(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】電気集塵装置及び空気清浄装置
(51)【国際特許分類】
B03C 3/41 20060101AFI20231219BHJP
B03C 3/36 20060101ALI20231219BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20231219BHJP
B03C 3/45 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B03C3/41 A
B03C3/36 A
B03C3/40 A
B03C3/45 Z
(21)【出願番号】P 2019171685
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】巻嶋 優治
(72)【発明者】
【氏名】勝島 慎二郎
(72)【発明者】
【氏名】北林 功一
(72)【発明者】
【氏名】木佐貫 善行
(72)【発明者】
【氏名】田中 芳浩
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-248173(JP,A)
【文献】特開2018-176080(JP,A)
【文献】特開2008-034220(JP,A)
【文献】特開2001-038244(JP,A)
【文献】特開2007-000695(JP,A)
【文献】特開2004-141826(JP,A)
【文献】中国実用新案第203648695(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第106111335(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C3/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧の印加によって発生するコロナ放電により空気中の粒子を帯電させて捕集する電気集塵装置であって、
導電性繊維の線電極を束ねた束状部を有する放電用電極と、
導電性の液体を貯留する液槽と、
を備え、
前記放電用電極は、該放電用電極の先端部を前記液槽の液面の方向に向けた姿勢で前記液槽の液面から一定の間隔を介して配置され、
前記液槽内には、導電性の液体を吸収して保持する多孔質体製の吸液部材が設けられ、該吸液部材は、該吸液部材の上方に液膜が形成されるように前記液槽内に配置されていることを特徴とする電気集塵装置。
【請求項2】
高電圧の印加によって発生するコロナ放電により空気中の粒子を帯電させて捕集する電気集塵装置であって、
導電性繊維の線電極を束ねた束状部を有する放電用電極と、
導電性の液体を貯留する液槽と、
を備え、
前記放電用電極は、該放電用電極の先端部を前記液槽の液面の方向に向けた姿勢で前記液槽の液面から一定の間隔を介して配置され、
空気の流通方向における前記放電用電極の下流側には、高電圧が印加される反発部が設けられ、該反発部は、前記液槽の液面に対向するように配置される平面部を備えていることを特徴とする電気集塵装置。
【請求項3】
前記反発部は前記放電用電極の周囲を取り囲むように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の電気集塵装置。
【請求項4】
空気の流通方向における前記反発部の上流側端部と前記放電用電極との距離は、該放電用電極の先端部と前記液槽の液面との距離より大きく設定されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の電気集塵装置。
【請求項5】
高電圧の印加によって発生するコロナ放電により空気中の粒子を帯電させて捕集する電気集塵装置であって、
導電性繊維の線電極を束ねた束状部を有する放電用電極と、
導電性の液体を貯留する液槽と、
を備え、
前記放電用電極は、該放電用電極の先端部を前記液槽の液面の方向に向けた姿勢で前記液槽の液面から一定の間隔を介して配置され、
内部に空間を有する筐体を備え、前記液槽は該筐体内に配置され、該筐体には、前記液槽の上方の液面に対向する位置に吸込口が設けられ、空気の流通方向における該吸込口の下流側には、該吸込口から該筐体内に流入した空気が該液槽の液面に沿って該液槽の周囲に拡散するように空気の流通路が形成されていることを特徴とする電気集塵装置。
【請求項6】
空気の流通方向における前記放電用電極の下流側には、高電圧が印加される反発部が設けられ、前記液槽は碍子を介して前記筐体に支持され、該碍子は、空気の流通方向における前記反発部の下流側に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の電気集塵装置。
【請求項7】
前記碍子は前記空気の流通路から退避した位置に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の電気集塵装置。
【請求項8】
複数の前記放電用電極は、空気の流通方向における前記吸込口の下流側端部の周囲に配置されていることを特徴とする請求項5~7のいずれかの請求項に記載の電気集塵装置。
【請求項9】
前記吸込口の下流側端部は前記放電用電極の先端部よりも前記液槽の液面側に延出していることを特徴とする請求項8に記載の電気集塵装置。
【請求項10】
前記吸込口には多数の孔部が形成された整流板が設けられ、該孔部の開口面積は、該整流板の中央部から外周部に向かうに連れて次第に大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の電気集塵装置。
【請求項11】
複数の前記放電用電極は、前記吸込口と前記液槽の液面との間に配置されていることを特徴とする請求項
6又は7に記載の電気集塵装置。
【請求項12】
前記吸込口の下方には前記反発部側に向かって傾斜する傾斜面が設けられていることを特徴とする請求項11に記載の電気集塵装置。
【請求項13】
前記放電用電極の前記束状部は、直径5~25μmの線電極を10~200本束ねて構成されていることを特徴とする請求項1~12のいずれかの請求項に記載の電気集塵装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかの請求項に記載の電気集塵装置を備えた空気清浄装置であって、
ケースの内部に前記電気集塵装置と吸引ファンが収納され、該ケースの上部に吸込口が開口され、該ケースの下部に排気口が開口されていることを特徴とする空気清浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧の印加によって発生するコロナ放電により、空気中の塵埃や煙や油煙中のミスト等の粒子を帯電させて捕集する電気集塵装置及び該電気集塵装置を備えた空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気の浄化を行うために、塵埃を吸引して浄化する空気清浄機が広く利用されている。例えば、特許文献1には、線状又は針状の放電極と水を貯留するタンクとを配置し、水と放電極の間に高電圧を印加することによってコロナ放電を発生させて、空気中の汚染物質を除去する空気清浄機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の空気清浄機において線状の放電極を使用した場合には、線が破断(切れる)恐れがあるため、耐久性に問題が生じる。また、針状の放電極を使用した場合には、稼動中に針先に汚れが付着することによって、放電が弱くなり、荷電(帯電)性能に影響を与える恐れがあると共に、耐久性にも問題がある。
【0005】
さらに、特許文献1に記載の空気清浄機は、放電極によって帯電された粒子を液面側に集塵させるための極板(反発極)を備えていない、いわゆる1段式の電気集塵方式のため、集塵効率(捕集効率)を高めることが難しいという問題もある。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、耐久性の向上、及び荷電(帯電)性能や集塵(捕集)性能の向上を図ることのできる電気集塵装置及び空気清浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するため、本発明の第1の電気集塵装置は、高電圧の印加によって発生するコロナ放電により空気中の粒子を帯電させて捕集する電気集塵装置であって、導電性繊維の線電極を束ねた束状部を有する放電用電極と、導電性の液体を貯留する液槽と、を備え、前記放電用電極は、該放電用電極の先端部を前記液槽の液面の方向に向けた姿勢で前記液槽の液面から一定の間隔を介して配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の第1の電気集塵装置によれば、放電用電極が線電極を束ねた束状部を有しており、針式や線式の電極に比べて、多数の線電極を備えているため、汚れに強く耐久性に優れている。また、針式や線式の電極に比べて、低電圧でコロナ放電を発生させることができるので、液槽の液面における波の発生を抑制し、安定した放電を行うことができる。さらに、放電用電極の先端部を液槽の液面の方向に向けた姿勢で配置しているため、放電用電極と液面との間で、安定した放電を行うことができる。
【0009】
本発明の第2の電気集塵装置は、上記した第1の電気集塵装置において、前記液槽内には、導電性の液体を吸収して保持する多孔質体製の吸液部材が設けられ、該吸液部材は、該吸液部材の上方に液膜が形成されるように前記液槽内に配置されることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の電気集塵装置によれば、吸液部材により液槽の液面における波の発生を抑制し、安定した放電を行うことができる。また、吸液部材の上方に液膜を形成させることにより、安定した放電を行うことができる。
【0011】
本発明の第3の電気集塵装置は、上記した第1又は第2の電気集塵装置において、空気の流通方向における前記放電用電極の下流側には、高電圧が印加される反発部が設けられ、該反発部は、前記液槽の液面に対向するように配置される平面部を備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の電気集塵装置は、上記した第3の電気集塵装置において、前記反発部は前記放電用電極の周囲を取り囲むように配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の第3及び第4の電気集塵装置によれば、放電用電極により帯電されて放電用電極の下流側に拡散された粒子を、反発部に反発させて液槽の液体内に確実に取り込ませることができる。
【0014】
本発明の第5の電気集塵装置は、上記した第3又は第4の電気集塵装置において、空気の流通方向における前記反発部の上流側端部と前記放電用電極との距離は、該放電用電極の先端部と前記液槽の液面との距離より大きく設定されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の第5の電気集塵装置によれば、放電用電極と反発部との互いの電界干渉を防止し、放電用電極と反発部の互いの性能低下を防止することができる。
【0016】
本発明の第6の電気集塵装置は、上記した第1~第5のいずれかの電気集塵装置において、内部に空間を有する筐体を備え、前記液槽は該筐体内に配置され、該筐体には、前記液槽の上方の液面に対向する位置に吸込口が設けられ、空気の流通方向における該吸込口の下流側には、該吸込口から該筐体内に流入した空気が該液槽の液面に沿って該液槽の周囲に拡散するように空気の流通路が形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の第6の電気集塵装置によれば、下降方向から横方向に気流の向きを変化させることで、空気中に含まれる大きな粒子は、気流から離脱されて液体中に溶け込むため、放電用電極や反発部の汚れを軽減することができ、耐久性を向上させることができる。また、吸込口から流入した空気は、吸込口から周囲の液面に拡散するように流通するので、液槽の液面全体を有効に活用することができる。さらに、筐体と液槽との間を流通路とすることで、筐体の内部空間を有効に活用することができる。
【0018】
本発明の第7の電気集塵装置は、上記した第6の電気集塵装置において、前記液槽は碍子を介して前記筐体に支持され、該碍子は、空気の流通方向における前記反発部の下流側に配置されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の第8の電気集塵装置は、上記した第7の電気集塵装置において、前記碍子は前記空気の流通路から退避した位置に配置されていることを特徴とする。
【0020】
本発明の第7及び第8の電気集塵装置によれば、碍子表面に粒子による汚れが付着することで絶縁性が低下して沿面放電や高圧電流を短絡させたりするといった不具合の発生を防止することができる。
【0021】
本発明の第9の電気集塵装置は、上記した第6~第8のいずれかの電気集塵装置において、複数の前記放電用電極は、空気の流通方向における前記吸込口の下流側端部の周囲に配置されていることを特徴とする。
【0022】
本発明の第9の電気集塵装置によれば、吸込口から周囲に流出する粒子を確実に帯電させることができる。
【0023】
本発明の第10の電気集塵装置は、上記した第9の電気集塵装置において、前記吸込口の下流側端部は前記放電用電極の先端部よりも前記液槽の液面側に延出していることを特徴とする。
【0024】
本発明の第10の電気集塵装置によれば、吸込口から流入した空気は、液槽の液面に沿って流通するように規制され、放電用電極の根元部の方には流通しないため、確実に荷電エリアを通過することで荷電性能を向上させることができる。
【0025】
本発明の第11の電気集塵装置は、上記した第9又は第10の電気集塵装置において、前記吸込口には多数の孔部が形成された整流板が設けられ、該孔部の開口面積は、該整流板の中央部から外周部に向かうに連れて次第に大きくなるように形成されていることを特徴とする。
【0026】
本発明の第11の電気集塵装置によれば、吸込口の内部空間を有効に活用することができると共に、吸込口の中央部の空気の流通量を減少させ、吸込口の外周部の空気の流通量を増加させることで、荷電効率を高めることができる。
【0027】
本発明の第12の電気集塵装置は、上記した第6~第8のいずれかの電気集塵装置において、複数の前記放電用電極は、前記吸込口と前記液槽の液面との間に配置されていることを特徴とする。
【0028】
本発明の第12の電気集塵装置によれば、吸込口と液面との流通路を有効に活用すると共に、気流に対して放電用電極の先端部が下流側に配置されているため、放電用電極の先端部を汚れ難くすることができ、耐久性を向上させることができる。
【0029】
本発明の第13の電気集塵装置は、上記した第12の電気集塵装置において、前記吸込口の下方には前記反発部側に向かって傾斜する傾斜面が設けられていることを特徴とする。
【0030】
本発明の第13の電気集塵装置によれば、吸込口から反発部に流入する気流を滑らかにすることができるため、空気の流通抵抗を低減させることができる。
【0031】
本発明の第14の電気集塵装置は、上記した第1~第13のいずれかの電気集塵装置において、前記放電用電極の前記束状部は、直径5~25μmの線電極を10~200本束ねて構成されていることを特徴とする。
【0032】
本発明の第14の電気集塵装置によれば、空気の流通性と放電用電極の経済性を高めることができると共に、放電用電極の耐久性(錆び難い)と放電性能(荷電性能)の向上を図ることができる。
【0033】
本発明の空気清浄装置は、上記した第1~第14の電気集塵装置を備えた空気清浄装置であって、ケースの内部に前記電気集塵装置と吸引ファンが収納され、該ケースの上部に吸込口が開口され、該ケースの下部に排気口が開口されていることを特徴とする。
【0034】
本発明の第15の空気清浄装置によれば、集塵性能(捕集性能)の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、汚れに強く耐久性の向上を図ることができると共に、低電圧で安定したコロナ放電を発生させることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る電気集塵装置を斜め上方から示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る電気集塵装置の内部を斜め上方から示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る電気集塵装置を前後方向の中心位置から左右方向に切断して示す側面断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る電気集塵装置の側方部分を前後方向の中心位置から左右方向に切断して示す側面断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る電気集塵装置の上部を斜め下方から示す分解斜視図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る電気集塵装置を斜め上方から示す斜視図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態の電気集塵装置の要部を斜め上方から示す斜視図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る電気集塵装置を前後方向の中心位置から左右方向に切断して示す側面断面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る電気集塵装置を斜め下方から示す分解斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る空気清浄装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付した図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下において説明する各実施の形態は本発明の好適な具体例であって、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限りこれらの態様に限定されるものではない。
【0038】
[第1の実施形態に係る電気集塵装置]
まず、
図1~
図5を参照しつつ、本発明の第1の実施の形態に係る電気集塵装置について説明する。ここで、
図1は第1の実施形態に係る電気集塵装置を斜め上方から示す斜視図、
図2は第1の実施形態に係る電気集塵装置の内部を斜め上方から示す斜視図、
図3は第1の実施形態に係る電気集塵装置を前後方向の中心位置から左右方向に切断して示す側面断面図、
図4は第1の実施形態に係る電気集塵装置の側方部分を前後方向の中心位置から左右方向に切断して示す側面断面図、
図5は第1の実施形態に係る電気集塵装置の上部を斜め下方から示す分解斜視図である。
【0039】
なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図1において矢印で示した前後、左右及び上下の向きを基準として、各図における向きを設定する。また、「流通方向」とは、空気が流れる方向を指し、「上流」及び「下流」並びにこれらに類する用語は、空気の流通方向における「上流」及び「下流」並びにこれらに類する概念を指すこととする。
【0040】
第1の実施形態に係る電気集塵装置1は、コロナ放電によって空気中の粒子を帯電させて捕集する装置であり、筐体2と、液槽3と、放電部4と、給電用碍子5及び支持用碍子6と、高電圧電源部7と、を備えて構成されている。筐体2は、基準電位点(例えば、大地等)に接続された接地電極となっている。液槽3は、筐体2の内部に設けられ、給電用碍子5及び支持用碍子6を介して筐体2に支持されている。放電部4は、液槽3の液面との間でコロナ放電を発生させる放電用電極30を備えている。
【0041】
<筐体>
筐体2は、内部に空間を有する扁平な直方体形状に形成されている。筐体2の上面には、矩形状の天板11が固定されている。天板11は、筐体2の各側面2a,2b,2c,2dの上縁部に形成された折り曲げ部8を介して、合計8個のネジ12で筐体2に着脱可能に設けられている。天板11の中央部には、平面視で矩形状の立ち上がり部13が形成されている、立ち上り部13の内部には、吸込口15が固定されていると共に、矩形状の開口部14が形成されている。
【0042】
吸込口15は、立ち上がり部13の内面に沿って矩形筒状に形成される上部16と、上部16から下方内側に傾斜する傾斜部17を介して矩形筒状に形成される下部18と、を備えており、下部18は上部16より小径に形成されている。吸込口15の上部16には、吸込口用ダクト51が接続されている。
【0043】
吸込口15の上部16の内部には、空気の流通を遮る方向に整流板9が水平姿勢で設けられている。整流板9には、多数の孔部19が形成されており、孔部19の開口面積は中央部から外周部に進むに従って次第に大きくなるように設定されている。これにより、吸込口15の内部空間を有効に活用することができると共に、吸込口15の中央部の空気の流通量を減少させ、吸込口15の外周部の空気の流通量を増加させることで、荷電効率を高めることができる。
【0044】
天板11の下方には、合計4本のスペーサ20を介して、天板11より小さい矩形状のベース板21が固定されている。ベース板21の中央部には、天板11の立ち上がり部13に対応した位置に立ち上がり部22が形成されている。立ち上がり部22の上端は天板11の下面に接触し、立ち上がり部22の内側には、開口部14に対応した位置に前記開口部14と同一形状の開口部23が形成されている。
【0045】
ベース板21の下面には、開口部23を臨む位置に矩形環状の支持体固定部材24が形成されていると共に、支持体固定部材24の径方向外側において支持体固定部材24を取り囲むように矩形環状の反発部25が形成されている。支持体固定部材24は、上面が開放されたコの字状断面を有しており、支持体固定部材24の内側の面24aは立ち上がり部13及び22の各内側の面と同一面を形成している。
【0046】
反発部25は、上面が開放されたコの字状断面を有しており、支持体固定部材24の外側に所定距離X(
図4参照)離間して配置されている。反発部25は、径方向及び上下方向の長さがいずれも支持体固定部材24より大きく、反発部25の下面には導電性の平面部26が形成されている。
【0047】
筐体2の下面には、矩形状の排気口50が形成されている。空気の流通路27における圧損低下を防止するため、排気口50の開口面積は、吸込口15の開口面積よりも大きく設定されている。排気口50には、排気用ダクト52が接続され、排気用ダクト52に吸引ファン(図示省略)が設けられている。なお、本実施形態では、吸込口15及び排気口50にそれぞれ吸込口用ダクト51、排気用ダクト52が接続されているが、ダクト51,52を使用せずに、排気口50の周囲から吸引して排気口50の周囲に排気しても良い。
【0048】
<液槽>
液槽3は、上面が開放された扁平な直方体形状に形成され、筐体2の内部に収納されている。液槽3は、給電用碍子5及び支持用碍子6を介して筐体2に支持されており、液槽3の周囲には、空気の流通路27が形成されている。液槽3には、導電性を有する液体28(例えば、水)が貯留されている。液槽3に貯留される液体は、ウィルス等を殺菌する殺菌成分や消臭成分を備えた液体でも良い。
【0049】
液槽3内には、吸収性(吸水性)を有する多孔質体製の吸液部材29が設けられている。ここで、多孔質体とは、素材中に空間(繊維と繊維の隙間、発泡など)が形成されて、液体が浸透するようなものを示し、具体的には、発泡材やスポンジ、ジェル状や金属製であっても構わない。吸液部材29は、液槽3の液面近くに配置され、吸液部材29に浸み込んだ液体によって、液体の上面に例えば0.5mm以下の液膜が形成されるようになっている。
【0050】
また、液槽3内には、吸液部材29を下方から支持する吸液部材支持体(図示省略)が設けられており、これにより、吸液部材29は液槽3内の所定位置に保持される。前記吸液部材支持体は、例えば、メッシュ状の金網や板状のパンチングメタルにより形成されている。
【0051】
なお、液槽3内に、液体を供給する液体供給手段(図示省略)や液槽3内の汚れた液体を排出する液体排出手段(図示省略)を設けても良い。例えば、液体ポンプとフィルタを用いて、液槽3内に液体が循環供給されるようにしても良い。また、液体が水の場合、液槽3に水道管を接続して常にきれいな水が液槽3内に供給されるようにしても良い。
【0052】
<放電部>
図4に良く示されているように、放電部4は、複数の放電用電極30と、各放電用電極30を支持する支持体31と、を備えている。各放電用電極30は、繊維状の線電極32を束ねてブラシ状に形成された束状部33を備えている。線電極32は、直径12μmの非磁性のステンレス繊維で形成されている。このため、線電極32が束状部33から離間しやすく、放電性能を高めることができる。例えば、磁性を備えたフェライト系では、線電極32が束状部33より離間し難いため、束状部との電界干渉による影響が大きく、強電界のコロナ放電を発生させることが難しい。1つの放電用電極30は、例えば、約100本の線電極32が束ねられることで形成されている。なお、放電用電極30は、直径5~25μmの線電極32を10~200本束ねて形成されていても良い。
【0053】
放電用電極30に印加される電圧は、4~6kVの範囲であり、放電用電極30の長さは、3~7mmの範囲である。このため、比較的低電圧でも、安定して放電することができる。また、放電用電極30には、直流でマイナスの高電圧が印加される。このように直流方式を採用することで、他の方式(交流、パルス)に比べて、比較的簡単な構成とすることができる。また、マイナス荷電方式を採用することで、プラス荷電方式に比べて、同じ空間(隙間)でも放電用電極30に放電電流を多く流すことができる。さらに、プラス荷電方式に比べて、放電安定性(異常放電しにくい特性)を向上させることができる。
【0054】
支持体31は、ステンレス(SUS304)で形成されており、線電極32と同じ材質を使用している。支持体31に固定されている線電極32と支持体31は、同じ材質(ステンレス)を使用していることで、異種金属の接触による電解腐食(電食)を防止している。
【0055】
支持体31は、支持体固定部材24の内側の面24aと外側の面24bとの両側に2列で周方向に固定されている。これにより、複数の放電用電極30は、吸込口15の周囲に配置され、支持体31を2列に配列することで荷電効率を高めることができる。
【0056】
複数の放電用電極30は、支持体31から液槽3の液面に向かって下方に延びた状態で設けられている。複数の放電用電極30は全て略同じ全長に形成され、複数の放電用電極30の先端は略揃えられている。複数の放電用電極30は、支持体31の周方向に沿って所定のピッチで間欠的に設けられている。
【0057】
放電用電極30の先端部(下端部)と液槽3の液面との距離Yは、反発部25の平面部26と液槽3の液面との距離と同じ距離に設定されており、例えば、いずれも、印加電圧が数KVで10数mmに設定されている。なお、捕集性能(捕集効率)向上のため、反発部25と液槽3の液面との距離は、放電用電極30の先端部と液槽3の液面との距離Yよりも近付けて設定されても良い。
【0058】
反発部25の内側の面25aと外側の放電用電極30との距離Xは、放電用電極30の先端部(下端部)と液槽3の液面との距離Y(放電距離)よりも大きく設定されている。これにより、電界干渉の防止を図ることができる。
【0059】
また、吸込口15の下端部は、放電用電極30の先端部(下端部)よりも液面側に延出している。これにより、吸込口15から流入した空気は、吸込口15から流出すると液槽3の液面に沿って流通するように誘導されるため、放電用電極30の根元部(上部)に流通しない構造となり、確実に荷電エリアを通過するため、荷電性能を向上させることができる。さらに、上記したように、吸込口15の傾斜部17により吸込口15が放電用電極30から離間するように形成されているため、電界干渉の防止を図ることができる。なお吸込口15の下部18と内側の放電用電極30との距離は、反発部25の内側の面25aと外側の放電用電極30との距離Xと同等に設定されている。これにより、電界干渉の防止を図ることができる。
【0060】
<給電用碍子及び支持用碍子>
筐体2の側面と液槽3の側面との間には、1個の給電用碍子5及び3個の支持用碍子6が設けられている。給電用碍子5及び支持用碍子6は、例えば、磁器又は陶器もしくは電気絶縁性に優れる樹脂で形成されている。
【0061】
給電用碍子5は、筐体2の一側面2aと液槽3の一側面3aとの間に介装される碍子本体34と、筐体2の一側面2aの外側に設けられる給電接続部35と、を備えている。碍子本体34は、略円筒状に形成され、碍子本体34の軸心には、貫通穴38aが形成されている。
【0062】
給電接続部35は、円板形状の鍔部37と、鍔部37と同心で鍔部37より小径に形成される円筒状の凹部36と、により構成されている。鍔部37の軸心には、碍子本体34の貫通穴38aと連通するように貫通穴38bが形成されている。鍔部37の貫通穴38b及び碍子本体34の貫通穴38aに挿通された給電用ネジ39にナット40を締結することにより、碍子本体34が筐体2の一側面2aと液槽3の一側面3aとの間に固定されるようになっている。
【0063】
鍔部37の外周部には、複数(図示では4個)の固定穴が周方向に均等間隔で形成されており、これらの固定穴に挿通された固定用ネジ41にナット42を締結することにより、給電接続部35が筐体2の一側面2aに固定されるようになっている。給電接続部35の凹部36には、給電用バネ43が給電用ネジ39に電気的に接触するように設けられ、給電用バネ43は高電圧電源部7と電気的に接触している。
【0064】
支持用碍子6は、筐体2の一側面2a以外の他の3つの側面2b,2c,2dと液槽3の一側面3a以外の他の3つの側面3b,3c,3dとの間にそれぞれ介装されている。支持用碍子6の軸心には、内側及び外側からそれぞれ貫通溝44a,44bが形成されている。支持用碍子6の内側及び外側から各貫通溝44a,44bにそれぞれ固定ネジ45を締結することにより、支持用碍子6が筐体2の3つの側面2b,2c,2dと液槽3の3つの側面3b,3c,3dとの間にそれぞれ固定されるようになっている。
【0065】
<高電圧電源部>
図3に示すように、電圧電源部7は、高圧トランス46と、倍圧部47と、リミットスイッチ48と、を備えている。高電圧電源部7は、給電用碍子5を介して液槽3側に高電圧を印加する。高圧トランス46は、元電源P(交流100V)の交流電圧を昇圧する。倍圧部47は、高圧トランス46で昇圧した交流電圧を直流電圧に変換し、且つさらに昇圧することでマイナス約5kVの高電圧を生成する。また、倍圧部47は、放電用電極30に対する高電圧の印加を制御する出力制御部としても機能する。リミットスイッチ48は、電気集塵装置1を後述する空気清浄装置100に装着した時に投入状態(ON状態)となり、電気集塵装置1を空気清浄装置100から離脱した時に開放状態(OFF状態)となる。
【0066】
仮に、集塵方式をプラス荷電方式とすると、荷電に必要な放電電流を確保するために放電距離を近づけなくてはならず異常放電し易くなる。したがって、上記した本実施形態では、同じ空間の間隔(隙間)でも放電電流が多いことと、放電安定性(異常放電しにくい傾向)を考慮してマイナス荷電方式を採用している。なお、直流の元電源(例えば24V)を使用しても良い。
【0067】
<空気の流通路>
図3及び
図4において矢印で示すように、電気集塵装置1の内部には、中央の吸込口15から流入して下降した空気が液槽3の液面に沿って外側に拡散した後、筐体2の側面2a,2b,2c,2dと液槽3の側面3a、3b、3c、3dとの間、及び筐体2の下面と液槽3の下面の間を通って、排気口50から外部に排出するように空気の流通路27が形成されている。なお、本実施形態では、電気集塵装置1の上部から内部に空気を吸引し、下部から排気するように空気の流通路27が形成されているが、空気の流れを逆にしても良い。その場合、放電用電極30と反発部25の配置も逆になる。
【0068】
[電気集塵装置の作用]
次に、主に
図3及び
図4を参照しつつ、電気集塵装置1の作用について説明する。電気集塵装置1の外部で発生した塵埃や煙や油煙中のミスト等の粒子を含む含塵空気は、前記吸引ファンによる吸引力によって吸込口15の内部に吸い込まれて下降気流(ダウンフロー)となり、吸込口15の下部18から液槽3内に流入する。
【0069】
この時、吸込口15内の整流板9の孔部19の開口面積は中央部から外周部に進むに従って次第に大きくなるように設定されているため、吸込口15の内部空間を有効に活用することができると共に、吸込口15の中央部の空気の流通量を減少させ、吸込口15の外周部の空気の流通量を増加させることができる。これにより、吸込口15から液槽3内に流入した空気が、液槽3の液面にダイレクトに衝突したり、液面を波立たせたりすることがなく、放電用電極30が配置されている吸込口15の外周方向に空気を誘導することができるため、荷電効率を高めることができる。
【0070】
このように吸込口15から液槽3内に流入した含塵空気は、吸込口15の内径より液槽3の内径の方が大きいため、液槽3の液面に沿って吸込口15の周囲に拡散し、放電用電極30と液槽3の液面との間を通過する。この時、
図4に良く示されているように、含塵空気の気流の向きを下降方向から横方向に変化させることで、含塵空気中に含まれる大きな粒子は、気流から離脱して液槽3内の液体28中に溶け込む。
【0071】
この間、高電圧電源部7から給電用碍子5を介して液槽3側に高電圧が印加されることで、束状部33から離間した線電極32は強電界となり、線電極32の先端部と液槽3との間で、コロナ放電が発生する。コロナ放電は、各放電用電極30の先端部と液槽3の液面との間に略円錐状の帯電エリアEAを形成し、帯電エリアEAを流れる空気中の小さな粒子を帯電させる。帯電した粒子は、液槽3の液面に引き寄せられて吸着され、液槽3の液体中に捕集される。
【0072】
放電用電極30と液槽3の液面との間を通過した含塵空気は、反発部25の平面部26と液槽3の液面との間を通過する。この間、含塵空気中の帯電された小さな粒子は反発部25の平面部26から反発し、液槽3の液面側に寄せられて液槽3の液体中に捕集される。
【0073】
反発部25と液槽3の液面との間を通過して粒子が除去された清浄空気は、液槽3の外周部から一旦上昇した後に下降し、筐体2の側面2a,2b,2c,2dと液槽3の側面3a、3b、3c、3dとの間、及び筐体2の下面と液槽3の下面の間を通り、排気口50から外部に排出される。
【0074】
この時、給電用碍子5及び支持用碍子6は、空気の流通方向において反発部25の下流側の清浄空気が流通する領域(筐体2の側面2a,2b,2c,2dと液槽3の側面3a,3b,3c,3dとの間)にそれぞれ設けられているため、碍子表面に粒子による汚れが付着することで絶縁性が低下して沿面放電や高圧電流を短絡させたりするといった不具合を防止することができる。
【0075】
[第2の実施形態に係る電気集塵装置]
次に、
図6~
図9を参照しつつ、本発明の第2の実施の形態に係る電気集塵装置について説明する。ここで、
図6は第2の実施形態に係る電気集塵装置を斜め上方から示す斜視図、
図7は第2の実施形態の電気集塵装置の要部を斜め上方から示す斜視図、
図8は第2の実施形態に係る電気集塵装置を前後方向の中心位置から左右方向に切断して示す側面断面図、
図9は第2の実施形態に係る電気集塵装置を斜め下方から示す分解斜視図である。なお、以下の説明において、上記した第1の実施形態に係る電気集塵装置1と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0076】
第2の実施形態に係る電気集塵装置61は、コロナ放電によって空気中の粒子を帯電させて捕集する装置であり、筐体62と、液槽63と、放電部64と、給電用碍子65及び支持用碍子66と、高電圧電源部7(
図3参照)と、を備えて構成されている。
【0077】
<筐体>
筐体62は、基準電位点(例えば、大地等)に接続された接地電極となっており、内部に空間を有する扁平な直方体形状に形成されている。筐体62の上面には、矩形状の天板67が設けられ、天板67の中央部には、矩形状の吸込口68が形成されている。天板67の下方には、矩形枠状のスペーサ69が設けられ、天板67は4個のネジ70を介してスペーサ69に着脱可能に固定されている。スペーサ69の中央部には、吸込口68と同一形状の開口部71が形成されている。
【0078】
天板67の下方には、天板11より小さい矩形状のベース板72が設けられている。ベース板72の中央部には立ち上がり部73が形成されている。立ち上がり部73は、鉛直な壁部73aと、壁部73aの上端から中央側に延出する上面部73bと、により構成されている。
【0079】
立ち上がり部73の互いに対向する壁部73aの両端部間には、2本のシャフト84が渡設されている。各シャフト84の両端部には壁部73aに固定するためのネジ85が螺設されている。また、立ち上がり部73の上面部73bには、4箇所に固定穴74が形成され、固定穴74を利用してスペーサ69が上面部73bに固定されている。ベース板72の中央部には、吸込口68と同一形状の開口部75が形成されている。
【0080】
ベース板72の立ち上がり部73の外周側には、矩形環状に反発部76が形成されている。反発部76は板状を成しており、反発部76の外周縁部の四方4箇所には、垂直な折れ曲がり部77a,77b,77c,77dがそれぞれ形成されている。1つの折れ曲がり部77aと筐体62の一側面62aとは1つの給電用碍子65により固定され、他の3つの折れ曲がり部77b,77c,77dと筐体62の他の3つの側面62b,62c,62dとはそれぞれ3つの支持用碍子66により固定されている。
【0081】
また、ベース板72の吸込口68の下方には、反発部76に向かって傾斜面72aが形成されている。これにより、吸込口68から反発部76に流入する気流を円滑にすることができ、空気の流通抵抗を低減させることができる。
【0082】
筐体62の下面には、矩形状の排気口78が形成されている。空気の流通路79における圧損低下を防止するため、排気口78の開口面積は、吸込口68の開口面積よりも大きく設定されている。排気口78には、排気用ダクト59が接続され、排気用ダクト59に吸引ファン(図示省略)が設けられている。また、筐体62の下面には、排気口78の四隅に固定部80がそれぞれ突設されている。
【0083】
<液槽>
液槽63は、上面が開放された扁平な直方体形状に形成されている。液槽63は、筐体62の内部において各固定部80に固定されており、液槽3の周囲には、空気の流通路79が形成されている。
【0084】
液槽63には、導電性を有する液体が浸み込んだ多孔質体製の吸液部材81が収容されている。吸液部材81の大きさは、液槽63内に隙間なく収容されるように設定されており、液槽63内に吸液部材81が収容された状態で吸液部材81の上面に例えば0.5mm以下の液膜が形成されるようになっている。
【0085】
吸液部材81は、稼動時間の経過と共に汚れを吸着するため、次第に汚れてくるが、その際には、汚れた吸液部材81を液槽63内から取り出して洗浄したり或いは交換したりすれば良い。したがって、液槽63内の汚水を排水するための設備が不要となるので、経済性に優れている。
【0086】
<放電部>
放電部64は、複数の放電用電極82と、各放電用電極82を支持する複数の支持体83と、を備えている。なお、放電用電極82の構成は、上記した第1の実施形態の放電用電極30と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0087】
各支持体83の両端部には孔が形成されており、シャフト84が両端部の孔を貫通することで各支持体83は吸込口68の開口を横断するように複数列(本実施形態では、10列)に亘ってシャフト84に支持されている。シャフト84の外周には、シャフト84より一回り大きい外径を有する筒状の導電性のカラー87が設けられており、カラー87により支持体83間は所定の間隔に維持されている。カラー87は、シャフト84の両端部側において立ち上がり部73の壁部73aと支持体83との間に介装される長めのカラー87aと、隣接する支持体83間に介装される短めのカラー87bと、を備えている。
【0088】
<給電用碍子及び支持用碍子>
給電用碍子65は、1つの折れ曲がり部77aと筐体62の一側面62aとの間の空気の流通路79から退避した位置に介装される碍子本体88と、筐体62の一側面62aの外側に設けられる給電接続部89と、を備えている。碍子本体88は、略円筒状に形成され、碍子本体88の軸心には、貫通穴90が形成されている。
【0089】
給電接続部89は、平板形状の鍔部91と、鍔部91に突設される円筒状の凹部92と、により構成されている。鍔部91の軸心には、碍子本体88の貫通穴90と連通するように貫通穴93が形成されている。鍔部91の貫通穴93と碍子本体88の貫通穴90に挿通された給電用ネジ94にナット95を締結することにより、碍子本体88が折れ曲がり部77aと筐体62との間に固定されるようになっている。
【0090】
鍔部91には、複数(図示では2個)の固定用ネジ96を締結することにより、給電接続部89が筐体62の一側面62aに固定されるようになっている。給電接続部89の凹部92には、給電用バネ97が給電用ネジ94に電気的に接触するように設けられ、給電用バネ97は高電圧電源部7(
図3参照)と電気的に接触している。なお、高電圧電源部7の構成は、上記した第1の実施形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0091】
支持用碍子66は、内側及び外側からそれぞれ軸心に形成された貫通溝98a,98bにそれぞれ固定ネジ99を締結することにより、各折れ曲がり部77b,77c,77dと筐体62の各側面62b,62c,62dとの間の空気の流通路79から退避した位置に、それぞれ固定されるようになっている。
【0092】
<空気の流通路>
図8において矢印で示すように、電気集塵装置61の内部には、中央の吸込口68から流入して下降した空気が放電部64を通過し、液槽63の液面に沿って外側に拡散した後、筐体2の側面62a,62b,62c,62dと液槽3の側面63a、63b、63c、63dとの間、及び筐体2の下面と液槽63の下面の間を通って、排気口78から外部に排出するように空気の流通路79が形成されている。
【0093】
[電気集塵装置の作用]
次に、電気集塵装置61の作用について説明する。電気集塵装置61の外部で発生した塵埃や煙や油煙中のミスト等の粒子を含む含塵空気は、前記吸引ファンによる吸引力によって吸込口68の内部に吸い込まれて下降気流(ダウンフロー)となり、吸込口68の下方において放電部64を通過する。
【0094】
放電部64を通過した含塵空気は、放電用電極82と液槽63の液面との間を通過しながら、液槽63の液面に沿って放電部64の周囲に拡散する。この間、高電圧電源部7から給電用碍子65を介して放電用電極82に高電圧が印加されることで、放電用電極82の先端部と液槽63との間で、コロナ放電が発生する。コロナ放電により、各放電用電極82の先端部と液槽63の液面との間に帯電エリアが形成され、この帯電エリアを流れる空気中の粒子を帯電させる。帯電した粒子は、液槽63の液面に引き寄せられて吸着され、液槽63の吸液部材81内の液体中に捕集される。
【0095】
放電用電極82と液槽63の液面との間を通過した含塵空気は、反発部76と液槽63の液面との間を通過する。この間、含塵空気中の粒子は反発部76から反発し、液槽63の液面側に寄せられて液槽63の吸液部材81内の液体中に捕集される。
【0096】
反発部76と液槽63の液面との間を通過して粒子が除去された清浄空気は、筐体62の側面62a,62b,62c,62dと液槽63の側面63a、63b、63c、63dとの間、及び筐体62の下面と液槽63の下面の間を通り、排気口78から外部に排出される。
【0097】
この時、給電用碍子65及び支持用碍子66は、空気の流通方向において反発部76の下流側の清浄空気が流通する領域であって、空気の流通路79から退避した位置にそれぞれ設けられているため、碍子表面に粒子による汚れが付着することで絶縁性が低下して沿面放電や高圧電流を短絡させたりするといった不具合を防止することができる。
【0098】
[第1及び第2の実施形態に係る電気集塵措置の変形例]
なお、上記した第1及び第2の実施形態に係る電気集塵装置1,61は、扁平な直方体形状に形成されているが、円形状や多角形状等、他の形状であっても良い。
【0099】
また、吸込口15,68や排気口50,78の設置位置や、空気の流通路27,79のルートは、必ずしも上記した実施形態に限定されるものではなく、例えば、吸込口15,68を天板11,67の一方側に寄せた位置に設けると共に排気口50,78を筐体2,62の他方側の側面に設けて、空気が一方向に流通するように空気の流通路を形成することも可能である。その場合、反発部25,76は、放電用電極30,82の周囲を取り囲むように設けられることなく、放電用電極30,82の下流側に配置される。
【0100】
[空気清浄装置]
次に、
図10を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る空気清浄装置について説明する。ここで、
図10は本発明の実施形態に係る空気清浄装置の手前側のカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【0101】
空気清浄装置100は、水平な矩形状のテーブル101と、テーブル101の下方に設けられる直方体形状のケース102と、ケース102の下面の四隅に設けられるキャスター103と、操作部(図示省略)と、を備えている。テーブル101の中央部には、矩形状の天板104が着脱可能に設けられ、天板104には吸込口105が形成されている。
【0102】
ケース102の上部には、電気集塵装置1,61の収納スペースが設けられ、該収納スペースに電気集塵装置1,61が収納されると、電気集塵装置1,61の給電用バネ43(
図3等参照),97(
図8等参照)が空気清浄装置100の給電部(図示省略)と電気的に接触するようになっている。また、ケース102の上部には、前記収納スペースの側方に高電圧電源部や制御部等の収納スペース106が設けられている。
【0103】
ケース102には、電気集塵装置1,61の収納スペース下方に吸引ファン(図示省略)を収納する吸引ファン部107が設けられ、該吸引ファンの下流側には活性炭が収納された脱臭部(図示省略)が設けられている。また、ケース102の下部には、排気口108が形成されている。
【0104】
このように電気集塵装置1,61が収納された空気清浄装置100において、前記操作部の運転スイッチが押されると、前記給電部を介して、電気集塵装置1,61の高電圧が印加され、前記吸引ファンが駆動する。これにより、室内の汚れた煙草の煙等の粒子を含む含塵空気は、吸込口105から空気清浄装置100内に流入し、電気集塵装置1,61により含塵空気中の粒子が捕集された後、清浄な空気となって排気口108から室内に戻される。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の技術は、室内において空気中の汚れた粒子(煙草の煙、花粉等の粒子、調理時の油煙中のミストなど)を集塵する電気集塵装置や空気清浄装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0106】
1 電気集塵装置
2 筐体
3 液槽
5 給電用碍子
6 支持用碍子
9 整流板
16 吸込口
19 孔部
25 反発部
26 平面部
27 空気の流通路
28 液体
29 吸液部材
30 放電用電極
32 線電極
33 束状部
61 電気集塵装置
62 筐体
63 液槽
65 給電用碍子
66 支持用碍子
68 吸込口
72a 傾斜面
76 反発部
79 空気の流通路
100 空気清浄装置
102 ケース
105 吸込口
108 排気口