(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】車両用内装部材、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
B60N 3/04 20060101AFI20231219BHJP
A47G 27/04 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B60N3/04 B
B60N3/04 C
A47G27/04 A
(21)【出願番号】P 2019162689
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【氏名又は名称】横井 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100124958
【氏名又は名称】池田 建志
(72)【発明者】
【氏名】永井 啓之
(72)【発明者】
【氏名】辻田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】柏本 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】大迫 正嗣
(72)【発明者】
【氏名】磯田 晴久
(72)【発明者】
【氏名】細川 光央
(72)【発明者】
【氏名】関口 徹
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-506179(JP,A)
【文献】国際公開第2018/211866(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/04
A47G 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配置面及びその反対側の裏面を有し、繊維材を含む基材と、
前記配置面上にある機能部を含む機能部品と、を備え、
前記機能部品は、
前記機能部から前記基材を貫通して突出している突出部と、
前記裏面上にあり、且つ、前記突出部の先端に接合された樹脂の成形部と、を含み、
前記成形部は、
前記裏面に沿って起点から放射状に延びた放射状リブであって、前記起点から第一方向へ延びた第一リブ、前記起点から第二方向へ延びた第二リブ、及び、前記起点から第三方向へ延びた第三リブを含む放射状リブと、
前記第一リブの終点と一体化されている第一接合部と、
前記第二リブの終点と一体化されている第二接合部と、
前記第三リブの終点と一体化されている第三接合部と、を含み、
前記突出部は、
前記機能部から前記基材を貫通して前記第一接合部に繋がっている第一突起と、
前記機能部から前記基材を貫通して前記第二接合部に繋がっている第二突起と、
前記機能部から前記基材を貫通して前記第三接合部に繋がっている第三突起と、を含む、
車両用内装部材。
【請求項2】
配置面及びその反対側の裏面を有し繊維材を含む基材と、前記配置面上にある機能部と、を含む車両用内装部材の製造方法であって、
前記機能部及び該機能部から突出している突出部であって該突出部を通す貫通穴が前記基材に無くても前記基材に突き通すことが可能な突出部を含む元部品における前記突出部を前記配置面から前記基材に突き通して前記突出部の先端を前記裏面から前記基材の外側に出す突き通し工程と、
前記突出部の前記先端及びその周辺に樹脂を射出することにより、前記裏面上にあり、且つ、前記突出部の前記先端に接合された成形部を形成する成形工程と、を含む、
車両用内装部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維材を含む基材と機能部品とを備える車両用内装部材、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロアカーペット上にフロアマットが載置されることがある。フロアカーペット上のフロアマットを位置決めするため、フロアマットの貫通穴に挿入するための樹脂の固定具が機能部品として取り付けられたフロアカーペットが使用されている。
【0003】
特許文献1に開示されたマット固定具は、マットの貫通穴を補強する鳩目状の補強リング、該補強リングを貫通した本体、及び、該本体の上部の角柱に外嵌めされた回転蓋を備えている。本体の下部のねじ部をカーペットの意匠面からカーペットにねじ込むことにより、本体がカーペットに取り付けられている。カーペット上に載置されたマットは、回転蓋の向きを補強リングから抜けない向きにすることにより、カーペット上において保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カーペットは繊維材を含む基材であるため、ねじ部をカーペットにねじ込む取り付け方法ではカーペットとマット固定具との接合強度が不十分になることが想定される。カーペットとマット固定具との接合強度を向上させることが望まれる。
尚、上述のような課題は、繊維材を含む基材がフロアカーペットでなくドアトリム等の場合や、機能部品がマット固定具でない場合にも、存在する。
【0006】
本発明は、繊維材を含む基材と機能部品との接合強度を向上させることが可能な車両用内装部材、及び、その製造方法を開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用内装部材は、配置面及びその反対側の裏面を有し、繊維材を含む基材と、
前記配置面上にある機能部を含む機能部品と、を備え、
前記機能部品は、
前記機能部から前記基材を貫通して突出している突出部と、
前記裏面上にあり、且つ、前記突出部の先端に接合された樹脂の成形部と、を含み、
前記成形部は、
前記裏面に沿って起点から放射状に延びた放射状リブであって、前記起点から第一方向へ延びた第一リブ、前記起点から第二方向へ延びた第二リブ、及び、前記起点から第三方向へ延びた第三リブを含む放射状リブと、
前記第一リブの終点と一体化されている第一接合部と、
前記第二リブの終点と一体化されている第二接合部と、
前記第三リブの終点と一体化されている第三接合部と、を含み、
前記突出部は、
前記機能部から前記基材を貫通して前記第一接合部に繋がっている第一突起と、
前記機能部から前記基材を貫通して前記第二接合部に繋がっている第二突起と、
前記機能部から前記基材を貫通して前記第三接合部に繋がっている第三突起と、を含む、
態様を有する。
【0008】
さらに、本発明の車両用内装部材の製造方法は、配置面及びその反対側の裏面を有し繊維材を含む基材と、前記配置面上にある機能部と、を含む車両用内装部材の製造方法であって、
前記機能部及び該機能部から突出している突出部であって該突出部を通す貫通穴が前記基材に無くても前記基材に突き通すことが可能な突出部を含む元部品における前記突出部を前記配置面から前記基材に突き通して前記突出部の先端を前記裏面から前記基材の外側に出す突き通し工程と、
前記突出部の前記先端及びその周辺に樹脂を射出することにより、前記裏面上にあり、且つ、前記突出部の前記先端に接合された成形部を形成する成形工程と、を含む、
態様を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、繊維材を含む基材と機能部品との接合強度を向上させた車両用内装部材、及び、その製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】内装部材を含む自動車の例を模式的に示す図。
【
図2】
図2Aは内装部材上に置かれているマットを見る面において操作部及びその周辺の例を模式的に示す平面図、
図2Bは内装部材の裏面において成形部及びその周辺の例を模式的に示す底面図。
【
図3】
図3Aは元部品の突出部を配置面から基材に突き通す例を模式的に示す図、
図3Bは元部品の突出部の先端が基材の裏面から外側に出ている例を模式的に示す図。
【
図4】
図4Aは元部材の例を模式的に示す斜視図、
図4Bは機能部品の例を模式的に示す斜視図。
【
図5】
図5Aは突出部の横断面を模式的に示す断面図、
図5Bは別の突出部の横断面を模式的に示す断面図。
【
図6】射出成形機により成形部を形成する例を模式的に示す図。
【
図7】
図7Aは変形例に係る機能部品を模式的に示す斜視図、
図7Bは変形例に係る内装部材の裏面において成形部及びその周辺を模式的に示す底面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0012】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、
図1~7に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
また、本願において、数値範囲「Min~Max」は、最小値Min以上、且つ、最大値Max以下を意味する。
【0013】
[態様1]
本技術の一態様に係る車両用内装部材1は、繊維材21を含む基材2、及び、機能部品3を備える。前記基材2は、配置面2a及びその反対側の裏面2bを有している。前記機能部品3は、前記配置面2a上にある機能部30、突出部40、及び、樹脂R1の成形部60を含んでいる。前記突出部40は、前記機能部30から前記基材2を貫通して突出している。前記成形部60は、前記裏面2b上にあり、且つ、前記突出部40の先端41に接合されている。
【0014】
上記態様1では、機能部品3において、基材2の裏面2b上に樹脂R1の成形部60があり、機能部30から基材2を貫通して突出している突出部40の先端41が前述の樹脂R1の成形部60に接合されている。従って、本態様は、繊維材を含む基材と機能部品との接合強度を向上させた車両用内装部材を提供することができる。
【0015】
ここで、「配置面上」及び「裏面上」の上は、英語の”on”の意味である。従って、例えば、配置面が左を向いている場合の機能部は配置面から左に存在することを意味し、配置面が下を向いている場合の機能部は配置面から下に存在することを意味し、裏面が左を向いている場合の成形部は裏面から左に存在することを意味し、裏面が下を向いている場合の成形部は裏面から下に存在することを意味する。
樹脂には、熱可塑性の樹脂、硬化した樹脂、等が含まれる。
樹脂の成形部は、基材の裏面に接合されていてもよいし、基材の裏面に接合されていなくてもよい。樹脂R1の成形部60が基材2の裏面2bに接合されている場合、機能部30から基材2を貫通して突出している突出部40の先端41が樹脂R1の成形部60を介して基材2の裏面2bに接合されている。この場合、繊維材を含む基材と機能部品との接合強度がさらに向上する。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0016】
[態様2]
図5A等に例示するように、前記突出部40は、横断面において凹んだ溝43を有していてもよい。この態様は、溝43を有する突出部40に樹脂R1の成形部60が接合されているので、繊維材を含む基材と機能部品との接合強度をさらに向上させることができる。
【0017】
[態様3]
図2B等に例示するように、前記成形部60は、前記裏面2bに沿って起点70aから放射状に延びた放射状リブ70であって、前記起点70aから第一方向RD1へ延びた第一リブ71、前記起点70aから第二方向RD2へ延びた第二リブ72、及び、前記起点70aから第三方向RD3へ延びた第三リブ73を含む放射状リブ70を含んでいてもよい。当該成形部60は、前記第一リブ71の終点71aと一体化されている第一接合部61、前記第二リブ72の終点72aと一体化されている第二接合部62、及び、前記第三リブ73の終点73aと一体化されている第三接合部63を含んでいてもよい。前記突出部40は、前記機能部30から前記基材2を貫通して前記第一接合部61に繋がっている第一突起51、前記機能部30から前記基材2を貫通して前記第二接合部62に繋がっている第二突起52、及び、前記機能部30から前記基材2を貫通して前記第三接合部63に繋がっている第三突起53を含んでいてもよい。
上記態様は、第一突起51の先端41に接合された第一接合部61、第二突起52の先端41に接合された第二接合部62、及び、第三突起53の先端41に接合された第三接合部63に放射状リブ70が繋がっているので、繊維材を含む基材と機能部品との接合強度をさらに向上させることができる。
【0018】
ここで、放射状リブにおいて起点から分岐したリブの数は、4以上でもよい。従って、成形部に含まれる接合部の数は4以上でもよいし、突出部に含まれる突起の数は4以上でもよい。
本願における「第一」、「第二」、[第三」、…は、互いに類似点を有する複数の構成要素に含まれる各構成要素を識別するための用語であり、順番を意味しない。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0019】
[態様4]
図1等に例示するように、前記突出部40は、前記裏面2bから前記基材2の外側へ出ている部分において前記突出部40の突出方向D5と交差する方向D6へ凹んだ凹部44を有していてもよい。この場合、機能部品3において、基材2の裏面2b上に樹脂R1の成形部60があり、基材2の裏面2bから基材2の外側に出ている部分に凹部44を有する突出部40が前述の樹脂R1の成形部60に接合されている。従って、本態様は、繊維材を含む基材と機能部品との接合強度を向上させることができる。
【0020】
[態様5]
図1等に例示するように、前記突出部40は、先細り状のテーパー部42を有していてもよい。この態様は、成形部において突出部の先端に接合された部分を先細り状にすることができるので、成形部の樹脂量を少なくすることができる。
【0021】
[態様6]
また、
図3A,6に例示するように、本技術の一態様に係る車両用内装部材1の製造方法は、配置面2a及びその反対側の裏面2bを有し繊維材21を含む基材2と、前記配置面2a上にある機能部30と、を含む車両用内装部材1の製造方法であって、以下の工程(a),(b)を含む。
(a)前記機能部30及び該機能部30から突出している突出部40を含む元部品3aにおける前記突出部40を前記配置面2aから前記基材2に突き通して前記突出部40の先端41を前記裏面2bから前記基材2の外側に出す突き通し工程ST1。
(b)前記突出部40の前記先端41及びその周辺に樹脂R1を射出することにより、前記裏面2b上にあり、且つ、前記突出部40の前記先端41に接合された成形部60を形成する成形工程ST2。
【0022】
上記態様6は、樹脂R1の射出により、基材2の裏面2b上にあり、且つ、機能部30から突出している突出部40の先端41に接合された成形部60が形成されるので、繊維材を含む基材と機能部品との接合強度が良好な車両用内装部材の製造方法を提供することができる。また、基材に機能部品を組み付ける作業が軽減される。
ここで、射出する樹脂には、溶融樹脂、硬化性の液状樹脂、等が含まれる。
【0023】
(2)車両用内装部材の具体例:
図1は、車両用内装部材1として機能部品付きフロアカーペットを含む自動車100を模式的に例示している。
図1の下部には、内装部材1上にフロアマット90が置かれている内装構造において機能部品3及びその周辺の断面が示されている。
図1の下部において、機能部品3の操作部33は実線で示されるようにマット90を基材2上に維持させる向きにあり、内装部材1からマット90を取り外すことが可能な向きにある操作部33が二点鎖線で示されている。
図2Aは、内装部材1上に置かれているマット90を見る面において操作部33及びその周辺を模式的に例示している。
図2Aにおいて、操作部33は実線で示されるように内装部材1からマット90を取り外すことが可能な向きにあり、マット90を基材2上に維持させる向きにある操作部33が二点鎖線で示されている。
図2Bは、内装部材1の裏面2bにおいて成形部60及びその周辺を模式的に例示している。
図3Aは、元部品3aの突出部40を配置面2aから基材2に突き通す様子を模式的に例示している。
図3Aにおいて、基材2は断面視されている。
図3Bは、元部品3aの突出部40の先端41が基材2の裏面2bから外側に出ている様子を模式的に例示している。
図3Bにおいて、基材2と元部品3aとは断面視され、
図3Aに示す元部品3aの第二突起52は
図3Bに現れていない。
図4Aは、元部材3aの底面側を模式的に例示している。
図4Aにおいて、突出部40の凹部44の図示が省略されている。
図4Bは、機能部品3の底面側を模式的に例示している。
図4Bにおいて、基材2の図示が省略されている。
図5Aは、突出部40の横断面を模式的に例示している。
【0024】
上述した図中、FRONT、REAR、UP、DOWNは、それぞれ、前、後、上、下を示す。また、符号D1は自動車100の前後方向を示し、符号D2は自動車100の上下方向を示し、符号D4は基材2の厚さ方向を示し、符号D5は突出部40の突出方向を示し、符号D6は突出方向D5と直交する方向を示している。
【0025】
図1に示す自動車100は、車室SP1を囲む金属製の車体パネル80を備えている。
図1に示す車体パネル80は、凹凸を有するものの全体として略水平に配置されたフロアパネル81、該フロアパネル81の前縁から斜めに立ち上がっているトーボード82、及び、該トーボード82の前縁からさらに急な傾斜角で立ち上がっているダッシュパネル83を含んでいる。これらのパネル81,82,83と車室SP1との間には、内装部材1が配置されている。パネル81,82,83と内装部材1との間には、衝撃を吸収するためのパッド85が設置されている。内装部材1においてトーボード82に対応する立ち上がり部分の上には、樹脂製フットレスト95が設置されている。また、内装部材1上には、内装部材1の汚れを防ぐためのフロアマット90も置かれている。前席としての座席101に座っている乗員P、例えば、ドライバーは、足PFをフットレスト95やマット90に置くことが可能である。
【0026】
図1に示す内装部材1は、フロアカーペットとしての繊維系基材2、及び、フロアマット90を取り付けるマットフックとしての機能部品3を含んでいる。内装部材1に含まれる機能部品3の数は、1個でもよいし、2個以上でもよい。
【0027】
図1に示す基材2は、マット90を置くための配置面2aを含む層状繊維材21、及び、車体パネル80に対向する裏面2bを含むバッキング22を有している。繊維材21は、多数の繊維の集合物であればよい。例えば、基材2が基層に多数のパイルが立毛しているタフテッドカーペットである場合、繊維材21は多数のパイルを含み、バッキング22は基層を含む。基層には、スパンボンド不織布といった不織布、各種繊維の編織物、これらの基布に樹脂材料(エラストマーを含む)を積層した材料、これらの基布にゴムを積層した材料、等を用いることができる。また、基材2が不織布をニードリングして繊維相互を絡め表面に多数の毛羽を形成したニードルパンチカーペットである場合、繊維材21は多数の毛羽を含む。基材2が繊維材21を含む繊維系材料であることにより、機能部品3となる元部品3aの突出部40を基材2に対して容易に突き通すことができる。尚、基材2は、繊維材を含んでいればよく、自動車のドアに取り付けられたドアトリム、自動車のピラーに取り付けられたピラートリム、自動車のルーフパネルに取り付けられたルーフトリム、自動車の荷室の側方にあるデッキサイドトリム、等でもよい。
【0028】
繊維材21を構成する繊維には、熱可塑性樹脂といった合成樹脂(エラストマーを含む)の繊維、合成樹脂に添加剤を添加した繊維、植物繊維、動物繊維、これらの少なくとも一部の組合せ、等を用いることができる。前記熱可塑性樹脂には、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂といったポリエステル樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂やポリエチレン(PE)樹脂といったポリオレフィン樹脂、アクリル(PMMA)樹脂、等を用いることができる。
【0029】
基材2は、必要に応じて、繊維材21自体の微視的な凹凸よりも大きい巨視的な凹凸、例えば、基材2の厚さを超える凹凸を有する形状に成形されてもよい。巨視的な凹凸は、例えば、複数の傾きの面を含む形状に基材2を成形することにより形成される。
図1に示す基材2は、車体パネル80とパッド85の形状に合わせた巨視的な凹凸形状を有している。基材2の成形には、例えば、プレス成形を用いることができる。
【0030】
機能部品3は、樹脂製であり、フロアマット90を取り付けるための機能部30、該機能部30から基材2を貫通して突出している突出部40、及び、該突出部40の先端41と基材2の裏面2bとに接合された成形部60を含んでいる。機能部30は、機能部品3のうち基材2の配置面2a上にある部位であり、配置面2aに接触している円環状フランジ部32、基部31、及び、操作部33を順に含んでいる。フランジ部32は、基部31よりも広がっている円環状であり、マット90の裏側に配置される。操作部33は、基部31に対して回転操作可能に取り付けられ、マット90の貫通穴90aに配置される。
図2Aに示すように、操作部33は、長手方向における長さL1が短手方向における幅W1よりも長い平面視長手状であり、意匠面90dを見る向きにおいて長手方向の向きを360°変更可能である。
【0031】
内装部材1に取り付けられるフロアマット90は、本体部分の貫通穴90aに嵌め込まれた樹脂製鳩目部材91を有している。鳩目部材91は、マット90の意匠面90d側から凹んだ凹部91bを有し、該凹部91bの底部に操作部33及び基部31を通すことが可能な平面視長手状の貫通穴91aを有している。
図2Aに示すように、操作部33の長手方向が貫通穴91aの長手方向に合わせられると、貫通穴91aに操作部33を通すことができ、基材2の配置面2aにマット90が置かれると凹部91bの中に操作部33が回転操作可能に配置される。
図2Aにおいて二点鎖線で示すように、作業者が操作部33の長手方向を貫通穴91aの長手方向からずらすように操作部33を回すと、マット90が配置面2a上に維持される。
マット90の本体部分の材料には、カーペット、軟質樹脂(エラストマーを含む)、ゴム、等を用いることができる。
【0032】
基材2を貫通している突出部40は、フランジ部32の裏面32bから基材2の厚さ方向D4へ突出している。突出部40は、機能部品3となる元部品3a(
図3A,4A参照)に由来する。本具体例の突出部40は、環状フランジ部32の裏面32bを見る向きにおいて、右回り順に第一突起51、第二突起52、第三突起53、及び、第四突起54を含んでいる。これらの突起51~54は、環状フランジ部32の中心を囲むようにフランジ部32の裏面32bに対して90°間隔で配置されている。突起51~54の突出方向D5は、基材2の厚さ方向D4に合わせられている。突起51~54の先端41は、基材2の裏面2bから厚さ方向D4へ突出している。突起51~54の先端41は、樹脂R1の成形部60で覆われている。これにより、突起51~54の先端41と基材2の裏面2bとに成形部60が接合されている。
【0033】
成形部60は、樹脂R1の射出成形により突出部40の先端41と基材2の裏面2bとに接合された部位である。本具体例の機能部品3は、成形部60が元部品3aに接合されることにより形成されている。
図2B,4Bに示す成形部60は、放射状リブ70、第一接合部61、第二接合部62、第三接合部63、第四接合部64、及び、環状リブ78を含んでいる。尚、リブは、細長く延びている部位を意味する。放射状リブ70、接合部61~64、及び、環状リブ78は、いずれも基材2の裏面2bに接合されている。
【0034】
放射状リブ70は、基材2の裏面2bに沿って起点70aから放射状に延びている。起点70aは、環状フランジ部32の中心に合わせられている。
図2B,4Bに示す放射状リブ70は、環状フランジ部32の裏面32bを見る向きにおいて、右回り順に第一リブ71、第二リブ72、第三リブ73、及び、第四リブ74を含んでいる。第一リブ71は、起点70aから第一突起51に向かう第一方向RD1へ延びている。第二リブ72は、起点70aから第二突起52に向かう第二方向RD2へ延びている。第三リブ73は、起点70aから第三突起53に向かう第三方向RD3へ延びている。第四リブ74は、起点70aから第四突起54に向かう第四方向RD4へ延びている。
【0035】
第一接合部61は、第一突起51における先端41を覆い、この先端41と基材2の裏面2bとに接合され、第一リブ71の終点71aと一体化されている。すなわち、第一突起51は、フランジ部32から基材2を貫通して第一接合部61に繋がっている。
第二接合部62は、第二突起52における先端41を覆い、この先端41と基材2の裏面2bとに接合され、第二リブ72の終点72aと一体化されている。すなわち、第二突起52は、フランジ部32から基材2を貫通して第二接合部62に繋がっている。
第三接合部63は、第三突起53における先端41を覆い、この先端41と基材2の裏面2bとに接合され、第三リブ73の終点73aと一体化されている。すなわち、第三突起53は、フランジ部32から基材2を貫通して第三接合部63に繋がっている。
第四接合部64は、第四突起54における先端41を覆い、この先端41と基材2の裏面2bとに接合され、第四リブ74の終点74aと一体化されている。すなわち、第四突起54は、フランジ部32から基材2を貫通して第四接合部64に繋がっている。
【0036】
以上より、接合部61~64は、環状フランジ部32の裏面32bを見る向きにおいて、右回り順に配置されている。接合部61~64は、突起51~54の先端41を覆うため、基材2の裏面2bから放射状リブ70及び環状リブ78よりも高く膨出している。放射状リブ70が全ての接合部61~64に繋がっていることにより、少ない樹脂R1により効率的に基材2と機能部品3との接合強度が向上している。
【0037】
環状リブ78は、接合部61~64を通る位置において基材2の裏面2bに沿って環状に延びている。言い換えると、環状リブ78は、第一接合部61から第二接合部62に繋がっている部分、第二接合部62から第三接合部63に繋がっている部分、第三接合部63から第四接合部64に繋がっている部分、第四接合部64から第一接合部61に繋がっている部分を有している。環状リブ78が全ての接合部61~64に繋がっていることにより、少ない樹脂R1により効率的に基材2と機能部品3との接合強度が向上している。
【0038】
接合部61~64に接合された突出部40は、さらに、以下の構造を有している。以下の構造の説明において、「突出部40」という記載は、突起51~54を代表していることを意味し、突起51~54のいずれか一つを説明していることを意味している。
【0039】
図5Aは、突出部40の横断面を示している。突出部40の横断面は、突出部40の突出方向D5に直交する断面を意味する。
図5Aに示す突出部40の横断面形状は、突出部40において突出方向D5に沿った中心軸AX1を中心として5方向へ延びた凹凸形状である。従って、突出部40は、横断面において凹んだ5本の溝43を有している。
図3A,4Aに示すように、各溝43は、突出部40において突出方向D5に沿った向きに形成されている。これにより、
図3Aに示すように突出部40を基材2に突き通すことが容易である。
突出部40が溝43を有していることにより、樹脂R1の成形部60が突出部40の先端近傍の溝43に入っている。これにより、突出部40の先端41と成形部60との接触面積が増え、成形部60が突出部40の先端41に対して強固に接合され、基材2と機能部品3との接合強度が向上している。
【0040】
尚、突出部40の横断面は、
図5Aに示す形状に限定されず、
図5Bに示すように中心軸AX1を中心として4方向へ延びた十字形状でもよい。この場合の突出部40は、横断面において凹んだ4本の溝43を有している。むろん、一つの元部品3aが
図5Aに示す突出部40と
図5Bに示す突出部40の両方を含んでいてもよい。また、突出部40の横断面は、中心軸AX1を中心として3方向へ延びた凹凸形状でもよいし、中心軸AX1を中心として6方向以上へ延びた凹凸形状でもよい。さらに、突出部の横断面において凹んだ溝は、突出方向D5に沿った溝43に限定されず、螺旋状の溝といった、突出方向D5からずれた向きの溝でもよい。いずれの場合も、成形部60が溝43に入っている状態で突出部40の先端41に対して強固に接合されるので、基材2と機能部品3との接合強度が向上する。
【0041】
図1,3A,3Bに示すように、突出部40は、裏面2bから基材2の外側へ出ている部分において突出部40の突出方向D5と交差する方向D6へ凹んだ凹部44を有している。突出部40が凹部44を有していることにより、樹脂R1の成形部60が突出部40の先端近傍の凹部44に入っている。成形部60において凹部44に入っている部分がアンカーとして機能するので、成形部60が突出部40の先端41に対して強固に接合され、基材2と機能部品3との接合強度が向上している。
【0042】
また、突出部40は、先細り状のテーパー部42を有している。テーパー部42は、先端41に近付くほど細くなっている。これにより、突出部40を通す貫通穴が基材2に無くても、
図3Aに示すように突出部40を容易に基材2に突き通すことができる。また、突出部40がテーパー部42を有していることにより、
図1,4Bに示すように接合部61~64の先端部を先細り形状にすることができる。これにより、突出部40と接合部61~64との接合強度を維持しながら機能部品3に使用する樹脂の量(成形部60の樹脂量と突出部40の樹脂量)を減らすことができる。
図1,4Bに示す接合部61~64の先端部(例えば先端部61a)は略半球状であるが、接合部61~64の先端部の形状は、略円錐状、略円錐台状、等でもよい。
さらに、突出部40がテーパー部42を有し、且つ、接合部61~64の先端部が先細り形状であることにより、成形部60の射出成形時に樹脂が突出部40の先端41及びその周辺に回り込み易くなる。これにより、欠肉といった成形不良を防止することができ、製品の歩留まりが向上する。
【0043】
樹脂製の元部品3aは、操作部33のみの成形品(例えば射出成形品)と、元部品3aから操作部33を除く部分の成形品(例えば射出成形品)と、を相対回転可能に嵌合させることにより形成することができる。元部品3a用の樹脂、及び、成形部60用の樹脂R1には、種々の合成樹脂(エラストマーを含む)を用いることができ、添加剤が添加されてもよく、成形の容易性の点から熱可塑性樹脂といった熱可塑性の樹脂材料が好ましい。前記熱可塑性樹脂には、PP樹脂やPE樹脂といったポリオレフィン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、これらの組合せ、等を用いることができ、繊維やタルクといった添加剤が含まれてもよい。前記繊維には、ガラス繊維や炭素繊維といった無機繊維、ケナフといった植物繊維、これらの組合せ、等を用いることができる。
突出部40用の樹脂と成形部60用の樹脂R1には、突出部40と成形部60との接合強度を高くする点から、同じ種類の樹脂といった相溶性の高い樹脂を用いることが好ましい。
【0044】
また、元部品3a及び成形部60は、樹脂材料を低発泡倍率(例えば2~3倍)で発泡させて気泡を含むように成形されてもよい。樹脂の発泡には、物理発泡、化学発泡、等を採用することができる。例えば、発泡性の溶融樹脂を用いると、気泡を含む成形部60を射出成形することができる。この場合、溶融樹脂の発泡力により溶融樹脂の限界流動長を増やすことができるので、ゲートの数を減らしたり、成形部60の形状(設計)の自由度を向上させたりすることができる。また、射出圧力を低くすることができるので、成形部60を形成する場合、ゲート周りの樹脂漏れをさらに効果的に抑制することができ、基材2の劣化をさらに効果的に抑制することができる。さらに、射出樹脂の冷却による収縮がさらに抑制されるので、基材2の反りもさらに効果的に抑制される。タルクといった充填材を樹脂材料に添加すると、充填材が発泡の核となって発泡状態が良好になるため、基材の反りがさらに効果的に抑制される。
【0045】
(3)車両用内装部材の製造方法の具体例:
上述した内装部材1は、
図3Aに例示する突き通し工程ST1、及び、
図6に例示する成形工程ST2を含む製造方法により製造することができる。
【0046】
図3Aは、元部品3aの突出部40を配置面2aから基材2に突き通して突出部40の先端41を裏面2bから基材2の外側に出す突き通し工程ST1を示している。突き通し工程ST1では、機械が突出部40を基材2に突き通す処理を行ってもよいし、作業者が突出部40を基材2に突き通す作業を行ってもよい。突き通し工程ST1により、元部品3aが基材2に取り付けられる。
最終的に基材2が巨視的な凹凸形状を有する場合、突出部40を突き通す対象の基材2は、プレス成形された状態でもよいし、プレス成形前の状態でもよい。プレス成形前の基材2は、突き通し工程ST1の後にプレス成形されてもよいし、突出部40を突き通す時にプレス成形されてもよい。基材2は、例えば、互いに近接及び離隔可能な第一の金型及び第二の金型を含むプレス成形型を備えるプレス成形機によりプレス成形される。ここで、第一の金型は配置面2aに合わせた型面を有し、第二の金型は裏面2bに合わせた型面を有している。互いに離隔している第一の金型と第二の金型との間にプレス成形前の基材2をセットし、第一の金型と第二の金型とを近接させることにより、基材2が巨視的な凹凸形状にプレス成形される。
【0047】
図3A等に示すように、突出部40が先細り状のテーパー部42を有しているので、基材2に突出部40を通す貫通穴を予め形成する必要が無い。
図3A,3Bに示すように、突出部40を通す貫通穴が基材2に無くても容易に突出部40を基材2に突き通すことができる。また、複数の溝43が突出部40に対して突出方向D5に沿って形成されているので、突出部40を基材2に突き通すことが容易である。
【0048】
突き通し工程ST1の後、成形工程ST2が行われる。
図6は、突出部40の先端41及びその周辺に樹脂R1を射出することにより、突出部40の先端41と基材2の裏面2bとに接合された成形部60を形成する成形工程ST2を示している。成形部60を形成する対象の基材2は、プレス成形された状態であるものとする。成形部60を形成するための樹脂R1は、熱可塑性樹脂であるものとする。
【0049】
図6に示す射出成形機300は、射出成形型310を構成する可動型312及び固定型314が近接及び離隔可能に設けられている。尚、型312を固定型にして型314を可動型にしてもよいし、両型312,314を可動型にしてもよい。可動型312は、内装部材1の車室SP1側の凹凸形状に合わせられた型面を有する金型であり、元部品3aにおける基部31及び操作部33を挿入するための凹部312aを有している。固定型314は、内装部材1の裏面の凹凸形状に合わせられた型面を有する金型とされている。成形部60を形成するためのキャビティCA1は、突出部40の先端41が裏面2bから基材2の外側に出ている状態で突出部40の先端41と基材2の裏面2bとに接合される形状である。固定型314には、溶融樹脂R1の射出装置320が接続されている。溶融樹脂R1が射出されるゲート316の位置は、
図2B,4Bに示す放射状リブ70の起点70aに合わせられている。
【0050】
成形工程ST2では、元部品3aが取り付けられた基材2がセットされた両型312,314を閉じた型締め状態で射出装置320からゲート316を介して溶融樹脂R1を射出する。ゲート316からキャビティCA1に射出された溶融樹脂R1は、成形部60において起点70aの位置から放射状リブ70の位置を介して接合部61~64の位置に進入し、突出部40の先端41及びその周辺に回り込む。ここで、接合部61~64の先端部が先細り形状であるので、溶融樹脂R1が突出部40の先端41及びその周辺に回り込み易く、欠肉といった成形不良が生じ難い。さらに、溶融樹脂R1は、成形部60において接合部61~64の位置から環状リブ78の位置に進入する。これにより、放射状リブ70の終点71a,72a,73a,74aと一体化された接合部61~64が順に環状リブ78により接続される。
以上により、樹脂R1の成形部60が射出成形され、樹脂R1が固化すると成形部60が突出部40の先端41と基材2の裏面2bとに接合された状態となる。
その後、両型312,314を離隔させると、突出部40の先端41と基材2の裏面2bとに接合された樹脂R1の成形部60を有する内装部材1を射出成形型310から取り出すことができる。
以上により、機能部品3が強固に接合された内装部材1が製造される。
【0051】
(4)車両用内装部材、及び、その製造方法の作用、及び、効果:
フロアマットを取り付けるため、マットフックとしての機能部品を互いに嵌合可能な主部品及び受け部品で構成すると仮定する。ここで、主部品は、基材の配置面上に配置される機能部、及び、該機能部から基材を貫通して受け部材と嵌合する嵌合部を含む。この嵌合部を基材に通すため、基材に予め貫通穴を形成する穴あけ工程が必要である。従って、内装部材を製造するためには、前述の穴あけ工程を行い、基材の貫通穴に主部品の嵌合部を通し、この嵌合部に受け部材を嵌合させるという、一連の作業が必要である。
【0052】
本具体例の製造方法は、元部品3aの突出部40の先端に嵌合部を設ける必要が無いので、上述の穴あけ工程を行わなくても、元部品3aの突出部40を基材2に通すことができる。基材2に突出部40を通す貫通穴を予め形成する必要が無く、受け部品を用意する必要が無く、受け部材の嵌合作業が不要であるので、本具体例の製造方法は、基材に機能部品を組み付ける作業を軽減させることができ、受け部品削減によるコストダウン、及び、人件費のコストダウンを図ることができる。
また、本具体例の製造方法では、機能部30から基材2を貫通して突出している突出部40の先端41、及び、基材2の裏面2bに樹脂R1の射出により接合された成形部60が形成される。突出部40の先端41が樹脂R1の成形部60を介して基材2の裏面2bに接合されているので、本具体例の内装部材1は、繊維材を含む基材と配置面上の機能部を含む機能部品との接合強度が高い。
【0053】
上述した説明はフロアカーペットを内装部材1の例としていたが、ドアトリム、ピラートリム、ルーフトリム、デッキサイドトリム、といったフロアカーペット以外の車両用内装部材にも本技術を適用可能である。従って、これらの車両用内装部材を適用した例も、繊維材を含む基材に機能部品を組み付ける作業を軽減させることができ、基材と機能部品との接合強度が高い車両用内装部材を提供することができる。
【0054】
(5)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、放射状リブにおいて起点から分かれているリブの数は、4本に限定されず、3本でもよいし、5本以上でもよい。機能部品3に含まれる突起の本数は、4本に限定されず、3本以下でもよいし、5本以上でもよい。機能部品3に含まれる接合部の数も、4つに限定されず、3以下でもよいし、5以上でもよい。
樹脂の成形部は、基材の裏面に接合されていることに限定されず、基材の裏面に接合されていなくてもよい。
【0055】
機能部品は、フロアマットを取り付けるための部品に限定されない。
例えば、ボデーに車体ナンバーが刻印され、ボデーを隠すフロアカーペットの基材に対して前述の車体ナンバーが見える位置に開口部が形成され、開閉可能な蓋を有する樹脂部品が前述の開口部に取り付けられることがある。この場合、基材に突き通すためのボス(突出部の例)を前述の樹脂部品の裏側に形成し、裏面から基材の外側に出たボスの先端及びその周辺に樹脂を射出することにより、ボスの先端と基材の裏面とに接合された樹脂の成形部を形成してもよい。これにより、車体ナンバーを見るための樹脂部品が強固に接合されたフロアカーペットが製造される。
【0056】
また、
図1に示すフットレスト95に対して基材2を突き通すためのボス(突出部の例)をフットレスト95の裏側に形成し、裏面から基材の外側に出たボスの先端及びその周辺に樹脂を射出することにより、ボスの先端と基材の裏面とに接合された樹脂の成形部を形成してもよい。これにより、フットレスト95が強固に接合されたフロアカーペットが製造される。
【0057】
図7Aは、変形例に係る機能部品の底面側を模式的に示している。
図7Bは、変形例に係る内装部材の裏面において成形部及びその周辺を模式的に示している。尚、既に説明した要素に類似する要素は、
図7A,7Bにおいて同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
図7A,7Bに示す機能部品3は、基材2の裏面2bを見る向きにおいて接合部61~64の周囲に台座部65~68を有する成形部60を備えている。台座部65~68は、接合部61~64から基材2の裏面2bに沿って円環状に広がり、基材2の裏面2bに接合されている。裏面2bからの台座部65~68の高さは、裏面2bからの放射状リブ70及び環状リブ78の高さよりも低い。
【0058】
第一台座部65は、裏面2bを見る向きにおいて第一接合部61の外周と一体化され、さらに、第一リブ71の終点71a近傍、及び、環状リブ78の端部近傍と一体化されている。第二台座部66は、裏面2bを見る向きにおいて第二接合部62の外周と一体化され、さらに、第二リブ72の終点72a近傍、及び、環状リブ78の端部近傍と一体化されている。第三台座部67は、裏面2bを見る向きにおいて第三接合部63の外周と一体化され、さらに、第三リブ73の終点73a近傍、及び、環状リブ78の端部近傍と一体化されている。第四台座部68は、裏面2bを見る向きにおいて第四接合部64の外周と一体化され、さらに、第四リブ74の終点74a近傍、及び、環状リブ78の端部近傍と一体化されている。
従って、基材2の裏面2bを見る向きにおいて、放射状リブ70及び環状リブ78は、接合部61~64近傍において台座部65~68を乗り越えて接合部61~64に繋がっている。
【0059】
接合部61~64の周囲に台座部65~68が有ることにより、基材2の裏面2bに対して成形部60が接合している面積が増え、基材2と機能部品3との接合強度が向上している。また、台座部65~68が放射状リブ70及び環状リブ78よりも低いことにより、少ない樹脂R1により効率的に基材2と機能部品3との接合強度が向上している。
【0060】
尚、突出部40に先細り状のテーパー部42が無くても、突出部40に受け部品との嵌合部が無いので、突出部40を通す貫通穴が基材2に無くても突出部40を基材2に突き通すことができる。また、突出部40に突出方向D5と交差する方向D6へ凹んだ凹部44を有していない内装部材、突出部40に横断面において凹んだ溝43を有していない内装部材、環状リブ78を有していない内装部材、及び、放射状リブ70を有していない内装部材も、繊維材を含む基材と機能部品との接合強度を向上させる効果が得られる。
【0061】
(6)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、繊維材を含む基材と機能部品との接合強度を向上させる車両用内装部材、その製造方法、等の技術を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1…内装部材、
2…基材、2a…配置面、2b…裏面、
3…機能部品、3a…元部品、
21…繊維材、22…バッキング、
30…機能部、31…基部、32…フランジ部、32b…裏面、33…操作部、
40…突出部、41…先端、42…テーパー部、43…溝、44…凹部、
51…第一突起、52…第二突起、53…第三突起、54…第四突起、
60…成形部、
61…第一接合部、62…第二接合部、63…第三接合部、64…第四接合部、
65~68…台座部、
70…放射状リブ、70a…起点、
71…第一リブ、72…第二リブ、73…第三リブ、74…第四リブ、
71a,72a,73a,74a…終点、
78…環状リブ、
80…車体パネル、85…パッド、90…マット、95…フットレスト、
100…自動車、
300…射出成形機、310…射出成形型、316…ゲート、320…射出装置、
AX1…中心軸、
CA1…キャビティ、
D1…前後方向、D2…上下方向、D4…厚さ方向、D5…突出方向、
R1…樹脂、
RD1…第一方向、RD2…第二方向、RD3…第三方向、RD4…第四方向、
SP1…車室、
ST1…突き通し工程、ST2…成形工程。