(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】気体噴射ノズル、気体噴射装置、及び、除塵装置
(51)【国際特許分類】
B05B 3/06 20060101AFI20231219BHJP
B08B 5/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B05B3/06 Z
B08B5/00 A
(21)【出願番号】P 2020007069
(22)【出願日】2020-01-20
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】520024061
【氏名又は名称】株式会社ディーオ
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100166958
【氏名又は名称】堀 喜代造
(72)【発明者】
【氏名】中井 一文
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-030162(JP,A)
【文献】特開昭59-022668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00-17/08
B08B1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒部材と、前記円筒部材の内部に挿通される弾性チューブと、を備え、前記弾性チューブの基端側に供給された気体を前記弾性チューブの先端から噴射する、気体噴射ノズルであって、
前記弾性チューブは、前記円筒部材の基端部に支持されるとともに、前記先端が前記円筒部材の先端開口部から延出され、
前記円筒部材の内周面には、前記円筒部材の内径よりも小さい内径に形成された円環状のガイド部材が少なくとも一個設けられ、
前記弾性チューブは前記ガイド部材の内側を挿通され
、
前記円筒部材の内周面には、前記ガイド部材が前記先端部側と前記基端部側の二箇所に離間して設けられる、気体噴射ノズル。
【請求項2】
前記弾性チューブは少なくとも一個の錘部を備える、
請求項1に記載の気体噴射ノズル。
【請求項3】
前記弾性チューブは、先端部に形成された先端錘部と、中途部に二個形成された中途錘部と、を備え、
前記中途錘部は、それぞれ前記ガイド部材における前記基端側の近傍に設けられる、
請求項1に記載の気体噴射ノズル。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の気体噴射ノズルと、前記弾性チューブに気体を供給する気体供給部と、を備える、気体噴射装置。
【請求項5】
請求項4に記載の気体噴射装置と、前記気体噴射ノズルの周囲に形成された吸気ノズルと、前記吸気ノズルを介して気体を吸引する気体吸引部と、を備える、除塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端から気体を噴射する気体噴射ノズル、気体噴射装置、及び、除塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、精密機器の製造工程等において、ワークに付着した埃や粉塵を除去するために、ワークの表面に気体を噴射する除塵装置が採用されている。そして、このような気体噴射装置に採用される噴射ノズルとして、弾性チューブの先端に開口された気体噴射口から噴射される気体によって、筒状ガイドの内周面で弾性チューブを撓ませながら回転させて、気体をパルス状に噴射する構成が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載の噴射ノズルにおいて、筒状ガイドは弾性チューブが当接する内壁が先広がりのテーパ状に形成されている。即ち、噴射ノズルの基端部と比較して先端部が大径となるため、噴射ノズルの装置構成が大きくなっていた。また、当該噴射ノズルを除塵装置に採用した場合、吸気ノズルの内部で噴射ノズルによる空気抵抗が大きくなるため、吸引効率の低下の原因となっていた。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ノズルの基端部と先端部との外径を同一にすることにより、装置構成をコンパクトに形成することが可能となる、気体噴射ノズル、気体噴射装置、及び、除塵装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下では、上記課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
本発明に係る気体噴射ノズルは、円筒部材と、前記円筒部材の内部に挿通される弾性チューブと、を備え、前記弾性チューブの基端側に供給された気体を前記弾性チューブの先端から噴射する、気体噴射ノズルであって、前記弾性チューブは、前記円筒部材の基端部に支持されるとともに、前記先端が前記円筒部材の先端開口部から延出され、前記円筒部材の内周面には、前記円筒部材の内径よりも小さい内径に形成された円環状のガイド部材が少なくとも一個設けられ、前記弾性チューブは前記ガイド部材の内側を挿通され、前記円筒部材の内周面には、前記ガイド部材が前記先端部側と前記基端部側の二箇所に離間して設けられる。
【0008】
本構成により、ノズルの基端部と先端部との外径を同一にすることにより、気体噴射ノズルの装置構成を従来技術と比較してコンパクトに形成することが可能となる。また、弾性チューブを継続して回転させることができ、気体をパルス状に安定して噴出することが可能となる。
【0009】
また、気体噴射ノズルにおいて、前記弾性チューブは少なくとも一個の錘部を備えることが好ましい。
【0010】
本構成により、弾性チューブをより安定的に回転させることができ、気体をパルス状に噴出することが可能となる。
【0011】
また、前記弾性チューブは、先端部に形成された先端錘部と、中途部に二個形成された中途錘部と、を備え、前記中途錘部は、それぞれ前記ガイド部材における前記基端側の近傍に設けられることが好ましい。
【0012】
本構成により、弾性チューブをさらに安定的に回転させることができ、気体をパルス状に安定して噴出することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る気体噴射装置は、前記気体噴射ノズルと、前記弾性チューブに気体を供給する気体供給部と、を備える。
【0014】
本構成により、気体噴射ノズルの基端部と先端部との外径を同一にすることにより、気体噴射装置の装置構成を従来技術と比較してコンパクトに形成することが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る除塵装置は、前記気体噴射装置と、前記気体噴射ノズルの周囲に形成された吸気ノズルと、前記吸気ノズルを介して気体を吸引する気体吸引部と、を備える。
【0016】
本構成により、気体噴射ノズルの基端部と先端部との外径を同一にすることにより、除塵装置の装置構成を従来技術と比較してコンパクトに形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る気体噴射ノズル、気体噴射装置、及び、除塵装置によれば、ノズルの基端部と先端部との外径を同一にすることにより、装置構成を従来技術と比較してコンパクトに形成することが可能となる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第一実施形態に係る除塵装置の全体構成を示す正面図。
【
図2】第一実施形態に係る除塵装置に用いられる除塵ノズルを示す斜視図。
【
図3】(a)は除塵ノズルを示す平面図、(b)は同じく底面図。
【
図6】第二実施形態に係る除塵ノズルの内部構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では
図1から
図5を用いて、本発明の第一実施形態に係る除塵装置10について説明する。
図1に示す如く、本実施形態に係る除塵装置10は、気体供給部であるコンプレッサーC、気体吸引部である集塵機P、及び、除塵ノズル12を備える。コンプレッサーCと除塵ノズル12とは気体噴射経路11で接続されている。また、除塵ノズル12と集塵機Pとは気体吸引経路13で接続されている。集塵機Pには気体を吸引するポンプが内蔵されており、このポンプを駆動することにより、除塵ノズル12及び気体吸引経路13を介して気体を吸引可能とされている。
【0020】
除塵装置10を使用する際は、
図1に示す如く載置台Sに載置された除塵対象物であるワークWの対象面Wpと対向するように除塵ノズル12を配置する。そして、コンプレッサーCから供給される気体(本実施形態においては圧縮空気)を除塵ノズル12の気体噴射ノズル21からワークWの対象面Wpにパルス状に噴射する。対象面Wpの表面に付着した埃や粉塵は、気体噴射ノズル21から噴射された気体により対象面Wpから剥ぎ取られる。そして、集塵機Pが除塵ノズル12の吸気ノズル31を介して空気を吸引することで、対象面Wpから除去された埃や粉塵が集塵機Pに集められる(
図4を参照)。
【0021】
コンプレッサーCから供給される空気は、気体噴射経路11上に設けられた図示しない減圧弁等の空圧機器により流量及び圧力の調節が行われる。本実施形態に係る除塵装置10においては、0.2~0.3MPaの供給圧力により、100~135L/minの流量で空気が供給される。なお、これらの条件は限定されるものではなく、本実施形態と異なる条件で除塵装置10を用いることも可能である。
【0022】
図2から
図4に示す如く、除塵ノズル12は、下方が開口された円筒形状の吸気ノズル31、吸気ノズル31の上側に形成されて吸気ノズル31と連通される筒状部32、吸気ノズル31における対向する側面にそれぞれ設けられる固定部33・33、筒状部32を貫通して配置される接続管34、及び、吸気ノズル31の内部に収容される気体噴射ノズル21等で構成される。
【0023】
接続管34は、
図1に示す如く気体噴射経路11に接続されている。また、筒状部32は、
図1に示す如く気体吸引経路13に接続されている。そして、固定部33・33が図示しない固定具に固定されることにより、除塵ノズル12がワークWの上方で固定される。
【0024】
図3及び
図4に示す如く、気体噴射ノズル21は吸気ノズル31の中心部分に配置される。換言すれば、吸気ノズル31は気体噴射ノズル21の周囲に形成されている。気体噴射ノズル21は、円筒部材22と、円筒部材22の内部に挿通される弾性チューブ23と、を備える。円筒部材22の下端部には円環状の先端ガイド24が固定される。そして、接続管34を介して気体噴射経路11から弾性チューブ23の基端側に供給された気体を、
図4中に示す如く弾性チューブ23の先端23aから噴射するように構成される。
【0025】
図4及び
図5に示す如く、弾性チューブ23は、上端部が円筒部材22の基端部に支持されるとともに、下端部が円筒部材22の先端開口部から延出される。本実施形態において、弾性チューブ23の長さを105mm、円筒部材22の内径を26mm、長さを90mm、円筒部材22からの弾性チューブ23の延出長さを20mmとして構成した。
【0026】
また、円筒部材22の内周面には、円筒部材22の内径よりも小さい内径に形成された円環状の第一ガイド部材25a及び第二ガイド部材25bが設けられ、弾性チューブ23はガイド部材25a・25bの内側を挿通される。本実施形態においては、第一ガイド部材25aの厚さを6mm、内径を20mmとし、第二ガイド部材25bの厚さを8mm、内径を10mmとして構成した。
【0027】
本実施形態に係る気体噴射ノズル21において、コンプレッサーCから気体が気体噴射経路11及び接続管34を介して弾性チューブ23の基端に供給されると、弾性チューブ23が円筒部材22の内部でガイド部材25a・25bにガイドされて撓みながら回転する。具体的には
図4に示す如く、円筒部材22の内部において、円筒部材22の内径よりも小径のガイド部材25a・25bが配置された箇所では弾性チューブ23の回転範囲が規制される。さらに、ガイド部材25a・25bが配置されない箇所では弾性チューブ23がガイド部材25a・25bの内径よりも外側に膨らんで回転することにより、弾性チューブ23に対して強制的に撓みが発生する。これにより、気体噴射ノズル21における弾性チューブ23の先端23aから、気体がパルス状に噴射される。
【0028】
このように、本実施形態に係る気体噴射ノズル21においては、円筒部材22の基端部と先端部との外径が同一に構成されるため、従来技術の如く筒状ガイドが先広がりのテーパ状に形成された構成と比較して、気体噴射ノズル21の装置構成をコンパクトに形成することが可能となる。
【0029】
また、本実施形態に係る気体噴射ノズル21において、円筒部材22の内周面には、第一ガイド部材25aと第二ガイド部材25bとが先端部側と基端部側の二箇所に離間して設けられている。このガイド部材25a・25bが弾性チューブ23の回転をガイドすることにより、弾性チューブ23を撓みながら継続して回転させることができるため、安定して気体をパルス状に噴出することが可能となる。なお、本実施形態においてはガイド部材25a・25bと二個としているが、ガイド部材の個数及びその配置位置は本実施形態に限定されるものではない。
【0030】
また、本実施形態に係る気体噴射ノズル21において、弾性チューブ23は少なくとも一個の錘部を備える。具体的には
図4及び
図5に示す如く、弾性チューブ23は、先端部に形成された先端錘部26と、中途部に二個形成された第一中途錘部27a及び第二中途錘部27bと、を備える。そして、第一中途錘部27a及び第二中途錘部27bは、それぞれガイド部材25a・25bにおける基端側の近傍に設けられる。
【0031】
本構成により、弾性チューブ23が回転する際の慣性モーメントを大きくすることができるため、弾性チューブ23を撓みながらさらに安定して回転させることができ、より安定的に気体をパルス状に噴出することが可能となる。具体的には、本実施形態に係る気体噴射ノズル21によれば、0.2~0.3MPaの供給圧力、100~135L/minの流量でコンプレッサーCから空気を供給した場合に、パルス状気体を円形状、一定のリズム、且つ、強い面圧力で安定して発生させることができた。なお、弾性チューブ23に錘部を設けない構成とすることも可能である。
【0032】
また、本実施形態に係る除塵装置10は、気体噴射ノズル21、及び、気体噴射ノズル21における弾性チューブ23に気体を供給する気体供給部であるコンプレッサーCで構成された気体噴射装置を備える。さらに、除塵装置10は、気体噴射ノズル21の周囲に形成された吸気ノズル31と、吸気ノズル31を介して気体を吸引する気体吸引部である集塵機Pを備える。
【0033】
除塵装置10は本構成において、上記の如く気体噴射ノズル21の基端部と先端部との外径を同一にすることにより、装置構成を従来技術と比較してコンパクトに形成することを可能としている。また、気体噴射ノズル21を除塵装置10に採用することにより、吸気ノズル31の内部における気体噴射ノズル21による空気抵抗を従来技術と比較して小さくすることができるため、除塵装置10における吸引効率を向上させることが可能となる。
【0034】
なお、本実施形態に係る除塵装置10においては、気体噴射ノズル21とコンプレッサーCとで構成された気体噴射装置に、吸気ノズル31及び集塵機Pを設けることで構成しているが、気体噴射装置を単体として使用することも可能である。この場合でも、気体噴射ノズル21の基端部と先端部との外径を同一にすることにより、気体噴射装置の装置構成を従来技術と比較してコンパクトに形成することが可能となる。
【0035】
次に、
図6及び
図7を用いて、本発明の第二実施形態に係る除塵ノズル112について説明する。なお、本実施形態において除塵ノズル112に接続して除塵装置を構成するコンプレッサーC及び集塵機Pは、前記実施形態と同様のため説明を省略する。
【0036】
本実施形態に係る除塵ノズル112は、下方が矩形に開口された角筒形状の吸気ノズル131、吸気ノズル131の上側に形成されて吸気ノズル131と連通される筒状部132・132、吸気ノズル131における対向する側面にそれぞれ設けられる固定部133・133、吸気ノズル131を貫通して配置される接続管134、及び、吸気ノズル131の内部に収容される二個の気体噴射ノズル21・21等で構成される。気体噴射ノズル21の構成は前記実施形態と同様のため説明を省略する。
【0037】
本実施形態の如く、除塵ノズル112においては気体噴射ノズル21・21を二個隣接して配置している。これにより、除塵ノズル112の幅寸法を大きく構成することができるため、除塵対象物であるワークWの幅寸法に対応して除塵ノズル112を構成することができる。なお、除塵ノズルにおける気体噴射ノズル21の個数は1個又は2個に限定されるものではなく、ワークWの幅寸法に応じて3個以上とすることも可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 除塵装置 11 気体噴射経路
12 除塵ノズル(第一実施形態)
13 気体吸引経路 21 気体噴射ノズル
22 円筒部材 23 弾性チューブ
23a 先端 24 先端ガイド
25a 第一ガイド部材 25b 第二ガイド部材
26 先端錘部 27a 第一中途錘部
27b 第二中途錘部 31 吸気ノズル
32 筒状部 33 固定部
34 接続管 112 除塵ノズル(第二実施形態)
131 吸気ノズル 132 筒状部
133 固定部 134 接続管
C コンプレッサー(気体供給部)
P 集塵機(気体吸引部)
S 載置台 W ワーク
Wp 対象面