IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダックビルの特許一覧 ▶ 建装工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-信号伝送装置 図1
  • 特許-信号伝送装置 図2
  • 特許-信号伝送装置 図3
  • 特許-信号伝送装置 図4
  • 特許-信号伝送装置 図5
  • 特許-信号伝送装置 図6
  • 特許-信号伝送装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】信号伝送装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 1/02 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
E04G1/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023137639
(22)【出願日】2023-08-26
【審査請求日】2023-08-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520445521
【氏名又は名称】株式会社ダックビル
(73)【特許権者】
【識別番号】500489015
【氏名又は名称】建装工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230115118
【弁護士】
【氏名又は名称】西村 義隆
(72)【発明者】
【氏名】野口 高志
(72)【発明者】
【氏名】角張 潔
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-003738(JP,A)
【文献】特開2017-059933(JP,A)
【文献】特開2022-98549(JP,A)
【文献】特開2010-159564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00- 7/34
E04G 27/00
H04W 16/00-16/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信信号を伝送するための装置であって、
足場の構成部材であり、地面と垂直方向に設置される鋼管パイプと、地面と水平方向に設置されかつ前記鋼管パイプと接続して用いる機材を通信信号の伝送媒体として用い、
前記鋼管パイプ又は前記鋼管パイプと接続する機材に接触するよう変調機を備え、
前記変調機は、前記足場内の通信信号と、他の規格の通信信号を相互に変換する伝送装置。
【請求項2】
通信信号を伝送するための装置であって、
足場の構成部材であり、地面と垂直方向に設置される鋼管パイプと、地面と水平方向に設置されかつ前記鋼管パイプと接続して用いる機材を通信信号の伝送媒体として用い、
前記鋼管パイプは、複数の鋼管パイプから構成され、各鋼管パイプの接続部は絶縁部を設けずに電気信号を通し、又は絶縁部を設けて電気信号を遮断し、前記各鋼管パイプの接続部は1以上の絶縁部を設ける箇所が存在し、
前記鋼管パイプと接続する機材は、複数の機材から構成され、前記鋼管パイプとの各接続部は絶縁部を設けずに電気信号を通し、又は絶縁体を設けて電気信号を遮断して通信経路を形成し、前記鋼管パイプとの各接続部は1以上の絶縁部を設ける箇所が存在し、
前記鋼管パイプ又は前記鋼管パイプと接続する機材に接触するよう変調機を備え、
前記変調機は、前記足場内の通信信号と、他の規格の通信信号を相互に変換する伝送装置。
【請求項3】
通信信号を伝送するための装置であって、
足場の構成部材であり、地面と垂直方向に設置される鋼管パイプと、地面と水平方向に設置されかつ前記鋼管パイプと接続して用いる機材を通信信号の伝送媒体として用い、
前記鋼管パイプ又は前記鋼管パイプと接続する機材に接触するよう複数の変調機を備え、
前記鋼管パイプは、複数の鋼管パイプから構成され、各鋼管パイプの接続部は前記複数の変調機をつなぐために必要な通信経路には絶縁部を設けずに電気信号を通し、それ以外の前記接続部は絶縁部を設けて電気信号を遮断し、
前記鋼管パイプと接続する機材は、複数の機材から構成され、前記鋼管パイプとの各接続部は前記複数の変調機をつなぐために必要な通信経路には絶縁部を設けずに電気信号を通し、それ以外の前記接続部は絶縁体を設けて電気信号を遮断して通信経路を形成し、
前記変調機は、前記足場内の通信信号と、他の規格の通信信号を相互に変換する伝送装置。
【請求項4】
通信信号を伝送するための装置であって、
足場の構成部材であり地面と垂直方向に設置される鋼管パイプと、前記鋼管パイプと平行に向かい合って設置される鋼管パイプを通信信号の伝送媒体として用い、
前記平行に向かい合う2つの前記鋼管パイプ又は前記鋼管パイプに接触するよう変調機を備え、
前記変調機は、前記足場内の通信信号と、他の規格の通信信号を相互に変換する伝送装置。
【請求項5】
前記通信信号の伝送媒体として用いる鋼管パイプ及び前記鋼管パイプと接続して用いる機材は、平行して向かい合う形で設置される鋼管パイプ及び前記鋼管パイプと接続して用いる機材をも同時に通信信号の伝送媒体として用い、
前記平行に向かい合う2つの前記鋼管パイプ又は前記平行に向かい合う2つの鋼管パイプと接続する機材に接触するよう変調機を備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の伝送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信号伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IT技術の進歩により、建設現場(以下、工事現場を含めて建設現場という)でも様々なITツールが利用されるようになってきた。建設現場に通信環境を構築する場合、無線LAN(Local Area Network)装置を用いることも考えられるが、基地局を地上階に設置すると無線信号は上方向に飛びにくく、高所で接続しにくいといった問題がある。また、無線LANケーブルを設置すると、雨風にさらされ、切断しやすいといった問題がある。
【0003】
他の目的で設置された媒体を通信媒体として利用しようという観点では、例えば特許文献1がある。特許文献1は、既存の金属管を通信媒体として利用する方法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-292359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、既存の金属管を通信媒体としての利用に応用した一例であるが、建設現場においては、金属管による足場が設置される。したがって、建設現場において、足場を通信媒体として用いることができれば、建設現場においてほぼ設置される機材を通信媒体という別の用途に用いることが可能となる。そして、無線LANのように高所で接続しにくいという問題やLANケーブルのようにケーブルが切断されやすいという問題を解決しつつ、建設現場に簡易かつ安定的な通信環境を構築することが可能である。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みて提案するものであり、足場を通信媒体として利用した装置である信号伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係る信号伝送装置は、足場の構成部材であり地面と垂直方向に設置される鋼管パイプを通信信号の伝送媒体として用い、鋼管パイプに接触するよう変調機を備え、変調機は、足場内の通信信号と、他の規格の通信信号を相互に変換する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、建設現場において工事のために設置される足場を職人の作業のための足場として利用するだけでなく、通信環境を構築するための通信媒体としても利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】信号伝送装置10の概要を示す図である。
図2】変調機100の基本的構成を示す図である。
図3】鋼管パイプ200の構成を示す図である。
図4】鋼管パイプの接続部を示す図である。
図5】鋼管パイプ200と手すり300の接続部を示す図である。
図6】通信経路の形成の具体例を示した図である。
図7】通信信号の伝送媒体を2線使用する場合の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではない。また、実施形態に示される構成要素のすべてが、本開示の必須の構成要素であるとは限らない。
【0011】
LAN(Local Area Network)環境を構築する場合、ルーター、スイッチングハブ、イーサネットケーブルなどを用いて構築することが一般的である。最近では、有線でイーサネットケーブルを敷設する必要のないWi-Fi(Wireless Fidelity)通信を用いることも多い。この場合、Wi-Fi規格に準拠した無線LANルーター親機、子機、中継器などを使って無線LAN通信を行う。さらに、既に敷設された電力線を用いて通信を行うようなPLC(Power Line Communications)通信などが用いられることもある。
【0012】
本発明は、LAN環境を構築するに際し、既に建設現場での作業用に組まれている足場を用いて通信を行うものであり、そのために、イーサネット(登録商標)など規格化された他の汎用的な通信方式と足場内通信との信号を変復調する機器を用いて実現するものである。足場は、通信に特化した伝送媒体ではなく、雑音などの影響が大きいため、足場内は独自の通信方式を用いて、通信信号の変調・復調を行うことで、他の汎用的な通信方式と接続した通信を実現する。
【0013】
図1は、信号伝送装置10の概要を示す図である。信号伝送装置10は、変調機100と、信号の伝送路となる足場とからなる。
【0014】
図1では、足場を構築するための構成部材として、地面と垂直方向に設置される鋼管パイプ200と、地面と水平方向に設置され、鋼管パイプと接続して用いる手すり300とからなる例を示している。このほかに、地面と水平方向に設置され鋼管パイプと接続する機材として手すり300だけでなく足場板、補強材などで構成してもよい。また、地面と垂直方向に設置される鋼管パイプ200と地面と水平方向に設置される手すり300、その他、緊結金具、ベース金具、筋かいなどを接続して構成してもよい。
【0015】
変調機100は、鋼管パイプ200及び/又は手すり300などの足場内通信の経路上に接触させて設置し、イーサネットなど他の規格に準拠した事務所内の情報通信機器、インターネット回線、作業員が使用する情報通信機器等に接続する。
【0016】
(変調機100の構成)
変調機100は、イーサネットなど他の規格の通信信号と、足場内通信を行うための通信信号を相互に変調、復調するための変復調機としての役割を果たす(以下、他の規格の通信方式については、代表的なイーサネットとして表現する)。変調機100は、足場側は鋼管パイプ200及び/又は手すり300と接続しており、イーサネット側は、イーサネットケーブルと接続しており、イーサネット通信の信号を足場内通信の信号に変換し、また逆に、足場内通信の信号をイーサネット通信の信号に変換する。
【0017】
図2は、変調機100の基本的構成を示す図である。変調機100は、プロセッサ110と、メモリ120と、足場側通信IF130と、イーサネット側通信IF140とからなる。
【0018】
プロセッサ110は、プログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアであり、演算装置、レジスタ、周辺回路などにより構成される。メモリ120は、プログラム、および、プログラム等で処理されるデータ等を一時的に記憶するためのものであり、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリにより実現される。足場側通信IF130は、変調機100が足場内に流れる信号を送受信し、別の変調機100と通信を行うためのインタフェースである。イーサネット側通信IF140は、イーサネットに準拠した外部の装置と通信するため、信号を送受信するためのインタフェースである。
【0019】
変調機100は、次のようにイーサネット通信の信号を足場内通信の信号に変換する。変調機100は、イーサネット側通信IF140から受信した信号を、メモリ120から読み込んだプログラムによってプロセッサ110によって変調処理を行い、足場側通信IF130から信号を送信する。
【0020】
変調機100は、次のように足場内通信の信号をイーサネット通信の信号に変換する。変調機100は、足場側通信IF130から受信した信号を、メモリ120から読み込んだプログラムによってプロセッサ110によって復調処理を行い、イーサネット側通信IF140から信号を送信する。
【0021】
変調機100の具体的な変調方法は、イーサネット通信の信号を足場内通信の信号に変調するときは、従来から用いられている手法を用いてよい。例えば、振幅偏移変調(ASK: Amplitude Shift Keying)、位相偏移変調(PSK: Phase Shift Keying)、周波数偏移変調(FSK:Frequency Shift Keying)、直交振幅変調(QAM: Quadrature Amplitude Modulation)などの方法を用いて変調してよい。
【0022】
変調機100は、さらに、高速化通信を行うため、直交周波数分割多重(OFDM: Orthogonal Frequency Division Multiplexing)、直接拡散(DS: Direct Sequence)、周波数ホッピング(FH: Frequency Hopping)、時分割多重接続(TDMA: Time Division Multiple Access)、周波数分割多重接続(FDMA: Frequency Division Multiple Access)、符号分割多重接続(CDMA: Code Division Multiple Access)などの二次変調手段を組み合わせてもよい。これにより、高速化やノイズなどへの耐性を図ることができる。
【0023】
変調機100の具体的な復調方法、すなわち、足場内通信の信号をイーサネット通信の信号に復調するときは、変調時の方法と同様の方式の逆変換を行うことで、復調のための処理を施し、通信信号の復調処理を行う。
【0024】
信号伝送装置10は、足場を伝送路としても用いるため、足場に対して、通信専用に設計されたイーサネットケーブルと同じ伝送効率を実現させることは困難であることが多い。したがって、変調機100を介して、足場内は足場用の通信方式を用いることで、足場を用いた通信を実現可能とするとともに、雑音への頑健性を向上させ、安定した通信を実現することが可能となる。
【0025】
(物理的な通信経路の構築方法)
図3は、地面と垂直方向に設置される鋼管パイプ200の構成を示したものである。鋼管パイプ200は、例えば一定の長さを有する鋼管パイプ201のような形状の部材を組み合わせることで、希望する高さの鋼管パイプ200を構築する。すなわち、鋼管パイプ200は、単体の鋼管パイプ201を複数組み合わせることで構築され、単体の鋼管パイプ201の上部と別の単体の鋼管パイプ201の下部が接続されることで繋ぎ合わされ、固定される。この単体の鋼管パイプ201の数を増やすことで、鋼管パイプ200の高さを高くすることが可能となる。
【0026】
鋼管パイプ200において、足場内の信号の経路を構築する場合には、単体の鋼管パイプ201を単純に組み合わせる。鋼管パイプは、一般的には強度の観点から鉄が素材として用いられているため、電気伝導性を有する。したがって、単体の鋼管パイプ201を組み合わせれば、通信信号の伝達経路を形成することが可能である。
【0027】
図4は、鋼管パイプ200の接続部を示した図である。足場内の信号の経路を構築しない場合には、単体の鋼管パイプ201を組み合わせた際に、絶縁部202を設ける。絶縁部202の素材はゴムなど、導電率が0ないし極めて小さい素材を用いてよい。このように、絶縁部202を設けることによって、通信信号を送るための経路を構築することが可能となる。
【0028】
図5は、鋼管パイプ200と、手すり300を接続する部分の具体的構成を示した図である。鋼管パイプ200には、くさび受け部203を有する。手すり300には、本体部301に加えて、くさび部302を有し、鋼管パイプ200のくわび受け部203と、手すり300のくさび部302が接続されることで、鋼管パイプ200と手すり300が安定的に接続される。
【0029】
通信経路を形成するときは、鋼管パイプ200と手すり300を通常の通り組み合わせる。一方で、通信経路を形成しないときは、くさび受け部203のくさび部302と接する箇所を絶縁体で覆うことで絶縁部を設けるとよい。また、くさび部302のくさび受け部203と接する箇所を絶縁体で覆うことで絶縁部を設けてもよい。このように絶縁部を設けることにより、鋼管パイプ200と手すり300が電気的に接続しないようにする箇所を設けることが可能となり、経路を構築することができる。
【0030】
なお、くさびを用いた足場の構築は一例であり、このほかにも、緊結金具などによって鋼管パイプ200と手すり300が接続される場合もあるが、この場合にも、連結部分を絶縁体を用いて絶縁部を設けるか否かにより、通信経路の形成、非形成を選択することが可能である。
【0031】
図6は、通信経路の形成の具体例について示した図である。図6では2つの変調機100が示されている。そして、2つの変調機100とその間を鋼管パイプ200と手すり300によって通信経路が構築されていることを示す。なお、地面と水平に引いている破線は、鋼管パイプ200の接続部を示している。Xを付してある箇所は、鋼管パイプ200と手すり300の組み合わせ時に絶縁部を設けることで、通信経路を設けないよう設計としている部分を示し、Zを付してある箇所は、単体の鋼管パイプ201の接続の際に絶縁部を設けることで、通信経路を設けない設計としている部分を示す。なお、(X)又は(Z)と付している箇所は、絶縁してもしなくてもどちらでもよい。
【0032】
図6の例のように、2つの変調機100を繋ぐ経路が複数存在する中で(変調機100は2以外の複数であってもよい)、変調機100を繋ぐための1つの経路を構築するために必要な接点以外をすべて絶縁することで通信信号の減衰量を軽減しつつ効率的な信号伝送が可能になる。また、鋼管パイプ200の接続部及び鋼管パイプと手すり300の接続部のいずれにおいても、少なくとも一つ以上絶縁部を設け、かつ絶縁箇所をできる限り多くすることで、通信信号の減衰量を軽減しつつ効率的な信号伝送が可能になる。
【0033】
なお、通信経路を構築しない部分はできる限り絶縁することで、他の部材に無駄に通信信号が流れることを防止することが可能である。信号を集中させることで、雑音への耐性を強くし、安定した通信を実現することが可能である。
【0034】
以上のように、鋼管パイプ200と手すり300を組み合わせ、かつ、接続箇所の任意の箇所に絶縁部を設けることで、足場内に通信経路を構築することが可能となる。さらに、足場内の通信を実現するため、変調機100を接続し、足場内の通信信号を変復調することで、イーサネットの通信方式など他規格に準拠した通信端末を接続して通信を行うことが可能となる。
【0035】
また、特に既存の建物の改修現場では、無線LANやエアコンの室外機から発生する電磁波などの雑音が多いため、現場事務所に無線LAN親機を設置しても、作業員の通信端末まで電波が届かないことが多い。信号伝送装置10は、足場を通信経路として用い、作業員が作業を行う近くに変調機100を設置した上でさらに無線LAN親機を設置することで、作業員が通信端末をLANに接続して作業を行うことが可能となる。
【0036】
加えて、本発明による信号伝送装置10は、建設現場で必ず用いる足場を利用することにより、別の大がかりな設備を導入したり、LANケーブルを這わせる必要もない。また、上記のように人工的な妨害電波等に強いだけでなく、足場自体は、その構成部材である鋼管パイプ200や手すり300などは腐食しにくく堅牢な材質から成っているため、これを通信経路として利用することで、雨、風、日光など自然による影響にも強い。したがって、簡易かつ安定的な通信環境を実現することが可能となる。
【0037】
(二線を用いた通信経路の構築方法)
足場を通信信号の伝送媒体として用いるとき、2線を利用することが可能である。すなわち、足場は作業員が作業のための移動ないし作業場としての機能を持っており、作業員が乗ることが前提であるから、面として形成される。したがって、足場を立てるための鋼管パイプ200も手すり300も面としての幅を形成するために、向かい合う形で2つの機材が平行に設置される。これを利用して、通信信号の伝送媒体としても、2線を利用することが可能である。なお、手すり300は、既に示したように、その代替として、足場板、補強材、緊結金具、ベース金具、筋かいなど鋼管パイプ200と接続する機材を利用可能である。
【0038】
図7に足場を通信信号の伝送媒体として2線使用する場合の具体例を示す。図7では、地面と水平方向に設置される鋼管パイプ200-1~200-4及び地面と水平方向に設置され鋼管パイプ200と接続する手すり300-1~300-2を示している。このとき、鋼管パイプ200-1及び200-2、鋼管パイプ200-3及び200-4、手すり300-1及び300-2はそれぞれ平行して向かい合う形で設置されているから、これらを同時に通信媒体として用いることで、2線を利用することが可能である。
【0039】
図7に示すように、2線を用いて通信経路を構築するときは、変調機100は通信経路となる2線と接触するように設置する。
【0040】
2線を用いて通信経路を構築するときは、2線を上りと下りに分けて通信を行ってもよいし、2線をまとめて通信路として形成してもよい(この場合、上りと下りは時分割や周波数分割などを用いて分ける)。いずれも、変調機100において制御を行うことで、1線のみを用いる場合と比較して、通信容量を増大させることが可能となる。なお、足場を通信媒体として用いる場合、先に述べたように、面としての構造を有するため構造上2線を利用することが可能であり、これにより通信の効率化を実現することが可能となる。
【0041】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。また、上記実施形態で説明した装置の構成は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0042】
10…信号伝送装置、100…変調機、110…プロセッサ、120…メモリ、130…足場側通信IF、140…イーサネット側通信IF、200,200-1~200-4,201,201-1~201-4…鋼管パイプ、202…絶縁部、203…くさび受け部、300,300-1~300-4…手すり、301…手すり本体部、302…くさび部

【要約】
【課題】信号伝送装置により、足場を通信媒体として用いて通信を行うことを可能とする。
【解決手段】信号伝送装置は、足場の構成部材であり地面と垂直方向に設置される鋼管パイプを通信信号の伝送媒体として用い、鋼管パイプに接触するよう変調機を備え、変調機は、足場内の通信信号と、他の規格の通信信号を相互に変換する。これにより、足場を建設現場において職人が作業を行うための本来の機能としてだけではなく、通信媒体としても利用することを可能とする。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7