(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】両面研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 37/08 20120101AFI20231219BHJP
B24B 37/28 20120101ALI20231219BHJP
【FI】
B24B37/08
B24B37/28
(21)【出願番号】P 2020190151
(22)【出願日】2020-11-16
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】503409115
【氏名又は名称】株式会社太陽
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯濱 孝雄
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-043815(JP,A)
【文献】特開2013-173194(JP,A)
【文献】特開平09-239657(JP,A)
【文献】特開2013-176825(JP,A)
【文献】特開2008-012623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B37/00-37/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側研磨具を備えた下定盤の上に配置された複数のキャリアの複数の保持孔にワークを保持し、それぞれの前記キャリアに噛み合うサンギアと、前記サンギアの外方に配置されてそれぞれ前記キャリアに噛み合うインターナルギアとの少なくとも一方を回転させた状態で、前記下定盤とこれに対向した上側研磨具を備えた上定盤とを回転させることにより、前記ワークの両面を研磨加工する両面研磨装置において、
前記サンギアは歯部取付部に複数の歯部を備えると共に、前記インターナルギアは歯部取付部に複数の歯部を備え、
前記サンギア及び/又は前記インターナルギアの歯部は、前記歯部取付部に着脱可能に螺合する雄螺子部を先端に有するピンと、このピンの基端側に着脱可能に外装され前記キャリアに噛み合う筒状のカラーと、前記カラーの前記ピンからの抜け出しを防止する抜け止め部材とを備え
、
前記ピンは、ステンレスからなり、前記カラーを外装する円柱状のピン本体と、このピン本体より径小で先端に設けられた前記雄螺子部と、前記ピン本体と前記雄螺子部との間に設けられ前記雄螺子部の谷径に比べて径小に形成された径小部と、前記ピン本体と前記径小部との間に設けられた下向き当接面と、前記下向き当接面の外周側と前記ピン本体の側面の間の角部に設けられた面取り部と、前記ピン本体の基端に設けられた工具係合部とを備え、
前記歯部取付部に取付孔を設け、この取付孔は、前記ピン本体の先端側を挿入するピン本体用孔部と、このピン本体用孔部の先端側に設けられ、前記雄螺子部が螺合する雌螺子孔部と、前記ピン本体用孔部と前記雌螺子孔部との間に設けられ、前記下向き当接面が当接する上向き受面とを備えることを特徴とする両面研磨装置。
【請求項2】
前記ピン
本体に前記カラーが回動可能に外装され、前記抜け止め部材は複数の前記ピンからの複数の前記カラーの抜け出しを防止すると共に、前記歯部取付部に着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の両面研磨装置。
【請求項3】
前記歯部取付部に設けた平面に前記ピンを立設し、前記抜け止め部材は、前記ピン
本体の
基端に着脱可能に螺合し、前記カラーに圧接して該カラーを回り止め状態とするネジであることを特徴とする請求項1記載の両面研磨装置。
【請求項4】
前記歯部取付部に設けた平面に前記ピンを立設し、前記抜け止め部材は、前記ピン
本体の
基端に着脱可能に螺合し、前記ピン
本体に回動可能に設けた前記カラーの抜け出しを防止するネジであることを特徴とする請求項1記載の両面研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアによって保持されたワークを、研磨用の上,下定盤を回転させると共に、キャリアを自転及び公転させてワークの表面を加工する両面研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものとして、
図14~
図15に示すように、上定盤101と、この上定盤101に対向して同軸状に設けられる下定盤102と、これら上定盤101と下定盤102の間に同軸状に配置されるサンギア103及びインターナルギア104と、サンギア103及びインターナルギア104との間に介在して自転及び公転するワーク105の保持孔106を有するキャリア107とを備え、前記上定盤101の下面に環状をなす下側研磨具(研磨布や砥石など)を設け、この下側研磨具に対向して前記下定盤102の上面に環状の上側研磨具を設け、これら上定盤101、下定盤102、サンギア103、インターナルギア104は、それぞれの駆動用モータ108,109,110,111によって回転駆動され、前記上定盤101には下面に開口したノズルからなる流体出口112が設けられた両面研磨装置(例えば特許文献1及び2)がある。
【0003】
上記従来の両面研磨装置においては、駆動用モータ108,109,110,111で上定盤101、下定盤102、サンギア103及びインターナルギア104を回転させると、キャリア107は自転運動をしながらサンギア103の回りを公転する遊星運動を起こして、さらに、スラリーなどと称する研磨剤の液が流体出口112より供給されることでキャリア107に保持された磁気ディスク基板などのワーク105の両面が上定盤101と下定盤102により研磨される。
【0004】
尚、公知ではないが、インターナルギア104の駆動用モータ111を駆動せずに、インターナルギア104を固定した状態で他の駆動用モータ108,109,110を駆動して研磨したり、インターナルギア104の駆動用モータ111を設けずに、インターナルギア104を固定した状態で他の駆動用モータ108,109,110を駆動して研磨したりすることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-7748号公報
【文献】特開2010-179398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、磁気ディスク基板の薄型化が図られ、例えば厚さ0.5mmの磁気ディスク基板を保持するキャリアには、磁気ディスク基板より薄い0.3~0.4mm程度の厚さのものを用いる必要がある。このため例えばキャリアの厚さが従来の厚さの1/2になると、ギアからキャリアの歯部に加わる圧力が2倍に増加する。このようにキャリアの薄型化により、歯部に加わる圧力も増加し、従来のインボリュートなどの歯車では、歯部の端面に厚さ方向(上下方向)のバリが発生し易くなり、このバリが研磨布を傷付け、また、歯部の摩耗が激しく、摩耗により発生したキャリアの磨耗くずが、研磨布などを傷付けるため、頻繁にキャリアと研磨布を交換する必要があると共に、磨耗くずを除去するために手間が掛かるという問題がある。
【0007】
また、従来のサンギア及びインターナルギアでは、歯部のみの交換が難しく、使用するキャリアや研磨条件などにより、最適な材質の歯部を選択して使用するこができなかった。
【0008】
そこで、本発明は上記した問題点に鑑み、キャリアの歯部のバリの発生と磨耗を抑え、メンテナンスが容易な両面研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、請求項1の発明は、下側研磨具を備えた下定盤の上に配置された複数のキャリアの複数の保持孔にワークを保持し、それぞれの前記キャリアに噛み合うサンギアと、前記サンギアの外方に配置されてそれぞれ前記キャリアに噛み合うインターナルギアとの少なくとも一方を回転させた状態で、前記下定盤とこれに対向した上側研磨具を備えた上定盤とを回転させることにより、前記ワークの両面を研磨加工する両面研磨装置において、前記サンギアは歯部取付部に複数の歯部を備えると共に、前記インターナルギアは歯部取付部に複数の歯部を備え、前記サンギア及び/又は前記インターナルギアの歯部は、前記歯部取付部に着脱可能に螺合する雄螺子部を先端に有するピンと、このピンの基端側に着脱可能に外装され前記キャリアに噛み合う筒状のカラーと、前記カラーの前記ピンからの抜け出しを防止する抜け止め部材とを備え、前記ピンは、ステンレスからなり、前記カラーを外装する円柱状のピン本体と、このピン本体より径小で先端に設けられた前記雄螺子部と、前記ピン本体と前記雄螺子部との間に設けられ前記雄螺子部の谷径に比べて径小に形成された径小部と、前記ピン本体と前記径小部との間に設けられた下向き当接面と、前記下向き当接面の外周側と前記ピン本体の側面の間の角部に設けられた面取り部と、前記ピン本体の基端に設けられた工具係合部とを備え、前記歯部取付部に取付孔を設け、この取付孔は、前記ピン本体の先端側を挿入するピン本体用孔部と、このピン本体用孔部の先端側に設けられ、前記雄螺子部が螺合する雌螺子孔部と、前記ピン本体用孔部と前記雌螺子孔部との間に設けられ、前記下向き当接面が当接する上向き受面とを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、前記ピン本体に前記カラーが回動可能に外装され、前記抜け止め部材は複数の前記ピンからの複数の前記カラーの抜け出しを防止すると共に、前記歯部取付部に着脱可能に設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、前記歯部取付部に設けた平面に前記ピンを立設し、前記抜け止め部材は、前記ピン本体の基端に着脱可能に螺合し、前記カラーに圧接して該カラーを回り止め状態とするネジであることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、前記歯部取付部に設けた平面に前記ピンを立設し、前記抜け止め部材は、前記ピン本体の基端に着脱可能に螺合し、前記ピン本体に回動可能に設けた前記カラーの抜け出しを防止するネジであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、キャリアがカラーに噛み合うため、キャリアの歯部のバリの発生と磨耗を抑えることができる。また、抜け止め部材を外すことにより、ピンからカラーを外し、カラーを交換することができ、さらに、必要な場合は、歯部取付部からピンを外し、ピンを交換することもできる。
【0014】
請求項2の発明によれば、カラーが回動するため、一層、キャリアの歯部のバリの発生と磨耗を抑えることができる。また、抜け止め部材により複数のカラーの抜け止めを行うため、複数のカラーの交換作業が容易となる。
【0015】
請求項3の発明によれば、歯部取付部に設けた平面にピンを立設したから、カラーや平面に付着した磨耗くずの除去掃除を簡便に行うことができる。また、抜け止め部材がネジであるから、隣り合うピンの上部に跨る部材がなく、掃除を容易に行うことができる。さらに、ネジをカラーに圧接することにより、回り止め状態でカラーの抜け出しを防止できる。
【0016】
請求項4の発明によれば、歯部取付部に設けた平面にピンを立設したから、カラーや平面に付着した磨耗くずの除去掃除を簡便に行うことができる。また、抜け止め部材がネジであるから、隣り合うピンの上部に跨る部材がなく、掃除を容易に行うことができる。さらに、カラーが回動するため、一層、キャリアの歯部のバリの発生と磨耗を抑えることができる。
【0017】
また、請求項1の発明によれば、取付孔の雌螺子孔部にピンの雄螺子部を螺合し、上向き受面に下向き当接面が当接した後、さらに締める方向にピンを回すと、径小部が僅かに伸び、雌螺子孔部に雄螺子部が捻じ込まれ、下向き当接面が上向き受面に圧接することより、ピンの高さ位置が定められると共に、ピン本体の下部が所定寸法だけピン本体用孔部に挿入されるため、取付強度が確保された状態で、歯部取付部に複数のピンの高さ位置を合わせて正確に取り付けることができる。このためピンを取り外した後、再び取り付ける際や、交換する際に、ピンの高さ位置を正確に取り付けることがきる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例1を示す上定盤の要部の平面図である。
【
図3】同上、ピンを示し、
図3(A)は正面図、
図3(B)は平面図である。
【
図5】同上、ピンを取り外した状態のサンギアの要部の断面図である。
【
図7】同上、インターナルギアの要部の断面図である。
【
図8】本発明の実施例2を示す上定盤の要部の平面図である。
【
図12】同上、インターナルギアの要部の断面図である。
【
図13】本発明の実施例3を示す歯部周りの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0020】
図1~
図7は本発明の実施例1を示し、両面研磨装置1は、
図2,
図4及び
図7などに示すように、下側研磨具たる研磨布2が上面3Uに貼着された研磨用の下定盤3と、上側研磨具たる研磨布4が下面5Kに貼着され、下定盤3と同軸状な研磨用の上定盤5とを備えている。
【0021】
図1などに示すように、前記下定盤3の上面3U上には、複数のワーク6を保持するためのキャリア7が載置されており、このキャリア7にはワーク6を保持するための保持孔8が穿設されていると共に、キャリア7の外周部7Aには複数の歯部9が形成されている。また、前記下定盤3の上面3Uに複数のキャリア7が同心円状に並設されており、1枚のキャリア7には5枚のワーク6を保持するために保持孔8が複数箇所(5箇所)に形成されている。尚、ワーク6は金属製の磁気ディスク基板などが例示される。
【0022】
そして、下定盤3の上面3Uの中央に、キャリア7の歯部9に噛合される駆動用のサンギア11が設けられ、下定盤3の外周部3Aには、インターナルギア12が同心円状に設けられており、このインターナルギア12にキャリア7の歯部9が噛合されると共に、キャリア7はサンギア11の外周に位置する。尚、図中11Jがサンギア11の回動中心軸である。
【0023】
サンギア11とインターナルギア12とは回転速度が異なり、サンギア11とインターナルギア12とはそれぞれ異なる回転をする。これにより下定盤用駆動モータ13、上定盤用駆動モータ14、サンギア用駆動モータ15及びインターナルギア用駆動モータ16で下定盤3、上定盤5及びサンギア11、インターナルギア12を回転させると、キャリア7は自転運動をしながらサンギア11の回りを公転する遊星運動を起こして、キャリア7に保持されたワーク6の上下両面が研磨される。
【0024】
尚、キャリア7の歯部9などに加わる圧力などから、4つの駆動モータ13,14,15,16を駆動する方法を用いることが好ましいが、インターナルギア用駆動モータ16を駆動せずに、インターナルギア12を固定した状態(回転しない状態)で他の駆動モータ13,14,15を駆動して研磨したり、両面研磨装置1にインターナルギア用駆動モータ16を設けずに、インターナルギア12を固定した状態で他の駆動モータ13,14,15を駆動して研磨したりすることもできる。
【0025】
さらに、サンギア用駆動モータ15を駆動せずに、サンギア11を固定した状態(回転しない状態)で他の駆動モータ13,14,16を駆動して研磨したり、両面研磨装置1にサンギア用駆動モータ15を設けずに、サンギア11を固定した状態(回転しない状態)で他の駆動モータ13,14,16を駆動して研磨したりすることもできる。
【0026】
尚、下定盤3と上定盤5とは同一の外径であり、また、モータ13,14,15,16はサーボモータやインバータモータによって形成されており、これらモータ13,14,15,16には停止手段であるブレーキ手段(図示せず)が一体に設けられている。
【0027】
さらに、
図2に示すように、上定盤5には、下面5Kに押圧手段17である流体の下向きの出口17Aが設けられており、研磨後、上定盤5が停止した状態で、前記出口17Aの上部には、例えば流動体である圧縮空気を導入することができるように流動体供給路(図示せず)が接続され、この流動体供給路から圧縮空気などが供給されるようになっている。前記出口17Aは下定盤3上に配置されるキャリア7に対応するように複数配置されている。尚、従来技術で説明したように、前記上定盤5には下面5Kに開口したノズルからなる流体出口(図示せず)が設けられ、上定盤5に設けた供給手段がスラリーリングを介して前記流体出口に接続され、この流体出口から上,下定盤5,3間にスラリーなどと称する研磨剤が供給される。
【0028】
図1などに示すように、前記サンギア11の歯部取付部たる外周部18には、周方向に等間隔で複数の歯部11Hが設けられ、前記インターナルギア12の歯部取付部たる内周部19には、周方向に等間隔で複数の歯部12Hが設けられ、これら歯部11H,12Hは、前記下定盤3に着脱可能に螺合するピン21,21と、各ピン21,21の基端側に着脱可能に取り付けられ、前記キャリア7に噛み合う筒状のカラー41,42とを備え、前記ピン21はステンレスなどの硬質材料からなる。
【0029】
図3に示すように、前記ピン21は、基端側に設けられた円柱状のピン本体22と、このピン本体22より小径で先端に設けられた雄螺子部23と、前記ピン本体22と前記雄螺子部23との間に設けられた径小部24とを一体に有し、この径小部24は前記雄螺子部23の谷径に比べて径小に形成され、また、前記径小部24は前記雄螺子部23より短く形成されている。
【0030】
また、前記ピン本体22の先端と前記径小部24との間には、ピン21の中心軸と交差方向の下向き当接面25が設けられ、この下向き当接面25の外周側と前記ピン本体22の側面との間の角部には、面取り加工により面取り部26が設けられている。尚、前記下向き当接面25は、ピン21の先端側に向いている。
【0031】
さらに、ピン21の基端には工具係合部27が設けられ、この工具係合部27は、ピン21の外周側を切り欠いて形成した切欠き部28,28を、ピン21の中心に対して対向して設けており、前記切欠き部28は、ピン21の長さ方向の平坦面28Aと、この平坦面28Aの先端側に設けられた段差面28Bとを備え、対をなす平坦面28A,28A同士は略平行に配置されている。従って、ペンチやスパナなどの工具を両平坦面28A,28Aに係止してピン21を回動することができる。
【0032】
前記ピン21の製造工程においては、好ましくは、ピン21を形成する丸棒に工具係合部27を形成した後、工具係合部27をチャック装置により把持して固定し、ケース1の場合は、ピン21の基端を基準とした位置に切削装置により径小部24を形成する。こうすることにより、ピン21の基端から正確な位置に下向き当接面25を形成することができる。この後、ピン21の径小部24より先端側の部分に雄螺子部23を形成する。
【0033】
あるいは、ケース2の場合は、雄螺子部23をその長さ以上で下向き当接面25より先端側の位置まで形成した後、径小部24を形成する。尚、ケース1及びケース2において、径小部24と雄螺子部23を形成した後、工具係合部27を形成してもよい。
【0034】
そして、ピン21に前記径小部24がない場合、ピン21の先端から下向き当接面25まで雄螺子を形成すると、下向き当接面25の近傍では不完全螺子部しか形成できないから、下向き当接面25を後述する上向き受面に正確に当接することができないと共に、下向き当接面25と後述する上向き受面とを圧接することができない。
【0035】
図1,
図2及び
図4などに示すように、前記サンギア11の外周部18は外鍔状に形成され、複数の前記歯部11Hの位置に対応して、前記外周部18の上面に上下方向の取付孔31が複数設けられている。尚、取付孔31を設けた外周部18の上面が、平面たる取付孔側上面部50である。前記取付孔31は、段付き孔であって、前記ピン本体22の先端側である下部を挿入するピン本体用孔部32と、このピン本体用孔部32の下部に同軸で設けられ、前記雄螺子部23が着脱可能に螺合する雌螺子孔部33とを備え、前記ピン本体用孔部32と前記雌螺子孔部33との間には、前記下向き当接面25が当接する上向き受面35が設けられている。また、前記雌螺子孔部33は前記ピン本体用孔部32より径小である。
【0036】
図4に示すように、前記雌螺子孔部33は、外周部18の下面を貫通して形成されている。また、前記雌螺子孔部33の長さLは、前記ピン21の下向き当接面25と下端21Kとの間の長さLPより長く形成されており、長さの差(L-LP)が雄螺子部23の最大の締め代であり、この締め代だけ雄螺子部23を締めると、ピン21の下端21Kが外周部18の下面と面一になり、この取付状態でピン21の下端21Kが外周部18の下面から突出することが無い。このように下端21Kが外周部18の下面から突出しないから、ごみなどが付着し難くなる。
【0037】
そして、
図4に示すように、ピン本体用孔部32にピン本体22を嵌入し、前記取付孔31の雌螺子孔部33にピン21の雄螺子部23を螺合すると、上向き受面35に下向き当接面25が圧接し、複数のピン21の上端高さが正しく位置決めされる。尚、ピン21の取付状態で、ピン21の基端が上端であり、ピン21の先端が前記下端21Kである。
【0038】
この場合、ピン21の下向き当接面25が上向き受面35が当接した後、さらに締める方向にピン21を回すと、径小部24が僅かに伸びることにより、雌螺子孔部33に雄螺子部23が捻じ込まれ、下向き当接面25が上向き受面35に圧接し、ピン21の高さ位置が正確になると共に、振動を受けても緩むことのない取付強度を確保することができる。尚、径小部24が伸びる寸法を前記最大締め代に設定している。
【0039】
外周部18に固定したピン21のピン本体22に、前記カラー41を回動可能に外装する。この場合、
図4に示すように、取付状態で、前記取付孔側上面部50からピン21の上端(基端)までの高さに比べて、カラー41の高さは僅かに低く形成されている。例えば、直径(外径)5~10mm(5mm以上、10mm以下)のカラー41において、ピン21とカラー41の高さ差hは0.7~1.5mm程度である。こうすることにより、カラー41の円滑な回動を確保することができる。
【0040】
また、
図4に示すように、前記カラー41は、該カラー41の外周面の下定盤3の中心側が前記外周部18の外周面18Gに位置するように配置されている。これにより、カラー41位置より下定盤3の中心側に取付孔側上面部50が位置しないため、カラー41の下定盤3の中心側にゴミが溜まり難くなる。
【0041】
図4に示すように、前記サンギア11の外周部18の取付孔側上面部50には、複数の前記歯部11H,11H・・・の中央側に、これら前記歯部11H,11Hと間隔57を置いて段差51を周設し、この段差51は前記回転中心軸11Jの中心を中心とする。
【0042】
また、前記段差51の中央側に、前記取付孔側上面部50に比べて高く形成された中央側上面部52が設けられ、前記歯部11Hと前記段差51との間には隙間53(
図4)が設けられている。この隙間53の幅は前記カラー41の外径の0.5倍以上であり、隙間53を設けることにより摩耗くずなどを除去し易くなる。また、前記段差51の高さは、取付状態の前記ピン21の上端の高さに対応している。
【0043】
さらに、
図1などに示すように、前記ピン21から前記カラー41の抜け出しを防止する抜け止め部材たる押え部55を複数備える。この押え部55は、前記歯部11Hの並びに対応して、板材を円弧状に形成してなり、この例では、5個の押え部55により、全てのカラー41の抜け出しを防止している。尚、前記押え部55は、少なくとも、外周縁の外周下角部56が円弧状に形成されていればよい。
【0044】
このため前記押え部55の外周下角部56をピン21の上端(基端)に近接又は当接するように配置し、前記外周下角部56側の押え部55の下面55Kが、カラー41の上端と間隔57を置いて配置され、前記押え部55は、その下面55Kが前記中央側上面部52に当接した状態で、固定手段たるネジ58により中央側上面部52に着脱可能に固定されており、中央側上面部52にはネジ58を着脱可能に螺合する雌螺子孔部58Mが穿設されている。このように間隔57を設けることにより、カラー41の円滑な回動を確保することができる。尚、この例では、前記ピン21の上端の高さ位置は、前記下面55Kと高さ位置と等しく、前記間隔57の上下寸法は前記高さ差hと等しい。
【0045】
尚、押え部55によりカラー41の抜け止めを防止するには、前記間隔57の上下寸法を前記高さ差h以上にしてもよく、また、押え部55の下面55Kの一部がカラー41の上に位置していれば、前記外周下角部56を中央側(
図4中、右側)に配置してもよい。
【0046】
図1,
図2及び
図7などに示すように、前記インターナルギア12の歯部取付部たる内周部19はリング状に形成され、前記歯部12Hの位置に対応して、前記内周部19の上面に前記取付孔31が設けられている。尚、取付孔31を設けた内周部19の上面が、取付孔側上面部50Aである。また、内周部19に設けた前記雌螺子孔部33は、前記雄螺子部23より長く形成されると共に、前記雌螺子孔部33の底部33Tは閉塞している。
【0047】
内周部19に固定したピン21に、前記カラー42を回動可能に外装する。この場合、取付状態で、
図7に示すように、前記取付孔側上面部50Aからピン21の上端(基端)までの高さに比べて、カラー42の高さは僅かに低く形成されている。例えば、直径(外径)5~10mm(5mm以上、10mm以下)のカラー42において、ピン21とカラー42の高さ差hは0.7~1.5mm程度である。
【0048】
また、前記カラー42は、該カラー42の外周面の下定盤3の外周側が前記内周部19の内周面19Nに位置するように配置されているから、カラー42の下定盤3の外側にゴミが溜まり難くなる。
【0049】
尚、前記カラー41,42は、合成樹脂製で、例えばPEEK樹脂(ポリエーテルエーテルケトン)などのキャリア7と同材質の合成樹脂を用いることが好ましい。尚、カラー41,42の上縁と下縁は、相互に平行で、且つカラー41,42の中心軸に対して直交している。
【0050】
図7に示すように、前記インターナルギア12の内周部19の取付孔側上面部50Aには、複数の前記歯部12H,12H・・・の外周側に、これら前記歯部12H,12Hと間隔を置いて段差51Aを周設し、この段差51Aは前記回転中心軸11Jの中心を中心とする。前記段差51Aの内周側に、前記取付孔側上面部50Aに比べて高く形成された外周側上面部52Aが設けられ、前記歯部12Hと前記段差51Aとの間には隙間53A(
図7)が設けられ、この隙間53Aの幅は前記カラー42の外径の0.5倍以上であり、隙間53Aを使って摩耗くずなどを除去し易くなる。また、前記段差51Aの高さは、取付状態の前記ピン21の高さに対応している。
【0051】
さらに、
図7などに示すように、前記ピン21から前記カラー42の抜け出しを防止する抜け止め部材たる複数の押え部55Aを備える。この押え部55Aは、前記歯部12Hの並びに対応して、板材を円弧状に形成してなり、この例では、5個の押え部55Aにより全てのカラー42の抜け出しを防止している。尚、前記押え部55Aは、少なくとも、内周縁の内周下角部56Aが円弧状に形成されていればよい。
【0052】
また、前記押え部55,55Aとして、リングを5分割した形状を有するものを例示したが、押え部55,55Aは、リング状の1体物や、2分割したものなどや、3分割以上のものでもよく、1つの押え部が少なくとも複数のカラー41,42の抜け出しを防止するものであればよい。尚、
図1及び
図6に示すように、隣り合う押え部55,55の間には隙間が設けられ、同様に隣り合う押え部55A,55Aの間には隙間が設けられている。
【0053】
このため前記押え部55Aの内周下角部56Aをピン21の上端(基端)に近接又は当接するように配置し、前記内周下角部56A側の押え部55Aの下面55Kが、カラー42の上端と間隔57Aを置いて配置され、前記押え部55Aは、その下面55Kが前記外周側上面部52Aに当接した状態で、固定手段たるネジ58により外周側上面部52Aに着脱可能に固定されており、中央側上面部52にはネジ58を着脱可能に螺合する雌螺子孔部58Mが穿設されている。このように間隔57Aを設けることにより、カラー42の円滑な回動を確保することができる。尚、この例では、前記ピン21の上端の高さ位置は、前記下面55Kと高さ位置と等しく、前記間隔57Aの上下寸法は前記高さ差hと等しい。
【0054】
尚、押え部55Aによりカラー42の抜け止めを防止するには、前記間隔57Aの上下寸法を前記高さ差h以上にしてもよく、また、押え部55Aの下面55Kの一部がカラー42の上に位置していれば、前記内周下角部56Aを外周側(
図7中、左側)に配置してもよい。
【0055】
次に、前記構成についてその作用を説明する。下定盤3に対して昇降手段(図示せず)によって上定盤5が離間した状態で、下定盤3の上面3Uにワーク6をキャリア7と共に載置する。この際、ワーク6はキャリア7の保持孔8に保持されている。そして、上定盤5を下降して上定盤5の下面側をワーク6の上面に接触させる。
【0056】
そして、下定盤用駆動モータ13、上定盤用駆動モータ14及びサンギア用駆動モータ15、インターナルギア用駆動モータ16により下定盤3、上定盤5及びサンギア11、インターナルギア12を回転させると、キャリア7は自転運動をしながらサンギア11の回りを公転する遊星運動を起こして、さらに、スラリーなどと称する研磨剤(図示せず)を供給することでキャリア7に保持されたワーク6の両面が下定盤3の研磨布2及び上定盤5の研磨布4により研磨される。
【0057】
ワーク6の両面研磨が終了したら、上定盤5をやや上昇させて下定盤3より離間するとき又はその前後に、出口17Aより圧縮空気或いは水等液体などの流動体を開閉バルブ(図示せず)により制御してワーク6の上面に向けて噴出する。尚、上定盤5が回転を停止した後、前記出口17Aに前記流動体供給路を接続する。前記噴出は1枚のワーク6に対して出口17Aが少なくとも一つ対向するように配置されている。そして、流動体の押圧力によりワーク6、さらにはキャリア7は下定盤3側に押し付けられて、これらワーク6、キャリア7は上定盤5の下面5Kより剥離して上定盤5上に残り続ける。
【0058】
このような流動体によるワーク6、キャリア7が下定盤3に押圧された状態、或いは流体の噴出が停止されて押圧が解除された状態で、上定盤5と下定盤3との間に作業員が手を入れてワーク6、キャリア7を取り出す。尚、ロボットアームなどを備えた自動取出装置を用いてワーク6、キャリア7を取り出してもよい。この後、再び新たなワーク6、キャリア7を下定盤3に置いて研磨を行うものである。
【0059】
この場合、薄型のキャリア7を用いても、キャリア7が歯部11H,12Hの回動可能なカラー41,42に噛み合うため、歯部9の端面における厚さ方向(上下方向)のバリの発生が抑えられると共に、キャリア7の歯部9の摩耗を抑えることができる。また、バリの発生が抑えられるため、バリによる研磨布2,4の損傷が抑えられ、さらに、摩耗くずの発生も抑えることができるため、キャリア7と研磨布2,4の交換回数も大幅に削減できる。
【0060】
また、キャリア7の薄型化により、キャリア7の歯部9とカラー41,42の歯合時の圧力が増加し、従来に比べて磨耗が発生し易くなるが、その磨耗などにより、カラー41,42の交換が必要になった場合も、ネジ58を外し、押え部55,55Aを取り外せば、複数のピン21,21・・・からカラー41,42を外して交換することができる。さらに、使用するキャリア7や研磨条件などに合わせて異なる材質のカラー41,42を選択して使用することができ、そのためにカラー41,42の交換を容易に行うことできる。尚、長期使用によりカラー41,42が磨耗した場合も、交換できる。
【0061】
また、歯部11H,12Hと段差51,51Aとの間には間隔57,57Aを設けたから、摩耗くずを除去し易い構造となる。
【0062】
このように本実施例では、請求項1に対応して、下側研磨具たる研磨布2を備えた下定盤3の上に配置された複数のキャリア7の複数の保持孔8にワーク6を保持し、それぞれのキャリア7に噛み合うサンギア11と、サンギア11の外方に配置されてそれぞれキャリア7に噛み合うインターナルギア12の少なくとも一方を回転させた状態で、下定盤3とこれに対向した上側研磨具たる研磨布4を備えた上定盤5とを回転させることにより、ワーク6の両面を研磨加工する両面研磨装置1において、サンギア11は歯部取付部たる外周部18に複数の歯部11Hを備えると共に、インターナルギア12は歯部取付部たる内周部19に複数の歯部12Hを備え、サンギア11及び/又はインターナルギア12の歯部11H,12Hは、外周部18,内周部19に着脱可能に螺合する雄螺子部23を先端に有するピン21と、このピン21の基端側に着脱可能に外装されキャリア7に噛み合う筒状のカラー41,42と、カラー41,42のピン21からの抜け出しを防止する抜け止め部材たる押え部55,55Aとを備えるから、キャリア7がカラー41,42に噛み合うため、キャリア7の歯部9のバリの発生と磨耗を抑えることができ、また、押え部55,55Aを外すことにより、ピン21からカラー41,42を外し、カラー41,42を交換することができ、さらに、必要な場合は、外周部18,内周部19からピン21を外し、ピン21を交換することもできる。
【0063】
このように本実施例では、請求項2に対応して、ピン本体22にカラー41,42が回動可能に外装され、抜け止め部材たる押え部55は複数のピン21からの複数のカラー41,42の抜け出しを防止すると共に、外周部18,内周部19に着脱可能に設けられているから、カラー41,42が回動するため、一層、キャリア7の歯部9のバリの発生と磨耗を抑えることができ、また、押え部55,55Aにより複数のカラー41,42の抜け止めを行うため、複数のカラー41,42の交換作業が容易となる。
【0064】
また、このように本実施例では、請求項1に対応して、ピン21は、ステンレスからなり、カラー41,42を外装する円柱状のピン本体22と、このピン本体22より径小で先端に設けられた雄螺子部23と、ピン本体22と雄螺子部23との間に設けられ雄螺子部23の谷径に比べて径小に形成された径小部24と、ピン本体22と径小部24との間に設けられた下向き当接面25と、下向き当接面25の外周側とピン本体22の側面の間の角部に設けられた面取り部26と、前記ピン本体の基端に設けられた工具係合部とを備え、歯部取付部たる外周部18,内周部19に取付孔31を設け、この取付孔31は、ピン本体22の先端側を挿入するピン本体用孔部32と、このピン本体用孔部32の下部に設けられ、雄螺子部23が螺合する雌螺子孔部33と、ピン本体用孔部32と雌螺子孔部33との間に設けられ、下向き当接面25が当接する上向き受面35とを備えるから、取付孔31の雌螺子孔部33にピン21の雄螺子部23を螺合し、上向き受面35に下向き当接面25が当接することにより、ピン21の高さ位置が定められると共に、ピン本体22の下部が所定寸法だけピン本体用孔部32に挿入されるため、取付強度が確保された状態で、外周部18,内周部19に複数のピン21の高さ位置を合わせて正確に取り付けることができる。このためピン21を取り外した後、再び取り付ける際や、交換する際に、ピン21の高さ位置を正確に取り付けることができる。
【0065】
以下、実施例上の効果として、ピン21に工具係合部27を設けたから、ピン21に出っ張りがなく、ペンチやスパナなどの工具を両平坦面28A,28Aに係止してピン21を回動することができる。また、ピン21に螺子部の無い部分である径小部24を設けたから、下向き当接面25と上向き受面35とを圧接してピン21の高さ位置を正確に管理することができ、加えて、面取り部26を設けたから、一層、下向き当接面25と上向き受面35とが圧接し易くなる。さらに、ピン21とカラー41の高さ差hを0.7~1.5mm程度し、ピン21の上端の高さ位置を押え部55の下面55Kと高さ位置と略等しくしたから、カラー41,42が上下にずれても、カラー41,42が円滑に回動することができる。尚、キャリア7の歯部9はカラー41,42の高さ方向中央側に歯合する。また、カラー41,42は、PEEK樹脂製であるから、耐摩耗性に優れたものとなる。尚、カラー41,42は、使用条件に合わせて、PEEK樹脂製以外の各種の材質のものに交換して用いることができる。さらに、ピン21の雄螺子部23を取付孔31の雌螺子孔部33に螺合するから、ナットが不要となり、部品管理と取付作業が容易となる。さらに、締め代(L-LP)を設定したから、締め代(L-LP)を基準としてピン21を均一に取り付けることができる。尚、底部33Tを有する雌螺子孔部33は、少なくとも前記締め代(L-LP)以上に、前記雄螺子部23より長く形成されている。
【実施例2】
【0066】
図8~
図12は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、抜け止め部材として、ネジ61を用い、このネジ61により前記ピン21に前記カラー41A,42Aを回り止め状態で固定している。尚、カラー41A,42Aは、前記カラー41,42に比べて僅かに長い点と、材質が異なる点以外は略同一構成である。
【0067】
図10に示すように、前記外周部18の上面には、前記段差51が無く、前記取付孔側上面部50が平坦に形成されている。また、前記カラー41Aの長さは、その上端が取付状態の前記ピン21の上端より僅かに高くなる長さに設定されている。
【0068】
図10~
図12に示すように、前記ネジ61は、雄螺子部62と、この雄螺子部62より径大な頭部63とを一体に有し、この頭部63の上面に十字溝などの工具係合部64が設けられ、その頭部63の頭部下面63Kは平坦に形成されている。また、前記ピン21の上端には、前記雄螺子部62を螺合する雌螺子部29が形成されている。そして、ピン21の上端とカラー41A,42Aの上端の高さの差がネジ61の締め代Sである。
【0069】
そして、前記外周部18の取付孔31にピン21を取り付けた後、このピン21に前記カラー41Aを外装し、ピン21の雌螺子部29にネジ61の雄螺子部62を螺入し、頭部下面63Kがカラー41Aの上縁に当接した後、さらに捻じ込むことにより頭部下面63Kがカラー41Aの上縁が圧接し、ピン21にカラー41Aが回り止め状態で固定される(
図10)。
【0070】
また、同様に前記内周部19の取付孔31にピン21を取り付けた後、このピン21に前記カラー42Aを外装し、ピン21の雌螺子部29にネジ61の雄螺子部62を螺入し、頭部下面63Kがカラー42Aの上縁に当接した後、さらに捻じ込むことにより頭部下面63Kがカラー42Aの上縁が圧接し、ピン21にカラー42Aが回り止め状態で固定される(
図12)。尚、
図9では、駆動モータ13,14,15,16を図示省略している。
【0071】
そして、薄型のキャリア7を用いても、キャリア7が歯部11H,12Hの円筒形状のカラー41A,42Aに噛み合うため、キャリア7の歯部9のバリの発生と摩耗を抑えることができる。また、バリの発生が抑えられるため、バリにより研磨布2,4の損傷が抑えられ、同時に摩耗くずの発生も抑えることができるため、キャリア7と研磨布2,4の交換回数も削減できる。
【0072】
また、使用による磨耗などにより、カラー41A,42Aの交換が必要になった場合も、ネジ61を外せば、ピン21からカラー41A,42Aを外して交換することができる。
【0073】
また、歯部11H,12Hは平坦な外周部18,内周部19の平坦な上面に設けられているから、摩耗くずを除去し易い構造となる。
【0074】
このように本実施例では、上記実施例1と同様な作用・効果を奏する。
【0075】
また、このように本実施例では、請求項3に対応して、前記歯部取付部たる外周部18,内周部19に設けた平面たる取付孔側上面部50,50Aにピン21,21を立設し、抜け止め部材は、ピン本体22の基端に着脱可能に螺合し、カラー41A,42Aに圧接して該カラー41A,42Aを回り止め状態とするネジ61,61であるから、外周部18,内周部19に設けた取付孔側上面部50,50Aにピン21を立設したため、カラー41A,42Aや平坦な取付孔側上面部50,50Aに付着した磨耗くずの除去掃除を簡便に行うことができ、また、抜け止め部材がネジ61,61であるから、隣り合うピン21,21の上部に跨る部材がなく、掃除を容易に行うことができ、さらに、ネジ61をカラー41A,42Aに圧接することにより、回り止め状態でカラー41A,42Aの抜け出しを防止できる。
【0076】
また、抜け止め部材は、ピン21の上端に着脱可能に螺合しカラー41A,42Aに圧接して該カラー41A,42Aを回り止め状態とするネジ61,61であるから、ピン21を外すことなく、ネジ61を用いてカラー41A,42Aを交換することができる。
【実施例3】
【0077】
図13は本発明の実施例3を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、実施例2において、前記カラー41A,42Aの長さは、その上端が取付状態の前記ピン21の上端より僅かに短くなる長さに設定されており、実施例2と同一長さのピン21を用いている。尚、実施例2と同じ長さのカラー41A,42Aを用い、前記ピン21を長くしてもよい。
【0078】
したがって、前記ピン21の上端の雌螺子部29に、前記ネジ61の雄螺子部62を螺合すると、ピン21の頭部下面63Kがピン21の上端に圧接し、一方、頭部下面63Kとカラー41A,42Aとの上端との間に隙間ができ、ピン21に対して、カラー41A,42Aが抜け止め状態で回動可能に取り付けられる。
【0079】
このように本実施例では、請求項1及び5に対応して、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0080】
また、このように本実施例では、請求項4に対応して、前記歯部取付部たる外周部18,内周部19に設けた平面たる取付孔側上面部50,50Aにピン21を立設し、抜け止め部材は、ピン本体22の基端に着脱可能に螺合し、ピン本体22,22に回動可能に設けたカラー41A,42Aの抜け出しを防止するするネジ61,61であるから、外周部18,内周部19に設けた取付孔側上面部50,50Aにピン21を立設したから、キャリア7がカラー41A,42Aに噛み合うため、キャリア7の歯部9のバリの発生と磨耗を抑えることができ、また、カラー41A,42Aや平坦な取付孔側上面部50,50Aに付着した磨耗くずの除去掃除を簡便に行うことができ、また、抜け止め部材がネジ61,61であるから、隣り合うピン21,21の上部に跨る部材がなく、掃除を容易に行うことができ、さらに、カラー41A,42Aが回動するため、一層、キャリア7の歯部9のバリの発生と磨耗を抑えることができる。
【0081】
また、変形例として、ピン21は長さの等しい同一構成のものを使用し、長さの異なるカラー41A,42Aを用意し、長いカラー41A,42Aを用いれば、実施例2のようにネジ61によりカラー41A,42Aを回り止め状態で取り付けることができ、一方、短いカラー41A,42Aを用いれば、実施例3のようにネジ61によりカラー41A,42Aを回動可能な状態で取り付けることができる。
【0082】
尚、本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、本発明の容易の範囲内において、種々の変形実施が可能である。例えば、ワークとしては、磁気ディスク基板以外の半導体ウエハや液晶基板などにも適応できる。また、押圧手段はワーク単独の他にキャリア単独、或いはキャリアとワークの両方に対向して設けられるものでもよい。さらに、実施例1のサンギアとインターナルギアの一方に、実施例2又は3の歯部を設けたり、実施例2のサンギアとインターナルギアの一方に、実施例1又は3の歯部を設けるなど、各実施例のタイプの歯部を、サンギアとインターナルギアに組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0083】
1 両面研磨装置
2 研磨布(下側研磨具)
3 下定盤
4 研磨布(上側研磨具)
5 上定盤
6 ワーク
7 キャリア
8 保持孔
9 歯部
11 サンギア
11H 歯部
12 インターナルギア
12H 歯部
18 外周部(歯部取付部)
19 内周部(歯部取付部)
21 ピン
22 ピン本体
23 雄螺子部
25 下向き当接面
31 取付孔
32 ピン本体用孔部
33 雌螺子孔部
35 上向き受面
41,41A,42,42A カラー
50 取付孔側上面部(平面)
55 押え部(抜け止め部材)
50A 取付孔側上面部(平面)
51A 段差
55A 押え部(抜け止め部材)
61 ネジ(抜け止め部材)