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特許7405352認知機能改善ソリューション推定システム、認知機能改善ソリューション推定方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】認知機能改善ソリューション推定システム、認知機能改善ソリューション推定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/70 20180101AFI20231219BHJP
【FI】
G16H20/70
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022161047
(22)【出願日】2022-10-05
(62)【分割の表示】P 2021167570の分割
【原出願日】2021-10-12
(65)【公開番号】P2023058018
(43)【公開日】2023-04-24
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513302477
【氏名又は名称】エコナビスタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】清 文乃
(72)【発明者】
【氏名】川又 大祐
(72)【発明者】
【氏名】安田 輝訓
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-510909(JP,A)
【文献】特開2017-223785(JP,A)
【文献】特開2019-219538(JP,A)
【文献】特開2005-192647(JP,A)
【文献】特開2015-180933(JP,A)
【文献】特開2003-067500(JP,A)
【文献】大武 美保子,認知症予防に役立つICT -防ぎ得る認知症にかからない社会に向けて-,情報処理 第56巻 第2号 ,日本,一般社団法人情報処理学会,2015年01月15日,p.145-151
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
認知機能の改善を目的として、学習、食事、運動、コミュニケーションのいずれか1つ以上を含む複数のソリューションの中から1つ又は複数を組み合わせたソリューションをユーザに提案する提案部と、
前記1つ又は複数を組み合わせたソリューションの実施前における対象者の認知機能の評価を表す第1の情報を取得する第1の取得部と、
前記1つ又は複数を組み合わせたソリューションの実施後における対象者の認知機能の評価を表す第2の情報を取得する第2の取得部と、
前記第1の情報と前記第2の情報に基づいて、前記1つ又は複数を組み合わせたソリューションの実施の前後に生じた対象者の認知機能の評価の変化を判定する判定部と、
を有し、
前記提案部は、過去に提案されたソリューションの履歴と前記判定部による判定の結果に基づいて、新たに提案する1つ又は複数を組み合わせたソリューションを推定する、
認知機能改善ソリューション推定システム。
【請求項2】
前記第1の情報及び前記第2の情報は、異なる期間に測定された測定データを分析した結果として与えられる、
請求項1に記載の認知機能改善ソリューション推定システム。
【請求項3】
前記第1の情報及び前記第2の情報は、対象者の認知機能に関する検査の結果として与えられる、
請求項1に記載の認知機能改善ソリューション推定システム。
【請求項4】
前記提案部は、対象者の属性データについて推奨される1つ又は複数を組み合わせたソリューションを提案する、
請求項1に記載の認知機能改善ソリューション推定システム。
【請求項5】
前記提案部は、前記属性データが属する分類について推奨される1つ又は複数を組み合わせたソリューションを提案する、
請求項4に記載の認知機能改善ソリューション推定システム。
【請求項6】
前記提案部は、前記属性データが属する他の対象者について推奨される1つ又は複数を組み合わせたソリューションを提案する、
請求項4に記載の認知機能改善ソリューション推定システム。
【請求項7】
前記提案部は、前記判定部の判定の結果と前記属性データに基づいて、新たに提案する1つ又は複数を組み合わせたソリューションを推定する、
請求項4~6のいずれか1項に記載の認知機能改善ソリューション推定システム。
【請求項8】
前記1つ又は複数を組み合わせたソリューションの実施後に、対象者から取得した1つ又は複数を組み合わせたソリューションに対する意見により前記属性データを修正する修正部
を更に有する、請求項7に記載の認知機能改善ソリューション推定システム。
【請求項9】
前記提案部は、対象者毎に、対象者の認知機能の評価を改善させる新たな1つ又は複数を組み合わせたソリューションをベイズ最適化の手法で推定する、
請求項1に記載の認知機能改善ソリューション推定システム。
【請求項10】
コンピュータによるプログラムの実行を通じて実現される認知機能改善ソリューション推定方法であって、
認知機能の改善を目的として、学習、食事、運動、コミュニケーションのいずれか1つ以上を含む複数のソリューションの中から1つ又は複数を組み合わせたソリューションを対象者毎に提案する処理と、
前記1つ又は複数を組み合わせたソリューションの実施前における対象者の認知機能の評価を表す第1の情報を取得する処理と、
前記1つ又は複数を組み合わせたソリューションの実施後における対象者の認知機能の評価を表す第2の情報を取得する処理と、
前記第1の情報と前記第2の情報に基づいて、前記1つ又は複数を組み合わせたソリューションの実施の前後に生じた対象者の認知機能の評価の変化を判定する処理と、
前記判定の結果に基づいて、新たに提案する1つ又は複数を組み合わせたソリューションを推定する処理と、
を有する、認知機能改善ソリューション推定方法。
【請求項11】
コンピュータに、
学習、食事、運動、コミュニケーションのいずれか1つ以上を含む複数のソリューションの中から1つ又は複数を組み合わせたソリューションの実施前における対象者の認知機能の評価を表す第1の情報を取得する機能と、
前記1つ又は複数を組み合わせたソリューションの実施後における対象者の認知機能の評価を表す第2の情報を取得する機能と、
前記第1の情報と前記第2の情報に基づいて、前記1つ又は複数を組み合わせたソリューションの実施の前後に生じた対象者の認知機能の評価の変化を判定する機能と、
前記判定の結果に基づいて、新たに提案する1つ又は複数を組み合わせたソリューションを推定する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知機能改善ソリューション推定システム、認知機能改善ソリューション推定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、認知機能の低下が認められる高齢者やその家族の不安や負担の軽減が社会課題として認識されている。このため、認知機能の低下に対するソリューションへの関心が高まっている。学術領域では、勉強、食、運動、コミュニケーションの4つのソリューションについて、認知機能を向上又は改善させる効果が指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】長友勇人、外3名、「認知症高齢者の認知機能改善における短期集中リハビリテーションの介入効果」、愛知県理学療法学会、2011年12月、第23巻、第2号、51-55頁
【文献】三村將、「エビデンスのある認知症の非薬物療法」、高次脳機能研究、2012年、第32巻、第3号、454-460頁
【文献】川島隆太、「学習療法で認知症の予防・改善をめざします」、[online]、2009年7月23日、[令和3年10月11日検索]、<URL:http://homesweethome.jp/files/libs/126/20180420112850351.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、提唱されている4つのソリューションは、一般的な効果の言及にとどまっており、4つのソリューションのいずれが、特定の個人の認知機能の向上や改善に効果があるかは分かっていない。すなわち、4つのソリューションと効果との間には個人差があり、効果の程度も判断が難しい。
【0005】
本発明は、認知機能の改善効果が見込まれる1つ又は複数のソリューションの組み合わせをユーザ毎に推定するサービスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、認知機能の改善を目的として、学習、食事、運動、コミュニケーションのいずれか1つ以上を含む複数のソリューションの中から1つ又は複数を組み合わせたソリューションをユーザに提案する提案部と、前記1つ又は複数を組み合わせたソリューションの実施前における対象者の認知機能の評価を表す第1の情報を取得する第1の取得部と、前記1つ又は複数を組み合わせたソリューションの実施後における対象者の認知機能の評価を表す第2の情報を取得する第2の取得部と、前記第1の情報と前記第2の情報に基づいて、前記1つ又は複数を組み合わせたソリューションの実施の前後に生じた対象者の認知機能の評価の変化を判定する判定部と、を有し、前記提案部は、過去に提案されたソリューションの履歴と前記判定部による判定の結果に基づいて、新たに提案する1つ又は複数を組み合わせたソリューションを推定する、認知機能改善ソリューション推定システムである。
請求項2に記載の発明は、前記第1の情報及び前記第2の情報は、異なる期間に測定された測定データを分析した結果として与えられる、請求項1に記載の認知機能改善ソリューション推定システムである。
請求項3に記載の発明は、前記第1の情報及び前記第2の情報は、対象者の認知機能に関する検査の結果として与えられる、請求項1に記載の認知機能改善ソリューション推定システムである。
請求項4に記載の発明は、前記提案部は、対象者の属性データについて推奨される1つ又は複数を組み合わせたソリューションを提案する、請求項1に記載の認知機能改善ソリューション推定システムである。
請求項5に記載の発明は、前記提案部は、前記属性データが属する分類について推奨される1つ又は複数を組み合わせたソリューションを提案する、請求項4に記載の認知機能改善ソリューション推定システムである。
請求項6に記載の発明は、前記提案部は、前記属性データが属する他の対象者について推奨される1つ又は複数を組み合わせたソリューションを提案する、請求項4に記載の認知機能改善ソリューション推定システムである。
請求項7に記載の発明は、前記提案部は、前記判定部の判定の結果と前記属性データに基づいて、新たに提案する1つ又は複数を組み合わせたソリューションを推定する、請求項4~6のいずれか1項に記載の認知機能改善ソリューション推定システムである。
請求項8に記載の発明は、前記1つ又は複数を組み合わせたソリューションの実施後に、対象者から取得した1つ又は複数を組み合わせたソリューションに対する意見により前記属性データを修正する修正部を更に有する、請求項7に記載の認知機能改善ソリューション推定システムである。
請求項9に記載の発明は、前記提案部は、対象者毎に、対象者の認知機能の評価を改善させる新たな1つ又は複数を組み合わせたソリューションをベイズ最適化の手法で推定する、請求項1に記載の認知機能改善ソリューション推定システムである。
請求項10に記載の発明は、コンピュータによるプログラムの実行を通じて実現される認知機能改善ソリューション推定方法であって、認知機能の改善を目的として、学習、食事、運動、コミュニケーションのいずれか1つ以上を含む複数のソリューションの中から1つ又は複数を組み合わせたソリューションを対象者毎に提案する処理と、前記1つ又は複数を組み合わせたソリューションの実施前における対象者の認知機能の評価を表す第1の情報を取得する処理と、前記1つ又は複数を組み合わせたソリューションの実施後における対象者の認知機能の評価を表す第2の情報を取得する処理と、前記第1の情報と前記第2の情報に基づいて、前記1つ又は複数を組み合わせたソリューションの実施の前後に生じた対象者の認知機能の評価の変化を判定する処理と、前記判定の結果に基づいて、新たに提案する1つ又は複数を組み合わせたソリューションを推定する処理と、を有する、認知機能改善ソリューション推定方法である。
請求項11に記載の発明は、コンピュータに、学習、食事、運動、コミュニケーションのいずれか1つ以上を含む複数のソリューションの中から1つ又は複数を組み合わせたソリューションの実施前における対象者の認知機能の評価を表す第1の情報を取得する機能と、前記1つ又は複数を組み合わせたソリューションの実施後における対象者の認知機能の評価を表す第2の情報を取得する機能と、前記第1の情報と前記第2の情報に基づいて、前記1つ又は複数を組み合わせたソリューションの実施の前後に生じた対象者の認知機能の評価の変化を判定する機能と、前記判定の結果に基づいて、新たに提案する1つ又は複数を組み合わせたソリューションを推定する機能と、を実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、認知機能の改善効果が見込まれる1つ又は複数のソリューションの組み合わせをユーザ毎に推定するサービスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1で想定するクラウドサービスを提供するシステムの概念構成例を示す図である。
図2】実施の形態1で使用するクラウドサーバの構成例を説明する図である。
図3】記憶装置に記憶されるDBのデータ構造例を説明する図である。(A)は属性データDBのデータ構造例を示し、(B)は測定データDBのデータ構造例を示す。
図4】記憶装置に記憶される他のDBのデータ構造例を説明する図である。(A)は実行履歴DBのデータ構造例を示し、(B)は評価結果DBのデータ構造例を示す。
図5】実施の形態1で想定するクラウドサーバで実行される処理動作例を説明するフローチャートである。
図6】提案したソリューションの実行による認知機能の評価の変化を説明する図である。(A)は提案者の経験によりソリューションが提案される場合の認知機能の変化例であり、(B)は本サービスによりソリューションが提案される場合の認知機能の変化例であり、(C)は嗜好を考慮してソリューションが提案される場合の認知機能の変化例である。
図7】実施の形態2で使用するクラウドサーバの構成例を説明する図である。
図8】実施の形態2で想定するクラウドサーバで実行される処理動作例を説明するフローチャートである。
図9】実施の形態4におけるソリューションの提案手法を説明する図である。(A)は各対象者に対応する属性データの分布と分類G1~G8を示し、(B)は分類とソリューションの対応例を示す。
図10】実施の形態5におけるソリューションの提案手法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
<実施の形態1>
<用語>
本実施の形態では、対象者の認知機能を改善する効果が見込まれるソリューションを提供するサービスについて説明する。以下では、本実施の形態で提供されるサービスを「本サービス」ともいう。
ここでの「見込まれる」は、認知機能の改善効果が得られる確率又は可能性が高い意味で使用する。
【0010】
「対象者」は、認知症との診断を受けた人に限らず、認知症が疑われる人、認知症の予防を望む人や望まれる人、認知機能の低下が気になる人等も含む意味で使用する。本実施の形態では、認知機能の改善を目的として本サービスを利用する人の全てが対象者に含まれる。
一方、本サービスの利用者には、例えば対象者本人、対象者の家族や親族、対象者の生活を支援する事業者の担当者、医療機関の医師やスタッフが含まれる。
【0011】
<システムの構成>
図1は、実施の形態1で想定するクラウドサービスを提供するシステム(以下「クラウドシステム」という)1の概念構成例を示す図である。
図1に示すクラウドシステム1は、ネットワーク10と、対象者について記録されたデータや測定されたデータのアップロードに用いられる情報端末20と、対象者毎に認知機能を改善する効果が見込まれるソリューションを推定するクラウドサーバ30と、クラウドサーバ30からソリューションの提供を受ける情報端末40とで構成されている。
【0012】
本実施の形態におけるネットワーク10は、例えばインターネット、4Gや5G等の移動通信システムである。
もっとも、本サービスの提供の形態によっては、ネットワーク10がLAN(=Local Area Network)でもよい。また、オフラインでデータを受け渡しする場合には、ネットワーク10に代えて、半導体メモリや光学ディスクを使用してもよい。
【0013】
情報端末20は、例えば対象者が居住する個人宅に設置される又は対象者が着用している情報端末20A、対象者が居住する介護施設に設置される又は対象者が着用している情報端末20Bである。個人宅と介護施設は、対象者の生活拠点の一例である。
情報端末20A及び20Bは、例えばノート型のコンピュータ、デスクトップ型のコンピュータ、タブレット型のコンピュータ、スマートフォン、ウェアラブルコンピュータである。
【0014】
情報端末20A及び20Bからクラウドサーバ30には、本サービスの提供に必要な各種のデータがリアルタイム又は定期的にアップロードされる。例えば1週間に一度、1月に一度等、予め定めた周期で、データのアップロードが自動的に実行される。もっとも、対象者本人やサービスの利用者がアップロードを指示した場合には、任意のタイミングでデータのアップロードが実行される。
サービスの提供に必要な各種のデータには、例えば対象者本人の身体や病歴に関する情報、家族や親族の病歴等に関する情報、対象者の嗜好に関する情報、対象者の睡眠や行動の測定データ、提案されたソリューションについての実行履歴データが含まれる。
【0015】
対象者本人の身体の情報には、例えば性別、年齢、身長、体重、視力、肢体の不自由がある。
対象者等の病歴に関する情報には、例えば認知症の診断の結果、通院履歴、介護認定がある。
対象者の嗜好に関する情報には、例えば映画好き、魚料理が好き、推理小説が好き、カラオケ好き、話し好きがある。
測定データには、例えば睡眠データや行動データがある。
睡眠データは、睡眠中に取得される生体データであり、脈拍、呼吸数、寝返りその他の体動に関するデータを含む。睡眠データには、体動に関するデータから取得が可能な睡眠時間や睡眠サイクルも含まれる。
【0016】
睡眠データの取得には、例えば対象者の体動に関するデータを非接触で測定可能なマット型のセンサ、マイクロ波ドップラーレーダー、スマートフォンに内蔵された加速度センサを使用する。
睡眠データは、対象者が睡眠中の全期間である必要はない。例えば睡眠の特徴が現れ易い時間帯の生体データだけでもよい。睡眠の特徴が現れ易い時間帯には、例えば入眠直後の時間帯、最初のレム睡眠とノンレム睡眠の時間帯、起床直前の時間帯を用いてもよい。
【0017】
行動データは、起床中に取得される生体データの他、対象者の行動に起因する機器の操作や対象者の行動を検知するセンサの出力データである。
起床中に取得される生体データは、心拍、脈拍、呼吸数、血圧、血流、歩数その他の体動に関するデータを含む。これら生体データの取得には、例えば手首に装着するセンサを用いることが可能である。
対象者の行動に起因する機器の操作や対象者の行動を検知するセンサには、例えば浴室内に設けられている人感センサ、浴室の扉の開閉を検知するセンサ、給湯器の稼働状態、給湯温度、浴槽の水位その他のデータを検知するセンサ、浴室や台所などに設置されるコントローラ、調理器の操作を検知するセンサ、テレビやビデオの操作を検知するセンサ、エアコンの操作を検知するセンサがある。
【0018】
クラウドサーバ30は、情報端末20や情報端末40に対するサーバであり、対象者毎に、提案したソリューションの種類、ソリューションが実施された期間、ソリューションの実行の履歴、同期間内に収集された測定データ、認知機能の評価を表す情報等を記録する。本実施の形態では、新たなソリューションを提案するタイミングを基準とし、ソリューションを実行する前における対象者の認知機能の評価を表す情報を「第1の情報」と呼び、提案したソリューションを実行した後における対象者の認知機能の評価を表す情報を「第2の情報」と呼ぶ。
【0019】
また、クラウドサーバ30は、対象者の属性データや収集された情報に基づいて、対象者毎に認知機能の改善の効果が見込まれるソリューションを推定し、推定されたソリューションを情報端末40に送信する。
情報端末40は、例えばノート型のコンピュータ、デスクトップ型のコンピュータ、タブレット型のコンピュータ、スマートフォン、ウェアラブルコンピュータである。図1の例では、情報端末40がスマートフォンの場合を表している。
図1の例では、情報端末40が、情報端末20と異なる場合を想定しているが、情報端末40は情報端末20と同じ端末でもよい。
【0020】
<クラウドサーバの構成>
図2は、実施の形態1で使用するクラウドサーバ30の構成例を説明する図である。なお、クラウドサーバ30は、認知機能改善ソリューション推定システムの一例である。
クラウドサーバ30は、プログラムを実行する演算装置301と、各種のデータを記憶する記憶装置302と、ネットワーク10(図1参照)との通信に使用される通信部303と、これらを接続するバスその他の配線304で構成されている。
【0021】
演算装置301は、CPU(=Central Processing Unit)と、BIOS(=Basic Input Output System)等が記憶されたROM(=Read Only Memory)と、ワークエリアとして用いられるRAM(=Random Access Memory)とを有している。
本実施の形態の場合、演算装置301は、CPUによるプログラムの実行を通じ、ソリューション提案部311、評価情報取得部312、313、及び判定部314の機能を実現する。
【0022】
本実施の形態におけるソリューション提案部311には、対象者毎に最適化されたソリューションを推定するサブ機能も設けられている。
ソリューションを推定するサブ機能は、少なくともソリューションの2回目以降の提案時に使用される。ここでのサブ機能は、前回提案したソリューションを実行した対象者の認知機能が、ソリューションの実行により改善したか、変化がなかったか、低下したかに応じて、次に提案するソリューションを推定する。
【0023】
本実施の形態の場合、提案するソリューションは4種類とする。具体的には、食事、運動、コミュニケーション、学習の4種類である。もっとも、これら4つの種類は、ソリューションの代表例であり、他の種類をソリューションとして提案してもよい。また、提案するソリューションの種類は4つに限らず、2つでも、3つでも、5つ以上でもよい。
本実施の形態におけるソリューション提案部311は、これら4種類のうちのいずれか1つを提案する。
【0024】
本実施の形態におけるソリューション提案部311は、ソリューションの初回の提案時と2回目以降の提案時とで、ソリューションを推定する手法を変更する。
初回の提案時、ソリューション提案部311は、例えば対象者を診察した医師や対象者を担当するアドバイザーが個別に決定したソリューションを提案する。
もっとも、初回の提案時には、対象者を特定せずに事前に決定されたソリューションを提案してもよい。なお、初回の提案時に、ソリューション提案部311は、対象者の属性データに基づいてソリューションを推定してもよい。例えば対象者が好きな事項に関連するソリューションを優先してもよい。
【0025】
2回目以降の提案時には、対象者が実行したソリューションが少なくとも1つ存在し、実行の質等に関する情報や実行の前後による認知機能の評価の変化に関する情報も少なくとも1つ存在する。実行の質は、例えば対象者により実行された内容と強度で与えられる。
本実施の形態におけるソリューション提案部311は、2回目以降の提案時において、直前回に提案したソリューションや直前回までに提案した複数のソリューションの履歴と、対象者によるソリューションの実行の前後における認知機能の評価の変化を判定した結果に基づいて、新たに提案するソリューションを推定する。
【0026】
例えば改善の効果が確認された場合、ソリューション提案部311は、前回と同じソリューションを、新たに提案するソリューションとして推定する。
これに対し、改善の効果が確認されない場合、ソリューション提案部311は、前回とは異なる種類を、新たなソリューションとして推定する。
ソリューション提案部311は、4種類全ての提案が1巡回するまでは、過去に提案されていない種類のうちの1つをソリューションとして提案する。この際、ソリューション提案部311は、対象者の嗜好の情報を参照し、対象者が興味を持ちそうなソリューションを優先する。
【0027】
提案の1巡回後は、対象者の認知機能を改善する可能性が高いと推定された種類が優先される。例えば過去に改善の効果が認められた種類が優先される。
もっとも、過去に改善の効果が認められた種類でも、同種の刺激が継続することで改善の効果が想定通りに得られない場合もあれば、対象者の健康状態や認知機能の程度が過去に改善が認められた時点とは異なる場合もある。
【0028】
また、改善の効果が認められない又は低い理由が、対象者の当時の実行に求められる場合もある。例えばソリューションの実行の質が低い場合である。
このため、過去の提案時には、改善の効果が得られない又は低かったソリューションでも、2巡回目以降においては、再度の提案の対象に含まれる。
一方で、予め定めた回数の提案後、又は、予め定めた回数(例えば2回)の巡回後は、本サービスの提供を一度終了してもよい。
【0029】
評価情報取得部312は、実行中のソリューションを実行する前の対象者の認知機能の評価に関する情報を取得する。評価情報取得部312は、特許請求の範囲における第1の取得部の一例である。
本実施の形態の場合、認知機能の評価に関する情報は、例えば認知機能の正常度合いを表している。認知機能の評価に関する情報は、例えば数段階の指標又は数値により与えられる。
【0030】
なお、実行中のソリューションが、対象者について提案された最初のソリューションである場合には、認知機能の評価に関する情報として、例えば認知機能の検査や診断の結果を使用する。
また、対象者について、利用が可能な測定データが存在する場合には、測定データを既知の手法で処理した結果を、認知機能を評価した情報として取得してもよい。
【0031】
評価情報取得部313は、実行中のソリューションを実行した後の対象者の認知機能の評価に関する情報を取得する。評価情報取得部313は、特許請求の範囲における第2の取得部の一例である。
対象者によるソリューションの実行後であるので、評価情報取得部313は、対象者について取得された測定データや実行履歴データに基づく認知機能の評価を取得する。
【0032】
もっとも、評価情報取得部313は、ソリューションの実行後の対象者について実行された検査の結果や診断の結果を、認知機能を評価した情報として取得してもよい。基本的には、医師による診断の結果を優先する。もっとも、医師による診断の結果に加え、ソリューションの実行中の測定データ等も取得の対象に含めてもよい。
なお、ソリューションの実行の前後は、特定のソリューションを基準として相対的に定まるので、あるソリューションの実行後は、次のソリューションの実行前に当たる。従って、あるソリューションの実行後に取得された認知機能の評価を表す情報は、次のソリューションの実行前に取得された認知機能の評価を表す情報として使用される。
【0033】
判定部314は、評価情報取得部312によって取得された情報と評価情報取得部313によって取得された情報とを比較し、ソリューションの実行の結果、認知機能を改善する程度を判定する。
判定部314による判定は、「認知機能が改善された」と「認知機能が低下した」の2値を判定の結果としてもよいし、これらに「認知機能に変化がない」を加えた3値を判定の結果としてもよい。
また、判定部314による判定は、認知機能の評価を表す数値の変化量を判定の結果としてもよい。
【0034】
本実施の形態の場合、記憶装置302は、例えばハードディスク装置が用いられる。もっとも、記憶装置302は、大容量の半導体メモリでもよい。また、記憶装置302は、クラウドサーバ30の補助記憶装置としてではなく、クラウドサーバ30とは別にネットワーク10(図1参照)に接続されるストレージサーバでもよい。
【0035】
本実施の形態の場合、記憶装置302には、属性データDB321と、測定データDB322と、実行履歴DB323と、評価結果DB324が記憶されている。
属性データDB321には、本サービスの対象者に関する属性データが記憶される。
測定データDB322には、本サービスの対象者に関する測定データが記憶される。
実行履歴DB323には、本サービスの対象者が実行したソリューションの種類や内容が記憶される。
評価結果DB324には、提案されたソリューションと、ソリューションの実行後の認知機能の評価に対する判定の結果が記憶される。
【0036】
<DBのデータ構造>
図3は、記憶装置302(図2参照)に記憶されるDBのデータ構造例を説明する図である。(A)は属性データDB321のデータ構造例を示し、(B)は測定データDB322のデータ構造例を示す。
図3(A)の場合、属性データDB321は、対象者毎に、性別、年齢、病歴、肢体の不自由、嗜好、属性の分類等で構成される。属性の分類以外の項目は、属性データの一例である。
【0037】
なお、嗜好は、例えばアンケートに対する回答により取得される。嗜好は、ソリューションに直接関連する内容でもよいし、ソリューションと直接関係しない内容でもよい。例えば食事に関する嗜好は、ソリューションに直接関係する。一方、衣類の好みや趣味はソリューションとは直接関係しない。
属性の分類は、属性データが類似する対象者の集合を特定する情報である。分類として使用する集合は、本実施の形態の場合、属性データの1つの項目や複数の項目の組み合わせについて与えられる。
図3(B)の場合、測定データDB322は、対象者毎に、睡眠データと行動データ等で構成される。
【0038】
図4は、記憶装置302(図2参照)に記憶される他のDBのデータ構造例を説明する図である。(A)は実行履歴DB323のデータ構造例を示し、(B)は評価結果DB324のデータ構造例を示す。図4(A)及び(B)に示すデータ構造例は、対象者Aに対応する。
図4(A)の場合、実行履歴DB323は、対象者毎に、ソリューションが実行された日付、ソリューションの種類、実行の内容等で構成される。
実行の内容には、実行時の強度の情報も含まれる。強度には、例えば回数や実行時間が含まれる。
【0039】
例えば「食事」については、食事の内容、品数、カロリー、回数等が記憶される。これらの情報は、対象者本人やサービスの利用者が入力する。なお、食事の内容や品数は、食事を撮像した写真から画像認識等により登録してもよい。
例えば「運動」については、運動の内容、運動した時間、運動の回数や強度等が記憶される。
例えば「コミュニケーション」については、会話の回数、人数、会話の時間等が記憶される。
例えば「学習」であれば、書いた文字数、読んだ本の種類や難易度、読んだページ数、読んだ文字数、計算した問題の数や難易度、正答率等が記憶される。
【0040】
図4(B)の場合、評価結果DB324は、対象者毎に、実行期間、ソリューションの種類、判定の結果等で構成される。
図4(B)の例では、2ヶ月を単位として新しいソリューションが提案されている。もっとも、判定の結果に改善が認められたソリューションについては、次の期間も同じソリューションが提案されている。図4(B)の例では、学習が2回続けて提案されている。
【0041】
<処理動作例>
図5は、実施の形態1で想定するクラウドサーバ30で実行される処理動作例を説明するフローチャートである。なお、図中に示す記号のSは、ステップを意味する。図5に示す処理方法は、認知機能改善ソリューション推定方法の一例である。
サービスの提供に際し、クラウドサーバ30は、対象者の認知機能の評価を表す情報を取得する(ステップ101)。対象者の認知機能の評価を表す情報には、例えば認知機能の検査の結果や医師による診断の結果を使用する。ここでの情報は、特許請求の範囲の第1の情報の一例である。
【0042】
次に、クラウドサーバ30は、対象者の属性データを取得する(ステップ102)。
続いて、クラウドサーバ30は、対象者について認知機能を改善する効果が見込まれるソリューションを提案する(ステップ103)。なお、提案するソリューションは、対象者の属性データに基づいて推定してもよい。
ソリューションの提案後、クラウドサーバ30は、提案されたソリューションに対する対象者の実行履歴と測定データを取得する(ステップ104)。これらのデータは、情報端末20(図1参照)からクラウドサーバ30に通知される。
【0043】
ソリューションの実行期間が終了すると、クラウドサーバ30は、ソリューションの実行後における対象者の認知機能の評価を表す情報を取得する(ステップ105)。ステップ105で取得される情報は、実行された最新のソリューションについて、特許請求の範囲の第2の情報の一例に該当する。もっとも、この情報は、ステップ107で推定される新たなソリューションの観点からは、特許請求の範囲の第1の情報の一例となる。
【0044】
次に、クラウドサーバ30は、ソリューションの実行による認知機能の評価の変化を判定する(ステップ106)。
その後、クラウドサーバ30は、判定の結果に基づいて、新たなソリューションを推定して提案する(ステップ107)。
以後、クラウドサーバ30は、ステップ103~ステップ107を1サイクルとして、次回以降の新たなソリューションを提案し、提案したソリューションによる認知機能の改善を判定する。
【0045】
図6は、提案したソリューションの実行による認知機能の評価の変化を説明する図である。(A)は提案者の経験によりソリューションが提案される場合の認知機能の変化例であり、(B)は本サービスによりソリューションが提案される場合の認知機能の変化例であり、(C)は嗜好を考慮してソリューションが提案される場合の認知機能の変化例である。
【0046】
なお、図6(A)~(C)の縦軸は、認知機能の検査における点数であり、横軸は、時間である。点数は高いほど、認知機能が良好であることを示している。
図6(A)に示すように、経験によりソリューションを提案する場合、提案者の過去の経験に依存してしまい、対象者とソリューションの相性が軽視されてしまう。
また、提案するソリューションをプログラムで決定する場合でも、統計的に効果が高いソリューションを順番に適用するだけになりやすく、対象者にとって効果の高いソリューションにたどり着くまでに多数回の提案が必要になる。
【0047】
一方、図6(B)に示すように、本サービスによりソリューションを提案する場合、提案するソリューションが一巡回するまでは点数の上がり下がりが認められるが、対象者毎に効果があるソリューションを発見した後は、効果の高いソリューションを継続的に提案できるため、認知機能の改善が早期に開始される。
さらに、図6(C)に示すように、対象者の嗜好を考慮してソリューションが提案される場合、認知機能のより一層の改善が期待できる。誰しも好き又は興味のあるソリューションの方が嫌い又は興味のないソリューションよりも続け易く、実行の質も上がり易い。このため、早い段階から改善効果が見込まれるソリューションを発見し易くなる。
【0048】
<まとめ>
前述したように、新たなソリューションの提案、実行の履歴や測定データの収集、認知機能の改善の判定のループを繰り返すことにより、対象者に応じたソリューションの提案すなわちパーソナライズ化を少ない回数で実現される。
また、対象者が好きな又は関心のあるソリューションを優先して提案することで、認知機能が改善する可能性を高めることができる。
【0049】
また、ステップ104(図5参照)で取得された対象者によるソリューションの実行履歴と測定データも含めて、ステップ107(図5参照)における新たなソリューションを推定することにより、提案するソリューションの精度を高めることが可能になる。例えば実行履歴から実行されたソリューションの内容や強度が得られるので、認知機能が改善しなかった原因や改善した原因の分析が可能になり、新たに提案するソリューションの推定の精度を高めることが可能になる。例えば同じソリューションでも実行する内容の変更や強度の変更を提案に含めることが可能になる。このような提案は、ソリューションの種類(大分類)にだけ着目していては実現できない効果である。
【0050】
また、本実施の形態の説明では、ソリューションを4つの種類(大分類)を単位として実行しているが、各種類の下位階層である中分類や小分類を単位として提案してもよい。例えば食事に代えて、和食、洋食等の分類を単位としてソリューションを提案してもよいし、肉料理、魚料理等の分類を単位としてソリューションを提案してもよい。運動、コミュニケーション、学習についても、中分類や小分類を提案の単位としてもよい。
【0051】
中分類や小分類を単位としてソリューションを提案する場合、提案可能なソリューションの数が多くなり、総当たり的な提案では、対象者に改善効果があるソリューションの発見に時間を要してしまう。
しかし、本実施の形態で説明した手法では、ソリューションの実行の前後の認知機能の評価を表す情報の比較だけでなく、対象者の嗜好を含む属性データやソリューションの実行の履歴や測定データも考慮するので、ソリューションの効率的な絞り込みが可能になる。
【0052】
<実施の形態2>
本実施の形態では、新たなソリューションの推定前に、実行したソリューションに対する対象者の感想や好き嫌いに関する回答を取得し、属性データを修正する機能を追加する場合について説明する。ここでの感想又は好き嫌いに関する回答は、特許請求の範囲における対象者の意見の一例である。
なお、本実施の形態で想定するクラウドシステム1(図1参照)の構成は実施の形態1と同じである。
【0053】
図7は、実施の形態2で使用するクラウドサーバ30の構成例を説明する図である。図7には、図2との対応部分に対応する符号を付して示している。
図7に示すクラウドサーバ30には、属性データ修正部315が追加される点が、図2に示すクラウドサーバ30との違いである。
属性データ修正部315は、ソリューションを実行した対象者に対して行ったアンケート等の結果を情報端末20から取得した場合に、属性データDB321に記憶されている対象者の属性データを修正する機能を提供する。例えば属性データ修正部315は、図3(A)に示す属性データDB321の嗜好の内容を修正する。
【0054】
嗜好の欄には、実行したソリューションの種類に対する好き嫌いの他、中分類や小分類レベルのソリューションに対する好き嫌い等が追加され、又は、修正される。
追加は、登録されていない情報の場合に実行される。修正は、登録済みの情報について実行される。
例えば前回の実行時には興味がなかったが、今回は面白く感じることがある。また、実行時の体調や経験の積み重ねにより、同じ事象に対する印象が変わることがある。例えば同じソリューションが連続すると、興味が薄れることもある。
このように、嗜好は、変化する可能性が比較的高い情報であり、ソリューションの推定時には、対象者の最新の情報を反映することが、認知機能の改善効果を高める上でも求められる。
【0055】
図8は、実施の形態2で想定するクラウドサーバ30で実行される処理動作例を説明するフローチャートである。図8には、図5との対応部分に対応する符号を付して示している。図8に示す処理手法も、認知機能改善ソリューション推定方法の一例である。
図8の場合、クラウドサーバ30は、ステップ104とステップ105の間に、実行したソリューションに対する対象者の感想を取得して属性データを修正する(ステップ201)。前述したように、修正後の属性データは、ステップ107における新たなソリューションの推定時に使用される。
【0056】
なお、属性データの修正は、感想に限らない。例えば肢体の不自由箇所の追加や減少を修正してもよい。また、生年月日が登録されていない場合には、年齢も修正の対象になる。
本実施の形態の場合、実行したソリューションに対する感想の情報が対象者の属性データに反映される機会が確保される。このため、新たに提案するソリューションとして、対象者が好きな又は興味を有するソリューションが選択され易くなり、認知機能が改善する可能性を高めることが可能になる。
【0057】
<実施の形態3>
前述の実施の形態では、予め用意された4種類のソリューションの1つ、又は、それらの下位階層に属する複数のソリューションの1つを対象者ごとに提案する手法について説明した。
しかし、クラウドサーバ30は、複数のソリューションの組み合わせを提案してもよい。例えば対象者Aには、ソリューションとして学習と運動を提案し、対象者Bには、ソリューションとして運動とコミュニケーションと食事を提案してもよい。
【0058】
対象者の興味が高い複数のソリューションを組み合わせて実行することにより、単一のソリューションだけを実行する場合よりも、認知機能が改善する可能性を高めることができる。なお、改善効果が得られる組み合わせは、単独での改善効果が高いソリューションの組み合わせに限らない。例えば単独での実行では改善効果が低い場合でも、組み合わせて実行することで高い改善効果が得られる場合がある。
【0059】
ただし、複数のソリューションの組み合わせは、実施の形態1に比して提案可能なソリューションの数が増える。例えば予め用意されたソリューションが4種類の場合でも、いずれか1つ、いずれか2つの組み合わせ、いずれか3つの組み合わせ、4つ全ての計15通りとなる。
【0060】
このため、改善効果の高い組み合わせを効率的に探し出して提案することが、対象者の認知機能の改善のために求められるが、前述した実施の形態では、対象者の嗜好も含めた属性データ、実行されたソリューションの内容や強度、実行時の測定データも考慮に入れてソリューションを推定するので、経験則に因る場合よりも効率的に又は少ない試行回数で、改善効果の高いソリューションの組み合わせを探し出すことができる。その結果、対象者の認知機能の改善効果を高めることが可能になる。
【0061】
本実施の形態では、改善効果の高いソリューションの組み合わせの推定に、ブラックボックス関数の最適化を目的とするベイズ最適化を採用する。本実施の形態の場合、入力として、提案したソリューション、実行履歴、測定データ、対象者の属性データ、提案したソリューションを実行する前の認知機能の評価を表す情報、提案したソリューションを実行した後の認知機能の評価を表す情報とし、出力として、新たに提案するソリューションの組み合わせとする。属性データには、対象者の嗜好も含まれる。
なお、ベイズ最適化は、推定アルゴリズムの一例であり、他の手法の採用も可能である。
また、ベイズ最適化は、実施の形態1や実施の形態2におけるソリューションの推定にも用いることができる。
【0062】
<実施の形態4>
実施の形態1では、基本的に、提案が可能な4種類のソリューションの提案の履歴や対象者の嗜好等を考慮して、対象者に提案するソリューションを推定しているが、本実施の形態におけるクラウドサーバ30は、対象者の属性データが属する分類について改善効果が実証されたソリューションを、新たなソリューションとして優先的に提案する。
【0063】
図9は、実施の形態4におけるソリューションの提案手法を説明する図である。(A)は各対象者に対応する属性データの分布と分類G1~G8を示し、(B)は分類とソリューションの対応例を示す。
なお、図9(A)の丸印は、対象者の一人一人に対応する。また、丸印の分布は、属性データを属性空間上にマッピングした場合の位置関係を表している。
本実施の形態では、図9(B)に示すように、分類単位で推奨されるソリューションが定められている。
【0064】
例えば分類G1に属する対象者には、学習と運動の組み合わせが推奨される。
また、分類G2に属する対象者には食事が推奨され、分類G3に属する対象者には、運動とコミュニケーションと食事の組み合わせが推奨される。
図9(B)には、1つのソリューションだけが割り当てられる分類G2、G6、G7、G8と、2つのソリューションの組み合わせが割り当てられる分類G1、G4、G5、3つのソリューションの組み合わせが割り当てられる分類G3が示されている。
属性データが類似する他の対象者について改善効果があったソリューションを優先的に提案することにより、提案されたソリューションの実行により対象者の認知機能が改善する可能性を高めることができる。
【0065】
<実施の形態5>
実施の形態1では、対象者の属性データが属する分類について実績があるソリューションを、対象者に対する新たなソリューションとして優先的に提案する場合について説明した。
ただし、分類による提案は、統計的な改善が期待される一方で、分類の粒度によっては、対象者の属性データとの差が大きくなる。
そこで、本実施の形態におけるクラウドサーバ30(図1参照)は、同じ分類内で、属性データ間の距離が近い他の対象者について改善効果があったソリューションを優先的に提案する手法について説明する。
【0066】
図10は、実施の形態5におけるソリューションの提案手法を説明する図である。
図10の丸印は、対象者の一人一人に対応する。また、丸印の分布は、属性データを属性空間上にマッピングした場合の位置関係を表している。丸印の距離が近いほど属性データの一致度が高く、丸印の距離が遠いほど属性データの一致度が低くなる。
図10の場合、本サービスの対象者は分類G1と分類G2のいずれかに属している。分類G1の場合、対象者Aと、対象者Bと、対象者Cが属している。なお、対象者Aと対象者Bの属性データの距離は近いが、対象者Aと対象者Cの属性データの距離は同じ分類内でも距離が遠いことが分かる。
【0067】
分類を単位とするソリューションは、分類を単位とした代表値としての対象者について改善効果があったソリューションとなる。このため、分類G1には属するが、属性データが外縁付近にマッピングされる対象者の場合、代表値とも距離が大きくなる。
そこで、本実施の形態のように、対象者Aに対し、対象者Bに改善効果があったソリューションを提案する手法を採用することにより、対象者Aについても認知機能が改善する可能性が高くなる。
これにより、少ない試行回数で、改善効果があるソリューション又はソリューションの組み合わせが提案される可能性を高めることができる。
【0068】
<他の実施の形態>
(1)以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、前述の実施の形態に記載の範囲に限定されない。前述した実施の形態に、種々の変更又は改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0069】
(2)前述の実施の形態1~5では、2回目以降のソリューションの提案時に、対象者の属性データを参照して優先的に適用するソリューションを推定しているが初回(1回目)のソリューションの提案時に、対象者の属性データを参照して、提案するソリューションを決定することにより、最初から改善効果が高いソリューションの提案が可能になる。
【0070】
(3)前述の実施の形態1~5では、クラウドサーバ30が提案するソリューションを推定してサービスの利用者に提案しているが、対応する処理機能は、情報端末20や情報端末40で実行してもよい。すなわち、クラウドサービスとしてではなく、情報端末20や情報端末40にインストールされたプログラムの実行を通じて、ソリューションを推定してもよい。この場合の情報端末20や情報端末40は、認知機能改善ソリューション推定システムの一例である。
【0071】
また、クラウドサーバ30に対応する処理機能は、クラウドサーバ30と情報端末20、40との協働により実行してもよい。換言すると、対応する処理機能は、複数の端末に分散してもよい。この場合、処理機能の実現に関与する複数の端末が、認知機能改善ソリューション推定システムに対応する。
【符号の説明】
【0072】
1…クラウドシステム、10…ネットワーク、20、20A、20B、40…情報端末、301…演算装置、311…ソリューション提案部、312、313…評価情報取得部、314…判定部、321…属性データDB、322…測定データDB、323…実行履歴DB、324…評価結果DB
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10