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特許7405541測量データ処理装置、測量データ処理方法および測量データ処理用プログラム
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  • 特許-測量データ処理装置、測量データ処理方法および測量データ処理用プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】測量データ処理装置、測量データ処理方法および測量データ処理用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20231219BHJP
   G01S 17/87 20200101ALI20231219BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S17/87
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019168433
(22)【出願日】2019-09-17
(65)【公開番号】P2021047042
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 陽
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-045150(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0313956(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
17/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に測距用のレーザー光を照射し、その反射光を検出することで、前記対象物の位置を測定する第1の位置測定装置および第2の位置測定装置による測定データを受け付ける測定データ受付部と、
前記対象物の重複した領域における前記第1の位置測定装置が検出した反射光の反射強度と前記第2の位置測定装置が検出した反射光の反射強度の差が減少するように、前記第1の位置測定装置が検出した前記反射光の反射強度および前記第2の位置測定装置が検出した前記反射光の反射強度の一方または両方を調整する調整部と
を備える測量データ処理装置。
【請求項2】
対象物に測距用のレーザー光を照射し、その反射光を検出することで、前記対象物の位置を測定する第1の位置測定装置および第2の位置測定装置による測定データを受け付ける測定データ受付ステップと、
前記対象物の重複した領域における前記第1の位置測定装置が検出した反射光の反射強度と前記第2の位置測定装置が検出した反射光の反射強度の差が減少するように、前記第1の位置測定装置が検出した前記反射光の反射強度および前記第2の位置測定装置が検出した前記反射光の反射強度の一方または両方を調整する調整ステップと
を備える測量データ処理方法。
【請求項3】
コンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、
コンピュータに
対象物に測距用のレーザー光を照射し、その反射光を検出することで、前記対象物の位置を測定する第1の位置測定装置および第2の位置測定装置による測定データを受け付ける測定データ受付ステップと、
前記対象物の重複した領域における前記第1の位置測定装置が検出した反射光の反射強度と前記第2の位置測定装置が検出した反射光の反射強度の差が減少するように、前記第1の位置測定装置が検出した前記反射光の反射強度および前記第2の位置測定装置が検出した前記反射光の反射強度の一方または両方を調整する調整ステップと
を実行させる測量データ処理用プログラム。
【請求項4】
前記第1の位置測定装置および前記第2の位置測定装置は、レーザー光を用いた点群データを得る装置であると共に外部標定要素の関係が既知であり、
前記重複した領域における前記第1の位置測定装置が得た特定の第1の点における前記反射強度に対応する前記第2の位置測定装置が得た前記反射強度の値として、前記第1の点を囲む前記第2の位置測定装置が測定した3つ以上の点における前記反射強度の平均値が採用される請求項1に記載の測量データ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)により得られる点群データを処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー光を対象物に照射し、その反射光を検出することで、反射点の三次元情報を得る技術が知られている。この技術は、LiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)と呼ばれている(例えば非特許文献1や非特許文献2を参照)。この三次元情報の取得を多数の点において行うことで点群データが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】東芝レビューVol. 73 No6(2018年11月)
【文献】自動運転ラボ(2018年10月12日)(https://jidounten-lab.com/y_6506)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LiDARを用いた技術において、複数の領域から点群データを得、それを合成してより大きな領域の点群データを得る場合がある。この際、隣接する領域は一部重複するように各領域に対する計測が行なわれる。
【0005】
各領域の計測を異なる計測装置で行う場合、部品精度の誤差や経時変化、光学部品の汚れや傷の有無、といった要因により、同じ領域に対する計測において、装置によって測距反射光の強度の違いや測距データの差が生じる場合がある。
【0006】
このような背景において、本発明は、レーザー測距装置の違いによる計測値の差を是正する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、対象物に測距用のレーザー光を照射し、その反射光を検出することで、前記対象物の位置を測定する第1の位置測定装置および第2の位置測定装置による測定データを受け付ける測定データ受付部と、前記対象物の重複した領域における前記第1の位置測定装置が検出した反射光の反射強度と前記第2の位置測定装置が検出した反射光の反射強度の差が減少するように、前記第1の位置測定装置が検出した前記反射光の反射強度および前記第2の位置測定装置が検出した前記反射光の反射強度の一方または両方を調整する調整部とを備える測量データ処理装置である。この発明は、方法の発明およびプログラムの発明として把握することもできる。
【0009】
本発明において、前記第1の位置測定装置および前記第2の位置測定装置は、レーザー光を用いた点群データを得る装置であると共に外部標定要素の関係が既知であり、前記重複した領域における前記第1の位置測定装置が得た特定の第1の点における前記反射強度に対応する前記第2の位置測定装置が得た前記反射強度の値として、前記第1の点を囲む前記第2の位置測定装置が測定した3つ以上の点における前記反射強度の平均値が採用される態様は好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レーザー測距装置の違いによる計測値の差を是正する技術が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態のブロック図である。
図2】一部重複したレーザースキャン点群を示す概念図である。
図3】処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図4】点群データ間における対応する点を求める方法の原理を示す原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.第1の実施形態
(ハードウェアの構成)
図1には、発明を利用した測量データ処理装置の一例であるレーザースキャンデータ処理装置100のブロック図が示されている。測量データ処理装置100は、市販のPC(パーソナルコンピュータ)を利用して構成されている。
【0013】
測量データ処理装置100は、コンピュータとして機能する。測量データ処理装置100が備える各機能部の機能は、使用するPCに図1に示す各機能部を実現するためのアプリケーションソフトウェアをインストールし、当該アプリケーションソフトウェアを構成するプログラムが当該PCのCPUによって実行されることで実現される。各機能部の一部または全部を各種のプロセッサや電子回路で構成してもよい。また、外部のPC(パーソナルコンピュータ)やサーバの演算部を利用して、上記機能部の少なくとも一部を実現してもよい。
【0014】
測量データ処理装置100には、異なる2つ以上のレーザースキャナが計測したレーザースキャンデータが入力される。図2に、対象となる2つのレーザースキャン点群の一例を示す。図2において黒い点の部分が測距光であるスキャン光の反射点である。図2には、第1のレーザースキャナが計測した第1のレーザースキャン点群と第2のレーザースキャナが計測した第2のレーザースキャン点群が示されている。第1のレーザースキャン点群と第2のレーザースキャン点群の各領域は隣接し、一部で重複している。
【0015】
ここでは、複数のレーザースキャナを組み合わせたマルチ型(複眼型)レーザースキャナを利用する。このマルチ型レーザースキャナは、スキャン範囲が限定されたレーザースキャンを複数組み合わせ、広範囲な計測エリアを確保した構造を有する。ここで、隣接するレーザースキャナは、図2に例示するように計測範囲(スキャン範囲)が一部で重複し、且つ、ずれた計測範囲となるように設定されている。利用する複数のレーザースキャナは、互いの外部標定要素の関係が既知とされている。
【0016】
使用するレーザースキャナは、市販されているものを利用している。レーザースキャナに係る技術については、特開2010-151682号公報、特開2008-268004号公報、米国特許第8767190号公報、US7969558号公報、US2017-0269197号公報等に記載されている。また、レーザースキャナとして、米国公開公報US2015/0293224号公報に記載されているような、スキャンを電子式に行う形態も採用可能である。
【0017】
ここでは、レーザー光を用いた測距データを得る手段としてレーザースキャナの例を挙げるが、スキャンを行わずに面状の点群データを得るフラッシュ型LiDARといった他の形式のLiDARを用いることもできる。例えば、複数のフラッシュ型LiDARを組み合わせた複眼型構造のフラッシュ型LiDARの計測データの処理をレーザースキャンデータ処理装置100で行なう形態も可能である。この場合、扱う測距データは、レーザースキャンによって得たデータではないが、処理の内容は、レーザースキャナが得たデータの場合と同じである。
【0018】
レーザースキャンデータ処理装置100は、レーザースキャンデータ取得部101、重複部分取得部102、反射強度取得部103、反射強度の差検出部104、反射強度調整部105、距離情報取得部106、距離情報の差検出部107、距離情報調整部108を備えている。その他、レーザースキャンデータ処理装置100は、通常のPCが備えるデータ記憶装置、通信装置、ユーザーインターフェース装置を備えている。
【0019】
レーザースキャンデータ取得部101は、外部標定要素(位置と姿勢)の関係が既知な複数のレーザースキャナからのレーザースキャンデータを受け付ける。各レーザースキャナからのレーザースキャンデータは、光学原点に関するオフセット補正が施されており、利用するマルチ型レーザースキャナの光学原点から見たスキャン光の反射点の方向と距離、反射光の強度のデータを含んでいる。
【0020】
マルチ型レーザースキャナの場合、複数のレーザースキャナを複合化した構造を有するが、各レーザースキャナの光学原点の位置は一致せず、少しずれた位置にある。他方で、各レーザースキャナの位置関係は既知であるので、各レーザースキャナの光学原点の位置をオフセットすることで、全てのレーザースキャナで共有できる仮想的な光学原点を設定できる。この仮想的な光学原点がマルチ型(多眼型)レーザースキャナの光学原点となる。
【0021】
重複部分取得部102は、隣接するレーザースキャンデータ間の重複する部分を取得する。図2には、第1のレーザースキャン点群と第2のレーザースキャン点群、そして2つのレーザースキャン点群が重複する重複部分が示されている。この重複部分のレーザースキャンデータが 重複部分取得部102で取得される。
【0022】
以下、重複部分取得部102で行なわれる処理について、図2の場合を例に挙げ説明する。ここで、第1のレーザースキャン点群を得る第1のレーザースキャナと、第のレーザースキャン点群を得る第のレーザースキャナは、外部標定要素の関係が既知である。よって、第1のレーザースキャン点群の位置情報と第2のレーザースキャン点群の位置情報は、同じ座標系の上で記述できる。
【0023】
ここで、第1のレーザースキャン点群と第2のレーザースキャン点群の中から、同じまたは近接する位置にある点(スキャン点)を探し出し、該当する点がある部分(領域)を重複部分として取得する。なお、重複部分において、2つの点群データのスキャン点が完全に重なるとは限らない。よって、スキャン点の間隔の1/2以下の距離で近接する両点群の点を重複する点と見なす。
【0024】
重複する点を求める方法として、一方の点群データにおける特定の点におけるスキャン光の反射強度(および/または測距距離)に対応する他方の点群データにおけるスキャン光の反射強度(および/または測距距離)として、当該特定の点を囲む他方の点群データの複数の点におけるスキャン光の反射強度(および/または測距距離)の平均値を採用する方法もある。
【0025】
図4はその原理図である。図4には、●印で示される第1の点群データと、○印で示される第2の点群データが重複した領域を、マルチ型(多眼型)レーザースキャナの光学原点(光学中心)から見た様子が示されている。ここで、●印と○印の位置は一致せず、ずれている。
【0026】
ここでは、●印で示される第1の点群データの点Aに対応する第2の点群データの点A’を求める。この場合、●印で示される点Aを囲む第2の点群データの3点以上の点を抽出する。例えば、●印で示される点Aを囲む第2の点群データの3点である点B,点C,点Dを抽出する。そして、点B,点C,点Dの位置の平均の位置を、第1の点群データに属する点Aに対応する第2の点群データの点A’の位置と見なす(あるいはそう推定する)。この場合、対応する第2の点群データの点A’は、実際には存在しない仮想的な点となる。なお、第1の点群データの特定の点(この場合は点A)を囲む4点以上の点を第2の点群データの中から選択してもよい。
【0027】
そして、点Aにおける反射強度に対応する第2の点群データにおける反射強度の推定値、すなわち(仮想的な点A’における推定される反射強度)として、上記点Aを囲む3点における反射強度の平均値を採用する。平均値の求め方としては、単純平均と加重平均が挙げられる。
【0028】
例えば、図4の場合における点A’の反射強度Iを単純平均で求める場合を説明する。この場合、点Bの反射強度をI、点Cの反射強度をI、点Dの反射強度をIとして、点A’の反射強度Iは、I=(I+I+I)/3となる。
【0029】
また、加重平均を用いる場合、例えば各点の反射強度に対応させた重み付け係数を用いて、点B,点C,点Dにおける反射強度または距離の値の加重平均を計算する。
【0030】
加重平均で用いる係数(重みづけ係数)として、点Aを囲む3点(B,C,D)の点Aに対する離れ量で定義される値を用いてもよい。ここで離れ量とは、点Aと点Bとの間の距離、点Aと点Cとの間の距離、点Aと点Dとの間の距離である。
【0031】
ここで、上記の離れ量を評価する方法として、第1の点群データにおける着目点(例えば、点A)と、それを囲む第2の点群データ点(例えば、点B,C,D)の見開き角を利用する方法が挙げられる。
【0032】
例えば、マルチ型(多眼型)レーザースキャナの光学原点(光学中心)をMとする。ここで、●印で示される点Aを囲む第2の点群データの3点B,点C,点Dを抽出する。そして、∠AMB,∠AMC,∠AMDの角度を求める。この角度は、点Aと各点の離れ量に相当する。ここで、∠AMB,∠AMC,∠AMDの角度比に対応させて加重係数を設定する。この場合、上記の角度が小さいほど、加重が重く設定される。
【0033】
反射強度取得部103は、重複部分取得部102で取得された重複部分における全てのスキャン点の反射強度を取得する。図2の場合でいうと、重複部分における第1のレーザースキャン点群各点の反射強度および重複部分における第2のレーザースキャン点群各点の反射強度を取得する。
【0034】
反射強度の差検出部104は、反射強度取得部103が検出した重複部分における一方のレーザースキャン点群の点と、それに対応する他方のレーザースキャン点群の点との反射強度の差を検出する。ここでは、同じ位置(対応する位置)にある一方のレーザースキャン点群の点からの反射強度と他方のレーザースキャン点群の点からの反射強度の差の検出を重複部分における全ての点について行う。
【0035】
例えば、第1のレーザースキャン点群と第2のレーザースキャン点群が重複する部分における第1のレーザースキャン点群の点をMi(i=1,2,3・・・)、当該部分における第2のレーザースキャン点群の点をNi(i=1,2,3・・・)とし、MiとNiが対応する点であるとする。この場合、点Niと点Miにおけるスキャン光の反射強度の差が検出される。この差の検出は、当該部分にある全ての点について行われる。
【0036】
反射強度の基準値を予め用意し、この基準値との差を求めてもよい。この場合、第1のレーザースキャン点群に属する点の反射強度と第2のレーザースキャン点群に属する点の反射強度の差が直接検出される訳ではないが、基準値を介して、当該差が検出されることになる。
【0037】
反射強度調整部105は、反射強度の差検出部104が検出した重複部分における反射光の強度の差に基づき、対象となる一方または両方のスキャン点の反射光の強度の値を調整する。ここでは、重複部分における対応する点の反射強度の差が小さくなるように、一方または両方のレーザースキャン点群各点の反射強度を調整する(増大または減少させる)。
【0038】
例えば、第1のレーザースキャン点群と第2のレーザースキャン点群が重複する部分における第1のレーザースキャン点群の点をMi(i=1,2,3・・・)、当該部分における第2のレーザースキャン点群の点をNi(i=1,2,3・・・)とし、MiとNiが対応する点であるとする。
【0039】
そして、点Niの反射強度Piと点Miの反射強度Piの差(Pi-Pi)の平均値をΔPaveとする。ここで、ΔPave>0であり、平均的にPi>Piであるとする。この場合、第2のレーザースキャン点群全体の反射強度の値を+ΔPave増加させ、Piの反射強度をPiの反射強度に近づける。調整は、一方の点群のみに対する場合に限定されず、両方の点群に対して行ってもよい。こうして、2つのレーザースキャン点群の反射強度の差が小さくなるように調整が行われる。
【0040】
iとPiの差を是正する方法として、予め定めた基準値になるように、PiとPiの値を調整する方法も可能である。この場合も第1のレーザースキャン点群の各反射点からの反射光の強度と第2のレーザースキャン点群の各反射点からの反射光の強度の差が小さくなるように、2つのレーザースキャンデータの一方または両方のスキャン点の反射強度の調整が行われる。
【0041】
距離情報取得部106は、2つのレーザースキャン点群の重複部分における各点の距離情報を取得する。ここで、取得する距離は、使用するマルチ型(多眼型)レーザースキャナの光学原点からスキャン点までの距離である。
【0042】
距離情報の差検出部107は、重複部分における対応する一方のレーザースキャン点群の点と他方のレーザースキャン点群の点との光学原点からの距離の差を検出する。ここでは、同じ位置にある一方のレーザースキャン点群の点までの距離と他方のレーザースキャン点群の点までの距離の差の検出を重複部分における全ての点について行う。
【0043】
距離情報調整部108は、重複部分における2つのレーザースキャン点群の距離の差に基づき、対象となる一方または両方のスキャン点の距離情報を調整する。ここでは、重複部分における対応する点の距離情報の差が小さくなるように、一方または両方のレーザースキャン点群各点の距離を調整する(増大または減少させる)。
【0044】
例えば、第1のレーザースキャン点群と第2のレーザースキャン点群が重複する部分における第1のレーザースキャン点群の点をMi(i=1,2,3・・・)、当該部分における第2のレーザースキャン点群の点をNi(i=1,2,3・・・)とし、MiとNiが対応する点であるとする。
【0045】
そして、点Niの光学原点からの距離Liと点Miの光学原点からの距離Liの差(Li-Li)の平均値をΔLaveとする。ここで、ΔLave>0であり、平均的にLi>Liであるとする。この場合、第2のレーザースキャン点群全体の距離情報の値を+ΔLave増加させ、LiをLiに近づける。調整は、一方の点群のみに対する場合に限定されず、両方の点群に対して行ってもよい。こうして、2つのレーザースキャン点群の距離情報の差が小さくなるように調整が行われる。
【0046】
iとLiの差を小さくする方法として、予め定めた基準値になるように、LiとLiの値を調整する方法も可能である。
【0047】
(処理の一例)
図3は、レーザースキャンデータ処理装置100で行なわれる処理の一例を示すフローチャートである。図3の処理を実行するプログラムは、レーザースキャンデータ処理装置100が備える記憶部や適当な記憶媒体に記憶され、そこから読み出され、レーザースキャンデータ処理装置100を構成するPCのCPUによって実行される。このプログラムをサーバに記憶し、インターネット経由でそこからダウンロードする形態も可能である。
【0048】
ここでは、一例として、図2に例示する状況での処理を説明する。処理が開始されると、まず第1のレーザースキャンデータと第2のレーザースキャンデータの取得が行なわれる(ステップS101)。この処理は、レーザースキャンデータ取得部101で行なわれる。
【0049】
次に、第1のレーザースキャンデータと第2のレーザースキャンデータの重複部分が取得される(ステップS102)。この処理は、重複部分取得部102で行なわれる。次に、重複部分における第1のレーザースキャンデータと第2のレーザースキャンデータに含まれるスキャン点の反射光の検出強度が取得される(ステップS103)。この処理は、反射強度取得部103で行なわれる。
【0050】
次に、ステップS103において、第1のレーザースキャンデータ内から取得されたスキャン点の反射光の反射強度と第2のレーザースキャンデータ内から取得されたスキャン点の反射光の反射強度の差を検出する(ステップS104)。この処理では、第1のレーザースキャンデータと第2のレーザースキャンデータの間で対応するスキャン点について、反射強度を比較し、その差を検出する。この処理は、反射強度の差検出部104で行なわれる。
【0051】
次に、ステップS104で検出した重複部におけるスキャン点の反射強度の差に基づき、第1のレーザースキャンデータおよび第2のレーザースキャンデータの一方または両方の反射強度の値を調整する(ステップS105)。この調整により、ステップS104で検出された反射強度の差が是正される。この処理は、反射強度調整部105で行なわれる。
【0052】
次に、重複部分における第1のレーザースキャンデータおよび第2のレーザースキャンデータ各点の距離を検出する(ステップS106)。ここで検出する距離は、使用するマルチ型レーザースキャナの光学原点から対象となるスキャン点までの距離である。この処理は、距離情報取得部106で行なわれる。
【0053】
次に、第1のレーザースキャンデータと第2のレーザースキャンデータの間で対応するスキャン点(同じ位置にあると見なせるスキャン点)について、ステップS106で検出した距離を比較し、その差を検出する(ステップ)S107。この処理は、距離情報の差検出部107で行なわれる。
【0054】
次に、ステップS107で検出した重複部におけるスキャン点の距離の差に基づき、第1のレーザースキャンデータおよび第2のレーザースキャンデータの一方または両方の距離情報を調整する(ステップS108)。この調整により、ステップS107で検出された距離の差が是正される。この処理は、距離情報調整部108で行なわれる。
【0055】
(その他)
異なる種類のレーザースキャナから得た2つの計測データに対して、本発明を適用することもできる。また、異なる種類のLiDARを用いた2つ以上の測距データに対して本発明を適用することもできる。この場合、異なる種類のLiDARから得られた複数のデータ間の差が是正される。
【0056】
対象となるレーザースキャンデータが3つある場合、第1のレーザースキャンデータと第2のレーザースキャンデータの間で図3の処理を行い。次に、第3のレーザースキャンデータと第2のレーザースキャンデータの間で図3の処理を行う。この際、第2のレーザースキャンデータを基準に、第3のレーザースキャンデータの反射強度と距離情報の調整を行う。
【0057】
更に第4のレーザースキャンデータがある場合は、第4のレーザースキャンデータと第3のレーザースキャンデータの間で図3の処理を行う。この際、第3のレーザースキャンデータを基準に、第4のレーザースキャンデータの反射強度と距離情報の調整を行う。
【0058】
同様に、N個目のレーザースキャンデータは、第Nのレーザースキャンデータと第N-1のレーザースキャンデータの間で図3の処理を行う。この際、第N-1のレーザースキャンデータを基準に、第Nのレーザースキャンデータの反射強度と距離情報の調整を行う。
【0059】
一般に、特定のレーザースキャンデータの反射強度と距離情報の調整は、隣接する調整済みのレーザースキャンデータを基準に行うことができる。
図1
図2
図3
図4