(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】構造部材および燃料タンク
(51)【国際特許分類】
B60K 15/03 20060101AFI20231219BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20231219BHJP
B29C 49/20 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B60K15/03 B
F02M37/00 301J
B29C49/20
(21)【出願番号】P 2020048024
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2020006934
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515239722
【氏名又は名称】SRDホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 達也
(72)【発明者】
【氏名】牧野 俊輔
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-111370(JP,A)
【文献】特開2015-093472(JP,A)
【文献】特開2016-020061(JP,A)
【文献】特開2018-039470(JP,A)
【文献】特表2016-506331(JP,A)
【文献】特開2018-039413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/03
F02M 37/00
B29C 49/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの内部空間に配置されて、当該燃料タンクの壁を支持可能な構造部材であって、
前記構造部材において、前記壁を支持する方向に沿う軸方向と、当該軸方向とは垂直な垂直方向を定義し、当該構造部材は、
前記軸方向の少なくとも一端の側から見て、前記壁を構成する壁部材と接続可能な第1接続部及び当該第1接続部に隣接しつつ、当該第1接続部より前記一端から離れた位置に存在する第2接続部を少なくとも有し、
前記第1接続部は、前記第2接続部よりも前記垂直方向において前記構造部材の中心側へ突出する突出部を備
え、
前記第2接続部は、前記軸方向において前記第1接続部に隣接しつつ、当該第1接続部より前記一端から離れた位置に存在する複数のリブと、前記第1接続部と軸方向反対側で前記複数のリブに隣接し、前記第1接続部と同じ外径を有する円盤状部と、を有し、前記壁部材と接続可能である、
構造部材。
【請求項2】
請求項1に記載の構造部材であって、
前記突出部は、前記垂直方向が存在する面において前記第1接続部の全周に渡って形成される、
構造部材。
【請求項3】
燃料タンクの内部空間に配置されて、当該燃料タンクの壁を支持可能な構造部材であって、
前記構造部材において、前記壁を支持する方向に沿う軸方向と、当該軸方向とは垂直な垂直方向を定義し、当該構造部材は、
前記軸方向の少なくとも一端の側から見て、前記壁を構成する壁部材と接続可能な第1接続部及び当該第1接続部に隣接しつつ、当該第1接続部より前記一端から離れた位置に存在する第2接続部を少なくとも有し、
前記第1接続部は、前記第2接続部よりも前記垂直方向において前記構造部材の中心側へ突出する突出部を備え、
前記第2接続部において、前記垂直方向に沿って前記構造部材の内部から外部に貫通するガス通過路が形成される、
構造部材。
【請求項4】
燃料タンクの内部空間に配置されて、当該燃料タンクの壁を支持可能な構造部材であって、
前記構造部材において、前記壁を支持する方向に沿う軸方向と、当該軸方向とは垂直な垂直方向を定義し、
当該構造部材は、
前記軸方向の少なくとも一端の側から見て、前記壁を構成する壁部材と接続可能な第1接続部及び当該第1接続部に隣接しつつ、当該第1接続部より前記一端から離れた位置に存在する第2接続部をそれぞれ有する1対の接続部と、
前記1対の接続部間に配置される支柱胴部と、
を備え、
前記第1接続部は、前記第2接続部よりも前記垂直方向において前記構造部材の中心側へ突出する突出部を備え、
前記支柱胴部は、前記接続部との結合部分にノッチ部を有し、
前記ノッチ部は、前記接続部との結合部分の前記支柱胴部の断面積が徐々に減少するように、テーパ形状に切欠かれる、
構造部材。
【請求項5】
請求項
4に記載の構造部材であって、
前記ノッチ部は、軸方向において、前記燃料タンクの外形をなす主面から前記内部空間の側に窪んだ凹部の底部から30mm以下の位置に形成される、
構造部材。
【請求項6】
燃料タンクの内部空間に配置されて、当該燃料タンクの壁を支持可能な構造部材であって、
前記構造部材において、前記壁を支持する方向に沿う軸方向と、当該軸方向とは垂直な垂直方向を定義し、
当該構造部材は、
前記軸方向の少なくとも一端の側から見て、前記壁を構成する壁部材と接続可能な第1接続部及び当該第1接続部に隣接しつつ、当該第1接続部より前記一端から離れた位置に存在する第2接続部をそれぞれ有する1対の接続部と、
前記1対の接続部間に配置される支柱胴部と、
を備え、
前記第1接続部は、前記第2接続部よりも前記垂直方向において前記構造部材の中心側へ突出する突出部を備え、
前記支柱胴部は、前記接続部との結合部分にノッチ部を有し、
前記支柱胴部は、前記第2接続部との結合部分まで前記軸方向にそれぞれ延びる複数の起立壁を有し、
前記第2接続部との結合部分における前記複数の起立壁の前記垂直方向の最小断面積は、前記ノッチ部を有しない前記複数の起立壁の前記垂直方向の断面積の50%~70%の範囲である、
構造部材。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか1項に記載の構造部材と、
前記壁部材から構成され、前記内部空間を画定する本体と、
を備える燃料タンクであって、
前記壁部材は、前記燃料タンクの外形をなす主面から前記内部空間の側に窪んだ凹部を備え、
前記凹部の底部において、前記壁部材は前記第1接続部および前記第2接続部と接続する、燃料タンク。
【請求項8】
請求項
7に記載の燃料タンクであって、
前記第2接続部との接続領域において前記底部において露出した面の少なくとも一部が、前記第1接続部との接続領域において前記底部において露出した面の少なくとも一部より、前記構造部材の前記垂直方向において外側に存在する、
燃料タンク。
【請求項9】
請求項
7または
8に記載の燃料タンクであって、
前記壁部材は第1の壁部材と、前記内部空間を隔てて前記第1の壁部材に対向した第2の壁部材を含み、
前記構造部材は、前記第1の壁部材および前記第2の壁部材に接続する、
燃料タンク。
【請求項10】
燃料タンクの内部空間に配置されて、当該燃料タンクの壁を支持可能な構造部材であって、前記構造部材において、前記壁を支持する方向に沿う軸方向と、当該軸方向とは垂直な垂直方向を定義し、当該構造部材は、前記軸方向の少なくとも一端の側から見て、前記壁を構成する壁部材と接続可能な第1接続部及び当該第1接続部に隣接しつつ、当該第1接続部より前記一端から離れた位置に存在する第2接続部を少なくとも有し、前記第1接続部は、前記第2接続部よりも前記垂直方向において前記構造部材の中心側へ突出する突出部を備える、構造部材と、
前記壁部材から構成され、前記内部空間を画定する本体と、
を備える燃料タンクであって、
前記壁部材は、前記燃料タンクの外形をなす主面から前記内部空間の側に窪んだ凹部を備え、
前記凹部の底部において、前記壁部材は前記第1接続部および前記第2接続部と接続し、
前記第2接続部との接続領域において前記底部において露出した面の少なくとも一部が、前記第1接続部との接続領域において前記底部において露出した面の少なくとも一部より、前記構造部材の前記垂直方向において外側に存在する、
燃料タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造部材および燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクの如き容器には、その内側及び外側に種々の部材が取り付けられる。このような部材の取り付け方法として種々の技術が開示されている。また、燃料タンクは、従来は金属製のものが用いられてきたが、近年は軽量化等の理由から、熱可塑性樹脂の如き樹脂により成形される樹脂燃料タンクが用いられるようになっている。このような事情に鑑み、部品の燃料タンクなどのへの取り付け方法についても新たな技術が提案されている。
【0003】
特許文献1は、壁部と支柱部材との結合部への応力の集中を抑制しながら変形を抑制することができる車両用燃料タンクを開示している。燃料タンク本体内には、上壁から底壁へ延設されると共に、長手方向のフランジ部が突出部にそれぞれ溶着された支柱部材が設けられている。支柱部材には、支柱部材における一対の突出部の近傍に変形起点部がそれぞれ設けられていることから、燃料タンク本体の上壁及び底壁が変形しようとする際に応力を支柱部材と壁部における突出部との結合部よりも変形起点部へ集中させることができる。これにより、突出部と支柱部材との結合部への応力の集中を抑制しながら変形を抑制することができる。
【0004】
特許文献2は、複雑な機構を要することなく、しかも燃料タンクの肉厚の局部的な変化を抑制した樹脂燃料タンクの製造方法を提供する。凹部に対して進退自在に構成されたロッドの先端に弾性体入子が取り付けられている。先ず、ロッドを凹部から後退させることにより、弾性体入子が凹部に密着され、この状態で溶融樹脂からなるシート体を賦形することにより、シート体が凹部に密着された弾性体入子上に配置される。さらに、弾性体入子と凹部との間に空気を供給することによって、弾性体入子の周端部側が膨張変形して取付座本体の下面の外周部にシート体を密着させ、シールする。続いて、ロッドを凹部内に前進させることによって、取付座本体の下面に突出形成されたアンダーカット形状部に溶融樹脂(シート体)が供給され、カシメ部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-111370号公報
【文献】特開2017-149053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、燃料タンク本体の上壁及び底壁が変形しようとする際に応力を変形起点部へ集中させ、突出部と支柱部材との結合部への応力の集中を抑制しながら変形を抑制することができる。これにより、燃料タンク本体全体の変形量を小さくし、外形を安定させることを図っているが、燃料タンク本体と支柱部材の接合の強度を上げることを目的としたものではない。
【0007】
特許文献2は、燃料タンクに内蔵部品を取りつける技術に関するものであり、燃料タンクそのものの強度を向上させる構造部材に関するものではない。また、実際の燃料タンク製造には複雑な構造の型を要するものである。
【0008】
また、特許文献1では、燃料タンクの内圧の上昇によるタンク変形時に発生する応力を変位起点部へ集中させているが、車両衝突時のような、水平方向からの衝撃荷重が燃料タンクに負荷された場合については考慮されていなかった。
【0009】
本発明は、燃料タンクとの接続の強度向上を図る構造部材、そのような構造部材を採用した燃料タンクに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の構造部材は、燃料タンクの内部空間に配置されて、当該燃料タンクの壁を支持可能な構造部材であって、前記構造部材において、前記壁を支持する方向に沿う軸方向と、当該軸方向とは垂直な垂直方向を定義し、当該構造部材は、前記軸方向の少なくとも一端の側から見て、前記壁を構成する壁部材と接続可能な第1接続部及び当該第1接続部に隣接しつつ、当該第1接続部より前記一端から離れた位置に存在する第2接続部を少なくとも有し、前記第1接続部は、前記第2接続部よりも前記垂直方向において前記構造部材の中心側へ突出する突出部を備える。
【0011】
本発明の構造部材において、例えば前記突出部は、前記垂直方向が存在する面において前記第1接続部の全周に渡って形成される。
【0012】
本発明の構造部材において、例えば前記第2接続部において、前記垂直方向に沿って前記構造部材の内部から外部に貫通するガス通過路が形成される。
【0013】
本発明の構造部材において、例えば、前記第1接続部及び第2接続部をそれぞれ有する1対の接続部と、前記1対の接続部間に配置される支柱胴部と、を備え、前記支柱胴部は、前記接続部との結合部分にノッチ部を有する。
【0014】
本発明の構造部材において、例えば、前記ノッチ部は、前記接続部との結合部分の前記支柱胴部の断面積が徐々に減少するように、テーパ形状に切欠かれる。
【0015】
本発明の構造部材において、例えば、前記ノッチ部は、軸方向において、前記燃料タンクの外形をなす主面から前記内部空間の側に窪んだ凹部の底部から30mm以下の位置に形成される。
【0016】
本発明の構造部材において、例えば、前記支柱胴部は、前記第2接続部との結合部分まで前記軸方向にそれぞれ延びる複数の起立壁を有し、前記第2接続部との結合部分における前記複数の起立壁の前記垂直方向の最小断面積は、前記ノッチ部を有しない前記複数の起立壁の前記垂直方向の断面積の50%~70%の範囲である。
【0017】
本発明は、構造部材と、前記壁部材から構成され、前記内部空間を画定する本体と、を備える燃料タンクであって、前記壁部材は、前記燃料タンクの外形をなす主面から前記内部空間の側に窪んだ凹部を備え、前記凹部の底部において、前記壁部材は前記第1接続部および前記第2接続部と接続する。
【0018】
本発明の燃料タンクにおいて、例えば前記第2接続部との接続領域において前記底部において露出した面の少なくとも一部が、前記第1接続部との接続領域において前記底部において露出した面の少なくとも一部より、前記構造部材の前記垂直方向において外側に存在する。
【0019】
本発明の燃料タンクにおいて、例えば前記壁部材は第1の壁部材と、前記内部空間を隔てて前記第1の壁部材に対向した第2の壁部材を含み、前記構造部材は、前記第1の壁部材および前記第2の壁部材に接続する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の構造部材においては、第2接続部よりも壁部材側に近い第1接続部において、垂直方向に突出する突出部が設けられているため、燃料タンクとの強固な接続を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る構造部材を用いた樹脂燃料タンクを示し、(a)は斜視図、(b)は(a)のI-I線に沿った断面図である。
【
図2】
図2は、樹脂燃料タンク内に設けられた構造部材を示し、(a)は正面図、(b)は(a)のII-II線に沿った断面図である。
【
図3】
図3は、樹脂燃料タンクの製造工程を示す図であり、(a)は第1工程、(b)は第2工程、(c)は第3工程、(d)は第4工程を示す。
【
図5】
図5は、
図3(c)、(d)の第3、第4工程、すなわち構造部材とパリソンとの接続の工程を詳細に説明する図であり、(a)は第1工程、(b)は第2工程、(c)は第3工程、(d)は第4工程を示す。
【
図7】
図7は、第1実施形態の変形例の構造部材を示し、(a)は上面図、(b)は構造部材の上部の側面図を示す。
【
図8】
図8は、
図7(a)のVII-VII線に沿った一部の領域であって、
図7(b)のR領域の拡大図を示す。
【
図9】
図9は、第1実施形態の樹脂燃料タンクを示し、(a)は通常時の断面図、(b)内部空間から上向きの力が作用したときの変形を示す断面図を示す。
【
図10】
図10は、凹部が存在しない樹脂燃料タンクを示し、(a)は通常時の断面図、(b)内部空間から上向きの力が作用したときの変形を示す断面図を示す。
【
図11】
図11は、本発明の第2実施形態に係る樹脂燃料タンク内に設けられた構造部材を示す図である。
【
図12】
図12は、(a)は、
図11のXIIA-XIIA線に沿った断面図であり、(b)は、
図11のXIIB-XIIB線に沿った断面図であり、(c)は、
図11のXIIC-XIIC線に沿った断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の一実施形態に係る構造部材に設けられたノッチ部を説明するための図であり、(a)は
図11のXIIIA部拡大図であり、(b)は
図11のXIIIB部拡大図である。
【
図14】第2実施形態に係る構造部材における応力の影響を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明を実施するための形態に基づいて、本発明の詳細およびその他の特徴について説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1(a)、(b)は、本発明の第1実施形態に係る構造部材を用いた樹脂燃料タンクの一例の斜視図、断面図である。樹脂燃料タンク100は、自動車等に取り付けられる燃料タンクであり、軽量化等の観点から、本体60は熱可塑性樹脂の如き樹脂により成形されている。また、本体60の内部空間には構造部材1が配置され、構造部材1が、本体60の対向する二つの壁を接続することにより、樹脂燃料タンク100の形状を維持する役割を果たす。構造部材1は、本体60の上壁(第1の壁)を構成する第1の壁部材61に形成された凹部62の底部62aと、下壁(第2の壁)を構成する第2の壁部材63の凹部64の底部64aとを接続している。
【0024】
すなわち、樹脂燃料タンク(燃料タンク)100は、壁部材から構成され、内部空間Sを画定する本体と、内部空間Sに配置された構造部材1とを備える。壁部材は、内部空間Sを隔てて対向した第1の壁部材61、第2の壁部材63を含み、第1の壁部材61は、樹脂燃料タンク100の外形をなす主面から内部空間Sの側に窪んだ凹部62を備え、第2の壁部材63は、樹脂燃料タンク100の外形をなす主面から内部空間Sの側に窪んだ凹部64を備える。構造部材1は、凹部62、64が存在する箇所において第1の壁部材61および第2の壁部材63を接続しており、樹脂燃料タンク100の強度を確保する。
【0025】
図2(a)、(b)は、本発明の一実施形態に係る構造部材1の拡大図を示す。構造部材1は、内部空間Sに配置され、本体60の壁を支持する方向(図では上下方向)に沿う軸方向Zと、軸方向Zとは垂直な垂直方向X、Y(図では水平方向)によって定義される全体形状が略円筒形を呈する。構造部材1は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリアミド等の合成樹脂により成形され得るが特にその素材は限定されない。
【0026】
また、構造部材1は、軸方向Zの少なくとも一端において、本体60の壁を構成する第1の壁部材61(または第2の壁部材63)と接続可能な1対の接続部18と、1対の接続部18間に配置される支柱胴部25と、を有している。本実施形態においては、構造部材1は第1の壁部材61および第2の壁部材63の両方に接続しているため、接続部18は両端に存在する。
図1(a)、(b)に示すように接続部18は、凹部62、64の底部62a,64aに接続している。
【0027】
接続部18は第1接続部13と第2接続部15とを備える。第1接続部13は、構造部材1の最も端の部分に存在し、
図2(b)に示すように平坦な円環形状を呈している。第2接続部15は、軸方向Zにおいて第1接続部13に隣接しつつ、第1接続部13より一端から離れた位置に存在する複数のリブ15aと、第1接続部13と軸方向反対側で複数のリブ15aに隣接し、第1接続部13と同じ外径を有する円盤状部15bと、を有する。
【0028】
第1接続部13は、第2接続部15よりも垂直方向X、Yにおいて構造部材1の中心側へ突出する突出部13aを備える。第2接続部15は複数のリブ15aによって構成されており、リブ15aの一部は突出部13aと同様に、構造部材1の中心側へ突出している(
図2(b)では中央の二つのリブ)。ただし、少なくとも第1接続部13における突出部13aは、垂直方向X、Yが存在する面、すなわち
図2(b)の面において、少なくとも一部で第2接続部15よりも垂直方向X、Yにおいて構造部材1の中心側へ突出する。特に本実施形態において突出部13aは、垂直方向が存在する面において第1接続部13の全周に渡って形成される。第1接続部13、第2接続部15については後に詳述する。
【0029】
さらに第2接続部15において、垂直方向X、Yに沿って構造部材1の内部から外部に貫通するガス通過路11が形成されている。ガス通過路11は、樹脂燃料タンク100の製造工程において発生するガスを矢印Gの流れに沿って通過させる役割を果たし、その詳細は後述する。
【0030】
支柱胴部25は、軸方向Zの両側で、第2接続部15との結合部分である円盤状部15bまで軸方向にそれぞれ延び、且つそれぞれ連結される複数の起立壁28を有する1対の支柱胴部端部26と、1対の支柱胴部端部26間に位置する支柱胴部中央部27と、を有する。なお、第1実施形態において、支柱胴部25は、1対の接続部18間に配置され、1対の接続部18と連続して成形されるものであれば、他の形状であってもよい。
【0031】
図3は、樹脂燃料タンクの製造工程を示す図であり、(a)は第1工程である樹脂押出し工程、(b)は第2工程である1次転写工程、(c)は第3工程であるパーツ取付け工程、(d)は第4工程である2次転写工程をそれぞれ示す。
図3(a)の第1工程では、シート状の2枚の樹脂製のパリソン31、32(第1の壁部材61、第2の壁部材63の元となる)を押し出し、上側金型41と中型51の間にパリソン31、中型51と下側金型42の間にパリソン32を配置する。
図3(b)の第2工程では、上側金型41と下側金型42によって中型51を挟み込み、中型51を介して空気を吹き込むことによりパリソン31、32を上側金型41、下側金型42へ転写させる。
【0032】
図3(c)の第3工程では、中型51を移動させた後、構造部材1を保持したパーツ圧着ツール52を上側金型41と下側金型42の間に配置する。
図3(d)の第4工程では、パーツ圧着ツール52を下側に移動させ、構造部材1を下側金型42に転写されたパリソン32に接続する。
【0033】
図4は、
図3(a)のP領域の拡大図を示す。上側金型41は、金型本体46と、凸部43と、先端部44とを備えており、第1の壁部材61(パリソン31)を加工するものである。金型本体46は樹脂燃料タンク100の外形となる第1の壁部材61の主面を形成する。凸部43は凹部62を形成する。先端部44は第1の壁部材61と、構造部材1の接続部18との接続を確実にする役割を果たす。下側金型42も同じ構造を有しており、第2の壁部材63(パリソン32)を加工する。
【0034】
図5は、
図3(c)、(d)の第3、第4工程、すなわち構造部材1とパリソン32との接続の工程を詳細に説明する図であり、(a)は第1工程、(b)は第2工程、(c)は第3工程、(d)は第4工程を示す。ただし、本図では
図3(c)、(d)とは異なり、上側金型41により、構造部材1とパリソン31を接続する例を挙げて説明する。
【0035】
図5(a)の第1工程では、上側金型41と上側金型41に転写したパリソン31が、構造部材1から離れて配置されており、
図3(c)に対応した状態である。
図5(b)の第2工程では、構造部材1を矢印Aの様に上側に移動させパリソン31に接触させると、所定の温度をもって流動体の状態(半固化状態)にあるパリソン31が、構造部材1の接続部18に流れ込み、冷えて固化することにより、パリソン31と構造部材1が接続する。この工程については
図6を用いて更に詳細に説明する。
図5(c)の第3工程では、上側金型41を矢印Bの様に上側に移動させ、パリソン31から上側金型41を引き離す。この結果、
図4(d)の第4工程では、互いに接続したパリソン31と構造部材1が残り、
図3(d)に対応した状態になる。尚、下側金型42もパリソン32、構造部材1に対して同様の作用をする。
【0036】
図6は、
図5(b)のQ領域の拡大図を示す。すなわち、構造部材1をパリソン31に接触させると、所定の温度をもって流動体の状態(半固化状態)にあるパリソン31が、矢印Cで示す方向に沿って構造部材1の接続部18に流れ込み、冷えて固化することにより、パリソン31により構成される第1の壁部材61と構造部材1が接続する。尚、
図6は、
図5(b)のQ領域の拡大図であるが、
図2(b)におけるIII-III線に沿った部分を示しており、便宜上本来は現れない第1接続部13の断面を図示している。第2接続部15を構成するリブ15aは本図には現れていないが、実際は断面を示した第1接続部13の下に第2接続部15を構成するリブが存在しており、
図6ではその部分を指し示している。
【0037】
上記のようなプロセスを経た結果、第1の壁部材61には、樹脂燃料タンク100の外形をなす主面から内部空間Sの側に窪んだすり鉢状の凹部62が形成されることになる。また、凹部62の底部62aにおいて、第1の壁部材61は構造部材1の第1接続部13および第2接続部15と接続することになる。ここで第1の壁部材61の側から見ると、第1接続部13、第2接続部15が順番に位置し、第1接続部13は、第2接続部15よりも垂直方向X、Yにおいて構造部材1の中心側へ突出する突出部13aを備える。詳しくは
図2(b)で示したように、第2接続部15を構成する複数のリブ15aのうち一部を除いて、第1接続部13は、第2接続部15よりも垂直方向X、Yにおいて構造部材1の中心側へ突出する。すなわち、第1の壁部材61の側から見て第1接続部13と第2接続部15はいわゆるアンダーカット構造を呈し、第1の壁部材61は、第1接続部13の下側に潜り込むように形成される。これにより、第1の壁部材61と構造部材1は接続部18において強固に接続される。
【0038】
また、上述したように第2接続部15において、垂直方向X、Yに沿って構造部材1の内部から外部に貫通するガス通過路11が形成されている。このため
図5(b)のプロセスでは、流動体であるパリソン31が矢印Cに従って第1接続部13の下側に流れ込む際に、不可避的に発生するガスが、
図6の矢印Gで示すようにガス通過路11を通って、構造部材1の内部から外部に排出される。これにより、ガスが接続部18に残留することを抑制し、第1の壁部材61と構造部材1との接続を安定化させることができる。
【0039】
さらに、上側金型41の突出部43は凹部62を形成し、先端部44は底部62aを形成し、かつ、上記のようなパリソン31の流れを促進して第1の壁部材61と、構造部材1の接続部18との接続を確実にする。さらに先端部44の周囲には先端部44の垂直方向に突出した凸状の周縁部45が設けられている。周縁部45が突出する方向は、構造部材1の垂直方向X、Yと一致しており、周縁部45は第1接続部13および第2接続部15によって実現されるアンダーカット構造の方向へ延びている。このような構成により、流動体であるパリソン31の矢印C方向への流れが促進され、第1の壁部材61と構造部材1との接続がより強固なものとなる。このような金型を採用した結果、完成した樹脂燃料タンク100の凹部62においては、第2接続部15との接続領域において底部62aにおいて露出した面R2の少なくとも一部が、第1接続部13との接続領域において底部62aにおいて露出した面R1の少なくとも一部より、構造部材1の垂直方向X、Yにおいて外側に存在することになる。
【0040】
図7は、第1実施形態の変形例の構造部材1を示し、(a)は上面図、(b)は構造部材1の上部の側面図を示す。
図8は、
図7(a)のVII-VII線に沿った一部の領域であって、
図7(b)のR領域の拡大図を示す。本実施形態の構造部材1においては、他のガス通過路12が構造部材1の軸方向にも設けられており、ガス通過路11が第1のガス通過路と定義すると、ガス通過路12は第2のガス通過路と定義される。
【0041】
すなわち第2接続部15において、第1のガス通過路11に加えて、軸方向Zに沿って構造部材1の上部から下部へ貫通する第2のガス通過路12が形成されている。このため
図5(b)のプロセスでは、発生したガスが、第1のガス通過路11のみならず第2のガス通過路12を通って構造部材1の下方へ排出される。これにより、ガスが接続部18に残留することを抑制し、第1の壁部材61と構造部材1との接続をさらに安定化させることができる。
【0042】
図9は、本実施形態の樹脂燃料タンク100を示し、(a)は通常時の断面図、(b)は内部空間Sから上向きの力Dが作用したときの変形を示す断面図を示す。内部空間Sに貯留した燃料から発生したガス等により、このような力が発生することがあり得る。本実施形態においてはすり鉢状の凹部62が形成されており、たとえ樹脂燃料タンク100が変形しても、構造部材1と第1の壁部材61との接続部18周辺の形状は維持されやすい。よって、接続部18の周辺に過大な応力が発生するのを防止することができる。尚、
図6~9で述べた作用効果は、第2の壁部材63においても同様である。
【0043】
一方、
図10は、凹部が存在しない樹脂燃料タンクを示し、(a)は通常時の断面図、(b)は内部空間Sから上向きの力Dが作用したときの変形を示す断面図を示す。このような形状においては、変形時に接続部18の周辺に過大な応力がかかりやすく、接続部18、構造部材1の破損につながりやすいと考えられる。
【0044】
尚、本体60、構造部材1を形成する素材は特に限定されない。本体60は、変性ポリエチレン、高密度ポリエチレン等の熱可塑性樹脂により成形され得るが、特に素材は限定されない。また、構造部材1は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリアミド等の合成樹脂により成形され得るが、特に素材は限定されない。本体60と構造部材1を同じ素材により成形してもよい。また、
図2(b)に示すように実施形態では突出部13aは、垂直方向が存在する面において第1接続部13の全周に渡って形成されるが、突出部は必ずしも全周に渡って形成される必要はなく、一部欠けた個所があっても構造部材と壁部材の必要な強度が確保されれば問題はない。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る構造部材について、
図11~
図14を参照して説明する。なお、第1実施形態の構造部材と同等な構造については、同一符号または相当符号を付して、説明を省略または簡略化する。
【0046】
本実施形態においても、構造部材1aは、1対の接続部18と、支柱胴部25とが連続して成形され、支柱胴部25は、軸方向Zの両側で、第2接続部15との結合部分である円盤状部15bまで軸方向にそれぞれ延び、且つそれぞれ連結される複数の起立壁28を有する1対の支柱胴部端部26と、1対の支柱胴部端部26間に位置する支柱胴部中央部27と、を有する。具体的に、
図12(c)に示すように、複数の起立壁28は、中央位置で互いに交差して連結する第1、第2の起立壁28a,28bと、第2の起立壁28bの径方向両端部で連結され、第1の起立壁28aと平行に延び、外面が円弧状の第3の起立壁28cと、を有する。
なお、本実施形態では、複数の起立壁28はそれぞれ連結されて、接続部18と支柱胴部中央部27に軸方向両側で結合されているが、複数の起立壁28の一部は、他の起立壁28と連結されずに、接続部18と支柱胴部中央部27に軸方向両側で結合されてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、支柱胴部25は、接続部18との結合部分にノッチ部21を有する。即ち、ノッチ部21は、第2接続部15の円盤状部15bとの結合部分に、当該結合部分の支柱胴部25の断面積が徐々に減少するように、テーパ形状に切欠かれる。
より具体的には、
図13に示すように、第1の起立壁28aは、円盤状部15bとの結合部分において、X、Y方向において、断面略三角形のテーパ形状に切欠かれる。また、第3の起立壁28cは、円弧状の外面が、断面略三角形で円錐テーパ形状に切欠かれる。
なお、ここでは、ノッチ部21の形状を、応力を受けた際の破断の起点になりやすい断面略三角形としているが、これに限定されない。また、ノッチ部21を形成する起立壁28の箇所は、いずれでもよく、例えば、第1~第3の起立壁28a~28cのすべてに設けてもよい。
【0048】
ノッチ部21は、軸方向において、第1の壁部材61の凹部62の底部62aから30mm以下の位置に形成される。即ち、凹部62の底部62aから第2接続部15の円盤状部15bとの間の距離Lは、30mm以下に設定される。したがって、衝撃荷重が印加される壁部材61,63に比較的近い位置にノッチ部21が形成されるので、衝撃荷重が印加された際に応力集中がノッチ部21に働き、この部分で破断し易くなる。
【0049】
また、
図12(b)に示す、第2接続部15との結合部分における複数の起立壁28の垂直方向の最小断面積は、
図12(c)に示す、ノッチ部21を有しない部分での複数の起立壁28の垂直方向の断面積の50%~70%の範囲に設定される。即ち、ノッチ部21における上記最小断面積は、通常時には、燃料タンクの変形を抑制して、燃料タンクを補強する機能を保持しつつ、車両衝突時には、ノッチ部21が破断しやすいように設計される。
【0050】
このように形成された構造部材1aを有する燃料タンクでは、
図14に示すように、車両衝突時には、第1の壁部材61または第2の壁部材63に垂直方向から衝突荷重Fが印加される。このとき、構造部材1にノッチ部21がない構成の場合には、衝突荷重Fによって、壁部材61,63が点線で示すように変形し、構造部材と壁部材との結合部Pに高い応力が集中し、壁部材61,63に亀裂が発生する可能性がある。
【0051】
一方、構造部材1aがノッチ部21を有する場合には、応力集中部がノッチ部21に移るため、ノッチ部21で構造部材1aが積極的に破断する。これにより、壁部材61,63に亀裂が発生する可能性を抑制することができる。
【0052】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
また、上記の説明に用いた「第1」「第2」といった表現は、説明を行うために便宜上用いた表現であり、これにより発明の内容を限定することを意図するものではない。
【0053】
例えば、上記実施形態では、構造部材1が、
図3に示す、ツインシート成形法で使用される場合について説明したが、本発明の構造部材は、樹脂燃料タンクの他の製造方法においても適用可能である。
また、本発明のノッチ部を有する構造部材は、本実施形態の接続部の第1接続部が、第2接続部よりも垂直方向において構造部材の中心側へ突出する突出部を有する構成に限らず、接続部が任意の構造を有する場合にも適用可能である。
即ち、本発明の構造部材は、燃料タンクの壁を構成する壁部材と接続する1対の接続部と、1対の接続部間に配置される支柱胴部と、を備え、支柱胴部は、接続部との結合部分にノッチ部を有する。これにより、衝撃荷重によって、壁部材と構造部材との結合部において、燃料タンクの壁部材に亀裂が発生する可能性を抑制することができる。特に、薄肉の壁部材を有する燃料タンクにおいて、壁部材に穴あきが生じるのを確実に抑制できる。
【符号の説明】
【0054】
1 構造部材
11 (第1の)ガス通過路
12 (第2の)ガス通過路
13 第1接続部
13a 突出部
15 第2接続部
18 接続部
21 ノッチ部
25 支柱胴部
28,28a,28b,28c 起立壁
31 パリソン
32 パリソン
41 上側金型
42 下側金型
51 中型
52 パーツ圧着ツール
60 本体
61 第1の壁部材
62 凹部
63 第2の壁部材
64 凹部
100 樹脂燃料タンク(燃料タンク)