(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】画像処理装置、ミシン、及び画像処理方法
(51)【国際特許分類】
D05B 19/14 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
D05B19/14
(21)【出願番号】P 2019201419
(22)【出願日】2019-11-06
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚田 豊
(72)【発明者】
【氏名】山田 和範
(72)【発明者】
【氏名】横瀬 仁彦
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-063894(JP,A)
【文献】特開2018-183576(JP,A)
【文献】特開平10-005465(JP,A)
【文献】特開2015-93127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 19/00-19/16
G06T 1/00-1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫製対象物に係る画像を示す対象物画像を取得する対象物画像取得部と、
前記対象物画像を規定のサーチ領域で走査して、注目画素が規定色画素か否かを判定する走査部と、
判定結果に基づいて、前記縫製対象物の表面を
複数の孔により形成された基準パターンが設けられる複数のテクスチャ領域と
、相互に隣り合う前記テクスチャ領域の間に設けられ前記基準パターンが設けられずに目標ステッチラインが規定されるステッチ領域とに分割して、前記テクスチャ領域と前記ステッチ領域との境界線を算出する領域分割部と、を備える、
画像処理装置。
【請求項2】
前記領域分割部は、前記規定色画素であると判定された前記注目画素を前記テクスチャ領域に分類する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記領域分割部は、前記規定色画素でないと判定された前記注目画素と前記注目画素の周囲の前記規定色画素との相対位置が規定条件を満足する場合、前記注目画素を前記テクスチャ領域に分類し、前記相対位置が前記規定条件を満足しない場合、前記注目画素を前記ステッチ領域に分類
し、
前記規定条件は、前記注目画素と前記規定色画素との相対距離が予め定められた閾値以下である条件を含み、
前記閾値は、前記テクスチャ領域において隣り合う前記孔の間隔と、前記ステッチ領域の幅とに基づいて定められる、
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
ミシン針の直下の縫製位置を含む所定面内において縫製対象物を保持して移動可能な保持部材と、
保持部材を移動させる動力を発生するアクチュエータと、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置の処理結果に基づいて、前記アクチュエータを制御する制御指令を出力する制御装置と、を備える、
ミシン。
【請求項5】
縫製対象物に係る画像を示す対象物画像を規定のサーチ領域で走査して、注目画素が規定色画素か否かを判定することと、
判定結果に基づいて、前記縫製対象物の表面を
複数の孔により形成された基準パターンが設けられる複数のテクスチャ領域と
、相互に隣り合う前記テクスチャ領域の間に設けられ前記基準パターンが設けられずに目標ステッチラインが規定されるステッチ領域とに分割して、前記テクスチャ領域と前記ステッチ領域との境界線を算出することと、を含む、
画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、ミシン、及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
縫製対象物の意匠性を高めるために、縫製対象物にステッチが形成される場合がある。特許文献1には、車両用シートに使用される表皮材にステッチを形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用シートに使用される表皮材に孔が設けられる。孔が模様を形成することにより、車両用シートの意匠性がより高められる。ステッチは、孔の模様が設けられていない領域に形成される。ステッチを形成する場合、孔の模様が設けられている領域と孔の模様が設けられていない領域とを識別する必要がある。
【0005】
本発明の態様は、孔の模様が設けられている領域と孔の模様が設けられていない領域とを識別することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、縫製対象物に係る画像を示す対象物画像を取得する対象物画像取得部と、前記対象物画像を規定のサーチ領域で走査して、注目画素が規定色画素か否かを判定する走査部と、判定結果に基づいて、前記縫製対象物の表面をテクスチャ領域とステッチ領域とに分割して、前記テクスチャ領域と前記ステッチ領域との境界線を算出する領域分割部と、を備える、画像処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、孔の模様が設けられている領域と孔の模様が設けられていない領域とを識別することを識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るミシンを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るミシンの一部を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る縫製対象物の一部を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る縫製対象物を示す平面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る縫製対象物の一部を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る縫製対象物の一部を示す平面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る縫製対象物の一部を示す平面図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係るミシンを示す機能ブロック図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る撮像装置の動作を説明するための図である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係る境界線の算出方法を説明するための図である。
【
図11】
図11は、本実施形態に係る境界線を説明するための図である。
【
図12】
図12は、本実施形態に係る補正点を説明するための図である。
【
図13】
図13は、本実施形態に係る特徴点の算出方法の一例を説明するための図である。
【
図14】
図14は、本実施形態に係る特徴点の算出方法の一例を説明するための図である。
【
図15】
図15は、本実施形態に係る基準ベクトルを説明するための図である。
【
図16】
図16は、本実施形態に係る基準ベクトルを説明するための図である。
【
図17】
図17は、本実施形態に係る補正点の算出方法の一例を説明するための図である。
【
図18】
図18は、本実施形態に係る補正点の算出方法の一例を説明するための図である。
【
図19】
図19は、本実施形態に係る補正点の算出方法の一例を説明するための図である。
【
図20】
図20は、本実施形態に係る縫製方法を示すフローチャートである。
【
図21】
図21は、本実施形態に係る領域分割処理を示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、本実施形態に係る補正点算出処理を示すフローチャートである。
【
図23】
図23は、本実施形態に係るコンピュータシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
本実施形態においては、ミシン1についてローカル座標系が規定される。以下の説明においては、ミシン1について規定されるローカル座標系を適宜、ミシン座標系、と称する。ミシン座標系は、XYZ直交座標系により規定される。本実施形態においては、ミシン座標系に基づいて各部の位置関係について説明する。所定面内のX軸と平行な方向をX軸方向とする。X軸と直交する所定面内のY軸と平行な方向をY軸方向とする。所定面と直交するZ軸と平行な方向をZ軸方向とする。また、X軸を中心とする回転方向又は傾斜方向をθX方向とする。Y軸を中心とする回転方向又は傾斜方向をθY方向とする。Z軸を中心とする回転方向又は傾斜方向をθZ方向とする。また、本実施形態においては、X軸及びY軸を含む平面を適宜、XY平面、と称する。X軸及びZ軸を含む平面を適宜、XZ平面、と称する。Y軸及びZ軸を含む平面を適宜、YZ平面、と称する。XY平面は、所定面と平行である。XY平面とXZ平面とYZ平面とは直交する。また、本実施形態においては、XY平面と水平面とが平行であることとする。Z軸方向は上下方向である。+Z方向は上方向であり-Z方向は下方向である。なお、XY平面が水平面に対して傾斜していてもよい。
【0011】
[ミシン]
図1は、本実施形態に係るミシン1を示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係るミシン1の一部を示す斜視図である。本実施形態において、ミシン1は、電子サイクルミシンである。ミシン1は、ミシン本体10と、作業者によって操作される操作装置20と、縫製対象物Sを撮像可能な撮像装置30とを備える。
【0012】
ミシン本体10は、テーブル2の上面に搭載される。ミシン本体10は、ミシンフレーム11と、ミシンフレーム11に支持される針棒12と、ミシンフレーム11に支持される針板13と、支持部材14を介してミシンフレーム11に支持される保持部材15と、針棒12を移動させる動力を発生するアクチュエータ16と、保持部材15を移動させる動力を発生するアクチュエータ17と、保持部材15の少なくとも一部を移動させる動力を発生するアクチュエータ18とを有する。
【0013】
ミシンフレーム11は、Y軸方向に延在する水平アーム11Aと、水平アーム11Aよりも下方に配置されたベッド11Bと、水平アーム11Aの+Y側の端部とベッド11Bとを繋ぐ垂直アーム11Cと、水平アーム11Aの-Y側に配置されたヘッド11Dとを有する。
【0014】
針棒12は、ミシン針3を保持する。針棒12は、ミシン針3とZ軸とが平行になるようにミシン針3を保持する。針棒12は、Z軸方向に移動可能にヘッド11Dに支持される。
【0015】
針板13は、縫製対象物Sを支持する。針板13は、保持部材15を支持する。針板13は、ベッド11Bに支持される。針板13は、保持部材15よりも下方に配置される。
【0016】
保持部材15は、縫製対象物Sを保持する。保持部材15は、ミシン針3の直下の縫製位置Psを含むXY平面内において縫製対象物Sを保持して移動可能である。保持部材15は、撮像装置30の直下の撮像位置Pfを含むXY平面内において縫製対象物Sを保持して移動可能である。保持部材15が縫製対象物Sを保持した状態で、縫製データに基づいて縫製位置Psを含むXY平面内において移動することにより、縫製対象物SにステッチCHが形成される。保持部材15は、支持部材14を介して水平アーム11Aに支持される。
【0017】
保持部材15は、押え部材15Aと、押え部材15Aに対向する下板15Bとを有する。押え部材15Aは、枠状の部材である。押え部材15Aは、Z軸方向に移動可能である。下板15Bは、押え部材15Aの下方に配置される。保持部材15は、押え部材15Aと下板15Bとで縫製対象物Sを挟むことによって縫製対象物Sを保持する。
【0018】
押え部材15Aが+Z方向に移動すると、押え部材15Aと下板15Bとが離れる。これにより、作業者は、押え部材15Aと下板15Bとの間に縫製対象物Sを配置することができる。押え部材15Aと下板15Bとの間に縫製対象物Sが配置された状態で押え部材15Aが-Z方向に移動すると、縫製対象物Sは押え部材15Aと下板15Bとで挟まれる。これにより、縫製対象物Sは保持部材15によって保持される。また、押え部材15Aが+Z方向に移動することにより、保持部材15による縫製対象物Sの保持が解除される。これにより、作業者は、押え部材15Aと下板15Bとの間から縫製対象物Sを取り出すことができる。
【0019】
アクチュエータ16は、針棒12をZ軸方向に移動させる動力を発生する。アクチュエータ16は、パルスモータを含む。アクチュエータ16は、水平アーム11Aに配置される。
【0020】
水平アーム11Aの内部には、Y軸方向に延在する水平アームシャフトが配置される。アクチュエータ16は、水平アームシャフトの+Y側の端部に連結される。水平アームシャフトの-Y側の端部は、ヘッド11Dの内部に配置されている動力伝達機構を介して針棒12に連結される。アクチュエータ16の作動により、水平アームシャフトが回転する。アクチュエータ16で発生した動力は、水平アームシャフト及び動力伝達機構を介して針棒12に伝達される。これにより、針棒12に保持されているミシン針3は、Z軸方向に往復移動する。
【0021】
垂直アーム11Cの内部には、Z軸方向に延在するタイミングベルトが配置される。また、ベッド11Bの内部には、Y軸方向に延在するベッドシャフトが配置される。水平アームシャフト及びベッドシャフトのそれぞれにプーリが配置される。タイミングベルトは、水平アームシャフトに配置されているプーリ及びベッドシャフトに配置されているプーリのそれぞれに架けられる。水平アームシャフトとベッドシャフトとは、タイミングベルトを含む動力伝達機構を介して連結される。
【0022】
ベッド11Bの内部には、釜が配置される。釜には、ボビンケースに入れられたボビンが収容される。アクチュエータ16の作動により、水平アームシャフト及びベッドシャフトのそれぞれが回転する。アクチュエータ16で発生した動力は、水平アームシャフト、タイミングベルト、及びベッドシャフトを介して釜に伝達される。これにより、釜は、針棒12のZ軸方向の往復移動と同期して回転する。
【0023】
アクチュエータ17は、保持部材15をXY平面内で移動させる動力を発生する。アクチュエータ17は、パルスモータを含む。アクチュエータ17は、保持部材15をX軸方向に移動させる動力を発生するX軸モータ17Xと、保持部材15をY軸方向に移動させる動力を発生するY軸モータ17Yとを含む。アクチュエータ17は、ベッド11Bの内部に配置される。
【0024】
アクチュエータ17で発生した動力は、支持部材14を介して保持部材15に伝達される。これにより、保持部材15は、ミシン針3と針板13との間においてX軸方向及びY軸方向のそれぞれに移動可能である。アクチュエータ17の作動により、保持部材15は、ミシン針3の直下の縫製位置Psを含むXY平面内において縫製対象物Sを保持して移動可能である。
【0025】
アクチュエータ18は、保持部材15の押え部材15AをZ軸方向に移動させる動力を発生する。アクチュエータ18は、パルスモータを含む。押え部材15Aが+Z方向に移動することにより、押え部材15Aと下板15Bとが離れる。押え部材15Aが-Z方向に移動することにより、押え部材15Aと下板15Bとで縫製対象物Sが挟まれる。
【0026】
図2に示すように、ミシン本体10は、ミシン針3の周囲に配置される中押え部材19を有する。中押え部材19は、ミシン針3の周囲の縫製対象物Sを押える。中押え部材19は、Z軸方向に移動可能にヘッド11Dに支持される。ヘッド11Dの内部には、中押え部材19をZ軸方向に移動させる動力を発生する中押えモータが配置される。中押えモータの作動により、中押え部材19は、針棒12と同期してZ軸方向に移動する。中押え部材19により、ミシン針3の移動による縫製対象物Sの浮き上がりが抑制される。
【0027】
操作装置20は、作業者に操作される。操作装置20が操作されることにより、ミシン1が作動する。本実施形態において、操作装置20は、操作パネル21と、操作ペダル22とを含む。操作パネル21は、テーブル2の上面に搭載される。操作ペダル22は、テーブル2の下方に配置される。作業者は、足で操作ペダル22を操作する。作業者により操作パネル21及び操作ペダル22の少なくとも一方が操作されることにより、ミシン1は作動する。
【0028】
撮像装置30は、保持部材15に保持されている縫製対象物Sを撮像する。撮像装置30は、光学系と、光学系を介して入射する光を受光するイメージセンサとを有する。イメージセンサは、CCD(Couple Charged Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを含む。
【0029】
撮像装置30は、針板13及び保持部材15よりも上方に配置される。撮像位置Pfは、撮像装置30の光学系の光軸AXの位置を含む。撮像装置30に撮像領域FAが規定される。撮像領域FAは、撮像装置30の光学系の視野領域を含む。撮像領域FAは、撮像位置Pfを含む。撮像装置30は、撮像領域FAに配置された縫製対象物Sの少なくとも一部の画像を取得する。撮像装置30は、押え部材15Aの内側に配置されている縫製対象物Sの少なくとも一部を上方から撮像する。
【0030】
撮像装置30の位置は、固定される。撮像装置30とミシンフレーム11との相対位置は、固定される。XY平面内における撮像装置30の光学系の光軸AXとミシン針3との相対位置は、固定される。XY平面内における撮像装置30の光学系の光軸AXとミシン針3との相対位置を示す相対位置データは、ミシン1の設計データから導出可能な既知データである。
【0031】
撮像装置30により取得される画像の位置は、カメラ座標系において規定される。規定の変換式又は変換行列により、カメラ座標系において規定される画像の位置がミシン座標系において規定される画像の位置に変換される。
【0032】
なお、撮像装置30の取付け誤差に起因して、撮像装置30の実際の位置と設計データにおける位置とに差異が生じる場合、撮像装置30の取付け後において、XY平面内におけるミシン針3の位置を計測し、計測されたミシン針3の位置を撮像装置30に向かって既知データ分だけ移動し、XY平面内における撮像装置30の実際の位置と移動後のミシン針3の位置との差分を算出することにより、その差分に基づいて、撮像装置30の光学系の光軸AXとミシン針3との正確な相対位置を算出することができる。
【0033】
[縫製対象物]
図3は、本実施形態に係る縫製対象物Sの一部を示す断面図である。
図4は、本実施形態に係る縫製対象物Sを示す平面図である。
図3及び
図4は、縫製処理前の縫製対象物Sを示す。本実施形態において、縫製対象物Sは、車両用シートに使用される表皮材である。
【0034】
図3に示すように、縫製対象物Sは、表材4と、パッド材5と、裏材6とを有する。表材4に孔7が設けられる。
【0035】
表材4の表面は、車両用シートに搭乗者が着座したときに搭乗者と接触する着座面である。表材4は、織布、不織布、及び皮革の少なくとも一つを含む。パッド材5は、弾力性を有する。パッド材5は、例えばウレタン樹脂を含む。裏材6は、織布、不織布、及び皮革の少なくとも一つを含む。
【0036】
図4に示すように、孔7は、表材4に複数設けられる。孔7は、規定パターンRSで配置される。規定パターンRSは、複数の基準パターンUSを含む。複数の孔7により、基準パターンUSが形成される。本実施形態において、基準パターンUSは、25個の孔7で構成される。
【0037】
図4に示すように、基準パターンUSは、間隔をあけて表材4に配置される。基準パターンUSは、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに等間隔で配置される。X軸方向に隣り合う基準パターンUSの間に、Y軸方向の位置が異なる基準パターンUSが配置される。隣り合う基準パターンUSの間に孔7は形成されない。
【0038】
以下の説明においては、表材4の表面において基準パターンUSが設けられる領域を適宜、テクスチャ領域TA、と称し、表材4の表面において基準パターンUSの間の基準パターンUSが設けられない領域を適宜、ステッチ領域SA、と称する。
【0039】
ステッチ領域SAには、縫製対象物Sに形成されるステッチCHの目標ステッチラインRLが規定される。
【0040】
[縫製対象物の表面の変位]
図5は、本実施形態に係る縫製対象物Sの一部を示す断面図である。
図5は、縫製処理後の縫製対象物Sを示す。縫製対象物Sは、厚みがあり弾力性を有する。厚みがあり弾力性を有する縫製対象物SにステッチCHが形成されることにより、
図5に示すように、縫製対象物Sが縮む。
【0041】
図6及び
図7のそれぞれは、本実施形態に係る縫製対象物Sの一部を示す平面図である。
図6は、縫製処理前の縫製対象物Sを示す。
図7は、縫製処理後の縫製対象物Sを示す。
【0042】
図6に示すように、ステッチ領域SAに目標ステッチラインRLが規定される。縫製対象物SにステッチCHが形成されると、縫製対象物Sが縮む。縫製対象物Sが縮むと、縫製対象物Sの表面が変位する。
図7に示すように、縫製対象物SにステッチCHが形成されると、目標ステッチラインRLに対して縫製対象物Sの表面がXY平面内において変位する。
【0043】
目標ステッチラインRLに対して縫製対象物Sの表面がXY平面内において変位した場合、目標ステッチラインRLに従って保持部材15を移動させると、ステッチCHを縫製対象物Sの表面の所望位置に形成することが困難となる。
【0044】
本実施形態においては、ステッチCHの形成により縫製対象物Sが縮んで縫製対象物Sの表面が変位した場合、縫製対象物Sの表面の変位量に基づいて、目標ステッチラインRLの位置が補正される。保持部材15は、補正された目標ステッチラインRLに基づいて移動される。
【0045】
[画像処理装置]
図8は、本実施形態に係るミシン1を示す機能ブロック図である。ミシン1は、画像処理装置40と、制御装置50と、記憶装置60とを備える。
【0046】
画像処理装置40は、コンピュータシステムを含む。
図8に示すように、画像処理装置40は、撮像装置30、制御装置50、記憶装置60、入力装置70、及び出力装置80のそれぞれと接続される。画像処理装置40は、縫製対象物Sに係る画像を処理する。
【0047】
入力装置70は、作業者に操作されることにより入力データを生成する。入力装置70として、コンピュータ用キーボード、マウス、及びタッチパネルが例示される。
【0048】
出力装置80は、出力データを出力する。出力装置80として、表示装置及び印刷装置が例示される。表示装置は、出力データとして表示データを出力する。印刷装置は、出力データとして印刷データを出力する。表示装置として、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)又は有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electroluminescence Display)のようなフラットパネルディスプレイが例示される。印刷装置として、インクジェットプリンタが例示される。
【0049】
制御装置50は、コンピュータシステムを含む。
図8に示すように、制御装置50は、ミシン針3をZ軸方向に移動させるアクチュエータ16、保持部材15をXY平面内において移動させるアクチュエータ17、保持部材15の押え部材15AをZ軸方向に移動させるアクチュエータ18、操作装置20、画像処理装置40、及び記憶装置60のそれぞれと接続される。制御装置50は、画像処理装置40の処理結果に基づいて、保持部材15を移動させるアクチュエータ17を制御する制御指令を出力する。
【0050】
また、制御装置50は、アクチュエータ16の駆動量を検出する駆動量センサ31、及びアクチュエータ17の駆動量を検出する駆動量センサ32と接続される。
【0051】
駆動量センサ31は、アクチュエータ16であるパルスモータの回転量を検出するエンコーダを含む。駆動量センサ31の検出データは、制御装置50に出力される。
【0052】
駆動量センサ32は、X軸モータ17Xの回転量を検出するX軸センサ32Xと、Y軸モータ17Yの回転量を検出するY軸センサ32Yとを含む。X軸センサ32Xは、X軸モータ17Xの回転量を検出するエンコーダを含む。Y軸センサ32Yは、Y軸モータ17Yの回転量を検出するエンコーダを含む。駆動量センサ32の検出データは、制御装置50に出力される。
【0053】
駆動量センサ32は、XY平面内における保持部材15の位置を検出する位置センサとして機能する。アクチュエータ17の駆動量と保持部材15の移動量とは1対1で対応する。
【0054】
X軸センサ32Xは、X軸モータ17Xの回転量を検出することにより、ミシン座標系における原点からの保持部材15のX軸方向の移動量を検出可能である。Y軸センサ32Yは、Y軸モータ17Yの回転量を検出することにより、ミシン座標系における原点からの保持部材15のY軸方向の移動量を検出可能である。
【0055】
制御装置50は、駆動量センサ31の検出データに基づいて、アクチュエータ16を制御する。制御装置50は、駆動量センサ31の検出データに基づいて、例えばアクチュエータ16の作動タイミングを決定する。
【0056】
制御装置50は、駆動量センサ32の検出データに基づいて、アクチュエータ17を制御する。制御装置50は、駆動量センサ32の検出データに基づいて、保持部材15が所望位置に移動するようにアクチュエータ17をフィードバック制御する。
【0057】
制御装置50は、駆動量センサ32の検出データに基づいて、XY平面内における保持部材15の位置を算出する。駆動量センサ32の検出データに基づいて、XY平面内における原点からの保持部材15の移動量が検出される。制御装置50は、検出された保持部材15の移動量に基づいて、XY平面内における保持部材15の位置を算出する。
【0058】
記憶装置60は、ROM(Read Only Memory)又はストレージのような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。
図8に示すように、記憶装置60は、画像処理装置40及び制御装置50のそれぞれと接続される。
【0059】
記憶装置60は、縫製データ記憶部61と、設計データ記憶部62と、プログラム記憶部63とを有する。
【0060】
縫製データ記憶部61は、縫製処理において参照される縫製データを記憶する。
【0061】
縫製処理とは、縫製対象物SにステッチCHを形成する処理をいう。本実施形態において、縫製処理は、第1ステッチCH1を形成するための第1縫製処理、及び第2ステッチCH2を形成するための第2縫製処理を含む。同様に、縫製処理は、第3ステッチCH3から第14ステッチCH14のそれぞれを形成するための第3縫製処理から第14縫製処理を含む。
【0062】
縫製データは、縫製対象物Sに形成されるステッチCHの目標ステッチラインRL、及び保持部材15の移動条件を含む。
【0063】
目標ステッチラインRLは、縫製対象物Sに形成されるステッチCHの目標形状及びミシン座標系におけるステッチCHの目標位置を規定する。
【0064】
図4に示すように、目標ステッチラインRLは、第1ステッチCH1を形成するための第1目標ステッチラインRL1、及び第2ステッチCH2を形成するための第2目標ステッチラインRL2を含む。同様に、目標ステッチラインRLは、第3ステッチCH3から第14ステッチCH14のそれぞれを形成するための第3目標ステッチラインRL3から第14目標ステッチラインRL14を含む。
【0065】
保持部材15の移動条件は、ミシン座標系において規定される保持部材15の移動軌跡を含む。保持部材15の移動軌跡は、XY平面内における保持部材15の移動軌跡を含む。保持部材15の移動条件は、目標ステッチラインRLに基づいて定められる。
【0066】
第1縫製処理は、第1目標ステッチラインRL1に基づいて縫製対象物Sに第1ステッチCH1を形成する処理を含む。第1縫製処理は、縫製対象物Sが保持部材15に保持された後に最初に実施される。
【0067】
第2縫製処理は、第2目標ステッチラインRL2に基づいて縫製対象物Sに第2ステッチCH2を形成する処理を含む。第2縫製処理は、第1縫製処理の次に実施される。
【0068】
同様に、第3縫製処理から第14縫製処理のそれぞれは、第3目標ステッチラインRL3から第14目標ステッチラインRL14のそれぞれに基づいて縫製対象物Sに第3ステッチCH3から第14ステッチCH14のそれぞれを形成する処理を含む。第3縫製処理から第14縫製処理は、順次実施される。
【0069】
設計データ記憶部62は、縫製対象物Sの設計データを記憶する。縫製対象物Sの設計データは、縫製対象物Sの表面におけるテクスチャ領域TAの位置及び範囲と、ステッチ領域SAの位置及び範囲と、基準パターンUSの形状及び寸法とを含む。縫製対象物SがCAD(Computer Aided Design)により設計される場合、縫製対象物Sの設計データは、CADデータを含む。
【0070】
縫製対象物Sの設計データは、初期状態における縫製対象物Sの設計データである。縫製対象物Sの初期状態とは、第1縫製処理前の状態をいう。すなわち、縫製対象物Sの初期状態とは、縫製対象物SにステッチCHが未だ形成されていない状態をいう。
【0071】
プログラム記憶部63は、ミシン1を制御するためのコンピュータプログラムを記憶する。コンピュータプログラムは、制御装置50に読み込まれる。制御装置50は、プログラム記憶部63に記憶されているコンピュータプログラムに従ってミシン1を制御する。
【0072】
画像処理装置40は、対象物画像取得部41と、走査部42と、領域分割部43と、補正点設定部44と、特徴点抽出部45と、基準ベクトル算出部46と、基準ベクトル記憶部47と、補正量算出部48と、領域分割画像出力部49とを有する。
【0073】
対象物画像取得部41は、縫製対象物Sに係る画像を示す対象物画像SMを取得する。撮像装置30は、縫製対象物Sを撮像して、対象物画像SMを画像処理装置40に出力する。対象物画像取得部41は、撮像装置30から対象物画像SMを取得する。
【0074】
図9は、本実施形態に係る撮像装置30の動作を説明するための図である。撮像装置30は、保持部材15に保持されている縫製対象物Sを撮像する。
図9に示すように、撮像装置30の撮像領域FAは、縫製対象物Sよりも小さい。縫製対象物Sと撮像装置30の撮像領域FAとの相対移動により、対象物画像SMが複数取得される。縫製対象物Sを保持した保持部材15は、撮像装置30の撮像位置Pfを含むXY平面内において移動する。撮像装置30は、撮像領域FAに配置された縫製対象物Sの一部を撮像する。XY平面内における保持部材15の移動と撮像領域FAに配置された縫製対象物Sの一部の撮像処理とが繰り返されることにより、複数の対象物画像SMが順次取得される。
【0075】
図9に示すように、撮像装置30の第1の撮像処理における撮像領域FAと第2の撮像処理における撮像領域FAの一部とが重複するように、縫製対象物Sと撮像装置30とが相対移動しながら、複数の対象物画像SMが順次取得される。複数の撮像処理のそれぞれにおいて取得された対象物画像SMが繋ぎ合わせられることにより、縫製対象物S全体の対象物画像SMが生成される。
【0076】
撮像装置30は、縫製処理前において、縫製対象物Sを撮像する。すなわち、撮像装置30は、第1縫製処理前及び第2縫製処理前のそれぞれにおいて、縫製対象物Sを撮像する。同様に、撮像装置30は、第3縫製処理前から第14縫製処理前のそれぞれにおいて、縫製対象物Sを撮像する。対象物画像取得部41は、第1縫製処理前から第14縫製処理前のそれぞれにおいて撮像された縫製対象物Sの対象物画像SMを撮像装置30から取得する。
【0077】
なお、第1縫製処理前において撮像装置30により取得される対象物画像SMと、設計データ記憶部62に記憶されている初期状態における縫製対象物Sの設計データとが同一である場合、対象物画像取得部41は、第1縫製処理前の対象物画像SMとして、初期状態における縫製対象物Sの設計データ記憶部62から取得してもよい。
【0078】
走査部42は、対象物画像SMを規定のサーチ領域HAで走査して、対象物画像SMを構成する複数の画素のそれぞれの状態を判定する。
【0079】
領域分割部43は、対象物画像SMに基づいて、縫製対象物Sの表面をテクスチャ領域TAとステッチ領域SAとに分割して、テクスチャ領域TAとステッチ領域SAとの境界線BLを算出する。
【0080】
図10は、本実施形態に係る境界線BLの算出方法を説明するための図である。
図10に示すように、走査部42は、対象物画像SMを規定のサーチ領域HAで走査して、対象物画像SMを構成する複数の画素のそれぞれの状態を取得する。
【0081】
なお、対象物画像SMを走査する前に、対象物画像SMの前処理が実施されてもよい。前処理として、平滑化フィルタ処理及び最大値フィルタ処理が例示される。前処理が実施されることにより、画素の状態の判定が円滑に実施される。
【0082】
走査部42は、複数の画素のそれぞれが規定色画素か否かを判定する。本実施形態において、規定色が黒色であり、規定色画素が黒画素であることとする。走査部42は、複数の画素のそれぞれが黒画素か否かを判定する。以下の説明においては、黒画素か否かの判定対象の画素を適宜、注目画素AP、と称する。
【0083】
図10に示すように、走査部42は、孔7の画像を構成する注目画素APbは黒画素であると判定する。走査部42は、表材4の画像を構成する注目画素APt及び注目画素APsは黒画素でないと判定する。
【0084】
領域分割部43は、走査部42の判定結果に基づいて、縫製対象物Sの表面をテクスチャ領域TAとステッチ領域SAとに分割する。
【0085】
領域分割部43は、黒画素であると判定された注目画素APをテクスチャ領域TAに分類する。
図10に示す例において、領域分割部43は、黒画素であると判定された注目画素APbをテクスチャ領域TAに分類する。
【0086】
領域分割部43は、黒画素でないと判定された注目画素APとその注目画素APの周囲の黒画素との相対位置が規定条件を満足するか否かを判定する。規定条件は、注目画素APと黒画素との相対距離が予め定められた閾値以下である条件を含む。閾値は、テクスチャ領域TAにおいて隣り合う孔7の間隔と、ステッチ領域SAの寸法(幅)とに基づいて定められる。
【0087】
図10に示す例において、注目画素APtは、表材4の画像を構成するものの、テクスチャ領域TAの画像を構成する。注目画素APsは、ステッチ領域SAの画像を構成する。テクスチャ領域TAの画像を構成する注目画素APtとその注目画素APtの周囲の孔7の画像を構成する黒画素との距離は、短い。一方、ステッチ領域SAの画像を構成する注目画素APsとその注目画素APsの周囲の孔7の画像を構成する黒画素との距離は、長い。注目画素APtとその注目画素APtの周囲の黒画素との距離は、閾値以下である。注目画素APsとその注目画素APsの周囲の黒画素との距離は、閾値よりも長い。
【0088】
領域分割部43は、黒画素でないと判定された注目画素APtと注目画素APtの周囲の黒画素との距離が閾値以下であると判定した場合、注目画素APtをテクスチャ領域TAに分類する。領域分割部43は、黒画素でないと判定された注目画素APsと注目画素APsの周囲の黒画素との距離が閾値よりも長いと判定した場合、注目画素APsをステッチ領域SAに分類する。
【0089】
領域分割部43は、対象物画像SMの全ての画素をテクスチャ領域TAとステッチ領域SAとに分類する。領域分割部43は、対象物画像SMの複数の画素をテクスチャ領域TAとステッチ領域SAとに分類することにより、テクスチャ領域TAとステッチ領域SAとの境界線BLを算出することができる。
【0090】
なお、注目画素APの分類が終了した後、対象物画像SMの後処理が実施されてもよい。対象物画像SMの後処理が実施された後に、境界線BLが算出されてもよい。後処理として、オープニング処理、クロージング処理、ノイズ除去処理、及び穴埋め処理が例示される。後処理が実施された後、ラベリング処理、及び輪郭トレース処理が実施されることにより、テクスチャ領域TAとステッチ領域SAとの境界を示す複数の基準点が算出される。領域分割部43は、複数の基準点から最小二乗曲線を算出する。領域分割部43は、算出した最小二乗曲線を境界線BLとしてもよい。
【0091】
図11は、本実施形態に係る境界線BLを説明するための図である。
図11に示すように、境界線BLは、テクスチャ領域TAのエッジを通る線である。テクスチャ領域TAが孔7を含む場合、境界線BLは、テクスチャ領域TAにおいて最も外側に配置されている孔7の外側のエッジを結ぶように生成される。
【0092】
補正点設定部44は、ステッチ領域SAに規定された目標ステッチラインRLを補正するための補正点CPを設定する。第1縫製処理前に、第1目標ステッチラインRL1から第14目標ステッチラインRL14のそれぞれを補正するための補正点CPが設定される。
【0093】
図12は、本実施形態に係る補正点CPを説明するための図である。
図12に示すように、縫製対象物Sに補正点CPが設定される。補正点CPは、目標ステッチラインRLの補正に使用される。補正点CPは、作業者により任意の位置に設定される。作業者は、入力装置70を操作して、縫製対象物Sの任意の位置に補正点CPを設定することができる。補正点設定部44は、入力装置70の操作により生成された入力データに基づいて、補正点CPを設定する。
図12に示す例では、補正点CPは、ステッチ領域SAにおいて、補正対象の目標ステッチラインRLに重複するように設定される。なお、補正点CPは、補正対象の目標ステッチラインRLの近傍に設定されていればよく、目標ステッチラインRLから外れた位置に設定されてもよいし、テクスチャ領域TAに設定されてもよい。補正点CPの位置は、ミシン座標系において規定される。
【0094】
ステッチCHが形成されると、補正点CP及び目標ステッチラインRLに対して縫製対象物Sの表面が変位する。
【0095】
特徴点抽出部45は、領域分割部43により算出された境界線BLに基づいて、テクスチャ領域TAの特徴点FPを抽出する。特徴点FPとは、境界線BLにおいて特徴的な形状を有する部分をいう。縫製対象物Sの表面が変位しても、特徴点FPの特徴的な形状は実質的に維持される。特徴点FPとして、境界線BLの角点、極大点、極小点、及び変曲点が例示される。
【0096】
図13は、本実施形態に係る特徴点FPの算出方法の一例を説明するための図である。
図13に示すように、特徴点抽出部45は、例えば基準線XLを規定し、基準線XLと境界線BLの複数の境界点BPのそれぞれとの距離を算出する。距離は、基準線XLと直交する方向の距離である。特徴点抽出部45は、基準線XLからの距離が最も長い境界点BPを特徴点FPと決定することができる。
【0097】
なお、角点、極大点、極小点、及び変曲点のような明確な特徴点FPが境界線BLに存在しない場合がある。特徴点FPは基準線XLを用いずに算出することができる。
【0098】
図14は、本実施形態に係る特徴点FPの算出方法の一例を説明するための図である。
図14に示すように、角点、極大点、極小点、及び変曲点のような明確な特徴点FPが境界線BLに存在しない場合、特徴点抽出部45は、複数の境界線BLの相対距離に基づいて、特徴点FPを抽出する。
図14に示すように、一対の境界線BLが対向するように規定された場合、特徴点抽出部45は、一方の境界線BLの境界点BPと、他方の境界線BLの境界点BPとの距離を算出する。
図14に示す例において、X軸方向における一方の境界線BLの境界点BPの位置と他方の境界線BLの境界点BPの位置とは同一である。特徴点抽出部45は、境界線BLの複数の境界点BPのそれぞれについて距離を算出する。特徴点抽出部45は、距離が最も長い境界線BLの境界点BPを特徴点FPと決定することができる。
【0099】
図9を参照して説明したように、複数の撮像処理のそれぞれにおける撮像領域FAの一部を重複させながら複数の対象物画像SMが取得される。複数の対象物画像SMが繋ぎ合わせられることにより、縫製対象物S全体の対象物画像SMが生成される。そのため、明確な特徴点FPが無くても、特徴点抽出部45は、繋ぎ合わせられた複数の対象物画像SMから、
図14に示したような対向する一対の境界線BLを探索することができる。
【0100】
なお、撮像装置30は、撮像領域FAを拡大して、縫製対象物S全体の対象物画像SMを一括して取得してもよい。縫製対象物S全体の対象物画像SMを一括して取得された場合においても、明確な特徴点FPが無くても、
図14に示したような対向する一対の境界線BLを探索することができる。
【0101】
基準ベクトル算出部46は、補正点設定部44により設定された補正点CPと境界線BLに設定された境界点BPとの相対位置を示す基準ベクトルRVを算出する。
【0102】
図15及び
図16のそれぞれは、本実施形態に係る基準ベクトルRVを説明するための図である。
図16は、
図15の一部を拡大した図である。縫製処理前の縫製対象物Sに補正点CPが設定される。
図15及び
図16において、補正点CPは、第1縫製処理前の初期状態の縫製対象物Sに設定される。境界点BPは、境界線BLに設定される。境界点BPは、複数の孔7のそれぞれの近傍に設定される。境界点BPは、補正点CPの近傍に設定される。基準ベクトルRVは、第1縫製処理前の縫製対象物Sにおける、境界点BPに対する補正点CPの方位、及び境界点BPと補正点CPとの距離を示す。基準ベクトルRVは、ミシン座標系において規定される。
【0103】
境界点BPは、境界線BLに複数設定される。境界点BPは、特徴点FPを含む。
図15及び
図16に示す例において、特徴点FPは、境界線BLの角点(角部)である。
図15に示すように、基準ベクトル算出部46は、補正点CPと特徴点FPを含む複数の境界点BPのそれぞれとの基準ベクトルRVを算出する。基準ベクトルRVは、複数算出される。境界点BPの数と基準ベクトルRVの数とは等しい。
【0104】
基準ベクトル記憶部47は、基準ベクトル算出部46により算出された基準ベクトルRVによって示される境界点BPと補正点CPとの相対位置データを記憶する。
【0105】
補正量算出部48は、第1縫製処理後の縫製対象物Sの境界点BPと基準ベクトル記憶部47に記憶されている基準ベクトルRVとに基づいて、第1縫製処理後の補正点CPを算出する。縫製処理により、補正点CPに対して縫製対象物Sの表面が変位する可能性がある。そのため、縫製対象物Sの表面の変位量に基づいて、第1縫製処理後の補正点CPの位置が補正される。補正量算出部48は、第1縫製処理後の縫製対象物Sの境界点BPと基準ベクトルRVとに基づいて、第1縫製処理後の補正点CPを算出する。
【0106】
図17は、本実施形態に係る補正点CPの算出方法の一例を説明するための図である。第1縫製処理後の縫製対象物Sの対象物画像SMが撮像装置30により取得される。第1縫製処理後の対象物画像SMに基づいて境界線BLが算出され、境界線BLに複数の境界点BPが設定される。境界点BPは、孔7の近傍に設定される。第1縫製処理後の複数の境界点BPと第1縫製処理前の複数の境界点BPとは、1対1で対応する。
【0107】
補正量算出部48は、第1縫製処理後の縫製対象物Sの複数の境界点BPと第1縫製処理前に算出された複数の基準ベクトルRVとに基づいて、補正点CPに係る複数の候補点KPを算出する。補正量算出部48は、複数の候補点KPに基づいて、第1縫製処理後の補正点CPを算出する。
【0108】
すなわち、補正量算出部48は、第1縫製処理後の境界点BPに、第1縫製処理前に算出された基準ベクトルRVを付加する。縫製処理後の境界点BPに基準ベクトルRVを付加するとは、境界点BPから基準ベクトルRVで示される方位に基準ベクトルRVで示される距離だけ離れた点を示す候補点KPを算出することをいう。
【0109】
補正量算出部48は、第1縫製処理前の境界点BPについて算出された基準ベクトルRVを、第1縫製処理後の境界点BPに付加する。例えば、第1縫製処理前の第1境界点BP1について第1基準ベクトルRV1が算出された場合、補正量算出部48は、第1縫製処理前の第1境界点BP1に対応する第1縫製処理後の第1境界点BP1に第1基準ベクトルRV1を付加する。第1縫製処理前の第2境界点BP2について第2基準ベクトルRV2が算出された場合、補正量算出部48は、第1縫製処理前の第2境界点BP2に対応する第1縫製処理後の第2境界点BP2に第2基準ベクトルRV2を付加する。同様に、第1縫製処理前の規定の境界点BPについて規定の基準ベクトルRVが算出された場合、補正量算出部48は、第1縫製処理前の規定の境界点BPに対応する第1縫製処理後の境界点BPに規定の基準ベクトルRVを付加する。
【0110】
補正量算出部48は、1つの境界線BLに設定された複数の境界点BPのそれぞれに付加された基準ベクトルRVの先端部の交点を候補点KPとする。
図17に示す例では、テクスチャ領域TAが4つあり、境界線BLは4つある。1つの境界線BLに境界点BPは3つ設定される。4つの候補点KPが算出される。
【0111】
補正量算出部48は、ステッチ領域SAのうち4つの候補点KPで囲まれた一部の領域に補正点CPを設定する。本実施形態において、補正量算出部48は、XY平面内における4つの候補点KPの重心点(中心点)を算出し、重心点を補正点CPに設定する。
【0112】
なお、複数の候補点KPの少なくとも一つに重みが設けられてもよい。例えば、補正点CPに最も近い特徴点FPの基準ベクトルRVに基づいて算出された候補点KPに重みが付加されてもよい。
【0113】
なお、候補点KPの算出において、特徴点FPのみが考慮され、特徴点FPではない境界点BPは考慮されなくてもよい。すなわち、特徴点FPに付加された基準ベクトルRVのみに基づいて、候補点KPが算出されてもよい。
【0114】
なお、ここでは、第1縫製処理前の初期状態において基準ベクトルRVが算出され、第1縫製処理後の境界点BPと基準ベクトルRVとに基づいて、候補点KPが算出され、候補点KPに基づいて補正点CPが算出されることとした。第2縫製処理前において基準ベクトルRVが算出され、第2縫製処理後の境界点BPと基準ベクトルRVとに基づいて、候補点KPが算出され、候補点KPに基づいて第2縫製処理後の補正点CPが算出されてもよい。第3縫製処理から第14縫製処理のそれぞれの間においても、同様の処理が実施される。
【0115】
なお、縫製処理後の補正点CPの位置は、基準ベクトルRVを用いずに算出されてもよい。
【0116】
図18は、本実施形態に係る補正点CPの算出方法の一例を説明するための図である。
図18(A)は、撮像領域FAに配置された縫製処理前の縫製対象物Sの一部を示す図である。
図18(B)は、撮像領域FAに配置された縫製処理後の縫製対象物Sの一部を示す図である。
図18(A)に示すように、一対の境界線BLが対向する。境界線BLは、Y軸方向に延伸する。境界線BLに明確な特徴点FPは存在しない。
図18(B)に示すように、縫製処理により、境界線BLが-X方向に移動した場合、補正点CPは、境界線BLの移動量と同様の移動量で-X方向に移動したと推定することができる。このように、境界線BLに明確な特徴点FPが存在しない場合、境界線BLの移動量に基づいて、縫製処理後の補正点CPの位置が算出されてもよい。境界線BLが+X方向に移動した場合も同様である。また、一対の境界線BLがY軸方向に延伸し、+Y方向又は-Y方向に移動した場合も同様である。
【0117】
図19は、本実施形態に係る補正点CPの算出方法の一例を説明するための図である。
図19(A)は、撮像領域FAに配置された縫製処理前の縫製対象物Sの一部を示す図である。
図19(B)は、撮像領域FAに配置された縫製処理後の縫製対象物Sの一部を示す図である。
図19(A)に示すように、一対の境界線BLが対向する。境界線BLは、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと傾斜する方向に延伸する。境界線BLに明確な特徴点FPは存在しない。
図19(B)に示すように、縫製処理により、境界線BLが移動した場合において、境界線BLはX軸方向及びY軸方向のそれぞれと傾斜する方向に延伸しているので、撮像領域FAにおいて縫製対象物SがX軸方向に移動したのかY軸方向に移動したのかを判定することが困難である。このような場合、撮像装置30は、撮像領域FAを拡大して、例えば
図14を参照して説明したように、特徴点FPを算出可能な一対の境界線BLを探索してもよい。また、撮像領域FAにおいて縫製対象物SがX軸方向に移動したのかY軸方向に移動したのかを判定することが困難である場合、出力装置80が警告を出力してもよい。
【0118】
領域分割画像出力部49は、領域分割画像DMを出力装置80に出力する。本実施形態において、領域分割部43は、縫製対象物Sの表面をテクスチャ領域TAとステッチ領域SAとに分割した後、テクスチャ領域TAとステッチ領域SAとを含む画像を示す領域分割画像DMを生成する。領域分割画像出力部49は、領域分割部43により分割されたテクスチャ領域TA及びステッチ領域SAを含む領域分割画像DMを出力装置80に出力する。
【0119】
[縫製方法]
図20は、本実施形態に係る縫製方法を示すフローチャートである。本実施形態において、縫製方法は、アライメント処理S0と、対象物画像取得処理S1と、領域分割処理S2と、補正点算出処理S3と、目標ステッチライン補正処理S4と、縫製処理S5と、終了判定処理S6とを含む。
【0120】
アライメント処理S0は、保持部材15に保持された縫製対象物Sのテクスチャ領域TA及びステッチ領域SAをミシン座標系に関連付ける処理である。縫製処理前の縫製対象物Sが保持部材15に保持された後、撮像装置30は、縫製対象物Sを撮像する。撮像装置30は、例えば縫製対象物Sの複数の特徴点FPを撮像する。なお、縫製対象物Sにアライメントマークが設けられている場合、撮像装置30は、アライメントマークを撮像してもよい。撮像装置30で撮像された縫製対象物Sの画像の位置は、カメラ座標系において規定される。規定の変換式又は変換行列により、カメラ座標系において規定される画像の位置がミシン座標系において規定される画像の位置に変換される。これにより、縫製対象物Sのテクスチャ領域TAの位置及びステッチ領域SAの位置がミシン座標系において規定される。
【0121】
対象物画像取得処理S1は、対象物画像SMを取得する処理である。第1縫製処理前においては、対象物画像取得部41は、撮像装置30から初期状態の対象物画像SMを取得してもよいし、設計データ記憶部62から初期状態の対象物画像SMを取得してもよい。
【0122】
第1縫製処理後においては、対象物画像SMは、撮像装置30により取得される。撮像装置30は、第1縫製処理後であって第2縫製処理前の対象物画像SM、及び第2縫製処理後であって第3縫製処理前の対象物画像SMを取得する。同様に、撮像装置30は、第3縫製処理から第14縫製処理のそれぞれの間において、対象物画像SMを取得する。
【0123】
領域分割処理S2は、対象物画像SMに基づいて、縫製対象物Sの表面をテクスチャ領域TAとステッチ領域SAとに分割して、テクスチャ領域TAとステッチ領域SAとの境界線BLを算出する処理である。領域分割処理S2は、第1縫製処理前、及び第1縫製処理後であって第2縫製処理前のそれぞれに実施される。同様に、領域分割処理S2は、第2縫製処理から第14縫製処理のそれぞれの間において実施される。
【0124】
図21は、本実施形態に係る領域分割処理を示すフローチャートである。走査部42は、対象物画像SMを規定のサーチ領域HAで走査する(ステップS21)。
【0125】
走査部42は、対象物画像SMの注目画素APが黒画素か否かを判定する(ステップS22)。
【0126】
ステップS22において、注目画素APが黒画素であると判定された場合(ステップS22:Yes)、領域分割部43は、黒画素であると判定された注目画素APをテクスチャ領域TAに分類する(ステップS23)。
【0127】
ステップS22において、注目画素APが黒画素でないと判定された場合(ステップS22:Yes)、領域分割部43は、黒画素でないと判定された注目画素APとその注目画素APの周囲の黒画素との相対位置が規定条件を満足するか否かを判定する(ステップS24)。
【0128】
ステップS24において、注目画素APが規定条件を満足すると判定された場合(ステップS24:Yes)、領域分割部43は、規定条件を満足すると判定された注目画素APをテクスチャ領域TAに分類する(ステップS23)。
【0129】
ステップS24において、注目画素APが規定条件を満足しないと判定された場合(ステップS24:No)、領域分割部43は、規定条件を満足しないと判定された注目画素APをステッチ領域SAに分類する(ステップS25)。
【0130】
領域分割部43は、テクスチャ領域TAに分類された画素とステッチ領域SAに分類された画素とに基づいて、テクスチャ領域TAとステッチ領域SAとの境界線BLを算出する(ステップS26)。
【0131】
補正点算出処理S3は、縫製処理前の縫製対象物Sに設定された補正点CPと境界線BLに設定された境界点BPとの相対位置を示す基準ベクトルRVを算出し、縫製処理後の縫製対象物Sの境界点BPと基準ベクトルRVとに基づいて、縫製処理後の補正点CPを算出する処理である。第1縫製処理前の初期状態においては、補正点CPは、作業者により設定される。作業者は、補正点CPを設定するために、入力装置70を操作する。補正点設定部44は、入力装置70の入力データに基づいて、初期状態における補正点CPを設定する。補正点算出処理S3は、第1縫製処理前には実施されない。補正点算出処理S3は、第1縫製処理後、及び第2縫製処理後であって第3縫製処理前のそれぞれに実施される。同様に、補正点算出処理S3は、第4縫製処理から第14縫製処理のそれぞれの間において実施される。
【0132】
図22は、本実施形態に係る補正点算出処理S3を示すフローチャートである。領域分割部43は、境界線BLに境界点BPを設定する。領域分割部43は、補正点CPの周囲に境界点BPを設定する。換言すれば、領域分割部43は、補正点CPの近傍に境界点BPを設定する(ステップS31)。
【0133】
特徴点抽出部45は、境界線BLに基づいて、特徴点FPを抽出する(ステップS32)。
【0134】
特徴点FPは、境界線BLに存在する。境界点BPは、特徴点FPを含む。
【0135】
補正量算出部48は、基準ベクトル記憶部47から複数の基準ベクトルRVを取得する(ステップS33)。
【0136】
図15及び
図16を参照して説明したように、補正点算出処理前(縫製処理前)において、基準ベクトル算出部46により基準ベクトルRVが算出され、基準ベクトル記憶部47に記憶される。したがって、補正量算出部48は、基準ベクトル記憶部47から縫製処理前に算出された複数の基準ベクトルRVを取得することができる。
【0137】
補正量算出部48は、ステップS32において抽出された特徴点FPを含む複数の境界点BPと、ステップS33において取得された複数の基準ベクトルRVとに基づいて、複数の候補点KPを算出する(ステップS34)。
【0138】
補正量算出部48は、ステップS34において算出された複数の候補点KPに基づいて、縫製処理後の補正点CPを算出する(ステップS35)。
【0139】
補正量算出部48は、複数の候補点KPの重心点を、縫製処理後の補正点CPに設定する。
【0140】
縫製処理後の補正点CPは、縫製処理前の補正点CPから変位している。補正量算出部48は、ステップS35において算出された補正点CPの位置に基づいて、縫製処理前から縫製処理後の補正点CPの変位量を算出する(ステップS36)。
【0141】
補正点CPは、複数存在する。補正量算出部48は、複数の補正点CPのそれぞれの変位量を算出する。
【0142】
目標ステッチライン補正処理S4は、補正点算出処理S3により算出された補正点CPに基づいて、目標ステッチラインRLを補正する処理である。縫製処理により縫製対象物Sの表面の変位に起因して、作業者により設定された補正点CP及び縫製データにより規定されている目標ステッチラインRLは、変位する。補正点CPの変位量は、補正点算出処理S3により算出される。制御装置50は、補正量算出部48により算出された補正点CPの変位量に基づいて、目標ステッチラインRLを補正する。制御装置50は、例えば補正点CPの変位量と同じ変位量だけ目標ステッチラインRLを変位させる。
【0143】
目標ステッチラインRLについて、複数の補正点CPが設定される。目標ステッチラインRLは、複数の補正点CPのそれぞれの変位量に基づいて補正される。ミシン座標系における目標ステッチラインRLの位置が補正される。
【0144】
目標ステッチライン補正処理S4は、第1縫製処理前には実施されない。第1縫製処理は、縫製データにより規定される初期状態の目標ステッチラインRLに基づいて実施される。目標ステッチライン補正処理S4は、第1縫製処理後、及び第2縫製処理後であって第3縫製処理前のそれぞれに実施される。同様に、目標ステッチライン補正処理S4は、第4縫製処理から第14縫製処理のそれぞれの間において実施される。
【0145】
縫製処理S5は、目標ステッチラインRLに基づいてステッチCHを形成する処理である。縫製処理は、第1縫製処理から第14縫製処理を含む。第1縫製処理は、縫製データにより規定される初期状態の目標ステッチラインRLに基づいて実施される。第2縫製処理から第14縫製処理は、目標ステッチライン補正処理S4により補正された後の目標ステッチラインRLに基づいて実施される。制御装置50は、目標ステッチラインRLに従ってステッチCHが形成されるように、アクチュエータ17に制御指令を出力する。
【0146】
終了判定処理S6は、縫製対象物Sの縫製処理が終了したか否かを判定する処理である。制御装置50は、縫製データに基づいて、縫製対象物Sの縫製処理が終了したか否かを判定する。第1縫製処理から第13縫製処理が終了した状態においては、制御装置50は、終了判定処理S6において、縫製処理は終了していないと判定する。第14縫製処理が終了した状態において、制御装置50は、終了判定処理S6において、縫製処理は終了したと判定する。
【0147】
[コンピュータシステム]
図23は、コンピュータシステム1000の一例を示すブロック図である。上述の画像処理装置40及び制御装置50のそれぞれは、コンピュータシステム1000を含む。コンピュータシステム1000は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ1001と、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリ1002と、ストレージ1003と、入出力回路を含むインターフェース1004とを有する。画像処理装置40の機能及び制御装置50の機能のそれぞれは、コンピュータプログラムとしてストレージ1003に記憶されている。プロセッサ1001は、コンピュータプログラムをストレージ1003から読み出してメインメモリ1002に展開し、コンピュータプログラムに従って上述の処理を実行する。なお、コンピュータプログラムは、ネットワークを介してコンピュータシステム1000に配信されてもよい。
【0148】
コンピュータプログラムは、上述の実施形態に従って、縫製対象物Sに係る画像を示す対象物画像SMを規定のサーチ領域HAで走査して、注目画素APが規定色画素か否かを判定することと、判定結果に基づいて、縫製対象物Sの表面をテクスチャ領域TAとステッチ領域SAとに分割して、テクスチャ領域TAとステッチ領域SAとの境界線RLを算出することと、を実行することができる。
【0149】
[効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、対象物画像SMが走査され、対象物画素SMの複数の画素のそれぞれが黒画素か否かが判定される。これにより、孔7が設けられたテクスチャ領域TAと孔7が設けられていないステッチ領域SAとが識別される。また、ステッチCHの形成により縫製対象物Sの表面が変位しても、注目画素APが黒画素か否かが判定されることにより、テクスチャ領域TAとステッチ領域SAとが識別される。
【0150】
また、黒画素でないと判定された注目画素APは、周囲の黒画素との相対位置が規定条件を満足する場合、テクスチャ領域TAに分類され、周囲の黒画素との相対位置が規定条件を満足しない場合、ステッチ領域SAに分類される。これにより、黒画素でなくても、注目画素APは、テクスチャ領域TA及びステッチ領域SAの一方に適切に分類される。
【0151】
[その他の実施形態]
上述の実施形態においては、撮像装置30により対象物画像SMを取得するとき、撮像装置30の位置が固定された状態で、縫製対象物Sを保持する保持部材15がXY平面内において移動することとした。縫製対象物Sの位置が固定された状態で、撮像装置30の撮像領域FAがXY平面内において移動してもよいし、撮像領域FA及び縫製対象物Sの両方がXY平面内において移動してもよい。
【0152】
上述の実施形態において、境界線BLは、テクスチャ領域TAにおいて最も外側に配置されている孔7の外側のエッジを通るように生成されることとした。境界線BLは、テクスチャ領域TAにおいて最も外側に配置されている孔7を通るように生成されてもよい。境界点BPは、孔7に設定されてもよい。
【符号の説明】
【0153】
1…ミシン、2…テーブル、3…ミシン針、4…表材、5…パッド材、6…裏材、7…孔、10…ミシン本体、11…ミシンフレーム、11A…水平アーム、11B…ベッド、11C…垂直アーム、11D…ヘッド、12…針棒、13…針板、14…支持部材、15…保持部材、15A…押え部材、15B…下板、16…アクチュエータ、17…アクチュエータ、17X…X軸モータ、17Y…Y軸モータ、18…アクチュエータ、19…中押え部材、20…操作装置、21…操作パネル、22…操作ペダル、30…撮像装置、31…駆動量センサ、32…駆動量センサ、32X…X軸センサ、32Y…Y軸センサ、40…画像処理装置、41…対象物画像取得部、42…走査部、43…領域分割部、44…補正点設定部、45…特徴点抽出部、46…基準ベクトル算出部、47…基準ベクトル記憶部、48…補正量算出部、49…領域分割画像出力部、50…制御装置、60…記憶装置、61…縫製データ記憶部、62…設計データ記憶部、63…プログラム記憶部、70…入力装置、80…出力装置、1000…コンピュータシステム、1001…プロセッサ、1002…メインメモリ、1003…ストレージ、1004…インターフェース、AP…注目画素、APb…注目画素、APs…注目画素、APt…注目画素、AX…光軸、BP…境界点、CP…補正点、CH…ステッチ、DM…領域分割画像、FA…撮像領域、FP…特徴点、HA…サーチ領域、KP…候補点、Pf…撮像位置、Ps…縫製位置、RL…目標ステッチライン、RS…規定パターン、S…縫製対象物、SM…対象物画像、SA…ステッチ領域、TA…テクスチャ領域、US…基準パターン。