IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ KDDI株式会社の特許一覧

特許7405531経路指定された信号を転送する中継装置、制御方法、及びプログラム
<>
  • 特許-経路指定された信号を転送する中継装置、制御方法、及びプログラム 図1
  • 特許-経路指定された信号を転送する中継装置、制御方法、及びプログラム 図2
  • 特許-経路指定された信号を転送する中継装置、制御方法、及びプログラム 図3
  • 特許-経路指定された信号を転送する中継装置、制御方法、及びプログラム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】経路指定された信号を転送する中継装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 40/02 20090101AFI20231219BHJP
   H04W 84/22 20090101ALI20231219BHJP
   H04W 92/20 20090101ALI20231219BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20231219BHJP
【FI】
H04W40/02
H04W84/22
H04W92/20 110
H04W16/26
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019147867
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021029027
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】武田 洋樹
【審査官】松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/046504(WO,A1)
【文献】Qualcomm Inc (Rapporteur),Offline 105 - IAB BAP routing,3GPP TSG RAN WG2#106 R2-1908363,フランス,3GPP,2019年05月18日
【文献】Huawei,Destination Address and Forwarding Path based Routing for IAB,3GPP TSG RAN WG3#101 R3-184799,フランス,3GPP,2018年08月10日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置と端末装置との間の通信を中継する中継装置であって、
前記通信のために送信された信号を他の装置から受信する受信手段と、
受信信号に含まれる第1の識別情報であって、前記基地局装置と前記端末装置との間で前記受信信号に含まれるデータが転送される経路を示す前記第1の識別情報に基づいて、前記データの転送先の装置を決定する決定手段と、
前記データが含まれる前記受信信号に、前記第1の識別情報によって示される経路と異なる前記データが転送される経路を示す第2の識別情報であって、前記受信信号には含まれていなかった前記第2の識別情報を追加して、前記第1の識別情報と前記第2の識別情報とを含んだ送信信号を生成する生成手段と、
前記決定された転送先の装置へ、前記送信信号を送信する送信手段と、
を有することを特徴とする中継装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記第1の識別情報によって示される前記経路を使用することができない場合に、前記転送先の装置として特定の装置を決定し、
前記生成手段は、前記受信信号に、前記特定の装置を含んだ経路を示す前記第2の識別情報を追加した前記送信信号を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記第2の識別情報は、前記中継装置を介する経路を示す、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の中継装置。
【請求項4】
前記基地局装置から、前記第2の識別情報の追加が許可されるか否かを示す情報を取得する手段をさらに有し、
前記生成手段は、前記第2の識別情報の追加が許可される場合に、前記第2の識別情報を追加した前記送信信号を生成する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項5】
前記第2の識別情報が前記受信信号に追加されたことを前記基地局装置へ通知する手段をさらに有する、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項6】
前記基地局装置から、1つ以上の経路の追加可否判断用の情報を取得する手段をさらに有し、
前記生成手段は、前記追加可否判断用の情報に基づいて特定された経路に対応する前記第2の識別情報を、前記受信信号に追加して前記送信信号を生成する、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項7】
前記追加可否判断用の情報は、前記1つ以上の経路のそれぞれにおける無線使用率の情報である、ことを特徴とする請求項6に記載の中継装置。
【請求項8】
前記第2の識別情報には、当該第2の識別情報によって特定される経路に含まれる装置間で前記データの転送に使用される回線を特定する情報が含まれる、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項9】
基地局装置と端末装置との間の通信を中継する中継装置によって実行される制御方法であって、
前記通信のために送信された信号を他の装置から受信することと、
受信信号に含まれる第1の識別情報であって、前記基地局装置と前記端末装置との間で前記受信信号に含まれるデータが転送される経路を示す前記第1の識別情報に基づいて、前記データの転送先の装置を決定することと、
前記データが含まれる前記受信信号に、前記第1の識別情報によって示される経路と異なる前記データが転送される経路を示す第2の識別情報であって、前記受信信号には含まれていなかった前記第2の識別情報を追加して、前記第1の識別情報と前記第2の識別情報とを含んだ送信信号を生成することと、
前記決定された転送先の装置へ、前記送信信号を送信することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項10】
基地局装置と端末装置との間の通信を中継する中継装置に備えられたコンピュータに、
前記通信のために送信された信号を他の装置から受信させ、
受信信号に含まれる第1の識別情報であって、前記基地局装置と前記端末装置との間で前記受信信号に含まれるデータが転送される経路を示す前記第1の識別情報に基づいて、前記データの転送先の装置を決定させ、
前記データが含まれる前記受信信号に、前記第1の識別情報によって示される経路と異なる前記データが転送される経路を示す第2の識別情報であって、前記受信信号には含まれていなかった前記第2の識別情報を追加して、前記第1の識別情報と前記第2の識別情報とを含んだ送信信号を生成させ、
前記決定された転送先の装置へ、前記送信信号を送信させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路指定された信号を転送する中継通信制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)では、第5世代(5G)のセルラ通信規格であるNR(New Radio)規格の策定が進められている。また、NR規格において、基地局装置が端末装置と通信を行う無線リソースを用いてバックホール回線の通信を実行する技術として、IAB(Integrated Access and Backhaul)が検討されている。IABでは、例えばコアネットワークに直接接続された5Gの基地局装置(IABドナー)と、端末装置に対する無線アクセスを提供する中継装置(IABノード)との間の回線や、IABノード間の回線が無線によって確立される。IABドナーは、自装置と直接的に又は間接的に接続しているIABノードを管理しており、自装置と直接接続していない端末装置がどのIABノードに接続しているかを認識可能である。そして、IABドナーは、例えば、端末装置宛てのデータを含んだパケットを、その端末装置が接続中のIABノードへ送信し、そのIABノードがそのデータを含んだ無線信号を端末装置へ送信するようにする。IABドナーから、IABノードまでの間には複数の経路が設定されてもよい。
【0003】
図1に、IABが用いられる無線通信システムの例を示す。図1の例では、例えばコアネットワークに接続された5Gの基地局装置101と、その基地局装置101と直接接続可能な中継装置A102と、基地局装置101と少なくとも中継装置A102を介して接続される中継装置B103~中継装置F107が存在する。一例において、基地局装置101はIABドナーであり、中継装置はIABノードである。そして、基地局装置101は、例えば端末装置111との通信を行う際には、基地局装置101から中継装置A102、中継装置A102から中継装置B103、の順でパケットを転送し、中継装置B103から端末装置111へデータを含んだ無線信号が送信される。同様に、端末装置111から送信された無線信号は中継装置B103によって受信され、そのデータを含んだパケットが中継装置A102を介して基地局装置101へ送信される。そして、基地局装置101と1つの中継装置との間の経路は、複数設定可能であり、例えば、基地局装置101と中継装置F107との間の経路は、[中継装置A102、中継装置B103、中継装置D105]を介する経路、[中継装置A102、中継装置C104、中継装置D105]を介する経路、及び、[中継装置A102、中継装置C104、中継装置E106]を介する経路、の3つの経路が設定可能である。
【0004】
複数の経路が設定可能である場合、基地局装置は、端末装置と直接通信する中継装置を特定した上で、その中継装置との間で使用されるべき経路を決定する。例えば、複数の経路の負荷を均一とするなどの所定の基準によって、使用される経路が決定される。非特許文献1には、中継されるパケットに、中継の終着点のノード(例えば上りリンクでは基地局装置、下りリンクでは端末装置と直接通信する中継装置)の識別情報と、使用される経路の識別情報とを含めることが記載されている。これによれば、各中継装置は、経路の識別情報に基づいて、受信したパケットをどのノードへ転送するべきかを認識することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】3GPP寄書、R2-1908363、2019年5月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
中継経路の一部において通信ができない場合が想定される。例えば、図1の中継装置A102と中継装置B103との間の無線品質が劣化し、通信を継続することができなくなりうる。この場合、中継装置A102が、基地局装置101から受信した、中継装置B103を通過する経路の識別情報が含まれたパケットを、中継装置B103に送信することができず、パケットの転送に失敗しうる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、中継伝送路を用いた通信において信号が適切に宛先へ転送されるようにする技術を提供する。
【0008】
本発明の一態様による中継装置は、基地局装置と端末装置との間の通信を中継する中継装置であって、前記通信のために送信された信号を他の装置から受信する受信手段と、受信信号に含まれる第1の識別情報であって、前記基地局装置と前記端末装置との間で前記受信信号に含まれるデータが転送される経路を示す前記第1の識別情報に基づいて、前記データの転送先の装置を決定する決定手段と、前記データが含まれる前記受信信号に、前記第1の識別情報によって示される経路と異なる前記データが転送される経路を示す第2の識別情報であって、前記受信信号には含まれていなかった前記第2の識別情報を追加して、前記第1の識別情報と前記第2の識別情報とを含んだ送信信号を生成する生成手段と、前記決定された転送先の装置へ、前記送信信号を送信する送信手段と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、中継伝送路を用いた通信において、信号を適切に宛先へ転送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】無線通信システムの構成例を示す図である。
図2】中継装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3】中継装置の機能構成例を示す図である。
図4】中継装置が実行する処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち2つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
(システム構成)
本実施形態の無線通信システムは、上述の図1のような構成を有する。本システムでは、上述のように、基地局装置101(IABドナー)と端末装置111~112との間の通信が、1つ以上の中継装置(IABノード)を含んだ中継経路を通じて実行されうる。この中継経路は、複数個、設定可能であり、基地局装置は、どの経路を用いて通信を行うかを決定しうる。例えば、基地局装置101と中継装置F107との間では、上述のように、[中継装置A102、中継装置B103、中継装置D105]を介する第1の経路、[中継装置A102、中継装置C104、中継装置D105]を介する第2の経路、及び、[中継装置A102、中継装置C104、中継装置E106]を介する第3の経路、の3つの経路が設定可能である。基地局装置101は、例えば端末装置112との間の通信を、中継装置F107を介して実行すると決定し、さらに、基地局装置101と中継装置F107との間の経路を上述の3つの経路の中から選択する。
【0013】
なお、経路は、例えば、基地局装置が新たに設置された中継装置と接続を確立した際、又は、中継装置が新たに設置された他の中継装置と接続を確立した際などに、新たに設定される。例えば、中継装置F107が新たに設置され、中継装置E106との接続が確立されたことに応じて、基地局装置101から[中継装置A102、中継装置C104、中継装置E106]を介して中継装置F107へ至る経路が設定される。また、中継装置F107と中継装置D105との間の接続が確立されたことに応じて、基地局装置101から、[中継装置A102、中継装置B103、中継装置D105]を介して中継装置F107へ至る経路と、[中継装置A102、中継装置C104、中継装置D105]を介して中継装置F107へ至る経路と、が設定される。なお、経路が設定されると、その経路に含まれる中継装置に対して、その経路の識別情報が通知される。識別情報には、対応する経路に含まれる装置を特定する情報と、それらの装置の間で、どのような順序で信号が転送されるべきかを示す情報とが対応付けられて、各中継装置に記憶される。各中継装置は、識別情報に基づいて、信号の転送先の装置(例えば他の中継装置や基地局装置)を特定することができる。
【0014】
なお、2つの中継装置間に複数の回線が確立される場合は、経路の識別情報に、中継装置間の回線を特定するための情報を含んでもよい。例えば、中継装置A102と中継装置B103の間に、回線αと回線βの2回線が確立されている場合には、経路の識別情報に、使用する回線(回線α又は回線β)を特定する情報を含むことができる。
【0015】
一例において、本実施形態では、基地局装置101が端末装置112と通信するものとし、この通信を行うために、[中継装置A102、中継装置B103、中継装置D105]を介する第1の経路が選択されたものとする。この場合、基地局装置101が端末装置112へ送信する信号が、まず、中継装置A102へ送信され、中継装置A102は、その信号を受信して、中継装置B103へ転送する。その後、中継装置B103は、中継装置A102から受信した信号を中継装置D105へ転送し、中継装置D105は、中継装置B103から受信した信号を中継装置F107へ転送する。そして、中継装置F107は、受信した信号に含まれるデータを、端末装置112へ送信する。なお、一例において、基地局装置と中継装置との間の通信、中継装置間の通信、及び中継装置と端末装置との間の通信は、無線によって行われる。
【0016】
なお、以下では、基地局装置101が複数の中継装置を介して端末装置と通信する場合の例について説明するが、基地局装置101は、1つの中継装置を介して又は中継装置を介さずに、端末装置と通信することも当然に可能である。
【0017】
基地局装置101は、上述の第1の経路で信号を送信する際に、その信号に、端末装置112と直接通信する中継装置F107を宛先として示す宛先情報と、信号が転送されるべき経路である第1の経路を示す経路識別情報とを含めて送信する。そして、第1の経路に含まれる中継装置は、宛先情報を確認することにより自装置が宛先であると判定した場合に、転送されてきた信号に含まれる端末装置の情報に基づいて、転送されてきたデータを含んだ無線信号を端末装置へ送信する。また、中継装置は、宛先情報を確認することにより自装置が宛先でないと判定した場合に、経路識別情報に基づいて、信号の転送先の装置を特定する。例えば、上述の第1の経路において、中継装置B103は、中継装置A102から信号を受信した場合、その信号に含まれる宛先情報を確認して、自装置が宛先(中継装置F107)ではないと判定する。そして、中継装置B103は、第1の経路を示す経路識別情報に基づいて、中継装置D105を転送先の装置として特定し、中継装置D105へ、受信した信号を転送する。また、第1の経路において、中継装置B103は、中継装置D105から信号を受信した場合、その信号に含まれる宛先情報を確認して、自装置が宛先(基地局装置101)ではないと判定する。そして、中継装置B103は、第1の経路を示す経路識別情報に基づいて、中継装置A102を転送先の装置として特定し、中継装置A102へ、受信した信号を転送する。このようにして、基地局装置101と端末装置との間の通信を、中継経路を用いて実行することが可能となる。
【0018】
ここで、例えば、基地局装置101が中継装置F107を示す宛先情報と第1の経路を示す経路識別情報とを含んだ信号を、中継装置A102へ送信した場合に、中継装置A102が、その信号を中継装置B103へ転送できない状態が発生したものとする。例えば、中継装置A102と中継装置B103との間の無線リンクにおいてRLF(Radio Link Failure)が発生した場合や、その無線リンクの負荷が高負荷状態となり、十分な品質での通信ができなくなった場合に、この状態が発生しうる。このとき、中継装置A102は、基地局装置101に第1の経路を使用できないことを通知し、別の経路を使用すべきことを通知しうる。そして、基地局装置101は、例えば中継装置A102と中継装置B103との間の無線リンクを使用しない、上述の第2の経路又は第3の経路を使用して信号を再送することができる。一方、例えば、使用中の経路において、宛先に近い中継装置において無線リンクが使用できないと判定された場合に、基地局装置101へ経路が使用不能であることを通知すると、信号がその無線リンクが使用できない中継装置に到達するまでの時間に加え、通知が基地局装置101へ到達するまでの時間がかかり、信号が別経路で送信されるまでの時間が長期化しうる。
【0019】
このため、本実施形態では、中継装置が、別の宛先に信号を転送することを許容することにより、通信の遅延を防ぐようにする。例えば、中継装置A102が、中継装置B103との間の無線リンクが使用できないと判定した場合、中継装置B103に代えて、中継装置C104へ、信号を転送するようにする。しかしながら、この場合、中継装置C104は、受信した信号に含まれる経路識別情報で特定される経路には自装置が含まれていないため、この経路識別情報によって転送先の装置を決定することができない。
【0020】
このため、本実施形態では、中継装置が、例えば経路識別情報で特定される経路における転送先の装置との無線リンクにおいてRLFが発生している場合など、その経路での通信ができない場合に、別の転送先の装置を決定し、その別の転送先の装置を含んだ別の経路に関する第2の経路識別情報を信号に追加することを許容する。例えば、中継装置A102は、第1の経路に対応する第1の経路識別情報を含んだ信号を受信し、その受信信号を中継装置B103へ転送することができないと判定した場合に、中継装置C104を転送先の装置として決定し、中継装置C104を含んだ経路に関する第2の経路識別情報を受信信号のヘッダに追加する。第2の経路識別情報は、一例において、中継装置C104を含んだ、上述の第2の経路又は第3の経路を特定する情報である。なお、第2の経路と第3の経路とにそれぞれ対応する2つの第2の経路識別情報が受信信号のヘッダに追加されてもよい。
【0021】
なお、中継装置は、例えば経路識別情報で特定される経路での通信が可能な場合にも、受信信号に別の経路識別情報を追加してもよい。すなわち、中継装置は、受信信号に含まれる第1の経路識別情報に従ってその信号を転送可能な場合であっても、第2の経路識別情報をその受信信号に追加し、情報追加後の信号を転送先の装置へ転送してもよい。例えば、中継装置A102は、上述の第2の経路を示す経路識別情報を含んだ信号を受信した場合に、その受信信号に、例えば第3の経路を示す別の経路識別情報を追加した信号を生成して中継装置C104へ送信しうる。この場合、中継装置C104は、第2の経路及び第3の経路の両方に含まれるため、いずれかの経路を選択して、中継装置D105又は中継装置E106へ信号を転送することができる。なお、中継装置は、自装置を介する経路に関する経路識別情報を追加することができるが、自装置を介さない経路に関する経路識別情報を追加してもよい。例えば、中継装置C104は、自装置が含まれる第2の経路の経路識別情報を追加した信号を中継装置D105へ転送してもよいし、自装置が含まれない第1の経路の経路識別情報を追加した信号を中継装置D105へ転送してもよい。
【0022】
なお、基地局装置101などの通信を制御する装置は、識別情報の追加を許容するか否かの情報を各中継装置へ事前に通知してもよい。例えば、中継装置A102は、識別情報の追加を許容する通知を基地局装置101から取得していた場合にのみ、上述のような第2の経路識別情報の追加を行うようにしてもよい。なお、経路識別情報の追加の可否は、経路ごとに判断されてもよい。例えば、基地局装置101は、追加が許容される経路識別情報を指定する情報を、各中継装置へ事前に通知しうる。また、基地局装置101は、1つ以上の経路のそれぞれについての追加の可否を中継装置が判断可能とするための追加可否判断用情報を、各中継装置へ事前に通知してもよい。追加可否判断用情報は、一例において、1つ以上の経路のそれぞれにおける無線使用率の情報でありうる。この場合、中継装置は、追加候補の経路のうち、無線使用率が所定値より高い区間を含んだ経路については、追加が許容されないと判定しうる。なお、この所定値の情報も、基地局装置101から各中継装置へ事前に通知されてもよい。さらに、基地局装置101は、所定値の情報のみを各中継装置へ事前に通知してもよい。この場合、各中継装置は、自装置と信号の宛先の装置までの複数の経路候補に含まれる各無線リンクにおける無線使用率と、その所定値とを比較して、例えば各経路における無線使用率が所定値より低いか否かに応じて、各経路に関する経路識別情報を追加してよいか否かを判定しうる。中継装置は、これらの情報に基づいて追加対象の経路を特定し、その経路に関する経路識別情報を追加するようにしうる。
【0023】
経路識別情報が追加された信号を受信した他の中継装置は、2つ以上の経路識別情報によって示される経路の中から、自装置が含まれる経路を特定し、その経路において自装置の次に信号が転送されるべき装置を特定する。そして、この中継装置は、特定した装置に対して、信号を送信する。なお、この中継装置においても、特定した装置との間の無線リンクにおいてRLFが発生している場合等に、上述のような経路識別情報の追加処理を実行してもよい。
【0024】
中継装置は、経路識別情報を追加した場合、経路識別情報が追加されたことを基地局装置101等の通信を制御する装置へ通知してもよい。また、経路識別情報を追加した理由の情報を基地局装置101等の通信を制御する装置へ通知してもよい。例えば、中継装置が、受信信号に含まれる第1の経路識別情報によって識別される経路での通信が不可能であると判定した結果、第2の経路識別情報が追加された場合、基地局装置101は、次回以降の信号送信機会において、第1の経路識別情報で示される経路を使用しないようにする。また、無線使用率が相対的に低い経路が存在したことによって経路識別情報が追加された場合は、基地局装置101は、負荷分散のために、次回以降の信号送信機会において、その追加された経路識別情報で示される経路を使用するようにしうる。
【0025】
なお、中継装置は、第2の経路識別情報を追加する場合、受信信号に含まれている第1の経路識別情報を削除してもよい。これにより、中継装置から転送された信号を受信した他の装置は、転送先の判断処理を実行する必要がなくなる。なお、経路識別情報の削除が許可されるか否かを示す情報が、基地局装置101から通知されてもよい。この場合、中継装置は、経路識別情報の削除が許可される場合にのみ、第1の経路識別情報を削除するようにする。また、中継装置は、例えば基地局装置101から1つ以上の経路に関する経路識別情報を削除するか否かの削除可否判断用の情報を事前に取得して、受信信号に含まれる第1の経路識別情報を削除すべきか否かを判断するようにしてもよい。また、中継装置は、第1の経路識別情報を削除した場合に、基地局装置101に対して、経路識別情報の削除が行われたことを通知してもよい。これにより、基地局装置101は、次回以降の信号送信機会において、第1の経路識別情報で示される経路を使用しないようにすることができる。
【0026】
(装置構成)
続いて、上述のような処理を実行する中継装置のハードウェア構成例について図2を用いて説明する。これらの装置は、一例において、プロセッサ201、ROM202、RAM203、記憶装置204、及び通信回路205を含んで構成される。プロセッサ201は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、中継装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM202は、中継装置が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM203は、プロセッサ201がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置204は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路205は、例えば、無線通信用の回路によって構成される。中継装置は、基地局装置や他の中継装置や端末装置との通信のための通信回路205として、例えばセルラ通信用のベースバンド回路及びRF回路等とアンテナとを含んで構成される。なお、中継装置の通信回路205は、例えば、制御用の信号伝送等のための無線又は有線通信を行うための回路を含んでもよい。なお、図2では、1つの通信回路205が図示されているが、各装置は、複数の通信回路を有しうる。
【0027】
図3に、中継装置の機能構成例を示す。中継装置は、例えば、通信部301、経路情報特定部302、転送先決定部303、転送制御部304、及び、経路情報変更部305を含んで構成される。また、中継装置は、設定取得部306や変更通知部307を含んでもよい。なお、これらの機能部は、例えばプロセッサ201が、ROM202に記憶されたプログラムを実行することにより実現されうる。
【0028】
通信部301は、セルラ通信規格に従って、基地局装置、他の中継装置、端末装置との無線通信を行うための機能部である。経路情報特定部302は、基地局装置や他の中継装置から受信した信号が転送されるべき経路を、その信号に含まれる経路識別情報に基づいて特定する。転送先決定部303は、経路情報特定部302によって特定された経路に基づいて、信号の転送先の装置を決定する。例えば、転送先決定部303は、特定された経路において、自装置の次に信号が転送されるべき装置を特定する。なお、転送先決定部303は、特定された経路に従って特定された転送先の装置との間の無線リンクでの通信ができない場合や、宛先までの無線リンクにおける無線使用率が低い経路が存在する場合等に、経路識別情報に基づいて特定される次の転送先の装置と異なる装置へ信号を転送すると決定してもよい。転送制御部304は、転送先決定部303によって決定された転送先の装置へ、受信された信号を転送するように通信部301を制御する。
【0029】
経路情報変更部305は、受信信号に対して、その受信信号に含まれる第1の経路識別情報と異なる第2の経路識別情報を追加する。この追加は、例えば、第1の経路識別情報に基づいて特定された次の転送先の装置との間の無線リンクでの通信ができない場合や、宛先までの無線リンクにおける無線使用率が低い経路が存在する場合等に、別の経路でデータが転送されるようにするために実行される。なお、経路情報変更部305は、使用可能な経路を示す経路識別情報を任意に追加してもよい。また、経路情報変更部305は、第2の経路識別情報を受信信号に追加する場合に、その受信信号から第1の経路識別情報を削除する。例えば、第1の経路識別情報で特定される経路が使用可能な状態でない場合に、第1の経路識別情報が削除される。
【0030】
設定取得部306は、経路識別情報の追加や削除が許可されるか否かを示す設定情報や、経路識別情報の追加可否判断用又は削除可否判断用の設定情報を、例えば基地局装置101から取得する。なお、これらの設定は、経路ごとに行われてもよいし、複数又は全部の経路について包括的に行われてもよい。これらの設定情報は、データを含んだ信号の通信が行われる前に通知される。中継装置は、設定取得部306によって取得された設定情報に基づいて、経路識別情報の追加/削除の可否を判断する。そして、経路情報変更部305は、この判断の結果に基づいて、経路識別情報の追加/削除を実行する。変更通知部307は、経路識別情報の追加/削除が行われた場合に、基地局装置101へその追加/変更があったことを通知する。
【0031】
(処理の流れ)
中継装置が実行する処理の流れについて、図4を用いて概説する。図4の処理は、例えば、端末装置に直接接続する中継装置と基地局装置との間の経路の中間に存在する中継装置(すなわち、経路の端部ではない中継装置)によって実行される。本処理では、中継装置は、まず、基地局装置101から設定情報を取得する(S401)。中継装置は、取得した設定情報に基づいて、その後の処理における経路識別情報の追加/削除が許容されるか否かを判定する。なお、例えば、中継装置が経路識別情報の追加/削除を行うことが常に許容される場合や、中継装置の設置時に設定が完了している場合などにおいては、本処理は実行されなくてもよい。
【0032】
中継装置は、他の装置(例えば、基地局装置または他の中継装置)から信号を受信する(S402)。中継装置は、受信した信号を解析し、その信号に含まれる宛先の装置を示す宛先情報と、経路を示す経路識別情報とを抽出し、経路識別情報に基づいて信号を転送すべき経路を特定する(S403)。そして、中継装置は、特定した経路に基づいて、転送先の装置を決定する(S404)。
【0033】
例えば、中継装置は、S403で特定した経路において自装置の次に信号が転送されるべき装置を、転送先の装置として決定する。このとき、中継装置は、例えば、経路における次の転送先の装置との間の無線リンクにおいて障害が生じている場合等に、その転送先の装置との通信を行うべきでないと判定することがありうる。この場合、中継装置は、経路に含まれない他の装置を、信号の転送先として決定しうる。このとき、中継装置は、例えば、この信号の転送先として決定された装置を含んだ経路を示す経路識別情報を追加する(S405)。また、中継装置は、例えば、自装置から宛先の装置までの間の経路における無線リンクの無線使用率が低い経路が存在する場合、その経路の経路識別情報を追加してもよい。また、中継装置は、経路識別情報を追加する場合、受信信号に含まれていた経路識別情報を削除してもよい。なお、経路識別情報の追加/削除は、S401で設定情報が取得された場合は、その設定情報に従って実行される。経路識別情報の追加/削除は、追加対象の経路が存在しない場合には、行われなくてもよい。すなわち、受信信号に含まれる経路識別情報をそのまま維持してもよい。中継装置は、S405で経路識別情報の追加/削除を行った場合には、この旨を基地局装置101へ通知する(S406)。なお、この通知は行われなくてもよい。
【0034】
その後、中継装置は、S402で受信した信号に含まれるデータと、受信信号に含まれる宛先情報、及び、S405で設定された経路識別情報を含んだ信号を、S404で決定した転送先の装置へ送信する(S407)。
【0035】
このように、上述のような中継装置によれば、信号に含まれている経路の識別情報に基づいて、その信号をその経路に沿って転送することが困難な状況において、その経路から外れて転送を継続することにより、宛先の装置まで信号を転送することができる。また、その時に、上述のようにして、経路を示す経路識別情報を追加することにより、転送先の装置における信号の転送先の決定を容易にし、又はその装置における転送先の選択の自由度を向上させることができる。
【0036】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
図1
図2
図3
図4