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特許7405530経路指定された信号を転送する中継装置、制御方法、及びプログラム
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  • 特許-経路指定された信号を転送する中継装置、制御方法、及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】経路指定された信号を転送する中継装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 40/02 20090101AFI20231219BHJP
   H04W 84/22 20090101ALI20231219BHJP
   H04W 92/20 20090101ALI20231219BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20231219BHJP
【FI】
H04W40/02
H04W84/22
H04W92/20 110
H04W16/26
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019147863
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021029023
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】武田 洋樹
【審査官】松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-354626(JP,A)
【文献】CATT,Routing selection in IAB,3GPP TSG RAN WG2#106 R2-1905832,フランス,3GPP,2019年05月03日
【文献】Qualcomm Inc (Rapporteur),Offline 105 - IAB BAP routing,3GPP TSG RAN WG2#106 R2-1908363,フランス,3GPP,2019年05月18日
【文献】ZTE, Sanechips,Consideration on Routing in IAB,3GPP TSG RAN WG3#103 R3-190545,フランス,3GPP,2019年02月15日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置または端末装置から宛先装置までの信号を中継する中継装置であって、
前記信号を受信する受信手段と、
受信信号に含まれるデータが転送される経路を示すと共に前記受信信号に含まれる経路識別情報によって前記信号の転送先を特定することができない場合、前記受信信号に含まれる前記宛先装置を示す宛先情報に基づいて、前記中継装置が接続を確立している装置を、前記信号の転送先の装置として決定する決定手段と、
を有することを特徴とする中継装置。
【請求項2】
前記信号の転送先の装置を前記経路識別情報に基づいて特定することができる場合、前記決定手段は、前記経路識別情報に基づいて、前記中継装置が接続を確立している装置を、前記信号の転送先の装置として決定する、ことを特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記基地局装置からの指示によらずに、前記信号の転送先の装置を決定する、ことを特徴とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の中継装置。
【請求項4】
前記決定手段は、前記基地局装置からの指示に従って、前記信号の転送先の装置を決定する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の中継装置。
【請求項5】
前記中継装置において、前記信号の転送先の候補の装置が複数設定されており、
前記決定手段は、前記宛先情報に基づいて、複数の前記信号の転送先の候補の装置のうちのいずれかを前記信号の転送先の装置として決定する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項6】
前記中継装置は、前記信号の転送先の複数の候補のそれぞれと接続を確立している、ことを特徴とする請求項5に記載の中継装置。
【請求項7】
前記受信信号に含まれる前記経路識別情報は、前記基地局装置または前記端末装置から前記宛先装置までの通信経路に含まれる装置を特定する情報と、前記信号が転送される装置の順序を示す情報と、を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項8】
前記決定された転送先の装置へ前記信号を送信する送信手段をさらに有し、
前記送信手段によって送信される前記信号は、前記受信信号に含まれている前記経路識別情報と異なる他の経路識別情報を含む、ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項9】
前記決定された転送先の装置へ前記信号を送信する送信手段をさらに有し、
前記送信手段によって送信される前記信号は、前記受信信号に含まれている前記経路識別情報と同じ経路識別情報を含む、ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項10】
前記決定された転送先の装置へ前記信号を送信する送信手段をさらに有し、
前記送信手段によって送信される前記信号は、前記経路識別情報を含まない、ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項11】
基地局装置または端末装置から宛先装置までの信号を中継する中継装置によって実行される制御方法であって、
前記信号を受信することと、
受信信号に含まれるデータが転送される経路を示すと共に前記受信信号に含まれる経路識別情報によって前記信号の転送先を特定することができない場合、前記受信信号に含まれる前記宛先装置を示す宛先情報に基づいて、前記中継装置が接続を確立している装置を、前記信号の転送先の装置として決定することと、
前記決定された転送先の装置へ前記信号を送信することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
基地局装置または端末装置から宛先装置までの信号を中継する中継装置に備えられたコンピュータに、
前記信号を受信させ、
受信信号に含まれるデータが転送される経路を示すと共に前記受信信号に含まれる経路識別情報によって前記信号の転送先を特定することができない場合、前記受信信号に含まれる前記宛先装置を示す宛先情報に基づいて、前記中継装置が接続を確立している装置を、前記信号の転送先の装置として決定させ、
前記決定された転送先の装置へ前記信号を送信させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路指定された信号を転送する中継通信制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)では、第5世代(5G)のセルラ通信規格であるNR(New Radio)規格の策定が進められている。また、NR規格において、基地局装置が端末装置と通信を行う無線リソースを用いてバックホール回線の通信を実行する技術として、IAB(Integrated Access and Backhaul)が検討されている。IABでは、例えばコアネットワークに直接接続された5Gの基地局装置(IABドナー)と、端末装置に対する無線アクセスを提供する中継装置(IABノード)との間の回線や、IABノード間の回線が無線によって確立される。IABドナーは、自装置と直接的に又は間接的に接続しているIABノードを管理しており、自装置と直接接続していない端末装置がどのIABノードに接続しているかを認識可能である。そして、IABドナーは、例えば、端末装置宛てのデータを含んだパケットを、その端末装置が接続中のIABノードへ送信し、そのIABノードがそのデータを含んだ無線信号を端末装置へ送信するようにする。IABドナーから、IABノードまでの間には複数の経路が設定されてもよい。
【0003】
図1に、IABが用いられる無線通信システムの例を示す。図1の例では、例えばコアネットワークに接続された5Gの基地局装置101と、その基地局装置101と直接接続可能な中継装置A102と、基地局装置101と少なくとも中継装置A102を介して接続される中継装置B103~中継装置F107が存在する。一例において、基地局装置101はIABドナーであり、中継装置はIABノードである。そして、基地局装置101は、例えば端末装置111との通信を行う際には、基地局装置101から中継装置A102、中継装置A102から中継装置B103、の順でパケットを転送し、中継装置B103から端末装置111へデータを含んだ無線信号が送信される。同様に、端末装置111から送信された無線信号は中継装置B103によって受信され、そのデータを含んだパケットが中継装置A102を介して基地局装置101へ送信される。そして、基地局装置101と1つの中継装置との間の経路は、複数設定可能であり、例えば、基地局装置101と中継装置F107との間の経路は、[中継装置A102、中継装置B103、中継装置D105]を介する経路、[中継装置A102、中継装置C104、中継装置D105]を介する経路、及び、[中継装置A102、中継装置C104、中継装置E106]を介する経路、の3つの経路が設定可能である。
【0004】
複数の経路が設定可能である場合、基地局装置は、端末装置と直接通信する中継装置を特定した上で、その中継装置との間で使用されるべき経路を決定する。例えば、複数の経路の負荷を均一とするなどの所定の基準によって、使用される経路が決定される。非特許文献1には、中継されるパケットに、中継の終着点のノード(例えば上りリンクでは基地局装置、下りリンクでは端末装置と直接通信する中継装置)の識別情報と、使用される経路の識別情報とを含めることが記載されている。これによれば、各中継装置は、経路の識別情報に基づいて、受信したパケットをどのノードへ転送するべきかを認識することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】3GPP寄書、R2-1908363、2019年5月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
中継経路の一部において通信ができない場合が想定される。例えば、図1の中継装置A102と中継装置B103との間の無線品質が劣化し、通信を継続することができなくなりうる。この場合、中継装置A102が、基地局装置101から受信した、中継装置B103を通過する経路の識別情報が含まれたパケットを、中継装置B103に送信することができず、パケットの転送に失敗しうる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、中継伝送路を用いた通信において信号が適切に宛先へ転送されるようにする技術を提供する。
【0008】
本発明の一態様による中継装置は、基地局装置または端末装置から宛先装置までの信号を中継する中継装置であって、前記信受信する受信手段と、受信信号に含まれるデータが転送される経路を示すと共に前記受信信号に含まれる経路識別情報によって前記信号の転送先を特定することができない場合前記受信信号に含まれる前記宛先装置を示す宛先情報に基づいて、前記中継装置が接続を確立している装置を、前記信号の転送先の装置として決定する決定手段と、を有する

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、中継伝送路を用いた通信において、信号を適切に宛先へ転送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】無線通信システムの構成例を示す図である。
図2】中継装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3】中継装置の機能構成例を示す図である。
図4】中継装置が実行する処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち2つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
(システム構成)
本実施形態の無線通信システムは、上述の図1のような構成を有する。本システムでは、上述のように、基地局装置101(IABドナー)と端末装置111~112との間の通信が、1つ以上の中継装置(IABノード)を含んだ中継経路を通じて実行されうる。この中継経路は、複数個、設定可能であり、基地局装置は、どの経路を用いて通信を行うかを決定しうる。例えば、基地局装置101と中継装置F107との間では、上述のように、[中継装置A102、中継装置B103、中継装置D105]を介する第1の経路、[中継装置A102、中継装置C104、中継装置D105]を介する第2の経路、及び、[中継装置A102、中継装置C104、中継装置E106]を介する第3の経路、の3つの経路が設定可能である。基地局装置101は、例えば端末装置112との間の通信を、中継装置F107を介して実行すると決定し、さらに、基地局装置101と中継装置F107との間の経路を上述の3つの経路の中から選択する。
【0013】
なお、経路は、例えば、基地局装置が新たに設置された中継装置と接続を確立した際、又は、中継装置が新たに設置された他の中継装置と接続を確立した際などに、新たに設定される。例えば、中継装置F107が新たに設置され、中継装置E106との接続が確立されたことに応じて、基地局装置101から[中継装置A102、中継装置C104、中継装置E106]を介して中継装置F107へ至る経路が設定される。また、中継装置F107と中継装置D105との間の接続が確立されたことに応じて、基地局装置101から、[中継装置A102、中継装置B103、中継装置D105]を介して中継装置F107へ至る経路と、[中継装置A102、中継装置C104、中継装置D105]を介して中継装置F107へ至る経路と、が設定される。なお、経路が設定されると、その経路に含まれる中継装置に対して、その経路の識別情報が通知される。識別情報には、対応する経路に含まれる装置を特定する情報と、それらの装置の間で、どのような順序で信号が転送されるべきかを示す情報とが対応付けられて、各中継装置に記憶される。各中継装置は、識別情報に基づいて、信号の転送先の装置(例えば他の中継装置や基地局装置)を特定することができる。なお、ここでの「転送」は、受信した信号をそのまま増幅して別の装置へ送信する非再生中継であってもよいが、以下では、受信した信号を復号してデータを抽出し、そのデータから送信信号を生成して転送先の装置へ送信する再生中継が用いられるものとする。また、「信号を転送」は、その信号の内部に含まれるデータを転送することを指し、以下で説明するように、経路の識別情報などのヘッダの情報は変更されてもよい。
【0014】
なお、2つの中継装置間に複数の回線が確立される場合は、経路の識別情報に、中継装置間の回線を特定するための情報を含んでもよい。例えば、中継装置A102と中継装置B103の間に、回線αと回線βの2回線が確立されている場合には、経路の識別情報に、使用する回線(回線α又は回線β)を特定する情報を含むことができる。
【0015】
一例において、本実施形態では、基地局装置101が端末装置112と通信するものとし、この通信を行うために、[中継装置A102、中継装置B103、中継装置D105]を介する第1の経路が選択されたものとする。この場合、基地局装置101が端末装置112へ送信する信号が、まず、中継装置A102へ送信され、中継装置A102は、その信号を受信して、中継装置B103へ転送する。その後、中継装置B103は、中継装置A102から受信した信号を中継装置D105へ転送し、中継装置D105は、中継装置B103から受信した信号を中継装置F107へ転送する。そして、中継装置F107は、受信した信号に含まれるデータを、端末装置112へ送信する。なお、一例において、基地局装置と中継装置との間の通信、中継装置間の通信、及び中継装置と端末装置との間の通信は、無線によって行われる。
【0016】
なお、以下では、基地局装置101が複数の中継装置を介して端末装置と通信する場合の例について説明するが、基地局装置101は、1つの中継装置を介して又は中継装置を介さずに、端末装置と通信することも当然に可能である。
【0017】
基地局装置101は、上述の第1の経路で信号を送信する際に、その信号に、端末装置112と直接通信する中継装置F107を宛先として示す第1の識別情報と、信号が転送されるべき経路である第1の経路を示す第2の識別情報とを含めて送信する。そして、第1の経路に含まれる中継装置は、第1の識別情報を確認することにより自装置が宛先であると判定した場合に、転送されてきた信号に含まれる端末装置の情報に基づいて、転送されてきたデータを含んだ無線信号を端末装置へ送信する。また、中継装置は、第1の識別情報を確認することにより自装置が宛先でないと判定した場合に、第2の識別情報に基づいて、信号の転送先の装置を特定する。例えば、上述の第1の経路において、中継装置B103は、中継装置A102から信号を受信した場合、その信号に含まれる第1の識別情報を確認して、自装置が宛先(中継装置F107)ではないと判定する。そして、中継装置B103は、第1の経路を示す第2の識別情報に基づいて、中継装置D105を転送先の装置として特定し、中継装置D105へ、受信した信号を転送する。また、第1の経路において、中継装置B103は、中継装置D105から信号を受信した場合、その信号に含まれる第1の識別情報を確認して、自装置が宛先(基地局装置101)ではないと判定する。そして、中継装置B103は、第1の経路を示す第2の識別情報に基づいて、中継装置A102を転送先の装置として特定し、中継装置A102へ、受信した信号を転送する。このようにして、基地局装置101と端末装置との間の通信を、中継経路を用いて実行することが可能となる。
【0018】
ここで、例えば、基地局装置101が中継装置F107を示す第1の識別情報と第1の経路を示す第2の識別情報とを含んだ信号を、中継装置A102へ送信した場合に、中継装置A102が、その信号を中継装置B103へ転送できない状態が発生したものとする。例えば、中継装置A102と中継装置B103との間の無線リンクにおいてRLF(Radio Link Failure)が発生した場合や、その無線リンクの負荷が高負荷状態となり、十分な品質での通信ができなくなった場合に、この状態が発生しうる。このとき、中継装置A102は、基地局装置101に第1の経路を使用できないことを通知し、別の経路を使用すべきことを通知しうる。そして、基地局装置101は、例えば中継装置A102と中継装置B103との間の無線リンクを使用しない、上述の第2の経路又は第3の経路を使用して信号を再送することができる。一方、例えば、使用中の経路において、宛先に近い中継装置において無線リンクが使用できないと判定された場合に、基地局装置101へ経路が使用不能であることを通知すると、信号がその無線リンクが使用できない中継装置に到達するまでの時間に加え、通知が基地局装置101へ到達するまでの時間がかかり、信号が別経路で送信されるまでの時間が長期化しうる。
【0019】
このため、本実施形態では、中継装置が、上述の通知に加えて又はこれに代えて、別の宛先に信号を転送することにより、信号が別経路で送信されることによる通信の遅延を防ぐようにする。例えば、中継装置A102が、中継装置B103との間の無線リンクが使用できないと判定した場合、中継装置B103に代えて、中継装置C104へ、信号を転送するようにする。しかしながら、この場合、中継装置C104は、受信した信号に含まれる第2の識別情報で特定される経路には自装置が含まれていないため、この第2の識別情報によって転送先の装置を決定することができない。
【0020】
このため、本実施形態では、中継装置が、受信した信号に含まれる第2の識別情報によって示される経路に自装置が含まれない場合、特定の装置を、信号の転送先の装置として決定する。例えば、中継装置C104は、自装置が接続を確立している中継装置D105及び中継装置E106のうちのいずれかを、転送先の装置として決定する。中継装置C104は、例えば、自装置内に記憶されている経路の情報に基づいて、第1の識別情報に基づいて、中継装置F107へつながる経路を選択し、その経路において中継装置C104が信号を転送すべき装置を、転送先の装置として決定しうる。
【0021】
また、基地局装置101は、中継装置C104が、転送先の装置を決定可能か否か事前設定してもよい。この場合には、中継装置C104は、事前設定に従い、受信信号の転送先の装置を決定、または、受信信号の転送をせずに受信信号を破棄しうる。
【0022】
中継装置C104は、事前設定された所定の転送先の装置を、特定の装置として決定してもよい。一例において、中継装置C104は、基地局装置101からの信号を送信する転送先の候補となる装置が複数存在する状態となったことに応じて、いずれかの装置を所定の転送先の装置として事前設定する。例えば、中継装置C104は、中継装置D105及び中継装置E106のそれぞれと接続を確立したことに応じて(例えばDual Connectivityを開始したことに応じて)、いずれかの装置(例えば中継装置D105)を、所定の転送先の装置として事前設定しうる。いずれの装置を所定の転送先の装置とするかは、例えば基地局装置101の指示に従って決定される。なお、中継装置C104が、基地局装置101の指示によらずに、所定の転送先の装置を決定してもよい。また、所定の転送先の装置は1つのみである必要はなく、複数の所定の転送先の装置が事前設定されてもよい。このとき、中継装置C104は、複数の所定の転送先の装置のそれぞれに対して、優先順位を付した情報を保持してもよい。そして、中継装置C104は、例えば第1の識別情報で示される宛先へ到達可能な経路に含まれると共に所定の転送先の装置に含まれる装置の中から、優先順位に基づいて、実際に転送を行う特定の装置を決定しうる。中継装置C104は、例えば、所定の転送先の装置の中で優先順位が最も高い装置を特定の装置として決定しうる。また、中継装置C104は、例えば、所定の転送先の装置の中で優先順位が所定順位より高い装置を特定の装置として決定してもよい。
【0023】
なお、中継装置C104は、受信した信号に含まれる第2の識別情報によって示される経路に自装置が含まれない場合であっても、自装置が信号を送信可能な装置が含まれると判定することができる場合がある。例えば、上述の第1の経路は中継装置D105を含み、中継装置C104は中継装置D105と接続を確立しているため、この場合、中継装置C104は、中継装置D105を、信号を転送する特定の装置として決定しうる。なお、このような処理を実行する場合、基地局装置101は、自装置と他の装置との間を結ぶすべての経路についての識別情報と経路に含まれる装置を示す情報を、各中継装置に通知しうる。また、基地局装置101は、各中継装置に対して、その中継装置を含んだ全ての経路に加えてその中継装置が接続している他の中継装置を含んだ全ての経路について、経路の識別情報と、その経路に含まれる装置を示す情報とを通知してもよい。これにより、各中継装置は、自装置が含まれない経路に関する第2の識別情報が含まれた信号を受信した際に、自装置と接続を確立しており、かつ、その第2の識別情報で示される経路に含まれる装置が存在する場合、その装置へ信号を転送することができる。なお、中継装置は、信号が上りリンクの信号であるか下りリンクの信号であるかによって、転送先として選択可能な装置を限定しうる。すなわち、例えば中継装置C104が、中継装置A102から下りリンクの信号を受信した場合に、中継装置A102などの上りリンク方向に存在する他の装置を、特定の装置の選択の候補から除きうる。これにより、信号の送信元の装置へその信号を転送し返すこと等により端末装置へ届かなくなることを防ぐことができる。また、その際、中継装置C104は、第1の識別情報である宛先に、基地局装置101又は中継装置F107(信号の送信先)が指定される場合には、その第1の識別情報を用いて、その信号が、上りリンクの信号であるか下りリンクの信号であるかの判断を実行しうる。また、中継装置C104が、第2の識別情報によって示される経路により、その信号が、上りリンクの信号であるか下りリンクの信号であるかを判断する実施例もありうる。
【0024】
また、中継装置C104は、信号の転送先の複数の装置を、その信号が送信される方向と反対方向の通信(すなわち、信号が下りリンクの信号である場合は上りリンクの通信、信号が上りリンクの信号である場合は下りリンクの通信)における各経路の使用頻度に応じて、信号を転送する特定の装置を決定してもよい。すなわち、信号が転送される方向の反対方向のリンクにおける通信における使用頻度が高い経路は、無線品質等の無線リンクの状態が良好であると考えることができるため、そのような経路が使用されるように、特定の装置が決定されうる。例えば、中継装置C104は、中継装置F107から中継装置D105を介して中継装置C104を通過する経路の第1の使用頻度と、中継装置F107から中継装置E106を介して中継装置C104を通過する経路の第2の使用頻度とを特定する。そして、中継装置C104は、第1の使用頻度の方が高い場合には、中継装置D105を特定の装置として決定し、第2の使用頻度の方が高い場合には、中継装置E106を特定の装置として決定しうる。なお、第1の使用頻度と第2の使用頻度との差の大きさが所定値以下の場合は、中継装置C104は、例えば事前設定された所定の転送先の装置を、特定の装置として決定してもよい。
【0025】
なお、中継装置C104は、受信した信号に含まれる第2の識別情報によって示される経路に自装置が含まれない場合、上述のような信号の転送を行うと共に、基地局装置101又は中継装置F107(信号の送信元)に対して、その経路が使用できないことを通知しうる。中継装置C104は、この通知により、別の経路を使用して通信を行うように信号の送信元の装置に促すことができる。
【0026】
また、中継装置C104が信号の転送を行う期間を、上記送信元の装置への通信後の一定の期間に限定してもよい。この場合、一定期間満了後は、中継装置C104が転送先の装置を決定することなく、受信した信号に含まれる第2の識別情報によって示される経路に自装置が含まれない場合には、その信号の転送を行わずに破棄してもよい。
【0027】
なお、中継装置C104は、受信した信号に含まれる第2の識別情報によって示される経路に自装置が含まれない場合に、信号に含まれる第2の識別情報を変更してもよい。例えば、中継装置C104は、信号に含まれる第2の識別情報を、信号の転送先の装置が含まれる経路に対応する識別情報と置き換えることができる。これにより、中継装置C104から信号を受信した装置は、その置き換えられた識別情報に基づいて、信号の転送先を決定することができる。例えば、中継装置C104は、上述の第1の経路に対応する第2の識別情報を含んだ信号を受信すると、上述のようにして、転送先の装置を決定する。そして、中継装置C104は、その転送先の装置を含んだ経路に対応する識別情報により、受信した信号に含まれる第2の識別情報を置き換える。例えば、中継装置C104は、中継装置D105を転送先の装置とした場合には上述の第2の経路に対応する識別情報により、中継装置E106を転送先の装置とした場合には上述の第3の経路に対応する識別情報により、第2の識別情報を置き換える。これにより、信号の転送を受けた中継装置D105又は中継装置E106は、この置き換えられた識別情報により、信号を中継装置F107へ転送することを決定することができる。なお、中継装置C104は、中継装置D105を転送先の装置とした場合には、第1の経路に対応する第2の識別情報をそのままとしてもよい。すなわち、第1の経路は、中継装置C104を含まないが、中継装置D105を含むため、中継装置D105を転送先とする場合には、第2の識別情報はそのままとしてもよい。これによれば、中継装置D105以降の信号の転送は、基地局装置101が設定した経路のままで実行することができる。
【0028】
また、中継装置C104は、例えば、第2の識別情報を所定の情報によって置き換えてもよい。この所定の情報は、信号の転送に使用される経路が特定されないことを示す情報でありうる。なお、中継装置C104は、所定の情報によって第2の識別情報を置き換えるのに代えて、第2の識別情報を削除してもよい。すなわち、第2の識別情報が含められないことにより、経路が特定されないことを黙示的に示すようにしてもよい。これらの場合、中継装置C104によって転送された信号を受信した中継装置は、第2の識別情報によって信号の転送先を特定することができないため、上述の中継装置C104に着目して説明したように、転送先の装置を決定し、その決定した転送先の装置へ信号を転送する。
【0029】
なお、上述の例では、中継装置C104が、受信した信号に含まれる第2の識別情報によって示される経路に自装置が含まれない場合に、第2の識別情報を変更する例について説明したが、これに限られない。すなわち、上述の例では、中継装置A102が、信号を本来転送すべき中継装置B103へ転送せずに、中継装置C104へ送信したことに起因して、中継装置C104が、自装置を含まない経路に対応する第2の識別情報を含んだ信号を受信している。これに対して、中継装置A102が、信号の転送先を第2の識別情報で示される経路によらずに決定した場合に、第2の識別情報を変更するようにしてもよい。この変更は、上述の場合と同様に、所定の情報による第2の識別情報の置き換え又は第2の識別情報の削除でありうる。この場合、中継装置C104は、中継装置A102によって転送された信号を受信すると、第2の識別情報によって信号の転送先を特定することができないため、上述のように、転送先の装置を決定し、その決定した転送先の装置へ信号を転送する。また、中継装置A102は、第2の識別情報を、信号の転送先である中継装置C104を含んだ経路に対応する識別情報と置き換えてもよい。この場合、中継装置C104は、中継装置A102によって転送された信号を受信すると、第2の識別情報によって自装置が含まれた経路を特定することができるため、その経路に従って、信号の転送先を決定することができる。なお、中継装置A102は、例えば第2の識別情報によって示される第1の経路に含まれている中継装置D105との無線リンクを確立しており、その中継装置D105へ直接信号を転送すると決定した場合などでは、第2の識別情報を変更せずに信号を転送してもよい。
【0030】
なお、中継装置C104は、信号の転送先の装置を決定すると共に、転送先の装置との間で複数の回線が確立される場合に、転送に用いる回線を、例えば、使用可能な回線の中からランダムに選択することで決定しうる。なお、転送に用いる回線の選択は、予め決められた設定やルール、回線の品質(QoS)の高さ、または負荷の少なさ(使用しているノードやUEの数の少なさ、又は、無線リソースの使用率の少なさ)に基づいてもよい。
【0031】
なお、上述の説明では、中継装置A102と中継装置C104に着目して説明したが、全ての中継装置が、上述の中継装置A102が実行する処理と、中継装置C104が実行する処理とを共に実行可能なように構成されうる。
【0032】
(装置構成)
続いて、上述のような処理を実行する中継装置のハードウェア構成例について図2を用いて説明する。これらの装置は、一例において、プロセッサ201、ROM202、RAM203、記憶装置204、及び通信回路205を含んで構成される。プロセッサ201は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、中継装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM202は、中継装置が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM203は、プロセッサ201がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置204は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路205は、例えば、無線通信用の回路によって構成される。中継装置は、基地局装置や他の中継装置や端末装置との通信のための通信回路205として、例えばセルラ通信用のベースバンド回路及びRF回路等とアンテナとを含んで構成される。なお、中継装置の通信回路205は、例えば、制御用の信号伝送等のための無線又は有線通信を行うための回路を含んでもよい。なお、図2では、1つの通信回路205が図示されているが、各装置は、複数の通信回路を有しうる。
【0033】
図3に、中継装置の機能構成例を示す。中継装置は、例えば、通信部301、経路情報特定部302、転送先決定部303、及び、転送制御部304を含んで構成される。また、中継装置は、経路情報変更部305や転送先変更通知部306を含んでもよい。なお、これらの機能部は、例えばプロセッサ201が、ROM202に記憶されたプログラムを実行することにより実現されうる。
【0034】
通信部301は、セルラ通信規格に従って、基地局装置、他の中継装置、端末装置との無線通信を行うための機能部である。経路情報特定部302は、基地局装置や他の中継装置から受信した信号が転送されるべき経路を、その信号に含まれる識別情報に基づいて特定する。転送先決定部303は、経路情報特定部302によって特定された経路に基づいて、信号の転送先の装置を決定する。例えば、転送先決定部303は、特定された経路に自装置が含まれている場合は、その経路において次に信号が転送されるべき装置を特定する。なお、転送先決定部303は、特定された経路に従って決定された転送先の装置との間の無線リンクでの通信ができない場合等に、その転送先の装置と異なる装置へ信号を転送すると決定してもよい。また、転送先決定部303は、特定された経路に自装置が含まれていない場合、特定の装置を転送先の装置として決定しうる。なお、特定の装置の決定方法については、上述の通りであるため、ここでは説明を繰り返さない。転送制御部304は、転送先決定部303によって決定された転送先の装置へ、受信された信号を転送するように通信部301を制御する。なお、このときの信号において、受信した信号に含まれる識別情報で特定される経路での次の転送先の装置と異なる装置へ信号が転送される場合、経路情報変更部305は、その識別情報を変更しうる。この識別情報の変更方法についても、上述の通りであるため、ここでは説明を繰り返さない。転送先変更通知部306は、受信した信号に含まれる識別情報で特定される経路での次の転送先の装置と異なる装置へ信号が転送される場合に、その経路が使用できないことを通知するための信号を基地局装置101へ送信する。なお、転送先変更通知部306は、経路を決定した装置に対して、その経路を使用できないことを通知しうる。例えば、転送先変更通知部306は、中継装置F107から送信される信号について、その経路を基地局装置101が決定する場合は経路を使用できないことの通知が基地局装置101へ送信し、経路を中継装置F107が決定する場合はその通知を中継装置F107へ送信しうる。
【0035】
(処理の流れ)
中継装置が実行する処理の流れについて、図4を用いて概説する。図4の処理は、例えば、基地局装置と、端末装置に直接接続する中継装置との間の経路の中間に存在する中継装置(すなわち、経路の端部ではない中継装置)によって実行される。本処理では、中継装置は、まず、他の装置(例えば、基地局装置または他の中継装置)から信号を受信する(S401)。中継装置は、受信した信号を解析し、その信号に含まれる宛先の装置を示す第1の識別情報と、経路を示す第2の識別情報とを抽出し、第2の識別情報に基づいて、信号を転送すべき経路を特定する(S402)。そして、中継装置は、特定した経路に基づいて、転送先の装置を決定する(S403)。
【0036】
例えば、中継装置は、特定した経路に自装置が含まれる場合、その経路において自装置の次に信号が転送されるべき装置を、転送先の装置として決定する。このとき、中継装置は、例えば、経路における次の転送先の装置との間の無線リンクにおいて障害が生じている場合等に、その転送先の装置との通信を行うべきでないと判定することがありうる。この場合、中継装置は、経路に含まれない他の装置を、信号の転送先として決定しうる。また、中継装置は、特定した経路に自装置が含まれない場合、転送先の装置を独自に決定しうる。これらの場合の転送先の装置の決定方法は上述の通りであるため、ここでの説明については省略する。
【0037】
その後、中継装置は、S403で決定した転送先の装置へ、S401で受信した信号を転送する(S405)。このとき、中継装置は、信号に含まれる第2の識別情報によって特定される経路に含まれない装置へ信号を転送する場合や、自装置がその経路に含まれない場合に、その第2の識別情報を変更しうる(S404)。第2の識別情報の変更処理についても上述の通りであるため、ここでの説明については省略する。なお、S404の処理は実行されなくてもよい。また、中継装置は、信号に含まれる第2の識別情報によって特定される経路に含まれない装置へ信号を転送する場合や、自装置がその経路に含まれない場合に、その経路が使用できないことを基地局装置101へ通知してもよい(S406)。なお、中継装置は、受信した信号において、例えば第2の識別情報が所定の情報に変更されていることを特定した場合は、その情報を変更した中継装置が経路の使用ができないことを基地局装置101へ通知したと想定することができるため、S406の通知を行わなくてもよい。また、転送先の変更が行われていない場合、S406の通知は行われない。なお、S406では、信号の転送経路を初期的に決定した装置に対して通知が行われる。例えば、中継装置F107が基地局装置101へ信号を送信する際に、その経路を中継装置F107が決定した場合には、通知は中継装置F107に対して行われ、経路を基地局装置101が決定した場合には、通知は基地局装置101に対して行われうる。
【0038】
このように、上述のような中継装置によれば、信号に含まれている経路の識別情報に基づいて、その信号をその経路に沿って転送することが困難な状況において、その経路から外れて転送を継続することにより、宛先の装置まで信号を転送することができる。また、その時に、上述のようにして転送先の装置が適切に選択されることにより、効率的な信号の転送を行うことができる。また、転送対象の信号において、転送先の装置の変更に伴って経路を示す第2の識別情報を変更することにより、転送先の装置における信号の転送先の決定を容易にすることができる。また、転送先の変更が行われた場合に、初期設定された経路が使用できないことを通知することにより、使用できない経路が指定された状態で信号が繰り返し送信されることを防ぐことができる。
【0039】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
図1
図2
図3
図4