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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/329 20060101AFI20231219BHJP
   H01L 29/866 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 21/76 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01L29/90 S
H01L27/04 C
H01L29/91 K
H01L21/76 L
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2019180821
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021057491
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 敬吏
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-175325(JP,A)
【文献】特開2018-067663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/329
H01L 21/822
H01L 29/861
H01L 21/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の第1半導体層、および、前記第1半導体層の上に形成された第2導電型の第2半導体層を含む半導体チップと、
前記第2半導体層を貫通し、前記第1半導体層に至るように前記半導体チップに形成され、平面視において前記半導体チップの一部を取り囲み、前記半導体チップの一部を他の領域から区画することによって前記第1半導体層および前記第2半導体層の間に内部寄生容量を形成する分離溝と、
前記第2半導体層を被覆する中間絶縁層と、
前記中間絶縁層を挟んで前記分離溝によって区画された領域に対向し、前記半導体チップとの間で前記内部寄生容量に直列接続された外部寄生容量を形成する電極と、を含む、半導体装置。
【請求項2】
第1導電型の第1半導体層、および、前記第1半導体層の上に形成された第2導電型の第2半導体層を含む半導体チップと、
前記第2半導体層を貫通し、前記第1半導体層に至るように前記半導体チップに形成され、前記半導体チップの一部を他の領域から区画することによって前記第1半導体層および前記第2半導体層の間に内部寄生容量を形成する分離溝と、
前記第2半導体層の表層部において前記分離溝によって区画された領域に形成され、前記第2半導体層との間で前記内部寄生容量に直列接続された表層寄生容量を形成する第1導電型の容量層と、
前記第2半導体層を被覆する中間絶縁層と、
前記中間絶縁層を挟んで前記分離溝によって区画された領域に対向し、前記半導体チップとの間で前記内部寄生容量および前記表層寄生容量に直列接続された外部寄生容量を形成する電極と、を含む、半導体装置。
【請求項3】
第1導電型の第1半導体層、および、前記第1半導体層の上に形成された第2導電型の第2半導体層を含む半導体チップと、
前記第2半導体層を貫通し、前記第1半導体層に至るように前記半導体チップに形成され、前記半導体チップの一部を他の領域から区画する分離溝と、
前記分離溝によって区画された領域において前記第1半導体層および前記第2半導体層の間の境界に形成され、前記第2半導体層の第2導電型不純物濃度を超える第1導電型不純物濃度を有し、内部寄生容量を形成する内部容量層と、
前記第2半導体層を被覆する中間絶縁層と、
前記中間絶縁層を挟んで前記分離溝によって区画された領域に対向し、前記半導体チップとの間で前記内部寄生容量に直列接続された外部寄生容量を形成する電極と、を含む、半導体装置。
【請求項4】
前記内部容量層は、前記第1半導体層および前記第2半導体層の間の境界において前記第1半導体層の表層部の第1導電型不純物濃度を超える第1導電型不純物濃度を有している、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
第1導電型の第1半導体層、および、前記第1半導体層の上に形成された第2導電型の第2半導体層を含む半導体チップと、
前記第2半導体層を貫通し、前記第1半導体層に至るように前記半導体チップに形成され、前記半導体チップの一部を他の領域から区画することによって前記第1半導体層および前記第2半導体層の間に内部寄生容量を形成する分離溝と、
前記半導体チップ側からこの順に積層された酸化シリコン層、窒化シリコン層および酸化シリコン層を含むONO構造を有し、前記第2半導体層を被覆する中間絶縁層と、
前記中間絶縁層を挟んで前記分離溝によって区画された領域に対向し、前記半導体チップとの間で前記内部寄生容量に直列接続された外部寄生容量を形成する電極と、を含む、半導体装置。
【請求項6】
チップサイズパッケージからなる半導体装置であって、
第1導電型の第1半導体層、および、前記第1半導体層の上に形成された第2導電型の第2半導体層を含む半導体チップと、
前記第2半導体層を貫通し、前記第1半導体層に至るように前記半導体チップに形成され、前記半導体チップの一部を他の領域から区画することによって前記第1半導体層および前記第2半導体層の間に内部寄生容量を形成する分離溝と、
前記第2半導体層を被覆する中間絶縁層と、
前記中間絶縁層を挟んで前記分離溝によって区画された領域に対向し、前記半導体チップとの間で前記内部寄生容量に直列接続された外部寄生容量を形成する電極と、を含む、半導体装置。
【請求項7】
前記半導体チップにおいて前記分離溝によって区画された領域は、前記内部寄生容量および前記外部寄生容量を含む直列回路によって専有されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記分離溝内に形成された分離絶縁層をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記分離絶縁層を挟んで前記分離溝に埋設されたポリシリコンをさらに含む、請求項に記載の半導体装置。
【請求項10】
第1導電型の第1半導体層、および、前記第1半導体層の上に形成された第2導電型の第2半導体層を含み、装置領域および前記装置領域外のパッド領域を有する半導体チップと、
前記第2半導体層を貫通し、前記第1半導体層に至るように前記半導体チップに形成され、前記パッド領域の一部を他の領域から区画し、前記半導体チップの一部を他の領域から区画することによって前記第1半導体層および前記第2半導体層の間に内部寄生容量を形成する分離溝と、
前記第2半導体層を被覆する中間絶縁層と、
前記中間絶縁層を挟んで前記分離溝によって区画された領域に対向し、前記半導体チップとの間で前記内部寄生容量に直列接続された外部寄生容量を形成する電極と、を含む、半導体装置。
【請求項11】
前記電極は、前記中間絶縁層を挟んで前記分離溝によって区画された領域に対向し、前記外部寄生容量を形成するパッド部、および、前記パッド部から前記装置領域に向けて引き出され、前記装置領域に電気的に接続された配線部を含む、請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記装置領域を他の領域から区画する領域分離構造をさらに含む、請求項10または11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記領域分離構造は、前記第2半導体層を貫通し、前記第1半導体層に至るように前記半導体チップに形成された領域分離溝を含む、請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記領域分離溝は、前記分離溝の深さと等しい深さで形成されている、請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記領域分離溝内に形成された領域分離絶縁層をさらに含む、請求項13または14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記領域分離絶縁層を挟んで前記領域分離溝に埋設された領域分離ポリシリコンをさらに含む、請求項15に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記装置領域に形成されたダイオードをさらに含む、請求項10~16のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項18】
第1導電型の第1半導体層、および、前記第1半導体層の上に形成された第2導電型の第2半導体層を有し、互いに離間した第1パッド領域および第2パッド領域を含む半導体チップと、
前記第2半導体層を貫通し、前記第1半導体層に至るように前記第1パッド領域に形成され、前記第1パッド領域の一部を他の領域から区画することによって前記第1半導体層および前記第2半導体層の間に第1内部寄生容量を形成する第1パッド分離溝と、
前記第2半導体層を貫通し、前記第1半導体層に至るように前記第2パッド領域に形成され、前記第2パッド領域の一部を他の領域から区画することによって前記第1半導体層および前記第2半導体層の間に第2内部寄生容量を形成する第2パッド分離溝と、
前記第2半導体層を被覆する中間絶縁層と、
前記中間絶縁層を挟んで前記第1パッド分離溝によって区画された領域に対向し、前記半導体チップとの間で前記第1内部寄生容量に直列接続された第1外部寄生容量を形成する第1パッド部を有する第1電極と、
前記中間絶縁層を挟んで前記第2パッド分離溝によって区画された領域に対向し、前記半導体チップとの間で前記第2内部寄生容量に直列接続された第2外部寄生容量を形成する第2パッド部を有する第2電極と、を含む、半導体装置。
【請求項19】
前記第2内部寄生容量は、前記第1半導体層を介して前記第1内部寄生容量に直列接続されている、請求項18に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記半導体チップは、前記第1パッド領域および前記第2パッド領域の間の領域に装置領域を含む、請求項18または19に記載の半導体装置。
【請求項21】
前記第1電極は、前記第1パッド部から前記装置領域に向けて引き出され、前記装置領域に電気的に接続された第1配線部を含み、
前記第2電極は、前記第2パッド部から前記装置領域に向けて引き出され、前記装置領域に電気的に接続された第2配線部を含む、請求項20に記載の半導体装置。
【請求項22】
前記第2配線部は、平面視において前記第1配線部が延びる方向に沿って延び、かつ、
前記第1配線部が延びる方向に直交する方向に前記第1配線部と対向している、請求項21に記載の半導体装置。
【請求項23】
前記第1パッド部に電気的に接続された第1端子電極と、
前記第2パッド部に電気的に接続された第2端子電極と、をさらに含む、請求項18~22のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項24】
前記中間絶縁層を被覆する最上絶縁層をさらに含み、
前記第1端子電極は、前記最上絶縁層を貫通して前記第1パッド部に接続され、
前記第2端子電極は、前記最上絶縁層を貫通して前記第2パッド部に接続されている、請求項23に記載の半導体装置。
【請求項25】
チップサイズパッケージからなる、請求項18~24のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、半導体基板と、半導体基板に形成されたTVS回路(Transient Voltage Suppressor circuit)と備えた半導体装置を開示している。TVS回路は、ツェナーダイオードを含む複数のダイオードによって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-4350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施形態は、優れた電気的特性を実現できる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、第1導電型の第1半導体層、および、前記第1半導体層の上に形成された第2導電型の第2半導体層を含む半導体チップと、前記第2半導体層を貫通し、前記第1半導体層に至るように前記半導体チップに形成され、前記半導体チップの一部を他の領域から区画することによって前記第1半導体層および前記第2半導体層の間に内部寄生容量を形成する分離溝と、前記第2半導体層を被覆する中間絶縁層と、前記中間絶縁層を挟んで前記分離溝によって区画された領域に対向し、前記半導体チップとの間で前記内部寄生容量に直列接続された外部寄生容量を形成する電極と、を含む、半導体装置を提供する。
【0006】
この半導体装置によれば、内部寄生容量および外部寄生容量を含む直列回路によって電極に起因する寄生容量を低減できる。よって、優れた電気的特性を実現できる半導体装置を提供できる。
本発明の一実施形態は、第1導電型の第1半導体層、および、前記第1半導体層の上に形成された第2導電型の第2半導体層を有し、互いに離間した第1パッド領域および第2パッド領域を含む半導体チップと、前記第2半導体層を貫通し、前記第1半導体層に至るように前記第1パッド領域に形成され、前記第1パッド領域の一部を他の領域から区画することによって前記第1半導体層および前記第2半導体層の間に第1内部寄生容量を形成する第1パッド分離溝と、前記第2半導体層を貫通し、前記第1半導体層に至るように前記第2パッド領域に形成され、前記第2パッド領域の一部を他の領域から区画することによって前記第1半導体層および前記第2半導体層の間に第2内部寄生容量を形成する第2パッド分離溝と、前記第2半導体層を被覆する中間絶縁層と、前記中間絶縁層を挟んで前記第1パッド分離溝によって区画された領域に対向し、前記半導体チップとの間で前記第1内部寄生容量に直列接続された第1外部寄生容量を形成する第1パッド部を有する第1電極と、前記中間絶縁層を挟んで前記第2パッド分離溝によって区画された領域に対向し、前記半導体チップとの間で前記第2内部寄生容量に直列接続された第2外部寄生容量を形成する第2パッド部を有する第2電極と、を含む、半導体装置を提供する。
【0007】
この半導体装置によれば、第1内部寄生容量および第1外部寄生容量を含む直列回路によって第1電極に起因する寄生容量を低減できる。また、第2内部寄生容量および第2外部寄生容量を含む直列回路によって第2電極に起因する寄生容量を低減できる。よって、優れた電気的特性を実現できる半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るダイオードチップの切欠き斜視図である。
図2図2は、図1に示すダイオードチップの平面図である。
図3図3は、図2に示すIII-III線に沿う断面図である。
図4図4は、図2に示すIV-IV線に沿う断面図である。
図5図5は、図2に示すV-V線に沿う断面図である。
図6図6は、図3に示す第1パッド領域の拡大断面図である。
図7図7は、図3に示す第2パッド領域の拡大断面図である。
図8図8は、半導体チップの第1主面の構造を示す平面図である。
図9図9は、第1電極層および第2電極層の構造を示す平面図である。
図10図10は、半導体チップの濃度勾配を示すグラフである。
図11図11は、図1のダイオードチップの電気回路図である。
図12図12は、図1のダイオードチップの寄生容量を示す電気回路図である。
図13図13は、図1のダイオードチップの端子間容量を示すグラフである。
図14図14は、図1のダイオードチップの最大電流能力を示すグラフである。
図15図15は、図1のダイオードチップのクランプ電圧を示すグラフである。
図16図16は、図8の対応図であって、本発明の第2実施形態に係るダイオードチップの平面図である。
図17図17は、図16のダイオードチップの電気回路図である。
図18図18は、図16のダイオードチップの端子間容量を示すグラフである。
図19図19は、図16のダイオードチップの最大電流能力を示すグラフである。
図20図20は、図16のダイオードチップのクランプ電圧を示すグラフである。
図21図21は、図8の対応図であって、本発明の第3実施形態に係るダイオードチップの平面図である。
図22図22は、図8の対応図であって、本発明の第4実施形態に係るダイオードチップの平面図である。
図23図23は、図3の対応図であって、本発明の第5実施形態に係るダイオードチップの断面図である。
図24図24は、図26のダイオードチップの寄生容量を示す電気回路図である。
図25図25は、図3の対応図であって、本発明の第6実施形態に係るダイオードチップの断面図である。
図26図26は、図8の対応図であって、本発明の第7実施形態に係るダイオードチップの平面図である。
図27図27は、図26のダイオードチップの電気回路図である。
図28A図28Aは、第1~第7実施形態に係るダイオードチップに適用される製造方法の一例を説明するための断面図である。
図28B図28Bは、図28Aの後の工程を示す断面図である。
図28C図28Cは、図28Bの後の工程を示す断面図である。
図28D図28Dは、図28Cの後の工程を示す断面図である。
図28E図28Eは、図28Dの後の工程を示す断面図である。
図28F図28Fは、図28Eの後の工程を示す断面図である。
図28G図28Gは、図28Fの後の工程を示す断面図である。
図28H図28Hは、図28Gの後の工程を示す断面図である。
図28I図28Iは、図28Hの後の工程を示す断面図である。
図28J図28Jは、図28Iの後の工程を示す断面図である。
図28K図28Kは、図28Jの後の工程を示す断面図である。
図28L図28Lは、図28Kの後の工程を示す断面図である。
図28M図28Mは、図28Lの後の工程を示す断面図である。
図28N図28Nは、図28Mの後の工程を示す断面図である。
図28O図28Oは、図28Nの後の工程を示す断面図である。
図28P図28Pは、図28Oの後の工程を示す断面図である。
図28Q図28Qは、図28Pの後の工程を示す断面図である。
図28R図28Rは、図28Qの後の工程を示す断面図である。
図28S図28Sは、図28Rの後の工程を示す断面図である。
図28T図28Tは、図28Sの後の工程を示す断面図である。
図28U図28Uは、図28Tの後の工程を示す断面図である。
図28V図28Vは、図28Uの後の工程を示す断面図である。
図28W図28Wは、図28Vの後の工程を示す断面図である。
図28X図28Xは、図28Wの後の工程を示す断面図である。
図28Y図28Yは、図28Xの後の工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、添付図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るダイオードチップ1の切欠き斜視図である。図2は、図1に示すダイオードチップ1の平面図である。図3は、図2に示すIII-III線に沿う断面図である。図4は、図2に示すIV-IV線に沿う断面図である。図5は、図2に示すV-V線に沿う断面図である。図6は、図3に示す第1パッド領域273の拡大断面図である。図7は、図3に示す第2パッド領域274の拡大断面図である。図8は、半導体チップ10の第1主面11の構造を示す平面図である。図9は、第1電極層101および第2電極層102の構造を示す平面図である。
【0010】
図1図9を参照して、ダイオードチップ1は、平面寸法に基づいて1005(1mm×0.5mm)チップ、0603(0.6mm×0.3mm)チップ、0402(0.4mm×0.2mm)チップ、03015(0.3mm×0.15mm)チップ等と称される小型のチップ部品(半導体装置)である。ダイオードチップ1は、この形態(this embodiment)では、ESD(Electro-Static Discharge)から電気回路を保護するESD保護チップからなる。
【0011】
ダイオードチップ1は、直方体形状のチップ本体2を含む。チップ本体2は、パッケージを兼ねている。つまり、ダイオードチップ1(チップ本体2)は、チップサイズをパッケージサイズとして有するチップサイズパッケージからなる。チップ本体2は、一方側の第1チップ主面3、他方側の第2チップ主面4、ならびに、第1チップ主面3および第2チップ主面4を接続する4つのチップ側面5A、5B、5C、5Dを含む。
【0012】
第1チップ主面3および第2チップ主面4は、それらの法線方向Zから見た平面視(以下、単に「平面視」という。)において四角形状(具体的には長方形状)に形成されている。第1チップ主面3は、実装基板等の接続対象に接続される際に当該接続対象に対向する接続面(実装面)である。第2チップ主面4は、接続面の反対側の非接続面(非実装面)である。第2チップ主面4は、研削痕を有する研削面または鏡面からなる。
【0013】
チップ側面5A~5Dは、第1チップ側面5A、第2チップ側面5B、第3チップ側面5Cおよび第4チップ側面5Dを含む。第1チップ側面5Aおよび第2チップ側面5Bは、第1方向Xに延び、第1方向Xに交差する第2方向Yに対向している。第1チップ側面5A(第2チップ側面5B)は、チップ本体2の短辺を形成している。第3チップ側面5Cおよび第4チップ側面5Dは、第2方向Yに延び、第1方向Xに対向している。第3チップ側面5C(第4チップ側面5D)は、チップ本体2の長辺を形成している。第2方向Yは、具体的には、第1方向Xに直交している。チップ側面5A~5Dは、法線方向Zに沿って延びる平坦面からなる。
【0014】
チップ本体2の4つの角部は、この形態では、平面視においてチップ本体2の外方に向かう湾曲状に形成(R面取り)されている。チップ本体2の4つの角部は、C面取りされていてもよい。チップ本体2の4つの角部は、面取りされずに、角張っていてもよい。
前述の「0603」、「0402」、「03015」等は、チップ本体2の短辺の長さおよび長辺の長さによって定義される。チップ本体2の短辺の長さは、前記数値に限らず、0.05mm以上1mm以下であってもよい。チップ本体2の長辺の長さは、0.05mm以上0.1mm以下、0.1mm以上0.2mm以下、0.2mm以上0.3mm以下、0.3mm以上0.4mm以下、0.4mm以上0.5mm以下、0.5mm以上0.6mm以下、0.6mm以上0.7mm以下、0.7mm以上0.8mm以下、0.8mm以上0.9mm以下、または、0.9mm以上1mm以下であってもよい。
【0015】
また、チップ本体2の長辺の長さは、前記数値に限らず、0.1mm以上2mm以下であってもよい。チップ本体2の長辺の長さは、0.1mm以上0.2mm以下、0.2mm以上0.4mm以下、0.4mm以上0.6mm以下、0.6mm以上0.8mm以下、0.8mm以上1mm以下、1mm以上1.2mm以下、1.2mm以上1.4mm以下、1.4mm以上1.6mm以下、1.6mm以上1.8mm以下、または、1.8mm以上2mm以下であってもよい。チップ本体2の短辺の長さに対するチップ本体2の長辺の長さの比は、1以上3以下であることが好ましい。
【0016】
チップ本体2の厚さは、50μm以上1000μm以下であってもよい。チップ本体2の厚さは、50μm以上100μm以下、100μm以上200μm以下、200μm以上400μm以下、400μm以上600μm以下、600μm以上800μm以下、または、800μm以上1000μm以下であってもよい。チップ本体2の厚さは、50μm以上500μm以下であることが好ましい。
【0017】
ダイオードチップ1(チップ本体2)は、直方体形状に形成されたシリコン製の半導体チップ10を含む。半導体チップ10は、一方側の第1主面11、他方側の第2主面12、ならびに、第1主面11および第2主面12を接続する4つの側面13A、13B、13C、13Dを含む。第1主面11および第2主面12は、平面視において四角形状(この形態では長方形状)に形成されている。
【0018】
第1主面11は、機能装置が形成された装置面である。第2主面12は、第2チップ主面4を形成している。側面13A~13Dは、第1側面13A、第2側面13B、第3側面13Cおよび第4側面13Dを含む。
ダイオードチップ1は、半導体チップ10の第2主面12側から第1主面11側に向けてこの順に形成されたp型の第1半導体層14およびn型の第2半導体層15を含む。第1半導体層14は、半導体チップ10の第2主面12および側面13A~13Dから露出している。第2半導体層15は、半導体チップ10の第1主面11および側面13A~13Dから露出している。
【0019】
以下、図10を併せて参照し、第1半導体層14および第2半導体層15について具体的に説明する。図10は、半導体チップ10の濃度勾配を示すグラフである。図10において、縦軸は不純物濃度[cm-3]を示し、横軸は厚さ(深さ)[μm]を示している。半導体チップ10の濃度勾配は、シミュレーションによって求められている。
図10を参照して、第1半導体層14のp型不純物濃度は、1×1012cm-3以上1×1021cm-3以下である。第1半導体層14は、第1主面11側のp型不純物濃度が、第2主面12側のp型不純物濃度未満となるように形成されている。第1半導体層14は、具体的には、第2主面12側から第1主面11側に向けてこの順に積層されたp++型の高濃度層16、p型の濃度低下層17およびp型の濃度保持層18(concentration keeping layer)を含む。
【0020】
高濃度層16は、厚さ方向の平均値が第1値Aとなるp型不純物濃度を有している。濃度低下層17は、厚さ方向の平均値が第1値A未満の第2値B(B<A)となるp型不純物濃度を有している。濃度保持層18は、厚さ方向の平均値が第2値B未満の第3値C(B<A<C)となるp型不純物濃度を有している。
第1値Aは、半導体チップ10の濃度勾配を関数f(x)で定義したとき、高濃度層16によって定まる区間における関数f(x)の平均値によって求められる。第2値Bは、濃度低下層17によって定まる区間における関数f(x)の平均値によって求められる。第3値Cは、濃度保持層18によって定まる区間における関数f(x)の平均値によって求められる。
【0021】
高濃度層16は、p++型の半導体基板からなる。高濃度層16は、全域に亘ってほぼ一定のp型不純物濃度を有している。高濃度層16のp型不純物濃度は、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。高濃度層16のp型不純物濃度は、この形態では、1×1019cm-3以上1×1020cm-3以下である。
高濃度層16の厚さは、10μm以上800μm以下であってもよい。高濃度層16の厚さは、10μm以上100μm以下、100μm以上200μm以下、200μm以上400μm以下、400μm以上600μm以下、または、600μm以上800μm以下であってもよい。高濃度層16の厚さは、30μm以上400μm以下であることが好ましい。
【0022】
濃度低下層17は、高濃度層16(半導体基板)の上に形成されたp型のエピタキシャル層からなる。濃度低下層17は、高濃度層16から拡散したp型不純物を含み、高濃度層16のp型不純物濃度未満のp型不純物濃度を有する領域である。濃度低下層17は、高濃度層16から結晶成長方向に向けてp型不純物濃度が漸減する濃度勾配を有している。濃度低下層17のp型不純物濃度の減少率は、高濃度層16から結晶成長方向に向けて漸増している。
【0023】
濃度低下層17は、p型不純物濃度の最小値が1×1015cm-3以上1×1017cm-3以下の範囲に位置するまで漸減している。濃度低下層17のp型不純物濃度の最小値は、この形態では、1×1016cm-3以上1×1017cm-3以下の範囲に位置している。
濃度低下層17の厚さは、5μm以上20μm以下であってもよい。濃度低下層17の厚さは、5μm以上10μm以下、10μm以上15μm以下、または、15μm以上20μm以下であってもよい。濃度低下層17の厚さは、この形態では、6μm以上8μm以下である。
【0024】
濃度保持層18は、濃度低下層17(エピタキシャル層)の上に形成されたp型のエピタキシャル層からなる。濃度保持層18は、所定の厚さ範囲において所定のp型不純物濃度を保持し、濃度低下層17の濃度低下を抑制する。換言すると、濃度保持層18は、所定の厚さ範囲において濃度低下層17のp型不純物濃度の減少率を低減する。
濃度保持層18は、所定の厚さ範囲において5×1015cm-3以下5×1017cm-3以下のp型不純物濃度を保持することが好ましい。これにより、濃度保持層18は、第1半導体層14の濃度勾配に急峻な下降領域が形成されることを抑制する。図10には、濃度保持層18が存在しない場合の濃度低下層17の濃度勾配が二点鎖線によって示されている。
【0025】
濃度保持層18は、濃度遷移層19を介して濃度低下層17の上に形成されている。濃度遷移層19は、濃度勾配の傾斜が零またはほぼ零とみなせる濃度停留領域である。濃度保持層18は、この形態では、濃度低下層17のp型不純物濃度の最小値を超えるp型不純物濃度を有している。また、濃度保持層18は、濃度低下層17から結晶成長方向に向けてp型不純物濃度が漸増する濃度勾配を有している。
【0026】
つまり、濃度遷移層19は、p型不純物濃度勾配が減少から増加に転じ、濃度低下層17のp型不純物濃度が濃度保持層18のp型不純物濃度に置き換わる領域である。濃度保持層18は、濃度低下層17から拡散したp型不純物、および、外部から導入されたp型不純物を含む。
このような濃度保持層18は、濃度低下層17の表層部にp型不純物を選択的に導入し、エピタキシャル層を濃度低下層17の上に形成した後、当該エピタキシャル層に濃度低下層17に導入されたp型不純物を拡散させることによって形成される。また、このような濃度保持層18は、p型不純物の導入を伴うエピタキシャル成長法によって比較的高濃度なエピタキシャル層を濃度低下層17の上に直接形成することによっても得られる。
【0027】
濃度保持層18のp型不純物濃度は、濃度低下層17のp型不純物濃度の最小値を超えて5×1017cm-3以下の範囲に位置するまで漸増していてもよい。濃度保持層18のp型不純物濃度の最大値は、濃度低下層17のp型不純物濃度の最小値を超えて1×1017cm-3以下であることが好ましい。
濃度保持層18は、必ずしもp型不純物濃度が増加する濃度勾配を有している必要はない。濃度保持層18は、p型不純物濃度を所定の厚さだけ保持するのであれば、たとえば、図10に太い二点鎖線で示されたように、結晶成長方向に向けてp型不純物濃度が漸減する濃度勾配を有していてもよい。
【0028】
濃度保持層18の厚さは、1μm以上10μm以下であってもよい。濃度保持層18の厚さは、1μm以上2μm以下、2μm以上4μm以下、4μm以上6μm以下、6μm以上8μm以下、または、8μm以上10μm以下であってもよい。濃度保持層18の厚さは、2μm以上5μm以下であることが好ましい。
第2半導体層15は、濃度保持層18(エピタキシャル層)の上に形成されたn型のエピタキシャル層からなる。第2半導体層15は、第1半導体層14のp型不純物濃度未満のn型不純物濃度を有している。第2半導体層15のn型不純物濃度のピーク値は、1×1013cm-3以上1×1015cm-3以下であってもよい。第2半導体層15のn型不純物濃度のピーク値は、5×1013cm-3以上5×1014cm-3以下であることが好ましい。
【0029】
第2半導体層15は、n型不純物濃度が比較的低いn型の高抵抗層として形成されている。第2半導体層15は、50Ω・cm以上150Ω・cm以下の抵抗率を有していてもよい。第2半導体層15の抵抗率は、50Ω・cm以上75Ω・cm以下、75Ω・cm以上100Ω・cm以下、100Ω・cm以上125Ω・cm以下、または、125Ω・cm以上150Ω・cm以下であってもよい。第2半導体層15の抵抗率は、80Ω・cm以上120Ω・cm以下であることが好ましい。
【0030】
第2半導体層15は、第1半導体層14の厚さ未満の厚さを有している。第2半導体層15の厚さは、5μm以上20μm以下であってもよい。第2半導体層15の厚さは、5μm以上10μm以下、10μm以上15μm以下、または、15μm以上20μm以下であってもよい。第2半導体層15の厚さは、8μm以上15μm以下であることが好ましい。
【0031】
図2図9を参照して、ダイオードチップ1は、半導体チップ10に設定された装置形成領域272、第1パッド領域273および第2パッド領域274を含む。装置形成領域272は、第1主面11の中央部に設定されている。装置形成領域272は、平面視において半導体チップ10の側面13A~13Dに平行な4辺を有する四角形状に設定されている。
【0032】
第1パッド領域273は、装置形成領域272に対して第1主面11の一方側(第1側面13A側)の領域に設定されている。第1パッド領域273は、平面視において第1方向Xに沿って延びる帯状(長方形状)に設定されている。第2パッド領域274は、装置形成領域272に対して第1主面11の他方側(第2側面13B側)の領域に設定されている。第2パッド領域274は、平面視において第1方向Xに沿って延びる帯状(長方形状)に設定されている。
【0033】
ダイオードチップ1は、半導体チップ10の装置形成領域272に集約して形成された第1装置領域21および第2装置領域22を含む。第1装置領域21および第2装置領域22は、第1方向Xに間隔を空けて形成されている。
第1装置領域21は、具体的には、装置形成領域272において一方側(第3側面13C側)の領域に形成されている。第1装置領域21は、さらに具体的には、半導体チップ10の中央部を第2方向Yに横切る中央ラインを設定したとき、当該中央ラインに対して第3側面13C側の領域に形成されている。
【0034】
第1装置領域21は、第2方向Yに沿って延びる帯状(長方形状)に形成されている。第1装置領域21は、具体的には、平面視において側面13A~13Dに平行な4辺を有する四角形状に形成されている。第1装置領域21の平面形状は任意である。第1装置領域21は、平面視において四角形状以外の多角形状、または、円形状(楕円形状を含む)に形成されていてもよい。
【0035】
第2装置領域22は、装置形成領域272において第1装置領域21から第1方向Xに間隔を空けて他方側(第4側面13D側)の領域に形成されている。第2装置領域22は、具体的には、半導体チップ10の中央部を第2方向Yに横切る中央ラインを設定したとき、当該中央ラインに対して第4側面13D側の領域に形成されている。
第2装置領域22は、この形態では、第2方向Yに沿って延びる帯状(長方形状)に形成されている。第2装置領域22は、具体的には、平面視において側面13A~13Dに平行な4辺を有する四角形状に形成されている。第2装置領域22の平面形状は任意である。第2装置領域22は、平面視において四角形状以外の多角形状、または、円形状(楕円形状を含む)に形成されていてもよい。
【0036】
第2装置領域22は、半導体チップ10の中央部を第2方向Yに横切る中央ラインを設定したとき、当該中央ラインに対して第1装置領域21と線対称となるレイアウトで形成されていることが好ましい。また、第2装置領域22は、半導体チップ10の中央部に対して第1装置領域21と点対称となるレイアウトで形成されていることが好ましい。
以下、第1装置領域21において第1側面13A側の領域を、第1装置領域21の一方側(第1側面13A側)の領域といい、第1装置領域21において第2側面13B側の領域を、第1装置領域21の他方側(第2側面13B側)の領域という。また、第2装置領域22において第1側面13A側の領域を、第2装置領域22の一方側(第1側面13A側)の領域といい、第2装置領域22において第2側面13B側の領域を、第2装置領域22の他方側(第2側面13B側)の領域という。
【0037】
ダイオードチップ1は、装置形成領域272において第1装置領域21および第2装置領域22を区画する領域分離構造23(region separation structure)を含む。一部の図面では、便宜上、領域分離構造23がクロスハッチングによって示されている。領域分離構造23は、第1装置領域21を区画する第1領域分離構造23A、および、第2装置領域22を区画する第2領域分離構造23Bを含む。
【0038】
第1領域分離構造23Aは、平面視において第1装置領域21を取り囲む環状(この形態では四角環状)に形成されている。第1装置領域21の平面形状は、第1領域分離構造23Aによって調整される。第2領域分離構造23Bは、平面視において第1領域分離構造23Aから離間して第2装置領域22を取り囲む環状(この形態では四角環状)に形成されている。第2装置領域22の平面形状は、第2領域分離構造23Bによって調整される。第2領域分離構造23Bは、第1装置領域21および第2装置領域22の間の領域において、第1領域分離構造23Aと一体的に形成されていてもよい。
【0039】
領域分離構造23は、領域分離トレンチ24(領域分離溝)、領域分離絶縁層25およびポリシリコン26を含むトレンチ絶縁構造を有している。領域分離トレンチ24は、第1主面11を第2主面12に向けて掘り下げることによって形成されている。領域分離トレンチ24は、第2半導体層15を貫通し、第1半導体層14に至っている。領域分離トレンチ24は、具体的には、第2半導体層15および濃度保持層18を貫通し、濃度低下層17に至っている。
【0040】
領域分離トレンチ24は、側壁および底壁を含む。領域分離トレンチ24の側壁は、第1主面11に対して垂直に形成されていてもよい。領域分離トレンチ24の側壁は、第1主面11に対して傾斜していてもよい。この場合、領域分離トレンチ24は、底面積が開口面積未満の先細り形状に形成されていてもよい。
領域分離トレンチ24の底壁は、高濃度層16に対して濃度低下層17側に位置している。これにより、領域分離トレンチ24の側壁は、第2半導体層15、濃度保持層18および濃度低下層17を露出させている。また、領域分離トレンチ24の底壁は、濃度低下層17を露出させている。
【0041】
領域分離トレンチ24は、この形態では、1を超えるアスペクト比を有するディープトレンチによって形成されている。アスペクト比は、領域分離トレンチ24の幅に対する領域分離トレンチ24の深さによって定義される。アスペクト比は、5以上20以下であることが好ましい。
領域分離トレンチ24の幅は、0.1μm以上3μm以下であってもよい。領域分離トレンチ24の幅は、0.1μm以上0.5μm以上、0.5μm以上1μm以下、1μm以上1.5μm以上、1.5μm以上2μm以下、2μm以上2.5μm以上、または、2.5μm以上3μm以下であってもよい。領域分離トレンチ24の幅は、1.5μm以上2.5μm以下であることが好ましい。
【0042】
領域分離トレンチ24の深さは、1μm以上50μm以下であってもよい。領域分離トレンチ24の深さは、1μm以上5μm以下、5μm以上10μm以下、10μm以上15μm以下、15μm以上20μm以下、20μm以上25μm以下、25μm以上30μm以下、30μm以上40μm以下、または、40μm以上50μm以下であってもよい。領域分離トレンチ24の深さは、15μm以上35μm以下であることが好ましい。
【0043】
領域分離絶縁層25は、領域分離トレンチ24内に形成されている。領域分離絶縁層25は、具体的には、領域分離トレンチ24の内壁に沿って膜状に形成されている。これにより、領域分離絶縁層25は、領域分離トレンチ24内においてリセス空間を区画している。
領域分離絶縁層25は、酸化シリコン層および窒化シリコン層のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。領域分離絶縁層25は、酸化シリコン層および窒化シリコン層が任意の順序で積層された積層構造を有していてもよい。領域分離絶縁層25は、酸化シリコン層または窒化シリコン層からなる単層構造を有していてもよい。領域分離絶縁層25は、この形態では、酸化シリコン層からなる単層構造を有している。
【0044】
ポリシリコン26は、領域分離絶縁層25を挟んで領域分離トレンチ24に埋設されている。ポリシリコン26は、電気的に浮遊状態に形成されている。領域分離構造23は、ポリシリコン26を有さず、領域分離トレンチ24に一体物として埋設された領域分離絶縁層25を含んでいてもよい。
このように、領域分離絶縁層25は、半導体チップ10(第1半導体層14)を介して第1装置領域21を第2装置領域22に電気的に接続させている。この一方で、領域分離絶縁層25は、第1装置領域21内の第2半導体層15を第2装置領域22内の第2半導体層15から電気的に分離している。
【0045】
図2図9を参照して、ダイオードチップ1は、第1パッド領域273の一部を他の領域から区画する第1パッド分離構造275、および、第2パッド領域274の一部を他の領域から区画する第2パッド分離構造276を含む。
第1パッド分離構造275は、平面視において領域分離構造23から間隔を空けて第1パッド領域273の一部を取り囲む環状に形成されている。第1パッド分離構造275は、具体的には、第1主面11の中央部を第2方向Yに横切る中央ラインを設定したとき、当該中央ラインを横切る長方形環状に形成されている。
【0046】
これにより、第1パッド分離構造275は、第2方向Yに第1装置領域21および第2装置領域22に対向している。また、第1パッド分離構造275は、第1パッド領域273の一部の領域を第1方向Xに沿って延びる帯状(具体的には長方形状)に区画している。第1パッド分離構造275の平面形状は任意である。第1パッド分離構造275は、多角環状や円環状に形成されていてもよい。
【0047】
第1パッド分離構造275は、第1パッド分離トレンチ277(分離溝)、第1パッド分離絶縁層278およびポリシリコン279を含むトレンチ絶縁構造を有している。第1パッド分離トレンチ277は、この形態では、ダブルトレンチ構造(二重溝構造)を有している。第1パッド分離トレンチ277は、具体的には、第1内側パッドトレンチ277Aおよび第1外側パッドトレンチ277Bを含む。第1パッド分離トレンチ277は、第1内側パッドトレンチ277Aおよび第1外側パッドトレンチ277Bのいずれか一方だけを含むシングルトレンチ構造(単一溝構造)を有していてもよい。
【0048】
第1内側パッドトレンチ277Aは、平面視において第1パッド領域273の一部を取り囲む環状(長方形環状)に形成されている。第1内側パッドトレンチ277Aの平面形状は任意である。第1内側パッドトレンチ277Aは、多角環状や円環状に形成されていてもよい。
第1内側パッドトレンチ277Aは、第1主面11を第2主面12に向けて掘り下げることによって形成されている。第1内側パッドトレンチ277Aは、第2半導体層15を貫通し、第1半導体層14(具体的には濃度低下層17)に至っている。
【0049】
第1内側パッドトレンチ277Aは、内周壁、外周壁および底壁を含む。第1内側パッドトレンチ277Aの内周壁および外周壁は、第1半導体層14および第2半導体層15を露出させている。第1内側パッドトレンチ277Aの内周壁および外周壁は、第1主面11に対して垂直に形成されていてもよい。第1内側パッドトレンチ277Aの内周壁および外周壁は、第1主面11に対して傾斜していてもよい。この場合、第1内側パッドトレンチ277Aは、底面積が開口面積未満の先細り形状に形成されていてもよい。
【0050】
第1内側パッドトレンチ277Aの底壁は、高濃度層16に対して濃度低下層17側に位置している。第1内側パッドトレンチ277Aの底壁は、濃度低下層17を露出させている。第1内側パッドトレンチ277Aは、領域分離トレンチ24と同時に形成されていてもよい。この場合、第1内側パッドトレンチ277Aは、領域分離トレンチ24と等しい幅および深さを有している。
【0051】
第1外側パッドトレンチ277Bは、平面視において第1内側パッドトレンチ277Aから離間して第1内側パッドトレンチ277Aを取り囲む環状(長方形環状)に形成されている。第1外側パッドトレンチ277Bの平面形状は任意であり、必ずしも第1内側パッドトレンチ277Aの平面形状に一致している必要はない。第1外側パッドトレンチ277Bは、多角環状や円環状に形成されていてもよい。
【0052】
第1外側パッドトレンチ277Bは、第1主面11を第2主面12に向けて掘り下げることによって形成されている。第1外側パッドトレンチ277Bは、第2半導体層15を貫通し、第1半導体層14(具体的には濃度低下層17)に至っている。
第1外側パッドトレンチ277Bは、内周壁、外周壁および底壁を含む。第1外側パッドトレンチ277Bの内周壁および外周壁は、第1半導体層14および第2半導体層15を露出させている。第1外側パッドトレンチ277Bの内周壁および外周壁は、第1主面11に対して垂直に形成されていてもよい。第1外側パッドトレンチ277Bの内周壁および外周壁は、第1主面11に対して傾斜していてもよい。この場合、第1外側パッドトレンチ277Bは、底面積が開口面積未満の先細り形状に形成されていてもよい。
【0053】
第1外側パッドトレンチ277Bの底壁は、高濃度層16に対して濃度低下層17側に位置している。第1外側パッドトレンチ277Bの底壁は、濃度低下層17を露出させている。第1外側パッドトレンチ277Bは、領域分離トレンチ24と同時に形成されていてもよい。この場合、第1外側パッドトレンチ277Bは、領域分離トレンチ24と等しい幅および深さを有している。このようにして、第1外側パッドトレンチ277Bは、第1内側パッドトレンチ277Aと共にダブルトレンチ構造(二重溝構造)を形成している。
【0054】
第1内側パッドトレンチ277Aおよび第1外側パッドトレンチ277Bの間のトレンチピッチは、1μm以上10μm以下であってもよい。トレンチピッチは、1μm以上2μm以下、2μm以上4μm以下、4μm以上6μm以下、6μm以上8μm以下、または、8μm以上10μm以下であってもよい。トレンチピッチは、3μm以上8μm以下であることが好ましい。
【0055】
第1内側パッドトレンチ277Aおよび第1外側パッドトレンチ277Bは、この形態では、1を超えるアスペクト比を有するディープトレンチによって形成されている。アスペクト比は、第1内側パッドトレンチ277A(第1外側パッドトレンチ277B)の幅に対する第1内側パッドトレンチ277A(第1外側パッドトレンチ277B)の深さによって定義される。アスペクト比は、5以上20以下であることが好ましい。
【0056】
第1内側パッドトレンチ277A(第1外側パッドトレンチ277B)の幅は、0.1μm以上3μm以下であってもよい。第1内側パッドトレンチ277A(第1外側パッドトレンチ277B)の幅は、0.1μm以上0.5μm以上、0.5μm以上1μm以下、1μm以上1.5μm以上、1.5μm以上2μm以下、2μm以上2.5μm以上、または、2.5μm以上3μm以下であってもよい。第1内側パッドトレンチ277A(第1外側パッドトレンチ277B)の幅は、1.5μm以上2.5μm以下であることが好ましい。
【0057】
第1内側パッドトレンチ277A(第1外側パッドトレンチ277B)の深さは、1μm以上50μm以下であってもよい。第1内側パッドトレンチ277A(第1外側パッドトレンチ277B)の深さは、1μm以上5μm以下、5μm以上10μm以下、10μm以上15μm以下、15μm以上20μm以下、20μm以上25μm以下、25μm以上30μm以下、30μm以上40μm以下、または、40μm以上50μm以下であってもよい。第1内側パッドトレンチ277A(第1外側パッドトレンチ277B)の深さは、15μm以上35μm以下であることが好ましい。
【0058】
第1パッド分離絶縁層278は、第1パッド分離トレンチ277内に形成されている。第1パッド分離絶縁層278は、具体的には、第1内側パッドトレンチ277Aの内壁に沿って膜状に形成されている。これにより、第1パッド分離絶縁層278は、第1内側パッドトレンチ277A内においてリセス空間を区画している。また、第1パッド分離絶縁層278は、第1外側パッドトレンチ277Bの内壁に沿って膜状に形成されている。これにより、第1パッド分離絶縁層278は、第1外側パッドトレンチ277B内においてリセス空間を区画している。
【0059】
第1パッド分離絶縁層278は、酸化シリコン層および窒化シリコン層のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。第1パッド分離絶縁層278は、酸化シリコン層および窒化シリコン層が任意の順序で積層された積層構造を有していてもよい。第1パッド分離絶縁層278は、酸化シリコン層または窒化シリコン層からなる単層構造を有していてもよい。第1パッド分離絶縁層278は、領域分離絶縁層25と同一の絶縁材料からなることが好ましい。第1パッド分離絶縁層278は、この形態では、酸化シリコン層からなる単層構造を有している。
【0060】
ポリシリコン279は、第1パッド分離絶縁層278を挟んで第1パッド分離トレンチ277に埋設されている。ポリシリコン279は、具体的には、第1パッド分離絶縁層278を挟んで第1内側パッドトレンチ277Aに埋設されている。また、ポリシリコン279は、第1パッド分離絶縁層278を挟んで第1外側パッドトレンチ277Bに埋設されている。
【0061】
ポリシリコン279は、電気的に浮遊状態に形成されている。第1パッド分離構造275は、ポリシリコン279を有さず、第1内側パッドトレンチ277Aに一体物として埋設された第1パッド分離絶縁層278を含んでいてもよい。また、第1パッド分離構造275は、ポリシリコン279を有さず、第1外側パッドトレンチ277Bに一体物として埋設された第1パッド分離絶縁層278を含んでいてもよい。
【0062】
第2パッド分離構造276は、平面視において領域分離構造23から間隔を空けて第2パッド領域274の一部を取り囲む環状に形成されている。第2パッド分離構造276は、具体的には、第1主面11の中央部を第2方向Yに横切る中央ラインを設定したとき、当該中央ラインを横切る長方形環状に形成されている。
これにより、第2パッド分離構造276は、第2方向Yに第1装置領域21および第2装置領域22に対向している。また、第2パッド分離構造276は、第2パッド領域274の一部の領域を第1方向Xに沿って延びる帯状(具体的には長方形状)に区画している。第2パッド分離構造276の平面形状は任意である。第2パッド分離構造276は、多角環状や円環状に形成されていてもよい。
【0063】
第2パッド分離構造276は、半導体チップ10の中央部を第2方向Yに横切る中央ラインを設定したとき、当該中央ラインに対して第1パッド分離構造275と線対称となるレイアウトで形成されていることが好ましい。また、第2パッド分離構造276は、半導体チップ10の中央部に対して第1パッド分離構造275と点対称となるレイアウトで形成されていることが好ましい。
【0064】
第2パッド分離構造276は、第2パッド分離トレンチ280(分離溝)、第2パッド分離絶縁層281およびポリシリコン282を含むトレンチ絶縁構造を有している。第2パッド分離トレンチ280は、この形態では、ダブルトレンチ構造(二重溝構造)を有している。第2パッド分離トレンチ280は、具体的には、第2内側パッドトレンチ280Aおよび第2外側パッドトレンチ280Bを含む。第2パッド分離トレンチ280は、第2内側パッドトレンチ280Aおよび第2外側パッドトレンチ280Bのいずれか一方だけを含むシングルトレンチ構造(単一溝構造)を有していてもよい。
【0065】
第2内側パッドトレンチ280Aは、平面視において第2パッド領域274の一部を取り囲む環状(長方形環状)に形成されている。第2内側パッドトレンチ280Aの平面形状は任意である。第2内側パッドトレンチ280Aは、多角環状や円環状に形成されていてもよい。
第2内側パッドトレンチ280Aは、第1主面11を第2主面12に向けて掘り下げることによって形成されている。第2内側パッドトレンチ280Aは、第2半導体層15を貫通し、第1半導体層14(具体的には濃度低下層17)に至っている。
【0066】
第2内側パッドトレンチ280Aは、内周壁、外周壁および底壁を含む。第2内側パッドトレンチ280Aの内周壁および外周壁は、第1半導体層14および第2半導体層15を露出させている。第2内側パッドトレンチ280Aの内周壁および外周壁は、第1主面11に対して垂直に形成されていてもよい。第2内側パッドトレンチ280Aの内周壁および外周壁は、第1主面11に対して傾斜していてもよい。この場合、第2内側パッドトレンチ280Aは、底面積が開口面積未満の先細り形状に形成されていてもよい。
【0067】
第2内側パッドトレンチ280Aの底壁は、高濃度層16に対して濃度低下層17側に位置している。第2内側パッドトレンチ280Aの底壁は、濃度低下層17を露出させている。第2内側パッドトレンチ280Aは、領域分離トレンチ24と同時に形成されていてもよい。この場合、第2内側パッドトレンチ280Aは、領域分離トレンチ24と等しい幅および深さを有している。
【0068】
第2外側パッドトレンチ280Bは、平面視において第2内側パッドトレンチ280Aから離間して第2内側パッドトレンチ280Aを取り囲む環状(長方形環状)に形成されている。第2外側パッドトレンチ280Bの平面形状は任意であり、必ずしも第2内側パッドトレンチ280Aの平面形状に一致している必要はない。第2外側パッドトレンチ280Bは、多角環状や円環状に形成されていてもよい。
【0069】
第2外側パッドトレンチ280Bは、第1主面11を第2主面12に向けて掘り下げることによって形成されている。第2外側パッドトレンチ280Bは、第2半導体層15を貫通し、第1半導体層14(具体的には濃度低下層17)に至っている。
第2外側パッドトレンチ280Bは、内周壁、外周壁および底壁を含む。第2外側パッドトレンチ280Bの内周壁および外周壁は、第1半導体層14および第2半導体層15を露出させている。第2外側パッドトレンチ280Bの内周壁および外周壁は、第1主面11に対して垂直に形成されていてもよい。第2外側パッドトレンチ280Bの内周壁および外周壁は、第1主面11に対して傾斜していてもよい。この場合、第2外側パッドトレンチ280Bは、底面積が開口面積未満の先細り形状に形成されていてもよい。
【0070】
第2外側パッドトレンチ280Bの底壁は、高濃度層16に対して濃度低下層17側に位置している。第2外側パッドトレンチ280Bの底壁は、濃度低下層17を露出させている。第2外側パッドトレンチ280Bは、領域分離トレンチ24と同時に形成されていてもよい。この場合、第2外側パッドトレンチ280Bは、領域分離トレンチ24と等しい幅および深さを有している。このようにして、第2外側パッドトレンチ280Bは、第2内側パッドトレンチ280Aと共にダブルトレンチ構造(二重溝構造)を形成している。
【0071】
第2内側パッドトレンチ280Aおよび第2外側パッドトレンチ280Bの間のトレンチピッチは、1μm以上10μm以下であってもよい。トレンチピッチは、1μm以上2μm以下、2μm以上4μm以下、4μm以上6μm以下、6μm以上8μm以下、または、8μm以上10μm以下であってもよい。トレンチピッチは、3μm以上8μm以下であることが好ましい。
【0072】
第2内側パッドトレンチ280Aおよび第2外側パッドトレンチ280Bは、この形態では、1を超えるアスペクト比を有するディープトレンチによって形成されている。アスペクト比は、第2内側パッドトレンチ280A(第2外側パッドトレンチ280B)の幅に対する第2内側パッドトレンチ280A(第2外側パッドトレンチ280B)の深さによって定義される。アスペクト比は、5以上20以下であることが好ましい。
【0073】
第2内側パッドトレンチ280A(第2外側パッドトレンチ280B)の幅は、0.1μm以上3μm以下であってもよい。第2内側パッドトレンチ280A(第2外側パッドトレンチ280B)の幅は、0.1μm以上0.5μm以上、0.5μm以上1μm以下、1μm以上1.5μm以上、1.5μm以上2μm以下、2μm以上2.5μm以上、または、2.5μm以上3μm以下であってもよい。第2内側パッドトレンチ280A(第2外側パッドトレンチ280B)の幅は、1.5μm以上2.5μm以下であることが好ましい。
【0074】
第2内側パッドトレンチ280A(第2外側パッドトレンチ280B)の深さは、1μm以上50μm以下であってもよい。第2内側パッドトレンチ280A(第2外側パッドトレンチ280B)の深さは、1μm以上5μm以下、5μm以上10μm以下、10μm以上15μm以下、15μm以上20μm以下、20μm以上25μm以下、25μm以上30μm以下、30μm以上40μm以下、または、40μm以上50μm以下であってもよい。第2内側パッドトレンチ280A(第2外側パッドトレンチ280B)の深さは、15μm以上35μm以下であることが好ましい。
【0075】
第2パッド分離絶縁層281は、第2パッド分離トレンチ280内に形成されている。第2パッド分離絶縁層281は、具体的には、第2内側パッドトレンチ280Aの内壁に沿って膜状に形成されている。これにより、第2パッド分離絶縁層281は、第2内側パッドトレンチ280A内においてリセス空間を区画している。また、第2パッド分離絶縁層281は、第2外側パッドトレンチ280Bの内壁に沿って膜状に形成されている。これにより、第2パッド分離絶縁層281は、第2外側パッドトレンチ280B内においてリセス空間を区画している。
【0076】
第2パッド分離絶縁層281は、酸化シリコン層および窒化シリコン層のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。第2パッド分離絶縁層281は、酸化シリコン層および窒化シリコン層が任意の順序で積層された積層構造を有していてもよい。第2パッド分離絶縁層281は、酸化シリコン層または窒化シリコン層からなる単層構造を有していてもよい。第2パッド分離絶縁層281は、領域分離絶縁層25と同一の絶縁材料からなることが好ましい。第2パッド分離絶縁層281は、この形態では、酸化シリコン層からなる単層構造を有している。
【0077】
ポリシリコン282は、第2パッド分離絶縁層281を挟んで第2パッド分離トレンチ280に埋設されている。ポリシリコン282は、具体的には、第2パッド分離絶縁層281を挟んで第2内側パッドトレンチ280Aに埋設されている。また、ポリシリコン282は、第2パッド分離絶縁層281を挟んで第2外側パッドトレンチ280Bに埋設されている。
【0078】
ポリシリコン282は、電気的に浮遊状態に形成されている。第2パッド分離構造276は、ポリシリコン282を有さず、第2内側パッドトレンチ280Aに一体物として埋設された第2パッド分離絶縁層281を含んでいてもよい。また、第2パッド分離構造276は、ポリシリコン282を有さず、第2外側パッドトレンチ280Bに一体物として埋設された第2パッド分離絶縁層281を含んでいてもよい。
【0079】
図2図9を参照して、第1パッド領域273において第1パッド分離構造275によって取り囲まれた領域には、第1内部寄生容量C1が形成されている。第1内部寄生容量C1は、第1半導体層14および第2半導体層15の間に形成されている。
また、第2パッド領域274において第2パッド分離構造276によって取り囲まれた領域には、第2内部寄生容量C2が形成されている。第2内部寄生容量C2は、第1半導体層14および第2半導体層15の間に形成されている。第2内部寄生容量C2は、半導体チップ10(第1半導体層14)を介して第1内部寄生容量C1に直列接続されている。
【0080】
第2内部寄生容量C2は、第1内部寄生容量C1と等しいことが好ましい。つまり、第1パッド分離構造275は、平面視において第1パッド領域273の一部の領域を第1パッド面積で区画し、第2パッド分離構造276は、平面視において第2パッド領域274の一部の領域を第1パッド面積と等しい第2パッド面積で区画していることが好ましい。 図2図9を参照して、ダイオードチップ1は、第1装置領域21の表層部に第1極性方向で形成された第1pin接合部31(p-intrinsic-n junction portion)を含む。第1pin接合部31は、第1装置領域21の表層部において第1pinダイオードD1を形成している。
【0081】
「極性方向」は、順方向電流が流れる向き(つまり、ダイオードの極性の向き)を意味する。第1極性方向は、半導体チップ10の厚さ方向(つまり法線方向Z)に沿って順方向電流が流れる向きである。第1極性方向は、この形態では、第2主面12側から第1主面11側に順方向電流が流れる向きである。
第1pin接合部31は、平面視において第1装置領域21の表層部の一方側(第1側面13A側)の領域に形成されている。第1pin接合部31は、第1装置領域21の表層部から厚さ方向に向けてこの順に形成されたn型の第1N層32(第1上側半導体層)、n型の第1I層33(第1抵抗層)およびp型の第1P層34(第1下側半導体層)を含む。
【0082】
第1N層32は、第2半導体層15の表層部に形成されている。第1N層32は、平面視において円形状(楕円形状を含む)に形成されている。第1N層32の平面形状は任意である。第1N層32は、多角形状(たとえば四角形状)に形成されていてもよい。
第1N層32は、第2半導体層15のn型不純物濃度を超えるn型不純物濃度を有している。第1N層32のn型不純物濃度のピーク値は、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。第1N層32のn型不純物濃度のピーク値は、5×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であることが好ましい。
【0083】
第1I層33は、第2半導体層15を利用して形成されている。第1I層33は、第2半導体層15のn型不純物濃度と等しいn型不純物濃度を有している。第1I層33のn型不純物濃度のピーク値は、1×1013cm-3以上1×1015cm-3以下であってもよい。第1I層33のn型不純物濃度のピーク値は、5×1013cm-3以上5×1014cm-3以下であることが好ましい。
【0084】
第1P層34は、第1半導体層14(具体的には濃度保持層18)および第2半導体層15の境界部に形成されている。第1P層34は、第1I層33を挟んで第1N層32の全域に対向している。第1P層34は、濃度保持層18の一部を挟んで濃度低下層17に対向している。
第1P層34は、平面視において第1N層32の幅を超える幅を有している。第1P層34の周縁は、平面視において第1N層32を取り囲んでいる。第1P層34は、平面視において円形状(楕円形状を含む)に形成されている。第1P層34の平面形状は任意である。第1P層34は、多角形状(たとえば四角形状)に形成されていてもよい。
【0085】
第1P層34は、第1I層33のn型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有している。また、第1P層34は、少なくとも濃度保持層18のp型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有している。第1P層34は、高濃度層16のp型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有していてもよい。第1P層34のp型不純物濃度のピーク値は、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。第1P層34のp型不純物濃度のピーク値は、5×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であることが好ましい。
【0086】
第1N層32、第1I層33および第1P層34は、半導体チップ10の厚さ方向(つまり法線方向Z)に沿うpin接合を形成している。これにより、第1N層32をカソードとし、第1P層34をアノードとして有する第1pinダイオードD1が、第1装置領域21の表層部に形成されている。第1pinダイオードD1のアノードは、第1半導体層14に電気的に接続されている。
【0087】
図2図9を参照して、ダイオードチップ1は、第1pin接合部31から離間して第1装置領域21の内部に第1極性方向で形成された第1pn接合部35(pn junction portion)を含む。第1pn接合部35は、第1装置領域21の内部において第1ツェナーダイオードDZ1を形成している。
第1pn接合部35は、半導体チップ10(第1半導体層14)を介して第1pin接合部31に電気的に接続されている。第1pn接合部35は、具体的には、半導体チップ10(第1半導体層14)を介して第1pin接合部31に逆バイアス接続されている。
【0088】
第1pn接合部35は、第1装置領域21の内部において第1半導体層14(具体的には濃度保持層18)との間でpn接合を形成するn型の第1内部N層36(第1内部半導体層)を含む。第1内部N層36は、第1半導体層14(具体的には濃度保持層18)および第2半導体層15の境界部に形成されている。第1内部N層36は、第1装置領域21において第1pin接合部31(具体的には第1P層34)以外の領域に形成されている。第1内部N層36は、第1pin接合部31(第1P層34)以外のほぼ全域に形成されていてもよい。
【0089】
第1内部N層36は、第1pin接合部31(第1P層34)を取り囲む内周縁部を有している。第1内部N層36の内周縁部は、第1P層34に接続されていてもよいし、第1P層34から離間していてもよい。第1内部N層36の外周縁部は、第1装置領域21外に位置していてもよい。つまり、第1内部N層36の外周縁部は、第1領域分離構造23Aによって第1内部N層36の内方部から分離されていてもよい。
【0090】
図10を参照して、第1内部N層36は、第2半導体層15のn型不純物濃度を超えるn型不純物濃度を有している。図10では、第1内部N層36のn型不純物濃度勾配が破線によって示されている。第1内部N層36は、濃度保持層18のp型不純物濃度を超えるn型不純物濃度を有している。第1内部N層36のn型不純物濃度のピーク値は、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。第1内部N層36のn型不純物濃度のピーク値は、5×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であることが好ましい。
【0091】
第1pn接合部35は、第1内部N層36をカソードとし、第1半導体層14(具体的には濃度保持層18)をアノードとして有する第1ツェナーダイオードDZ1を形成している。第1ツェナーダイオードDZ1のアノードは、半導体チップ10(第1半導体層14)を介して第1pinダイオードD1のアノードに逆バイアス接続されている。
第1半導体層14が濃度保持層18を有さない場合、第1内部N層36は、濃度低下層17との間でpn接合を形成する。この場合、第1pn接合部35におけるpn濃度変化が急峻になるため、当該第1pn接合部35を起点に実際の耐圧(具体的にはブレークダウン電圧VB)が目標の耐圧から変動する可能性がある。このような問題は、濃度低下層17の厚さのバラツキ(たとえば±5%程度)に起因して顕在化する。
【0092】
そこで、ダイオードチップ1では、濃度低下層17の上に濃度保持層18を形成し、第1pn接合部35におけるpn濃度変化を緩慢にしている。これにより、第1pn接合部35を起点とする耐圧(具体的にはブレークダウン電圧VB)の変動を抑制できる。また、濃度低下層17の厚さにバラツキが生じたとしても、所定厚さの濃度保持層18が形成されているため、濃度低下層17の厚さバラツキに起因する耐圧の変動を適切に抑制できる。また、濃度保持層18の厚さにバラツキが生じたとしても、pn濃度変化が緩慢であるため、濃度保持層18の厚さバラツキに起因する耐圧の変動を適切に抑制できる。
【0093】
図2図9を参照して、ダイオードチップ1は、第1pn接合部35に逆バイアス接続されるように第1装置領域21の表層部に第2極性方向で形成された第1逆pin接合部38(reverse p-intrinsic-n junction portion)を含む。
第2極性方向は、半導体チップ10の厚さ方向に関して第1極性方向とは逆向きに順方向電流が流れる向きである。第2極性方向は、この形態では、第1主面11側から第2主面12側に順方向電流が流れる向きである。
【0094】
第1逆pin接合部38は、第1装置領域21の表層部において第1逆pinダイオードDR1を形成している。第1逆pin接合部38は、第1pn接合部35との間で第1ダイオード対37(第1整流器対)を形成している。
第1逆pin接合部38は、平面視において第1pin接合部31から離間して第1装置領域21の表層部の他方側(第2側面13B側)の領域に形成されている。第1逆pin接合部38は、第1pin接合部31を第2方向Yに横切るラインを設定したとき、当該ライン上に配置されている。つまり、第1逆pin接合部38は、第2方向Yに第1pin接合部31に対向している。
【0095】
第1逆pin接合部38は、第1装置領域21の表層部から厚さ方向に向けてこの順に形成されたp型の第1逆P層39(第1上側逆半導体層)、n型の第1逆I層40(第1逆抵抗層)およびn型の第1逆N層41(第1下側逆半導体層)を含む。
第1逆P層39は、第2半導体層15の表層部に形成されている。第1逆P層39は、第2半導体層15のn型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有している。第1逆P層39のp型不純物濃度のピーク値は、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。第1逆P層39のp型不純物濃度のピーク値は、5×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であることが好ましい。
【0096】
第1逆P層39は、平面視において円形状(楕円形状を含む)に形成されている。第1逆P層39の平面形状は任意である。第1逆P層39は、多角形状(たとえば四角形状)に形成されていてもよい。
第1逆P層39は、第1平面積S1を有している。第1平面積S1は、1000μm以上10000μm以下であってもよい。第1平面積S1は、1000μm以上2000μm以下、2000μm以上4000μm以下、4000μm以上6000μm以下、6000μm以上8000μm以下、または、8000μm以上10000μm以下であってもよい。
【0097】
第1逆I層40は、第2半導体層15を利用して形成されている。第1逆I層40は、第2半導体層15のn型不純物濃度と等しいn型不純物濃度を有している。第1逆I層40のn型不純物濃度のピーク値は、1×1013cm-3以上1×1015cm-3以下であってもよい。第1逆I層40のn型不純物濃度のピーク値は、5×1013cm-3以上5×1014cm-3以下であることが好ましい。
【0098】
第1逆N層41は、第1半導体層14(具体的には濃度保持層18)および第2半導体層15の境界部に形成されている。第1逆N層41は、第1pn接合部35の一部である第1内部N層36を利用して形成されている。したがって、第1逆N層41(第1内部N層36)は、第1逆I層40を挟んで第1逆N層41の全域に対向している。
第1逆P層39、第1逆I層40および第1逆N層41は、半導体チップ10の厚さ方向(つまり法線方向Z)に沿うpin接合を形成している。これにより、第1逆P層39をアノードとし、第1逆N層41をカソードとして有する第1逆pinダイオードDR1が形成されている。第1逆pinダイオードDR1のカソードは、第1ツェナーダイオードDZ1のカソードに接続されている。
【0099】
これにより、第1ツェナーダイオードDZ1、および、第1ツェナーダイオードDZ1に逆バイアス直列接続された第1逆pinダイオードDR1を含む第1ダイオード対37が形成されている。第1ダイオード対37は、半導体チップ10(第1半導体層14)を介して第1pinダイオードD1に並列接続されている。このようにして、第1pinダイオードD1および第1ダイオード対37を含む第1並列回路42が形成されている。
【0100】
図2図9を参照して、ダイオードチップ1は、第1装置領域21に形成され、第1pin接合部31を第1pn接合部35および第1逆pin接合部38から区画する第1接合分離構造45(junction separation structure)を含む。
第1接合分離構造45は、第1接合分離トレンチ46(第1接合分離溝)、第1接合分離絶縁層47およびポリシリコン48を含む。第1接合分離トレンチ46は、この形態では、第1pin接合部31(第1P層34)および第1pn接合部35(第1内部N層36)の境界を両サイドから挟み込むように第1pin接合部31を取り囲むダブルトレンチ構造(二重溝構造)を有している。第1接合分離トレンチ46は、具体的には、第1内側トレンチ46Aおよび第1外側トレンチ46Bを含む。
【0101】
第1内側トレンチ46Aは、平面視において第1pin接合部31を取り囲む環状(この形態では円環状)に形成されている。第1内側トレンチ46Aの平面形状は任意である。第1内側トレンチ46Aは、多角環状(たとえば四角環状)や円環状(楕円環状を含む)に形成されていてもよい。
第1内側トレンチ46Aは、第1主面11を第2主面12に向けて掘り下げることによって形成されている。第1内側トレンチ46Aは、第1pin接合部31の第1P層34を貫通し、第1半導体層14(具体的には濃度低下層17)に至っている。
【0102】
第1内側トレンチ46Aは、内周壁、外周壁および底壁を含む。第1内側トレンチ46Aの内周壁は、第1P層34の内方部を露出させている。第1内側トレンチ46Aの外周壁は、第1P層34の周縁部を露出させている。これにより、第1内側トレンチ46Aは、第1P層34の周縁部を第1pin接合部31から電気的に分離している。
第1内側トレンチ46Aの内周壁および外周壁は、第1主面11に対して垂直に形成されていてもよい。第1内側トレンチ46Aの内周壁および外周壁は、第1主面11に対して傾斜していてもよい。この場合、第1内側トレンチ46Aは、底面積が開口面積未満の先細り形状に形成されていてもよい。
【0103】
第1内側トレンチ46Aの底壁は、高濃度層16に対して濃度低下層17側に位置している。第1内側トレンチ46Aの底壁は、濃度低下層17を露出させている。第1内側トレンチ46Aは、領域分離トレンチ24と同時に形成されていてもよい。この場合、第1内側トレンチ46Aは、領域分離トレンチ24と等しい幅および深さを有している。
第1外側トレンチ46Bは、平面視において第1内側トレンチ46Aから離間して第1内側トレンチ46Aを取り囲む環状(この形態では円環状)に形成されている。第1外側トレンチ46Bの平面形状は任意であり、必ずしも第1内側トレンチ46Aの平面形状に一致している必要はない。第1外側トレンチ46Bは、多角環状(たとえば四角環状)や円環状(楕円環状を含む)に形成されていてもよい。
【0104】
第1外側トレンチ46Bは、第1主面11を第2主面12に向けて掘り下げることによって形成されている。第1外側トレンチ46Bは、第1pn接合部35の第1内部N層36(第1逆N層41)を貫通し、第1半導体層14(具体的には濃度低下層17)に至っている。
第1外側トレンチ46Bは、内周壁、外周壁および底壁を含む。第1外側トレンチ46Bの内周壁は、第1内部N層36(第1逆N層41)の内周縁部を露出させている。第1外側トレンチ46Bの外周壁は、第1内部N層36(第1逆N層41)の内方部を露出させている。これにより、第1外側トレンチ46Bは、第1内部N層36(第1逆N層41)の内周縁部を第1pn接合部35および第1逆pin接合部38から電気的に分離している。
【0105】
第1外側トレンチ46Bの内周壁および外周壁は、第1主面11に対して垂直に形成されていてもよい。第1外側トレンチ46Bの内周壁および外周壁は、第1主面11に対して傾斜していてもよい。この場合、第1外側トレンチ46Bは、底面積が開口面積未満の先細り形状に形成されていてもよい。
第1外側トレンチ46Bの底壁は、高濃度層16に対して濃度低下層17側に位置している。第1外側トレンチ46Bの底壁は、濃度低下層17を露出させている。第1外側トレンチ46Bは、領域分離トレンチ24と同時に形成されていてもよい。この場合、第1外側トレンチ46Bは、領域分離トレンチ24と等しい幅および深さを有している。
【0106】
第1内側トレンチ46Aおよび第1外側トレンチ46Bの間のトレンチピッチは、1μm以上10μm以下であってもよい。トレンチピッチは、1μm以上2μm以下、2μm以上4μm以下、4μm以上6μm以下、6μm以上8μm以下、または、8μm以上10μm以下であってもよい。トレンチピッチは、3μm以上8μm以下であることが好ましい。
【0107】
第1内側トレンチ46Aおよび第1外側トレンチ46Bは、この形態では、1を超えるアスペクト比を有するディープトレンチによってそれぞれ形成されている。アスペクト比は、第1内側トレンチ46A(第1外側トレンチ46B)の幅に対する第1内側トレンチ46A(第1外側トレンチ46B)の深さによって定義される。アスペクト比は、5以上20以下であることが好ましい。
【0108】
第1内側トレンチ46A(第1外側トレンチ46B)の幅は、0.1μm以上3μm以下であってもよい。第1内側トレンチ46A(第1外側トレンチ46B)の幅は、0.1μm以上0.5μm以上、0.5μm以上1μm以下、1μm以上1.5μm以上、1.5μm以上2μm以下、2μm以上2.5μm以上、または、2.5μm以上3μm以下であってもよい。第1内側トレンチ46A(第1外側トレンチ46B)の幅は、1.5μm以上2.5μm以下であることが好ましい。
【0109】
第1内側トレンチ46A(第1外側トレンチ46B)の深さは、1μm以上50μm以下であってもよい。第1内側トレンチ46A(第1外側トレンチ46B)の深さは、1μm以上5μm以下、5μm以上10μm以下、10μm以上15μm以下、15μm以上20μm以下、20μm以上25μm以下、25μm以上30μm以下、30μm以上40μm以下、または、40μm以上50μm以下であってもよい。第1内側トレンチ46A(第1外側トレンチ46B)の深さは、15μm以上35μm以下であることが好ましい。
【0110】
このようにして、第1外側トレンチ46Bは、第1内側トレンチ46Aと共に第1pin接合部31(第1P層34)および第1pn接合部35(第1内部N層36)の境界を両サイドから挟み込むダブルトレンチ構造(二重溝構造)を形成している。
第1接合分離絶縁層47は、第1接合分離トレンチ46内に形成されている。第1接合分離絶縁層47は、具体的には、第1内側トレンチ46Aの内壁に沿って膜状に形成されている。これにより、第1接合分離絶縁層47は、第1内側トレンチ46A内においてリセス空間を区画している。また、第1接合分離絶縁層47は、第1外側トレンチ46Bの内壁に沿って膜状に形成されている。これにより、第1接合分離絶縁層47は、第1外側トレンチ46B内においてリセス空間を区画している。
【0111】
第1接合分離絶縁層47は、酸化シリコン層および窒化シリコン層のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。第1接合分離絶縁層47は、酸化シリコン層および窒化シリコン層が任意の順序で積層された積層構造を有していてもよい。第1接合分離絶縁層47は、酸化シリコン層または窒化シリコン層からなる単層構造を有していてもよい。第1接合分離絶縁層47は、領域分離絶縁層25と同一の絶縁材料からなることが好ましい。第1接合分離絶縁層47は、この形態では、酸化シリコン層からなる単層構造を有している。
【0112】
ポリシリコン48は、第1接合分離絶縁層47を挟んで第1接合分離トレンチ46に埋設されている。ポリシリコン48は、具体的には、第1接合分離絶縁層47を挟んで第1内側トレンチ46Aに埋設されている。また、ポリシリコン48は、第1接合分離絶縁層47を挟んで第1外側トレンチ46Bに埋設されている。
ポリシリコン48は、電気的に浮遊状態に形成されている。第1接合分離構造45は、ポリシリコン48を有さず、第1内側トレンチ46Aに一体物として埋設された第1接合分離絶縁層47を含んでいてもよい。また、第1接合分離構造45は、ポリシリコン48を有さず、第1外側トレンチ46Bに一体物として埋設された第1接合分離絶縁層47を含んでいてもよい。
【0113】
この形態では、第1接合分離トレンチ46が、第1pin接合部31および第1pn接合部35の境界を両サイドから挟み込むダブルトレンチ構造(二重溝構造)を有している例について説明した。しかし、第1接合分離トレンチ46は、第1pin接合部31および第1pn接合部35の境界を横切るシングルトレンチ構造(単一溝構造)を有していてもよい。この場合、第1接合分離トレンチ46は、第1内側トレンチ46Aおよび第1外側トレンチ46Bが一体化した構造となる。
【0114】
図2図9を参照して、ダイオードチップ1は、第2装置領域22の表層部に第1極性方向で形成された第2pin接合部51を含む。第2pin接合部51は、第2装置領域22の表層部において第2pinダイオードD2を形成している。
第2pin接合部51は、平面視において第2装置領域22の表層部の他方側(第2側面13B側)の領域に形成されている。第2pin接合部51は、第1逆pin接合部38を第1方向Xに横切るラインを設定したとき、当該ライン上に位置している。これにより、第2pin接合部51は、第1方向Xに第1逆pin接合部38に対向している。第2pin接合部51は、第1主面11の中央部に対して第1pin接合部31と点対称となるレイアウトで形成されていることが好ましい。
【0115】
第2pin接合部51は、第2装置領域22の表層部から厚さ方向に向けてこの順に形成されたn型の第2N層52(第2上側半導体層)、n型の第2I層53(第2抵抗層)およびp型の第2P層54(第2下側半導体層)を含む。
第2N層52は、第2半導体層15の表層部に形成されている。第2N層52は、平面視において円形状(楕円形状を含む)に形成されている。第2N層52の平面形状は任意である。第2N層52は、多角形状(たとえば四角形状)に形成されていてもよい。
【0116】
第2N層52は、第2半導体層15のn型不純物濃度を超えるn型不純物濃度を有している。第2N層52のn型不純物濃度のピーク値は、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。第2N層52のn型不純物濃度のピーク値は、5×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であることが好ましい。第2N層52のn型不純物濃度は、第1pin接合部31の第1N層32のn型不純物濃度と等しいことが好ましい。
【0117】
第2I層53は、第2半導体層15を利用して形成されている。第2I層53は、第2半導体層15のn型不純物濃度と等しいn型不純物濃度を有している。第2I層53のn型不純物濃度のピーク値は、1×1013cm-3以上1×1015cm-3以下であってもよい。第2I層53のn型不純物濃度のピーク値は、5×1013cm-3以上5×1014cm-3以下であることが好ましい。第2I層53のn型不純物濃度は、第1pin接合部31の第1I層33のn型不純物濃度と等しいことが好ましい。
【0118】
第2P層54は、第1半導体層14(具体的には濃度保持層18)および第2半導体層15の境界部に形成されている。第2P層54は、第2I層53を挟んで第2N層52の全域に対向している。第2P層54は、濃度保持層18の一部を挟んで濃度低下層17に対向している。
第2P層54は、平面視において第2N層52の幅を超える幅を有している。これにより、第2P層54の周縁は、平面視において第2N層52を取り囲んでいる。第2P層54は、平面視において円形状(楕円形状を含む)に形成されている。第2P層54の平面形状は任意である。第2P層54は、多角形状(たとえば四角形状)に形成されていてもよい。
【0119】
第2P層54は、第2I層53のn型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有している。また、第2P層54は、少なくとも濃度保持層18のp型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有している。第2P層54は、高濃度層16のp型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有していてもよい。
第2P層54のp型不純物濃度のピーク値は、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。第2P層54のp型不純物濃度のピーク値は、5×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であることが好ましい。第2P層54のp型不純物濃度は、第1pin接合部31の第1P層34のp型不純物濃度と等しいことが好ましい。
【0120】
第2N層52、第2I層53および第2P層54は、半導体チップ10の厚さ方向(つまり法線方向Z)に沿うpin接合を形成している。これにより、第2N層52をカソードとし、第2P層54をアノードとして有する第2pinダイオードD2が、第2装置領域22の表層部に形成されている。第2pinダイオードD2のアノードは、第1半導体層14に電気的に接続されている。第2pinダイオードD2のアノードは、半導体チップ10(第1半導体層14)を介して第1pinダイオードD1のアノードに逆バイアス接続されている。
【0121】
図2図9を参照して、ダイオードチップ1は、第2pin接合部51から離間して第2装置領域22の内部に第1極性方向で形成された第2pn接合部55を含む。第2pn接合部55は、第2装置領域22の内部において第2ツェナーダイオードDZ2を形成している。
第2pn接合部55は、第2装置領域22の内部において第1半導体層14(具体的には濃度保持層18)との間でpn接合を形成するn型の第2内部N層56(第2内部半導体層)を含む。第2内部N層56は、第1半導体層14(具体的には濃度保持層18)および第2半導体層15の境界部に形成されている。第2内部N層56は、第2装置領域22において第2pin接合部51(具体的には第2P層54)以外の領域に形成されている。第2内部N層56は、第2pin接合部51(第2P層54)以外のほぼ全域に形成されていてもよい。
【0122】
第2内部N層56は、第2pin接合部51(第2P層54)を取り囲む内周縁部を有している。第2内部N層56の内周縁部は、第2P層54に接続されていてもよいし、第2P層54から離間していてもよい。第2内部N層56の外周縁部は、第2装置領域22外に位置していてもよい。つまり、第2内部N層56の外周縁部は、第2領域分離構造23Bによって第2内部N層56の内方部から分離されていてもよい。第2内部N層56の外周縁部は、第1装置領域21および第2装置領域22の間の境界において第1内部N層36の外周縁部と一体的に形成されていてもよい。
【0123】
図10を参照して、第2内部N層56は、第2半導体層15のn型不純物濃度を超えるn型不純物濃度を有している。図10では、第2内部N層56のn型不純物濃度勾配が、第1内部N層36のn型不純物濃度勾配と共に破線によって示されている。また、第2内部N層56は、濃度保持層18のp型不純物濃度を超えるn型不純物濃度を有している。
第2内部N層56のn型不純物濃度のピーク値は、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。第2内部N層56のn型不純物濃度のピーク値は、5×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であることが好ましい。第2内部N層56のn型不純物濃度は、第1pn接合部35の第1内部N層36のn型不純物濃度と等しいことが好ましい。
【0124】
第2pn接合部55は、第2内部N層56をカソードとし、第1半導体層14(具体的には濃度保持層18)をアノードとして有する第2ツェナーダイオードDZ2を形成している。第2ツェナーダイオードDZ2のアノードは、半導体チップ10(第1半導体層14)を介して第1pinダイオードD1のアノードおよび第2pinダイオードD2のアノードに逆バイアス接続されている。
【0125】
第1半導体層14が濃度保持層18を有さない場合、第2内部N層56は、濃度低下層17との間でpn接合を形成する。この場合、第2pn接合部55におけるpn濃度変化が急峻になるため、当該第2pn接合部55を起点に実際の耐圧(具体的にはブレークダウン電圧VB)が目標の耐圧から変動する可能性がある。このような問題は、濃度低下層17の厚さのバラツキ(たとえば±5%程度)に起因して顕在化する。
【0126】
そこで、ダイオードチップ1では、濃度低下層17の上に濃度保持層18を形成し、第2pn接合部55におけるpn濃度変化を緩慢にしている。これにより、第2pn接合部55を起点とする耐圧(具体的にはブレークダウン電圧VB)の変動を抑制できる。また、濃度低下層17の厚さにバラツキが生じたとしても、所定厚さの濃度保持層18が形成されているため、濃度低下層17の厚さバラツキに起因する耐圧の変動を適切に抑制できる。また、濃度保持層18の厚さにバラツキが生じたとしても、pn濃度変化が緩慢であるため、濃度保持層18の厚さバラツキに起因する耐圧の変動を適切に抑制できる。
【0127】
図2図9を参照して、ダイオードチップ1は、第2pn接合部55に逆バイアス接続されるように第2装置領域22の表層部に第2極性方向で形成された第2逆pin接合部58を含む。第2逆pin接合部58は、第2装置領域22の表層部において第2逆pinダイオードDR2を形成している。第2逆pin接合部58は、第2pn接合部55との間で第2ダイオード対57(第2整流器対)を形成している。
【0128】
第2逆pin接合部58は、平面視において第2pin接合部51から離間して第2装置領域22の表層部の一方側(第1側面13A側)の領域に形成されている。第2逆pin接合部58は、第2pin接合部51を第2方向Yに横切るラインを設定したとき、当該ライン上に配置されている。これにより、第2逆pin接合部58は、第2方向Yに第2pin接合部51に対向している。
【0129】
また、第2逆pin接合部58は、第1pin接合部31を第1方向Xに横切るラインを設定したとき、当該ライン上に位置している。これにより、第2逆pin接合部58は、第1方向Xに第1pin接合部31に対向している。第2逆pin接合部58は、第1主面11の中央部に対して第1逆pin接合部38と点対称となるレイアウトで形成されていることが好ましい。
【0130】
第2逆pin接合部58は、第2装置領域22の表層部から厚さ方向に向けてこの順に形成されたp型の第2逆P層59(第2上側逆半導体層)、n型の第2逆I層60(第2逆抵抗層)およびn型の第2逆N層61(第2下側逆半導体層)を含む。
第2逆P層59は、第2半導体層15の表層部に形成されている。第2逆P層59は、第2半導体層15のn型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有している。第2逆P層59のp型不純物濃度のピーク値は、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。第2逆P層59のp型不純物濃度のピーク値は、5×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であることが好ましい。第2逆P層59のp型不純物濃度は、第1逆pin接合部38の第1逆P層39のp型不純物濃度と等しいことが好ましい。
【0131】
第2逆P層59は、平面視において円形状(楕円形状を含む)に形成されている。第2逆P層59の平面形状は任意である。第2逆P層59は、多角形状(たとえば四角形状)に形成されていてもよい。
第2逆P層59は、第2平面積S2を有している。第2平面積S2は、1000μm以上10000μm以下であってもよい。第2平面積S2は、1000μm以上2000μm以下、2000μm以上4000μm以下、4000μm以上6000μm以下、6000μm以上8000μm以下、または、8000μm以上10000μm以下であってもよい。第2平面積S2は、第1逆P層39の第1平面積S1と等しいことが好ましい。
【0132】
第2逆I層60は、第2半導体層15を利用して形成されている。第2逆I層60は、第2半導体層15のn型不純物濃度と等しいn型不純物濃度を有している。第2逆I層60のn型不純物濃度のピーク値は、1×1013cm-3以上1×1015cm-3以下であってもよい。第2逆I層60のn型不純物濃度のピーク値は、5×1013cm-3以上5×1014cm-3以下であることが好ましい。
【0133】
第2逆N層61は、第1半導体層14(具体的には濃度保持層18)および第2半導体層15の境界部に形成されている。第2逆N層61は、第2pn接合部55の一部である第2内部N層56を利用して形成されている。したがって、第2逆N層61(第2内部N層56)は、第2逆I層60を挟んで第2逆N層61の全域に対向している。
第2逆P層59、第2逆I層60および第2逆N層61は、半導体チップ10の厚さ方向(つまり法線方向Z)に沿うpin接合を形成している。これにより、第2逆P層59をアノードとし、第2逆N層61をカソードとして有する第2逆pinダイオードDR2が形成されている。第2逆pinダイオードDR2のカソードは、第2ツェナーダイオードDZ2のカソードに接続されている。
【0134】
これにより、第2ツェナーダイオードDZ2、および、第2ツェナーダイオードDZ2に逆バイアス直列接続された第2逆pinダイオードDR2を含む第2ダイオード対57が形成されている。第2ダイオード対57は、半導体チップ10(第1半導体層14)を介して第2pinダイオードD2に並列接続されている。このようにして、第2pinダイオードD2および第2ダイオード対57を含む第2並列回路62が形成されている。第2並列回路62は、第1並列回路42との間でTVS回路63(Transient Voltage Suppressor circuit)を形成している。
【0135】
図2図9を参照して、ダイオードチップ1は、第2装置領域22に形成され、第2pin接合部51を第2pn接合部55および第2逆pin接合部58から区画する第2接合分離構造65を含む。
第2接合分離構造65は、第2接合分離トレンチ66(第2接合分離溝)、第2接合分離絶縁層67およびポリシリコン68を含む。第2接合分離トレンチ66は、この形態では、第2pin接合部51(第2P層54)および第2pn接合部55(第2内部N層56)の境界を両サイドから挟み込むように第2pin接合部51を取り囲むダブルトレンチ構造(二重溝構造)を有している。第2接合分離トレンチ66は、具体的には、第2内側トレンチ66Aおよび第2外側トレンチ66Bを含む。
【0136】
第2内側トレンチ66Aは、平面視において第2pin接合部51を取り囲む環状(この形態では円環状)に形成されている。第2内側トレンチ66Aの平面形状は任意である。第2内側トレンチ66Aは、多角環状(たとえば四角環状)や円環状(楕円環状を含む)に形成されていてもよい。
第2内側トレンチ66Aは、第1主面11を第2主面12に向けて掘り下げることによって形成されている。第2内側トレンチ66Aは、第2pin接合部51の第2P層54を貫通し、第1半導体層14(具体的には濃度低下層17)に至っている。
【0137】
第2内側トレンチ66Aは、内周壁、外周壁および底壁を含む。第2内側トレンチ66Aの内周壁は、第2P層54の内方部を露出させている。第2内側トレンチ66Aの外周壁は、第2P層54の周縁部を露出させている。これにより、第2内側トレンチ66Aは、第2P層54の周縁部を第2pin接合部51から電気的に分離している。
第2内側トレンチ66Aの内周壁および外周壁は、第1主面11に対して垂直に形成されていてもよい。第2内側トレンチ66Aの内周壁および外周壁は、第1主面11に対して傾斜していてもよい。この場合、第2内側トレンチ66Aは、底面積が開口面積未満の先細り形状に形成されていてもよい。
【0138】
第2内側トレンチ66Aの底壁は、高濃度層16に対して濃度低下層17側に位置している。第2内側トレンチ66Aの底壁は、濃度低下層17を露出させている。第2内側トレンチ66Aは、領域分離トレンチ24と同時に形成されていてもよい。この場合、第2内側トレンチ66Aは、領域分離トレンチ24と等しい幅および深さを有している。
第2外側トレンチ66Bは、平面視において第2内側トレンチ66Aから離間して第2内側トレンチ66Aを取り囲む環状(この形態では円環状)に形成されている。第2外側トレンチ66Bの平面形状は任意であり、必ずしも第2内側トレンチ66Aの平面形状に一致している必要はない。第2外側トレンチ66Bは、多角環状(たとえば四角環状)や円環状(楕円環状を含む)に形成されていてもよい。
【0139】
第2外側トレンチ66Bは、第1主面11を第2主面12に向けて掘り下げることによって形成されている。第2外側トレンチ66Bは、第2pn接合部55の第2内部N層56(第2逆N層61)を貫通し、第1半導体層14(具体的には濃度低下層17)に至っている。
第2外側トレンチ66Bは、内周壁、外周壁および底壁を含む。第2外側トレンチ66Bの内周壁は、第2内部N層56(第2逆N層61)の内周縁部を露出させている。第2外側トレンチ66Bの外周壁は、第2内部N層56(第2逆N層61)の内方部を露出させている。これにより、第2外側トレンチ66Bは、第2内部N層56(第2逆N層61)の内周縁部を第2pn接合部55および第2逆pin接合部58から電気的に分離している。
【0140】
第2外側トレンチ66Bの内周壁および外周壁は、第1主面11に対して垂直に形成されていてもよい。第2外側トレンチ66Bの内周壁および外周壁は、第1主面11に対して傾斜していてもよい。この場合、第2外側トレンチ66Bは、底面積が開口面積未満の先細り形状に形成されていてもよい。
第2外側トレンチ66Bの底壁は、高濃度層16に対して濃度低下層17側に位置している。第2外側トレンチ66Bの底壁は、濃度低下層17を露出させている。第2外側トレンチ66Bは、領域分離トレンチ24と同時に形成されていてもよい。この場合、第2外側トレンチ66Bは、領域分離トレンチ24と等しい幅および深さを有している。
【0141】
第2内側トレンチ66Aおよび第2外側トレンチ66Bの間のトレンチピッチは、1μm以上10μm以下であってもよい。トレンチピッチは、1μm以上2μm以下、2μm以上4μm以下、4μm以上6μm以下、6μm以上8μm以下、または、8μm以上10μm以下であってもよい。トレンチピッチは、3μm以上8μm以下であることが好ましい。
【0142】
第2内側トレンチ66Aおよび第2外側トレンチ66Bは、この形態では、1を超えるアスペクト比を有するディープトレンチによってそれぞれ形成されている。アスペクト比は、第2内側トレンチ66A(第2外側トレンチ66B)の幅に対する第2内側トレンチ66A(第2外側トレンチ66B)の深さによって定義される。アスペクト比は、5以上20以下であることが好ましい。
【0143】
第2内側トレンチ66A(第2外側トレンチ66B)の幅は、0.1μm以上3μm以下であってもよい。第2内側トレンチ66A(第2外側トレンチ66B)の幅は、0.1μm以上0.5μm以上、0.5μm以上1μm以下、1μm以上1.5μm以上、1.5μm以上2μm以下、2μm以上2.5μm以上、または、2.5μm以上3μm以下であってもよい。第2内側トレンチ66A(第2外側トレンチ66B)の幅は、1.5μm以上2.5μm以下であることが好ましい。
【0144】
第2内側トレンチ66A(第2外側トレンチ66B)の深さは、1μm以上50μm以下であってもよい。第2内側トレンチ66A(第2外側トレンチ66B)の深さは、1μm以上5μm以下、5μm以上10μm以下、10μm以上15μm以下、15μm以上20μm以下、20μm以上25μm以下、25μm以上30μm以下、30μm以上40μm以下、または、40μm以上50μm以下であってもよい。第2内側トレンチ66A(第2外側トレンチ66B)の深さは、15μm以上35μm以下であることが好ましい。
【0145】
このようにして、第2外側トレンチ66Bは、第2内側トレンチ66Aと共に第2pin接合部51(第2P層54)および第2pn接合部55(第2内部N層56)の境界を両サイドから挟み込むダブルトレンチ構造(二重溝構造)を形成している。
第2接合分離絶縁層67は、第2接合分離トレンチ66内に形成されている。第2接合分離絶縁層67は、具体的には、第2内側トレンチ66Aの内壁に沿って膜状に形成されている。これにより、第2接合分離絶縁層67は、第2内側トレンチ66A内においてリセス空間を区画している。また、第2接合分離絶縁層67は、第2外側トレンチ66Bの内壁に沿って膜状に形成されている。これにより、第2接合分離絶縁層67は、第2外側トレンチ66B内においてリセス空間を区画している。
【0146】
第2接合分離絶縁層67は、酸化シリコン層および窒化シリコン層のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。第2接合分離絶縁層67は、酸化シリコン層および窒化シリコン層が任意の順序で積層された積層構造を有していてもよい。第2接合分離絶縁層67は、酸化シリコン層または窒化シリコン層からなる単層構造を有していてもよい。第2接合分離絶縁層67は、領域分離絶縁層25と同一の絶縁材料からなることが好ましい。第2接合分離絶縁層67は、この形態では、酸化シリコン層からなる単層構造を有している。
【0147】
ポリシリコン68は、第2接合分離絶縁層67を挟んで第2接合分離トレンチ66に埋設されている。ポリシリコン68は、具体的には、第2接合分離絶縁層67を挟んで第2内側トレンチ66Aに埋設されている。また、ポリシリコン68は、第2接合分離絶縁層67を挟んで第2外側トレンチ66Bに埋設されている。
ポリシリコン68は、電気的に浮遊状態に形成されている。第2接合分離構造65は、ポリシリコン68を有さず、第2内側トレンチ66Aに一体物として埋設された第2接合分離絶縁層67を含んでいてもよい。また、第2接合分離構造65は、ポリシリコン68を有さず、第2外側トレンチ66Bに一体物として埋設された第2接合分離絶縁層67を含んでいてもよい。
【0148】
この形態では、第2接合分離トレンチ66が、第2pin接合部51および第2pn接合部55の境界を両サイドから挟み込むダブルトレンチ構造(二重溝構造)を有している例について説明した。しかし、第2接合分離トレンチ66は、第2pin接合部51および第2pn接合部55の境界を横切るシングルトレンチ構造(単一溝構造)を有していてもよい。この場合、第2接合分離トレンチ66は、第2内側トレンチ66Aおよび第2外側トレンチ66Bが一体化した構造となる。
【0149】
図2図9を参照して、ダイオードチップ1は、半導体チップ10の周縁部に形成されたシールド構造71を含む。シールド構造71は、側面13A~13Dから内方に間隔を空けて第1主面11に形成されている。シールド構造71は、平面視において側面13A~13Dに沿って帯状に延び、装置形成領域272、第1パッド領域273および第2パッド領域274を複数方向から区画している。シールド構造71は、具体的には、装置形成領域272、第1パッド領域273および第2パッド領域274を一括して取り囲む環状(この形態では四角環状)に形成されている。
【0150】
これにより、シールド構造71は、半導体チップ10を内方領域72、および、内方領域72外の外側領域73に区画している。内方領域72は、装置形成領域272、第1パッド領域273および第2パッド領域274を含む。シールド構造71は、外側領域73に加えられた外力や、外側領域73に生じたクラック等から内方領域72を保護する。
シールド構造71は、半導体チップ10とは異なる材料からなり、第1主面11から第2主面12に向けて壁状に延びている。シールド構造71は、具体的には、シールドトレンチ74、シールド絶縁層75およびポリシリコン76を含むトレンチ絶縁構造を有している。
【0151】
シールドトレンチ74は、第1主面11を第2主面12に向けて掘り下げることによって形成されている。シールドトレンチ74は、第2半導体層15を貫通し、第1半導体層14に至っている。シールドトレンチ74は、具体的には、第2半導体層15および濃度保持層18を貫通し、濃度低下層17に至っている。
シールドトレンチ74は、側壁および底壁を含む。シールドトレンチ74の側壁は、第1主面11に対して垂直に形成されていてもよい。シールドトレンチ74の側壁は、第1主面11に対して傾斜していてもよい。この場合、シールドトレンチ74は、底面積が開口面積未満の先細り形状に形成されていてもよい。
【0152】
シールドトレンチ74の底壁は、高濃度層16に対して濃度低下層17側に位置している。これにより、シールドトレンチ74の側壁は、第2半導体層15、濃度保持層18および濃度低下層17を露出させている。また、シールドトレンチ74の底壁は、濃度低下層17を露出させている。シールドトレンチ74は、領域分離トレンチ24と同時に形成されていてもよい。この場合、シールドトレンチ74は、領域分離トレンチ24と等しい幅および深さを有している。
【0153】
シールドトレンチ74は、この形態では、1を超えるアスペクト比を有するディープトレンチによって形成されている。アスペクト比は、シールドトレンチ74の幅に対するシールドトレンチ74の深さによって定義される。アスペクト比は、5以上20以下であることが好ましい。
シールドトレンチ74の幅は、0.1μm以上3μm以下であってもよい。シールドトレンチ74の幅は、0.1μm以上0.5μm以上、0.5μm以上1μm以下、1μm以上1.5μm以上、1.5μm以上2μm以下、2μm以上2.5μm以上、または、2.5μm以上3μm以下であってもよい。シールドトレンチ74の幅は、1.5μm以上2.5μm以下であることが好ましい。
【0154】
シールドトレンチ74の深さは、1μm以上50μm以下であってもよい。シールドトレンチ74の深さは、1μm以上5μm以下、5μm以上10μm以下、10μm以上15μm以下、15μm以上20μm以下、20μm以上25μm以下、25μm以上30μm以下、30μm以上40μm以下、または、40μm以上50μm以下であってもよい。シールドトレンチ74の深さは、15μm以上35μm以下であることが好ましい。
【0155】
シールド絶縁層75は、シールドトレンチ74内に形成されている。シールド絶縁層75は、具体的には、シールドトレンチ74の内壁に沿って膜状に形成されている。これにより、シールド絶縁層75は、シールドトレンチ74内においてリセス空間を区画している。
シールド絶縁層75は、酸化シリコン層および窒化シリコン層のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。シールド絶縁層75は、酸化シリコン層および窒化シリコン層が任意の順序で積層された積層構造を有していてもよい。シールド絶縁層75は、酸化シリコン層または窒化シリコン層からなる単層構造を有していてもよい。シールド絶縁層75は、領域分離絶縁層25と同一の絶縁材料からなることが好ましい。シールド絶縁層75は、この形態では、酸化シリコン層からなる単層構造を有している。
【0156】
ポリシリコン76は、シールド絶縁層75を挟んでシールドトレンチ74に埋設されている。ポリシリコン76は、電気的に浮遊状態に形成されている。シールド構造71は、ポリシリコン76を有さず、シールドトレンチ74に一体物として埋設されたシールド絶縁層75を含んでいてもよい。
図2図9を参照して、ダイオードチップ1は、第1主面11の周縁において第1主面11の表層部に形成されたp型の外側不純物層80を含む。外側不純物層80は、半導体チップ10の周縁における第1半導体層14および第2半導体層15の間のリーク電流を抑制する。
【0157】
外側不純物層80は、シールド構造71および側面13A~13Dの間の領域(つまり外側領域73)に形成されている。外側不純物層80は、シールド構造71から側面13A~13D側に間隔を空けて形成されている。外側不純物層80は、側面13A~13Dから露出している。外側不純物層80は、シールド構造71を被覆していてもよい。
外側不純物層80は、平面視において側面13A~13Dに沿って帯状に延びている。外側不純物層80は、具体的には、側面13A~13Dに沿って延びる環状(この形態では四角環状)に形成されている。
【0158】
外側不純物層80は、第2半導体層15のp型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有している。外側不純物層80のp型不純物濃度のピーク値は、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。外側不純物層80のp型不純物濃度のピーク値は、5×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であることが好ましい。
外側不純物層80は、第1半導体層14および第2半導体層15の境界を横切るように第1主面11の表層部に形成されている。外側不純物層80は、具体的には、第1主面11から厚さ方向に向けてこの順に形成された上側領域81および下側領域82を含む。上側領域81は、第2半導体層15の表層部に形成されている。上側領域81のp型不純物濃度は、第2半導体層15のn型不純物濃度を超えている。上側領域81は、第1主面11側から第2主面12側に向けてp型不純物濃度が漸減する濃度勾配を有している。
【0159】
下側領域82は、上側領域81に接続されるように第1半導体層14(具体的には濃度保持層18)および第2半導体層15の境界部に形成されている。下側領域82は、上側領域81とは異なるp型不純物濃度(濃度勾配)を有している。下側領域82は、具体的には、第2主面12側から第1主面11側に向けてp型不純物濃度が漸増した後、漸減する濃度勾配を有している。下側領域82のp型不純物濃度は、第1pin接合部31の第1P層34(第2pin接合部51の第2P層54)のp型不純物濃度と等しいことが好ましい。
【0160】
図2図9を参照して、ダイオードチップ1(チップ本体2)は、第1主面11を被覆する中間絶縁層91を含む。中間絶縁層91は、半導体チップ10の側面13A~13Dから露出する周縁部を有している。中間絶縁層91の周縁部は、側面13A~13Dに連なっている。中間絶縁層91の周縁部は、具体的には、側面13A~13Dに対して面一に形成されている。
【0161】
中間絶縁層91は、複数の絶縁層が積層された積層構造を有していてもよいし、単一の絶縁層からなる単層構造を有していてもよい。中間絶縁層91は、酸化シリコン層および窒化シリコン層のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。中間絶縁層91は、酸化シリコン層および窒化シリコン層が任意の順序で積層された積層構造を有していてもよい。中間絶縁層91は、酸化シリコン層または窒化シリコン層からなる単層構造を有していてもよい。
【0162】
中間絶縁層91は、この形態では、第1主面11側からこの順に積層された第1酸化シリコン層、窒化シリコン層および第2酸化シリコン層を含むONO(Oxide-Nitride-Oxide)積層構造を有している。中間絶縁層91は、その全域においてONO積層構造を有している必要はない。中間絶縁層91は、たとえば、第1パッド領域273および第2パッド領域274を被覆する部分においてONO積層構造を有し、それら以外の領域を被覆する部分においてONO積層構造とは異なる絶縁層を有していてもよい。
【0163】
第1酸化シリコン層は、複数の酸化シリコン層が積層された積層構造を有していてもよいし、単一の酸化シリコン層からなる単層構造を有していてもよい。第1酸化シリコン層は、酸化シリコン層の一例としてのUSG(Undoped Silica Glass)層、PSG(Phosphor Silicate Glass)層およびBPSG(Boron Phosphor Silicate Glass)層のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。第1酸化シリコン層は、この形態では、単一の酸化シリコン層からなる単層構造を有している。
【0164】
第2酸化シリコン層は、複数の酸化シリコン層が積層された積層構造を有していてもよいし、単一の酸化シリコン層からなる単層構造を有していてもよい。第2酸化シリコン層は、酸化シリコン層の一例としてのUSG層、PSG層およびBPSG層のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。第2酸化シリコン層は、この形態では、窒化シリコン層側からこの順に積層されたUSG層およびBPSG層を含む積層構造を有している。
【0165】
中間絶縁層91の厚さ(総厚さ)は、1μm以上10μm以下であってもよい。中間絶縁層91の厚さ(総厚さ)は、1μm以上2μm以下、2μm以上4μm以下、4μm以上6μm以下、6μm以上8μm以下、または、8μm以上10μm以下であってもよい。中間絶縁層91の厚さ(総厚さ)は、4μm以上5μm以下であることが好ましい。
中間絶縁層91は、第1pin開口92、第1逆pin開口93、第2pin開口94および第2逆pin開口95を含む。第1pin開口92は、第1装置領域21において第1pin接合部31を露出させている。第1逆pin開口93は、第1装置領域21において第1逆pin接合部38を露出させている。第2pin開口94は、第2装置領域22において第2pin接合部51を露出させている。第2逆pin開口95は、第2装置領域22において第2逆pin接合部58を露出させている。
【0166】
第1pin開口92、第1逆pin開口93、第2pin開口94および第2逆pin開口95は、平面視において円形状(楕円形状を含む)に形成されている。第1pin開口92、第1逆pin開口93、第2pin開口94および第2逆pin開口95の平面形状は任意である。第1pin開口92、第1逆pin開口93、第2pin開口94および第2逆pin開口95は、平面視において多角形状(たとえば四角形状)に形成されていてもよい。
【0167】
図2図9(特に図9)を参照して、ダイオードチップ1は、第1装置領域21において中間絶縁層91を貫通して第1pin接合部31および第1ダイオード対37に電気的に接続された第1電極層101(第1電極)を含む。第1電極層101は、第1pin接合部31および第1ダイオード対37を並列接続させている。第1電極層101は、中間絶縁層91の上に膜状に形成されている。第1電極層101は、第1パッド部101Aおよび第1配線部101Bを含む。
【0168】
第1パッド部101Aは、平面視において第1装置領域21および第2装置領域22から離間して第1パッド領域273の上に形成されている。第1パッド部101Aは、この形態では、平面視において第1装置領域21および第2装置領域22に重ならない領域に形成されている。第1パッド部101Aは、平面視において第1装置領域21の一部および第2装置領域22の一部に重なっていてもよい。
【0169】
第1パッド部101Aは、中間絶縁層91を挟んで第1パッド分離構造275によって取り囲まれた領域(具体的には第2半導体層15)に対向している。第1パッド部101Aは、中間絶縁層91を挟んで第1パッド分離構造275を被覆していてもよい。この場合、第1パッド部101Aは、第1パッド分離構造275によって取り囲まれた領域の全域を被覆していてもよい。第1パッド部101Aは、平面視において第1方向Xに延びる長方形状に形成されている。第1パッド部101Aの平面形状は任意である。
【0170】
第1配線部101Bは、第1パッド部101Aから第1装置領域21に向けて帯状に引き出されている。第1配線部101Bの第1方向Xの幅は、第1パッド部101Aの第1方向Xの幅未満である。第1配線部101Bの第1方向Xの幅は任意である。第1配線部101Bの第1方向Xの幅を小さくすることによって、寄生容量を抑制できる。
第1配線部101Bは、中間絶縁層91の上から第1pin開口92および第1逆pin開口93に入り込んでいる。第1配線部101Bは、第1pin開口92内において第1pin接合部31に電気的に接続されている。第1配線部101Bは、第1pin接合部31(具体的には第1N層32)との間でオーミック接触を形成している。
【0171】
第1配線部101Bは、第1逆pin開口93内において第1逆pin接合部38に電気的に接続されている。第1配線部101Bは、第1逆pin接合部38(具体的には第1逆P層39)との間でオーミック接触を形成している。このようにして、第1電極層101は、第1装置領域21において第1pin接合部31および第1ダイオード対37を並列接続させている。
【0172】
第1電極層101は、純Cu層(純度が99%以上のCu層)、純Al層(純度が99%以上のAl層)、AlSi合金層、AlCu合金層およびAlSiCu合金層のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。
図2図9(特に図9)を参照して、ダイオードチップ1は、第2装置領域22において中間絶縁層91を貫通して第2pin接合部51および第2ダイオード対57に電気的に接続された第2電極層102(第2電極)を含む。第2電極層102は、第2pin接合部51および第2ダイオード対57を並列接続させている。第2電極層102は、第1電極層101から離間して中間絶縁層91の上に膜状に形成されている。第2電極層102は、第2パッド部102Aおよび第2配線部102Bを含む。
【0173】
第2パッド部102Aは、平面視において第1装置領域21および第2装置領域22から離間して第2パッド領域274の上に形成されている。第2パッド部102Aは、この形態では、平面視において第1装置領域21および第2装置領域22に重ならない領域に形成されている。第2パッド部102Aは、平面視において第1装置領域21の一部および第2装置領域22の一部に重なっていてもよい。
【0174】
第2パッド部102Aは、中間絶縁層91を挟んで第2パッド分離構造276によって取り囲まれた領域(具体的には第2半導体層15)に対向している。第2パッド部102Aは、中間絶縁層91を挟んで第2パッド分離構造276を被覆していてもよい。この場合、第2パッド部102Aは、第2パッド分離構造276によって取り囲まれた領域の全域を被覆していてもよい。第2パッド部102Aは、平面視において第1方向Xに延びる長方形状に形成されている。第2パッド部102Aの平面形状は任意である。
【0175】
第2配線部102Bは、第2パッド部102Aから第2装置領域22に向けて帯状に引き出されている。第2配線部102Bは、第1配線部101Bから第1方向Xに間隔を空けて形成され、かつ、第1配線部101Bに対して平行に延びている。第2配線部102Bの第1方向Xの幅は、第2パッド部102Aの第1方向Xの幅未満である。第2配線部102Bの第1方向Xの幅は任意である。第2配線部102Bの第1方向Xの幅は、第1配線部101Bの第1方向Xの幅と等しいことが好ましい。第2配線部102Bの第1方向Xの幅を小さくすることによって、寄生容量を抑制できる。
【0176】
第2配線部102Bは、中間絶縁層91の上から第2pin開口94および第2逆pin開口95に入り込んでいる。第2配線部102Bは、第2pin開口94内において第2pin接合部51に電気的に接続されている。第2配線部102Bは、第2pin接合部51(具体的には第2N層52)との間でオーミック接触を形成している。
第2配線部102Bは、第2逆pin開口95内において第2逆pin接合部58に電気的に接続されている。第2配線部102Bは、第2逆pin接合部58(具体的には第2逆P層59)との間でオーミック接触を形成している。このようにして、第2電極層102は、第2装置領域22において第2pin接合部51および第2ダイオード対57を並列接続させている。
【0177】
第2電極層102は、純Cu層(純度が99%以上のCu層)、純Al層(純度が99%以上のAl層)、AlSi合金層、AlCu合金層およびAlSiCu合金層のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。第2電極層102は、第1電極層101の導電材料と同一の導電材料を含むことが好ましい。
図2図9を参照して、第1電極層101(第1パッド部101A)は、第1パッド領域273(具体的には第2半導体層15)との間で第1外部寄生容量CO1を形成している。第1外部寄生容量CO1は、第2半導体層15を介して第1内部寄生容量C1に直列接続されている。半導体チップ10(第1パッド領域273)において第1パッド分離構造275によって区画された領域は、第1内部寄生容量C1および第1外部寄生容量CO1を含む直列回路によって専有されている。
【0178】
第2電極層102(第2パッド部102A)は、第2パッド領域274(具体的には第2半導体層15)との間で第2外部寄生容量CO2を形成している。第2外部寄生容量CO2は、第2半導体層15を介して第2内部寄生容量C2に直列接続されている。半導体チップ10(第2パッド領域274)において第2パッド分離構造276によって区画された領域は、第2内部寄生容量C2および第2外部寄生容量CO2を含む直列回路によって専有されている。
【0179】
これにより、第1内部寄生容量C1、第2内部寄生容量C2、第1外部寄生容量CO1および第2外部寄生容量CO2の直列回路からなる寄生容量回路283が、第1電極層101および第2電極層102の間に形成されている。
第2外部寄生容量CO2は、第1外部寄生容量CO1と等しいことが好ましい。つまり、第1電極層101(第1パッド部101A)は、平面視において中間絶縁層91の上に第1電極面積で形成され、第2電極層102(第2パッド部102A)は、平面視において中間絶縁層91の上に第1電極面積と等しい第2電極面積で形成されていることが好ましい。
【0180】
図1図7を参照して、ダイオードチップ1(チップ本体2)は、中間絶縁層91を被覆する最上絶縁層111を含む。最上絶縁層111は、中間絶縁層91の上において第1電極層101および第2電極層102を被覆している。最上絶縁層111は、半導体チップ10の側面13A~13Dから露出する周縁部を有している。最上絶縁層111の周縁部は、側面13A~13Dに連なっている。最上絶縁層111の周縁部は、具体的には、側面13A~13Dに対して面一に形成されている。最上絶縁層111は、チップ本体2のチップ側面5A~5Dの一部を形成している。
【0181】
最上絶縁層111は、この形態では、パッシベーション層112および樹脂層113を含む積層構造を有している。パッシベーション層112は、酸化シリコン層または窒化シリコン層を含む単層構造を有していてもよい。パッシベーション層112は、任意の順で積層された酸化シリコン層および窒化シリコン層を含む積層構造を有していてもよい。パッシベーション層112は、中間絶縁層91の主面を形成する部分とは異なる絶縁材料からなることが好ましい。パッシベーション層112は、この形態では、窒化シリコン層からなる単層構造を有している。
【0182】
樹脂層113は、感光性樹脂を含んでいてもよい。感光性樹脂は、ネガティブタイプまたはポジティブタイプであってもよい。樹脂層113は、感光性樹脂の一例としてのポリイミド、ポリアミドおよびポリベンゾオキサゾールのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。樹脂層113は、この形態では、ポリイミドを含む。
最上絶縁層111は、第1電極層101を露出させる第1パッド開口114、および、第2電極層102を露出させる第2パッド開口115を含む。
【0183】
第1パッド開口114は、第1電極層101の第1パッド部101Aを露出させている。第1パッド開口114は、第1パッド部101Aの縁部を除く第1パッド部101Aの内方部を露出させている。第1パッド開口114は、平面視において第1パッド部101Aに整合する四角形状(具体的には長方形状)に形成されている。第1パッド開口114の平面形状は任意である。
【0184】
第2パッド開口115は、第2電極層102の第2パッド部102Aを露出させている。第2パッド開口115は、第2パッド部102Aの縁部を除く第2パッド部102Aの内方部を露出させている。第2パッド開口115は、平面視において第2パッド部102Aに整合する四角形状(具体的には長方形状)に形成されている。第2パッド開口115の平面形状は任意である。
【0185】
図1図7を参照して、ダイオードチップ1(チップ本体2)は、第1電極層101に電気的に接続された第1端子電極121を含む。第1端子電極121は、最上絶縁層111を貫通して第1電極層101に接続されている。第1端子電極121は、具体的には、第1パッド開口114に埋設され、第1パッド開口114内において第1パッド部101Aに電気的に接続されている。
【0186】
第1端子電極121は、平面視において第1装置領域21および第2装置領域22から離間して第1パッド領域273の上に形成されている。第1端子電極121は、この形態では、平面視において第1装置領域21および第2装置領域22に重ならない領域に形成されている。第1端子電極121は、平面視において第1装置領域21の一部および第2装置領域22の一部に重なっていてもよい。第1端子電極121は、第1方向Xに沿って延びる長方形状に形成されている。第1端子電極121の平面形状は任意である。
【0187】
第1端子電極121は、樹脂層113の主面(第1チップ主面3)から露出する第1電極面121Aを有している。第1電極面121Aは、樹脂層113の主面(第1チップ主面3)から離間するように突出している。第1電極面121Aは、樹脂層113の主面(第1チップ主面3)を被覆するオーバラップ部を有している。第1端子電極121は、第1電極層101側からこの順に積層されたNi層、Pd層およびAu層を含む積層構造を有していてもよい。
【0188】
図1図7を参照して、ダイオードチップ1(チップ本体2)は、第2電極層102に電気的に接続された第2端子電極122を含む。第2端子電極122は、最上絶縁層111を貫通して第2電極層102に接続されている。第2端子電極122は、具体的には、第2パッド開口115に埋設され、第2パッド開口115内において第2パッド部102Aに電気的に接続されている。
【0189】
第2端子電極122は、平面視において第1装置領域21および第2装置領域22から離間して第2パッド領域274の上に形成されている。第2端子電極122は、この形態では、平面視において第1装置領域21および第2装置領域22に重ならない領域に形成されている。第2端子電極122は、平面視において第1装置領域21の一部および第2装置領域22の一部に重なっていてもよい。第2端子電極122は、第1方向Xに沿って延びる長方形状に形成されている。第2端子電極122の平面形状は任意である。
【0190】
第2端子電極122は、樹脂層113の主面(第1チップ主面3)から露出する第2電極面122Aを有している。第2電極面122Aは、樹脂層113の主面(第1チップ主面3)から離間するように突出している。第2電極面122Aは、樹脂層113の主面(第1チップ主面3)を被覆するオーバラップ部を有している。第2端子電極122は、第2電極層102側からこの順に積層されたNi層、Pd層およびAu層を含む積層構造を有していてもよい。
【0191】
図1図9を参照して、ダイオードチップ1(チップ本体2)は、半導体チップ10の側面13A~13Dを被覆する側面絶縁層131を含む。側面絶縁層131は、側面13A~13Dを一括して被覆している。側面絶縁層131は、チップ本体2のチップ側面5A~5Dを形成している。側面絶縁層131は、半導体チップ10の絶縁性を高めると同時に、半導体チップ10を保護する。
【0192】
側面絶縁層131は、側面13A~13Dに沿って膜状に形成されている。側面絶縁層131は、平坦な外面を有している。側面絶縁層131の外面は、側面13A~13Dに対して平行に延びている。側面絶縁層131は、中間絶縁層91の一部を被覆していてもよい。側面絶縁層131は、さらに、中間絶縁層91を横切って最上絶縁層111の一部を被覆していてもよい。この場合、側面絶縁層131は、パッシベーション層112の一部を被覆していてもよいし、樹脂層113の一部を被覆していてもよい。
【0193】
側面絶縁層131は、半導体チップ10の第2主面12を露出させている。側面絶縁層131は、第2主面12に連なっている。側面絶縁層131は、具体的には、第2主面12に対して面一に形成されている。側面絶縁層131は、さらに具体的には、第2主面12との間で一つの研削面または鏡面を形成している。
側面絶縁層131は、酸化シリコン層または窒化シリコン層を含む単層構造を有していてもよい。側面絶縁層131は、任意の順で積層された酸化シリコン層および窒化シリコン層を含む積層構造を有していてもよい。側面絶縁層131は、この形態では、酸化シリコン層からなる単層構造を有している。
【0194】
図11は、図1のダイオードチップ1の電気回路図である。図11を参照して、ダイオードチップ1は、第1端子電極121、第2端子電極122およびTVS回路63を含む。TVS回路63は、第1並列回路42および第2並列回路62が直列接続された直列回路からなり、第1端子電極121および第2端子電極122に電気的に接続されている。
第1並列回路42は、第1pinダイオードD1および第1ダイオード対37を含む。第1ダイオード対37は、第1逆pinダイオードDR1および第1ツェナーダイオードDZ1を含む。第1pinダイオードD1のカソードは、第1端子電極121に電気的に接続されている。
【0195】
第1ダイオード対37は、第1逆pinダイオードDR1のカソードが第1ツェナーダイオードDZ1のカソードに逆バイアス接続された逆直列回路からなる。第1逆pinダイオードDR1のアノードは、第1端子電極121に電気的に接続されている。第1ツェナーダイオードDZ1のアノードは、第1pinダイオードD1のアノードに逆バイアス接続されている。
【0196】
第2並列回路62は、第2pinダイオードD2および第2ダイオード対57を含む。第2ダイオード対57は、第2逆pinダイオードDR2および第2ツェナーダイオードDZ2を含む。第2pinダイオードD2のカソードは、第2端子電極122に電気的に接続されている。第2pinダイオードD2のアノードは、第1pinダイオードD1のアノードおよび第1ツェナーダイオードDZ1のアノードに逆バイアス接続されている。
【0197】
第2ダイオード対57は、第2逆pinダイオードDR2のカソードが第2ツェナーダイオードDZ2のカソードに逆バイアス接続された逆直列回路からなる。第2逆pinダイオードDR2のアノードは、第2端子電極122に電気的に接続されている。第2ツェナーダイオードDZ2のアノードは、第1pinダイオードD1のアノード、第1ツェナーダイオードDZ1のアノードおよび第2pinダイオードD2のアノードに逆バイアス接続されている。
【0198】
ダイオードチップ1は、第1端子電極121および第2端子電極122の双方向に電流を流すことができる双方向デバイスである。すなわち、第1端子電極121および第2端子電極122の間に第1端子電極121を正とする所定の閾値電圧以上の電圧が印加されると、第1端子電極121から第1ダイオード対37および第2pinダイオードD2を介して第2端子電極122に電流が流れる。
【0199】
一方、第1端子電極121および第2端子電極122の間に第2端子電極122を正とする所定の閾値電圧以上の電圧が印加されると、第2端子電極122から第2ダイオード対57および第1pinダイオードD1を介して第1端子電極121に電流が流れる。
第1pin接合部31、第1pn接合部35および第1逆pin接合部38のレイアウトに対する第2pin接合部51、第2pn接合部55および第2逆pin接合部58のレイアウトの対称性を高めることにより、双方向デバイスとしての電気的特性を向上できる。つまり、第1端子電極121から第2端子電極122に向けて電流が流れた場合の電気的特性が、第2端子電極122から第1端子電極121に向けて電流が流れた場合の電気的特性と等しくなる。
【0200】
図12は、図1のダイオードチップ1の寄生容量を示す電気回路図である。図12を参照して、ダイオードチップ1は、第1端子電極121、第2端子電極122、および、寄生容量回路283を含む。
寄生容量回路283は、第1内部寄生容量C1、第2内部寄生容量C2、第1外部寄生容量CO1および第2外部寄生容量CO2からなる直列回路を含み、第1端子電極121および第2端子電極122に電気的に接続されている。第1パッド領域273側の合成容量CP1は、下記式(1)によって表される。また、第2パッド領域274側の合成容量CP2は、下記式(2)によって表される。
【0201】
【数1】
【0202】
【数2】
【0203】
第1パッド分離構造275および第2パッド分離構造276を取り除いた場合、第2外部寄生容量CO2が第2半導体層15を介して第1外部寄生容量CO1に接続される。その結果、第1内部寄生容量C1および第2内部寄生容量C2が消滅し、第1外部寄生容量CO1および第2外部寄生容量CO2の直列回路からなる寄生容量回路283が第1端子電極121および第2端子電極122の間に形成される。この場合、第1パッド領域273側の合成容量CP1*および第2パッド領域274側の合成容量CP2*は、下記式(3)および下記式(4)によって表される。
【0204】
【数3】
【0205】
【数4】
【0206】
式(1)および式(3)を参照して、合成容量CP1は、合成容量CP1*未満である。また、式(2)および式(4)を参照して、合成容量CP2は、合成容量CP2*未満である。したがって、ダイオードチップ1によれば、第1パッド分離構造275および第2パッド分離構造276によって寄生容量を抑制できるから、端子間容量CTを低減できる。
【0207】
図13は、図1のダイオードチップ1の端子間容量CTを示すグラフである。縦軸は端子間容量CT[pF]を示し、横軸は第1逆P層39の第1平面積S1[μm]を示している。ダイオードチップ1は、双方向デバイスであるので、横軸を第2逆P層59の第2平面積S2[μm]としても同様のことが言える。
図13には、ダイオードチップ1の端子間容量CTを示す容量特性L1が示されている。容量特性L1を参照して、端子間容量CTは、第1平面積S1の増加に比例して増加し、第1平面積S1の減少に比例して減少した。第1平面積S1が1000μm以上10000μm以下の範囲に位置する場合、端子間容量CTは0.15pF以上0.35pF以下となった。
【0208】
図14は、図1のダイオードチップ1の最大電流能力IPPを示すグラフである。縦軸は最大電流能力IPP[A]を示し、横軸は第1逆P層39の第1平面積S1[μm]を示している。ダイオードチップ1は、双方向デバイスであるので、横軸を第2逆P層59の第2平面積S2[μm]としても同様のことが言える。
図14には、ダイオードチップ1の最大電流能力IPPを示す電流特性L2が示されている。電流特性L2を参照して、最大電流能力IPPは、第1平面積S1の増加に比例して増加し、第1平面積S1の減少に比例して減少した。第1平面積S1が1000μm以上10000μm以下の範囲に位置する場合、最大電流能力IPPは2A以上5A以下となった。
【0209】
図15は、図1のダイオードチップ1のクランプ電圧VCLを示すグラフである。縦軸はクランプ電圧VCL[V]を示し、横軸は第1逆P層39の第1平面積S1[μm]を示している。ダイオードチップ1は、双方向デバイスであるので、横軸を第2逆P層59の第2平面積S2[μm]としても同様のことが言える。
図15には、ダイオードチップ1のクランプ電圧VCLを示す電圧特性L3が示されている。電圧特性L3を参照して、クランプ電圧VCLは、第1平面積S1の増加に比例して減少し、第1平面積S1の減少に比例して増加した。第1平面積S1が1000μm以上10000μm以下の範囲に位置する場合、クランプ電圧VCLは23V以上27V以下となった。
【0210】
図13図15を参照して、端子間容量CT、最大電流能力IPPおよびクランプ電圧VCLは、トレードオフの関係を有していることが分かった。ダイオードチップ1では、低い端子間容量CT、高い最大電流能力IPPおよび低いクランプ電圧VCLが求められる。
第1逆pin接合部38(第1逆P層39)の第1平面積S1を小さくすることによって、低い端子間容量CTが実現されるが、高い最大電流能力IPPおよび低いクランプ電圧VCLは実現されない。一方で、第1逆pin接合部38(第1逆P層39)の第1平面積S1を大きくすることによって、高い最大電流能力IPPおよび低いクランプ電圧VCLが実現されるが、低い端子間容量CTは実現されない。
【0211】
したがって、第1逆pin接合部38(第1逆P層39)の第1平面積S1は、達成すべき端子間容量CT、最大電流能力IPPおよびクランプ電圧VCLに応じて適切な値に調整される必要がある。別の見方をすれば、第1逆pin接合部38(第1逆P層39)の第1平面積S1を調整することによって、端子間容量CT、最大電流能力IPPおよびクランプ電圧VCLを調整できるため、種々の電気的特性を有するダイオードチップ1を容易に提供できる。
【0212】
以上、ダイオードチップ1は、第1パッド領域273の一部を他の領域から区画し、第1半導体層14および第2半導体層15の間に第1内部寄生容量C1を形成する第1パッド分離構造275を含む。また、ダイオードチップ1は、中間絶縁層91を挟んで第1パッド分離構造275によって取り囲まれた領域に対向し、第1外部寄生容量CO1を形成する第1電極層101を含む。第1外部寄生容量CO1は、第1内部寄生容量C1との間で直列回路を形成している。これにより、第1パッド領域273側の合成容量CP1を低減できる。
【0213】
また、ダイオードチップ1は、第2パッド領域274の一部を他の領域から区画し、第1半導体層14および第2半導体層15の間に第2内部寄生容量C2を形成する第2パッド分離構造276を含む。また、ダイオードチップ1は、中間絶縁層91を挟んで第2パッド分離構造276によって取り囲まれた領域に対向し、第2外部寄生容量CO2を形成する第2電極層102を含む。第2外部寄生容量CO2は、第2内部寄生容量C2との間で直列回路を形成している。これにより、第2パッド領域274側の合成容量CP2を低減できる。よって、ダイオードチップ1によれば、第1パッド分離構造275および第2パッド分離構造276を有さない場合に比べて、端子間容量CTを低減できる。
【0214】
また、ダイオードチップ1によれば、第1パッド分離トレンチ277が2つのトレンチ(第1内側パッドトレンチ277Aおよび第1外側パッドトレンチ277B)を含むダブルトレンチ構造を有している。ダブルトレンチ構造を有する第1パッド分離トレンチ277によれば、半導体チップ10において第1パッド分離トレンチ277を挟んで対向する領域に形成される寄生容量を適切に抑制できる。
【0215】
また、ダイオードチップ1によれば、第2パッド分離トレンチ280が2つのトレンチ(第2内側パッドトレンチ280Aおよび第2外側パッドトレンチ280B)を含むダブルトレンチ構造を有している。ダブルトレンチ構造を有する第2パッド分離トレンチ280によれば、半導体チップ10において第2パッド分離トレンチ280を挟んで対向する領域に形成される寄生容量を適切に抑制できる。
【0216】
また、ダイオードチップ1によれば、半導体チップ10が領域分離構造23によって第1装置領域21および第2装置領域22に区画されている。これにより、第1pin接合部31、第1pn接合部35および第1逆pin接合部38を第1装置領域21の表層部および内部に適切に作り込むことができる。また、第2pin接合部51、第2pn接合部55および第2逆pin接合部58を第2装置領域22の表層部および内部に適切に作り込むことができる。よって、優れた電気的特性を実現できる。
【0217】
特に、ダイオードチップ1によれば、領域分離構造23が領域分離トレンチ24を含むトレンチ構造を有している。これにより、第1装置領域21において第1pin接合部31、第1pn接合部35および第1逆pin接合部38の不所望な拡散を領域分離構造23によって適切に抑制できる。また、第2装置領域22において第2pin接合部51、第2pn接合部55および第2逆pin接合部58の不所望な拡散を領域分離構造23によって適切に抑制できる。よって、電気的特性を適切に向上できる。
【0218】
また、ダイオードチップ1は、第1装置領域21において第1pin接合部31を第1pn接合部35および第1逆pin接合部38から区画する第1接合分離構造45を含む。これにより、第1pin接合部31を第1装置領域21の表層部に適切に作りこむことができる。
特に、第1接合分離構造45は、第1接合分離トレンチ46を含むトレンチ構造を有している。これにより、第1装置領域21において第1pin接合部31の不所望な拡散を第1接合分離構造45によって適切に抑制できる。
【0219】
さらに、第1接合分離トレンチ46は、第1装置領域21において第1pin接合部31(第1P層34)および第1pn接合部35(第1内部N層36)の境界を両サイドから挟み込むダブルトレンチ構造(二重溝構造)を有している。第1接合分離トレンチ46は、具体的には、第1pin接合部31および第1pn接合部35の境界を両サイドから挟み込む第1内側トレンチ46Aおよび第1外側トレンチ46Bを含む。
【0220】
このような構造によれば、第1pin接合部31および第1pn接合部35(第1逆pin接合部38)の相互間における不純物の不所望な拡散を適切に抑制できる。これにより、第1装置領域21において第1pin接合部31、第1pn接合部35および第1逆pin接合部38を適切に形成できる。
また、ダイオードチップ1は、第2装置領域22において第2pin接合部51を第2pn接合部55および第2逆pin接合部58から区画する第2接合分離構造65を含む。これにより、第2pin接合部51を第2装置領域22の表層部に適切に作りこむことができる。
【0221】
特に、第2接合分離構造65は、第2接合分離トレンチ66を含むトレンチ構造を有している。これにより、第2装置領域22において第2pin接合部51の不所望な拡散を第2接合分離構造65によって適切に抑制できる。
さらに、第2接合分離トレンチ66は、第2装置領域22において第2pin接合部51(第2P層54)および第2pn接合部55(第2内部N層56)の境界を両サイドから挟み込むダブルトレンチ構造(二重溝構造)を有している。第2接合分離トレンチ66は、具体的には、第2pin接合部51および第2pn接合部55の境界を両サイドから挟み込む第2内側トレンチ66Aおよび第2外側トレンチ66Bを含む。
【0222】
このような構造によれば、第2pin接合部51および第2pn接合部55(第2逆pin接合部58)の相互間における不純物の不所望な拡散を適切に抑制できる。これにより、第2装置領域22において第2pin接合部51、第2pn接合部55および第2逆pin接合部58を適切に形成できる。
また、ダイオードチップ1によれば、第1半導体層14が濃度低下層17および濃度保持層18を含み、第1pn接合部35の第1内部N層36が、第1半導体層14の濃度保持層18との間でpn接合を形成している。
【0223】
第1半導体層14が濃度保持層18を有さない場合、第1内部N層36は、濃度低下層17との間でpn接合を形成する。この場合、第1pn接合部35におけるpn濃度変化が急峻になるため、当該第1pn接合部35を起点に実際の耐圧(具体的にはブレークダウン電圧VB)が目標の耐圧から変動する可能性がある。このような問題は、濃度低下層17の厚さのバラツキ(たとえば±5%程度)に起因して顕在化する。
【0224】
そこで、ダイオードチップ1では、濃度低下層17の上に濃度保持層18を形成し、第1pn接合部35におけるpn濃度変化を緩慢にしている(図10参照)。これにより、第1pn接合部35を起点とする耐圧(具体的にはブレークダウン電圧VB)の変動を抑制できる。また、濃度低下層17の厚さにバラツキが生じたとしても、所定厚さの濃度保持層18が形成されているため、濃度低下層17の厚さバラツキに起因する耐圧の変動を適切に抑制できる。
【0225】
また、ダイオードチップ1によれば、第1半導体層14が濃度低下層17および濃度保持層18を含み、第2pn接合部55の第2内部N層56が、濃度保持層18との間でpn接合を形成している。
第1半導体層14が濃度保持層18を有さない場合、第2内部N層56は、濃度低下層17との間でpn接合を形成する。この場合、第2pn接合部55におけるpn濃度変化が急峻になるため、当該第2pn接合部55を起点に実際の耐圧(具体的にはブレークダウン電圧VB)が目標の耐圧から変動する可能性がある。このような問題は、濃度低下層17の厚さのバラツキ(たとえば±5%程度)に起因して顕在化する。
【0226】
そこで、ダイオードチップ1では、濃度低下層17の上に濃度保持層18を形成し、第2pn接合部55におけるpn濃度変化を緩慢にしている。これにより、第2pn接合部55を起点とする耐圧(具体的にはブレークダウン電圧VB)の変動を抑制できる。また、濃度低下層17の厚さにバラツキが生じたとしても、所定厚さの濃度保持層18が形成されているため、濃度低下層17の厚さバラツキに起因する耐圧の変動を適切に抑制できる。
【0227】
また、ダイオードチップ1によれば、第1装置領域21および第2装置領域22のレイアウトの観点からも電気的特性を向上できる。ダイオードチップ1は、具体的には、半導体チップ10の中央部(装置形成領域272)に集約して形成された第1装置領域21および第2装置領域22を含む。つまり、ダイオードチップ1は、半導体チップ10の中央部(装置形成領域272)に集約して形成された第1pin接合部31、第1pn接合部35、第1逆pin接合部38、第2pin接合部51、第2pn接合部55および第2逆pin接合部58を含む。
【0228】
これにより、第2pin接合部51は、半導体チップ10の中央部(装置形成領域272)において第1ダイオード対37に近接して形成されている。また、第2ダイオード対57は、半導体チップ10の中央部(装置形成領域272)において第1pin接合部31に近接して形成されている。
このような構造によれば、第1装置領域21および第2装置領域22の間に形成される電流経路を短縮できるから、半導体チップ10(第1半導体層14)の抵抗成分による影響を低減できる。その結果、抵抗成分の減少分に応じて、最大電流能力IPPを増加させ、クランプ電圧VCLを低減させることができる。
【0229】
また、ダイオードチップ1によれば、第2pin接合部51が半導体チップ10の中央部(装置形成領域272)において第1方向Xに第1逆pin接合部38に対向している。また、ダイオードチップ1によれば、第2逆pin接合部58が半導体チップ10の中央部(装置形成領域272)において第1方向Xに第1pin接合部31に対向している。このような構造によれば、第1装置領域21および第2装置領域22の間に形成される電流経路を、比較的簡素な構造で適切に短縮できる。よって、電気的特性を比較的簡素な構造で向上できる。
【0230】
図16は、図8の対応図であって、本発明の第2実施形態に係るダイオードチップ291の平面図である。図16では、第1接合分離構造45および第2接合分離構造65が太線によって示されている。以下、ダイオードチップ1に対して述べた構造に対応する構造については同一の参照符号を付して説明を省略する。
ダイオードチップ291は、複数(この形態では3個)の第1装置領域21および複数(この形態では3個)の第2装置領域22を含む。第1装置領域21の個数は、2個以上であればよく、4個以上形成されていてもよい。第2装置領域22の個数は、2個以上であればよく、4個以上形成されていてもよい。第2装置領域22の個数は、対称性の観点から、第1装置領域21の個数と等しいことが好ましい。
【0231】
複数の第1装置領域21は、半導体チップ10の装置形成領域272において第1方向Xに沿って間隔を空けて形成され、第2方向Yに沿って延びる帯状(長方形状)にそれぞれ形成されている。
複数の第2装置領域22は、半導体チップ10の装置形成領域272において第1方向Xに沿って間隔を空けて形成され、第2方向Yに沿って延びる帯状(長方形状)にそれぞれ形成されている。複数の第2装置領域22は、複数の第1装置領域21から第1方向Xに間隔を空けて形成されている。複数の第2装置領域22は、第1方向Xに沿って複数の第1装置領域21と交互に形成されている。複数の第2装置領域22は、第1方向Xに沿って複数の第1装置領域21と等間隔に形成されていることが好ましい。
【0232】
ダイオードチップ291は、複数の第1装置領域21および複数の第2装置領域22を区画する領域分離構造23を含む。領域分離構造23は、この形態では、複数の第1領域分離構造23Aおよび複数の第2領域分離構造23Bを含む。
複数の第1領域分離構造23Aは、1対1対応の関係で複数の第1装置領域21をそれぞれ区画している。複数の第2領域分離構造23Bは、1対1対応の関係で複数の第2装置領域22をそれぞれ区画している。複数の第2領域分離構造23Bは、この形態では、複数の第1領域分離構造23Aから間隔を空けて形成されている。複数の第2領域分離構造23Bは、互いに隣り合う第1装置領域21および第2装置領域22の間において複数の第1領域分離構造23Aと一体的に形成されていてもよい。
【0233】
ダイオードチップ291は、この形態では、複数の第1装置領域21にそれぞれ形成された複数(この形態では3個)の第1pin接合部31、1つの第1pn接合部35および複数(この形態では3個)の第1逆pin接合部38を含む。
複数の第1pin接合部31は、各第1装置領域21において第2方向Yに沿って間隔を空けて一列に配列されている。また、複数の第1pin接合部31は、複数の第1装置領域21の間で第1方向Xに沿って間隔を空けて一列に配列されている。これにより、複数の第1pin接合部31は、複数の第1装置領域21の間で行列状(この形態では3行3列の行列状)に配列されている。
【0234】
各第1pin接合部31は、この形態では、平面視において円形状(楕円形状を含む)に形成されている。各第1pin接合部31の平面形状は任意である。各第1pin接合部31は、多角形状(たとえば四角形状)に形成されていてもよい。
各第1装置領域21に形成される第1pin接合部31の個数は、1個以上であればよく、2個以上形成されていてもよい。第1pin接合部31の個数は、複数の第1装置領域21の間で異なっていてもよい。複数の第1装置領域21の間において、第1pin接合部31の個数は、対称性の観点から、互いに等しいことが好ましい。
【0235】
複数の第1逆pin接合部38は、各第1装置領域21において複数の第1pin接合部31から離間して第2方向Yに沿って一列に配列されている。複数の第1逆pin接合部38は、各第1装置領域21において第2方向Yに沿って複数の第1pin接合部31と交互に形成されている。また、複数の第1逆pin接合部38は、複数の第1装置領域21の間で第1方向Xに沿って一列に配列されている。これにより、複数の第1逆pin接合部38は、複数の第1装置領域21の間で行列状(この形態では3行3列の行列状)に配列されている。
【0236】
各第1逆pin接合部38は、この形態では、平面視において円形状(楕円形状を含む)に形成されている。各第1逆pin接合部38の平面形状は任意である。各第1逆pin接合部38は、多角形状(たとえば四角形状)に形成されていてもよい。
複数の第1逆P層39(第1逆pin接合部38)は、第1総面積ST1を有している。第1総面積ST1は、複数の第1逆P層39の第1平面積S1の総和によって定義される。複数の第1逆P層39は、等しい第1平面積S1をそれぞれ有していてもよいし、互いに異なる第1平面積S1をそれぞれ有していてもよい。複数の第1逆P層39は、電気的特性を一致させる観点から、等しい第1平面積S1をそれぞれ有していることが好ましい。
【0237】
第1総面積ST1は、1000μm以上10000μm以下であってもよい。第1総面積ST1は、1000μm以上2000μm以下、2000μm以上4000μm以下、4000μm以上6000μm以下、6000μm以上8000μm以下、または、8000μm以上10000μm以下であってもよい。
各第1装置領域21に形成される第1逆pin接合部38の個数は、1個以上であればよく、2個以上形成されていてもよい。第1逆pin接合部38の個数は、複数の第1装置領域21の間で異なっていてもよい。複数の第1装置領域21の間において、第1逆pin接合部38の個数は、対称性の観点から、互いに等しいことが好ましい。
【0238】
各第1装置領域21に形成された複数(この形態では3個)の第1pin接合部31は、互いに並列接続されている。また、各第1装置領域21に形成された複数(この形態では3個)の第1逆pin接合部38は、互いに並列接続され、かつ、各第1装置領域21に形成された単一の第1pn接合部35との間で単一の第1ダイオード対37を形成している。
【0239】
各第1装置領域21に形成された第1ダイオード対37は、半導体チップ10(第1半導体層14)を介して各第1装置領域21に形成された複数の第1pin接合部31に並列接続されている。これにより、複数の第1pin接合部31および第1ダイオード対37からなる第1並列回路42が、複数の第1装置領域21にそれぞれ形成されている。複数の第1並列回路42は、半導体チップ10(第1半導体層14)を介して互いに並列接続されている。
【0240】
ダイオードチップ291は、この形態では、複数の第2装置領域22にそれぞれ形成された複数(この形態では3個)の第2pin接合部51、1つの第2pn接合部55および複数(この形態では3個)の第2逆pin接合部58を含む。
複数の第2pin接合部51は、各第2装置領域22において第2方向Yに沿って間隔を空けて一列に配列されている。また、複数の第2pin接合部51は、複数の第2装置領域22の間で第1方向Xに沿って間隔を空けて一列に配列されている。これにより、複数の第2pin接合部51は、複数の第2装置領域22の間で行列状(この形態では3行3列の行列状)に配列されている。
【0241】
複数の第2pin接合部51は、複数の第1逆pin接合部38をそれぞれ第1方向Xに横切るストライプラインを設定したとき、当該ストライプライン上に形成されている。これにより、複数の第2pin接合部51は、第1方向Xに沿って複数の第1逆pin接合部38と交互に配列されている。複数の第2pin接合部51は、第1主面11の中央部に対して複数の第1pin接合部31と点対称となるレイアウトで形成されていることが好ましい。
【0242】
各第2pin接合部51は、この形態では、平面視において円形状(楕円形状を含む)に形成されている。各第2pin接合部51の平面形状は任意である。各第2pin接合部51は、多角形状(たとえば四角形状)に形成されていてもよい。
各第2装置領域22に形成される第2pin接合部51の個数は、1個以上であればよく、2個以上形成されていてもよい。第2pin接合部51の個数は、複数の第2装置領域22の間で異なっていてもよい。複数の第2装置領域22において、第2pin接合部51の個数は、対称性の観点から、互いに等しいことが好ましい。また、第2pin接合部51の個数は、対称性の観点から、第1pin接合部31の個数と等しいことがさらに好ましい。
【0243】
複数の第2逆pin接合部58は、各第2装置領域22において複数の第2pin接合部51から離間して第2方向Yに沿って一列に配列されている。複数の第2逆pin接合部58は、各第2装置領域22において第2方向Yに沿って複数の第2pin接合部51と交互に形成されている。また、複数の第2逆pin接合部58は、複数の第2装置領域22の間で第1方向Xに沿って一列に配列されている。これにより、複数の第2逆pin接合部58は、複数の第2装置領域22の間で行列状(この形態では3行3列の行列状)に配列されている。
【0244】
複数の第2逆pin接合部58は、複数の第1pin接合部31をそれぞれ第1方向Xに横切るストライプラインを設定したとき、当該ストライプライン上に形成されている。これにより、複数の第2逆pin接合部58は、第1方向Xに沿って複数の第1pin接合部31と交互に配列されている。
複数の第2逆pin接合部58は、第1主面11の中央部に対して複数の第1逆pin接合部38と点対称となるレイアウトで形成されていることが好ましい。第1方向Xに関して、第1逆pin接合部38および第2pin接合部51の間の距離は、第1pin接合部31および第2逆pin接合部58の間の距離と等しいことが好ましい。
【0245】
各第2逆pin接合部58は、この形態では、平面視において円形状(楕円形状を含む)に形成されている。各第2逆pin接合部58の平面形状は任意である。各第2逆pin接合部58は、多角形状(たとえば四角形状)に形成されていてもよい。
複数の第2逆P層59(第2逆pin接合部58)は、第2総面積ST2を有している。第2総面積ST2は、複数の第2逆P層59の第2平面積S2の総和によって定義される。複数の第2逆P層59は、等しい第2平面積S2をそれぞれ有していてもよいし、互いに異なる第2平面積S2をそれぞれ有していてもよい。複数の第2逆P層59は、電気的特性を一致させる観点から、等しい第2平面積S2をそれぞれ有していることが好ましい。
【0246】
第2総面積ST2は、1000μm以上10000μm以下であってもよい。第2総面積ST2は、1000μm以上2000μm以下、2000μm以上4000μm以下、4000μm以上6000μm以下、6000μm以上8000μm以下、または、8000μm以上10000μm以下であってもよい。
第2総面積ST2は、複数の第1逆P層39の第1総面積ST1と等しいことが好ましい。この場合、各第2逆P層59の第2平面積S2は、各第1逆P層39の第1平面積S1と等しいことがさらに好ましい。
【0247】
各第2装置領域22に形成される第2逆pin接合部58の個数は、1個以上であればよく、2個以上形成されていてもよい。第2逆pin接合部58の個数は、複数の第2装置領域22の間で異なっていてもよい。複数の第2装置領域22の間において、第2逆pin接合部58の個数は、対称性の観点から、互いに等しいことが好ましい。また、第2逆pin接合部58の個数は、対称性の観点から、第1逆pin接合部38の個数と等しいことがさらに好ましい。
【0248】
各第2装置領域22に形成された複数(この形態では3個)の第2pin接合部51は、互いに並列接続されている。また、各第2装置領域22に形成された複数(この形態では3個)の第2逆pin接合部58は、互いに並列接続され、かつ、各第2装置領域22に形成された単一の第2pn接合部55との間で単一の第2ダイオード対57を形成している。
【0249】
各第2装置領域22に形成された第2ダイオード対57は、半導体チップ10(第1半導体層14)を介して各第2装置領域22に形成された複数の第2pin接合部51に並列接続されている。これにより、複数の第2pin接合部51および第2ダイオード対57からなる第2並列回路62が、複数の第2装置領域22にそれぞれ形成されている。複数の第2並列回路62は、半導体チップ10(第1半導体層14)を介して互いに並列接続されている。
【0250】
中間絶縁層91は、複数の第1pin開口92、複数の第1逆pin開口93、複数の第2pin開口94および複数の第2逆pin開口95を含む。複数の第1pin開口92は、対応する第1装置領域21において対応する第1pin接合部31を1対1対応の関係で露出させている。複数の第1逆pin開口93は、対応する第1装置領域21において対応する第1逆pin接合部38を1対1対応の関係で露出させている。複数の第2pin開口94は、対応する第2装置領域22において対応する第2pin接合部51を1対1対応の関係で露出させている。複数の第2逆pin開口95は、対応する第2装置領域22において対応する第2逆pin接合部58を1対1対応の関係で露出させている。
【0251】
第1電極層101は、第1パッド部101Aおよび複数の第1配線部101Bを含む。第1パッド部101Aは、平面視において複数の第1装置領域21および複数の第2装置領域22から離間して第1パッド領域273の上に形成されている。第1パッド部101Aは、平面視において複数の第1装置領域21および複数の第2装置領域22に重ならない領域に形成されている。第1パッド部101Aは、平面視において複数の第1装置領域21の一部および複数の第2装置領域22の一部に重なっていてもよい。
【0252】
複数の第1配線部101Bは、第1パッド部101Aから複数の第1装置領域21に向けて帯状にそれぞれ引き出されている。複数の第1配線部101Bは、複数の第1装置領域21に対して1対1対応の関係で引き出されている。これにより、複数の第1配線部101Bは、平面視において櫛歯状に形成されている。複数の第1配線部101Bの第1方向Xの幅は任意である。
【0253】
複数の第1配線部101Bは、中間絶縁層91の上から対応する第1pin開口92および対応する第1逆pin開口93にそれぞれ入り込んでいる。複数の第1配線部101Bは、対応する第1pin開口92内において対応する第1pin接合部31に電気的に接続されている。複数の第1配線部101Bは、対応する第1pin接合部31(具体的には第1N層32)との間でオーミック接触を形成している。
【0254】
複数の第1配線部101Bは、対応する第1逆pin開口93内において対応する第1逆pin接合部38に電気的に接続されている。複数の第1配線部101Bは、対応する第1逆pin接合部38(具体的には第1逆P層39)との間でオーミック接触を形成している。このようにして、第1電極層101は、複数の第1pin接合部31および複数の第1ダイオード対37を並列接続させている。
【0255】
第2電極層102は、第2パッド部102Aおよび複数の第2配線部102Bを含む。第2パッド部102Aは、平面視において複数の第1装置領域21および複数の第2装置領域22から離間して第2パッド領域274の上に形成されている。第2パッド部102Aは、平面視において複数の第1装置領域21および複数の第2装置領域22に重ならない領域に形成されている。第2パッド部102Aは、平面視において複数の第1装置領域21の一部および複数の第2装置領域22の一部に重なっていてもよい。
【0256】
複数の第2配線部102Bは、第2パッド部102Aから複数の第2装置領域22に向けて帯状にそれぞれ引き出されている。複数の第2配線部102Bは、複数の第2装置領域22に対して1対1対応の関係で引き出されている。複数の第2配線部102Bは、複数の第1配線部101Bに対して平行に延びている。複数の第2配線部102Bは、複数の第1配線部101Bから第1方向Xに間隔を空けて形成され、かつ、複数の第1配線部101Bと交互に形成されている。
【0257】
これにより、複数の第2配線部102Bは、平面視において複数の第1配線部101Bに噛み合う櫛歯状に形成されている。複数の第2配線部102Bの第1方向Xの幅は任意である。複数の第2配線部102Bの第1方向Xの幅は、複数の第1配線部101Bの第1方向Xの幅と等しいことが好ましい。
複数の第2配線部102Bは、中間絶縁層91の上から対応する第2pin開口94および対応する第2逆pin開口95に入り込んでいる。第2パッド部102Aは、対応する第2pin開口94内において対応する第2pin接合部51に電気的に接続されている。第2パッド部102Aは、対応する第2pin接合部51(具体的には第2N層52)との間でオーミック接触を形成している。
【0258】
複数の第2配線部102Bは、対応する第2逆pin開口95内において対応する第2逆pin接合部58に電気的に接続されている。複数の第2配線部102Bは、対応する第2逆pin接合部58(具体的には第2逆P層59)との間でオーミック接触を形成している。このようにして、第2電極層102は、複数の第2pin接合部51および複数の第2ダイオード対57を並列接続させている。
【0259】
図17は、図16のダイオードチップ291の電気回路図である。図17では、一対の第1装置領域21および第2装置領域22によって形成される電気回路(1つのTVS回路63)を抽出して示している。ダイオードチップ291では、図17に示される電気回路(1つのTVS回路63)が3つ並列接続された回路構成を有している。
図17を参照して、ダイオードチップ291は、第1端子電極121、第2端子電極122およびTVS回路63を含む。TVS回路63は、第1並列回路42および第2並列回路62が直列接続された直列回路からなり、第1端子電極121および第2端子電極122に電気的に接続されている。
【0260】
第1並列回路42は、複数の第1pinダイオードD1および第1ダイオード対37を含む。第1ダイオード対37は、複数の第1逆pinダイオードDR1および1つの第1ツェナーダイオードDZ1を含む。複数の第1pinダイオードD1は、互いに並列接続されている。複数の第1pinダイオードD1のカソードは、第1端子電極121に電気的に接続されている。
【0261】
複数の第1逆pinダイオードDR1は、互いに並列接続されている。複数の第1逆pinダイオードDR1のカソードは、第1ツェナーダイオードDZ1のカソードに逆バイアス接続されている。複数の第1逆pinダイオードDR1のアノードは、第1端子電極121に電気的に接続されている。第1ツェナーダイオードDZ1のアノードは、複数の第1pinダイオードD1のアノードに逆バイアス接続されている。
【0262】
第2並列回路62は、複数の第2pinダイオードD2および第2ダイオード対57を含む。第2ダイオード対57は、複数の第2逆pinダイオードDR2および1つの第2ツェナーダイオードDZ2を含む。複数の第2pinダイオードD2は、互いに並列接続されている。複数の第2pinダイオードD2のカソードは、第2端子電極122に電気的に接続されている。複数の第2pinダイオードD2のアノードは、第1pinダイオードD1のアノードおよび第1ツェナーダイオードDZ1のアノードに逆バイアス接続されている。
【0263】
複数の第2逆pinダイオードDR2は、互いに並列接続されている。複数の第2逆pinダイオードDR2のカソードは、第2ツェナーダイオードDZ2のカソードに逆バイアス接続されている。複数の第2逆pinダイオードDR2のアノードは、第2端子電極122に電気的に接続されている。第2ツェナーダイオードDZ2のアノードは、複数の第1pinダイオードD1のアノード、第1ツェナーダイオードDZ1のアノードおよび複数の第2pinダイオードD2のアノードに逆バイアス接続されている。
【0264】
図18は、図16のダイオードチップ291の端子間容量CTを示すグラフである。縦軸は端子間容量CT[pF]を示し、横軸は複数の第1逆P層39の第1総面積ST1[μm]を示している。ダイオードチップ291は、双方向デバイスであるので、横軸を複数の第2逆P層59の第2総面積ST2[μm]としても同様のことが言える。
図18には、第1実施形態に係るダイオードチップ1の容量特性L1が破線によって示されている。また、図18には、第2実施形態に係るダイオードチップ291の端子間容量CTが第1プロット点P1によって示されている。
【0265】
第1プロット点P1は、第1総面積ST1を3000μmとした場合のダイオードチップ291の端子間容量CTを示している。第1プロット点P1を参照して、ダイオードチップ291の端子間容量CTは、0.2pF以上0.25pF以下であり、容量特性L1にほぼ一致した。
図19は、図16のダイオードチップ291の最大電流能力IPPを示すグラフである。縦軸は最大電流能力IPP[A]を示し、横軸は複数の第1逆P層39の第1総面積ST1[μm]を示している。ダイオードチップ291は、双方向デバイスであるので、横軸を複数の第2逆P層59の第2総面積ST2[μm]としても同様のことが言える。
【0266】
図19には、第1実施形態に係るダイオードチップ1の電流特性L2が破線によって示されている。また、図19には、第2実施形態に係るダイオードチップ291の最大電流能力IPPが第2プロット点P2によって示されている。
第2プロット点P2は、第1総面積ST1を3000μmとした場合のダイオードチップ291の最大電流能力IPPを示している。第2プロット点P2を参照して、ダイオードチップ291の最大電流能力IPPは、3.5A以上4A以下であり、電流特性L2から増加方向に変動した。
【0267】
図20は、図16のダイオードチップ291のクランプ電圧VCLを示すグラフである。縦軸はクランプ電圧VCL[V]を示し、横軸は複数の第1逆P層39の第1総面積ST1[μm]を示している。ダイオードチップ291は、双方向デバイスであるので、横軸を複数の第2逆P層59の第2総面積ST2[μm]としても同様のことが言える。
【0268】
図20には、第1実施形態に係るダイオードチップ1の電圧特性L3が破線によって示されている。また、図20には、第2実施形態に係るダイオードチップ291のクランプ電圧VCLが第3プロット点P3によって示されている。
第3プロット点P3は、第1総面積ST1を3000μmとした場合のダイオードチップ291のクランプ電圧VCLを示している。第3プロット点P3を参照して、ダイオードチップ291のクランプ電圧VCLは、23V以上24A以下であり、電圧特性L3から減少方向に変動した。
【0269】
図18図20を参照して、第1実施形態に係るダイオードチップ1では、端子間容量CT、最大電流能力IPPおよびクランプ電圧VCLがトレードオフの関係を有している。これに対して、第2実施形態に係るダイオードチップ291では、前記トレードオフの関係から切り離して、端子間容量CT、最大電流能力IPPおよびクランプ電圧VCLを調整できる。
【0270】
これは、複数の第1逆pin接合部38(第2逆pin接合部58)を形成することによって、1つの第1逆pin接合部38(第2逆pin接合部58)に対する負荷を低減(分散)できたためであると考えられる。
以上、ダイオードチップ291によってもダイオードチップ1に対して述べた効果と同様の効果を奏することができる。また、ダイオードチップ291によれば、比較的小さい第1平面積S1を有する複数の第1逆P層39が第1総面積ST1で形成されている。これにより、比較的大きい第1平面積S1を有する1つの第1逆P層39を形成する場合に比べて、設計の自由度を高めることができると同時に、低い端子間容量CT、高い最大電流能力IPPおよび低いクランプ電圧VCLを実現できる。
【0271】
図21は、図8の対応図であって、本発明の第3実施形態に係るダイオードチップ331の平面図である。以下、ダイオードチップ1に対して述べた構造に対応する構造については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
図21を参照して、ダイオードチップ331は、第1パッド領域273に形成された1つの第1pin接合部31を含む。第1パッド領域273側の第1pin接合部31は、第1パッド領域273において第1pinダイオードD1を形成している。
【0272】
第1パッド領域273側の第1pin接合部31は、第1パッド領域273において第1方向Xに沿って延びる帯状に形成されている。第1パッド領域273側の第1pin接合部31は、この形態では、第1主面11の中央部を第2方向Yに横切る中央ラインを設定したとき、当該中央ラインを横切る帯状に形成されている。
これにより、第1パッド領域273側の第1pin接合部31は、第2方向Yに第1装置領域21および第2装置領域22に対向している。第1パッド領域273側の第1pin接合部31は、第2方向Yに第1装置領域21および第2装置領域22のいずれか一方だけに対向する態様(長さ)で形成されていてもよい。
【0273】
第1パッド領域273側の第1pin接合部31は、第1装置領域21の第1pin接合部31と同様に、第1接合分離構造45によって他の領域から区画されている。第1接合分離構造45は、第1パッド領域273側の第1pin接合部31の第1P層34の周縁部を両サイドから挟み込むように当該第1pin接合部31を取り囲むダブルトレンチ構造(二重溝構造)を有している。
【0274】
ダイオードチップ331は、第2パッド領域274に形成された1つの第2pin接合部51を含む。第2パッド領域274側の第2pin接合部51は、第2パッド領域274において第2pinダイオードD2を形成している。
第2パッド領域274側の第2pin接合部51は、第2パッド領域274において第1方向Xに沿って延びる帯状に形成されている。第2パッド領域274側の第2pin接合部51は、この形態では、第1主面11の中央部を第2方向Yに横切る中央ラインを設定したとき、当該中央ラインを横切る帯状に形成されている。
【0275】
これにより、第2パッド領域274側の第2pin接合部51は、第2方向Yに第1装置領域21および第2装置領域22に対向している。また、第2パッド領域274側の第2pin接合部51は、第1装置領域21および第2装置領域22を挟んで第1パッド領域273側の第1pin接合部31に対向している。第2パッド領域274側の第2pin接合部51は、第2方向Yに第1装置領域21および第2装置領域22のいずれか一方だけに対向する態様(長さ)で形成されていてもよい。
【0276】
第2パッド領域274側の第2pin接合部51は、半導体チップ10の中央部を第1方向Xに横切る中央ラインを設定したとき、当該中央ラインに対して第1パッド領域273側の第1pin接合部31と線対称となるレイアウトで形成されていることが好ましい。また、第2パッド領域274側の第2pin接合部51は、半導体チップ10の中央部に対して第1パッド領域273側の第1pin接合部31と点対称となるレイアウトで形成されていることが好ましい。
【0277】
第2パッド領域274側の第2pin接合部51は、第2装置領域22の第2pin接合部51と同様に、第2接合分離構造65によって他の領域から区画されている。第2接合分離構造65は、第2パッド領域274側の第2pin接合部51の第2P層54の周縁部を両サイドから挟み込むように当該第2pin接合部51を取り囲むダブルトレンチ構造(二重溝構造)を有している。
【0278】
第1パッド分離構造275は、第1パッド領域273側の第1pin接合部31から離間して第1主面11の一方側(第1側面13A側)の領域に形成されている。第2パッド分離構造276は、第2パッド領域274側の第2pin接合部51から離間して第1主面11の他方側(第2側面13B側)の領域に形成されている。
中間絶縁層91は、複数の第1pin開口92および複数の第2pin開口94を含む。複数の第1pin開口92は、第1装置領域21において第1pin接合部31を露出させ、かつ、第1パッド領域273において第1pin接合部31を露出させている。複数の第2pin開口94は、第2装置領域22において第2pin接合部51を露出させ、かつ、第2パッド領域274において第2pin接合部51を露出させている。
【0279】
第1電極層101は、第1装置領域21において中間絶縁層91を貫通して第1pin接合部31および第1ダイオード対37に電気的に接続され、かつ、第1パッド領域273において中間絶縁層91を貫通して第1pin接合部31に電気的に接続されている。第1電極層101は、第1パッド部101Aおよび第1配線部101Bを含む。
第1パッド部101Aは、第1パッド分離構造275によって取り囲まれた領域に加えて、第1パッド領域273側の第1pin接合部31を被覆している。第1パッド部101Aは、中間絶縁層91の上から第1pin開口92に入り込んでいる。第1パッド部101Aは、第1pin開口92内において第1パッド領域273側の第1pin接合部31に電気的に接続されている。第1パッド部101Aは、第1パッド領域273側の第1pin接合部31(具体的には第1N層32)との間でオーミック接触を形成している。
【0280】
第2電極層102は、第2装置領域22において中間絶縁層91を貫通して第2pin接合部51および第2ダイオード対57に電気的に接続され、かつ、第2パッド領域274において中間絶縁層91を貫通して第2pin接合部51に電気的に接続されている。第2電極層102は、第2パッド部102Aおよび第2配線部102Bを含む。
第2パッド部102Aは、第2パッド分離構造276によって取り囲まれた領域に加えて、第2パッド領域274側の第2pin接合部51を被覆している。第2パッド部102Aは、中間絶縁層91の上から第2pin開口94に入り込んでいる。第2パッド部102Aは、第2pin開口94内において第2パッド領域274側の第2pin接合部51に電気的に接続されている。第2パッド部102Aは、第2パッド領域274側の第2pin接合部51(具体的には第2N層52)との間でオーミック接触を形成している。
【0281】
以上、ダイオードチップ331によってもダイオードチップ1に対して述べた効果と同様の効果を奏することができる。ダイオードチップ331の構造は、第2実施形態にも組み込むことができる。
この形態では、第1パッド領域273に1つの第1pin接合部31が形成された例について説明した。しかし、第1パッド領域273側の第1pin接合部31の個数は任意である。第1パッド領域273には、2つ以上の第1pin接合部31が形成されていてもよい。
【0282】
また、この形態では、第2パッド領域274に1つの第2pin接合部51が形成された例について説明した。しかし、第2パッド領域274側の第2pin接合部51の個数は任意である。第2パッド領域274には、2つ以上の第2pin接合部51が形成されていてもよい。
図22は、図8の対応図であって、本発明の第4実施形態に係るダイオードチップ341の平面図である。以下、ダイオードチップ1に対して述べた構造に対応する構造については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0283】
図22を参照して、ダイオードチップ341は、第1パッド領域273に形成された第3装置領域342、および、第2パッド領域274に形成された第4装置領域343を含む。
第3装置領域342は、第1パッド領域273において第1方向Xに沿って延びる帯状(長方形状)に形成されている。第3装置領域342は、この形態では、第1主面11の中央部を第2方向Yに横切る中央ラインを設定したとき、当該中央ラインを横切る帯状に形成されている。
【0284】
これにより、第3装置領域342は、第2方向Yに第1装置領域21および第2装置領域22に対向している。第3装置領域342は、第2方向Yに第1装置領域21および第2装置領域22のいずれか一方だけに対向する態様(長さ)で形成されていてもよい。
第4装置領域343は、第2パッド領域274において第1方向Xに沿って延びる帯状(長方形状)に形成されている。第4装置領域343は、この形態では、第1主面11の中央部を第2方向Yに横切る中央ラインを設定したとき、当該中央ラインを横切る帯状に形成されている。
【0285】
これにより、第4装置領域343は、第2方向Yに第1装置領域21および第2装置領域22に対向している。また、第4装置領域343は、第1装置領域21および第2装置領域22を挟んで第3装置領域342に対向している。第4装置領域343は、第2方向Yに第1装置領域21および第2装置領域22のいずれか一方だけに対向する態様(長さ)で形成されていてもよい。
【0286】
第4装置領域343は、半導体チップ10の中央部を第1方向Xに横切る中央ラインを設定したとき、当該中央ラインに対して第3装置領域342と線対称となるレイアウトで形成されていることが好ましい。また、第4装置領域343は、半導体チップ10の中央部に対して第3装置領域342と点対称となるレイアウトで形成されていることが好ましい。
【0287】
領域分離構造23は、この形態では、第3装置領域342を区画する第3領域分離構造23C、および、第4装置領域343を区画する第4領域分離構造23Dを含む。第3領域分離構造23Cは、平面視において第3装置領域342を取り囲む環状に形成されている。第3装置領域342の平面形状は、第3領域分離構造23Cによって調整される。第4領域分離構造23Dは、平面視において第4装置領域343を取り囲む環状に形成されている。第4装置領域343の平面形状は、第4領域分離構造23Dによって調整される。
【0288】
ダイオードチップ341は、第3装置領域342に形成された複数(この形態では2個)の第1pin接合部31、1つの第1pn接合部35、および、複数(この形態では3個)の第1逆pin接合部38を含む。第3装置領域342に形成される第1pin接合部31の個数および第1逆pin接合部38の個数は任意である。
第3装置領域342内における複数の第1pin接合部31のレイアウトおよび複数の第1逆pin接合部38のレイアウトは任意である。複数の第1pin接合部31は、この形態では、第1方向Xに関して第3装置領域342の両サイドにそれぞれ形成されている。複数の第1逆pin接合部38は、第3装置領域342において複数の第1pin接合部31に挟まれた領域にそれぞれ形成されている。複数の第1逆pin接合部38は、この形態では、第1方向Xに沿って一列に配列されている。
【0289】
複数の第1接合分離構造45は、第3装置領域342内において複数の第1pin接合部31を1対1対応の関係で取り囲んでいる。図22では、第3装置領域342内の第1接合分離構造45が太線によって示されている。各第1接合分離構造45は、第3装置領域342内において第1pin接合部31(第1P層34)および第1pn接合部35(第1内部N層36)の境界を両サイドから挟み込むように第1pin接合部31を取り囲むダブルトレンチ構造(二重溝構造)を有している。
【0290】
ダイオードチップ341は、第4装置領域343に形成された複数(この形態では2個)の第2pin接合部51、1つの第2pn接合部55、および、複数(この形態では3個)の第2逆pin接合部58を含む。第4装置領域343に形成される第2pin接合部51の個数および第2逆pin接合部58の個数は任意である。
複数の第2pin接合部51のレイアウトおよび複数の第2逆pin接合部58のレイアウトは任意である。複数の第2pin接合部51は、この形態では、第1方向Xに関して、第4装置領域343の両サイドにそれぞれ形成されている。複数の第2逆pin接合部58は、第4装置領域343内において複数の第2pin接合部51に挟まれた領域にそれぞれ形成されている。複数の第2逆pin接合部58は、この形態では、第1方向Xに沿って一列に配列されている。
【0291】
第4装置領域343の第2pin接合部51は、第1主面11の中央部を第1方向Xに横切る中央ラインを設定したとき、当該中央ラインに対して第3装置領域342の第1pin接合部31と線対称となるレイアウトで形成されていることが好ましい。また、第4装置領域343の複数の第2pin接合部51は、第1主面11の中央部に対して第3装置領域342の第1pin接合部31と点対称となるレイアウトで形成されていることが好ましい。
【0292】
第4装置領域343の第2逆pin接合部58は、第1主面11の中央部を第1方向Xに横切る中央ラインを設定したとき、当該中央ラインに対して第3装置領域342の第1逆pin接合部38と線対称となるレイアウトで形成されていることが好ましい。また、第4装置領域343の第2逆pin接合部58は、第1主面11の中央部に対して第3装置領域342の第1逆pin接合部38と点対称となるレイアウトで形成されていることが好ましい。
【0293】
複数の第2接合分離構造65は、第4装置領域343内において複数の第2pin接合部51を1対1対応の関係で取り囲んでいる。図22では、第4装置領域343内の第2接合分離構造65が太線によって示されている。各第2接合分離構造65は、第4装置領域343内において第2pin接合部51(第2P層54)および第2pn接合部55(第2内部N層56)の境界を両サイドから挟み込むように第2pin接合部51を取り囲むダブルトレンチ構造(二重溝構造)を有している。
【0294】
第1パッド分離構造275は、第3装置領域342から離間して第1主面11の一方側(第1側面13A側)の領域に形成されている。第2パッド分離構造276は、第4装置領域343から離間して第1主面11の他方側(第2側面13B側)の領域に形成されている。
中間絶縁層91は、複数の第1pin開口92、複数の第1逆pin開口93、複数の第2pin開口94および複数の第2逆pin開口95を含む。
【0295】
複数の第1pin開口92は、第1装置領域21において第1pin接合部31を露出させ、かつ、第3装置領域342において複数の第1pin接合部31を1対1対応の関係で露出させている。複数の第1逆pin開口93は、第1装置領域21において第1逆pin接合部38を露出させ、かつ、第3装置領域342において複数の第1逆pin接合部38を1対1対応の関係で露出させている。
【0296】
複数の第2pin開口94は、第2装置領域22において第2pin接合部51を露出させ、かつ、第4装置領域343において複数の第2pin接合部51を1対1対応の関係で露出させている。複数の第2逆pin開口95は、第2装置領域22において第2逆pin接合部58を露出させ、かつ、第4装置領域343において複数の第2逆pin接合部58を1対1対応の関係で露出させている。
【0297】
第1電極層101は、第1装置領域21において中間絶縁層91を貫通して第1pin接合部31および第1ダイオード対37に電気的に接続され、かつ、第3装置領域342において中間絶縁層91を貫通して複数の第1pin接合部31および第1ダイオード対37に電気的に接続されている。第1電極層101は、第1パッド部101Aおよび第1配線部101Bを含む。
【0298】
第1パッド部101Aは、第1パッド分離構造275によって取り囲まれた領域に加えて、第3装置領域342を被覆している。第1パッド部101Aは、第3装置領域342において中間絶縁層91の上から複数の第1pin開口92および複数の第1逆pin開口93に入り込んでいる。
第1パッド部101Aは、第3装置領域342における対応する第1pin開口92内において対応する第1pin接合部31に電気的に接続されている。第1パッド部101Aは、第3装置領域342において第1pin接合部31(具体的には第1N層32)との間でオーミック接触を形成している。
【0299】
第1パッド部101Aは、第3装置領域342における対応する第1逆pin開口93内において対応する第1逆pin接合部38に電気的に接続されている。第1パッド部101Aは、第3装置領域342において第1逆pin接合部38(具体的には第1逆P層39)との間でオーミック接触を形成している。
第2電極層102は、第2装置領域22において中間絶縁層91を貫通して第2pin接合部51および第2ダイオード対57に電気的に接続され、かつ、第4装置領域343において中間絶縁層91を貫通して複数の第2pin接合部51および第2ダイオード対57に電気的に接続されている。第2電極層102は、第2パッド部102Aおよび第2配線部102Bを含む。
【0300】
第2パッド部102Aは、第2パッド分離構造276によって取り囲まれた領域に加えて、第4装置領域343を被覆している。第2パッド部102Aは、第4装置領域343において中間絶縁層91の上から複数の第2pin開口94および複数の第2逆pin開口95に入り込んでいる。
第2パッド部102Aは、第4装置領域343における対応する第2pin開口94内において対応する第2pin接合部51に電気的に接続されている。第2パッド部102Aは、第4装置領域343において第2pin接合部51(具体的には第2N層52)との間でオーミック接触を形成している。
【0301】
第2パッド部102Aは、第4装置領域343における対応する第2逆pin開口95内において対応する第2逆pin接合部58に電気的に接続されている。第2パッド部102Aは、第4装置領域343において第2逆pin接合部58(具体的には第2逆P層59)との間でオーミック接触を形成している。
以上、ダイオードチップ341によってもダイオードチップ1に対して述べた効果と同様の効果を奏することができる。ダイオードチップ341の構造は、第2~第3実施形態にも組み込むことができる。
【0302】
図23は、図3の対応図であって、本発明の第5実施形態に係るダイオードチップ351の断面図である。以下、ダイオードチップ1に対して述べた構造に対応する構造については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
ダイオードチップ351は、第1パッド領域273において第1パッド分離構造275によって取り囲まれた領域の表層部に形成されたp型の第1容量層352を含む。第1容量層352は、具体的には、第2半導体層15の表層部に形成されている。第1容量層352は、第2半導体層15のn型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有している。第1容量層352のp型不純物濃度のピーク値は、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。第1容量層352のp型不純物濃度のピーク値は、5×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であることが好ましい。
【0303】
第1容量層352のp型不純物濃度は、第1逆pin接合部38の第1逆P層39(第2逆pin接合部58の第2逆P層59)のp型不純物濃度と等しくてもよい。このような第1容量層352は、第1逆pin接合部38と同時に形成することによって得られる。第1容量層352は第2半導体層15との間で第1表層寄生容量CS1を形成している。第1表層寄生容量CS1は、第1内部寄生容量C1に直列接続されている。
【0304】
ダイオードチップ351は、第2パッド領域274において第2パッド分離構造276によって取り囲まれた領域の表層部に形成されたp型の第2容量層353を含む。第2容量層353は、具体的には、第2半導体層15の表層部に形成されている。第2容量層353は、第2半導体層15のn型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有している。第2容量層353のp型不純物濃度のピーク値は、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。第2容量層353のp型不純物濃度のピーク値は、5×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であることが好ましい。
【0305】
第2容量層353のp型不純物濃度は、第1逆pin接合部38の第1逆P層39(第2逆pin接合部58の第2逆P層59)のp型不純物濃度と等しくてもよい。このような第2容量層353は、第1逆pin接合部38と同時に形成することによって得られる。第2容量層353は第2半導体層15との間で第2表層寄生容量CS2を形成している。第2表層寄生容量CS2は、第2内部寄生容量C2に直列接続されている。
【0306】
第2表層寄生容量CS2は、第1表層寄生容量CS1と等しいことが好ましい。つまり、第1容量層352は、平面視において第1層面積で形成され、第2容量層353は、平面視において第1層面積と等しい第2層面積で形成されていることが好ましい。また、第2容量層353は、第1容量層352のp型不純物濃度と等しいp型不純物濃度を有していることが好ましい。
【0307】
第1電極層101の第1パッド部101Aは、中間絶縁層91を挟んで第1容量層352に対向している。第1パッド部101Aは、第2半導体層15(第1容量層352)との間で第1外部寄生容量CO1を形成している。第1外部寄生容量CO1は、第1表層寄生容量CS1に直列接続されている。
第2電極層102の第2パッド部102Aは、中間絶縁層91を挟んで第2容量層353に対向している。第2パッド部102Aは、第2半導体層15(第2容量層353)との間で第2外部寄生容量CO2を形成している。第2外部寄生容量CO2は、第2表層寄生容量CS2に直列接続されている。
【0308】
図24は、図23のダイオードチップ351の寄生容量を示す電気回路図である。図24を参照して、ダイオードチップ351は、第1端子電極121、第2端子電極122、および、寄生容量回路283を含む。
寄生容量回路283は、第1外部寄生容量CO1、第1表層寄生容量CS1、第1内部寄生容量C1、第2外部寄生容量CO2、第2表層寄生容量CS2および第2内部寄生容量C2の直列回路からなり、第1端子電極121および第2端子電極122に電気的に接続されている。第1パッド領域273側の合成容量CP1は、下記式(5)によって表され、第2パッド領域274側の合成容量CP2は、下記式(6)によって表される。
【0309】
【数5】
【0310】
【数6】
【0311】
前記式(5)を前記式(1)と比較して、ダイオードチップ351の合成容量CP1は、第1実施形態に係るダイオードチップ1の合成容量CP1未満である。また、前記式(6)を前記式(2)と比較して、ダイオードチップ351の合成容量CP2は、第1実施形態に係るダイオードチップ1の合成容量CP2未満である。
以上、ダイオードチップ351によってもダイオードチップ1に対して述べた効果と同様の効果を奏することができる。また、ダイオードチップ351によれば、ダイオードチップ1と比較して、第1外部寄生容量CO1に直列接続される寄生容量の個数を増加させることができる。また、ダイオードチップ351によれば、第2外部寄生容量CO2に直列接続される寄生容量の個数を増加させることができる。これにより、端子間容量CTをさらに低減できる。ダイオードチップ351の構造は、第2~第4実施形態にも組み込むことができる。
【0312】
図25は、図3の対応図であって、本発明の第6実施形態に係るダイオードチップ361の断面図である。ダイオードチップ361は、ダイオードチップ351の第1パッド領域273側の構造および第2パッド領域274側の構造を変更した形態を有している。以下、ダイオードチップ351に対して述べた構造に対応する構造については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0313】
図25を参照して、ダイオードチップ361は、第1パッド領域273において第1半導体層14(具体的には濃度保持層18)および第2半導体層15の境界部に形成されたp型の第1内部容量層362を含む。第1内部容量層362は、濃度保持層18の一部を挟んで濃度低下層17に対向している。
第1内部容量層362は、第2半導体層15のn型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有している。また、第1内部容量層362は、少なくとも濃度保持層18のp型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有している。第1内部容量層362は、高濃度層16のp型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有していてもよい。
【0314】
第1内部容量層362のp型不純物濃度のピーク値は、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。第1内部容量層362のp型不純物濃度のピーク値は、5×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であることが好ましい。第1内部容量層362のp型不純物濃度は、第1pin接合部31の第1P層34のp型不純物濃度と等しいことが好ましい。このような第1内部容量層362は、第1P層34と同時に形成することによって得られる。第1内部容量層362は、第2半導体層15との間で第1内部寄生容量C1を形成している。
【0315】
ダイオードチップ361は、第2パッド領域274において第1半導体層14(具体的には濃度保持層18)および第2半導体層15の境界部に形成されたp型の第2内部容量層363を含む。第2内部容量層363は、濃度保持層18の一部を挟んで濃度低下層17に対向している。
第2内部容量層363は、第2半導体層15のn型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有している。また、第2内部容量層363は、少なくとも濃度保持層18のp型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有している。第2内部容量層363は、高濃度層16のp型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有していてもよい。
【0316】
第2内部容量層363のp型不純物濃度のピーク値は、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。第2内部容量層363のp型不純物濃度のピーク値は、5×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であることが好ましい。第2内部容量層363のp型不純物濃度は、第2pin接合部51の第2P層54のp型不純物濃度と等しいことが好ましい。このような第2内部容量層363は、第2P層54と同時に形成することによって得られる。第2内部容量層363は、第2半導体層15との間で第2内部寄生容量C2を形成している。
【0317】
以上、ダイオードチップ361によってもダイオードチップ351に対して述べた効果と同様の効果を奏することができる。ダイオードチップ351の構造は、第1~第4実施形態にも組み込むことができる。
図26は、図8の対応図であって、本発明の第7実施形態に係るダイオードチップ371の平面図である。前述の第1~第6実施形態では、第1ダイオード対37が、第1pin接合部31との間で第1並列回路42を形成し、第2ダイオード対57が、第2pin接合部51との間で第2並列回路62を形成していた。
【0318】
これに対して、ダイオードチップ371では、第2pin接合部51が、第1ダイオード対37との間で第1並列回路192を形成し、第2ダイオード対57が、第1pin接合部31との間で第2並列回路193を形成している。以下、ダイオードチップ1等に対して述べた構造に対応する構造については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
図26を参照して、ダイオードチップ371は、第1装置領域21において1つの第1pin接合部31、1つの第1pn接合部35、および、1つの第1逆pin接合部38を含む。第1pin接合部31、第1pn接合部35および第1逆pin接合部38は、第1実施形態の場合と同様のレイアウトで形成されている。第1逆pin接合部38は、第1pn接合部35との間で第1ダイオード対37を形成している。
【0319】
ダイオードチップ371は、第2装置領域22において1つの第2pin接合部51、1つの第2pn接合部55、および、1つの第2逆pin接合部58を含む。第2pin接合部51、第2pn接合部55および第2逆pin接合部58は、第1実施形態の場合と同様のレイアウトで形成されている。
第2pin接合部51は、半導体チップ10(第1半導体層14)を介して第1ダイオード対37との間で第1並列回路192を形成している。第2逆pin接合部58は、第2pn接合部55との間で第2ダイオード対57を形成している。第2ダイオード対57は、半導体チップ10(第1半導体層14)を介して第1pin接合部31との間で第2並列回路193を形成している。第2並列回路193は、第1並列回路192との間でTVS回路194を形成している。
【0320】
第1電極層101は、第1装置領域21において中間絶縁層91を貫通して第1pin接合部31に電気的に接続され、かつ、第2装置領域22において中間絶縁層91を貫通して第2ダイオード対57に電気的に接続されている。第1電極層101は、第1パッド部101Aおよび複数の第1配線部101Bを含む。
第1パッド部101Aは、平面視において第1装置領域21および第2装置領域22から離間して第1パッド領域273の上に形成されている。第1パッド部101Aは、この形態では、平面視において第1装置領域21および第2装置領域22に重ならない領域に形成されている。第1パッド部101Aは、平面視において第1装置領域21の一部および第2装置領域22の一部に重なっていてもよい。
【0321】
第1パッド部101Aは、中間絶縁層91を挟んで第1パッド分離構造275によって取り囲まれた領域(具体的には第2半導体層15)に対向している。第1パッド部101Aは、中間絶縁層91を挟んで第1パッド分離構造275を被覆していてもよい。この場合、第1パッド部101Aは、第1パッド分離構造275によって取り囲まれた領域の全域を被覆していてもよい。
【0322】
複数の第1配線部101Bは、第1パッド部101Aから第1装置領域21および第2装置領域22に向けて帯状にそれぞれ引き出されている。複数の第1配線部101Bは、第1装置領域21(第1pin接合部31)および第2装置領域22(第2逆pin接合部58)に対して1対1対応の関係でそれぞれ引き出されている。これにより、複数の第1配線部101Bは、平面視において櫛歯状に形成されている。第1配線部101Bの第1方向Xの幅は任意である。
【0323】
第1装置領域21側の第1配線部101Bは、中間絶縁層91の上から第1pin開口92に入り込んでいる。第1装置領域21側の第1配線部101Bは、第1pin開口92内において第1pin接合部31に電気的に接続されている。第1装置領域21側の第1配線部101Bは、第1pin接合部31(具体的には第1N層32)との間でオーミック接触を形成している。
【0324】
第2装置領域22側の第1配線部101Bは、中間絶縁層91の上から第2逆pin開口95に入り込んでいる。第2装置領域22側の第1配線部101Bは、第2逆pin開口95内において第2逆pin接合部58に電気的に接続されている。第2装置領域22側の第1配線部101Bは、第2逆pin接合部58(具体的には第2逆P層59)との間でオーミック接触を形成している。このようにして、第1電極層101は、第1pin接合部31および第2ダイオード対57を並列接続させている。
【0325】
第2電極層102は、第1装置領域21において中間絶縁層91を貫通して第1ダイオード対37に電気的に接続され、かつ、第2装置領域22において中間絶縁層91を貫通して第2pin接合部51に電気的に接続されている。第2電極層102は、第2パッド部102Aおよび複数の第2配線部102Bを含む。
第2パッド部102Aは、平面視において第1装置領域21および第2装置領域22から離間して第2パッド領域274の上に形成されている。第2パッド部102Aは、この形態では、平面視において第1装置領域21および第2装置領域22に重ならない領域に形成されている。第2パッド部102Aは、平面視において第1装置領域21の一部および第2装置領域22の一部に重なっていてもよい。
【0326】
第2パッド部102Aは、中間絶縁層91を挟んで第2パッド分離構造276によって取り囲まれた領域(具体的には第2半導体層15)に対向している。第2パッド部102Aは、中間絶縁層91を挟んで第2パッド分離構造276を被覆していてもよい。この場合、第2パッド部102Aは、第2パッド分離構造276によって取り囲まれた領域の全域を被覆していてもよい。
【0327】
複数の第2配線部102Bは、第2パッド部102Aから第1装置領域21および第2装置領域22に向けて帯状にそれぞれ引き出されている。複数の第2配線部102Bは、第1装置領域21(第1逆pin接合部38)および第2装置領域22(第2pin接合部51)に対して1対1対応の関係でそれぞれ引き出されている。これにより、複数の第2配線部102Bは、平面視において櫛歯状に形成されている。
【0328】
複数の第2配線部102Bは、第2方向Yに複数の第1配線部101Bに対向している。第2配線部102Bの第1方向Xの幅は任意である。第2配線部102Bの第1方向Xの幅は、第1配線部101Bの第1方向Xの幅と等しいことが好ましい。第2配線部102Bの第2方向Yの長さは任意である。第2配線部102Bの第2方向Yの長さは、第1配線部101Bの第2方向Yの長さと等しいことが好ましい。
【0329】
第1装置領域21側の第2配線部102Bは、中間絶縁層91の上から第1逆pin開口93に入り込んでいる。第1装置領域21側の第2配線部102Bは、第1逆pin開口93内において第1逆pin接合部38に電気的に接続されている。第1装置領域21側の第2配線部102Bは、第1逆pin接合部38(具体的には第1逆P層39)との間でオーミック接触を形成している。
【0330】
第2装置領域22側の第2配線部102Bは、中間絶縁層91の上から第2pin開口94に入り込んでいる。第2装置領域22側の第2配線部102Bは、第2pin開口94内において第2pin接合部51に電気的に接続されている。第2装置領域22側の第2配線部102Bは、第2pin接合部51(具体的には第2N層52)との間でオーミック接触を形成している。このようにして、第2電極層102は、第1ダイオード対37および第2pin接合部51を並列接続させている。
【0331】
図27は、図26のダイオードチップ371の電気回路図である。図27を参照して、ダイオードチップ371は、第1端子電極121、第2端子電極122およびTVS回路194を含む。TVS回路194は、第1並列回路192および第2並列回路193が直列接続された直列回路からなり、第1端子電極121および第2端子電極122に電気的に接続されている。
【0332】
第1並列回路192は、第2pinダイオードD2および第1ダイオード対37を含む。第1ダイオード対37は、第1逆pinダイオードDR1および第1ツェナーダイオードDZ1を含む。第2pinダイオードD2のカソードは、第2端子電極122に電気的に接続されている。
第1ダイオード対37は、第1逆pinダイオードDR1のカソードが第1ツェナーダイオードDZ1のカソードに逆バイアス接続された逆直列回路からなる。第1逆pinダイオードDR1のアノードは、第2端子電極122に電気的に接続されている。第1ツェナーダイオードDZ1のアノードは、第2pinダイオードD2のアノードに逆バイアス接続されている。
【0333】
第2並列回路193は、第1pinダイオードD1および第2ダイオード対57を含む。第2ダイオード対57は、第2逆pinダイオードDR2および第2ツェナーダイオードDZ2を含む。第1pinダイオードD1のカソードは、第1端子電極121に電気的に接続されている。第1pinダイオードD1のアノードは、第2pinダイオードD2のアノードおよび第1ツェナーダイオードDZ1のアノードに逆バイアス接続されている。
【0334】
第2ダイオード対57は、第2逆pinダイオードDR2のカソードが第2ツェナーダイオードDZ2のカソードに逆バイアス接続された逆直列回路からなる。第2逆pinダイオードDR2のアノードは、第1端子電極121に電気的に接続されている。第2ツェナーダイオードDZ2のアノードは、第1pinダイオードD1のアノード、第1ツェナーダイオードDZ1のアノードおよび第2pinダイオードD2のアノードに逆バイアス接続されている。
【0335】
ダイオードチップ371は、第1端子電極121および第2端子電極122の双方向に電流を流すことができる双方向デバイスである。すなわち、第1端子電極121および第2端子電極122の間に第1端子電極121を正とする所定の閾値電圧以上の電圧が印加されると、第1端子電極121から第2ダイオード対57および第2pinダイオードD2を介して第2端子電極122に電流が流れる。
【0336】
一方、第1端子電極121および第2端子電極122の間に第2端子電極122を正とする所定の閾値電圧以上の電圧が印加されると、第2端子電極122から第1ダイオード対37および第1pinダイオードD1を介して第1端子電極121に電流が流れる。
第1pin接合部31、第1pn接合部35および第1逆pin接合部38のレイアウトに対する第2pin接合部51、第2pn接合部55および第2逆pin接合部58のレイアウトの対称性を高めることにより、双方向デバイスとしての電気的特性を向上できる。つまり、第1端子電極121から第2端子電極122に向けて電流が流れた場合の電気的特性が、第2端子電極122から第1端子電極121に向けて電流が流れた場合の電気的特性と等しくなる。
【0337】
以上、ダイオードチップ371によってもダイオードチップ1に対して述べた効果と同様の効果を奏することができる。また、ダイオードチップ1によれば、電気的な接続形態の観点からも電気的特性を向上できる。
すなわち、ダイオードチップ371では、第2pin接合部51が第1ダイオード対37との間で第1並列回路192を形成し、第2ダイオード対57が第1pin接合部31との間で第2並列回路193を形成している。ダイオードチップ371では、第1電極層101が第1pin接合部31および第2ダイオード対57に電気的に接続され、第2電極層102が第1ダイオード対37および第2pin接合部51に電気的に接続されている。
【0338】
このような構造によれば、第1装置領域21において第1ダイオード対37を介して第1pin接合部31に電流を流し込むことができる。また、第2装置領域22において第2ダイオード対57を介して第2pin接合部51に電流を流し込むことができる。これにより、電流経路を短縮できるから、半導体チップ10(第1半導体層14)の抵抗成分による影響を低減できる。その結果、抵抗成分の減少分に応じて、最大電流能力IPPを増加させ、クランプ電圧VCLを低減させることができる。ダイオードチップ371の構造は、第2~第6実施形態にも組み込むことができる。
【0339】
図28A図28Yは、第1~第7実施形態に係るダイオードチップ(符号省略)に適用される製造方法の一例を説明するための断面図である。以下では、第1実施形態に係るダイオードチップ1が製造される例について説明する。
まず、図28Aを参照して、半導体チップ10(具体的には高濃度層16)のベースとなるp++型のシリコン製の半導体ウエハ401が用意される。半導体ウエハ401のp型不純物は、ホウ素であってもよい。
【0340】
次に、図28Bを参照して、エピタキシャル成長法によって、半導体ウエハ401の主面からシリコンが結晶成長される。この工程では、半導体ウエハ401から結晶成長途中のシリコンにp型不純物が拡散する。これにより、濃度低下層17のベースとなるp型の第1エピタキシャル層402が、半導体ウエハ401の上に形成される。
次に、図28Cを参照して、p型不純物(たとえばホウ素)が第1エピタキシャル層402の表層部に導入される。p型不純物は、イオン注入法によって第1エピタキシャル層402の表層部に導入されてもよい。これにより、第1エピタキシャル層402の表層部のp型不純物濃度が高められる。
【0341】
次に、図28Dを参照して、エピタキシャル成長法によって、第1エピタキシャル層402からシリコンが結晶成長される。これにより、濃度保持層18のベースとなる第2エピタキシャル層403が、第1エピタキシャル層402の上に形成される。第2エピタキシャル層403の導電型は、n型であってもよいし、p型であってもよい。
次に、ダイオードチップ1にそれぞれ対応した複数のチップ領域404、および、複数のチップ領域404を区画する切断予定領域405が設定される。図28Dでは、1つのチップ領域404が図示されている(以下、同じ。)。複数のチップ領域404は、第1方向Xおよび第2方向Yに沿って間隔を空けて行列状に設定される。切断予定領域405は、第1方向Xおよび第2方向Yに沿って延びる格子状に設定され、複数のチップ領域404を区画する。
【0342】
次に、各チップ領域404の第2エピタキシャル層403の表層部において、第1pn接合部35の第1内部N層36(第1逆pin接合部38の第1逆N層41)、および、第2pn接合部55の第2内部N層56(第2逆pin接合部58の第2逆N層61)を形成すべき領域に、n型不純物(たとえばヒ素および/または燐)が選択的に導入される。n型不純物は、イオン注入マスク(図示せず)を介するイオン注入法によって第2エピタキシャル層403の表層部に導入されてもよい。
【0343】
また、各チップ領域404の第2エピタキシャル層403の表層部において、第1pin接合部31の第1P層34および第2pin接合部51の第2P層54を形成すべき領域に、p型不純物(たとえばホウ素)が選択的に導入される。また、各チップ領域404の第2エピタキシャル層403の表層部において外側不純物層80の下側領域82を形成すべき領域に、p型不純物が選択的に導入される。外側不純物層80用のp型不純物は、切断予定領域405を跨がるように各チップ領域404の周縁部に導入される。p型不純物は、イオン注入マスク(図示せず)を介するイオン注入法によって第2エピタキシャル層403の表層部に導入されてもよい。
【0344】
次に、図28Eを参照して、第1エピタキシャル層402の表層部に導入されたp型不純物、および、第2エピタキシャル層403の表層部に導入されたp型不純物およびn型不純物が、ドライブイン処理法によって拡散される。これにより、第1エピタキシャル層402の表層部に導入されたp型不純物が、第2エピタキシャル層403内に拡散し、濃度保持層18が形成される。
【0345】
第2エピタキシャル層403の表層部に導入されたp型不純物およびn型不純物は、第1P層34、第1内部N層36(第1逆N層41)、第2P層54、第2内部N層56(第2逆N層61)および下側領域82のベースとなる。半導体ウエハ401、第1エピタキシャル層402および第2エピタキシャル層403は、第1半導体層14のベースとなる。濃度保持層18は、イオン注入法および不純物拡散法に代えて、p型不純物の導入を伴うエピタキシャル成長法によって比較的高濃度な第2エピタキシャル層403を直接形成することによっても得られる。
【0346】
次に、図28Fを参照して、n型不純物の導入を伴うエピタキシャル成長法によって、第2エピタキシャル層403からシリコンが結晶成長される。この工程では、第2エピタキシャル層403から結晶成長途中のシリコンにp型不純物およびn型不純物が拡散する。これにより、第2半導体層15のベースとなる第3エピタキシャル層406が、第2エピタキシャル層403の上に形成される。
【0347】
また、第1内部N層36(第1逆N層41)、第2内部N層56(第2逆N層61)、第1P層34、第2P層54および下側領域82が、第2エピタキシャル層403および第3エピタキシャル層406の境界部に形成される。また、第1pn接合部35および第2pn接合部55が、第2エピタキシャル層403および第3エピタキシャル層406の境界部に形成される。
【0348】
図28A図28Fの工程を経て、半導体ウエハ401、第1エピタキシャル層402、第2エピタキシャル層403および第3エピタキシャル層406を含む半導体ウエハ構造407が形成される。半導体ウエハ構造407は、一方側の第1ウエハ主面408および他方側の第2ウエハ主面409を有している。第1ウエハ主面408および第2ウエハ主面409は、半導体チップ10の第1主面11および第2主面12にそれぞれ対応している。
【0349】
次に、図28Gを参照して、所定パターンを有するイオン注入マスク410が、第1ウエハ主面408の上に形成される。イオン注入マスク410は、各チップ領域404および切断予定領域405において外側不純物層80の上側領域81を形成すべき領域を露出させ、それら以外の領域を被覆している。
次に、p型不純物(たとえばホウ素)が、イオン注入マスク410を介して第1ウエハ主面408(第3エピタキシャル層406)の表層部に導入される。これにより、外側不純物層80の上側領域81が各チップ領域404および切断予定領域405において第1ウエハ主面408の表層部に形成される。
【0350】
次に、図28Hを参照して、所定パターンを有するハードマスク411が、第1ウエハ主面408の上に形成される。ハードマスク411は、各チップ領域404において複数のトレンチ412を形成すべき領域を露出させ、それら以外の領域を被覆している。複数のトレンチ412は、領域分離トレンチ24、第1接合分離トレンチ46、第2接合分離トレンチ66、シールドトレンチ74、第1パッド分離トレンチ277および第2パッド分離トレンチ280を含む。
【0351】
ハードマスク411は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法または酸化処理法(たとえば熱酸化処理法)によって形成されてもよい。ハードマスク411に対するパターニングは、エッチングマスクを介するエッチング法によって行われてもよい。エッチング法は、ウエットエッチング法および/またはドライエッチング法であってもよい。
次に、ハードマスク411を介するエッチング法によって、第1ウエハ主面408の不要な部分が除去される。エッチング法は、ウエットエッチング法および/またはドライエッチング法であってもよい。エッチング法は、ドライエッチング法の一例としてのRIE(Reactive Ion Etching)法であることが好ましい。これにより、複数のトレンチ412が第1ウエハ主面408に形成される。ハードマスク411は、その後、除去される。
【0352】
次に、図28Iを参照して、第1ベース絶縁層413が、第1ウエハ主面408の上に形成される。第1ベース絶縁層413は、領域分離絶縁層25、第1接合分離絶縁層47、第2接合分離絶縁層67、シールド絶縁層75、第1パッド分離絶縁層278および第2パッド分離絶縁層281のベースとなる。
第1ベース絶縁層413は、第1ウエハ主面408および複数のトレンチ412の内壁に沿って膜状に形成される。第1ベース絶縁層413は、CVD法または酸化処理法(たとえば熱酸化処理法)によって形成されてもよい。第1ベース絶縁層413は、この形態では、熱酸化処理法によって形成される。
【0353】
次に、ポリシリコン層414が、第1ベース絶縁層413の上に形成される。ポリシリコン層414は、領域分離構造23のポリシリコン26、第1接合分離構造45のポリシリコン48、第2接合分離構造65のポリシリコン68、シールド構造71のポリシリコン76、第1パッド分離構造275のポリシリコン279および第2パッド分離構造276のポリシリコン282のベースとなる。ポリシリコン層414は、第1ベース絶縁層413を挟んで複数のトレンチ412を埋め、第1ウエハ主面408を被覆する。ポリシリコン層414は、CVD法によって形成されてもよい。
【0354】
次に、図28Jを参照して、ポリシリコン層414の不要な部分が、エッチング法によって除去される。エッチング法は、ウエットエッチング法および/またはドライエッチング法であってもよい。ポリシリコン層414は、第1ベース絶縁層413が露出するまで除去される。
次に、第1ベース絶縁層413の不要な部分が、エッチング法によって除去される。エッチング法は、ウエットエッチング法および/またはドライエッチング法であってもよい。第1ベース絶縁層413は、第1ウエハ主面408が露出するまで除去される。第1ベース絶縁層413のうち第1ウエハ主面408を被覆する部分は、中間絶縁層91の一部として残存させてもよい。これにより、領域分離構造23、第1接合分離構造45、第2接合分離構造65、シールド構造71、第1パッド分離構造275および第2パッド分離構造276が、各チップ領域404に形成される。
【0355】
次に、図28Kを参照して、所定パターンを有するイオン注入マスク415が、第1ウエハ主面408の上に形成される。イオン注入マスク415は、各チップ領域404において第1pin接合部31の第1N層32および第2pin接合部51の第2N層52を形成すべき領域を露出させ、それら以外の領域を被覆している。
次に、n型不純物(たとえば燐)が、イオン注入マスク415を介して第1ウエハ主面408(第3エピタキシャル層406)の表層部に導入される。これにより、第1N層32および第2N層52が、各チップ領域404において第1ウエハ主面408の表層部に形成される。また、第1N層32、第1I層33および第1P層34を含む第1pin接合部31、ならびに、第2N層52、第2I層53および第2P層54を含む第2pin接合部51が、各チップ領域404において第1ウエハ主面408(第3エピタキシャル層406)の表層部に形成される。イオン注入マスク415は、その後、除去される。
【0356】
次に、図28Lを参照して、所定パターンを有するイオン注入マスク416が、第1ウエハ主面408の上に形成される。イオン注入マスク416は、各チップ領域404において第1逆pin接合部38の第1逆P層39および第2逆pin接合部58の第2逆P層59を形成すべき領域を露出させ、それら以外の領域を被覆している。
次に、p型不純物(たとえばホウ素)が、イオン注入マスク416を介して第1ウエハ主面408(第3エピタキシャル層406)の表層部に導入される。これにより、第1逆P層39および第2逆P層59が、各チップ領域404において第1ウエハ主面408の表層部に形成される。また、第1逆P層39、第1逆I層40および第1逆N層41を含む第1逆pin接合部38、ならびに、第2逆P層59、第2逆I層60および第2逆N層61を含む第2逆pin接合部58が、各チップ領域404において第1ウエハ主面408(第3エピタキシャル層406)の表層部に形成される。イオン注入マスク416は、その後、除去される。図28Lの工程は、図28Kの工程に先立って実施されてもよい。
【0357】
次に、図28Mを参照して、中間絶縁層91のベースとなる第2ベース絶縁層417が、第1ウエハ主面408の上に形成される。第2ベース絶縁層417は、この形態では、第1ウエハ主面408側からこの順に積層された第1酸化シリコン層、窒化シリコン層および第2酸化シリコン層を含むONO積層構造を有している。第1酸化シリコン層は、CVD法または酸化処理法(たとえば熱酸化処理法)によって形成されてもよい。窒化シリコン層および第2酸化シリコン層は、CVD法によってそれぞれ形成されてもよい。
【0358】
次に、図28Nを参照して、所定パターンを有するレジストマスク418が、第2ベース絶縁層417の上に形成される。レジストマスク418は、各チップ領域404の第2ベース絶縁層417において第1pin開口92、第1逆pin開口93、第2pin開口94および第2逆pin開口95を形成すべき領域を露出させ、それら以外の領域を被覆している。
【0359】
次に、レジストマスク418を介するエッチング法によって、第2ベース絶縁層417の不要な部分が除去される。エッチング法は、ウエットエッチング法および/またはドライエッチング法であってもよい。これにより、第1pin開口92、第1逆pin開口93、第2pin開口94および第2逆pin開口95が各チップ領域404の第2ベース絶縁層417に形成される。レジストマスク418は、その後、除去される。
【0360】
次に、図28Oを参照して、第1電極層101および第2電極層102のベースとなるベース電極層419が、第2ベース絶縁層417の上に形成される。ベース電極層419は、純Cu層(純度が99%以上のCu層)、純Al層(純度が99%以上のAl層)、AlSi合金層、AlCu合金層およびAlSiCu合金層のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。ベース電極層419は、スパッタ法および/または蒸着法によって形成されてもよい。
【0361】
次に、図28Pを参照して、所定パターンを有するレジストマスク420が、ベース電極層419の上に形成される。レジストマスク420は、各チップ領域404のベース電極層419において第1電極層101および第2電極層102を形成すべき領域を被覆し、それら以外の領域を露出させている。
次に、レジストマスク420を介するエッチング法によって、ベース電極層419の不要な部分が除去される。エッチング法は、ウエットエッチング法および/またはドライエッチング法であってもよい。これにより、各チップ領域404に第1電極層101および第2電極層102に形成される。レジストマスク420は、その後、除去される。
【0362】
次に、図28Qを参照して、パッシベーション層112が、第2ベース絶縁層417の上に形成される。パッシベーション層112は、第2ベース絶縁層417の上において第1電極層101および第2電極層102を被覆する。パッシベーション層112は、この形態では、窒化シリコンを含む。パッシベーション層112は、CVD法によって形成されてもよい。
【0363】
次に、図28Rを参照して、樹脂層113が、パッシベーション層112の上に形成される。樹脂層113は、感光性樹脂(この形態ではポリイミド)をパッシベーション層112の上に塗布することによって形成される。これにより、パッシベーション層112および樹脂層113を含む最上絶縁層111が形成される。
次に、図28Sを参照して、樹脂層113が、第1パッド開口114、第2パッド開口115および切断予定領域405に対応したパターンで露光された後、現像される。これにより、第1パッド開口114、第2パッド開口115および切断予定領域405に対応したパターンを有する複数の開口421が、樹脂層113に形成される。
【0364】
次に、図28Tを参照して、パッシベーション層112において樹脂層113の開口421から露出する部分が、樹脂層113をマスクとして利用したエッチング法によって除去される。エッチング法は、ウエットエッチング法および/またはドライエッチング法であってもよい。これにより、第1パッド開口114、第2パッド開口115およびダイシングストリート422が、最上絶縁層111に形成される。ダイシングストリート422は、切断予定領域405に沿う格子状に形成される。
【0365】
次に、図28Uを参照して、第2ベース絶縁層417においてダイシングストリート422から露出する部分が、エッチング法によって除去される。エッチング法は、ウエットエッチング法および/またはドライエッチング法であってもよい。これにより、第2ベース絶縁層417において各チップ領域404を被覆する部分が中間絶縁層91として分割される。
【0366】
次に、第1ウエハ主面408においてダイシングストリート422から露出する部分が、エッチング法によってさらに除去される。エッチング法は、ウエットエッチング法および/またはドライエッチング法であってもよい。エッチング法は、ドライエッチング法の一例としてのRIE法であることが好ましい。エッチング法は、ボッシュプロセスであることがさらに好ましい。これにより、複数のチップ領域404を区画するダイシング溝423が、第1ウエハ主面408に形成される。
【0367】
ダイシング溝423は、第3エピタキシャル層406、第2エピタキシャル層403および第1エピタキシャル層402を貫通して、半導体ウエハ401(具体的には高濃度層16)の厚さ方向途中部に至る。これにより、第1エピタキシャル層402が濃度低下層17となり、第2エピタキシャル層403が濃度保持層18となり、第3エピタキシャル層406が第2半導体層15となる。
【0368】
次に、図28Vを参照して、側面絶縁層131のベースとなる第3ベース絶縁層424が、第1ウエハ主面408の上に形成される。第3ベース絶縁層424は、ダイシング溝423の内壁に沿って膜状に形成され、かつ、第1ウエハ主面408側の構造物を一括して被覆する。第3ベース絶縁層424は、この形態では、酸化シリコンを含む。第3ベース絶縁層424は、CVD法によって形成されてもよい。
【0369】
次に、図28Wを参照して、第3ベース絶縁層424の不要な部分が、エッチング法によって除去される。エッチング法は、ウエットエッチング法および/またはドライエッチング法であってもよい。エッチング法は、ドライエッチング法の一例としてのRIE法であることが好ましい。これにより、第3ベース絶縁層424においてダイシング溝423の側面を被覆する部分以外の部分が除去される。
【0370】
次に、図28Xを参照して、第1端子電極121および第2端子電極122が、各チップ領域404に形成される。第1端子電極121および第2端子電極122は、この形態では、第1ウエハ主面408側からこの順に積層されたNi層、Pd層およびAu層を含む積層構造を有している。Ni層、Pd層およびAu層は、電解めっき法および/または無電解めっき法によってそれぞれ形成されてもよい。
【0371】
次に、図28Yを参照して、第2ウエハ主面409が、ダイシング溝423に連通するまで研削される。これにより、半導体ウエハ構造407が半導体チップ10となり、複数のダイオードチップ1が1枚の半導体ウエハ構造407から切り出される。第2ウエハ主面409の研削工程は、第2ウエハ主面409がダイシング溝423に連通した後も継続されてもよい。つまり、第2ウエハ主面409の研削工程は、半導体チップ10(高濃度層16)の薄膜化工程を含んでいてもよい。以上を含む工程を経て、ダイオードチップ1が製造される。
【0372】
本発明の実施形態は、さらに他の形態で実施できる。
前述の各実施形態において、第1pin接合部31および第1逆pin接合部38の配置が入れ替えられ、第2pin接合部51および第2逆pin接合部58の配置が入れ替えられてもよい。
前述の各実施形態において、各半導体部分の導電型が反転された構造が採用されてもよい。つまり、p型の部分がn型に形成され、n型の部分がp型に形成されてもよい。この場合、第1pinダイオードD1、第1ツェナーダイオードDZ1、第1逆pinダイオードDR1、第2pinダイオードD2、第2ツェナーダイオードDZ2、第2逆pinダイオードDR2の極性方向がそれぞれ逆向きになる。
【0373】
前述の各実施形態において、シールド構造71を有さない構造が採用されてもよい。また、前述の各実施形態において、外側不純物層80を有さない構造が採用されてもよい。また、前述の各実施形態において、側面絶縁層131を有さない構造が採用されてもよい。この場合、半導体チップ10の側面13A~側面13Dはチップ本体2のチップ側面5A~5Dの一部をそれぞれ形成する。
【0374】
前述の各実施形態において、濃度保持層18を有さない第1半導体層14(半導体チップ10)が形成され、濃度低下層17との間でpn接合を形成する第1内部N層36(第2内部N層56)が採用されてもよい。ただし、この場合、実際の耐圧(具体的にはブレークダウン電圧VB)が目標の耐圧から変動する可能性がある点に留意する。
この明細書は、第1~第11実施形態に示された特徴の如何なる組み合わせ形態をも制限しない。第1~第11実施形態は、それらの間で任意の態様および任意の形態において組み合わせられることができる。つまり、第1~第11実施形態に示された特徴が任意の態様および任意の形態で組み合わされたダイオードチップが採用されてもよい。
【0375】
本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、これらは本発明の技術的内容を明らかにするために用いられた具体例に過ぎず、本発明はこれらの具体例に限定して解釈されるべきではなく、本発明の範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0376】
1 ダイオードチップ
10 半導体チップ
21 第1装置領域
22 第2装置領域
23 領域分離構造
24 領域分離トレンチ
25 領域分離絶縁体
26 ポリシリコン
31 第1pin接合部
35 第1pn接合部
37 第1ダイオード対
38 第1逆pin接合部
48 第1ポリシリコン
51 第2pin接合部
55 第2pn接合部
57 第2ダイオード対
58 第2逆pin接合部
68 第2ポリシリコン
91 中間絶縁層
101 第1電極層
101A 第1パッド部
101B 第1配線部
102 第2電極層
102A 第2パッド部
102B 第2配線部
111 最上絶縁層
121 第1端子電極
122 第2端子電極
273 第1パッド領域
274 第2パッド領域
275 第1パッド分離構造
276 第2パッド分離構造
277 第1パッド分離トレンチ
278 第1パッド分離絶縁層
279 ポリシリコン
280 第2パッド分離トレンチ
281 第2パッド分離絶縁層
282 ポリシリコン
291 ダイオードチップ
331 ダイオードチップ
341 ダイオードチップ
351 ダイオードチップ
352 第1容量層
353 第2容量層
361 ダイオードチップ
362 第1内部容量層
363 第2内部容量層
371 ダイオードチップ
C1 第1内部寄生容量
C2 第2内部寄生容量
CO1 第1外部寄生容量
CO2 第2外部寄生容量
CS1 第1表層寄生容量
CS2 第2表層寄生容量
図1
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図28G
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図28I
図28J
図28K
図28L
図28M
図28N
図28O
図28P
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図28R
図28S
図28T
図28U
図28V
図28W
図28X
図28Y