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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】縁石マット
(51)【国際特許分類】
   E01C 9/08 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
E01C9/08 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020017673
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021123938
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】520043822
【氏名又は名称】グランド産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 真二
(72)【発明者】
【氏名】小川 覚
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-211343(JP,A)
【文献】実開昭63-108405(JP,U)
【文献】特開2017-066691(JP,A)
【文献】実開昭57-123805(JP,U)
【文献】実開昭54-031332(JP,U)
【文献】実開平03-002003(JP,U)
【文献】特開2007-170027(JP,A)
【文献】特開2005-063886(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0317189(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縁石を保護するための縁石マットであって、
前記縁石マットは、縁石を破損・摩耗等から保護するための養生用のマットであって、
前記縁石マットは、主段差解消部と副段差解消部とこれらを接続する上面被覆部とが一体となって構成され、
前記主段差解消部は、側面視で三角形状を有しており、前記三角形状は敷地面に対向する底面と、縁石の長手方向の一側面に対向する立面と、前記主段差解消部の上面を形成すると共に前記底面と前記立面とを接続する傾斜面とから構成され、
前記主段差解消部の底面から上面への長さは、前記副段差解消部の底面から上面への長さよりも大きく構成され、
前記副段差解消部は側面視で四辺形状を有しており、前記四辺形状は、底面と、前記副段差解消部の底面から立ち上がり、前記縁石の長手方向の他の一側面に対向する第1立面と、前記第1立面と平行に構成された第2立面と、上面とから構成され、前記副段差解消部の上面は、前記主段差解消部の側とは反対側の方向に前記副段差解消部の底面に向けて傾斜面が形成されており、
前記上面被覆部は、前記主段差解消部の側と前記副段差解消部の側とで同一の厚さを有し、前記主段差解消部の上面と前記副段差解消部の上面とが連続した面を構成するように、前記主段差解消部の立面の上側と、前記副段差解消部の第1立面の上側に接続されており、前記上面被覆部の底面は、前記縁石の上面に対向し、
前記縁石の両側面からずれてしまう事無く、前記縁石の上面を含めた縁石の保護を行う、ことを特徴とする縁石マット。
【請求項2】
前記主段差解消部の底面側には前記縁石マットの長手方向に沿って連続した直線状に構成された複数の導水溝が設けられており、前記複数の導水溝には、前記主段差解消部の底面から上面に向かう高さが高い部分と低い部分とが、前記長手方向に沿って交互に形成されている導水溝を含む、請求項1に記載の縁石マット。
【請求項3】
前記副段差解消部の底面側には前記縁石マットの長手方向に沿って連続した直線状に構成された導水溝が設けられている、請求項1又は2に記載の縁石マット。
【請求項4】
前記主段差解消部の前記底面と前記立面とは、80度若しくは84度の角度を有している請求項1乃至3のいずれか1項に記載の縁石マット。
【請求項5】
前記縁石マットの上面には、長手方向に沿って、複数の突起が設けられている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の縁石マット。
【請求項6】
前記縁石マットは、天然ゴムと合成ゴムとを混錬し繊維材料により強化した素材により構成される請求項1乃至5のいずれか1項に記載の縁石マット。
【請求項7】
前記主段差解消部は、前記縁石の長手方向の側面のうち、敷地面と前記縁石上面との段差が高い一側面側に設けられ、前記主段差解消部の立面は、前記縁石の長手方向の前記一側面側と同等の高さを有し、
前記副段差解消部は、前記縁石の長手方向の側面のうち、敷地面と前記縁石上面との段差が低い他の一側面側に設けられ、前記副段差解消部の第1立面は、前記縁石の長手方向の他の一側面と同等の高さを有し、
前記上面被覆部の底面は、前記縁石の上面の幅と同等の長さを有する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の縁石マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設作業などを行う際に、作業が行われる敷地と道路等との境界に設けられる縁石を保護するための縁石マットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、予め定めた敷地内で造成工事や建設作業等を行う場合には、作業が行われる敷地と歩道や車道等との境界を画定したり、或いは、土砂の流出を防止したりするために、歩車道境界ブロックやL型側溝などの縁石が設けられている。
【0003】
このような縁石は、造成工事や建設作業等の比較的早い段階から設置され、車両の進入が容易になる様に一部に車輛進入用に低い縁石が設けられる場合もあるが、建設作業等を実際に行う際には、重機を含む車両が車輛の進入用の部分に限らずに、必要に応じて、縁石の上を通過して作業が行われる敷地内を出入りする場合も多い。
【0004】
そのため、かかる縁石の上を車両が通過する場合には、縁石の一部が路面などから突出しているために、車輛と縁石とが接触するなどして双方に負荷がかかり、車輛や重機等の建設機械に障害が生じたり、或いは、縁石に破損や損傷が生じたりする場合もあった。
【0005】
また、このように縁石に破損や損傷が生じている場合には、建設作業等が完了した後に、これを補修する必要があるところ、補修のための時間と費用が掛かり、建設業者の負担となっていた。
【0006】
そこで、このような車輛への障害や縁石の破損や損傷を防ぐために、縁石の上にゴムマットを敷き、更にその上に敷鉄板を敷いて縁石を保護する手段などが用いられている。
【0007】
また、別の手段として、縁石の長手方向の両側面に木材を敷いて段差を解消したり、或いは、例えば、特開平8-134815号公報(特許文献1)に開示されたようなスロープを複数用いて段差の解消をしたりすることにより、縁石における衝撃の緩和等を図ることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平8-134815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、縁石の上にゴムマットを敷き、更にその上面に敷鉄板を敷く手段では、縁石の上に敷物2枚が必要となり、その分コストが高くなる上、これらはある程度大きな寸法が必要となり重量も嵩むことから、設置と撤収とが容易ではないために、クレーン付きトラックによる搬送が必要になる等の手間がかかっていた。
【0010】
また、縁石の両側に木材を敷いて段差の解消を図った場合には、重量の大きな車輛の度重なる通過により、敷いている木材の位置がずれたり、木材が損傷したりする場合などが多く、建設作業等の終了までに、敷いている木材を何度か取り換える必要があり、作業者の負担となっていた。また、このように木材を縁石の長手方向の側面に設置した場合、縁石の上面は保護されないために、縁石自体を有効に保護することはできず、縁石の補修が必要になっていた。
【0011】
同様に、例えば特許文献1に開示されたようなスロープを縁石の側面に配置した場合でも、車両の度重なる通過により縁石の側面の位置から位置ずれを生ずる場合があった。そのため、位置ずれが生ずる度に位置直しが必要となり、また、木材を縁石の側面に敷いた場合と同様に、縁石自体の上面は露出することになり保護されないことから、縁石自体を有効に保護することはできなかった。
【0012】
そのため、長らく、これらの手段に代わる、縁石による段差を解消すると共に縁石を保護するための低コストで簡易な手段が求められていた。
【0013】
そこで、本発明では、建設作業などを行う際に、低コストかつ容易に、作業が行われる敷地と道路等との境界に設けられる縁石による段差を解消すると共に、縁石を保護する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明では、縁石を保護するための縁石マットに関し前記縁石マットは、縁石を破損・摩耗等から保護するための養生用のマットであって、前記縁石マットは、主段差解消部と副段差解消部とこれらを接続する上面被覆部とが一体となって構成され、前記主段差解消部は、側面視で三角形状を有しており、前記三角形状は敷地面に対向する底面と、縁石の長手方向の一側面に対向する立面と、前記主段差解消部の上面を形成すると共に前記底面と前記立面とを接続する傾斜面とから構成され、前記主段差解消部の底面から上面への長さは、前記副段差解消部の底面から上面への長さよりも大きく構成され、前記副段差解消部は側面視で四辺形状を有しており、前記四辺形状は、底面と、前記副段差解消部の底面から立ち上がり、前記縁石の長手方向の他の一側面に対向する第1立面と、前記第1立面と平行に構成された第2立面と、上面とから構成され、前記副段差解消部の上面は、前記主段差解消部の側とは反対側の方向に前記副段差解消部の底面に向けて傾斜面が形成されており、前記上面被覆部は、前記主段差解消部の側と前記副段差解消部の側とで同一の厚さを有し、前記主段差解消部の上面と前記副段差解消部の上面とが連続した面を構成するように、前記主段差解消部の立面の上側と、前記副段差解消部の第1立面の上側に接続されており、前記上面被覆部の底面は、前記縁石の上面に対向し、前記縁石の両側面からずれてしまう事無く、前記縁石の上面を含めた縁石の保護を行う、ことを特徴とする縁石マットを提供する。
【0015】
また、上記課題の解決は、前記主段差解消部の底面側には前記縁石マットの長手方向に沿って連続した直線状に構成された複数の導水溝が設けられており、前記複数の導水溝には、前記主段差解消部の底面から上面に向かう高さが高い部分と低い部分とが、前記長手方向に沿って交互に形成されている導水溝を含む、或いは、前記副段差解消部の底面側には前記縁石マットの長手方向に沿って連続した直線状に構成された導水溝が設けられていることにより、或いは、前記主段差解消部の前記底面と前記立面とは、80度若しくは84度の角度を有していることにより、或いは、前記縁石マットの上面には、長手方向に沿って、複数の突起が設けられていることにより、或いは、前記縁石マットは、天然ゴムと合成ゴムとを混錬し繊維材料により強化した素材により構成されることにより、或いは、前記主段差解消部は、前記縁石の長手方向の側面のうち、敷地面と前記縁石上面との段差が高い一側面側に設けられ、前記主段差解消部の立面は、前記縁石の長手方向の前記一側面側と同等の高さを有し、前記副段差解消部は、前記縁石の長手方向の側面のうち、敷地面と前記縁石上面との段差が低い他の一側面側に設けられ、前記副段差解消部の第1立面は、前記縁石の長手方向の他の一側面と同等の高さを有し、前記上面被覆部の底面は、前記縁石の上面の幅と同等の長さを有する、ことにより、更に効果的に達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、縁石の長手方向の両側面に段差がある場合であっても容易に段差の解消が可能であり、縁石の上面を含めた縁石の保護を低コストかつ容易に達成することが可能である。
【0017】
また、本発明では、縁石の両側面の段差を解消するための主段差解消部と副段差解消部とが上面被覆部を介して一体となっている。そのために、縁石の両側面に個別にスロープを配置した場合のように、個別に配置したスロープが、車両の通行などにより、それぞれ縁石の両側面からずれてしまうことがない為、一度設置すれば安定的に使用することが可能である。
【0018】
また、本発明による縁石マットでは、主段差解消部の下面に導水溝を設け、かかる導水溝を縁石マットの長手方向に沿って高さの高い部分と高さの低い部分と交互に設けることも可能である。そのため、当該縁石マットについて、上面を通過する車両等の荷重に対する一定の強度を維持させることを可能にすると共に、導水溝を通過する水量が多い場合であっても、高さの高い導水溝をバッファーとすることにより、余剰な水を一時的に保持する事によって、円滑な導水を図ることが可能である。
【0019】
また本発明による縁石マットは、軟質ゴムと硬質ゴムとの組み合わせにより構成することも可能であるため、一定程度の強度と弾性とを有することから、耐久性と安定性とを有すると共に、車両や縁石にかかる衝撃を緩和することも可能であり、取り外しや再利用も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明による縁石マット100の構成例を示したものであり、図1(A)は側面図、図1(B)は上面図である。
図2図2(A)は、図1に示した縁石マットの底面図を示し、図2(B)は、図2(A)の一点鎖線により表示したαで示した部分の断面図であり、図2(C)は、図2(A)の一点鎖線により表示したβで示した部分の断面図である。
図3図1に示したものとは異なる構成例である縁石マット300を示したものであり、図3(A)はその側面図、図3(B)はその上面図である。
図4図4(A)は、図3に示した縁石マットの底面図を示し、図4(B)は、図4(A)の一点鎖線により表示したαで示した部分(α断面)の断面図であり、図4(C)は、図4(A)の一点鎖線により表示したβで示した部分(β断面)の断面図である。
図5】本発明による縁石マットの使用例を示す斜視図であり、図5(A)は、本発明による縁石マットの基本的な形態を用いた縁石マット500の使用例を示す斜視図であり、図5(B)は、導水溝と突起を形成した形態を用いた縁石マット600の使用例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
最初に本発明による縁石マットの概略を説明する。本発明による縁石マットは、例えば、図5に縁石マット500及び600を示すように、縁石Cによる段差を解消すると共に、縁石Cを保護するために、主段差解消部(510,610)と、副段差解消部(530,630)と、上面被覆部(550,650)と、から構成されており、縁石Cの長手方向の両側から縁石Cの上面Ctとその両側面(HC、LC)とを被覆することができるようになっている。
【0022】
ここで、図5は本発明の例による縁石マットの使用例を示した斜視図であり、図5(A)は、本発明による縁石マットの基本的な形態を用いた縁石マット500の使用例を示した斜視図であり、図5(B)は、本発明による縁石マットにおいて、上面側に突起170を設け、下面側に導水溝(617a~617e)を設けた形態を用いた縁石マット600の使用例を示した斜視図である。
【0023】
本発明では、図5に示すように、縁石マット(500,600)の主段差解消部(510,610)は、縁石Cの長手方向の側面のうち、敷地面S1と縁石上面Ctとの段差が高い(大きい)側HCに設けられ、副段差解消部(530,630)は、縁石Cの長手方向の側面のうち、敷地面S2と前記縁石上面Ctとの段差が低い(小さい)側LCに設けられていて、上面被覆部(550,650)は、これら主段差解消部(510,610)の上面側部分と副段差解消部(530,630)の上面側部分とを縁石Cの上面Ctにおいて接続するように構成されている。
【0024】
なお、ここで、敷地面(S1,S2)とは、特に限定を設けるものではないが、本発明による縁石マットがL型側溝などに用いられる場合には、当該L型側溝のエプロン(例えば、図5のCe)の上面の傾斜面や、或いは、縁石Cによって仕切られる土地の領域などを示し、本発明の例による縁石マットを用いようとする縁石Cの種類や、縁石Cが設置される場所に応じて、例えば、歩道や車道の他、未舗装の地面や、建設作業の行われる土地等も含まれる。
【0025】
そこで、以下では、このような本発明による縁石マットについて、更に具体的に説明する。
【0026】
なお、以下の説明では、同一の構成要素については、他の形態を採り得るものについても同一の記号を用いる場合があり、重複する構成の説明や記号等については、一部省略する場合がある。また、図面に示す各構成要素の大きさや相互の比率などは、説明の便宜のために実際のものとは異なる場合もあり、図面の一部については、分かり易くするために表現を省略している場合もある。
【0027】
図1を用いて本発明による縁石マットを説明すると、本発明による縁石マット100の構成要素のうち、主段差解消部110は、例えば、図1(A)に示すように、(図示しない)縁石Cと敷地面S1との段差を解消するために、側面視で三角形状を有している。
【0028】
ここで、図1は、本発明の例による縁石マットの構成例として、縁石マット100の例を示したものであり、図1(A)は側面図、図1(B)は上面図を示している。
【0029】
そのため、本発明の場合には、かかる主段差解消部の三角形状は、図1(A)に示したように、側面から見て、敷地面(S1)に対向する底面113と、縁石Cの鉛直面HCに対向する立面115と、主段差解消部110の上面を形成すると共に底面113と立面115とを縁石マット100の長手方向の側端部側で接続する傾斜面111とから構成されている。
【0030】
但し、上記のような三角形状は、本発明においては、主要な3辺の関係が側面から見て概ね三角形状であれば良い趣旨であるため、本発明において、三角形状とは、厳密に三角形をした形状を意味するものでなくとも良い。そのため、例えば、図1(A)等に示したように、本発明の例による縁石マット100を側面から見た場合に、かかる側面を構成する主段差解消部110の三角形状のうち、主段差解消部110の上面111と底面113とが作る2つの辺の接続部分(頂角部分J)が、強度の確保や当該接続部分の形成過程の都合等により、厚みを持って形成されたものであっても構わない。
【0031】
また、主段差解消部110の底面113からその上面111部分への長さ、言い換えれば、主段差解消部110の底面113を基準とした場合のその上面111部分への高さは、後述する副段差解消部130の底面133から上面131への長さよりも大きく構成されている。
【0032】
そのため、本発明の例による縁石マット100は、縁石Cの長手方向の両側面(HC,LC)において、敷地面(S1,S2)から縁石Cの上面Ctまでの高さが異なる場合に、これらの段差の解消を図ることが可能である。
【0033】
また、本発明においては、主段差解消部110の底面113と立面115とが作る角度θは、主段差解消部110の設けられる縁石C等の形態に対応して、必ずしも直角(90度)に限らずに、適当な角度を設けて構成することも可能である。
【0034】
したがって、上記縁石CとしてL型側溝を想定するものである場合には、当該L型側溝に設けられているエプロンCeの勾配に対応して、図1(A)に一点鎖線による両端に矢印のある表示で示したように、主段差解消部110の底面113と立面115とが作る角度θを、例えば、80度や84度の角度に形成することにより、主段差解消部110の底面113がL型側溝のエプロンCe部分の勾配面と平行になる様にして、縁石Cとの密着性を高めるように構成することも可能である。
【0035】
また、本発明においては、更に、主段差解消部110の底面113側に、図1(A)に示したように、縁石マット100の長手方向に沿って導水溝117を設けることも可能である。そして、このような導水溝117は、縁石マット100が使用される態様を想定して、予め複数(117a~117e)設けることも可能である。
【0036】
かかる導水溝117は、主段差解消部110の底面113側で導水のために設けられた空洞部分であり主段差解消部110の底面113から垂直に立ち上がるように形成され、当該段差解消部110の長手方向に形成されている。
【0037】
そして、かかる導水溝117は、本発明による縁石マット100の側面から見た場合には、例えば、図1(A)のように、扇形や半円形乃至これと四辺形状とを組み合わせた形態を採用しているが、その形状はこれに限定されるものではなく、任意の形状を採用することが可能である。
【0038】
そのため、このような導水溝117を設けることにより、本発明の例による縁石マット100を、例えば、L型側溝に用いた場合には、縁石C側方向に流入する雨水等を円滑に導水して、雨水等が縁石マット100の下面側に滞留することを有効に防止することが可能である。
【0039】
また、かかる導水溝117には、図2に示すように、主段差解消部110の底面113から上面111に向かう高さが高い部分(高溝部分:117bh~117dh)と低い部分(低溝部分:117bL~117dL)とが、縁石マットの長手方向に沿って交互に形成されている構成を採用することも可能である。
【0040】
ここで、図2(A)は、図1に示した縁石マット100の底面図を示し、図2(B)は、図2(A)の一点鎖線により表示したαで示した部分(α断面)の断面図であり、図2(C)は、図2(A)の一点鎖線により表示したβで示した部分(β断面)の断面図である。そのため、図2(B)が導水溝のうち、上述の高溝部分(117bh~117dh)が構成された箇所を示しており、図2(C)が上述の低溝部分(117bL~117dL)が構成された箇所を示していて、これらは、縁石マット100の長手方向に向かって、交互に構成されている。
【0041】
そして、このように、導水溝117に高溝部分(117bh~117dh)と低溝部分(117bL~117dL)とを設けた場合には、縁石マット100の低溝部分(117bL~117dL)で主段差解消部110の厚みを大きく採ることが可能であるために、縁石マット100自体の強度を増加させ、縁石マット100の上面側を通過する車両等に対する耐久性を向上させることが可能である。また、高溝部分117bh~117dh)を設けることにより、導水溝117に流入する雨水等の水量に変動があった場合にも、高溝部分(117bh~117dh)が流入する雨水等のバッファ(緩衝器)としての機能を発揮することで、円滑な導水を達成することが可能である。
【0042】
なお、上記のような導水溝117を複数設ける構成を採用する場合には、当該複数の導水溝(117a~117e)の全部又はその一部に、上述のような高溝部分(117bh~117dh)と低溝部分(117bL~117dL)を有する導水溝を構成することも可能である。
【0043】
次に、本発明の例による縁石マット100の構成要素のうち、副段差解消部130は、例えば、図1(A)に示すように、側面視で概ね四辺形状を有している。
【0044】
副段差解消部130は、縁石Cの長手方向と敷地面(S2)との段差が、上述の主段差解消部110の設けられた側に比べて比較的低い場合に、その段差を解消するために設けられたものである。そのため、副段差解消部130は主段差解消部110よりも段差が低いことに対応するものであるために、全体が主段差解消部110よりも幾分小ぶりに構成されており、それに伴い、側面視で概ね四辺形状の形態とすることにより、上面からの荷重に十分対応することができるように形成されている。
【0045】
そのため、副段差解消部130の上面131は、四辺形状の上面を形成すると共に、副段差解消部130の底面133に向けて、主段差解消部110の側とは反対側の方向に傾斜面が形成されている。但し、上記傾斜面は、副段差解消部130のうち敷地面(S2)に対向する底面133の側には至らずに、底面133に対して垂直に立ち上がる縁石Cの側面に対向する第1立面135Aと平行に構成された第2立面135Bの上部に接続されるようになっている。
【0046】
また、副段差解消部130の底面133部分は、基本的には、本発明の例による縁石マット100が使用される縁石Cの長手方向側面の段差が少ない方の敷地面(S2)に対向するものであり、上述の第1立面135Aと第2立面135Bに対しては垂直に形成されるが、必要に応じて傾斜を設ける構成とすることも可能である。
【0047】
更に、副段差解消部130の底面133には、主段差解消部110の底面113と同様に、導水溝137を形成する構成を採用することも可能であり、このような導水溝137を採用する場合には、(図示はしないが)、かかる導水溝137に、高溝部分と低溝部分とを設けることも可能である。
【0048】
次に、本発明による縁石マット100の構成要素のうち、上面被覆部150は、本発明の例による縁石マット100が使用される縁石Cの突出した上面Ctを被覆して保護する機能を有している。またこれと同時に、主段差解消部110と副段差解消部130とを接続して、一体化されるように構成されていることから、これらの構成要素が機能的に結びついて、縁石Cの長手方向の両側面に安定的に保持されるように機能する。
【0049】
そのため、上面被覆部150は、例えば、図1(A)に示すように、主段差解消部110の側と副段差解消部130の側とで同一の厚さを有しており、主段差解消部110の上面と副段差解消部130の上面とが連続した面を構成するように接続されている。
【0050】
そして、上面被覆部の下面153は、縁石Cの突出した上面Ctに対向するものであるため、上述の副段差解消部130の底面133とは、基本的には平行に設けられており、本発明の例による縁石マット100を縁石Cの上面Ctから被覆した場合には、縁石Cの突出した上面Ctと密接に対向するように配置される。
【0051】
ただし、上面被覆部150の下面153は、縁石Cの上面Ctが特有の凹凸等の形態を有している場合には、これに応じて、こうした凹凸に対応する形態に形成することも可能である。
【0052】
また、上面被覆部150は、主段差解消部110の側と副段差解消部130の側とを接続するものであるために、基本的には、主段差解消部110の側と副段差解消部130の側とで同一の厚さを有しており側面視では、略平行四辺形状に構成されているが、主段差解消部110の上面と副段差解消部130の上面とが連続した面を構成するように接続されていれば、例えば、主段差解消部150の上面151が緩やかな山形を構成するものなどであっても構わない。
【0053】
以上のように、本発明の例による縁石マット100は、主段差解消部110と、副段差解消部130と、上面被覆部150と、から構成されているが、これらの素材については、使用が想定される縁石Cや、想定される使用状況や場所により任意に選択することが可能であり、金属材料やゴムなどのエラストマーを使用することも可能である。
【0054】
そのため、例えば、硬質と軟質の2種類のゴムを混合し、縁石に適した衝撃吸収・強度を実現したものなどを用いることも可能である。そして、その場合には、天然ゴムと合成ゴムとを混錬し繊維材料により強化した素材を用いたりすることも可能であり、例えば、本発明による縁石マットを、天然ゴム(バージンゴム)を10%(重量%)程度、再生ゴムを90%程度とし、繊維材料として合成繊維やガラス繊維若しくは金属繊維等により構成することも可能である。
【0055】
また、本発明の例による縁石マット100では、縁石マット100の上面に、長手方向に沿って、複数の突起170を設ける構成を採用することも可能であり、こうした構成を採用することによって、縁石マット100の上面を通過する車両等のすべり止めに使用することも可能である。そして、こうした突起170については、任意の形態を採用することが可能であり、複数の円錐台状の突起などを採用することも可能であるが、例えば、図1(A)(B)等に表示したように、縁石マットの上面に長手方向に沿って等間隔に複数の線状の突起を設けることも可能である。なお、上述の例では、縁石マットの上面に突起を設けたが、すべり止めの効果が発揮できれば、上記突起と共に、或いは、これに代えて、縁石マットの上面に凹部を形成する構成を採用することも可能である。
【0056】
以上のように、本発明の例による縁石マット100によれば、縁石Cの両側面に段差がある場合であっても容易に段差の解消が可能であり、取り外しや再利用も容易であるため、縁石Cの上面Ctを含めた縁石Cの保護を低コストかつ容易に達成することが可能である。
【0057】
また、本発明では、縁石Cの両側面に個別にスロープを配置した場合のように、個別に配置したスロープが、車両の通行などにより、それぞれ縁石Cの両側からずれてしまうことがない為、一度設置すれば安定的に使用することが可能である。
【0058】
また、本発明による縁石マット100では、下面に導水溝(117,137等)を設け、かかる導水溝(117,137等)を長手方向に沿って高さの高い部分(高溝部分)と高さの低い部分(低溝部分)と交互に設けることも可能である。そのため、荷重に対する一定の強度を維持させることと、円滑な導水を図ることが可能である。
【0059】
なお、上述した図1図2等の例は、本発明の一例を示したものであり、本発明の趣旨の範囲で、異なる構成を採用することも可能である。
【0060】
そのため、図3図4に示したように、主段差解消部と副段差解消部と上面被覆部の大きさの相互の比率や寸法、或いは、導水溝の大きさや比率、突起の形態や数等も、本発明の趣旨の範囲で、図1図2に示した例とは異なった任意の設定とすることも可能である。
【0061】
ここで、図3は、本発明の例による縁石マットについて、図1に示したものと基本的な構成は同様であり、記号も一部に同様なものを用いているが、各部の寸法や導水溝等が異なる構成例である縁石マット300を示したものであり、図3(A)はその側面図、図3(B)はその上面図を示している。
【0062】
また、図4(A)は、図3に示した縁石マット300の底面図を示し、図4(B)は、図4(A)の一点鎖線により表示したαで示した部分の断面図であり、図4(C)は、図4(A)の一点鎖線により表示したβで示した部分の断面図である。
【0063】
上記の図1図2で示した例は、例えば、縁石CとしてL型側溝のエプロン(例えば、図5のCe)の上面から縁石の突出部の上面(縁石上面)Ct迄の高さが10cm程度のものに対応して、主段差解消部110の立面115の長さを同程度に構成し、主段差解消部110の下面113と立面115との角度を84度としたものであるが、図3図4で示した例は、縁石CとしてL型側溝のエプロンCeの上面から縁石の突出部の上面(縁石上面)Ct迄の高さが5cm程度のものに対応して、主段差解消部310の立面315の長さを同程度に構成したものである。
【0064】
そのため、本発明では、このように、本発明の趣旨の範囲で、使用が想定される縁石Cの種類等に応じて、各部の寸法等を調整して用いることが可能である。
【0065】
したがって、例えば、上記図3図4に示したような構成によっても、本発明の効果として、縁石による段差を解消すると共に、縁石の上面を含めた縁石の保護を低コストかつ容易に達成することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
100 300 500 600 縁石マット
110 310 510 610 主段差解消部
111 311 主段差解消部の上面
113 313 主段差解消部の下面
115 315 主段差解消部の立面
117a~117e、317a~317c、617a~617e 主段差解消部の導水溝
117bh~117dh、317bh 主段差解消部の導水溝の高溝部分
117bL~117dL、317bL 主段差解消部の導水溝の低溝部分
J 主段差解消部の頂角部分
130 330 530 630 副段差解消部
131 331 副段差解消部の上面
133 333 副段差解消部の下面
135A 副段差解消部の第1立面
135B 副段差解消部の第2立面
137 337 副段差解消部の導水溝
150 350 550 650 上面被覆部
151 351 上面被覆部の上面
153 353 上面被覆部の下面
θ 主段差解消部の下面と立面との角度
170 突起
C 縁石
Ct 縁石の上面
Ce エプロン
S1、S2 敷地面
HC 敷地面S1と縁石上面Ctとの段差が高い(大きい)側
LC 敷地面S2と縁石上面Ctとの段差が低い(小さい)側
図1
図2
図3
図4
図5