嵌合するように、隣接する誘電体層が配置されていてもよい。凹凸部の嵌合によって、複数の誘電体層の位置合わせを容易に行うことができる。この場合、凹凸部は実質的に第3アライメントマークのように機能する。凹凸部については、上記の第2実施態様の反射構造体の凹凸部と同様である。
【0366】
誘電体層のサイズについては、上記第2実施態様と同様である。
【0367】
本実施態様においては、上述したように、基材が第1アライメントマークを有するのではなく、基材の隣り合う2辺を基準として、少なくとも1つの誘電体層の隣り合う2辺の位置を合わせ、少なくとも1つの誘電体層の位置合わせを行う。よって、誘電体層の外形寸法のばらつきは、特定の周波数帯の電磁波の波長の1/2未満であることが好ましく、1/5以下がより好ましく、1/10以下がさらに好ましい。例えば、材料や機械の種類等によっても異なるが、一般的には切断加工の寸法のばらつきは±1mm程度である。そのため、誘電体層の外形寸法のばらつきは、特定の周波数帯の電磁波の波長の1/2未満を満たし得る。
【0368】
本実施態様において、複数の誘電体層の反射特性は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。複数の誘電体層の反射特性が互いに異なる場合については、上記第2実施態様と同様である。
【0369】
本実施態様における周波数選択反射板は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する。電磁波の周波数帯については、上記第1実施態様と同様である。上述したように、誘電体層の外形寸法のばらつきは、特定の周波数帯の電磁波の波長の1/2未満であることが好ましいことから、電磁波の波長が長いほど、つまり電磁波の周波数帯が短いほど、より大きな外形寸法のばらつきが許容される。そのため、電磁波の周波数帯は、所定の範囲の中でも低いことが好ましい。具体的な電磁波の周波数帯については、上記第3実施態様と同様である。
【0370】
本実施態様における周波数選択反射板は、例えば、通信用の周波数選択反射板として用いることができ、中でも、移動通信用の周波数選択反射板として好適である。
【0371】
3.他の構成
本実施態様の反射構造体は、上記の周波数選択反射板および基材の他に、必要に応じて他の構成を有していてもよい。他の構成としては、例えば、第2の接着層、固定部材、干渉緩和層が挙げられる。これらの構成については、上記第1実施態様と同様である。
【0372】
B.反射構造体の製造方法
本開示における反射構造体の製造方法は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を複数有する反射構造体を製造する反射構造体の製造方法であって、隣接する上記周波数選択反射板間の距離が、上記電磁波の波長の1/2未満になるように、第1アライメントマークを有する支持体の一方の面に、上記複数の周波数選択反射板を並べて配置する配置工程を有する。
【0373】
本開示においては、上記反射構造体の第1実施態様と同様の効果を奏する。
【0374】
周波数選択反射板については、上記反射構造体の第1実施態様における周波数選択反射板と同様である。
【0375】
支持体は、周波数選択反射板を支持する部材であり、第1アライメントマークを有する。支持体は、上記反射構造体の第1実施態様における基材であってもよく、壁、窓、天井、床、看板等であってもよい。
【0376】
第1アライメントマークについては、上記反射構造体の第1実施態様における第1アライメントマークと同様である。第1アライメントマークの形成方法としては、支持体に直に第1アライメントマークを形成してもよく、第1アライメントマークを有するフィルムを支持体の一方の面に配置してもよい。
【0377】
また、第1アライメントマークの平面視形状は、水平の線分および垂直の線分を有していてもよい。第1アライメントマークの水平の線分および垂直の線分を、上記反射構造体の第3実施態様における、基材の隣り合う2辺とみなすことができる。
【0378】
配置工程については、上記反射構造体の第1実施態様あるいは第3実施態様に記載した内容と同様である。
【0379】
C.周波数選択反射板セット
本開示における周波数選択反射板セットは、3つの実施態様を有する。以下、各実施態様に分けて説明する。
【0380】
I.周波数選択反射板セットの第1実施態様
本開示における周波数選択反射板セットの第1実施態様は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を複数有する周波数選択反射板セットであって、上記複数の周波数選択反射板は、設置面に並べて配置されて用いられ、上記周波数選択反射板が、上記周波数選択反射板を識別するための第2識別マークを有する。
【0381】
本開示においては、上記反射構造体の第1実施態様において、周波数選択反射板が第2識別マークを有する場合、または、上記反射構造体の第3実施態様において、周波数選択反射板が第2識別マークを有する場合と同様の効果を奏する。
【0382】
周波数選択反射板については、上記反射構造体の第1実施態様における周波数選択反射板、または、上記反射構造体の第3実施態様における周波数選択反射板と同様である。
【0383】
II.周波数選択反射板セットの第2実施態様
本開示における周波数選択反射板セットの第2実施態様は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を複数有する周波数選択反射板セットであって、上記複数の周波数選択反射板は、設置面に並べて配置されて用いられ、上記周波数選択反射板が、上記電磁波を反射する反射部材を有し、上記反射部材では、寸法の異なる複数の反射素子が配列されており、上記複数の周波数選択反射板における上記反射素子の配列が互いに異なる、周波数選択反射板セットを提供する。
【0384】
本開示においては、上記反射構造体の第1実施態様において、周波数選択反射板が第1態様であり、複数の周波数選択反射板の反射特性が互いに異なる場合、または、上記反射構造体の第3実施態様において、周波数選択反射板が第1態様であり、複数の周波数選択反射板の反射特性が互いに異なる場合と同様の効果を奏する。
【0385】
周波数選択反射板については、上記反射構造体の第1実施態様における周波数選択反射板、または、上記反射構造体の第3実施態様における周波数選択反射板と同様である。
【0386】
III.周波数選択反射板セットの第3実施態様
本開示における周波数選択反射板セットの第3実施態様は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を複数有する周波数選択反射板セットであって、上記複数の周波数選択反射板は、設置面に並べて配置されて用いられ、上記周波数選択反射板が、上記設置面側から順に、上記電磁波を反射する反射部材と、上記電磁波を透過する誘電体層と、を有し、上記誘電体層では、厚さの異なる複数のセル領域が配列されており、上記複数の周波数選択反射板における上記セル領域の配列が互いに異なる。
【0387】
本開示においては、上記反射構造体の第1実施態様において、周波数選択反射板が第2態様であり、複数の周波数選択反射板の反射特性が互いに異なる場合、または、上記反射構造体の第3実施態様において、周波数選択反射板が第2態様であり、複数の周波数選択反射板の反射特性が互いに異なる場合と同様の効果を奏する。
【0388】
周波数選択反射板については、上記反射構造体の第1実施態様における周波数選択反射板、または、上記反射構造体の第3実施態様における周波数選択反射板と同様である。
【0389】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例
【0390】
以下、実施例を挙げて本開示を具体的に説明する。
【0391】
[比較例1]
周波数選択反射板を有する反射構造体の反射特性のシミュレーションを行った。シミュレーションでは、A5サイズの基材上に、1つの周波数選択反射板が配置された反射構造体のモデルを用いた。周波数選択反射板は、基材側から順に、反射部材と所定の厚さ分布を有する誘電体層とを有する構造とした。また、図33(a)に示すように、反射構造体20を原点に置き、(xin、yin、zin)=(-9、2、8.4)[m]方向から入射した28GHzの電磁波を、(xout、yout、zout)=(1、-0.5、14.9)に反射するよう設計した際の反射電力を、zout=14.9[m]の位置で計算した。また、周波数選択反射板の利得を0dBiとした。図33(b)に、受信電力(dBm)の分布のシミュレーション結果を示す。
【0392】
[実施例1]
周波数選択反射板を有する反射構造体の反射特性のシミュレーションを行った。シミュレーションでは、A4サイズの基材上に、A5サイズの周波数選択反射板が2つ並べて配置された反射構造体のモデルを用いた。反射構造体では、隣接する周波数選択反射板間の距離を、28GHzの電磁波の波長の1/2とした。また、周波数選択反射板は、基材側から順に、反射部材と所定の厚さ分布を有する誘電体層とを有する構造とした。また、図33(a)に示すように、反射構造体20を原点に置き、(xin、yin、zin)=(-9、2、8.4)[m]方向から入射した28GHzの電磁波を、(xout、yout、zout)=(1、-0.5、14.9)に反射するよう設計した際の反射電力を、zout=14.9[m]の位置で計算した。また、周波数選択反射板の利得を0dBiとした。図34に、受信電力(dBm)の分布のシミュレーション結果を示す。
【0393】
比較例1に対して、実施例1においては、隣接する周波数選択反射板間の距離を電磁波の波長の1/2として、複数の周波数選択反射板をタイリングすることによって、主たる反射方向の電力が3~6[dB]増加した。これは、周波数選択反射板の面積が増すと主たる反射方向に電力が集中するという電力強度分布の変化も含め、異なる面積の金属平板による反射電力強度の挙動に等しい。これにより、周波数選択反射板の面積比に則した反射電力を得られることが分かった。
【0394】
[参考例1]
周波数選択反射板の反射特性のシミュレーションを行った。シミュレーションでは、誘電体層の単位構造は、図35(a)に示すように、一方向に厚さが増加する厚さ分布を有し、厚さの異なる6個のセル領域を有しており、誘電体層は、単位構造が一方向に繰り返し配置された周期構造を有するモデルを用いた。また、シミュレーションでは、反射部材は、リング状の反射素子が規則的に配列されており、入射波の周波数で共振し、その周波数の電磁波を反射するモデルとした。また、シミュレーションでは下記のパラメータを用いた。
【0395】
入射波の周波数:28GHz
入射波の入射角:0度、-10度
反射波の所望反射角:27度、37度
隣接するセル領域での相対反射位相の差:60度
【0396】
シミュレーション結果を図35(b)に示す。入射角が0度である場合、つまり正面方向31からの入射に対する反射は符号32で示す実線で示し、また、入射角が-10度である場合、つまり-10度方向33からの入射に対する反射は符号34で示す実線で示した。入射角が0度の場合は正反射方向から+27度方向に反射し、入射角が-10度である場合は正反射方向から+37度方向に反射していることが分かる。
【0397】
[参考例2]
周波数選択反射板の反射特性のシミュレーションを行った。シミュレーションでは、誘電体層の単位構造は、図36(a)に示すように、一方向に厚さが増加する厚さ分布を有し、厚さの異なる10個のセル領域を有しており、誘電体層は、単位構造が一方向に繰り返し配置された周期構造を有するモデルを用いた。また、シミュレーションでは、反射部材は、リング状の反射素子が規則的に配列されており、入射波の周波数で共振し、その周波数の電磁波を反射するモデルとした。また、シミュレーションでは下記のパラメータを用いた。
【0398】
入射波の周波数:28GHz
入射波の入射角:0度
反射波の所望反射角:16度
隣接するセル領域での相対反射位相の差:36度
【0399】
シミュレーション結果を図36(b)に示す。入射角が0度である場合、つまり正面方向35からの入射に対する反射は符号36で示す実線で示した。入射角が0度の場合は正反射方向から+16度方向に反射していることが分かる。また、図36(b)では、図35(b)と比べて、反射方向が正反射方向に近いが、これは誘電体層の単位構造が、図35(a)では6個のセル領域を有するのに対し、図36(a)では10個のセル領域を有しており、厚さが増加する所定の方向における単位構造の長さが長いからである。
【0400】
[参考例3]
まず、参考例1の反射部材のモデルに合わせて、銅箔付きPETフィルムをエッチングして、リング状の反射素子が規則的に配列された反射部材を作製した。また、参考例1の誘電体層のモデルに合わせて、3Dプリンタで誘電体層を成形した。次に、反射部材上に誘電体層を貼り付けて、周波数選択反射板を作製した。
【0401】
コンパクトレンジ測定系とネットワークアナライザを用いて、周波数選択反射板の反射特性を測定した。参考例3の周波数選択反射板の反射特性は、参考例1のシミュレーション結果とほぼ一致した。
【0402】
[参考例4]
リフレクトアレイの解析で、図37に示すような、一般的な伝送線路等価回路を用いて、周波数選択性表面(FSS)を有する反射部材と誘電体層とを有する周波数選択反射板について反射位相を算定した。なお、図37における記号は下記の通りである。
ZVAC:空気の特性インピーダンスを持つ伝送線路を示す。線路長は、誘電体層の最上面より遠くの任意の距離に設定された位相観測面から、誘電体層の厚さを減じた長さである。
ZPC:誘電体層の特性インピーダンスをもつ伝送線路を示す。線路長は誘電体層hの厚さである。
r:FSSのリング状の反射素子の抵抗を示す。
L:FSSのリング状の反射素子のインダクタンスを示す。
C:FSSのリング状の反射素子の容量を示す。
ZPET:FSSのリング状の反射素子を配置する誘電体基板の誘電率を持つ伝送線路を示す。線路長は誘電体基板の厚さである。
ZL:誘電体基板の裏面の空間(空気)の特性インピーダンスを示す。
【0403】
その結果、反射位相のうち、異なる厚さの誘電体層を重ねたことで生じる共振周波数ずれによる反射位相変化はせいぜい数十度であり、これは最大反射位相360度の25%前後であり、それ以外の反射位相変化は誘電体層内の波長短縮によることが算定された。さらに、周波数選択性表面を有する反射部材と誘電体層との位置がずれたとしても、そのずれは周波数選択反射板全体を通じて均等になるが、反射波を平面波とするには隣接するセル領域との反射位相が均等であればよいことを考えれば、反射方向に対する影響はほとんどないと結論できた。
【0404】
本開示は、以下の発明を提供する。
[1]特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を有する反射構造体であって、
第1アライメントマークを有する基材と、
上記基材の一方の面に並べて配置された複数の上記周波数選択反射板と、
を有し、隣接する上記周波数選択反射板間の距離が、上記電磁波の波長の1/2未満である、反射構造体。
[2]上記周波数選択反射板が第2アライメントマークを有する、[1]に記載の反射構造体。
[3]上記基材が光透過性を有し、
上記周波数選択反射板の外周領域が光不透過性を有する、[1]に記載の反射構造体。
[4]隣接する上記周波数選択反射板が、互いに対向する側面に、互いに嵌合可能な凹凸部を有し、上記凹凸部が嵌合するように、上記隣接する周波数選択反射板が配置されている、[1]から[4]までのいずれかに記載の反射構造体。
[5]上記隣接する周波数選択反射板の上記凹凸部の厚さが等しい、[5]に記載の反射構造体。
[6]特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を有する反射構造体であって、
基材と、
上記基材の一方の面に並べて配置された複数の上記周波数選択反射板と、
を有し、少なくとも1つの上記周波数選択反射板における隣り合う2辺が、上記基材における隣り合う2辺に揃い、
隣接する上記周波数選択反射板間の距離が、上記電磁波の波長の1/2未満である、反射構造体。
[7]隣接する上記周波数選択反射板の間に接着部が配置されている、[1]から[6]までのいずれかに記載の反射構造体。
[8]上記周波数選択反射板が、上記電磁波を反射する反射部材を有し、
上記反射部材では、寸法の異なる複数の反射素子が配列されており、
上記複数の周波数選択反射板における上記反射素子の配列が互いに異なる、[1]から[7]までのいずれかに記載の反射構造体。
[9]上記周波数選択反射板が、上記基材側から順に、上記電磁波を反射する反射部材と、上記電磁波を透過する誘電体層と、を有し、
上記誘電体層では、厚さの異なる複数のセル領域が配列されており、
上記複数の周波数選択反射板における上記セル領域の配列が互いに異なる、[1]から[7]までのいずれかに記載の反射構造体。
[10]上記周波数選択反射板が、上記周波数選択反射板を識別するための第2識別マークを有する、[1]から[9]までのいずれかに記載の反射構造体。
[11]上記基材が、上記周波数選択反射板の位置を識別するための第1識別マークを有する、[1]から[10]までのいずれかに記載の反射構造体。
[12]上記周波数選択反射板が、上記基材側から順に、
上記電磁波を反射する反射部材と、
所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、上記電磁波を透過する誘電体層と、
を有し、上記誘電体層の上記単位構造は、厚さの異なる複数のセル領域を有し、
上記誘電体層の各単位構造では、上記単位構造の上記所定の方向の長さを横軸とし、上記電磁波が上記誘電体層を透過し上記反射部材で反射され上記誘電体層を再度透過して上記電磁波の入射側に放出される際の相対反射位相を縦軸とし、上記電磁波の相対反射位相の値が-360度超0度以下であるグラフに、各セル領域の上記所定の方向の中心位置および各セル領域での上記電磁波の相対反射位相に対応する点をプロットし、最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点を通る直線を引いたとき、各点が同一直線上にあり、
上記誘電体層が、上記単位構造として、厚さの異なる3つ以上の上記セル領域を有する第1の単位構造を少なくとも有し、
上記誘電体層の厚さ分布によって上記電磁波の相対反射位相分布を制御することにより、上記電磁波の反射方向を制御する、[1]から[11]までのいずれかに記載の反射構造体。
[13]上記反射部材が、上記電磁波のみを反射する周波数選択板である、[12]に記載の反射構造体。
[14]上記反射部材が、上記電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有する、[13]に記載の反射構造体。
[15]上記周波数選択反射板が、上記電磁波を反射する反射部材を有し、
上記反射部材が、上記電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有する、[1]から[11]までのいずれかに記載の反射構造体。
[16]上記反射部材が、誘電体基板と、上記誘電体基板の少なくとも一方の面に配置された複数の反射素子とを有し、
隣接する上記周波数選択反射板同士が対向する端部領域に、上記反射素子が配置されていない、[15]に記載の反射構造体。
[17]隣接する上記周波数選択反射板同士が対向する端部領域に上記反射素子が配置されている反射構造体における上記電磁波の反射強度を100%としたとき、上記電磁波の反射強度が85%超である、[16]に記載の反射構造体。
【0405】
[18]特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を有する反射構造体であって、
第1アライメントマークを有する基材と、
上記基材の一方の面に配置された上記周波数選択反射板と、を有し、
上記周波数選択反射板が、
上記基材の一方の面に配置され、上記電磁波を反射する反射部材と、
上記基材の上記反射部材側の面に並べて配置され、上記電磁波を透過する、複数の誘電体層と、を有し、
隣接する上記誘電体層間の距離が、上記電磁波の波長の1/2未満であり、
上記誘電体層は、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、
上記誘電体層の上記単位構造は、厚さの異なる複数のセル領域を有し、
上記誘電体層の各単位構造では、上記単位構造の上記所定の方向の長さを横軸とし、上記電磁波が上記誘電体層を透過し上記反射部材で反射され上記誘電体層を再度透過して上記電磁波の入射側に放出される際の相対反射位相を縦軸とし、上記電磁波の相対反射位相の値が-360度超0度以下であるグラフに、各セル領域の上記所定の方向の中心位置および各セル領域での上記電磁波の相対反射位相に対応する点をプロットし、最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点を通る直線を引いたとき、各点が同一直線上にあり、
上記誘電体層が、上記単位構造として、厚さの異なる3つ以上の上記セル領域を有する第1の単位構造を少なくとも有し、
上記誘電体層の厚さ分布によって上記電磁波の相対反射位相分布を制御することにより、上記電磁波の反射方向を制御する、反射構造体。
[19]特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を有する反射構造体であって、
基材と、
上記基材の一方の面に配置された上記周波数選択反射板と、を有し、
上記周波数選択反射板が、
上記基材の一方の面に配置され、上記電磁波を反射する反射部材と、
上記基材の上記反射部材側の面に並べて配置され、上記電磁波を透過する、複数の誘電体層と、を有し、
少なくとも1つの上記誘電体層における隣り合う2辺が、上記基材における隣り合う2辺に揃い、
隣接する上記誘電体層間の距離が、上記電磁波の波長の1/2未満であり、
上記誘電体層は、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、
上記誘電体層の上記単位構造は、厚さの異なる複数のセル領域を有し、
上記誘電体層の各単位構造では、上記単位構造の上記所定の方向の長さを横軸とし、上記電磁波が上記誘電体層を透過し上記反射部材で反射され上記誘電体層を再度透過して上記電磁波の入射側に放出される際の相対反射位相を縦軸とし、上記電磁波の相対反射位相の値が-360度超0度以下であるグラフに、各セル領域の上記所定の方向の中心位置および各セル領域での上記電磁波の相対反射位相に対応する点をプロットし、最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点を通る直線を引いたとき、各点が同一直線上にあり、
上記誘電体層が、上記単位構造として、厚さの異なる3つ以上の上記セル領域を有する第1の単位構造を少なくとも有し、
上記誘電体層の厚さ分布によって上記電磁波の相対反射位相分布を制御することにより、上記電磁波の反射方向を制御する、反射構造体。
[20]上記反射部材が、誘電体基板と、上記誘電体基板の少なくとも一方の面に配置された複数の反射素子と、を有し、
上記誘電体基板が上記基材とは別の部材であり、
上記基材に対して1つの上記誘電体基板が配置されている、[18]または[19]に記載の反射構造体。
[21]上記反射部材が、誘電体基板と、上記誘電体基板の少なくとも一方の面に配置された複数の反射素子と、を有し、
上記誘電体基板が上記基材を兼ねている、[18]または[19]に記載の反射構造体。
[22]上記反射部材が、上記基材に接して配置された複数の反射素子を有する、[18]または[19]に記載の反射構造体。
[23]上記誘電体層が第3アライメントマークを有する、[18]から[22]までのいずれかに記載の反射構造体。
[24]隣接する上記誘電体層の間に第2の接着部が配置されている、[18]から[23]までのいずれかに記載の反射構造体。
[25]隣接する上記誘電体層が、互いに対向する側面に、互いに嵌合可能な凹凸部を有し、上記凹凸部が嵌合するように、上記隣接する誘電体層が配置されている、[18]から[24]までのいずれかに記載の反射構造体。
[26]上記隣接する誘電体層の上記凹凸部の厚さが等しい、[25]に記載の反射構造体。
[27]上記誘電体層が、上記誘電体層を識別するための第4識別マークを有する、[18]から[26]までのいずれかに記載の反射構造体。
[28]上記基材が、上記誘電体層の位置を識別するための第3識別マークを有する、[18]から[27]までのいずれかに記載の反射構造体。
[29]上記反射部材が、上記電磁波のみを反射する周波数選択板である、[18]から[28]までのいずれかに記載の反射構造体。
[30]上記反射部材が、上記電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有する、[29]に記載の反射構造体。
【0406】
[31]特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を複数有する反射構造体を製造する反射構造体の製造方法であって、
隣接する上記周波数選択反射板間の距離が、上記電磁波の波長の1/2未満になるように、第1アライメントマークを有する支持体の一方の面に、上記複数の周波数選択反射板を並べて配置する配置工程を有する、反射構造体の製造方法。
[32]上記周波数選択反射板が第2アライメントマークを有する、[31]に記載の反射構造体の製造方法。
[33]上記支持体が光透過性を有し、
上記周波数選択反射板の外周領域が光不透過性を有する、[31]に記載の反射構造体の製造方法。
【0407】
[34]特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を複数有する周波数選択反射板セットであって、
上記複数の周波数選択反射板は、設置面に並べて配置されて用いられ、
上記周波数選択反射板が、上記周波数選択反射板を識別するための第2識別マークを有する、周波数選択反射板セット。
[35]特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を複数有する周波数選択反射板セットであって、
上記複数の周波数選択反射板は、設置面に並べて配置されて用いられ、
上記周波数選択反射板が、上記電磁波を反射する反射部材を有し、
上記反射部材では、寸法の異なる複数の反射素子が配列されており、
上記複数の周波数選択反射板における上記反射素子の配列が互いに異なる、周波数選択反射板セット。
[36]特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を複数有する周波数選択反射板セットであって、
上記複数の周波数選択反射板は、設置面に並べて配置されて用いられ、
上記周波数選択反射板が、上記設置面側から順に、上記電磁波を反射する反射部材と、上記電磁波を透過する誘電体層と、を有し、
上記誘電体層では、厚さの異なる複数のセル領域が配列されており、
上記複数の周波数選択反射板における上記セル領域の配列が互いに異なる、周波数選択反射板セット。
【符号の説明】
【0408】
1 … 周波数選択反射板
2 … 反射部材
3 … 反射素子
4 … 誘電体基板
5 … 誘電体層
6 … 接着層
7 … 反射層
8 … 空間
10、10a、10b … 単位構造
11a~11g、12a~12f、13a~13e … セル領域
20 … 反射構造体
21 … 基材
22 … 第1アライメントマーク
23 … 第1識別マーク
24 … 第2アライメントマーク
25 … 第2識別マーク
26 … 凹凸部
27 … 端部領域
28 … 接着部
D1 … 所定の方向
L … 厚さが増加する所定の方向における単位構造の長さ
d1、d2 … 隣接する周波数選択反射板間の距離
d5、d6 … 隣接する誘電体層間の距離
t1、t2、t3、t4、t5、t6 … セル領域の厚さ
【要約】
本開示においては、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板を有する反射構造体であって、第1アライメントマークを有する基材と、上記基材の一方の面に並べて配置された複数の上記周波数選択反射板と、を有し、隣接する上記周波数選択反射板間の距離が、上記電磁波の波長の1/2未満である、反射構造体を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図19
図20
図21
図22
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図24
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図26
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図28
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図30
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図32
図33
図34
図35
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