(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】体細胞計、体細胞測定方法、プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20231219BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20231219BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20231219BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G01N33/50 K
G01N33/48 M
C12M1/34 D
C12Q1/06
(21)【出願番号】P 2019185123
(22)【出願日】2019-10-08
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100113354
【氏名又は名称】石井 総
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 眞
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第01/075421(WO,A1)
【文献】特表2013-543118(JP,A)
【文献】特表2002-503097(JP,A)
【文献】米国特許第06031367(US,A)
【文献】特公昭49-029507(JP,B1)
【文献】特開2001-224366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
G01N 33/00-33/46
C12M 1/34
C12Q 1/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心分離した生乳の体細胞の
第一濃度を、遠心分離を施した時間と対応付けて測定する体細胞濃度測定部と、
前記体細胞の
第一濃度と前記時間との対応関係における時定数を記録する時定数記録部と、
前記体細胞濃度測定部の測定結果および前記時定数記録部の記録内容に基づき、前記体細胞の
第二濃度を導出する体細胞濃度導出部と、
を備え
、
前記第一濃度が、前記時間と共に変化するものであり、
前記第二濃度が、一定値である、
体細胞計。
【請求項2】
請求項1に記載の体細胞計であって、
前記体細胞濃度測定部は、複数の前記時間につき、前記体細胞の
第一濃度を測定する、
体細胞計。
【請求項3】
請求項2に記載の体細胞計であって、
前記体細胞濃度導出部は、前記体細胞濃度測定部の測定結果と、前記対応関係との間の誤差の大きさが最小となるように、前記体細胞の
第二濃度を導出する、
体細胞計。
【請求項4】
請求項3に記載の体細胞計であって、
前記体細胞濃度導出部は、最小二乗法を用いて、前記体細胞の
第二濃度を導出する、
体細胞計。
【請求項5】
遠心分離した生乳の体細胞の
第一濃度を、遠心分離を施した時間と対応付けて測定する体細胞濃度測定工程と、
前記体細胞の
第一濃度と前記時間との対応関係における時定数を記録する時定数記録工程と、
前記体細胞濃度測定工程の測定結果および前記時定数記録工程の記録内容に基づき、前記体細胞の
第二濃度を導出する体細胞濃度導出工程と、
を備え
、
前記第一濃度が、前記時間と共に変化するものであり、
前記第二濃度が、一定値である、
体細胞測定方法。
【請求項6】
体細胞測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記体細胞測定処理が、
遠心分離した生乳の体細胞の
第一濃度を、遠心分離を施した時間と対応付けて測定する体細胞濃度測定工程と、
前記体細胞の
第一濃度と前記時間との対応関係における時定数を記録する時定数記録工程と、
前記体細胞濃度測定工程の測定結果および前記時定数記録工程の記録内容に基づき、前記体細胞の
第二濃度を導出する体細胞濃度導出工程と、
を備え
、
前記第一濃度が、前記時間と共に変化するものであり、
前記第二濃度が、一定値である、
プログラム。
【請求項7】
体細胞測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、
前記体細胞測定処理が、
遠心分離した生乳の体細胞の
第一濃度を、遠心分離を施した時間と対応付けて測定する体細胞濃度測定工程と、
前記体細胞の
第一濃度と前記時間との対応関係における時定数を記録する時定数記録工程と、
前記体細胞濃度測定工程の測定結果および前記時定数記録工程の記録内容に基づき、前記体細胞の
第二濃度を導出する体細胞濃度導出工程と、
を備え
、
前記第一濃度が、前記時間と共に変化するものであり、
前記第二濃度が、一定値である、
記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心分離を施した生乳中の白血球の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生乳の遠心分離が知られている。遠心分離を施した生乳中の白血球を測定するセンサも知られている(例えば、特許文献1、2および3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-230363号公報
【文献】国際公開2010/013757号
【文献】特表2015-508506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術によれば、遠心分離を長時間行わなければ、生乳中の白血球を正確に測定することができない。
【0005】
そこで、本発明は、短時間の遠心分離で生乳中の体細胞(例えば、白血球または好中球)を検出可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる体細胞計は、遠心分離した生乳の体細胞の濃度を、遠心分離を施した時間と対応付けて測定する体細胞濃度測定部と、前記体細胞の濃度と前記時間との対応関係における時定数を記録する時定数記録部と、前記体細胞濃度測定部の測定結果および前記時定数記録部の記録内容に基づき、前記体細胞の濃度を導出する体細胞濃度導出部とを備るように構成される。
【0007】
上記のように構成された体細胞計によれば、体細胞濃度測定部が、遠心分離した生乳の体細胞の濃度を、遠心分離を施した時間と対応付けて測定する。時定数記録部が、前記体細胞の濃度と前記時間との対応関係における時定数を記録する。体細胞濃度導出部が、前記体細胞濃度測定部の測定結果および前記時定数記録部の記録内容に基づき、前記体細胞の濃度を導出する。
【0008】
なお、本発明にかかる体細胞計は、前記体細胞濃度測定部は、複数の前記時間につき、前記体細胞の濃度を測定するようにしてもよい。
【0009】
なお、本発明にかかる体細胞計は、前記体細胞濃度導出部は、前記体細胞濃度測定部の測定結果と、前記対応関係との間の誤差の大きさが最小となるように、前記体細胞の濃度を導出するようにしてもよい。
【0010】
なお、本発明にかかる体細胞計は、前記体細胞濃度導出部は、最小二乗法を用いて、前記体細胞の濃度を導出するようにしてもよい。
【0011】
本発明にかかる体細胞測定方法は、遠心分離した生乳の体細胞の濃度を、遠心分離を施した時間と対応付けて測定する体細胞濃度測定工程と、前記体細胞の濃度と前記時間との対応関係における時定数を記録する時定数記録工程と、前記体細胞濃度測定工程の測定結果および前記時定数記録工程の記録内容に基づき、前記体細胞の濃度を導出する体細胞濃度導出工程とを備えた体細胞測定方法である。
【0012】
本発明にかかるプログラムは、体細胞測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記体細胞測定処理が、遠心分離した生乳の体細胞の濃度を、遠心分離を施した時間と対応付けて測定する体細胞濃度測定工程と、前記体細胞の濃度と前記時間との対応関係における時定数を記録する時定数記録工程と、前記体細胞濃度測定工程の測定結果および前記時定数記録工程の記録内容に基づき、前記体細胞の濃度を導出する体細胞濃度導出工程とを備えたプログラムである。
【0013】
本発明にかかる記録媒体は、体細胞測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、前記体細胞測定処理が、遠心分離した生乳の体細胞の濃度を、遠心分離を施した時間と対応付けて測定する体細胞濃度測定工程と、前記体細胞の濃度と前記時間との対応関係における時定数を記録する時定数記録工程と、前記体細胞濃度測定工程の測定結果および前記時定数記録工程の記録内容に基づき、前記体細胞の濃度を導出する体細胞濃度導出工程とを備えた記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一の実施形態にかかる体細胞計1の構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】体細胞の濃度C(t)と時間tとの対応関係を示す図である。
【
図3】遠心分離を施した時間tが時定数Tに等しいときの、体細胞の濃度C(T)を示す図である。
【
図4】遠心分離を施した時間がt1、t2、t3のときの、体細胞の濃度の測定値C(t1)、C(t2)、C(t3)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0016】
第一の実施形態
図1は、本発明の第一の実施形態にかかる体細胞計1の構成を示す機能ブロック図である。第一の実施形態にかかる体細胞計1は、体細胞濃度測定部12、時定数記録部14、体細胞濃度導出部16を備える。
【0017】
体細胞濃度測定部12は、遠心分離した生乳の体細胞(例えば、白血球または好中球)の濃度Cを、遠心分離を施した時間tと対応付けて測定する。体細胞の濃度Cは、時間tの関数であるため、以後、C(t)と記載する。
【0018】
図2は、体細胞の濃度C(t)と時間tとの対応関係を示す図である。生乳に遠心分離を施す時間tを長くする程、体細胞が生乳から分離されるので、体細胞の濃度C(t)が上昇する。やがて、体細胞が生乳から完全に分離されると、体細胞の濃度C(t)が一定値C0をとる。この一定値C0が、求めたい生乳の体細胞の濃度である。体細胞の濃度C(t)は、以下の式(1)のように表される。
【0019】
【数1】
時定数記録部14は、体細胞の濃度C(t)と、遠心分離を施した時間tとの対応関係における時定数T(すなわち、上記の式(1)のT)を記録する。
【0020】
図3は、遠心分離を施した時間tが時定数Tに等しいときの、体細胞の濃度C(T)を示す図である。遠心分離を施した時間tが時定数Tに等しい場合は、体細胞の濃度C(T)は未だCに達しない。
【0021】
体細胞濃度導出部16は、体細胞濃度測定部12の測定結果および時定数記録部14の記録内容(時定数T)に基づき、体細胞の濃度Cを導出する。体細胞濃度導出部16は、体細胞濃度測定部12の測定結果C(t)を受け、遠心分離を施した時間tが時定数Tに等しい場合の値C(T)を抽出して、体細胞の濃度Cの導出に用いる。
【0022】
体細胞濃度導出部16は、以下の式(2)に、体細胞濃度測定部12の測定結果C(T)を代入して、体細胞の濃度Cを導出する。式(2)は、式(1)のtにTを代入した上で、C0につき解いたものである。
【0023】
【0024】
まず、体細胞濃度測定部12は、遠心分離した生乳の体細胞の濃度C(t)を測定する。体細胞濃度導出部16は、体細胞濃度測定部12の測定結果C(t)および時定数記録部14の記録内容(時定数T)に基づき、上記の式(2)に従って、体細胞の濃度Cを導出する。
【0025】
第一の実施形態によれば、体細胞の濃度の測定値が、体細胞の濃度Cに達しない程度の短時間の遠心分離で、生乳中の体細胞(例えば、白血球または好中球)を検出できる。
【0026】
第二の実施形態
第二の実施形態にかかる体細胞計1は、複数の時間t1、t2、t3につき、体細胞の濃度C(t1)、C(t2)、C(t3)を測定し、最小二乗法を用いて、体細胞の濃度Cを導出する点が、第一の実施形態と異なる。
【0027】
第二の実施形態にかかる体細胞計1の構成は、第一の実施形態と同様であり、説明を省略する(
図1参照)。
【0028】
体細胞濃度測定部12は、複数の時間t1、t2、t3につき、体細胞の濃度C(t1)、C(t2)、C(t3)を測定する。ただし、時間t1、t2、t3は、時定数Tよりも短いか同程度が好ましい。なお、体細胞濃度測定部12が、3種類の時間について体細胞の濃度を測定することとなっているが、2種類の時間についてでも、4種類以上の時間についてでも体細胞の濃度を測定するようにしてもよい。
【0029】
図4は、遠心分離を施した時間がt1、t2、t3のときの、体細胞の濃度の測定値C(t1)、C(t2)、C(t3)を示す図である。ただし、真の体細胞の濃度C(t)と遠心分離を施した時間tとの対応関係を点線の曲線で示している。いずれの時間t1、t2、t3における測定値C(t1)、C(t2)、C(t3)も、真の対応関係からずれており、誤差を有していることが分かる。また、測定値C(t1)、C(t2)、C(t3)は未だCに達しない。
【0030】
時定数記録部14は、時定数Tを記録する。
【0031】
体細胞濃度導出部16は、体細胞濃度測定部12の測定結果(C(t1)、C(t2)、C(t3))と、(体細胞の濃度C(t)と遠心分離を施した時間tとの)対応関係との間の誤差δの大きさが最小となるように、体細胞の濃度C0を導出する。具体的には、体細胞濃度導出部16は、以下のように、最小二乗法を用いて、体細胞の濃度C0を導出する。
【0032】
まず、体細胞濃度導出部16は、以下の式(3)に、あらゆるC0(例えば、5、10、15、20、…万個/ミリリットル)を代入し、各時間t1、t2、t3についての誤差δn(ただし、n=1、2、3)を求める。
【0033】
【数3】
さらに、体細胞濃度導出部16は、各時間t1、t2、t3についての誤差δnの2乗和の平方根をとり、誤差δの大きさとする。具体的には、以下の式(4)に、誤差δnを代入し、誤差δを求める。
【0034】
【数4】
最後に、体細胞濃度導出部16は、誤差δの大きさが最小となるような体細胞の濃度C0を求める。
【0035】
次に、第二の実施形態の動作を説明する。
【0036】
まず、体細胞濃度測定部12は、遠心分離した生乳の体細胞の濃度C(t1)、C(t2)、C(t3)を測定する。体細胞濃度導出部16は、体細胞濃度測定部12の測定結果C(t1)、C(t2)、C(t3)および時定数記録部14の記録内容(時定数T)に基づき、上記の式(3)に従って、あらゆるC0につき、各時間t1、t2、t3についての誤差δn(ただし、n=1、2、3)を求める。さらに、体細胞濃度導出部16は、誤差δnの2乗和の平方根をとり、誤差δの大きさとする(式(4)参照)。体細胞濃度導出部16は、誤差δの大きさが最小となるような体細胞の濃度C0を求める。
【0037】
第二の実施形態によれば、第一の実施形態と同様な効果を奏する。しかも、複数の時間t1、t2、t3についての測定結果C(t1)、C(t2)、C(t3)を用いて、体細胞の濃度C0を求めるので、第一の実施形態に比べて、高精度に体細胞の濃度C0を求めることができる。
【0038】
また、上記の実施形態は、以下のようにして実現できる。CPU、ハードディスク、メディア(USBメモリ、CD-ROMなど)読み取り装置を備えたコンピュータに、上記の各部分、例えば、体細胞濃度測定部12、時定数記録部14および体細胞濃度導出部16を実現するプログラムを記録したメディアを読み取らせて、ハードディスクにインストールする。このような方法でも、上記の機能を実現できる。
【符号の説明】
【0039】
1 体細胞計
12 体細胞濃度測定部
14 時定数記録部
16 体細胞濃度導出部
C(t) 体細胞の濃度
t 遠心分離を施した時間
T 時定数