(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】温室効果実験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 25/18 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
G01N25/18 D
(21)【出願番号】P 2021213569
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2022-11-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年5月27日に高岡市立牧野小学校にて実験を披露 令和3年6月3日に高岡市立牧野小学校にて実験を披露 令和3年7月7日に高岡市立こまどり支援学校にて実験を披露 令和3年10月1日に射水市立小杉南中学校にて実験を披露 令和3年10月6日に南砺市立城端小学校にて実験を披露 令和3年10月21日に射水市立大門小学校にて実験を披露 令和3年10月22日に高岡市立下関小学校にて実験を披露 令和3年10月26日に富山県立高岡工芸高等学校にて実験を披露 令和3年11月5日に射水市立大門中学校にて実験を披露 令和3年11月10日に北陸電力富山太陽光発電所PR館にて実験を披露 令和3年11月12日に高岡市立南星中学校にて実験を披露 令和3年11月16日に富山県立高岡商業高等学校にて実験を披露 令和3年11月17日に氷見市立朝日丘小学校にて実験を披露 令和3年11月18日に富山県立砺波工業高等学校にて実験を披露 令和3年12月2日に高岡市立芳野中学校にて実験を披露 令和3年6月3日に高岡市立牧野小学校のウェブサイト(http://makino-e.el.tym.ed.jp/archives/date/2021/06/page/2)に実験の様子が公開 令和3年7月7日に高岡市立こまどり支援学校のウェブサイト(http://www.komadori-sh.tym.ed.jp/page/16)に実験の様子が公開 令和3年10月6日に南砺市立城端小学校のウェブサイト(http://johana-e.el.tym.ed.jp/?m=20211006)に実験の様子が公開 令和3年10月22日に高岡市立下関小学校のウェブページ(http://shimozeki-e.el.tym.ed.jp/?m=202110)に実験の様子が公開 令和3年11月12日に高岡市立南星中学校のウェブサイト(http://nansei-j.el.tym.ed.jp/archives/date/2021/11/12)に実験の様子が公開 令和3年10月7日付の北日本新聞朝刊第25面に実験の様子が公開 令和3年11月26日付の電気新聞第5面に実験の様子が公開
(73)【特許権者】
【識別番号】522000452
【氏名又は名称】塚本 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】塚本 幸史
【審査官】目黒 大地
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-212049(JP,A)
【文献】特開2003-043912(JP,A)
【文献】登録実用新案第3204017(JP,U)
【文献】中国実用新案第203966404(CN,U)
【文献】<山崎賞>8 地球って本当に暖かくなっているの? ー私の住んでいる町に地球温暖化の証拠があるのだろうかー,理科研究論文集 平成19年度 研究論文一覧 [online],日本,2008年03月31日,https://gakusyu.shizuoka-c.ed.jp/science/sonota/ronnbunshu/071051.pdf,[2023年7月28日検索]
【文献】二酸化炭素の温度変化実験,Weather Information Technology Research & Development [online],日本,2009年10月30日,www.ny.airnet.ne.jp/satoh/expmkidsEX.htm,[2023年7月28日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00-25/72
G09B 23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニール袋を2枚用意し、一方のビニール袋に二酸化炭素を封入し、他方のビニール袋に空気を封入し、
前記二酸化炭素入りのビニール袋と
前記空気入りのビニール袋を反射板の前に配置し、
前記二酸化炭素入りのビニール袋と前記空気入りのビニール袋から見て前記反射板と反対側から赤外線を放射するヒーターで
前記二酸化炭素入りのビニール袋と
前記空気入りのビニール袋を加熱し、加熱後に
前記二酸化炭素入りのビニール袋と
前記空気入りのビニール袋の表面温度を放射温度計で測定することを特徴とする温室効果実験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素の温室効果を確認するための実験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化を防止するために、二酸化炭素の排出量を減らすことが求められている。しかし、そもそも空気中の二酸化炭素の濃度が増えることが、どうして地球温暖化につながるのか、よく理解していない人が少なくない。そこで、小学校等で二酸化炭素による温室効果を確認する実験を行い、子供たちに二酸化炭素の温室効果を実感してもらうことは有益である。
【0003】
従来の温室効果の実験装置は、透明なガラス又はプラスチック製の球形の容器を二つ有し、そのうちの一方には二酸化炭素を封入し、他方には空気を封入し、二つの容器をハロゲンランプ等で加熱し、各容器内に挿入したデジタル温度計で容器内の二酸化炭素と空気の温度を測定するというものだった。
かかる実験装置においては、容器内に二酸化炭素を集めるのに水上置換等を用いる必要があって煩わしい、ガラス又はプラスチック製の容器をハロゲンランプで加熱しても、中の二酸化炭素の温度が上昇するのに時間がかかるといった問題があった。また、何より実験装置が何十万円もする高価なものであるため、全国の小学校等に普及させることができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、身近にあるものを使用して二酸化炭素の温室効果を実感することのできる温室効果実験方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による温室効果実験方法は、ビニール袋を2枚用意し、一方のビニール袋に二酸化炭素を封入し、他方のビニール袋に空気を封入し、前記二酸化炭素入りのビニール袋と前記空気入りのビニール袋を反射板の前に配置し、前記二酸化炭素入りのビニール袋と前記空気入りのビニール袋から見て前記反射板と反対側から赤外線を放射するヒーターで前記二酸化炭素入りのビニール袋と前記空気入りのビニール袋を加熱し、加熱後に前記二酸化炭素入りのビニール袋と前記空気入りのビニール袋の表面温度を放射温度計で測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明による温室効果実験方法は、ビニール袋を使用することで二酸化炭素と空気を簡単に封じ込めることができる。また、二酸化炭素入りのビニール袋と空気入りのビニール袋を反射板の前に配置し、反射板と反対側から赤外線を放射するヒーターで二酸化炭素入りのビニール袋と空気入りのビニール袋を加熱することで、二酸化炭素と空気を効率よく加熱することができる。また本発明による温室効果実験方法は、加熱後に二酸化炭素入りのビニール袋と空気入りのビニール袋の表面温度を放射温度計で測定するが、ビニール袋は非常に薄いため、測定されたビニール袋の表面温度は内部の二酸化炭素と空気の温度とほとんど同じであり、二酸化炭素を入れたビニール袋の表面温度が空気を入れたビニール袋の表面温度よりも高いことで、二酸化炭素の温室効果を実感することができる。本発明による温室効果実験方法によれば、高価な実験装置を用いることなく、身近にあるものを利用して、簡易に二酸化炭素の温室効果を実感することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ビニール袋に二酸化炭素を封じ込めるときの様子を示す図である。
【
図2】二酸化炭素入りのビニール袋と空気入りのビニール袋を赤外線ストーブで加熱しているときの状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明の温室効果実験方法は、小学校の理科室等において子供たちに二酸化炭素による温室効果を理解してもらうのに好適なものである。本発明による温室効果実験方法の手順を順に説明する。
まず、ビニール袋1a,1bを2枚用意する。ビニール袋1a,1bは、市販のものを利用すればよく、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄いプラスチックフィルム製の透明ないし半透明の袋を用いることができる。ビニール袋1a,1bの大きさは問わないが、例えば40cm×30cm、厚さ0.02mmのものを使用することができる。
次に、一方のビニール袋1aに二酸化炭素を封入する。これは、
図1に示すように、ビニール袋1aの口をすぼめた状態で手で持ち、市販の二酸化炭素ボンベ4のノズル5に取付けたストロー6をビニール袋1aの口に差し入れ、ノズル5から二酸化炭素を噴射する。同サイズのビニール袋1aで5リットルのボンベ1本分が入りきる。二酸化炭素を入れ終わったら、ビニール袋1aの口を紐や輪ゴムで縛り、ビニール袋1aに油性マジックでCO
2と記載する。
もう一方のビニール袋1bには、空気入れを使用して空気を入れ、同じように口を縛り、ビニール袋1bに油性マジックで空気と記載する。
【0009】
そうして二酸化炭素入りのビニール袋1aと空気入りのビニール袋1bができたら、それぞれの表面温度を放射温度計で測定する。このときの両ビニール袋1a,1bの温度は、室温と同じになる。ある日に行った実験ではどちらも21.2度であった。
二酸化炭素入りのビニール袋1aと空気入りのビニール袋1bを、同じ高さから同時に落とすと、二酸化炭素入りのビニール袋1aの方が早く落ちる。これにより、実験を見ている子供たちに、二酸化炭素が空気より重い気体であることを認識させることができる。
【0010】
次に、
図2に示すように、段ボール箱7の一面に反射板としてのアルミ箔2を貼ったものを用意し、二酸化炭素入りのビニール袋1aと空気入りのビニール袋1bの縛ったところより上の部分を金串8,8で刺し、さらにその金串8,8を段ボール箱7のアルミ箔2を貼った面に突き刺すことで、二酸化炭素入りのビニール袋1aと空気入りのビニール袋1bをアルミ箔2の前で空中に吊り下げる。
その上で、アルミ箔2と反対側の前方から赤外線ストーブ3で二酸化炭素入りのビニール袋1aと空気入りのビニール袋1bを加熱する。こうすることで、赤外線ストーブ3から放射される赤外線と、アルミ箔2で反射した赤外線とで両側から加熱されるため、二酸化炭素入りのビニール袋1aと空気入りのビニール袋1bを効率よく暖めることができる。
【0011】
15分程度加熱したら、二酸化炭素入りのビニール袋1aと空気入りのビニール袋1bを段ボール箱7から外し、それぞれの表面温度を放射温度計で測定する。放射温度計で測定されるのはビニール袋1a,1bの表面温度であるが、ビニール袋1a,1bは非常に薄いため、測定されたビニール袋1a,1bの表面温度は内部の二酸化炭素と空気の温度とほとんど同じである。二酸化炭素は空気よりも赤外線を吸収するため、二酸化炭素入りのビニール袋1aの温度は空気入りのビニール袋1bよりも3~5度高くなる。ある日の実験では、加熱前はどちらも21.2度であったものが、加熱後には二酸化炭素入りのビニール袋1aの温度が25.9度、空気入りのビニール袋1bの温度は21.8度であった。これにより、二酸化炭素による温室効果を実感することができる。また、ビニール袋1a,1bを実際に手で触ることで、二酸化炭素と空気の違いを体感することができる。
【0012】
なお、二酸化炭素入りのビニール袋1aと空気入りのビニール袋1bを放置しておくと、空気入りのビニール袋1bはそのままなのに対して、二酸化炭素入りのビニール袋1aは二酸化炭素が抜けてぺちゃんこになる。これは、プラスチックフィルムは酸素、窒素、二酸化炭素によってガスの透過度が違い、二酸化炭素は透過度が高いからである。
【0013】
以上に述べたように本発明による温室効果実験方法は、ビニール袋1a,1bを使用することで二酸化炭素と空気を簡単に封じ込めることができる。また、二酸化炭素入りのビニール袋1aと空気入りのビニール袋1bを反射板(アルミ箔)2の前に配置し、反射板2と反対側から赤外線を放射するヒーター(赤外線ストーブ)3で二酸化炭素入りのビニール袋1aと空気入りのビニール袋1bを加熱することで、二酸化炭素と空気を効率よく加熱することができる。また本発明による温室効果実験方法は、加熱後に二酸化炭素入りのビニール袋1aと空気入りのビニール袋1bの表面温度を放射温度計で測定するが、ビニール袋1a,1bは非常に薄いため、測定されたビニール袋1a,1bの表面温度は内部の二酸化炭素と空気の温度とほとんど同じであり、二酸化炭素を入れたビニール袋1aの表面温度が空気を入れたビニール袋1bの表面温度よりも高いことで、二酸化炭素の温室効果を実感することができる。本発明による温室効果実験方法によれば、高価な実験装置を用いることなく、身近にあるものを利用して、簡易に二酸化炭素の温室効果を実感することができる。
本発明による温室効果実験方法は、身近にあるものを使用して、45分程度の短い時間内で行うことができるので、全国の小学校等に広く普及することが期待でき、未来を担う子供たちが若いうちから温室効果について学び、地球環境保護の重要性について意識させることは、今後の持続可能な社会を実現する上で極めて有益なものとなる。
【0014】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。ビニール袋の材質や大きさは、適宜変更することができる。反射板として、姿見等の鏡を利用してもよい。ヒーターは、赤外線を放射するものであればよく、赤外線ストーブの他、電気ストーブ、反射式石油ストーブ、ハロゲンランプ等であってもよい。
【符号の説明】
【0015】
1a,1b ビニール袋
2 アルミ箔(反射板)
3 赤外線ストーブ