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  • 特許-シリコーンゴムホース 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】シリコーンゴムホース
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/08 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
F16L11/08 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023147273
(22)【出願日】2023-09-12
【審査請求日】2023-09-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000134534
【氏名又は名称】株式会社トヨックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 和矢
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-236270(JP,A)
【文献】特開2007-292303(JP,A)
【文献】特開2007-292302(JP,A)
【文献】特開2003-120864(JP,A)
【文献】特開2002-220499(JP,A)
【文献】特開2002-168379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性に優れたシリコーンゴムを使い製造され、内と外層との間に補強材が巻き付けられてなるシリコーンゴムホースにおいて、
前記内層を構成するシリコーンゴムのデュロメータA硬度が55~85であり、
前記外層を構成するシリコーンゴムのデュロメータA硬度が35~65であり、
前記内層を構成するシリコーンゴム又は前記外層を構成するシリコーンゴムの少なくとも一方は、JIS-K-6252に準拠して測定された引き裂き強度(Sa)が5~60N/mmであり、
前記外層を構成するシリコーンゴムは、下記式(1)で定義される粘弾性回復率と下記式(2)で定義される永久歪み率との比(粘弾性回復率/永久歪み率)が2.2以上である、シリコーンゴムホース。
粘弾性回復率={(伸長変形量-応力残留変形回復量-残留歪み量)/伸張変形量}×100・・・(1)
永久歪み率=(残留歪み量/伸張変形量)×100・・・(2)
【請求項2】
下記式(3)を満たす、請求項1に記載のシリコーンゴムホース。
内層を構成するシリコーンゴムのデュロメータA硬度-外層を構成するシリコーンゴムのデュロメータA硬度≧10・・・(3)
【請求項3】
押し出し成形装置により押し出し成形されるシリコーンゴム製の前記内層と、該内層の外周面に沿って編み機により筒状にニット編みして層状に形成される前記補強材と、該補強材の外側に押し出し成形されるシリコーンゴム製の前記外層と、が積層され、前記ニット編みされた補強材の縦編み列を当該シリコーンゴムホースの軸方向から所定角度に傾斜されて螺旋状に巻き付けられると共に、前記縦編み列に対して横編み列を直交するように螺旋状に巻き付けられてなる、請求項2に記載のシリコーンゴムホース。
【請求項4】
押し出し成形装置により押し出し成形されるシリコーンゴム製の前記内層と、該内層の外周面に沿って螺旋状に巻き付けられることでコイル状に形成される前記補強材と、該補強材の外側に押し出し成型されるシリコーンゴム製の前記外層と、が積層されてなる、請求項2に記載のシリコーンゴムホース。
【請求項5】
搾乳用に使われる請求項1~4のいずれか1項に記載のシリコーンゴムホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば食品、飲料、医療機器、化学やその他の工業に用いられる耐キンク性、耐熱性に優れ、柔軟性が良好なシリコーンゴムホースに関する。特に搾乳ホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療分野、食品工業分野、工業部品分野などに用いられるチューブやホースには、柔軟性、耐キンク性が要求され、従来、塩化ビニル樹脂からなるチューブ、ホースが用いられてきた。ところが、近年、環境問題に対する関心の高まりから、塩化ビニル樹脂に代えて、シリコーンゴムからなるチューブやホースの開発が行われている(特許文献1)。
【0003】
また、搾乳用としての用途から、乳牛等から乳を採る搾乳作業に使用される搾乳装置には、可撓性の搾乳ホースが使用されている。搾乳ホースは、乳牛等の乳房に取り付けられる搾乳ヘッドと吸引力を発生させ乳を回収する搾乳装置本体との間や、搾乳装置本体内部の配管等に使用される。作業性を高めると共に、搾乳ヘッドと搾乳装置本体との間に搾乳ホースが用いられる場合には乳房に負担をかけないために、搾乳ホースには可撓性が求められる。また、搾乳ホースは、耐キンク性が求められる。
【0004】
搾乳ホースとしては、典型的には、シリコーンゴム等で厚肉に形成されたチューブや、軟質樹脂で形成されたチューブが知られている。こうしたチューブは無垢の円筒状である。例えば、特許文献2には、非晶性のα-オレフィン系重合体と石油樹脂類とを含有する樹脂組成物、及び、当該樹脂組成物で構成されたチューブが開示され、当該チューブが、耐キンク性、耐熱性に優れ、搾乳用途に使用できることが開示されている。また、特許文献3には、モジュラスの異なるリニア低密度ポリエチレン樹脂からなる層や、ポリオレフィン系エラストマー層を積層した、多層チューブが開示されており、当該チューブは、材料成分の溶出を抑え、柔軟であり、搾乳用途に使用できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-54052号公報
【文献】特開2004-285299号公報
【文献】特開2001-317662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に搾乳の点からは、搾乳ホースが重いものであると、搾乳作業時の取り扱い性が悪いだけでなく、乳牛等の乳房の負担にもなるので好ましくない。即ち、搾乳ホースには、軽量化が求められている。上記特許文献に記載されるようなチューブ状(無垢の円筒状)の搾乳ホースは、曲げた際にキンクしにくくするために、比較的厚肉に形成する必要があり、軽量化が難しい。また、搾乳作業の自動化の試みが進められる中、搾乳ホースがたやすく破損してしまうと、搾乳作業ができなくなって乳牛等の健康を害しやすくなることもあり、搾乳ホースの長寿命に対する要請がある。
【0007】
また、従来のシリコーン補強ホースでは、使い易くするために内層及び外層のシリコーンゴムを柔らかくすると、シリコーン補強ホースの軸方向へ引っ張り力が作用した際や内圧変化に伴いホース全体が膨張した際に、内層及び外層は軸方向へ伸縮するが、補強材の材質はシリコーンゴムの伸縮率に比べて著しく低く、これに加えてシリコーンゴムは離型性や潤滑性が高いので、他のゴムや構成樹脂より補強材が移動し易い。このため、シリコーン補強ホースが伸縮する度に補強材が徐々にシリコーン補強ホースの軸方向端部から移動して抜けが発生し、この抜け部分の耐圧性能が著しく低下するという問題がある。
【0008】
さらに、シリコーン補強ホースの接続構造では、上述した補強材の抜けに伴ってシリコーン補強ホースの軸方向端部に配置された接続端部の耐圧性能が著しく低下するため、補強材の抜けで接続端部と連結用口金具との間が破裂し易く、この場合には、破裂したホースと共に連結用口金具も一緒に廃棄しなければならず、ホース交換が高額になるという問題がある。そこで、補強材の抜けを防止するために、補強ホースの接続端部をニップルの外周面に嵌挿し、その外側から締め付け具で強く締め付けて縮径させることにより、補強材が移動しないように挟み込むことが考えられる。
【0009】
しかし、この場合には、締め付け具で強く締め付けると、締め付け具とニップルの間に挟み込まれたシリコーンゴムが押し出され、ニップルの内面とホース内面との間に段差が生じて、ホース内を輸送する流体が、生じた段差に残留したり、管内抵抗を増大したりするという問題がある。また、補強材の抜けを防止する手段として、補強材の表面にシリコーンゴム系プライマーを塗布するなどして内層及び外層との接着性を高めることも考えられるが、コストアップになるという問題がある。
【0010】
従来技術によるチューブやシリコーン補強ホースは、耐キンク性、耐熱性において十分満足いくものではなかった。かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、耐キンク性、耐熱性に優れ、柔軟性が良好なホースを提供することにある。特に好ましくは搾乳用ホースである。さらに、補強材の抜けを防止すること、シリコーンゴムホースのねじれに対する剛性をアップさせてねじれによるシリコーンゴムホースの潰れを防止すること、及び柔軟性に優れたシリコーンゴムで成形したシリコーンゴムホースであってもホース接続端部の切れを簡単な構造で防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、本発明のシリコーンゴムホースにより上記の課題を解決できることを見出した。本発明のシリコーンゴムホースは、伸縮性に優れたシリコーンゴムを使い製造され、前記内層と前記外層との間に補強材が巻き付けられてなるシリコーンゴムホースにおいて、前記内層を構成するシリコーンゴムのデュロメータA硬度が55~85であり、前記外層を構成するシリコーンゴムのデュロメータA硬度が35~65であり、前記内層を構成するシリコーンゴム又は前記外層を構成するシリコーンゴムの少なくとも一方は、JIS-K-6252に準拠して測定された引き裂き強度(Sa)が5~60N/mmであり、前記外層を構成するシリコーンゴムは、下記式(1)で定義される粘弾性回復率と下記式(2)で定義される永久歪み率との比(粘弾性回復率/永久歪み率)が2.2以上である。
粘弾性回復率={(伸長変形量-応力残留変形回復量-残留歪み量)/伸張変形量}×100・・・(1)
永久歪み率=(残留歪み量/伸張変形量)×100・・・(2)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐キンク性、耐熱性に優れ、柔軟性が良好なシリコーンゴムホースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係るシリコーンゴムホースの一部切欠正面図である。
図2】本発明の第2実施形態に係るシリコーンゴムホースの一部切欠正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、図1を参照して本発明の第1実施形態について説明する。本発明の第1実施形態に係るシリコーンゴムホースH1(図1参照)は、内層1を構成するシリコーンゴムのデュロメータA硬度が55~85であり、外層2を構成するシリコーンゴムのデュロメータA硬度が35~65であり、かつ、内層1を構成するシリコーンゴム又は外層2を構成するシリコーンゴムの少なくとも一方は、JIS-K-6252に準拠して測定された引き裂き強度(Sa)が5~60N/mmであり、伸縮性に優れたシリコーンゴムを使い製造されたものである。シリコーンゴムのデュロメータA硬度は、硬化前のミラブルシリコーンゴムを200℃の環境下で2時間硬化させたものを、JIS-K-6253に準拠して測定されたものである。
【0015】
シリコーンゴム硬度をこの範囲とすることで耐キンク性が高く、柔軟性についても大きく劣らないものとすることが出来る。内層1を構成するシリコーンゴムのデュロメータA硬度の下限値が55未満であると耐キンク性が低くなり、外層2を構成するシリコーンゴムのデュロメータA硬度の上限値が65を上回ると必要な曲げ荷重が大きくなり、いずれの場合も柔軟なシリコーンゴムホースH1を実現することができない。また、外層2を構成するシリコーンゴムのデュロメータA硬度の下限値が35未満であると柔軟性は良好となるがキンクし易いものとなり、内層1を構成するシリコーンゴムのデュロメータA硬度の上限値が85を上回ると硬さが増してメタルフレキシブル配管のように使い勝手に劣るものとなる。
【0016】
また、本実施形態のシリコーンゴムホースH1の外層2を構成するシリコーンゴムは、下記式(1)で定義される粘弾性回復率と下記式(2)で定義される永久歪み率との比(粘弾性回復率/永久歪み率)が2.2以上であり、好ましくは2.25以上であり、より好ましくは2.3以上であり、さらに好ましくは2.5以上である。該値が低すぎるとシリコーンゴムの耐キンク性が悪化することがある。
粘弾性回復率={(伸長変形量-応力残留変形回復量-残留歪み量)/伸張変形量}×100・・・(1)
永久歪み率=(残留歪み量/伸張変形量)×100・・・(2)
【0017】
また、本実施形態のシリコーンゴムホースH1は、その一態様として、締め付け具で強固に締め付けられて縮径されて継手に接続されるが、上述した下記式(1)で定義される粘弾性回復率と下記式(2)で定義される永久歪み率との比が低すぎる場合、このように継手に接続される際、シリコーンゴムの変形から復帰する力が弱いことにより補強材の固定力が劣り、補強材の抜けが発生する虞がある。
【0018】
上記の式(1)及び式(2)において、伸長変形量、応力残留変形回復量および残留歪み量は、樹脂組成物の弾性ヒステリシス試験から求められる値であり、伸長変形量は、シリコーンゴムを所定長さに伸長した時(状態イ)のシリコーンゴムの変形長さを表し、応力残留変形回復量は、状態イから引張荷重を徐々に減じてゼロにした時(状態ロ)、状態イから状態ロまでのシリコーンゴムの変形長さの変化量を表し、残留歪みは、状態ロの後、シリコーンゴムを自由状態で一定時間静置した時(状態ハ)のシリコーンゴムの変形長さを表す。
【0019】
シリコーンゴムの弾性ヒステリシス試験は、下記の方法で行う。
(1)硬化前ミラブルシリコーンゴムを160℃でプレス成形した後200℃の環境下で2時間硬化反応させ、厚さ0.5mmのシートを製造する。
(2)該シートから、JIS-K-6251に従いダンベル状1号型の試験片(標線間距離=40mm)を作成する。
(3)該試験片について、引張試験機(東洋精機製作所社製 ストログラフR)を用い、温度23℃で、以下の(i)~(iv)の操作を行う。
(4)(i)該試験片を、クロスヘッドスピード500mm/minで、伸張変形率100%(標線間距離80mm)まで伸張させる。(伸長変形量=40mm)
(5)(ii)伸張させたあと直ちに、該試験片を、クロスヘッドスピード500mm/minで、引張応力がゼロになるまで収縮させる。
(6)(iii)引張応力がゼロになった時の標線間距離を測定し、該距離と、伸張変形率が100%の時の標線間距離80mmとの差を求め、この値を応力残留変形回復量とする。
(7)(iv)該引張応力がゼロになった試験片を、引張応力がゼロになってから、直ちに温度23℃、自由状態で、5分間静置し、標線間距離を測定する。該距離と、試験前の標線間距離40mmとの差を求め、この値を残留歪み量とする。
【0020】
本実施形態のシリコーンゴムホースH1は、耐熱性、耐キンク性に優れるため、種々の成形品に使用できる。
【0021】
また、本実施形態のシリコーンゴムホースH1を製造するために内層1又は外層2に使用されるシリコーンゴムは、硬化前ミラブルシリコーンゴムを160℃でプレス成形した後、200℃の環境下で2時間硬化反応させたものの引き裂き強度(JIS-K-6252に準拠して測定)が5~60N/mmであり、好ましくは15~60N/mmである。引き裂き強度が5N/mm未満であるとホースを曲げたり伸ばしたりする際に変形が戻ってこず寸法ずれを起こし、それが原因で肉厚が変化するとか取り扱いしにくくなり、また肉厚が変化した箇所を起点として裂けるなどの懸念があり好ましくない。更に60N/mmよりも大きいと変形しづらく扱いにくいとか曲げて使用する場合の反発弾性が大きく作業性を下げてしまい好ましくない。
【0022】
さらに、本実施形態のシリコーンゴムホースH1を製造するために使用されるシリコーンゴムは、下記式(3)を満たすことで柔軟性、耐キンク性がより優れたものになる。内層1を構成するシリコーンゴムのデュロメータA硬度が外層2を構成するシリコーンゴムのデュロメータA硬度よりも大きいことで、シリコーンゴムホースH1を曲げて使用する際に相対的に硬度が大きい内層1がシリコーンゴムホースH1を保形しつつ硬度が低い外層2が柔軟に変形し、シリコーンゴムホースH1としての柔軟性、耐キンク性が向上する。好ましくは、内層1を構成するシリコーンゴムのデュロメータA硬度が外層2を構成するシリコーンゴムのデュロメータA硬度より10以上大きく、15以上大きいことがより好ましい。
内層を構成するシリコーンゴムのデュロメータA硬度-外層を構成するシリコーンゴムのデュロメータA硬度≧10・・・(3)
【0023】
本実施形態のシリコーンゴムホースH1は、特定の物性範囲を満たすシリコーンゴムから製造された内層1及び外層2がホースの軸方向へ伸縮することに伴って、筒状にニット編みされたブレード(補強材)3も同方向へ伸縮するものである。さらに、ホース全体が周方向へねじれた時には、交差する二方向の編み列に作用する力が釣り合あってホースは筒状に保形される。
【0024】
図1に示すように、シリコーンゴムホースH1は、内層1と外層2との間にブレード3を筒状にニット編みして層状に形成することにより一体化されたものである。上記内層1及び外層2は、その主成分が柔軟性に優れたシリコーンゴムで製造され、公知の押出成形装置によって、先ず内層1を押し出し成形した後に、その外周面に沿って編み機(図示せず)により後述するブレード3を編み込み、更にブレード3の外側に外層2を押し出し成形して積層される。
【0025】
このようにニット編みされたブレード3は、例えばポリエステルやナイロンやアラミド繊維などの補強糸又は補強繊維であり、シリコーンゴムホースH1の軸方向へ延びる縦編み列3aと、これに交差してシリコーンゴムホースH1の周方向へ延びる横編み列3bとが伸縮自在に編み込まれる。そして、これら縦編み列3aおよび横編み列3bの編み込み方向は、縦編み列3aをシリコーンゴムホースH1の軸方向と平行にすると共に、これに対して横編み列3bを直交させるように編み込むか、あるいは図1に示すように、シリコーンゴムホースH1のねじれに対して縦編み列3a及び横編み列3bに作用する力が釣り合うように、シリコーンゴムホースH1の軸方向から所定角度に傾斜させて螺旋状に巻き付ける。これら縦編み列3aと横編み列3bの交差角度は、図示した略直角以外に任意の傾斜角度に適宜傾斜させてもよい。
【0026】
また、本実施形態のシリコーンゴムホースH1は、上記内層1、上記外層2、上記ブレード3からなる補強層以外に、第3の層や第2の補強層などの別の層を設けてもよい。シリコーンゴムホースH1を他機へ接続するための接続手段としては、シリコーンゴムホースH1の接続端部をニップル部の外周面に嵌挿し、その外側からカシメパイプやホースクランプ、袋ナットや分割ホルダなどの締め付け具で締め付けて縮径させることで、ホースを保持する継手などが考えられるが、本発明はこれに限定されるものではない。継手は、硬質合成樹脂や金属などで構成され、その軸方向先端側にニップル部を形成し、基端側には他機へ接続するための接続手段が設けられることで、様々な用途での他機との接続が可能となる。
【0027】
本実施形態のシリコーンゴムホースH1が上記のような構成及び特徴を有することにより、本実施形態のシリコーンゴムホースH1の内層1及び外層2は、シリコーンゴムホースH1の軸方向へ引っ張り力が作用した際や内圧変化に伴いホース全体が膨張した際に、シリコーンゴムホースH1の外層2を構成するシリコーンゴムの粘弾性回復率と永久歪み率が所定の範囲であることからシリコーンゴムが変形から復元する力が強い。その結果、締め付け具の締付によるシリコーンゴムホースH1の縮径で補強材を強固に保持し、補強材の抜けを防止できる。
【0028】
特にニット編みされたブレード3を補強材として構成した場合は、図1に示すように、ブレード3(補強糸、補強繊維)を縦方向と横方向へ交互に方向を変えて編んだものなので、螺旋状に巻き付けたブレードと比べ、飛躍的に糸抜けを防止できる。さらに、シリコーンゴムホースH1全体が周方向へねじれても、補強材に作用する力が釣り合ってシリコーンゴムホースH1は筒状に保形される。その結果、シリコーンゴムホースH1のねじれに対する剛性をアップさせて、ねじれによるシリコーンゴムホースH1の潰れを防止することができる。
【0029】
また、シリコーンゴムホースH1の接続端部の外周面と締め付け具の間にライナーを挟み込んだ状態で縮径することにより、締め付け具が接続端部の外周面に直接触れず保護される。その結果として柔軟性に優れたシリコーンゴムで製造したホースであっても、接続端部の切れを簡単な構造で防止できる。ライナーの材質は、熱可塑性樹脂やゴム、金属などが考えられるが、特に食品機械や医療機器に使用する場合には、硬質または半硬質のシリコーンゴムやフッ素樹脂、ナイロン樹脂などの食品衛生上安全で耐熱性に優れた材料を使用することが好ましい。
【0030】
本実施形態のシリコーンゴムには、必要に応じて、他の樹脂、ゴム・エラストマー成分、添加剤等を加えてもよい。他の樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のようなポリエチレン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-アクリル酸エステル共重合樹脂、エチレン-メタクリル酸エステル共重合樹脂、エチレン-スチレン共重合樹脂等のエチレン系共重合樹脂、ホモポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリ-4-メチル-ペンテン-1系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、並びに、ポリカーボネート系樹脂を例示することができる。ゴム・エラストマー成分としては、天然ゴム;ポリブタジエン;液状ポリブタジエン;ポリアクリロニトリルゴム;アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム;部分水添アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム;エチレン-プロピレンゴム、エチレン-ブテンゴム、エチレン-ヘキセンゴム、エチレン-オクテンゴム等のエチレン単位の含有量が70モル%以上であるエチレン系ゴム;フッ素ゴム;ウレタンゴム;イソブチレン-イソプレン共重合体ゴム;非架橋オレフィン系熱可塑性エラストマー、部分架橋オレフィン系熱可塑性エラストマー、完全架橋オレフィン系熱可塑性エラストマーを例示することができる。
【0031】
添加剤としては、老化防止剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、紫外線吸収剤および光安定剤のような安定剤、滑剤、フィラー、難燃剤、高周波加工助材、帯電防止剤、内部剥離剤、着色剤、分散剤、アンチブロッキング剤、防曇剤などを例示することができる。
【0032】
上記の滑剤としては、ワックス、高級アルコール、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、カルボン酸エステル、リン酸エステル、スルホン酸金属塩、酸エステル金属塩、アクリル系樹脂、フッ素含有樹脂およびシリコーンを例示することができる。これらの2種類以上を併用してもよい。
【0033】
上記のワックスとしては、パラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックスのような石油ワックス;ライスワックスのような植物系ワックス;モンタンワックスのような鉱物系ワックス;並びに、ポリエチレンワックス及び低分子量ポリプロピレンのような合成系ワックスを例示することができる。
【0034】
上記の高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、エルシルアルコール及び12ヒドロキシステアリルアルコールを例示することができる。
【0035】
上記の脂肪酸としては、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸およびリシノール酸を例示することができる。
【0036】
上記の脂肪酸金属塩としては、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸およびリシノール酸などの脂肪酸の、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、BaおよびPbなどの金属の塩を例示することができる。具体的な脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛を例示することができる。
【0037】
上記の脂肪酸アミドとしては、ラウリル酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド及びステアリルジエタノールアミドを例示することができる。
【0038】
上記のカルボン酸エステルとしては、脂肪族カルボン酸(アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、アコニット酸など)、脂肪酸(ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リシノール酸など)、オキシカルボン酸(乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸など)などのカルボン酸と、脂肪族アルコール(ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、12ヒドロキシステアリルアルコールなど)、芳香族アルコール(ベンジルアルコール、β-フェニルエチルアルコール、フタリルアルコールなど)、多価アルコール(グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなど)などのアルコールとのエステルを例示することができる。具体的なカルボン酸エステルとしては、グリセリンモノオレート、グリセリンジオレート、ポリエチレングリコールモノステアレート及びクエン酸ジステアレートを例示することができる。
【0039】
上記のリン酸エステルとしては、リン酸と高級アルコールとのモノアルキルエステル、ジアルキルエステル及びトリアルキルエステルを例示することができる。
【0040】
上記のアクリル系樹脂としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル及びアクリル酸-2-エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルから誘導される構造単位や、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸-2-エチルヘキシルなどのメタクリル酸エステルから誘導される構造単位を主たる単位とする重合体を例示することができる。具体的なアクリル系樹脂としては、三菱化学製の商品名がメタブレンなるアクリル系樹脂や、カネカ製の商品名がカネエースなるアクリル系樹脂を例示することができる。
【0041】
上記のスルホン酸金属塩としては、ステアリルスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ステアリルスルホン酸カリウム、ラウリルスルホン酸カリウム、スルホコハク酸ジブチルナトリウム、スルホコハク酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウム、スルホコハク酸ラウリル2ナトリウム、及び、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル-2-ナトリウムを例示することができる。
【0042】
上記の酸エステル金属塩としては、ラウリル硫酸ナトリウム及びラウリル硫酸カリウムなどの硫酸エステル塩;ラウリルリン酸ナトリウム及びラウリルリン酸カリウムなどのリン酸エステル塩を例示することができる。
【0043】
上記のフッ素含有樹脂類としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フルオロアルキルエチレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルなどの含フッ素オレフィン;パーフルオロアルキレンアクリレート及びパーフルオロメタアルキレンアクリレートなどの含フッ素アルキルアクリレート;並びに、含フッ素アルキルメタアクリレートなどの含フッ素化合物から誘導される構造単位を主たる単位とする重合体を例示することができる。具体的なフッ素含有樹脂類としては、ポリテトラフルオロエチレン及びパーフルオロ(ポリオキシプロピレンエチルエーテル)を例示することができる。
【0044】
本実施形態のシリコーンゴムホースH1は、自動車・建設機械車両、農業機械車両、鉄道車両等の各種産業車両の分野;工作機械、建設機械、農業機械、鉱業機械、産業ロボット、化学プラント、塗装機、薬品移送機械、食品工業機械、油圧工具等の各種工・鉱業機械、船舶等の分野における、油、各種薬品、空気、各種ガス、水等の配管として使用することができる。
【0045】
本実施形態のシリコーンゴムホースH1の具体例を示すと、フィラーホース、エバポレーションホース、フューエルホース、ベーパーエミッションホース、インタンクーフューエルホース、パワーステアリングホース、エアーコンディショニングホース、ラジエータホース、ヒーターホース、トランスミッションオイルクーラーホース、エンジンオイルクーラーホース、ブレーキホース、ターボチュージャードレインホース、フューエルインジェクションホース、エアーコンディショニングホース、エアーダクトホース、エアーインテークホース、バキュームコントロールホース、エアーポリューションコントロールホース等の自動車用ホース;油圧機械用ホース、空圧機械用ホース、集中潤滑機器用ホース、塗装機器用ホース、化学プラント用ホース、溶剤・薬液移送用ホース、各種液化ガス移送用ホース、食品関連機械用ホース、飲料関連機械用ホース、理化学機器用ホース、紡績機械用ホース、荷造機械用ホース、印刷機械用ホース、伝導機械用ホース、水処理装置用ホース、流体素子用ホース、産業ロボット用ホース、産業車両用ホース、農業機械用ホース、建設機械用ホース、工作機械用ホース、射出成形機用ホース、省力機械用ホース、エアードライバー・エアーハンマー等のエアー工具用ホース、稼働部のホース、空気圧/電気信号用ホース、空気圧/信号用ホース、耐熱・高絶縁・高周波特性を必要とする機器用ホース、スポット溶接機器用ホース、スチームホース、農業用スプレーホース、醸造用ホース、潜水用ホース、バンドレスオイルホース、ガスチュービングホース、エアーブレーキホース、ガソリンスタンドホース、タンクローリーホース、ロータリーホース、消火器ホース等の各種産業機械・産業車両用ホース;各種輸液ホース、吸排気用ホース等の医療機器用ホース等を挙げることができる。特に搾乳用ホースとして好ましいものである。
【0046】
以上説明した本実施形態に係るシリコーンゴムホースH1によれば、以下に示す効果を得ることができる。即ち、本実施形態のシリコーンゴムホースH1は、締め付け具の締付によるシリコーンゴムホースH1の縮径で補強材を強固に保持し、補強材の抜けを防止できる。従って、補強材が抜け易い従来のものに比べ、ホース全体の耐圧性能を高く維持して破裂の防止ができると共に、補強材の表面にシリコーンゴム系プライマーを塗布するなどして内層及び外層との接着性を高めるものに比べ、製造コストを低減できる。
【0047】
さらに、ホース全体が周方向へねじれた時には、補強材に作用する力が釣り合あってホースは筒状に保形されるので、ホースのねじれに対する剛性をアップさせてねじれによるホースの潰れを防止することができる。また、搾乳での薬品による洗浄に対する耐久性も高く長寿命なものである。搾乳に限らず、薬品による洗浄を行う業界で使用した際には、従来品より遥かに長寿命なものとして使用できる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、図2を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態に係るシリコーンゴムホースH2(図2参照)は、内層1と外層2との間に補強材として線材4を螺旋状に巻きつけることでコイル状に形成することにより一体化されたものである。それ以外の構成については、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0049】
この線材4は、例えばステンレスなどの錆び難い金属線や一本の合成樹脂製繊維からなるモノフィラメントなどの硬質繊維や硬質合成樹脂からなる硬質線材であり、コイル成型機やコイル貯留部から導き静止状態で内層の外周へ巻きつけることにより形成される。
【0050】
本実施形態のシリコーンゴムホースH2は、特定の物性範囲を満たすシリコーンゴムから製造された内層及び外層がホースの軸方向へ伸縮することに伴って、コイル状に形成された補強材も同方向へ伸縮するものである。さらに、ホース全体が周方向へねじれた時には、コイル状に形成された補強材の反発力が釣り合ってホースは筒状に保形される。
【0051】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【実施例
【0052】
以下、実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明する。実施例及び比較例では、シリコーンゴムホースの物性測定を以下の方法で行った。
【0053】
1.粘弾性回復率/永久歪み率
実施例及び比較例では、シリコーンゴムホースを構成するシリコーンゴムの粘弾性回復率と永久歪み率の比(粘弾性回復率/永久歪み率)は、以下の操作(i)~(iv)により、伸長変形量、応力残留変形回復量、残留歪み量を求め、下記式(1)及び式(2)により、粘弾性回復率と永久歪み率を算出して求めた。
(i)シリコーンゴムを160℃でプレス成形した後、200℃の環境下で2時間硬化反応させ、厚さ0.5mmのシートを製造した。
(ii)製造したシートから、JIS-K-6251に記載のダンベル状1号型の試験片(標線間距離=40mm)を作成した。
(iii)作成した試験片について、引張試験機(東洋精機製作所社製 ストログラフR)を用い、以下の操作を行った。
(a)試験片を、クロスヘッドスピード500mm/分で、伸張変形率100%(標線間距離=80mm)まで伸張させた(伸長変形量=40mm)。
(b)試験片を伸張させた後直ちに、その試験片をクロスヘッドスピード500mm/分で、引張応力がゼロになるまで収縮させた。
(c)試験片の引張応力がゼロになった時の標線間距離を測定し、測定した標線間距離と、伸張変形率が100%の時の標線間距離80mmとの差を求め、この値を応力残留変形回復量とした。
(iv)引張応力がゼロになった試験片を、引張応力がゼロになってから、直ちに温度23℃、自由状態で、5分間静置して、標線間距離を測定し、測定した標線間距離と、試験前の標線間距離40mmとの差を求め、この値を残留歪み量とした。
粘弾性回復率={(伸長変形量-応力残留変形回復量-残留歪み量)/伸張変形量}×100・・・(1)
永久歪み率=(残留歪み量/伸張変形量)×100・・・(2)
【0054】
2.硬度
硬化前ミラブルシリコーンゴムを160℃でプレス成形した後200℃の環境下で2時間硬化反応させ厚さ2mmのシートを作成した。該シートのデュロメータ硬さ(Duro-A)を、JIS-K-6253に従い測定した。
【0055】
3.耐キンク性
成形されたシリコーンゴムホース(内径25.4mm、外径35.5mm)を、23℃の雰囲気下で50mmの円柱体に巻きつけ、下記の基準により評価した。
【0056】
4.抜け有無
成形されたシリコーンゴムホース(内径25.4mm、外径35.5mm)の一端に耐圧ニップルを挿入してバンドで締めることで閉塞させ、他端からホース内部へ空気を供給し続け、ホース内部からの圧力によりホースが破裂した際の補強材の状態を確認し、下記の基準により評価した。
【0057】
5.引き裂き強度
硬化前ミラブルシリコーンゴムを160℃でプレス成形した後、200℃の環境下で2時間硬化反応させたものをJIS-K-6251に従い測定を行った。
【0058】
(測定結果)
下記表1に示す実施例1~6及び比較例1~4の各シリコーンゴムホースを、複数の酪農家(酪農家A~酪農家D)において、実際の搾乳装置に組み込み、日常的に行われる搾乳作業においてモニター評価した。これら搾乳ホースは、組成情報等は開示せずにモニター用に貸与したものでありモニター期間終了後は全品回収した。なお、表1中の「硬度」とは、デュロメータA硬度である。表1中の「ホース特性」とは、粘弾性回復率と永久歪み率との比(上述した式(1)/式(2))である。
【0059】
実施例1~6は、内層を構成するシリコーンゴムの「硬度」が60~81、かつ「引き裂き強度」が10~35N/mmであり、外層を構成するシリコーンゴムの「硬度」が38~63、かつ「引き裂き強度」が34~56N/mmであり、シリコーンゴムホースの「ホース特性」が2.2~2.8のシリコーンゴムホースである。比較例1は、内層を構成するシリコーンゴムの「引き裂き強度」が5より小さいものとした。比較例2は、外層を構成するシリコーンゴムの「硬度」が35より小さく、シリコーンゴムホースの「ホース特性」が2.2より小さいものとした。比較例3は、内層を構成するシリコーンゴムの「硬度」が55より小さいものとした。
【0060】
また、表1中の「補強方法」について、「1」は、第1実施形態で示した補強方法で製造したシリコーンゴムホースであり、「2」は、第2実施形態で示した補強方法で製造したシリコーンゴムホースである。なお、比較例4は、シリコーンゴムの単一層からなり補強材を備えないシリコーンゴムチューブである。
【0061】
【表1】
【0062】
モニター評価によると、実施例1~6のシリコーンゴムホースは、その柔軟性や軽さといった、搾乳装置の取り扱い性に関わる項目に関しては、従来の肉厚のホース/チューブ状の搾乳ホースに比べて、軽く、扱いやすいとの評価が得られた。
【0063】
下記表2に、実施例1~6のシリコーンゴムホース、比較例1~4のシリコーンゴムホース/チューブの寿命の評価結果を示す。
【0064】
表2中の「耐キンク性」の判断は、下記の基準により評価した。
○:円柱体に巻きつけたホースの外径が、元の外径の50%以上。
△:円柱体に巻きつけたホースの外径が、元の外径の30%以上50%より小さい。
×:円柱体に巻きつけたホースの外径が、元の外径の30%より小さい。
【0065】
表2中の「洗浄耐久性」(寿命)の判断は、10軒のモニター先の酪農家において、最長4カ月の間、シリコーンゴムホース/チューブを使用してもらい、ホース壁の一部が硬化や変形して使用に支障をきたすようになったり、ホース壁が破断して漏れるようになったり、ホース壁などにクラックが目立つようになったことをもって、ホースがもはや使用できなくなり寿命に達したものと判断し、×評価とした。クラック等はみられずホースとして使用可能ではあるものの、ホースの一部に硬化や変形が感じられるものを△評価とした。また、こうした特段の所見が見られず、初期のホースと同様のものを○評価とした。当然のことながら4カ月経過せずして劣化したものもあった。
【0066】
表2中の「抜け有無」の判断は、下記の基準により評価した。
〇:補強材端部の移動がない。
△:補強材端部が移動し、ホース接続端部とバンド締め箇所の間の位置にある。
×:補強材端部が移動し、ホース接続端部から見てバンド締め箇所より離れた位置にある。
【0067】
【表2】
【0068】
各実施例のシリコーンゴムホースが1本ずつ、合計60本がモニターに供され、各比較例のシリコーンゴムホース/チューブが1本ずつ、合計40本がモニターに供された。モニター開始から1か月で、比較例のシリコーンゴムホース/チューブでは△評価のサンプルや、寿命に達し、いずれかの評価項目において×評価になったサンプルが生じた。一方、各実施例のシリコーンゴムホースは、△評価のサンプルが生じたのは4カ月後であり、×評価のサンプルは4カ月のモニター期間においてはなかった。
【0069】
表2に示すように、各実施例のシリコーンゴムホースは、比較例1~4のホース対し耐キンク性に優れ高寿命を有していることがわかった。また、各実施例のシリコーンゴムホースは、比較例2のホース対し補強材の抜けがなく破裂が防止されており、長期間にわたって搾乳作業に使用し続けることができ経済性が高いことがわかった。
【0070】
各実施例のシリコーンゴムホースを搾乳ホースとして使用した場合の劣化は洗浄作業時の使用形態との関係で生じる。搾乳ホースは、汚れや雑菌等の発生を防止するために、使用後に頻繁に内部洗浄が行われる。この内部洗浄作業には、酸やアルカリを含む高温(60度~80度)の洗浄液が使用される。また、洗浄効率を高めるために洗浄作業の際は、洗浄液を連続的に流すだけでなく、搾乳装置の負圧を利用して、空気とともにしぶき状に勢いよく、間欠的に洗浄液をホース内部に送り込むことが行われる。また、この洗浄作業の際には、シリコーンゴムホースは曲げ姿勢を取ることになる。すると、勢いよくしぶき状にホース内部に流れ込んできた高温の洗浄液は、シリコーンゴムホースが直線的な部分ではあまりホース壁に衝突しない一方で、シリコーンゴムホースが曲がっている部分では、洗浄液がホース壁内部に激しく衝突することになる。これにより、シリコーンゴムホースが特定の部位で、高温の洗浄液に激しくさらされることになる。そのため、このシリコーンゴムホースの洗浄時に曲がった部分が劣化しやすい。
【符号の説明】
【0071】
1 内層 2 外層
3 ブレード 3a 縦編み列
3b 横編み列 4 線材
H1、H2 シリコーンゴムホース
【要約】
【課題】耐キンク性、耐熱性に優れ、柔軟性が良好なシリコーンゴムホースを提供すること。
【解決手段】シリコーンゴムホースH1は、伸縮性に優れ、内層1と外層2との間に補強材が巻き付けられてなり、内層1を構成するシリコーンゴムのデュロメータA硬度が55~85であり、外層2を構成するシリコーンゴムのデュロメータA硬度が35~65であり、内層1又は外層2を構成するシリコーンゴムは、JIS-K-6252に準拠して測定された引き裂き強度(Sa)が5~60N/mmであり、外層2を構成するシリコーンゴムは、下記式(1)で定義される粘弾性回復率と下記式(2)で定義される永久歪み率との比(粘弾性回復率/永久歪み率)が2.2以上である。粘弾性回復率={(伸長変形量-応力残留変形回復量-残留歪み量)/伸張変形量}×100・・・(1) 永久歪み率=(残留歪み量/伸張変形量)×100・・・(2)。
【選択図】図1
図1
図2