(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】埋め込み型境界リングを備えた結合共振器フィルタ
(51)【国際特許分類】
H03H 9/17 20060101AFI20231219BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20231219BHJP
H10N 30/87 20230101ALI20231219BHJP
【FI】
H03H9/17 F
H10N30/20
H10N30/87
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019062612
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-03-23
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517090646
【氏名又は名称】コーボ ユーエス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】スーザン・クロイツァー
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0218056(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0218059(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0218058(US,A1)
【文献】特開2013-5446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/02-3/04
H03H9/00-9/215
H03H9/54-9/60
H10N30/20-30/50
H10N30/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の圧電層と、前記第1の圧電層と接触する第1の電極とを含む第1の共振器と、
第2の圧電層と、前記第2の圧電層と接触する第2の電極とを含む第2の共振器と、
前記第1の共振器と前記第2の共振器との間の1つ以上の介在層であって、前記第1の共振器と前記第2の共振器とを音響的に結合させている前記1つ以上の介在層と、
前記第1圧電層とは反対側で、前記第1の電極の第1の部分に設けられた第1の金属境界リングであって、前記第1の部分は、前記第1の電極の他の部分に対して増加した厚さを有する、第1の金属境界リングと、
前記第2圧電層とは反対側で、前記第2の電極の第2の部分に設けられた第2の金属境界リングであって、前記第2の部分は、前記第2の電極の他の部分に対して増加した厚さを有する、第2の金属境界リングと
を含む、結合共振器フィルタ(CRF)。
【請求項2】
前記第1の共振器及び前記第2の共振器はバルク弾性波(BAW)共振器である、請求項1に記載のCRF。
【請求項3】
前記第1の電極は前記CRFの上面を形成する、請求項2に記載のCRF。
【請求項4】
前記第2の圧電層は前記第2の電極と前記第1の共振器との間に存在する、請求項3に記載のCRF。
【請求項5】
前記第2の共振器と前記CRFの底面との間に1つ以上の追加介在層を更に含む、請求項4に記載のCRF。
【請求項6】
前記第2の電極は前記第2の圧電層と前記第1の共振器との間に存在する、請求項3に記載のCRF。
【請求項7】
前記第1の圧電層上に第1の追加電極を更に含み、前記第1の圧電層が前記第1の電極と前記第1の追加電極との間に存在するようになっている、請求項1に記載のCRF。
【請求項8】
前記第2の圧電層上に第2の追加電極を更に含み、前記第2の圧電層が前記第2の電極と前記第2の追加電極との間に存在するようになっている、請求項7に記載のCRF。
【請求項9】
前記第2の圧電層は前記第2の電極と前記第1の共振器との間に存在する、請求項1に記載のCRF。
【請求項10】
前記第2の電極は前記第2の圧電層と前記第1の共振器との間に存在する、請求項1に記載のCRF。
【請求項11】
前記第1の金属境界リングは前記CRFの有効領域の外側縁に沿って設けられている、請求項1に記載のCRF。
【請求項12】
前記第2の金属境界リングは前記CRFの前記有効領域の外側縁に沿って設けられている、請求項11に記載のCRF。
【請求項13】
第1の圧電層と、前記第1の圧電層と接触する第1の電極とを含む第1の共振器と、
・第2の圧電層と、前記第2の圧電層と接触する第2の電極とを含む第2の共振器と、
・前記第1の共振器と前記第2の共振器との間の1つ以上の介在層であって、前記第1の共振器と前記第2の共振器とを音響的に結合させている前記1つ以上の介在層と、
・
前記第1の圧電層の反対側に設けられ、前記第1の電極の厚さを増加させる第1の金属境界リングと、
・前記1つ以上の介在層のうちの第1の介在層上の第2の金属境界リングと
を含む、結合共振器フィルタ(CRF)。
【請求項14】
前記第1の共振器及び前記第2の共振器はバルク弾性波(BAW)共振器である、請求項13に記載のCRF。
【請求項15】
前記第1の電極は前記CRFの上面を形成する、請求項14に記載のCRF。
【請求項16】
前記1つ以上の介在層のうちの少なくとも1つは、前記1つ以上の介在層のうちの前記第1の介在層と前記第1の共振器との間に存在する、請求項15に記載のCRF。
【請求項17】
前記第2の共振器と前記CRFの底面との間に1つ以上の追加介在層を更に含む、請求項13に記載のCRF。
【請求項18】
前記1つ以上の介在層のうちの前記第1の介在層は金属層である、請求項13に記載のCRF。
【請求項19】
前記第1の金属境界リングは前記CRFの有効領域の外側縁に沿って設けられている、請求項13に記載のCRF。
【請求項20】
前記第2の金属境界リングは前記CRFの前記有効領域の外側縁に沿って設けられている、請求項19に記載のCRF。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月28日に出願された仮特許出願第62/649,339号の利益を主張するものであり、当該仮特許出願の開示は、その全体が参照によりここで本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の分野
本開示は、結合共振器フィルタに関し、特に、埋め込み型境界リングを含む結合共振器フィルタに関する。
【背景技術】
【0003】
最新の無線通信デバイスにおいて音響フィルタが広く使用されている。無線通信規格が発展し続け、帯域幅がより狭く、かつ周波数がより高い通信帯域をより多く採用するにつれて、これらの規格の厳しい要件を満たすように音響フィルタを設計することがますます困難になっている。近年、結合共振器フィルタが登場した。このフィルタは、従来の表面弾性波及びバルク弾性波フィルタによって以前より実現可能なフィルタリング能力を超えたフィルタリング能力を提供しようとするものである。結合共振器フィルタは、従来の表面弾性波及びバルク弾性波フィルタの同等物よりも高い選択性を提供することが多く、更にはより高い周波数で動作し得る。従って、結合共振器フィルタには、発展中の規格によってますます必要とされるように、狭い信号帯域内の信号を高周波でフィルタリングするための能力が期待されている。しかしながら、従来の結合共振器フィルタは、従来の表面弾性波及びバルク弾性波フィルタにおいて通常認められている多くの問題に遭遇する。例えば、結合共振器フィルタは、その性能を劣化させるスプリアスモードを含む場合がある。スプリアスモードを抑制する目的で従来の表面弾性波及びバルク弾性波フィルタにいくつかの設計変更がなされてきたが、結合共振器フィルタの動作特性が様々であることは、多くの場合、これらの設計変更が同一の効果を持たないことを意味する。その結果、結合共振器フィルタは、依然として、その性能を劣化させるスプリアスモードに陥る。上記の観点から、スプリアスモードを減少させ、それによって性能を向上させた結合共振器フィルタが求められている。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態において、結合共振器フィルタは、第1の共振器と、第2の共振器と、1つ以上の介在層と、第1の境界リングと、第2の境界リングとを含む。第1の共振器は、第1の圧電層と、第1の圧電層と接触する第1の電極とを含む。第2の共振器は、第2の圧電層と、第2の圧電層と接触する第2の電極とを含む。1つ以上の介在層は、第1の共振器と第2の共振器との間に存在し、第1の共振器と第2の共振器とを音響的に結合させている。第1の境界リングは、第1の電極上に存在する。第2の境界リングは、第2の電極上に存在する。第1の境界リングと第2の境界リングとの両方を提供することにより、結合共振器フィルタのスプリアスモードを抑制し、それによって当該フィルタの性能を向上させることができる。
【0005】
一実施形態において、結合共振器フィルタは、第1の共振器と、第2の共振器と、1つ以上の介在層と、第1の境界リングと、第2の境界リングとを含む。第1の共振器は、第1の圧電層と、第1の圧電層と接触する第1の電極とを含む。第2の共振器は、第2の圧電層と、第2の圧電層と接触する第2の電極とを含む。1つ以上の介在層は、第1の共振器と第2の共振器との間に存在し、第1の共振器と第2の共振器とを音響的に結合させている。第1の境界リングは、第1の電極上に存在する。第2の境界リングは、1つ以上の介在層のうちの第1の介在層上に存在する。第1の境界リングと第2の境界リングとの両方を提供することにより、結合共振器フィルタのスプリアスモードを抑制し、それによって当該フィルタの性能を向上させることができる。
【0006】
当業者は、添付図面に関連して好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明を読んだ後、本開示の範囲を認識し、本開示の追加的な態様を認めるであろう。
【0007】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本開示のいくつかの態様を例示するものであり、本説明と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に従った結合共振器フィルタの断面図を示す。
【
図2】本開示の一実施形態に従った結合共振器フィルタの断面図を示す。
【
図3】本開示の一実施形態に従った結合共振器フィルタの断面図を示す。
【
図4】本開示の一実施形態に従った結合共振器フィルタの断面図を示す。
【
図5】本開示の一実施形態に従った結合共振器フィルタの断面図を示す。
【
図6】本開示の一実施形態に従った積層水晶フィルタの断面図を示す。
【
図7】本開示の一実施形態に従った結合共振器フィルタの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に記載された実施形態は、実施形態を実施することを当業者に可能にするために必要な情報を表し、実施形態を実施する際のベストモードを示す。添付図面に照らして以下の説明を読むことにより、当業者は、本開示の概念を理解すると共に、本明細書において特に対象とされないこれらの概念の適用例を認識するであろう。これらの概念及び適用例は、本開示及び添付された特許請求項の範囲内に含まれることが理解されるべきである。
【0010】
第1、第2などの用語が、各種要素を説明するために本明細書で使用され得るものの、これらの要素は、これらの用語によって限定されるべきではないことが理解されよう。これらの用語は、単に、1つの要素を別の要素と区別するために使用される。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と称することができ、同様に、第2の要素を第1の要素と称することができる。本明細書で使用される場合、用語「及び/または」は、列挙された関連項目のうちの1つ以上のいずれかの組み合わせ及び全ての組み合わせを含む。
【0011】
層、領域または基板などの要素が別の要素の「上に(on)」存在する、または「上へと(onto)」延在すると言及されるとき、その要素は、他の素子の上に直接存在する、もしくは他の素子の上へと直接延在することができ、または介在要素が存在してもよいことが理解されよう。これに対して、要素が別の要素の「上に直接(directly on)」存在する、または「上へと直接(directly onto)」延在すると言及されるときには、介在素子が存在しない。同様に、層、領域または基板などの要素が別の要素の「上に(over)」存在する、または「上に(over)」延在すると言及されるとき、その要素は、他の素子の上に直接存在する、もしくは他の素子の上に直接延在することができ、または介在要素が存在してもよい。これに対して、要素が別の要素の「上に直接(directly over)」存在する、または「上に直接(directly over)」延在すると言及されるときには、介在素子が存在しない。要素が別の要素に「接続されている(connected)」または「結合されている(coupled)」と言及されるとき、その要素は、他の素子に直接接続もしくは結合することができ、または介在要素が存在してもよいことも理解されよう。これに対して、要素が別の要素に「直接接続されている(directly connected)」または「直接結合されている(directly coupled)」と言及されるときには、介在素子が存在しない。
【0012】
「下(below)」または「上(above)」または「上方(upper)」または「下方(lower)」または「水平(horizontal)」または「垂直(vertical)」などの相対的な用語は、図面に示されるように、1つの要素、層または領域と、別の要素、層または領域との関係を説明するために本明細書で使用され得る。これらの用語及び上述した用語は、図面に表された方向に加えて、デバイスの異なる方向を含むように意図されることが理解されよう。
【0013】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本開示を限定することを意図しない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈において特に明確な指示がない限り、複数形も含むことが意図される。用語「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」及び/または「含んでいる(including)」は、本明細書で使用されるとき、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素及び/または構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素及び/またはこれらの集合の存在も追加も排除しない。
【0014】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用される用語は、本明細書及び関連技術分野の文脈におけるその意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書でそのように明確に定義されない限り、理想的な意味または過度に形式的な意味には解釈されないことが更に理解されよう。
【0015】
図1は、本開示の一実施形態に従った結合共振器フィルタ10の断面図を示す。結合共振器フィルタ10は、第1の共振器12、第2の共振器14、第1の共振器12と第2の共振器14との間の1つ以上の介在層16、基板18、及び第2の共振器14と基板18との間の1つ以上の追加介在層20を含む。第1の共振器12は、第2の共振器14上に存在する。第2の共振器14は、基板18上に存在する。第1の共振器12は、第1の電極24Aと第2の電極24Bとの間に挟まれた第1の圧電層22を含むバルク弾性波(bulk acoustic wave:BAW)共振器である。第2の共振器14も、第3の電極28Aと第4の電極28Bとの間に挟まれた第2の圧電層26を含むBAW共振器である。介在層16は、第2の電極24Bと第3の電極28Aとの間に存在する。追加介在層20は、第4の電極28Bと基板18との間に存在する。
【0016】
介在層16及び追加介在層20は、第1の共振器12と第2の共振器14とを音響的に(すなわち、機械的に)所望の程度まで結合させている。第1の共振器12と第2の共振器14との間の音響結合の量は、所望のフィルタ応答を提供するように調整されてもよい。上述したように、結合共振器フィルタ10は、当該フィルタの性能を劣化させるスプリアスモードに陥る場合がある。従って、第1の境界リング30A及び第2の境界リング30Bが設けられている。本実施形態において、第1の境界リング30Aは第1の電極24A上に設けられており、第2の境界リング30Bは第4の電極28B上に設けられている。具体的には、第1の境界リング30Aは、結合共振器フィルタ10の上部を形成する第1の電極24の表面に設けられている。第2の境界リング30Bは、結合共振器フィルタ10の上部の反対側にある第4の電極28Bの表面に設けられており、第2の共振器14が第2の境界リング30Bと結合共振器フィルタ10の上部との間に存在するようになっている。本明細書に述べたように、境界リングは、このリングが設けられている層上の質量を増加または減少させた領域である。本実施形態において、第1の境界リング30A及び第2の境界リング30Bは、それぞれ、第1の電極24A及び第4の電極28B上の追加金属層として示されており、従って、これらのリングが設けられている領域上の第1の電極24A及び第2の電極28Bの質量をそれぞれ増加させる。第1の境界リング30A及び第2の境界リング30Bは、結合共振器フィルタ10の有効領域32の周辺に沿った枠状構造として設けられてもよい。その場合、有効領域32は、第1の共振器12の電極24が第2の共振器14の電極28と重なり合う領域である。第1の境界リング30A及び第2の境界リング30Bの中央部は空いていてもよい。すなわち、第1の境界リング30A及び第2の境界リング30Bの中央部は、これらのリングがそれぞれ設けられている層の質量を変化させない場合がある。第1の境界リング30A及び第2の境界リング30Bの幅WBO及び高さHBOは、所望の応答を提供するように、必要に応じて個別に調整されてもよい。更に、第1の境界リング30A及び第2の境界リング30Bの材料は、所望の応答を提供するように選択されてもよい。一実施形態において、第1の境界リング30A及び第2の境界リング30Bはタングステン(W)を含む。
【0017】
境界リングは、従来のバルク弾性波共振器のスプリアスモードを抑制するために以前から使用されてきたが、それらのリングは、従来、デバイスの上部電極にのみ適用されてきた。単一の境界リングをこの従来の方法で提供することは、結合共振器フィルタの性能を低下させる場合がある。というのも、このリングは、スプリアスモードを抑制しない場合があり、更には挿入損失の増加を招く可能性があるためである。更に、結合共振器フィルタの上部電極上に単一の境界リングを使用することは、スプリアスモードの抑制を調整することを考慮していない。というのも、このような従来の境界リングの厚さは、境界リング領域の分散にほとんど影響を与えないためである。結合共振器フィルタ10内に埋め込まれる第2の境界リング30Bを追加することにより、スプリアスモードを抑制することができる。更に、結合共振器フィルタ10の挿入損失はほとんど増加しない。最後に、第2の境界リング30Bを追加することは、デバイスの境界リングモード(従来、単一の境界リングのみを含むデバイスの挿入損失の低下として見える)を結合共振器フィルタ10の通過帯域の下に移動させる。
【0018】
一実施形態において、介在層16及び追加介在層20は、酸化ケイ素(SiO2)及び/またはタングステン(W)を含む。各種実施形態において、介在層16及び追加介在層20は、異なる材料を有する交互層であってもよい。第1の圧電層22及び第2の圧電層26は、例えば、窒化アルミニウム(AlN)を含む。第1の電極24A、第2の電極24B、第3の電極28A及び第4の電極28Bは、タングステン(W)及びアルミニウム銅(AlCu)を含む金属積層体を含む。基板はシリコン(Si)を含む。当業者は、上記に挙げた結合共振器フィルタ10の部分に種々の材料が使用されてもよいことを容易に認めるであろう。それらの材料の全ては、本明細書において企図される。
【0019】
図2は、本開示の追加的な実施形態に従った結合共振器フィルタ10を示す。
図2に示した結合共振器フィルタ10は、
図1に示した結合共振器フィルタと実質的に類似している。ただし、第2の境界リング30Bが、第4の電極28Bではなく第3の電極28A上に存在する点を除く。具体的には、第2の境界リング30Bは、結合共振器フィルタ10の上部に対向する第3の電極28Aの表面に設けられており、第2の境界リング30Bが第2の共振器14と結合共振器フィルタ10の上部との間に存在するようになっている。いくつかの実施形態において、結合共振器フィルタ10は、2つより多い境界リング30を含んでもよい。例えば、
図1及び
図2に関連して説明した実施形態を組み合わせて、第2の境界リング30Bを
図2に示したように第3の電極28A上に置き、かつ第2の境界リング30Bを
図1に示したように第4の電極28B上に置くようにしてもよい。
【0020】
図3は、本開示の追加的な実施形態に従った結合共振器フィルタ10を示す。
図3に示した結合共振器フィルタ10は、
図1に示した結合共振器フィルタと実質的に類似している。ただし、第2の境界リング30Bが、第4の電極28Bではなく介在層16のうちの1つの上に、特に第3の介在層16C上に存在する点を除く。とりわけ、第2の境界リング30Bは、同様に、第1の中間層16A及び第2の中間層16Bなどの中間層16のうちの任意の1つの上に置かれてもよく、更には、それらの中間層の任意の表面に置かれてもよい。いくつかの実施形態において、結合共振器フィルタ10は、2つより多い境界リング30を含んでもよい。例えば、
図1、
図2及び
図3に関する実施形態を、上述した方法と類似した任意の方法で組み合わせてもよい。
【0021】
上述したように、境界リング30は、これらのリングが設けられている層上の質量の増加または質量の減少を提供することができる。更に、境界リング30は、これらのリングが設けられている層のある領域における質量の増加、及びこれらのリングが設けられている層の別の領域における質量の減少を提供することができる。
図4は、第1の境界リング30A及び第2の境界リング30Bを、それぞれ、第1の電極24A及び第2の電極24B上の質量を減少させた領域として示す。
図5は、「段」構成をとった第1の境界リング30A及び第2の境界リング30Bを示す。この構成により、境界リングのある部分が質量を減少させる一方、境界リングの他の部分が質量を増加させる、すなわち、境界リングの異なる部分が異なる量によって質量を変化させるようになっている。特に、
図5は、第1の境界リング30Aを第1の内側境界リング30A-1及び第1の外側境界リング30A-2として示し、第2の境界リング30Bを第2の内側境界リング30B-1及び第2の外側境界リング30B-2として示す。第1の内側境界リング30A-1及び第2の内側境界リング30B-1は、それぞれ、第1の電極24A及び第4の電極28B上の質量を減少させた領域である。第1の外側境界リング30A-2及び第2の外側境界リング30B-2は、それぞれ、第1の電極24A及び第4の電極28B上の質量を増加させた領域である。2つの「段」のみが示されているが(質量を減少させた領域及び質量を増加させた領域)、第1の境界リング30A及び第2の境界リング30Bは所望の効果を実現するために任意の数の「段」を含んでもよいことを当業者は容易に認めるであろう。
【0022】
本開示の原理は、積層水晶フィルタ34に同様に適用される。この例を
図6に示す。積層水晶フィルタ34は、結合共振器フィルタ10と実質的に類似している。ただし、共有電極36を提供するために中間層16が除去され、第2の電極24Bが第3の電極28Aと組み合わされている点を除く。第1の境界リング30A及び第2の境界リング30Bの単一構成のみが
図6の積層水晶フィルタ34のために示されているが、当業者は、結合共振器フィルタ10に関して上述した第1の境界リング30A及び第2の境界リング30Bの変形例のうちのいずれも積層水晶フィルタ34に同様に適用されることを認めるであろう。
【0023】
本開示の原理は、1つ以上の薄膜バルク弾性波共振器(film bulk acoustic wave resonator:FBAR)を含む結合共振器フィルタにも同様に適用される。このような結合共振器フィルタ10を
図7に示す。
図7に示した結合共振器フィルタ10は、
図1~
図5に関して上述した結合共振器フィルタと実質的に類似している。ただし、中間層20が除去され、第2の共振器14が基板18内の空気空洞38上に懸架されている点を除く。空気空洞38は説明のために特定のサイズ及び形状を有するように示されているが、空気空洞38は任意の数の異なる構成で設けられてもよいことを当業者は容易に認めるであろう。これらの構成の全ては本明細書において企図される。更に、第1の境界リング30A及び第2の境界リング30Bの単一構成のみが
図7に示されているが、当業者は、上述した第1の境界リング30A及び第2の境界リング30Bの変形例のうちのいずれも
図7に示した実施形態に同様に適用されることを認めるであろう。
【0024】
当業者は、本開示の好ましい実施形態に対する改良及び修正を認識するであろう。このような全ての改良及び修正は、本明細書に開示された概念及び後続する請求項の範囲内にあるとみなされる。