(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】冷却管を備えた電動機のステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/24 20060101AFI20231219BHJP
H02K 1/20 20060101ALI20231219BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H02K3/24 J
H02K1/20 Z
H02K1/20 A
H02K9/19 A
(21)【出願番号】P 2019194359
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】古仲 雄大
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-252188(JP,A)
【文献】特開2004-236415(JP,A)
【文献】特開昭62-141945(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第00739896(GB,A)
【文献】特開2004-112967(JP,A)
【文献】特開2013-179746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/24
H02K 1/20
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機のステータにおいて、
円筒形のステータコアと、
前記ステータコアに巻回された巻線と、
前記ステータコアの軸方向端部に形成されたコイルエンドに巻回した第1冷却管と、
前記ステータコアに軸方向で穿設された通孔と、前記通孔に挿通された第2冷却管と、を備え、
前記第1冷却管と前記第2冷却管が一続きの管で形成されており、
前記一続きの管を2本備え、該2本の一続きの管は前記コイルエンドと前記ステータコアとの間で行き来し、前記一続きの管の入口と出口が前記電動機の入力側又は出力側に纏められている、電動機のステータ。
【請求項2】
前記第1冷却管は、前記コイルエンドに位置する前記巻線の束に螺旋状に巻回されているか、又は前記コイルエンドに位置する前記巻線の束に沿って周方向に巻回されている、請求項1に記載の電動機のステータ。
【請求項3】
前記第1冷却管は前記コイルエンドに位置する前記巻線の束を緊縛していて前記巻線の形状を固定する、請求項1又は2に記載の電動機のステータ。
【請求項4】
前記第1冷却管が軟性材料で形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の電動機のステータ。
【請求項5】
前記ステータコアの内周部に所定間隔で形成された複数のスロットをさらに備え、前記通孔は、隣接する前記スロットの中間に且つ前記ステータコアの外周部近傍に形成されている、請求項1に記載の電動機のステータ。
【請求項6】
前記一続きの管の入口が前記電動機の出力側に配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の電動機のステータ。
【請求項7】
前記第1冷却管又は前記第2冷却管の入口と出口は前記ステータコアの周方向で所定間隔に複数配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の電動機のステータ。
【請求項8】
前記ステータコアの外周部に配設された冷却ジャケットをさらに備え、前記冷却ジャケットに供給する冷媒と前記第1冷却管及び前記第2冷却管の少なくとも一方に供給する冷媒を共通化した、請求項1から7のいずれか一項に記載の電動機のステータ。
【請求項9】
前記ステータコア、前記巻線、及び前記冷却ジャケットによって形成される隙間に充填された熱伝導樹脂をさらに備える、請求項8に記載の電動機のステータ。
【請求項10】
前記熱伝導樹脂がモールド樹脂又は含侵樹脂である、請求項9に記載の電動機のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に関し、特に冷却管を備えた電動機のステータに関する。
【背景技術】
【0002】
巻線の発熱やステータコアの鉄損等による温度上昇は電動機の性能低下に直結する。従って、巻線やステータコア等のステータの熱を如何に放熱するかは重要な課題である。ステータの発熱を除去する手法としては、冷却ジャケットをステータコア外周に設ける構造、冷却経路をステータコアに設ける構造、冷却経路をコイルエンドに設ける構造等が知られている。斯かる先行技術としては後述の文献が公知である。
【0003】
特許文献1には、固定子鉄芯内部の固定子巻線の外周領域に、軸方向に貫通するように設けられ且つ周方向に並んで配置された複数の冷却管が開示されている。
【0004】
特許文献2には、固定子鉄心に嵌挿された冷却ジャケットであって、冷却ジャケットの円筒内部に螺旋状の複数の冷却水路を設けることが開示されている。
【0005】
特許文献3には、ステータコアのスロットにコイルを収容し、ステータ内周面に開口するスロット開口部を閉塞してスロット内部に形成した冷媒通路が開示されている。
【0006】
特許文献4には、頭部側コイルエンドと端部側コイルエンドとに密着して設けた略角形断面の液冷配管が開示されている。
【0007】
特許文献5には、ステータの軸方向端部に、ロータ軸の周囲を一周するように円環状に配設した非磁性耐熱材料製の冷却チューブであって、コイルエンドの断面の中心部に通した冷却チューブが開示されている。
【0008】
特許文献6には、ステータのステータ軸方向中央部に位置する冷却パイプが開示されている。
【0009】
特許文献7には、積層スタックを貫通して延びる冷却ボアが開示されている。
【0010】
特許文献8には、固定子鉄心の外周面に周方向で等間隔に固定した中空固定材に貫通孔が設けられ、貫通孔が冷却媒体を流す冷却路として機能することが開示されている。
【0011】
特許文献9には、機械式ポンプからの冷却媒体を第1排出口からコイルエンド側に排出する第1冷却管と、電動式ポンプからの冷却媒体を第2排出口からコイルエンド側に排出する第2冷却管と、を備える冷媒供給装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平09-140097号公報
【文献】特開平10-336965号公報
【文献】特開2003-009436号公報
【文献】特開2004-048939号公報
【文献】特開2006-325369号公報
【文献】特開2009-033898号公報
【文献】特開2013-158237号公報
【文献】特開2017-085765号公報
【文献】特開2017-052387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
冷却ジャケットをステータコア外周に設ける構造では、ステータコアが径方向で所定の厚みを必要とするため、冷却ジャケットから巻線まで距離があり、冷却効率が悪い。また、冷却ジャケットでは、ステータコアの軸方向端部に形成されたコイルエンドが冷却され難い。他方、冷却経路をステータコアのスロット内に設ける構造では、スロット内の巻線の占積率が低下するため、電動機の性能が低下し得る。
【0014】
そこで、電動機の性能を低下させずにステータの発熱を効率良く除去する技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示の一態様は、電動機のステータにおいて、円筒形のステータコアと、ステータコアに巻回された巻線と、ステータコアの軸方向端部に形成されたコイルエンドに巻回した第1冷却管と、前記ステータコアに軸方向で穿設された通孔と、前記通孔に挿通された第2冷却管と、を備え、前記第1冷却管と前記第2冷却管が一続きの管で形成されており、前記一続きの管を2本備え、該2本の一続きの管は前記コイルエンドと前記ステータコアとの間で行き来し、前記一続きの管の入口と出口が前記電動機の入力側又は出力側に纏められている、電動機のステータを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一態様によれば、第1冷却管がコイルエンドに巻回されるため、ステータの発熱を効率良く除去できる。また、第1冷却管は巻線の形状を固定する緊縛機能を兼ね備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態における電動機のステータの断面図である。
【
図2】第1冷却管と第2冷却管を別個の管で配設したステータの斜視図である。
【
図3】第1冷却管を螺旋状に巻回したコイルエンドの拡大図である。
【
図4】第2冷却管を挿通する通孔の配置を示すステータコアの平面図である。
【
図5】第1冷却管と第2冷却管を一続きの管で配設したステータの斜視図である。
【
図6】冷却管の入口と出口を周方向で所定間隔に複数配置したステータの斜視図である。
【
図7】第1冷却管をコイルエンドに沿って周方向に巻回したステータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を詳細に説明する。各図面において、同一又は類似の構成要素には同一又は類似の符号が付与されている。また、以下に記載する実施形態は、特許請求の範囲に記載される発明の技術的範囲及び用語の意義を限定するものではない。本明細書において、用語「入力側」とは電動機の動力線側を意味し、用語「出力側」とは電動機の出力軸側を意味することに留意されたい。
【0019】
図1は本実施形態における電動機のステータ1を示している。本例のステータ1は、例えばスピンドルモータ用のステータであるが、巻線をステータに巻回する電動機であれば、他の電動機にも適用してもよい。ステータ1は、円筒形のステータコア10と、ステータコア10に巻回された巻線11と、ステータコア10の軸方向Xの端部に形成されたコイルエンドに巻回した第1冷却管12と、を備えている。さらに、ステータ1は、ステータコア10に軸方向Xへ穿設された通孔13と、通孔13に挿通された第2冷却管14と、を備えていてもよい。第1冷却管12と第2冷却管14には冷却装置15から冷媒が供給される。第1冷却管12に流れる冷媒によってコイルエンドの発熱が除去され、第2冷却管14に流れる冷媒によってステータコア10の発熱が除去される。第1冷却管12と第2冷却管14は、別個の管で形成してもよいし、又は一続きの管で形成してもよい。
【0020】
さらに、ステータ1は、ステータコア10の周方向外周部に配設された冷却ジャケット16を備えてもよい。冷却ジャケット16は、螺旋状の冷却溝16aを外周面に有するように磁性材料等で形成され、例えば焼嵌め等によってステータコア10に固定される。冷却ジャケット16に供給する冷媒と、第1冷却管12及び第2冷却管14に供給する冷媒とを共通化してもよい。冷媒の共通化のため、ステータ1は分岐ジョイント17を用いることができる。分岐ジョイント17は、供給側分岐ジョイント17aと、排出側分岐ジョイント17bと、を備えるとよい。
【0021】
ステータ1は、ステータコア10、巻線11、及び冷却ジャケット16によって形成される隙間に充填された熱伝導樹脂18を備えているとよい。例えば隙間としては、ステータコア10と冷却ジャケット16との間の隙間、ステータコア10の通孔13と第2冷却管14との間の隙間、及びステータコア10のスロット(
図4を参照。)と巻線11との間の隙間等がある。熱伝導樹脂18は、モールド樹脂でもよいし、又は斯かる隙間に含侵させた含侵樹脂でもよい。また、熱伝導樹脂18は、熱伝導率を向上させるため、マトリックス樹脂中で相互連鎖した熱伝導フィラーを備えているとよい。熱伝導フィラーとしては、例えば窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、アルミナ、無水炭酸マグネシウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛等を用いてもよい。
【0022】
図2は第1冷却管12と第2冷却管14を別個の管で配設したステータ1を示している。ステータ1は、2本の第1冷却管12と、1本の第2冷却管14とを備えている。入力側のコイルエンド11aの第1冷却管12は入口IN1と出口OUT1を有し、出力側のコイルエンド11bの第1冷却管12が入口IN3と出口OUT3を有している。また、ステータコア10の通孔13に挿通された第2冷却管14は、入口IN2と出口OUT2を有している。別個の管の一方(第1冷却管12)はコイルエンド11a、11bに入ってコイルエンド11a、11bから出ていき、別個の管の他方(第2冷却管14)はステータコア10に入ってステータコア10から出ていく。第1冷却管12と第2冷却管14を別個の管で構成することにより、製造時における冷却管の配設作業を容易に行うことが可能になる。
【0023】
図3は第1冷却管12を螺旋状に巻回したコイルエンド11aの拡大図である。第1冷却管12がコイルエンド11aに位置する巻線11の束に螺旋状に巻回されることにより、第1冷却管12は、発熱したコイルエンド11aを冷却する機能と、コイルエンド11aに位置する巻線11の束を緊縛して巻線11の形状を固定する機能と、を兼ね備えている。電動機の性能を損なわずに冷却機能と緊縛機能を実現するため、第1冷却管12は、電気絶縁性、耐熱性、軟性等の特性を有する材料で形成されることが好ましい。軟性材料としては、例えばフッ素樹脂、ウレタン樹脂等の軟質樹脂が好適である。
【0024】
図4は第2冷却管を挿通する通孔13の配置を示している。ステータコア10は、周方向内周部に所定間隔で形成された複数のスロット19を備えており、例えば連続する3つのスロット19毎に巻線11が巻回される。通孔13は、巻線11によって電磁誘導される磁束に影響を与えないように、隣接するスロット19の中間に、且つステータコア10の外周部近傍に形成されるとよい。複数の通孔13がステータコア10の径方向Yで概ね同じ位置に配置される。通孔13に挿通される第2冷却管は、電気絶縁性、耐熱性等の特性を有する材料(例えば金属、樹脂等)で形成されればよく、必ずしも軟性材料でなくてもよい。
【0025】
図1を再び参照すると、第1冷却管12、第2冷却管14を備えたステータ1においては、これら冷却管を流れる冷媒による結露を防止するため、冷媒を冷却管へ供給する前に、冷媒温度を露点より高い温度に制御するとよい。これにより、巻線11における腐食、短絡等を未然に防止できる。
【0026】
図5は第1冷却管12と第2冷却管14を一続きの管で配設したステータ2を示している。本例のステータ2は、
図2に示すステータ1の変形例であり、一続きの管(第1冷却管12と第2冷却管14)がコイルエンド11a、11bとステータコア10との間で行き来する。本例のステータ2は一続きの管を2本備え、2本の管は、コイルエンド11a、11bとステータコア10との間で交互に行き来し、2つの入口IN1-IN2と出口OUT1-OUT2を有している。第1冷却管12と第2冷却管14を一続きの管で形成することにより、冷却管の入口IN1-IN2と出口OUT1-OUT2が電動機の入力側又は出力側に纏められる。これにより、冷却管の配置スペースを比較的小さくことが可能になる。
【0027】
図2及び
図5で示す実施形態において、別個の管又は一続きの管の入口IN1、IN2は電動機の出力側に配置してもよい。これにより、冷たい冷媒が、発熱し易い出力側に先に供給されるため、冷却効率を一層高めることが可能になる。
【0028】
図6は第1冷却管12又は第2冷却管14の入口と出口をステータコア10の周方向で所定間隔に複数配置したステータ3を示している。本例のステータ3は
図5に示すステータ2の変形例であり、4本の管がコイルエンド11a、11bとステータコア10との間で交互に行き来し、4つの入口IN1-IN4と出口OUT1-OUT4を有している。2本の管の入口IN1-IN2は周方向で例えば0°の位置に配置され、2本の管の入口IN3-IN4は周方向で例えば180°の位置に配置されている。これにより、冷たい冷媒が180°毎に供給されるため、ステータ3の冷却性能を向上させることが可能になる。
【0029】
図7は第1冷却管12をコイルエンド11a、11bに沿って周方向に巻回したステータ4を示している。本例のステータ4は
図2に示すステータ1の変形例であり、第1冷却管12と第2冷却管14が別個の管で配設されている。本例の第1冷却管12は、入力側と出力側のコイルエンド11a、11bに位置する巻線の束に沿って周方向に巻回されている点で前述のものとは異なる。第1冷却管12は、コイルエンド11a、11bの外周に巻回されているが、コイルエンド11a、11bの内周に巻回されてもよい。第1冷却管12は、発熱したコイルエンド11a、11bを冷却する機能と、コイルエンド11a、11bに位置する巻線11の束を緊縛して巻線11の形状を固定する機能と、を兼ね備えている。
【0030】
以上の実施形態によれば、第1冷却管12がコイルエンド11a、11bに巻回されるため、ステータ1の発熱を効率良く除去できる。また、第1冷却管12は巻線11の形状を固定する緊縛機能を兼ね備えることができる。
【0031】
本明細書において種々の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲に記載された範囲内において種々の変更を行えることを認識されたい。
【符号の説明】
【0032】
1、2、3、4 ステータ
10 ステータコア
11 巻線
11a、11b コイルエンド
12 第1冷却管
13 通孔
14 第2冷却管
15 冷却装置
16 冷却ジャケット
17 分岐ジョイント
18 熱伝導樹脂
19 スロット
X 軸方向
Y 径方向