(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】安定な液体医薬製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20231219BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231219BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231219BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20231219BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20231219BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231219BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20231219BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20231219BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20231219BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20231219BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20231219BHJP
A61M 5/28 20060101ALI20231219BHJP
A61M 5/20 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P37/02
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/36
A61K47/02
C12N15/13
C07K16/24
A61M5/28
A61M5/20
(21)【出願番号】P 2022086449
(22)【出願日】2022-05-26
(62)【分割の表示】P 2018565705の分割
【原出願日】2017-06-28
【審査請求日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】10-2016-0083039
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】511237689
【氏名又は名称】セルトリオン・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジュンウォン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ウォンヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,スジュン
(72)【発明者】
【氏名】オ,ジュンソク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソヨン
(72)【発明者】
【氏名】ホン,スヒョン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ヨンギョン
【審査官】松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/177057(WO,A1)
【文献】特表2015-519382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 37/02
A61K 9/08
A61K 47/12
A61K 47/22
A61K 47/26
A61K 47/10
A61K 47/36
A61K 47/02
C12N 15/13
C07K 16/24
A61M 5/28
A61M 5/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)
90~145mg/mlのインフリキシマブ;
(B)
0.02~0.1%(w/v)の、ポリソルベートである界面活性剤;
(C)
1~10%(w/v)の、ソルビトール、マンニトール、スクロース、およびトレハロースからなる群より選択される1又は複数の糖;および
(D)
1~50mMの
、アセテートまたはヒスチジンを含む緩衝剤
を含む、安定な液体医薬製剤。
【請求項2】
(B)界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80またはこれらのうち2以上の混合物を含む、請求項
1に記載の安定な液体医薬製剤。
【請求項3】
(B)界面活性剤は、ポリソルベート80を含む、請求項1または請求項2に記載の安定な液体医薬製剤。
【請求項4】
pHが4.0~5.5である、請求項1~
3のうちいずれか1項に記載の安定な液体医薬製剤。
【請求項5】
アスパラギン酸、リシン、アルギニンまたはこれらの混合物を含まない、請求項1~
4のうちいずれか1項に記載の安定な液体医薬製剤。
【請求項6】
NaCl、KCl、NaF、KBr、NaBr、Na
2SO
4、NaSCN、K
2SO
4またはこれらの混合物を含まない、請求項1~
5のうちいずれか1項に記載の安定な液体医薬製剤。
【請求項7】
キレート剤を含まない、請求項1~
6のうちいずれか1項に記載の安定な液体医薬製剤。
【請求項8】
温度40℃±2℃で1ヶ月後の粘度が0.5cp~10.0cpであるか、または温度5℃±3℃で6ヶ月後の粘度が0.5cp~5cpである、請求項1~
7のうちいずれか1項に記載の安定な液体医薬製剤。
【請求項9】
皮下投与用である、請求項1~
8のうちいずれか1項に記載の安定な液体医薬製剤。
【請求項10】
使用前に再溶解(reconstitution)ステップ、希釈(dilution)ステップまたはこれらの
両方を経ない、請求項1~
9のうちいずれか1項に記載の安定な液体医薬製剤。
【請求項11】
請求項1~
8のうちいずれか1項に記載の安定な液体医薬製剤が充填されたプレフィルド・シリンジ(pre-filled syringe)。
【請求項12】
請求項
11に記載のプレフィルド・シリンジがその内部に含まれた自動注射器(auto-injector)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定な液体医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍怪死因子-α(TNF-α)は、全身性炎症に関与する細胞シグナル化タンパク質(サイトカイン)であり、急性期反応を形成するサイトカインのうちの一つである。TNF-αは、敗血症、感染、自己免疫疾患および移植拒否を含む様々な疾患および障害に連関している。TNF-αは免疫反応を促進し、これはリウマチ性関節炎、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、成人クローン病、小児クローン病、乾癬、乾癬性関節炎などのような自己免疫異常と関連した多くの臨床的問題を引き起こす。このような異常は、TNF-α阻害剤を用いることにより治療できる。
【0003】
インフリキシマブは、前記TNF-α阻害剤の役割を果たすことのできるキメラモノクローナル抗体の一種である。該抗体を含む従来の製剤は凍結乾燥粉末に製造され、それを再溶解および希釈して各疾患の投与用法および容量に合わせて静脈に注射する方式であった。
【0004】
例えば、レミケードラベルは、インフリキシマブ、スクロース、ポリソルベート80およびリン酸ナトリウムを含む凍結乾燥製剤を開示しており、静脈注射のために、凍結乾燥製剤に注射用水を追加する再溶解(reconstitution)ステップ、および再溶解製剤を塩化ナトリウムを含む注射用食塩水で希釈するステップを開示している。
【0005】
しかし、前記のような従来の製剤の投与方式(凍結乾燥->再溶解->希釈->静脈投与)には多くの費用がかかり、煩わしく、頻繁な投与により患者の不便、拒否感および副作用が発生し、投与者が医療教育を受けた人に制限されるという問題点がある。
【0006】
アダリムマブも前記TNF-α阻害剤の役割を果たすことのできるヒト型モノクローナル抗体の一種である。アダリムマブを含む液状剤形は、例えば、ヒュミララベルに開示されている。また、韓国公開特許公報第10-2014-0134689号は、アダリムマブ、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、マンニトール、塩化ナトリウムおよびポリソルベート80を含む液状剤形(実施例1)と、それを改良したものとして、アダリムマブ、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、マンニトール、アルギニン、塩化ナトリウムおよびポリソルベート80を含む液状剤形(実施例2)を開示している。
【0007】
しかし、前記液体医薬剤形のように、等張化剤としてNaClまたはKClを含む場合には沈殿およびゼラチン化のような問題が発生しうるし、抗体濃度が50mg/ml程度に低い場合には投与回数および投与周期が制限される。
【0008】
したがって、前記従来の液体医薬製剤の問題点を解決することができ、TNF-α阻害剤として抗体、特にインフリキシマブを含む安定な液体医薬製剤に対する必要性が在る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、抗体を高含量で含み、且つ、低粘度を有する安定な液体医薬製剤を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、加速条件および苛酷条件における優れた安定性を基に長期間保管安定性に優れた液体医薬製剤を提供することにある。
【0011】
本発明のまた他の目的は、皮下投与が可能な安定な液体医薬製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態に係る安定な液体医薬製剤は、(A)抗体またはその抗原結合断片;(B)界面活性剤;(C)糖またはその誘導体;および(D)緩衝剤を含む。
【0013】
本発明の一実施形態において、(A)抗体は、TNF-αに結合する抗体を含むことができる。
【0014】
本発明の一実施形態において、(A)抗体は、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブまたはこれらの混合物を含むことができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、(A)抗体は、キメラヒト-マウスIgGモノクローナル抗体を含むことができる。
【0016】
本発明の一実施形態において、(A)抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2ドメインおよび配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域;および配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメインおよび配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む重鎖可変領域を含むことができる。
【0017】
本発明の一実施形態において、(A)抗体またはその抗原結合断片は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含むことができる。
【0018】
本発明の一実施形態において、(A)抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖;および配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。
本発明の一実施形態において、(A)抗体またはその抗原結合断片の濃度は10~200mg/mlであってもよい。
【0019】
本発明の一実施形態において、(B)界面活性剤は、ポリソルベート、ポロキサマーまたはこれらの混合物を含むことができる。
【0020】
本発明の一実施形態において、(B)界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80またはこれらのうち2以上の混合物を含むことができる。
【0021】
本発明の一実施形態において、(B)界面活性剤は、ポリソルベート80を含むことができる。
【0022】
本発明の一実施形態において、(B)界面活性剤の濃度は0.02~0.1%(w/v)であってもよい。
【0023】
本発明の一実施形態において、(C)糖は単糖類、二糖類、オリゴ糖、多糖類またはこれらのうち2以上の混合物を含み、(C)糖の誘導体は糖アルコール、糖酸またはこれらの混合物を含むことができる。
【0024】
本発明の一実施形態において、(C)糖またはその誘導体は、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、スクロースまたはこれらのうち2以上の混合物を含むことができる。
【0025】
本発明の一実施形態において、(C)糖またはその誘導体の濃度は1~10%(w/v)であってもよい。
【0026】
本発明の一実施形態において、(D)緩衝剤は、アセテートまたはヒスチジンを含むことができる。
【0027】
本発明の一実施形態において、(D)緩衝剤の含量は1~50mMであってもよい。
【0028】
本発明の一実施形態において、pHは4.0~5.5であってもよい。
【0029】
本発明の一実施形態において、アスパラギン酸、リシン、アルギニンまたはこれらの混合物を含まなくてもよい。
【0030】
本発明の一実施形態において、NaCl、KCl、NaF、KBr、NaBr、Na2SO4、NaSCN、K2SO4またはこれらの混合物を含まなくてもよい。
【0031】
本発明の一実施形態において、キレート剤を含まなくてもよい。
【0032】
本発明の一実施形態において、40℃±2℃で1ヶ月間保管した後に測定した粘度が0.5cp~10cpであるか、または5℃±3℃で6ヶ月間保管した後に測定した粘度が0.5cp~5cpであってもよい。
【0033】
本発明の一実施形態に係る安定な液体医薬製剤は、(A)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2ドメインおよび配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域;および配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメインおよび配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む重鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合断片;(B)界面活性剤;(C)糖またはその誘導体;および(D)アセテートまたはヒスチジンを含む緩衝剤を含むことができる。
【0034】
本発明の一実施形態に係る安定な液体医薬製剤は、(A)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2ドメインおよび配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域;および配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメインおよび配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む重鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合断片90~145mg/ml;(B)界面活性剤0.02~0.1%(w/v);(C)糖またはその誘導体1~10%(w/v);および(D)アセテートまたはヒスチジンを含む緩衝剤1~50mMを含むことができる。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記安定な液体医薬製剤は皮下投与用であってもよい。
【0036】
本発明の一実施形態において、前記安定な液体医薬製剤は、使用前に再溶解(reconstitution)ステップ、希釈(dilution)ステップまたはこれらの全てを経なくてもよい。
【0037】
本発明の一実施形態に係るプレフィルド・シリンジ(pre-filled syringe)は、前記安定な液体医薬製剤が充填される。
【0038】
本発明の一実施形態に係る自動注射器(auto-injector)は、前記プレフィルド・シリンジがその内部に含まれる。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る安定な液体医薬製剤は、抗体を高含量で含み、且つ、低粘度を有し、加速条件および苛酷条件における優れた安定性を基に長期間保管安定性に優れており、皮下投与が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
[安定な液体医薬製剤]
本発明に係る安定な液体医薬製剤は、(A)抗体またはその抗原結合断片;(B)界面活性剤;(C)糖またはその誘導体;および(D)緩衝剤を含む。
【0041】
本出願の明細書において、用語「含まない」とは、該当成分を全く含まないことを意味する。また、該用語は該当成分を実質的に含まないこと、すなわち、抗体の活性、液体医薬製剤の安定性および粘度に影響を与えない範囲で含むこと、例えば、液体医薬製剤の全体重量を基準に0~1%(w/v)、0~1ppm(w/v)または0~1ppb(w/v)で含むことを意味する。
【0042】
(A)抗体またはその抗原結合断片
抗体は、2個の重鎖(Heavy Chain)および2個の軽鎖(Light Chain)がジスルフィド結合により互いに連結されている4個のポリペプチド鎖からなる免疫グロブリン分子を示す。その他の変化した構造を有する自然発生抗体、例えば、ラクダ(camelid)抗体もこの定義に含まれる。各々の重鎖は、重鎖可変領域および重鎖不変領域からなる。重鎖不変領域は、3個のドメイン(CH1、CH2およびCH3)からなる。各々の軽鎖は、軽鎖可変領域および軽鎖不変領域からなる。軽鎖不変領域は、1個のドメイン(CL)からなる。重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、骨格領域(FR)と呼ばれるさらに保存された領域と共に配置された、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性領域にさらに細分できる。各々の重鎖可変領域および軽鎖可変領域は3個のCDRおよび4個のFRからなり、これらはアミノ末端からカルボキシ末端まで下記の順に配列されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0043】
本発明の一実施形態において、抗体として、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組み換え抗体、一本鎖抗体、ハイブリッド抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはこれらの断片を含むことができる。キメラ抗体は、ある一種からの重鎖および軽鎖可変領域配列と他種からの不変領域配列とを含む抗体を意味する。本発明の一実施形態において、抗体として、キメラヒト-マウスIgGモノクローナル抗体を含むことができる。キメラヒト-マウスIgGモノクローナル抗体は、マウス重鎖および軽鎖可変領域とそれに結合されたヒト重鎖および軽鎖不変領域とからなる。キメラヒト-マウスIgGモノクローナル抗体は、当該技術分野で公知の方法により製造することができる。例えば、インフリキシマブの場合、米国特許第6,284,471号に記載された方法により製造することができる。
【0044】
本発明の一実施形態において、抗体として、TNF-αまたはTNF-αのエピトープに結合する抗体を含むことができる。TNF-αまたはTNF-αのエピトープに結合する抗体として、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブまたはこれらの混合物を含むことができる。本発明の一実施形態において、抗体として、インフリキシマブを含むことができる。
【0045】
本発明の一実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2ドメインおよび配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域;および配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメインおよび配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む重鎖可変領域を含むことができる。
【0046】
本発明の一実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含むことができる。
【0047】
本発明の一実施形態において、抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖;および配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。
【0048】
抗体またはその抗原結合断片の濃度は、本発明に係る安定な液体医薬製剤の安定性および粘度に悪影響を実質的に及ぼさない範囲内で自由に調節することができる。本発明の一実施形態において、抗体またはその抗原結合断片の濃度は10~200mg/mlであってもよい。本発明の他の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片の濃度は50~200mg/mlであってもよい。本発明のまた他の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片の濃度は80~150mg/mlであってもよい。本発明のまた他の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片の濃度は90~145mg/mlであってもよい。本発明のまた他の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片の濃度は110~130mg/mlであってもよい。抗体またはその抗原結合断片の濃度がこの範囲内である場合、抗体またはその抗原結合断片の高含量に応じて投与容量および投与周期の自由度を高めることができ、優れた長期間安定性および低粘度を示すことができる。
【0049】
(B)界面活性剤
界面活性剤の例としてはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリソルベート)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、Brij)、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル(例えば、Triton-X)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー(例えば、Poloxamer、Pluronic)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0050】
本発明の一実施形態において、前記界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)を含むことができる。ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80またはこれらのうち2以上の混合物を含むことができる。本発明の一実施形態において、ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート80またはこれらの混合物を含むことができる。本発明の他の実施形態において、ポリソルベートは、ポリソルベート80を含むことができる。
【0051】
本発明の一実施形態において、前記界面活性剤の濃度は、本発明に係る安定な液体医薬製剤の安定性および粘度に悪影響を及ぼさない範囲内で自由に調節することができる。例えば、界面活性剤の濃度は、0.001~5%(w/v)、0.01~1%(w/v)または0.02~0.1%(w/v)であってもよい。界面活性剤の濃度がこの範囲内である場合、優れた長期間安定性および低粘度を示すことができる。
【0052】
(C)糖または糖の誘導体
糖は、単糖類、二糖類、オリゴ糖、多糖類またはこれらのうち2以上の混合物を含むことができる。単糖類の例としてはグルコース、フルクトース、ガラクトースなどが挙げられ、これらに制限されるものではない。二糖類の例としてはスクロース、ラクトース、マルトース、トレハロースなどが挙げられ、これらに制限されるものではない。オリゴ糖の例としてはフラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖などが挙げられ、これらに制限されるものではない。多糖類の例としてはデンプン、グリコーゲン、セルロース、キチン、ペクチンなどが挙げられ、これらに制限されるものではない。
【0053】
糖の誘導体は、糖アルコール、糖酸またはこれらの混合物を含むことができる。糖アルコールの例としてはグリセロール、エリトリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ポリグリシトールなどが挙げられ、これらに制限されるものではない。糖酸の例としてはアルドン酸(グリセリン酸など)、ウロソン酸(ノイラミン酸など)、ウロン酸(グルクロン酸など)、アルダル酸(酒石酸など)などが挙げられ、これらに制限されるものではない。
【0054】
本発明の一実施形態において、糖またはその誘導体として、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、スクロースまたはこれらのうち2以上の混合物を含むことができる。
【0055】
本発明の一実施形態において、糖またはその誘導体の濃度は、本発明に係る液体医薬製剤の安定性および粘度に悪影響を実質的に及ぼさない範囲内で自由に調節することができる。例えば、糖またはその誘導体の濃度は、0.1~30%(w/v)、1~20%(w/v)または1~10%(w/v)であってもよい。糖またはその誘導体の濃度がこの範囲内である場合、優れた長期間安定性および低粘度を示すことができる。
【0056】
(D)緩衝剤
緩衝剤は、酸やアルカリによるpHの変化を最小化する中和性物質であり、緩衝剤の例としては、ホスフェート(phosphate)、アセテート(acetate)、スクシネート(succinate)、グルコネート(gluconate)、グルタメート(glutamate)、シトレート(citrate)、ヒスチジン(histidine)などが挙げられる。本発明の一実施形態において、緩衝剤は、アセテートまたはヒスチジンを含むことができる。緩衝剤としてアセテートおよびヒスチジンを全て含む場合には安定性が低下しうる。
【0057】
本発明の一実施形態において、緩衝剤は、アセテートを含むことができる。アセテートの例としては酢酸ナトリウム、酢酸亜鉛、酢酸アルミニウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウムなどが挙げられ、これらに制限されるものではない。pH調節のために酸、例えば、酢酸をさらに含むことができる。緩衝剤としてアセテートを含むことが、pHの調節および安定性の側面で最も好ましい。
【0058】
本発明の一実施形態において、緩衝剤は、ヒスチジンを含むことができる。緩衝剤としてヒスチジンを用いる場合、ヒスチジン塩、例えば、ヒスチジンクロリド、ヒスチジンアセテート、ヒスチジンホスフェート、ヒスチジンスルフェートなどが含まれることができる。pH調節のために酸、例えば、塩酸、酢酸、リン酸、硫酸などを含むことができる。
【0059】
本発明の一実施形態において、安定な液体医薬製剤は、シトレート(クエン酸塩)、ホスフェート(リン酸塩)またはこれらの混合物を含まなくてもよい。
【0060】
本発明の一実施形態において、緩衝剤(または緩衝剤の陰イオン)の含量は、本発明に係る液体医薬製剤の安定性および粘度に悪影響を実質的に及ぼさない範囲内で自由に調節することができる。例えば、緩衝剤またはその陰イオンの含量は、1~50mM、5~30mMまたは10~25mMであってもよい。緩衝剤またはその陰イオンの含量がこの範囲内である場合、優れた長期間安定性および低粘度を示すことができる。
【0061】
(E)pH
本発明の一実施形態において、安定な液体医薬組成物のpHは、4.0~5.5または4.7~5.3であってもよい。pHがこの範囲内である場合、優れた長期間安定性および低粘度を示すことができる。pHは、緩衝剤を用いて調節することができる。言い換えれば、緩衝剤を所定の含量で含む場合、別途のpH調節剤がなくても前記範囲のpHを示すことができる。シトレート、ホスフェートまたはこれらの混合物を緩衝剤として用いる場合には、前記範囲のpHを示すのが難しいことがある。別途のpH調節剤として酸(例えば、塩酸)または塩基(例えば、水酸化ナトリウム)をさらに含む場合には、抗体の安定性が低下しうる。
【0062】
(F)その他の成分
本発明の一実施形態において、安定な液体医薬製剤は、アスパラギン酸、リシン、アルギニンまたはこれらの混合物を含まなくてもよい。これらのアミノ酸を含む場合、その製剤が固体状態になりうる。本発明の一実施形態において、安定な液体医薬製剤は、前記3種のアミノ酸を除いた残りのアミノ酸のうち一つ以上を含むことができる。この場合、前記アミノ酸を5%(w/v)以内の範囲、例えば、0.001~5%(w/v)の範囲、0.001~1%(w/v)の範囲、0.01~5%(w/v)の範囲、0.01~1%(w/v)の範囲、0.1~5%(w/v)の範囲または0.1~1%(w/v)の範囲で含むことができる。
【0063】
本発明の他の実施形態において、安定な液体医薬製剤は、タウリンを含むことができる。この場合、前記タウリンを5%(w/v)以内の範囲、例えば、0.001~5%(w/v)の範囲、0.001~1%(w/v)の範囲、0.01~5%(w/v)の範囲、0.01~1%(w/v)の範囲、0.1~5%(w/v)の範囲または0.1~1%(w/v)の範囲で含むことができる。
【0064】
本発明の一実施形態において、安定な液体医薬製剤は、金属塩としてNaCl、KCl、NaF、KBr、NaBr、Na2SO4、NaSCN、K2SO4などを含まなくてもよい。これらの金属塩を含む場合には、沈殿現象が発生し、その製剤がゼラチンの形状を有し、安定性が低下しうる。
【0065】
本発明の一実施形態において、安定な液体医薬製剤は、キレート剤(例えば、EDTA)を含まなくてもよい。キレート剤を含む場合には、酸化率が増加しうる。
【0066】
本発明の一実施形態において、安定な液体医薬製剤は、保存剤を含まなくてもよい。保存剤の例としては、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、フェノール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン、カテコール、レソルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、m-クレゾールなどが挙げられる。保存剤を含む場合には、安定性の改善に役に立たない。
【0067】
本発明の一実施形態において、本発明の安定な液体医薬製剤における抗体の活性、製剤の安定性および低粘度に悪影響を実質的に及ぼさない範囲内で当該技術分野で公知の添加剤をさらに含むことができる。例えば、水性担体、酸化防止剤またはこれらのうち2以上の混合物をさらに含むことができる。水性担体は、製薬上に許容され(ヒトに投与時に安全で無毒性であり)、液体医薬製剤の製造に有用な担体である。水性担体の例としては滅菌注射用水(SWFI)、静菌注射用水(BWFI)、滅菌塩水溶液、リンガー液、デキストロースなどが挙げられ、これらに制限されるものではない。酸化防止剤としてはアスコルビン酸などが挙げられ、これに制限されるものではない。
【0068】
(G)「安定な」液体医薬製剤
本発明の「安定な」液体医薬製剤における用語「安定な」とは、本発明に係る抗体が製造工程の間および/または保管/貯蔵時にその物理的安定性および/または化学的安定性および/または生物学的活性を実質的に保有することを意味する。抗体の安定性を測定する様々な分析学的技術は、当該技術分野において容易に利用することができる。
【0069】
物理的安定性は当該技術分野で公知の方法により評価することができ、このような方法は光(吸光または光学密度)のサンプル見掛けの減衰測定を含む。このような光の減衰測定は、製剤の濁度と関連する。また、物理的安定性に対して、高分子量成分の含量、低分子量成分の含量、無傷のタンパク質量、不溶性異物粒子数などを測定することができる。
【0070】
化学的安定性は、例えば、化学的に変化した形態の抗体を検出し定量することにより評価することができる。化学的安定性は、例えば、イオン交換クロマトグラフィーにより評価できる荷電変化(例えば、脱アミド化または酸化の結果として発生)を含む。化学的安定性に対して、電荷変異体(酸性または塩基性ピーク)などを測定することができる。
【0071】
生物学的活性は当該技術分野で公知の方法により評価することができ、例えば、ELISAにより抗原結合アフィニティを測定することができる。
【0072】
本発明の一実施形態において、液体医薬製剤は、長期間安定することができる。
【0073】
本発明の一実施形態において、用語「安定な」液体医薬製剤は、次のうち一つ以上を満たす液体医薬製剤を意味する。
【0074】
濁度
-温度40℃±2℃で4週間保管した後に分光光度計により測定した吸光度A600が0~0.0300または0~0.0700である液体医薬製剤;
-温度40℃±2℃、相対湿度75±5%および密閉条件で4週間保管した後に分光光度計により測定した吸光度A600が0~0.0300または0~0.0700である液体医薬製剤;
【0075】
主成分の含量(メインピーク)
-温度40℃±2℃で4週間保管した後にSE-HPLCにより測定した主成分が98%~100%である液体医薬製剤;
-温度40℃±2℃、相対湿度75±5%および密閉条件で4週間保管した後にSE-HPLCにより測定した主成分が98~100%である液体医薬製剤;
【0076】
高分子量成分(メインピーク(無傷のIgG)を基準に滞留時間(retention time)が前側であるピーク)
-温度5℃±3℃で12ヶ月間保管した後にSE-HPLCにより測定した高分子量成分が0~1.00%である液体医薬製剤;
-温度5℃±3℃および密閉条件で12ヶ月間保管した後にSE-HPLCにより測定した高分子量成分が0~1.00%である液体医薬製剤;
【0077】
低分子量成分(メインピーク(無傷のIgG)を基準に滞留時間(retention time)が後側であるピーク)
-温度5℃±3℃で12ヶ月間保管した後にSE-HPLCにより測定した低分子量成分が0~0.40%である液体医薬製剤;
-温度5℃±3℃および密閉条件で12ヶ月間保管した後にSE-HPLCにより測定した低分子量成分が0~0.40%である液体医薬製剤;
【0078】
無傷の免疫グロブリンGの含量
-温度5℃±3℃で12ヶ月間保管した後に非還元CE-SDSにより測定した無傷の免疫グロブリンGの含量(Intact IgG%)が94.0%~100%である液体医薬製剤;
-温度5℃±3℃および密閉条件で12ヶ月間保管した後に非還元CE-SDSにより測定した無傷の免疫グロブリンGの含量(Intact IgG%)が94.0%~100%である液体医薬製剤;
-温度40℃±2℃で4週間保管した後に非還元CE-SDSにより測定した無傷の免疫グロブリンGの含量(Intact IgG%)が94.0%~100%である液体医薬製剤;
-温度40℃±2℃、相対湿度75±5%および密閉条件で4週間保管した後に非還元CE-SDSにより測定した無傷の免疫グロブリンGの含量(Intact IgG%)が94.0%~100%である液体医薬製剤;
【0079】
無傷の重鎖および軽鎖の含量
-温度5℃±3℃で12ヶ月間保管した後に還元CE-SDSにより測定した無傷の重鎖および軽鎖の含量(Intact HC+LC%)が99.0%~100%である液体医薬製剤;
-温度5℃±3℃および密閉条件で12ヶ月間保管した後に還元CE-SDSにより測定した無傷の重鎖および軽鎖の含量(Intact HC+LC%)が99.0%~100%である液体医薬製剤;
-温度40℃±2℃で4週間保管した後に還元CE-SDSにより測定した無傷の重鎖および軽鎖の含量(Intact HC+LC%)が98.0%~100%である液体医薬製剤;
-温度40℃±2℃、相対湿度75±5%および密閉条件で4週間保管した後に還元CE-SDSにより測定した無傷の重鎖および軽鎖の含量(Intact HC+LC%)が98.0%~100%である液体医薬製剤;
【0080】
不溶性異物粒子数
-温度5℃±3℃で12ヶ月間保管した後にHIACにより測定した不溶性異物粒子(10.00μm≦、<400.00μm)数が0~1,000個である液体医薬製剤;
-温度5℃±3℃および密閉条件で12ヶ月間保管した後にHIACにより測定した不溶性異物粒子(10.00μm≦、<400.00μm)数が0~1,000個である液体医薬製剤;
-温度40℃±2℃で4週間保管した後にMFIにより測定した不溶性異物粒子(1.00μm≦、<100.00μm)数が0~30,000個である液体医薬製剤;
-温度40℃±2℃、相対湿度75±5%および密閉条件で4週間保管した後にMFIにより測定した不溶性異物粒子(1.00μm≦、<100.00μm)数が0~30,000個である液体医薬製剤;
-温度40℃±2℃で4週間保管した後にMFIにより測定した不溶性異物粒子(10.00μm≦、<100.00μm)数が0~200個である液体医薬製剤;
-温度40℃±2℃、相対湿度75±5%および密閉条件で4週間保管した後にMFIにより測定した不溶性異物粒子(10.00μm≦、<100.00μm)数が0~20
0個である液体医薬製剤;
-温度40℃±2℃で6週間保管した後にMFIにより測定した不溶性異物粒子(10.00μm≦、<100.00μm)数が0~500個である液体医薬製剤;
-温度40℃±2℃、相対湿度75±5%および密閉条件で6週間保管した後にMFIにより測定した不溶性異物粒子(10.00μm≦、<100.00μm)数が0~500個である液体医薬製剤;
【0081】
酸化率
-温度40℃±2℃で4週間保管した後にLC-MSにより測定した重鎖Met 255の酸化率が0%~2.5%である液体医薬製剤;
-温度40℃±2℃、相対湿度75±5%および密閉条件で4週間保管した後にLC-MSにより測定した重鎖Met 255の酸化率が0%~2.5%である液体医薬製剤;
【0082】
電荷変異体
-温度40℃±2℃で4週間保管した後にIEC-HPLCにより測定した酸性ピークが20%~35%である液体医薬製剤;
-温度40℃±2℃、相対湿度75±5%および密閉条件で4週間保管した後にIEC-HPLCにより測定した酸性ピークが20%~35%である液体医薬製剤;
-温度40℃±2℃で4週間保管した後にIEC-HPLCにより測定した塩基性ピークが33%~40%である液体医薬製剤;
-温度40℃±2℃、相対湿度75±5%および密閉条件で4週間保管した後にIEC-HPLCにより測定した塩基性ピークが33%~40%である液体医薬製剤;
【0083】
TNF-α結合アフィニティ
-温度5℃±3℃で12ヶ月間保管した後にELISAにより測定したTNF-α結合アフィニティが80%~120%である液体医薬製剤;および
-温度5℃±3℃および密閉条件で12ヶ月間保管した後にELISAにより測定したTNF-α結合アフィニティが80%~120%である液体医薬製剤。
【0084】
本発明の一実施形態において、温度40℃±2℃で1ヶ月後に測定した粘度が0.5cp~10.0cpであってもよい。本発明の他の実施形態において、温度5℃±3℃で6ヶ月後に測定した粘度が0.5cp~5.0cpであってもよい。
【0085】
[安定な液体医薬製剤の製造方法]
本発明の安定な液体医薬製剤は公知の方法により製造することができ、特定の方法に制限されるものではない。例えば、界面活性剤および糖またはその誘導体を含む溶液に緩衝剤を添加しつつpHを調節した後、該混合溶液に抗体を入れて液体医薬製剤を製造することができる。また、精製工程の最終ステップにおいて、一部の賦形剤を含む溶液を製造した後、残りの成分を添加して液体医薬製剤を製造することができる。例えば、精製工程の最終ステップにおいて、抗体、緩衝剤および糖またはその誘導体を含む溶液を製造した後、該溶液に界面活性剤を添加して液体医薬製剤を製造することができる。
【0086】
また、前記製剤は、製造時に凍結乾燥工程を含まないか、または凍結乾燥工程を含んでもよい。
【0087】
凍結乾燥工程を含まない場合、例えば、本発明の液体医薬製剤を製造し滅菌などの処理後に直ちに密閉容器に入れることができる。
【0088】
凍結乾燥工程を含む場合、例えば、本発明の液体医薬製剤を製造し凍結乾燥した後、または本発明の液体医薬製剤を製造し凍結乾燥し保管/貯蔵した後、凍結乾燥および/または保管/貯蔵により除去または変形された成分を補充するかまたは交替して本発明に係る液体医薬製剤を製造することができる。また、本発明の液体医薬製剤のうち凍結乾燥および/または保管/貯蔵により除去または変形される成分が除外された成分のみを凍結乾燥した後、またはその成分のみを凍結乾燥し保管/貯蔵した後、前記除外された成分を添加して本発明に係る液体医薬製剤を製造することができる。
【0089】
[安定な液体医薬製剤の使用方法]
本発明に係る安定な液体医薬製剤は、TNF-αの活性が有害な疾病を治療するのに用いられることができる。TNFαの活性が有害な疾病の例としては敗血症、自己免疫疾患、感染性疾患、移植、悪性癌、肺障害、腸障害、心臓障害などが挙げられ、これらに制限されるものではない。
【0090】
本発明の一実施形態において、TNF-αの活性が有害な疾病は、リウマチ性関節炎、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、成人クローン病、小児クローン病、乾癬および乾癬性関節炎から選ばれる。
【0091】
本発明に係る安定な液体医薬製剤は、1回、数回または自己皮下投与用として用いられることができる。
【0092】
前記液体医薬製剤内の抗体をはじめとする他成分の濃度は上述した通りであり、液体医薬製剤の全体体積は0.2~2.0mlであってもよい。
【0093】
前記液体医薬製剤の投与量および投与時期は疾病の種類、疾病の重症度および経過状態、患者の健康および治療に対する反応、および治療する医師の判断に応じて異なり、特定の投与量および投与時期に制限されるものではない。例えば、前記液体医薬製剤を含む一つまたは数個の製品を用いて抗体濃度を基準に1~10mg/kgを投与した後、同一または互いに異なる投与量を毎週、隔週、3週ごとに、毎月、2ヶ月または3ヶ月ごとに投与することができる。
【0094】
本発明の一実施形態において、前記安定な液体医薬製剤は、使用前に再溶解(reconstitution)ステップ、希釈(dilution)ステップまたはこれらの全てを経なくてもよい。
【0095】
[治療方法および安定化方法]
また、本発明は、TNF-αの活性が有害な疾病を有する患者に、(A)抗体またはその抗原結合断片;(B)界面活性剤;(C)糖またはその誘導体;および(D)緩衝剤を含む安定な液体医薬製剤を投与することを含む、TNF-αの活性が有害な疾病を治療する方法を提供する。
【0096】
また、本発明は、(A)抗体またはその抗原結合断片;(B)界面活性剤;(C)糖またはその誘導体;および(D)緩衝剤を含む安定な液体医薬製剤を製造することを含む、抗体を液体医薬製剤内で安定化する方法を提供する。
【0097】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、(A)抗体は、TNF-αに結合する抗体を含むことができる。
【0098】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、(A)抗体は、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブまたはこれらの混合物を含むことができる。
【0099】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、(A)抗体は、キメラヒト-マウスIgGモノクローナル抗体を含むことができる。
【0100】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、(A)抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2ドメインおよび配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域;および配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメインおよび配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む重鎖可変領域を含むことができる。
【0101】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、(A)抗体またはその抗原結合断片は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含むことができる。
【0102】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、(A)抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖;および配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。
【0103】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、(A)抗体またはその抗原結合断片の濃度は10~200mg/mlであってもよい。
【0104】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、(B)界面活性剤は、ポリソルベート、ポロキサマーまたはこれらの混合物を含むことができる。
【0105】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、(B)界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80またはこれらのうち2以上の混合物を含むことができる。
【0106】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、(B)界面活性剤は、ポリソルベート80を含むことができる。
【0107】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、(B)界面活性剤の濃度は0.02~0.1%(w/v)であってもよい。
【0108】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、(C)糖は単糖類、二糖類、オリゴ糖、多糖類またはこれらのうち2以上の混合物を含み、(C)糖の誘導体は糖アルコール、糖酸またはこれらの混合物を含むことができる。
【0109】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、(C)糖またはその誘導体は、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、スクロースまたはこれらのうち2以上の混合物を含むことができる。
【0110】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、(C)糖またはその誘導体の濃度は1~10%(w/v)であってもよい。
【0111】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、(D)緩衝剤は、アセテートまたはヒスチジンを含むことができる。
【0112】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、(D)緩衝剤の含量は1~50mMであってもよい。
【0113】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、前記安定な液体医薬製剤のpHは4.0~5.5であってもよい。
【0114】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、前記安定な液体医薬製剤は、アスパラギン酸、リシン、アルギニンまたはこれらの混合物を含まなくてもよい。
【0115】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、前記安定な液体医薬製剤は、NaCl、KCl、NaF、KBr、NaBr、Na2SO4、NaSCN、K2SO4またはこれらの混合物を含まなくてもよい。
【0116】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、前記安定な液体医薬製剤は、キレート剤を含まなくてもよい。
【0117】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、前記安定な液体医薬製剤は、保存剤を含まなくてもよい。
【0118】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、前記安定な液体医薬製剤は、水性担体、酸化防止剤またはこれらのうち2以上の混合物をさらに含むことができる。
【0119】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、前記安定な液体医薬製剤は、温度40℃±2℃で1ヶ月後に測定した粘度が0.5cp~10.0cpであるか、または5℃±3℃で6ヶ月後に測定した粘度が0.5cp~5.0cpであってもよい。
【0120】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、前記安定な液体医薬製剤は、(A)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2ドメインおよび配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域;および配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメインおよび配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む重鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合断片;(B)界面活性剤;(C)糖またはその誘導体;および(D)アセテートまたはヒスチジンを含む緩衝剤を含むことができる。
【0121】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、前記安定な液体医薬製剤は、(A)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2ドメインおよび配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域;および配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメインおよび配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む重鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合断片90~145mg/ml;(B)界面活性剤0.02~0.1%(w/v);(C)糖またはその誘導体1~10%(w/v);および(D)アセテートまたはヒスチジンを含む緩衝剤1~50mMを含むことができる。
【0122】
前記治療方法の一実施形態において、前記安定な液体医薬製剤を皮下に投与することができる。
【0123】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、前記安定な液体医薬製剤は、使用前に再溶解(reconstitution)ステップ、希釈(dilution)ステップまたはこれらの全てを経なくてもよい。
【0124】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、前記安定な液体医薬製剤は、使用前にプレフィルド・シリンジ(pre-filled syringe)内に充填される。
【0125】
前記治療方法または安定化方法の一実施形態において、前記プレフィルド・シリンジは、使用前に自動注射器(auto-injector)内に含まれる。
【0126】
[製品]
また、本発明は、前記安定な液体医薬製剤;および前記安定な液体医薬製剤を密閉した状態で収容する容器を含む製品を提供する。
【0127】
前記安定な液体医薬製剤は上述した通りである。
【0128】
本発明の一実施形態において、前記容器はガラス、ポリマー(プラスチック)、金属などの物質からなることができ、これらに制限されるものではない。本発明の一実施形態において、前記容器は、瓶、バイアル、カートリッジ、注射器(プレフィルド・シリンジ、自動注射器)またはチューブであり、これらに制限されるものではない。本発明の一実施形態において、前記容器は、ガラスまたはポリマーバイアル、またはガラスまたはポリマープレフィルド・シリンジであってもよい。
【0129】
前記バイアル、カートリッジ、プレフィルド・シリンジ、自動注射器などの具体的な製品形態と前記安定な液体医薬製剤を前記バイアル、カートリッジ、プレフィルド・シリンジ、自動注射器などに充填する方法は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有した者であれば容易に入手または実施することができる。例えば、米国特許第4,861,335号、第6,331,174号などは、プレフィルド・シリンジの具体的な製品形態および充填方法を開示している。例えば、米国特許第5,085,642号、第5,681,291号などは、自動注射器の具体的な製品形態および組み立て方法を開示している。前記バイアル、カートリッジ、プレフィルド・シリンジ、自動注射器などとして商用化された製品をそのまま用いるか、または前記安定な液体医薬製剤の物性、投与部位、投与量などを考慮して別途に注文製作した製品を用いることができる。
【0130】
本発明の一実施形態において、前記容器の内部にシリコーンオイルがコーティングされていなくてもよい。シリコーンオイルがコーティングされている場合には安定性が低下しうる。前記容器は、1回投与用または数回投与用の容器であってもよい。
【0131】
本発明の一実施形態において、前記製品は、前記安定な液体医薬製剤の使用方法、保管方法またはこれらの全てを提供する指示事項をさらに含むことができる。前記使用方法は、TNF-αの活性が有害な疾病の治療法を含み、投与経路、投与量および投与時期を含むことができる。
【0132】
本発明の一実施形態において、前記製品は、商業的および使用者の観点で必要なその他の道具、例えば、針、注射器などを含むことができる。
【0133】
以下では本発明を実施例により詳細に説明する。下記の実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲が下記の実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0134】
以下の実験例で用いられた抗体と関連し、市販中のRemsima Inj.(製造会社:セルトリオン)から精製されたインフリキシマブを用いた。
【0135】
以下の実験例で用いられた液体医薬製剤の物理的安定性、化学的安定性および生物学的活性の測定方法として次のような方法を利用した。
【0136】
-濁度(Turbidity)
UV-Vis分光光度計を用いて600nmにおける吸光度を測定した。
【0137】
-主成分の含量
サイズ排除高性能液体クロマトグラフィー(Size Exclusion HPLC)を用いて主成分の含量(main peak;%)を測定した。
【0138】
-高分子量成分の含量
サイズ排除高性能液体クロマトグラフィー(Size Exclusion HPLC)を用いて高分子量成分の含量(pre-peak;%)を測定した。
【0139】
-低分子量成分の含量
サイズ排除高性能液体クロマトグラフィー(Size Exclusion HPLC)を用いて低分子量成分の含量(post-peak;%)を測定した。
【0140】
-無傷の免疫グロブリンGの含量(Intact IgG%)
非還元キャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム(Non-Reduced Capillary Electrophoresis-Sodium Dodecyl Sulfate;NR CE-SDS)を用いて無傷の免疫グロブリンGの含量(%)を測定した。
【0141】
-無傷の重鎖および軽鎖の含量(Intact HC+LC%)
還元キャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム(Reduced Capillary Electrophoresis-Sodium Dodecyl Sulfate;R CE-SDS)を用いて無傷の重鎖および軽鎖の含量(%)を測定した。
【0142】
-不溶性異物粒子(Sub-visible particles)の個数
実験例1~4:マイクロフローイメージング(Micro Flow Imaging;MFI)を用いて不溶性異物粒子数を測定した。
実験例5:光遮蔽型微粒子計数器(モデル名:HIAC 9703)を用いて不溶性異物粒子数を測定した。
【0143】
-酸化率(Oxidation)
質量分析を通じた液体クロマトグラフィー(LC-MS)によりペプチドマッピング(Peptide mapping)を通じて重鎖Met 255の酸化率(%)を測定した。
【0144】
-電荷変異体
イオン交換クロマトグラフィー-高性能液体クロマトグラフィー(Ion Exchange Chromatography-High Performance Liquid Chromatography;IEC-HPLC)により酸性および塩基性ピーク(%)を測定した。
【0145】
-TNF-α結合アフィニティ
酵素結合免疫吸着分析法(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay;ELISA)によりTNF-α結合アフィニティ(%)を測定した。
【0146】
-粘度
フローセル(B05センサ型、50μmセル深さ)が取り付けられたマイクロキャピラリーレオメータ(見掛けせん断率の範囲:103~105s-1)装置を用いて、25℃±0.1℃で500μlシリンジに入れて測定した。
【0147】
実験例1:糖アルコールとNaClの比較;アセテート/ヒスチジン緩衝剤とシトレート/ホスフェート緩衝剤の比較;pH4~5.5とpH6~7の比較
実験例1で用いられた液体医薬製剤と関連し、各緩衝液を各pHに合わせて製造した後にソルビトールまたはNaClを添加し、それに抗体を添加し、界面活性剤を添加して表1の試料を製造した。各成分の具体的な含量は表1に記載された通りである。緩衝剤の濃度は、該当化合物の分子/陰イオンの濃度を意味する。全体容量は1mlであった。
【0148】
【0149】
実施例1~3および比較例1~8により製造された液体医薬製剤を40±2℃の温度および75±5%の相対湿度で2週間保管した。その結果、NaClを含有する全ての製剤(比較例1、2、4、5および7)は、沈殿およびゼラチンのような形状を示した。また、ソルビトールを含有するが、クエン酸ナトリウムを含む比較例3およびリン酸ナトリウムを含む比較例8もゼラチンのような形状を示した。
【0150】
ソルビトールを含有する製剤のうち実施例1、2、3および比較例6のみがゼラチン形状を示さず、これらに対して、5±3℃の温度で0週後、2週後、4週後の安定性、そして40±2℃の温度および75±5%の相対湿度で2週後および4週後の安定性を測定し、その結果を表2~9に示す。
【0151】
【0152】
表2より、pHが4であり、緩衝剤としてアセテートを含む実施例1が濁度の面で最も優れることが分かり、特に40℃で4週後にも吸光度が0.0300以下であることが分かる。また、pHが5.5であり、緩衝剤としてヒスチジンを含む実施例2~3も40℃で4週後に吸光度が0.0700以下であることが分かる。
【0153】
その反面、pHが6であり、緩衝剤としてホスフェートを含む比較例6の場合は、40℃で2週および4週後に濁度が顕著に増加したことが分かる。
【0154】
【0155】
表3より、実施例1が全ての条件で高分子量成分を最も少なめに含むことが分かる。特に、実施例1が40℃の温度で4週後に高分子量成分を1.0%以下で含むことが分かる。また、実施例2および3も40℃の温度で4週後に高分子量成分を1.5%以下で含むことが分かる。
【0156】
無傷の免疫グロブリンGの含量(Intact IgG%)
【表4】
【0157】
表4より、実施例1~3が40℃の温度で4週後に無傷の免疫グロブリンGの含量が94.0%以上として比較例6よりも高いことが分かる。
【0158】
無傷の重鎖および軽鎖の含量(Intact HC+LC%)
【表5】
【0159】
表5より、実施例1~3が40℃の温度で4週後に無傷の重鎖および軽鎖の含量が98.0%以上として比較例6よりも高いことが分かる。
【0160】
【0161】
表6より、実施例1~3が40℃の温度で4週後に重鎖Met 255の酸化率が2.5%以下として比較例6よりも低いことが分かる。
【0162】
【0163】
表7より、実施例1~3が40℃の温度で4週後に酸性ピークが35%以下として比較例6よりも低いことが分かり、これは酸性ピーク増加の主な原因である脱アミノ化が少なく起こる安定な剤形であることが分かる。
【0164】
【0165】
表8より、実施例1~3が40℃の温度で4週後に塩基性ピークが33%以上として比較例6よりも高いことが分かる。
【0166】
不溶性異物粒子数(1.00μm≦、<100.00μm)
【表9】
【0167】
表9より、実施例1~3が40℃の温度で4週後に不溶性異物粒子(1.00μm≦、<100.00μm)数が30,000個以下として比較例6よりも少ないことが分かる。
【0168】
実験例2:アミノ酸の影響
実験例2で用いられた液体医薬製剤と関連し、酢酸ナトリウムを用いて各pHに合わせて緩衝液を製造した後にソルビトールを添加し、それに抗体を添加し、界面活性剤とアミノ酸/タウリンを添加して表10の試料を製造した。各成分の濃度は表10に記載された通りである。緩衝剤の濃度は、アセテート陰イオンの濃度を意味する。全体容量は1mlであった。
【0169】
【0170】
アスパラギン酸、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンを各々添加した比較例9、10、11および12の場合、50±2℃で24時間後に固体状態になった。
【0171】
残りのアミノ酸またはタウリンを含有する製剤に対して5±3℃および50±2℃で24時間後の安定性を各々測定したが、これらの間にそしてこれらと実施例1との間に大きな差はなかった。
【0172】
実験例3:タンパク質の濃度;界面活性剤の濃度;糖の種類
実験例3で用いられた液体医薬製剤と関連し、酢酸ナトリウムを用いて各pHに合わせて緩衝液を製造した後にソルビトールまたはマンニトールまたはトレハロースまたはスクロースを添加し、それに抗体を添加し、界面活性剤を添加して表11の試料を製造した。各成分の含量は表11に記載された通りである。緩衝剤の濃度は、アセテート陰イオンの濃度を意味する。全体容量は1mlであった。
【0173】
【0174】
前記製剤に対して、5±3℃の温度で0週後、2週後、4週後の安定性、そして40±2℃の温度および75±5%の相対湿度で2週後および4週後の安定性を測定し、その結果を表12~17に示す。
【0175】
【0176】
表12より、抗体濃度の上昇に応じて、高分子量成分が多くなるが、抗体濃度90~145mg/mlの範囲内で5℃および40℃で4週後に高分子量成分が概して低いことが分かる。
【0177】
界面活性剤の濃度
不溶性異物粒子数(1.00μm≦、<100.00μm)
【表13】
【0178】
表13より、界面活性剤0.02~0.1%(w/v)の範囲内で40℃で4週後に不溶性異物粒子数(1.00μm≦、<100.00μm)が10,000個以下であることが分かる。
【0179】
糖の種類
主成分の含量(main peak)
【表14】
【0180】
表14より、糖としてソルビトール、マンニトール、トレハロースまたはスクロースを用いた場合、40℃で4週後に主成分の含量が98%以上であることが分かる。
【0181】
【0182】
表15より、糖としてソルビトール、マンニトール、トレハロースまたはスクロースを用いた場合、40℃で4週後に酸性ピークが35%以下であることが分かる。
【0183】
不溶性異物粒子数(1.00μm≦、<100.00μm)
【表16】
【0184】
不溶性異物粒子数(10.00μm≦、<100.00μm)
【表17】
【0185】
表16および17より、糖としてソルビトール、マンニトール、トレハロースまたはスクロースを用いた場合、40℃で4週後に不溶性異物粒子数(1.00μm≦、<100.00μm)が15,000個以下であり、不溶性異物粒子数(10.00μm≦、<100.00μm)が200個以下であることが分かる。
【0186】
実験例4:界面活性剤の種類、キレート剤の影響
実験例4で用いられた液体医薬製剤と関連し、酢酸ナトリウムを用いて各pHに合わせて緩衝液を製造した後にソルビトールを添加し、それに抗体を添加し、界面活性剤または界面活性剤とキレート剤を添加して表18の試料を製造した。各成分の含量は表18に記載された通りである。緩衝剤の濃度は、アセテート陰イオンの濃度を意味する。全体容量は1mlであった。
【0187】
【0188】
前記製剤に対して、5±3℃の温度、25±2℃の温度/60±5%の相対湿度、および40±2℃の温度/75±5%の相対湿度の条件および密閉条件で0週後、3週後、6週後の安定性を測定し、その結果を表19~20に示す。
【0189】
界面活性剤の種類
不溶性異物粒子(10.00μm≦、<100.00μm)
【表19】
【0190】
表19より、界面活性剤としてポリソルベート80を用いた実施例13の場合、40℃で6週後に不溶性異物粒子(10.00μm≦、<100.00μm)の個数は100個以下として最も少なく、ポロキサマー188を用いた実施例15の場合、40℃で6週後に不溶性異物粒子(10.00μm≦、<100.00μm)の個数は2,000個以上として最も多いことが分かる。
【0191】
キレート剤(EDTA)の影響
酸化率(重鎖Met 255)
【表20】
【0192】
表20より、キレート剤(EDTA)を含む比較例13~15は、キレート剤(EDTA)を含まない実施例13~15に比べて、40℃で6週後に重鎖Met 255の酸化率が増加したことが分かる。
【0193】
実験例5:長期間安定性
実験例5で用いられた液体医薬製剤と関連し、酢酸ナトリウムを用いてpH5.0に合わせて緩衝液を製造した後にソルビトールを添加し、それに抗体を添加し、界面活性剤を添加して表21の試料を製造した。各成分の含量は表21に記載された通りである。緩衝剤の濃度は、アセテート陰イオンの濃度を意味する。全体容量は1mlであった。
【0194】
【0195】
前記製剤に対して5±3℃の温度および密閉条件で0ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後の安定性を測定し、その結果を表22~27に示す。
【0196】
不溶性異物粒子(10.00μm≦、<400.00μm)
【表22】
【0197】
表22より、実施例16は、5℃で12ヶ月後に不溶性異物粒子(10.00μm≦、<400.00μm)数が100個以下として低いことが分かる。
【0198】
無傷の免疫グロブリンGの含量(Intact IgG%)
【表23】
【0199】
表23より、実施例16は、5℃で12ヶ月後に無傷の免疫グロブリンGの含量が94%以上として高いことが分かる。
【0200】
無傷の重鎖および軽鎖の含量(Intact HC+LC%)
【表24】
【0201】
表24より、実施例16は、5℃で12ヶ月後に無傷の重鎖および軽鎖の含量が99%以上として高いことが分かる。
【0202】
【0203】
表25より、実施例16は、5℃で12ヶ月後に高分子量成分の含量が1.0%以下として低いことが分かる。
【0204】
【0205】
表26より、実施例16は、5℃で12ヶ月後に低分子量成分の含量が0.4%以下として低いことが分かる。
【0206】
【0207】
表27より、実施例16は、5℃で12ヶ月後にTNF-α結合アフィニティが95%以上として高いことが分かる。
【0208】
前記製剤に対して、40±2℃の温度および密閉条件で0ヶ月後、0.5ヶ月後、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後の粘度、および5±3℃の温度および密閉条件で6ヶ月後の粘度を測定し、その結果を表28に示す。
【0209】
【0210】
表28より、実施例16は、温度40℃±2℃で1ヶ月後の粘度が8.0cpとして低く維持されることが分かり、温度5℃±3℃で6ヶ月後の粘度が4.0cpとして低く維持されることが分かる。
【配列表】