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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】面積の大きなタッチ繊維
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20231219BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G06F3/041 422
G06F3/041 640
G06F3/044 120
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019213779
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2020113258
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】18208800.5
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507343327
【氏名又は名称】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SAN. VE TIC. A.S.
【住所又は居所原語表記】Organize Sanayi Bolgesi 3. Cadde 16400 Inegol-Bursa(TR)
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】オズギュル シバノグル
(72)【発明者】
【氏名】デニズ イイドアン
(72)【発明者】
【氏名】レイラ ゼンギ
(72)【発明者】
【氏名】アディル ベルク カラカヤ
【審査官】▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-125683(JP,A)
【文献】特表2008-506173(JP,A)
【文献】特開2017-222966(JP,A)
【文献】特表2018-508848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維層(30)と高抵抗材料のコーティング層(20)を含む容量型タッチ繊維センサ(10)であって、
前記高抵抗材料のコーティング層(20)は、前記繊維層(30)を被膜しており、前記繊維層(30)内には、導電糸がなく、
前記容量型タッチ繊維センサ(10)は、さらに、前記繊維層(30)に重畳された複数の電極(40)を含んでおり、
前記複数の電極(40)は、前記抵抗材料コーティング層(20)と電気的に結合されており、
前記各電極(40)は、電気的接続部材(50)によって電子制御ユニット(450)に接続されており、
前記電子制御ユニット(450)は、前記容量型タッチ繊維センサ(10)上のタッチイベントを示す前記抵抗材料のコーティング層(20)の静電容量値の変化を算出するように構成されており、
前記高抵抗材料のコーティング層(20)の抵抗は、隣接する前記複数の電極(40)間の短絡を回避するために十分に高く、前記タッチイベントの可能な限り高いピックアップ/寄生結合を可能にするために十分に低く、
前記電子制御ユニット(450)によって算出される前記静電容量値の変化は、2つの前記電極(40)間の有効距離の関数であり、前記有効距離は、2つの前記電極(40)間の距離と前記高抵抗材料のコーティング層(20)のシート抵抗との間の比として決定されることを特徴とする容量型タッチ繊維センサ(10)。
【請求項2】
請求項1に記載の容量型タッチ繊維センサ(10)であって、前記抵抗材料のコーティング層(20)は、前記繊維層(30)上にスクリーン印刷されていることを特徴とする容量型タッチ繊維センサ(10)。
【請求項3】
前記抵抗材料のコーティング層(20)は、少なくとも部分的に、ポリアクリレート、ポリアミン及びポリウレタンからなる群から選択されたポリマーで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の容量型タッチ繊維センサ(10)。
【請求項4】
前記抵抗材料のコーティング層(20)は、少なくとも部分的に生体高分子で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の容量型タッチ繊維センサ(10)。
【請求項5】
前記生体高分子は、微生物セルロース、微生物コラーゲン、セルロース/キチン共重合体、微生物絹、及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項4に記載の容量型タッチ繊維センサ(10)。
【請求項6】
導電性材料が前記生体高分子に貼り付けられ、前記導電性材料は炭素質材料であることを特徴とする請求項4に記載の容量型タッチ繊維センサ(10)。
【請求項7】
前記電極(40)は、前記繊維層(30)上にスクリーン印刷されていることを特徴とする請求項1に記載の容量型タッチ繊維センサ(10)。
【請求項8】
前記電気的接続部材(50)は、鋼、炭素不純物を含むナイロン、又は銅から選択された材料で作られた接続ワイヤであることを特徴とする請求項1に記載の容量型タッチ繊維センサ(10)。
【請求項9】
前記繊維層(30)構成する一片の繊維が、前記高抵抗材料のコーティング層(20)で被覆されており、
前記高抵抗材料のコーティング層(20)は、正方形または長方形の領域であり、前記複数の電極間のすべての領域が前記タッチイベントに敏感になるように、前記複数の電極(40)の間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の容量型タッチ繊維センサ(10)
【請求項10】
前記繊維層(30)構成する一片の繊維が、前記高抵抗材料のコーティング層(20)で被覆されており、
前記高抵抗材料のコーティング層(20)は、円形領域であり、前記複数の電極間のすべての領域が前記タッチイベントに敏感になるように、前記複数の電極(40)の間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の容量型タッチ繊維センサ(10)
【請求項11】
容量型の前記繊維層(30)は、織布であることを特徴とする請求項1に記載の容量型タッチ繊維センサ(10)。
【請求項12】
容量型タッチ繊維センサ(10)上のタッチイベントを検出する方法であって、
-前記容量型タッチ繊維センサ(10)の上に繊維層(30)を設け、前記繊維層(30)内には、導電糸がなく、
高抵抗材料のコーティング層(20)により、前記繊維層(30)を被膜し、
-前記繊維層に重畳され、前記抵抗材料のコーティング層と電気的に結合された複数の電極(40)を設け、
-前記複数の電極によって提供される静電容量値の変化を算出し、
電子制御ユニット(450)を使用して、
-前記複数の電極によって提供される前記静電容量値の変化の関数として、前記タッチイベントを決定し、
前記電子制御ユニット(450)によって評価される前記静電容量の変化は、2つの前記電極(40)間の有効距離の関数であり、前記有効距離は、2つの前記電極(40)間の距離と前記高抵抗材料のコーティング層(20)のシート抵抗との間の比として計算されることを特徴とするタッチイベントを検出する方法。
【請求項13】
前記タッチイベントは、前記電極(40)によって提供される前記静電容量値を、前記タッチイベントの前記電極(40)への近接度の尺度として考慮することによって解釈されることを特徴とする請求項12に記載のタッチイベントを検出する方法。
【請求項14】
人間のジェスチャを解釈するための繊維基材であって、
前記繊維基材は容量型タッチ繊維センサ(10)を含み、
前記容量型タッチ繊維センサ(10)は、繊維層(30)と高抗材料のコーティング層(20)とを含んでおり、前記繊維層(30)内には、導電糸がなく、
前記抵抗材料のコーティング層(20)は、前記繊維層(30)を被膜しており、
前記容量型タッチ繊維センサ(10)は、さらに前記繊維層(30)に重畳された複数の電極(40)を含んでおり、
前記複数の電極(40)は、前記抵抗材料のコーティング層(20)と電気的に接触しており、
前記容量型タッチ繊維センサ(10)は、前記容量型タッチ繊維センサ(10)に対する前記人間のジェスチャによって生成された前記高抵抗材料のコーティング層(20)の静電容量値を受信して解釈するように構成された電子制御ユニット(450)に接続されており、
前記電子制御ユニット(450)は、前記複数の電極によって提供される前記静電容量値の変化の関数として、タッチイベントを決定し、
前記電子制御ユニット(450)によって評価される前記静電容量の変化は、2つの前記電極(40)間の有効距離の関数であり、前記有効距離は、2つの前記電極(40)間の距離と前記高抵抗材料のコーティング層(20)のシート抵抗との間の比として計算されることを特徴とする繊維基材。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか1項に記載の前記容量型タッチ繊維センサ(10)を含むことを特徴とする衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、面積の大きなタッチ繊維に関する。特に、本発明は、容量型タッチ繊維センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、タッチパッド内の複数の検出素子として、複数の導電性糸の一次元配列又は二次元配列、又はスクリーン印刷又は積層された複数の分離リボンが知られており、これらは、敏感なタッチ領域を形成するために使用されている。
当該分野の従来技術における課題として、精細度に基づいて分離した複数の導電糸や複数の印刷リボンを使用すると、検知に有効に使用しうる総面積が減少するという事実がある。なぜなら、これらの複数の検出素子間における領域は、タッチパッドに対するタッチイベントのピックアップに使用されない。換言すると、これら複数の検出素子間の領域は、タッチに伴う刺激の取得に寄与しない不感領域である。
【0003】
特に織布の場合、糸が真っ直ぐに伸びるという織物の製織プロセス固有の特性があるため、複数のタッチ感知センサ要素の形状は常に直線状である。そのため、画面の広い領域を感知作用に寄与させることができる、正方形又は長方形のパターンを使用することはできない。
【0004】
特許文献1は、可撓性基板上にセンサの配列を形成するために、適切な繊維材料などの可撓性基板に複数の導電性パターンを、縫い付け又は編んで形成された、センサアセンブリを開示している。
これらの複数の導電性パターンは、個々の検知ポイントの位置に対応するノード及び/又は電極を形成している。一実施形態では、このセンサセンブリは、センサの配列に印加される静電界の歪みを、静電容量値の変化として測定可能に配置された、複数のタッチ感知センサを提供している。
【0005】
特許文献2は、複数の導電性糸と複数の非導電性糸とを編んで形成された、相互作用繊維を開示している。この非導電性糸は、綿、羊毛、絹、ナイロン、ポリエステルなどの、任意の種類の非導電性糸、繊維、又は布地におけるものである。
この相互作用繊維は、上部の繊維層と下部の繊維層を含み、導電性糸が上部の繊維層と下部の繊維層の間に織り込まれている。上部の繊維層を、下部の繊維層と組み合わせると、上下各層の導電性糸は、タッチ入力を検出するように構成された静電容量式タッチセンサを形成する。この静電容量式タッチセンサは、動作時に、自己静電容量センシング又は投影型静電容量センシングにより、導電糸の格子上のタッチ入力の位置を決定するようになっている。
【0006】
繊維コントローラーは、自己容量センサとして構成されている場合、制御信号(たとえば、正弦波信号)を各導電性糸に供給することにより、交差する導電性糸(例えば、水平、垂直導電性糸)を充電する。ユーザーの指などの物体が導電糸の格子に触れると、触れられたこれらの導電糸は接地され、その静電容量が変化する(例えば静電容量の増減)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】US2016/0328043A1
【文献】US2016/0282988A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、不感領域を無くし、繊維領域の全体が、信号のピックアップに寄与するようにした繊維センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的及び他の目的は、独立請求項に記載の繊維センサによって達成される。
従属請求項は、本発明の好ましい局面、及び/又は特に有利な局面を記述している。
【0010】
本明細書に記載の実施例は、繊維層及び高電気抵抗材料のコーティング層を含む、容量型タッチ繊維センサを提供するものであり、前記抵抗材料のコーティング層は、前記繊維層を被覆し、前記繊維センサは、さらに、前記繊維層に重畳された複数の電極を含み、これら複数の電極は、前記抵抗材料コーティングの第1の層に電気的に結合されており、前記各電極は、電気的接続部材によって電子制御ユニットに接続されている。この電子制御ユニットは、前記容量型タッチ繊維センサに対するタッチイベントを示す、抵抗層の静電容量値の変化を算出するように構成されている。
この実施形態によれば、実際の検知ピン又は検知ポイントは、限られた数又は離散した数しか接続されていないにも拘わらず、繊維の表面の全領域をセンサとして効果的に利用するようにした、容量型タッチ繊維センサが形成されるという利点が得られる。
【0011】
従って、非常に制御された高電気抵抗性のコーティングにより、繊維の表面全体に感度が分散され、複数の離散した読み出しポイントを備えたタッチパッドが作成される。このような抵抗性コーティングを使用すると、繊維の表面全体にわたって各電極の感度が拡大する。これにより、各検出素子の感度が、それ自体に制限され、外側には拡張せず、検知要素間の領域は、感度のない普通の糸で満たされた不感領域を有する従来技術と比較して、より高精度の位置感度を得ることが可能になる。
【0012】
明細書に記載の一実施例によれば、以下のステップを含む、繊維センサ上のタッチイベントを検出する方法が提供される。
-繊維センサに繊維層を設け、
-前記繊維層を被覆する高電気抵抗材料のコーティング層を設け、
-前記繊維層に重畳され、前記抵抗材料コーティングである第1の層と電気的に結合された、複数の電極を設け、
-前記複数の電極によって提供される静電容量値の変化を算出し、
-前記複数の電極によって提供される前記静電容量値の変化の関数として、タッチイベントを決定する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例の断面図である。
図2】本発明の概念を説明するための、本発明の一実施例の断面図である。
図3】本発明の一実施例の概略モデルを示す図である。
図4】本発明の別の実施例の断面図である。
図5】本発明の別の実施例の概略モデル、及びその可能な使用形態のモデルを示す図である。
図6】本発明のさらに別の実施例の概略モデル、及びその可能な使用形態のモデルを示す図である。
図7】本発明のさらに別の実施例の概略モデル、及びその可能な使用形態のモデルを示す図である。
図8】本発明の実施形態の、感度境界の概略を示す図である。
図9】本発明の実施形態の、感度境界の概略を示す図である。
図10】本発明の実施形態の、感度境界の概略をす図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の様々な実施形態について、添付の図面を参照して、その適用及び使用を制限する意図なしに、詳細に説明する。
【0015】
最初に、本発明の一実施例の断面図である図1を参照して、本発明、すなわち、符号10で全体を示す、容量型繊維センサについて説明する。
この容量型繊維センサ10は、面積の大きなタッチ繊維センサとして動作する。
この容量型繊維センサ10は、高電気抵抗材料のコーティングである第1の層20を備えており、この第1の層20は、繊維層30を被覆するために使用されている。
この抵抗性コーティングは、繊維層30上にスクリーン印刷されてもよい。容量型の繊維層30は、織布であってもよい。
容量型繊維センサ10は、さらに、好ましくは印刷により、繊維層30上に設けられた複数の電極40を含んでおり、これらの電極は、高電気抵抗材料のコーティングである第1の層20で被膜されている。
一般に、電極40は、抵抗材料コーティングの第1の層20と電気的に結合されている。
【0016】
各電極は、電気的接続部材50によって電子制御ユニット450に接続されている。
電気的接続部材50は、鋼、炭素不純物を含むナイロン、又は銅から選択された材料から作られた接続ワイヤであり、絶縁されていても絶縁されていなくてもよい。
従って、コーティング層20は、複数の電極間の高抵抗の結合媒体であり、絶縁性、非絶縁導電性または低抵抗の糸40の一次元配列若しくは二次元配列、又は、繊維層30上に印刷されたリボンの被膜として使用される。
抵抗性コーティング層20は、例えば、少なくとも部分的に、ポリアクリレート、ポリアミン及びポリウレタンからなる群から選択されたポリマーであってもよい。
【0017】
本発明の別の実施形態では、抵抗性コーティング層20は、本発明者の出願であるEP18197348.8に記載され、参照のために本明細書に組み込まれる、生体高分子により実現することができる。
特に、生体高分子は、微生物セルロース、微生物コラーゲン、セルロース/キチン共重合体、微生物絹、及びそれらの混合物から選択できる。生体高分子は、好ましくは微生物セルロースである。導電性材料を、上記生体高分子に貼り付けることもできる。
【0018】
所望の電気抵抗値を得るために、生体高分子の少なくとも一部に提供される導電性材料の量は、正確かつ信頼できる方法で調整されるのが良い。
前記導電性材料は、炭素質材料が良く、好ましくは、活性炭、高表面積炭素、グラフェン、グラファイト、活性木炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、活性炭繊維、グラファイト繊維、グラファイトナノファイバー、カーボンブラック、あるいはそれらの混合物からなる群から選択されたものである。
このようにして、実際の検知ピン又は検知ポイントは、限られた数又は離散した数しか接続されていないにも拘わらず、繊維の表面積の全体を、センサとして効果的に使用する容量型タッチ繊維センサを製作することができる。
従って、非常に制御された高抵抗性コーティングにより、感度が表面全体に分散された、複数の個別の読み出しポイントを備えるタッチパッドを製作することができる。
以上説明した構成によれば、繊維領域の全体が、信号のピックアップに寄与するようになり、不感領域を無くすことができる。
【0019】
信号の読み出しは、アプリケーションの詳細に応じて、バイナリ又はアナログにすることができる。静電容量式タッチ繊維センサ10の静電容量値は、例えば、充電時間、又は発振器(例えばコルピッツ発振器)の発振周波数を測定することにより、又は、当該技術分野で既知の他の測定技術により、算出できる。
【0020】
図2は、本発明の概念を説明するための、本発明の実施形態の断面図である。図2には、コーティング層20と電気的に接触し、距離d[n]だけ離れた2個の電極が示されている。
2個の隣接する電極は、2つの異なる電気的なバイナリ読み出し信号、CH-1及びCH-2を提供する。
これらの電極間には、これらの電極間の全ての領域を、タッチイベントに対して敏感な感度領域とするために、抵抗性コーティング20が設けられている。このような抵抗性コーティングが存在しない場合、電極40のみがタッチイベントに敏感であり、そのため、タッチイベントに対して有効に感応する感度領域が減少する。
読み出しは、バイナリ(図2)又はアナログの両方にできる。
【0021】
コーティングは非常に高抵抗であるため、タッチポイントがそれぞれの電極から遠ざかると、タッチに伴う刺激は、最初の最も近くにあった電極とは無関係になり、現在の最も近い電極との関連が深くなる。そのため、タッチイベントに関連する信号は、それぞれの電極から切り離される。
媒体の電気抵抗率(又は実質的に表面抵抗)は、次のようにして調整できる。
上記電気抵抗率は、隣接する複数のセンサ電極又は収集電極が短絡するのを避けるためには、十分に高く、かつ、タッチイベントの可能な限り高いピックアップ/寄生結合を可能にするためには、十分に低い値である。
【0022】
適切な信号を提供するための、電極間の有効距離は、次の式で取得できる。
【0023】
【数1】

ここで、Eは有効距離、d[n]は2個の隣接する電極間の距離である。また、上式中の
【数2】

は、抵抗層20のシート抵抗である。
【0024】
上記の状況は、図2に模式的に示した本発明の実施形態を、模式モデルとして示した、図3を使用して視覚化できる。
このモデルでは、一連の複数の抵抗素子Rが、隣接する2個の電極40間に配置されている。
タッチイベント又は刺激が電極の1つに近づくと、その電極はタッチイベントとの関連性がより高くなり、このタッチイベントの電極への近接の関数として、より高い出力を生成する。
刺激が2個の電極の中央にある場合、両方のチャネル(チャネル1とチャネル2)が同時に起動する。読み出しは、バイナリ又はアナログの両方で行うことができる。
【0025】
図4は、本発明の実施形態、特に、その動作プロトタイプの概略図を示す図である。この図には、繊維30の帯が描かれており、この繊維30の帯は抵抗性コーティング20で被覆されている。この抵抗性コーティング20は、複数の電極40も覆っている。
各電極40は、接続ワイヤ50により、それぞれ電子制御ユニット(ECU)450に接続されている。
ECU450は、メモリシステム及びインターフェースバスと通信する、デジタル中央処理装置(CPU)を含んでいる。このCPUは、メモリシステム460にプログラムとして格納された命令を実行し、インターフェースバスとの間で信号を送受信するように構成されている。
上記プロトタイプにより、本発明の動作範囲を理解することができる。
【0026】
図5は、本発明の別の実施形態、及びその可能な使用法の概略モデルを示す図である。
図5では、一片の繊維が抵抗性コーティング20で被覆されており、一例として、3個の電極40が、この抵抗性コーティング20に電気的に接続されている。
各電極40は、それぞれの接続ワイヤ50によってECU450(図示略)に接続され、ECUに出力信号A、B、及びCを提供する。
使用されている繊維内には、導電糸がなく、実際の収集電極又は検出電極もなく、電子回路に接続された単一のコーティング層20のみがある。このコーティング層20は、その複数の縁の中の任意の1つの縁に等距離に設けられた複数の点でアナログ信号を読み出す電子回路に接続されている。正方形又は長方形の感度領域に加えられたジェスチャは、電子制御ユニット(ECU)450によって取得され、メモリシステムに格納されているソフトウェアによって解釈される。
図5の下部には、上記解釈のロジックも示してある。
たとえば、もしECU450が、図5の左下のグラフに示されているような容量性信号のパターンを検出したら、ECU450は、そのパターンを、ポイントJからポイントKへのスワイプジェスチャとして解釈する。
もしECU450が、図5の右下のグラフに描かれているような信号のパターンを検出したら、ECU450は、そのようなパターンを、ポイントKからポイントLへのスワイプジェスチャとして解釈する。
【0027】
図6は、本発明のさらに別の実施形態、及びその可能な使用法の概略を示す図である。
図6では、一片の繊維が抵抗性コーティング20で被覆されており、一例として、2個の電極40が、この抵抗性コーティング20に電気的に接続されている。
各電極40は、信号A及びBを提供するために、それぞれの接続ワイヤ50によって、ECU450(図示略)に接続されている。
たとえば、もしECU450が、図6の中段左のグラフに示すような信号のパターンを検出した場合、このECU450は、そのようなパターンを、ポイントJからポイントKへのスワイプジェスチャとして解釈する。一方、もしECU450が、図6の中段右のグラフに示されているような信号のパターンを検出した場合、ECU450は、このパターンを、ポイントJからポイントLへのスワイプジェスチャとして解釈する。
【0028】
もしECU450が、図6の左下のグラフに示されているような信号のパターンを検出した場合、このECU450はそのようなパターンを、ポイントKからポイントLへのスワイプジェスチャとして解釈する。一方、もしECU450が、図6の右下のグラフに示されているような信号のパターンを検出した場合、このECU450は、そのようなパターンを、ポイントMからポイントNへのスワイプジェスチャとして解釈する。
【0029】
図7は、本発明のさらなる実施形態、及びその可能な使用法の概略モデルを示す図である。この例は、特に、円形の繊維センサ10に関するものであり、高抵抗率のコーティング20及びこのコーティングと電気的に接触し、それぞれが互いに120°間隔で配置された3個の電極40を備えている。
各電極40は、信号A、B、及びCを提供するために、それぞれの接続ワイヤ50によってECU450(図示略)に接続されている。
【0030】
たとえば、もしECU450が、図7の左下のグラフに示されているような信号のパターンを検出した場合、このECU450は、そのようなパターンを、ポイントKからポイントLへのスワイプジェスチャとして解釈する。
もしECU450が、図7の右下のグラフに示されているような信号のパターンを検出した場合、このECU450はそのようなパターンを、ポイントKからポイントMへのスワイプジェスチャとして解釈する。
従って、一般に、タッチジェスチャは、複数の電極40によって提供される静電容量値の変化の関数として決定される。
特に、タッチジェスチャは、1つの電極40によって提供される静電容量の値を、この電極40へのジェスチャの近接度の尺度として考慮することにより解釈される。
【0031】
図8は、感度境界に関する、本発明の実施形態を示す概略図である。
図8において、繊維センサ10は円形のセンサであり、高抵抗率のコーティングと、このコーティングと電気的に接触し、互いに対して120°間隔で配置された3個の電極A、B及びCを備えている。
各電極A、B、Cに対して、それぞれの影響領域A’、B’、C’の輪郭が決まる。さらに、センサ上の任意の位置で、その位置に応じて信号の特定の組み合わせがピックアップされるように、感度境界AB、AC、BCの輪郭を決めることができる。
【0032】
図9は、感度境界に関する本発明の別の実施形態を示す概略図である。
図9において、繊維センサ10は長方形であり、高抵抗率のコーティングと、このコーティングと電気的に接触し、かつ互いに距離をおいて配置された6個の電極A、B、C、D、E及びFを備えている。
これらの各電極に対して、それぞれの影響領域A’、B’、C’、D’、E’、F’の輪郭が決まる。さらに、センサ上の任意の位置で、その位置に応じて信号の特定の組み合わせがピックアップされるように、感度境界AB、AC、AD、DE、EF、CFの輪郭を決めることができる。
【0033】
最後に、図10は、感度境界に関する本発明のさらに別の実施形態を示す概略図である。
図10において、繊維センサ10は正方形であり、高抵抗率のコーティングと、このコーティングと電気的に接触し、互いに距離をおいて配置された4個の電極A、B、C及びDを備えている。
各電極に関して、それぞれの影響領域A’、B’、C’及びD’の輪郭が決まる。さらに、センサ上の任意の位置でその位置に応じて、信号の特定の組み合わせがピックアップされるように、感度境界AB、AC、BD及びCDの輪郭を決めることができる。
【0034】
なお、全ての図において、感度境界は、本発明によれば容量型繊維センサの表面の全体を、感度に対して能動的なものにできることを例示するために、示されている。
【0035】
以上述べた概要及び詳細な説明により、少なくとも1つの例示的な実施形態が示されたが、これ以外に、膨大な数の変形の形態が存在することを理解されたい。
また、これらの1つ又は複数の例示的な実施形態は、単なる例に過ぎず、本発明の範囲や適用可能性、又は構成を限定することを意図していないことも理解されたい。むしろ、前記概要及び詳細な説明は、少なくとも1つの例示的な実施形態を実装するための便利なロードマップを当業者に提供するものであり、添付の特許請求の範囲、及びそれらの法的同等物に記載されている範囲から逸脱することなく、これらの例示的な実施形態で説明した要素の機能及び配置に、様々な変更を加えることができることを理解されたい。
【符号の説明】
【0036】
10 容量型タッチ繊維センサ
20 高抵抗材料のコーティング層
30 繊維層
40 電極
50 電気的接続部材
450 電子制御ユニット
460 メモリシステム
CH-1 バイナリ読み出し信号
CH-2 バイナリ読み出し信号
抵抗素子
A~F 電極
A’~F’ 影響領域
AB、AC、BC、AD、BD、CD、BE、CF、DE 感度境界
EF 感度境界。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10