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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】核酸分子およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20231219BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20231219BHJP
   C12Q 1/66 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12Q1/68
C12Q1/66
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019209470
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021078442
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000232092
【氏名又は名称】NECソリューションイノベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】皆川 宏貴
(72)【発明者】
【氏名】加藤 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 行大
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/052063(WO,A1)
【文献】特表2013-507941(JP,A)
【文献】特開2012-019784(JP,A)
【文献】特開2019-158777(JP,A)
【文献】国際公開第2017/081926(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C12Q 1/00-3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)または(b)のいずれか一方のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、クロモグラニンAに結合する核酸分子。
(a)配列番号1~8のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)前記(a)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、クロモグラニンAに結合するポリヌクレオチド
【請求項2】
前記ポリヌクレオチドにおいて、少なくとも1個のチミンが、修飾塩基であり、前記チミンの修飾塩基が、修飾チミンおよび修飾ウラシルの少なくとも一方である、請求項1記載の核酸分子。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチドにおいて、チミンの全塩基数のうち、20分の1以上が、修飾塩基であり、前記チミンの修飾塩基が、修飾チミンおよび修飾ウラシルの少なくとも一方である、請求項1または2記載の核酸分子。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチドにおいて、全チミンが、修飾塩基であり、前記チミンの修飾塩基が、修飾チミンおよび修飾ウラシルの少なくとも一方である、請求項1から3のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドが、DNAである、請求項1から4のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の核酸分子を含むことを特徴とする、クロモグラニンAの検出試薬。
【請求項7】
さらに、標識物質を有し、
前記標識物質が、前記核酸分子に結合されている、請求項6記載の検出試薬。
【請求項8】
前記標識物質が、酵素である、請求項7記載の検出試薬。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか一項に記載の核酸分子、または請求項6から8のいずれか一項に記載の検出試薬と、試料とを接触させ、前記試料中のクロモグラニンAと、前記核酸分子または前記検出試薬との複合体を形成させる工程、および、
前記複合体を検出する工程を含むことを特徴とする、クロモグラニンAの検出方法。
【請求項10】
前記検出が、定性分析または定量分析である、請求項9記載の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロモグラニンAに結合する核酸分子およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
クロモグラニンA(chromogranin A;CgA)は、副腎髄質クロム親和性細胞や交感神経ニューロン等から分泌される糖タンパク質である。近年、クロモグラニンAをストレスマーカーとして、ストレスの計測及び評価等に用いる研究が進められている(非特許文献1及び2)。また、クロモグラニンAの分析方法として、クロモグラニンAを抗原とする抗体を使用した分析方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】三木, 労働安全衛生研究,1(1), 59-62, (2008)
【文献】脇田ほか, ストレスマーカーの迅速アッセイ, ぶんせき, 6, 309-316, (2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、抗体は、タンパク質であり、安定性に問題があるため、低コストで簡易な検査法に抗体を用いることが難しい。また、電気泳動やニトロセルロース膜へのブロッティング等が必要であり、操作が煩雑である。このため、抗体に代えて、抗原と特異的に結合する核酸分子が求められている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、クロモグラニンAに結合する新たな核酸分子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の核酸分子は、下記(a)または(b)のいずれか一方のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、クロモグラニンAに結合する核酸分子である。
(a)配列番号1~8のいずれかの塩基配列または配列番号1~8のいずれかの塩基配列の部分配列からなるポリヌクレオチド
(b)前記(a)の塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、クロモグラニンAに結合するポリヌクレオチド
【0007】
本発明のクロモグラニンAの検出試薬は、前記本発明の核酸分子を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明のクロモグラニンAの検出方法は、前記本発明の核酸分子、または前記本発明の検出試薬と、試料とを接触させ、前記試料中のクロモグラニンAと、前記核酸分子または前記検出試薬との複合体を形成させる工程、および、
前記複合体を検出する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の核酸分子は、クロモグラニンAに結合可能である。このため、本発明の核酸分子によれば、試料中のクロモグラニンAとの結合の有無によって、クロモグラニンAを検出できる。したがって、本発明の核酸分子は、例えば、医薬等の分野において、クロモグラニンAの検出に、極めて有用なツールといえる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施例1における、アプタマー1の推定二次構造である。
図2図2は、本発明の実施例1における、アプタマー2の推定二次構造である。
図3図3は、本発明の実施例1における、アプタマー3の推定二次構造である。
図4図4は、本発明の実施例1における、アプタマー4の推定二次構造である。
図5図5は、本発明の実施例1における、アプタマー5の推定二次構造である。
図6図6は、本発明の実施例1における、アプタマー6の推定二次構造である。
図7図7は、本発明の実施例1における、アプタマー7の推定二次構造である。
図8図8は、本発明の実施例1における、アプタマー8の推定二次構造である。
図9図9は、本発明の実施例1における、クロモグラニンAに対するアプタマー1~8の結合性を示すグラフである。
図10図10は、本発明の実施例1における、クロモグラニンAに対するアプタマー1~8の結合性を示すグラフである。
図11図11は、本発明の実施例2における、クロモグラニンAに対するアプタマー1~8の結合性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)核酸分子
本発明の核酸分子は、前述のように、下記(a)または(b)のいずれか一方のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、クロモグラニンAに結合する核酸分子である。
(a)配列番号1~8のいずれかの塩基配列もしくは配列番号1~8のいずれかの塩基配列の部分配列からなるポリヌクレオチド
(b)前記(a)の塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、クロモグラニンAに結合するポリヌクレオチド
【0012】
本発明において、ターゲットは、クロモグラニンAである。クロモグラニンA(UniProtID:P10645)は、51kDaの糖タンパク質である。本発明の核酸について、例えば、結合能を確認するためのクロモグラニンAとして、市販のクロモグラニンAが使用でき、具体例として、Recombinant full length Human Chromogranin A (Creative BioMart、#CHGA-26904TH)が例示できる。クロモグラニンAは、例えば、ヒト由来クロモグラニンAである。クロモグラニンAは、例えば、変性が生じていない未変性タンパク質でもよいし、加熱等による変性が生じた変性タンパク質でもよい。
【0013】
本発明の核酸分子は、前述のように、クロモグラニンAに結合可能である。本発明において、「クロモグラニンAに結合する」とは、例えば、クロモグラニンAに対する結合性を有している、または、クロモグラニンAに対する結合活性を有しているともいう。本発明の核酸分子とクロモグラニンAとの結合は、例えば、表面プラズモン共鳴分子相互作用(SPR;Surface Plasmon resonance)解析等により決定できる。前記解析は、例えば、BIACORE3000(商品名、GE Healthcare UK Ltd.)が使用できる。本発明の核酸分子は、クロモグラニンAに結合することから、例えば、クロモグラニンAの検出に使用できる。
【0014】
本発明の核酸分子は、クロモグラニンAに対する結合力を示す解離定数が、例えば、80nM以下、60nM以下、50nM以下、40nM以下、15nM以下である。
【0015】
本発明の核酸分子は、DNA分子、またはDNAアプタマーともいう。本発明の核酸分子は、例えば、前記(a)または(b)のいずれか一方のポリヌクレオチドからなる分子でもよいし、前記ポリヌクレオチドを含む分子でもよい。
【0016】
前記(a)のポリヌクレオチドは、前述のように、前記配列番号1~8のいずれかの塩基配列もしくは前記配列番号1~8のいずれかの塩基配列の部分配列からなるポリヌクレオチドである。前記配列番号1~8のポリヌクレオチドを以下に示す。
【0017】
アプタマー1:CgA_s1(配列番号1)
GGTTATCCGAGGAGCCGCAATATCTTACACCCTGCCTTCCCCCCTGTCCGCATCGAAACTACCCTGCCCGTGTATTG
アプタマー2:CgA_s2(配列番号2)
GGTTATCCGAGGAGCCGCAATATCAACACTGCCCACCCTTCTACCCATGGCCGCGAAACTACCCTGCCCGTGTATTG
アプタマー3:CgA_s3(配列番号3)
GGTTATCCGAGGAGCCGCAATATCTACCCTGTCCCCTCCTGCTTTCCAGCCTGTGAAACTACCCTGCCCGTGTATTG
アプタマー4:CgA_s4(配列番号4)
GGTTATCCGAGGAGCCGCAATATCACTACCCGCCTTCTTCTACCCTGTCCTCTTGAAACTACCCTGCCCGTGTATTG
アプタマー5:CgA_s5(配列番号5)
GGTTATCCGAGGAGCCGCAATATCTCTCCCCCTCCTTTCCTTCTCCTTGCCCGTGAAACTACCCTGCCCGTGTATTG
アプタマー6:CgA_s6(配列番号6)
GGTTATCCGAGGAGCCGCAATATCAAACTACCCGTCCTCTCCCGTCCCGCCGCCGAAACTACCCTGCCCGTGTATTG
アプタマー7:CgA_s9(配列番号7)
GGTTATCCGAGGAGCCGCAATATCACTACCCTTCGCCCTTTCCCTCTCCATGCTGAAACTACCCTGCCCGTGTATTG
アプタマー8:CgA_s10(配列番号8)
GGTTATCCGAGGAGCCGCAATATCACCCTACCTGACCATCTCGCCCGTCTCTCTGAAACTACCCTGCCCGTGTATTG
【0018】
前記(b)において、「同一性」は、特に制限されず、例えば、前記(b)のポリヌクレオチドが、クロモグラニンAに結合する範囲であればよい。前記同一性は、例えば、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、96%以上、97%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。前記同一性は、例えば、BLAST、FASTA等の解析ソフトウェアを用いて、デフォルトのパラメータにより算出できる(以下、同様)。
【0019】
本発明の核酸分子における前記ポリヌクレオチドは、例えば、下記(c)または(d)のポリヌクレオチドでもよい。この場合、本発明の核酸分子は、例えば、前記(c)または(d)のポリヌクレオチドからなる分子でもよいし、前記ポリヌクレオチドを含む分子でもよい。
(c)前記(a)の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに相補的な塩基配列からなり、クロモグラニンAに結合するポリヌクレオチド
(d)前記(a)の塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、クロモグラニンAに結合するポリヌクレオチド
【0020】
前記(c)において、「ハイブリダイズするポリヌクレオチド」は、特に制限されず、例えば、前記(a)の塩基配列に対して、完全または部分的に相補的なポリヌクレオチドである。前記ハイブリダイズは、例えば、各種ハイブリダイゼーションアッセイにより検出できる。前記ハイブリダイゼーションアッセイは、特に制限されず、例えば、ザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd Ed.)」〔Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等に記載されている方法を採用することもできる。
【0021】
前記(c)において、「ストリンジェントな条件」は、例えば、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件、高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。ストリンジェンシーの程度は、当業者であれば、例えば、温度、塩濃度、プローブの濃度および長さ、イオン強度、時間等の条件を適宜選択することで、設定可能である。「ストリンジェントな条件」は、例えば、前述したザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd Ed.)」〔Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等に記載の条件を採用することもできる。
【0022】
前記(d)において、「1もしくは数個」は、例えば、前記(d)のポリヌクレオチドが、クロモグラニンAに結合する範囲であればよい。前記「1もしくは数個」は、前記(a)の塩基配列において、例えば、1~10個、好ましくは1~7個、より好ましくは1~5個、さらに好ましくは1~3個、特に好ましくは1または2個である。
【0023】
本発明の核酸分子は、例えば、前記(a)~(d)のいずれかのポリヌクレオチドの配列を1つ含んでもよいし、前記ポリヌクレオチドの配列を複数含んでもよい。後者の場合、複数のポリヌクレオチドの配列が連結して、一本鎖のポリヌクレオチドを形成していることが好ましい。前記複数のポリヌクレオチドの配列は、例えば、それぞれが直接的に連結してもよいし、リンカーを介して、それぞれが間接的に連結してもよい。前記ポリヌクレオチドの配列は、それぞれの末端において、直接的または間接的に連結していることが好ましい。前記複数のポリヌクレオチドの配列は、例えば、同じでもよいし、異なってもよいが、好ましくは同じである。前記ポリヌクレオチドの配列を複数含む場合、前記配列の数は、特に制限されず、例えば、2以上であり、好ましくは2~12であり、より好ましくは2~6であり、さらに好ましくは2である。
【0024】
前記リンカーは、例えば、ポリヌクレオチドがあげられ、その構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基があげられる。前記ヌクレオチド残基は、例えば、リボヌクレオチド残基、デオキシリボヌクレオチド残基があげられる。前記リンカーの長さは、特に制限されず、例えば、1~24塩基長であり、好ましくは12~24塩基長であり、より好ましくは16~24塩基長であり、さらに好ましくは20~24塩基長である。
【0025】
本発明の核酸分子において、前記ポリヌクレオチドは、一本鎖ポリヌクレオチドであることが好ましい。前記一本鎖ポリヌクレオチドは、例えば、自己アニーリングによりステム構造およびループ構造を形成可能であることが好ましい。前記ポリヌクレオチドは、例えば、ステムループ構造、インターナルループ構造および/またはバルジ構造等を形成可能であることが好ましい。
【0026】
本発明の核酸分子は、例えば、二本鎖でもよい。二本鎖の場合、例えば、一方の一本鎖ポリヌクレオチドは、前記(a)~(d)のいずれかのポリヌクレオチドであり、他方の一本鎖ポリヌクレオチドは、制限されない。前記他方の一本鎖ポリヌクレオチドは、例えば、前記(a)~(d)のいずれかのポリヌクレオチドに相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドがあげられる。本発明の核酸分子が二本鎖の場合、例えば、使用に先立って、変性等により、一本鎖ポリヌクレオチドに解離させることが好ましい。また、解離した前記(a)~(d)のいずれかの一本鎖ポリヌクレオチドは、例えば、前述のように、ステム構造およびループ構造を形成していることが好ましい。
【0027】
本発明において、「ステム構造およびループ構造を形成可能」とは、例えば、実際にステム構造およびループ構造を形成すること、ならびに、ステム構造およびループ構造が形成されていなくても、条件によってステム構造およびループ構造を形成可能なことも含む。「ステム構造およびループ構造を形成可能」とは、例えば、実験的に確認した場合、および、コンピュータ等のシミュレーションで予測した場合の双方を含む。
【0028】
本発明の核酸分子の構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基である。前記核酸分子の長さは、特に制限されず、その下限は、例えば、15塩基長であり、好ましくは75塩基長または80塩基長であり、その上限は、例えば、1000塩基長であり、好ましくは200塩基長、100塩基長または90塩基長である。
【0029】
前記ヌクレオチド残基は、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基およびリボヌクレオチド残基があげられる。本発明の核酸分子は、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基のみから構成されるDNA、1もしくは数個のリボヌクレオチド残基を含むDNA等があげられる。後者の場合、「1もしくは数個」は、特に制限されず、例えば、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1~3個である。本発明において、塩基数および配列数等の個数の数値範囲は、例えば、その範囲に属する正の整数を全て開示するものである。つまり、例えば、「1~3塩基」との記載は、「1、2、3塩基」の全ての開示を意味する(以下、同様)。
【0030】
前記ポリヌクレオチドは、例えば、少なくとも1個の修飾塩基を含む。前記修飾塩基は、特に制限されず、例えば、天然塩基(非人工塩基)が修飾された塩基があげられ、前記天然塩基と同様の機能を有することが好ましい。前記天然塩基は、特に制限されず、例えば、プリン骨格を有するプリン塩基、ピリミジン骨格を有するピリミジン塩基等があげられる。前記プリン塩基は、特に制限されず、例えば、アデニン(a)、グアニン(g)があげられる。前記ピリミジン塩基は、特に制限されず、例えば、シトシン(c)、チミン(t)、ウラシル(u)等があげられる。前記塩基の修飾部位は、特に制限されない。前記塩基がプリン塩基の場合、前記プリン塩基の修飾部位は、例えば、前記プリン骨格の7位および8位があげられる。前記塩基がピリミジン塩基の場合、前記ピリミジン塩基の修飾部位は、例えば、前記ピリミジン骨格の5位および6位があげられる。前記ピリミジン骨格において、4位の炭素に「=O」が結合し、5位の炭素に「-CH」または「-H」以外の基が結合している場合、修飾ウラシルまたは修飾チミンということができる。
【0031】
前記修飾塩基の修飾基は、特に制限されず、例えば、メチル基、フルオロ基、アミノ基、チオ基、下記式(1)のベンジルアミノカルボニル基(benzylaminocarbonyl)、下記式(2)のトリプタミノカルボニル基(tryptaminocarbonyl)およびイソブチルアミノカルボニル基(isobutylaminocarbonyl)等があげられる。
【化1】
【化2】
【0032】
前記修飾塩基は、特に制限されず、例えば、アデニンが修飾された修飾アデニン、チミンが修飾された修飾チミン、グアニンが修飾された修飾グアニン、シトシンが修飾された修飾シトシンおよびウラシルが修飾された修飾ウラシル等があげられ、前記修飾チミン、前記修飾ウラシルおよび前記修飾シトシンが好ましい。
【0033】
前記修飾アデニンの具体例としては、例えば、7’-デアザアデニン等があげられる。
【0034】
前記修飾グアニンの具体例としては、例えば、7’-デアザグアニン等があげられる。
【0035】
前記修飾シトシンの具体例としては、例えば、5’-メチルシトシン等があげられる。
【0036】
前記修飾チミンの具体例としては、例えば、5’-ベンジルアミノカルボニルチミン、5’-トリプタミノカルボニルチミン、5’-イソブチルアミノカルボニルチミン等があげられる。
【0037】
前記修飾ウラシルの具体例としては、例えば、5’-ベンジルアミノカルボニルウラシル(BndU)、5’-トリプタミノカルボニルウラシル(TrpdU)および5’-イソブチルアミノカルボニルウラシル等があげられる。
【0038】
前記ポリヌクレオチドは、特に制限されず、例えば、いずれか1種類の前記修飾塩基のみを含んでもよいし、2種類以上の前記修飾塩基を含んでもよい。
【0039】
前記修飾塩基の個数は、特に制限されない。前記ポリヌクレオチドにおいて、前記修飾塩基の個数は、例えば、1個以上である。前記修飾塩基は、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1~80個、好ましくは1~70個、より好ましくは1~50個、さらに好ましくは1~40個、特に好ましくは1~30個、最も好ましくは1~20個であり、また、全ての塩基が、前記修飾塩基でもよい。前記修飾塩基の個数は、例えば、いずれか1種類の前記修飾塩基の個数であってもよいし、2種類以上の前記修飾塩基の個数の合計であってもよい。また、前記ポリヌクレオチドを含む前記核酸分子の全長における前記修飾塩基も、特に制限されず、例えば、1~80個、1~50個、1~20個であり、好ましくは、前述の範囲と同様である。
【0040】
前記ポリヌクレオチドにおいて、前記修飾塩基の割合は、特に制限されない。前記修飾塩基の割合は、前記ポリヌクレオチドの全塩基数のうち、例えば、1/100以上、好ましくは1/40以上、より好ましくは1/20以上、さらに好ましくは1/10以上、特に好ましくは1/4以上、最も好ましくは1/3以上である。また、前記ポリヌクレオチドを含む前記核酸分子の全長における前記修飾塩基の割合も、特に制限されず、前述の範囲と同様である。ここで、前記全塩基数は、例えば、前記ポリヌクレオチドにおける天然塩基の個数と前記修飾塩基の個数の合計である。前記修飾塩基の割合を分数で示すが、これを満たす全塩基数と修飾塩基数とは、それぞれ正の整数である。
【0041】
前記ポリヌクレオチドにおける前記修飾塩基が、前記修飾チミンの場合、前記修飾チミンの個数は、特に制限されない。前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、天然チミンは、前記修飾チミンに置換できる。前記ポリヌクレオチドにおいて、前記修飾チミンの個数は、例えば、1個以上である。前記修飾チミンは、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1~80個、好ましくは1~70個、より好ましくは1~50個、さらに好ましくは1~40個、特に好ましくは1~30個、最も好ましくは1~21個であり、また、全てのチミンが、前記修飾チミンでもよい。
【0042】
前記ポリヌクレオチドにおいて、前記修飾チミンの割合は、特に制限されない。前記修飾チミンの割合は、前記天然チミンの個数と前記修飾チミンの個数との合計のうち、例えば、1/100以上、好ましくは1/40以上、より好ましくは1/20以上、さらに好ましくは1/10以上、特に好ましくは1/4以上、最も好ましくは1/3以上である。
【0043】
前記ポリヌクレオチドにおける前記修飾塩基が、前記修飾ウラシルの場合、前記修飾ウラシルの個数は、特に制限されない。前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、天然チミンは、前記修飾ウラシルに置換できる。前記ポリヌクレオチドにおいて、前記修飾ウラシルの個数は、例えば、1個以上である。前記修飾ウラシルは、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1~80個、好ましくは1~70個、より好ましくは1~50個、さらに好ましくは1~40個、特に好ましくは1~30個、最も好ましくは1~21個であり、また、全てのウラシルが、前記修飾ウラシルでもよい。
【0044】
前記ポリヌクレオチドにおいて、前記修飾ウラシルの割合は、特に制限されない。前記修飾ウラシルの割合は、前記天然チミンの個数と前記修飾ウラシルの個数との合計のうち、例えば、1/100以上、好ましくは1/40以上、より好ましくは1/20以上、さらに好ましくは1/10以上、特に好ましくは1/4以上、最も好ましくは1/3以上である。
【0045】
前記修飾チミンと前記修飾ウラシルの個数の例示は、例えば、両者をあわせた個数であってもよい。
【0046】
前記ポリヌクレオチドにおける前記修飾塩基が、前記修飾シトシンの場合、前記修飾シトシンの個数は、特に制限されない。前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、天然シトシンは、前記修飾シトシンに置換できる。前記ポリヌクレオチドにおいて、前記修飾シトシンの個数は、例えば、1個以上である。前記修飾シトシンは、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1~80個、好ましくは1~70個、より好ましくは1~50個、さらに好ましくは1~40個、特に好ましくは1~30個、最も好ましくは1~21個であり、であり、また、全てのシトシンが、前記修飾シトシンでもよい。
【0047】
前記ポリヌクレオチドにおいて、前記修飾シトシンの割合は、特に制限されない。前記修飾シトシンの割合は、前記天然シトシンの個数と前記修飾シトシンの個数との合計のうち、例えば、1/100以上、好ましくは1/40以上、より好ましくは1/20以上、さらに好ましくは1/10以上、特に好ましくは1/4以上、最も好ましくは1/3以上である。
【0048】
前記修飾塩基が、前記修飾アデニンまたは前記修飾グアニンの場合、前記修飾シトシンの個数および割合の説明において、「シトシン」および「修飾シトシン」を、それぞれ「アデニン」および「修飾アデニン」または「グアニン」および「修飾グアニン」に読み替えて援用できる。前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、天然アデニンは、前記修飾アデニンに置換でき、例えば、天然グアニンは、前記修飾グアニンに置換できる。
【0049】
本発明の核酸分子は、修飾ヌクレオチドを含んでもよい。前記修飾ヌクレオチドは、前述の前記修飾塩基を有するヌクレオチドでもよいし、糖残基が修飾された修飾糖を有するヌクレオチドでもよいし、前記修飾塩基および前記修飾糖を有するヌクレオチドでもよい。
【0050】
前記糖残基は、特に制限されず、例えば、デオキシリボース残基またはリボース残基があげられる。前記糖残基における修飾部位は、特に制限されず、例えば、前記糖残基の2’位または4’位があげられ、いずれか一方でも両方が修飾されてもよい。前記修飾糖の修飾基は、例えば、メチル基、フルオロ基、アミノ基、チオ基等があげられる。
【0051】
前記修飾ヌクレオチド残基において、塩基がピリミジン塩基の場合、例えば、前記糖残基の2’位および/または4’位が修飾されていることが好ましい。前記修飾ヌクレオチド残基の具体例は、例えば、デオキシリボース残基またはリボース残基の2’位が修飾された、2’-メチル化-ウラシルヌクレオチド残基、2’-メチル化-シトシンヌクレオチド残基、2’-フルオロ化-ウラシルヌクレオチド残基、2’-フルオロ化-シトシンヌクレオチド残基、2’-アミノ化-ウラシルヌクレオチド残基、2’-アミノ化-シトシンヌクレオチド残基、2’-チオ化-ウラシルヌクレオチド残基、2’-チオ化-シトシンヌクレオチド残基等があげられる。
【0052】
前記修飾ヌクレオチドの個数は、特に制限されず、例えば、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1~80個、好ましくは1~70個、より好ましくは1~50個、さらに好ましくは1~40個、特に好ましくは1~30個、最も好ましくは1~21個である。また、前記ポリヌクレオチドを含む前記核酸分子の全長における前記修飾ヌクレオチドも、特に制限されず、例えば、1~80個、1~50個、1~20個であり、好ましくは、前述の範囲と同様である。
【0053】
本発明の核酸分子は、例えば、1もしくは数個の人工核酸モノマー残基を含んでもよい。前記「1もしくは数個」は、特に制限されず、例えば、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1~80個、好ましくは1~70個、より好ましくは1~50個、さらに好ましくは1~40個、特に好ましくは1~30個、最も好ましくは1~21個である。前記人工核酸モノマー残基は、例えば、PNA(ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)、ENA(2’-O,4’-C-Ethylenebridged Nucleic Acids)等があげられる。前記モノマー残基における核酸は、例えば、前述と同様である。また、前記ポリヌクレオチドを含む前記核酸分子の全長における前記人工核酸モノマー残基も、特に制限されず、例えば、1~80個、1~50個、1~20個であり、好ましくは、前述の範囲と同様である。
【0054】
本発明の核酸分子は、例えば、ヌクレアーゼ耐性であることが好ましい。本発明の核酸分子は、ヌクレアーゼ耐性のため、例えば、前記修飾ヌクレオチド残基および/または前記人工核酸モノマー残基を有することが好ましい。本発明の核酸分子は、ヌクレアーゼ耐性のため、例えば、5’末端または3’末端に、数10kDaのPEG(ポリエチレングリコール)またはデオキシチミジン等が結合してもよい。
【0055】
本発明の核酸分子は、例えば、さらに付加配列を有してもよい。前記付加配列は、例えば、前記核酸分子の5’末端および3’末端の少なくとも一方に結合していることが好ましく、より好ましくは3’末端である。前記付加配列は、特に制限されない。前記付加配列の長さは、特に制限されず、例えば、1~200塩基長であり、好ましくは1~50塩基長であり、より好ましくは1~25塩基長、さらに好ましくは18~24塩基長である。前記付加配列の構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基であり、デオキシリボヌクレオチド残基およびリボヌクレオチド残基等があげられる。前記付加配列は、特に制限されず、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基からなるDNA、リボヌクレオチド残基を含むDNA等のポリヌクレオチドがあげられる。前記付加配列の具体例として、例えば、ポリdT、ポリdA等があげられる。
【0056】
本発明の核酸分子は、例えば、担体に固定化して使用できる。前記本発明の核酸分子は、例えば、5’末端および3’末端のいずれかを固定化することができる。本発明の核酸分子を固定化する場合、例えば、前記核酸分子は、前記担体に、直接的に固定化してもよいし、間接的に固定化してもよい。後者の場合、本発明の核酸分子は、例えば、前記付加配列を介して、前記担体に固定化する。前記担体は、例えば、ビーズ、プレート、フィルター、カラム、基板、容器等があげられる。
【0057】
本発明の核酸分子は、例えば、さらに標識物質を有してもよく、具体的には、前記核酸分子に前記標識物質が結合してもよい。前記標識物質が結合した前記核酸分子は、例えば、本発明の核酸センサということもできる。前記標識物質は、例えば、前記核酸分子の5’末端および3’末端の少なくとも一方に結合させてもよい。前記標識物質による標識化は、例えば、結合でもよいし、化学修飾でもよい。前記標識物質は、特に制限されず、例えば、酵素、蛍光物質、色素、同位体、薬物、毒素および抗生物質等があげられる。前記酵素は、例えば、ルシフェラーゼ、SA-Luciaルシフェラーゼ等があげられる。前記蛍光物質は、例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3色素、Cy5色素、FAM色素、ローダミン色素、テキサスレッド色素、JOE、MAX、HEX、TYE等の蛍光団があげられ、前記色素は、例えば、Alexa488、Alexa647等のAlexa色素等があげられる。前記標識物質は、例えば、前記核酸分子に直接的に連結してもよいし、リンカーを介して、間接的に連結してもよい。前記リンカーは、特に制限されず、例えば、ポリヌクレオチドのリンカー等である。
【0058】
本発明の核酸分子の製造方法は、特に制限されず、例えば、化学合成を利用した核酸合成方法、遺伝子工学的手法等の公知の方法等により合成できる。
【0059】
本発明の核酸分子は、前述のように、クロモグラニンAに結合性を示す。このため、本発明の核酸分子の用途は、クロモグラニンAへの結合性を利用する用途であれば、特に制限されない。本発明の核酸分子は、例えば、クロモグラニンAに対する抗体に代えて、種々の方法に使用できる。
【0060】
本発明の核酸分子によれば、クロモグラニンAを検出できる。クロモグラニンAの検出方法は、特に制限されず、クロモグラニンAと前記核酸分子との結合を検出することによって行える。
【0061】
(2)検出試薬およびキット
本発明の検出試薬は、前述のように、クロモグラニンAの検出試薬であって、前記本発明の核酸分子を含むことを特徴とする。本発明の検出試薬は、前記本発明の核酸分子を含んでいればよく、その他の構成は何ら制限されない。本発明の検出試薬を使用すれば、前述のように、例えば、クロモグラニンAの検出等を行うことができる。本発明の検出試薬は、例えば、クロモグラニンAへの結合剤ともいえる。
【0062】
本発明の検出試薬は、例えば、さらに、標識物質を有し、前記標識物質が、前記核酸分子に結合されてもよい。前記標識物質は、例えば、前記本発明の核酸分子における説明を援用できる。また、本発明の検出試薬は、例えば、担体を有し、前記担体に前記核酸分子が固定化されてもよい。前記担体は、例えば、前記本発明の核酸分子における説明を援用できる。
【0063】
本発明の検出キットは、前記本発明の核酸分子または前記本発明の検出試薬を含む。本発明の検出キットは、例えば、さらに、その他の構成要素を含んでもよい。前記構成要素は、例えば、前記試料を調製するための緩衝液、使用説明書等があげられる。また、後述する本発明の検出方法に示す、前記核酸分子に標識物質であるルシフェラーゼを結合させた核酸センサと、標識化担体とを用いる方法の場合、本発明の検出キットは、例えば、前記核酸センサと、クロモグラニンA標識化担体とを含むキットとすることができる。
【0064】
本発明の検出試薬および検出キットは、例えば、前記本発明の核酸分子の説明を援用でき、また、その使用方法についても、前記本発明の核酸分子および後述する前記本発明の検出方法を援用できる。
【0065】
(3)検出方法
本発明のクロモグラニンAの検出方法は、前述のように、前記本発明の核酸分子、または前記本発明の検出試薬と、試料とを接触させ、前記試料中のクロモグラニンAと、前記核酸分子または前記検出試薬との複合体を形成させる工程、および、前記複合体を検出する工程を含むことを特徴とする。本発明の検出方法は、前記本発明の核酸分子または前記検出試薬を使用することが特徴であって、その他の工程および条件等は、特に制限されない。以下、本発明の核酸分子の使用を例にあげて説明するが、本発明の核酸分子は、本発明の検出試薬と読み替え可能である。
【0066】
本発明によれば、前記本発明の核酸分子が、クロモグラニンAに特異的に結合することから、例えば、クロモグラニンAと、前記核酸分子または前記検出試薬との結合を検出することによって、試料中のクロモグラニンAを特異的に検出可能である。具体的には、例えば、試料中のクロモグラニンAの量を分析可能であることから、定性分析または定量分析も可能といえる。
【0067】
本発明において、前記試料は、特に制限されない。前記試料は、例えば、だ液、血しょう、血清、尿等があげられる。
【0068】
前記試料は、例えば、液体試料でもよいし、固体試料でもよい。前記試料は、例えば、前記核酸分子と接触させ易く、取扱いが簡便であることから、液体試料が好ましい。前記固体試料の場合、例えば、溶媒を用いて、混合液、抽出液、溶解液等を調製し、これを使用してもよい。前記溶媒は、特に制限されず、例えば、水、生理食塩水、緩衝液等があげられる。
【0069】
本発明の検出方法について、本発明の核酸分子として、標識物質で標識化された本発明の核酸センサを使用し、クロモグラニンAを検出する方法を例にあげて説明する。なお、本発明は、これらの例示には制限されない。
【0070】
前記検出工程は、例えば、さらに、前記複合体の検出結果に基づいて、前記試料中のクロモグラニンAの有無または量を分析する工程を含む。
【0071】
前記複合体形成工程において、前記試料と前記核酸分子との接触方法は、特に制限されない。前記試料と前記核酸分子との接触は、例えば、液体中で行われることが好ましい。前記液体は、特に制限されず、例えば、水、生理食塩水、緩衝液等があげられる。
【0072】
前記複合体形成工程において、前記試料と前記核酸分子との接触条件は、特に制限されない。接触温度は、例えば、4~37℃であり、好ましくは18~25℃であり、接触時間は、例えば、10~120分であり、好ましくは30~60分である。
【0073】
前記複合体形成工程において、前記核酸分子は、例えば、担体に固定化された固定化核酸分子(固相担体)でもよいし、未固定の遊離した核酸分子でもよい。後者の場合、例えば、容器内で、前記試料と接触させる。前者の場合、前記担体は、特に制限されず、例えば、プレート、フィルター、カラム、基板、ビーズ、容器等があげられ、前記容器は、例えば、マイクロプレート、チューブ等があげられる。前記核酸分子の固定化は、例えば、前述の通りである。
【0074】
前記検出工程は、前述のように、前記試料中のクロモグラニンAと前記核酸分子との結合を検出する工程である。前記両者の結合の有無を検出することによって、例えば、前記試料中のクロモグラニンAの有無を分析(定性)でき、また、前記両者の結合の程度(結合量)を検出することによって、例えば、前記試料中のクロモグラニンAの量を分析(定量)できる。
【0075】
クロモグラニンAと前記核酸分子との結合の検出方法は、特に制限されない。前記方法は、例えば、物質間の結合を検出する従来公知の方法が採用でき、具体例として、前述のSPR等があげられる。
【0076】
そして、クロモグラニンAと前記核酸分子との結合が検出できなかった場合は、前記試料中にクロモグラニンAは存在しないと判断でき、前記結合が検出された場合は、前記試料中にクロモグラニンAが存在すると判断できる。また、予め、クロモグラニンAの濃度と結合量との相関関係を求めておき、前記相関関係に基づいて、前記結合量から、前記試料中のクロモグラニンAの濃度を分析することもできる。
【0077】
クロモグラニンAと前記核酸分子との結合の検出について、一例として、前記核酸分子に標識物質であるルシフェラーゼを結合させた核酸センサと、クロモグラニンA標識化担体とを用いる方法を、以下に示す。
【0078】
まず、前記核酸センサと前記試料とを混合する。これにより、前記試料中にクロモグラニンAが存在する場合、前記核酸センサにおける前記核酸分子は、ターゲットであるクロモグラニンAと結合する。他方、前記試料中にクロモグラニンAが存在しない場合、前記核酸センサにおける核酸分子は、ターゲットと未結合の状態となる。
【0079】
つぎに、前記混合物を、前記クロモグラニンA標識化担体に接触させた後、前記クロモグラニンA標識化担体を除去する。前記担体は、例えば、ビーズがあげられる。前記混合物において、前記核酸センサがクロモグラニンAと結合している場合、前記核酸センサにおける前記核酸分子は、前記クロモグラニンA標識化担体におけるクロモグラニンAとは結合できない。このため、前記クロモグラニンA標識化担体を除去した画分に対して、ルシフェラーゼの基質を添加して発光反応を行った場合、前記核酸センサにおけるルシフェラーゼの触媒反応によって、発光が生じる。他方、前記混合物において、前記核酸センサがクロモグラニンAと結合していない場合、前記核酸センサにおける前記核酸分子は、前記クロモグラニンA標識化担体におけるクロモグラニンAと結合する。このため、前記クロモグラニンA標識化担体の除去により、前記核酸センサも、前記クロモグラニンA標識化担体に結合した状態で除去されることになる。このため、前記クロモグラニンA標識化担体を除去した画分に対して、ルシフェラーゼの基質を添加して発光反応を行った場合、前記核酸センサが存在していないことから、ルシフェラーゼの触媒反応による発光は生じない。このため、発光の有無によって、試料中のクロモグラニンAの有無を分析(定性分析)することができる。また、試料中のクロモグラニンAの量と、前記クロモグラニンA標識化担体を除去した後の前記画分に残存する前記核酸センサの量とは、相関関係を有するため、発光の強弱によって、試料中のクロモグラニンAの量も分析(定量分析)することができる。
【0080】
本発明によれば、前述のように、クロモグラニンAを検出できる。また、本発明によれば、クロモグラニンAの検出により、例えば、間接的に、ストレス応答を計測することも可能である。
【実施例
【0081】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコルに基づいて使用した。
【0082】
[実施例1]
本発明のアプタマーについて、クロモグラニンAに対する結合性を、SPR解析により確認した。
【0083】
(1)アプタマー
下記ポリヌクレオチドのアプタマー1~8を、実施例1のアプタマーとして合成した。
【0084】
アプタマー1:CgA_s1(配列番号1)
GGTTATCCGAGGAGCCGCAATATCTTACACCCTGCCTTCCCCCCTGTCCGCATCGAAACTACCCTGCCCGTGTATTG
アプタマー2:CgA_s2(配列番号2)
GGTTATCCGAGGAGCCGCAATATCAACACTGCCCACCCTTCTACCCATGGCCGCGAAACTACCCTGCCCGTGTATTG
アプタマー3:CgA_s3(配列番号3)
GGTTATCCGAGGAGCCGCAATATCTACCCTGTCCCCTCCTGCTTTCCAGCCTGTGAAACTACCCTGCCCGTGTATTG
アプタマー4:CgA_s4(配列番号4)
GGTTATCCGAGGAGCCGCAATATCACTACCCGCCTTCTTCTACCCTGTCCTCTTGAAACTACCCTGCCCGTGTATTG
アプタマー5:CgA_s5(配列番号5)
GGTTATCCGAGGAGCCGCAATATCTCTCCCCCTCCTTTCCTTCTCCTTGCCCGTGAAACTACCCTGCCCGTGTATTG
アプタマー6:CgA_s6(配列番号6)
GGTTATCCGAGGAGCCGCAATATCAAACTACCCGTCCTCTCCCGTCCCGCCGCCGAAACTACCCTGCCCGTGTATTG
アプタマー7:CgA_s9(配列番号7)
GGTTATCCGAGGAGCCGCAATATCACTACCCTTCGCCCTTTCCCTCTCCATGCTGAAACTACCCTGCCCGTGTATTG
アプタマー8:CgA_s10(配列番号8)
GGTTATCCGAGGAGCCGCAATATCACCCTACCTGACCATCTCGCCCGTCTCTCTGAAACTACCCTGCCCGTGTATTG
【0085】
アプタマー1~8の推定二次構造を、それぞれ、図1~8に示す。ただし、これには限定されない。
【0086】
前記アプタマーは、その3’末端に、20塩基長のポリデオキシアデニン(ポリdA)を付加し、ポリdA付加アプタマーとして、後述するSPRに使用した。前記ポリdA付加アプタマーは、95℃、5分の条件で熱変性させたものを使用した。
【0087】
(2)試料
クロモグラニンA(Recombinant full length Human Chromogranin A、Creative BioMart、#CHGA-26904TH)を、SB1Tバッファーに懸濁し、一晩溶解させた後、遠心(12,000rpm、15分、室温)し分離した。前記分離した上清を、クロモグラニンAを含む抽出液として得た。これをクロモグラニンA試料とした。前記SB1Tバッファーの組成は、40mmol/L HEPES、125mmol/L NaCl、5mmol/L KCl、1mmol/L MgClおよび0.01% Tween(登録商標)20とし、pHは、7.5とした。
【0088】
また、前記アプタマーの交差反応の確認のため、前記クロモグラニンA試料と同様にして、以下に示す材料から、α-アミラーゼ試料、およびBSA試料を調製した。
α-アミラーゼ(Lee Biosolutions社製、#120-10)
BSA(Bovine Serum Albumin、SIGMA社製、#A7906)
【0089】
(3)SPRによる結合性の解析
結合性の解析には、ProteON XPR36(BioRad社)を、その使用説明書にしたがって使用した。
【0090】
まず、前記ProteON専用のセンサーチップとして、ストレプトアビジンが固定化されたチップ(商品名 ProteOn NLC Sensor Chip、BioRad社)を、前記ProteON XPR36にセットした。前記センサーチップのフローセルに、超純水(DDW)を用いて、5μmol/Lのビオチン化ポリdTをインジェクションし、シグナル強度(RU:Resonance Unit)が飽和するまで結合させた。前記ビオチン化ポリdTは、20塩基長のデオキシチミジンの5’末端をビオチン化して調製した。そして、前記チップの前記フローセルに、SB1Tバッファーを用いて、200nmol/Lの前記ポリdA付加アプタマーを、流速25μL/minで80秒間インジェクションし、シグナル強度が飽和するまで結合させた。続いて、所定のタンパク質濃度(400nmol/L)の前記試料を、それぞれ、SB1Tバッファーを用いて、流速50μL/minで120秒間インジェクションし、引き続き、同じ条件で、SB1Tバッファーを300秒間流して、洗浄を行った。前記試料のインジェクション後、シグナル強度を測定した。
【0091】
これらの結果を図9および図10に示す。図9は、400nmol/LのクロモグラニンAに対するアプタマー1~8の結合性を示すグラフであり、横軸は、アプタマー1~8における、各試料を示し、縦軸は、シグナル強度(RU)を示す。横軸において、左から順に、クロモグラニンA試料、α-アミラーゼ試料、およびBSA試料を示す。図9に示す値は、前記試料のインジェクション開始を0秒として、115~125秒におけるシグナル強度(RU)の平均値である。図9に示すように、アプタマー1~8は、クロモグラニンAに対して、結合性を示した。一方、アプタマー1~8は、α-アミラーゼ試料、およびBSA試料に対しては、いずれも、シグナル強度が0以下であり、結合性を示さなかった。この結果から、アプタマー1~8は、クロモグラニンAに対して優れた特異性で結合することがわかった。
【0092】
図10は、400nmol/LのクロモグラニンAに対するアプタマー1~8の結合性を示すグラフである。横軸は、前記試料のインジェクション開始後の経過時間(sec)を示し、縦軸は、シグナル強度(RU)を示す。図10に示すように、アプタマー1~8は、クロモグラニンAに対して、結合性を示した。一方、α-アミラーゼ試料、およびBSA試料に対しては、いずれも、シグナル強度が0以下であり、結合性を示さなかった。この結果から、アプタマー1~8は、クロモグラニンAに対して優れた特異性で結合することがわかった。
【0093】
以上の結果から、本発明のアプタマーは、クロモグラニンAに結合し、それを測定により検出できることがわかった。
【0094】
[実施例2]
本発明のアプタマーについて、クロモグラニンAに対する解離定数を求めた。
【0095】
アプタマーとして、前記アプタマー1~8を使用し、前記試料におけるクロモグラニンAの濃度を、100、200、および400nmol/Lとした以外は実施例1と同様にして、結合性の解析を行った。
【0096】
この結果を図11に示す。図11は、クロモグラニンAに対するアプタマー1~8の結合性を示すグラフである。横軸は、前記試料のインジェクション開始後の経過時間(sec)を示し、縦軸は、シグナル強度(RU)を示す。図11に示すように、アプタマー1~8は、クロモグラニンAの濃度が増加するにつれて、シグナル強度が増加した。
【0097】
さらに、前記図11のSPR解析の結果から、動態パラメータを算出した。この結果、アプタマー1は、クロモグラニンAに対する解離定数(KD)が、12.6×10-9mol/Lであり、アプタマー2は、クロモグラニンAに対する解離定数(KD)が、35.4×10-9mol/Lであり、アプタマー3は、クロモグラニンAに対する解離定数(KD)が、75.6×10-9mol/Lであり、アプタマー4は、クロモグラニンAに対する解離定数(KD)が、75.9×10-9mol/Lであり、アプタマー5は、クロモグラニンAに対する解離定数(KD)が、40.6×10-9mol/Lであり、アプタマー6は、クロモグラニンAに対する解離定数(KD)が、47.2×10-9mol/Lであり、アプタマー7は、クロモグラニンAに対する解離定数(KD)が、37.0×10-9mol/Lであり、アプタマー8は、クロモグラニンAに対する解離定数(KD)が、50.8×10-9mol/Lであり、優れた結合性であることがわかった。
【0098】
以上の結果から、本発明のアプタマーは、クロモグラニンAに特異的に結合、それを測定により検出できることがわかった。
【0099】
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
【0100】
<付記>
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載しうるが、以下には限定されない。
(付記1)
下記(a)または(b)のいずれか一方のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、クロモグラニンAに結合する核酸分子。
(a)配列番号1~8のいずれかの塩基配列もしくは配列番号1~8のいずれかの塩基配列の部分配列からなるポリヌクレオチド
(b)前記(a)の塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、クロモグラニンAに結合するポリヌクレオチド
(付記2)
前記ポリヌクレオチドにおいて、少なくとも1個のチミンが、修飾塩基であり、前記チミンの修飾塩基が、修飾チミンおよび修飾ウラシルの少なくとも一方である、付記1記載の核酸分子。
(付記3)
前記ポリヌクレオチドにおいて、チミンの全塩基数のうち、20分の1以上が、修飾塩基であり、前記チミンの修飾塩基が、修飾チミンおよび修飾ウラシルの少なくとも一方である、付記1または2記載の核酸分子。
(付記4)
前記ポリヌクレオチドにおいて、全チミンが、修飾塩基であり、前記チミンの修飾塩基が、修飾チミンおよび修飾ウラシルの少なくとも一方である、付記1から3のいずれかに記載の核酸分子。
(付記5)
前記ポリヌクレオチドにおいて、少なくとも1個のシトシンが、修飾塩基である、付記1から4のいずれかに記載の核酸分子。
(付記6)
前記ポリヌクレオチドにおいて、シトシンの全塩基数のうち、20分の1以上が、修飾塩基である、付記1から5のいずれかに記載の核酸分子。
(付記7)
前記ポリヌクレオチドにおいて、全シトシンが、修飾塩基である、付記1から7のいずれかに記載の核酸分子。
(付記8)
前記ポリヌクレオチドが、DNAである、付記1から7のいずれかに記載の核酸分子。
(付記9)
付記1から8のいずれかに記載の核酸分子を含むことを特徴とする、クロモグラニンAの検出試薬。
(付記10)
さらに、標識物質を有し、
前記標識物質が、前記核酸分子に結合されている、付記9記載の検出試薬。
(付記11)
前記標識物質が、酵素である、付記10記載の検出試薬。
(付記12)
前記酵素が、ルシフェラーゼである、付記11記載の検出試薬。
(付記13)
付記1から8のいずれかに記載の核酸分子、または付記9から12のいずれかに記載の検出試薬と、試料とを接触させ、前記試料中のクロモグラニンAと、前記核酸分子または前記検出試薬との複合体を形成させる工程、および、
前記複合体を検出する工程を含むことを特徴とする、クロモグラニンAの検出方法。
(付記14)
前記検出が、定性分析または定量分析である、付記13記載の検出方法。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の核酸分子は、クロモグラニンAに結合可能である。このため、本発明の核酸分子によれば、試料中のクロモグラニンAとの結合の有無によって、クロモグラニンAを検出できる。このため、本発明の核酸分子は、例えば、医薬等の分野において、例えば、クロモグラニンAの検出に、極めて有用なツールといえる。
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【配列表】
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