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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】台車連結装置
(51)【国際特許分類】
   B62B 5/00 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
B62B5/00 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019202601
(22)【出願日】2019-11-07
(65)【公開番号】P2021075134
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000134659
【氏名又は名称】株式会社ナカオ
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】中尾 許弘
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-127727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結器具とこれに分離可能な連通具とで構成され、運搬物を載置する荷台と外周縁側の角隅部分に設けた手押棒等を挿抜可能とする挿入孔とを有する台車どうしを連結する台車連結装置であって、
前記連結器具は、前記挿通具を挿通させて取付ける挿通孔を複数開口させた本体部を備え、
互いに連結される台車に架け渡すように、前記連結器具と各台車との位置を合わせ、前記連結器具に取付けた連通具を前記挿入孔に差し込んで複数の台車を連結させるように構成し、
前記複数の台車に渡して載置した連結器具は、前記連通孔に前記連通具を挿入させる替わりに、前記手押棒やロック棒などの棒状部材を挿入することで、前記複数の台車を連結可能として構成した
ことを特徴とする台車連結装置。
【請求項2】
連結器具とこれに分離可能な連通具とで構成され、運搬物を載置する荷台と外周縁側の角隅部分に設けた手押棒等を挿抜可能とする挿入孔とを有する台車どうしを連結する台車連結装置であって、
前記連結器具は、前記挿通具を挿通させて取付ける挿通孔を複数開口させた本体部を備え、
互いに連結される台車に架け渡すように、前記連結器具と各台車との位置を合わせ、前記連結器具に取付けた連通具を前記挿入孔に差し込んで複数の台車を連結させるように構成し、
前記連通具は、前記挿通孔に挿脱可能な中空筒状の柱部と、前記柱部上部に設けられ前記柱部の外径および前記挿通孔の内径よりも大きい外径の蓋部とを備え、
前記柱部に、前記本体部の挿通孔から前記連通具が抜出すのを阻止する抜脱防止手段を有
前記抜脱防止手段は、U字状に湾曲した状態で前記柱部の内部に設けられるばね性を有する金属板と、前記金属板の一端側に設けられ前記柱部に開口したロック孔に前記柱部の内側から挿入され前記柱部の外周面から突出するロックピンと、を有する
ことを特徴とする台車連結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物の運搬用などに用いる台車を複数台連結させる台車連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や配送センターその他の場所で、重量物などの荷物を運搬する簡易な手段として、作業者が手押しなどで荷物を運搬することができる各種の台車が普及している。通常、このような台車は、作業運搬者が手で押して操作するものであるので、使い勝手を考慮して比較的コンパクトな大きさの荷台を有するものが一般的である。
【0003】
ところが、この荷台に積載する荷物には、必ずしも荷台の大きさに見合ったサイズのものを取り扱うわけではなく、例えば長尺物などを運搬する場合もある。そこで、このようなケースに対応できるようにするため、台車の角隅の孔に専用の連結器具などを取付け、台車を複数台連結させるものなどが知られている。
通常、このような連結器具で連結された台車で荷物を運ぶ際に、荷物が重量物だと一人での押出作業が困難な場合があり、補助の作業者の力が必要となることがある。
ところが、通常、このような連結器具を角隅の孔に取付けると、補助作業者が必要な手押棒などを取付けできないといった不都合があった。そこで、これとは別に装着孔などを設け、連結器具を取付けてあっても手押し棒などを取付けることができるものも提案されている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5255362号公報
【文献】特開2018-131132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものにあっては、専用の装着孔を別に設ける分のスペースが必要となり、台車どうしを密着状態で連結できないので、小物の荷物が混ざっていると、台車間の隙間から落下する虞がある。また、特許文献1に記載のものには、連結器具の他にこの連結器具から上方に突出する円筒部を付設したものも提案されている。ところが、これでは、手押棒などを装着しない時には突出する円筒部が邪魔になって荷物の搭載作業に手間が掛かったり、作業者がそれに触れて怪我をする虞もある。
一方、特許文献2に記載のものにあっては、連結用の部材(突出片)が細幅で薄く、その分、脆弱である。従って、連結後に重量物を搭載して台車を押し出しする際に、変形して折れ曲がったり、折損する虞もある。
また、何れの特許文献に記載のものも、構造が比較的複雑であり、製造コストの増大につながる。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑み、複数台の台車を連結させた状態のままで手押棒などの棒状部材を差し込むことができるとともに、安全でかつ製造コストの削減を図ることが可能な台車連結装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様の1つは、連結器具とこれに分離可能な連通具とで構成され、運搬物を載置する荷台と外周縁側の角隅部分に設けた手押棒等を挿抜可能とする挿入孔とを有する台車どうしを連結する台車連結装置であって、前記連結器具は、本体部とこの本体部に複数開口され前記挿通具を挿通させて取付ける挿通孔とを備え、前記台車と相手側台車とに架け渡すように、前記連結器具と各台車との位置を合わせ、前記連結器具に取付けた連通具を前記台車の挿入孔に差し込んで複数の台車を連結させるように構成したことを特徴とする台車連結装置に関する。
【0008】
また、本発明の態様として、前記複数の台車に渡して載置した連結器具は、前記連通孔に前記連通具を挿入させる替わりに、前記手押棒やロック棒などの棒状部材を挿入することで、前記複数の台車を連結可能として構成したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の選択的な態様の1つにおいて、前記連通具は、前記挿通孔に挿脱可能な柱部と、柱部上部の蓋部とを備え、前記柱部に、前記本体部の挿通孔から連通具が抜出すのを阻止する抜脱防止手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る台車連結装置によれば、連結器具とこれに分離可能な連通具とで構成され、運搬物を載置する荷台と外周縁側の角隅部分に設けた手押棒等を挿抜可能とする挿入孔とを有する台車どうしを連結する台車連結装置であって、前記連結器具は、本体部とこの本体部に複数開口され前記挿通具を挿通させて取付ける挿通孔とを備え、前記台車と相手側台車とに架け渡すように、前記連結器具と各台車との位置を合わせ、前記連結器具に取付けた連通具を前記台車の挿入孔に差し込んで複数の台車を連結させるように構成した。これにより、手押棒などを取付ける際には、連通具を引き抜いて現れる挿入孔に手押棒などを差込むことができる。しかも、上面に挿通孔を複数開口した本体部からなる連通器具と、挿通孔に挿脱可能な連通具との2種類の簡易な部材に分離可能な構成であるので、別々に、かつ、容易に製造でき、その分、コストも抑えることが可能となる。
【0011】
特に、発明の他の態様によれば、前記複数の台車に架け渡して載置した連結器具は、前記連通孔に前記連通具を挿入させる替わりに、前記手押棒やロック棒などの棒状部材を挿入することで、前記複数の台車を一体に連結可能として構成したので、台車を連結させたまま同時に手押棒などが使用できるようになる。
【0012】
また、発明の他の態様によれば、前記連通具は、前記挿通孔に挿脱可能な柱部と、柱部上部の蓋部とを備え、前記柱部に、前記本体部の挿通孔から連通具が抜出すのを阻止する抜脱防止手段を有するので、この抜脱防止用手段によって連結器具と連通具を一体化でき、保管などの際、紛失を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る台車連結装置を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態における台車連結装置を用いて2台の台車を連結した時の状態を示す平面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る台車連結装置に手押棒を差込んだときの状態を説明する斜視図である。
図4】台車連結装置によって図2に示す2台の台車を連結するときの作業を説明する斜視図である。
図5】(a)第1の実施形態の連結器具の挿通孔と、連通具の円柱部及び蓋部との3者の大小関係を示す説明図、(b)連通具の蓋部の周縁部の形状の変形例を示す要部断面図
図6】本発明の抜脱防止手段(ロック部材)を示す斜視図であって、それぞれ、(a)は表面側を、(b)は裏面側を示す。
図7】本発明の第2の実施形態の連結器具及びこれで連結させる4台の台車を示す斜視図。
図8】本発明の第2の実施形態に係る台車連結装置を用いて3台の台車を連結した時の状態を示す平面図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る台車連結装置を用いて4台の台車を連結した時の状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の要旨は、連結器具とこれに分離可能な連通具とで構成され、運搬物を載置する荷台と外周縁側の角隅部分に設けた手押棒等を挿抜可能とする挿入孔とを有する台車どうしを連結する台車連結装置であって、前記連結器具は、本体部とこの本体部に複数開口され前記挿通具を挿通させて取付ける挿通孔とを備え、前記台車と相手側台車とに架け渡すように、前記連結器具と各台車との位置を合わせ、前記連結器具に取付けた連通具を前記台車の挿入孔に差し込んで複数の台車を連結させるように構成したことにある。
そして、この発明では、前記複数の台車に架け渡して載置した連結器具は、前記連通孔に前記連通具を挿入させる替わりに、前記手押棒やロック棒などの棒状部材を挿入することで、前記複数の台車を一体に連結可能として構成したことにある。
また、前記連通具は、前記挿通孔に挿脱可能な柱部と、柱部上部の蓋部とを備え、前記柱部に、前記本体部の挿通孔から連通具が抜出すのを阻止する抜脱防止手段を有することにある。
また、前記連結器具には、連結されたときに台車間の隙間領域に対応する前記本体部の所定領域に、棒状部材等を差込み可能な差込孔を開口したことにある。
【0015】
次に、この発明の実施例を添付図面に基づき詳細に説明する。
(第1の実施形態)
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る台車連結装置1を示すものであり、特に本実施形態では、図2に示す2台の台車100,100を連結させるためのものであって、大略構成として、連結器具10と、連通具20との2種類の部材で構成されている。また、この台車連結装置1は、通常は後述する抜脱防止手段30で2種類の部材、即ち、連結器具10と連通具20とを一体にまとめており、バラバラに分れて紛失するのを防止している。
【0017】
台車100は、ほぼ中央部分にて運搬物を載置する荷台101と、この荷台101外周縁側の4か所の角隅部分に設けた手押棒200(図3参照)等の棒状部材を挿抜可能な挿入孔102とを備えている。手押棒200は、長尺棒状の金属であって、連結器具10の挿孔11Aを通して下端部側を台車100の挿入孔102まで挿入させることで、台車と一体に固定されるようになっている。この棒を手で把持して台車100を押したり引っ張ったりすることで、一体に連結された複数台の台車100を前後左右に移動できる。
【0018】
挿入孔102には、図2に示すように、180度位相ずらした2カ所に略5角形(特にこの形状には限定しない)のベース状を呈するセレーション溝103が形成されており、後述するロックピン32が突設した状態のまま、連通具20が上下動可能に入り込める構成になっている。また、この挿入孔102には、連通具20が挿入されるときには縦方向の寸法が短い形状なので問題ない。しかし、縦方向に長い手押棒200や図示外のロック棒を挿入させるときには、挿入孔102から下方に抜け落ちないようにするため、挿入孔102を水平方向に貫く閂状の適宜の抜け止め部材(図略)を取付けてある。また、下端部が塞がれた有底構造としてもよい。
【0019】
連結器具10は、鉄などの適宜金属などで縦断面略逆L字形に形成されており、平面形状を有する本体部11と、この本体部11から下方に垂下する側壁部12とを備えている。この本体部11は、基本的には水平なフラット面で構成されており、そのフラット面に複数の挿通孔11Aを開口している。また、フラット面から側壁部12へ向かう側壁部12との接続部分には、略上向に傾斜した膨出面13を設けている。この膨出面13は、台車100に連結器具10を取付けた後、台車100に乗せる荷物が外部に脱落するのを防止するストッパとしての機能を有しているが、この膨出面13は特に必須のものではない。
【0020】
本実施形態の本体部11には、挿通孔11Aが左右2カ所開口されており、これらの孔にそれぞれ連通具20を取付けて2台の台車を密着状態で連結させるようになっている。即ち、一方の挿通孔11Aに取り付けてある連通具20と一方の台車の挿入孔102とが重合するように調整して、連通具20を一方の台車の挿通孔11Aに挿通し固定する。また、他方の挿通孔11Aにも連通具20が取り付けてあり、もう一方の台車の挿入孔102と重合させて連通具20で固定する。このようにして、連結器具10に取付けてある2個の連通具20を介して、2台の台車100をしっかり連結させるようになっている。
【0021】
この本体部11には、図1に示すように、挿通孔11Aを複数(この実施形態では2か所)開口させてあるが、連結器具10の挿通孔11Aとは別に、これより小径(スペース的な余裕があれば、挿通孔11Aと同一径でもよい。)の差込孔11Bも開口してある。この差込孔11Bは、連結器具10で複数一体に連結された台車100の荷台101に搭載した長尺物等が側方から脱落するのを防止するための棒状部材(手押棒200やロック棒に比べ小径のもの)等を上から差し込むために設けた。
【0022】
この連結器具10は、差込孔11Bの内径を挿通孔11Aの内径寸法と異径に開口させておけば、2種類の孔径を選択して異径寸法の棒状部材を差し込ませることが可能であるが、勿論、この差込孔11Bが無くてもよい。
【0023】
連通具20は、図5(a)に示すように、挿通孔11Aに着脱可能な円柱部21と、この円柱部21から一部側方へ飛び出すように円柱部21の上部に設けた蓋部22とを備えている。本実施形態の連結器具10では、2台の台車100、100を連結させるため2個の連通具20で構成されている。
【0024】
円柱部21は、中空筒状のものから構成されて軽量化及びコスト削減が図られている。この円柱部21は下端側が開口されており、また外周面の一部にロック孔21Aが開口されている。この円柱部21には、ロック孔21Aとは反対位置である180度位相のずれた位置にも、後述する抜脱防止手段30を構成するロック部材のバーリング突起33がロック可能な(前述のロック孔21Aと略同一径)孔も開口されている。なお、この孔も前述のロック孔21Aと同じ形状であり、使い勝手の関係上、どちらの孔であっても、ロックピン32及びバーリング突起33が挿入可能となっている(以下、こちらの孔も「ロック孔21A」とよぶ)。
【0025】
一方、蓋部22は、円柱部21が連結器具10の挿通孔11Aから抜け落ちるのを防止するためのものであって、図5(a)に示すように、挿通孔11A(内径D),円柱部21(外径D)、及びこの蓋部22(外径D)の間には、次の関係、
<D<D ・・・(1)
を満たすように、内径及び外径が調整されて形成されている。
また、更に、図4に示すように、台車100の挿入孔102(内径D)と、円柱部21(外径D)との関係については、次の関係、
<D ・・・(2)
を満たすように構成されており、(1)及び(2)の関係を満たすように連通具20の円柱部21のサイズが設定されている。
【0026】
なお、図4に示す台車100の挿入孔102(内径D)と連結器具10の挿通孔11A(内径D)との間には、大小関係は特に制限の必要はない。しかしながら、台車100の上に連結器具10を載置したときに、連結器具10の挿通孔11Aを通してその上から台車100の挿入孔102を直接目で視認できる方が、連結器具10と台車100との正確な位置合わせが容易になる。そこで、本実施形態では、次式も満たすようになっている。
D<D ・・・(3)
このような事情から、(1)、(2)、(3)の各式を1つにまとめると、次のような関係となる。
<D<D<D ・・・(4)
【0027】
なお、この蓋部22は、図5(a)に示すように、特に外縁部が垂直に立ち上がった形状を呈しているがこれに限定されるものではない。例えば、同図(b)に示すように、蓋部22半径が下部から上部にいくにつれて次第に減少するように構成してもよい。即ち、外縁部22Aを上部に向けて滑らかに切削して断面略テーパ状とした面取り又はR加工させておけば、運搬物を積載したときに、その運搬物の外縁部分が蓋部22の鋭い外縁部(エッジ)に衝突して破損したりひびが入ったりするトラブルなどを回避できる。
【0028】
抜脱防止手段30は、前述したように、連結器具10と連通具20とを一つにまとめておくものである。別言すれば、連通具20が連結器具10からバラバラに分離して紛失するのを防止する。本実施形態では、図6(a)、(b)に示すような専用の部材(以下、「ロック部材30A」とよぶ)が用いられており、連結器具10の挿通孔11Aから連通具20が抜け出すのを阻止する。
【0029】
このロック部材30Aは、板ばね性を有する薄板状の金属板を用いて2つの翼31A,31Bを有するように断面略V字形に形成されており、一方の翼31Bの先端部分にはロックピン32が突設されている。また、他方の翼31Aの先端部分には、図5,6に示すように、バーリング加工によってバーリング突起33が突設されている。
このロック部材30Aは、連通具20の円柱部21に押し入れた後、ロックピン32及びバーリング突起33を円柱部21の各ロック孔21Aに挿入させる。これにより、ロック部材30Aを円柱部21内側から突設させるとともに、バーリング突起33を円柱部21に内側から係止させ、連通具20が連結器具10から脱出するのを防止する。
【0030】
このように、連結器具10に連通具20を装着させた後、ロック部材30Aを連通具20に装着させることで、蓋部22とロックピン32とが上下両側から連結器具10を挟み付けて抜け止めする。
【0031】
連通具20を取付けた連結器具10を2台の台車100,100に装着させるには、連通具20から突出するロックピン32が各台車100の挿入孔102のセレーション溝103に係合するように位置合わせを行う。そして、連通具20の位置をそのまま保持して、連通具20を台車100に装着させればよい。これにより、連結器具10と連通具20とからなる台車連結装置1で、2台の台車100が一体に取り付けられる。
【0032】
なお、本実施形態の抜脱防止手段30は、板バネ性を有する薄板状の金属板からなるロック部材30Aで構成されているが、特にこれに限定されない。例えば連通具20の円柱部21の外周面に雌ネジを切ったネジ穴を設け、これに雄ネジを螺合させることで連結器具10から抜け出さないようしてもよい。また、連通具20に雌ネジを切る替わりに、180度位相をずらした2カ所に孔を開口させ、これらを貫抜くように長尺状のビスを挿入してナットを螺合させてもよい。また、ボールプランジャなどを用いてもよい。
【0033】
このような構成の本実施形態の連結器具10では、種々の使用態様が可能であるが、ここではその一つの実施例について説明する。
(実施例)
例えば、連結器具10と連通具20とを用いて連結されていた台車100の挿入孔102のいずれか1つにロック棒(図略)を差し込んで使用するときについて説明する。
例えば図3に示す2台連結された台車100のいずれか1つの挿入孔102へ図示外のロック棒を差し込んでロック棒を使用するときには、最初に、どちらか一方の連通具20を連結器具10から取外す。これにより、挿通孔11Aと挿入孔102が上下重合した状態で開放されるので、そこにロック棒を上から差し込めばよい。なお、連通具20の取外しのためには、ロック部材30Aを連通具20から取り外せばよい。
【0034】
台車100を連結中の連結器具10の連通具20から、ロック部材30Aを取外す方法については、以下のようにすればよい。
1)まず、例えば差込孔11Bに親指など差込ませるなどして、連結器具10を把持しながら少し引上げる。
2)そして、連通具20のロックピン32が露出するところで、2つの連通具20の蓋部22を回動させ、セレーション溝103から脱出させる。そして、台車100の挿入孔102の開口縁部付近にロックピン32を係止させる。
3)ここで、差し込んでいた親指など外すとともに、そのまま連結器具10を一時的に静置させる。
4)次に、一方の連通具20のロック孔21Aから突出しているロックピン32を円柱部21の外側から親指などで円柱部21内方へ押し込ませる。この場合、ロックピン32の頭部が円柱部21の内周面に係止するよう、深く押込ませるとともに、バーリング突起33の方も適宜の治具その他の金属具などで円柱部21の内周面に係止するよう、深く押込ませる。
5)そして、これとほぼ同時に(若しくはその直後に)、連通具20の蓋部22を多少回動させることで、ロックピン32及びバーリング突起33と円柱部21のロック孔21Aとの係合を解除させる
6)これにより、連通具20は、連結器具10の挿通孔11Aから引き上げて脱出できる。
なお、他方の連通具20の蓋部22を適宜回動させることで、ロックピン32を円柱部21のロック孔21Aに再度係合させることができる。その後、さらに、蓋部22を回動させることで、ロックピン32が台車100のセレーション溝103と合致して自重で挿入孔102へ入り込み、連結器具10も台車100に被さり密着する。
【0035】
従って、このような連通具20の抜脱作業は、作業工数は多いものの、作業に要する力は、各工程ごとに作業部位を一つひとつ分けて行う(分散させる)。別言すれば、複数の部位に対して一気に(同時に)力任せに行う必要がなく、各工程での作業に際してそれほど大きな力を必要としない。従って、女性や高齢の作業者であっても、それほど困難は伴わずに行える。
【0036】
次に、本実施形態に係る台車連結装置1の作用について説明する。
(I)2台の台車100、100を一体に連結させて使用する場合(図2参照):
例えば図2に示すように、2台の台車を縦方向又は横方向に揃えて並べるとともに、互いに接する左右四隅又は前後の四隅の各2箇所の位置を調整する。その後、これらの位置合わせされた各台車の隣接する挿入孔102と重合するように、連結器具10と一体化させた連通具20を上から重ね合わせた状態で、台車100に連結器具10を取付けていく。なお、この場合、連結器具10の挿通孔11Aには、抜脱防止手段30(ロック部材30A)を取付けた連通具20が予め挿入されているものとする。
【0037】
連結器具10を正確に2台の台車100上方にて位置合わせし、連通具20を各台車の挿入孔102に入り込ませ、連結器具10を降下させていく。これによって、連通具20が各台車100の挿入孔102に挿入されれば、各台車100が連結器具10及び2個の連通具20でしっかり連結される。
【0038】
なお、この連結作業を容易に行うため、各連通具20に取り付けてあるロック部材30Aのロックピン32の突出向きは、事前に調整して各台車100のセレーション溝103位置と一致させておくのが好ましい。
【0039】
(II)2台の台車100,100を一体に連結させるとともに、それらの台車の連結部分にロック棒(又は手押棒200)を1本だけ差し込んで使用する場合(図3参照):
当初から、つまり、連結させる前から1本だけロック棒(又は手押棒200)を差し込んで使用するのが分かっている場合には、台車100に連結器具10をセットさせるのに先立ち、手押棒200(又はロック棒)を差し込む方の挿通孔11Aにある連通具20は抜き出しておく。
その後、連結器具10に差し込まれた連通具20を台車100の挿入孔102に挿入させるようにして、連結器具10と台車100との大雑把な位置合わせを行う。そうした後、連通具20を差し込んでない方の挿通孔11Aの孔を通して連結器具10と台車100との位置関係を上から確認しながら、各台車100と連結器具10との正確な位置の調整を行う。その後に、重合した挿入孔102と挿通孔11Aとにロック棒(又は手押棒200)を差し込んで行く。
なお、2台の台車を連結中に、手押棒200(又はロック棒)を1本だけ取付けたい場合については、前述の実施例にて説明したので、省略する。
【0040】
(III)2台の台車100,100を一体に連結させるとともに、それらの台車の連結部分にロック棒(又は手押棒)を2本差し込んで使用する場合:
この場合には、(II)の場合と同様、連通具20を連結器具10から抜き出しておく作業を予め行う。その後、連結器具10の各挿通孔11Aが2台の台車100の挿入孔102に重合するように、各台車100に対する連結器具10の位置を調整する。
そして、その調整された台車100及び連結器具10の各孔に対して、ロック棒(又は手押棒)を上から差し込んで行く。このようにして、ロック棒(又は手押棒)を台車100及び連結器具10の各孔に差し込ませると、台車100どうしの連結を行うことができるのと同時に、連結部分へのロック棒(又は手押棒)の取付け作業も行える。
なお、2台の台車を連結中に、手押棒200(又はロック棒)を2本だけ取付けたい場合については、前述の実施例にて説明した1本の場合とほぼ同様の作業で行えるので、省略する。
【0041】
(IV)2台連結されていた台車100,100を取り外して個別に使用する場合:
(I)~(III)の何れの場合であっても、連通具20やロック棒(又は手押棒)を台車100から引き抜けば、台車どうしの連結状態も直ちに解除できる。
【0042】
従って、第1の実施形態によれば、上述したように、台車連結装置1を用いて色々な使用態様に応じて台車の連結或いは連結解除を行ういずれの作業の場合であっても、これらの各作業を1工程ずつ行っていけばよい。そのため、女性作業者や高齢の作業者などであっても、過度の力を要せず、容易に実施することができる。しかも、その工程は、殆どが高々2~3工程で済むので、作業に不慣れな作業者であっても、簡単確実に実施することができる。
なお、台車100を連結中の連結器具10の連通具20から、ロック部材30Aを取外す場合は、例外的に工数が多いが、前述したように、同様に過度の力は要しないで行える。
【0043】
さらに、この実施形態によれば、台車連結装置1は、大略構成として、連結器具10と連通具20との都合2点の簡易な部材で構成されており、それぞれ比較的簡易な構造のものである。しかも、各構成部材はそれぞれ個別に製造できるので、コストの削減を図ることができる効果も得られる。
【0044】
しかも、本実施形態では、ロック部材30Aのロックピン32で、連結器具10から連通具20が引き抜けないような構造となっている。そのため、普段、台車連結装置1を使わないときにどこかにしまっておいても、連通具20と連結器具10とがばらばらとなってしまい連通具20などを失くしてしまう、といった虞もなく、便宜である。
【0045】
また、この実施形態によれば、連結器具10と連通具20とが分離できるので、連結器具10や連通具20に変形を生じた場合には、従来の一体型の場合にはそっくり全体毎交換する必要があったのが、本実施形態ではその変形した部材のみ交換すれば済み、その分、修理費用を削減することができる。
【0046】
しかも、この実施形態では、2台の台車100を密着状態で連結できるので、隙間を生じて小物が落下し紛失するといったトラブルを防止できる。さらに、上方に大きな突起部が形成されていないので、台車100への荷物の上げ下ろしの障害がなく、触れて怪我するといったこともない。さらに、脆弱な部位がないので、折損などのトラブルも回避できる。
【0047】
(第2の実施形態)
【0048】
図7は、本発明の第2の実施形態に用いる連結器具40と、この連結器具に用いる連通具20とを示すとともに、これら2種類の部品からなる台車連結装置1´によって連結させる4台の台車を示すものである。なお、この実施形態では、連通具20として、第1の実施形態のものと同じものを使用しているので、これについての詳細説明は省略する。
【0049】
この連結器具40は、縦断面略T字形を有する形状であって、平面形状を有する本体部41と、この本体部41中央下面から下方に垂下する垂壁部42とを備えている。なお、この垂壁部42は、本体部41とは別体に形成されているものを、本体部41に対して溶接などにより一体に固着させている。
【0050】
連結器具40は、本体部41に挿通孔41Aが4個開口されており、台車100を最低2個から最大4個まで連結することができる。即ち、この連結器具40は、第1の実施形態と同様の連通具20(図7では、便宜上、連通具20を1個のみを記載してあるが、台車4台を連結させるには4つの連通具20又は棒状部材(手押棒など)が必要である。)を各挿通孔41Aに着脱可能になっている。
また、この連結器具40でも、第1実施形態で使用した抜脱防止手段30(ロック部材30A及びバーリング突起33)を使用し、ロック孔21Aに係止させるように連通具20に取り付けることで、連通具20を連結器具40の挿通孔41Aに対して抜け止めさせている。
【0051】
なお、この実施形態でも、第1の実施形態での条件式(4)と同じように、台車100の挿入孔102(内径D)、連結器具40の挿通孔41A(内径D´),連通具20の円柱部21(外径D)、及びこの連通具20の蓋部22(外径D)の間には、次の関係、
<D<D´<D ・・・(5)
を満たすように、各部品の内径寸法及び外径寸法が形成されている。
【0052】
従って、第1の実施形態と同様の方法を用いて、連結器具40及び連通具20を用いることで、2台の台車の連結・分離は勿論、3台(図8参照)や4台(図9参照)の台車100同士の連結や分離作業でも、大きな力を要せずに、極めて簡単な方法で行える。従って、第1の実施形態と同様、高齢の作業者や女性の作業者でも、台車の連結及び分離作業を、大きな力を要せずに簡単に実施できる。
【0053】
しかも、本実施形態でも、抜脱防止手段(ロック部材)のロックピン32を用いることで、連結器具40から連通具20が引き抜けないような構造となっている。従って、普段、台車連結装置1´を使わない場合でも、連通具20と連結器具40とがばらばらとなって連通具20などを失くしてしまうといった虞もなく、便宜である。
また、本実施形態によれば、万一、長期の使用などによって垂壁部42が本体部41との溶着部分で亀裂を生じたり、垂壁部42に変形、その他の不具合が生じたような場合であっても、連通具20を外した本体部41のみ補修若しくは交換だけでよい。そのため、修理・交換の際に連通具20に邪魔されずに実施でき、修理・交換作業が容易である。また、連結器具40を交換する際にも、連通具20ごと交換する必要が無いので、その分、コストの削減を図ることができ便宜である。
【0054】
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、公知発明並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成等も含まれる。また、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【符号の説明】
【0055】
1 台車連結装置
1´ 台車連結装置
10 連結器具
11 本体部
11A 挿通孔
11B 差込孔
12 側壁部
20 連通具
21 円柱部(柱部)
21A ロック孔
22 蓋部
22A 外周縁部
23A 係止部材
30 ロック部材(抜脱防止手段)
30A ロック部材
31A 翼
31B 翼
32 ロックピン
33 バーリング突起
40 連結器具
41 本体部
41A 挿通孔
42 垂壁部
100 台車
101 荷台
102 挿入孔
103 セレーション溝
200 手押棒(棒状部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9