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特許7405508二次ピストンラチェットクリップを有する可変力テンショナ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】二次ピストンラチェットクリップを有する可変力テンショナ
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/08 20060101AFI20231219BHJP
   F02B 67/06 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
F16H7/08 B
F02B67/06 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019006765
(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公開番号】P2019132429
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】62/624,241
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】キース・ビー・コブ
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・ビー・トッド
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ジー・ウィリアムソン
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-509187(JP,A)
【文献】特開2006-009909(JP,A)
【文献】国際公開第2014/137681(WO,A1)
【文献】特表2016-509185(JP,A)
【文献】特開2004-353758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/08
F02B 67/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェーンまたはベルトのスパンに張力を加えるための受動テンショナシステムのノイズを減少させる方法であって、前記受動テンショナシステムは、
前記チェーンまたはベルトが摺動する第1摺動表面、前記第1摺動表面の反対側の第2表面、および外部スプリングを受容するための空洞部を含むテンショナアーム本体を含む、テンショナアーム、および
テンショナを含み、当該テンショナは、
第1流体入力部を有する第1軸方向に延びるボアおよび第2流体入力部を有する第2軸方向に延びるボアを有するハウジング、
前記第1軸方向に延びるボアによって摺動可能に受容される第1ピストンであって、前記第1ピストンと前記第1軸方向に延びるボアとの間の前記第1流体入力部と流体連通する第1圧力チャンバを形成し、前記第1ピストンが第1端部および第2端部を有する本体を含む、第1ピストン、
前記第1ピストンと前記第1軸方向に延びるボアとの間で前記第1圧力チャンバ内に受容され、前記第1ピストンを前記ハウジングから離れる方向に付勢する、第1ピストンスプリング、
前記第2軸方向に延びるボア内に摺動可能に受容され、第2ピストン本体を備える第2ピストンであって、前記第2ピストン本体は、
開口端部、
閉鎖端部、
開口端部における底面、
閉端端部における上面、
前記第2ピストン本体の開口端部と閉鎖端部との間の外周部に沿って長さを延長する一連の溝を有する外周部、および
内径を有する中空内部、
第2ピストンの内径と第2軸方向に延びるボアとの間に定義される第2圧力チャンバを形成する前記第2軸方向に延びるボアであって、逆止弁を介して第2流体入力部と流体連通する、第2軸方向に延びるボア、
第2圧力チャンバ内の第2ピストンスプリングであって、前記第2ピストンスプリングが第2ピストンと接触する第1端部および第2軸方向に延びるボアの底部と接触する第2端部を有し、第2ピストンをハウジングから離れる方向に付勢する、第2ピストンスプリング、
前記第2ピストン上に一連の溝を系合する拡張可能なクリップを含み、
前記方法は、
前記第2圧力チャンバ内の流体入力圧力はエンジン故障時またはエンジン始動中に閾値量未満であることを決定すること、
前記第2ピストンが軸方向に延在する第2ボアの底部に衝突するのを防止するように、前記第2ピストンの外周上の拡張可能なクリップに係合し、エンジン故障時またはエンジン始動中の前記受動テンショナシステムのノイズを減少させること、
を備える前記方法。
【請求項2】
前記受動テンショナシステムの前記第2ピストンの前記外周にある一連の溝の1つがストップ溝である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記受動テンショナシステムの前記第1流体入力部が前記受動テンショナシステムの前記第2流体入力部に連結されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記受動テンショナシステムの前記第1ピストンスプリングが前記第2ピストンスプリングよりも大きな剛性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記チェーンまたはベルトからの動的負荷が前記第1ピストンおよび前記第2ピストンを前記ハウジングから内側および外側に動かすとき、第2流体入力からの流体は、前記第2ピストンが第2ピストンばねによって前記ハウジングから外側に移動されるように、前記逆止弁を通って前記第2圧力チャンバに引き込まれ、前記第2ピストンが内側に移動するように前記第2圧力チャンバ内に流体圧力を生成し、前記第2ピストンが前記テンショナアームの外部ばねに外向きの力を加えるようにし、前記テンショナアームからの動的荷重の内向きの力に対抗する、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、「二次ピストンラチェットクリップを有する可変力テンショナ」という名称で2018年1月31日付で出願された米国仮特許出願第62/624,241号に開示されている1つ以上の発明を請求する。米国仮特許出願の35USC§119(e)による利益を主張し、上記出願は、本明細書に参考に組み込まれる。
【0002】
本発明は、油圧式テンショナの分野に関する。より詳細には、本発明は、ハウジングの第2ボア内でスプリング力制御を有するテンショナに関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、内燃機関エンジンのバルブ駆動用タイミングチェーン、カムシャフト-カムシャフト駆動用カムシャフトチェーンおよびバランサーチェーンにおいて、テンショナは、チェーンの弛み側に使用され、チェーンの弛みを除去し、チェーンに張力を加える。
【0004】
作動中、テンショナのピストンは、チェーンに対してテンショナアームまたはシューなどの摺動表面を加圧し、チェーン内の張力を維持する。チェーン駆動の共振によって作動中にチェーンの動的張力が増加すると、チェーンからの動的荷重がテンショナのピストンに作用し、チェーン内の張力を維持するためにテンショナがポンプアップ(pump up)することによってピストンが延長する。
【0005】
チェーン駆動テンショナスプリング力は、正常作動条件で高すぎる場合が多いが、これは、スプリング力がテンショナシステムの最悪の場合の作動条件に対処するのに十分である必要があるからである。テンショナの有効性および全般的なシステムの挙動、ならびに効率は、テンショナスプリング力がチェーンの寿命中にチェーンに発生する摩耗および伸長を考慮し、作動条件によって変更できる場合に、向上され得る。
【0006】
図1図3は、従来技術の二重油圧式テンショナを示す。テンショナは、テンショナアームまたはシュー402を介してチェーンまたはベルト(図示せず)に張力を加える。テンショナアーム402は、チェーンまたはベルトと接触する第1摺動表面402bおよび第1摺動表面402bの反対側の第2表面402aを有する。
【0007】
テンショナは、第2軸方向に延びるボア102cと平行な第1軸方向に延びるボア102aを有するハウジング102を含む。第1軸方向に延びるボア102a内に摺動可能に受容されるのは、第1ピストン103である。第1ピストン103は、第1端部103a、第2端部103c、外周部103dおよび閉鎖内側第1端部103fを有する中空内部103bを有する本体を有する。外周部103dは、本体の長さに沿って一連のラチェット溝112を有し、第2端部103c付近のストップ溝113は、ラチェット溝112より大きく、ラチェットクリップ170を捕捉する。ラチェットクリップ170は、第1ピストン103がハウジング102から離れて移動することによって、ラチェット溝112の内部および外部にラチェットする拡張可能なクリップである。ラチェットクリップ170は、テンショナアームまたはシュー402が第1ピストン103を押すとき、第1ピストン103がハウジング102に向かって移動することを防止する。
【0008】
第1ピストン103の中空内部103b内には、第1ピストンスプリング104が存在する。第1ピストンスプリング104は、第1ピストン103の閉鎖内側第1端部103fと接触する第1端部104aまたは体積減少部または通気孔(図示せず)およびハウジング102の第1軸方向に延びるボア102aの低部102bと接触する第2端部104bまたは逆止弁108のような逆止弁を有する。第1ピストン103と第1軸方向に延びるボア102aとの間には、第1圧力チャンバ111が形成される。流体は、入口逆止弁108を介して第1供給部106を介し、第1圧力チャンバ111に供給される。第1ピストン103は、第1ピストンスプリング104の力および第1圧力チャンバ111内の油圧によってテンショナアーム402を介し、第1ピストン103の第1端部103aを通してチェーン(図示せず)を付勢するようにハウジング102から外側に付勢される。
【0009】
第2軸方向に延びるボア102cは、第2ピストン160を摺動可能に受容する。第2ピストン160は、第1端部160a、第2端部160cおよび閉鎖第1端部160dを有する中空内部160bを有する本体を有する。
【0010】
中空内部160b内には、第2ピストン160をハウジング102から外側に付勢するための第2ピストンスプリング166が存在する。第2ピストンスプリング166は、第2ピストン160の内側部160bの閉鎖第1端部160dと接触する第1端部166a、および第2軸方向に延びるボア102cの底部102dと接触する第2端部166bを有する。代替的に、スプリング166の第1端部166aは、第2ピストン160の中空内部160b内の体積減少部または通気孔に接触することができる。別の実施形態において、スプリング166の第2端部166bは、入口逆止弁107のような逆止弁に接触することができる。
【0011】
第2ピストン160の第1端部160aとテンショナアーム402の第2平坦面402aとの間には、外部スプリング404が存在し、外部スプリング404の第1端部404aは、テンショナアーム402の空洞部402cと接触し、外部スプリング404の第2端部404bは、第2ピストン160の第1端部160aと接触する。第2ピストン160の移動は、外部スプリング404の第2端部404bをハウジング102外側に移動させる。
【0012】
第2高圧チャンバ167は、中空内部160bおよび第2軸方向に延びるボア102cによって形成され、その内部には、第2ピストンスプリング166がある。流体は、入口供給部109および好ましくは、逆止弁107を介して第2高圧チャンバ167に供給される。
【0013】
テンショナが作動中に新しいチェーンまたはベルトに張力を加えると、流体は、第1入口供給部106から入口逆止弁108を通って第1圧力チャンバ111に供給される。加圧流体は、第1ピストンスプリング104のスプリング力に追加して第1ピストン103をハウジング102から外側に付勢し、またラチェットクリップ170をラチェット溝112内で移動させ、テンショナアーム402を介して閉ループチェーンまたはベルトのスパンに張力を加える。同時に、第2ピストン160も第2ピストンスプリング166によって第2軸方向に延びるボア102cから外側に付勢し、流体は、第2入口供給部109から入口逆止弁107を介して第2圧力チャンバ167に供給され、これは外部スプリング404を介してテンショナアームを介して閉ループチェーンまたはベルトのスパンに張力を加える。
【0014】
テンショナが作動中に高い荷重なしで摩耗されたチェーンまたはベルトに張力を加えると、流体は、第1入口供給部106および入口逆止弁108を通って第1圧力チャンバ111に供給される。加圧流体は、第1ピストンスプリング104のスプリング力に付加して第1ピストン103をハウジング102から外側に付勢し、テンショナアーム402を介して閉ループチェーンまたはベルトのスパンに張力を加える。同時に、第2ピストン160も第2ピストンスプリング166を介してさらに外側に付勢する。張力は、テンショナアーム402上の外部スプリング404によっても維持される。チェーンまたはベルトがさらに磨耗されると、追加の弛みがチェーンまたはベルトスパンに存在するため、第1ピストン103および第2ピストン160は、チェーンまたはベルトに張力を適切に加えるためにハウジング102からさらに外側に延長する必要がある。
【0015】
テンショナが高い動的チェーン荷重下でチェーンまたはベルトに張力を加える場合、チェーンまたはベルトからの高い周期的動的荷重力は、第1ピストン103および第2ピストン160をハウジング102に向かって内側に、次いでハウジング102から外側に交互に押し出す。張力サイクルの高い張力部分において、第2ピストン160の内側への移動は、逆止弁107によって生成された第2圧力チャンバ167内の流体圧力によって抵抗される。張力サイクルの低い張力部分において、第2ピストン160は、スプリング166の力によって外側に移動する。これによって、ピストンが「ポンプアップ」し、逆止弁107を介して流体を第2ボア102c内の第2圧力チャンバ167内に引き込む。これによって、次に第2ピストン160の第1端部160aが外部スプリング404を介してテンショナアーム402上に外側に力を加える。第1ピストン103の過度な内向移動は、ラチェット溝112に安着されたラチェットクリップ170によって防止される。
【0016】
オイルが存在すると、第1ピストン103の「ポンプ」アップ動作は、第2ピストン160と類似する。オイルが存在すると、ラチェットクリップ170は、過度なピストン移動を防止する。ラチェットクリップ170もオイルが存在しないと、第1ピストン103の内向移動を防止する。これによって、テンショナアーム402および第2ピストン160の動きが制限される。
【0017】
動的チェーンまたはベルトの荷重が減少すると、第2圧力チャンバ167内の流体が第2軸方向に延びるボア102cを通ってまたは通気孔を通ってエンジンに漏出される。このような漏出は、第2圧力チャンバ167内に存在する平均圧力を減少させる。
【0018】
すべての作動条件において、第2圧力チャンバ167内の圧力は、外部スプリング404の最小予圧を維持するようにポンプアップされるということに留意すべきである。外部スプリング404の力または予圧が下がりすぎると、第2ピストンスプリング166および第2圧力チャンバ167の圧力によって第2ピストン160がハウジング外側に移動し、入口逆止弁107を通してより多くのオイルを引き込む。
【0019】
したがって、第1軸方向に延びるボア102a内の第1ピストン103は、支配的な減衰および油圧剛性を提供し、第2軸方向に延びるボア102c内の第2ピストン160は、外部スプリング404を通して支配的かつ自動的に調節されるスプリング力を提供する。本発明のテンショナは、チェーンまたはベルト制御を犠牲にすることなく、チェーンまたはベルト張力をできるだけ低く維持するように平均張力を自動的に調整する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一実施形態において、ラチェットクリップが係合するためのラチェットクリップおよび溝が第2ピストンに追加され、これによって第2ピストンは、第2ボアハウジングの底部に衝突しないようになる。第2ピストンは、第2ピストンの外周部上のラチェット溝と係合するラチェットクリップによって第2ボアハウジングの底部に衝突することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来技術の二重油圧式テンショナの斜視図を示す。
図2図1の従来技術の二重油圧式テンショナの正面図を示す。
図3図2の従来技術の二重油圧式テンショナの断面図を示す。
図4】本発明の一実施形態の二重油圧式テンショナの斜視図を示す。
図5】本発明の一実施形態の二重油圧式テンショナの代替斜視図を示す。
図6】二重油圧式テンショナの第2ピストンおよび関連ラチェットクリップの拡大図を示す。
図7】テンショナアームを具備した本発明の一実施形態の二重油圧式テンショナの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
エンジン始動またはエンジン故障時、第2ピストンの第2高圧チャンバに供給するのに利用できる入口油圧が不足し、第2ピストンは、第2ピストンが配置されている第2ボアハウジングの底部に当たるか、衝突することがある。第2ボアの底部に第2ピストンが当たると、大きな騒音が発生する可能性がある。
【0023】
本発明の一実施形態において、騒音を最小化するため、ラチェットクリップが係合されるラチェットクリップおよび溝が第2ピストンに追加され、これによって第2ピストンは、ラチェットクリップが第2ピストンの外周部上のラチェット溝に係合することによって、第2ボアハウジングの底部に衝突することを防止する。
【0024】
図4図7は、チェーンスパンまたはベルトの張力を維持するために受動制御システムを使用するテンショナを示す。受動制御は、フィードバックおよび制御されたアクチュエータを使用せずに、テンショナピストンの位置を調整するシステムとして定義される。
【0025】
本発明のテンショナシステムは、内燃機関エンジンで使用され得る閉ループチェーンまたはベルト駆動システム用テンショナ(以下にさらに詳細に説明する)を含む。これは、駆動シャフトと少なくとも1つのカムシャフトとの間に閉ループ動力伝達システムに利用するか、または駆動シャフトと均衡シャフトとの間の均衡シャフトシステムに利用することができる。また、テンショナシステムは、オイルポンプを含むことができ、燃料ポンプ駆動装置とともに使用することができる。さらに、本発明のテンショナシステムは、ベルト駆動装置とともに使用され得る。
【0026】
テンショナは、テンショナアームまたはシュー402を介してチェーンまたはベルト(図示せず)に張力を加える。
【0027】
テンショナは、第2軸方向に延びるボア502cと平行な第1軸方向に延びるボア502aを有するハウジング502を含む。ハウジング502の第2ボア502cは、第1ボア502aに平行であるように示されているが、第2ボア502cは、第1ボア502aに対して垂直であってもよく、第1ボア502aに対して他の角度もなし得る。
【0028】
第1軸方向に延びるボア502a内に摺動可能に受容されるのは、第1ピストン503である。第1ピストン503は、第1端部503a、第2端部503cおよび閉鎖内側第1端部503fを有する中空内部503bを有する本体を有する。第1ピストン503の中空内部503bには、第1ピストンスプリング504が存在する。第1ピストンスプリング504は、第1ピストン503の閉鎖第1端部503dと接触する第1端部504a、または体積減少部または通気孔505、およびボア502aの入口逆止弁508または底部502eと接触する第2端部504bを含む。第1ピストン503と第1軸方向に延びるボア502aとの間には、第1圧力チャンバ511が形成される。流体は、入口逆止弁508を介して第1供給源506を介し、第1圧力チャンバ511に供給される。入口逆止弁508は、スプリング551-付勢されたカップ553を含むリテーナ552で形成され得る。第1ピストン503は、第1ピストンスプリング504の力および圧力チャンバ内のオイルの力によってテンショナアームを介し、第1ピストンの第1端部503aを通してチェーン(図示せず)を付勢するため、ハウジング502から外側に付勢される。
【0029】
代替的に、第1ピストン503は、固形体であってもよく、この場合、第1ピストンスプリング504は、第1ピストン503の固形体の底部および第1軸方向に延びるボア502aまたは入口逆止弁508の底部502bに接触するであろう。
【0030】
第2軸方向に延びるボア502cは、第2ピストン660を摺動可能に受容する。第2ピストン660は、第1端部660a、第2端部660c、ストップ溝613を含む、一連のラチェット溝612を有する外周部、および第1端部660dを有する中空内部660bを含む。第1端部660dは、閉鎖され得るか、または通気孔を含むことができる。ラチェット溝612は、溝612間をラチェットできる拡張可能なクリップ670を受容する。クリップ670がストップ溝613内に収用されると、第2ピストン660は、ハウジング502からさらに外側に延長することが防止される。
【0031】
中空内部660b内には、第2ピストン660をハウジング502から外側に付勢するための第2ピストンスプリング666が存在する。第2ピストンスプリング666は、第2ピストン660の内側部660bの第1端部660dと接触する第1端部666a、および第2軸方向に延びるボア502cの底部502dに接触する第2端部666bまたは逆止弁を有する。図示されていないが、体積減少部が第2ピストン660の内側部660b内に存在することができる。
【0032】
第2高圧チャンバ667は、中空内部660bおよび第2軸方向に延びるボア502cによって形成され、その内部には、第2ピストンスプリング666がある。流体は、入口供給部509および好ましくは、入口逆止弁507を介して第2高圧チャンバ667に供給される。代替的に、入口逆止弁507、508は、ボール逆止弁またはディスク逆止弁であり得る。入口供給部509は、入口供給ライン506に連結されても連結されなくてもよい。
【0033】
テンショナが作動中に新しいチェーンまたはベルトに張力を加えると、流体は、第1入口供給部506および入口逆止弁508を通って第1圧力チャンバ511に供給される。この流体圧力は、第1ピストンスプリング504のスプリング力に追加して第1ピストン503をハウジング502から外側に付勢し、これは、テンショナアーム402などのテンショナアームを介して閉ループチェーンまたはベルトのスパン(span)に張力を加える。同時に、第2ピストン660も第2ピストンスプリング666によって第2軸方向に延びるボア502cから外側に付勢し、流体は、第2入口供給部509から入口逆止弁509を通って第2圧力チャンバ667に供給され、これは、キャップ405および関連外部スプリング404を介してテンショナアーム402を介し、閉ループチェーンまたはベルトのスパン張力を加える。
【0034】
テンショナが作動時、高荷重なしで摩耗されたチェーンまたはベルトに張力を加えると、流体は、第1入口供給部506を通っておよび入口逆止弁508を通って第1圧力チャンバ511に供給される。この流体圧力は、第1ピストンスプリング504のスプリング力に追加して第1ピストン503をハウジング502から外側に付勢し、これは、テンショナアーム402を介して閉ループチェーンまたはベルトのスパンに張力を加える。同時に、第2ピストン660も第2ピストンスプリング666を介してさらに外側に付勢される。張力は、テンショナアーム402上の外部スプリング404によっても維持される。チェーンまたはベルトがさらに磨耗されると、追加の弛みがチェーンまたはベルトスパンに存在し、第1ピストン503および第2ピストン660は、チェーンまたはベルトを適切に張力を加えるためにハウジング502からさらに外側に延長する必要がある。
【0035】
テンショナの高い動的チェーン荷重下でチェーンまたはベルトに張力を加える場合、チェーンまたはベルトからの高い周期的動的荷重力は、第1ピストン503および第2ピストン660をハウジング502に向かって内側に、次いでハウジング502から外側に交互に押し出す。第2ピストン660の過度な内向移動は、第2ピストン660の外周部上のラチェット溝612内にラチェットクリップ670が安着することによって抵抗される。第1ピストン503の内向移動は、逆止弁508によって生成された第1圧力チャンバ511内の流体圧力によって抵抗される。張力サイクルの低い張力部分において、第1ピストン503は、スプリング504の力によって外側に移動する。これによって、ピストンが「ポンプアップ」し、逆止弁508を通って流体を第1ボア511内の第1圧力チャンバ511内に引き込む。これは、外部スプリング404を介して第2ピストン660によって加えられる力に付加し、動的荷重の内向力に対抗して第1ピストン503の第1端部503aがテンショナアーム402に外向力を加えるようにする。
【0036】
オイルが存在すると、第2ピストン660の「ポンプ」アップ動作は、第1ピストン503と類似する。オイルが存在すると、ラチェットクリップ670は、過度なピストン移動を防止する。ラチェットクリップ670もオイルが存在しないと、第2ピストン660の内向移動を防止する。これによって、テンショナアーム402および第1ピストン503の動きが制限される。
【0037】
動的チェーンまたはベルトの荷重が減少すると、第2圧力チャンバ667内の流体が第2軸方向に延びるボア502cを通ってまたは通気孔を通ってエンジンに漏出する。このような漏出は、第2圧力チャンバ667内に存在する平均圧力を減少させる。
【0038】
すべての作動条件において、第2圧力チャンバ667内の圧力は、キャップ405上に外部スプリング404の最小予圧を維持するようにポンプアップされるということに留意すべきである。外部スプリング404の力または予圧が下がりすぎると、第2ピストンスプリング666および第2圧力チャンバ667の圧力によって第2ピストン660がハウジング外側に移動し、入口逆止弁507を通してさらに多くのオイルを引き込む。
【0039】
したがって、第1軸方向に延びるボア502a内の第1ピストン503は、支配的な減衰および油圧剛性を提供し、第2軸方向に延びるボア502c内の第2ピストン660は、外部スプリング404を介して支配的かつ自動的に調節されるスプリング力を提供する。本発明のテンショナは、チェーンまたはベルト制御を犠牲にすることなく、チェーンまたはベルト張力をできるだけ低く維持するように平均張力を自動的に調整し、新しいチェーンまたはベルト条件および動的荷重による条件で駆動効率を顕著に改善する。
【0040】
本発明のテンショナは、第2ピストン上の溝に係合するラチェットクリップによって第2ピストンがハウジング内の第2ボアの床に接触または衝突することを防止することによって、第2ピストンによって引き起こされるテンショナシステムの騒音を減少させ、第2ピストンがハウジングのボアの底部と接触する量だけ外部スプリングが第2ピストンをハウジング内にさらに加圧することを防止する。
【0041】
したがって、本明細書に記載された本発明の実施形態は、本発明の原理の適用を単に例示するものであることを理解されたい。例示された実施形態の詳細を本明細書で言及することは、特許請求の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明に必須であるとみなされる特徴をそれら自体列挙するものである。
図1
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図7