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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/45 20100101AFI20231219BHJP
【FI】
B62M6/45
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018087732
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019189191
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-04-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】土澤 康弘
【合議体】
【審判長】藤井 昇
【審判官】沼生 泰伸
【審判官】八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-208523(JP,A)
【文献】特開2002-1676(JP,A)
【文献】特開2001-114184(JP,A)
【文献】特開2002-321683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M6/40-6/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車に用いられる制御装置であって、
電気モータを制御する制御部を含み、
前記制御部は、
所定要素のトルクに関するトルク情報に基づいて、前記電気モータの速度制御と前記電気モータのトルク制御とを切り替え、
前記トルク情報に関連する第2切替条件が成立する場合、前記トルク制御から前記速度制御に切り替え、
前記トルク情報に関連する前記第2切替条件は、前記トルクが第2所定トルク未満である場合に成立する、制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記トルク情報に関連する第1切替条件が成立する場合、前記速度制御から前記トルク制御に切り替える、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記トルク情報に関連する前記第1切替条件は、前記トルクが第1所定トルク以上である場合に成立する、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記所定要素は、前記人力駆動車の動力伝達系に含まれる、請求項1からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記所定要素は、前記電気モータ、減速機、クランク、チェーン、および、車輪のうちの少なくとも1つを含む、請求項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人力駆動車に搭載される電気モータを制御する制御装置が知られている。従来の制御装置は、人力駆動系に作用するトルクに応じて電気モータをトルク制御する。特許文献1は、従来の制御装置の一例を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-123984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気モータを好適に制御することが望まれる。
本発明の目的は、電気モータを好適に制御できる制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に従う制御装置は、電気モータを制御する制御部を含み、前記制御部は、所定要素の運動速度に関する速度情報、および、前記所定要素のトルクに関するトルク情報の少なくとも一方に基づいて、前記電気モータの速度制御と前記電気モータのトルク制御とを切り替える。
前記第1側面の制御装置によれば、電気モータの速度制御と電気モータのトルク制御とが切り替えられるため、電気モータを好適に制御できる。具体的には、速度情報およびトルク情報の少なくとも一方に応じた制御態様で電気モータが制御されるため、電気モータを好適に制御できる。
【0006】
前記第1側面に従う第2側面の制御装置において、前記制御部は、前記速度情報に関連する第1切替条件が成立する場合、前記速度制御から前記トルク制御に切り替える。
前記第2側面の制御装置によれば、電気モータを好適に制御できる。
【0007】
前記第2側面に従う第3側面の制御装置において、前記第1切替条件は、前記運動速度と第1所定速度との関係に基づいて規定される。
前記第3側面の制御装置によれば、電気モータの速度制御から電気モータのトルク制御に適切なタイミングで切り替えることができる。
【0008】
前記第3側面に従う第4側面の制御装置において、前記制御部は、前記運動速度が前記第1所定速度以上であることによって前記第1切替条件が成立する場合、前記速度制御から前記トルク制御に切り替える。
前記第4側面の制御装置によれば、電気モータの速度制御から電気モータのトルク制御に適切なタイミングで切り替えることができる。また、運動速度が第1所定速度未満の場合に電気モータが速度制御され、運動速度が第1所定速度以上の場合に電気モータがトルク制御されるため、電気モータを好適に制御できる。
【0009】
前記第4側面に従う第5側面の制御装置において、前記制御部は、前記第1切替条件が成立する場合、前記トルク制御に用いるトルク指令値として第1指令値を設定し、前記第1指令値を前記第1指令値とは異なる第2指令値に徐々に近づける。
前記第5側面の制御装置によれば、トルク指令値が急激に変化しないようにトルク指令値が設定されるため、電気モータを好適に制御できる。
【0010】
前記第5側面に従う第6側面の制御装置において、前記制御部は、前記第1指令値を第1フィルタに入力することによって前記第1指令値を前記第2指令値に徐々に近づける。
前記第6側面の制御装置によれば、電気モータを好適に制御できる。
【0011】
前記第5または第6側面に従う第7側面の制御装置において、前記制御部は、前記第1指令値と前記第2指令値との差の絶対値が第1所定差以下となった場合、前記トルク指令値として前記第2指令値を設定する。
前記第7側面の制御装置によれば、トルク指令値として第2指令値が設定される場合にトルク指令値が滑らかに変化するため、電気モータを好適に制御できる。
【0012】
前記第7側面に従う第8側面の制御装置において、前記第1所定差は、0である。
前記第8側面の制御装置によれば、電気モータを好適に制御できる。
【0013】
前記第5~第8側面のいずれか1つに従う第9側面の制御装置において、前記制御部は、人力駆動力に基づいて前記第2指令値を設定する。
前記第9側面の制御装置によれば、トルク指令値として第2指令値が設定される場合、人力駆動力に応じて電気モータがトルク制御されるため、電気モータを好適にトルク制御できる。
【0014】
前記第5~第9側面のいずれか1つに従う第10側面の制御装置において、前記制御部は、前記速度制御に用いる速度指令値に基づいて、前記第1指令値を算出する。
前記第10側面の制御装置によれば、第1指令値を適切に算出できる。
【0015】
前記第10側面に従う第11側面の制御装置において、前記制御部は、前記速度指令値として予め設定される第3指令値を設定する。
前記第11側面の制御装置によれば、速度指令値が安定するため、第1指令値を適切に算出できる。
【0016】
前記第1~第11側面のいずれか1つに従う第12側面の制御装置において、前記制御部は、前記速度情報に関連する第2切替条件が成立する場合、前記トルク制御から前記速度制御に切り替える。
前記第12側面の制御装置によれば、電気モータを好適に制御できる。
【0017】
前記第12側面に従う第13側面の制御装置において、前記第2切替条件は、前記運動速度と第2所定速度との関係に基づいて規定される。
前記第13側面の制御装置によれば、電気モータのトルク制御から電気モータの速度制御に適切なタイミングで切り替えることができる。
【0018】
前記第13側面に従う第14側面の制御装置において、前記制御部は、前記運動速度が前記第2所定速度未満であることによって前記第2切替条件が成立する場合、前記トルク制御から前記速度制御に切り替える。
前記第14側面の制御装置によれば、電気モータのトルク制御から電気モータの速度制御に適切なタイミングで切り替えることができる。また、運動速度が第1所定速度以上の場合に電気モータがトルク制御され、運動速度が第2所定速度未満の場合に電気モータが速度制御されるため、電気モータを好適に制御できる。
【0019】
前記第4~第11側面のいずれか1つに従う第15側面の制御装置において、前記制御部は、前記運動速度が前記第1所定速度よりも低い第2所定速度未満であることによって第2切替条件が成立する場合、前記トルク制御から前記速度制御に切り替える。
前記第15側面の制御装置によれば、電気モータのトルク制御から電気モータの速度制御に適切なタイミングで切り替えることができる。また、第2所定速度が第1所定速度よりも低いため、電気モータの速度制御と電気モータのトルク制御とを切り替える頻度を低下させることができる。
【0020】
前記第12~第15側面のいずれか1つに従う第16側面の制御装置において、前記制御部は、前記第2切替条件が成立する場合、前記速度制御に用いる速度指令値として第4指令値を設定し、前記第4指令値を前記第4指令値とは異なる第5指令値に徐々に近づける。
前記第16側面の制御装置によれば、速度指令値が急激に変化しないように速度指令値が設定されるため、電気モータを好適に制御できる。
【0021】
前記第16側面に従う第17側面の制御装置において、前記制御部は、前記第5指令値を第2フィルタに入力することによって前記第4指令値を前記第5指令値に徐々に近づける。
前記第17側面の制御装置によれば、電気モータを好適に制御できる。
【0022】
前記第16または第17側面に従う第18側面の制御装置において、前記制御部は、前記第4指令値と前記第5指令値との差の絶対値が第2所定差以下となった場合、前記速度指令値として前記第5指令値を設定する。
前記第18側面の制御装置によれば、速度指令値として第5指令値が設定される場合に速度指令値が滑らかに変化するため、電気モータを好適に制御できる。
【0023】
前記第18側面に従う第19側面の制御装置において、前記第2所定差は、0である。
前記第19側面の制御装置によれば、電気モータを好適に制御できる。
【0024】
前記第16~第19側面のいずれか1つに従う第20側面の制御装置において、前記制御部は、前記第5指令値として予め設定される第6指令値を設定する。
前記第20側面の制御装置によれば、速度指令値として第5指令値が設定される場合、予め設定される第6指令値に応じて電気モータが速度制御されるため、電気モータを好適に速度制御できる。
【0025】
前記第16~第20側面のいずれか1つに従う第21側面の制御装置において、前記制御部は、前記速度指令値の初期値として前記第4指令値を設定する。
前記第21側面の制御装置によれば、電気モータを好適に制御できる。
【0026】
前記第16~第21側面のいずれか1つに従う第22側面の制御装置において、前記制御部は、前記電気モータの回転速度に基づいて、前記第4指令値を算出する。
前記第22側面の制御装置によれば、第4指令値を適切に算出できる。
【0027】
前記第1~第22側面のいずれか1つに従う第23側面の制御装置において、前記所定要素は、人力駆動車の動力伝達系に含まれる。
前記第23側面の制御装置によれば、電気モータを好適に制御できる。
【0028】
前記第23側面に従う第24側面の制御装置において、前記所定要素は、前記電気モータ、減速機、クランク、チェーン、および、車輪のうちの少なくとも1つを含む。
前記第24側面の制御装置によれば、電気モータを好適に制御できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の制御装置によれば、電気モータを好適に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施形態の制御装置を含む人力駆動車の側面図。
図2図1の制御装置の具体的な構成を示すブロック図。
図3図1の電気モータに関する速度制御とトルク制御との関係を示すマップ。
図4図1の制御装置が実行する制御の一例を示すフローチャート。
図5図1の制御装置が実行する制御の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(実施形態)
図1を参照して、制御装置10を含む人力駆動車Aについて説明する。
ここで、人力駆動車は、走行のための原動力に関して、少なくとも部分的に人力を用いる車両を意味し、電動で人力を補助する車両を含む。人力以外の原動力のみを用いる車両は、人力駆動車には含まれない。特に、内燃機関のみを原動力に用いる車両は、人力駆動車には含まれない。通常、人力駆動車には、小型軽車両が想定され、公道での運転に免許を要しない車両が想定される。図示される人力駆動車Aは、電気エネルギーを用いて人力駆動車Aの推進を補助する電動補助ユニットEを含む自転車(e-bike)である。具体的には、図示される人力駆動車Aは、トレッキングバイクである。人力駆動車Aは、フレームA1、フロントフォークA2、ハンドルH、および、動力伝達系PSをさらに含む。動力伝達系PSは、例えば人力駆動車Aを走行させるための動力を伝達する各種の要素を含む。本実施形態では、動力伝達系PSは、ドライブトレインB、電動補助ユニットE、および、車輪Wを含む。車輪Wは、前輪WFおよび後輪WRを含む。
【0032】
ドライブトレインBは、チェーンドライブタイプに構成される。ドライブトレインBは、クランクC、フロントスプロケットD1、リアスプロケットD2、および、チェーンD3を含む。クランクCは、フレームA1に回転可能に支持されるクランク軸C1、および、クランク軸C1の両端部のそれぞれに設けられる一対のクランクアームC2を含む。各クランクアームC2の先端には、ペダルPDが回転可能に取り付けられる。なお、ドライブトレインBは、任意のタイプから選択でき、ベルトドライブタイプ、または、シャフトドライブタイプであってもよい。
【0033】
フロントスプロケットD1は、クランク軸C1と一体に回転するようにクランクCに設けられる。リアスプロケットD2は、後輪WRのハブHRに設けられる。チェーンD3は、フロントスプロケットD1およびリアスプロケットD2に巻き掛けられる。人力駆動車Aに搭乗するユーザによってペダルPDに加えられる人力駆動力は、フロントスプロケットD1、チェーンD3、および、リアスプロケットD2を介して後輪WRに伝達される。
【0034】
人力駆動車Aは、複数のコンポーネントCOをさらに含む。複数のコンポーネントCOは、制動装置BD、変速機T、サスペンションSU、アジャスタブルシートポストASP、および、電動補助ユニットEを含む。制動装置BD、変速機T、サスペンションSU、および、アジャスタブルシートポストASPは、対応する操作装置の操作に応じて機械的に駆動されてもよく、対応する操作装置の操作に応じて電気的に駆動されてもよい。複数のコンポーネントCOのうちの電気的に駆動される要素は、例えば人力駆動車Aに搭載されるバッテリBTから供給される電力、または、個々のコンポーネントCOに搭載される専用の電源(図示略)から供給される電力によって動作する。
【0035】
制動装置BDは、車輪の数に対応する制動装置BDを含む。本実施形態では、前輪WFに対応する制動装置BD、および、後輪WRに対応する制動装置BDが人力駆動車Aに設けられる。2つの制動装置BDは、互いに同じ構成を有する。制動装置BDは、例えば人力駆動車AのリムRを制動するリムブレーキ装置である。一例では、ブレーキレバーBL(操作装置)の操作に応じて、対応する制動装置BDが機械的または電気的に駆動される。なお、制動装置BDは、人力駆動車Aに搭載されるディスクブレーキロータ(図示略)を制動するディスクブレーキ装置であってもよい。
【0036】
変速機Tは、フロントディレーラTFおよびリアディレーラTRの少なくとも一方を含む。フロントディレーラTFは、フロントスプロケットD1付近に設けられる。フロントディレーラTFの駆動に伴って、チェーンD3が巻き掛けられるフロントスプロケットD1が変更され、人力駆動車Aの変速比が変更される。リアディレーラTRは、フレームA1のリアエンドA3に設けられる。リアディレーラTRの駆動に伴って、チェーンD3が巻き掛けられるリアスプロケットD2が変更され、人力駆動車Aの変速比が変更される。
【0037】
サスペンションSUは、フロントサスペンションSFおよびリアサスペンション(図示略)の少なくとも一方を含む。フロントサスペンションSFは、前輪WFが地面から受ける衝撃が緩和されるように動作する。リアサスペンションは、後輪WRが地面から受ける衝撃が緩和されるように動作する。アジャスタブルシートポストASPは、フレームA1に対するサドルSの高さが変更されるように動作する。
【0038】
電動補助ユニットEは、人力駆動車Aの推進力がアシストされるように動作する。電動補助ユニットEは、例えばペダルPDに加えられる人力駆動力に応じて動作する。電動補助ユニットEは、電気モータE1、減速機E2、および、ハウジングE3を含む。電気モータE1および減速機E2は、ハウジングE3内に収容される。電気モータE1の駆動力は、例えば減速機E2等を介してドライブトレインBに伝達される。一例では、電気モータE1の駆動力は、クランク軸C1またはフロントスプロケットD1に伝達される。電動補助ユニットEは、例えば人力駆動車Aに搭載されるサイクルコンピュータSCの操作に応じて駆動される。なお、電動補助ユニットEは、人力駆動車Aに搭載される操作装置(図示略)の操作に応じて動作するように構成されてもよい。
【0039】
図2を参照して、制御装置10の構成について説明する。
制御装置10は、電動補助ユニットEのハウジングE3内に収容される(図1参照)。制御装置10は、電気モータE1を制御する制御部12を含む。制御部12は、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)である。制御部12は、電気モータE1の速度制御およびトルク制御を実行する。なお、制御部12は、電気モータE1を含む電動補助ユニットEに加えて、電気的に駆動される各種のコンポーネントCOを制御してもよい。
【0040】
制御部12は、所定要素GEの運動速度に関する速度情報、および、所定要素GEのトルクに関するトルク情報の少なくとも一方に基づいて、電気モータE1の速度制御と電気モータE1のトルク制御とを切り替える。所定要素GEは、人力駆動車Aの動力伝達系PSに含まれる。所定要素GEは、電気モータE1、減速機E2、クランクC、チェーンD3、および、車輪Wの少なくとも1つを含む。本実施形態では、所定要素GEは、電気モータE1を含む。一例では、運動速度は、電気モータE1の回転速度である。人力駆動車Aには、例えば電気モータE1の回転速度を検出する回転速度センサSSが搭載される。
【0041】
図3に示されるように、制御部12は、速度制御に関連する第1切替条件が成立する場合、速度制御からトルク制御に切り替える。第1切替条件は、運動速度と第1所定速度TS1との関係に基づいて規定される。第1所定速度TS1は、例えば運動速度と人力駆動車Aの車速との関係に応じて予め設定される。一例では、人力駆動車Aの車速が時速1~2kmとなる運動速度の値を、第1所定速度TS1として予め設定する。制御部12は、運動速度が第1所定速度TS1以上であることによって第1切替条件が成立する場合、速度制御からトルク制御に切り替える。具体的には、制御部12は、運動速度が第1所定速度TS1未満の状態から第1所定速度TS1以上の状態に変化することによって第1切替条件が成立すると判定し、速度制御からトルク制御に切り替える。
【0042】
図2に示されるように、制御装置10は、第1フィルタ14、第2フィルタ16、速度制御系20、トルク制御系30、および、ブリッジ回路40をさらに含む。速度制御系20は、例えば第1差分演算部22および速度調節器24の少なくとも一方を含む。トルク制御系30は、例えば指令切替部32、電流指令演算部34、第2差分演算部36、および、電流調節器38の少なくとも1つを含む。一例では、速度制御系20、トルク制御系30、および、ブリッジ回路40は、制御部12に含まれる。
【0043】
第1フィルタ14は、例えば速度制御系20とトルク制御系30との間に設けられる。一例では、第1フィルタ14はアクティブフィルタである。一例では、第1フィルタ14はローパスフィルタである。一例では、第1フィルタ14は平滑化フィルタである。一例では、第1フィルタ14は移動平均フィルタである。第1フィルタ14は、デジタルフィルタまたはアナログフィルタであってもよい。
【0044】
第2フィルタ16は、例えば速度制御系20の手前に設けられる。一例では、第2フィルタ16はアクティブフィルタである。一例では、第2フィルタ16はローパスフィルタである。一例では、第2フィルタ16は平滑化フィルタである。一例では、第2フィルタ16は移動平均フィルタである。第2フィルタ16は、デジタルフィルタまたはアナログフィルタであってもよい。なお、制御装置10は、第1フィルタ14および第2フィルタ16の少なくとも一方を省略してもよい。
【0045】
制御部12は、第1切替条件が成立する場合、トルク制御に用いるトルク指令値として第1指令値V1を設定し、第1指令値V1を第1指令値V1とは異なる第2指令値V2に徐々に近づける。一例では、制御部12は、第1指令値V1を第1フィルタ14に入力することによって第1指令値V1を第2指令値V2に徐々に近づける。具体的には、制御部12は、第1指令値V1を第2指令値V2に近づける処理を実行する際に、第1フィルタ14を介することによって第1指令値V1を第2指令値V2に徐々に近づける。すなわち、制御部12は、第1指令値V1に関する情報を含む信号のフィルタ処理を実行することによって、第1指令値V1を第2指令値V2に徐々に近づける。このため、速度制御からトルク制御に切り替える場合において、トルク指令値の急峻な変化を緩和できる。
【0046】
制御部12は、速度制御に用いる速度指令値に基づいて、第1指令値V1を算出する。制御部12は、速度指令値として予め設定される第3指令値V3を設定する。第3指令値V3は、例えば人力駆動車Aの車速が所定車速となる電気モータE1の回転速度に応じて予め設定される。すなわち、速度指令値は、予め設定される固定値である。一例では、制御部12は、速度指令値である第3指令値V3と、回転速度センサSSによって検出される電気モータE1の回転速度との差分を第1差分演算部22によって演算する。そして、演出された差分に基づく値が、速度調節器24によってトルク指令値である第1指令値V1に換算されることで、第1指令値V1が算出される。なお、制御部12は、速度指令値に基づいて第1指令値V1を生成するように算出してもよい。以下に記載される「算出」は、上述のように「生成」の意味を含む。
【0047】
制御部12は、例えば第1切替条件が成立するまでは、電気モータE1の回転速度を第3指令値V3に近づける処理を実行する。一例では、制御部12は、速度調節器24によって生成された第1指令値V1を、速度調節器24の積分バッファにプリセットする。制御部12は、速度調節器24によって第1指令値V1が生成されるまでは、電気モータE1の回転速度を速度調節器24の積分バッファにプリセットする。積分バッファにプリセットされる値は、一般的なPI(Proportional Integral)制御に用いられる。
【0048】
電気モータE1の回転速度と第3指令値V3と差分が大きい状態で、電気モータE1の回転速度を第3指令値V3に近づける処理を実行する場合に生じるショックを抑制するために、第1差分演算部22にて差分の演算を実行する前に第2フィルタ16を介した処理を実行する。具体的には、制御部12は、電気モータE1の回転速度を初期速度指令値として設定し、初期速度指令値を第3指令値V3に近づける処理を実行する。ここで、第2フィルタ16を介さない場合には、電気モータE1の回転速度を第3指令値V3に急速に近づける処理を実行することとなり、ショックが発生する場合がある。したがって、第3指令値V3をフィルタ処理によって電気モータE1の回転速度に近い値に変更することで、電気モータE1の回転速度の変化率を、フィルタ処理を実行しない場合に比べて小さくすることができる。一方、第3指令値V3にフィルタ処理を実行することで、電気モータE1の回転速度の急峻な変化を緩和することができるが、1度の処理で電気モータE1の回転速度が第3指令値V3に到達できない場合がある。このため、電気モータE1の回転速度が第3指令値V3に到達するまで、電気モータE1の回転速度に応じてフィルタ処理を実行する。これにより、電気モータE1の回転速度を第3指令値V3に徐々に近づけることができ、電気モータE1の回転速度の急峻な変化を緩和することができる。
【0049】
制御部12は、例えば第1切替条件が成立するまで、電気モータE1の回転速度が第3指令値V3に近づくように制御する。具体的には、制御部12は、電気モータE1の回転速度を、第2フィルタ16を介して第3指令値V3に近づけるために、第3指令値V3に第2フィルタ16を介した値と電気モータE1の回転速度との差分を第1差分演算部22にて算出し、第1差分演算部22で算出した値を速度調節器24にて処理することで、トルク指令値である第1指令値V1を生成する。制御部12は、第1切替条件が成立していない場合には、トルク制御系30の第1指令値V1に基づいて電流指令演算部34にて電流値を生成する。制御部12は、第1指令値V1に基づいて生成された電流値と、ブリッジ回路40に流れる電流値との差分を第2差分演算部36にて算出し、算出した差分に応じて電流調節器38にて電流指令値を生成する。このとき、制御部12は、ブリッジ回路40の電流値を電流調節器38の積分バッファにプリセットする。一例では、制御部12は、電流指令値が生成されるまで電気モータE1の出力トルク値を電流調節器38の積分バッファにプリセットし、電流指令値が生成された後は前回制御時に生成した電流指令値を電流調節器38の積分バッファにプリセットする。
【0050】
制御部12は、第1切替条件が成立するまで、速度制御系20およびトルク制御系30の両方を用いた制御を実行するため、電気モータE1の回転速度を初期速度指令値に再度設定し、電気モータE1の回転速度を第3指令値V3に近づける処理を繰り返す。制御部12は、第1切替条件が成立した場合、速度制御系20での制御を実行せずにトルク制御系30のみで制御する。一例では、制御部12は、第1切替条件が成立した場合、速度制御系20で生成された第1指令値V1を、トルク制御系30にて第2指令値V2に近づける処理を実行する。
【0051】
第1指令値V1と第2指令値V2との値の差が大きい状態では、速度制御とトルク制御とを切り替える場合に急峻なトルクの変化が生じることとなり、ショックが生じる。このショックを抑制するために、トルク制御系30で第1指令値V1を第2指令値V2に切り替える際に第1フィルタ14を介した処理を実行する。具体的には、制御部12は、第1指令値V1を初期トルク指令値として設定し、初期トルク指令値に対してフィルタ処理を実行し、初期トルク指令値を第2指令値V2に徐々に近づける処理を実行する。
【0052】
制御部12は、人力駆動力に基づいて第2指令値V2を設定する。一例では、第2指令値V2は、ペダルPDに加えられるトルクである。制御部12は、電気モータE1の出力トルク値がペダルPDに加えられる人力駆動力に対して所定比率となるように第2指令値V2を設定する。所定比率は、予め設定された比率であってもよい。複数の所定比率を任意に選択できるように設定してもよい。
【0053】
制御部12は、第1切替条件が成立する場合、速度制御系20を用いずにトルク制御系30のみで電気モータE1を制御する。トルク制御系30で第1指令値V1を第2指令値V2に追従させる処理を実行する際に第1フィルタ14を用いることで、第1指令値V1から第2指令値V2への急峻な変化を緩和することができる。
【0054】
第1フィルタ14は、第1指令値V1と第2指令値V2との差の絶対値(以下、「第1指令値差」)を近づける処理を実行する際に、急峻な変化を緩和し、第1指令値差を徐々に第1所定差以下にするために用いられる。具体的には、指令切替部32よりも前の段階、または、指令切替部32にて、第1指令値V1が第2指令値V2に徐々に追従するように第1指令値V1に対してフィルタ処理を実行し、第1指令値V1を段階的に第2指令値V2に近づける。制御部12は、第1指令値V1を第2指令値V2に段階的に近づける間に出力される第1指令値V1に基づいて、電流指令演算部34にて電気モータE1をトルク制御する。このため、第1指令値V1が第1フィルタ14を介して第2指令値V2に徐々に近づくタイミングで、電気モータE1の出力トルク値も第1指令値V1に基づく出力トルク値から第2指令値V2に基づく出力トルク値に徐々に変化する。
【0055】
制御部12は、第1指令値V1が第2指令値V2に到達すると、指令切替部32にてトルク指令値を第1指令値V1から第2指令値V2に切り替える。制御部12は、第2指令値V2をトルク指令値としてセットした後に、第2指令値V2を電流指令演算部34にて電流指令演算を実行し、第2指令値V2を第7指令値V7に換算する。制御部12は、第2差分演算部36にて第7指令値V7とブリッジ回路40に流れる電流値との差分を演算し、第7指令値V7と電流値との差分に応じた値に基づいて電流調節器38にてPI制御を実行することで、電流指令値または電圧指令値である第8指令値V8を生成する。制御部12は、電流調節器38にてPI制御を実行する際に、第8指令値V8が既に算出されていれば、第8指令値V8を電流調節器38の積分バッファにプリセットする。一方、制御部12は、第8指令値V8が算出されていない場合は、ブリッジ回路40に流れる電流値を電流調節器38の積分バッファにプリセットする。なお、ブリッジ回路40は、制御部12に含まれない構成であってもよい。
【0056】
制御部12は、電流調節器38の積分バッファにプリセットする値として、第8指令値V8が生成されていないときは、ブリッジ回路40に流れる電流値を積分バッファにプリセットする。電流調節器は、積分バッファにプリセットされた電流値と、第2差分演算部36にて算出される第7指令値V7と電流値との差分とに基づいて第8指令値V8を生成する。制御部12は、電流調節器38によって生成された第8指令値V8を電流調節器38の積分バッファにプリセットすることで、それ以降の電流調節器38で第8指令値V8を生成する際には、第8指令値V8が積分バッファにプリセットされた状態で、電流指令演算部34にて換算された第7指令値V7を入力することで新たな第8指令値V8を生成する。
【0057】
制御部12は、第2切替条件が成立する場合、トルク制御系30および速度制御系20の両方を用いて電気モータE1を制御する。制御部12は、速度指令値の初期値として第4指令値V4(電気モータEの回転速度)を設定する。一例では、制御部12は、第2切替条件が成立する場合、初期速度指令値として第4指令値V4をセットし、第5指令値V5に近づける。制御部12は、第4指令値V4を第5指令値V5に近づける処理において、第1差分演算部22にて第5指令値V5と第4指令値V4の差分を算出する。このとき、第1差分演算部22よりも前の段階で第2フィルタ16を介することで、急峻な出力の変化を緩和することができる。
【0058】
制御部12は、第4指令値V4と第5指令値V5との差分を第1差分演算部22で算出し、差分に応じたトルク指令値である第1指令値V1を速度調節器24にて生成する。このとき、制御部12は、電気モータE1の回転速度を速度調節器24の積分バッファにプリセットする。積分バッファにプリセットされる値は、第1指令値V1の生成時に第1指令値V1を電気モータE1の回転速度に置き換えてプリセットするため、過去に第1指令値V1を生成している場合には、前回生成された第1指令値V1が積分バッファにプリセットされた状態で速度調節器24にて新たな第1指令値V1が生成される。
【0059】
第4指令値V4が第5指令値V5に追従するまでは、トルク制御系30で第1指令値V1を第2指令値V2に追従させる制御を実行しなくてもよい。この場合、制御部12は、第1指令値V1を電流指令演算部34にて電流指令値である第7指令値V7に換算する。制御部12は、第7指令値V7と、ブリッジ回路40に流れる電気モータE1の回転速度との差分を第2差分演算部36にて算出し、差分に応じて電流調節器38にて第8指令値V8を生成する。
【0060】
制御部12は、第8指令値V8に基づいて電気モータE1に電流を出力する。制御部12は、回転速度センサSSによって検出される電気モータE1の回転速度と第5指令値V5とに差がある場合、電気モータE1の回転速度を速度指令値として再度設定し、電気モータE1の回転速度を第5指令値V5に近づける処理を繰り返す。制御部12は、第1切替条件が成立するまでは、第1指令値V1を第2指令値V2に追従させる処理を実行しない。
【0061】
制御部12は、第1切替条件が成立すると第1指令値V1が第2指令値V2に追従するように処理を実行する。一例では、制御部12は、第1指令値V1と第2指令値V2との差の絶対値(第1指令値差)が第1所定差以下となった場合、トルク指令値として第2指令値V2を設定する。具体的には、制御部12は、第1指令値差が第1所定差以下の場合、トルク指令値として第2指令値V2を設定する。第1所定差は、0である。第1所定差は、0および0付近の値を含んでいてもよい。制御部12は、第1切替条件が成立し、トルク指令値として第1指令値V1を設定する前に第1指令値差が第1所定差以下であると判定した場合、トルク指令値として第2指令値V2を設定してもよい。
【0062】
図3に示されるように、制御部12は、速度制御に関連する第2切替条件が成立する場合、トルク制御から速度制御に切り替える。第2切替条件は、運動速度と第2所定速度TS2との関係に基づいて規定される。第2所定速度TS2は、例えば運動速度と人力駆動車Aの車速との関係に応じて予め設定される。第2所定速度TS2は、電気モータE1の所定の回転速度であってもよい。一例では、第2所定速度TS2は、人力駆動車Aの車速が第1所定速度TS1に応じた車速よりも低い車速となる運動速度に予め設定される。すなわち、第1所定速度TS1および第2所定速度TS2は、ヒステリシス特性を有する。制御部12は、運動速度が第2所定速度TS2未満であることによって第2切替条件が成立する場合、トルク制御から速度制御に切り替える。一例では、制御部12は、運動速度が第1所定速度TS1よりも低い第2所定速度TS2未満であることによって第2切替条件が成立する場合、トルク制御から速度制御に切り替える。具体的には、制御部12は、運動速度が第2所定速度TS2以上の状態から第2所定速度TS2未満の状態に変化することによって第2切替条件が成立すると判定し、トルク制御から速度制御に切り替える。第2所定速度TS2は、第1所定速度TS1と同じ速度であってもよい。運動速度が第2所定速度TS2未満である場合であっても、前回トルク制御をしていない場合は第2切替条件を満たさない。
【0063】
図2に示されるように、制御部12は、第2切替条件が成立する場合、速度制御に用いる速度指令値として第4指令値V4を設定し、第4指令値V4を第4指令値V4とは異なる第5指令値V5に徐々に近づける。一例では、制御部12は、第5指令値V5を第2フィルタ16に入力することによって第4指令値V4を第5指令値V5に徐々に近づける。具体的には、制御部12は、第4指令値V4を第5指令値V5に近づける処理を実行する際に、第2フィルタ16を介することによって第4指令値V4を第5指令値V5に徐々に近づける。すなわち、制御部12は、第4指令値V4に関する情報を含む信号のフィルタ処理を実行することによって、第4指令値V4を第5指令値V5に徐々に近づける。このため、トルク制御から速度制御に切り替える場合において、速度指令値の急峻な変化を緩和できる。
【0064】
制御部12は、電気モータE1の回転速度に基づいて、第4指令値V4を算出する。第4指令値V4は、回転速度センサSSによって検出される電気モータE1の回転速度を用いてもよい。一例では、第4指令値V4は、電気モータE1の回転速度である。制御部12は、第5指令値V5として予め設定される第6指令値V6を設定する。第6指令値V6は、例えば人力駆動車Aの車速が所定車速となる電気モータE1の回転速度に応じて予め設定される。すなわち、第5指令値V5は、予め設定される固定値である。本実施形態では、第6指令値V6は、第3指令値V3と同じである。なお、制御部12は、第5指令値V5として第6指令値V6とは異なる固定値を設定してもよい。
【0065】
制御部12は、第2切替条件が成立する場合、第2切替条件が成立した時点での電気モータE1の回転速度を検出し、または、トルク指令値に基づいて電気モータE1の回転速度を算出し、電気モータE1の回転速度を第4指令値V4として設定する。一例では、制御部12は、第4指令値V4を速度調節器24の積分バッファにプリセットする。制御部12は、速度調節器24に第5指令値V5を入力する。この処理では、制御部12は、速度指令値のPI制御を実行する。
【0066】
制御部12は、第4指令値V4と第5指令値V5との差の絶対値(以下、「第2指令値差」)が第2所定差以下となった場合、速度指令値として第5指令値V5を設定する。第2所定差は、0である。第2所定差は、0および0付近の値を含んでいてもよい。具体的には、制御部12は第2指令値差が第2所定差以下となるように速度制御系20およびトルク制御系30で制御する。そして、制御部12は、速度指令値に応じて電気モータE1を速度制御する。なお、制御部12は、第2切替条件が成立し、速度指令値として第4指令値V4を設定する前に第2指令値差が第2所定差以下であると判定した場合、速度指令値として第5指令値V5を設定してもよい。
【0067】
制御装置10は、情報を記憶する記憶部(図示略)をさらに含む。記憶部は、不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。記憶部は、例えば制御のための各種プログラム、および、予め設定される情報等を記憶する。一例では、記憶部は、電気モータE1の速度制御と電気モータE1のトルク制御とを切り替えるための各種の条件に関する情報等を記憶する。
【0068】
図4および図5を参照して、制御装置10が実行する制御の一例について説明する。
制御部12は、例えば電動補助ユニットEが駆動されることによって以下の制御を実行する。制御部12は、ステップS10において、人力駆動車Aに搭乗するユーザがペダリング中か否かを判定する。具体的には、制御部12は、人力駆動車AのクランクCが回転しているか否かを判定する。制御部12は、ステップS10において、ペダリング中であると判定した場合、ステップS11の処理に移行する。
【0069】
制御部12は、ステップS11において、電気モータE1の回転速度が第2所定速度TS2未満か否かを判定する。制御部12は、ステップS11において、電気モータE1の回転速度が第2所定速度TS2以上であると判定した場合、ステップS12の処理に移行する。制御部12は、ステップS12において、電気モータE1の回転速度が第1所定速度TS1以上か否かを判定する。制御部12は、ステップS12において、電気モータE1の回転速度が第1所定速度TS1以上であると判定した場合、ステップS13の処理に移行する。一方、制御部12は、ステップS12において、電気モータE1の回転速度が第1所定速度TS1未満であると判定した場合、ステップS14の処理に移行する。
【0070】
制御部12は、ステップS13およびステップS14において、電気モータE1を前回トルク制御していたか否かを判定する。制御部12は、ステップS13において、電気モータE1を前回トルク制御していないと判定した場合、ステップS15の処理に移行する。すなわち、制御部12は、電気モータE1を前回速度制御していたと判定した場合、ステップS15の処理に移行する。制御部12は、ステップS15において、トルク指令値の初期値として第1指令値V1を設定する。制御部12は、ステップS13およびステップS14において、電気モータE1を前回トルク制御していたと判定した場合、ステップS16の処理に移行する。すなわち、制御部12は、既にトルク制御中の場合にステップS16の処理に移行する。制御部12は、ステップS14において、電気モータE1を前回トルク制御していないと判定した場合、ステップS23の処理に移行する。
【0071】
制御部12は、ステップS16において、第1指令値差が第1所定差以下か否かを判定する。制御部12は、ステップS16において、第1指令値差が第1所定差よりも大きいと判定した場合、ステップS17の処理に移行する。制御部12は、ステップS17において、トルク指令値に対してフィルタ処理を実行する。具体的には、制御部12は、第1指令値V1が第2指令値V2に追従するように第1指令値V1を第1フィルタ14に入力する。制御部12は、ステップS17の処理を終えると、ステップS16に処理を戻す。制御部12は、ステップS16において、第1指令値差が第1所定差以下であると判定した場合、ステップS18の処理に移行する。制御部12は、ステップS18において、トルク指令値として第2指令値V2を設定する。制御部12は、ステップS19において、トルク制御系30のみを用いて電気モータE1をトルク制御する。
【0072】
制御部12は、ステップS11において、電気モータE1の回転速度が第2所定速度TS2未満であると判定した場合、ステップS20の処理に移行する。制御部12は、ステップS20において、ステップS13およびステップS14と実質的に同じ処理を実行する。制御部12は、ステップS20において、電気モータE1を前回トルク制御していたと判定した場合、ステップS21の処理に移行する。制御部12は、ステップS21において、電気モータE1の回転速度を速度調節器24の積分バッファにプリセットする。制御部12は、ステップS22において、速度指令値の初期値として第4指令値V4を設定する。制御部12は、ステップS20において、電気モータE1の回転速度を前回トルク制御していないと判定した場合、ステップS23の処理に移行する。
【0073】
制御部12は、ステップS23において、第2指令値差が第2所定差以下か否かを判定する。制御部12は、ステップS23において、第2指令値差が第2所定差よりも大きいと判定した場合、ステップS24の処理に移行する。制御部12は、ステップS24において、速度指令値に対してフィルタ処理を実行する。具体的には、制御部12は、第4指令値V4が第5指令値V5に追従するように第5指令値V5を第2フィルタ16に入力する。制御部12は、ステップS24の処理を終えると、ステップS23に処理を戻す。制御部12は、ステップS23において、第2指令値差が第2所定差以下であると判定した場合、ステップS25の処理に移行する。制御部12は、ステップS25において、速度指令値として第5指令値V5を設定する。制御部12は、ステップS26において、速度制御系20およびトルク制御系30の両方を用いて電気モータE1を速度制御する。制御部12は、ステップS10において、ペダリング中でないと判定した場合、ステップS27の処理に移行する。制御部12は、ステップS27において、電気モータE1の駆動を停止させる。すなわち、制御部12は、電気モータE1への電力供給を停止させる。
【0074】
以上のように、制御部12は、運動速度が相対的に低い場合に電気モータE1が速度制御され、運動速度が相対的に高い場合に電気モータE1がトルク制御されるように、電気モータE1の速度制御と電気モータE1のトルク制御とを切り替える。一例では、制御部12は、人力駆動車Aが上り坂を走行する状態において、人力駆動力の低下を要因として電気モータE1の回転速度が低下した場合、トルク制御から速度制御に切り替える。このため、上り坂の影響によって人力駆動力が低下する場合においても電気モータE1を好適に制御でき、人力駆動車Aが後退しないように上り坂を走行することに貢献できる。
【0075】
(変形例)
上記実施形態に関する説明は、本発明に従う制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う制御装置は、例えば以下に示される上記実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0076】
・制御部12の制御内容は、任意に変更可能である。第1例では、制御部12は、図4および図5に示される処理において、ステップS16を省略した制御を実行する。この場合、制御部12は、ステップS17の処理の後にステップS18の処理を実行してもよく、ステップS17の処理を省略してステップS18の処理のみを実行してもよい。第2例では、制御部12は、図4および図5に示される処理において、ステップS23の処理を省略した制御を実行する。この場合、制御部12は、ステップS24の処理の後にステップS25の処理を実行してもよく、ステップS24の処理を省略してステップS25の処理のみを実行してもよい。第3例では、制御部12は、ステップS13の次のステップで第1指令値差を判定してもよい(ステップS16)。すなわち、制御部12は、第1指令値差が第1所定差以下の場合には、第2指令値V2を初期トルク指令値として設定する。第4例では、制御部12は、トルク制御から速度制御に切り替えた後の速度制御系での制御において、ステップS20の次のステップで第2指令値差を判定してもよい(ステップS23)。すなわち、制御部12は、第2指令差が第2所定差以下の場合には、第5指令値V5を初期速度指令値として設定する。
【0077】
第5例では、制御部12は、第1切替条件が成立した後に、第1指令値V1を第2指令値V2に追従させる制御を実行し、電気モータE1の回転速度が所定回転速度に達した場合、電気モータE1の回転回数が電気モータE1の駆動を開始したとき、または、トルク制御から速度制御に切り替わったときから所定回数に達した場合、第1切替条件が成立してから所定時間経過した場合、人力駆動車Aの車輪Wが所定回数以上回転した場合、人力駆動車AのクランクCが所定回数以上回転した場合、ならびに、人力駆動車Aが所定距離走行した場合の少なくとも1つに応じて、第1所定差に大小に関わらず速度制御からトルク制御に切り替える。すなわち、制御部12は、速度制御系20を用いずにトルク制御系30のみで電気モータE1を制御してもよい。
【0078】
第6例では、制御部12は、電気モータE1を速度制御している場合に、人力駆動車Aの車輪Wが所定角度以上の回転した場合、人力駆動車AのクランクCが所定角度以上回転した場合、および、電気モータE1が所定角度以上回転した場合の少なくとも1つに応じで、電気モータE1を速度制御からトルク制御に切り替える。
【0079】
第7例では、制御部12は、第1指令値差が第1所定差以下の場合には、第1指令値V1を第2指令値V2に追従、または、置き換えることなく、第1指令値V1に応じて電気モータE1を制御する。すなわち、制御部12は、第1指令値差が第1所定差以下の場合、第1指令値V1をトルク指令値としてセットし、トルク制御系30にて制御する。第8例では、制御部12は、第2指令値差が第2所定差以下の場合には、第4指令値V4を第5指令値V5に追従、または、置き換えることなく、第4指令値V4に応じて電気モータE1を制御する。
【0080】
・第1切替条件の内容は、任意に変更可能である。一例では、第1切替条件は、所定要素GEのトルクと第1所定トルクとの関係に基づいて規定される。制御部12は、所定要素GEのトルクが第1所定トルク以上であることによって第1切替条件が成立する場合、速度制御からトルク制御に切り替える。なお、制御部12は、第1切替条件が成立する場合にトルク制御から速度制御に切り替えてもよい。
【0081】
・第2切替条件の内容は、任意に変更可能である。一例では、第2切替条件は、所定要素GEのトルクと第2所定トルクとの関係に基づいて規定される。制御部12は、所定要素GEのトルクが第2所定トルク未満であることによって第2切替条件が成立する場合、トルク制御から速度制御に切り替える。なお、制御部12は、第2切替条件が成立する場合に速度制御からトルク制御に切り替えてもよい。
【0082】
・人力駆動車Aの種類は、任意に変更可能である。第1例では、人力駆動車Aは、ロードバイク、マウンテンバイク、クロスバイク、シティサイクル、カーゴバイク、または、リカンベントである。第2例では、人力駆動車Aは、キックスケータである。
【符号の説明】
【0083】
10…制御装置、12…制御部、14…第1フィルタ、16…第2フィルタ、A…人力駆動車、C…クランク、D3…チェーン、E1…電気モータ、E2…減速機、GE…所定要素、PS…動力伝達系、TS1…第1所定速度、TS2…第2所定速度、V1…第1指令値、V2…第2指令値、V3…第3指令値、V4…第4指令値、V5…第5指令値、V6…第6指令値、W…車輪。
図1
図2
図3
図4
図5