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特許7405471粒子付着型マイクロニードル及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】粒子付着型マイクロニードル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20231219BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20231219BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61M37/00 505
A61K47/34
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/26
A61K47/32
A61M37/00 520
A61K9/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023000998
(22)【出願日】2023-01-06
(65)【公開番号】P2023101406
(43)【公開日】2023-07-20
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0002903
(32)【優先日】2022-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 制御放出ジャーナル351(2022)1003-1016にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】523008381
【氏名又は名称】クアッドメディシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朴 廷渙
(72)【発明者】
【氏名】崔 正恩
(72)【発明者】
【氏名】申 ユ ラ
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-087474(JP,A)
【文献】国際公開第2016/175164(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0213461(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0005606(US,A1)
【文献】特表2013-535498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
A61K 47/34
A61K 47/38
A61K 47/36
A61K 47/26
A61K 47/32
A61K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロニードルに接着性溶液で1次コーティングして接着層を形成するステップと、
前記接着層が形成されたマイクロニードルを固体状の薬物粒子が充填されたコーティングウェル(well)に浸漬コーティング(dip-coating)して、前記接着層上に前記固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップとを含む、粒子付着型マイクロニードルの製造方法。
【請求項2】
前記固体状の薬物粒子を前記コーティングウェル(well)に充填する前に、前記コーティングウェル(well)上にフィルムを位置させて前記固体状の薬物粒子を分散させるステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の粒子付着型マイクロニードルの製造方法。
【請求項3】
前記固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップの後に、前記2次コーティングされた固体状の薬物粒子間の空隙を制御するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の粒子付着型マイクロニードルの製造方法。
【請求項4】
前記固体状の薬物粒子間の空隙を制御するために、前記固体状の薬物粒子で2次コーティングされたマイクロニードルにエアコンプレッサ(air compressor)で処理することを特徴とする、請求項3に記載の粒子付着型マイクロニードルの製造方法。
【請求項5】
前記固体状の薬物粒子間の空隙を制御するために、前記固体状の薬物粒子で2次コーティングされたマイクロニードルをパフ(puff)に浸漬コーティング(dip-coating)することを特徴とする、請求項3に記載の粒子付着型マイクロニードルの製造方法。
【請求項6】
前記固体状の薬物粒子間の空隙を制御するために、前記固体状の薬物粒子で2次コーティングされたマイクロニードルをポリジメチルシロキサンモールド(PDMS mold)にプレス(press)することを特徴とする、請求項3に記載の粒子付着型マイクロニードルの製造方法。
【請求項7】
前記接着性溶液は、二液型接着剤主剤及び硬化剤を含み、
前記二液型接着剤主剤は、ポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane、PDMS)または医療用エポキシボンドであり、
前記硬化剤は、シリコーンエラストマー硬化剤(silicone elastomer curing agent)またはハードナー(hardener)であることを特徴とする、請求項1に記載の粒子付着型マイクロニードルの製造方法。
【請求項8】
前記接着性溶液を構成する前記二液型接着剤主剤と前記硬化剤との重量比率は40:1~20:1であることを特徴とする、請求項7に記載の粒子付着型マイクロニードルの製造方法。
【請求項9】
前記接着性溶液は一液型接着剤を含み、
前記一液型接着剤は、ポリエチレングリコール(Polyethyleneglycol、PEG)、ポリエチレンオキシド(Polyethylene oxide、PEO)、蜜蝋(Beeswax)、トリグリセリド(Triglyceride)、シリコーン(silicone)、エポキシ(epoxy)、タンパク質バイオ接着剤(protein bioadhesive)及びUV硬化性医療用エポキシレジンからなる群から選択されたいずれか1つであることを特徴とする、請求項1に記載の粒子付着型マイクロニードルの製造方法。
【請求項10】
前記接着性溶液は、接着物質及び溶媒を含み、
前記接着物質は、白糖(Sugar)2~20%、ブドウ糖(Glucose)25~50%、澱粉(Starch)1~4%、ゼラチン(Gelatin)1~4%、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Carboxymethylcellulose、CMC-Na)1~4%、アラビアゴム2~5%、セルロース誘導体(Cellulose derivative)(ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropylcellulose、HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethylcellulose、HPMC)1~4%、メチルセルロース(methyl cellulose、MC)、エチルセルロース(Ethyl cellulose)0.5~2%)、ポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone、PVP)2~5%、シアノアクリレート(cyanoacrylate)、フィブリン糊(fibrin glue)、タンパク質系接着剤(protein glue)、ポリエチレングリコールヒドロゲルシーラント(PEG hydrogel sealant)、シリコーン(silicone)、エポキシ(epoxy)、タンパク質バイオ接着剤(protein bioadhesive)及びイガイ接着タンパク質(mussel adhesive protein)からなる群から選択されたいずれか1つであり、
前記溶媒は、水または有機溶媒であることを特徴とする、請求項1に記載の粒子付着型マイクロニードルの製造方法。
【請求項11】
前記マイクロニードルの原料物質は、生分解性高分子及び非生分解性/生体適合性高分子のいずれか1つ以上であり、
前記生分解性高分子は、ポリ乳酸(poly(lactic acid))、ポリL-乳酸(poly(L-lactic acid))、ポリグリコール酸(poly(glycolic acid))、及びポリ乳酸-グリコール酸共重合体(poly(lactic-co-glycolic acid))を含み、
前記非生分解性/生体適合性高分子は、環状オレフィン共重合体(cyclic olefin copolymer)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ナイロン(nylon)、ポリエチレン(polyethylene)及びポリプロピレン(polypropylene)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の粒子付着型マイクロニードルの製造方法。
【請求項12】
前記マイクロニードルの長さは50μm~1,000μmであることを特徴とする、請求項1に記載の粒子付着型マイクロニードルの製造方法。
【請求項13】
前記固体状の薬物粒子の活性物質は、インターフェロン、エリスロポエチン(EPO)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒白血球マクロファージコロニー刺激因子(FM-CSF)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、黄体ホルモン、カルシトニン、グルカゴン、GNRH拮抗剤、インシュリン、ヒト成長ホルモン(GHD)、テストステロン、リドカイン、ジクロフェナク、オキシブチニン、ケトプロフェン、アレンドロネート(Alendronate)、エナラプリルマレアート、フェニルプロパノールアミン、クロモリン、イソトレチノイン、オキシトシン、パロキセチン、フルルビプロフェン、セルトラリン、ベンラファキシン、リュープロリド、リスペリドン、ガランタミン、エノキサパリン、エタネルセプト、フェンタニル、フィルグラスチム、ヘパリン、ソマトロピン、及びスマトリプタンからなる群から選択されたいずれか1つを含むか、または、A型、B型及びC型肝炎、HIV、インフルエンザ、ジフテリア、破傷風、百日咳、ライム病、恐水病、肺炎球菌、黄熱病、コレラ、ワクシニア、結核、風疹、麻疹、流行性耳下腺炎、ロタウイルス、ボツリヌス菌及びヘルペスウイルスのいずれか1つを含むワクチン、及びボトックス毒素からなる群から選択されたいずれか1つ以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の粒子付着型マイクロニードルの製造方法。
【請求項14】
マイクロニードルに接着性溶液で1次コーティングして接着層を形成するステップと、
前記接着層上にマイクロシーブ(micro sieve)で固体状の薬物粒子を分散させて、前記接着層上に前記固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップとを含む、粒子付着型マイクロニードルの製造方法。
【請求項15】
前記固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップの後に、前記2次コーティングされた固体状の薬物粒子間の空隙を制御するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項14に記載の粒子付着型マイクロニードルの製造方法。
【請求項16】
マイクロニードルに接着性溶液で1次コーティングして接着層を形成するステップと、
前記接着層が形成されたマイクロニードルを固体状の薬物粒子が充填されたペトリ皿(petri dish)に浸漬コーティング(dip-coating)して、前記接着層上に前記固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップとを含む、粒子付着型マイクロニードルの製造方法。
【請求項17】
前記固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップの後に、前記2次コーティングされた固体状の薬物粒子間の空隙を制御するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項16に記載の粒子付着型マイクロニードルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2022年01月07日付の韓国特許出願第10-2022-0002903号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、粒子付着型マイクロニードル及びその製造方法に関する。より詳細には、活性物質を含有した固体状の粒子が付着されたマイクロニードル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来のマイクロニードルの作製方法としては、溶解されないマイクロニードル上に薬物を含有した液状剤形を浸漬コーティング(dip-coating)して搭載し、剤形を乾燥させて製造するコーティングマイクロニードル、そして、マイクロニードルモールド(mold)に薬物及び添加剤が含有されたモールディング溶液を載せて充填した後、これを乾燥させて製造する溶融性マイクロニードルなどの方法がある。このとき、コーティング溶液又はモールディング溶液を準備する過程で薬物を液状形態に変形しなければならず、定量の薬物が含まれた溶液をマイクロニードルに搭載するために適切な粘度及び組成を設定しなければならない。
【0004】
具体的には、コーティングマイクロニードル及び溶融性マイクロニードルはいずれも、液状製剤をベースとする工程により製造されるため、1)濃縮された薬物溶液の製造、2)添加剤及び薬物を共溶媒に溶解、3)製造工程中に溶液中の活性薬物の変性、4)コーティング又はモールディング工程に適した範囲に属する粘度を有する溶液の製造、5)液状製剤の乾燥のような様々な制約がある。マイクロニードルパッチに必要な薬物の臨床学的含量を含む乾燥製剤を得るために、薬物は高濃度で準備されなければならないため、溶液中の高濃縮されたタンパク質は変性される可能性がある。また、薬物又は添加剤が共溶媒に対して溶解度が低い場合、共溶媒を見つけて所望の量の薬物をマイクロニードルに搭載することが難しい。
【0005】
コーティング製剤とモールディング液状溶液を乾燥する過程において、薬物と添加剤の相分離も考慮すべき要素である。また、相分離は、溶融性マイクロニードルの機械的強度を減少させることがある。マイクロニードルの製造工程中に熱露出または空気露出によって溶液が変性することもある。変性の問題を最小化するために、製造工程を低温で行い、活性薬物が入っている溶液に適切な量の安定剤を添加しなければならない。このように、薬物を液状形態で準備する過程では、活性物質が変性したり、活性物質の低い溶解度により、液状剤形で準備するのに困難が伴う。
【0006】
乾燥工程は、活性薬物が搭載されたマイクロニードルの作製における他の考慮事項である。マイクロニードルを溶解させるためにはモールディング溶液の乾燥過程が数時間から数日かかる。反面、コーティングマイクロニードルの場合、数分から1時間の乾燥時間が必要であり、これは、製造工程全体にかかるほとんどの時間である。したがって、液状製剤を準備せずに固体状態の活性薬物を搭載することができれば、液相工程で求められる薬物の活性を減少させることなく様々な化学的、生物学的薬物を皮膚に伝達することができる。
【0007】
マイクロニードルの成功した薬物伝達システムのさらなる要素は、マイクロニードルパッチを適用するのに必要な時間である。マイクロニードルパッチを適用するのに必要な時間は、使用者の利便性を高め、薬物伝達効率を向上させる。
【0008】
本発明では、既存のマイクロニードルの限界を克服するために、固体状の粒子が付着されたマイクロニードルを作製した。固体状の粒子が付着されたマイクロニードルは、1)活性薬物を溶媒に溶かす必要がない乾式工程の開発、2)乾燥工程に必要な時間の節約、3)マイクロニードルの外部表面に薬物を配置して薬物を皮膚に迅速に伝達することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国登録特許公報第10-1785766号、“コーティングマイクロニードルの生産方法、及びその方法により生産されたコーティングマイクロニードル”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一目的は、通常の注射とは異なって、ニードルの長さが短いマイクロニードルを介して表皮層と真皮層に活性物質を伝達できるマイクロニードル及びその製造方法を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、マイクロニードルに薬物粒子をコーティングして患者の注射に対する抵抗感を最小化し、患者の投与コンプライアンスを高めることができるマイクロニードル及びその製造方法を提供することである。
【0012】
本発明の更に他の目的は、液状剤形への変更なしに固体状の薬物粒子を付着したマイクロニードル及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施例に係る粒子付着型マイクロニードルの製造方法は、マイクロニードルに接着性溶液で1次コーティングして接着層を形成するステップと;前記接着層が形成されたマイクロニードルを固体状の薬物粒子が充填されたコーティングウェル(well)に浸漬コーティング(dip-coating)して、前記接着層上に前記固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップと;を含む。
【0014】
一実施形態によれば、前記固体状の薬物粒子を前記コーティングウェル(well)に充填する前に、前記コーティングウェル(well)上にフィルムを位置させて前記固体状の薬物粒子を分散させるステップをさらに含むことができる。
【0015】
一実施形態によれば、前記固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップの後に、前記2次コーティングされた固体状の薬物粒子間の空隙を制御するステップをさらに含むことができる。
【0016】
一実施形態によれば、前記固体状の薬物粒子間の空隙を制御するために、前記固体状の薬物粒子で2次コーティングされたマイクロニードルにエアコンプレッサ(air compressor)で処理することができる。
【0017】
一実施形態によれば、前記固体状の薬物粒子間の空隙を制御するために、前記固体状の薬物粒子で2次コーティングされたマイクロニードルをパフ(puff)に浸漬コーティング(dip-coating)することができる。
【0018】
一実施形態によれば、前記固体状の薬物粒子間の空隙を制御するために、前記固体状の薬物粒子で2次コーティングされたマイクロニードルをポリジメチルシロキサンモールド(PDMS mold)にプレス(press)することができる。
【0019】
一実施形態によれば、前記接着性溶液は、二液型接着剤主剤及び硬化剤を含み、前記二液型接着剤主剤は、ポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane、PDMS)または医療用エポキシボンドであり、前記硬化剤は、シリコーンエラストマー硬化剤(silicone elastomer curing agent)またはハードナー(hardener)であってもよい。
【0020】
一実施形態によれば、前記接着性溶液を構成する前記二液型接着剤主剤と前記硬化剤との重量比率は40:1~20:1であってもよい。
【0021】
一実施形態によれば、前記接着性溶液は一液型接着剤を含み、
前記一液型接着剤は、ポリエチレングリコール(Polyethyleneglycol、PEG)、ポリエチレンオキシド(Polyethylene oxide、PEO)、蜜蝋(Beeswax)、トリグリセリド(Triglyceride)、シリコーン(silicone)、エポキシ(epoxy)、タンパク質バイオ接着剤(protein bioadhesive)及びUV硬化性医療用エポキシレジンからなる群から選択されたいずれか1つであってもよい。
【0022】
一実施形態によれば、前記接着性溶液は、接着物質及び溶媒を含み、前記接着物質は、白糖(Sugar)2~20%、ブドウ糖(Glucose)25~50%、澱粉(Starch)1~4%、ゼラチン(Gelatin)1~4%、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Carboxymethylcellulose、CMC-Na)1~4%、アラビアゴム2~5%、セルロース誘導体(Cellulose derivative)(ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropylcellulose、HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethylcellulose、HPMC)1~4%、メチルセルロース(methyl cellulose、MC)、エチルセルロース(Ethyl cellulose)0.5~2%)、ポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone、PVP)2~5%、シアノアクリレート(cyanoacrylate)、フィブリン糊(fibrin glue)、タンパク質系接着剤(protein glue)、ポリエチレングリコールヒドロゲルシーラント(PEG hydrogel sealant)、シリコーン(silicone)、エポキシ(epoxy)、タンパク質バイオ接着剤(protein bioadhesive)及びイガイ接着タンパク質(mussel adhesive protein)からなる群から選択されたいずれか1つであり、前記溶媒は、水または有機溶媒であってもよい。
【0023】
一実施形態によれば、前記マイクロニードルの原料物質は、生分解性高分子及び非生分解性/生体適合性高分子のいずれか1つ以上であり、生分解性高分子は、ポリ乳酸(poly(lactic acid))、ポリL-乳酸(poly(L-lactic acid))、ポリグリコール酸(poly(glycolic acid))及びポリ乳酸-グリコール酸共重合体(poly(lactic-co-glycolic acid))を含み、非生分解性/生体適合性高分子は、環状オレフィン共重合体(cyclic olefin copolymer)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ナイロン(nylon)、ポリエチレン(polyethylene)及びポリプロピレン(polypropylene)を含むことができる。
【0024】
一実施形態によれば、マイクロニードルの長さは50μm~1,000μmであってもよい。
【0025】
一実施形態によれば、前記固体状の薬物粒子の活性物質は、インターフェロン、エリスロポエチン(EPO)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒白血球マクロファージコロニー刺激因子(FM-CSF)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、黄体ホルモン、カルシトニン、グルカゴン、GNRH拮抗剤、インシュリン、ヒト成長ホルモン(GHD)、テストステロン、リドカイン、ジクロフェナク、オキシブチニン、ケトプロフェン、アレンドロネート(Alendronate)、エナラプリルマレアート、フェニルプロパノールアミン、クロモリン、イソトレチノイン、オキシトシン、パロキセチン、フルルビプロフェン、セルトラリン、ベンラファキシン、リュープロリド、リスペリドン、ガランタミン、エノキサパリン、エタネルセプト、フェンタニル、フィルグラスチム、ヘパリン、ソマトロピン、及びスマトリプタンからなる群から選択されたいずれか1つを含むか、または、A型、B型及びC型肝炎、HIV、インフルエンザ、ジフテリア、破傷風、百日咳、ライム病、恐水病、肺炎球菌、黄熱病、コレラ、ワクシニア、結核、風疹、麻疹、流行性耳下腺炎、ロタウイルス、ボツリヌス菌及びヘルペスウイルスのいずれか1つを含むワクチン、及びボトックス毒素からなる群から選択されたいずれか1つ以上であってもよい。
【0026】
本発明の一実施例に係る粒子付着型マイクロニードルは、マイクロニードルに接着性溶液で1次コーティングして接着層を形成するステップ、及び前記接着層が形成されたマイクロニードルを固体状の薬物粒子が充填されたコーティングウェル(well)に浸漬コーティング(dip-coating)して、前記接着層上に前記固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップによって製造される。
【0027】
本発明の一実施例に係る粒子付着型マイクロニードルは、マイクロニードルに接着性溶液で1次コーティングして接着層を形成するステップと;前記接着層上にマイクロシーブ(micro sieve)で固体状の薬物粒子を分散させて、前記接着層上に前記固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップと;を含む。
【0028】
一実施形態によれば、前記固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップの後に、前記2次コーティングされた固体状の薬物粒子間の空隙を制御するステップをさらに含むことができる。
【0029】
一実施形態によれば、前記薬物粒子間の空隙を制御するために、前記薬物粒子で2次コーティングされたマイクロニードルにエアコンプレッサ(air compressor)で処理することができる。
【0030】
一実施形態によれば、前記薬物粒子間の空隙を制御するために、前記薬物粒子で2次コーティングされたマイクロニードルをパフ(puff)に浸漬コーティング(dip-coating)することができる。
【0031】
一実施形態によれば、前記薬物粒子間の空隙を制御するために、前記薬物粒子で2次コーティングされたマイクロニードルをポリジメチルシロキサンモールド(PDMS mold)にプレス(press)することができる。
【0032】
一実施形態によれば、前記接着性溶液は、二液型接着剤主剤及び硬化剤を含むことができる。
【0033】
一実施形態によれば、前記接着性溶液は、一液型接着剤を含むことができる。
【0034】
一実施形態によれば、前記接着性溶液は、接着物質及び溶媒を含むことができる。
【0035】
本発明の一実施例に係る粒子付着型マイクロニードルは、接着性溶液でマイクロニードルをコーティングして接着層を形成するステップ;及び前記接着層上にマイクロシーブ(micro sieve)で固体状の薬物粒子を分散させて、前記接着層上に前記固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップ;によって製造される。
【0036】
本発明の一実施例に係る粒子付着型マイクロニードルの製造方法は、マイクロニードルに接着性溶液で1次コーティングして接着層を形成するステップと;前記接着層が形成されたマイクロニードルを固体状の薬物粒子が充填されたペトリ皿(petri dish)に浸漬コーティング(dip-coating)して、前記接着層上に前記固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップと;を含む。
【0037】
一実施形態によれば、前記固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップの後に、前記2次コーティングされた固体状の薬物粒子間の空隙を制御するステップをさらに含むことができる。
【0038】
一実施形態によれば、前記薬物粒子間の空隙を制御するために、前記薬物粒子で2次コーティングされたマイクロニードルにエアコンプレッサ(air compressor)で処理することができる。
【0039】
一実施形態によれば、前記薬物粒子間の空隙を制御するために、前記薬物粒子で2次コーティングされたマイクロニードルをパフ(puff)に浸漬コーティング(dip-coating)することができる。
【0040】
一実施形態によれば、前記薬物粒子間の空隙を制御するために、前記薬物粒子で2次コーティングされたマイクロニードルをポリジメチルシロキサンモールド(PDMS mold)にプレス(press)することができる。
【0041】
一実施形態によれば、前記接着性溶液は、二液型接着剤主剤及び硬化剤を含むことができる。
【0042】
一実施形態によれば、前記接着性溶液は、一液型接着剤を含むことができる。
【0043】
一実施形態によれば、前記接着性溶液は、接着物質及び溶媒を含むことができる。
【0044】
本発明の一実施例に係る粒子付着型マイクロニードルは、接着性溶液でマイクロニードルをコーティングして接着層を形成するステップ;及び前記接着層が形成されたマイクロニードルを固体状の薬物粒子が充填されたペトリ皿(petri dish)に浸漬コーティング(dip-coating)して、前記接着層上に前記固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップ;によって製造される。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、固形薬物粒子を変形せずに完全に使用することができる。
【0046】
本発明によれば、固形薬物をマイクロニードルに搭載時に、液状剤形で薬物粒子以外に追加の添加剤が不要であり、乾燥過程も不要であるので、薬物活性が維持され得る。
【0047】
本発明によれば、マイクロニードル上の薬物粒子が真皮に直接伝達されるので、薬物の溶解、溶出パターンに添加剤が影響を及ぼさない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1A】粒子付着型マイクロニードルの製造方法を示した概略図である。
図1B】様々な粒子付着方式を示す図である。
図2】使用された粒子を示すSEMイメージ(×900)である。
図3A】浸漬コーティング(dip-coating)を用いた粒子付着方式の構成要素を示す斜視図である。
図3B】浸漬コーティング(dip-coating)を用いた粒子付着方式の概略図である。
図3C】マイクロシーブ(micro-sieve)を用いた粒子付着方式の構成要素を示す斜視図である。
図4A】接着層が形成されたマイクロニードルの実体顕微鏡イメージである。
図4B】マイクロニードルの接着層の形成後に、マイクロニードルのチップ先端部にのみ粒子が付着された実体顕微鏡イメージである。
図4C】マイクロニードルの接着層の形成後に、マイクロニードル全体に粒子が付着された実体顕微鏡イメージである。
図5A】コーティングされていないPLAマイクロニードルのSEMイメージである(×43、side view)。
図5B】コーティングされていないPLAマイクロニードルのSEMイメージである(×45、lateral view)。
図5C】コーティングされていないPLAマイクロニードルのSEMイメージである(×40、top view)。
図5D】接着層が形成されたマイクロニードルのSEMイメージである(×45、side view)。
図5E】接着層が形成されたマイクロニードルのSEMイメージである(×50、lateral view)。
図5F】接着層が形成されたマイクロニードルのSEMイメージである(×40、top view)。
図5G】マイクロニードルのチップ先端部にのみ粒子が付着されたマイクロニードルのSEMイメージである(×45、side view)。
図5H】マイクロニードルのチップ先端部にのみ粒子が付着されたマイクロニードルのSEMイメージである(×50、lateral view)。
図5I】マイクロニードルのチップ先端部にのみ粒子が付着されたマイクロニードルのSEMイメージである(×40、top view)。
図5J】マイクロニードル全体に粒子が付着されたマイクロニードルのSEMイメージである(×45、side view)。
図5K】マイクロニードル全体に粒子が付着されたマイクロニードルのSEMイメージである(×50、lateral view)。
図5L】マイクロニードル全体に粒子が付着されたマイクロニードルのSEMイメージである(×40、top view)。
図6A】マイクロニードルのチップ先端部にのみ粒子が付着されたマイクロニードルを投与したブタの皮膚の表面の実体顕微鏡イメージである。
図6B】マイクロニードル全体に粒子が付着されたマイクロニードルを投与したブタの皮膚の表面の実体顕微鏡イメージである。
図7A】マイクロニードルのチップ先端部にのみ粒子が付着されたマイクロニードルのブタの皮膚に投与前のSEMイメージ(×200)である。
図7B】マイクロニードルのチップ先端部にのみ粒子が付着されたマイクロニードルのブタの皮膚に投与後のSEMイメージ(×200)である。表示された部分の接着層が剥がれずに完全な形態を維持していることを確認できる。
図8A】接着層のみがコーティングされたマイクロニードルを投与したブタの皮膚の表面をSEMで撮影したイメージである(×35)。
図8B】マイクロニードルのチップ先端部にのみ粒子が付着されたマイクロニードルの投与後にブタの皮膚の表面をSEMで撮影したイメージである(×35)。
図9】PDMS40とブタの皮膚との間の剥離力を測定したグラフである。
図10A】PDMS40とブタの皮膚との間の水平仕事を示したグラフである。
図10B】PDMS40、ブドウ糖粒子及びブタの皮膚の間の剥離力を示したグラフである。
図11A】PDMS40接着層に互いに異なるサイズのオボアルブミン粒子が付着されたイメージである。
図11B】PDMS40接着層に互いに異なるサイズのオボアルブミン粒子が付着されたイメージである。
図11C】PDMS40接着層に互いに異なるサイズのオボアルブミン粒子が付着されたイメージである。
図12A】共焦点顕微鏡を用いて時間によるブタの皮膚のZスタック蛍光パターンを観察したイメージである。
図12B】共焦点顕微鏡を用いて時間によるブタの皮膚のZスタック蛍光パターンを観察したイメージである。
図12C】共焦点顕微鏡を用いて時間によるブタの皮膚のZスタック蛍光パターンを観察したイメージである。
図12D】共焦点顕微鏡を用いて時間によるブタの皮膚のZスタック蛍光パターンを観察したイメージである。
図13】蛍光オボアルブミン粒子が付着されたマイクロニードルが皮膚に留まる時間の間、マイクロニードルチップの表面の蛍光強度の変化を示したグラフである。
図14A】緑色ブドウ糖粒子が付着されたマイクロニードルに対する光学顕微鏡イメージである。
図14B】蛍光オボアルブミン粒子が付着されたマイクロニードルに対する蛍光顕微鏡イメージである。
図15A】オボアルブミン粒子が付着されたマイクロニードルの光学顕微鏡イメージである。
図15B】オボアルブミン粒子が付着されたマイクロニードルを生体内マウス皮膚に5分間投与した後に回収したマイクロニードルの光学顕微鏡イメージである。
図16】免疫化日程の概略図である。
図17】オボアルブミンを投与したときの抗体価(antibody titer)グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、添付の図面及び添付の図面に記載された内容を参照して、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明が実施例によって制限又は限定されるものではない。
【0050】
本明細書で使用された用語は、実施例を説明するためのものであり、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数形は、文句で特に言及しない限り、複数形も含む。明細書で使用される「含む(comprises)」及び/又は「含む(comprising)」は、言及された構成要素、段階、動作及び/又は素子は、一つ以上の他の構成要素、段階、動作及び/又は素子の存在又は追加を排除しない。
【0051】
本明細書で使用される「実施例」、「例」、「側面」、「例示」などは、記述された任意の態様(aspect)又は設計が他の態様又は設計よりも良好であるか、または利点があるものと解釈すべきものではない。
【0052】
また、「又は」という用語は、排他的論理和「exclusive or」よりは、包含的な論理和「inclusive or」を意味する。すなわち、特に言及しない限り、または文脈から明らかでない限り、「xがa又はbを用いる」という表現は、包含的な自然順列(natural inclusive permutations)のいずれか一つを意味する。
【0053】
また、本明細書及び特許請求の範囲で使用される単数の表現(「a」又は「an」)は、特に言及しない限り、または単数形態に関するものであることが文脈から明らかでない限り、一般的に「一つ以上」を意味するものと解釈しなければならない。
【0054】
また、構成要素などの部分が他の部分の「表面に」、「上に」または「上部に」あるとするとき、他の部分の真上にある場合のみならず、それらの間に他の構成要素などが介在している場合も含む。
【0055】
本発明によれば、薬物を液体状ではなく固体状の形態でマイクロニードル(microneedle)に搭載しようとする。ほとんどの薬物は粒子の形態で準備され、種々の工程を通じて固体状に製造される。したがって、既存の「溶液コーティングあるいはモールディング方式」を用いたマイクロニードルは、マイクロニードルの製造のために、薬物が溶液状で準備されなければならない。溶液状では、変性を抑制する安定化剤などの賦形剤を添加しなければならないため、最終剤形の変更が発生する。併せて、薬物粒子を液体状に変更する場合、望まない活性損失が発生したり、活性物質の低い溶解度により、薬物を液体状で準備することが難しくもある。このような問題点を解決するために、本発明では、薬物あるいは薬物を含有した製剤を液状への変形なしにマイクロニードルに搭載して皮膚内に伝達しようとする。
【0056】
これに加えて、既存の固体状の薬物をマイクロニードルに搭載する方式は、マイクロニードルの内部に薬物粒子を分散させたり内包する方式で行われた。このような場合には、活性物質の溶出特性がマイクロニードルの構成物質によって影響を受けるという問題がある。
【0057】
したがって、このような問題点を解決するために、本発明では、薬物粒子の溶出特性に影響を与えずに活性物質を皮膚内に伝達するために、“粒子付着型方式”のマイクロニードルの製造方法について提示しようとする。粒子付着型方式は、粘着力(接着力)を有するマイクロニードルの表面に、薬物が含有された粒子を付けることを意味し、他の用語で“Dry powder coating process”といえる。既存の“溶液コーティング方式”と比較したとき、“粒子付着型方式”の利点及び特徴は、次の通りである。
【0058】
前記粒子付着型方式は、別途のコーティング溶液の準備過程なしにマイクロニードルの表面に固体状の粒子を直接コーティングするので、溶液コーティング方式に比べてコーティング過程が非常に簡単である。このとき、薬物粒子は、凍結化剤あるいは固形化剤のようなパウダー(powder)を活用するので、剤形の変更の必要性がなく、これによって、食品医薬品安全処の許認可に対するアプローチが容易である。追加的にコーティング賦形剤を薬物に添加しないので、剤形の変更による放出速度の変更が発生するおそれがない。薬物を溶液化する過程が省略されるので、親水性薬物であるか、疎水性薬物であるかに関係なく、粒子をマイクロニードルにコーティングすることができ、コーティング後に残ったパウダーを再活用できるので薬物の浪費を減らすことができる。また、コーティング前の薬物が固形状態であるので、空気中に長時間さらされても安定性が維持され、薬物粒子は、元の剤形のまま微細粒子化されてマイクロニードルの外部表面に物理的に付着されるため、マイクロニードルパッチ(microneedle patch)を皮膚に付着時に薬物が直接体液に露出されて溶出し得る。また、薬物に増粘剤が追加されないので、マイクロニードルを介して薬物を投与した後、皮膚内にさらに速く吸収させることができる。
【0059】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0060】
図1Aは、本発明の一実施例に係る粒子付着型マイクロニードルの作製方法を示したフローチャートである。
【0061】
図1Aを参照すると、本発明の一実施例に係る粒子付着型マイクロニードルの製造方法は、マイクロニードルの製造後に2つのステップを経て行われ、第一のステップは、マイクロニードルに接着性溶液で1次コーティングして接着層を形成するステップ、第二のステップは、固体状の薬物粒子を前記接着層上に2次コーティングして付着するステップである。
【0062】
図1Bは、接着性溶液でマイクロニードルに1次コーティングして接着層を形成する方法、及びマイクロニードルの接着層に薬物粒子を付着する方法を示した図である。
【0063】
図1Bを参照すると、本発明の一実施例に係る粒子付着型マイクロニードルの接着層を形成する方法としては、浸漬コーティング(Dip-coating)、ブラシ塗抹(Brush spreading)及びスプレーコーティング(Spray coating)のうちの1つを選択できる。但し、実験の面倒さや再現性のため、ニードル全体に接着層を形成するときは、主にブラシ塗抹(Brush spreading)方式やスプレーコーティング(Spray coating)方式を用い、ニードルチップ先端にのみ接着層を形成するときは、主にコーティングウェル(Well)を使用する浸漬コーティング(Dip-coating)方式が推奨される。
【0064】
本発明において、コーティングウェル(well)は、円柱状の容器を意味し、円柱状の容器の上端の一部に一つの大きくて平らな円形溝が窪んでいる。様々な深さの溝を有するコーティングウェル(well)のうち所望の深さのものを選択し、溝の内部に薬物粒子や接着性溶液を充填して、所望の高さでニードルチップに薬物粒子をコーティングするか、または所望の高さでニードルチップを接着性溶液に浸漬することができる。図3Aを参照すると、コーティングウェル20の形状を確認できる。
【0065】
マイクロニードルに1次コーティングを行って接着層を形成する方法、及びマイクロニードルの接着層に薬物粒子を付着する方法を具体的に説明すると、次の通りである。
【0066】
まず、マイクロニードルに1次コーティングを行って接着層を形成する方法のうちのブラシ塗抹(Brush spreading)方式は、接着性溶液を付けたブラシでマイクロニードルに溶液をコーティングする方式であって、薄くコーティングできるという利点を有するが、接着層がコーティングされる高さを調節しにくいという欠点がある。スプレーコーティング(Spray coating)は、接着性溶液をスプレーで噴射してコーティングさせる方式であり、薄くコーティングできるという利点を有するが、ブラシ塗抹と同様に、接着層がコーティングされる高さを調節するのが煩わしいという欠点がある。浸漬コーティング(Dip-coating)方式は、接着層の高さを調節できるという利点を有するが、溶液の粘度に依存するため、ニードルに接着層を薄くコーティングしにくいという欠点がある。
【0067】
このように、接着性溶液でマイクロニードルを1次コーティングして接着層を形成した後には、接着層上に薬物粒子で2次コーティングを行う。まず、ブラシ塗抹あるいはスプレーコーティング方法を用いてニードル全体に接着層を形成した場合には、(i)所望の高さのコーティングウェル(well)に固体状の薬物粒子を充填した後、接着層が形成されたマイクロニードルを浸漬コーティング(dip-coating)して薬物粒子を2次コーティングすることによって、ニードルチップ(tip)にのみ薬物粒子をコーティングさせるか、(ii)薬物粒子をマイクロシーブ(micro seive)を介してマイクロニードルに撒き散らして(分散させて)マイクロニードル全体に薬物粒子を2次コーティングさせるか、または(iii)ペトリ皿上の薬物粒子にマイクロニードルを浸漬コーティング(dip-coating)してニードル全体に薬物粒子を2次コーティングさせる方法を用いる。
【0068】
一方、コーティングウェルで浸漬コーティングする方法を用いてニードルチップにのみ1次コーティングして接着層を形成した場合には、ニードルチップにのみ接着層が形成されているので、コーティングウェルを用いて薬物粒子を浸漬コーティングする方式、マイクロシーブを用いて薬物粒子を分散させる方式、ペトリ皿を用いて薬物粒子を浸漬コーティングする方式のいずれの方式を用いても、ニードルチップにのみ薬物粒子を2次コーティングさせることができる。
【0069】
以下、前述したマイクロニードル上に固体状の薬物粒子を2次コーティングする3つの方式に分けて粒子付着型マイクロニードルの製造方法を説明する。
【0070】
本発明によれば、粒子付着型マイクロニードルの製造方法は、マイクロニードルに接着性溶液で1次コーティングして接着層を形成するステップと;前記接着層が形成されたマイクロニードルを固体状の薬物粒子が充填されたコーティングウェル(well)に浸漬コーティング(dip-coating)して、前記接着層上に前記固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップと;を含む。
【0071】
1次コーティングして接着層を形成するステップを行う前に、生分解性高分子又は生体適合性高分子を材料としてマイクロニードルを製造、及び接着性溶液を準備する。粒子付着型マイクロニードルは、パッチ、及びパッチ上のマイクロニードルを含む。前記パッチは、円形で形成され得、パッチ上に多数個の尖ったピラミッド状のマイクロニードルチップ(tip)を備えることができる。マイクロニードルは、ヒトの皮膚を通して挿入され得、皮膚に投与された後、マイクロニードルにコーティングされた固体状の物質が溶けながら前記物質が皮膚内に伝達され得る。
【0072】
マイクロニードルの原料物質である前記生分解性高分子としては、ポリ乳酸(poly(lactic acid))、ポリL-乳酸(poly(L-lactic acid))、ポリグリコール酸(poly(glycolic acid))、及びポリ乳酸-グリコール酸共重合体(poly(lactic-co-glycolic acid))からなる群から1つ以上を選択することができる。
【0073】
また、マイクロニードルの原料物質である非生分解性/生体適合性高分子(非生分解性であるが生体適合性の高分子)としては、環状オレフィン共重合体(cyclic olefin copolymer)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ナイロン(nylon)、ポリエチレン(polyethylene)及びポリプロピレン(polypropylene)からなる群から1つ以上を選択することができる。
【0074】
また、前記マイクロニードルの長さは50μm~1,000μmであり、好ましくは400μm~1,000μmの長さを有する。前記マイクロニードルの長さは、ニードルが皮膚の表皮層を通って真皮層まで到達する程度の適切な長さを示す。
【0075】
次に、接着層を形成(1次コーティング)するための方法で使用可能な接着性溶液は、次のように3種類に分けることができる。
第一に、二液型接着剤主剤と硬化剤(二液型接着剤主剤は硬化性樹脂、硬化剤はハードナー)、
第二に、一液型接着剤(一液型接着剤は液状の硬化性樹脂)、
第三に、接着物質と溶媒(接着物質は高分子)である。
【0076】
薬物粒子を接着層に付着時に、溶媒を使用した場合には溶媒が残留している状態であり、硬化性物質を使用した場合には、高分子物質が完全に固形化する前の状態であって、薬物粒子を付着した後に硬化過程を完了する。
【0077】
第一に、二液型接着剤主剤と硬化剤を使用する場合、
二液型接着剤主剤と硬化剤は、ポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane、PDMS)とシリコーンエラストマー硬化剤(silicone elastomer curing agent、hardner)、医療用エポキシボンドとハードナー(hardener)の組み合わせなどで使用する。
【0078】
第二に、一液型接着剤を使用する場合、
一液型接着剤は、別途の硬化剤がないので、一液型接着剤をマイクロニードルにコーティングした後、薬物粒子を付着し、温度(熱)又はUVで硬化を調節する。温度によって硬化が調節される一形剤は、ポリエチレングリコール(Polyethyleneglycol、PEG)、ポリエチレンオキシド(Polyethylene oxide、PEO)、蜜蝋(Beeswax)、トリグリセリド(Triglyceride)、シリコーン(silicone)、エポキシ(epoxy)、タンパク質バイオ接着剤(protein bioadhesive)などがあり、UVによって硬化が調節される一形剤には、UV硬化性医療用エポキシレジンなどがある。
【0079】
第一及び第二の方法のように硬化性物質を使用する場合には、硬化性物質を溶かすための溶媒が別途に必要でないので、付着しようとする薬物粒子が親水性であるか、疎水性であるかに制限を受けない。
【0080】
第三に、接着物質と溶媒を混合して使用する場合、溶媒が水であれば、接着物質は、白糖(Sugar)2~20%、ブドウ糖(Glucose)25~50%、澱粉(Starch)1~4%、ゼラチン(Gelatin)1~4%、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Carboxymethylcellulose、CMC-Na)1~4%、アラビアゴム2~5%などが使用され得、溶媒が水であるので、疎水性薬物を付着させる場合に適している。溶媒がエタノールなどの有機溶媒であれば、接着物質は、セルロース誘導体(Cellulose derivative)(ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropylcellulose、HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethylcellulose、HPMC)1~4%、メチルセルロース(methyl cellulose、MC)、エチルセルロース(Ethyl cellulose)0.5~2%)、ポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone、PVP)2~5%、シアノアクリレート(cyanoacrylate)、フィブリン糊(fibrin glue)、タンパク質系接着剤(protein glue)、ポリエチレングリコールヒドロゲルシーラント(PEG hydrogel sealant)、シリコーン(silicone)、エポキシ(epoxy)、タンパク質バイオ接着剤(protein bioadhesive)、イガイ接着タンパク質(mussel adhesive protein)などが使用され得、同様に前記%範囲内で接着性を示し、溶媒が有機溶媒であるので、親水性薬物を付着させる場合に適している。
【0081】
接着性溶液として二液型接着剤主剤及び硬化剤を使用する第一の場合には、二液型接着剤主剤と硬化剤との重量比率を40:1~20:1で混合して製造する。好ましくは、40:1で混合する。接着層は、0.05N/cm以上の接着力を有することが好ましい。二液型接着剤主剤と硬化剤との比率が20:1よりも薄く混合される場合には、接着性溶液の接着力が著しく減少してしまい、接着の役割を行うことができなくなる。接着性溶液を使用して薬物粒子をマイクロニードルに付着した後、硬化過程を行って固体状の薬物粒子をマイクロニードルにコーティングさせる。
【0082】
二液型接着剤主剤と硬化剤、あるいは一液型接着剤を使用する場合には、前記二液型接着剤主剤と硬化剤、または一液型接着剤をマイクロニードルに浸漬コーティング(Dip-coating)又はブラシ塗抹(Brush spreading)又はスプレーコーティング(Spray coating)して接着層を形成する。
【0083】
接着層は、ねばねばした粘性を有するので、薬物を固体状の粒子の形態でマイクロニードルの表面に2次コーティングを行うのに適している。接着層の形成後に、70℃のオーブンで1時間あるいは常温で一日硬化させ、接着層を有するマイクロニードルパッチを得る。または、前記一液型接着剤として紫外線硬化性樹脂(UV curable resin)を使用した後、紫外線(UV)を照射して接着層を固形化させることができる。
【0084】
粒子付着型マイクロニードルに接着層を形成した後には、マイクロニードルを固体状の薬物粒子が充填されたコーティングウェル(well)に浸漬コーティング(dip-coating)して、前記接着層上に前記薬物粒子を2次コーティングするステップを行い、このステップを行うために薬物粒子を準備し、前記薬物粒子をコーティングウェル(well)に充填するステップが必要である。
【0085】
前記ステップを行うために、固体状の薬物を蒸留水に溶解させた後、凍結乾燥する。前記凍結乾燥された薬物を乳鉢で粉砕した後、マイクロシーブ(micro sieve)に通過させて均一な形状及びサイズを有する薬物粒子を準備する。前記マイクロシーブ(micro sieve)を通過した薬物粒子は、直径20μm以下であるものを対象とする。
【0086】
好ましくは、前記薬物粒子は、直径1μm~50μmの範囲を有する。より好ましくは、薬物粒子は、直径10μm~20μmであってもよいが、これに限定されない。マイクロニードルを介した粒子の伝達効率は、粒子のサイズに影響を受け得る。粒子が大きすぎると、皮膚へ挿入時に粒子と皮膚との摩擦が増加して薬物が押し出されるため、伝達される粒子の量が減少することがある。反対に、粒子が小さすぎると、接着層に付着された粒子の総体積が減少するため、伝達される粒子の量が減少することがある。
【0087】
図2は、薬物粒子を900倍率で拡大したSEMイメージであって、直径が20μm以下であることを確認できる。
【0088】
前記薬物粒子の活性物質としては、固形化化合物、抗体、タンパク質などの薬効物質、ワクチンなどの薬/医学的に人体内の使用が可能ないかなる物質であってもよい。詳細には、前記活性物質として、インターフェロン、エリスロポエチン(EPO)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒白血球マクロファージコロニー刺激因子(FM-CSF)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、黄体ホルモン、カルシトニン、グルカゴン、GNRH拮抗剤、インシュリン、ヒト成長ホルモン(GHD)、テストステロン、リドカイン、ジクロフェナク、オキシブチニン、ケトプロフェン、アレンドロネート(Alendronate)、エナラプリルマレアート、フェニルプロパノールアミン、クロモリン、イソトレチノイン、オキシトシン、パロキセチン、フルルビプロフェン、セルトラリン、ベンラファキシン、リュープロリド、リスペリドン、ガランタミン、エノキサパリン、エタネルセプト、フェンタニル、フィルグラスチム、ヘパリン、ソマトロピン、及びスマトリプタンからなる群からいずれか1つを選択するか、または、A型、B型及びC型肝炎、HIV、インフルエンザ、ジフテリア、破傷風、百日咳、ライム病、恐水病、肺炎球菌、黄熱病、コレラ、ワクシニア、結核、風疹、麻疹、流行性耳下腺炎、ロタウイルス、ボツリヌス菌及びヘルペスウイルスのいずれか1つを含むワクチン、及びボトックス毒素からなる群からいずれか1つ以上を選択することができる。
【0089】
活性物質を含む薬物粒子は、ミーリング(milling)、噴霧乾燥(spray drying)、または凍結乾燥後のミーリングによって準備される。
【0090】
製造された均一なサイズの薬物粒子をコーティングウェル(well)に充填するステップは、マイクロシーブ(micro sieve)を用いて前記薬物粒子を塗抹(spreading)することによって、粒子を均一に充填する方法;コーティングウェル(well)に前記薬物粒子をいっぱいに満たした後、垂直方向に圧力を加えて密に充填する方法;及び揮発性が良く、前記薬物粒子を溶かさない有機溶媒に分散させてコーティングウェル(well)に充填した後、有機溶媒を蒸発させて粒子だけが残るようにする方法;のうちの1つを選択して行う。
【0091】
前記コーティングウェル(well)に固体状の薬物粒子を充填するステップにおいて粒子が平らに充填されない場合には、前記ステップを行う前に、二液型接着剤主剤及び硬化剤を硬化させてフィルムを製造した後、前記フィルムをコーティングウェル(well)上に位置させるステップをさらに含むことができる。前記フィルムを構成する二液型接着剤主剤及び硬化剤は、前記マイクロニードルの表面の接着層を形成するための接着性溶液を構成する二液型接着剤主剤及び硬化剤と同じ群から選択されたいずれか1つの物質を使用することができる。すなわち、前記フィルムは、フィルム上の固体状の薬物粒子が均一に分散するようにし、固体状の薬物粒子が、接着力が低い地点から高い地点に伝達されるようにするために、フィルムの接着力がマイクロニードルに1次コーティングした接着層よりも低いという条件を満たせばよい。
【0092】
前記フィルムを構成する二液型接着剤主剤と硬化剤は10:1の重量比率を有する。前記10:1の比率よりも二液型接着剤主剤を多く混合すると、薬物粒子が混合溶液上に均一に分散していない状態でフィルムに付着されてしまうという問題があり、前記重量比率が接着層を構成する二液型接着剤主剤と硬化剤の重量比率よりも大きくなると、薬物粒子に対する接着層の接着力がフィルムの接着力よりも大きくなるため、フィルム上の薬物粒子をマイクロニードルの表面に伝達できないという問題がある。
【0093】
前記フィルムをコーティングウェル(well)に位置させた後、粒子を充填して浸漬コーティング(dip coating)を行う場合、薬物粒子をさらに均一に分散させて充填することができる。これは、疎水性薬物の場合、粒子サイズが小さいと、静電気が発生し、コーティングウェルに薬物粒子を充填したときに粒子が凝集する傾向が発生するが、前記のようにフィルムが敷かれたコーティングウェル上に薬物粒子を塗布する場合、静電気が少なく発生し、薬物粒子が均一に分散及びコーティングされ得るものである。
【0094】
前記フィルムは、接着層と同様に、70℃のオーブンで1時間あるいは常温で一日硬化させて製造し、接着力を有するが、接着層よりも接着物質の比率が少なく、粘性が小さい。したがって、接着フィルム上に位置した固体状の薬物粒子は、マイクロニードル上の接着層に伝達され得る。
【0095】
その次は、接着層が形成されたマイクロニードルに固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップである。このステップは、上述したように凍結乾燥された薬物粒子、または前記薬物粒子及びフィルムを平らに充填したコーティングウェル(well)に、接着層が形成されたマイクロニードルパッチを浸漬コーティング(dip-coating)して、ニードルチップに薬物粒子を均一にコーティングすることによって行われる。
【0096】
固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップの後に、薬物粒子間の空隙を制御するステップをさらに含むことができる。本発明において、マイクロニードルに付着された薬物粒子間の空隙が制御されるという意味は、薬物粒子間の距離を減少させることを意味する。
【0097】
薬物粒子をマイクロニードルにコーティングした後、前記薬物粒子間の空隙を制御する方法として、前記マイクロニードルにエアコンプレッサ(air compressor)で処理する方法;前記マイクロニードルをパフ(puff)に浸漬コーティング(dip-coating)する方法;及び前記マイクロニードルをポリジメチルシロキサンモールド(PDMS mold)にプレス(press)する方法;のうちの1つを選択する。
【0098】
具体的に、マイクロニードルにエアコンプレッサで処理する方法は、粒子付着型マイクロニードルにエアを噴射する方法である。この過程を経ると、接着層に接着力なしに静電気のみで付いていた薬物粒子はエアによって除去され、マイクロニードルに密着していない状態であるか、または粒子間の空隙が大きい形態で接着層と接着力を形成していた薬物粒子は、エアによって接着層にきちんと付着される過程を通じて、粒子間の空隙を減少させることができる。
【0099】
マイクロニードルをパフ(puff)に浸漬コーティング(dip-coating)する方法において、パフは、スポンジのように内部に空隙がある多孔性構造体であって、エアコンプレッサを処理していない粒子付着型マイクロニードルをパフに押圧すると、薬物粒子間の空隙が大きく形成されていたのが、パフによって押し固められて粒子間の距離を減少させることができる。
【0100】
マイクロニードルをポリジメチルシロキサンモールド(PDMS mold)にプレス(press)する方法において、PDMSモールドは、マイクロニードル10を製造するために使用されたPDMS陰刻モールドをいう。マイクロニードル10とPDMSモールドの大きさ及び形状がぴったり合うようになるので、エアコンプレッサを処理していない粒子付着型マイクロニードルをPDMSモールドの陰刻部分に噛み合うように結合させると、薬物粒子が押し固められて粒子間の空隙が減少する効果を示す。
【0101】
前記薬物粒子間の空隙を制御するステップを通じて、固体状の薬物粒子は、マイクロニードルの表面にさらに薄くて均一にコーティングされ得る。このような製造方法を通じて、マイクロニードルに接着性溶液で1次コーティングして形成された接着層、及び接着層上に固体状の薬物粒子で2次コーティングした層を含む粒子付着型マイクロニードルが製造される。同様に、前記粒子付着型マイクロニードルは、2次コーティングされた固体状の薬物粒子間の空隙が制御された状態である。空隙を制御する場合、同じ面積に比べて多くの量の薬物粒子が付着され得、マイクロニードルの表面に薬物粒子がさらに近く付着されるため、皮膚に加えるときに粒子が押し出される危険性を減少させることができる。
【0102】
本発明に係る粒子付着型マイクロニードルは、薬物粒子をマイクロニードル上にコーティングするので、前記粒子サイズの調節を通じて所望の溶解速度を決定することができる。一方、既存のマイクロニードルのコーティング方法は、コーティング用液状製剤を作るために、固体状の薬物粒子に追加的に安定化剤、増粘剤、賦形剤などの添加剤を入れて溶液状にする剤形変更を行わなければならない。しかし、本発明によって粒子自体をマイクロニードル上にコーティングすれば、このような剤形変更過程が不要であるので、より簡単にマイクロニードルのコーティングを行うことができ、所望の薬物を剤形変更なしにそのまま伝達することができる。併せて、固体状の薬物をバッファーに溶かしてコーティング用液状製剤を作る液状化過程が不要であるので、当該薬物の親水性、親油性に関係なく粒子のコーティングを行うことができるという利点がある。
【0103】
図3Aは、本発明の一実施例に係る浸漬コーティング(dip- coating)方式を用いた粒子付着型マイクロニードルの構成要素を示した斜視図である。図3Aを参照すると、本発明の一実施例に係る固体状の薬物粒子が搭載されたマイクロニードルの製造方法は、マイクロニードル10、接着層11、固体状の薬物粒子22、フィルム21及びコーティングウェル(well)20の構成要素を含む。
【0104】
マイクロニードルに接着性溶液で1次コーティングして接着層を形成するステップを通じて、接着性溶液をマイクロニードル10に浸漬コーティング(Dip-coating)あるいはブラシ塗抹(Brush spreading)あるいはスプレーコーティング(Spray coating)し、70℃のオーブンで1時間あるいは常温で一日硬化させる。硬化された接着層11は、マイクロニードル10の表面に1次コーティングされ、前記接着層11は、後で固体状の薬物粒子22に対して接着力を示す。接着層が形成されたマイクロニードルを、固体状の薬物粒子が充填されたコーティングウェル(well)に浸漬コーティング(dip-coating)して、前記接着層上に前記薬物粒子を2次コーティングするステップにおいて、まず、フィルム21をコーティングウェル(well)20上に位置させる。前記フィルム21により、固体状の薬物粒子22はコーティングウェル(well)20に均一に配置され得る。その後に前記薬物粒子をコーティングする過程において、接着層が形成されたマイクロニードルを前記薬物粒子22が塗布されたコーティングウェル(well)20に浸漬コーティング(dip-coating)すると、固体状の薬物粒子22は、剤形の変化なしに固体状のままマイクロニードル10に2次コーティングされる。
【0105】
図3Bは、浸漬コーティング(dip-coating)を用いた粒子付着方式の概略図であって、図3Aのマイクロニードル10及び接着層11を合わせ、薬物粒子22、フィルム21及びコーティングウェル(well)20を合わせた形態を示したものである。
【0106】
図3Cは、マイクロシーブ(micro sieve)を用いた粒子付着方式の構成要素を示した斜視図である。
【0107】
図4Aは、接着層が形成されたマイクロニードルの実体顕微鏡イメージであり、右下端のスケールバーは500μmを示す。
【0108】
図4Bは、本発明の一実施例に係るマイクロニードルの製造方法によって生成された、固体状の薬物粒子がニードルのチップ先端部にのみ付着されたマイクロニードルの形状を示した図であって、実体顕微鏡イメージであり、倍率は120倍である。図3Bを参照すると、マイクロニードルをコーティングウェル(well)上に位置した固体状の薬物粒子22に浸して浸漬コーティング(dip-coating)したもので、固体状の薬物粒子が固体結晶のままマイクロニードルのチップ先端部に搭載されたことを確認できる。2次コーティング時に浸漬コーティング方式を用いる場合、薬物粒子をコーティングしょうとするニードルチップの高さを決定できるという利点がある。
【0109】
このように形成された粒子付着型マイクロニードルは、固体状の薬物粒子を別途のカプセルに内在化せず、マイクロニードルの表面に露出させて付着するので、マイクロニードルを皮膚に刺したとき、表皮や真皮に薬物が直接伝達され得るという利点を有する。すなわち、固体状の薬物粒子が他の添加剤によってカプセル化されないので、薬物の溶解、溶出パターンに影響を与えない。
【0110】
本発明によれば、粒子付着型マイクロニードルの製造方法は、マイクロニードルに接着性溶液で1次コーティングして接着層を形成するステップと;前記接着層上にマイクロシーブ(micro sieve)で固体状の薬物粒子を分散させて、前記接着層上に前記固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップと;を含む。
【0111】
1次コーティングして接着層を形成するステップを行う前に、生分解性高分子又は生体適合性高分子を材料としてマイクロニードルを製造、及び接着性溶液を準備する。粒子付着型マイクロニードルは、パッチ、及びパッチ上のマイクロニードルを含む。前記パッチは、円形で形成され得、パッチ上に多数個の尖ったピラミッド状のマイクロニードルチップ(tip)を備えることができる。マイクロニードルは、ヒトの皮膚を通して挿入され得、皮膚に投与された後、マイクロニードルにコーティングされた固体状の物質が溶けながら前記物質が皮膚内に伝達され得る。
【0112】
マイクロニードルの原料物質である前記生分解性高分子としては、ポリ乳酸(poly(lactic acid))、ポリL-乳酸(poly(L-lactic acid))、ポリグリコール酸(poly(glycolic acid))、及びポリ乳酸-グリコール酸共重合体(poly(lactic-co-glycolic acid))からなる群から1つ以上を選択することができる。
【0113】
また、マイクロニードルの原料物質である非生分解性/生体適合性高分子(非生分解性であるが生体適合性の高分子)としては、環状オレフィン共重合体(cyclic olefin copolymer)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ナイロン(nylon)、ポリエチレン(polyethylene)及びポリプロピレン(polypropylene)からなる群から1つ以上を選択することができる。
【0114】
また、前記マイクロニードルの長さは50μm~1,000μmであり、好ましくは400μm~1,000μmの長さを有する。前記マイクロニードルの長さは、ニードルが皮膚の表皮層を通って真皮層まで到達する程度の適切な長さを示す。
【0115】
次に、接着層を形成(1次コーティング)するための方法で使用可能な接着性溶液は、次のように3種類に分けることができる。
第一に、二液型接着剤主剤と硬化剤(二液型接着剤主剤は硬化性樹脂、硬化剤はハードナー)、
第二に、一液型接着剤(一液型接着剤は液状の硬化性樹脂)、
第三に、接着物質と溶媒(接着物質は高分子)である。
【0116】
薬物粒子を接着層に付着時に、溶媒を使用した場合には溶媒が残留している状態であり、硬化性物質を使用した場合には、高分子物質が完全に固形化する前の状態であって、薬物粒子を付着した後に硬化過程を完了する。
【0117】
第一に、二液型接着剤主剤と硬化剤を使用する場合、
二液型接着剤主剤と硬化剤は、ポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane、PDMS)とシリコーンエラストマー硬化剤(silicone elastomer curing agent、hardner)、医療用エポキシボンドとハードナー(hardener)の組み合わせなどで使用する。
【0118】
第二に、一液型接着剤を使用する場合、
一液型接着剤は、別途の硬化剤がないので、一液型接着剤をマイクロニードルにコーティングした後、薬物粒子を付着し、温度(熱)又はUVで硬化を調節する。温度によって硬化が調節される一形剤は、ポリエチレングリコール(Polyethyleneglycol、PEG)、ポリエチレンオキシド(Polyethylene oxide、PEO)、蜜蝋(Beeswax)、トリグリセリド(Triglyceride)、シリコーン(silicone)、エポキシ(epoxy)、タンパク質バイオ接着剤(protein bioadhesive)などがあり、UVによって硬化が調節される一形剤には、UV硬化性医療用エポキシレジンなどがある。
【0119】
第一及び第二の方法のように硬化性物質を使用する場合には、硬化性物質を溶かすための溶媒が別途に必要でないので、付着しようとする薬物粒子が親水性であるか、疎水性であるかに制限を受けない。
【0120】
第三に、接着物質と溶媒を混合して使用する場合、溶媒が水であれば、接着物質は、白糖(Sugar)2~20%、ブドウ糖(Glucose)25~50%、澱粉(Starch)1~4%、ゼラチン(Gelatin)1~4%、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Carboxymethylcellulose、CMC-Na)1~4%、アラビアゴム2~5%などが使用され得、溶媒が水であるので、疎水性薬物を付着させる場合に適している。溶媒がエタノールなどの有機溶媒であれば、接着物質は、セルロース誘導体(Cellulose derivative)(ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropylcellulose、HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethylcellulose、HPMC)1~4%、メチルセルロース(methyl cellulose、MC)、エチルセルロース(Ethyl cellulose)0.5~2%)、ポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone、PVP)2~5%、シアノアクリレート(cyanoacrylate)、フィブリン糊(fibrin glue)、タンパク質系接着剤(protein glue)、ポリエチレングリコールヒドロゲルシーラント(PEG hydrogel sealant)、シリコーン(silicone)、エポキシ(epoxy)、タンパク質バイオ接着剤(protein bioadhesive)、イガイ接着タンパク質(mussel adhesive protein)などが使用され得、同様に前記%範囲内で接着性を示し、溶媒が有機溶媒であるので、親水性薬物を付着させる場合に適している。
【0121】
二液型接着剤主剤と硬化剤、あるいは一液型接着剤を使用する場合には、前記二液型接着剤主剤と硬化剤、または一液型接着剤をマイクロニードルに浸漬コーティング(Dip-coating)又はブラシ塗抹(Brush spreading)又はスプレーコーティング(Spray coating)して接着層を形成する。
【0122】
接着層は、ねばねばした粘性を有するので、薬物を固体状の粒子の形態でマイクロニードルの表面に2次コーティングを行うのに適している。接着層の形成後に、70℃のオーブンで1時間あるいは常温で一日硬化させ、接着層を有するマイクロニードルパッチを得る。または、前記一液型接着剤として紫外線硬化性樹脂(UV curable resin)を使用した後、紫外線(UV)を照射して接着層を固形化させることができる。
【0123】
2次コーティングのための固体状の薬物粒子を準備するために、固体状の薬物を蒸留水に溶解させた後、凍結乾燥する。前記凍結乾燥された薬物を乳鉢で粉砕した後、マイクロシーブ(micro sieve)に通過させて均一な形状及びサイズを有する薬物粒子を準備する。前記マイクロシーブ(micro sieve)を通過した薬物粒子は、直径10μm以下であるものを対象とする。
【0124】
好ましくは、前記薬物粒子は、直径10nm~50μmの範囲を有する。より好ましくは、薬物粒子は、直径10μm~20μmであってもよいが、これに限定されない。マイクロニードルを介した粒子の伝達効率は、粒子のサイズに影響を受け得る。粒子が大きすぎると、皮膚へ挿入時に粒子と皮膚との摩擦が増加して薬物が押し出されるため、伝達される粒子の量が減少することがある。反対に、粒子が小さすぎると、接着層に付着された粒子の総体積が減少するため、伝達される粒子の量が減少することがある。
【0125】
前記薬物粒子の活性物質としては、固形化化合物、抗体、タンパク質などの薬効物質、ワクチンなどの薬/医学的に人体内の使用が可能ないかなる物質であってもよい。詳細には、前記活性物質として、インターフェロン、エリスロポエチン(EPO)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒白血球マクロファージコロニー刺激因子(FM-CSF)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、黄体ホルモン、カルシトニン、グルカゴン、GNRH拮抗剤、インシュリン、ヒト成長ホルモン(GHD)、テストステロン、リドカイン、ジクロフェナク、オキシブチニン、ケトプロフェン、アレンドロネート(Alendronate)、エナラプリルマレアート、フェニルプロパノールアミン、クロモリン、イソトレチノイン、オキシトシン、パロキセチン、フルルビプロフェン、セルトラリン、ベンラファキシン、リュープロリド、リスペリドン、ガランタミン、エノキサパリン、エタネルセプト、フェンタニル、フィルグラスチム、ヘパリン、ソマトロピン、及びスマトリプタンからなる群からいずれか1つを選択するか、または、A型、B型及びC型肝炎、HIV、インフルエンザ、ジフテリア、破傷風、百日咳、ライム病、恐水病、肺炎球菌、黄熱病、コレラ、ワクシニア、結核、風疹、麻疹、流行性耳下腺炎、ロタウイルス、ボツリヌス菌及びヘルペスウイルスのいずれか1つを含むワクチン、及びボトックス毒素からなる群からいずれか1つ以上を選択することができる。
【0126】
活性物質を含む薬物粒子は、ミーリング(milling)、噴霧乾燥(spray drying)、または凍結乾燥後のミーリングによって準備される。
【0127】
固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップの後に、薬物粒子間の空隙を制御するステップをさらに含むことができる。本発明において、マイクロニードルに付着された薬物粒子間の空隙が制御されるという意味は、薬物粒子間の距離を減少させることを意味する。
【0128】
薬物粒子をマイクロニードルにコーティングした後、前記薬物粒子間の空隙を制御する方法として、前記マイクロニードルにエアコンプレッサ(air compressor)で処理する方法;前記マイクロニードルをパフ(puff)に浸漬コーティング(dip-coating)する方法;及び前記マイクロニードルをポリジメチルシロキサンモールド(PDMS mold)にプレス(press)する方法;のうちの1つを選択する。
【0129】
具体的に、マイクロニードルにエアコンプレッサで処理する方法は、粒子付着型マイクロニードルにエアを噴射する方法である。この過程を経ると、接着層に接着力なしに静電気のみで付いていた薬物粒子はエアによって除去され、マイクロニードルに密着していない状態であるか、または粒子間の空隙が大きい形態で接着層と接着力を形成していた薬物粒子は、エアによって接着層にきちんと付着される過程を通じて、粒子間の空隙を減少させることができる。
【0130】
マイクロニードルをパフ(puff)に浸漬コーティング(dip-coating)する方法において、パフは、スポンジのように内部に空隙がある多孔性構造体であって、エアコンプレッサを処理していない粒子付着型マイクロニードルをパフに押圧すると、薬物粒子間の空隙が大きく形成されていたのが、パフによって押し固められて粒子間の距離を減少させることができる。
【0131】
マイクロニードルをポリジメチルシロキサンモールド(PDMS mold)にプレス(press)する方法において、PDMSモールドは、マイクロニードル10を製造するために使用されたPDMS陰刻モールドをいう。マイクロニードル10とPDMSモールドの大きさ及び形状がぴったり合うようになるので、エアコンプレッサを処理していない粒子付着型マイクロニードルをPDMSモールドの陰刻部分に噛み合うように結合させると、薬物粒子が押し固められて粒子間の空隙が減少する効果を示す。
【0132】
前記薬物粒子間の空隙を制御するステップを通じて、固体状の薬物粒子は、マイクロニードルの表面にさらに薄くて均一にコーティングされ得る。このような製造方法を通じて、マイクロニードルに接着性溶液で1次コーティングして形成された接着層、及び接着層上に固体状の薬物粒子で2次コーティングした層を含む粒子付着型マイクロニードルが製造される。同様に、前記粒子付着型マイクロニードルは、2次コーティングされた固体状の薬物粒子間の空隙が制御された状態である。空隙を制御する場合、同じ面積に比べて多くの量の薬物粒子が付着され得、マイクロニードルの表面に薬物粒子がさらに近く付着されるため、皮膚に加えるときに粒子が押し出される危険性を減少させることができる。
【0133】
本発明に係る粒子付着型マイクロニードルは、薬物粒子をマイクロニードル上にコーティングするので、前記粒子サイズの調節を通じて所望の溶解速度を決定することができる。一方、既存のマイクロニードルのコーティング方法は、コーティング用液状製剤を作るために、固体状の薬物粒子に追加的に安定化剤、増粘剤、賦形剤などの添加剤を入れて溶液状にする剤形変更を行わなければならない。しかし、本発明によって粒子自体をマイクロニードル上にコーティングすれば、このような剤形変更過程が不要であるので、より簡単にマイクロニードルのコーティングを行うことができ、所望の薬物を剤形変更なしにそのまま伝達することができる。併せて、固体状の薬物をバッファーに溶かしてコーティング用液状製剤を作る液状化過程が不要であるので、当該薬物の親水性、親油性に関係なく粒子のコーティングを行うことができるという利点がある。
【0134】
本発明によれば、粒子付着型マイクロニードルの製造方法は、マイクロニードルに接着性溶液で1次コーティングして接着層を形成するステップと;前記接着層が形成されたマイクロニードルを固体状の薬物粒子が充填されたペトリ皿(petri dish)に浸漬コーティング(dip-coating)して、前記接着層上に前記固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップと;を含む。
【0135】
1次コーティングして接着層を形成するステップを行う前に、生分解性高分子又は生体適合性高分子を材料としてマイクロニードルを製造、及び接着性溶液を準備する。粒子付着型マイクロニードルは、パッチ、及びパッチ上のマイクロニードルを含む。前記パッチは、円形で形成され得、パッチ上に多数個の尖ったピラミッド状のマイクロニードルチップ(tip)を備えることができる。マイクロニードルは、ヒトの皮膚を通して挿入され得、皮膚に投与された後、マイクロニードルにコーティングされた固体状の物質が溶けながら前記物質が皮膚内に伝達され得る。
【0136】
マイクロニードルの原料物質である前記生分解性高分子としては、ポリ乳酸(poly(lactic acid))、ポリL-乳酸(poly(L-lactic acid))、ポリグリコール酸(poly(glycolic acid))、及びポリ乳酸-グリコール酸共重合体(poly(lactic-co-glycolic acid))からなる群から1つ以上を選択することができる。
【0137】
また、マイクロニードルの原料物質である非生分解性/生体適合性高分子(非生分解性であるが生体適合性の高分子)としては、環状オレフィン共重合体(cyclic olefin copolymer)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ナイロン(nylon)、ポリエチレン(polyethylene)及びポリプロピレン(polypropylene)からなる群から1つ以上を選択することができる。
【0138】
また、前記マイクロニードルの長さは50μm~1,000μmであり、好ましくは400μm~1,000μmの長さを有する。前記マイクロニードルの長さは、ニードルが皮膚の表皮層を通って真皮層まで到達する程度の適切な長さを示す。
【0139】
次に、接着層を形成(1次コーティング)するための方法で使用可能な接着性溶液は、次のように3種類に分けることができる。
第一に、二液型接着剤主剤と硬化剤(二液型接着剤主剤は硬化性樹脂、硬化剤はハードナー)、
第二に、一液型接着剤(一液型接着剤は液状の硬化性樹脂)、
第三に、接着物質と溶媒(接着物質は高分子)である。
【0140】
薬物粒子を接着層に付着時に、溶媒を使用した場合には溶媒が残留している状態であり、硬化性物質を使用した場合には、高分子物質が完全に固形化する前の状態であって、薬物粒子を付着した後に硬化過程を完了する。
【0141】
第一に、二液型接着剤主剤と硬化剤を使用する場合、
二液型接着剤主剤と硬化剤は、ポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane、PDMS)とシリコーンエラストマー硬化剤(silicone elastomer curing agent、hardner)、医療用エポキシボンドとハードナー(hardener)の組み合わせなどで使用する。
【0142】
第二に、一液型接着剤を使用する場合、
一液型接着剤は、別途の硬化剤がないので、一液型接着剤をマイクロニードルにコーティングした後、薬物粒子を付着し、温度(熱)又はUVで硬化を調節する。温度によって硬化が調節される一形剤は、ポリエチレングリコール(Polyethyleneglycol、PEG)、ポリエチレンオキシド(Polyethylene oxide、PEO)、蜜蝋(Beeswax)、トリグリセリド(Triglyceride)、シリコーン(silicone)、エポキシ(epoxy)、タンパク質バイオ接着剤(protein bioadhesive)などがあり、UVによって硬化が調節される一形剤には、UV硬化性医療用エポキシレジンなどがある。
【0143】
第一及び第二の方法のように硬化性物質を使用する場合には、硬化性物質を溶かすための溶媒が別途に必要でないので、付着しようとする薬物粒子が親水性であるか、疎水性であるかに制限を受けない。
【0144】
第三に、接着物質と溶媒を混合して使用する場合、溶媒が水であれば、接着物質は、白糖(Sugar)2~20%、ブドウ糖(Glucose)25~50%、澱粉(Starch)1~4%、ゼラチン(Gelatin)1~4%、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Carboxymethylcellulose、CMC-Na)1~4%、アラビアゴム2~5%などが使用され得、溶媒が水であるので、疎水性薬物を付着させる場合に適している。溶媒がエタノールなどの有機溶媒であれば、接着物質は、セルロース誘導体(Cellulose derivative)(ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropylcellulose、HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethylcellulose、HPMC)1~4%、メチルセルロース(methyl cellulose、MC)、エチルセルロース(Ethyl cellulose)0.5~2%)、ポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone、PVP)2~5%、シアノアクリレート(cyanoacrylate)、フィブリン糊(fibrin glue)、タンパク質系接着剤(protein glue)、ポリエチレングリコールヒドロゲルシーラント(PEG hydrogel sealant)、シリコーン(silicone)、エポキシ(epoxy)、タンパク質バイオ接着剤(protein bioadhesive)、イガイ接着タンパク質(mussel adhesive protein)などが使用され得、同様に前記%範囲内で接着性を示し、溶媒が有機溶媒であるので、親水性薬物を付着させる場合に適している。
【0145】
二液型接着剤主剤と硬化剤、あるいは一液型接着剤を使用する場合には、前記二液型接着剤主剤と硬化剤、または一液型接着剤をマイクロニードルに浸漬コーティング(Dip-coating)又はブラシ塗抹(Brush spreading)又はスプレーコーティング(Spray coating)して接着層を形成する。
【0146】
接着層は、ねばねばした粘性を有するので、薬物を固体状の粒子の形態でマイクロニードルの表面に2次コーティングを行うのに適している。接着層の形成後に、70℃のオーブンで1時間あるいは常温で一日硬化させ、接着層を有するマイクロニードルパッチを得る。または、前記一液型接着剤として紫外線硬化性樹脂(UV curable resin)を使用した後、紫外線(UV)を照射して接着層を固形化させることができる。
【0147】
2次コーティングのための固体状の薬物粒子を準備するために、固体状の薬物を蒸留水に溶解させた後、凍結乾燥する。前記凍結乾燥された薬物を乳鉢で粉砕した後、マイクロシーブ(micro sieve)に通過させて均一な形状及びサイズを有する薬物粒子を準備する。前記マイクロシーブ(micro sieve)を通過した薬物粒子は、直径10μm以下であるものを対象とする。
【0148】
好ましくは、前記薬物粒子は、直径10nm~50μmの範囲を有する。より好ましくは、薬物粒子は、直径10μm~20μmであってもよいが、これに限定されない。マイクロニードルを介した粒子の伝達効率は、粒子のサイズに影響を受け得る。粒子が大きすぎると、皮膚へ挿入時に粒子と皮膚との摩擦が増加して薬物が押し出されるため、伝達される粒子の量が減少することがある。反対に、粒子が小さすぎると、接着層に付着された粒子の総体積が減少するため、伝達される粒子の量が減少することがある。
【0149】
前記薬物粒子の活性物質としては、固形化化合物、抗体、タンパク質などの薬効物質、ワクチンなどの薬/医学的に人体内の使用が可能ないかなる物質であってもよい。詳細には、前記活性物質として、インターフェロン、エリスロポエチン(EPO)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒白血球マクロファージコロニー刺激因子(FM-CSF)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、黄体ホルモン、カルシトニン、グルカゴン、GNRH拮抗剤、インシュリン、ヒト成長ホルモン(GHD)、テストステロン、リドカイン、ジクロフェナク、オキシブチニン、ケトプロフェン、アレンドロネート(Alendronate)、エナラプリルマレアート、フェニルプロパノールアミン、クロモリン、イソトレチノイン、オキシトシン、パロキセチン、フルルビプロフェン、セルトラリン、ベンラファキシン、リュープロリド、リスペリドン、ガランタミン、エノキサパリン、エタネルセプト、フェンタニル、フィルグラスチム、ヘパリン、ソマトロピン、及びスマトリプタンからなる群からいずれか1つを選択するか、または、A型、B型及びC型肝炎、HIV、インフルエンザ、ジフテリア、破傷風、百日咳、ライム病、恐水病、肺炎球菌、黄熱病、コレラ、ワクシニア、結核、風疹、麻疹、流行性耳下腺炎、ロタウイルス、ボツリヌス菌及びヘルペスウイルスのいずれか1つを含むワクチン、及びボトックス毒素からなる群からいずれか1つ以上を選択することができる。
【0150】
活性物質を含む薬物粒子は、ミーリング(milling)、噴霧乾燥(spray drying)、または凍結乾燥後のミーリングによって準備される。
【0151】
固体状の薬物粒子を2次コーティングするステップの後に、薬物粒子間の空隙を制御するステップをさらに含むことができる。本発明において、マイクロニードルに付着された薬物粒子間の空隙が制御されるという意味は、薬物粒子間の距離を減少させることを意味する。
【0152】
薬物粒子をマイクロニードルにコーティングした後、前記薬物粒子間の空隙を制御する方法として、前記マイクロニードルにエアコンプレッサ(air compressor)で処理する方法;前記マイクロニードルをパフ(puff)に浸漬コーティング(dip-coating)する方法;及び前記マイクロニードルをポリジメチルシロキサンモールド(PDMS mold)にプレス(press)する方法;のうちの1つを選択する。
【0153】
具体的に、マイクロニードルにエアコンプレッサで処理する方法は、粒子付着型マイクロニードルにエアを噴射する方法である。この過程を経ると、接着層に接着力なしに静電気のみで付いていた薬物粒子はエアによって除去され、マイクロニードルに密着していない状態であるか、または粒子間の空隙が大きい形態で接着層と接着力を形成していた薬物粒子は、エアによって接着層にきちんと付着される過程を通じて、粒子間の空隙を減少させることができる。
【0154】
マイクロニードルをパフ(puff)に浸漬コーティング(dip-coating)する方法において、パフは、スポンジのように内部に空隙がある多孔性構造体であって、エアコンプレッサを処理していない粒子付着型マイクロニードルをパフに押圧すると、薬物粒子間の空隙が大きく形成されていたのが、パフによって押し固められて粒子間の距離を減少させることができる。
【0155】
マイクロニードルをポリジメチルシロキサンモールド(PDMS mold)にプレス(press)する方法において、PDMSモールドは、マイクロニードル10を製造するために使用されたPDMS陰刻モールドをいう。マイクロニードル10とPDMSモールドの大きさ及び形状がぴったり合うようになるので、エアコンプレッサを処理していない粒子付着型マイクロニードルをPDMSモールドの陰刻部分に噛み合うように結合させると、薬物粒子が押し固められて粒子間の空隙が減少する効果を示す。
【0156】
前記薬物粒子間の空隙を制御するステップを通じて、固体状の薬物粒子は、マイクロニードルの表面にさらに薄くて均一にコーティングされ得る。このような製造方法を通じて、マイクロニードルに接着性溶液で1次コーティングして形成された接着層、及び接着層上に固体状の薬物粒子で2次コーティングした層を含む粒子付着型マイクロニードルが製造される。同様に、前記粒子付着型マイクロニードルは、2次コーティングされた固体状の薬物粒子間の空隙が制御された状態である。空隙を制御する場合、同じ面積に比べて多くの量の薬物粒子が付着され得、マイクロニードルの表面に薬物粒子がさらに近く付着されるため、皮膚に加えるときに粒子が押し出される危険性を減少させることができる。
【0157】
本発明に係る粒子付着型マイクロニードルは、薬物粒子をマイクロニードル上にコーティングするので、前記粒子サイズの調節を通じて所望の溶解速度を決定することができる。一方、既存のマイクロニードルのコーティング方法は、コーティング用液状製剤を作るために、固体状の薬物粒子に追加的に安定化剤、増粘剤、賦形剤などの添加剤を入れて溶液状にする剤形変更を行わなければならない。しかし、本発明によって粒子自体をマイクロニードル上にコーティングすれば、このような剤形変更過程が不要であるので、より簡単にマイクロニードルのコーティングを行うことができ、所望の薬物を剤形変更なしにそのまま伝達することができる。併せて、固体状の薬物をバッファーに溶かしてコーティング用液状製剤を作る液状化過程が不要であるので、当該薬物の親水性、親油性に関係なく粒子のコーティングを行うことができるという利点がある。
【0158】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものではない。以下、準備例、比較例及び実施例では、固体状の薬物粒子を固体状のパウダーで代替した。
【0159】
[準備例1]固体状のパウダー粒子
シリカ及びトウモロコシ澱粉を含有した固体状のパウダーを準備する。
【0160】
前記パウダーを100mg/mLの濃度で3次蒸留水に溶解させた後、凍結乾燥する。
【0161】
前記凍結乾燥されたパウダーを乳鉢で粉砕した後、メッシュ(mesh)サイズが10μmであるマイクロシーブ(micro sieve)に通過させて均一な形状及びサイズを有するパウダー粒子を製造する。
【0162】
図2は、製造例のパウダー粒子を900倍率のSEM(走査電子顕微鏡)を用いて観察したイメージであり、これを参照すると、パウダー粒子の平均直径は7.5±2.52μmであることが確認される。
【0163】
[準備例2]PDMS10
PDMS:シリコーンエラストマー硬化剤(Silicone elastomer curing agent)を10:1の重量比率で混合した後、真空状態に10分間置いて気泡を除去した後、平らな型に注いで真空状態で5分間置いて気泡を除去する。
【0164】
前記型を70℃のオーブンで40分間1次硬化させた後、冷ましてフィルムを製造する。
【0165】
1次硬化された前記フィルムを前記型から分離し、190℃のオーブンで10分間2次硬化させる。
【0166】
[準備例3]PDMS40
PDMS:シリコーンエラストマー硬化剤の重量比率を40:1で混合した以外は、準備例2と同様に製造する。
【0167】
【表1】
【0168】
[比較例]PDMSで1次コーティングされたPLAマイクロニードルの製造
金型モールドで型を取ったPDMSモールドに、PLAペレット(Poly lactic acid pellet)3個を載せ、190℃のオーブンで60分間溶かす。その後、PLAを冷ましながら一定の力を加えて押圧する過程を3回繰り返した後、PLAをモールドから除去すると、ピラミッド状のニードルチップが145個であり、パッチの直径が1.2cmであるPLAマイクロニードルが作製される。
【0169】
PDMS:シリコーンエラストマー硬化剤を40:1の重量比率で混合して接着性溶液を製造した後、ブラシを用いて接着性溶液を前記PLAマイクロニードルに塗布する(ブラシ塗抹、brush spreading)。
【0170】
前記接着性溶液が塗布されたPLAマイクロニードルを70℃のオーブンで60分間硬化させた後、冷まし、接着層で1次コーティングされたマイクロニードルを製造する。
【0171】
図3Bにおいてニードルを拡大した部分を参照すると、ニードルの表面に接着層がコーティングされた様子を確認できる。これを実体顕微鏡イメージで撮影して図4Aに示した。
【0172】
[実施例1]マイクロニードルにパウダーコーティング-ニードルのチップ先端部
300μmの深さのコーティングウェル上に、準備例2で製造したPDMSフィルムを位置させた後、準備例1で製造したパウダーを平らに分散させて充填する。マイクロスケール(micro scale)のコーティング装備を用いて、比較例で製造したマイクロニードルにパウダーを2次コーティング(20mm/sの速度で1秒間、1回浸漬コーティング)すると、ニードルのチップ先端部にのみパウダーコーティングされたマイクロニードルが製造される。
【0173】
コーティングされたマイクロニードルから10cmの距離で、エアコンプレッサの風を用いて前記マイクロニードルの4つの面の全てにそれぞれ3秒間噴射する。未付着のパウダーを吹き飛ばし、マイクロニードルのチップ先端部にのみパウダーコーティングされたマイクロニードルを製造する。
【0174】
[実施例2]マイクロニードルにパウダーコーティング-ニードル全体
ペトリ皿(petri dish)に、準備例1で製造したパウダーを充填した後、比較例で製造したマイクロニードルを完全に浸して2次コーティングする。
【0175】
コーティングされたマイクロニードルから10cmの距離で、エアコンプレッサの風を用いて前記マイクロニードルの4つの面の全てにそれぞれ3秒間噴射する。未付着のパウダーを吹き飛ばし、ニードルが位置したパッチ表面を含むマイクロニードル全体がパウダーコーティングされたマイクロニードルを製造する。
【0176】
前記比較例、実施例1及び実施例2をまとめると、下記表2の通りである。
【0177】
【表2】
【0178】
図5A乃至図5Cは、比較例で1次接着層コーティングを行う前のPLAマイクロニードルのSEMイメージである。このうち、図5Aは、43倍率で観察した正面斜視図、図5Bは、45倍率で観察した側面斜視図、図5Cは、40倍率で観察した平面斜視図である。前記マイクロニードルのチップは、ピラミッド形状を有し、長さ700μm、下端幅500μm、ニードルチップ間の間隔は280μmである。
【0179】
図5D乃至図5Fは、比較例で1次接着層コーティングを行った後のマイクロニードルのSEMイメージである。このうち、図5Dは、45倍率で観察した正面斜視図、図5Eは、50倍率で観察した側面斜視図、図5Fは、40倍率で観察した平面斜視図である。図面を参照すると、40:1のPDMS接着層のコーティングが均一に行われたことを確認できる。
【0180】
図5G乃至図5Iは、比較例で1次接着層コーティングを行った後、ニードルのチップ先端部にのみ2次粒子コーティングを完了したマイクロニードルのSEMイメージである。このうち、図5Gは、45倍率で観察した正面斜視図、図5Hは、50倍率で観察した側面斜視図、図5Iは、40倍率で観察した平面斜視図である。図面を参照すると、PDMS接着層上にニードルのチップ先端部にのみ粒子コーティングが均一に行われたことを確認できる。
【0181】
図5J乃至図5Lは、比較例で1次接着層コーティングを行った後、ニードル全体に2次粒子コーティングを完了したマイクロニードルのSEMイメージである。このうち、図5Jは、45倍率で観察した正面斜視図、図5Kは、50倍率で観察した側面斜視図、図5Lは、40倍率で観察した平面斜視図である。図面を参照すると、PDMS接着層上にニードル全体に粒子コーティングが均一に行われたことを確認できる。
【0182】
[実験例1]
冷凍されたブタの皮膚(full skin)を常温で1時間解凍させた後、釘を用いて木の板にブタの皮膚を平らに固定させる。
【0183】
前記ブタの皮膚上に、ニードルのチップ先端部にのみパウダーコーティングされたマイクロニードル(実施例1)、及びニードル全体がパウダーコーティングされたマイクロニードル(実施例2)を載せ、40N~50Nの垂直力を加える。
【0184】
以下では、前記実験例を用いて実験した結果を示した。
【0185】
<透過度>
マイクロニードルをピンセットで除去し、マイクロニードルを載せておいた皮膚に0.4%のトリパンブルー溶液(Trypan Blue Solution)10μLをマイクロピペットで塗布して染色する。
【0186】
10分が経過したら、PBS緩衝液(Phosphate-buffered saline buffer)を付けた綿棒でトリパンブルー溶液を拭き取る。
【0187】
染色された皮膚表面を光学顕微鏡で撮影する。この過程を5回繰り返してサンプル1~5を作製する。
【0188】
ニードル全体の個数(145個)を100%としたとき、透過された穴の数を数えて%で示した結果を、下記表3及び表4に示した。
【0189】
【表3】
【0190】
【表4】
【0191】
表3は、実施例1を対象とし、これをブタの皮膚に加えたとき、全てのサンプルにおいて透過度は100%である。図6Aを参照すると、サンプル1番が皮膚に透過した様子を確認できる。
【0192】
表4は、実施例2を対象とし、これをブタの皮膚に加えたとき、全てのサンプルにおいて透過度は、同様に100%である。図6Bを参照すると、サンプル1番が皮膚に透過した様子を確認できる。
【0193】
前記の2種類の粒子付着方式を比較したとき、2つの場合はいずれも、100%の皮膚透過率を示した。したがって、実施例1及び2を通じて製造された粒子付着型マイクロニードルは、皮膚の角質層を透過して表皮層又は真皮層をターゲットとして薬物を伝達するのに十分な強度及び鋭さ(sharpness)を有していることが分かる。
【0194】
<マイクロニードルの接着層の剥がれの程度>
図7A及び図7Bは、実施例1(ニードルのチップ先端部にのみパウダーコーティング)を対象として、1次コーティングされた接着層の剥がれの程度をSEM(走査電子顕微鏡)を用いて200倍率で拡大して撮影したイメージである。
【0195】
図7Aは、マイクロニードルをブタの皮膚に刺す前のニードルの様子である。パウダーがPDMS接着層に付着されていることを確認できる。図7Bは、マイクロニードルをブタの皮膚に1回刺した後のニードルの様子である。図面上に表示した部分を参照すると、ニードルの粒子接着力が維持されており、接着層が剥がれないことを確認できる。
【0196】
<押し出されたパウダーの形態>
図8Aは、対照群であって、粒子をコーティングしていない1次コーティングされたマイクロニードルを刺した後に観察したブタの皮膚の表面のイメージである。図8Bは、実験群であって、ブタの皮膚に実施例1(PDMS接着層のコーティング後に、粒子をニードルのチップ先端部にのみ付着したマイクロニードル)を用いて刺した様子である。実験群を対照群のイメージと比較したとき、マイクロニードルが刺された部分の周りに粒子がほとんど付いておらず、粒子付着型マイクロニードルを投与した後に皮膚の表面に剥がれた粒子が非常に少ないことが分かる。
【0197】
[実験例2]PDMS40の剥離力の測定
準備例3を用いて、ブタの皮膚に対する剥離力(Peel force)を比較した。
【0198】
乾燥したブタの皮膚に対するPDMSの剥離力を測定するために、PDMS40フィルムを準備し、その上に幅2.5cm(生体外、ex vivo)のブタの皮膚を載せた。その後、ブタの皮膚を3kgの圧力でPDMS40フィルムに圧着した。
【0199】
濡れたブタの皮膚に対するPDMSの剥離力を測定するために、PDMS40フィルムにブドウ糖粒子を塗布し、粒子フィルム上に幅2.5cm(生体外、ex vivo)のブタの皮膚を載せた。その後、ブタの皮膚を3kgの圧力で圧着した。
【0200】
剥離力は、応力-変形試験機(ZwickiLine,ZwickRoell,Germany)を用いて直接剥ぎ取る(pull off)方法で90°の角度で測定した。2つのサンプルに対して、ブタの皮膚の端部を金属ホルダーに連結し、ホルダーを紐でセンサに連結した。ブタの皮膚は10mm/minの一定の速度で変形した。
【0201】
マイクロニードルを投与した後、皮膚から除去するとき、PDMS40とポリ乳酸との間の接着力は、PDMS40と濡れた皮膚との間の接着力及び摩擦による反発力よりも大きくなければならない。PDMS40と濡れた皮膚との間の接着力が、PDMS40とポリ乳酸マイクロニードルの表面との間の接着力よりも大きい場合には、接着層であるPDMS40が投与あるいは除去中に剥がれて皮膚に残留するため、人体に有害な影響を及ぼすことがある。
【0202】
ブタの皮膚にマイクロニードルを投与すると、PDMS40は、皮膚に存在する間質液に露出されてPDMS40の接着力が低下する。そのため、マイクロニードルを皮膚に挿入した後、PDMSと付着された固体状の粒子との間の接着力が減少し、PDMS接着層の表面から固体状の粒子の速い離脱が起こる。マイクロニードルを皮膚に適用する時間の間、固体状の粒子とPDMSとの間の接着力は、固体状の粒子と皮膚との間の摩擦力を克服できるほどに高くなければならない。
【0203】
図9は、PDMS40とブタの皮膚との間の剥離力を測定したグラフである。‘Skin-PDMS’は、PDMS40と乾燥したブタの皮膚との間の剥離力を、‘Wet skin-PDMS’は、PDMS40と濡れたブタの皮膚との間の剥離力を示す。図9を参照すると、濡れた皮膚の場合、PDMS40の接着力が急激に低下することから見て、濡れた皮膚でPDMSとの摩擦力も低くなることを予想できる。したがって、PDMS40と皮膚との高い摩擦なしに皮膚から安全にマイクロニードルを除去することができる。
【0204】
[実験例3]PDMS40の水平仕事
ブドウ糖粒子とブタの皮膚との間で測定された水平仕事を、PDMS40フィルムとブタの皮膚との間の水平仕事と比較した。
【0205】
ブタの皮膚(2.5cm×2.5cm、W×L)をPDMS40フィルム(5cm×5cm、W×L、thickness=0.5cm)上に載せ、ブタの皮膚上に100g重量のブロックを載せた。紐の一端はブタの皮膚に付着し、紐の他端は力センサに付着した。その後、ブタの皮膚を10mm/minの速度でPDMS40フィルムと水平な方向に引っ張った。
【0206】
平均直径が10μmであるブドウ糖粒子をPDMS40フィルム(5cm×5cm、W×L、thickness=0.5cm)に付着した。ブタの皮膚(2.5cm×2.5cm、W×L)を粒子層の上に載せた。100g重量のブロックをブタの皮膚の上に載せた。ブタの皮膚を10mm/minの速度でフィルムと接線方向に引っ張り、ブドウ糖粒子と皮膚との間のせん断力を測定した。
【0207】
図10Aは、PDMS40とブタの皮膚との間の水平仕事を示したグラフである。
【0208】
図10Aを参照すると、100gの荷重を試片に加えたとき、PDMS40と皮膚との間で測定された水平仕事(‘Skin-PDMS’で表示)は0.048mJ/cmであり、ブドウ糖粒子をPDMS40の表面に付着したとき、ブドウ糖粒子の表面と皮膚との間で測定された水平仕事(‘Skin-Particle-PDMS’で表示)は0.0125mJ/cmであった。すなわち、PDMS40と皮膚との界面にブドウ糖粒子が存在する場合、水平仕事が大幅に減少した。水平仕事が減少するということは、マイクロニードルが皮膚内に浸透するときに皮膚による摩擦抵抗が減少するということを意味する。
【0209】
[実験例4]PDMS40の剥離力
図10Bは、PDMS40、ブドウ糖粒子及びブタの皮膚の間の剥離力を示したグラフである。
【0210】
図10Bを参照すると、ブタの皮膚に対するブドウ糖粒子の剥離力(‘Skin-Particle-PDMS’で表示)は、ブタの皮膚に対するPDMS40の剥離力(‘Skin-PDMS’で表示)の約25%である。ブドウ糖粒子によって剥離力が減少した事実から、マイクロニードルの投与時に皮膚による抵抗が減少し、ブドウ糖粒子が接着面に良好に付着された状態で投与されるということが分かる。また、ブドウ糖粒子が皮膚による抵抗を減少させることで、PDMS40接着層に伝達される摩擦力が減少する。ポリ乳酸マイクロニードルに対するPDMS40の接着力は、皮膚の摩擦に影響を受けない。
【0211】
[実験例5]PDMS40に対するオボアルブミン粒子の接着力
平均直径が10μmであるオボアルブミン(ovalbumin)粒子を、PDMS40接着層がある直径0.5cmのプレートに付着した。その後、プレートを遠心分離機チューブに入れた。チューブを27,000g(Centrifuge,1730R,LABOGENE,South Korea)で10分間遠心分離した後、高精密天秤(Satorius SE2-F,Goettingen,Germany)を用いてプレートの重量を測定し、遠心分離中にPDMS40の表面から分離されたオボアルブミン粒子の量を求めた。
【0212】
オボアルブミン粒子が付着されたPDMS40プレートを27,000gの加速度で回転させたとき、10μmの厚さのプレート(1cm×1cm)に加えられる圧力が0.2N/cmに該当し、PDMS40の表面に初期のオボアルブミン粒子の96%が残留した。オボアルブミン粒子とPDMS40との間の垂直接着力が0.2N/cm以上であるので、ほとんどの粒子がPDMS40の表面から分離されなかった。固体状の粒子がPDMS40接着層の表面に良好に接着されないと、粒子が皮膚によって後ろに押し出され、皮膚に吸収される量が減少する。
【0213】
[実験例6]粒子サイズによる皮膚へのオボアルブミン粒子の伝達効率
オボアルブミン粒子が付着されたマイクロニードルを用いて粒子伝達効率を観察した。オボアルブミン粒子が付着されたマイクロニードルを生体外ブタ皮膚に挿入し、37℃で5分間放置した後、皮膚から除去した。初期のオボアルブミンの量は、オボアルブミンELISAキット(ovalbumin ELISA kit,LSBio,Seattle,WA)を用いて測定した。綿棒に蒸留水を付けて投与部位を拭った。その後、除去したマイクロニードルを蒸留水1mlに浸し、綿棒も蒸留水1mlにそれぞれ10分間浸した。残ったオボアルブミンの量は、オボアルブミンELISAキットを用いて測定した。皮膚に伝達されたオボアルブミンの量は、マイクロニードルに初期にローディングされたオボアルブミンの量から、残っているオボアルブミンの量を引いて計算した。3つの直径(1μm未満、1~20μm、20μm超)の粒子が付着されたマイクロニードルを生体外ブタ皮膚に挿入し、皮膚に伝達されるオボアルブミン粒子の量を測定した。薬物伝達効率は、皮膚に伝達された量をコーティングされた薬物の総量で割った値に、100を乗じた値として定義される。
【0214】
上述したように、固体状の粒子と皮膚表面との間の摩擦力は、マイクロニードルを挿入する間にPDMS40接着層の表面から固体状の粒子が分離される重要な要素である。
【0215】
図11A乃至図11Cは、PDMS40接着層に互いに異なるサイズのオボアルブミン粒子が付着されたイメージである。図11Aを参照すると、直径が1μm未満であるナノ粒子の場合、粒子から凝集体が容易に形成され、個別の粒子の代わりにPDMS40の表面に凝集体が付着された。図11Cを参照すると、直径が20μmを超える粒子の場合、粒子のサイズが大きいため、マイクロニードルの表面が非常に粗かった。図11Bを参照すると、直径1~20μmの間の粒子は、マイクロニードルのPDMS接着層の表面に均一なコーティング層を形成した。
【0216】
下記表5は、PDMS40接着層の高さが700μmである粒子付着型マイクロニードルのオボアルブミン粒子の直径(Size of particles in diameter)による初期のオボアルブミン粒子の量(The initial amount of particle)及び粒子伝達効率(Delivery efficiency)を示したグラフである。
【0217】
表5に示されたように、オボアルブミン粒子のサイズによって伝達効率が異なることが分かる。粒子サイズが20μm以上である場合、粒子と皮膚との幾何学的摩擦が増加し、伝達効率が減少した。すなわち、粒子のサイズが増加するにつれ、接着層の表面から粒子の分離が増加した。反面、粒子のサイズが減少すると、摩擦力が減少した。しかし、固定された接着層部位で粒子サイズが減少すると、皮膚に伝達される粒子の量が減少することがある。
【0218】
【表5】
【0219】
[実験例7]生体外で固体状の粒子の伝達特性
[実験例7-1]皮膚に投与されたオボアルブミン粒子の伝達特性の確認
固体状の粒子が付着されたマイクロニードルの粒子伝達特性を観察する。蛍光オボアルブミン粒子が付着されたマイクロニードルをブタの皮膚に5分間挿入した。共焦点顕微鏡(ECLIPSE TE2000-E,Nikon,Osaka,Japan)を用いて、時間の経過に伴ってZスタック(Z-stack)でマイクロニードルの投与部位の蛍光イメージ及び蛍光変化を観察した。また、ブタの皮膚で蛍光強度の閾値を決定し、閾値内の蛍光領域の境界を定義した。時間による蛍光強度の減少態様は、イメージJソフトウェア(NIH ImageJ;NIH,Bethesda,MD)を用いて定量化された。
【0220】
図12A乃至図12Dは、共焦点顕微鏡を用いて、時間によるブタの皮膚のZスタック蛍光パターンを観察したイメージである。図12Aは投与直後、図12Bは投与後1分、図12Cは投与後3分、図12Dは投与後5分が経過したときのイメージである。
【0221】
図12A乃至図12Dを参照すると、従来のコーティングマイクロニードル及び溶融性マイクロニードルは、滑らかな蛍光表面を示すのに対し、粒子付着型マイクロニードルは、初期の投与時に蛍光粒子の凝集されたクラスタを有する。また、従来のコーティングマイクロニードル及び溶融性マイクロニードルで発生する蛍光強度の指数的減少とは異なって、粒子付着型マイクロニードルの蛍光強度は、時間が経過するにつれて減少する片対数パターンを示す。
【0222】
図13は、蛍光オボアルブミン粒子が付着されたマイクロニードルが皮膚に留まる時間の間、マイクロニードルチップの表面の蛍光強度の変化を示したグラフである。図13を参照すると、粒子付着型マイクロニードルの蛍光強度は、5分以内に70%減少した。水溶性薬物製剤を使用する溶融性マイクロニードル及び従来のコーティングマイクロニードルの場合、蛍光強度が70%減少するのに約40分かかる。したがって、蛍光オボアルブミン粒子が付着されたマイクロニードルは、オボアルブミン粒子を皮膚に速く伝達できるという利点がある。
【0223】
[実験例7-2]皮膚に溶解されたブドウ糖、オボアルブミン粒子の拡散の確認
緑色ブドウ糖粒子が付着されたマイクロニードルと蛍光オボアルブミン粒子が付着されたマイクロニードルを生体外ブタ皮膚に5分間挿入した後、除去した。皮膚の表面を濡れた綿棒で拭いて皮膚の残余物を除去した後、10分経過後、光学顕微鏡と蛍光顕微鏡を用いてブタの皮膚の表面をそれぞれ観察した。
【0224】
図14Aは、緑色ブドウ糖粒子が付着されたマイクロニードルに対する光学顕微鏡イメージである。図14Bは、蛍光オボアルブミン粒子が付着されたマイクロニードルに対する蛍光顕微鏡イメージである。
【0225】
図14A及び図14Bを参照すると、緑色ブドウ糖粒子が付着されたマイクロニードルと蛍光オボアルブミン粒子が付着されたマイクロニードルを挿入して5分経過した後、緑色ブドウ糖粒子と蛍光オボアルブミン粒子が皮膚に成功裏に伝達されたことを確認できる。
【0226】
図14Aでの右下端のイメージは拡大したイメージであって、内側に表示した円は、粒子の初期の投与位置を示し、外側に表示した円は、マイクロニードルを除去した後、緑色ブドウ糖粒子の拡散を示す。
【0227】
[実験例8]粒子付着型マイクロニードルvs筋肉注射の比較
[実験例8-1]オボアルブミン粒子の生体内伝達効率の測定
20μgのオボアルブミン粒子を付着するために、マイクロニードルパッチ当たりのマイクロニードルチップの数とPDMS接着層のコーティング高さを、それぞれ、57個、230μmに調整した。オボアルブミン粒子は0.3mmの深さを有するウェルに充填し、2次コーティングした。付着されなかったオボアルブミン粒子はエアコンプレッサ(6L/min)を使用して除去した。オボアルブミン粒子が付着されたマイクロニードルパッチを4mlの蒸留水に溶かした後、ブラッドフォードタンパク質分析法を用いてオボアルブミンの濃度を測定した。
【0228】
雌BALB/cマウス(4-6weeks old;Orient Bio,Seongnam,South Korea)に、オボアルブミン粒子が付着されたマイクロニードルを5分間挿入した後、マイクロニードルの表面を顕微鏡を用いて光学的に観察した。投与部位は接着テープで覆った。回収されたマイクロニードルとテープを蒸留水に入れた。オボアルブミンの量は、オボアルブミンELISAキットを用いて測定した。伝達されたオボアルブミン粒子の量は、初期に付着されたオボアルブミンの量から、マイクロニードルの表面及びマウスの皮膚の表面に残っている総オボアルブミンの量を引いて間接的に測定した。
【0229】
図15Aは、オボアルブミン粒子が付着されたマイクロニードルの光学顕微鏡イメージであり、図15Bは、オボアルブミン粒子が付着されたマイクロニードルを生体内マウス皮膚に5分間投与した後に回収したマイクロニードルの光学顕微鏡イメージである。
【0230】
図15Bを参照すると、回収されたマイクロニードルの表面でオボアルブミン粒子が発見されなかった。オボアルブミン20μgが付着されたマイクロニードルをマウスの背中に5分間投与した結果、プライミング投与実験とブースティング実験(図16参照)の粒子伝達効率は、それぞれ90.9%及び92.3%であった。すなわち、生体内マウス実験によるオボアルブミン粒子の伝達効率は、生体外実験(表5参照)によるオボアルブミンの伝達効率とほぼ同一であった。
【0231】
[実験例8-2]免疫効能の比較
図16は、免疫化日程の概略図である。雌BALB/cマウス(4-6weeks old;Orient Bio,Seongnam,South Korea)は、図16の日程に従って、オボアルブミンがコーティングされたマイクロニードルを使用して接種された。BALB/cマウスは、筋肉注射(‘IM’で表示)を使用して、蒸留水(DW)に溶かしたオボアルブミン(20μg/mouse)でプライミングされ、3週後(21日)、マウスは、蒸留水に溶かしたオボアルブミン(20μg/mouse)でブースティングされた。また、マウスに、20μgのオボアルブミン粒子が付着されたマイクロニードル(‘Particle-attached microneedles’で表示)を前記と同日に投与した。免疫反応を見るために、表示の通りにプライミングした後、14日(2週)及び28日(4週)に血清を採取した。プライミング及びブースティングのためのオボアルブミン粒子付着型マイクロニードルの投与時間は5分であった。
【0232】
オボアルブミン特異抗体価は、ELISAによって分析された。図17は、オボアルブミンを投与したときの抗体価(antibody titer)グラフである。図17を参照すると、オボアルブミン粒子付着型マイクロニードルを使用したオボアルブミンの伝達は、蒸留水に溶解されたオボアルブミンを筋肉内投与した結果と類似の抗原特異的免疫反応が誘導された。このような結果は、粒子付着型マイクロニードルがワクチン接種のための効率的な伝達方法であることを示す。
【0233】
筋肉内注射(IM)による抗体価の偏差と粒子付着型マイクロニードル(Particle-attached microneedles)の抗体価の偏差はほぼ同一であった。粒子付着型マイクロニードルの5分間の投与によるオボアルブミンの伝達量が、筋肉注射を使用した伝達量と比較して偏差が小さかったため、このような結果が出た。
【0234】
粒子付着型マイクロニードルは、水のない工程を用いる新たなマイクロニードルシステムである。このシステムは、マイクロニードルに1次コーティングされた接着層に固体状の薬物を2次でコーティング(付着)することを含む。既存のマイクロニードルシステムとは異なって、粒子付着型マイクロニードルは、液状製剤が不要であり、固体状の薬物粒子がマイクロニードルの外部に物理的に付着している。粒子付着型マイクロニードルは、種々の固体状の薬物を一つのマイクロニードルパッチに付着し、種々の薬物を同時に伝達できるようにする。
【0235】
固体状の薬物の成功した血内投与のためには、粒子に加えられる接着層の接着力が、皮膚に対する粒子の摩擦力よりも大きくなければならない。本発明では、硬化性物質と硬化剤の混合比を適切に増加させることによって、粒子と皮膚との摩擦を克服するのに十分な接着力を生成した。
【0236】
固体状の薬物と接着層との間の接着力の減少、及びマイクロニードルの外部の粒子が皮膚の中の流体に露出される場合、粒子付着型マイクロニードルが皮膚に残留するのに必要な時間を短縮することができる。粒子の付着量は、接着層の面積を調節して制御される。平均直径が10μmであるオボアルブミン粒子は、生体外で93%の伝達効率でブタの皮膚に5分間伝達され、生体内では90%以上の伝達効率でマウス(mouse)の皮膚に伝達された。最後に、オボアルブミン粒子が付着されたマイクロニードルを使用したマウス実験は、筋肉内投与によって生成されたものと類似のオボアルブミン抗体価値を示した。
【0237】
接着層で1次コーティングされたマイクロニードルは、薬物の固有の特性を変更せず、マイクロニードルの外部に固体状の薬物をローディング(loading)する簡単な製造過程を含む。また、粒子付着型マイクロニードルは、多価ワクチン及び混合薬物の限界を克服するための解決策を提供することができる。粒子付着型マイクロニードルは、薬物及びワクチンの投与のための広範囲な応用分野に適用可能である。
【0238】
以上のように、本発明は、たとえ限定された実施例と図面によって説明されたが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者なら、このような記載から様々な修正及び変形が可能である。したがって、本発明の範囲は説明された実施例に限定されて定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等なものによって定められなければならない。
【符号の説明】
【0239】
10 マイクロニードル
11 接着層
20 コーティングウェル(coating well)
21 フィルム(film)
22 固体状の薬物粒子
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図5K
図5L
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17