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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】落雷抑制装置
(51)【国際特許分類】
   H05F 3/04 20060101AFI20231219BHJP
   H02G 13/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H05F3/04 F
H02G13/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021194436
(22)【出願日】2021-11-30
(65)【公開番号】P2023080886
(43)【公開日】2023-06-09
【審査請求日】2023-06-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511019144
【氏名又は名称】株式会社落雷抑制システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】松本 敏男
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0244234(US,A1)
【文献】特開2020-071990(JP,A)
【文献】特開昭50-048443(JP,A)
【文献】特開平03-203198(JP,A)
【文献】中国実用新案第205141374(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第113471817(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1884340(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第107732670(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104953471(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05F 1/00 - 7/00
H02G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の1)ないし5)の工程を含む落雷抑制装置の設置方法。
1)落雷を抑制する主要部を構成する落雷抑制装置本体と、この落雷抑制装置本体を支持する支柱とを、導電体からなる基体に格納する工程。
2)前記落雷抑制装置本体および支柱が格納された前記基体を設置箇所へ搬送する工程。
3)前記基体を地面に固定する工程。
4)前記落雷抑制装置本体が装着された前記支柱を前記基体に立設固定して、前記落雷抑制装置本体を地面から所定高さに保持する工程。
5)前記基体を、板体を介して地面に接触させることにより、前記地面と電気的に接続する工程。
【請求項2】
前記2)の工程において、前記基体を、トレーラーを用いて構成し、このトレーラーを牽引車両によって牽引して設置箇所へ搬送することを特徴とする請求項1に記載の落雷抑制装置の設置方法。
【請求項3】
前記2)の工程において、前記基体を自走車両に搭載して設置箇所へ搬送することを特徴とする請求項1に記載の落雷抑制装置の設置方法。
【請求項4】
前記4)の工程において、支柱を複数の支柱構成体によって構成しておき、前記支柱を前記基体に立設固定するのに先立って、前記複数の支柱構成体を軸線方向に連結することによって所定長さの支柱を構成することを特徴とする請求項1に落雷抑制装置の設置方法。
【請求項5】
落雷抑制の主要部を構成する落雷抑制装置本体を所定高さに保持した状態で設置される落雷抑制装置であって、前記落雷抑制装置本体が装着される支柱と、この支柱が立設固定される搬送可能な基体と、この基体に設けられ、この基体を地面に固定する固定手段と、前記基体と地面とを電気的に接続する接地手段を備え、前記基体に、この基体の搬送時において前記落雷抑制装置本体や前記支柱が格納される格納部、および、前記支柱が立設固定される支柱支持部が構成され、前記基体および前記支柱が電導体によって形成されており、前記接地手段は、地面に接触可能な板体であることを特徴とする落雷抑制装置。
【請求項6】
前記基体が、牽引可能なトレーラーによって構成されていることを特徴とする請求項5に記載の落雷抑制装置。
【請求項7】
前記支柱が複数の支柱構成体によって構成され、これらの支柱構成体が連結手段によって軸線方向に連結される構成となされていることを特徴とする請求項5に記載の落雷抑制装置。
【請求項8】
前記連結手段が、前記支柱構成体の端部に設けられた外方フランジと、一方の支柱構成体に設けられた前記外方フランジと他方の支柱構成体に設けられた前記外方フランジとを締結するボルトおよびナットによって構成されていることを特徴とする請求項7に記載の落雷抑制装置。
【請求項9】
前記複数の支柱構成体が相互に嵌合可能に構成され、前記連結手段が、外側に位置させられる支柱構成体の端部に設けられた径方向に変形可能な係止片と、外側に位置させられる支柱構成体に装着され前記係止片を内側に位置させられる支柱構成体の外面に圧接させる押圧部材によって構成されていることを特徴とする請求項7に記載の落雷抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落雷を抑制することで、雷害から被保護体を保護するための落雷抑制装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
落雷は大気中で起こる放電現象であり、雷放電には雲内放電、雲間放電、雲―大地間放電等がある。雷放電で大きな被害を出すのは雲―大地間放電(以下落雷)である。落雷は雷雲(雲底)と大地または大地等に建設された構造物との間の電界強度が非常に大きくなり、その電荷が飽和状態となって大気の絶縁を破壊したときに発生する現象である。
【0003】
落雷の現象を詳細に観察すると、夏季に起こる一般的な落雷(夏季雷)の場合、雷雲が成熟すると雷雲からステップトリーダが大気の放電しやすいところを選びながら大地に近づいてくる。
ステップトリーダが大地とある程度の距離になると大地または建築物(避雷針)、木などからステップトリーダに向かって、微弱電流の上向きストリーマ(お迎え放電)が伸びてくる。
このストリーマとステップトリーダが結合すると、その経路を通って、雷雲と大地間に大電流(帰還電流)が流れる。
これが落雷現象である。
【0004】
このような落雷現象に対し、従来の雷保護概念では、落雷は防止できないものとの観点から、落雷を突針型避雷針(フランクリンロッド)に受けて大地に流す方式が大半であった。
【0005】
これに対し、本発明者等は、落雷の発生を極力抑制することによって被保護体を保護すべく、特許文献1に示される落雷抑制装置を提案した。
【0006】
この落雷抑制装置は、絶縁体を挟んで配置される上部電極体及び下部電極体を有し、下部電極体のみを接地して構成したものである。
【0007】
そして、たとえばマイナス電荷が雲底に分布した雷雲が近づくと、それとは逆の電荷(プラス電荷)が大地の表面に分布し、接地されている下部電極体にもプラス電荷が集まる。
【0008】
すると、絶縁体を介して配置されている上部電極体は、コンデンサの作用でマイナス電荷を帯びることとなる。
【0009】
この作用により、避雷装置とその周辺における上向きストリーマの発生を起こりにくくして落雷の発生を抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、先の提案の落雷抑制装置は、前記電極体を支柱の先端に固定するとともに、この電極を支柱とともに既存の建築物、あるいは、新たに構築した支持構造物に取り付け、さらに、支柱を、前述した建築物や支持構造物に敷設された接地線により接地することによって設置されるようになっている。
【0012】
このように、設置に当たって、既存の建築物を利用して設置する場合には、その建築物への支柱の固定作業が必要であり、新たに構築する支持構造物を利用する場合には、支持構造物の建築作業およびこの支持構造物への支柱の固定作業が必要であり、さらに、何れの場合においても、電極体を接地するための接地線の敷設作業がさらに必要となる。
【0013】
このように落雷抑制装置の設置に際して、その設置作業が多くの工程を必要とし、作業を繁雑なものとしている。
【0014】
また、設置位置も建築物の位置や支持構造物の位置に拘束され、さらに、撤去作業が繁雑であることから、設置後は、ほぼ恒久的な構造物となってしまう。
【0015】
本発明者等は、このような従来において残された問題点を知見し本発明に至った。
【0016】
本発明は、前述した知見に基づきなされたもので、設置位置の自由度を高め、かつ、その設置作業や撤去作業の容易な落雷抑制装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の落雷抑制装置の設置方法は、前述した課題を解決すべくなされたもので、以下の1)ないし4)の工程を含むことを特徴とする。
1)落雷を抑制する主要部を構成する落雷抑制装置本体と、この落雷抑制装置本体を支持する支柱とを、導電体からなる基体に格納する工程。
2)前記落雷抑制装置本体および支柱が格納された前記基体を設置箇所へ搬送する工程。
3)前記基体を地面に固定する工程。
4)前記落雷抑制装置本体が装着された前記支柱を前記基体に立設固定して、前記落雷抑制装置本体を地面から所定高さに保持する工程。
5)前記基体を地面に電気的に接続する工程。
【0018】
このような設置方法によれば、まず、落雷を抑制する主要部を構成する落雷抑制装置本体と、この落雷抑制装置本体を支持する支柱とを基体に格納した状態で、基体を設置位置へ搬送することにより、落雷抑制装置を目的の設置位置へ配置する。
【0019】
ついで、基体を地面に固定するとともに、落雷抑制装置本体および支柱を基体から取り出し、この支柱を、落雷抑制装置本体を上方にして基体に立設固定する。
【0020】
これによって、落雷抑制装置本体を設置位置の所定高さに保持することができる。
【0021】
ついで、基体と地面とを電気的に接続することにより、落雷抑制装置本体を支柱や基体を介して地面に電気的に接続して、落雷抑制装置の設置を完了する。
【0022】
このように本発明の落雷抑制装置の設置方法によれば、設置箇所における支持構造物の有無に拘わらず設置が可能である。
また、設置作業を地上の低所作業に集約して、その設置作業を容易にするとともに簡便なものとすることができる。
【0023】
また、本発明の落雷抑制装置は、落雷抑制装置本体が装着される支柱と、この支柱が立設固定される搬送可能な基体と、この基体に設けられ、この基体を地面に固定する固定手段と、前記基体と地面とを電気的に接続する接地手段を備え、前記基体に、この搬送時において前記落雷抑制装置本体や前記支柱が格納される格納部、および、前記支柱が立設固定される支柱支持部が構成され、前記基体および前記支柱が電導体によって形成されていることを特徴としている。
【0024】
このような構成とすることにより、基体に設けられた格納部に落雷抑制装置本体および支柱を格納することができ、これによって落雷抑制装置をコンパクトに一体化して、落雷抑制装置の搬送作業を円滑なものとすることができる。
【0025】
前記基体に設けられた固定手段により、この基体を地面に固定することができる。
これによって、基体を設置箇所に搬送後に、基体の固定を迅速に行なうことができる。
【0026】
また、固定された基体から落雷抑制装置本体と支柱を取り出して組み上げた後に、これらを基体の支柱支持部に立設固定することにより、落雷抑制装置本体を、地上より所定高さに保持することができる。
【0027】
これによって、落雷抑制装置本体の設置作業を、地上の低所作業に集約することができ、その設置作業を簡便で安全な作業とすることができる。
【0028】
さらに、基体を地面に固定する固定手段を、接地手段によって地面と電気的に接続することにより、支柱、基体、および、固定手段と地面との電気的な接続を確実に行なうことができる。
これによって、落雷抑制装置本体と地面との電気的な接続を確実に行なうことができる。
【0029】
したがって、本発明の落雷抑制装置によれば、請求項1に記載の落雷抑制装置の設置方法を有効に実施することができる。
【発明の効果】
【0030】
このように、本発明によれば、落雷抑制装置の設置位置の自由度を高め、かつ、その設置作業を安全かつ容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態が適用された駐機場の平面図である。
図2】本発明の一実施形態に用いられる落雷抑制装置本体の縦断面図である。
図3】本発明の一実施形態を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態を示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態を示す斜視図である。
図6】本発明の一実施形態を示す斜視図である。
図7】本発明の一実施形態を示す斜視図である。
図8】本発明の一実施形態の支柱の連結部の縦断面図である。
図9】本発明の他の実施形態の支柱連結部の縦断面図である。
図10】本発明のさらに他の実施形態の支柱連結部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態では、図1に示すように、飛行機Aが露出した状態で保管される駐機場Bに適用した例を示した。
【0033】
駐機場Bには、任意数の飛行機Aが駐機スペースに略整列状態で駐機されており、これらの飛行機Aを落雷から効果的に保護する位置に本実施形態の落雷抑制装置Zが設置されている。
【0034】
この落雷抑制装置Zは、移動可能な基体50と、この基体50に内装されマイナス電荷領域を形成するため落雷抑制装置本体1と、基体50を地面Dに固定するとともに地面Dに電気的に接続される固定手段Eとを備えている。
【0035】
まず、前記落雷抑制装置本体1について図2を参照して詳述する。
本実施形態の落雷抑制装置本体1は、導電性材料によって球殻状に形成された第1電極体2と、この第1電極体2を、所定隙間Gをおいて包み込むようにして設けられた第2電極体3と、前記隙間Gに設けられ、第2電極体3と第1電極体2とを電気絶縁状態に保持する電気絶縁層Sと、第1電極体2を貫通して第2電極体3に電気導通状態で連結された支柱5とによって構成されている。
【0036】
前記第1電極体2の下部には、ナット4が一体に取り付けられており、このナット4に支柱5の先端が螺合させられている。
この支柱5にはロックナット6が螺着されており、このロックナット6が前記固定ナット4に圧着されることにより、支柱5と前記第2電極体2との固定がなされている。
【0037】
前記第2電極体3は、上下に2分割されて形成された一対の第2電極構成体3a・3bによって構成されている。
これら一対の第2電極構成体3a・3bは、第1電極体2を挟み込むようにして突き合わされて、この突き合わされた部位において溶接(溶接部W)により一体化されている。
【0038】
下方の前記第2電極構成体3aの下部中央には、その内外部を連通する貫通孔7が形成され、この貫通孔7内に、第1電極体2に電気的に接続された支柱5が挿通されており、この支柱5を介して前記第1電極体2が接地されるようになっている。
【0039】
前記電気絶縁層Sは、前記隙間Gに配置され、第1電極体2と第2電極体3とを所定間隔に保持する電気絶縁性材料によって形成されたスペーサー8と、第1電極体2と第2電極体3間に空間を形成する前記隙間Gによって構成されている。
【0040】
前記スペーサー8は、本実施形態においては、第1電極体2の下部に配置される下部スペーサー8aと、第1電極体2の上部に配置される上部スペーサー8bとによって構成されている。
【0041】
前記下部スペーサー8aは、下方の第2電極構成体3aの貫通孔7に嵌合させられるとともに、第2電極構成体3の下部内面に面接触させられる形状となされている。
前記下部スペーサー8aと下方の第2電極構成体3aは、接着剤等によって一体化されている。
【0042】
そして、前記下部スペーサー8aの中心部に支柱5が貫通させられており、この支柱5は、下部スペーサー8aによって下方の第2電極構成体3aに対し、所定間隔を保持した状態でかつ電気絶縁状態で連結されている。
【0043】
前記上部スペーサー8bは、下面が第1電極体2の外面に沿うように、また、上面が前記第2電極体3の内面に沿うように球面に形成されており、下面には、第1電極体2の上部に形成されている係止孔9に嵌合させられる位置決め突起10が突設されている。
【0044】
前記上部スペーサー8bも、第1電極体2および第2電極体3に接着剤等によって固着されるようになっている。
【0045】
また、本実施形態においては、前記支柱5は、複数の支柱構成体5a・5bによって構成されており、後述する連結手段51を用いて軸方向に連結されて所定長さとなされている。
【0046】
前記連結手段51は、図8に示すように、各支柱構成体5a・5bの連結側の端面に設けられた外方フランジ51aと、両支柱構成体5a・5bに設けられた外方フランジ51a同士を締結するボルトナット51bとによって構成されている。
【0047】
前記基体50は、その両側部下方に車輪等の転動体52が装着されて牽引可能な構成となされているとともに、上部に、落雷抑制装置本体1、および、支柱構成体5a・5bが格納される格納部Fと、支柱5が固定される支柱支持部Hが設けられている。
【0048】
また、前記基体50の側部には連結フック53が設けられており、この連結フック53を介して牽引車等に連結されるようになっている。
【0049】
前記固定手段Eは、本実施形態においては、基体50の四隅に設置されたアウトリガによって構成されている。
【0050】
この固定手段Eは、図3ないし図7に示すように、基体50の四隅に設けられ、基体50の上下動を行なう第1シリンダ54と、この第1シリンダ54を基体50の側方へ出し入れする第2シリンダ55とによって構成されている。
【0051】
また、固定手段Eは、地面Dに載置されるとともに、上面に第1シリンダ54が圧接固定される複数の安定板56を備え、図3に示すように、これらの安定板56は積層状態で基体50上に格納されるようになされている。第1シリンダ54と安定板56は、ボルト止め等の締結手段により、一体に固定可能に構成されている。
【0052】
そして、これらの安定板56は、地面上に設置された状態で、その上面に第1シリンダ54が圧接させられることにより、第1シリンダ54と地面Dと接触面積を大きくして、第1シリンダ54の姿勢を安定させるとともに、第1シリンダ54と地面Dとの電気的な接続を良好なものするようになっている。
第1シリンダ54は、車体重量を支えて安定板56を通じて地面に圧力を加えると共に、第1シリンダ54と安定板56が機械的にロックされているため、次のような機能を発揮する。突風などにより、トレーラーの車体が傾くときに安定板の重さが「重し」となり車体が風で浮くことを防止する。大地との接地面積、設置圧力で地面と良好な電気導通を確保することと共に、「重し」として車体が浮くことを防止する、という二つの機能を発揮する。
さらに、安定板56同士を6本のケーブルで互いに電気的に接続することで、4枚分の接地面積が同電位となり、これによりアース効果を向上させることができる。
【0053】
前記支柱支持部Hは、本実施形態においては、基体50の上面に重ね合わされる倒れ状態と、基体50の上方へ向けられた起立状態との間で揺動可能な構成となされた支柱取付板57を備えている。
【0054】
そして、前記支柱取付板57は、倒れ状態において上面となる面に、支柱5が垂直状態で固定されるようになされているとともに、倒れ状態において基体50に固定されるようになされている。
【0055】
さらに、本実施形態においては、前記支柱支持部Hの近傍に、支柱取付板57に固定された支柱5に連結されて、この支柱5を上方へ立ち上げる起立機構Iが設けられている。
【0056】
この起立機構Iは、基体50上に揺動可能に設けられたブーム58と、このブーム58を基体50に起立状態に保持する補助ブーム59と、ブーム58の揺動中心部に併設された巻上機60と、この巻上機60に巻回状態で格納されているとともに、ブーム58の先端部に挿通されたワイヤ61とによって構成されている。
【0057】
前記補助ブーム59は、ブーム58の長さ方向の中間部に揺動自在に装着されて、その揺動端部が基体50に係合させられることにより、ブーム58を基体50に対して起立状態に保持するようになっている。
【0058】
また、前記ワイヤ61は、図6に示すように、その先端部がブーム58の先端部に挿通させられた後に、支柱5の中間部に着脱可能に連結されるようになっている。
【0059】
ついで、このように構成された本実施形態の落雷抑制装置Zを設置する手順とともに、設置方法について説明する。
【0060】
まず、基体50を牽引車によって設置位置まで牽引する。
ここで、落雷抑制装置Zを、落雷抑制装置本体1および支柱5を基体50に設けられた格納部Fに格納した状態で搬送することができる。
これによって落雷抑制装置をコンパクトに一体化して、落雷抑制装置の搬送作業を円滑なものとすることができる。
【0061】
ついで、固定手段Eを構成する第2シリンダ55を作動させて、第1シリンダ54を基体50の側部から外方に移動させる。
【0062】
これより、基台50上に格納されている安定板56を取り出して、第1シリンダ54の下方に配置した後に、第1シリンダ54を伸長させてその下端部を安定板56に圧接させることにより、基台50を地面Dから浮かす。
【0063】
この状態において、第1シリンダ54が安定板56の広い面積を介して地面Dに接触させられることにより、第1シリンダ54が安定した状態に保持されるとともに地面Dに電気的に接続される。
【0064】
ついで、図4に示すように、基台50に格納されている支柱構成体5a・5bを取り出した後に、図5に示すように、これらの支柱構成体5a・5bを、テーブルT等を用いて同軸上に配置するとともに、これらの支柱構成体5a・5bを、連結手段51によって同軸状に連結して支柱5を組み上げる。
【0065】
ついで、図6に示すように、支柱支持部Hを構成する支柱取付板57を起立位置に位置させるとともに、起立機構Iを構成するブーム58を起立状態とした後に補助ブーム59を基体50に固定することにより、ブーム58を起立状態に保持する。
【0066】
さらに、図6に示すように、起立状態にある支柱取付板57に支柱5を固定するとともに、ワイヤ61の先端をブーム56の先端を経て支柱5の中間部近傍へ引き回した後に、支柱5の中間部に位置する外方フランジ51aに固定する。
【0067】
これより、巻上機60によってワイヤ61を巻き上げることにより、図7に示すように、支柱取付板57を揺動させつつ支柱5を起立状態まで引き起こす。
【0068】
ついで、支柱取付板57を基体50に固定することにより、支柱5を基台50上に略鉛直状に保持する。
ここで、図7に鎖線で示すように、必要に応じ、支柱5の先端部と基体50間を複数の緊張ワイヤ62によって連結することにより、支柱5の揺らぎを拘束する。
【0069】
以上の手順によって落雷抑制装置Zの設置を完了する。
そして、その設置作業が基体50周りの地上の低地作業に集約することができ、この結果、設置作業を安全かつ簡便な作業とすることができる。
【0070】
このように、落雷抑制避雷装置Zの設置に当たって、その設置位置を任意に調整することできるとともに、設置数も任意に設定することができる。
したがって、駐機数や駐機形態に応じて最適な設置が可能となる。
【0071】
そして、落雷抑制装置Zの上空に雷雲が近づくと、地面Dがプラス電荷に帯電し、かつ、地面Dに基体50や支柱5を介して電気的に接続されている第1電極体2もプラス電荷を帯びる。
【0072】
このように第1電極体2がプラス電荷に帯電させられると、第1電極体2に対して電気絶縁状態で対峙されている第2電極体3がマイナス電荷に帯電させられることにより、この第2電極体3回りにマイナス電荷領域が形成される。
【0073】
このマイナス電荷領域は、図1に鎖線で示すように、駐機された飛行機Aの上空を覆うように形成されて、雷雲底部のマイナス電荷に対峙させられる。
【0074】
これによって、駐機場B上方から雷雲へ向かうお迎え電流の発生を抑制して、駐機場Bすなわち飛行機Aへの落雷を抑制することができる。
【0075】
このように、本実施形態によれば、落雷抑制装置Zの設置位置の自由度を高め、かつ、その搬出入を容易にすることができる。
【0076】
なお、前記実施形態において示した各構成部材の形状や寸法等は一例であって設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0077】
たとえば、支柱構成体5a・5bは2本に限らず三本以上とすることができる。
【0078】
また、前述した外方フランジ51aとボルトナット51bとからなる連結手段51に代えて、図9に示すように、支柱構成体5a・5bの端部同士を嵌合させておき、この嵌合部分に、両支柱構成体5a・5bを貫通するボルト63と、このボルト63に螺着されるナット64とによって両支柱構成体5a・5bの連結を行なうようにしてもよい。
【0079】
さらに、図10に示すように、複数の支柱構成体5a・5bを相互に嵌合可能に構成し、外側に位置させられる支柱構成体5bの端部に、径方向に変形可能な係止片65を形成し、また、この係止片65に連続する部位に螺子部66を形成しておくとともに、螺子部66に螺合させられる環状の押圧部材67を設けておき、さらに、係止片65の外面を、支持構成体5bの先端へ行くにしたがい漸次小径となる傾斜面とし、前記押圧部材67の内面に、係止片65の最小径よりも大きく、かつ、最大径よりも小さな内径を有する環状の押圧突条68を形成した構成としておくことができる。
【0080】
そして、押圧部材67を図10に矢印イで示すように回転させて、この押圧部材67を同図に矢印ロで示すように支柱構成体5bの先端から離間する方向に移動させるとともに、押圧部材67に形成されている押圧突条68を係止片65外面の大径部側へ移動させることにより、係止片65を径方向の内側へ押圧変形させる。
【0081】
これによって、係止片65を内側に位置させられている支柱構成体5bの外面に圧接させて、両支柱構成体5a・5bを連結することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 落雷抑制装置本体
2 第1電極体
3 第2電極体
3a 第2電極構成体
3b 第2電極構成体
4 ナット
5 支柱
5a 支柱構成体
5b 支柱構成体
6 ロックナット
7 貫通孔
8 スペーサー
8a 下部スペーサー
8b 上部スペーサー
9 係止孔
10位置決め突起
50 基体
51 連結手段
51a 外方フランジ
51b ボルトナット
52 転動体
53 連結フック
54 第1シリンダ
55 第2シリンダ
56 安定板
57 支柱取付板
58 ブーム
59 補助ブーム
60 巻上機
61 ワイヤ
62 緊張ワイヤ
63 ボルト
64 ナット
65 係止片
66 螺子部
67 押圧部材
68 押圧突条
A 飛行機
B 駐機場
D 地面
E 固定手段
F 格納部
G 隙間
H 支柱支持部
I 起立機構
S 電気絶縁層
T テーブル
W 溶接部
Z 落雷抑制装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10