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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】リアクトルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20231219BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01F37/00 K
H01F37/00 A
H01F37/00 M
H01F37/00 J
H01F41/04 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019042905
(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2020145380
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-03-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】植草 易央
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩太郎
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-139425(JP,A)
【文献】特開2018-206907(JP,A)
【文献】特開平04-348013(JP,A)
【文献】特開2017-092107(JP,A)
【文献】特開2010-203998(JP,A)
【文献】特開2015-095569(JP,A)
【文献】特開2018-195685(JP,A)
【文献】特開平11-273933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/00,27/40,37/00、41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻軸を平行にして横並びに配置された一対のコイルと、前記一対のコイルの間に設けられ、センサをU字状に取り囲んで保持する保持部と、前記コイルの外側に配置されるコア部材を被覆する樹脂体と、を有するリアクトルの製造方法であって、
前記保持部は、
前記コア部材の他のコア部材と接続される端面より前記巻軸方向に離れて設けられ、
前記巻軸方向と平行な方向に対向して配置され、前記巻軸方向と交差するように一方向に延びる一対の対向部と、
前記一対の対向部の端部を繋ぐ連結部と、
を有し、
少なくとも一方の前記対向部には、前記連結部とは反対側の端部に、他方の前記対向部に向かって突出する突起が設けられ、
前記巻軸の方向及び前記横並びの方向に直交する上下に分割された上型及び下型内に前記コア部材をセットし、樹脂を充填して前記樹脂体を成型する樹脂体成型工程と、
前記樹脂体成型工程の際に、前記樹脂体の一部として、前記保持部を、前記横並びの方向である左右に分割された左型及び右型により成型する保持部成型工程と、
を備え、
前記対向部、前記連結部及び前記突起の中央部分に前記左型と前記右型の境界となるパーティングラインが形成されていること、
を特徴とするリアクトルの製造方法。
【請求項2】
前記左型及び前記右型以外の上下又は左右に分割された金型により、前記端面から遠い方の前記対向部の、もう一方の前記対向部と対向する側とは反対側に、前記巻軸方向に突出した突出部を成型する突出部成型工程を備えること、
を特徴とする請求項記載のリアクトルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサを保持する保持部を備えたリアクトル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルは、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動システム等をはじめ、種々の用途で使用されている。例えば、車載用の昇圧回路に用いられるリアクトルとして、コアを被覆する樹脂体に一対のコイルを巻回したものが多く用いられる。
【0003】
この種のリアクトルでは、コイルに高電流を流し続けるとコイルが過熱して、リアクトルとしての電気特性が低下するため、サーミスタなどの温度センサにより内部温度を検出して、コイルが一定温度以上に発熱しないように通電制御がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-94924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、リアクトルには、温度センサなど状態を検出するセンサが設けられるとともに、このセンサを保持する保持部が設けられている。この保持部は、コアを被覆する樹脂体と一体的に設けられていた。
【0006】
図10は、従来の樹脂体及び保持部の構成を示す図である。図11は、従来の保持部の上面側から見た斜視図である。図12は、従来の保持部の底面側から見た斜視図である。図10に示すように、樹脂体120は、H字形状になるように組み合わせたコア部材を被覆し、二本の平行な長脚部121と、長脚部121の中央部分を繋ぐ連結部122とを有する。リアクトルを構成するコイルは、例えば、連結部122を境界とする4本の脚部123にそれぞれ嵌め込まれる。保持部107は、脚部123間に配置され、連結部122から脚部123の先端に向けて設けられている。但し、保持部107は、脚部123の先端までは突出していない。
【0007】
図11に示すように、保持部107は、一方向に延びる一対の対向部171、172と、対向部171、172の端部を繋ぐ連結部173とを有し、対向部172には、連結部173とは反対側の端部に、対向部171に向かって突出した突起174が設けられている。
【0008】
従来は、この樹脂体120及び保持部107を、二分割された金型で作製していた。そのため、対向部172に突起174を設けようとすると、突起174が連結部173との関係でアンダーカットとならないようにするために、対向部172及び連結部173の部分に、突起174を形成するための金型の凸部を入り込ませる必要がある。そのため、当該凸部が入り込んだ部分には樹脂が充填されないことから、図11及び図12に示すように、対向部172及び連結部173に空隙である中空部175が形成されて、対向部172及び連結部173が肉薄となる。そのため、センサを挿入する際に挿入口を広げるために対向部172を押し広げると、対向部172又は連結部173に負荷がかかり、これらの部分に破損が生じる場合があった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、保持部の破損を抑制し、生産性を向上させることのできるリアクトル及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のリアクトルの製造方法は、巻軸を平行にして横並びに配置された一対のコイルと、前記一対のコイルの間に設けられ、センサをU字状に取り囲んで保持する保持部と、前記コイルの外側に配置されるコア部材を被覆する樹脂体と、有するリアクトルの製造方法であって、前記保持部は、前記コア部材の他のコア部材と接続される端面より前記巻軸方向に離れて設けられ、前記巻軸方向と平行な方向に対向して配置され、前記巻軸方向と交差するように一方向に延びる一対の対向部と、前記一対の対向部の端部を繋ぐ連結部と、を有し、少なくとも一方の前記対向部には、前記連結部とは反対側の端部に、他方の前記対向部に向かって突出する突起が設けられ、前記巻軸の方向及び前記横並びの方向に直交する上下に分割された上型及び下型内に前記コア部材をセットし、樹脂を充填して前記樹脂体を成型する樹脂体成型工程と、前記樹脂体成型工程の際に、前記樹脂体の一部として、前記保持部を、前記横並びの方向である左右に分割された左型及び右型により成型する保持部成型工程と、を備え、前記対向部、前記連結部及び前記突起の中央部分に前記左型と前記右型の境界となるパーティングラインが形成されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、保持部の破損を抑制し、生産性を向上させることのできるリアクトル及びその製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るリアクトルの斜視図である。
図2】実施形態に係るリアクトルの分解斜視図である。
図3】保持部の構成を示す図であり、樹脂体の側面図である。
図4】保持部の構成を示す図であり、樹脂体の平面図である。
図5】保持部にセンサが保持された樹脂体の斜視図である。
図6】実施形態に係るリアクトルの製造方法を説明するための図であり、保持部を有する樹脂体を成型する際のXZ断面図である。
図7】実施形態に係るリアクトルの製造方法を説明するための図であり、保持部を有する樹脂体を成型する際のXY断面図である。
図8】パーティングラインを示す樹脂体の斜視図である。
図9】他の実施形態に係る製造方法を説明するための図であり、保持部を有する樹脂体を成型する際のXZ断面図である。
図10】従来の樹脂体及び保持部の構成を示す図である。
図11】従来の保持部の上面側から見た斜視図である。
図12】従来の保持部の底面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態のリアクトルについて説明する。
【0015】
[1.実施形態]
[1-1.概略構成]
図1は、実施形態に係るリアクトルの斜視図である。図1に示すように、本実施形態に係るリアクトル1は、樹脂モールドコア2~4と、コイル5a、5bと、センサ6とを有し、H字形状を有する樹脂モールドコア2の脚部に、2つのコイル5a、5bがそれぞれ装着され、コイル5a、5b間にセンサ6がそれぞれ挿入されて配置されている。センサ6は、ここでは温度センサであり、リアクトル1の温度を検出する。
【0016】
[1-2.詳細構成]
リアクトル1が備える各部構成について、詳細に説明する。なお、説明の便宜上、コイル5a、5bの巻軸が延びる方向(以下、単に「巻軸方向」ともいう。)をX軸方向、X軸方向と直交するコイル5a、5bの横並びの方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向とする。また、Y軸方向を左右方向、Z軸方向を上下方向という。Y軸の矢印が指す方を右側、その反対側を左側といい、Z軸の矢印が指す方向を上、その反対側を下という。これらの方向は、リアクトル1の各構成の位置関係を示すための表現であり、リアクトル1が設置対象に設置された際の位置関係及び方向を限定するものではない。
【0017】
図2は、実施形態に係るリアクトルの分解斜視図である。図2に示すように、樹脂モールドコア2は、H字形状を有しており、コア部材と、このコア部材を被覆する樹脂体20とを有する。樹脂体20が被覆するコア部材は、圧粉磁心などの磁性体からなる2つのT字型コアの脚同士を向かい合わせてH形状を成す。そのため、樹脂体20は、このコア部材に倣ってH字形状を有する。このようにH形状の4本の脚が、樹脂モールドコア2の脚部21を構成する。
【0018】
樹脂モールドコア3、4は、コア部材と、コア部材を被覆する樹脂体30、40とを有する。樹脂体30、40が被覆するコア部材は、直方体形状を有するブロック型の圧粉磁心などの磁性体である。そのため、樹脂体30、40は、このコア部材に倣って概略直方体形状を有する。樹脂体30、40の更なる詳細構成については後述する。
【0019】
コイル5a、5bは、導線が巻回されてなり、筒状を成す。ここでは、リアクトル1は、一対のコイル5a、5bを二組有している。各組のコイル5a、5bは、樹脂モールドコア2の脚部21に装着され、巻軸を平行にして横並びに配置されている。コイル5a、5bの間隔は、センサ6の厚みと同程度である。センサ6の厚みと同程度とは、センサ6がコイル5a、5bに接触しないでコイル5a、5b間に挿入できる程度であり、センサ6の厚みの2倍未満である。コイル5a、5bの一端部同士は電気的に接続され、他端部は、リアクトル1の上方に引き出されている。
【0020】
樹脂モールドコア2の脚部21にコイル5a、5bを装着した状態で、脚部21の先端側から樹脂モールドコア3、4で挟み込むことで、リアクトル1が構成される。すなわち、樹脂モールドコア2~4のコア部材が組み合わされることにより、概略θ形状の環状コアが形成されている。このようなリアクトル1において、外部電源からコイル5a、5bに電流が流れると、コイル5a、5bが磁束を発生させる。この磁束は、環状コアを構成するコア部材を通り、閉じた磁気回路を形成する。
【0021】
樹脂体30、40は、コイル5a、5bの外側に配置されるコア部材を被覆する。樹脂体30、40には、開口が設けられており、この開口は、樹脂体20から露出したコア部材の端面Eと接続される端面Eを露出させる。このコア部材は、樹脂モールドコア3、4のブロック型のコアである。
【0022】
樹脂体30、40には、リアクトル1を設置対象に固定する固定部34が設けられている。固定部34は、ボルトが挿入される孔が設けられおり、ここではリアクトル1に二等辺三角形の頂点となる箇所にそれぞれ配置されている。ここでは、固定部34は、樹脂体30の上部中央に1つ設けられ、樹脂体40の両端部に2つ設けられている。リアクトル1は、例えば、金属製のケースに収容され、固定部34の孔に挿入されたボルトの締結によりケースに固定される。
【0023】
図2に示すように、センサ6は、検出部61とリード線62とを有する。検出部61は、ここでは、柱状、より具体的には直方体形状を有し、リアクトル1の温度を検出する。検出部61としては、例えば、温度変化に対して電気抵抗が変化するサーミスタを用いることができる。但し、検出部61は、サーミスタに限定されず、磁気センサ、電流センサ、温度ヒューズなどのセンサとしても良い。リード線62は、検出部61に接続されており、検出部61が出力する電気信号を、リアクトル1外部に伝送する信号線である。
【0024】
図2に示すように、リアクトル1は、センサ6を保持する保持部7を備える。この保持部7は、一対のコイル5a、5b間に設けられ、センサ6をU字状に取り囲んで保持する。保持部7は、樹脂体30、40のコア部材を被覆する部分と突き目なく一続きに形成されており、当該コア部材の他のコア部材、つまり樹脂モールドコア2のコア部材と接続される端面より巻軸方向(X軸方向)に離れて設けられている。換言すると、保持部7は、樹脂体30、40の一部の構成である。
【0025】
図3及び図4は、保持部7の構成を示す図であり、図3は、樹脂体30、40の側面図、図4は、樹脂体30、40の平面図である。図5は、保持部7にセンサ6が保持された樹脂体30、40の斜視図である。
【0026】
保持部7は、コイル5a、5bの間に設けられている。図3及び図4に示すように、保持部7は、一対の対向部71、72、連結部73を有している。
【0027】
一対の対向部71、72は、巻軸方向と平行な方向に対向して配置され、巻軸方向と交差するように一方向に延びて設けられている。ここでは、一対の対向部71、72は、上下方向に延び、センサ6が上方から挿入されるように検出部61の厚み分、巻軸方向に離れて設けられている。対向部71は、コア部材から近くに配置され、対向部72は、コア部材から遠くに配置されている。
【0028】
連結部73は、一対の対向部71、72の端部を繋ぐ。ここでは、連結部73は、巻軸方向に延び、その長さは検出部61の厚み分である。一対の対向部71、72、及び連結部73により、センサ6を取り囲むU字形状を構成する。
【0029】
具体的に本実施形態では、保持部7は、樹脂体30、40のコア部材を被覆する部分の中央部分から、巻軸方向に突出して設けられた略矩形状の板状体70に、上下方向に延びて設けられたスリットとして構成される。一対の対向部71、72、連結部73は、スリットを形成する板状体70の縁部である。一対の対向部71、72及び連結部73は、中実である。すなわち、一対の対向部71、72及び連結部73は、樹脂で隙間なく構成されている。
【0030】
このように、保持部7は板状体70のスリットとして構成されている。換言すると、保持部7は、コア部材を被覆する樹脂体30、40の部分と継ぎ目なく一続きに形成され、当該コア部材の端面Eより巻軸方向に離れて設けられている。当該コア部材の端面Eとは、樹脂体30、40から露出した面であり、他のコア部材と接続される面である。他のコア部材とは、本実施形態では、樹脂モールドコア2のT字型コアである。
【0031】
一対の対向部71、72には、一対の突起74が設けられている。一対の突起74は、対向部71、72の連結部73とは反対側の端部に設けられている。対向部71に設けられた突起74は、対向部72に向かって突出し、対向部72に設けられた突起74は、対向部71に向かって突出しており、センサ6が挿入される保持部7の挿入口を狭めている。すなわち、センサ6が上方から保持部7に挿入されて保持されると、センサ6が上方に抜けようとしても、検出部61の後端が突起74に当接し、センサ6の抜けが防止される。
【0032】
この突起74は、一対の対向部71、72が延びる方向において、連結部73と重なって設けられている。ここでは、一対の突起74と連結部73は上下方向に重なっている。
【0033】
保持部7には、突出部8が設けられている。突出部8は、コア部材の端面Eから遠い対向部72に設けられている。具体的には、対向部72の、もう一方の対向部71と対向する側とは反対側に設けられている。突出部8は、巻軸方向に突出して設けられている。ここでは、突出部8は、略矩形状の板状体である。
【0034】
[1-3.製造方法]
本実施形態のリアクトル1の製造方法について、図6及び図7を用いて説明する。図6は、保持部7を有する樹脂体40を成型する際のXZ断面図である。図7は、保持部7を有する樹脂体40を成型する際のXY断面図であり、図6のA-Aラインで切った図4の領域Rの断面図である。リアクトル1の製造方法は、樹脂体成型工程、保持部成型工程、突出部成型工程、及び組立工程を有する。
【0035】
樹脂体成型工程は、樹脂体20、30、40を成型し、樹脂モールドコア2~4を形成する工程である。具体的には、樹脂体成型工程では、上下方向に分割された上型及び下型内にコア部材をセットし、樹脂を充填して樹脂体20、30、40を成型する。
【0036】
保持部成型工程は、保持部7を成型する工程であり、樹脂体成型工程の際に、樹脂体30、40の一部として保持部7を成型する。突出部成型工程は、突出部8を成型する工程である。ここでは、保持部成型工程及び突出部成型工程は、樹脂体30、40を成型する樹脂体成型工程と一緒に実行される。樹脂体成型工程、保持部成型工程、及び突出部成型工程では、少なくとも2方向に離型する金型を用いて、樹脂体30、40、保持部7及び突出部8を成型する。
【0037】
例えば、樹脂体40を成型する場合、図6に示すように、樹脂体40は、樹脂体40に倣った形状を内側に有する上下に分割された上型81と下型82により成型し、図6及び図7に示すように、保持部7及び突出部8は、保持部7及び突出部8に倣った形状を内側に有する左右に分割された左型83と右型84とにより成型する。
【0038】
すなわち、下型82にブロック型のコア部材Bを載置し、治具でコア部材Bの端面Eとその反対側の面とを挟むようにしてコア部材Bを固定する。また、2つの端面Eの間であって、当該端面Eが位置するコア部材Bの表面の手前に、左型83及び右型84をセットする。その後、下型82の上端と上型81の下端が当接するように、上方から上型81を被せて上型81と下型82とを組み合わせる。このとき、上型81と下型82で組み合わされた金型は、コア部材Bの片面側において左右方向に貫通しており、この貫通してなる空間に左型83及び右型84が入り込んだ状態となる。これにより、金型81~84により囲われる空間が閉塞する。このとき、左右の金型83、84は、板状体70、突出部8の左右方向の長さである厚み分、離間させる。
【0039】
金型81~84により囲われる空間が閉塞した状態では、コア部材Bが治具や下型82に接している部分を除いて上型81、下型82と離間しており、例えば上型81に設けられたゲートGから樹脂が充填される。この樹脂は、図6の矢印で示すように、上下の金型81、82とコア部材Bとの隙間に流れ込むとともに、保持部7及び突出部8を成型する左右の金型83、84の隙間に流れ込む。このように金型81~84内の閉塞空間に樹脂が充填され、固化されることで、樹脂体40、保持部7(一対の対向部71、72、連結部73、及び一対の突起74)、及び突出部8が一体的に成型される。すなわち、樹脂体40のコア部材Bを被覆する部分と保持部7と突出部8は、同じ樹脂で継ぎ目なく一続きに形成される。これにより、樹脂モールドコア4が形成される。なお、端面Eの周りにXY平面、XZ平面に拡がって設けられた矩形状の舌片41(図5参照。)は、X軸方向にスライドする金型(以下、前型という。)により形成される。
【0040】
図8に示すように、保持部7を構成する板状体70、一対の対向部71、72、連結部73、突起74、及び突出部8の中央部分には、パーティングラインLが形成される。このパーティングラインLは、左右の金型83、84を合わせた際の左右の境界に形成される出っ張りである。
【0041】
また、保持部成型工程は、上下離型工程、左右離型工程を有する。すなわち、樹脂体40、保持部7、及び突出部8を成型した後、前型を樹脂モールドコア4から離型する。そして、上下の金型81、82を樹脂モールドコア4から離型する。例えば、上型81を上方に離型させて、樹脂モールドコア4の上方を開放し、下型82に上下に貫通したピンにより樹脂モールドコア4を押し上げて下型82から離型させる。このとき、左右の金型83、84は、樹脂モールドコア4にセットされたままである。
【0042】
上下の金型81、82を離型させた後、左右の金型83、84を樹脂モールドコア4から離型して、樹脂モールドコア4を取り出す。上記と同様にして、樹脂体30を成型して樹脂モールドコア3を作製する。
【0043】
ここで、突出部8を設けたことにより、突出部8が設けられていない従来技術と比べて、左右の金型83、84が離型しやすくなる。すなわち、突出部8を設けたことで、左右の金型83、84に接する樹脂量が多くなり、保持部7及び突出部8からなる全体としての樹脂の塊は大きくなる。樹脂の塊は、熱収縮、つまり当該樹脂が冷えて固化する際に収縮する。そして、樹脂の塊はその大きさが大きいほど、熱収縮による収縮量が大きくなる。そのため、成型された保持部7及び突出部8の左右の金型83、84に食い付くのを低減することができる。
【0044】
組立工程は、作製された樹脂モールドコア2~4とコイル5a、5bとを組み立ててリアクトル1を作製する工程である。具体的には、H字形状の樹脂モールドコア2の二対の脚部21にコイル5a、5bをそれぞれ嵌め込み、この樹脂モールドコア2を樹脂モールドコア3、4でX軸方向の両側から挟んで、それぞれの樹脂体20、30、40から露出したコア部材の端面同士を接続することでリアクトル1を作製する。このリアクトル1のコイル5a、5bの間のそれぞれに上方から検出部61を挿入し、保持部7に差し込んでセンサ7をリアクトル1に装着する。
【0045】
[1-4.作用・効果]
(1)本実施形態のリアクトル1は、巻軸を平行にして横並びに配置された一対のコイル5a、5bと、一対のコイル5a、5bの間に設けられ、センサ6をU字状に取り囲んで保持する保持部7と、コイル5a、5bの外側に配置されるコア部材を被覆する樹脂体30(40)と、を備え、保持部7は、コア部材を被覆する樹脂体30(40)の部分と継ぎ目なく一続きに形成され、コア部材の他のコア部材と接続される端面Eより巻軸方向に離れて設けられており、巻軸方向と平行な方向に対向して配置され、巻軸方向と交差するように一方向に延びる一対の対向部71、72と、一対の対向部71、72の端部を繋ぐ連結部73と、を有し、少なくとも一方の対向部71、72には、連結部73とは反対側の端部に、他方の対向部71、72に向かって突出する突起74が設けられ、対向部71、72及び連結部73を、中実にした。これにより、保持部7の強度を向上させ、生産性を向上させることができる。
【0046】
(2)突起74は、一対の対向部71、72に一対設けるようにした。これにより、センサ6の抜けを防止することができる。すなわち、従来のリアクトルでは、上下の金型で樹脂モールドコアを作製するため、保持部107の形状を上下方向にアンダーカットにならない形状にする必要があった。従来の保持部107では、センサ6の抜けを防止するために、対向部171、172に突起174を設けることで、センサ6が抜けようとしてもセンサ6の後端が突起174に当接させてセンサ6の抜けを抑制していた。
【0047】
この突起174は、連結部173と上下方向に重なり合わないように形成されている。すなわち、連結部173の突起174が上下方向に重なり合う部分は、中空にせざるをえず、このように対向部171、172の強度を考えると、片方の対向部172にしか突起174が設けられず、センサ6が抜け易いという問題があった。
【0048】
これに対し、本実施形態では、上下に離型する金型81、82だけでなく、左右に離型する金型83、84を用いる方法により保持部7を形成するので、突起74と連結部73の上下方向の重なりを気にする必要ない。そのため、保持部7の形状の自由度を高めることができる。本実施形態では両方の対向部71、72に突起74を設けているので、センサ6の抜けをより抑制することができる。
【0049】
(3)一対の突起74は、一対の対向部71、72が延びる方向において、連結部73と重なって設けるようにした。これにより、対向部71、72が延びる方向において、センサ6の位置を規制することができる。
【0050】
(4)コア部材の端面Eから遠い方の対向部71、72の、もう一方の対向部71、72と対向する側とは反対側に、巻軸方向に突出した突出部8を設けるようにした。これにより、保持部7及び突出部8全体としての樹脂の塊が大きくなり、熱収縮による収縮量を大きくすることができる。その結果、左右の金型83、84への保持部7(特に対向部72、連結部73)の食い付きを低減することができ、左右の金型83、84を離型しやすくすることができる。そのため、左右の金型83、84の離型の際に保持部7が破損することを防止でき、生産性を向上させることができる。また、センサ6を保持部7に挿入する際に、突出部8をつまんで挿入口を広げてセンサ6を挿入しやすくできるので、作業者の生産効率を向上させることができる。
【0051】
(5)本実施形態のリアクトル1の製造方法は、巻軸を平行にして横並びに配置された一対のコイル5a、5bと、一対のコイル5a、5bの間に設けられ、センサ6をU字状に取り囲んで保持する保持部7と、コイル5a、5bの外側に配置されるコア部材を被覆する樹脂体30(40)と、有するリアクトル1の製造方法であって、保持部7は、コア部材の他のコア部材と接続される端面より巻軸方向に離れて設けられ、巻軸方向と平行な方向に対向して配置され、巻軸方向と交差するように一方向に延びる一対の対向部71、72と、一対の対向部71、72の端部を繋ぐ連結部73と、を有し、巻軸の方向及び横並びの方向に直交する上下に分割された上型81及び下型82内にコア部材をセットし、樹脂を充填して樹脂体30(40)を成型する樹脂体成型工程と、樹脂体成型工程の際に、樹脂体30(40)の一部として、保持部7を、横並びの方向である左右に分割された左型83及び右型84により成型する保持部成型工程と、を備えるようにした。
【0052】
これにより、一対の対向部71、72及び連結部73を中実にすることができるので、保持部7の破損を抑制できるリアクトル1を得ることができ、その結果、生産性を向上させることができる。
【0053】
(6)左型83及び右型84により、端面から遠い方の対向部71、72の、もう一方の対向部71、72と対向する側とは反対側に、巻軸方向に突出した突出部8を成型する突出部成型工程を備えるようにした。
【0054】
これにより、保持部7の破損を防止し、生産性を向上させることができる。すなわち、左右の金型83、84を離型する際に、突出部8を設けないと、保持部7が樹脂の塊として小さく、保持部7が左型83、右型84の何れかにひっついて離れづらい場合がある。この場合、無理に離型すると、連結部73など保持部7に負荷がかかり保持部7の破損を招く虞がある。これに対し、本実施形態では、突出部成型工程により突出部8を設けるようにしたので、保持部7及び突出部8が全体として樹脂の塊が大きくなるので、当該樹脂が冷えた際に生じる収縮量を大きくすることができ、左右の金型83、84の食い付きを低減することができる。そのため、左右の金型83、84の離型が容易になり、保持部7の破損を防止することができる。その結果、生産性を向上させることができる。
【0055】
[2.他の実施形態]
本発明は、実施形態に限定されるものではなく、下記に示す他の実施形態も包含する。また、本発明は、実施形態及び下記の他の実施形態を全て又はいずれかを組み合わせた形態も包含する。さらに、これらの実施形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も本発明に含まれる。
【0056】
(1)上記実施形態では、樹脂体30、40は、ブロック型のコア部材を被覆したが、コア部材としてU字型コアを被覆しても良い。U字形状の脚の先端面が樹脂体30、40から露出しており、他のコア部材と接続される端面となる。保持部7は、この端面よりも巻軸方向に離れて設けられている。左右に分割された金型で保持部7を成型するためである。
【0057】
(2)上記実施形態では、突出部8は、左右の金型83、84により成型したが、左右に分割された別の左右の金型により成型しても良い。この場合、突出部8には、上下方向にパーティングラインLが形成される。また、左右の金型83、84は、上型81と下型82に連動し、保持部7及び突出部8を成型する左右一対の金属ブロックを左右方向にスライドさせるスライド機構により構成しても良い。当該金属ブロックは、上型81と下型82の動きとともに左右に動いても良いし、上型81と下型82の動きの後に動くようにしても良い。
【0058】
また、図9に示すように、上下の金型81、82により成型しても良い。この場合、突出部8には、上下に分割するパーティングラインLが形成される。但し、上記実施形態によれば、上下の金型81、82により樹脂体30、40も突出部8も成型できるので金型の数を少なくすることができ、生産コストを削減することができる。また、上下の金型81、82とは独立した上下に分割された金型により成型しても良い。この場合、突出部8には、上下に分割するパーティングラインLが形成される。
【0059】
(3)上記実施形態では、一対の対向部71、72は、巻軸方向及び横並び方向に直交する上下方向に延びて設けたが、巻軸方向と交差するように設けても良い。この場合、センサ6の検出部61は、保持部7により上下方向に対して斜めの状態で保持される。そのため、検出部61の長さが長い場合であっても、上下方向と平行に保持する実施形態よりもリアクトル1を低背化することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 リアクトル
2~4 樹脂モールドコア
20 樹脂体
21 脚部
30 樹脂体
34 固定部
40 樹脂体
41 舌片
5a、5b コイル
6 センサ
61 検出部
62 リード線
7 保持部
70 板状体
71、72 対向部
73 連結部
74 突起
8 突出部
81 上型
82 下型
83 左型
84 右型
E 端面
図1
図2
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図6
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図12