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特許7405546情報処理装置、医用画像撮像装置、情報処理方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】情報処理装置、医用画像撮像装置、情報処理方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 30/00 20180101AFI20231219BHJP
   G16H 20/00 20180101ALI20231219BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G16H30/00
G16H20/00
A61B5/00 G
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2019173548
(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公開番号】P2021051514
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 修平
(72)【発明者】
【氏名】杉山 敦子
【審査官】今井 悠太
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-149094(JP,A)
【文献】特開2012-212199(JP,A)
【文献】特開2014-010534(JP,A)
【文献】特開2016-071713(JP,A)
【文献】特開2010-262466(JP,A)
【文献】特開2018-182672(JP,A)
【文献】特開2006-024048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を撮像した医用画像から特定の傷病を検出する検出手段と、
前記検出した傷病に係る医療従事者についての、連絡先情報および在院状況を含む医療従事者情報を取得する取得手段と、
連絡可能である医療従事者と連絡不可である医療従事者とを区別する情報に基づいて、連絡不可である医療従事者を除外し、連絡可能である医療従事者情報を前記傷病の検出結果とともに通知する通知手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記検出した傷病に係る医療従事者は、前記医用画像を撮像する指示を出した主治医、または前記医用画像を読影する読影医、または前記検出した傷病の手術を行う外科医である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記取得手段は、前記医療従事者の役職および在院状況に応じて、前記医療従事者ごとに連絡の優先度を設定し、
前記通知手段は、前記優先度が基準を満たす医療従事者について、前記医療従事者情報を通知する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記医療従事者の役職、在院状況、および取得されている連絡先情報に応じて、前記医療従事者ごとに連絡の優先度を設定し、
前記通知手段は、優先度が基準を満たす医療従事者について、前記医療従事者情報を通知する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記取得手段は、前記医療従事者の役職、在院状況、および取得されている連絡先情報
ごとにスコアを求め、当該スコアの重み付け和に基づいて、前記優先度を設定し、
前記通知手段は、前記優先度の値が閾値以上である医療従事者について、前記医療従事者情報を通知する、
ことを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記閾値は、前記検出手段が検出する傷病の緊急性に応じて決定される、
ことを特徴とする請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記在院状況には、前記医療従事者が連絡可能である状況と連絡不可である状況が含まれる、
ことを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記在院状況は、検査中、手術中、読影中、および問診中のいずれかである、
ことを特徴とする請求項3から7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記取得手段は、前記医療従事者ごとに連絡の優先度を設定し、
前記通知手段が提示する前記医療従事者情報には前記優先度を示す情報が含まれる、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記取得手段は、前記医療従事者ごとに連絡の優先度を設定し、
前記通知手段は、連絡不可である医療従事者を除く医療従事者の優先度に基づいて、連絡可能である医療従事者のうちの少なくとも1人の連絡先情報および在院状況を含む医療従事者リストを提示する、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記取得手段は、前記医療従事者の役職および在院状況ごとにスコアを求め、当該スコアに基づいて、前記医療従事者ごとに連絡の優先度を設定する、
ことを特徴とする請求項9または10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記取得手段は、前記撮像した患者に対する医療従事者の読影履歴があるか否かを、前記医療従事者が属する施設内のネットワークを介して連携する医用情報システムから取得し、
前記通知手段は、前記医療従事者情報とともに、読影履歴の有無を示す情報を提示する、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記取得手段は、前記撮像した患者に対する医療従事者の読影履歴があるか否かを、前記医療従事者が属する施設内のネットワークを介して連携する医用情報システムから取得し、読影履歴がある医療従事者の優先度を、読影履歴がない医療従事者の優先度よりも高く設定する、
ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記在院状況は、前記医療従事者が属する施設内のネットワークを介して連携する医用情報システムから抽出した勤務状況または前記医療従事者の所在に関する情報である、
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記取得手段は、前記医用情報システムに含まれるオーダリングシステムから得られる依頼情報に基づいて、前記勤務状況を抽出する、
ことを特徴とする請求項14に記載の情報処理装置。
【請求項16】
前記連絡先情報は、個人携帯端末の電話番号、メールアドレス、前記医療従事者が所在する施設の内線電話の電話番号の少なくともいずれかを含む、
ことを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記取得手段は、前記医療従事者が属する施設内のネットワークを介して連携する医用情報システムから前記連絡先情報を抽出する、
ことを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項18】
前記通知手段は、前記医療従事者情報に含まれる連絡先情報のうち、一部の連絡方法に係る連絡先情報を通知する、
ことを特徴とする請求項1から17のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項19】
前記通知手段は、前記検出手段が検出する傷病の緊急性に応じて、いずれの連絡方法に係る連絡先情報を通知するかを決定する、
ことを特徴とする請求項18に記載の情報処理装置。
【請求項20】
前記通知手段は、電話回線、メールサービスシステム、および前記医療従事者が属する施設の院内放送システムの少なくともいずれかを用いて、前記医療従事者の少なくともいずれかに対して通知を行う、
ことを特徴とする請求項1から19のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項21】
医用画像撮像装置から、前記患者を撮像した医用画像を取得する画像取得手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から20のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項22】
患者を撮像した医用画像から特定の傷病を検出する検出手段と、
前記検出した傷病に係る医療従事者についての、連絡先情報および在院状況を含む医療従事者情報を取得する取得手段と、
前記医療従事者情報を前記傷病の検出結果とともに通知する通知手段と、
を備え、
前記取得手段は、前記医療従事者の役職、在院状況、および連絡先情報に応じて、前記医療従事者ごとに連絡の優先度を設定し、
前記通知手段は、優先度が基準を満たす医療従事者について、前記医療従事者情報を通知する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項23】
患者の医用画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した医用画像に基づいて通知を行う、請求項1から22のいずれか1項に記載の情報処理装置と、
を備えることを特徴とする、医用画像撮像装置。
【請求項24】
コンピュータが実行する情報処理方法であって、
患者を撮像した医用画像を取得するステップと、
前記医用画像から特定の傷病を検出する検出ステップと、
前記検出した傷病に係る医療従事者についての、連絡先情報および在院状況を含む医療従事者情報を取得するステップと、
連絡可能である医療従事者と連絡不可である医療従事者とを区別する情報に基づいて、連絡不可である医療従事者を除外し、連絡可能である医療従事者情報を前記傷病の検出結果とともに通知する通知ステップと、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項25】
コンピュータが実行する情報処理方法であって、
患者を撮像した医用画像を取得ステップと、
前記医用画像から特定の傷病を検出する検出ステップと、
前記検出した傷病に係る医療従事者についての、連絡先情報および在院状況を含む医療従事者情報を取得するステップと、
前記医療従事者情報を前記傷病の検出結果とともに通知する通知ステップと、
を含み、
前記取得ステップでは、前記医療従事者の役職、在院状況、および取得されている連絡先情報に応じて、前記医療従事者ごとに連絡の優先度を設定し、
前記通知ステップでは、優先度が基準を満たす医療従事者について、前記医療従事者情報を通知する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項26】
コンピュータに請求項24または25に記載の方法の各ステップを実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、医用画像撮像装置、情報処理方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像撮像装置によって、緊急に対処すべき疾患、つまり、一刻も早く適切な処置を行うべき傷病(疾患および外傷)が撮影されることがある。そのような傷病の一部は、放射線科医が読影することによって検出される。しかし、緊急の検査でない場合には、放射線科医が読影するまでに時間が経ってしまい、気付いたときには重篤化してしまっているケースが存在する。緊急に対処すべき傷病の一部の例としては、緊急に処置しなければ命にかかわる「気胸」や「大動脈解離」、感染の可能性がある「結核」等が挙げられる。
【0003】
このような傷病を自動で検出し、そして迅速な処置に繋げる技術が知られている。特許文献1には、医用画像から異常陰影候補を検出する技術が開示されている。また、特許文献2には、緊急に対処すべき傷病が検出された場合のような緊急時に、あらかじめデータベースに登録された全ての連絡先に通知を行う技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献2に開示されている技術では、あらかじめ登録された連絡先全てに通知を行うので、連絡先の主治医や放射線科医が手術中や外出中など連絡不可能な状態であって、適切に連絡を取れない場合があった。一方で、連絡可能な医師を自らの手で調べると時間がかかり、迅速な対応が行えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-182672号公報
【文献】特開2006-024048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特定の傷病が検出された場合に、連絡すべき医療従事者の迅速かつ適切な決定を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一態様に係る情報処理装置は、
患者を撮像した医用画像から特定の傷病を検出する検出手段と、
前記検出した傷病に係る医療従事者についての、連絡先情報および在院状況を含む医療従事者情報を取得する取得手段と、
前記医療従事者情報を前記傷病の検出結果とともに通知する通知手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の第二態様に係る方法は、
コンピュータが実行する情報処理方法であって、
患者を撮像した医用画像を取得するステップと、
前記医用画像から特定の傷病を検出する検出ステップと、
前記検出した傷病に係る医療従事者についての、連絡先情報および在院状況を含む医療従事者情報を取得するステップと、
前記医療従事者情報を前記傷病の検出結果とともに通知する通知ステップと、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定の傷病が検出された時に、医療従事者への迅速かつ適切な連絡が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1における情報処理装置の構成を示す図
図2】実施形態1の全体の流れを示すフロー図
図3】実施形態1の連絡情報取得処理S203の詳細を示すフロー図
図4】S301で取得した連絡先情報のリストを示す図
図5】実施形態1の勤務状況取得処理S302の詳細を示すフロー図
図6】S302で取得した連絡先情報のリストを示す図
図7】S303で取得した優先度付きの連絡先情報のリストを示す図
図8】実施形態1の表示部で提示される情報の一例を示す図
図9】実施形態2において連絡先情報の各項目およびその内容に対して付与するスコアと重みの一例を示す図
図10】実施形態2において計算される優先度を示す図
図11】実施形態5における情報処理装置の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本明細書において用いられる用語について説明する。
【0012】
「主治医」とは、患者に対してHIS(Hospital Information System:病院情報システム)やRIS(Radiology Information System:放射線情報システム)のシステムから撮像依頼を出す医師である。「傷病に係る医療従事者」とは、緊急に対処すべき傷病が検出されたときに、診療放射線科技師(以下、技師と呼称する)が連絡すべき対象となる主治医、放射線科医、外科医、看護師、臨床検査技師、カウンセラー、コメディカルを含む。以下では、特に断らない限りは、「医療従事者」は傷病に係る医療従事者を意味する。
【0013】
「医療従事者情報」は、医療従事者に連絡を取る際に有用な情報を意味し、医療従事者の氏名、役職、在院状況、連絡先情報を含む。医療従事者情報は、連絡の優先度あるいは連絡方法の優先度を含んでもよい。「連絡方法」は、医療従事者への連絡手段を意味し、例えば、個人携帯端末の電話、メール、医療従事者が属する施設の内線電話、院内放送を含む。「連絡先情報」は、ある連絡方法を用いて連絡する際の連絡相手を特定する情報を意味し、例えば、電話番号、メールアドレス、内線番号、院内放送先(病棟名や部屋名等)を含む。
【0014】
また、本明細書において「メール」とは、Eメールやショートメッセージサービス、インスタントメッセージングサービス等の、個人アカウントや組織アカウント(グループアカウント)に紐づけて電子的にテキストや画像を送受信する方法を指す。また、本発明におけるメールアドレスとは、前記メールを送受信するアカウントを特定するために利用する、識別子や文字列のことである。また、本明細書において「電話」とは、音声を用いた任意の通信方法を含み、利用する回線は電話回線であってもインターネット回線であってもよく、また、ビデオ通話も電話に含まれる。
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。ただし、以下の実施形態で説明する寸法、材料、形状、及び構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、図面において、同一であるか又は機能的に類似している要素を示すために図面間で同
じ参照符号を用いる。
【0016】
<実施形態1>
本実施形態に係る情報処理装置100は、医用画像撮像装置が撮影した画像に対して異常検出処理を行い、異常が検出された場合に、連絡すべき医師およびその連絡先に関する情報を提供する。これにより、技師による医師への連絡作業を簡略化かつ迅速化できる。以下では、医用画像から緊急に対処すべき特定の疾患を検出対象とする例を説明するが、疾患以外に外傷を検出対象としてもよい。
【0017】
(構成)
図1に、本実施形態に係る情報処理装置(コンピュータ)100の構成を示す。本実施形態における情報処理装置100は、X線CT装置などの医用画像撮像装置のコンソールに組み込まれているものとして説明するが、撮像装置と通信可能であり医用画像を取得可能であれば、撮像装置とは異なる装置として構成されても構わない。
【0018】
情報処理装置100は、演算プロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置、および通信インタフェースを含む。情報処理装置100には、ディスプレイなどの出力装置110およびキーボードやマウスなどの入力装置120が接続されている。また、情報処理装置100は、ネットワークを介して、医用情報システム200と通信可能である。
【0019】
情報処理装置100は、演算プロセッサがコンピュータプログラムを実行することにより、画像取得部101、特定傷病検出部102(以下、単に検出部102とも称する)、連絡情報取得部103、通知部104として機能する。なお、これらの一部または全部の機能は、専用のハードウェアにより実現されても構わない。
【0020】
画像取得部101は、撮像装置から患者を撮像した医用画像を取得する。検出部102は、患者を撮像した医用画像から特定の傷病を検出する。ここで、特定の傷病の例として、気胸、大動脈解離、結核等の緊急に対処すべき疾患が例示できる。検出部102は、例えば、深層学習のような機械学習により学習された学習済みモデルを含み、この学習済みモデルを用いて傷病を検出する。連絡情報取得部103は、検出した傷病に係る医療従事者についての、連絡先情報および在院状況を含む医療従事者情報を、医用情報システム200から取得する。通知部104は、連絡情報取得部103が取得した医療従事者情報を傷病の検出結果とともに通知する。情報処理装置100の各機能部が行う処理の詳細については、フローチャートを用いて以下で説明する。
【0021】
医用情報システム200は、医療施設における情報システムの総称であり、例えば、RIS(放射線情報システム)201、HIS(病院情報システム)202、オーダリングシステム203、電子カルテシステム204を含む。なお、医用情報システム200内の各サブシステムが提供する機能は様々であり、以下の説明は一例に過ぎない。
【0022】
RIS201は、医用情報システム200内の放射線部門に関連した部門情報システムである。RIS201は、放射線検査依頼の予約管理、検査機器との連携、検査情報の管理、他部門システムとの連携などを行う。HIS202は、医療施設全体の診療・会計業務の効率化を目指すシステムであり、医療施設における診療に関連した情報を管理し、他のシステムとの連携を行う。HIS202が管理する情報は、患者に関する情報、および職員(医師及び技師を含む)に関する情報が含まれる。職員に関する情報には、職員の氏名、所属、役職、在院状況、スケジュール、連絡先などが含まれる。
【0023】
オーダリングシステム203は、一般的に、端末から放射線検査、手術、処方などの各種依頼情報をオーダ情報として各部門システム(RISや医事会計システムなど)と連携
するシステムである。オーダリングシステム203を始めとした院内ネットワークで連携するシステムが導入された施設においては、主治医が検査の依頼をシステムに登録し、技師はその依頼に基づいて患者の撮像を行う。オーダリングシステム203に入力される検査の依頼情報には、依頼内容(検査内容)、実施時間帯、依頼医、入力者、患者情報などが含まれる。電子カルテシステム204は、患者の診療記録を管理し、他のシステムと共有する。
【0024】
(処理)
本実施形態に係る情報処理装置100が実施する処理の流れについて、図2のフローチャートを参照して説明する。
【0025】
ステップS201において、画像取得部101は、技師によって患者の撮像が行われた医用画像を取得する。撮像装置としては、
・CR(Computed Radiography)装置、
・CT(Computed Tomography)装置、
・MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、
・PET(Positron Emission Tomography)装置、
・SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、
・超音波診断装置(Ultrasound System)、
等が挙げられる。
【0026】
ステップS202において、検出部102は、画像取得部101によって得られた医用画像から特定の傷病の検出を行う。特定の傷病は、例えば、緊急に対処すべき傷病である。検出部102は、気胸、大動脈解離等の傷病を検出し、検出した傷病の種別に関する情報や、画像中の傷病の領域情報などを出力する。検出部102は、何らかの特定の傷病を検出すればよく、検出対象は上記傷病に限定されない。また、検出部102は、機械学習アルゴリズムに従って学習された学習済みモデル(検出エンジン)を用いて傷病を検出してもよいし、ルールベースの処理によって傷病を検出してもよい。
【0027】
ステップS202において傷病が検出されない場合(S202A:NO)は、処理を終了する。一方、ステップS202において傷病が検出された場合(S202:YES)はステップS203に進む。
【0028】
ステップS203において、連絡情報取得部103は、検出部102によって緊急に対処すべき傷病が検出された場合に、医療従事者の連絡可能性に応じて連絡方法を取得する。以下、図3を用いて、連絡情報取得部103が連絡方法を取得する処理の流れを説明する。
【0029】
ステップS301において、連絡情報取得部103は、検出部102が検出した傷病に係る医療従事者の連絡関連情報を医用情報システム200から取得する。検出した傷病に係る医療従事者とは、医用画像を撮像する指示を出した主治医、または医用画像を読影する放射線科医、または検出した傷病の手術を行う外科医を含む。なお、本実施形態では傷病にかかる医療従事者として医師を想定しているが、傷病に係る医療従事者には、看護師、臨床検査技師、カウンセラー、コメディカルの少なくともいずれかが含まれてもよい。
【0030】
連絡情報取得部103は、誰が主治医であるかという情報を、例えばオーダリングシステム203から取得する。オーダリングシステム203を始めとした院内ネットワークで連携するシステムが導入された施設においては、主治医が検査の依頼をシステムに登録し、技師はその依頼に基づいて患者の撮像を行う。この際の検査の依頼情報には、「依頼医
」、「入力者」、「依頼内容」、「実施時間帯」といった情報が含まれる。このため、連絡情報取得部103は、検査の依頼情報における「依頼医」を主治医として特定できる。連絡情報取得部103は、医用情報システム200から、あらかじめ登録された主治医の連絡先情報を取得する。連絡先情報は、例えば、主治医の個人携帯端末の電話番号(以下、携帯番号)およびメールアドレスである。連絡先情報は、RIS201またはHIS202のユーザ管理システムから取得してもよいし、人事システム等の他の関連システムから取得してもよい。また、電話番号やメールアドレス等の情報は、端末種別あるいはメールサービスの種別でそれぞれ複数あることも考えられる。その場合は、連絡情報取得部103は、PHSやスマートフォン、タブレットといった端末種別、あるいは、フリーメール、院内メール等のメールサービス種別ごとに項目を分けて情報を記憶する。
【0031】
次に、連絡情報取得部103は、医用画像を読影する放射線科医、または検出した傷病の手術を行う外科医を特定する。そして、連絡情報取得部103は、特定された放射線科医および外科医について、医用情報システム200にあらかじめ登録されている全ての携帯番号およびメールアドレスを連絡先情報として取得する。放射線科医および外科医は、検出された傷病の種別や医療機関施設あるいは医師の専門性に応じてあらかじめフィルタをかけて抽出することができる。例えば、検出された傷病が気胸である場合には、胸部の読影を専門とする放射線科医(読影医)と呼吸器外科の外科医の連絡先情報のみを取得すればよい。連絡先情報は、主治医の連絡先情報と同様にRIS201またはHIS202のユーザ管理システムから取得してもよいし、人事システム等の他の関連システムから取得してもよい。
【0032】
以上、ステップS301により、図4に示すような情報を含んだ、医師に対する連絡先情報を含むリスト400が取得される。リスト400は、医師の氏名401、役職402、携帯番号403、メールアドレス404を含む。ここでは、リスト400に携帯番号とメールアドレスが1つずつ含まれているが、これらの連絡先情報は複数含まれてもよい。以下では、携帯番号やメールアドレスなどの連絡先情報を含む医師の連絡情報リストのことを、単に、連絡先情報リストとも称する。
【0033】
ステップS301において取得されるリスト400は、特定傷病の発見時に連絡すべき医師の連絡先情報を含むが、医師が不在の場合や手術中の場合等には、必ずしも連絡可能な状態であるとは限らない。
【0034】
そこで、ステップS302において、連絡情報取得部103は、連絡可能性に関する情報として、医用情報システム200から医療従事者の勤務状況を取得する。より具体的には、連絡情報取得部103は、医用情報システム200に含まれるオーダリングシステム203から得られる依頼情報に基づいて、勤務状況を抽出する。
【0035】
ここで、勤務状況は、例えば、図5に示すフローによってオーダリングシステム203の依頼情報を利用して取得することができる。ステップS501において、連絡情報取得部103は、オーダリングシステム203から依頼情報を取得する。依頼情報には、検査の「依頼内容」、「時間帯」、「依頼医」、「入力者」が含まれる。
【0036】
ステップS502において、連絡情報取得部103は、「時間帯」が現在の時間帯であり、かつ、「依頼医」が連絡先情報リスト400に含まれる医師である、依頼情報を抽出する。依頼情報の「依頼内容」には、「放射線検査」、「手術」といった情報が含まれる。したがって、連絡情報取得部103は、ステップS301において連絡先情報を取得した各医師に関して、主治医名と時間帯を照らし合わせることで、「検査中」、「手術中」、「読影中」、「診察中」、「問診中」といった医師の勤務状況を取得できる。また、依頼情報には対応する施設設備の情報が含まれているので、当該施設の内線番号が医用情報
システム200に登録されていれば、連絡情報取得部103は、医用情報システムからこの内線番号を医師の連絡先情報として取得できる。
【0037】
ステップS503において、連絡情報取得部103は、ステップS301において作成したリスト400に対して、各医師の勤務状況を含む追加する。また、医師が所在する施設およびその内線番号が取得されている場合には、連絡情報取得部103は、リスト400に対して施設(部屋)とその内線番号を追加する。
【0038】
なお、医師の勤務状況は、オーダリングシステム203以外の医用情報システム200から取得してもよい。例えば、オーダリングシステム203に該当する医師が依頼医である依頼情報がない場合に、連絡情報取得部103は、医師のスケジュールを管理するスケジュールシステムから、医師の勤務状況を取得してもよい。
【0039】
また、オーダリングシステム203の依頼情報に該当する医師が依頼医である依頼情報がない場合に、連絡情報取得部103は、出退勤を管理する勤怠システムと連携して「在院状況」を取得してもよい。例えば、患者の撮像日における病院への出勤記録がない場合には勤務状況を単に「不在」とし、出勤記録があり退勤記録がない場合は勤務状況を単に「在院」とすればよい。在院状況は、医師が医療施設内に居るか居ないかを示し、医師が医療施設内に居る場合にはその所在を含んでもよい。勤務状況は、在院状況の一具体例であると捉えられる。
【0040】
また、連絡情報取得部103は、オーダリングシステム203以外を用いて、各医師が現在所在している場所(現在地)を特定してもよい。例えば、医師は予定にない緊急手術を行うことや、あるいは予定された手術を行ったが予定よりも早く手術が完了したり逆に予定よりも長く時間がかかったりすることがある。したがって、連絡先情報取得部103は、オーダリングシステム203から得られる所在地に加えて、あるいは代えて、各医師の現在地を特定してもよい。医師の現在位置は、例えば、入退室管理システムまたは個人携帯端末の位置情報あるいは通信履歴に基づいて把握できる。
【0041】
図6は、以上の処理によって勤務状況および施設の内線番号が追加された連絡先情報リスト600の例を示す。リスト600は、ステップS301で取得されたリスト400に対して、各医師の勤務状況601が追加されており、在室する施設(部屋)が分かる場合にはその施設名602と内線番号603が追加されている。
【0042】
ステップS301およびステップS302において、主治医と複数の放射線科医あるいは外科医の、勤務状況および施設の内線番号に関する情報が連絡先情報リストに追加され、各医師が連絡できる状況であるか否かを技師が把握可能となる。しかしながら、連絡先情報リスト600を提示するだけでは、緊急に対処すべき傷病が検出された際に、技師が誰に優先的に連絡をすべきかを判断するのが困難な場合もある。
【0043】
そのため、ステップS303において、連絡情報取得部103は、医療従事者の役職、在院状況、および取得されている連絡先情報に応じて、連絡先情報リストの連絡対象(医療従事者)ごとに連絡の優先度を設定する。これにより、優先度の高い医療従事者を技師が把握できるようにする。なお、優先度を示す情報は、連絡先情報リスト内の連絡対象の優劣を判別可能な態様で表示されれば、文字列、記号、数値のいずれかまたはこれらの組み合わせであってよい。
【0044】
以下では、優先度を示す情報として、優先度の高い順に、「連絡必須」、「連絡可能候補」、「連絡予備候補」、「連絡不可」の文字列を定義した場合を例示する。まず、撮像を依頼した主治医は連絡を取るべきであるため「連絡必須」とする。続いて、放射線科医
あるいは外科医には、勤務状況及び連絡先情報の有無に応じて優先度を割り当てる。放射線科医の勤務状況としては、「診察中」、「問診中」、「検査中」、「手術中」、「在院」、「不在」が挙げられるが、「手術中」は連絡できる状況ではないため、「連絡不可」とする。また、緊急時の連絡先情報として、「携帯番号」、「メールアドレス」、「内線番号」を挙げられるが、緊急時の連絡方法として適当な連絡先情報が取得できていない医師は「連絡予備候補」とする。緊急時に適当な連絡方法は、例えば、個人携帯端末への電話、および、施設の内線での電話であり、緊急時の連絡方法として適当な連絡先情報は「携帯番号」および「内線番号」である。加えて、勤務状況が「不在」である医師に関しても連絡できる可能性が低いため「連絡予備候補」とする。残りは、勤務状況が「診察中」、「問診中」、「検査中」、「在院」のいずれかであり、かつ、「携帯番号」もしくは「内線番号」の情報が含まれる医師である。これらの医師の優先度は「連絡可能候補」とする。
【0045】
ここでは、優先度決定規則の一例を示したが、具体的にどのような状態の医師にどのような優先度を設定するかは適宜定義すればよく、本実施形態に係るシステムを運用する医療施設の運用に応じて適宜変更してよい。なお、優先度決定規則は、あらかじめ設定情報として情報処理装置100に記憶されており、連絡情報取得部103は、この設定情報を参照してそれぞれの医師に対する優先度を決定すればよい。
【0046】
図7は、ステップS303の処理によって優先度701が付与された連絡先情報リスト700を示す。以上の処理により、ステップS203の連絡情報取得処理が完了する。図7の連絡先情報リスト700は、ステップS203の連絡情報取得処理の処理結果であるといえる。
【0047】
ステップS204において、通知部104は、連絡先情報リスト700を、検出部102の緊急傷病検出結果と併せて技師に提示する。この際に、通知部104は、ステップS303において付与した優先度に基づいて、優先度が通知のための基準を満たす医療従事者について、医療従事者情報を提示するようにしてもよい。例えば、通知部104は、優先度が「連絡必須」と「連絡可能候補」である医師についてのみ情報を表示し、優先度が「連絡予備候補」と「連絡不可」である医師については情報を表示しなくてもよい。また、通知部104は、優先度が上位の所定数の医師についてのみ、連絡先に関する情報を提示してもよい。
【0048】
図8は、通知部104による通知画面800の例である。通知画面800は、緊急に対処すべき傷病の検出結果801と、連絡先情報リスト700から優先度701が「連絡予備候補」と「連絡不可」を除外した連絡先情報群(医療従事者情報群)802とを含む。通知部104によって提示される医療従事者情報は、医療従事者の氏名、役職、在院状況、連絡先情報、連絡の優先度を表す情報を含む。医療従事者情報は、連絡先情報として、個人携帯端末の電話番号、メールアドレス、前記医療従事者が所在する施設の内線電話の電話番号の少なくともいずれかを含む。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る情報処理装置は、緊急に対処すべき傷病が検出されたことをトリガとして、傷病に係る医療従事者の連絡情報を検出結果とともに通知する。したがって、緊急傷病が検出されたときに、技師は連絡を取るべき医療従事者の連絡先情報を即座に知ることができる。さらに、通知される連絡情報には連絡可能性に関する情報(勤務状況)が付加されるので、医師の勤務状況を把握して連絡できる可能性のある医師に対して適切に連絡を取ることが可能となる。
【0050】
<実施形態2>
本実施形態は、実施形態1と比較して、優先度の付与処理(ステップS303)が異な
る。本実施形態におけるその他の構成および処理は実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0051】
本実施形態では、ステップS303の優先度の付与処理において、連絡情報の各項目に重みやスコアをパラメータとして設定し、優先度を計算する。これにより、提示すべき緊急の連絡情報を施設の状況に応じてより柔軟に絞り込み可能とする。
【0052】
本実施形態では、連絡情報取得部103は、医療従事者情報(連絡先情報リスト)に含まれるそれぞれの医療従事者について、項目ごとにスコアを算出して、そのスコアを項目の重みにしたがって合計した値を、当該医療従事者の優先度として求める。具体的には、連絡情報取得部103は、医療従事者の役職、在院状況、および取得されている連絡先情報ごとにスコアを求め、当該スコアの重み付け和に基づいて、優先度を設定する。このように、本実施形態では、医療従事者ごとに各項目の内容に割り当てた数値をスコアと呼び、緊急時の連絡における各項目の重要性に応じて割り当てた数値を重みと呼ぶ。
【0053】
図9は、スコアおよび重みを表す表である。スコア901~905は、それぞれ、項目「役職」「勤務状況」「携帯番号」「メールアドレス」「内線番号」の各内容に割り当てられる数値である。携帯番号やメールアドレスなど、カテゴリに分かれない項目に対するスコア903~905は、情報の有無に応じて2値をとる。一方、役職および勤務状況のようにカテゴライズ可能な項目に対するスコア901,902は、カテゴリに応じた数値をとる。例えば、「主治医」のスコアを0.8、「放射線科医」のスコアを0.2とし、主治医のスコアを他より大きくすることで、主治医の情報が重要であることを表現する。その他の項目の各内容に対するスコアも同様である。
【0054】
重み906は、連絡対象(医師)ごとの優先度を算出する際に、各項目のスコアをどの程度重要視するかを示す。図の例では、「役職」に対する重みを最も大きくし、「勤務状況」に対する重みを次に大きくして、これらの項目が重要であることを表している。また、 「携帯電話」と「内線番号」の重みを2、「メールアドレス」の重みを1とすること
で、緊急時の連絡方法としてメールよりも電話が重要視されることを表現している。
【0055】
図10は、ステップS302において取得される連絡先情報リスト600(図6)に対する、各項目の重み付けスコア1002~1006および、重み付けスコアの合計である優先度1007を示す。例えば、医師「A」については、「役職」が主治医であるのでスコア1002は0.8であり、「役職」に対する重みは6であるので、医師「A」の「役職」に対する重み付けスコア1002は4.8である。同様に、「携帯番号」「メールアドレス」「勤務状況」「内線」の重み付けスコアは、それぞれ2.0,1.0,0.8,2.0である。医師「A」に対する優先度1007は、重み付けスコア1002~1006の合計である13.0と求められる。他の医師(連絡対象)についても同様である。
【0056】
本実施形態では、ステップS204において、通知部104は、優先度が基準を満たす医療従事者について、医療従事者情報を通知する。例えば、通知部104は、優先度が高い方から所定数人(例えば、3人)の連絡先情報を、傷病の検出結果とともに提示する。また、通知部104は、優先度の値が閾値以上である医療従事者について、連絡先情報を通知するようにしてもよい。この閾値は、検出部102が検出する傷病の緊急性に応じて決定されてもよいし、予め定まった値でもよい。
【0057】
以上のように、本実施形態によれば、連絡情報に重みやスコアをパラメータとして設定し、優先度を計算することで、提示すべき緊急の連絡対象を施設の状況に応じてより柔軟に絞り込むことが可能となる。
【0058】
<実施形態3>
本実施形態は、実施形態1と比較して、優先度の付与処理(ステップS303)が異なる。本実施形態におけるその他の構成および処理は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0059】
本実施形態では、撮影した患者の医用画像を過去に読影したことのある放射線科医の連絡先情報を優先して提示する。
【0060】
本実施形態の処理フローは、図2に示すステップS202まで、実施形態1において説明した処理フローと同様であるため、説明を省略し、続きから説明する。
【0061】
本実施形態では、図3に示すステップS301において連絡情報取得部103が医療従事者の連絡先情報を取得する際に、撮像した患者に対する医療従事者の読影履歴があるか否かを、医用情報システムから取得する。読影履歴があるか否かという情報のことを読影履歴情報とも称する。読影履歴情報は、例えば、「放射線科医が撮影した患者を過去に読影したことがあるか否か」という情報である。患者に関して過去に読影を行った記録は、電子カルテシステム204やRIS201等の、医療従事者が属する施設内のネットワークを介して連携する医用情報システムから取得できる。連絡情報取得部103は、撮影した患者の過去の検査の読影履歴を参照し、その読影の実施者に該当する放射線科医がいれば、その放射線科医の連絡先情報に対して「読影履歴あり」の情報を付加する。また、連絡情報取得部103は、その他の放射線科医の連絡先情報には「読影履歴なし」の情報を付加する。
【0062】
ステップS204では、通知部104は、医療従事者情報とともに、読影履歴の有無を示す情報を提示する。具体的には、通知部104は、通知画面800(図8)に読影履歴情報が含まれた連絡先情報リストを提示する。
【0063】
以上のように、本実施形態によれば、付加された読影履歴に関する情報を含めて、連絡先情報に優先度を付与することで、より適切な放射線科医の連絡先情報を優先して提示することが可能となる。
【0064】
なお、上記では、本実施形態を実施形態1に対する変形として説明したが、本実施形態を実施形態2と組み合わせてもよい。実施形態2と組み合わせる場合は、「読影履歴」についても、内容に応じたスコアと、項目スコアに対する重みが定義される。そして、連絡情報取得部103は、読影履歴を含む複数項目に対するスコアの重み付け和として優先度を決定する。この際、連絡情報取得部103は、読影履歴がある医療従事者の優先度を、読影履歴がない医療従事者の優先度よりも高く設定する。このようにしても、放射線科医の読影履歴を考慮した優先度付与が可能である。
【0065】
<実施形態4>
実施形態1-3では取得された全ての連絡方法を提示しているが、本実施形態では、通知部104は、医療従事者情報に含まれる連絡先情報のうち、一部の連絡方法に係る連絡先情報を通知する。このために、本実施形態では、提示する連絡方法に対して優先度を付けて、当該優先度に応じて提示する情報を切り替える。
【0066】
連絡先情報を取得して各連絡対象に優先度を付与するまでの処理は、実施形態1から実施形態3までの説明に示した処理フロー(ステップS201~S203)と同様である。また、ステップS204において、通知部104が、優先度が上位の連絡対象(医師)についてのみ出力部110を用いて提示する点も同様である。本実施形態ではステップS204において、通知部104が、連絡対象の全ての連絡方法に関する連絡先情報(携帯電
話番号やメールアドレスなど)を提示する代わりに、優先度の高い連絡方法についてのみ連絡先情報を提示する。
【0067】
連絡方法に対する優先度付与は、いくつかの方法が考えられる。通知部104は、例えば、連絡方法ごとに重要度を表す数値をあらかじめ付与しておき、重要度が閾値以上の連絡方法(連絡先情報)のみを提示してもよい。ここで、連絡方法の重要度として、実施形態2で説明した各項目に対する重み806(図8)の値を利用してもよいし、別の値を設定してもよい。閾値は、システム全体で固定であってもよく、状況に応じて可変としてもよい。重み806を連絡方法の重要度として採用し、かつ、閾値として2を採用した場合、重みが2以上である「携帯番号」および「内線番号」のみがステップS204において提示される。
【0068】
なお、優先度の高い連絡方法を提示する対象の医師は、主治医以外の医師に限定してもよいし、全ての医師としてもよい。あるいは、連絡対象としての優先度が閾値以上である医師については全ての連絡方法を提示し、連絡対象としての優先度が閾値未満の医師については一部の連絡方法のみを提示するようにしてもよい。
【0069】
また、通知部104は、重要度(重み)が閾値以上の連絡方法について情報がない医師を、その連絡方法優先度の大小によらず、提示対象から除外してもよい。あるいは、通知部104は、重要度(重み)が閾値以上の連絡方法について情報がない医師については、情報がある連絡方法のうち、重要度が最も高い連絡方法に関する情報を提示してもよい。
【0070】
連絡方法に対する優先度は、検出された傷病の緊急性に基づいて付与されてもよい。緊急傷病検出部102は、傷病の有無だけでなく、傷病の緊急性も判断する。傷病の緊急性は、検出された傷病の種別と領域情報を用いて、傷病種別のガイドラインに基づいて判断すればよい。例えば、傷病種別が“気胸”であった場合には、気胸の重症度は、以下の判断基準で診断される。
・軽度気胸:肺尖が鎖骨より上にある。
・中等度気胸:肺尖部が鎖骨下にあり、肺容積が一側全体の50%以上。
・高度気胸:肺容積が一側全体の50%以下の虚脱。
【0071】
緊急傷病検出部102は、このような診断基準に応じて、検出された傷病の領域情報から傷病の緊急性を分類する。
【0072】
本実施形態に係る情報処理装置100は、傷病の緊急度と提示する連絡方法(連絡先情報)の組み合わせをあらかじめ記憶する。例えば、「分類結果が高度気胸の場合は、携帯番号および内線番号の情報を提示する」、「分類結果が中等度気胸または軽度気胸の場合は、内線番号およびメールアドレスの情報を提示する」といった規則を情報処理装置100はあらかじめ記憶する。そして、ステップS204において、通知部104は、傷病の緊急度に応じた連絡方法を出力装置110から提示する。
【0073】
また、傷病の緊急度と提示する連絡方法の組み合わせの規則を設ける代わりに、傷病の緊急度に応じて、上述の連絡方法の重要度(重み)に対する閾値を切り替えてもよい。例えば、傷病の緊急度が高いほど閾値を低くすることで、より多くの連絡方法が提示されるようにする。
【0074】
以上のように、本実施形態によれば、施設の状況や傷病の状態に応じて適切な連絡方法を切り替えて提示することが可能となる。これにより、検出された緊急な傷病の中でもより緊急性の高いケースなどにおいて、医師に連絡内容が伝わったことを確認できるような連絡方法を提示することが可能となる。
【0075】
<実施形態5>
実施形態1~4では、出力装置110に緊急連絡先に関する情報を提示しているが、本実施形態では、出力装置110上での表示と同時に、緊急連絡先に対して自動的に連絡を取る。具体的には、通知部104は、情報処理装置が接続された電話回線、メールサービスシステム、医療従事者が属する施設の院内放送システムの少なくともいずれかを用いて、医療従事者の少なくともいずれかに通知を行う。
【0076】
図11に、本実施形態における情報処理装置1100の構成を示す。実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。本実施形態における情報処理装置1100は、操作者の音声の入出力を行うマイクとスピーカーを備え、PHSや携帯電話といった携帯端末、施設の内線に対する電話回線130もしくは、メールサービス140、院内放送システム150と接続される。
【0077】
本実施形態の処理フローは、図2に示すステップS203まで、実施形態1において説明した処理フローと同様であるため、説明を省略し、続きから説明する。ステップS204において、通知部104は、連絡情報取得部103で取得した連絡先情報のうち、最も優先度の高い医師の連絡先に対して自動で通話を開始、もしくはメッセージを送信する。この際、通知部104がどの連絡方法を用いて連絡するかは、あらかじめ設定できてもよい。
【0078】
また、自動連絡する連絡先は、実施形態2から実施形態4の優先度を考慮して切り替えることも可能である。例えば、図10の優先度1007の値が8以上の連絡先に対して自動で連絡先をとるように、パラメータとしてあらかじめ設定してもよい。
【0079】
以上のように、本実施形態によれば、「提示された緊急連絡先を確認してからいずれかの医師に連絡を取る」という技師の手順を省いて、より適切に医師に連絡を取ることが可能となる。
【0080】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0081】
100:情報処理装置
102:特定傷病検出部 103:連絡情報取得部 104:通知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11