IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニッカ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-紫外線硬化樹脂用硬化装置 図1
  • 特許-紫外線硬化樹脂用硬化装置 図2
  • 特許-紫外線硬化樹脂用硬化装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】紫外線硬化樹脂用硬化装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 35/08 20060101AFI20231219BHJP
   H01J 61/34 20060101ALI20231219BHJP
   H01J 61/16 20060101ALI20231219BHJP
   B05C 9/12 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B29C35/08
H01J61/34 F
H01J61/16 N
B05C9/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019196892
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021070179
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】590001717
【氏名又は名称】ニッカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳一
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-186987(JP,A)
【文献】特開2014-121669(JP,A)
【文献】特開昭55-121834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 35/08
H01J 61/34
H01J 61/16
B05C 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化樹脂を硬化させる紫外線を照射する中圧ランプと、
前記中圧ランプのケーシングと、
ウェブを間に挟んで前記中圧ランプと対向するように前記ケーシングに設置して搬送中の前記ウェブを前記中圧ランプ側に押し付けて従動するシリンダと、
を有し、
前記中圧ランプは、内部にキセノンが充填された放電管と、前記放電管を覆い内部に窒素が充填されたジャケットを有する二重構造であることを特徴とする紫外線硬化樹脂用硬化装置。
【請求項2】
請求項1に記載された紫外線照射装置であって、
前記シリンダは、内部に流体を充填するスペースと、軸心に沿って前記スペースに流入及び排出する配管を有し、シリンダ表面を冷却することを特徴とする紫外線硬化樹脂用硬化装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された紫外線照射装置であって、
前記ケーシングは、前記シリンダを前記中圧ランプに接近又は離間させる進退移動手段を有することを特徴とする紫外線硬化樹脂用硬化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して硬化させる紫外線硬化樹脂用硬化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化樹脂は、紫外線照射により短時間で硬化する性質を備え、取り扱いが容易であることから、印刷用インキ、接着剤、コーティング材などに幅広く利用されている。
従来、紫外線硬化樹脂の硬化には、特許文献1のような高圧水銀ランプが用いられている。高圧水銀ランプは、365nmを主波長とする紫外線を照射可能である。
しかしながら高圧放電ランプを用いた場合、消費電力が高く、ランプが点灯するまでの時間がかかるなどの問題がある。
消費電力が高くなると発熱するため、冷却手段が必要になる。
また一度点灯していたランプを消灯した後、再度点灯する場合も時間がかかる。このため、高圧ランプの照射面に開閉シャッターを設けなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-121064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、短時間で点灯し、低電力で発熱の少ない紫外線硬化樹脂用硬化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、紫外線硬化樹脂を硬化させる紫外線を照射する中圧ランプと、
前記中圧ランプのケーシングと、
ウェブを間に挟んで前記中圧ランプと対向するように前記ケーシングに設置して搬送中の前記ウェブを前記中圧ランプ側に押し付けて従動するシリンダと、
を有し、
前記中圧ランプは、内部にキセノンが充填された放電管と、前記放電管を覆い内部に窒素が充填されたジャケットを有する二重構造であることを特徴とする紫外線硬化樹脂用硬化装置を提供することにある。
上記第1の手段によれば、短時間で点灯、換言すると紫外線を照射することができる。低電力のため消費電力が少なく、かつ発熱も極めて少なくできる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、前記シリンダは、内部に流体を充填するスペースと、軸心に沿って前記スペースに流入及び排出する配管を有し、シリンダ表面を冷却することを特徴とする紫外線硬化樹脂用硬化装置を提供することにある。
上記第2の手段によれば、搬送するウェブに従動し発熱するシリンダを冷却することができ、ウェブが損傷するおそれがない。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第1又は第2の手段において、前記ケーシングは、前記シリンダを前記中圧ランプに接近又は離間する進退移動手段を有することを特徴とする紫外線硬化樹脂用硬化装置を提供することにある。
上記第3の手段によれば、搬送するウェブをランプ側に近づけることにより紫外線の照射効率を高めることができる。またランプから離すことにより、メンテナンス作業が容易となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、短時間で点灯、換言すると紫外線を照射することができる。低電力のため消費電力が少なく、かつ発熱も極めて少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の紫外線硬化樹脂用硬化装置の構成概略図である。
図2】中圧ランプの説明図である。
図3】シリンダの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の紫外線硬化樹脂用硬化装置の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。本発明の紫外線硬化樹脂とは、紫外線硬化インキ、紫外線硬化接着剤、紫外線硬化コーティング材などをいう。
[紫外線硬化樹脂用硬化装置10]
図1は、紫外線硬化樹脂用硬化装置の構成概略図である。図示のように本発明の紫外線硬化樹脂用硬化装置10は、紫外線硬化樹脂を硬化させる紫外線を照射する中圧ランプ20と、中圧ランプ20のケーシング12と、ウェブ11を間に挟んで中圧ランプ20と対向するようにケーシング12に設置して搬送中のウェブ11を中圧ランプ20側に押し付けて従動するシリンダ30を有している。
【0011】
(中圧ランプ20)
図2は中圧ランプの説明図である。中圧ランプ20は、内部にキセノンが充填された放電管22と、放電管22を内包し内部に窒素が充填されたジャケット24を有する二重構造である。
放電管22は、筒状の石英ガラス本体の両端に電極を備え、内部にキセノンを充填している。
ジャケット24は、放電管22を覆い、換言すると内部に備え、内部に窒素を充填している。またジャケット24は両端から放電管22の電極に接続する電極が外部に露出している。
このような構成の中圧ランプ20は、放電管内にキセノンを充填したことにより紫外線を照射するまでの時間を短くでき、短時間で点灯させることができる。このため、従来構造のような開閉シャッターを用いる必要がない。またジャケット24内に窒素を充填したことにより放電管22からの発熱を少なくできる。
中圧ランプ20はケーシング12内に設置している。ケーシング12は紫外線の照射面側に窓を有する筐体であり、中圧ランプ20の回りに反射板26と、内部に空気を循環させる送風ファン28を有し、二重構造の中圧ランプ20からわずかながら発生する熱を外部へ排熱している。
【0012】
(シリンダ30)
図3はシリンダの説明図である。シリンダ30は、胴体32と、軸34と、胴体32内部に一回り小さいスペース33を有している。スペース33は、胴体32の中空であり、軸34に沿ってスペース33に流入及び排出する配管36に接続し、冷却用の流体、例えば水、空気を充填できる。また配管36を介して外部の循環ポンプ又はファンと接続させて冷却用の水又は空気を循環させることもできる。
このような構成のシリンダ30は、配管36の一方から給水してスペース33内に冷却用の流体を充填した後、他方の配管36から外部へ排出できる。これにより近接する中圧ランプ20からの発熱によりシリンダ30表面温度が上昇しても、冷却用の水又は空気によってシリンダ30表面を冷却できる。従って、水冷又は空冷で発熱によるウェブの損傷などを防止できる。
シリンダ30は進退移動手段40により中圧ランプ20側に接近又は中圧ランプ20から離れる方向に進退移動できる。
本実施形態の進退移動手段40は、一例として、スライドレール42と、スライダ44と、駆動モータ46を備えている。スライダ44はシリンダ30の軸受けに接続し、進退方向に配置したスライドレール42上を走行可能に構成している。駆動モータ46はスライドレール42に接続してスライダ44を進退移動できる。このような構成の進退移動手段40は、紫外線硬化樹脂の硬化工程において、シリンダ30を中圧ランプ20側に近接(例えば数ミリ)させて、低電力で微弱な紫外線であっても硬化させることができる(図1中の実線シリンダ30)。また、メンテナンス、稼働停止中は、シリンダ30を中圧ランプ20から所定距離離すことができ(図1中の二点鎖線シリンダ30)、点検又は交換などのメンテナンス作業を容易に行える。なお進退移動手段40は、シリンダ30を中圧ランプ20に接近又は離間させる移動ができれば良く、この他、油圧シリンダ機構等を適用することもできる。
【0013】
[作用]
上記構成による本発明の紫外線硬化樹脂用硬化装置10の作用について以下説明する。
図1の二点鎖線のシリンダ30に示すメンテナンス位置の状態、シリンダ30が中圧ランプ20から離れた状態でウェブ11をシリンダ30と中圧ランプ20の間に通す。
その後、進退移動手段40でシリンダ30を中圧ランプ20側に移動させて硬化位置(図1の実線に示すシリンダ30)にセットする。このときウェブ11はシリンダ30によって中圧ランプ20側に押し付けられて、ケーシング12の窓とシリンダ30の間は数ミリ離れた状態となる。
ケーシング12内の中圧ランプ20を点灯させて紫外線硬化樹脂を硬化させる紫外線を照射する。中圧ランプ20は放電管22内部にキセノンが充填されているため、短時間で点灯、換言すると紫外線を照射可能な状態となる。またジャケット24は内部に窒素が充填されているため。放電管22が発熱しても外部へ熱が伝わり難くなる。
紫外線硬化樹脂を塗布したウェブ11を搬送させて、シリンダ30及び中圧ランプ20の間を通る間に紫外線が照射されて、紫外線硬化樹脂が硬化する。このとき、搬送するウェブ11に押し当てたシリンダ30はウェブ11の搬送方向に沿って従動回転する。そしてシリンダ30のスペース33には冷却用の水が充填又は循環している。このため二重構造の中圧ランプ20からの僅かながらの発熱によって、シリンダ30表面の温度が上昇しても胴体32内部の冷却水によって冷却される。従って、発熱によるウェブ11の損傷・ダメージを防止できる。
なお冷却用に空気をスペース33に供給し、空冷式シリンダとしても良い。
【0014】
このような本発明によれば、短時間で点灯、換言すると紫外線を照射することができる。低電力のため消費電力が少なく、かつ発熱も極めて少なくできる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0015】
10 紫外線硬化樹脂用硬化装置
11 ウェブ
12 ケーシング
20 中圧ランプ
22 放電管
24 ジャケット
26 反射板
28 送風ファン
30 シリンダ
32 胴体
33 スペース
34 軸
36 配管
40 進退移動手段
42 スライドレール
44 スライダ
46 駆動モータ
図1
図2
図3