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  • 特許-フロート式逆流防止弁 図1
  • 特許-フロート式逆流防止弁 図2
  • 特許-フロート式逆流防止弁 図3
  • 特許-フロート式逆流防止弁 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】フロート式逆流防止弁
(51)【国際特許分類】
   E03F 7/04 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
E03F7/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020020599
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021124000
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】廣谷 昌久
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-238001(JP,A)
【文献】特開2015-137715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流から下流に排水を行う排水系統中に配設されるフロート式逆流防止弁であって、
上下方向に貫通して前記排水系統の上流側と下流側とを連通する第一流路を有する本体、
前記本体下方の下流側に位置し、上下方向に開口し、該開口が前記第一流路の下流側に接続された環状弁座、
前記環状弁座下方の下流側において上下方向に移動可能に位置し、排水の水位上昇に伴って浮上して前記開口を閉じることで該環状弁座を閉栓し、排水の水位低下に伴って降下して該開口を開放することで該環状弁座を開栓するフロート、
前記フロートの上下方向の移動をガイドするガイド部材、
前記フロートの移動の下限位置を規定する規定部材、
を備え、
前記本体は
略水平方向に貫通して前記排水系統の上流側と前記第一流路とを連通する第二流路であって一端が該第一流路に接続された第二流路、
平面視において、前記第一流路及び前記第二流路の外周に位置する凹部であって前記排水系統の上流側に面する開口面が形成された凹部
を有することを特徴とするフロート式逆流防止弁。
【請求項2】
前記凹部は、平面視において、内側に前記第一流路及び前記第二流路が位置する円環形状である請求項1に記載のフロート式逆流防止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工場などの敷地内や建屋内で発生する排水を河川や海、公共排水施設などに排出する排水系統中に配設されるフロート式逆流防止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
工場などの敷地内や建屋内で発生する排水を河川や海、公共排水施設などに排出する排水系統では、上流から下流への順方向に排水を行うべく、逆流を防止するフロート式逆流防止弁が配設されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一般的に、フロート式逆流防止弁は、排水系統の上流側と下流側とを連通する環状弁座、環状弁座の下方に位置して環状弁座を閉栓及び開栓するフロート、このフロートを上下方向にガイドするガイド部材(ガイド棒)等を備えている。平常時の水位が低い状態においては、フロートは底板に載った(着地した)状態にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平6-67588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したフロート式逆流防止弁では、正常時、環状弁座側(上流側)からフロートの方に排水が流れていくため、排水の一部はフロートに衝突する。そのため、排水に含まれるごみ等の汚物がフロートに付着し易い。そして、付着した汚物によって、フロートが適切に環状弁座を閉栓できない閉弁不良を引き起こす虞がある。
【0006】
この発明は、フロートへの汚物の付着を低減し、閉弁不良の発生を抑制するフロート式逆流防止弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって提供されるフロート式逆流防止弁は、上流から下流に排水を行う排水系統中に配設され、本体、環状弁座、フロート、ガイド部材、規定部材を備える。本体は、上下方向に貫通して排水系統の上流側と下流側とを連通する第一流路を有する。環状弁座は、本体下方の下流側に位置し、上下方向に開口し、開口が第一流路の下流側に接続される。フロートは、環状弁座下方の下流側において上下方向に移動可能に位置し、排水の水位上昇に伴って浮上して開口を閉じることで環状弁座を閉栓し、排水の水位低下に伴って降下して開口を開放することで環状弁座を開栓する。ガイド部材は、フロートの上下方向の移動をガイドする。規定部材は、フロートの移動の下限位置を規定する。また、本体は、平面視において、第一流路の外周に位置する凹部であって排水系統の上流側に面する開口面が形成された凹部を有する。
【0008】
上記本体は、略水平方向に貫通して排水系統の上流側と第一流路とを連通する第二流路を有し、上記凹部は、平面視において、第一流路及び第二流路の外周に位置するようにしてもよい。
【0009】
上記凹部は、平面視において、内側に第一流路及び第二流路が位置する円環形状であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、平面視において、第一流路の外周に位置する凹部であって排水系統の上流側に面する開口面が形成された凹部が本体に形成されている。そのため、排水が凹部を通過する際に汚物が凹部に溜まっていく。これにより、フロートに到達した排水に含まれる汚物の量は、凹部を通過する前の排水よりも少なくなる。したがって、フロートに汚物が付着することを低減でき、閉弁不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の実施形態に係る逆流防止弁の断面図である。
図2】この発明の実施形態に係る逆流防止弁の底面図である。
図3】この発明の実施形態に係るフロート式逆流防止弁の平面図である。
図4】この発明の実施形態に係る逆流防止弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照してこの発明の実施形態であるフロート式逆流防止弁(以下、逆流防止弁という)について説明する。なお、この発明の構成は、実施形態に限定されるものではない。
【0013】
図1は、この発明の実施形態に係る逆流防止弁1の断面図であり、図2は、逆流防止弁1の底面図である。また、図3は、逆流防止弁1を上方から見た平面図である。なお、図1及び図2は、排水管203に配設された状態である。また、図3は、排水管203に配設されていない状態である。
【0014】
図1に示すように、この実施形態の逆流防止弁1は、例えば建屋の床面200に発生する排水を河川や海などに排出する排水系統中に配設され、河川等から床面200に水が逆流してくるのを防止する。排水系統は、床面200に配設された蓋体201、蓋体201が嵌合する係止段部を上方に有する蓋受け部202、蓋受け部202の下部に接続されて下方に延びる排水管203等から構成される。逆流防止弁1は、排水管203の上端側の内部に配設される。
【0015】
逆流防止弁1は、本体2、環状弁座3、ガイド棒4、底板5、フロート6等を備える。本体2は、上下方向に貫通した断面が円形状の流路21及びごみ等の汚物を溜めるごみ溜め部23を有する略円筒形状を呈する。また、本体2は、外周面が、排水管203の段部204の内周面とねじ結合することで、排水管203に着脱自在に固定支持されている。なお、ねじ溝の図示は省略する。流路(第一流路)21は、上端及び下端に開口を有し、排水管203の上流側と下流側とを連通する。また、流路21には、水平方向(横方向)に延びる6本のサブ流路22が接続されている。サブ流路(第二流路)22は、排水管203の上流側(ごみ溜め部23側)と流路21とを連通する。なお、サブ流路22は、精密に水平方向である必要はなく略水平方向であればよい。また、サブ流路22の数、径等は、排水の流量等に応じて任意の構成を採用すればよい。
【0016】
ごみ溜め部23は、本体21上方の段部25に形成されたごみポケットである。ごみ溜め部23は、図3に示すように、平面視において、流路21及びサブ流路22の外周に位置する凹部であり、排水系統(排水移管203)の上流側に面する開口面23Aを有する。本実施形態では、ごみ溜め部23は、平面視において、内側に流路21及びサブ流路22が位置する円環形状である。開口面23Aは、上下方向において、サブ流路22よりも低い位置である。ごみ溜め部23には、排水系統の上流側から排水が流れ込む。その際、汚物はごみ溜め部23に残り、排水はサブ流路22に流れ込んでいく。したがって、排水中の汚物がごみ溜め部23に溜まっていく。
【0017】
なお、サブ流路22を設けない構成としてもよい。この場合、ごみ溜め部23に流れ込んだ排水は、一時的にごみ溜め部23に溜まって流路21上方の開口から流れ込む。
【0018】
環状弁座3は、例えばゴム製であり、流路21の下端の開口に対向する連通開口30を有する。環状弁座3は、ねじ31によって本体2の下端に押圧固定されている。環状弁座3は、連通開口30を介して、流路21と下流側の排水管203とを連通する。
【0019】
ガイド棒(ガイド部材)4は、ステンレス鋼等の金属製であり、フロート6を上下方向に案内する。この実施形態では、図2に示すように、4本のガイド棒4がフロート6の周囲に設けられている。4本のガイド棒4は、フロート6に常に接触している状態ではなく、図1等に示すように、フロート6が底板5の中心に位置している状態では、隙間ができる状態で配設されている。なお、ガイド棒4は、少なくとも3本設けられていればよい。各ガイド棒4は、上端部に係止部41を有する。係止部41は、ねじ孔が形成され、ねじ42によって、環状弁座3を介して本体2に固定される。
【0020】
また、ガイド棒4は、ガイド面43を有する。ガイド面43は、平面形状であり、移動するフロート6と接触してフロート6の上下方向の移動をガイド(案内)する。
【0021】
底板(規定部材)5は、板面が水平の十字形状の板状部材であり、フロート6の下方に位置してフロート6の移動の下限位置を規定する。具体的には、底板5は、降下したフロート6を支持する。なお、底板5の板面は、精密に水平支持される必要はなく略水平であればよい。
【0022】
本実施形態では、ガイド棒4(係止部41を含む)及び底板5は、金属板を用いてプレス成型で一体的に作製(一体成型)されている。すなわち、ガイド棒4は、規定部材である底板5の端部から上方に延設された延設部材である。
【0023】
フロート6は、ステンレス鋼等の金属で形成され、中空の球形状を呈する。フロート6は、環状弁座3下方の下流側に位置する。フロート6は、排水よりも比重が軽く形成されている。そのため、排水管203内の水位の変化によって上下方向に移動する。フロート6は、上昇時において、一部が環状弁座3の連通開口30と嵌合する(連通開口30を閉じる)ことで環状弁座3を閉栓する。なお、フロート6は、平常時の水位が低い状態においては、図1に示すように底板5に載った(着地した)状態にある。また、フロート6は、精密な球形状でなくてもよく、環状弁座3を閉栓できる程度の略球形状であればよい。
【0024】
次に、逆流防止弁1の動作について説明する。
【0025】
順方向に排水が流れる平常時において、排水管203内の水位は、一般的に底板5の配設位置よりも低いので、フロート6は、自重などによって降下して底板5に載った(着地した)状態にある。したがって、環状弁座3は開栓されている。これにより、排水が床面200(上流)から流路21の上端の開口から流路21に流れ込む、又は、サブ流路22から流路21に流れ込む。なお、サブ流路22に流れ込む排水の多くは、排水が床面200(上流)からごみ溜め部23を経由してサブ流路22に流れ込んでいく。そのため、排水中の汚物がごみ溜め部23に溜まっていく。その後、排水は、流路21から環状弁座3の連通開口30を通過し、4本のガイド棒4及び底板5の隙間を通過して排水管203の下流に流れていく。逆流防止弁1を通過した排水管203内の排水は、例えば河川等(下流)に排出される。
【0026】
一方、下流側からの水の逆流時においては、排水管203内の水位は下流側から環状弁座3に向かって上昇するので、フロート6は、例えば、下部略半分が水没した状態で浮力によって浮上する。そして、水位が更に上昇して環状弁座3にまで達する状態では、フロート6は、環状弁座3を閉栓する状態となる。これにより、環状弁座3よりも上流側に水が逆流して床面200などに溢れ出すことを確実に防止する。また、ごみ溜め部23も、環状弁座3よりも上流側に位置しているので、逆流によって、溜まっている汚物が散乱することが防止される。その後、逆流が解消して水位が低下した場合には、フロート6は自重により降下して連通開口30が開放されることになるので環状弁座3が開栓される。
【0027】
なお、逆流防止弁1(ユニット全体)は、上述したように、ねじ結合によって着脱自在に排水管203に固定支持されているので、排水管203から取り外すことができる。図4は、排水管203から逆流防止弁1を取り外した状態である。このように、排水管203から逆流防止弁1を取り外すことによって、ごみ溜め部23に溜まった汚物を回収することもできる。
【0028】
以上のように、平面視において、第一流路(流路)の外周に位置する凹部であって排水系統の上流側に面する開口面が形成された凹部(ごみ溜め部)が本体に形成されている。そのため、排水が凹部を通過する際に汚物が凹部に溜まっていく。これにより、フロートに到達した排水に含まれる汚物の量は、凹部を通過する前の排水よりも少なくなる。したがって、フロートに汚物が付着することを低減でき、閉弁不良の発生を抑制することができる。
【0029】
なお、フロート及び底板は、互いの固着を防止するため金属製であることが望ましい。逆流自体は、頻繁に発生するものではないため、フロートは、基本的に底板に載っている(着地している)状態が多く、樹脂等で形成された場合には底板と固着し易いためである。
【0030】
また、この実施形態のごみ溜め部(凹部)は、上下方向において、流路(第一流路)よりも低い位置にあるが、高い位置にあってもよい。この場合、サブ流路(第二流路)は設けなくてもよい。さらに、この実施形態のごみ溜め部は、平面視において環形状であるが、特にこれに限定されるものではない。平面視において第一流路及び第二流路の外周に位置していれば、任意の形状の凹部を採用可能であり、また複数あってもよい。また、ごみ溜め部(凹部)の上下方向の形状、深さも任意の構成を採用可能である。
【0031】
さらに、この実施形態の逆流防止弁は、排水管の内部に配設されているが、特にこれに限定されるものではない。排水系統中に配設され、且つ、ごみ溜め部(凹部)が排水管内に位置する構成であれば、任意の構成を採用可能である。例えば、2つの排水管の間に逆流防止弁を配設する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この発明は、工場などの敷地内や建屋内で発生する排水を河川や海、公共排水施設などに排出したり、一般家庭などで浴槽や洗面所などで使用した水を公共排水施設などに排水したりする排水系統などを施工、販売、運用する産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 フロート式逆流防止弁
2 本体
3 環状弁座
4 ガイド棒(ガイド部材)
5 底板(規定部材)
6 フロート
21 流路(第一流路)
22 サブ流路(第二流路)
23 ごみ溜め部(凹部)
23A 開口面
203 排水管
図1
図2
図3
図4